(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-18
(45)【発行日】2023-08-28
(54)【発明の名称】ストラドルドビークル
(51)【国際特許分類】
B62M 23/02 20100101AFI20230821BHJP
B62K 25/20 20060101ALI20230821BHJP
B62K 11/04 20060101ALI20230821BHJP
【FI】
B62M23/02 110
B62K25/20
B62K11/04 Z
(21)【出願番号】P 2021514161
(86)(22)【出願日】2020-04-14
(86)【国際出願番号】 JP2020016384
(87)【国際公開番号】W WO2020213591
(87)【国際公開日】2020-10-22
【審査請求日】2021-10-18
(31)【優先権主張番号】P 2019080270
(32)【優先日】2019-04-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001531
【氏名又は名称】弁理士法人タス・マイスター
(72)【発明者】
【氏名】金子 京平
(72)【発明者】
【氏名】北村 直樹
(72)【発明者】
【氏名】竹本 靖史
【審査官】長谷井 雅昭
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/090243(WO,A1)
【文献】国際公開第2005/063559(WO,A1)
【文献】特開2001-106159(JP,A)
【文献】特開2004-122854(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62M 23/02
B62K 25/20
B62K 11/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両フレーム構造体を構成するフレーム本体と、
少なくとも1つの前輪と、
少なくとも1つの後輪と、
電力を受けてパワーを出力する駆動モータを含む駆動ユニットと
、
発電用エンジン、及び、前記発電用エンジンに固定されるとともに可撓性を有する電力伝送媒体と電気的に接続され、前記発電用エンジンから出力されたエンジンパワーを電力に変換し前記電力を前記電力伝送媒体を介して前記駆動モータに向け供給する発電機を含む、発電ユニットと
を備える鞍乗型車両であって、
前記鞍乗型車両は、前記駆動ユニットと前記発電用ユニットとを備えることにより、
前記少なくとも1つの前輪及び/又は前記少なくとも1つの後輪が前記駆動モータから出力されたパワーのみによって駆動される駆動輪となるようにシリーズハイブリッド化されると共に、前記発電用エンジンが、出力するエンジンパワーを前記駆動輪に機械的に供給しないように前記車両フレーム構造体に揺動可能に支持される一方、前記駆動ユニットが、前記発電用エンジンとは別に、
前記フレーム本体にリジッドに固定され、前記フレーム本体と共に、前記車両フレーム構造体を構成することにより前記前輪及び前記後輪からの荷重を受けるように構成されている、鞍乗型車両。
【請求項2】
請求項1に記載の鞍乗型車両であって、
前記車両フレーム構造体は、フレーム構造体そのもの、又はフレーム構造体とリアアームとの組合せのいずれか1つからなり、前記車両フレーム構造体が前記フレーム構造体そのものである場合には、前記フレーム構造体自体が前記駆動輪を回転可能に支持し、前記車両フレーム構造体が前記フレーム構造体と前記リアアームとの組合せからなる場合、前記リアアームは、前記駆動輪を回転可能に支持し、前記フレーム構造体に支持部を介して前記支持部周りに揺動可能に支持され、
前記発電用エンジンは、前記車両フレーム構造体に車両側面視における複数箇所で、並進往復運動又は実質的に並進往復運動を行うように揺動可能に支持される一方、前記駆動ユニットは、前記発電用エンジンとは別に、
前記フレーム本体に弾性部材を介さずに固定される
、鞍乗型車両。
【請求項3】
請求項1に記載の鞍乗型車両であって、
前記発電用エンジンは、車両側面視における複数箇所で弾性部材を介して前記車両フレーム構造体に支持される
、鞍乗型車両。
【請求項4】
請求項1に記載の鞍乗型車両であって、
前記発電用エンジンは、車両側面視における少なくとも3箇所でリンク部材を介して前記車両フレーム構造体に支持される
、鞍乗型車両。
【請求項5】
請求項4に記載の鞍乗型車両であって、
前記リンク部材のうちの少なくとも一つは、弾性部材を介して前記車両フレーム構造体又は前記発電用エンジンに取付けられる
、鞍乗型車両。
【請求項6】
請求項2から5の何れか1項に記載の鞍乗型車両であって、
前記発電用エンジンは、バランサを備える
、鞍乗型車両。
【請求項7】
請求項1から6の何れか1項に記載の鞍乗型車両であって、
前記駆動ユニットは、前記フレーム本体に弾性部材を介することなく固定される
、鞍乗型車両。
【請求項8】
請求項
7に記載の鞍乗型車両であって、
前記車両フレーム構造体は、
フレーム構造体と、
前記駆動輪を回転可能に支持し、前記フレーム構造体に支持部を介して前記支持部周りに揺動可能に支持されるリアアームとからなり、
前記鞍乗型車両は、
前記前輪と、
前記前輪を回転可能に支持し、前記フレーム本体に支持されるフロントサスペンションと、
前記リアアームと
を備え、
前記フレーム本体と前記駆動ユニットとは、前記弾性部材を介することなく互いに固定されることにより一体となって、前記フロントサスペンションを介して前記前輪からの荷重を受け、前記リアアームを介して前記駆動輪からの荷重を受ける前記フレーム構造体を構成する
、鞍乗型車両。
【請求項9】
請求項
8に記載の鞍乗型車両であって、
前記フレーム構造体は、前記フレーム構造体と前記リアアームに取付けられた減衰器を介して前記駆動輪からの荷重を受け、前記フロントサスペンションの減衰器を介して前記前輪からの荷重を受ける
、鞍乗型車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鞍乗型車両に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、フレーム本体にエンジンとギアケースを含むエンジンユニットを固定した鞍乗型車両が記載されている。特許文献1の鞍乗型車両は、フレーム本体にエンジンユニットを固定してフレーム構造体を構成し、エンジンユニットをフレーム本体の剛性メンバーとして使用している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の鞍乗型車両は、エンジンユニットをフレーム本体の剛性メンバーとして使用する。これにより、フレーム構造体全体の剛性を高めている。しかし、特許文献1に記載の鞍乗型車両は、エンジンユニットがフレーム本体に固定されている。そのため、エンジンからの振動がフレーム本体を介して鞍乗型車両全体に伝わってしまう。
【0005】
エンジンを搭載する鞍乗型車両においては、入力に対する高い応答性を実現しながら、エンジンユニットからフレーム本体に伝わる振動を抑制することが求められる。
【0006】
本発明の目的は、入力に対する高い応答性を有しつつ、エンジンからフレーム本体に伝わる振動を抑制する鞍乗型車両を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鞍乗型車両において、エンジンユニットからフレーム本体に伝わる振動を抑制することについて詳細に検討した。この結果、本発明者らは、次のことが分かった。
【0008】
鞍乗型車両のフレーム本体の剛性を高めるために、例えば、エンジンユニットの一部を使用することが考えられる。例えば、サイドチューブとピボットチューブにより構成されたダイヤモンド型のフレーム本体にエンジンユニットを取付ける。この時、ダイヤモンド型のフレーム本体のサイドチューブに、エンジンの上部を弾性マウントにより取付ける。また、ダイヤモンド型のフレーム本体のピボットチューブにエンジンユニットの後部をリジッドマウントにより固定する。
このように鞍乗型車両のダイヤモンド型のフレーム本体にエンジンユニットを取付けることにより、鞍乗型車両のフレーム本体の剛性を高め、且つ振動を抑制することが考えられる。
【0009】
しかし、上述のフレーム本体へのエンジンユニット取付方法においては、エンジンユニットの一部が固定されているため、未だに一部の振動が鞍乗型車両全体に伝わってしまう。
本発明者らは、上述のようにエンジンユニットをフレーム本体に配した鞍乗型車両には、さらなるエンジンの振動がフレーム本体へ伝達されることを抑制することが望ましいことが分かった。
【0010】
本発明者らは、鞍乗型車両において、エンジンからフレーム本体に伝わる振動を抑制することについて、更に詳細に検討した。この検討の中で、本発明者らは、エンジンユニットから車両の駆動部分を分離することについて検討した。より詳細には、鞍乗型車両のエンジンユニットを、シリーズハイブリッド化することにより、発電を行う発電用エンジンと、鞍乗型車両を駆動するモータを含む駆動ユニットとに分離する。そして、発電用エンジンは、駆動ユニットとは別に、車両フレーム構造体に揺動可能に取付けられる。駆動ユニットでは、エンジンのような振動が発生しない。そのため、駆動ユニットは、車両フレーム構造体に支持されることができる。発電用エンジンでは、振動が発生する。そのため、発電用エンジンは、車両フレーム構造体に揺動可能に取付けることにより、車両フレーム構造体に伝わる振動を抑制することができる。その結果、エンジンの振動による影響を防止又は低減しつつ、駆動ユニットから駆動輪へ動力を伝達することができる。さらに、車両フレーム構造体に揺動可能に支持される発電用エンジンとは別に、駆動ユニットが車両フレーム構造体に支持されるので、駆動ユニットから駆動輪への動力伝達が、発電用エンジンの車両フレーム構造体への揺動可能な支持による影響を受けることが、防止又は抑制されることができる。その結果、駆動ユニットから駆動輪への動力伝達が効率的に行われ、車両として、入力に対する高い応答性を実現することが可能となる。
【0011】
このように、発電用エンジンが車両フレーム構造体に揺動可能に支持されると共に、発電用エンジンと別に、駆動ユニットは車両フレーム構造体に支持されることにより、入力に対する高い応答性を実現しつつ、鞍乗型車両に伝わる振動を抑制することが可能となる。
【0012】
以上の知見に基づいて完成した本発明の鞍乗型車両は、次の構成を備える。
【0013】
(1) 鞍乗型車両であって、
前記鞍乗型車両は、
車両フレーム構造体を構成するフレーム本体と、
電力を受けてパワーを出力する駆動モータを含む駆動ユニットと、
前記駆動モータから出力されたパワーによって駆動される駆動輪と、
出力するエンジンパワーを前記駆動輪に機械的に供給しないように設置された発電用エンジン、及び、前記発電用エンジンに固定されるとともに可撓性を有する電力伝送媒体と電気的に接続され、前記発電用エンジンから出力されたエンジンパワーを電力に変換し前記電力を前記電力伝送媒体を介して前記駆動モータに向け供給する発電機を含む、発電ユニットと
を備え、これにより、シリーズハイブリッド化されると共に、前記発電用エンジンが、前記車両フレーム構造体に揺動可能に支持される一方、前記駆動ユニットが、前記発電用エンジンとは別に、前記車両フレーム構造体に支持されるように構成されている。
【0014】
(1)の鞍乗型車両は、フレーム本体と、駆動ユニットと、駆動輪と、発電ユニットとを備える。フレーム本体は、車両フレーム構造体を構成する。駆動ユニットは、電力を受けてパワーを出力する駆動モータを含む。駆動輪は、駆動モータから出力されたパワーによって駆動される。
発電ユニットは、発電用エンジンと、発電機とを含む。発電用エンジンは、車両フレーム構造体に揺動可能に支持される。発電用エンジンにより出力されるエンジンパワーは、機械的に駆動輪に伝達されない。そのため、駆動輪は、駆動モータから出力されたパワーによって駆動される。発電機は、可撓性を有する電力伝送媒体に接続される。発電機は、発電用エンジンから出力されたエンジンパワーを電力に変換し、変換した電力を電力伝送媒体を介して駆動モータに供給する。
【0015】
(1)の鞍乗型車両によれば、駆動輪は、駆動モータから出力されたモータパワーによって駆動される。駆動輪は、発電用エンジンから出力されたエンジンパワーが機械的に伝達されない。また、発電用エンジンがフレーム構造体に揺動可能に支持されており、発電機は可撓性を有する電力伝送媒体に接続されている。駆動ユニットは、車両フレーム構造体に揺動可能に支持される発電用エンジンとは別に、車両フレーム構造体に支持される。
これにより、(1)の鞍乗型車両は、入力に対する高い応答性を実現しつつ、鞍乗型車両に伝わる振動を抑制することが可能となる。
【0016】
本発明の一つの観点によれば、鞍乗型車両は、以下の構成を採用できる。
(2) (1)の鞍乗型車両であって、
前記車両フレーム構造体は、フレーム構造体そのもの、又はフレーム構造体とリアアームとの組合せのいずれか1つからなり、前記車両フレーム構造体が前記フレーム構造体そのものである場合には、前記フレーム構造体自体が前記駆動輪を回転可能に支持し、前記車両フレーム構造体が前記フレーム構造体と前記リアアームとの組合せからなる場合、前記リアアームは、前記駆動輪を回転可能に支持し、前記フレーム構造体に支持部を介して前記支持部周りに揺動可能に支持され、
前記発電用エンジンは、前記車両フレーム構造体に車両側面視における複数箇所で、並進往復運動又は実質的に並進往復運動を行うように揺動可能に支持される一方、前記駆動ユニットは、前記発電用エンジンとは別に、前記車両フレーム構造体に弾性部材を介さずに固定される。
【0017】
(2)の鞍乗型車両によれば、入力に対する高い応答性と、鞍乗型車両に伝わる振動の抑制とを、より高いレベルで実現可能となる。なお、実質的な並進往復運動とは、少なくとも並進往復運動成分を含む運動をいい、他の運動成分、例えば、並進回転運動成分及び回転運動成分の少なくとも1種の成分を含んでいてもよい。
【0018】
本発明の一つの観点によれば、鞍乗型車両は、以下の構成を採用できる。
(3) (1)の鞍乗型車両であって、
前記発電用エンジンは、車両側面視における複数箇所で弾性部材を介して前記車両フレーム構造体に支持される。
【0019】
(3)の鞍乗型車両によれば、発電用エンジンが弾性部材を介してフレーム構造体に支持される。これにより、(3)の鞍乗型車両は、発電用エンジンの振動がフレーム本体に伝達するのを抑制することができる。
【0020】
本発明の一つの観点によれば、鞍乗型車両は、以下の構成を採用できる。
(4) (1)の鞍乗型車両であって、
前記発電用エンジンは、車両側面視における少なくとも3箇所でリンク部材を介して前記車両フレーム構造体に支持される。
【0021】
(4)の鞍乗型車両では、発電用エンジンがリンク部材を介してフレーム構造体に取付けられる。従って、(4)の鞍乗型車両では、発電用エンジンの上下方向及び前後方向における振動がフレーム構造体に伝達することを抑制することができる。従って、(4)の鞍乗型車両は、リンク部材を有することにより、発電用エンジンの振動がフレーム本体に伝達されるのを効率的に抑制することができる。
【0022】
本発明の一つの観点によれば、鞍乗型車両は、以下の構成を採用できる。
(5) (4)の鞍乗型車両であって、
前記リンク部材のうちの少なくとも一つは、弾性部材を介して前記車両フレーム構造体又は前記発電用エンジンに取付けられる。
【0023】
(5)の鞍乗型車両では、弾性部材がリンク部材の過度の揺動を抑制することができる。従って、(5)の鞍乗型車両は、発電用エンジンが上下方向及び前後方向に大きく揺動することを抑制することができる。
【0024】
本発明の一つの観点によれば、鞍乗型車両は、以下の構成を採用できる。
(6) (2)から(5)の何れか1の鞍乗型車両であって、
前記発電用エンジンは、バランサを備える。
【0025】
(6)の鞍乗型車両によれば、発電用エンジンがバランサを備える。これにより、(6)の鞍乗型車両は、発電用エンジンの振動を効率よく吸収することができる。
【0026】
本発明の一つの観点によれば、鞍乗型車両は、以下の構成を採用できる。
(7) (1)から(6)の何れか1の鞍乗型車両であって、
前記車両フレーム構造体は、
フレーム構造体と、
前記駆動輪を回転可能に支持し、前記フレーム構造体に支持部を介して前記支持部周りに揺動可能に支持されるリアアームとからなり、
前記鞍乗型車両は、
前輪と、
前記前輪を回転可能に支持し、前記フレーム本体に支持されるフロントサスペンションと、
前記リアアームと
を備え、
前記駆動ユニットは、前記フレーム構造体を構成すること無しに前記リアアームに固定される。
【0027】
(7)の鞍乗型車両によれば、鞍乗型車両のエンジンユニットを、シリーズハイブリッド化することにより、発電を行う発電用エンジンと、鞍乗型車両を駆動するモータを含む駆動ユニットとに分離できる。そして、発電用エンジンは、フレーム本体に揺動可能に取付けられる。発電用エンジンでは、振動が発生する。そのため、発電用エンジンは、鞍乗型車両のフレーム本体及び駆動ユニットの少なくとも一つに揺動可能に取付けることにより、鞍乗型車両のフレーム本体及び駆動ユニットに伝わる振動を抑制することができる。これに対し、駆動ユニットは、鞍乗型車両のリアアームに固定される。従って、(7)の鞍乗型車両によれば、鞍乗型車両の車体をコンパクトに構成できる。駆動ユニットでは、エンジンのような振動が発生しない。そのため、(7)の鞍乗型車両では、駆動ユニットをリアアームに固定したとしても、フレーム本体に振動が伝達されない。
【0028】
本発明の一つの観点によれば、鞍乗型車両は、以下の構成を採用できる。
(8) (7)の鞍乗型車両であって、
前記フレーム本体は、前記フロントサスペンションに設けられた減衰器を介して前記前輪からの荷重を受け、前記フレーム本体と前記リアアームに取付けられた減衰器を介して前記駆動輪からの荷重を受ける。
【0029】
(8)の鞍乗型車両によれば、フレーム本体は、前輪を回転可能に支持するフロントサスペンションを支持し、駆動輪を回転可能に支持するリアアームを揺動可能に支持する。フロントサスペンションの一例としては、フロントフォークが挙げられる。フレーム本体は、フロントフォークを回転可能に支持する。これにより、剛性の高いフレーム構造体が、前輪及び駆動輪からの荷重を受けつつ、発電用エンジンの振動が鞍乗型車両全体に伝わるのを抑制することができる。
【0030】
本発明の一つの観点によれば、鞍乗型車両は、以下の構成を採用できる。
(9) (1)から(6)の何れか1の鞍乗型車両であって、
前記駆動ユニットは、前記フレーム本体に弾性部材を介することなく固定される。
【0031】
(9)の鞍乗型車両では、鞍乗型車両の動力源が、発電を行う発電用エンジンと、鞍乗型車両を駆動するモータを含む駆動ユニットとに分離されている。駆動ユニットでは、エンジンのような振動が発生しない。そのため、駆動ユニットは、剛性を有するメンバーとして、鞍乗型車両のフレーム本体にリジッドマウントにより固定されることができる。この場合でも、鞍乗型車両のフレーム本体及び駆動ユニットに伝わる振動を抑制することができる。
【0032】
(9)の鞍乗型車両のように鞍乗型車両のフレーム本体に発電用エンジンと駆動ユニットとを取付けることにより、鞍乗型車両の剛性を更に高め、且つ鞍乗型車両に伝わる振動を更に抑制することが可能となる。
【0033】
本発明の一つの観点によれば、鞍乗型車両は、以下の構成を採用できる。
(10) (9)の鞍乗型車両であって、
前記車両フレーム構造体は、
フレーム構造体と、
前記駆動輪を回転可能に支持し、前記フレームに支持部を介して前記支持部周りに揺動可能に支持されるリアアームとからなり、
前記鞍乗型車両は、
前輪と、
前記前輪を回転可能に支持し、前記フレーム本体に支持されるフロントサスペンションと、
前記リアアームと
を備え、
前記フレーム本体と前記駆動ユニットとは、前記弾性部材を介することなく互いに固定されることにより一体となって、前記フロントサスペンションを介して前記前輪からの荷重を受け、前記リアアームを介して前記駆動輪からの荷重を受ける前記フレーム構造体を構成する。
【0034】
(10)の鞍乗型車両によれば、フレーム本体と駆動ユニットが一体となって、剛性の高いフレーム構造体を構成する。フレーム構造体は、前輪を回転可能に支持するフロントサスペンションを支持し、駆動輪を回転可能に支持するリアアームを揺動可能に支持する。フロントサスペンションの一例としては、フロントフォークが挙げられる。フレーム本体は、フロントフォークを回転可能に支持する。これにより、剛性の高いフレーム構造体が、前輪及び駆動輪からの荷重を受けつつ、発電用エンジンの振動が鞍乗型車両全体に伝わるのを抑制することができる。
【0035】
本発明の一つの観点によれば、鞍乗型車両は、以下の構成を採用できる。
(11) (10)の鞍乗型車両であって、
前記フレーム構造体は、前記フレーム構造体と前記リアアームに取付けられた減衰器を介して前記駆動輪からの荷重を受け、前記フロントサスペンションの減衰器を介して前記前輪からの荷重を受ける。
【0036】
(11)の鞍乗型車両によれば、走行時においてフレーム構造体がフロントサスペンションを介して前輪から受ける衝撃及びリアアームを介して駆動輪から受ける衝撃が、減衰器で吸収される。これにより、発電用エンジンの振動、前輪及び駆動輪からの衝撃の双方が、剛性の高いフレーム構造体を介して鞍乗型車両全体に伝わることを抑制することができる。
【0037】
本明細書にて使用される専門用語は特定の実施例のみを定義する目的であって発明を制限する意図を有しない。本明細書にて使用される用語「及び/又は」は一つの、又は複数の関連した列挙された構成物のあらゆる又は全ての組み合わせを含む。本明細書中で使用される場合、用語「含む、備える(including)」「含む、備える(comprising)」又は「有する(having)」及びその変形の使用は、記載された特徴、工程、操作、要素、成分及び/又はそれらの等価物の存在を特定するが、ステップ、動作、要素、コンポーネント、及び/又はそれらのグループのうちの1つ又は複数を含むことができる。本明細書中で使用される場合、用語「取付けられた」、「接続された」、「結合された」及び/又はそれらの等価物は広く使用され、直接的及び間接的な取付け、接続及び結合の両方を包含する。更に、「接続された」及び「結合された」は、物理的又は機械的な接続又は結合に限定されず、直接的又は間接的な電気的接続又は結合を含むことができる。他に定義されない限り、本明細書で使用される全ての用語(技術用語および科学用語を含む)は、本発明が属する当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。一般的に使用される辞書に定義された用語のような用語は、関連する技術及び本開示の文脈における意味と一致する意味を有すると解釈されるべきであり、本明細書で明示的に定義されていない限り、理想的又は過度に形式的な意味で解釈されることはない。本発明の説明においては、技術及び工程の数が開示されていると理解される。これらの各々は個別の利益を有し、それぞれは、他の開示された技術の1つ以上、又は、場合によっては全てと共に使用することもできる。従って、明確にするために、この説明は、不要に個々のステップの可能な組み合わせを全て繰り返すことを控える。それにもかかわらず、明細書及び特許請求の範囲は、そのような組み合わせが全て本発明及び請求項の範囲内にあることを理解して読まれるべきである。
本明細書では、新しい鞍乗型車両について説明する。以下の説明では、説明の目的で、本発明の完全な理解を提供するために多数の具体的な詳細を述べる。しかしながら、当業者には、これらの特定の詳細なしに本発明を実施できることが明らかである。本開示は、本発明の例示として考慮されるべきであり、本発明を以下の図面又は説明によって示される特定の実施形態に限定することを意図するものではない。
【0038】
鞍乗型車両(straddled vehicle)とは、運転者がサドルに跨って着座する形式のビークルをいう。鞍乗型車両としては、例えば、スクータ型、モペット型、オフロード型、オンロード型の自動二輪車が挙げられる。また、鞍乗型車両としては、自動二輪車に限定されず、例えば、自動三輪車、ATV(All-Terrain Vehicle)等であってもよい。自動三輪車は、2つの前輪と1つの後輪とを備えていてもよく、1つの前輪と2つの後輪とを備えていてもよい。鞍乗型車両の駆動輪は、後輪であってもよく、前輪であってもよい。また、鞍乗型車両の駆動輪は、後輪及び前輪の双方であってもよい。駆動輪は、発電用エンジン又は駆動モータから出力される機械的なパワーのうち、駆動モータから出力される機械的パワーのみによって駆動される。このような鞍乗型車両は、シリーズハイブリッド式鞍乗型車両である。
【0039】
また、鞍乗型車両は、リーン姿勢で旋回可能に構成されていることが好ましい。リーン姿勢で旋回可能に構成された鞍乗型車両は、カーブの内側に傾いた姿勢で旋回するように構成される。これにより、リーン姿勢で旋回可能に構成された鞍乗型車両は、旋回時に鞍乗型車両に加わる遠心力に対抗する。リーン姿勢で旋回可能に構成された鞍乗型車両としては、例えば、自動二輪車及び自動三輪車が挙げられる。リーン姿勢で旋回可能に構成された鞍乗型車両では、軽快性が求められるため、発進の操作に対する進行の応答性が重要視される。
【0040】
フレーム本体は、鞍乗型車両の骨格をなし、エンジン、発電ユニット、駆動ユニット、バッテリ、及び燃料タンク等の鞍乗型車両の搭載部品等を支持する。フレーム本体は、ヘッドパイプと、ヘッドパイプに固定された桁部とから構成される。フレーム本体は、ヘッドパイプ及び桁部と、それ以外の部品とにより構成されていてもよく、また、ヘッドパイプ及び桁部以外の部品により構成されていてもよい。桁部は、単一のパイプから構成されてもよく、また、複数のパイプの組み合わせで構成されてもよい。また、桁部は、板等のパイプ以外の構造物により構成されてもよい。フレーム本体は、例えば、シングルグレードル型、ダブルグレードル型、ダイヤモンド型、及びモノコック型等が挙げられるが、これらに限定されない。
フレーム構造体は、車両フレーム構造体を構成する。車両フレーム構造体は、前輪及び後輪からの荷重を受ける構造体である。鞍乗型車両がリアアームを備える場合、車両フレーム構造体は、フレーム構造体とリアアームとからなる。鞍乗型車両がリアアームを備えない場合、車両フレーム構造体は、フレーム構造体自体である。即ち、車両フレーム構造体は、フレーム構造体そのもの、又はフレーム構造体とリアアームとの組合せ、のいずれかである。なお、フレーム構造体は、フレーム本体以外の部品を有してもよい。例えば、フレーム本体及びフレーム本体にリジッドに固定された駆動ユニットがフレーム構造体を構成してもよい。駆動ユニットは、これに限られず例えば、フレーム構造体を構成しなくともよい。この場合、駆動ユニットは、前輪及び後輪からの荷重を受ける構造体として機能しない。
【0041】
発電用エンジンは、ガスの燃焼によって生じるパワーをクランク軸のトルク及び回転速度として出力する往復動機関である。発電用エンジンは、例えば、単気筒エンジン及び2以上の気筒を有するエンジンを含む。また、発電用エンジンは、ガスの燃焼によって生じるパワーをクランク軸のトルク及び回転速度として出力する往復動機関の他、例えば、ロータリーエンジン、及びガスタービンエンジンがあげられるが、これらに限定されない。
【0042】
発電機は、発電が可能な回転電機である。発電機は、始動モータとして機能してもよい。但し、発電機は、始動モータと異なる回転電機であってもよい。発電機は、アウターロータ型でもよく、また、インナーロータ型でもよい。また、発電機は、ラジアルギャップ型でなく、アキシャルギャップ型でもよい。一つの実施形態によれば、発電機では、ロータが、永久磁石を備えている。
【0043】
発電機が、発電用エンジンで駆動される構成とは、例えば、発電用エンジンのクランク軸と連動するよう設けられ、発電機の被駆動軸が、固定された速度比で回転するよう動力伝達機構を介して発電用エンジンのクランク軸に接続されることである。また、発電機が、動力伝達機構を介さずに発電用エンジンのクランク軸と直結されていてもよい。
【0044】
駆動モータは、モータ動作が可能な回転電機である。駆動モータは、例えば発電とモータ動作の双方が可能な回転電機であってもよい。駆動モータは、アウターロータ型でもよく、また、インナーロータ型でもよい。また、駆動モータは、ラジアルギャップ型でなく、アキシャルギャップ型でもよい。一つの実施形態によれば、駆動モータでは、ロータが、永久磁石を備えている。
【0045】
駆動ユニットは、発電機から供給される電力を受けて、回転パワーとして出力する部品である。駆動ユニットは、駆動モータを備える。駆動ユニットは、駆動モータの他に、減速機、チェーン用のドライブスプロケット、又はチェーンベルト用のプーリを備えていてもよい。
【0046】
可撓性を有する電力伝送媒体は、振動を伝達しない部材を少なくとも含んでいる。電力伝送媒体は、例えば電線及びケーブル等が挙げられる。但し、可撓性を有する電力伝送媒体は、可撓性を有する部材と、剛体との組み合わせであってもよい。例えば可撓性を有する電力伝送媒体は、電線と回路基板との組み合わせであってもよい。
【0047】
支持するとは、支持する部品が支持される部品の荷重を直接的又は間接的に受けることをいう。支持されるとは、支持される部品が支持する部品に直接的又は間接的に荷重をかけることをいう。ここで直接的は、支持する部品が支持される部品と接触して荷重を受けることを意味する。また、間接的は、支持する部品が支持される部品と接触せずに他の部品を介して荷重を受けることを意味する。支持する部品と支持される部品の接点は、例えば、固定されていてもよい。支持する部品と支持される部品は、例えば、揺動可能に接続されていてもよい。また、支持する部品と支持される部品は、例えば、回転可能に接続されていてもよい。支持する部品と支持される部品の接続部分は、直接部品同士が接続されていてもよい。支持する部品と支持される部品の接続部分は、例えば弾性部材、ベアリング等を介して部品同士が接続されていてもよい。
【0048】
リジッドに固定されるとは、弾性部材又は緩衝部材等からなる可動部分を介することなく、支持される部品が支持する部品と直接的に又は間接的に固定されることである。支持される部品は、例えば、支持する部品と固定される。
【0049】
リアアームは、後輪とフレーム構造体とをつなぐ部品である。リアアームは後輪を回転可能に支持する。後輪が駆動輪である場合には、リアアームは駆動輪を回転可能に支持する。リアアームは、フレーム構造体に揺動可能に支持される。
フロントサスペンションは、前輪とフレーム構造体とをつなぐ部品である。フロントサスペンションは、前輪を回転可能に支持する。フロントサスペンションの一例としてのフロントフォークは、フレーム構造体に回転可能に支持される。フロントサスペンションは、減衰器を含む。減衰器は、前輪から入力される振動及び/又は衝撃を吸収する。
【0050】
弾性部材は、例えばゴム、内外筒ブッシュ又はラバーブッシュである。弾性部材は、例えばダンパーゴムであってもよい。弾性部材は、弾性を有する部材である。弾性部材は、例えば、緩衝部材、制振部材、防振部材等を含む。
リンク部材は、リンク機構を構成する部品である。リンク部材は、少なくとも2つの部品を接続する接続具である。リンク部材は、接続する部品の少なくとも一つに対して、回転または揺動する。すべての部品に対して固定される接続具は、リンク部材に含まれない。リンク部材は、少なくとも2つの接続部分を有している。少なくとも2つの接続部分のうち、少なくとも1つの接続部分は、取付軸が回転可能なベアリング(軸受)に形成される。取付軸は、リンク部材に形成されたベアリングを貫通する。リンク部材は、ベアリングを貫通する取付軸を中心として自由に回転可能に形成される。また、少なくとも2つの接続部分のうち、少なくとも1つの接続部分は、内外筒ブッシュを介して取付軸が挿入されてもよい。この場合、リンク部材は、内外筒ブッシュを貫通する取付軸に対して揺動する。
【0051】
バランサは、例えばエンジンの一次慣性力を抑制する、一軸一次バランサである。但し、バランサは、一軸一次バランサに限られず、他の機能を発揮するバランサであってもよい。他の機能を発揮するバランサは、例えば一次偶力バランサ、二軸一次バランサ、一軸二次バランサ、二軸二次バランサ等があげられる。バランサは、発電用エンジンの種類及び発電用エンジンのマウント方法によって最適な種類のバランサが選択される。
【発明の効果】
【0052】
本発明によれば、入力に対する高い応答性を有しつつ、エンジンからフレーム本体に伝わる振動を抑制する鞍乗型車両を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る鞍乗型車両を示す左側面図である。
【
図2】
図1の鞍乗型車両の発電ユニットを示す左側面図である。
【
図5】
図1の鞍乗型車両のモータユニットを示す左側面図である。
【
図6】
図5のIII-IIIにおける断面図である。
【
図7】
図1の鞍乗型車両の車両フレーム構造体及び発電ユニットを示す左側面図である。
【
図8】
図1の鞍乗型車両の車両フレーム構造体及び発電ユニットを示す上面図である。
【
図9】
図1の鞍乗型車両の車両フレーム構造体及び発電ユニットを示す右側面図である。
【
図10】本発明の第2実施形態に係る鞍乗型車両を示す外観図である。
【発明を実施するための形態】
【0054】
以下、本発明を、好ましい実施形態に基づいて図面を参照しつつ説明する。
【0055】
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態に係る鞍乗型車両1を示す左側面図である。
図1は、鞍乗型車両1の左右方向において左方向の車体カバーを外した状態を示している。
図1を参照して、本実施形態の鞍乗型車両1の概要を説明する。
図1における矢印Fは、鞍乗型車両1における前方向を示している。前方向は、鞍乗型車両1が走行する方向である。矢印Bは、後方向を示している。矢印F及び矢印Bは、鞍乗型車両1における前後方向FBを表している。前方向F、後方向B、及び前後方向FBは、鞍乗型車両1の直立状態における水平面と平行である。矢印Uは上方向を示している。矢印Dは下方向を示している。矢印U及び矢印Dは、鞍乗型車両1における上下方向UDを表している。上方向U、下方向D及び上下方向UDは、鞍乗型車両1の直立状態における鉛直方向と平行である。リーン車両に乗車したライダーの右方向と左方向を
図5に表す矢印L及び矢印Rで示す。矢印L及び矢印Rは、鞍乗型車両1における左右方向LRを表している。
本明細書において、鞍乗型車両1が有する装置についての方向は、鞍乗型車両1に取付けられた状態での上述した方向で説明される。
【0056】
図1の鞍乗型車両1は、発電用エンジンにより発電機を駆動し、発電機の電力により、駆動輪を駆動する、シリーズハイブリッド式鞍乗型車両である。
図1の鞍乗型車両1は、フレーム本体110を備える。フレーム本体110は、車両フレーム構造体10を構成する。フレーム本体110は、鞍乗型車両1の骨格をなし、鞍乗型車両1の搭載部品を支持する土台となる。
【0057】
鞍乗型車両1は、駆動ユニット50を備える。駆動ユニット50は、駆動モータ51を含む。駆動モータ51は、電力の供給を受けてパワーを出力する。
駆動ユニット50は、ギアボックス53を含む。ギアボックス53は、剛性を有し、駆動モータ51からの回転パワーを所定の変速比により変速する動力伝達機構531(
図6参照)を収容する。ギアボックス53は、駆動モータ51を支持する。
図1に示すように、駆動ユニット50は、車両フレーム構造体10に支持される。車両フレーム構造体10は、前輪22と後輪32の間で作用する、鞍乗型車両1の荷重を支持する。
【0058】
鞍乗型車両1は、発電ユニット40を備える。発電ユニット40は、発電用エンジン41と発電機42とを備える。
図1に示すように、発電用エンジン41は、車両フレーム構造体10を構成しないように車両フレーム構造体10に揺動可能に支持される。発電用エンジン41は、図示しない回転可能なクランク軸411を有する。発電用エンジン41は、ガスの燃焼によって生じるパワーをクランク軸411のトルク及び回転速度として出力する。発電用エンジン41が出力するパワーはエンジンパワーである。但し、発電用エンジン41は、出力したパワー(エンジンパワー)を後輪32に機械的に伝達しない。
発電機42は、クランク軸411と連動するよう設けられている。発電機42は、可撓性を有する電力伝送媒体46と電気的に接続されている。電力伝送媒体46は、電線である。発電機42は、発電用エンジン41からのパワーを電力に変換する。発電機42は、変換した電力を、電力伝送媒体46を介して駆動モータ51に向け供給する。
【0059】
鞍乗型車両1は、フロントフォーク21と、前輪22とを備える。前輪22は、フロントフォーク21に回転可能に支持される。フロントフォーク21は、フレーム本体110に回転可能に支持される。フロントフォーク21は、フロントサスペンションの一例である。即ち、フレーム本体110は、フロントサスペンションを支持する。また、前輪22は、フロントサスペンションに回転可能に支持される。車両フレーム構造体10は、フロントフォーク21を介して、前輪22からの荷重を受ける。フロントフォーク21は、減衰器23を有する。減衰器23は、前輪22からフロントフォーク21を介してフレーム本体110に伝わる振動を軽減する。
【0060】
鞍乗型車両1は、後輪32を備える。後輪32は、駆動モータ51から出力されたパワーのみによって駆動される。つまり、発電用エンジン41のパワーは、機械的に後輪32に伝達されない。後輪32は、駆動輪である。即ち、駆動モータ51は、駆動輪を駆動する。
【0061】
鞍乗型車両1は、バッテリ60を備える。バッテリ60は、発電機42により発電された電力を貯蔵し、貯蔵した電力を駆動モータ51に供給する。
【0062】
鞍乗型車両1は、上述の通り構成されることにより、シリーズハイブリッド化される。これと共に、鞍乗型車両1は、発電用エンジン41が、車両フレーム構造体10に揺動可能に支持され、これに対し、駆動ユニット50が、発電用エンジン41とは別に、車両フレーム構造体10に支持されるように構成されている。
【0063】
鞍乗型車両1によれば、駆動輪である後輪32は、駆動モータ51から出力されたモータパワーによって駆動される。後輪32は、発電用エンジン41から出力されたエンジンパワーが機械的に伝達されない。また、発電用エンジン41がフレーム構造体11に揺動可能に支持されており、発電機42は可撓性を有する電力伝送媒体46に接続されている。駆動ユニット50は、車両フレーム構造体10に揺動可能に支持される発電用エンジン41とは別に、車両フレーム構造体10に支持される。これにより、鞍乗型車両1は、入力に対する高い応答性を実現しつつ、鞍乗型車両1に伝わる振動を抑制することが可能となる。
【0064】
[各部詳細]
図2は、
図1の鞍乗型車両1の発電ユニット40の発電用エンジン41及び発電機42を示す左側面図である。
図3は、
図2のI-Iにおける断面図である。
図4は、
図2のII-IIにおける断面図である。
【0065】
発電用エンジン41には、スロットル弁412と、燃料噴射装置413と、点火プラグ414と、クランク軸411が設けられている。発電用エンジン41は、内燃機関である。発電用エンジン41は、燃料と空気の混合ガスを燃焼する燃焼動作によって、ピストン415を上下動させてクランク軸411に回転パワーを与える。これにより、発電用エンジン41は、回転パワーを出力する。スロットル弁412と燃料噴射装置413とは、供給される空気及び燃料の量を調整することによって、発電用エンジン41から出力される回転パワーを調節する。発電用エンジン41から出力された回転パワーは、発電機42により電力に変換される。発電機42により変換された電力は、駆動モータ51に供給されて再び回転パワーとして出力される。
【0066】
発電用エンジン41は、バランサ416を有する。本実施形態において、バランサ416は、1軸一次バランサである。バランサ416は、クランク軸411に取付けられた駆動ギア411aが、バランサ軸416aに取付けられた被駆動ギア416bを介して駆動する。バランサ416により、発電用エンジン41の一次慣性力を抑制することができる。
【0067】
発電機42は、永久磁石式三相ブラシレス型発電機である。発電機42は、ロータ421と、ステータ422とを有する。本実施形態の発電機42は、ラジアルギャップ型である。ロータ421はインナーロータである。ステータ422はアウターステータである。即ち、発電機42は、インナーロータ型である。
ロータ421は、被駆動軸421aと、複数の永久磁石部421bとを有する。複数の永久磁石部421bは、被駆動軸421aの外周面に設けられている。複数の永久磁石部421bは、発電機42の周方向にN極とS極とが交互に配置されるように設けられている。複数の永久磁石部421bは、発電機42の径方向でステータ422よりも中心の方に設けられている。
ステータ422は、ステータコア422aと、複数相のステータ巻線422bとを有する。ステータコア422aは、円筒状のヨークと、ヨークの周方向に間隔を空けて内方向に向かって延びるように設けられた複数の歯部とを有する。ステータ巻線422bは、複数の歯部にそれぞれ巻き付けられている。複数のステータ巻線422bのそれぞれは、U相、V相、W相の何れかに属する。ステータ巻線422bは、例えば、U相、V相、W相の順に並ぶように配置される。
【0068】
本実施形態においては、発電機42は、動力伝達機構423を介して発電用エンジン41のクランク軸411と連動するように接続されている。詳細には、ロータ421が、クランク軸411に対し固定された速度比で回転するようクランク軸411と接続されている。発電機42は、発電用エンジン41が燃焼動作する場合に、発電用エンジン41に駆動されて発電する。
【0069】
図5は、
図1の鞍乗型車両1の駆動ユニット50を示す左側面図である。
図6は、
図5のIII-IIIにおける断面図である。駆動ユニット50は、駆動モータ51と、コントロールユニット52と、ギアボックス53とを含む。
【0070】
駆動モータ51は、永久磁石式三相ブラシレス型モータである。駆動モータ51は、永久磁石式三相ブラシレス型発電機としても機能する。駆動モータ51は、インナーロータ511と、アウターステータ512とを有するラジアルギャップ型である。
駆動モータ51は、車両駆動用モータとして後輪32(
図1参照)を駆動する。この時、駆動モータ51は、発電ユニット40の発電機42(
図2参照)及びバッテリ60(
図1参照)の少なくとも一つから電力の供給を受ける。駆動モータ51は、供給された電力により回転パワーを出力して、ギアボックス53の動力伝達機構531を介して後輪32を駆動する。駆動モータ51が出力するパワーはモータパワーである。
【0071】
コントロールユニット52は、駆動コントロールユニット521と、電源コントロールユニット522とを含む。駆動コントロールユニット521は、インバータ及びモータコントローラを含むインバータモジュール521aと、取付ボード521bとを含む。電源コントロールユニット522は、コンバータ及び発電コントローラを含むコンバータモジュール522aと、取付ボード522bとを含む。
【0072】
駆動コントロールユニット521のインバータモジュール521aには、駆動ユニット50の駆動モータ51と、バッテリ60と、電源コントロールユニット522のコンバータモジュール522aとが接続されている。インバータモジュール521aのモータコントローラは、アクセルグリップの操作量に応じてインバータを制御して、バッテリ60及び/又は発電機42から出力される電流及び電圧の三相交流への変換及び駆動モータ51に流れる電流及び電圧の制御を行う。
【0073】
電源コントロールユニット522のコンバータモジュール522aには、発電ユニット40の発電機42と、バッテリ60とが接続されている。コンバータモジュール522aの発電コントローラは、コンバータを制御することによって、発電機42から出力される三相交流の整流及び電圧の制御を行う。
【0074】
ギアボックス53は、動力伝達機構531と、出力軸534が収容される。出力軸534には、駆動プーリ535が取付けられる。動力伝達機構531は、減速機を構成する。動力伝達機構531は、駆動モータ51から出力されたパワーを所定の変速比により減速して、後輪32に伝達する。詳細には、駆動モータ51からの回転パワーは、動力伝達機構531により減速されて、出力軸534に伝達される。出力軸534に伝達された回転パワーは、駆動プーリ535及びベルトチェーン54を介して駆動輪である後輪32の駆動軸に伝達される。
【0075】
図7は、
図1の鞍乗型車両1の車両フレーム構造体10及び発電ユニット40を示す左側面図である。
図8は、
図1の鞍乗型車両1の車両フレーム構造体10及び発電ユニット40を示す上面図である。
図9は、
図1の鞍乗型車両1の車両フレーム構造体10及び発電ユニット40を示す右側面図である。
図7乃至
図9を用いて、車両フレーム構造体10及び発電ユニット40のそれぞれの支持の関係について説明する。
【0076】
本実施形態において、駆動ユニット50は、フレーム本体110に弾性部材を介することなくリジッドに固定される。これにより、駆動ユニット50は、フレーム本体110と一体となって、フレーム構造体11を構成する。即ち、駆動ユニット50は、フレーム本体110に弾性部材を介することなくリジッドに固定されることにより、フレーム構造体11を構成する。本実施形態において、車両フレーム構造体10は、フレーム構造体11により構成される。即ち、車両フレーム構造体10は、フレーム本体110と駆動ユニット50とから構成される。フレーム構造体11は、前輪22と後輪32の間で作用する、鞍乗型車両1の荷重を支持する。フレーム構造体11は、鞍乗型車両1の荷重を支持する可動部を有さない。
【0077】
鞍乗型車両1は、リアアーム31を備える。リアアーム31は、フレーム本体110又は駆動ユニット50、即ちフレーム構造体11に揺動可能に支持される。リアアーム31は、駆動輪である後輪32を回転可能に支持する。フレーム構造体11とリアアーム31とは、図示しない減衰器により接続される。減衰器はリアアーム31からフレーム構造体11に伝わる振動を吸収する。これにより、後輪32からリアアーム31を介してフレーム構造体11に伝わる振動が軽減される。
【0078】
フレーム本体110は、第1の桁部111と、第2の桁部112と、ヘッドパイプ113とを備える。第1の桁部111は、鞍乗型車両1の左右方向LRにおいて、左方向Lに配置される。第2の桁部112は、鞍乗型車両1の左右方向LRにおいて、右方向Rに配置される。第1の桁部111と第2の桁部112とは、鞍乗型車両1の前後方向FBにおいて、前方向Fでヘッドパイプ113に結合する。
【0079】
発電ユニット40は、フレーム本体110の第1の桁部111と、第2の桁部112との間に配置される。言い換えると、鞍乗型車両1の左右方向LRにおいて、発電ユニット40の左方向Lに第1の桁部111が配置され、発電ユニット40の右方向Rに第2の桁部112が配置される。
【0080】
発電ユニット40の発電用エンジン41は、車両フレーム構造体10のフレーム本体110及びギアボックス53の少なくとも3点、本実施形態においては4点において、リンク部材114、536及び537を介して取付けられる。
リンク部材114は、鞍乗型車両1の左右方向LRにおいて、第1の桁部111の右方向Rを向いた面と、第2の桁部112の左方向Lを向いた面との間に配置される。本実施形態の例に示すリンク部材114は、鞍乗型車両1の左右方向LRにおいて相対的に左に配置された第1の桁部111の位置から相対的に右に配置された第2の桁部112の位置まで、左右方向LRに延びる部材である。
リンク部材114は、発電ユニット40の発電用エンジン41の取付部431に設けられた取付軸451に弾性部材441を介して揺動可能に取付けられる。取付軸451は、発電用エンジン41の取付部431に固定される。また、リンク部材114は、第1の桁部111の取付部111aに設けられた取付軸455に弾性部材445を介して揺動可能に取付けられる。取付軸455は、第1の桁部111の取付部111aに固定される。また、リンク部材114は、第1の桁部111の取付部111bに設けられた取付軸461に取付けられる。取付軸461は、リンク部材114に設けられたベアリング471に支持される。ベアリング471は、ベアリング471の回転中心から鞍乗型車両1の左右方向LRに伸びる直線を中心軸としてリンク部材114が回転するように設けられる。取付軸461は、第1の桁部111の取付部111bに固定される。
リンク部材114は、発電ユニット40の発電用エンジン41の取付部432に設けられた取付軸452に弾性部材442を介して揺動可能に取付けられる。取付軸452は、発電用エンジン41の取付部432に固定される。また、リンク部材114は、第2の桁部112の取付部112aに設けられた取付軸456に弾性部材446を介して揺動可能に取付けられる。取付軸456は、第2の桁部112の取付部112aに固定される。また、リンク部材114は、第2の桁部112の取付部112bに設けられた取付軸462に取付けられる。取付軸462は、リンク部材114に設けられたベアリング472に支持される。ベアリング472は、ベアリング472の回転中心から鞍乗型車両1の左右方向LRに伸びる直線を中心軸としてリンク部材114が回転するように設けられる。取付軸462は、第2の桁部112の取付部112bに固定される。
【0081】
取付軸451、452、455、456、461及び462は、例えばピンである。取付軸451、452、455、456、461及び462は、例えばボルトであってもよい。取付軸451、452、455、456、461及び462の軸線は、鞍乗型車両1の左右方向LRに伸びる。弾性部材441、442、445及び446は、例えば内外筒ブッシュである。
発電用エンジン41の取付部431及び432は、鞍乗型車両1の前後方向FBにおいて、発電用エンジン41の前部の領域に設けられる。取付部431は、鞍乗型車両1の左右方向LRにおいて、発電用エンジン41の左方向Lに配置される。取付部432は、鞍乗型車両1の左右方向LRにおいて、発電用エンジン41の右方向Rに配置される。第1の桁部111の取付部111a及び111bは、鞍乗型車両1の左右方向LRにおいて、第1の桁部111の右方向Rを向いた面に設けられる。第2の桁部112の取付部112a及び112bは、鞍乗型車両1の左右方向LRにおいて、第2の桁部112の左方向Lを向いた面に設けられる。
【0082】
リンク部材536は、発電ユニット40の発電用エンジン41の取付部433に設けられた取付軸453に弾性部材443を介して揺動可能に取付けられる。取付軸453は、発電用エンジン41の取付部433に固定される。また、リンク部材536は、ギアボックス53の取付部538aに設けられた取付軸457に弾性部材447を介して揺動可能に取付けられる。取付軸457は、ギアボックス53の取付部538aに固定される。また、リンク部材536は、ギアボックス53の取付部538bに設けられた取付軸463に取付けられる。取付軸463は、リンク部材536に設けられたベアリング473に支持される。ベアリング473は、ベアリング473の回転中心から鞍乗型車両1の左右方向LRに伸びる直線を中心軸としてリンク部材536が回転するように設けられる。取付軸463は、ギアボックス53の取付部538bに固定される。
リンク部材537は、発電ユニット40の発電用エンジン41の取付部434に設けられた取付軸454に弾性部材444を介して揺動可能に取付けられる。取付軸454は、発電用エンジン41の取付部434に固定される。また、リンク部材537は、ギアボックス53の取付部539に設けられた取付軸464に取付けられる。取付軸464は、リンク部材537に設けられたベアリング474に支持される。ベアリング474は、ベアリング474の回転中心から鞍乗型車両1の左右方向LRに伸びる直線を中心軸としてリンク部材537が回転するように設けられる。取付軸464は、ギアボックス53の取付部539に固定される。
【0083】
取付軸453、454、457、463及び464は、例えばピンである。取付軸453、454、457、463及び464は、例えばボルトであってもよい。取付軸453、454、457、463及び464の軸線は、鞍乗型車両1の左右方向LRに伸びる。弾性部材443、444、447は、例えば内外筒ブッシュである。
発電用エンジン41の取付部431及び432は、鞍乗型車両1の上下方向UD及び前後方向FBにおいて、発電用エンジン41の下部及び前部の領域に設けられる。発電用エンジン41の取付部433は、鞍乗型車両1の上下方向UD及び前後方向FBにおいて、発電用エンジン41の上部及び後部の領域に設けられる。発電用エンジン41の取付部434は、鞍乗型車両1の上下方向UD及び前後方向FBにおいて、発電用エンジン41の下部及び後部の領域に設けられる。ギアボックス53の取付部538a、538b及び539は、ギアボックス53の前部の領域に設けられる。
【0084】
リンク部材114は、ベアリング471に支持された取付軸461及びベアリング472に支持された取付軸462から鞍乗型車両1の左右方向LRに伸びる直線を中心軸として回転する。リンク部材536は、ベアリング473に支持された取付軸463から鞍乗型車両1の左右方向LRに伸びる直線を中心軸として回転する。リンク部材537は、ベアリング474に支持された取付軸464から鞍乗型車両1の左右方向LRに伸びる直線を中心軸として回転する。また、リンク部材114は、弾性部材441及び442を介して発電用エンジン41に取付けられる。リンク部材536及び537は、それぞれ弾性部材443及び444を介して発電用エンジン41に取付けられる。従って、発電用エンジン41は、重心Gから鞍乗型車両1の左右方向LRに伸びる直線を中心軸として回転する。これにより、鞍乗型車両1の発電用エンジン41は、鞍乗型車両1の上下方向UD及び前後方向FBにおける振動がフレーム構造体10に伝達することを抑制することができる。また、発電用エンジン41は、バランサ416により、発電用エンジン41の一次慣性力を抑制する。従って、本実施形態の鞍乗型車両1は、リンク部材114、536及び537と、バランサ416とを組み合わせることにより、効率的に発電用エンジン41の振動が車両フレーム構造体10に伝達されるのを抑制することができる。
【0085】
リンク部材114は、弾性部材445及び446を介してフレーム本体110に取付けられる。リンク部材536は、弾性部材447を介してギアボックス53に取付けられる。これにより、鞍乗型車両1の発電用エンジン41は、弾性部材445~447が過度の揺動を抑制するストッパとなり、鞍乗型車両1の上下方向UD及び前後方向FBに大きく揺動することを抑制することができる。
【0086】
ギアボックス53は、前方向及び後方向を含む鞍乗型車両1の前後方向FBにおいて、フレーム本体110の後端部に、4点でリジッドに固定される。詳細には、
図7乃至
図9のギアボックス53の取付部561から564の4点において、フレーム本体110が、ゴムブッシュ等の弾性部材を介することなく、ギアボックス53と接触して固定される。ここで、取付部561は、ギアボックス53の左上部に設けられ、取付部562は、ギアボックス53の左下部に設けられる。また、取付部563は、ギアボックス53の右上部に設けられ、取付部564は、ギアボックス53の右下部に設けられる。支持方法は、例えばギアボックス53の取付部561から564において、フレーム本体110をボルトで固定する。
【0087】
ギアボックス53は、フレーム本体110にリジッドに固定されるため、フレーム本体110と一体となってフレーム構造体11を構成する。これにより、ギアボックス53は、フレーム本体110とともに、鞍乗型車両1の骨格を形成し、前輪22、後輪32、及び発電ユニット40からの荷重を受けることができる。
【0088】
鞍乗型車両1では、駆動ユニット50のギアボックス53が、フレーム本体110に弾性部材を介することなくリジッドに固定されることによりフレーム構造体11を構成する。これにより、鞍乗型車両1は、ギアボックス53をフレーム構造体11の剛性メンバーとして使用でき、鞍乗型車両の剛性を高めることができる。
また、鞍乗型車両1では、駆動輪である後輪32が、駆動モータ51から出力されたパワーのみによって駆動され、発電用エンジン41から出力されたパワーが伝達されない。これに対し、発電用エンジン41は、フレーム本体110に揺動可能に支持されており、発電ユニットの発電機42と駆動モータ51とは、可撓性を有し振動を伝達しない電力伝送媒体により接続されている。従って、鞍乗型車両1は、フレーム構造体11の剛性を高めつつ、発電用エンジン41の振動が、フレーム本体110及び駆動ユニット50を含むフレーム構造体11を介して鞍乗型車両全体に伝わることを抑制することができる。
【0089】
図7乃至
図9のギアボックス53に設けられた取付部571及び572の2点において、リアアーム31が、ギアボックス53に揺動可能に支持される。ここで、取付部571は、ギアボックス53の左部に設けられ、取付部572は、ギアボックス53の右部に設けられる。詳細には、動力伝達機構531の出力軸534が取付部571及びリアアーム31を貫通している。また、取付ボルト573(
図8参照)が、リアアーム31を貫通し、ギアボックスの取付部572に設けられた取付穴に挿入される。
【0090】
[第2実施形態]
図10は、本発明の第2実施形態に係る鞍乗型車両200を示す外観図である。ここで、
図10(a)は鞍乗型車両200の左側面図であり、
図10(b)は、鞍乗型車両200のエンジンマウントの一部を拡大して示す右側面図である。
図10は、鞍乗型車両200の左の車体カバーを外した状態を示している。本実施形態と第1実施形態に係る鞍乗型車両1とは、駆動ユニット250の構成並びにフレーム本体2110と発電ユニット240及び駆動ユニット250との支持方法において異なる。以下、本実施形態と第1実施形態との差異についてのみ説明する。
【0091】
本実施形態において、車両フレーム構造体210は、フレーム構造体211と、リアアーム231とにより構成される。また、フレーム構造体211は、フレーム本体2110のみから構成される。リアアーム231は、揺動可能にフレーム本体2110に支持される。リアアーム231は、後輪232を回転可能に支持し、フレーム構造体211に支持部233を介して支持部233周りに揺動可能に支持される。ギアボックス253は、リアアーム231に取り付けられる。また、ギアボックス253は、リアアーム231を構成してもよい。駆動モータ251は、ギアボックス253、即ちリアアーム231に取付けられる。駆動モータ251は、電力伝送媒体246に電気的に接続された発電ユニット240の発電機242から、エンジンパワーから変換された電力を、電力伝送媒体246を介し供給される。本実施形態において、駆動ユニット250は、フレーム本体2110に固定されない。即ち、本実施形態において、駆動ユニット250は、フレーム構造体211を構成しない。
【0092】
発電ユニット240の発電用エンジン241は、フレーム構造体211であるフレーム本体2110の少なくとも3点、本実施形態においては4点リンク部材を介して取付けられる。
【0093】
リンク部材2114は、鞍乗型車両200の左右方向LRにおいて、第1の桁部2111と、第2の桁部2112との間に配置される。本実施形態の例に示すリンク部材2114は、鞍乗型車両
200の左右方向LRにおいて相対的に左に配置された第1の桁部2111の位置から相対的に右に配置された第2の桁部2112の位置まで、左右方向LRに延びる部材である。
図10(a)に示すように、リンク部材2114は、発電ユニット240の発電用エンジン241の取付部2431に設けられた取付軸2451に弾性部材2441を介して揺動可能に取付けられる。取付軸2451は、発電用エンジン241の取付部2431に固定される。また、リンク部材2114は、第1の桁部2111の取付部2111aに設けられた取付軸2455に弾性部材2445を介して揺動可能に取付けられる。取付軸2455は、第1の桁部2111の取付部2111aに固定される。また、リンク部材2114は、第1の桁部2111の取付部2111bに設けられた取付軸2461に取付けられる。取付軸2461は、リンク部材2114に設けられたベアリング2471に支持される。ベアリング2471は、ベアリング2471の回転中心から鞍乗型車両200の左右方向LRに伸びる直線を中心軸としてリンク部材2114が回転するように設けられる。取付軸2461は、第1の桁部2111の取付部2111bに固定される。
【0094】
また、
図10(b)に示すように、リンク部材2114は、発電ユニット240の発電用エンジン241の取付部2432に設けられた取付軸2452に弾性部材2442を介して揺動可能に取付けられる。取付軸2452は、発電用エンジン241の取付部2432に固定される。また、リンク部材2114は、第2の桁部2112の取付部2112aに設けられた取付軸2456に弾性部材2446を介して揺動可能に取付けられる。取付軸2456は、第2の桁部2112の取付部2112aに固定される。また、リンク部材2114は、第2の桁部2112の取付部2112bに設けられた取付軸2462に取付けられる。取付軸2462は、リンク部材2114に設けられたベアリング2472に支持される。ベアリング2472は、ベアリング2472の回転中心から鞍乗型車両200の左右方向LRに伸びる直線を中心軸としてリンク部材2114が回転するように設けられる。取付軸2462は、第2の桁部2112の取付部2112bに固定される。
【0095】
図10(a)に示すように、リンク部材2115は、発電ユニット240の発電用エンジン241の取付部2433に設けられた取付軸2453に弾性部材2443を介して揺動可能に取付けられる。取付軸2453は、発電用エンジン241の取付部2433に固定される。また、リンク部材2115は、第1の桁部2111の取付部2111cに設けられた取付軸2457に弾性部材2447を介して揺動可能に取付けられる。取付軸2457は、第1の桁部2111の取付部2111cに固定される。また、リンク部材2115は、第1の桁部2111の取付部2111dに設けられた取付軸2463に取付けられる。取付軸2463は、リンク部材2115に設けられたベアリング2473に支持される。ベアリング2473は、ベアリング2473の回転中心から鞍乗型車両200の左右方向LRに伸びる直線を中心軸としてリンク部材2115が回転するように設けられる。取付軸2463は、第1の桁部2111の取付部2111dに固定される。
【0096】
図10(a)に示すように、リンク部材2116は、発電ユニット240の発電用エンジン241の取付部2434に設けられた取付軸2454に弾性部材2444を介して揺動可能に取付けられる。取付軸2454は、発電用エンジン241の取付部2434に固定される。また、リンク部材2116は、第1の桁部2111の取付部2111eに設けられた取付軸2464に取付けられる。取付軸2464は、リンク部材2116に設けられたベアリング2474に支持される。ベアリング2474は、ベアリング2474の回転中心から鞍乗型車両200の左右方向LRに伸びる直線を中心軸としてリンク部材2116が回転するように設けられる。取付軸2464は、第1の桁部2111の取付部2111eに固定される。
【0097】
取付軸2451~2457及び2461~2464は、例えばピンである。取付軸2451~2457及び2461~2464は、例えばボルトであってもよい。取付軸2451~2457及び2461~2464の軸線は、鞍乗型車両200の左右方向LRに伸びる。弾性部材2441~2447は、例えば内外筒ブッシュである。発電用エンジン241の取付部2431及び2432は、鞍乗型車両200の上下方向UD及び前後方向FBにおいて、発電用エンジン241の下部及び前部の領域に設けられる。発電用エンジン241の取付部2433は、鞍乗型車両200の上下方向UD及び前後方向FBにおいて、発電用エンジン241の上部及び後部の領域に設けられる。発電用エンジン241の取付部2434は、鞍乗型車両200の上下方向UD及び前後方向FBにおいて、発電用エンジン241の下部及び後部の領域に設けられる。取付部2431は、鞍乗型車両200の左右方向LRにおいて、発電用エンジン241の左方向Lに配置される。取付部2432は、鞍乗型車両200の左右方向LRにおいて、発電用エンジン241の右方向Rに配置される。
【0098】
リンク部材2114は、ベアリング2471に支持された取付軸2461及びベアリング2472に支持された取付軸2462から鞍乗型車両200の左右方向LRに伸びる直線を中心軸として回転する。リンク部材2115は、ベアリング2473に支持された取付軸2463から鞍乗型車両200の左右方向LRに伸びる直線を中心軸として回転する。リンク部材2116は、ベアリング2474に支持された取付軸2464から鞍乗型車両200の左右方向LRに伸びる直線を中心軸として回転する。また、リンク部材2114~2116は、それぞれ弾性部材2441~2444を介して発電用エンジン241に取付けられる。従って、鞍乗型車両200の発電用エンジン241は、鞍乗型車両200の上下方向UD及び前後方向FBにおける振動がフレーム構造体211(即ちフレーム本体2110)に伝達することを抑制することができる。また、発電用エンジン241は、バランサを設けることにより、発電用エンジン241の一次慣性力を抑制する。従って、本実施形態の鞍乗型車両200は、リンク部材2114~2116と、発電用エンジンのバランサとを組み合わせることにより、発電用エンジン241の振動がフレーム構造体211に伝達されるのを効率的に抑制することができる。
【0099】
リンク部材2114は、弾性部材2445及び2446を介してフレーム本体2110に取付けられる。リンク部材2115は、弾性部材2447を介してフレーム本体2110に取付けられる。これにより、鞍乗型車両200の発電用エンジン241は、弾性部材2445~2447が過度の揺動を抑制するストッパとなり、鞍乗型車両200の上下方向UD及び前後方向FBに大きく揺動することを抑制することができる。
【0100】
本実施形態において、コントロールユニット252は、駆動ユニット250に含まれてもよいし、含まれなくてもよい。即ち、本実施形態において、コントロールユニット252は、駆動ユニット250と一体となってリアアーム231を構成してもよいし、鞍乗型車両200のフレーム本体2110に取付けられてもよい。
【0101】
(変形例)
駆動ユニット250は、ギアボックス253を含まないように構成できる。本実施形態の変形例において、駆動モータ251は、リアアーム231に取付けられ、駆動モータ251の出力軸に後輪232の中心軸が直接に接続される。即ち、駆動モータ251は、後輪232のインホイールモータとして構成される。
【符号の説明】
【0102】
1、200 鞍乗型車両
10、210 車両フレーム構造体 11、211 フレーム構造体
21、221 フロントフォーク
22、222 前輪
31、231 リアアーム
32、232 後輪
40、240 発電ユニット
41、241 発電用エンジン
42、242 発電機
50、250 駆動ユニット
51、251 駆動モータ
52、252 コントロールユニット
53、253 ギアボックス
60、260 バッテリ
110、2110 フレーム本体