IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ カーベーアー−ノタシ ソシエテ アノニムの特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-18
(45)【発行日】2023-08-28
(54)【発明の名称】ポリマー証書物品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B42D 25/405 20140101AFI20230821BHJP
   B42D 25/29 20140101ALI20230821BHJP
   B42D 25/328 20140101ALI20230821BHJP
   B42D 25/318 20140101ALI20230821BHJP
   B42D 25/378 20140101ALI20230821BHJP
   B42D 25/36 20140101ALI20230821BHJP
【FI】
B42D25/405
B42D25/29
B42D25/328
B42D25/318
B42D25/378
B42D25/36
【請求項の数】 45
(21)【出願番号】P 2021543474
(86)(22)【出願日】2019-01-30
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-20
(86)【国際出願番号】 EP2019052244
(87)【国際公開番号】W WO2020156656
(87)【国際公開日】2020-08-06
【審査請求日】2022-01-21
(73)【特許権者】
【識別番号】591031371
【氏名又は名称】ケーニッヒ アンド バウアー バンクノウトゥ ソリューション ソシエテ アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ブレソフスキー、マイケル
(72)【発明者】
【氏名】シェーデ、ヨハンネス
(72)【発明者】
【氏名】シュチュヴァルト、ロベルト
【審査官】飯野 修司
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/094761(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0177859(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0322222(US,A1)
【文献】特表2004-525414(JP,A)
【文献】特開2012-214717(JP,A)
【文献】特開2011-099064(JP,A)
【文献】特開平07-068980(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B42D 25/405
B42D 25/29
B42D 25/328
B42D 25/318
B42D 25/378
B42D 25/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a.再生セルロースの非繊維性基材層を備える透明フィルムをオフセット印刷装置に導入するステップと、
b.第1のオフセット印刷ステップにより、前記透明フィルムの少なくとも一方の表面の少なくとも一部の上に不透明化層を配置するステップと、
c.第2のオフセット印刷ステップにより、前記不透明化層の少なくとも一部の上に印刷情報を配置してオフセット印刷されたフィルムを得るステップと
を含む、証書物品の製造方法。
【請求項2】
前記第1のオフセット印刷ステップ及び前記第2のオフセット印刷ステップが、単一のオフセット印刷装置で実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1のオフセット印刷ステップ及び前記第2のオフセット印刷ステップが、異なるオフセット印刷装置で実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第1及び/または第2のオフセット印刷ステップが、前記透明フィルムのそれぞれの面に同時に印刷する同時オフセット印刷ステップである、請求項1~3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記オフセット印刷装置に導入される前記透明フィルムが、透かし、感光性添加剤、タガント、マーカー、または他の証書機能を有していない、請求項1~4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記不透明化層または前記透明フィルムへの帯電防止剤の添加を排除する、請求項1~5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記証書物品のいずれの部分への帯電防止剤の添加も排除する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記オフセット印刷装置に導入される前記透明フィルムが、抗ブロッキング剤を含むかまたは抗ブロッキング剤を含むコーティング層を備える、請求項1~7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記オフセット印刷装置に導入される前記透明フィルムが、前記基材層の少なくとも一方の表面上にインク受容層をさらに含み、前記インク受容層がポリマーコーティング層である、請求項1~8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記オフセット印刷装置に導入される前記透明フィルムが、10%以下、もしくは5%以下、もしくは4%以下、又は2.5%以下のヘイズを示す、請求項1~9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記オフセット印刷装置に導入される前記透明フィルムが着色または染色されている、請求項1~10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記透明フィルムのそれぞれの表面の少なくとも一部の上に不透明化層が配置されている、請求項1~11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記透明フィルムの表面の90%以下、または80%以下、または70%以下、または60%以下に不透明化層が印刷される、請求項1~12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
前記透明フィルムの表面が、1つ以上の不透明化部分であって、その上に印刷された不透明化層が配置された前記不透明化部分を有し、且つ1つ以上の非不透明化部分であって、その上に印刷された不透明化層が配置されていない前記非不透明化部分をさらに有し、印刷情報が、1つ以上の前記非不透明化部分の上に直接配置される、請求項1~13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
前記透明フィルム及び不透明化層(複数可)を備える集合体の、前記不透明化層(複数可)が存在する部分(複数可)における透過光学濃度が、少なくとも0.6、もしくは少なくとも0.8、又は少なくとも1.0である、請求項1~14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
前記不透明化層が、1種以上の不透明化剤及び/または白色化剤を含む、請求項1~15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
ステップ(a)~(c)の方法が、前記透明フィルムのウェブが前記オフセット印刷装置に供給されるリール・ツー・リールプロセスである、請求項1~16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
前記方法が、ステップ(c)の後に、オフセット印刷されたフィルムをシートに切断し、その後さらなる印刷情報及び/または証書機能を前記シート上に付与するステップをさらに含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
透明フィルムの個別のシートが前記オフセット印刷装置に供給される、枚葉プロセスである、請求項1~16のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
ステップ(c)の後に、前記オフセット印刷されたフィルムの一方のまたは両方の表面上にさらなる印刷情報を配置するステップをさらに含み、前記さらなる印刷情報が凹版印刷によって配置される、請求項1~19のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
前記印刷情報及び/または前記さらなる印刷情報が、1つ以上の画像、パターン、及び英数字を含むか、またはそれらからなる、請求項1~20のいずれかに記載の方法。
【請求項22】
ステップ(c)の後に、前記オフセット印刷されたフィルムの一方または両方の表面上に1つ以上の証書機能を配置するステップをさらに含む、請求項1~21のいずれかに記載の方法。
【請求項23】
前記1つ以上の証書機能が、印刷された署名または通し番号などのさらなる英数字情報;ホログラムなどの光学的証書機能(複数可);ならびに、光学的に可変のインク、磁性インク、及び/または蛍光インクを含む印刷された機能(特にスクリーン印刷された機能)から選択される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
ステップ(c)の後に、前記オフセット印刷されたフィルムの一方または両方の表面上に、ワニスなどの保護層を配置するステップをさらに含む、請求項1~23のいずれかに記載の方法。
【請求項25】
前記さらなる印刷情報及び/または証書機能及び/または保護層が、前記オフセット印刷されたフィルムのシートに付与され、前記シートを複数のより小さな断片に切断して、複数の証書物品を得るステップをさらに含む、請求項20~24のいずれかに記載の方法。
【請求項26】
前記証書物品が紙幣または有価証券である、請求項1~25のいずれかに記載の方法。
【請求項27】
前記証書物品の少なくとも一方の表面上に不透明化層が存在し、前記証書物品が1つ以上の窓領域を備え、但し、窓領域とは、オフセット印刷されたフィルムの両表面上に前記不透明化層が存在しない前記オフセット印刷されたフィルムの部分と定義される、請求項1~26のいずれかに記載の方法。
【請求項28】
前記1つ以上の窓領域が、前記オフセット印刷されたフィルムの表面積の少なくとも30%、又は少なくとも40%を構成する、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
印刷情報が、前記オフセット印刷されたフィルムの一方または両方の表面上の前記窓領域上に配置されている、請求項27または28に記載の方法。
【請求項30】
窓領域が前記証書物品の1つ以上の縁部に沿って延在し、特に、前記証書物品が長方形の紙幣であって、前記窓領域が前記長方形の紙幣の長縁部に沿って延在する前記紙幣である、請求項27~29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
前記窓領域の少なくとも一部が、10%以下、もしくは5%以下、もしくは4%以下、又は.5%以下のヘイズを示す、請求項27~30のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
前記窓領域のいずれも、前記証書物品上または他所で提供される証書デバイスを検証する、強化する、及び/または光学的に変化させるための手段として使用することができる機能を備えていない、請求項27~31のいずれかに記載の方法。
【請求項33】
不透明化層が前記証書物品の少なくとも一方の表面上に存在し、前記証書物品が1つ以上の半窓領域を備え、但し、半窓領域とは、オフセット印刷されたフィルムの部分であって、不透明化層が、前記オフセット印刷されたフィルムの第1の表面上には存在するが、前記オフセット印刷されたフィルムの第2の表面上には存在しない前記部分と定義される、請求項1~32のいずれかに記載の方法。
【請求項34】
前記証書物品の厚さが、10~250μm、もしくは少なくとも15μm、もしくは少なくとも30μm、もしくは少なくとも50μm、もしくは150μm以下、もしくは130以下、もしくは120μm以下、又は90μm以下である、請求項1~33のいずれかに記載の方法。
【請求項35】
前記再生セルロースの基材層が押出成形された再生セルロースの非繊維性層である、請求項1~34のいずれかに記載の方法。
【請求項36】
前記再生セルロースが、β(1→4)結合したD-グルコース単位の直鎖からなる、もしくは本質的に前記直鎖からなる、及び/または天然に存在するセルロースと化学的に同一である、請求項1~35のいずれかに記載の方法。
【請求項37】
前記証書物品が、証書デバイス、ならびに検証手段であって、前記検証手段を前記証書デバイスに登録することによって、前記証書デバイスを検査する及び/または検証するための前記検証手段を備えていない、請求項1~36のいずれかに記載の方法。
【請求項38】
前記証書物品が真正であることが、前記証書デバイスにとって外的であるデバイスまたは手段によってのみ検証可能である、請求項32又は37のいずれかに記載の方法。
【請求項39】
再生セルロースの非繊維性基材層を備える透明フィルムを備える紙幣であって、
(i)印刷された不透明化層が、前記透明フィルムの少なくとも一方の表面の少なくとも一部の上に配置され、
(ii)前記紙幣が1つ以上の窓領域を備え、但し、窓領域とは、印刷されたフィルムの両表面上に前記不透明化層が存在しない前記透明フィルムの部分と定義され、
(iii)前記窓領域が、その中に配置された印刷情報を備え、
(iv)印刷情報が、前記印刷された不透明化層の少なくとも一部の上に配置された
前記紙幣。
【請求項40】
請求項39に記載の紙幣であって、前記紙幣及び/または前記透明フィルム及び/または前記再生セルロースの基材層及び/または前記再生セルロースが請求項2~38のいずれかに規定されるとおりである前記紙幣。
【請求項41】
前記透明フィルムが、以下の特性、すなわち、
(i)10%以下、もしくは5%以下、もしくは4%以下、又は2.5%以下のヘイズと、
(ii)400~800nmの複屈折と、
(iii)少なくとも38ダイン、もしくは少なくとも40ダイン、又は少なくとも42ダインの表面エネルギーと、
(iv)25℃及び75%の相対湿度において、20~40、もしくは25~35、又は28~32g/m/24時間の範囲、ならびに/または、38℃及び90%の相対湿度において、110~130、もしくは115~125、又は118~122g/m/24時間の範囲の水蒸気透過性と
の1つ以上、又はすべてを示す、請求項39または40に記載の紙幣。
【請求項42】
前記透明フィルムが、前記基材層の少なくとも一方の表面上にインク受容層をさらに備え、前記インク受容層がポリマーコーティング層である、請求項39~41のいずれかに記載の紙幣。
【請求項43】
請求項39~42のいずれかに記載の紙幣であって、1つ以上の透明な窓領域が前記紙幣の表面積の少なくとも30%を構成する、及び/または前記透明な窓領域(複数可)が前記窓領域中に配置された証書機能を備える、及び/または前記透明な窓領域(複数可)が前記紙幣の1つ以上の縁部に沿って延在する、前記紙幣。
【請求項44】
複数の異なる種類の証書物品の製造方法であって、それぞれの種類の証書物品が、
a.再生セルロースの非繊維性基材層を備える透明フィルムをオフセット印刷装置に導入するステップと、
b.第1のオフセット印刷ステップにより、前記透明フィルムの少なくとも一方の表面の少なくとも一部の上に不透明化層を配置するステップと、
c.第2のオフセット印刷ステップにより、前記不透明化層の少なくとも一部の上に印刷情報を配置するステップと
を含む方法によって製造され、
ステップ(a)において前記オフセット印刷装置に供給される同一の種類の透明フィルムが、前記複数の異なる種類の証書物品のそれぞれのベースフィルムとして使用され、その結果、前記複数の異なる種類の証書物品は、ステップ(a)に続く加工ステップによって付与される機能のみが互いに異なる、前記方法。
【請求項45】
複数の異なる種類の証書物品の製造方法であって、それぞれの種類の証書物品が、
a.再生セルロースの非繊維性基材層を備える透明フィルムをオフセット印刷装置に導入するステップと、
b.第1のオフセット印刷ステップにより、前記透明フィルムの少なくとも一方の表面の少なくとも一部の上に不透明化層を配置するステップと、
c.第2のオフセット印刷ステップにより、前記不透明化層の少なくとも一部の上に印刷情報を配置するステップと
を含む方法によって製造され、
ステップ(c)から得られる同一の種類のオフセット印刷されたフィルムが、前記複数の異なる種類の証書物品のそれぞれのベースフィルムとして使用され、その結果、前記複数の異なる種類の証書物品は、後続の加工ステップによって、ステップ(c)から得られる前記オフセット印刷されたフィルムに付与される機能のみが互いに異なる、前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、再生セルロースからの証書物品、特に紙幣、の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
紙幣(banknotes)(またはカレンシー・ノート(currecy notes))などのポリマー証書物品には、それらの紙製の対応する物品に比べていくつかの利点がある。例えば、ポリマー証書物品には、紙製の証書物品では一般的に不可能な証書機能(透明な窓領域など)を組み込むことができる。ポリマー証書物品は、紙製の証書物品よりも寿命が大幅に長く、これにより環境への影響を低減し、製造及び交換の総コストを削減することができる。
【0003】
近年、ポリマー紙幣の人気が高まっている。現在流通しているポリマー紙幣は、製造時に、ポリプロピレンをフィルムに押出成形し、該フィルムを直交する2つの方向(長さ方向及び横方向)に延伸することによって形成される、二軸延伸ポリプロピレン(BOPP)フィルムから製造される。BOPPフィルムから紙幣を製造する場合、通常、従来のグラビア印刷工程によって、不透明化層が上記フィルムの両表面上に配置され、該工程では、上記フィルムのそれぞれの表面上に少なくとも1層の白色インクが塗布される。しかしながら、BOPPフィルムは特定の加工上の難点を伴う。
【0004】
例えば、BOPPは電気絶縁体であるために、これを処理する際、例えば、巻き戻し時、コーティング時、積層時、及び印刷時に、BOPPフィルムの表面の帯電の可能性があり、これにより加工装置中で詰まりや貼り付きなどの問題が発生する可能性がある。帯電を低減するために、帯電防止剤がコーティング層、従来は上述の不透明化層、に導入される。しかしながら問題が残っている。透明な窓領域は、評判がよく有用なポリマー紙幣の証書としての特徴であるが、帯電防止剤を含む不透明なコーティングは、これらの領域には必然的に存在しない。BOPP紙幣の窓領域が帯電すると、下流の製造時、処理時、及び取り扱い時、例えば印刷時やATM機(二重の払出しや詰まりが発生する可能性がある)において詰まりや貼り付きが発生する可能性がある。そのため、BOPP紙幣の窓領域の大きさ及び占める割合は非常に限られる。
【0005】
BOPPフィルムが不透明化され、帯電防止剤で処理された後、該フィルム上に、当該の紙幣に所要の情報、画像、及び証書機能が印刷ならびに/または塗布される。このように、従来のBOPP紙幣の製造には、3つの異なる段階、すなわち、(i)BOPPフィルムの製造、(ii)(i)に続く、不透明化及び帯電防止剤の導入、ならびに(iii)(ii)に続く、紙幣固有の情報の付与が含まれる。
【0006】
BOPPは生分解性ではなく、環境に対して悪影響を及ぼす。BOPP物品は、細断し、溶融してペレット化し、次いで新しい製品に再成形することによってリサイクルすることはできるが、いまだに、寿命が尽きたときには、比較的小さな割合のBOPP物品しかリサイクルされず、そのBOPPをリサイクルすることができる回数には制限があるのが現状である。さらに、微粒子の形態の非生分解性プラスチックが食物連鎖に入り込むことが知られている。より環境に優しく、持続可能な紙幣が必要とされている。
【0007】
上述の問題の少なくとも1つに対処することが望ましい。特に、例えば、加工ステップの数を低減することによって、より効率的な紙幣または他の証書物品の製造方法を提供することが望ましい。さらに、製造工程の効率を改善するため、下流の加工及び取り扱いを改善するため、及び証書物品中の窓領域をより大きくすることを可能にするために、帯電の問題のない紙幣または他の証書物品を提供することが望ましい。より環境に優しい紙幣を提供することも望ましい。
【発明の概要】
【0008】
本発明の第1の態様によれば、
a.再生セルロースの非繊維性基材層を備える透明フィルムをオフセット印刷装置に導入するステップと、
b.第1のオフセット印刷ステップにより、上記フィルムの少なくとも一方の表面の少なくとも一部の上に不透明化層を配置するステップと、
c.第2のオフセット印刷ステップにより、上記不透明化層の少なくとも一部の上に印刷情報を配置するステップと
を含む、証書物品の製造方法が提供される。
【0009】
証書物品は、有価証券、公債証書、株券、切手、納税証明書、身分証明書(パスポートなど)、セキュリティタグ、セキュリティバッジ、及び紙幣から選択することができる。上記証書物品は、シート、特に紙幣または有価証券の形態であることが好ましく、上記証書物品は紙幣であることが好ましい。
【0010】
上記証書物品の厚さは、好ましくは、約10~約250μm、好ましくは少なくとも15μm、好ましくは少なくとも30μm、好ましくは少なくとも約50μm、好ましくは約150μm以下、好ましくは約130以下、好ましくは約120μm以下、好ましくは約90μm以下、好ましくは約55~約80μmである。
【0011】
本発明の方法は、証書物品製造の効率を向上させ、上記証書物品がより大きな窓領域を備えることを可能にし、且つ環境に対する影響を低減しながらそれらを実現する点で有利である。
【0012】
本明細書では、用語「不透明化」とは、透明フィルムの少なくとも一方の表面の少なくとも一部を、該部分を不透明にする材料でコーティングすることを意味する。「不透明化層」は、透明フィルムの少なくとも一方の表面の少なくとも一部を覆い、該部分を不透明にする材料の層である。上記透明フィルムの一部を不透明にする上記材料は、一般的には溶媒もしくはビヒクル中に溶解または懸濁した、1種以上の不透明化剤及び/または白色化剤を含むことが好ましい。好適な不透明化剤及び白色化剤は当技術分野で周知であり、好ましくは二酸化チタン、硫酸バリウム、及び炭酸カルシウムから、好ましくは二酸化チタンから選択される。好適なビヒクルも同様に当技術分野で周知であり、ニトロセルロースが挙げられる。
【0013】
本明細書では、用語「印刷情報」とは、特に、1つ以上の画像、パターン、及び英数字から選択される情報をいう。上記印刷情報の少なくとも一部は、好ましくは、偽造をより困難にするために証書物品に付加される偽造防止機能である。かかる印刷情報は多くの場合複雑且つ精緻であり、そのことにより、オフセット印刷が印刷情報を組み込むための特に好適な技法となっている。かかる印刷情報の一般的な例としては、
(i)模様出し旋盤細工(例えば、組み合わさって円形のデザインを繰り返す2つ以上の湾曲した帯から形成される装飾パターンであるギョーシェ彫り)、
(ii)マイクロプリント(極めて小さい、通常、肉眼では識別できないほど小さい文字を使用)、
(iii)光学的に可変の色が変化するインクを含む印刷情報、
(iv)磁性インクを含む印刷情報、
(v)蛍光インクを含む印刷情報、
(vi)通し番号(多くの場合チェック数字を含む)、
(vii)複写防止マーク(公衆が利用可能な印刷ハードウェア及びソフトウェアに、証書物品中に備えられた複写防止マークを検知し、それらのマークを備えた任意の物体の複製を防止する、フィルタリング機能を付加することができる)、ならびに
(viii)上記証書物品の両表面の印刷情報の位置合わせ(例えば、紙幣は通常、再現することが困難な、当該紙幣のそれぞれの表面上の印刷の間で精細な位置合わせをして印刷される)
が挙げられる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
透明フィルム
上記透明フィルムは自立性フィルムであり、自立性フィルムとは、支持基材なしで独立に存在できることを意味する。
【0015】
再生セルロースフィルムは、天然に存在するセルロースを可溶性セルロース誘導体に変換し、続いて再生してフィルムを形成することによって製造することができる。上記再生セルロースフィルムは、天然セルロースが塩基、例えば水酸化ナトリウム、及び二硫化炭素で処理されて、ビスコースとも呼ばれるセルロースキサントゲン酸塩を形成するビスコースプロセスによって製造されることが好ましい。次いで、ビスコース溶液がスリットを通して希硫酸と硫酸ナトリウムの再生浴中に押し出され、ビスコースをセルロースに再変換する。本発明で使用される再生セルロース基材層を調製するための好ましいプロセスは、より詳細に後述する。
【0016】
本発明の原料として使用されるセルロース含有材料は、木材材料を含む、木材材料から本質的になる、または木材材料からなることが好ましい。上記セルロース含有材料は、木材パルプを含む、木材パルプから本質的になる、または木材パルプからなることが好ましい。
【0017】
セルロース含有パルプ(好ましくは木材パルプ)を熱アルカリ溶液(好ましくは苛性ソーダ溶液)と混合してスラリーを形成し、これを浸漬工程に供し、該工程の間にセルロース構造が膨潤し、ポリマー鎖がさらに離れる。
【0018】
次いで、このスラリーを、例えば、約10%未満、一般的には約5%未満、一般的には約4%のセルロースの開始濃度から、任意且つ適宜の手段によって、好ましくはスラリー圧縮機を使用して、好ましくは約30~約40%、好ましくは少なくとも約35%、一般的には約36%の濃度まで濃縮する。過剰のアルカリ性溶液は浸漬工程に戻すことができる。得られた濃縮物(一般的には圧縮ケーキと呼ばれる)を、通常は細断によって崩し、アルカリセルロースを形成する。アルカリセルロースは反応性が高く、多くの水溶性セルロース誘導体の製造の出発点である。
【0019】
セルロースはグルコースのポリマーであり、鎖長(または重合度(DP))は可溶性セルロース溶液の粘度に影響を与える。上記アルカリセルロースの鎖長を、空気中で、好ましくは約45℃及び50%RHでエージングすることによって調整することが好ましい。エージングプロセス中に、ポリマー鎖中のグリコシド結合が切断され、より短いポリマー鎖の生成が起こり、これは生分解のプロセスと類似の機構である。
【0020】
上記アルカリセルロースを、真空下で二硫化炭素(CS)と、通常は約50分間反応させる。セルロース鎖上のヒドロキシル基とCSとの反応によってセルロースキサンタートが形成される。キサント化が完結したところで、生成物をアルカリ(好ましくは希苛性ソーダ溶液)に溶解してビスコ-スを形成させ、このビスコ-スは通常約9.0%のセルロースと約6.0%の水酸化ナトリウムである。この液体は粘稠であり(60~90ポイズ)で、非ニュートン流体であり、不安定である(25℃において約2日で凝固する)。このビスコースをろ過し、好ましくは約8μmを超える粒子を除去する。
【0021】
上記ビスコースは、その安定性を低下させるために、制御された温度で約15時間保存されることが好ましい。このエージングステップの間に、キサンタート置換基がこのビスコース中の遊離苛性ソーダと反応する。キサンタート基の数が減少するにつれて、上記ビスコースはより容易に凝固する。
【0022】
上記ビスコースは、約43℃の、硫酸ナトリウム(好ましくは約20%)及び硫酸(好ましくは約14%)の溶液が入った凝固浴の方向を向いた、下向きの押出リップを有するダイへと一定速度で押出される。押出されたフィルムの厚さは、通常、最大で約350μm、例えば、250~350μmである。上記の酸とキサンタートとの反応によりセルロースが沈殿する。不純物を含むセルロースのキャストシートは、好ましくは、逐次的により弱くなる酸/硫酸塩混合物が入った複数の浴を通過し、それにより、キサンタートとの反応が完結し、セルロースフィルムが酸性化される。
【0023】
次いで、上記の再生セルロースフィルムを水で、好ましくは約95℃の熱水中で洗浄して、残留する酸、硫酸塩、及び二硫化炭素を除去する。次に、洗浄液のpHを約12に高めて、残留するいずれの硫黄化合物をも溶解し、その後さらに熱水で洗浄することが好ましい。
【0024】
次いで上記再生セルロースフィルムをより低温の水で洗浄し、次に次亜塩素酸ナトリウムの溶液(好ましくは弱い溶液)と接触させ、それによって残留する硫黄化合物を分解し、不純物(例えば残留する鉄化合物)を溶解することが好ましい。次いで、このフィルムを洗浄し、残留する次亜塩素酸塩を除去して、再生セルロースフィルムが得られる。
【0025】
任意選択で、上記再生セルロースフィルムを、当技術分野で公知の、従来の染料及び着色料を使用して、綿もしくはセルロース繊維(レーヨンなど)の場合のように、染色または着色することができる。粉末及び/または液体染料を使用することができる。染色または着色は、好ましくは、上記フィルムを染料溶液が入った一連の熱浴を通過させることによって行われる。次いで、残留する染料をフィルムから洗い流す。
【0026】
上記再生セルロースフィルムは可塑剤で処理またはコーティングされ、これにより上記再生セルロースフィルムの柔軟性が改善されることが好ましい。好適な可塑剤は当技術分野において周知であり、例えばグリコール及び尿素である。
【0027】
上記再生セルロースフィルムは抗ブロッキング剤で処理またはコーティングされ、これにより、上記再生セルロースフィルムの取り扱い性、滑り特性、及び巻取り性が改善されることが好ましい。抗ブロッキング剤は当技術分野で周知である。本発明で使用するための好ましい抗ブロッキング剤はシリカである。上記抗ブロッキング剤は、好ましくは、適宜のビヒクル中の粒子分散液の形態であり、好ましくは、シリカ分散液の形態である。
【0028】
任意選択で、上記再生セルロースフィルムはアンカー樹脂で処理またはコーティングされ、これにより、その後に付与される層の接着性及び強度が向上する。好適なアンカー樹脂は当技術分野で周知であり、尿素-ホルムアルデヒド樹脂及びメラミン-ホルムアルデヒド樹脂から選択されることが好ましい。
【0029】
したがって、再生フィルムは、該フィルムの一方もしくはそれぞれの表面上に、可塑剤及び/または抗ブロッキング剤、及び任意選択でアンカー樹脂の、好ましくは、可塑剤及び抗ブロッキング剤及び任意選択でアンカー樹脂の、一実施形態において、可塑剤、抗ブロッキング剤、及びアンカー樹脂の、1層以上のコーティング層を有することが好ましい。上記再生フィルムは、該フィルムの一方もしくはそれぞれの表面上に、可塑剤及び/または抗ブロッキング剤、及び任意選択でアンカー樹脂、好ましくは可塑剤及び抗ブロッキング剤及び任意選択でアンカー樹脂の単一のコーティング層、ならびに任意選択で、可塑剤、抗ブロッキング剤、及びアンカー樹脂の単一のコーティング層を有することが好ましい。
【0030】
上記可塑剤成分、抗ブロッキング剤成分、及び/またはアンカー樹脂成分は、適宜のビヒクルまたはバインダー(一般的には、バインダーはポリマーバインダーである)中の溶液または分散液としての、上記成分(複数可)を含むコーティング組成物の形態で、上記再生セルロースフィルムの表面上に配置することができる。
【0031】
上記可塑剤成分、抗ブロッキング剤成分、及び/またはアンカー樹脂成分は、任意の従来の塗布技法を使用して、上記再生セルロースフィルムの表面上に配置することができる。これらの成分(複数可)は、逐次的にまたは同時に、好ましくは同時に配置することができる。例えば、上記成分(複数可)は、上記フィルムを、これらの成分(複数可)、好ましくはこれらの成分の混合物が入った浴中を通過させることによって、該フィルムの表面上に配置することができる。グラビアコーティングなどの従来のコーティング技法も使用することができる。コーティングまたはバニシングタワーを使用することができる。
【0032】
上記再生セルロースフィルムの一方もしくはそれぞれの表面上の、可塑剤、抗ブロッキング剤、及び/またはアンカー樹脂成分の上記コーティング層(複数可)の乾燥時の合計の厚さは、約0.1~約1.0μmの範囲であることが好ましい。
【0033】
次いで、上記再生セルロースフィルムを熱風中で、好ましくは張力下で乾燥して、約4~10%、好ましくは約5~8%の水分含有量を有するフィルムを得る。
【0034】
次に、上記プロセスによって製造された再生セルロース基材層は、通常、長さが最大で約12km、幅が約1300~約1600mmでリール上に巻き取られる。
【0035】
上記再生セルロースの基材層は非繊維状である。換言すれば、上記再生セルロースの基材層は如何なる繊維(例えば、再生セルロース繊維)も含まない。上記基材層は、好ましくは、押出成形された再生セルロースの非繊維状の層である。用語「繊維状」とは、高分子セルロース鎖を指すのではなく、例えば、綿などの天然に存在するセルロース繊維に見られるような、連鎖間の分子間力によって互いに結合して、数十本のポリマー鎖を含むセルロース繊維を形成する複数の高分子セルロース鎖によって形成された繊維を指すことが理解されよう。
【0036】
天然に存在するセルロースは、β(1→4)結合したD-グルコース単位の直鎖を含む、上記直鎖からなる、または上記直鎖から本質的になる。本発明で使用される再生セルロースは、β(1→4)結合したD-グルコース単位の直(すなわち、非分岐)鎖を含む、好ましくは、上記直鎖からなる、または上記直鎖から本質的になり、及び/または天然に存在するセルロースと化学的に同一である。したがって、本発明で使用される再生セルロースは、例えば、第三級アミンオキシドとの反応によるなどして、共有結合した化学ラジカルによって化学的に修飾された再生セルロースではない。したがって、上記再生セルロースは化学式(C10を有し、式中、nは重合度である。本発明の再生セルロース基材層において、好ましくは、nは、少なくとも約200、好ましくは少なくとも約250、好ましくは少なくとも約300、一般的には約350、且つ一般的には約1000未満、より一般的には約800未満、より一般的には約600未満、最も一般的には約400未満である。好ましくは、上記重合度は約320~約380である。
【0037】
上記再生セルロースの基材層は上記透明フィルムと同一の広がりをもつ。換言すれば、上記再生セルロースの基材層の長さ及び幅の寸法は、上記透明フィルムの長さ及び幅の寸法とそれぞれ同一である。
【0038】
本方法のステップ(a)において上記オフセット印刷装置に導入される透明フィルムは、好ましくは、上記再生セルロースの基材層の一方または両方の表面上にインク受容層を備える。上記インク受容層は、その後に塗布されるインクの上記再生セルロース基材層への接着性を向上させる。上記インク受容層は、好ましくは、ニトロセルロース、酢酸ビニル/塩化ビニルコポリマー、及びコポリエステルから選択される、インク受容性ポリマーからなる、上記ポリマーから本質的になる、または上記ポリマーを含む。したがって、本発明の方法は、上記のステップ(a)の前に、好ましくはコーティング組成物をコーティングすることによって、上記再生セルロース基材層の一方のまたは両方の表面上にインク受容層を配置するステップを含むことが好ましい。任意の従来のコーティングプロセスを使用することができ、好ましくは、溶媒コーティングプロセスが使用される。上記コーティング組成物は、好ましくは、溶媒ビヒクル中にインク受容性ポリマーを含み、好ましくは、上記溶媒は、好ましくは、THF/トルエン及び酢酸イソプロピル/トルエンから選択される混合溶媒である。上記コーティング組成物の塗布後に、当技術分野で従来行われているとおりに、コーティングされたフィルムを乾燥することによって溶媒を除去し、このコーティングされたフィルムをリール上に巻き戻す。
【0039】
本方法のステップ(a)において印刷装置に導入される透明フィルムは、上記再生セルロースの基材層の一方のまたは両方の表面上に、上記フィルムの水蒸気透過性を低下させるためのバリア材料を含むことが好ましい。好適なバリア材料は当技術分野において周知であり、例えば、ポリ塩化ビニリデン(PVdC)が挙げられる。したがって、本発明の方法は、上記ステップ(a)の前に、好ましくはコーティング組成物をコーティングすることによって、上記再生セルロース基材層の一方または両方の表面上にバリア材料を配置するステップを含むことが好ましい。上記バリア材料は、上記インク受容層に関して本明細書において上述したように、任意の従来のコーティングプロセスを使用してコーティングすることができる。上記バリア材料は、上記インク受容性ポリマーと同時にコーティングされることが好ましく、インク受容性コーティング中に存在することが好ましい。あるいは、上記バリア材料は、別個にコーティングされてもよく、バリアコーティングの形態であってよい。
【0040】
上記インク受容層は、上記再生セルロースの基材層と同一の広がりをもつことが好ましい。換言すれば、上記インク受容層の長さ及び幅の寸法は、上記再生セルロースの基材層の長さ及び幅の寸法とそれぞれ同一である。同様に、上記バリア材料は、上記再生セルロースの基材層と同一の広がりをもつことが好ましい。
【0041】
上記再生セルロースの基材層は、好ましくは、上記透明フィルムの厚さの少なくとも85%、好ましくは少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、好ましくは少なくとも98%、好ましくは少なくとも99%を構成する。上述のように、上記再生セルロースの基材層は、該層の一方のまたは両方の表面上にコーティング層を配置している場合がある。したがって、好ましい実施形態において、上記透明フィルムは、上記再生セルロースの基材層、上記インク受容性コーティング、及び/または上記バリア材料を含む、それらから本質的になる、またはそれらからなる。本明細書において上述したように、上記再生セルロースの基材層は、再生セルロースフィルムであって、好ましくは、上記フィルムの一方もしくはそれぞれの表面上に、好ましくは、一方もしくはそれぞれの表面上に配置された、1層以上のコーティング層(好ましくは単一のコーティング層)の形態で、可塑剤及び/または抗ブロッキング剤及び/またはアンカー樹脂を任意選択で含む上記フィルムである。本発明では、上記基材層と同一の広がりをもつ層が上記基材層に積層されていないことを意図する。
【0042】
上記再生セルロースの基材層、及び、好ましくは、本発明の方法のステップ(a)の印刷装置に導入される透明フィルムも、好ましくはヘイズが10%以下、好ましくは5%以下、好ましくは4%以下、好ましくは2.5%以下である。可視領域(400nm~700nm)の光線の全光透過率(total luminous transmission)(TLT)は、好ましくは少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも約90%である。ヘイズ及びTLTは、好ましくは、標準試験方法ASTM D1003によって測定される。
【0043】
上記再生セルロースのポリマー鎖は配向しており、そのため複屈折を示す。上記再生セルロースの基材層、延いては上記透明フィルムも、複屈折(測定された遅延として表示)が約800nm以下、好ましくは約750nm以下、好ましくは約700nm以下、好ましくは少なくとも400nm、好ましくは少なくとも500nm、好ましくは約400~約750nm、好ましくは約500~約700nm、好ましくは約550~約650nmであることが好ましい。複屈折は配向と厚さに比例し、好ましくは、上記基材層の複屈折は、該基材の厚さミクロン当り約8~約12nm、好ましくは約9~約11nm、好ましくは約9.5~約10.5nm、好ましくは約10nmである。透明ポリマーフィルムの複屈折は、標準試験ASTM D4093-95(2001)によって好適に測定することができる。
【0044】
本明細書で言及される透明フィルム、特に本発明の方法のステップ(a)において印刷装置に導入される透明フィルムは、少なくとも約38ダイン、好ましくは少なくとも約40ダイン、好ましくは少なくとも約42ダイン、好ましくは約60ダイン以下、好ましくは約50ダイン以下、好ましくは約48ダイン以下の表面エネルギーを示すことが好ましい。透明フィルムの表面エネルギーは、ASTM D2578に記載の手順を使用して好適に測定することができる。表面エネルギーは、上記フィルムの表面が液体(例えば印刷インク)を引き付け、該液体が上記表面を濡らすことを可能にする能力の尺度を与える。約38ダインを超える表面エネルギーにより、印刷インクなどの液体による表面の濡れが改善される。上記の範囲内の表面エネルギーを示す再生セルロースのフィルムは、印刷前にBOPPフィルムの表面エネルギーを高めるために通常必要とされる、コロナ処理、火炎処理、及び窒素プラズマ処理などの前処理を必要としない点で有利である。
【0045】
本明細書で言及される透明フィルム、特に本発明の方法のステップ(a)において印刷装置に導入される透明フィルムは、当該フィルムが、自動の加工装置または取り扱い装置において詰まりや貼り付きを起こし、ATMにおいて二重の払出しの問題が発生する可能性があるほどに高過ぎず、且つ当該フィルムが、自動の加工装置または取り扱い装置において拾い挙げることが困難になるほどに低過ぎない摩擦係数(好ましくはASTM D1894に準拠して測定される)を示すことが好ましい。本明細書において論じられるように、上記透明フィルムの摩擦係数は、好ましくは、抗ブロッキング剤または滑剤の添加によって制御される。好ましい抗ブロッキング剤はシリカであり、シリカは当該フィルムの表面粗さを調節し、これは、本発明において摩擦係数を制御するための好ましい方法である。他の好適な添加剤としては、シリコーンまたはPTFEなどの固体滑剤、及びグリセロールモノステアラートまたはエルカミドなどの易移行性ワックスが挙げられ、これらは、当該フィルムの潤滑または表面エネルギーの変化によって摩擦係数を調節する
【0046】
本明細書で言及される透明フィルム、特に本発明の方法のステップ(a)において印刷装置に供給される透明フィルムは、帯電防止剤を必要とせず、好ましくは帯電防止剤を含まない点で有利である。本発明の透明フィルムに使用される再生セルロースフィルムは帯電し難く、帯電防止剤を含有させる必要がなく、そのため製造コストが削減され、製造効率が向上する。したがって、本発明の方法では、上記不透明化層または上記基材層または上記透明フィルムの任意の部分への帯電防止剤の添加は排除され、好ましくは、上記証書物品の何れの部分への帯電防止剤の添加も排除される。
【0047】
本明細書で言及される透明フィルム、特に本発明の方法のステップ(a)において印刷装置に供給される透明フィルムは、透かし、感光性添加剤、タガント、マーカー、または他の証書機能を有していないことが好ましい。上記証書機能は、上記不透明化層(複数可)及び印刷情報が上記フィルム上に配置された後に付与されるため、所与の通貨のすべての金種に対して、同一の基材、同一の透明フィルム、及び本発明の方法のステップ(c)から得られる同一のオフセット印刷されたフィルムを使用することが可能であり、それにより製造コストが削減される点で有利である。さらに、紙幣の印刷業者または製造業者は、本明細書で言及される透明フィルムのより大きな在庫を保持することが可能になり、それにより、特定の通貨または金種向けの特定の基材のバッチの供給が遅れることなく、異なる通貨及び/または所定の通貨の金種の範囲全体にわたって製造プロセスがより良好に制御され、これにより、製造プロセスの効率及び経済性が向上する。
【0048】
任意選択で、本明細書で言及される透明フィルム、特に本発明の方法のステップ(a)において印刷装置に供給される透明フィルムは、上述のように着色または染色されていてもよい。
【0049】
本明細書で言及される透明フィルム、特に本発明の方法のステップ(a)において印刷装置に供給される透明フィルムの水蒸気透過性は、25℃及び75%の相対湿度において、約20~約40、好ましくは約25~約35、好ましくは約28~約32g/m/24時間の範囲であることが好ましい。水蒸気透過性は、38℃及び90%の相対湿度において、約110~約130、好ましくは約115~約125、好ましくは約118~約122g/m/24時間の範囲であることが好ましい。水蒸気透過性は、当技術分野において好適な任意の方法によって、好ましくはASTM E96によって測定することができる。
【0050】
上記透明フィルムは、上記証書物品の厚さの、少なくとも約85%、好ましくは少なくとも約90%、好ましくは少なくとも95%、好ましくは少なくとも98%を構成することが好ましい。
【0051】
印刷
再生セルロースフィルムは帯電し難く、したがって、例えばBOPPフィルムに必要とされる、印刷装置に導入する前に帯電防止剤を含む不透明化層を配置することが不要になる点で有利である。したがって、再生セルロースフィルムの基材層を備える上記透明フィルムは、印刷装置に直接導入することができ、それにより、先行する別個の不透明化ステップが不要になり、それにより、上記証書物品の製造効率が向上する点で有利である
【0052】
本発明の方法、及び上記方法で使用される印刷装置は、再生セルロースフィルムの基材層を備える透明フィルム上に不透明化層を配置し、且つ、印刷情報を上記不透明化層上及び/または直接上記透明フィルム上に配置する点で有利である。
【0053】
本発明の方法において、第1のオフセット印刷ステップ及び第2のオフセット印刷ステップは異なるオフセット印刷装置で実施してもよいが、本方法の利点を十分に実現するためには、同一の印刷装置で実施することが好ましい。
【0054】
第1及び第2のオフセット印刷ステップのそれぞれが同時オフセット印刷ステップであることが好ましく、同時オフセット印刷ステップは、上記フィルムのそれぞれの面上に同時に印刷する。
【0055】
オフセットリソグラフィとも呼ばれるオフセット印刷は、刷版上の画像がフレキシブルローラーに転写(オフセット)され、次いで印刷媒体(すなわち、本発明では透明フィルム)に転写される大量生産印刷の方法である。印刷媒体が刷版に直接接触することはない。
【0056】
オフセット印刷装置は当技術分野で公知であり、一般に、それぞれが版胴、ブランケット胴(通常はゴム製)、及び任意選択で圧胴を備える複数の印刷ユニットを備える。版胴は刷版(通常は金属製、好ましくはアルミニウム製)が取り付けられるローラーである。印刷時に、刷版上のインクによって作成された印刷情報がブランケット胴に転写され、次いでブランケット胴から印刷媒体へと転写される。圧胴は印刷媒体を搬送して印刷ユニットを通過させ、且つブランケット胴が印刷情報を印刷媒体上に押圧により転写できるように、裏側から圧力を受ける硬い支持体となる。オフセット印刷は、ブランケット胴が柔軟であり、したがって印刷媒体の表面の地合に適合することができるため、他の印刷技法よりも鮮明な線及び画像を有する印刷情報が作製される。
【0057】
各印刷ユニットは単色インクを印刷する。フルカラー印刷の場合、4種のインク色(シアン、マゼンタ、イエロー、ブラック)が使用され、フルカラー印刷には最低4基の印刷ユニットが使用され、各印刷ユニットは単色インクを使用する。任意選択で、凹版印刷された情報、特殊なインク(例えば、磁性もしくは金属インク)、コーティング、またはワニスを印刷媒体に付与するために、第5の印刷ユニットが備えられていてもよい。
【0058】
運転時に、印刷媒体が上記オフセット印刷装置の各印刷ユニットを通過し、印刷情報が印刷媒体の第1の表面上に配置される。次いで、印刷された媒体を乾燥し、その後180°回転させ、同一のまたは異なるオフセット印刷装置を通過させて、印刷媒体の第2の表面に印刷してもよい。
【0059】
拡張オフセット印刷装置は、第1のセットの印刷ユニットとそれに続く第2のセットの印刷ユニットの後に反転胴を備える。したがって、これらの拡張オフセット印刷装置は、合計で8~10基の印刷ユニットを備えていてもよい。運転時に、印刷媒体が上記拡張オフセット印刷装置の第1のセットの印刷ユニットを通過し、印刷情報が印刷媒体の第1の表面上に配置される。次いで、反転胴がこの拡張オフセット印刷装置中で印刷媒体を180°回転させ、印刷媒体が印刷ユニットの第2のセットを通過して、印刷媒体の第2の表面上に印刷を行う。
【0060】
同時オフセット印刷装置は、圧胴が第2のブランケット胴に置き換えられ、印刷シートのそれぞれの表面上に同時に印刷することが可能になった1基以上の同時印刷ユニットを備える。したがって、それぞれの同時印刷ユニットは、第1及び第2の版胴ならびに第1及び第2のブランケット胴(通常はゴム製)を備える。運転時に、第1及び第2の版胴に取り付けられた刷版上のインクによって作成された印刷情報が第1及び第2のブランケット胴に転写され、次いで第1及び第2のブランケット胴から印刷媒体の第1及び第2の表面上に同時に転写される。かかる同時オフセット印刷装置は、本発明の方法で使用するための好ましい装置である。
【0061】
このように、本発明の方法で使用するのに好適なオフセット印刷装置は、上記透明フィルムの少なくとも一方の表面の少なくとも一部の上に1層以上の不透明化層(例えば、白色インク)を配置するための1つ以上の不透明化印刷ユニットを備える。上記不透明化印刷ユニットは、上記透明フィルムのそれぞれの表面の少なくとも一部の上に、同時に不透明化層を配置するための同時印刷ユニットであることが好ましい。上記オフセット印刷装置は、上記不透明化層の少なくとも一部の上に印刷情報を配置するための、及び/または、上記不透明化層で覆われていない上記透明フィルムの表面の一部の上に、直接印刷情報を配置するためのさらなる印刷ユニット(好ましくは同時印刷ユニット)をさらに備えることが好ましい。任意選択で、凹版印刷された情報、特殊インク(例えば、磁性または金属インク)、コーティング、またはワニスを組み込むために、さらなる印刷ユニット及び/または同時印刷ユニットが備えられていてもよい。
【0062】
不透明化層は、上記透明フィルムのそれぞれの表面の少なくとも一部の上に配置されることが好ましい。任意選択で、複数の不透明化層が、上記透明フィルムの少なくとも一方の表面の少なくとも一部の上に、好ましくは、上記透明フィルムのそれぞれの表面の少なくとも一部の上に配置されていてもよい。
【0063】
上記透明フィルム及び上記不透明化層(複数可)を備える上記証書物品または集合体(assembly)の不透明度は、透過光学濃度(TOD)として測定することができる。上記証書物品または上記集合体のTODは、少なくとも0.4、好ましくは少なくとも0.5、好ましくは少なくとも0.6、好ましくは少なくとも0.7、好ましくは少なくとも0.8、好ましくは少なくとも1.0、好ましくは少なくとも1.5、一実施形態において、上記不透明化層が存在する部分(複数可)において、好ましくは少なくとも2.0であることが好ましい。透過光学濃度(TOD)は、Macbeth Densitometer TR927を、透過モードで使用して測定することができる。
【0064】
好ましい実施形態において、上記フィルムの表面の90%以下、または80%以下、または70%以下、または60%以下に不透明化層が印刷される。
【0065】
本発明の方法では、印刷情報は、好ましくは第2のオフセット印刷ステップによって、不透明化層の少なくとも一部の上に配置されることが好ましい。印刷情報はまた、好ましくは上記第2のオフセット印刷ステップによって、上記不透明化層によって覆われていない上記透明フィルムの表面の一部の上に直接配置されることが好ましい。
【0066】
したがって、本発明の方法によって製造された印刷フィルムは、好ましくは、不透明化層が配置された1つ以上の不透明化された部分であって、その上に不透明化層が配置された上記部分をもつ表面を有し、さらに、1つ以上の非不透明化部分であって、その上に不透明化層が配置されていない上記部分を有し、好ましくは、印刷情報が、好ましくは、上記第2のオフセット印刷ステップによって、上記1つ以上の上記非不透明化部分の上に直接配置される。
【0067】
本発明の方法は、巻取プロセスまたは枚葉プロセスであってよい。
【0068】
巻取プロセスにおいて、ステップ(a)~(c)の方法は、上記透明フィルムのウェブが上記オフセット印刷装置に供給され、印刷され、次いでリール上に巻き戻されるリール・ツー・リールプロセスであることが好ましい。好ましい実施形態において、本方法は、ステップ(c)の後に、オフセット印刷されたフィルムをシートに切断し、その後さらなる印刷情報及び/または証書機能を前記シート上に付与するステップをさらに含む。
【0069】
枚葉プロセスにおいては、透明フィルムの個別のシートが上記オフセット印刷装置に供給される。
【0070】
本発明の方法のステップ(c)の後に、さらなる印刷情報が、上記オフセット印刷されたフィルムの一方または両方の表面上に配置されることが好ましい。任意の従来の印刷プロセスを使用することができるが、上記さらなる印刷情報は凹版印刷によって配置されることが好ましい。
【0071】
上記印刷情報及び上記さらなる印刷情報は、1つ以上の画像、パターン、及び英数字から独立に選択されることが好ましい。
【0072】
本発明の方法は、ステップ(c)の後、且つ好ましくは、さらなる印刷情報を配置する任意選択のステップの後に、上記オフセット印刷されたフィルムの一方または両方の表面上に1つ以上の証書機能を配置することを含むことが好ましい。上記1つ以上の証書機能は、印刷された署名または通し番号などのさらなる英数字情報;ホログラムなどの光学的証書機能(複数可);光学的に可変のインク、磁性インク、及び/または蛍光インクを含む印刷された機能(特にスクリーン印刷された機能)から選択されることが好ましい。
【0073】
本発明の方法は、ステップ(c)の後、且つ好ましくは、さらなる印刷情報及び/または1つ以上の証書機能を配置する上記任意選択のステップの後に、好ましくは、ワニスなどの保護層を上記オフセット印刷されたフィルムの一方または両方の表面上に配置することを含むことが好ましい。好適なワニスは当技術分野で公知であり、熱または赤外線放射によって乾燥することができるワニスまたはUV硬化ワニスが挙げられる。
【0074】
上記方法は、上記さらなる印刷情報及び/または証書機能及び/または保護層が上記オフセット印刷されたフィルムのシートに付与された後に、上記シートを複数のより小さな断片に切断して、複数の証書物品を得るステップをさらに含むことが好ましい。
【0075】
上述のように、窓領域は証書物品にとって重要な証書機能である。窓領域は、上記透明フィルムの両表面上に上記不透明化層が存在しない本証書物品の一部である。窓領域が存在することによって、上記証書物品の一方の表面の少なくとも一部の上に不透明化層が存在することが必要になることが理解されよう。
【0076】
窓領域の少なくとも一部は透明であることが好ましい。本発明において、透明な窓領域は、好ましくは、該窓領域中に配置された印刷情報及び/または証書機能を備えることが好ましい。印刷情報及び/または証書機能がその上に配置される上記窓領域の範囲は透明ではないことが理解されよう。したがって、上記窓領域の少なくとも一部は透明であることが好ましく、上記窓領域の上記少なくとも一部は、10%以下、好ましくは5%以下、好ましくは4%以下、好ましくは2.5%以下のヘイズを示すことが好ましい。
【0077】
本明細書に開示される証書物品において、上記1つ以上の窓領域は、上記印刷されたフィルムの表面積の少なくとも30%、好ましくは少なくとも40%を構成することが好ましい。上術のように、上記不透明化層中に帯電防止剤を使用する必要がある従来のBOPPフィルムは窓領域中に帯電防止剤を含まず、そのため、加工装置における詰まり、貼り付き、及び二重の払出しを回避するために、この領域における帯電を回避するために、窓領域の大きさは、通常、表面積の約25%未満に制限される。本発明で使用される再生セルロースフィルムは帯電し難く、本証書物品においてより大きな及び/またはより多くの数の窓領域が可能になる。
【0078】
本発明の方法で使用される再生セルロース基材層は配向フィルムであり、複屈折を示す。
【0079】
歴史的には、証書物品加工機にとって、当該証書物品の位置を正確に識別することができ、且つ当該証書物品を当該の機械を通して追跡することができるように、該証書物品が不透明な前縁を有することが必要であった。そしてこれにより、証書物品の1つ以上の縁部に沿って窓領域を使用することが制限されてきた。さらに、証書物品加工機のセンサーが窓領域を証書物品中の穴と誤認し、これにより当該の機械に詰まりが生じるまたは当該証書物品を欠陥ありと示す場合がある。但し、これらの問題は、上記証書物品に複屈折が存在すること、及び加工機において偏光を使用することによって解決される。したがって、これからは、窓領域が本証書物品の前縁に沿って延在する場合であっても、該証書物品の位置を正確に識別し、該証書物品を、当該機械を通して追跡することが可能になり、加工機が窓領域を穴と誤認することを回避することができる。
【0080】
したがって、本明細書に開示の証書物品は、好ましくは、上記証書物品の1つ以上の縁部に沿って延在する窓領域を備える点で有利である。特に本証書物品が長方形である場合、特に本証書物品が紙幣である場合には、窓領域(複数可)は、本証書物品の長辺の一方または両方に沿って延在することが好ましい。あるいはまたは上記に加えて、特に証書物品が紙幣である場合、窓領域(複数可)は、長方形の証書物品の短辺の一方または両方に沿って延在してもよい。このことは、1つ以上の縁部に沿って延在する窓領域を備える証書物品は偽造することがより困難であることから、特に有利である。
【0081】
本明細書に開示の証書物品は、1つ以上の半窓領域を備えることができる点で有利であり、但し、半窓領域とは、上記印刷されたフィルムの部分であって、不透明化層が、上記フィルムの第1の表面上には存在するが、上記フィルムの第2の表面上には存在しない上記部分と定義される。半窓領域が存在することによって、上記証書物品の一方の表面の少なくとも一部の上に不透明化層が存在することが必要になることが理解されよう。印刷情報は、上記フィルムの第1もしくは第2の表面のいずれかまたは両方の上の半窓領域上に配置することができ、上記フィルムの第2の表面上に配置されることが好ましい。
【0082】
本発明では、上記窓領域(複数可)または半窓領域(複数可)のいずれも、上記証書物品上または他所で提供される上記証書デバイスを検証する、強化する、及び/または光学的に変化させるための手段として使用することができる機能を備えていないことが好ましい。特に、本明細書に開示の証書物品は、証書デバイス、ならびに検証手段であって、上記証書デバイスに登録することによって、上記証書デバイスを検査及び/または検証するための上記検証手段を備えていないことが好ましい。本明細書に開示の証書物品が真正であることが、上記記証書デバイスにとって外的であるデバイスまたは手段によってのみ検証可能であることが好ましい。
【0083】
本発明の第2の態様によれば、再生セルロースの非繊維性基材層を備える透明フィルムを備える証書物品であって、
(i)印刷された不透明化層が、上記透明フィルムの少なくとも一方の表面の少なくとも一部の上に配置され、好ましくは、上記印刷された不透明化層が第1のオフセット印刷ステップによって配置されており、
(ii)印刷情報が、上記印刷された不透明化層の少なくとも一部の上に配置され、好ましくは、上記印刷情報が第2のオフセット印刷ステップによって配置されている、
上記証書物品が提供される。
【0084】
本明細書では、用語「印刷された不透明化層」とは、印刷ステップによって配置された不透明化層を意味する。
【0085】
本発明の第1の態様の文脈における本証書物品の説明は、本発明の第2の態様にも同様に適用可能である。したがって、上記証書物品、上記透明フィルム、上記再生セルロースの基材層、上記再生セルロース、及びそれらのそれぞれの製造方法に関する本発明の第1の態様の好ましい特徴は、同様に第2の態様に適用可能であることが理解されよう。
【0086】
特に、本発明の第2の態様は、上記透明フィルムが、以下の特性、すなわち、
(i)10%以下、好ましくは5%以下、好ましくは4%以下、好ましくは2.5%以下のヘイズと、
(ii)約400~約800nmの複屈折と、
(iii)少なくとも約38ダイン、好ましくは少なくとも約40ダイン、好ましくは少なくとも約42ダイン、好ましくは約60ダイン以下の表面エネルギーと、
(iv)25℃及び75%の相対湿度において、約20~約40、好ましくは約25~約35、好ましくは約28~約32g/m/24時間の範囲、ならびに/または、38℃及び90%の相対湿度において、約110~約130、好ましくは約115~約125、好ましくは約118~約122g/m/24時間の範囲の水蒸気透過性と
の1つ以上、好ましくはすべてを示す、上記証書物品を提供することが好ましい。
【0087】
少なくとも特徴(iv)が、好ましくは特徴(i)も、好ましくは特徴(ii)及び(iii)の一方または両方と共に、上記透明フィルムによって示されることが好ましく、これらの特徴は本発明の第1の態様にも適用可能である。
【0088】
本発明の第2の態様は、上記透明フィルムが、上記基材層の少なくとも一方の表面上にインク受容層をさらに備え、好ましくは、上記インク受容層がポリマーコーティング層であり、好ましくは、上記ポリマーコーティング層が、ニトロセルロース、酢酸ビニル/塩化ビニルコポリマー、及びコポリエステルから選択されるインク受容性ポリマーからなる、上記ポリマーから本質的になる、または上記ポリマーを含む、上記証書物品を提供することが好ましい。上記インク受容層が、上記フィルムの水蒸気透過性を低下させるためのバリア材料をさらに含み、好ましくは、上記バリア材料がポリ塩化ビニリデン(PVdC)であることが好ましい。
【0089】
本発明の第2の態様は、印刷情報が、上記印刷された不透明化層上に配置され、且つ上記透明フィルム上にも直接配置されている上記証書物品を提供することが好ましい。
【0090】
本発明の第2の態様は、上記印刷された不透明化層が、上記透明フィルムの表面の70%以下、好ましくは60%以下の上に配置される、上記証書物品を提供することが好ましい。
【0091】
本発明の第2の態様は、さらなる印刷情報及び/または1つ以上の証書機能(本明細書に上記の)が、本証書物品の一方または両方の表面上に配置されている、上記証書物品を提供することが好ましい。上記さらなる印刷情報は凹版印刷によって配置されることが好ましい。
【0092】
本発明の第2の態様は、上記証書物品の一方または両方の表面上に保護層(本明細書に上記の)を備える、上記証書物品を提供することが好ましい。
【0093】
本発明の第2の態様は、上記証書物品であって、1つ以上の透明な窓領域を備え、好ましくは上記1つ以上の透明な窓領域が、上記証書物品の表面積の少なくとも30%、好ましくは少なくとも40%を構成し、ならびに/または上記透明な窓領域(複数可)が、その中に配置された印刷情報及び/もしくは証書機能を備え、ならびに/または上記透明な窓領域(複数可)が、上記証書物品の1つ以上の縁部に沿って延在する、上記証書物品を提供することが好ましい。
【0094】
本発明の第2の態様は、本明細書の上記で定義された1つ以上の半窓領域を備え、印刷情報が、上記フィルムの第1もしくは第2の表面のいずれかまたはそれらの両方の上の半窓領域上に配置されていてもよく、好ましくは、上記フィルムの第2の表面上に配置される(但し、第1の表面とは、上記半窓領域において、不透明化層がその上に配置される表面である)、上記証書物品を提供することが好ましい。
【0095】
本発明の第3の態様によれば、複数の異なる種類の証書物品の製造方法であって、それぞれの種類の証書物品が、
a.再生セルロースの非繊維性基材層を備える透明フィルムをオフセット印刷装置に導入するステップと、
b.第1のオフセット印刷ステップにより、上記フィルムの少なくとも一方の表面の少なくとも一部の上に不透明化層を配置するステップと、
c.第2のオフセット印刷ステップにより、上記不透明化層の少なくとも一部の上に印刷情報を配置するステップと
を含む方法によって製造され、
ステップ(a)において上記印刷装置に供給される同一の種類の透明フィルムが、上記複数の異なる種類の証書物品のそれぞれのベースフィルムとして使用され、その結果、上記複数の異なる種類の証書物品は、ステップ(a)に続く加工ステップによって付与される機能のみが互いに異なる、上記方法が提供される。
【0096】
本発明の第4の態様によれば、複数の異なる種類の証書物品の製造方法であって、それぞれの種類の証書物品が、
a.再生セルロースの非繊維性基材層を備える透明フィルムをオフセット印刷装置に導入するステップと、
b.第1のオフセット印刷ステップにより、上記フィルムの少なくとも一方の表面の少なくとも一部の上に不透明化層を配置するステップと、
c.第2のオフセット印刷ステップにより、上記不透明化層の少なくとも一部の上に印刷情報を配置するステップと
を含む方法によって製造され、
ステップ(c)から得られる同一の種類のオフセット印刷されたフィルムが、上記複数の異なる種類の証書物品のそれぞれのベースフィルムとして使用され、その結果、上記複数の異なる種類の証書物品は、後続の加工ステップによって、ステップ(c)から得られる上記オフセット印刷されたフィルムに付与される機能のみが互いに異なる、上記方法が提供される。
【0097】
第1及び第2の態様のそれぞれについて本明細書の上記で説明した特徴及び選好は第3及び第4の態様にも適用される。
【0098】
本発明は、以下の実施例によってさらに例証される。これらの実施例は例示のみを目的としており、上述の本発明を限定することを意図するものではないことが理解されよう。本発明の範囲から逸脱することのない詳細の変更を行ってもよい。