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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-18
(45)【発行日】2023-08-28
(54)【発明の名称】神経伝達システム
(51)【国際特許分類】
   A61N 1/36 20060101AFI20230821BHJP
【FI】
A61N1/36
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2021550308
(86)(22)【出願日】2020-02-27
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-18
(86)【国際出願番号】 EP2020055156
(87)【国際公開番号】W WO2020174051
(87)【国際公開日】2020-09-03
【審査請求日】2022-12-21
(31)【優先権主張番号】102019202666.4
(32)【優先日】2019-02-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(31)【優先権主張番号】102019209096.6
(32)【優先日】2019-06-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(31)【優先権主張番号】102019214752.6
(32)【優先日】2019-09-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521380362
【氏名又は名称】セレゲート ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100109896
【弁理士】
【氏名又は名称】森 友宏
(72)【発明者】
【氏名】ヴァルクチ,バーリント
【審査官】木村 立人
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-540594(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0082829(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0306741(US,A1)
【文献】国際公開第2018/109715(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N 1/00 ― 1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
人の皮質内の知覚ニューロンを刺激するためのシステムであって、
デジタル信号プロセッサ及び非一過性メモリに連結されるプロセッサを備え、前記非一過性メモリは、前記人の複数の知覚認知と、前記人の前記皮質内の前記知覚ニューロンをターゲットにする少なくとも1つの求心性軸索に与えられる複数の対応神経刺激信号との間の関係を格納し、前記少なくとも1つの求心性軸索は、前記人の中枢神経系の求心性知覚軸索を含み、前記複数の知覚認知のうち異なる知覚認知は、前記人に伝達される別個の情報に関連付けられ、
前記プロセッサは、送信器回路に連結され、前記複数の神経刺激信号のうち少なくとも1つの神経刺激信号を選択し、前記少なくとも1つの選択された神経刺激信号に対応する前記少なくとも1つの求心性軸索において一連の活動電位を誘導するように構成される少なくとも1つの神経刺激デバイスに前記送信器回路を介して送信するように構成され、
前記少なくとも1つの選択された神経刺激信号は、前記少なくとも1つの求心性軸索における前記一連の活動電位を誘導し、これにより、前記人の前記皮質内で、前記人に対する前記少なくとも1つの知覚認知に関連付けられた前記別個の情報を伝達するように、前記少なくとも1つの選択された神経刺激信号に対応する少なくとも1つの知覚認知を引き起こすように適合される、
システム。
【請求項2】
前記システムは、
デジタル-アナログ変換器と、
無線周波数送信器と、
無線周波数受信器と、
アナログ信号増幅器と、
デジタル信号増幅器と、
無線周波数混合回路と、
ローパス、ハイパス又はバンドパス回路と、
無線通信回路と、
インピーダンス整合回路と
のうち1つ以上をさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記複数の知覚認知と前記複数の対応神経刺激信号との間の前記格納された関係は、
前記少なくとも1つの求心性軸索に関する空間情報と、
前記少なくとも1つの神経刺激デバイスに関する空間情報と、
前記少なくとも1つの求心性軸索に関する神経接続情報と、
前記少なくとも1つの神経刺激デバイスに関連付けられた電界分布と、
前記人に関する機能的神経画像処理データと、
前記人に関する拡散テンソル画像データと、
前記人に関係する神経解剖学的基準データと、
前記人に関する皮質興奮データと、
前記人に関する認知学習データと、
前記人に関する概念学習データと、
前記人に関する知覚認知データと、
前記人の主観的経験に少なくとも部分的に基づく行動データと、
前記対応神経刺激信号が前記人の前記皮質内に構成される前記少なくとも1つの神経刺激デバイスに送信されるときに、前記人により同時に認知可能な知覚認知の数を最大化するための最適化法と
のうち1つ以上に少なくとも部分的に基づいている、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記認知学習データ及び前記概念学習データのうち1つ以上は、
認知又は概念学習法に参加している前記人と、
前記少なくとも1つの神経刺激信号を受信しているときに、非侵襲機能的神経画像処理デバイス又は侵襲電気生理学的記録デバイスにより分析される前記人と
のうち1つ以上に少なくとも部分的に基づいて生成される、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記別個の情報は、前記人に伝達される概念的情報を含み、
前記少なくとも1つの神経刺激信号は、伝達される前記概念的情報に対応する、
請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記非一過性メモリは、複数の概念情報と複数の対応神経刺激信号との間の前記人に固有の関係を格納する、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記格納された固有の関係は、前記人に関する概念的学習データに少なくとも部分的に基づいており、前記概念的学習データは、前記複数の概念的情報を前記複数の対応神経刺激信号に関連付ける、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記概念的情報は、文字、数字、色、空間内の方向、言葉、文、物体、人又は動物の特定、前記人の運動反応に対する命令、位置、バイオ又は神経フィードバック信号、形状、画像又はアイコン、警告、連想、類似度、サリアンス信号、リズム、開始又は停止コマンド又は情報、タッチ情報、表面テクスチャ情報、圧力情報、及び電磁界強度表示のうち1つ以上を含む、請求項5に記載のシステム。
【請求項9】
前記少なくとも1つの神経刺激デバイスは、神経刺激電極、光神経インタフェイス手段及び化学神経インタフェイス手段のうち1つ以上を含む、請求項5に記載のシステム。
【請求項10】
前記少なくとも1つの神経刺激デバイスは、複数の独立制御可能な電気刺激接点を含む、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
前記少なくとも1つの神経刺激デバイスは、それぞれ複数の独立制御可能な電気接点を含む少なくとも2つの独立制御可能な刺激電極を含む、請求項9に記載のシステム。
【請求項12】
前記少なくとも1つの神経刺激デバイスは、前記一連の活動電位を誘導することとは別の治療目的のために使用可能な埋込可能神経モジュレータを含み、前記神経モジュレータの少なくとも一部は、前記一連の活動電位を誘導するために使用される、請求項9に記載のシステム。
【請求項13】
前記神経モジュレータの前記一部は、前記治療目的のために使用されない部分である、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記少なくとも1つの求心性軸索は視床皮質軸索である、請求項5に記載のシステム。
【請求項15】
前記少なくとも1つの知覚ニューロンは、
体性感覚皮質領域と、
聴覚皮質領域と、
視覚皮質領域と、
嗅覚皮質領域と、
味覚皮質領域と、
体性感覚連想皮質領域と、
固有受容皮質領域と
のうち少なくとも1つに位置している、請求項5に記載のシステム。
【請求項16】
非一過性メモリであって、
前記非一過性メモリは、人の複数の知覚認知と、前記人の皮質内の知覚ニューロンをターゲットにする少なくとも1つの求心性軸索に与えられる複数の対応神経刺激信号との間の関係を格納し、前記少なくとも1つの求心性軸索は、前記人の中枢神経系の求心性知覚軸索を含み、前記複数の知覚認知のうち異なる知覚認知は、前記人に伝達される別個の情報に関連付けられ、
前記非一過性メモリは、
前記複数の神経刺激信号のうち少なくとも1つの神経刺激信号を選択し、前記少なくとも1つの選択された神経刺激信号に対応する前記少なくとも1つの求心性軸索において一連の活動電位を誘導するように構成される少なくとも1つの神経刺激デバイスに送信器回路を介して送信するためのプロセッサにより実行可能なプログラム命令をさらに格納し、
前記少なくとも1つの選択された神経刺激信号は、前記少なくとも1つの求心性軸索における前記一連の活動電位を誘導し、これにより、前記人の前記皮質内で、前記人に対する前記少なくとも1つの知覚認知に関連付けられた前記別個の情報を伝達するように、前記少なくとも1つの選択された神経刺激信号に対応する少なくとも1つの知覚認知を引き起こすように適合される、
非一過性メモリ。
【請求項17】
前記複数の知覚認知と前記複数の対応神経刺激信号との間の前記格納された関係は、
前記少なくとも1つの求心性軸索に関する空間情報と、
前記少なくとも1つの神経刺激デバイスに関する空間情報と、
前記少なくとも1つの求心性軸索に関する神経接続情報と、
前記少なくとも1つの神経刺激デバイスに関連付けられた電界分布と、
前記人に関する機能的神経画像処理データと、
前記人に関する拡散テンソル画像データと、
前記人に関係する神経解剖学的基準データと、
前記人に関する皮質興奮データと、
前記人に関する認知学習データと、
前記人に関する概念学習データと、
前記人に関する知覚認知データと、
前記人の主観的経験に少なくとも部分的に基づく行動データと、
前記対応神経刺激信号が前記人の前記皮質内に構成される前記少なくとも1つの神経刺激デバイスに送信されるときに、前記人により同時に認知可能な知覚認知の数を最大化するための最適化法と
のうち1つ以上に少なくとも部分的に基づいている、請求項16に記載の非一過性メモリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動作、特に運動改善のために使用され得る神経刺激信号を提供するためのような、人との直接的な神経伝達のために使用され得る神経刺激信号を供給するための、また、デバイス状態を人に信号で伝え、あるいは伝達するために使用され得る神経刺激信号を提供するための信号及びデータ処理システムに関するものである。
【技術背景】
【0002】
従来から、人間との意思の疎通は、人間の感覚器官に知覚刺激を例えば一連の画像、視覚的記号、音、及び/又は体性感覚刺激として与えることに依存してきた。そのような情報を伝達する一連の知覚刺激の例としては、話し言葉、原稿、モールス符号、点字、手話などがある。例えば、話し言葉とモールス符号の情報内容は聴覚刺激を介して人間に伝達され、点字の情報内容は体性感覚刺激を介して、原稿と手話の情報内容は視覚刺激を介して人間に伝達される。
【0003】
伝達された情報を取り出すために、感覚器官(例えば、蝸牛の内有毛細胞又は網膜の杆体細胞)は、それぞれの知覚刺激の入力エネルギーを神経的興奮信号に(一連の活動電位に)変換する。その後、これらの神経的興奮信号は、求心性感覚神経繊維を介して脳に伝達され、最終的には皮質により処理される。大脳皮質内の与えられた知覚刺激から得られる観念的な再現(すなわち、顕在化皮質興奮パターン)は、与えられた知覚刺激に関連付けられた知覚認知と呼ばれる。知覚認知は、意識的なもの又は無意識的なものであり得る。例えば、指先で点字を読む訓練をした人は、点字文章のそれぞれの点字記号の正確なドットパターンを意識的に認識することはないが、文章を形成する一連の点字記号を介して伝達される情報内容を意識的に直接的に理解する。
【0004】
重要なことに、多くの場合、伝達された情報は、単なる知覚認知を超えるものである。一例として、モールス符号を考えてみる。それぞれのモールス符号メッセージは、聴覚皮質中にある一連の知覚認知、すなわち、ある期間(例えば長い期間又は短い期間)にわたるあるピッチ(例えば500Hz)の一連の認知トーンを顕在化させる。
【0005】
しかしながら、人の皮質は、そのような皮質の知覚認知から複雑な概念的情報を抽出することもできる。例えば、モールス符号の9個の連続したトーンの特定の順序に符号化された、沈没する船の船員に救助を提供するための要求を抽出することができる。このため、本件出願の残りの部分においては、「概念的情報」という用語は、皮質により抽出可能で、単なる知覚認知を顕在化させることを越える情報内容を含む意味として広く理解されなければならない。さらに、多くの場合、皮質は、学習を介して一連の知覚認知から複雑な概念的情報を抽出する能力を取得する。例えば、無線通信士は、SOS信号を理解するためにまずモールス符号の意味を学ばなければならない。
【0006】
感覚器官の疾患及び/又は損傷(例えば難聴、盲目など)は、人のコミュニケーション能力を弱め得るものである。これらの状態のうち一部に関しては、蝸牛インプラントや網膜インプラントのような知覚刺激装置が従来技術として知られている。また、知覚刺激技術だけではなくデータ及び信号処理における最近の進歩により、人間の舌の体性感覚刺激細胞を介して視覚認知を顕在化させるための装置が開発されている(例えば、US 2006/0241718 A1及びUS 2015/0290453 A1を参照)。原理上は、そのような装置は、意思伝達のため、例えば文章を読むため、あるいは一般的な視覚記号を理解するためにも使用可能である。
【0007】
加えて、相当な科学的研究が、感覚器官及び/又は末梢神経系の刺激がなくても人の皮質におけるある知覚認知を直接顕在化することを可能にする、いわゆるコンピュータ脳インタフェイス(CBI)の開発に向けられている。例えば、最近の刊行物M.S. Beauchamp等、「Dynamic Electrical Stimulation of Sites in Visual Cortex Produces Form Vision in Sighted and Blind Humans」、DOI. 10.1101/462697は、どのようにして硬膜下電極アレイを使用して人の視覚皮質における視覚認知を直接顕在化して、訓練することなく非常に正確に様々な文字の形状を瞬時に認識可能にできるかについて述べている。同様の方法及び刺激パラダイムが、B. Lee等、「Engineering Artificial Somatosensation Through Cortical Stimulation in Humans」、Frontiers in Systems Neuroscience、12、2018年に述べられており、これは、硬膜下小型脳波検査グリッドを用いて皮質刺激を介して体性感覚認知を顕在化させることに関連するものである。神経刺激及び測定技術における動向に関する一般的な概要は、論文P.R. Roelfsema等、「Mind Reading and Writing: The Future of Neurotechnology」、Trends in Cognitive Sciences、5、2018年に記載されている。
【0008】
関連する研究の傾向が、B.D. Swan等、「Sensory percepts induced by microwire array and DBS microstimulation in human sensory thalamus」、Brain Stimulation、11、2018年に述べられている。具体的には、これらの著者は、脳深部刺激(DBS)電極を用いて人間の知覚視床に電気刺激を与えることにより手又は腕の体性感覚認知を引き出すことができることを示すことができた。
【0009】
さらに、刊行物D.N. Anderson等、「Optimized programming algorithm for cylindrical and directional deep brain stimulation electrodes」、Journal of Neural Engineering、15、2018年は、磁気共鳴画像(MRI)及び拡散テンソル画像(DTI)を用いて運動疾患及び精神疾患(例えばパーキンソン病)やDBS電極の周りの脳組織の治療のために用いられるDBS電極の有限要素法(FEM)モデルを構築することに関連するものである。得られたFEMモデルは、その後、DBS電極を介して遠心皮質運動軸索を刺激するための最適刺激パラメータを見つけるために使用することができる。
【0010】
さらに、WO 2016/116397 A1は、白質神経繊維を含む神経組織の医療画像データに基づいて、刺激電極により生成される非生理的電界に対する神経繊維の方向を決定するための医療データ処理方法に関するものである。関連する可能性のある追加の先行技術はKR 101841625及びEP 3431138である。
【0011】
しかしながら、従来技術において知られている神経刺激パラダイム及びシステムには様々な欠点がある。まず、例えば硬膜下微小電極アレイを介した直接的な皮質刺激を利用するCBIは、皮質の外側層のみを刺激することができ、このため、皮質処理の階層的構成を無視するものであるか、あるいは完全に考慮したものでは少なくともない。多くの場合、これが、非生理的刺激及び/又は興奮パターンが顕在化した知覚認知の品質を潜在的に悪化させることになる。換言すれば、皮質の外側層におけるニューロンは、様々な下側皮質層及び/又はより深い脳の領域により前処理された神経信号を受け取るように適合されており、このため、一般的には、硬膜下電極アレイにより提供される電気的刺激信号を直接受け取り処理するようには適合されていない。
【0012】
さらに、現在の微小電極アレイの空間的分解能は、依然として粗すぎて生理的に正しい知覚認知を顕在化させることができない。加えて、当該技術分野においては、皮質がニューロンと血管で豊富な環境にあるときは、組織形成を傷つけたり、さらに/あるいは神経膠症を引き起こしたりしやすく、微小電極アレイの性能が経時的に低下することが知られている。
【0013】
また、単一ユニット/単一ニューロンインタフェイス能力又は電気的皮質グリッドを備えた微小加工により製造されたインプラントは、通常、脳と頭蓋との間に固定される。心臓の脈動のたびに、あるいは、例えば身体活動中のように加速力に曝されている間は、脳が頭蓋腔の内部で動くので、表面インプラントの相対位置は、時間とともに移動し得るため、CBIのさらなる悪化を招き得る。
【0014】
視床のDBSを介した知覚認知の刺激に関して、従来技術において述べられている方法及びシステムは、十分な空間的及び/又は知覚的分解能を完全に欠くものであり、このため、所望の知覚認知のロバストで再現可能な刺激のためには決して使用することができない。また、これらの従来技術は、例えば肢端切断者のための人工神経装具としての応用のために人間の体性感覚系における自然な感覚を再現することのみを目的としている。
【0015】
ある側面においては、本出願は、特に、神経系運動障害の治療の意味での行動及び運動改善のための神経刺激システムに向けられている。
【0016】
パーキンソン病(PD)のような神経系疾患、本態性振せん又はジストニアは、罹患した患者の運動能力及び協調能力を深刻に悪化させ得る。そのような疾患の症状は、罹患した患者の神経系を刺激することで完治するか、少なくとも改善し得ることが知られている。
【0017】
例えば、脳深部刺激(DBS)システムは、埋込電極を介して脳の特定の領域/核に電気インパルスを送ってそのような症状を治療する。従来、PDの症状の治療においては、これらの核は、淡蒼球内節、視床及び/又は視床下核を含み得る。視床のDBSは振せんを改善するものの、運動緩徐や硬直性にはほとんど効果がないが、淡蒼球内節のDBSは運動機能を改善することが知られている。さらに、視床下核のDBSは、PDの投薬の減少に関連付けられる。
【0018】
US 2007/0250134 A1は、PDの異なる症状を抑えるために患者の神経系に異なる電気的刺激療法を実施するための埋込可能な医療デバイスに関連するものである。そのような電気的刺激療法の1つは、いわゆるすくみ足(FOG)症状を抑えるように構成され、別の電気的刺激療法は、振せん、運動緩徐又は硬直性のような他のPDの症状を抑えるように構成される。ある時点で、医療デバイスは、現在の治療法パラメータセットにより電気的刺激療法を行う。治療法パラメータは時間とともに変化し得る。医療デバイス又は他のデバイスは、定期的に患者の活動レベルを決定し、それぞれ決定された活動レベルを現在の治療法パラメータセットに関連付ける。医療デバイスは、FOGの症状を記録し、そのような症状に基づいて活動計量値を決定することに加えて、FOGを止めるために刺激の伝達を制御し得る。例えば、刺激リード線を患者の脊髄又は末梢神経の近くに埋め込んだ場合には、医療デバイスは、歩くことを患者に促すように患者が認知し得る刺激の伝達を制御することによりFOGを止めることができる。この刺激は、律動的なものであってもよく、例えば、歩くリズムに近づけたものであってもよい。これにより、歩くことを患者に促し、これによりFOGを止めることができる。
【0019】
最近の刊行物L. Rosenthal等、「Sensory Electrical Stimulation Cueing May Reduce Freezing of Gait Episodes in Parkinson's Disease」、Hindawi Journal of Healthcare Engineering、2018年、論文ID 4684925は、歩行タスクを完了させるのにかかる時間を短縮し、そのタスクを行う際に生じるFOGの回数を少なくするために、肌表面電極をどのようにしてPD患者に一定の律動的な電気的知覚刺激信号を与えるために使用することができるかについて述べている。
【0020】
運動障害の治療に対する異なるアプローチは、律動的聴覚キューイングである。最近の論評記事S. Ghai等、「Effect of rhythmic auditory cueing on parkinsonian gait: A systematic review and meta-analysis」、NATURE SCIENTIC REPORTS、2018年、8:506、DOI:10.1038/s41598-017-16232-5には、PDの患者に歩行能力を向上させるために律動的聴覚キューイングを用いることについて系統的な概要が記載されている。
【0021】
さらに、US 2019/0030338 A1は、実際には患者はFOGの段階に達していないが、歩行運動中に患者がFOGになり易いか否かを判断することができる埋込可能な医療デバイスに関するものである。この埋込可能な医療デバイスは、患者がFOGに関連付けられた運動を行っているときに1以上の電極を介して患者の脳の生体電気信号を検知する。そして、この埋込可能な医療デバイスは、検知された生体電気信号に基づいて、患者がFOGの段階になっていないものの、患者がFOGになり易いか否かを判断する。さらに、埋込可能な医療デバイスがFOGに関連付けられた運動を検出すると、患者に対してDBS電極を介してFOGを抑えるように構成された電気的刺激療法を行う。
【0022】
しかしながら、従来技術において知られている電気的刺激システムには様々な欠点がある。例えば、運動障害に苦しむ患者に対する聴覚キューイング治療は、患者の聴力を低下させることがあり、患者の周囲の環境に関して非常に重要な情報を与える他の関連する音から患者の気を散らせることがある。
【0023】
さらに、肌表面電極を介して電気的刺激信号を与える際には、嵩張る電子機器を患者が持ち運ぶ必要があり、外部の湿気や身体の湿気により劣化し、さらに/あるいは肌から外れてしまうことがある肌表面電極を継続的にメンテナンスしなければならない。
【0024】
また、従来のDBSシステムは、例えばFOG又は振せんを抑えるように構成された不特定の神経調節信号を供給するためにのみ使用することができる。しかしながら、そのようなシステムは、規則性、バランス及び/又は体位という意味でFOGが抑えられた後に患者の運動を継続的に高める能力を完全に欠いている。
【0025】
加えて、心臓ペースメーカと同様に、パーキンソン病(PD)のような神経系疾患、本態性振せん及びジストニアの症状は、罹患した患者の神経系への刺激を介して定期的に治療される。例えば、脳深部刺激(DBS)システムは、埋込電極を介して脳の特定の領域/核に電気インパルスを送ってそのような症状を治療する。PDの症状の治療においては、これらの核は、淡蒼球内節、視床及び/又は視床下核を含み得る。視床のDBSは振せんを減少させ、淡蒼球内節のDBSは例えば運動機能を改善することが知られている。さらに、視床下核のDBSは、従来のPDの投薬の減少と関連付けられる。
【0026】
PDの症状の治療と同様に、電気的刺激デバイスは、コンピュータ脳インタフェイスの通信目的及び実現のためだけでなく、アルツハイマー病、認知症又は鬱症状の治療のための心臓律動管理のためにも使用することができる。
【0027】
例えば、US 8,352,029 B2は、埋込可能な医療デバイスにおいて神経刺激治療モードを実現する方法であって、神経イベントタイマ又は検知された生理的イベントの表示により定義されるそれぞれのデバイス状態を格納された神経テーブル中の関連するデバイスアクションにマッピングしと、アクション入力に応答してキュー中のデバイス状態ワードとして表されるイベントとタイムスタンプを格納し、現在のタイマ状態又は検知された生理的イベントの表示を神経テーブル中のデバイス状態と比較し、一致するものが見つかった場合には、関連するデバイスアクションを行い、これらのデバイスアクションは、神経刺激エネルギー伝達及び/又はタイマ状態の変化であり得る方法に関するものである。
【0028】
同様に、US 7,751,884は、神経刺激エネルギーを神経刺激電極に供給する刺激回路と、少なくとも1つの神経イベントタイマを含む1以上のタイマと、神経テーブルを含むデバイス挙動メモリと、比較回路とを備える埋込可能な医療デバイスに関するものである。神経テーブルは、神経イベントタイマにより少なくとも部分的に定義される特定のデバイス状態を、神経刺激エネルギー伝達及び/又は少なくとも1つの神経イベントタイマの状態の変化を含む1以上の関連するデバイスアクションにマッピングする。比較回路は、タイマの現在の状態を神経テーブル中のデバイス状態と比較し、一致するものが見つかった場合には、1以上の関連するデバイスアクションを行う。
【0029】
さらに、US 8,812,128は、電源を有し、電源をモニタリングするように構成され、モニタリングに基づいて電池状態信号を生成し、経皮的に通信信号及び電池状態信号を外部デバイスに伝達するように構成された充電可能な埋込可能医療デバイスに関するものである。外部デバイスは、充電可能な埋込可能医療デバイスから通信信号及び電池状態信号を受信し、受信した通信信号に応答して低エネルギー消費状態から高エネルギー消費状態に変更し、受信した状態信号に応答してユーザが識別可能な信号を生成するように構成される。
【0030】
また、US 8,193,766は、埋込可能な医療デバイス充電可能な電源を充電するための時間を予測するシステムに関するものである。埋込可能な医療デバイス及び外部充電デバイスに関する複数の測定パラメータが充電性能のモデルに適用され、充電に先立って予測が患者に提供される。充電が始まると、充電が完了するまで更新された予測が提供される。充電が完了すると、充電が完了するまでの予測時間と実際に充電が完了するまでに必要であった時間との差を反映するようにモデルが更新される。モデルは、複数の間隔にわたって充電可能な電源に送られ得る電荷の速さに対する制限に基づくものであり得る。
【0031】
しかしながら、典型的には、そのような医療用刺激デバイスにより用いられる刺激パラメータは、デバイスが正しく動作しているか否かを治療中の患者が直接認知しないように選択又は構成される。例えば、埋込電気刺激デバイスのようなデバイスは、時間の経過とともに次第に放電し得る電池のような制限のある電源により電力の供給を受け得る。ある時点では、電池の充電レベルは、刺激デバイスが正しく動作するには不十分であり得る。
【0032】
同様に、そのようなデバイスは、(例えば、強い外部磁界により生じる)ハードウェアの故障又は刺激を用いた治療により治療されている脳の領域の生理的な変化により動作を停止することもある。
【0033】
しかしながら、多くの場合、患者は、特にデバイスが訓練を受けた医療従事者のみがアクセス可能であって、患者自身がアクセス可能な構成インタフェイス又は状態インタフェイスを備えていない場合には、自分の治療デバイスがもはや正しく動作していないと認識することがないか、あるいは少なくとも直ちには認識することがない。デバイスが患者によりアクセス可能なそのようなインタフェイス(例えば、ワイヤレスリモコンやテレメトリデバイス)を備えていたとしても、患者がそのインタフェイスにアクセスしてデバイスの状態の情報を得ることができないような状況も考えられる(例えば、長期休暇やリモコンの電池切れなど)。
【0034】
そのような状況においては、それぞれの治療デバイスにより通常治療される神経系疾患症状が次第に悪くなる可能性があり、これが長い期間にわたって患者により認識されないままにもなり得る。これは、神経刺激装置が認知症、アルツハイマー病、統合失調症、双極性障害及び/又は鬱症状のような精神状態の治療のために使用される場合に特に問題となり得る。そのような場合には、(例えば、電池が少なくなったこと又は外部磁界により生じた間違った緊急非動作状態により引き起こされる)治療デバイスが非動作状態となっていることは直ちに認識できることはなく、最終的に、患者が、治療されていない症状が既にかなり悪化してしまったときに、長時間経った後に自分の治療デバイスが好ましくない非動作状態となっていることに気づくことになる。
【0035】
このように、本発明の課題は、上記で概説した従来技術の欠点を少なくとも部分的に克服するように既存のシステムを改善する新規な神経刺激システムを提供することにある。
【発明の概要】
【0036】
上述した問題は、本出願の独立請求項の主題によって少なくとも部分的に解決される。本発明の例示的な実施形態は、従属請求項の主題である。
【0037】
一実施形態においては、本発明は、人の皮質において知覚認知を顕在化させるように構成された神経刺激信号を供給するためのシステムであって、上記人の上記皮質内の少なくとも1つの知覚ニューロンをターゲットにしている少なくとも1つの求心性軸索に対する少なくとも1つの神経刺激手段の実際の部分又は予定されている部分に関する空間データを取得する手段と、上記取得された空間情報に少なくとも部分的に基づいて、上記少なくとも1つの神経刺激手段を介して少なくとも1つの求心性軸索に与えられる少なくとも1つの神経刺激信号を決定する手段とを備える、システムを提供する。
【0038】
例えば、そのようなシステムは、皮質内の知覚ニューロンの所望の亜集団を刺激するように調整された特定の神経刺激信号を決定することが可能である。例えば、人の左手の体性感覚認知を顕在化させるように構成されるように設計される神経刺激信号もあれば、舌の触感を顕在化させるように構成される刺激信号もある。知覚皮質をターゲットにしている求心性軸索に対する電極位置の空間的情報を取得して使用することにより、システムは、神経刺激信号の実際の形態と、知覚皮質内の対象領域及び/又は対象認知との間の対応関係を確立することができる。例えば、そのような神経刺激信号は、パルス幅、パルス周波数、パルス振幅及び/又はパルス形状によって特徴付けられる一連の電流パルスを含み得る。
【0039】
このように、提供されるシステムは、感覚器官及び/又は末梢神経系を刺激することなく、人の皮質内にある知覚認知を直接顕在化させることを促進する。
【0040】
さらに、そのような神経刺激信号は、上記人の上記皮質内の知覚ニューロンをターゲットにしている少なくとも1つの求心性軸索における一連の活動電位を顕在化させるように構成され得る。また、上記少なくとも1つの軸索は、視床皮質軸索、すなわち、人の視床から知覚皮質に知覚情報を伝達する軸索であってもよい。
【0041】
知覚皮質をターゲットにしている軸索における活動電位を顕在化させるように構成された神経刺激信号を供給することにより、所定の知覚認知に対する刺激が生理的に正しい信号経路を介して、例えば視床皮質軸索の活動電位を介して皮質に入ることを確実にすることができる。このように、神経刺激信号の正しい皮質処理を確実にすることができ、顕在化される知覚認知の質を高めることができる。
【0042】
さらに、上記空間情報を取得する手段は、上記少なくとも1つの求心性軸索についてのトラクトグラフィ情報及び/又は神経接続情報を含み、好ましくは磁気共鳴画像データ、拡散テンソル画像データ及び/又は解剖学的基準データを取得する手段を含み得る。
【0043】
人の知覚皮質をターゲットにしている軸索についてのそのようなトラクトグラフィ情報及び/又は神経接続情報(例えば、軸索と知覚ニューロンとの間のシナプス接続に関する情報)を用いることにより、知覚皮質の所望の領域において所望の知覚認知を顕在化させるように神経刺激信号の実際の形態をさらに調整することができる。特に、DTIデータにより、知覚皮質の所定の対象認知及び/又は対象領域に対して所望の神経刺激信号を決定するために個々の神経解剖学的変化及び/又は神経可塑性を考慮することができる。
【0044】
さらに、上記空間情報を取得する手段は、上記少なくとも1つの神経刺激手段の上記実際の部分又は上記予定されている部分の少なくとも一部を取り囲む脳組織の量の神経画像処理データであって、好ましくはコンピュータ断層撮影データ及び/又は磁気共鳴画像データを含む神経画像データ処理を取得する手段を含み得る。
【0045】
このように、システムは、神経刺激手段を取り囲む脳組織の物理的特性、特に電気的特性を考慮することができる。例えば、取り囲んでいる脳組織の導電性を決定するために神経画像データを使用することができる。このように、ある求心性軸索及び/又は知覚ニューロンに対して決定された神経刺激信号の特異性及び正確性をさらに高めることができる。
【0046】
さらに、上記神経刺激信号を決定する手段は、上記取得された空間情報に少なくとも部分的に基づいて、好ましくは有限要素法及び/又は神経区画モデルを用いて、上記少なくとも1つの求心性軸索及び/又は上記少なくとも1つの知覚ニューロンの興奮確率を決定する手段を含み得る。
【0047】
このように、システムは、少なくとも1つの神経刺激信号を決定する際に少なくとも1つの軸索の能動電気的特性(例えば、非線形神経興奮性)を考慮することができ、これにより知覚皮質内の所望の対象軸索及び/又は対象刺激領域に対する神経刺激信号の特異性及び正確性をさらに高めることができる。
【0048】
上記少なくとも1つの神経刺激信号を決定する手段は、さらに、上記少なくとも1つの神経刺激信号により顕在化される知覚認知の少なくとも1つの所望の種類と、少なくとも1つのターゲットにされた知覚ニューロンを含む上記皮質の少なくとも1つの所望のターゲット領域と、上記決定された少なくとも1つの神経刺激信号が、上記少なくとも1つの神経刺激手段を介して少なくとも1つの求心性軸索に与えられた際に、上記人が認知できる異なる知覚認知の数を最大化することに基づいた最適化法とのうち少なくとも1つに少なくとも部分的に基づいて、上記少なくとも1つの神経刺激信号を決定するように構成され得る。
【0049】
このように、所定の刺激手段により知覚認知を顕在化させることにより伝達可能な情報の量を増やすことができる。さらに、動的に構成された電気的パルスを介して脳内の深部における軸索構造に接続することにより、これらの軸索が突出している表層皮質処理領域の全領域に情報を送ることができ、侵襲性マクロ又はマイクロ刺激インプラントを使って全表面領域をカバーする必要がなくなる。
【0050】
他の実施形態においては、本発明は、人の皮質における知覚ニューロンを刺激するためのシステムであって、上記人の知覚認知と、上記人の上記皮質における上記知覚ニューロンをターゲットにしている少なくとも1つの求心性軸索に与えられる対応する神経刺激信号との間の関係を格納する手段と、上記神経刺激信号のうち少なくとも1つを選択し、上記人の少なくとも1つの神経刺激手段に送信する手段とを備える、システムを提供する。
【0051】
この実施形態は、人の皮質内の所望の知覚認知の効率及び柔軟性を大きく改善する。例えば、提供されるシステムに接続する通信デバイスは、人の皮質内の知覚ニューロンをターゲットにしている求心性軸索の刺激を介して人の皮質で顕在化される所望の知覚認知に対応する特定の神経刺激信号を簡単に決定し、これを直接送信することができる。
【0052】
例えば、本発明のある実施形態においては、上記知覚認知と上記対応する神経刺激信号との間の上記格納された関係は、上記少なくとも1つの求心性軸索に関する空間情報と、上記少なくとも1つの神経刺激手段に関する空間情報と、上記少なくとも1つの求心性軸索に関する神経接続情報と、上記少なくとも1つの神経刺激手段に関連付けられた電界分布と、上記人に関する機能的神経画像処理データと、上記人に関する拡散テンソル画像データと、上記人に関係する神経解剖学的基準データと、上記人に関する皮質興奮データと、上記人に関する認知及び又は概念学習データと、上記人に関する知覚認知データと、上記人の主観的経験に少なくとも部分的に基づく行動データと、上記対応する神経刺激信号が上記人の上記少なくとも1つの神経刺激手段に送信されるときに、上記人により好ましくは同時に認知可能な知覚認知の数を最大化するための最適化法とのうち1つ以上に少なくとも部分的に基づいている。
【0053】
ある実施形態においては、提供されるシステムは、上記少なくとも1つの神経刺激信号に対応する上記少なくとも1つの求心性軸索に一連の活動電位を誘導するように適合された少なくとも1つの神経刺激手段をさらに備えていてもよい。
【0054】
提供されるシステムに神経刺激手段を一体化することにより、システム全体の効率を高めることができ、例えば少なくとも1つの神経刺激手段に対してカスタマイズされた有線又は無線インタフェイスを用いることにより、システムの複雑性を低減することができる。
【0055】
汎用性及びシステム統合の程度をさらに改善するために、ある実施形態においては、上記少なくとも1つの神経刺激信号を選択し送信する手段は、デジタル信号プロセッサと、デジタル-アナログ変換器と、無線周波数送信器と、無線周波数受信器と、アナログ及び/又はデジタル信号増幅器と、無線周波数混合回路と、ローパス、ハイパス及び/又はバンドパス回路と、無線通信回路と、インピーダンス整合回路とのうち少なくとも1つを含み得る。
【0056】
ある実施形態においては、知覚認知と対応する神経刺激信号との間の関係の上記認知及び/又は概念学習データは、認知及び/又は概念学習法に参加している上記人と、上記少なくとも1つの神経刺激信号を受信しているときに、機能的神経画像処理デバイス、好ましくは磁気共鳴画像処理により分析される上記人とのうち1つ以上に少なくとも部分的に基づいて生成され得る。
【0057】
このように、知覚認知におけるわずかな変化でさえ区別する方法を学習する人間の脳の能力を用いて、システム性能を向上することができる。一意な認知パターンの分解能が細かくなればなるほど、符号とその意味との間の関係と同様に、より多くの概念又はメッセージを神経刺激パターンに一意に関連付けることができる。より多くの符号が認知可能となればなるほど、より多くの意味を伝達することができる。
【0058】
さらなる実施形態においては、本発明は、概念的情報を人に伝達するためのシステムであって、上記人の皮質内の少なくとも1つの知覚ニューロンをターゲットにしている少なくとも1つの求心性軸索に与える少なくとも1つの神経刺激信号を選択する手段と、上記少なくとも1つの神経刺激信号は、伝達しようとする上記概念的情報に対応し、上記少なくとも1つの神経刺激信号を上記人の少なくとも1つの神経刺激手段に送信する手段とを備える、システムを提供する。
【0059】
例えば、上記概念的情報は、文字、数字、色、空間内の方向、言葉、文、物体、人又は動物の特定及び/又は上記人の運動反応に対する命令、位置、バイオ又は神経フィードバック信号、形状、画像又はアイコン、警告、連想、類似度、サリアンス信号、リズム、開始又は停止コマンド又は情報、タッチ情報、表面テクスチャ情報、圧力情報、電磁界強度表示又は他の種類の情報のうち少なくとも1つを含み得る。
【0060】
さらに、上記少なくとも1つの神経刺激信号を選択する手段は、複数の概念的情報と複数の対応する神経刺激信号との間の上記人に固有の関係を格納するデータ格納手段にアクセスする手段を含み得る。
【0061】
例えば、上記格納された固有の関係は、上記人に関する概念学習データに少なくとも部分的に基づいていてもよく、上記概念学習データは、上記複数の概念的情報を上記複数の対応する神経刺激信号に関連付けている。
【0062】
例えば、人が認知及び/又は概念学習法に参加し、概念的情報(例えば、空間内の方向)によりある体性感覚認知(例えば、左掌上の触感)を特定することを学習したことがあれば、概念的情報とそれぞれの体性感覚認知を顕在化させる特定の神経刺激信号との間の関係をデータ格納手段に格納することができ、その人と後で意思疎通する場面でこれにアクセスすることができる。
【0063】
例えば、上記少なくとも1つの神経刺激信号は、上記人の上記皮質に意識的又は無意識的な知覚認知を引き起こすように適合され得る。
【0064】
人の知覚皮質をターゲットにしている少なくとも1つの求心性軸索を刺激するための実際の用途及び/又は使用される技術的プラットフォームによっては、上記少なくとも1つの神経刺激手段は、電気神経インタフェイス手段、光神経インタフェイス手段及び/又は化学神経インタフェイス手段を含み得る。
【0065】
例えば、電気神経インタフェイス手段は、好ましくは複数の独立制御可能な電気的刺激接点を含む少なくとも1つの刺激電極を備えていてもよい。例えば、そのような刺激電極は、人間の脳の視床領域をターゲットにするように適合された多接点DBS電極であってもよい。
【0066】
好適な信号源があれば、そのような多接点電極により、刺激電極の周囲に複雑な空間的な電気的刺激パターンを生成可能な独立した多チャネル電流制御が可能になる。このように、刺激電極の近傍の軸索の所望のサブセットを選択的に刺激するように単一の電極を使用することができる。本質的に、そのような多チャネル電極を介して選択的に刺激することができる異なる軸索又は異なる軸索束の数は、上記電極を介して確立可能な異なる神経伝達チャネルに対応している。
【0067】
生成可能な興奮パターンの空間的分解能をさらに改善するために、上記電気神経インタフェイス手段は、それぞれ好ましくは複数の独立制御可能な電気接点を有する少なくとも2つの独立制御可能な刺激電極をさらに含み得る。
【0068】
例えば、上記少なくとも1つの刺激電極は、刺激とは独立した治療目的で埋め込まれた神経調節電極の少なくとも一部により提供され得る。すなわち、上記神経調節電極の上記一部は、上記治療目的では使用されない部分であってもよい。
【0069】
例えば、多くの場合、例えばパーキンソン病の治療のために神経変調器として使用されるDBS電極は、常に活性状態であるわけではなく、さらに/あるいは治療目的を達成するために必要とされない独立制御可能な接点を含んでいることもある。このため、本発明に係るシステムにより供給される神経刺激信号を与えるために神経調節電極を用いることができる。
【0070】
一般的に、本発明により提供されるシステムは、少なくとも1つの知覚ニューロンをターゲットにしている少なくとも1つの求心性軸索に神経刺激信号を供給してもよく、上記少なくとも1つの知覚ニューロンは、体性感覚皮質領域と、聴覚皮質領域と、視覚皮質領域と、嗅覚皮質領域と、味覚皮質領域と、体性感覚連想皮質領域と、固有受容皮質領域とのうち少なくとも1つに位置していてもよい。
【0071】
他の実施形態においては、本発明は、神経刺激電極の埋込位置又は軌跡を決定するためのシステムであって、特定の知覚モダリティに関連付けられた皮質内の知覚ニューロンをターゲットにしている複数の求心性軸索を自動的に特定する手段と、上記複数の求心性軸索を含む脳組織の量の神経解剖学的画像及び又は基準データを取得する手段と、上記特定された上記複数の求心性軸索及び上記取得された神経解剖学的画像及び/又は基準データに少なくとも部分的に基づいて上記神経刺激電極用の埋込位置及び/又は埋込軌跡を自動的に決定する手段とを備える、システムを提供する。
【0072】
すなわち、上記神経解剖学的画像データを取得する手段は、コンピュータ断層及び/又は磁気共鳴画像データを取得する手段を含み得る。
【0073】
例えば、提供されるシステムは、電極の埋込を行う前に神経刺激電極用の所望の埋込位置及び/又は埋込軌跡に関する情報を神経外科医及び/又は手術ロボットに提供することができる。例えば、人に対してCBIを確立する目的で電極が埋め込まれる場合には、伝達する目的のために、例えば、伝達される概念的情報を符号化するために使用される特定の知覚認知に対して埋込位置及び/又は埋込軌跡を調整することができる。
【0074】
ある実施形態においては、上記埋込位置及び/又は上記埋込軌跡を自動的に決定する手段は、上記知覚ニューロンの少なくともサブセットの刺激速度を最適化する手段を含み得る。このように、所望の認知伝達チャネルの通信帯域幅を電極の埋込前においても高め得る。
【0075】
さらに、上記埋込位置及び/又は上記埋込軌跡を自動的に決定する手段は、上記神経刺激電極により顕在化される少なくとも2種類の知覚認知を好ましくは同時に特定することに少なくとも基づいて上記埋込位置及び/又は上記埋込軌跡を決定するように構成され得る。
【0076】
このように、埋め込まれた電極を用いたCBIのために少なくとも2つの別個の通信チャネルが確立されるように神経外科医及び/又は手術ロボットが埋込プロセスを行うことができる。
【0077】
本質的に、本発明は、人に対する神経インタフェイスを最適に較正する新しい方法を含むものであり、行動関連性の情報搬送信号を主観的に解釈可能な認知に復号化する、あるいは、適切な対応する行動に翻訳する脳の自然な能力を増強するものである。
【0078】
他の実施形態においては、本発明は、人の知覚皮質を刺激するためのシステムであって、上記人に運動合図を与えるように適合された神経刺激信号を取得する手段と、上記人の脳に埋め込まれた神経刺激電極の電気接点に上記神経刺激信号を送る手段とを備える、システムを提供する。
【0079】
例えば、上記神経刺激電極は、上記運動合図を提供することとは異なる目的のために、上記人の上記脳に既に埋め込まれていてもよい。
【0080】
このように、本発明により提供されるシステムと接続するために、追加の電極を埋め込む必要はないが既存の電極を用いることができる。
【0081】
例えば、神経刺激信号は、人の皮質内に知覚認知、好ましくは意識下の知覚認知を顕在化するように適合されていてもよい。例えば、上記知覚認知は、体性感覚皮質領域と視覚皮質領域と、聴覚皮質領域とのうち少なくとも1つにおいて顕在化されてもよい。そのようなシステムを用いることにより、感覚器官及び/又は末梢神経系を刺激することなく、人の皮質内に知覚認知を直接顕在化させることができる。
【0082】
例えば、本発明により提供されるシステムは、(例えば、振せんのようなPD症状の治療のため)神経調節信号で視床又は視床下核を刺激する目的で人の脳に既に埋め込まれているDBS電極に接続することができる。このように、提供されるシステムは、視床の近傍を通り、脳の知覚皮質に突出する求心性知覚軸索を刺激することにより運動合図を提供することができる。そのようなシステムは、イヤフォン、肌表面接点、専用の神経刺激電極などの追加の知覚刺激装置を必要とすることなく、皮質に直接様々な種類の運動合図を提供することができ、そのような求心性知覚軸索の近傍で既に利用可能な電気接点を利用する。
【0083】
換言すれば、異なる目的で神経刺激電極が既に埋め込まれている患者に、既に存在するインプラントを本発明により提供される神経刺激システムに接続することにより、追加の手術を行うことなく、また追加の装備を持ってくる必要がなく、運動合図を簡単に提供することができる。
【0084】
ある実施形態においては、上記神経刺激電極は、脳深部刺激と、神経検知と、脳深部刺激と神経検知の開ループ又は閉ループの組み合わせと、パーキンソン病、癲癇、ジストニア及び/又は振せんの治療と、神経伝達とのうち少なくとも1つのために埋め込まれていてもよい。
【0085】
さらに、ある実施形態においては、上記神経刺激信号が送信される上記電気接点は、上記運動合図を提供することとは異なる目的では使用されなくてもよい。例えば、PD症状の治療のような神経調節治療を行うために多接点DBS電極が使用される場合には、典型的には、実際には、その電気接点のサブセット(例えば1つの接点)のみが神経調節治療刺激信号を与えるために使用される。残りの未使用の接点は、人の知覚皮質をターゲットにしている求心性知覚軸索を刺激し、これにより患者に知覚運動合図又は他の運動情報を提供するために使用することができる。
【0086】
あるいは、神経調節治療を行うために使用される電気接点を別の方法で用いることができる。例えば、神経調節治療を行うために(例えば運動合図を提供することとは異なる目的で)電極が使用されていない期間に運動合図を提供してもよい。
【0087】
さらに、ある実施形態においては、本発明により提供される上記刺激システムは、上記神経刺激電極をその目的に従い動作させる手段も備えていてもよい。例えば、運動合図を提供する神経刺激信号がPDの治療のために埋め込まれたDBS電極の電気接点を介して与えられる場合には、本発明により提供される刺激システムは、電極を介して神経調節治療信号を生成、増幅及び/又は与えるための必要な手段も備えていてもよい。
【0088】
このように、電源、通信インタフェイス、メモリ、信号処理回路などのシステム構成要素を共有して神経調節治療信号と運動合図を提供するように適合される神経刺激信号の両方を提供する単一の神経刺激デバイスに一体化することができる。これにより、それぞれの目的だけに非常に独立した刺激システムを用いることに比べると、複合刺激システムのコスト、複雑性及び電力消費が低減される。
【0089】
さらに、ある実施形態においては、上記神経刺激信号は、上記人により周期的に認知されるように構成された信号又はパルス列信号を含み得る。
【0090】
例えば、周期的に表れる知覚認知を人の皮質内に顕在化させるように神経刺激信号を設計することができる。例えば、神経刺激信号は、患者の脚、足、手、舌などの身体部位に周期的に表れる圧力感覚を顕在化させてもよい。これに代えて、あるいはこれに追加して、聴覚及び/又は視覚知覚認知を周期的に顕在化させてもよい。
【0091】
例えば、人に周期的に認知されるように設計されたそのような信号は、バーストパルスを含んでいてもよい。それぞれのバーストは一連の信号スパイクを含み得る。この場合において、そのような信号の認知される周期性は、バーストパルスの繰り返し率に対応し得る。例えば、バーストパルスは、長さ300msであってもよく、それぞれ1mAの振幅を有する42個の信号スパイクを含んでいてもよい。
【0092】
ある実施形態においては、そのような知覚認知の周期性は、歩行ペース、呼吸リズム、ダンスのリズムなど、神経刺激信号により提供される運動合図に関連する運動の特性に対応し得る。
【0093】
このように、歩行、呼吸、及び/又はダンスのような周期的又は律動的運動又は動作をしたいと思う患者を誘導するために神経刺激信号を用いることができる。
【0094】
さらに、ある実施形態においては、上記神経刺激信号を送信する手段は、さらに、神経刺激電極の電気接点に送信される上記神経刺激信号の周波数、パルス幅、パルス形状及び/又は振幅を制御するように構成され得る。
【0095】
このように、非常に様々な神経刺激信号を送信することができ、これらを用いて例えば知覚皮質における顕在化知覚認知を介して非常に様々な異なる運動合図を人に提供することができる。さらに、周波数、パルス幅、パルス形状及び/又は振幅のような信号パラメータを制御することにより、神経刺激信号と提供される運動合図とを例えばその人に固有の較正及び学習法を行うことによりその人に対して調整することができる。
【0096】
例えば、上記送信する手段は、さらに、上記神経刺激信号の上記周波数、上記パルス幅、上記パルス形状及び/又は上記振幅を介して上記人の運動速度、ペースの規則性及び/又はバランスを制御するように構成され得る。
【0097】
このように、提供されるシステムは、閉ループ運動改善システムの設計を可能にする。人の運動の1以上の特性が決定され、これを用いて神経刺激信号用のフィードバック信号を提供する。このように、提供される運動合図の知覚品質を外部条件及び/又は運動特性の変化に対して動的に調整することができる。
【0098】
さらに、上記神経刺激信号を取得する手段は、上記神経刺激電極に送られる少なくとも1つの神経刺激信号を選択する手段を含み得る。例えば、上記選択する手段は、異なる周波数の少なくとも2つの異なる神経刺激信号を選択するように適合されていてもよい。
【0099】
このように、人、治療指導員及び/又は自立制御論理は、異なる要求に応じて異なる刺激信号を選択することができる。例えば、人は、ゆっくりしたペース又は速いペースで運動を行いたいと思っているか否かに応じて、異なる信号周波数を選択することができる。加えて、運動合図の強度を常にはっきりと認知可能となるように調整することができる。
【0100】
ある実施形態においては、第1の神経刺激信号は、上記人の運動速度、ペースの規則性及び/又はバランスを制御するように適合され、第2の神経刺激信号は、上記人の一時的な運動障害を抑制するように適合され得る。
【0101】
例えば、第2の神経刺激信号は、FOG発現信号及び第1の歩行ペースメーカ信号を人に提供するように適合され得る。このように、同一の神経インタフェイスを用いる同一の刺激システム(例えばDBS電極)を用いて、FOG期間を終了させ、歩行品質を向上し、FOGが生じる頻度を低減する歩行ペースメーカ信号を供給することができる。
【0102】
さらに、上記神経刺激信号を送信する手段は、少なくとも2つの異なる神経刺激信号を上記神経刺激電極の2つの異なる接点に好ましくは同時に送信するように適合され得る。
【0103】
このように、運動合図とともに補助情報を人に与えることができる。例えば、運動合図が第1の電気接点を介して与えられ、第2の接点を用いてバランス信号、身体姿勢、基準位置に対する人の位置に関する情報又は警告信号を通信することができる。
【0104】
他の実施形態においては、本発明は、固有受容情報を人に伝達するためのシステムであって、上記人の身体姿勢に関する情報を取得する手段と、上記取得された情報に基づいて、上記人の皮質内の少なくとも1つの知覚ニューロンをターゲットにする少なくとも1つの求心性軸索に与えられる神経刺激信号を決定する手段と、上記決定された神経刺激信号は、伝達される上記固有受容情報に対応し、上記決定された神経刺激信号を上記少なくとも1つの求心性軸索に与えるように適合された上記人の神経刺激手段に上記決定された神経刺激信号を送信する手段とを備える、システムを提供する。
【0105】
そのようなシステムは、神経系疾患により障害を受けた固有受容感覚又は人の神経系の損傷を代替するために、人の皮質に直接固有受容情報を提供するために、あるいは、生理的な等価物がない人工の固有受容情報を提供するために使用することができる。例えば、上記決定された神経刺激信号は、上記人の上記皮質内で意識下又は潜在意識下の知覚認知を顕在化させるように構成され得る。
【0106】
従来技術とは対照的に、本発明は、運動、姿勢及び固有受容の統合において人を手助けするために人工的手段により自然な求心性固有受容の補充を可能にする。
【0107】
例えば、上記身体姿勢に関する情報は、
a.上記人の関節の連節状態に関する情報と、
b.上記人の関節の屈曲角度に関する情報と、
c.上記人の身体のバランスに関する情報と、
d.上記人の身体の筋肉の緊張に関する情報と、
e.基準位置に対する上記人の身体の一部の位置に関する情報と、
f.上記人の身体の一部の面接触に関する情報と
のうち少なくとも1つを含み得る。
【0108】
さらに、上記人の身体姿勢に関する情報を取得する手段は、
a.圧力センサと、
b.張力センサと、
c.バランスセンサと、
d.加速度センサと、
e.温度センサと、
f.イメージセンサと、
g.力センサと、
h.距離センサと、
i.角度センサと、
j.速度センサと
のうち少なくとも1つを含み得る。
【0109】
そのようなセンサのうち1つ以上を用いることにより、人の身体姿勢の正確なモデルを決定し、それを用いて正確で信頼性の高い固有受容情報を人の皮質に直接伝達するように適合された調整神経刺激信号を決定することができる。
【0110】
さらに、上記神経刺激信号を決定する手段は、複数の固有受容情報と複数の対応する神経刺激信号との間の上記人に固有の関係を格納するデータ格納手段にアクセスする手段を含み得る。
【0111】
この実施形態は、所望の固有受容情報を人の皮質に伝達する効率及び柔軟性を大きく向上させる。例えば、提供されるシステムに接続するか、あるいは提供されるシステムを用いる通信デバイスは、人の皮質内の知覚ニューロンをターゲットにしている求心性軸索を刺激することにより所望の固有受容情報に対応する特定の神経刺激信号を簡単に決定し、これを直接送信することができる。
【0112】
例えば、本発明のある実施形態においては、固有受容情報と対応する神経刺激信号との間の上記格納された関係は、上記少なくとも1つの求心性軸索に関する空間情報、上記少なくとも1つの神経刺激手段に関する空間情報、上記少なくとも1つの求心性軸索に関する神経接続情報、上記神経刺激手段に関連付けられた電界分布、上記人に関する機能的神経画像処理データ、上記人に関する拡散テンソル画像データ、上記人に関係する神経解剖学的基準データ、上記人に関する皮質興奮データ、上記人に関する知覚認知データ、上記人の主観的経験に少なくとも部分的に基づく行動データ及び/又は上記人により認知可能な固有受容情報の数を最大化するための最適化法とのうち1つ以上に少なくとも部分的に基づいていてもよい。
【0113】
さらに、上記格納された固有の関係は、上記人に関する固有受容学習データに少なくとも部分的に基づいていてもよく、上記学習データは、上記複数の固有受容情報を上記複数の対応する神経刺激信号に関連付ける。
【0114】
さらに、上記神経刺激信号を決定する手段は、上記取得された空間情報に少なくとも部分的に基づいて、好ましくは有限要素法及び/又は神経区画モデルを用いて、上記少なくとも1つの求心性軸索及び/又は上記少なくとも1つの知覚ニューロンの興奮確率を決定する手段を含み得る。
【0115】
このように、システムは、神経刺激信号を決定する際に少なくとも1つの軸索の能動電気的特性(例えば、非線形神経興奮性)を考慮することができ、これにより伝達される固有受容情報の特異性及び正確性をさらに高めることができる。
【0116】
他の実施形態においては、本発明は、人に運動情報を伝達するシステムであって、人の皮質に与えられ、上記人に運動合図を提供するように適合される第1の神経刺激信号を供給する手段と、上記人の上記皮質に与えられ、上記人に固有受容情報を提供するように適合される第2の神経刺激信号を供給する手段とを備え、上記第1の神経刺激信号と上記第2の神経刺激信号は、上記人の上記皮質に一緒に提供される、システムを提供する。
【0117】
多くの場合、神経系運動障害は、知覚神経系を介して人の皮質に到達する生理的固有受容情報の劣化をも伴う。このため、運動合図とともに神経伝達インタフェイスを介して固有受容情報を伝達することにより、本発明により提供されるシステムは、運動障害治療の成功率を大きく高めることができる。
【0118】
上述した他の実施形態と同様に、上記第1の神経刺激信号及び/又は上記第2の神経刺激信号は、上記運動情報の伝達とは異なる目的のために(例えば、視床又は視床下核に神経調節治療を施すために)既に埋め込まれた神経刺激電極の少なくとも一部分を介して与えられ得る。
【0119】
あるいは、経頭蓋刺激手段、硬膜下電極アレイ、脊髄刺激手段、光神経インタフェイス手段及び/又は末梢神経刺激手段のような異なる神経インタフェイス手段を介して第1の神経刺激信号及び/又は第2の神経刺激信号を与えてもよい。
【0120】
さらに、上記第2の刺激信号により伝達される上記固有受容情報は、伝達される上記運動情報に関連付けられた上記人の運動に関与する上記人の身体部分に関連するものであり得る。例えば、上記第2の神経刺激信号は、
a.上記人の関節の連節状態に関する情報と、
b.上記人の関節の屈曲角度に関する情報と、
c.上記人の身体のバランスに関する情報と、
d.上記人の身体の筋肉の緊張に関する情報と、
e.基準位置に対する上記人の身体の一部の位置に関する情報と、
f.上記人の身体の一部の面接触に関する情報と
のうち1つ以上の情報を含んでいる。
【0121】
このように、歩行、ダンスなどの運動タスクを行う際に補助となる関連固有受容情報を人に与えることができる。
【0122】
上述した他の実施形態と同様に、第1の神経刺激信号は、人に周期的に認知されるように設計された信号(例えばパルス列信号)を含み得る。
【0123】
さらに、上記第1の神経刺激信号及び/又は上記第2の神経刺激信号を供給する手段は、上記第1の神経刺激信号及び/又は上記第2の神経刺激信号の周波数、パルス幅、パルス形状及び/又は振幅、及び/又は上記第1の神経刺激信号と上記第2の神経刺激信号との間の相対的タイミングを制御するように適合され得る。
【0124】
このように、提供されるシステムは、人に固有の方法で両方の神経刺激信号が人の皮質に与えられることを確実にすることができる。
【0125】
特に、上記第2の神経刺激信号は、記第1の神経刺激信号の周波数よりも2倍よりも高い、好ましく5倍よりも高い、より好ましくは10倍よりも高い、さらにより好ましくは20倍よりも速い速さで供給され得る。
【0126】
第2の神経刺激信号を第1の神経刺激信号よりも頻繁に提供することにより、人は、第1の神経刺激信号により提供される運動合図に関連付けられた運動を行いながら、与えられた固有受容情報を使用することができる。
【0127】
さらに、上記第2の神経刺激信号は、例えば、上記第1の神経刺激信号の周波数よりもずっと大きな速度で上記第1の神経刺激信号に関して準連続的に供給され得る。
【0128】
上述した他の実施形態と同様に、提供されるシステムは、
a.圧力センサと、
b.張力センサと、
c.バランスセンサと、
d.加速度センサと、
e.温度センサと、
f.イメージセンサと、
g.力センサと、
h.距離センサと、
i.角度センサと、
j.速度センサと
のうち少なくとも1つを介して上記人の身体姿勢に関する情報を取得する手段をさらに備え得る。
【0129】
そのようなセンサのうち1つ以上を用いることにより、システムは、人の身体姿勢に関する正確な情報を取得することが可能となる。いくつかの実施形態では、上記人の身体姿勢に関する情報を取得する手段は、
a.衣服と、
b.履物と、
c.人工装具と、
d.整形具と、
e.外骨格と、
f.自律的ロボットコンパニオンと、
g.ウェアラブル電子デバイスと、
h.埋込デバイスと
のうち少なくとも1つに一体化され得る。
【0130】
さらに、本発明により提供される様々なシステムは、神経的興奮測定デバイスを介して記録される神経的興奮パターンに対応する神経測定信号を受ける手段も含み得る。
【0131】
さらに、上記神経測定信号は、
a.脳波記録EEGデバイスと、
b.神経電極と、
c.脳深部刺激電極と、
d.硬膜下電極と、
e.硬膜下電極アレイと、
f.接続されたウェアラブルデバイスと、
g.経頭蓋興奮測定デバイスと
のうち少なくとも1つから受けたものであってもよい。
【0132】
神経的興奮パターンの測定を統合することにより、本発明により提供されるシステムを閉ループ及び/又は神経フィードバックの用途に用いることができる。例えば、システムは、上記人の運動意図及び/又は運動知覚情報に関連付けられた神経的興奮パターンに対応する信号を受信するように構成され得る。
【0133】
このように、人の心によりシステムを直接制御することができる。例えば、スマートフォンのような制御デバイスを介して歩行ペースを調整することに代えて、人は、ゆっくり歩くこと又は早く歩くことを考えるだけでペースを制御することができる。そして、システムは、対応する神経的興奮パターンを記録し、人が意図する歩行ペースに対応する、必要とされる刺激信号パラメータ(例えば周波数、パルス幅、振幅など)を取得する。訓練によって、人は、歩行ペース又は本発明により提供されるシステムによりサポートされる他の運動を完全に動的に制御することさえもできる。
【0134】
他の実施形態においては、本発明は、人の神経刺激装置の動作状態を伝達するためのシステムであって、上記装置の上記動作状態を決定する手段と、上記人の皮質内で知覚認知を顕在化させるように適合された、第1の神経刺激信号を上記人の上記神経刺激手段に送る手段とを備え、上記第1の神経刺激信号は、上記装置の上記動作状態を示すものである、システムを提供する。
【0135】
このように、神経刺激装置は、リモコン又はテレメトリデバイスのような付加的なインタフェイス装置に依存することなく、装置を用いる人の意識に様々な動作状態情報を直接伝達することが可能となる。この結果、装置の性能が悪くなったとき、又は悪くなりそうなときに直接ユーザ又は患者に知らせることができる。
【0136】
例えば、人に示される上記装置の上記動作状態は、
a.上記装置の故障状態と、
b.上記装置の電源の充電状態と、
c.上記装置の通常の動作状態と、
d.上記装置のメンテナンス状態と、
e.上記装置の接続状態と、
f.上記装置の通信状態と、
g.上記装置と外部充電デバイスとの間の電力伝送状態と
のうち1つ以上を含み得る。
【0137】
例えば、ある実施形態においては、システムは、装置が適切に機能するのに必要とされる閾値よりも電池充電レベルが低くなる前に、装置の電池が少なくなった状態をユーザ/患者に知らせるように構成されていてもよい。このように、ユーザは、その人の症状が未治療になるリスクを冒すことなく、電池の交換又は充電を十分にスケジュールすることができる。例えば、デバイスが、患者が認知可能な一連の体性感覚体験(感覚異常)を送り、身体的感覚として現れる患者の内部的警告を本質的に提供する電池が少なくなった状態を(例えば、患者の左手と右手との間で交互に振動の感覚を引き起こすことにより)患者に警告するようにシステムが構成され得る。
【0138】
さらに、神経刺激装置が、神経伝達装置又はコンピュータ脳インタフェイスデバイスである場合には、例えば、無線信号品質が悪くなったとき、又は良くなったとき、さらに/あるいは、装置の通信インタフェイスがユーザに提示されるメッセージ又は情報を受け取ったときにユーザに知らせることができる。
【0139】
同様に、神経刺激装置及び/又はその電源(例えば電池)が皮下に埋め込まれ得る場合には、動作状態は、装置と外部充電デバイスとの間の電力伝達状態を含み得る。そのような外部充電デバイスは、例えば電磁誘導を介してワイヤレスで装置の電源の充電を行うように構成され得る。例えば、装置の動作状態を決定する手段は、外部充電デバイスと神経刺激装置の皮下埋込電源との間の相対位置を決定し得る。第1の神経刺激信号を送信する手段は、その後、電源のワイヤレス充電に好適な充電デバイスと装置との相対位置を示す神経刺激信号を送信及び/又は生成し得る。そのような神経刺激信号は二値であってもよく、すなわち、相対位置が充電に好適なものであるか、あるいはそうでないかを示すものであってもよい。あるいは、神経刺激信号は、人が外部充電デバイスと装置の電源との間の電力伝達を最大化するために充電位置を次第に最適化することができるような(準)連続的なものであってもよい。
【0140】
例えば、ある実施形態においては、上記システムは、上記人の認知及び/又は解釈を意図した上記第1神経刺激信号の送信が行われようとしていることを示す第2の神経刺激信号を送信するため及び/又は上記第1の神経刺激信号の送信が完了したことを示す第3の神経刺激信号を送信する手段をさらに含み得る。
【0141】
このように、神経刺激装置は、状態情報が送られることを最初にユーザ/患者に知らせることができる。その後、ユーザは、第1の神経刺激信号により顕在化される目前の知覚認知に注意を集中することができる。第1の神経刺激信号により送られた情報が認知された後、第3の神経刺激信号が、特に注意を集中させる必要がなくなったことをユーザ/患者に知らせてもよい。
【0142】
さらに、ある実施形態においては、上記装置の動作状態を決定する手段は、
a.電圧、電流及び/又は電力測定回路と、
b.温度センサと、
c.磁界センサと、
d.信号分析回路と、
e.タイマと、
f.接続測定回路と、
g.回路分析回路と、
h.無線パケットデータ分析回路と、
i.神経的興奮測定回路と、
j.電力伝送測定回路と
のうち1つ以上を備え得る。
【0143】
このように、システムは、装置の様々な動作状態を決定することができ、ユーザ/患者に正確かつ詳細な状態情報を提供することができる。
【0144】
さらに、上述したシステムは、
a.上記第1の神経刺激信号及び/又は上記第2の神経刺激信号を生成する手段と、
b.補助電源と、
c.補助デジタル信号処理回路と、
d.少なくとも1つの神経刺激信号又は少なくとも1つの神経刺激信号を生成するための信号パラメータを格納する補助メモリ回路と、
e.信号マルチプレクサ及び/又は切替回路と、
f.上記第1の神経刺激信号及び/又は上記第2の神経刺激信号を増幅するための補助信号増幅器と、
g.磁気及び/又は熱遮蔽装置と、
h.メモリ回路から又は上記装置の通信インタフェイスを介して上記第1の神経刺激信号及び/又は上記第2の神経刺激信号を取得する手段と
のうち少なくとも1つをさらに備え得る。
【0145】
このように、システムは、デバイス状態情報を信号で伝えるために必要な機能を神経刺激信号を介して人に提供する、冗長なハードウェア及びソフトウェア構成要素を提供し得る。例えば、神経刺激装置の主電池の残量が完全にない場合であっても、補助電源が、主電池の残量がないことを人に示すのに必要とされる神経刺激信号を生成及び送信するのに十分なエネルギーを提供することができる。
【0146】
さらに、上記第1の神経刺激信号を生成する手段は、複数の動作状態と複数の対応する神経刺激信号との間の上記人に固有の関係を格納するデータ格納手段にアクセスする手段も含み得る。
【0147】
このように、患者の神経生理学に対して調整可能及び/又は異なる知覚認知を装置の異なる動作状態に関連付ける知覚学習法を介して決定可能な異なる患者の特定の神経刺激信号によって異なるデバイス状態を符号化することができる。
【0148】
さらに、上記第1の神経刺激信号及び/又は上記第2の神経刺激信号は、パルス周波数、パルス極性、パルス形状、パルス振幅及び/又はパルス幅のような複数の信号パラメータにより特徴付けられ得る。
【0149】
特に、信号パラメータの異なる組み合わせは、上記人に示そうとする上記装置の異なる動作状態に対応し得る。
【0150】
さらに、ある実施形態においては、上記神経刺激手段は、
a.脳刺激電極、特に脳深部刺激電極と、
b.硬膜下刺激電極又は硬膜下電極アレイと、
c.硬膜下マイクロワイヤ又はマイクロワイヤアレイと、
d.経頭蓋刺激デバイスと、
e.神経調節電極の未使用接点と、
f.人工シナプスと、
g.光神経インタフェイスデバイスと、
h.化学神経インタフェイスデバイスと、
i.神経面メッシュと、
j.注射可能神経インタフェイスと、
k.例えば人工海馬のような人工脳部品と
のうち1つを含み得る。
【0151】
ある実施形態においては、上記第1の神経刺激信号及び/又は上記第2の神経刺激信号は、上記個人の上記知覚皮質をターゲットにしている少なくとも1つの求心性軸索における活動電位を顕在化させるように適合され得る。特に、上記第1の神経刺激信号、上記第2の神経刺激信号及び/又は上記第3の神経刺激信号は、特定の知覚モダリティに関連付けられた上記人の上記皮質の部分において知覚認知を顕在化させるように適合され得る。
【0152】
すなわち、上記皮質の上記部分は、
a.体性感覚皮質領域と、
b.聴覚皮質領域と、
c.視覚皮質領域と、
d.嗅覚皮質領域と、
e.嗅内皮質領域又はペーペズ回路の構成要素と
のうち1つ以上であり得る。
【0153】
人の皮質を直接ターゲットにしている求心性軸索をターゲットにすることにより、異なる神経刺激信号に対して正確で微細な知覚特異性を得ることができる。例えば、右手の知覚皮質をターゲットにしている軸索の異なる亜集団において活動電位を誘導することにより異なる電池レベルを患者の右手の掌の異なる領域にマッピングしてもよい。
【0154】
他の実施形態においては、本発明は、上述したシステムのいずれかを含む神経刺激装置を提供する。
【0155】
例えば、上述したシステムは、
a.脳深部刺激装置と、
b.神経調節装置と、
c.神経伝達装置と、
d.電気ペースメーカ装置と、
e.経頭蓋刺激装置と、
f.脳マシーンインタフェイス装置と、
g.末梢神経系刺激器と、
h.迷走神経刺激器と、
i.脊髄刺激器と、
j.受容体(例えば圧受容体)又はシナプス刺激器又は変調器と、
k.一体化センサ付き反応性神経刺激デバイスと、
l.神経機能代替デバイス
のような神経刺激装置とともに使用され得る。
【0156】
さらなる実施形態においては、本発明は、神経刺激装置の動作状態を人に伝達するための方法であって、上記装置の上記動作状態を決定し、上記人の皮質において知覚認知を顕在化させるように適合された上記人の神経刺激手段に神経刺激信号を送信し、上記第1の神経刺激信号は、上記装置の上記決定された動作状態を示すものである、方法を提供する。
【0157】
そのような方法は、第1の神経刺激信号の送信が行われてようとしていることを示す第2の神経刺激信号を送信する工程及び/又は上記第1の神経刺激信号の送信が完了したことを示す第3の神経刺激信号を送信する工程をさらに含み得る。
【0158】
上記で既に述べたように、上記装置の上記動作状態は、
a.上記装置の故障状態と、
b.上記装置の電源の充電状態と、
c.上記装置の通常の動作状態と、
d.上記装置のメンテナンス状態と、
e.上記装置の接続状態と、
f.上記装置の通信状態と
のうち1つ以上を含み得る。
【0159】
加えて、そのような方法は、複数の動作状態と複数の対応する神経刺激信号との間の上記人に固有の関係を格納するデータ格納手段へのアクセスに基づいて、上記第1の神経刺激信号、上記第2の神経刺激信号及び/又は上記第3の神経刺激信号を生成する工程をさらに含み得る。
【0160】
すなわち、上記固有の関係は、
a.上記人についての概念学習データと、
b.上記人についての神経画像処理データと、
c.上記人についての電気生理学的測定データと、
d.上記人についての神経接続情報と、
e.上記人の上記神経刺激手段に関する電界刺激データと、
f.上記人についての神経興奮モデルデータと
のうちの1つに少なくとも部分的に基づいていてもよい。
【0161】
このように、ワイヤレス接続信号品質の表示のような複雑なデバイス状態情報さえ、それぞれの人に固有の対応する知覚認知と関連付けることができる。
【0162】
他の実施形態においては、本発明は、上述した神経刺激装置のうちの1つのような神経刺激装置の信号処理回路により実行されると、上述した方法を実行する命令を含む、コンピュータプログラムを提供する。
【0163】
他の実施形態においては、本発明は、上述した実施形態のいずれによるシステムを含む電子情報処理デバイスを提供する。例えば、上記のシステムのいずれかの機能は、メモリ、デジタル・アナログ信号処理回路、DBSデバイスのような様々な種類の神経インタフェイス手段に神経刺激信号を送信可能にするインタフェイス手段(例えば、無線通信インタフェイス)を含むスマートフォンのような汎用信号処理デバイス上で実現され得る。
【0164】
他の実施形態においては、本発明は、上述した実施形態のいずれかによるシステムを含む分散型電子情報処理システムを提供する。例えば、一部のシステム構成要素はまとめられていなくてもよいが、有線又は無線通信インタフェイスを介して通信可能に接続され得る。
【0165】
他の実施形態においては、本発明は、電子情報処理デバイス又は分散電子情報処理システムにより実行された場合に、上述した実施形態のいずれかに係るシステムの機能を実現するための指令を含むコンピュータプログラムを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0166】
本発明の側面は、添付図面を参照することにより以下でより詳細に述べられる。これらの図面は以下のものを示している。
図1図1は、人の知覚皮質をターゲットにしている求心性軸索を刺激するための神経刺激電極を示す図である。神経刺激電極は、本発明の実施形態による神経刺激システムに連結可能である。
図2図2は、本発明の神経刺激信号の実施形態による神経刺激システムに連結可能な神経刺激電極を駆動する神経刺激信号発生器のブロック図である。
図3図3は、本発明の実施形態による神経刺激システムのブロック図である。
図4a図4aは、本発明の実施形態による神経伝達システムの動作を示す図である。
図4b図4bは、人間との神経伝達インタフェイスを確立するための手法のためのワークフロー図である。
図5図5は、本発明の実施形態による神経伝達システムを用いた概念的情報の符号化を示す図である。
図6図6は、本発明の実施形態による神経伝達システムを用いた概念的情報の符号化を示す図である。
図7図7は、本発明の実施形態による神経伝達システムを用いた概念的情報の符号化を示す図である。
図8図8は、本発明の実施形態による神経刺激システムにより提供される神経刺激信号に関するパラメータ空間を示す図である。
図9図9は、本発明の実施形態による神経刺激システムにより提供される神経刺激信号に関する信号パラメータの選択を示す図である。
図10図10は、知覚認知と、本発明の実施形態による神経刺激システムにより伝達される対応する概念的情報との間の学習関係に関する概念学習法を示す図である。
図11図11は、神経刺激信号と、本発明の実施形態による神経刺激システムにより伝達される対応する概念的情報との間の関係を確立するための較正及び学習法のブロック図である。
図12図12は、人間の脳の求心性軸索をターゲットにしている2つの神経刺激電極に接続可能な本発明の実施形態による神経刺激システムの動作を示す図である。
図13図13は、遠心性運動軸索の変調用に適合される治療用多接点神経調節電極の磁気共鳴画像である。電極の未使用接点は、本発明の実施形態による神経刺激システムを介して人の知覚皮質をターゲットにしている求心性軸索を刺激するために使用してもよい。
図14図14は、本発明の実施形態による神経刺激システムを動作させる人を示す図である。
図15図15は、人の知覚皮質をターゲットにしている求心性軸索を刺激するための神経刺激電極を示す図である。神経刺激電極は、本発明の実施形態による神経刺激システムに接続可能である。
図16図16は、運動障害に関連付けられた脳核の変調に適合される治療用多接点神経調節電極を示す図である。本発明の実施形態による神経刺激システムを介して人の知覚皮質をターゲットにしている求心性軸索を刺激するために電極の未使用接点を使用することができる。
図17A図17Aは、本発明の実施形態による神経刺激システムに接続可能な神経刺激電極を駆動するための神経刺激信号発生器のブロック図である。
図17B図17Bは、本発明の実施形態による神経刺激システムのブロック図である。
図18図18は、本発明の実施形態による神経刺激システムを使ってどのように運動合図チャネルを実現できるかを示す図である。
図19図19は、運動合図及びFOG発現信号を供給するように適合された例示的神経刺激信号を示す図である。
図20図20は、本発明のさらなる実施形態による神経刺激システムを動作させる人を示す図である。
図21図21は、本発明の実施形態による神経刺激システムを用いてどのように固有受容情報チャネルを実現できるかを示す図である。
図22図22は、人の膝の関節の連節状態に関する情報を伝達するために図21の固有受容情報チャネルをどのように用いることができるかを示す図である。
図23図23は、図20に示される人が歩行タスクを行ったときの図19の運動合図チャネルと図21及び図22の関節連節状態チャネルとの相対的タイミングを示す図である。
図24図24は、本発明の実施形態によるシステムを備える神経刺激装置/デバイスのブロック図である。
図25図25は、本発明の実施形態によるシステムの一部となり得る、あるいはこれとともに使用し得る動作状態回路のブロック図である。
図26図26は、本発明の実施形態によるシステムを備える神経刺激装置/デバイスのブロック図である。
図27図27は、本発明の実施形態による神経刺激システムを用いてどのように二値電池充電状態チャネルを実現できるかを示す図である。
図28図28は、動作状態情報をモニタリング及び信号処理するように適合される本発明の実施形態によるシステムを備える神経刺激装置のブロック図である。
図29図29は、本発明の実施形態によるシステムの一部となり得る、あるいはこれとともに使用し得る動作状態回路のブロック図である。
図30図30は、本発明の実施形態による神経刺激システムを用いてどのように通信状態信号及びデバイス故障信号を実現できるかを示す図である。
図31図31は、神経刺激デバイスの出力信号が特定のパラメータ範囲内にあるか否かをモニタリングするように構成される、本発明の実施形態によるシステムを備える神経刺激デバイス/装置のブロック図である。
図32図32は、本発明の実施形態による神経刺激システムを用いて電池充電レベルを信号で伝えるための(準)連続通信チャネルをどのように実現できるかを示す図である。
図33図33は、本発明の実施形態による神経刺激システムを用いて無線接続状態を信号で伝えるための(準)連続通信チャネルをどのように実現できるかを示す図である。
【例示的な実施形態の詳細な説明】
【0167】
以下では、本発明の例示的な実施形態が、脳深部刺激(DBS)電極のような神経刺激電極とインタフェイスで連結可能な神経刺激及び/又は通信システムを参照しつつより詳細に述べられる。しかしながら、本発明により提供されるシステムは、人の知覚皮質をターゲットとする求心性軸索を刺激することができる異なる神経刺激手段(例えば光神経)とともに用いることもできる。以下では、本発明の例示的な実施形態に関して特定の特徴の組み合わせが述べられるが、本開示は、そのような実施形態に限定されないことを理解すべきである。換言すれば、本発明を実施するためには、すべての特徴が存在しなければならないというわけではなく、ある実施形態のある特徴を他の実施形態の1以上の特徴と組み合わせることによって実施形態を変更してもよい。具体的には、当業者であれば、ある実施形態の特徴、構成要素及び/又は機能的要素が、本発明の他の実施形態の技術的に互換性のある特徴、構成要素及び/又は機能的要素と組み合わされ得ることを理解するであろう。
【0168】
図1は、人間の脳の皮質100内の知覚ニューロンをターゲットとする求心性軸索120を刺激するための神経刺激電極130を示す図を表すものである。求心性軸索120は、異なる知覚モダリティ(例えば、触感、温度感覚、視覚、聴覚など)及び/又はそこから皮質のそれぞれの領域によりそれぞれの知覚モダリティが認知される異なる身体領域(例えば、蝸牛、網膜、手、舌、足など)に関連し得る皮質100の異なる領域110,120をターゲットにする。例えば、皮質領域110は舌の体性感覚領域であってもよく、皮質領域112は左手の体性感覚領域であってもよい。
【0169】
求心性軸索120は、皮質100のそれぞれの知覚領域110,112におけるそれぞれのターゲットニューロンとシナプス(図示せず)を介して接続される。例えば、軸索120は、知覚情報を視床から大脳皮質100に中継する視床皮質軸索であり得る。神経刺激電極130は、大脳皮質100の知覚領域110及び112をターゲットとする求心性軸索の束の近傍に配置された独立制御可能な複数の電気接点132を備えている。図示されている例では、神経刺激電極130は神経刺激信号発生器140に接続されており、この神経刺激信号発生器140は、神経刺激電極130の独立制御可能な電気接点132を介して神経刺激信号を求心性軸索120に与えるように適合されている。加えて、神経刺激電極130は、信号発生器140により生成され、刺激電極130を介して求心性軸索120に与えられる神経刺激信号の波形及び/又は信号パラメータ(例えば、パルス幅、パルス形状、周波数、振幅、パルス数など)を決定するように適合され得る神経刺激システム(図示せず、図3参照)に信号発生器140を連結するための無線インタフェイス142をさらに備えていてもよい。
【0170】
例えば、神経刺激システムは、所望の知覚認知が人の知覚皮質の所望の領域で顕在化されるように神経刺激信号の波形及び/又は信号パラメータを決定し得る。本発明のある実施形態においては、(刺激を受ける求心性軸索120の求心性活動電位を介した)神経刺激信号を受けている人の皮質100は、対応する知覚認知を文字、言葉、物体、方向などの概念的情報に関連付け得る。例えば、モールス符号を理解する方法を学ぶのと同様に、与えられる刺激信号によって顕在化される知覚認知と、神経刺激電極130を介して人に伝達しようとしている対応する概念的情報(例えば、図5図7参照)と間に連想リンクを確立する概念学習法(例えば図10参照)に以前に参加したことがある人がいるかもしれない。
【0171】
このアプローチにおいては、神経刺激電極130は、核又はニューロンが豊富な灰白質をターゲットにしないことが好ましく、脳の軸索が豊富な白質をターゲットにすることが好ましい。白質は、脳が自然な神経伝達のために使用する情報伝達経路を含んでいる。このように、本発明は、白質コンピュータ脳インタフェイス(CBI)、すなわち脳が意味のある入力であると解釈することができる電気信号を生成し、供給するシステムを提供するものである。そのような白質CBIの最大効率は、軸索単繊維120の完全に選択的な補充を介して達成されるであろう。
【0172】
本発明の他の実施形態においては、電極130、信号発生器140及び/又は無線インタフェイス142は、例えば、これらの構成要素が神経伝達のために、すなわち直接神経伝達のためにカスタマイズされている場合には、一体化神経刺激及び/又は伝達システムの一部となっていてもよい。例えば、神経伝達システムは、スマートフォンのような多目的計算デバイス上で実行される特別な通信ソフトウェアと、Wi-Fi、Bluetooth及び/又はNFCなどの従来の無線データ伝送技術を用いた無線インタフェイス142を介して多目的通信デバイスと通信する信号発生器140及び刺激電極130のカスタマイズされたアセンブリとを含み得る。
【0173】
本発明の他の実施形態においては、神経刺激電極130は、データ処理システムと信号発生器140に類似した信号発生器とを含む神経刺激システムに導電ワイヤを介して直接接続され得る。この場合においては、無線インタフェイス140は必要ではない。
【0174】
図2は、図1の刺激電極130のような神経刺激電極を介して神経刺激信号を求心性軸索120に与えるために使用することができる神経刺激信号発生器140のブロック図である。神経刺激信号発生器140は、図1を参照して上記で述べられた所望の知覚認知を顕在化させるために、神経刺激信号の波形及び/又は信号パラメータを決定し、選択し、信号発生器140に送るように適合され得る遠隔神経刺激システム(例えば図3参照)と通信するための無線インタフェイス142を含み得る。
【0175】
例えば、神経刺激信号発生器140は、無線インタフェイス142を介して所望の神経刺激信号を特定するデジタルデータパケットを受信してもよい。受信器(RX)回路210は、受信したデジタルデータパケットを処理(例えばフィルタ、増幅、混合、ベースバンドへのダウンコンバートなど)し、一体化デジタル-アナログ変換器(DAC)を含み得るデジタル信号プロセッサ(DSP)220に処理されたデジタルデータパケットを送ってもよい。そして、DSPは、デジタルデータパケットを処理して、その後出力増幅器(AMP)230により増幅され、図1の電極130のような神経刺激電極に与えられ得る1以上の神経刺激信号を生成する。例えば、出力AMP230は、例えば、図1の電極130のような刺激電極の4つ(又は他の個数の)独立制御可能な電気接点132を4つのワイヤ240を介して駆動するように構成され得る。
【0176】
他の実施形態においては、DSP220は、有線インタフェイスを介して、あるいはコロケートされたデジタルデータパケット処理回路(例えばCPU)から直接に神経刺激信号を特定するデジタルデータパケットを受信し得る。このデジタルデータパケット処理回路は、神経刺激電極130を介して顕在化させようとしている所望の知覚認知及び/又は人に伝達しようとする所望の概念的情報に対応する所望の神経刺激信号の波形及び/又は信号パラメータを決定するように適合される。
【0177】
図3は、本発明の実施形態による神経刺激及び/又は伝達システム300のブロック型回路図を表している。神経刺激及び/又は伝達システム300は、例えば、図2を参照して上記で述べられた生成回路140のような神経信号発生器と(例えばBluetooth技術を介して)通信するための無線インタフェイス310及び送信器(TX)回路350を含み得る。TX回路350は、無線インタフェイス310を介して通信されるデジタルデータパケットを処理(すなわち、フィルタ、変調、混合、増幅、及び/又はアップコンバート)するように適合され得る。神経刺激及び/又は伝達システム300は、TX回路350と動作可能に接続され、図1の電極130のような神経刺激電極及び/又は図1及び図2の信号発生器140のような神経刺激信号発生器を介して与えられる所望の神経刺激信号の波形及び/又は信号パラメータ(例えば、周波数、位相、パルス幅、パルス振幅、パルス形状、チャネル数など)を特定するデジタルデータパケットを供給するように適合されたデジタル信号プロセッサ(DSP)340をさらに含み得る。
【0178】
神経刺激及び/又は伝達システム300は、DSP340と動作可能に接続されるCPU320のような汎用データ処理回路と、CPU320と動作可能に接続される少なくとも1つのデジタルメモリデバイス330とをさらに含み得る。
【0179】
CPU320及びメモリ330は、所望の知覚認知及び/又は知覚認知に関連付けられた対応する概念的情報に対応する所望の神経刺激信号を決定するために相互に作用し合ってもよい。
【0180】
例えば、メモリ330は、その人の個人用コミュニケーションライブラリであって、複数の概念的情報ブロックと複数の対応する神経刺激信号との間の関係332を格納したライブラリを含み得る。例えば、メモリ330は、アルファベットのそれぞれの文字に対して及び/又はゼロから10までのそれぞれの数字に対してそのような関係332を格納してもよい。本発明の他の実施形態においては、メモリ330は、刺激信号と物体、色、方向のような他の種類の概念的情報との間の関係も格納してもよい。
【0181】
本発明の重要な概念は、それぞれの人に対するそのような刺激ライブラリをその人の神経画像処理及び個人的試験の両方を通じて較正することにある。神経画像処理は、まず、それぞれの刺激電極に対して理論上可能な活性化範囲を特定するために使用され得る。個人的試験は、刺激信号パラメータ(詳細については以下の図8及び図9を参照)のパラメータ空間におけるどの点がその人の皮質によって認知され復号化される電位を有しているのかを決定する。人の意識的な個人的試験は、メモリ330に格納される個人用の関係332をどのように生成するかの1つの具体例に過ぎないことは強調されるべきである。他の実施形態においては、そのような関係332は、例えば、体性感覚皮質又はEEG記録に関する対応する機能的MRI(fMRI)反応の非侵襲観察を通じて、意識のない患者からも得られることがある。
【0182】
さらに、人に対してコミュニケーションライブラリ(すなわち、メモリ330に格納された複数の関係332)が確立されるか、確立されようとしているときには、特定の訓練法(図10参照)を実行することができる(意識のある個人においては必ずしも必要とされない)。人の皮質が古典的条件付けに反応する限りにおいて、ペア学習を実行することができる。この文脈においては、そのようなペアは、所定の神経刺激信号に対応する所定の知覚認知と、上記所定の知覚認知及び対応する神経刺激信号に関連付けられる概念的情報とからなる。
【0183】
重要なことに、神経刺激及び/又は伝達システム300を介して伝達される情報の種類は、視覚的なものであると、概念的なものであると、カテゴリ的なものであると、聴覚的なものなどであるとを問わず、自由に選ぶことができる。メッセージブロックに分解することができる情報又はメッセージ(すなわち、人の皮質によって復号することができる概念的情報)は伝達することが可能である。これは、例えば人工的バランスのために必要とされる信号、方位信号又は他の測定(例えば高度計)信号のような連続信号源を含んでいる。連続信号用の学習パラダイムは、信号の利用が関連する成功ファクタ(例えば、入力信号を用いた人工仮想環境における方位)となるような、よりインタラクティブな訓練シナリオを含むので、古典的条件付けから逸するものである。また、連続信号(例えば強度)は、順次伝達されるメッセージブロック(例えば、人がそれぞれの文字に関連付けるように訓練される知覚認知に関連付けられた単語における文字)を含むメッセージに関する信号構成から逸するものである。連続信号の場合には、強度(すなわち、伝達される1次元情報)は、補充される軸索繊維によりターゲットにされる知覚皮質中の位置及びターゲット領域を変化させることなく、パルス幅又は周波数変化(又はこれら2つの組み合わせ)を介して符号化され得る。
【0184】
図4は、本発明の実施形態による神経伝達システムの動作を示すものである。理解を容易にするために、人の皮質110のそれぞれの領域412~418における知覚ニューロンをターゲットとする複数の求心性軸索120への刺激を介して知覚皮質の4つの別個の領域412~418を刺激することができるように、4つの独立制御可能な電気接点132~138を含む単一の神経刺激電極130が人の脳の白質領域に埋め込まれている単純な設定においてその動作を述べる。例えば、求心性軸索120は、人の視覚、聴覚及び/又は体性知覚系に属する視床皮質軸索であってもよい。求心性軸索120の副腎皮質刺激組織により、刺激電極130のそれぞれの電気接点132~138と人の知覚皮質100の対応する領域412~418との間の1対1対応が確立され得る。例えば、電極130の接点132に与えられる神経刺激信号の波形及び/又は信号パラメータは、知覚皮質の所望の領域412をターゲットにしている求心性軸索120の特定の亜集団においてのみ活動電位が顕在化する、あるいは該亜集団において主に顕在化するように、(例えば、図3の神経刺激システム300により)決定され得る。
【0185】
例えば、領域412(414,416,418)は、人の右手の親指(人差し指、中指、薬指)の触感を認知することにリンクされているか、あるいはこの触感を認知する役割を担っている場合がある。この意味においては、図4aの神経刺激電極130は、4チャネルCBIを確立するために使用され得る。この文脈においては、「チャネル」という用語は、人の皮質に対する任意の別個の伝達チャネルであって、他のそのようなチャネルから分離可能な入力を皮質がそのチャネルを通じて受け取ることが可能な伝達チャンネルを含むものとして広く理解されなければならない。
【0186】
皮質組織は人によって異なるので、図3に関して上記で述べた神経コミュニケーションライブラリ(及びそこに格納される神経刺激信号)は、好ましくは、それぞれの人に対して別個に確立されカスタマイズされる。例えば、術後画像処理において電極130の場所を特定し、接点132~138を特定し、この情報をDTIに基づく個人トラクトグラフィに融合させることから、図3のシステム300のような神経刺激及び/又は伝達システムは、刺激電極130により補充される軸索繊維120の活動電位を顕在化させるためにその後使用することが可能な空間的に別個な活性組織量(VTA)を自動的に計算することができる。図示されている例においては、選択的に刺激可能な軸索繊維集団の数は、解釈のためにそれぞれの知覚皮質領域412~418に情報(すなわち、知覚認知及び/又は関連する概念的情報)を送るために使用可能なチャネル数(すなわち4つ)に等しい。
【0187】
ある実施形態においては、最終的に人の認知閾値よりも低い強度で求心性軸索120の刺激が起こり得る。換言すれば、対応する知覚認知が潜在意識下にある。刺激電極130の活性接点132~138の周囲にある活性化された軸索繊維120を介して一意かつ選択的に刺激され得る対応する皮質領域で終端する別個の繊維経路の数が多くなればなるほど、より多くの別個の2値信号及び/又は多記号伝達チャネルを確立することができる。
【0188】
2値信号又は信号チャネルは、所定の神経刺激信号により(例えば、神経刺激及び/又は伝達システム300から神経信号発生器140及び/又は神経刺激電極130を介して与えられる電流パルス列により)活性化され、あるいは活性化されない組織(軸索繊維120)の量である。
【0189】
これらの活性化された軸索繊維120は、知覚皮質の体性感覚的及び/又は網膜部位的に組織化された領域に通じ得る。補充された軸索繊維は、皮質上で身体部位をつかさどる1つの特定の部分を活性化させ、そして、それを次に脳によって復号化し、伝達する所望の知覚認知及び/又は概念的情報に関連付けることができる。この活性化は、2値(オンとオフ又はオンと全く刺激なし)としもよいし、あるいは、定義された範囲内で信号強度を周波数及び/又は振幅について変調することにより(以下の図8及び図9を参照)連続的としてもよい。
【0190】
図4bに図示されているワークフローは、電極130のような神経刺激電極を介して神経伝達チャネルを確立するために行われ得る工程の一部の要約している。工程400A~400Eの一部又は全部は、本発明により提供される神経刺激及び/又は伝達システムにより実行され、さらに/あるいは促進され得ることに留意されたい。
【0191】
1.400A:対象のDTI神経画像処理データから例えば視床を問題となっている皮質領域に接続する軸索繊維をトラクトグラフィにより再構築する。上記皮質領域(及びそこに繋がる繊維)は、体性感覚、網膜部位などの組織を有していなければならない(このアプローチは、体性感覚皮質、聴覚皮質、V1/V2皮質などをターゲットとする軸索に対して有効である)。
【0192】
2.400B:人の術後CT又はMRI画像から神経刺激電極130の場所を特定し、電気接点132~138の幾何学的特性及び位置をモデル化する。
【0193】
3.400C:それぞれの単一電気接点132~138に対してVTAが電極130の周囲の繊維エンベロープの外側境界に達する最大電流パルス振幅(例えばmAで測定される)を(望ましくない副作用を生じることなく刺激することができる軸索120の部分を考慮しつつ)計算する。
【0194】
4.400D:得られたVTAを加えて電極130のコミュニケーションエンベロープを確立する。
【0195】
5.400E:問題となっている皮質の最大限に別個の/分離した領域、すなわち領域412~416をそれぞれの領域に繋がる軸索繊維120を介して刺激することにより最適コミュニケーションが確立される。
【0196】
最小軸索繊維数/束径は、意思伝達を可能にするのに十分な軸索繊維120を依然として補充することができるVTAがどれほど小さいかを規定する下限である。理想的には、それぞれの束は、(体性感覚的に区画化される)知覚皮質の異なる区画で終端している。
【0197】
手術の成功に基づいて、それぞれの電極位置によって、意思伝達のための異なる帯域幅が提供され得ることに留意すべきである。考えられる帯域幅は、2つの機能に基づいて決定される。1つ目は、工程400Dの基礎となる機能であり(例えば、軸索繊維120の近傍に接点がない場合には、刺激を与えることができず、伝達チャネルを確立することができない)、2つ目は、工程400Eの基礎となる機能である。
【0198】
工程400Eの機能は、別個の軸索繊維集団を一意に刺激する可能性に関して電極位置を特徴付ける。このため、刺激電極130の位置だけではなく、電極の種類(リング状又は双方向性又はその他)及び考えられる刺激パターンの範囲が役割を果たす(陰極的刺激のみ、又は双極的刺激、二相性刺激、多領域刺激、MICC=独立多電極電流制御など)。例えば、MICCを有するシステムは、それぞれの個々の電極接点132~138に接続される一意な信号源を有しており、これにより、図3の神経刺激及び/又は伝達システム300が細分化電流により刺激することが可能となり(例えば、同時に接点1に電流の20%を、接点2に電流の80%を印加する)、また、同時多領域刺激を行うことが可能となる(例えば、接点132において20Hzで3mAのパルス振幅により刺激し、同じ電極130の接点134において120Hzで2mAにより刺激する)。
【0199】
図5図7は、人の皮質によって異なる神経刺激信号500,600,700及び/又はVTAがどのように異なる文字、異なる種類の動物及び/又は異なる種類の抽象的な数学的演算などの様々な異なる種類の概念的情報510,610,710にリンクされ得るかを示している。定義済みの陰極/陽極構成及び電流構成によりVTA形状が生成され、パルス形状は、ブロック状、ランプ状あるいはこれらの組み合わせであり得るものであり、異なる周波数、パルス長又は交番刺激強度を有し得る。訓練/較正段階(以下の図10参照)においては、所定の神経刺激信号及び対応するVTA形状を介して顕在化した知覚認知を文字(例えばABC)、方向(例えば左、右、半ば左、半ば右)又は概念(例えば止まる、進む、危険)などの事実上任意の種類の概念的情報に関連付けることができる。
【0200】
図8は、図1及び図4aに示される神経刺激電極130の電極接点132~138のうちの1つにより提供されるチャネルのような神経伝達チャネルのための単純な2次元パラメータ空間を示すものである。この例では、信号パラメータは、図5図7に示されるパルス列のような一連の電流パルスに対するパルス周波数及びパルス幅である。
【0201】
0Hz近傍の灰色の網掛け領域は、この領域では、刺激信号の周波数が低すぎて人の知覚皮質の対応領域において知覚認知が顕在化しないことを示している。50Hz近傍の灰色の網掛け領域は、意味のある知覚認知を顕在化させるのには適していない別の領域を示している。
【0202】
図8の小さな白い円のそれぞれは、この周波数とパルス幅との組み合わせにより特徴付けられる神経刺激信号を与えるために使用されるそれぞれの電気接点、例えば図4aの接点132に対応する皮質領域、例えば図4aの領域412内で別個の(すなわち区別可能な)知覚認知を顕在化させるために使用され得る周波数とパルス幅との考えられる組み合わせを示している。
【0203】
濃い灰色の網掛け領域800も、これらの範囲に対応する刺激信号が、対応する意識的知覚認知を人がはっきりと区別する、さらに/あるいはその場所を特定する能力を低下させることになり得るため、神経伝達に適していないパラメータ範囲を示している。
【0204】
図9は、3つの別個の記号(例えば、低、中、高又は1、2、3)を用いた伝達チャネルが信号パラメータの3つの異なる組み合わせ(小さな濃い色の円により示される)を用いることによりどのようにして実現されるのかを示すものである。パラメータ領域900及び910も、例えば対応する刺激信号が痛みを伴ったり、意識閾値を下回ったりするために神経伝達に不適であると判断されている。この意味では、それぞれ3つの記号を信号で伝えることが可能な3つのそのような神経伝達チャネルは、すでに33=27個の異なる概念的情報を伝達するのに十分であることに注目すべきである。換言すれば、3つの独立制御可能な電気接点を有する図1及び図4aの電極130のような単一の刺激電極は、アルファベットのそれぞれの文字及びストップ記号を直接神経伝達を介して人に直接伝達するには十分であり得る。この神経伝達パラダイムが適切に動作するためには、人は、モールス符号を学習するのと同様に、27個の異なる神経刺激信号のそれぞれによって顕在化された知覚認知とアルファベットのそれぞれの文字との間の関連付けを学習する必要がある。
【0205】
上記の例を続けると、それぞれの皮質領域412,414,416,418に1対1で繋がる軸索繊維120に作用するそれぞれの電極接点132,134,136,138を刺激する(信号を身体部位に二値的に関連付ける(その部位が刺激されているかいないか)ように皮質を本質的に訓練する)こと、あるいは組み合わせて送られる弱い刺激、中ぐらいの刺激又は強い刺激と組み合わせることによって伝達信号を生成することができる。
【0206】
個々に、特定の軸索繊維束120及びそれぞれの患者が区別可能な関連する身体部位の刺激のレベル(例えば人が知覚認知の異なる強度レベルの差を言うことができる)は、神経伝達チャネルの帯域幅を決定するのに基本的な役割を果たす。4つの領域と3つの区別可能な強度レベルを有する上記の例では、81個の別個のパターン(すなわち順列)が生成され、認知され、CBIを介して人に伝達しようとする概念的情報と関連付けられる。区別可能なレベルを確立することは、意識的に認知可能なレベルで、訓練法を行っている人にインタビューする際に(オープン較正、図10参照)、あるいは、頭蓋骨の表面からのEEG記録又は皮質下白質刺激に対する皮質反応を記録する多の電気生理学的手段により(クローズド較正)実行される。
【0207】
人の皮質の区画化は事前に分かるものではないが、そのような個人ごとに作成されるマップを生成するために使用可能な科学的方法(例えば経頭蓋磁気刺激法)が当該技術分野において知られている。例えば体性感覚領域においてできる限り別個の皮質の身体表現の個人ごとに作成されるマップがなければ、軸索繊維束120を補充することができる。この意味では、「別個」又は「分離した」は、それぞれの刺激信号が他の刺激信号によって補充されない軸索繊維集合を補充することを意味している。
【0208】
その後、逆解を計算して、どの電極構成(潜在的に双極性及び/又は二相性)が、できる限り他のすべての繊維を避けつつ、最も区別可能な形で軸索繊維を補充することができるのかを決定することができる。そのような工程においては、髄鞘形成、軸索径及び電気的導電性モデル(例えば、局所的瘢痕又は水腫からの組織内の水分の関数としてのインピーダンス)の計算に関連する他の解剖学的特性のようなファクタだけではなく、それぞれの軸索構造が刺激電極を通過するときの角度が考慮され、それぞれの繊維について結果的に最適な刺激条件(実際の電極幾何的構成に依存する)が計算され、同様の皮質終了領域と幾何学的近接性を有する繊維がチャネルに束ねられる。
【0209】
一実施形態においては、一定のパルス幅及び一定の振幅の神経刺激信号(例えばmA範囲の電流)を介してターゲット軸索繊維集団が活性化される。そして、刺激信号の周波数における変調を介して顕在化された知覚認知の強度(例えば、上記例におけるレベル1,2,3)が具体的に示される。
【0210】
より詳細に述べる。強引なアプローチであれば、擬似ランダム刺激パラメータから電極のコミュニケーションエンベロープ内でVTAを生成し(あるいは、多次元パラメータ空間で十分な歩行を行い)、補充される軸索繊維とその皮質終了領域を決定するであろう。パラメータ空間を検討し尽くした後、最大限に地理的に離れ、重なっていない皮質領域を補充するそれらの刺激設定(例えば1組の信号パラメータ)が神経伝達チャネルとして格納される。この最後の工程は、単に活性化された皮質ボクセル3D重心座標を束ねることとして行うことも可能である。このとき、それぞれのクラスタは、所定のチャネルにより指定される皮質繊維終了領域を表している。もちろん、(例えば神経ソフトウェアを介して行われる)神経区画モデリングから1つだけの軸索繊維の活性化を実際に近似する、VTAを用いない方法がずっと好適である。この場合において、トラクトグラフィ(例えばDTIトラクトグラフィ)から簡素化された軸索繊維を実際の軸索繊維の代役として用いることができ、上述のように終了領域が決定される。
【0211】
図10は、そのような概念的/認知的学習法1000が動作神経伝達システム/CBIを確立するためにどのように実施され得るかを示すものである。図示された例では、人1030に2つの神経刺激電極130が埋め込まれた。人1030は、導電ワイヤを介して刺激電極130に接続された神経伝達システム300により生成される所定の神経刺激信号1020を受け取る。ある概念的情報(例えば、文字、物体など)を与えられた神経刺激信号1020に連想的にリンクさせるために、ディスプレイスクリーン1010及び/又はスピーカ(図示せず)を介して人1030にそれぞれの概念的情報が提示される。
【0212】
オペラント手段及び古典的条件付けを通じて、所定の知覚認知と概念的情報との間の関連付けを訓練により刷り込むことができ、最終的には検証タスクにおいて試験することができる(例えば、知覚認知を刺激し、人に訓練中に連想リンクを確立するために使用された対応する視覚的及び/又は聴覚的な合図を示すことなく対応する概念的情報を特定することを依頼する)。
【0213】
そのような古典的条件付けパラダイムを介して、(視覚的な開始・終了の合図の後と前に)言葉のような視覚的な合図をスクリーン1010上に表示する。言葉の表示(メッセージ)中に、特徴的な神経刺激信号1020が電極130を介して与えられる。多数回にわたる繰り返しを伴う十分に長い訓練作業の後、検証作業において人をテストすることができる。検証中においてのみ、(問題となっている言葉の視覚的な表示は行うことなく、視覚的な開始・終了の合図の後と前に)神経刺激信号1020を与え、人1030に問題となっている言葉を特定する強制選択テストを完了するように依頼する。成功率を評価するために上記の強制選択テストの正確性を使用することができる。
【0214】
さらなる訓練作業においては、意識的認知がもはや顕在化しないように刺激強度を低減してもよい。神経刺激信号により顕在化する知覚認知の潜在意識下の認知により、人1030に伝達されるメッセージを依然として符号化することができる。
【0215】
図11は、本発明の実施形態による神経刺激システムにより伝達される神経刺激信号と対応する概念的情報との間の関係を確立するための較正及び学習法のブロック図を示すものである。多数のチャネルと(ブロック1)細かい伝達可能な知覚認知(例えば、ブロック2の較正を通じて)とを確立し、メッセージブロックと関連する信号パターンペアを格納し(ブロック3)、例えば、ペア学習段階後の成功した伝達及び/又は(人によって信号パターンを認知されたメッセージに復号化する)認識率性能を記録することによって、成功したインタフェイス要素に注釈をつける(最後のブロック)ことにより個人用コミュニケーションライブラリが形成される。同じ書籍を繰り返し読み返すのではなく、学習者をある範囲の書籍に触れさせることにより学習者の外国語における言語の流暢さを増すのと同様に、ある範囲のメッセージを信号パターンに符号化し(ブロック4)、これらを主体に送る(ブロック5)ことによりこれを繰り返すことができる。
【0216】
図12は、神経刺激システムが、人の知覚皮質をターゲットとする求心性軸索120を刺激するための少なくとも2つの神経刺激電極130に適合することができる本発明の他の実施形態を示すものである。この実施形態においては、ある軸索繊維ターゲット120に重なり、これらをより選択的に刺激するために時間同期刺激パターンを用いることができるように複数の電極が埋め込まれる。
【0217】
図14は、遠心性運動軸索の神経調節に適合された多接点神経調節電極1420の磁気共鳴画像を示している。図3のシステム300のような神経刺激システムを介して人の視床1400から知覚皮質に突き出る求心性軸索を刺激するためにも電極1420を用いることができる。例えば、治療(例えば治療電気接点1430を介した視床下核1410の神経調節)目的で埋め込まれた神経調節電極1420の未使用接点1440により神経刺激信号が提供されてもよい。
【0218】
例えば、多くの場合、例えばパーキンソン病の治療のために神経モジュレータとして使用されるDBS電極は、常に活性状態であるわけではなく、さらに/あるいは治療目的を達成するためには必要とされない独立制御可能な接点を含むことがある。このため、本発明に係るシステムにより提供される神経刺激信号を与えるために神経調節電極を用いることもできる。DBS電極については、特に、注目する刺激領域の外側に位置する電極接点1440の一部は完全に未使用のままである。しかしながら、例えば主要なパーキンソン症状を制御するために先端接点1430に対して例えば視床下核1410での埋込が行われる場合には、より遠位側の接点を上記で開示された発明と組み合わせて使用して、例えば連続歩行バイオフィードバック信号を脳に伝達し、患者がよりうまく歩き、さらに/あるいはすくみ足状態から脱するために利用することができるであろう。そのようなバイオフィードバック信号は、例えば筋肉の緊張又は移動パターンを測定する貼り付け型使い捨てEMGセンサ、あるいはスマートウォッチからの簡単な加速度計データを用いて、スマートフォンを介してインプラントに送られるEMGセンサフィードバックからなり得る。
【0219】
行動修正システムに関するさらなる実施形態
図14は、以下の図16に示されるような複数の独立制御可能な電気接点を有し得るDBS電極のような神経刺激電極120’が埋め込まれた人100’、例えばPD患者を示している。例えば、神経刺激電極120’は、振せん、ジストニア及び/又は硬直のようなPD症状の神経調節治療を行うために人100’の脳に既に埋め込まれているものであってもよい。しかしながら、神経刺激電極120’は、癲癇のような他の運動障害及び神経系疾患の神経伝達及び/又は治療のためのような他の目的のために埋め込まれていてもよい。あるいは、電極120’は、本発明により提供されるシステム専用のインタフェイスとして埋め込まれていてもよい。
【0220】
人100’は、人100’の頭部又は人100’の身体上又はその近傍のどこかに配置され得る神経刺激信号発生器デバイス110’をさらに装着していてもよい。神経信号発生器110’は、スマートフォン又は類似の電子情報処理デバイスにより実現され得る制御デバイス130’と(例えばBluetooth又は類似の無線インタフェイスを介して)無線通信するようになっていてもよい。実施の詳細に応じて、本発明により提供されるシステムは、制御デバイス130’、神経信号発生器110、(図17Bのシステム400’のような)付加的システム又はこれらの組み合わせにより実現され得る。例えば、制御デバイス130’、信号神経信号発生器デバイス110’又はその両方は、本発明に係るシステムを実現するための回路及び/又はソフトウェア命令を含む特定用途向けハードウェア及び/又はソフトウェアモジュールを備えていてもよい。
【0221】
制御デバイス130’は、信号発生器110’及び神経刺激電極120’を介して与えられる神経刺激信号及び/又は神経調節治療を調整するためのユーザインタフェイスを人に提供し得る。例えば、人100’は、信号周波数、パルス幅、パルス形状及び/又は信号振幅のような信号パラメータを調整することができる。例えば、人は、制御デバイス130’を用いて神経刺激信号により人100’の皮質に与えられる運動合図の認知周期を選択することができる。例えば、歩行のような運動中に人100’を誘導するために運動合図が用いられる場合には、運動合図の認知周期に関連付けられた運動ペースを選択及び設定するために制御デバイス130’が用いられてもよい。
【0222】
図15は、人間の脳の皮質内の知覚ニューロンをターゲットにしている求心性軸索230’を刺激するための神経刺激電極120’を示す図を表すものである。求心性軸索230’は、異なる知覚モダリティ(例えば、触感、温度感覚、視覚、聴覚など)及び/又はそこから皮質のそれぞれの領域によりそれぞれの知覚モダリティが認知される異なる身体領域(例えば、蝸牛、網膜、手、舌、足など)に関連し得る皮質の異なる領域210’,220’をターゲットにし得る。例えば、皮質領域210’は右足の体性感覚領域であってもよく、皮質領域220’は左手の体性感覚領域であってもよい。
【0223】
求心性軸索230’は、それぞれの知覚領域210’,220’におけるそれぞれのターゲットニューロンとシナプス(図示せず)を介して接続される。例えば、軸索230’は、知覚情報を視床から大脳皮質に中継する視床皮質軸索であり得る。神経刺激電極120’は、大脳皮質の知覚領域220’及び210’をターゲットとする求心性軸索230’の束の近傍に配置され得る複数の独立制御可能な電気接点(以下の図16参照)を備え得る。
【0224】
図示されている例では、神経刺激電極120’は神経刺激信号発生器110’に接続されており、この神経刺激信号発生器110’は、例えば神経刺激電極120’の独立制御可能な電気接点を介して神経刺激信号を求心性軸索230’に与えるように適合されている。加えて、神経刺激電極120’は、信号発生器110’により生成され、刺激電極120’を介して求心性軸索230’に与えられる神経刺激信号の波形及び/又は信号パラメータ(例えば、パルス幅、パルス形状、周波数、振幅、パルス数など)を取得及び/又は決定するように適合され得る神経刺激システムに信号発生器110’を連結するための無線インタフェイスをさらに備えていてもよい。
【0225】
例えば、本発明により提供される神経刺激システムは、所望の知覚認知が人の知覚皮質の所望の領域で顕在化されるように神経刺激信号の波形及び/又は信号パラメータを決定し得る。本発明のある実施形態においては、(刺激を受ける求心性軸索230’の求心性活動電位を介した)神経刺激信号を受けている人の皮質は、対応する知覚認知を神経刺激システムを操作している人の身体姿勢に関する固有受容情報のような運動合図及び/又は他の種類の運動に関連付け得る。例えば、モールス符号を理解する方法を学ぶのと同様に、与えられる刺激信号によって顕在化される知覚認知と、神経刺激電極120’を介して人に伝達しようとしている対応する運動合図(以下の図18及び図19参照)又は固有受容情報(例えば、以下の図21及び図22参照)と間に連想リンクを確立する学習法に以前に参加したことがある人がいるかもしれない。
【0226】
このアプローチにおいては、神経刺激電極120’は、核又はニューロンが豊富な灰白質をターゲットにしないことが好ましく、脳の軸索が豊富な白質をターゲットにすることが好ましい。白質は、脳が自然な神経伝達のために使用する情報伝達経路を含んでいる。このように、本発明は、白質コンピュータ脳インタフェイス(CBI)、すなわち脳が意味のある入力、例えば律動的な運動合図又は運動に取りかかるトリガのような他の種類の運動関連情報(例えばFOG発現信号)又は人の現在の身体姿勢に関する情報(例えば固有受容情報)であると解釈することができる電気信号を生成し、供給するシステムを提供するものである。上記セクション3で述べたように、そのような情報は、異なる種類の測定デバイス又はセンサ(図20も参照)により提供され得る。
【0227】
本発明の他の実施形態においては、神経刺激電極120’、信号発生器110’及び/又は無線インタフェイスは、例えば、これらの構成要素が意図した用途のためにカスタマイズされている場合には、一体化神経刺激及び/又は伝達システムの一部となっていてもよい。例えば、神経伝達システムは、スマートフォンのような多目的情報処理デバイス上で実行される特別な通信ソフトウェアと、Wi-Fi、Bluetooth及び/又はNFCなどの従来の無線データ伝送技術を用いた無線インタフェイスを介して多目的通信デバイスと通信する信号発生器110’及び刺激電極120’のカスタマイズされたアセンブリとを含み得る。
【0228】
本発明の他の実施形態においては、神経刺激電極120’は、データ処理システムと信号発生器110’に類似した信号発生器とを含む神経刺激システムにワイヤを介して直接接続され得る。この場合においては、無線インタフェイスは必要ではない。
【0229】
図16は、電気接点330’を介した視床下核320’の神経調節に適合された多接点神経調節電極120’を示すものである。本発明に係る神経刺激システムを介して人の視床310’から知覚皮質に突き出る求心性軸索342’,344’を刺激するためにも電極120’を用いることができる。例えば、求心性知覚軸索344’,342’に神経刺激信号を提供するのとは異なり、治療(例えば治療電気接点330’を介した視床下核320’の神経調節)目的で埋め込まれた神経調節電極120’の未使用接点340’,350’により神経刺激信号が提供されてもよい。例えば、視床下核320’の神経調節のために使用されない接点を用いて、知覚運動合図及び/又は固有受容情報を人の皮質に提供してもよい。そのような知覚運動合図の例は、例えば左足の触覚に関係する皮質領域をターゲットにする軸索344’に与えられる神経刺激信号により顕在化される律動的な知覚認知であり得る。
【0230】
多くの場合、例えばPD症状の治療のために神経モジュレータとして使用されるDBS電極120’は、常に活性状態であるわけではなく、さらに/あるいは治療目的を達成するためには必要とされない独立制御可能な接点を含むことがある。このため、本発明に係るシステムにより提供される神経刺激信号を与えるために神経調節電極を用いることもできる。DBS電極については、特に、注目する刺激領域の外側に位置する電極接点の一部は使用されない。しかしながら、例えば主要なPD症状を制御するために先端接点330’に対して例えば視床下核320’での埋込が行われる場合には、より遠位側の接点340’,350’を上記で開示された発明と組み合わせて使用して、運動合図及び/又は連続運動バイオフィードバック信号を脳に伝達し、患者がよりうまく歩き、さらに/あるいはすくみ足状態から脱するために利用することができるであろう。
【0231】
図17Aは、図14図16の刺激電極110’のような神経刺激電極を介して神経刺激信号を求心性軸索230’に与えるために使用することができる神経刺激信号発生器110’のブロック図である。神経刺激信号発生器110’は、運動合図(図18及び図19参照)及び/又は固有受容情報(図21及び図22参照)に関連付けられた所望の知覚認知を顕在化させるように適合された神経刺激信号を生成するために、神経刺激信号の波形及び/又は信号パラメータを取得し、決定し、選択し、さらに/あるいはこれを信号発生器110に送るように適合され得る遠隔神経刺激システム(例えば図17B参照)と通信するための無線インタフェイス410’を含み得る。
【0232】
例えば、神経刺激信号発生器110’は、無線インタフェイス410’を介して所望の神経刺激信号を特定するデジタルデータパケットを受信してもよい。受信器(RX)回路は、受信したデジタルデータパケットを処理(例えばフィルタ、増幅、混合、ベースバンドへのダウンコンバートなど)し、一体化デジタル-アナログ変換器(DAC)を含み得るデジタル信号プロセッサ(DSP)に処理されたデジタルデータパケットを送ってもよい。そして、DSPは、デジタルデータパケットを処理して、その後出力増幅器(AMP)230により増幅され、図15及び図16の電極120’のような神経刺激電極に与えられ得る1以上の神経刺激信号を生成する。例えば、出力AMPは、電極120’のような刺激電極の4つ(又は他の個数の)独立制御可能な電気接点330’,340’,350’を出力ワイヤを介して駆動するように構成され得る。
【0233】
他の実施形態においては、DSPは、有線インタフェイスを介して、あるいはコロケートされた処理回路(例えばCPU)から直接に神経刺激信号を特定するデジタルデータパケットを受信し得る。この処理回路は、人の皮質に顕在化させようとしている所望の知覚運動合図及び/又は固有受容情報に対応する所望の神経刺激信号の波形及び/又は信号パラメータを決定するように適合される。
【0234】
図17Bは、本発明の実施形態による例示的神経刺激システム400’のブロック型回路図を表している。神経刺激システム400’は、例えば、図17Aを参照して上記で述べられた生成回路110のような神経刺激信号発生器と(例えばBluetoothや類似のインタフェイスを介して)通信するための無線インタフェイス412’及び送信器(TX)回路を含み得る。TX回路は、無線インタフェイス412’を介して通信されるデジタルデータパケットを処理(すなわち、フィルタ、変調、混合、増幅、及び/又はアップコンバート)するように適合され得る。神経刺激システム400は、TX回路と動作可能に接続され、図15及び図16の電極120’のような神経刺激電極を介して、また図17Aの信号発生器110’のような神経刺激信号発生器を介して与えられる所望の神経刺激信号の波形及び/又は信号パラメータ(例えば、周波数、位相、パルス幅、パルス振幅、パルス形状、チャネル数など)を特定するデジタルデータパケットを供給するように適合されたデジタル信号プロセッサ(DSP)をさらに含み得る。
【0235】
神経刺激システム400’は、DSPと動作可能に接続されるCPUのような汎用データ処理回路と、CPUと動作可能に接続される少なくとも1つのデジタルメモリデバイスとをさらに含み得る。CPU320’及びメモリは、人の皮質に伝達しようとする所望の運動合図及び/又は所望の固有受容情報のような所望の知覚認知に対応する所望の神経刺激信号を決定するために相互に作用し合ってもよい。
【0236】
例えば、メモリは、その人の個人用コミュニケーションライブラリであって、運動合図及び/又は認知情報ブロックと複数の対応する神経刺激信号との間の関係を格納したライブラリを含み得る。
【0237】
そのような刺激ライブラリをそれぞれの人に対してその人の神経画像処理及び/又は個人的試験を通じて較正することができる。神経画像処理は、まず、それぞれの刺激電極に対して理論上可能な活性化範囲を特定するために使用され得る。個人的試験は、刺激信号パラメータ(詳細については以下の図18及び図22を参照)のパラメータ空間におけるどの点がその人の皮質によって認知され復号化されるのかを決定する。人の意識的な個人的試験は、メモリに格納される個人用の関係をどのように生成するかの1つの具体例に過ぎないことは強調されるべきである。他の実施形態においては、そのような関係は、例えば、体性感覚皮質又はEEG記録に関する対応する機能的MRI反応の非侵襲観察を通じて、意識のない患者からも得られることがある。
【0238】
さらに、人に対してコミュニケーションライブラリ(すなわち、メモリに格納された複数の関係)が確立されるか、確立されようとしているときには、特定の訓練法を実行することができる(意識のある個人においては必ずしも必要とされない)。人の皮質が古典的条件付けに反応する限りにおいて、ペア学習を実行することができる。本発明の文脈においては、そのようなペアは、所定の神経刺激信号に対応する所定の知覚認知と、上記所定の知覚認知及び対応する神経刺激信号に関連付けられる運動合図及び/又は固有受容情報とからなる。
【0239】
重要なことに、神経刺激システム400’を介して伝達される情報の種類は、運動合図であると、FOG発現信号であると、固有受容情報であるとを問わず、自由に選ぶことができる。メッセージブロックに分解することができる情報又はメッセージ(すなわち、人の皮質によって復号することができる概念的情報)は伝達することが可能である。これは、例えば人工的バランスのために必要とされる信号、方位信号又は他の測定信号のような連続信号を含んでいる。
【0240】
連続信号用の学習パラダイムは、信号の利用が関連する成功ファクタ(例えば、入力信号を用いた人工仮想環境における方位)となるような、よりインタラクティブな訓練シナリオを含むので、古典的条件付けから逸するものである。また、連続信号(例えば強度)は、順次伝達されるメッセージブロックを含むメッセージに関する信号構成から逸するものである。連続信号の場合には、強度(すなわち、伝達される1次元情報)は、補充される軸索繊維によりターゲットにされる知覚皮質中の位置及びターゲット領域を変化させることなく、パルス幅又は周波数変化(又はこれら2つの組み合わせ、以下の図22参照)を介して符号化され得る。
【0241】
図18及び図19は、人の皮質に対する知覚運動合図チャネルを確立し、例えば歩行タスク中に人をサポートするように行動を修正するために使用され得る周期的な運動合図とFOG発現信号を上記合図チャネルを用いて提供するために本発明の実施形態をどのように用いることができるかを示すものである。
【0242】
例えば、上述した神経刺激インタフェイス及びシステムを介してパルス列信号を提供することにより3つの異なる歩行ペース(例えば毎秒1歩、毎秒0.5歩、毎秒2歩)を符号化してもよい。そのようなパルス列(パルス幅、パルス周波数、パルス形状及び/又はパルス振幅のような信号パラメータにより特徴付けられる)は、人の知覚皮質のターゲットになっている領域において周期的/律動的な知覚認知を顕在化させ得る。例えば、そのようなパルス列信号は、人の右手の掌又は脚に周期的に生じる辛い感覚を顕在化させるように構成され得る。イヤフォンを介して人に与えられる聴覚的運動合図と同様に、そのような神経運動合図は、FOG期間を経験することなく、一定のペースで人が歩く手助けとなり得る。また、人にFOG発現信号を伝達するために同一の神経伝達チャネルを用いることもできる。例えば、FOG発現信号は、図18に示されるようにより高いパルス周波数とより大きなパルス幅の組み合わせのようなパルス列パラメータの異なる組み合わせを選択することにより符号化され得る。
【0243】
図19は、本発明により提供される神経刺激システムの典型的な利用シナリオを示すものである。(神経刺激システム自体、人間の指導員又は歩行タスクを行う人に関連付けられた制御デバイスにより)FOGが生じたと決定されたとき、神経刺激システムは、(例えばメモリから、あるいは無線通信インタフェイスを介して)FOG発現信号を取得し、これを図15及び図16に示されるDBS電極のような神経刺激電極の電気接点に送信してFOGを抑える。
【0244】
FOGが抑えられた後、神経刺激システムは、ペースメーカ動作モードに切り替わることができ、ゆっくりとした周期的な運動合図を与え、人が通常の歩行を再開する手助けをしてもよい。人がゆっくりとした歩行を再開した後、ゆっくりとした運動合図からより速いものに切り替える意思を示すユーザ入力を神経刺激システムに与えることができる。
【0245】
そのようなユーザ入力は、例えば、スマートフォンのような制御デバイスを介して、あるいは人の運動意思に対応する神経的興奮パターンを記録する神経的興奮測定装置を介して与えられてもよい。例えば、そのような神経的興奮測定装置は、(例えば、局所電場電位の形態で)神経刺激信号を与えるために使用される神経電極と同一の電極の接点から再符号化することを含み得る。ある実施形態においては、システムは、EEG装置、硬膜下電極アレイ及び/又は経頭蓋興奮測定デバイスを含み得る。
【0246】
そのような神経的興奮測定装置を用いて、運動に関連する神経的興奮パターンが神経刺激システムの動作方法に直接影響を与えるような本質的な閉ループ刺激システムを人に提供してもよい。
【0247】
図20は、図16に示されるような複数の独立制御可能な電気接点を有し得るDBS電極のような神経刺激電極120’が埋め込まれた人100’、例えばPD患者を示している。図14を参照して上記で述べたデバイスに加えて、人100’は、人100’の身体姿勢に関する情報を取得するように構成されるセンサ710’及び720’をさらに装着していてもよい。例えば、センサ710’は、人100’の身体のバランスを測定するように構成されていてもよく、センサ720’は、人100’の膝の関節の連節状態/屈曲角度を測定するように構成されていてもよい。
【0248】
センサ710’,720’は、神経信号発生器110’,制御デバイス130’及び/又は図17Bを参照して上記で説明したものと同様の神経刺激システムと無線通信するようになっていてもよい。
【0249】
(人100’の身体姿勢に関する情報を提供する)測定信号は、センサ710’及び720’によって神経刺激システムの処理手段に送られてもよい。そして、システムは、取得された情報に基づいて、人の皮質中の少なくとも1つの知覚ニューロンをターゲットにする少なくとも1つの求心性軸索に与えるべき神経刺激信号を決定してもよい。決定された神経刺激信号は、人に伝達される固有受容情報に対応する。
【0250】
例えば、図21及び図22に示されるように、神経刺激システムは、膝関節センサ720’の測定値を用いて、膝関節の連節状態を人の皮質に伝達するように適合された神経刺激信号を決定してもよい。図21に示されるように、膝関節の連節状態は、パルス列信号のパルス幅及びパルス周波数のような信号パラメータの組み合わせにより符号化され得る。図21に示される例では、短いパルス幅を有する低周波数パルス列(A)は、本質的に完全に伸ばした状態(A)の膝関節に対応し、長いパルス幅を有する高周波数パルス列(D)は、ほぼ完全に曲げた状態(D)の膝関節に対応する。
【0251】
図23は、図18及び図19の運動合図チャネルと図21及び図22の固有受容情報チャネルとをどのように組み合わせて運動障害の治療を意図した神経刺激システムの性能を改善することができるのかを示すものである。図示された例では、人が運動合図信号により速度が調整された運動(例えば、歩行、ダンスなど)を行いつつ、関節連節状態情報(例えば固有受容情報チャネル)を提供する神経刺激信号が準連続的に与えられる。運動合図パルスが人により認知されるたびに人が運動合図信号と同期して歩くと、関節信号は、膝関節が完全に伸ばした状態にあること(A)を人に伝達する。2つの運動合図パルスの間に、人の膝関節は、最初に曲がり(A-B-C-D)、その後再び伸びる(D-C-B-A)。
【0252】
運動合図を提供するだけのシステムと比べると、運動合図のタイミングに対する運動の段階を示す固有受容情報を脳にフィードバックすると、人の運動を外部の運動合図に同期させることはずっと簡単になるので、運動合図と固有受容情報の両方を人の皮質に提供するシステムは人の運動能力を改善するものである。
【0253】
デバイス状態信号処理に関する更なる実施形態
以下では、脳深部刺激(DBS)電極のような神経刺激電極と連結可能な神経刺激及び/又は伝達システムを参照して本発明の例示的な実施形態がより詳細に述べられる。しかしながら、本発明により提供されるシステムは、知覚皮質をターゲットとしている求心性軸索を刺激することにより人の知覚皮質を刺激することが可能な異なる神経刺激手段(例えば光神経、化学神経)とともに用いることもできる。
【0254】
以下では本発明の例示的な実施形態に関して特定の特徴の組み合わせが述べられるが、本開示はそのような実施形態に限定されるものではないことを理解すべきである。換言すれば、本発明を実現するためにはすべての特徴が存在しなければならないわけではなく、ある実施形態のある特徴を他の実施形態の1以上の特徴と組み合わせることにより実施形態を修正してもよい。すなわち、当業者であれば、ある実施形態の特徴、構成要素及び/又は機能的要素を本発明の他の実施形態の技術的に互換性のある特徴、構成要素及び/又は機能的要素に組み合わせることができることを理解するであろう。
【0255】
図14は、図16に示されるような複数の独立制御可能な電気接点を有し得るDBS電極のような神経刺激電極120’が埋め込まれた人100’、例えばPD患者を示している。例えば、神経刺激電極120’は、振せん、ジストニア及び/又は硬直のようなPD症状の神経調節治療を行うために人100’の脳に既に埋め込まれているものであってもよい。
しかしながら、神経刺激電極120’は、アルツハイマー病、癲癇、鬱症状などのような他の運動障害及び神経系疾患の神経伝達及び/又は治療のためのような他の目的のために埋め込まれていてもよい。あるいは、電極120’は、本発明により提供されるシステム専用のインタフェイスとして埋め込まれていてもよい。
【0256】
人100’は、人100’の頭部又は人100’の身体上又はその近傍のどこかに配置され得る神経刺激デバイス110’をさらに装着していてもよい。神経刺激デバイス110’は、スマートフォン又は類似の電子情報処理デバイスにより実現され得る制御デバイス130’と(例えばBluetooth、WI-FI又は類似の無線インタフェイスを介して)無線通信するようになっていてもよい。実施の詳細に応じて、本発明により提供されるシステムは、本発明に係るシステムを実現するための回路及び/又はソフトウェア命令を含む特定用途向けハードウェア及び/又はソフトウェアモジュールを介して実現され得る。
【0257】
制御デバイス130’は、神経刺激デバイス110’及び神経刺激電極120’を介して与えられる神経刺激信号及び/又は神経調節治療パラメータを調整するためのユーザインタフェイスを人に提供し得る。制御デバイス130’は、LTEや5Gネットワークのようなパケット無線広域ネットワークへの接続を提供してもよい。例えば、人100’は、制御デバイス130’を用いて、インターネットからデータを取得するだけではなく、信号周波数、パルス幅、パルス形状及び/又は信号振幅のような信号パラメータを調整してもよい。
【0258】
図15は、人間の脳の皮質内の知覚ニューロンをターゲットにしている求心性軸索230’を刺激するための神経刺激電極120’を示す図を表すものである。求心性軸索230’は、異なる知覚モダリティ(例えば、触感、温度感覚、視覚、聴覚など)及び/又はそこから皮質のそれぞれの領域によりそれぞれの知覚モダリティが認知される異なる身体領域(例えば、蝸牛、網膜、手、舌、足など)に関連し得る皮質の異なる領域210’,220’をターゲットにし得る。例えば、皮質領域210’は右足の体性感覚領域であってもよく、皮質領域220’は左手の体性感覚領域であってもよい。
【0259】
求心性軸索230’は、それぞれの知覚領域210’,220’におけるそれぞれのターゲットニューロンとシナプス(図示せず)を介して接続される。例えば、軸索230’は、知覚情報を視床から大脳皮質に中継する視床皮質軸索であり得る。神経刺激電極120’は、大脳皮質の知覚領域220’及び210’をターゲットとする求心性軸索230’の束の近傍に配置され得る複数の独立制御可能な電気接点(図16参照)を備え得る。
【0260】
図示されている例では、神経刺激電極120’は神経刺激デバイス110’に接続されており、この神経刺激デバイス110’は、例えば神経刺激電極120’の独立制御可能な電気接点を介して神経刺激信号をある神経生理的症状に関連する脳領域に、さらに/あるいは求心性軸索230’に与えるように適合されている。加えて、神経刺激電極120’は、神経刺激デバイス110’により生成され、刺激電極120’を介して求心性軸索230’に与えられる神経刺激信号の波形及び/又は信号パラメータ(例えば、パルス幅、パルス形状、周波数、振幅、パルス数など)を取得及び/又は決定するように適合され得る田野井システムに神経刺激デバイス110を連結するための無線インタフェイスをさらに備えていてもよい。
【0261】
例えば、本発明により提供される神経刺激システムは、所望の知覚認知が人の知覚皮質の所望の領域で顕在化されるように神経刺激信号の波形及び/又は信号パラメータを決定し得る。本発明のある実施形態においては、(刺激を受ける求心性軸索230’の求心性活動電位を介した)神経刺激信号を受けている人の皮質は、対応する知覚認知を電池の充電レベル、ハードウェア故障状態、通信状態などのいくつかの種類のデバイス状態情報に関連付け得る。例えば、モールス符号を理解する方法を学ぶのと同様に、与えられる神経刺激信号によって顕在化される知覚認知と、神経刺激電極120’を介して人に伝達しようとしている対応するデバイス状態(例えば、以下の図27図30図32及び図33参照)と間に連想リンクを確立する学習法に以前に参加したことがある人がいるかもしれない。
【0262】
このアプローチにおいては、神経刺激電極120’は、核又はニューロンが豊富な灰白質をターゲットにしないことが好ましく、脳の軸索が豊富な白質をターゲットにすることが好ましい。白質は、脳が自然な神経伝達のために使用する情報伝達経路を含んでいる。このように、本発明は、白質コンピュータ脳インタフェイス(CBI)、すなわち脳が意味のある入力、例えばデバイス110’の電池の充電レベルであると解釈することができる電気信号を生成し、供給するシステムを提供するものである。そのような白質CBIの最大効率は、軸索単繊維120の完全に選択的な補充を介して達成されるであろう。上記セクション3で述べたように、そのような情報は、異なる種類の測定デバイス又はセンサにより提供され得る。
【0263】
本発明の他の実施形態においては、神経刺激電極120’、神経刺激デバイス110’及び/又は無線インタフェイスは、例えば、これらの構成要素が意図した用途のためにカスタマイズされている場合には、一体化神経刺激及び/又は伝達システムの一部となっていてもよい。例えば、神経伝達システムは、スマートフォンのような多目的情報処理デバイス上で実行される特別な通信ソフトウェアと、Wi-Fi、Bluetooth及び/又はNFCなどの従来の無線データ伝送技術を用いた無線インタフェイスを介して多目的通信デバイスと通信する神経刺激デバイス110’及び刺激電極120’のカスタマイズされたアセンブリとを含み得る。
【0264】
本発明の他の実施形態においては、神経刺激電極120’は、データ処理システムと神経刺激デバイス110’に類似した神経刺激デバイスとを含む神経刺激システムにワイヤを介して直接接続され得る。この場合においては、無線インタフェイスは必要ではない。
【0265】
図16は、例えば電気接点330’を介した視床下核320’の神経調節に適合された多接点神経調節電極120’を示すものである。本発明に係る神経刺激システムを介して人の視床310’から知覚皮質に突き出る求心性軸索342’,344’を刺激するためにも電極120’を用いることができる。例えば、求心性知覚軸索344’,342’に神経刺激信号を提供するのとは異なり、治療(例えば治療電気接点330’を介した視床下核320の神経調節)目的で埋め込まれた神経調節電極120の未使用接点340’,350’により神経刺激信号が提供されてもよい。例えば、視床下核320’の神経調節のために使用されない接点を用いて、異なる種類のデバイス状態情報を人の皮質に提供してもよい。例えば、そのようなデバイス状態情報は、例えば左足又は右手の触覚に関係する皮質領域をターゲットにする軸索344’に与えられる神経刺激信号により顕在化される律動的な知覚認知を介して信号で伝えられ得る。
【0266】
多くの場合、例えばPDなどの症状の治療のために神経モジュレータとして使用されるDBS電極120’は、常に活性状態であるわけではなく、さらに/あるいは治療目的を達成するためには必要とされない独立制御可能な接点を含むことがある。このため、本発明に係るシステムにより提供される神経刺激信号を与えるために神経調節電極を用いることもできる。DBS電極については、特に、注目する刺激領域の外側に位置する電極接点の一部は使用されない。しかしながら、例えば主要なPD症状を制御するために先端接点330’に対して例えば視床下核320’での埋込が行われる場合には、より遠位側の接点340’,350’を上記で開示された発明と組み合わせて使用して、デバイス状態情報信号を患者の脳に伝達することができるであろう。
【0267】
図24は、図14図16の刺激電極120’のような神経刺激電極を介して神経刺激信号を求心性軸索230”に与えるために使用することができる神経刺激デバイス110”のブロック図である。神経刺激デバイス110”は、神経刺激信号の波形及び/又は信号パラメータを取得し、決定し、選択し、さらに/あるいはこれを神経刺激デバイス110”に送るように適合され得る遠隔制御デバイス130”及び/又は遠隔信号生成デバイスと通信するための無線インタフェイス410”を含み得る。
【0268】
例えば、神経刺激神経刺激デバイス110”は、無線インタフェイス410”を介して所望の神経治療又は伝達信号を特定するデジタルデータパケットを受信してもよい。受信器(RX)回路は、波形及び/又は信号パラメータ(例えば周波数、位相、パルス幅、パルス振幅、パルス形状、チャネル数など)を特定する受信デジタルデータパケットを処理(例えばフィルタ、増幅、混合、ベースバンドへのダウンコンバートなど)し、一体化デジタル-アナログ変換器(DAC)を含み得るデジタル信号プロセッサ(DSP)に処理されたデジタルデータパケットを送ってもよい。そして、DSPは、デジタルデータパケットを処理して、その後出力増幅器(AMP)により増幅され、図15及び図16の電極120’のような神経刺激電極に与えられ得る1以上の神経刺激信号を生成する。例えば、出力AMPは、電極120”のような刺激電極の4つ(又は他の個数の)独立制御可能な電気接点330”,340”,350”を出力ワイヤ420”を介して駆動するように構成され得る。
【0269】
他の実施形態においては、DSPは、有線インタフェイスを介して、あるいはコロケートされた処理回路(例えばCPU)から直接に神経刺激信号を特定するデジタルデータパケットを受信し得る。この処理回路は、対応する所望の治療又は伝達信号の波形及び/又は信号パラメータを決定するように適合される。
【0270】
神経刺激装置110”は、1種類以上のデバイス状態情報をモニタリングするように構成された動作状態回路をさらに含んでいてもよい。例えば、動作状態回路は、電圧センサ(VS)を介してデバイス110”の電池の電圧レベルをモニタリングするように構成されていてもよい。動作状態回路は、電圧センサの出力に基づいて電池充電レベルを決定するようにさらに構成されていてもよい。
【0271】
動作状態回路は、出力増幅器AMP及び出力ワイヤ420”を介して神経刺激電極に与えられる神経刺激信号を取得、決定、選択及び/又は生成するようにDSPに命令する入力信号を供給するようにさらに構成されていてもよい。例えば、動作状態回路からの入力信号に応答して、DPSは、メモリデバイスから神経刺激信号の信号パラメータ又は波形を取得してもよい。神経刺激信号は、モニタリングされている電池充電レベルに関連付けられたデバイス状態情報に対応する。例えば、神経刺激信号は、神経刺激デバイス110”を用いて人に伝達しようとする電池低下警告信号に対応していてもよい(以下の図27参照)。
【0272】
神経刺激デバイス110”は、DSPに動作可能に接続される少なくとも1つのメモリデバイスをさらに含んでいてもよい。DSP及びメモリは、人の皮質に伝達しようとする所望のデバイス状態情報のような所望の知覚認知に対応する所望の神経刺激信号を決定するために相互に作用し合ってもよい。
【0273】
例えば、メモリは、その人の個人用コミュニケーションライブラリであって、複数のデバイス状態と複数の対応する神経刺激信号との間の関係を格納したライブラリを含み得る。
【0274】
そのような刺激ライブラリをそれぞれの人に対してその人の神経画像処理及び/又は個人的試験を通じて較正することができる。神経画像処理は、まず、それぞれの刺激電極に対して理論上可能な活性化範囲を特定するために使用され得る。個人的試験は、刺激信号パラメータ(詳細については以下の図27図20図32及び図33を参照)のパラメータ空間におけるどの点がその人の皮質によって認知され復号化されるのかを決定する。人の意識的な個人的試験は、メモリに格納される個人用の関係をどのように生成するかの1つの具体例に過ぎないことは強調されるべきである。他の実施形態においては、そのような関係は、例えば、体性感覚皮質又はEEG記録に関する対応する機能的MRI反応の非侵襲観察を通じて、意識のない患者からも得られることがある。
【0275】
さらに、人に対してコミュニケーションライブラリ(すなわち、メモリに格納された複数の関係)が確立されるか、確立されようとしているときには、特定の訓練法を実行することができる(意識のある個人においては必ずしも必要とされない)。人の皮質が古典的条件付けに反応する限りにおいて、ペア学習を実行することができる。本発明の文脈においては、そのようなペアは、所定の神経刺激信号に対応する所定の知覚認知と、上記所定の知覚認知及び対応する神経刺激信号に関連付けられるデバイス状態とからなる。
【0276】
重要なことに、神経刺激デバイス110”を介して伝達される情報の種類は、電池状態信号であると、通信状態信号であると、ハードウェア故障状態信号などであるとを問わず、自由に選ぶことができる。メッセージブロックに分解することができる情報又はメッセージ(すなわち、人の皮質によって復号することができる概念的情報)は伝達することが可能である。これは、(準)連続電池充電表示(以下の図32を参照)のために必要とされる信号又は他のセンサ測定信号のような連続信号を含んでいる。
【0277】
連続信号用の学習パラダイムは、信号の利用が関連する成功ファクタ(例えば、入力信号を用いた人工仮想環境における方位)となるような、よりインタラクティブな訓練シナリオを含むので、古典的条件付けから逸するものである。また、連続信号(例えば強度)は、順次伝達されるメッセージブロックを含むメッセージに関する信号構成から逸するものである。連続信号の場合には、強度は、補充される軸索繊維によりターゲットにされる知覚皮質中の位置及びターゲット領域を変化させることなく、パルス幅又は周波数変化(又はこれら2つの組み合わせ、以下の図32及び図33参照)を介して符号化され得る。
【0278】
図25は、例示的な動作状態回路500”のブロック型回路図を示すものである。動作状態回路は、例えば電圧センサVS(図24参照)の出力に接続される入力端子(検知In)と例えばDSP(図24参照)の入力に接続される出力端子(制御Out)とを含んでいてもよい。動作状態回路は、補助電源と、検出Inに与えられた入力信号を基準電圧(Ref電圧)と比較する比較器回路(例えば標準的なOP-AMP回路)とをさらに含んでいてもよい。入力電圧信号が基準電圧よりも低く(高く)なると、比較器は、制御Outを介してDSPに与えられる出力信号を生成する。動作状態回路500”からの入力信号に応答して、DPSは、その後、パルス列信号のような神経刺激信号の波形(又は波形を特定する信号パラメータ)をメモリから取得してもよい。この神経刺激信号は、モニタリングしている電池充電レベルに関連付けられたデバイス状態情報に対応している。例えば、神経刺激信号は、神経刺激デバイス110”を用いて人に伝達しようとする電池低下警告信号に対応していてもよい。
【0279】
動作状態回路500”は、動作状態回路の回路要素を保護することにより、動作状態回路500”の信頼性とフェイルセイフ動作を向上させる磁気遮蔽装置510をさらに含んでいてもよい。
【0280】
図26は、上述した図24の神経刺激デバイスに類似する神経刺激デバイス600”のブロック図を示すものである。上述した回路要素に加えて、神経刺激デバイス600”は、図15及び図16を参照して上記で述べた多接点電極のような神経刺激電極に接続される出力ワイヤ610”に(補助信号増幅器を含む)動作状態回路により生成された神経刺激信号を与えることを可能にするスイッチ又はマルチプレクサ回路(スイッチ/MUX)を含んでいる。
【0281】
図26の例では、動作状態回路は、モニタリングされている電池充電状態に対応する神経刺激信号を生成する手段も含んでいる。このように、もはや機能的になっていないかもしれないデバイス600”の主要信号処理回路を介することなく、人の脳に電池充電状態信号を送ることさえ可能である。図25の動作状態回路と同様に、デバイス600”は、電圧センサ(VS)、動作状態回路及び/又はスイッチ又はマルチプレクサ回路を保護する磁気遮蔽装置をさらに含み得る。
【0282】
図27は、本発明の実施形態をどのように用いて人の皮質に対する二値電池充電状態チャネルを確立し、上記電池充電状態チャネルを用いて人に電池を再充電することを示すかを示すものである。
【0283】
例えば、2つの異なる電池充電状態信号は、上述した神経刺激インタフェイス及びシステムを介してパルス列信号を供給することにより符号化され得る。そのようなパルス列(パルス幅、パルス周波数、パルス形状及び/又はパルス振幅のような信号パラメータにより特徴付けられる)は、人の知覚皮質のターゲットになっている領域において周期的/律動的な知覚認知を顕在化させ得る。例えば、そのようなパルス列信号は、人の右手の掌又は脚に周期的に生じる辛い感覚を顕在化させるように構成され得る。例えば、電池の残量がなくなった警告信号は、図27に示されるような比較的低いパルス周波数と比較的小さなパルス振幅との組み合わせのようなパルス列パラメータの所定の組み合わせを選択することにより符号化され得る。同様に、より高いパルス周波数とより大きな振幅は、電池がフル充電されたことを示す信号と関連付けることができる。
【0284】
図28は、本発明に係るシステムを備えた神経刺激デバイスのさらなる例を示すものである。図24及び図26の神経刺激デバイス110”及び600”と同様に、図28に示されるデバイス800”は、1種類以上のデバイス状態情報をモニタリングするように適合された動作状態回路を含んでいる。例えば、動作状態回路は、デバイス800”の所定の主要回路要素(例えば出力増幅器のDSP)が特定の動作パラメータ範囲内で動作しているか否かをモニタリングする1以上の動作状態センサ(OS)からの入力信号を受信し得る。例えば、OSは、DSP及び/又はAMPの温度をモニタリングし、これらの構成要素が過熱したときに人に知らせるようにしてもよい。
【0285】
図29は、本発明に係るシステム内又はシステムとともに使用され得る動作状態回路900”の他の例を示すものである。動作状態回路900”は、様々な種類のデバイス状態情報に対応する神経刺激信号を生成及び送信するのに必要なすべての回路を含んでいる。例えば、補助DSP(AUX DSP)は、過熱により主DPSがオフにされたことを示す信号のような様々な種類の入力信号を検知Inを介して受信し得る。この場合において、DSPは、補助メモリ(AUXメモリ)デバイスから神経刺激信号の波形又は波形を特定する信号パラメータを取得する。取得された神経刺激信号は、神経刺激デバイスの故障状態を人に対して示している。このように、神経刺激デバイスが神経刺激信号を生成することが神経刺激デバイスの致命的な故障によって妨げられたとしても、上記致命的な故障を人に知らせることさえもできる。
【0286】
図30は、本発明の実施形態をどのように用いて神経刺激デバイスの通信状態と故障状態の双方を信号で伝えるために人の皮質に対する認知伝達チャネルを確立することを示すかを示すものである。
【0287】
パルス周波数とパルス幅の第1の組を用いて、実際のデバイス状態情報の伝達が行われようとしている(例えばもうすぐ行われる)、あるいは完了したことを人に信号で伝えてもよい。このように、そのような神経刺激デバイスを用いる人は、伝達されるデバイス状態情報に確実に集中することができる。そして、パルス周波数とパルス幅の第2の組を用いて実際のデバイス状態情報(又は人に伝達しようとする他の種類の情報)を信号で伝えることができる
【0288】
図31は、図24図26及び図28について上記で述べたデバイスと同様の神経刺激デバイスの他の例を示すものである。この例では、動作状態回路は、出力ワイヤ1110”を介して出力される主神経刺激信号(例えば、PDの治療のための神経調節信号)をモニタリングする神経信号センサ(NS)からモニタリング信号を受信するように適合されている。例えば、NSは、デバイス1100”を使用する人の肌又は頭蓋骨(例えば硬膜下又は硬膜上)に取り付けられる基準電極に接続され得る。NSは、ワイヤ1110”を介して与えられる神経刺激信号に関連する電圧信号を生成し得る。動作状態回路は、NSにより生成された電圧信号を用いて、デバイス1100”が適切に機能するために必要とされる特定のパラメータ範囲内に主神経刺激信号の信号パラメータが依然として存在しているかを決定するように構成されていてもよい。例えば、主神経刺激信号の信号振幅及び/又は周波数が所望の治療目的を達成するには低すぎることをNSの電圧信号が示している場合には、動作状態回路は、ワイヤ1110”を介して神経刺激電極に与える神経刺激信号であって、デバイス1100”のメンテナンスが必要であることを治療している人に示す神経刺激信号をDSPに生成させてもよい。
【0289】
図32は、電池の充電レベルを直接人の脳に信号で伝えるために使用され得る(準)連続神経伝達チャネルがどのように実現されるかを示すものである。
【0290】
電池電圧センサの測定信号を用いて、人の皮質内の少なくとも1つの知覚ニューロンをターゲットにする少なくとも1つの求心性軸索に与えられる神経刺激信号を決定してもよい。この決定された神経刺激信号は、人に伝達される電池充電レベルに対応する。
【0291】
図32に示されるように、電池充電レベルは、パルス列信号のパルス幅及びパルス周波数のような信号パラメータの組み合わせにより符号化され得る。図32に示される例においては、短いパルス幅を有する低周波数パルス列(A)は、ほとんど残量のない電池(A)に対応し、長いパルス幅を有する高周波数パルス列(D)は、フル充電された電池(D)に対応する。
【0292】
図32は、神経刺激デバイスの無線通信インタフェイスの信号品質を信号で伝えるために使用され得る(準)連続神経伝達チャネルがどのように実現されるかを示すものである。
【0293】
例えば、信号強度センサの測定信号を用いて、人の皮質内の少なくとも1つの知覚ニューロンをターゲットにする少なくとも1つの求心性軸索に与えられる神経刺激信号を決定してもよい。この決定された神経刺激信号は、人に伝達される無線基準信号レベルの信号強度に対応する。
【0294】
図32に示されるように、無線信号強度は、パルス列信号のパルス幅及びパルス周波数のような信号パラメータの組み合わせにより符号化され得る。図32に示される例においては、短いパルス幅を有する低周波数パルス列(A)は、強い信号(A)に対応し、長いパルス幅を有する高周波数パルス列(D)は、非常に弱い無線信号品質(D)に対応する。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17A
図17B
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33