(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-18
(45)【発行日】2023-08-28
(54)【発明の名称】可動式医療装置、可動式装置および方法
(51)【国際特許分類】
A61B 6/00 20060101AFI20230821BHJP
【FI】
A61B6/00 310
A61B6/00 300D
A61B6/00 300X
(21)【出願番号】P 2021569365
(86)(22)【出願日】2019-05-24
(86)【国際出願番号】 EP2019063459
(87)【国際公開番号】W WO2020239187
(87)【国際公開日】2020-12-03
【審査請求日】2022-03-03
(73)【特許権者】
【識別番号】516308401
【氏名又は名称】シーメンス ヘルスケア ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】110003317
【氏名又は名称】弁理士法人山口・竹本知的財産事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100075166
【氏名又は名称】山口 巖
(74)【代理人】
【識別番号】100133167
【氏名又は名称】山本 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100169627
【氏名又は名称】竹本 美奈
(72)【発明者】
【氏名】ディラウフ,フランツ
(72)【発明者】
【氏名】ゲンメル,アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】ラインハルト,マルテ
(72)【発明者】
【氏名】ツァイドラー,ヨーゼフ
【審査官】亀澤 智博
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-081746(JP,A)
【文献】特開2014-236830(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0093294(US,A1)
【文献】特開2011-167296(JP,A)
【文献】特開2005-118555(JP,A)
【文献】実開平06-006067(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00 - 6/14
B62B 3/00 - 3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つの移動モードで、モータ支援されて移動可能な装置カート(2)を有する可動式医療装置(1)であって、少なくとも1つの把持要素(7)を備え、前記少なくとも1つの把持要素(7)は前記装置
カート(2)を移動させるために、操作者の少なくとも1つの人間の手によって把持するために設けられており、更に、
・前記把持要素(7)にまたは前記把持要素(7)の直近傍に配置されており、前記少なくとも1つの人間の手による前記把持の種類および/または場所を特徴付ける測定データを取得するように構成されている、少なくとも1つのセンサ(12,15,16)と、
・前記把持の種類および/または場所に関する前記測定データを評価し、前記装置カート(2)の1つの移動モードに割り当てるように構成されている、評価ユニット(9)と、
・前記装置カート(2)の評価された前記移動モードを自動的に設定する、制御ユニットと、
を備え
、
複数の自由度で調節可能なCアーム(3)を有する可動式CアームX線装置(1)により構成されており、
前記第1把持要素(7)が、前記少なくとも2つの移動モードで、モータ支援されて移動可能な前記装置カート(2)を押すためおよび/または引くために構成されており、操作者の少なくとも1つの人間の手によって把持するための第2把持要素(17)が、前記Cアーム(3)をモータ支援により調節するように構成されている、
可動式医療装置(1)。
【請求項2】
前記1つまたは複数のセンサ(12,15,16)は、把持している手の数、および/または、1つまたは複数の把持している手の大きさ、および/または、1つまたは複数の把持している手の位置、および/または、1つまたは複数の把持している手の接触面積、および/または、前記把持の把持強度、および/または、操作者の把持プロファイルを特徴付ける前記測定データ、を取得するように構成されている、請求項1に記載の可動式医療装置。
【請求項3】
前記少なくとも1つのセンサは、少なくとも1つの静電容量式センサ(12)によって構成される、請求項1または2に記載の可動式医療装置。
【請求項4】
前記少なくとも2つの移動モードは、少なくとも2人の操作者に対して個人化して設定可能であって、前記少なくとも1つのセンサ(12,15,16)は、操作者の把持プロファイルを特徴付ける前記測定データを取得するように構成されており、前記評価ユニット(9)は、前記操作者に関する前記測定データを評価し、個人化された移動モードに割り当てるように構成されており、前記制御ユニットは、評価された個人化された前記移動モードを自動的に設定するように構成されている、請求項1に記載の可動式医療装置。
【請求項5】
前記第2把持要素(17)は、前記把持要素(17)にまたは前記把持要素(17)の直近傍に配置され、前記少なくとも1つの人間の手による前記把持の種類および/または場所を特徴付ける前記測定データを取得するように構成されている少なくとも1つのセンサ(12)を有し、前記評価ユニット(9)は、前記把持の種類および/または場所に関する前記測定データを評価し、前記Cアーム(3)の調節モードに割り当てるように構成されており、前記制御ユニットは、評価された前記調節モードを自動的に設定するように構成されている、請求項
1~4の何れか1項に記載の可動式医療装置。
【請求項6】
前記少なくとも1つの把持要素または前記少なくとも1つの把持要素の直近傍に配置されている複数のセンサ(12,15,16)を備える、請求項1~
5の何れか1項に記載の可動式医療装置。
【請求項7】
第1移動モードが、前記第1移動モードが設定されている場合に前記装置カート(2)の速い移動が4m超の距離に渡って支援されるように、構成されている、請求項1~
6の何れか1項に記載の可動式医療装置。
【請求項8】
第2移動モードが、前記第2移動モードが設定されている場合に前記装置カート(2)の遅い移動が50cm未満の距離に渡って支援されるように、構成されている、請求項1~
7の何れか1項に記載の可動式医療装置。
【請求項9】
自動的に起動された前記移動モードに関する情報を表示する表示要素(13)を備える、請求項1~
8の何れか1項に記載の可動式医療装置。
【請求項10】
少なくとも2つの移動モードで、モータ支援されて移動可能な装置カート(2)と、前記装置カート(2)を移動させるために、操作者の少なくとも1つの人間の手によって把持するための少なくとも1つの把持要素(7)と、を有する可動式医療装置(1)の自動的な操作支援のための方法において、
・前記少なくとも1つの人間の手による前記把持の種類および/または場所を特徴付ける測定データを取得するステップと、
・前記把持の種類および/または場所に関する前記測定データを評価し、前記装置カート(2)の1つの移動モードに割り当てるステップと、
・前記装置カート(2)の算出された前記移動モードを自動的に設定するステップと、
を備え
、
前記可動式医療装置(1)は、複数の自由度で調節可能なCアーム(3)を有する可動式CアームX線装置(1)により構成されており、
前記第1把持要素(7)が、前記少なくとも2つの移動モードで、モータ支援されて移動可能な前記装置カート(2)を押すためおよび/または引くために構成されており、操作者の少なくとも1つの人間の手によって把持するための第2把持要素(17)が、前記Cアーム(3)をモータ支援により調節するように構成されている、
方法。
【請求項11】
把持している手の数、および/または、1つまたは複数の把持している手の大きさ、および/または、1つまたは複数の把持している手の位置、および/または、1つまたは複数の把持している手の接触面積、および/または、前記把持の把持強度、および/または、操作者の把持プロファイルを特徴付ける前記測定データ、が取得される、請求項
10に記載の方法。
【請求項12】
前記少なくとも2つの移動モードは、少なくとも2人の操作者に対して個人化して設定可能であって、操作者の把持プロファイルを特徴付ける前記測定データが取得され、前記操作者に関する前記測定データが評価され、個人化された移動モードに割り当てられ、評価された個人化された前記移動モードが自動的に設定される、請求項
10または
11に記載の方法。
【請求項13】
少なくとも2つの移動モードで、モータ支援されて移動可能な装置カートを有する可動式装置であって、少なくとも1つの把持要素を備え、前記少なくとも1つの把持要素は、前記装置
カート(2)を移動させるために、操作者の少なくとも1つの人間の手によって把持するために設けられており、更に、
・前記把持要素にまたは前記把持要素の直近傍に配置されており、前記少なくとも1つの人間の手による前記把持の種類および/または場所を特徴付ける測定データを取得するように構成されている少なくとも1つのセンサと、
・前記把持の種類および/または場所に関する前記測定データを評価し、前記装置カート
(2)の1つの移動モードに割り当てるように構成されている評価ユニットと、
・前記装置カート
(2)の評価された前記移動モードを自動的に設定する制御ユニットと、を備え
、
前記評価ユニットは、前記操作者が前記把持要素を片手でまたは両手で把持しているか、を評価し、
前記制御ユニットは、
片手操作に対して、第1移動モードを設定し、前記可動式装置の通常移動を支援し、
両手操作に対して、第2移動モードを設定し、傾斜面での前記可動式装置の制動移動を支援する、
可動式装置。
【請求項14】
少なくとも2つの移動モードで、モータ支援されて移動可能な装置カートを有する可動式装置であって、少なくとも1つの把持要素を備え、前記少なくとも1つの把持要素は、前記装置カート(2)を移動させるために、操作者の少なくとも1つの人間の手によって把持するために設けられており、更に、
・前記把持要素にまたは前記把持要素の直近傍に配置されており、前記少なくとも1つの人間の手による前記把持の種類および/または場所を特徴付ける測定データを取得するように構成されている少なくとも1つのセンサと、
・前記把持の種類および/または場所に関する前記測定データを評価し、前記装置カート(2)の1つの移動モードに割り当てるように構成されている評価ユニットと、
・前記装置カート(2)の評価された前記移動モードを自動的に設定する制御ユニットと、を備え、
前記評価ユニットは、前記操作者が前記把持要素を片手でまたは両手で把持しているか、を評価し、
前記制御ユニットは、
両手操作に対して、第1移動モードを設定し、前記可動式装置の通常移動を支援し、
片手操作に対して、第2移動モードを設定し、対象物に沿って平行な前記可動式装置の移動を支援する、
可動式装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも2つの移動モードで、モータ支援されて移動可能な装置カートを有する、請求項1に従う可動式医療装置、少なくとも2つの移動モードで、モータ支援されて移動可能な装置カートを有する、請求項15に従う可動式装置、および、そのような可動式医療装置を操作支援するための請求項12に従う方法、に関する。
【背景技術】
【0002】
装置カートに配置され、車輪を有することで、病院のフロア上を移動可能な可動式X線装置は、さまざまな区域や部屋でのユーザビリティの点で特に高い柔軟性を有する。そのような場所では、実際に簡単な操作で、手動での移動が可能である必要があり、特に、装置は、操作者により操縦可能、つまり制御可能であり、制動可能である必要がある。またその際、装置が、移動時に可能な限り簡単に制御可能であること、そして、装置のスペース要件が可能な限り小さくとどまるよう、制御に必要な部材が装置の構成をコンパクト化するように、考慮する必要がある。
【0003】
最新の可動式手動制御型X線装置は、操作者にとって装置の操作や搬送が容易になるよう、モータ支援された移動可能性を備えている。
【0004】
また、最近の手動制御型モータ式X線装置は、グレードや種類そしてその車輪の配置に応じて、複数の自由度を有する。使用状況に応じて、個々の自由度を優先するまたはロックすること、が望ましい。例えば、可動式X線装置は、1つの手術室から他の手術室へ向かう通路での移動の際には、おもに、前方向およびカーブにおいては、速く移動されるべきである一方、手術室内で手術台そばでは、ゆっくりと正確に前方向および横方向に移動されるべきである。そのため、多くの場合、可動式装置は、特定の移動モード(例えば、前方向のみの移動)を、操作車がどの移動モードで可動式装置を移動させたいのかを、システムに知らせるために、スイッチまたは操作ボタンによって選択することができる。また、移動プロファイル(加速度、速度)もこのように設定することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、少なくとも2つの移動モードで、モータ支援されて移動可能な装置カートを有する可動式医療装置であって、そのような装置の操作性を改善することが可能になる、可動式医療装置を提供することである。さらに、本発明の課題は、そのような装置を操作支援するための方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本課題は本発明に従い、少なくとも2つの移動モードで、モータ支援されて移動可能な装置カートを有する、請求項1に従う可動式医療装置、少なくとも2つの移動モードで、モータ支援されて移動可能な装置カートを有する、請求項15に従う可動式装置により、および、そのような可動式医療装置を操作支援するための方法により、解決される。本発明の有利な構成はそれぞれ、その従属請求項の対象である。
【0007】
少なくとも2つの移動モードで、モータ支援されて移動可能な装置カートを有し、特に可動式CアームX線装置である、本発明に従う可動式医療装置であって、少なくとも1つの把持要素を備え、少なくとも1つの把持要素は、装置を移動させるために、操作者の少なくとも1つの人間の手によって把持するために設けられている、可動式医療装置はさらに、把持要素にまたは把持要素の直近傍に配置されており、少なくとも1つの人間の手による把持の種類および/または場所を特徴付ける測定データを取得するように構成されている、少なくとも1つのセンサと、把持の種類および/または場所に関する測定データを評価し、装置カートの移動モードに割り当てるように構成されている、評価ユニットと、装置カートの評価された移動モードを自動的に設定する、制御ユニットと、を有する。
【0008】
可動式医療装置、或いは、装置カートは、移動可能性を便利にするために、装置の移動のための操作者の労力を大幅に低減させる周知のモータ支援部、すなわちサーボ支援部、を有する。ここで、移動モードは、装置の移動性の1つまたは複数の特性(例えば、ゆっくり移動すること、速く移動すること、並進移動、カーブ移動、横方向移動など)が特に支援され、および/または、別の特性が、あまり支援されないか、全く支援されないか、或いは妨げられるような、特定のプリセットとして理解されるべきである。このようにして、例えば、ある1つの移動モードは、直線および/またはカーブにおいては装置カートを速く移動させるように支援し、かつ、横方向の移動を防止するように設計することができ、この移動モードは、装置を1つの部屋から別の部屋へ搬送するために設けられてよい。別の1つの移動モードは、静止状態から、あらゆる可能な方向にゆっくりと、短い距離(例えば、センチメートル範囲)を進むように設計することができ、この移動モードは、手術室内で装置を位置決めするために設けられてよい。さらなる1つの移動モードは、中距離(例えば、メートル範囲)とカーブをゆっくり進むように設計することができ、この移動モードは、手術室において装置をパーク位置に移動させるために設けられてよい。
【0009】
また、本発明はさらに、少なくとも2つの移動モードで、モータ支援されて移動可能な装置カートと、装置カートを移動させるために、操作者の少なくとも1つの人間の手で把持するための少なくとも1つの把持要素と、を有する可動式医療装置の、自動的な操作支援のための方法において、以下のステップ、すなわち、少なくとも1つの人間の手による把持の種類および/または場所を特徴付ける測定データを取得するステップと、把持の種類および/または場所に関する測定データを評価し、装置カートの移動モードに割り当てるステップと、装置カートの算出された移動モードを自動的に設定するステップと、を備える、方法を含む。
【0010】
本発明に従う可動式医療装置および本発明に従う方法は、多くの有利な点を有する。操作者の把持特性の自動認識と移動モードへの自動変換により、可動式X線装置の操作は簡素化され、操作者にとって特に直観的な構成となる。その結果、大幅に時間が節約され、医学的な検査の際の効率が向上する。操作者は、問題なくブラインド操作を実行でき、別のより重要な作業に注意を向けることができ、移動プロファイルを手動で選択する手間をかける必要がない、なぜならこれが可動式装置によってすでに自動的に実行されているからである。把持特性の自動認識、および特定の移動モードへのそれらの割り当ては、特に信頼性が高く、エラー防止されており、操作者の医療装置の操作を大幅に容易にするものである。
【0011】
本発明の1つの構成によると、1つまたは複数のセンサは、把持している手の数、および/または、1つまたは複数の把持している手の大きさ、および/または、1つまたは複数の把持している手の位置、および/または、1つまたは複数の把持している手の接触面積、および/または、把持の把持強度、および/または、操作者の把持プロファイルを特徴付ける測定データを取得するように構成される。そのような把持特性は、操作者によって計画または意図された、装置の移動に関する推論を得るのに特に適しており、その結果、そのような特性のうち1つまたは複数を認識することで、特に簡単に、エラー防止しつつ移動モードを自動的に選択することができる。
【0012】
本発明のさらなる1つの構成によると、少なくとも1つのセンサは、少なくとも1つの静電容量式センサによって構成される。静電容量式センサは、人の指または手を認識することに関して特に信頼性が高く、効果的である。また、このセンサは、特に簡単且つ安価に、把持要素に組み入れることができる。特に、複数のセンサが、把持要素または把持要素の直近傍に配置されていてもよい。また、特に信頼性高い検出を確保するために、把持要素全体が静電容量式センサによって構成されていてもよい。また、さらなるセンサを設けてもよく、例えば、抵抗式センサ、近接センサ、光センサ、圧力センサ、またはカメラを設けてもよい。
【0013】
本発明のさらなる1つの構成によると、少なくとも2つの移動モードは、少なくとも2人の操作者に対して、個人化して設定可能である。このために、例えば、把持特性を認識することにより、例えば、手の大きさに基づいて、さらに操作者を認識してよく、それに応じて個人化された移動モードを設定してよい。代替的に、追加のカメラ、画像認識ソフトウェアを介して、操作者を認識してもよく、その後、移動モードを個人化して設定してよい。
【0014】
本発明のさらなる1つの構成によると、第1移動モードは、第1移動モードが設定されている場合には2m超の距離に渡る装置カートの速い移動が支援されるように、構成されている。本発明のさらなる1つの構成によると、第2移動モードは、第2移動モードが設定されている場合には15cm未満の距離に渡る遅い移動が支援されるように、構成されている。一般に、これらは、基本的には最も重要な移動モードである。その一方、これらは、必要に応じて、例えば特定の別の移動種類を防止または支援することによって、明らかに特別に構成することもできる。また、装置の1つまたは複数の移動特性(例えば、遅く移動すること、速く移動すること、並進移動、カーブ移動、横方向移動など)が特に支援され、および/または、別の移動特性があまり支援されないか、全く支援されないといった、さらなる移動モードが設けられていてもよい。また、多数の様々な移動モードが設けられていてもよい。
【0015】
可動式医療装置は、本発明の1つの構成に従い、複数の自由度で調節可能で回転可能なCアームを有する可動式CアームX線装置により構成される。
【0016】
本発明のさらなる1つの構成によると、第1把持要素は、少なくとも2つの移動モードで、モータ支援されて移動可能な装置カートを押すおよび/または引くように構成されており、操作者の少なくとも1つの人間の手で把持するための第2把持要素は、Cアームをモータ支援して調節するために構成されている。これに関して、第2把持要素が少なくとも1つのセンサを有することも企図され得て、当該センサは、把持要素または把持要素の直近傍に配置されており、少なくとも1つの人間の手での把持の種類および/または場所を特徴付ける測定データを取得するように構成されている、また、評価ユニットは、把持の種類および/または場所に関する測定データを評価し、Cアームの調節モードに割り当てるように構成されており、制御ユニットは、評価された調節モードを自動的に設定するように構成されている。この場合、Cアームの調節性もサーボ支援を有している。ここで、移動モードと同様に、調節モードは、Cアームの調節性の1つまたは複数の特性(例えば、ゆっくり調節すること、速く調節すること、回転調節、並進調節など)が特に支援され、および/または、別の特性があまり支援されないか、全く支援されないか、或いは妨げられるような、特定のプリセットとして理解されるべきである。第2把持要素と、医療装置のそれに対応する構成により、可動式装置の操作は同様に簡素化され、操作者にとって特に直観的な構成となる。
【0017】
本発明のさらなる1つの構成によると、可動式医療装置は、起動された移動モードに関する情報を表示する表示ユニットを有する。この表示部は、例えば、同様に、把持要素に接してまたは把持要素内に組み入れられていてもよい、または、把持要素の少なくとも直近傍に配設されていてもよい。この場合、例えば、LEDディスプレイであってよい。そのような表示ユニットは、どの移動モードが自動的に選択されたかを、操作者が一目で直ちに認識できる、という有利な点を有する。
【0018】
また、本発明は、少なくとも2つの移動モードで、モータ支援されて移動可能な装置カートを有する可動式装置であって、少なくとも1つの把持要素を備え、少なくとも1つの把持要素は、装置を移動させるために、操作者の少なくとも1つの人間の手で把持するために設けられており、また、更に少なくとも1つのセンサを備え、当該センサは、把持要素に接してまたは把持要素の直近傍に配置されており、少なくとも1つの人間の手での把持の種類および/または場所を特徴付ける測定データを取得するように構成されており、評価ユニットを備え、当該評価ユニットは把持の種類および/または場所に関する測定データを評価し、装置カートの移動モードに割り当てるように構成されており、装置カートの評価された移動モードを自動的に設定する制御ユニットを備える、可動式装置、を含む。可動式装置は、例えば、買い物カート、倉庫搬送台車などであってよい。特に、本発明は、大きな比重量を有する可動式装置に適用可能であり、簡単な操作性を保証する。
【0019】
本発明並びに従属請求項の特徴に従うさらなる有利な構成は、以下において、図中に概略的に示される実施例を用いて、さらに詳細に説明するが、これにより、本発明がこれら実施例に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、把持要素を備える、本発明に従う可動式CアームX線装置を示す図である。
【
図3】
図3は、可動式CアームX線装置の自動的な操作支援のための、本発明に従う方法のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1は、装置カート2に配置されたCアーム3を有する可動式CアームX線装置1を示す。Cアーム3は、Cアーム3が複数の自由度で調節可能であるように、1つまたは複数の機械的な連結部を用いて装置カート2に配置されている。このようにして、Cアーム3は、例えば、回転(矢印を参照)、傾斜、及び、並進され得る。Cアーム3においては、一方の端部にはX線源4が配置されており、他方の端部にはX線検出器5が配置されており、これらを用いて、検査対象のX線撮影を、複数の可能な撮影位置(アンギュレーション)で行うことができる。可動式CアームX線装置1は、システムコントローラ8によって制御される。装置カート2は、複数の、例えば、2つの、3つの、または4つの、多方向または全方向の車輪6を有し、これらを用いて、装置カート2を、前方向、横方向および/またはカーブにおいて移動及び走行させることができる。車輪は、それぞれ専用の駆動装置を有していてもよい。一般に、可動式CアームX線装置は、操作者により押される、或いは、移動される。そのために、装置カートは把持要素7を備え、操作者は、装置カートを押すためまたは引くために、片手または両手で把持要素7を握ることができる。また、2つ以上の把持要素が装置カートに配置されていてもよい。可動性はさらに動力支援されており、装置は、そのために、操作者を移動時にモータ支援する(周知であり、不図示の)サーボ駆動部を有する。このようにして、可動式CアームX線装置1を、あらゆる方向に容易に移動させることができる。
【0022】
モータ支援による移動において、可動式CアームX線装置1は、少なくとも2つの異なる移動モードを有する。ここで、移動モードは特定のプリセットとして理解されるべきである、当該特定のプリセットでは、装置カートの移動可能性の1つまたは複数の特性(例えば、遅く移動すること、速く移動すること、並進移動、カーブ移動、横方向移動など)が特に支援され、および/または、別の特性があまり支援されないか、全く支援されず、或いは、妨げられる。このようにして、例えば、第1移動モードは、装置カートの直線方向および/またはカーブでの速い移動を支援し、かつ、横方向の移動を防止するように設計することができ、この移動モードは、例えば1つの部屋から別の部屋へ向かう、例えば4m超の道のりに渡る装置カートの搬送するために、設けられてもよい。別の1つの移動モード(例えば、第2移動モード)は、静止状態から、あらゆる可能な方向にゆっくりと、短い距離(例えば、50cm未満)を進むように設計することができ、この移動モードは、手術室内で装置を(精確な)位置決めするために設けられてよい。さらなる1つの移動モード(例えば、第3移動モード)は、(例えば、50cmと4mの間の)中距離とカーブをゆっくり進むように設計することができ、この移動モードは、手術室において装置をパーク位置に移動させるために設けられてよい。また、例えば1つの特徴(速い、遅いなど)のみを備える、さらなる移動モードまたは代替の移動モードがさらに設けられていてもよい。
【0023】
可動性に関する格別に直感的な操作のために、CアームX線装置は複数の構成要素を有しており、当該構成要素は、その時点で必要とされる操作モードの自動設定を保証する。このために、例えば
図2にも拡大して示されるように、複数の静電容量式センサ12が、把持要素7に組み入れられている。静電容量式センサ12は、操作者による把持に関する測定データを取得するように構成されており、つまり、例えば、把持要素7が、厳密にどこで、何個所の位置で、把持されているかを取得するように、構成されている。その後、測定データは評価ユニット9に転送され、当該評価ユニット9は測定データを評価するように構成されている。そうして、評価ユニット9は、測定データに基づいて、操作者の手による把持の種類および場所を評価する。例えば、評価ユニット9は、操作者が片手でまたは両手で把持しているか、何本の指が関与しているか、把持の強度はどれほどであるか、厳密にどこが把持されているか、どの方向にどれほど強く押されているかを評価すること、および/または、例えば、把持プロファイルを作成すること、ができる。
【0024】
代替的に、把持要素7は、操作者による把持の種類、または操作者の把持プロファイルをさらに精確に特徴付けるために、さらなるセンサ、例えば、圧力センサ15、抵抗式センサ、近接センサ、光センサ、またはカメラセンサ16、を有していてもよい。これらセンサの測定データも、評価ユニット9により、把持の種類および場所に関して評価される。それに加えて、操作者自身もまた、例えば、操作者の操作パターンに基づいて、または、顔認識もしくは指紋認識も用いて、認識されてもよい。操作者による把持の種類および/または場所に関して測定データを評価した後、評価ユニット9は、算出された特性を既存の移動モードの1つに割り当てる。その際、この同定された移動モードは、操作者によって意図された移動モードとして解釈され、可動式CアームX線装置1のシステムコントローラ8に転送され、システムコントローラ8によって設定される。このようにして、装置カートを、ここで設定された移動モードで移動させることができる。これにより、オペレータの典型的な状況に応じた操作パターンを、装置の適切な移動に変換することができ、ユーザは、意図する移動を手動で(例えば、ボタンまたはレバーによって)選択する必要がない。更に、操作者認識の際に、移動プロファイルを個人化することができる。
【0025】
どの移動モードが設定されているか或いは手の認識がどの状態にあるか、を操作者に示すために、例えばLEDや小型のディスプレイなどの、表示要素13が設けられている。これらは、把持要素7の周辺にまたは可動式CアームX線装置1の別の箇所に、配置され得る。さらに、従来のモニタにより表示が行われてもよい。モニタ11は、可動式CアームX線装置に、または追加の可動式トロリ10に、配置されていてもよい。
【0026】
両手での把持用に使用可能な把持要素7の代わりに、例えば、対応する複数のセンサを有する2つのより小さな把持要素が設けられていてもよく、当該センサはそれぞれ片手での把持のためのみに設けられている。この場合、対応する測定データを、両方の把持要素について一緒に評価してもよい、つまり、例えば、片手のみで把持されているか、どのような種類の把持であるか、も評価してよい。
【0027】
前記可動性に加えて、更に選択的に、Cアーム3の調整可能性が、上述のように、自動的に設定されてもよい。そのようにして、この場合も、Cアームを調節するための2つ以上の調節モードが設けられていてもよく、従って、それぞれにCアームの調整の1つまたは複数の特性(例えば、遅い、速い、回転など)が特に支援され、および/または、別の調節特性があまり支援されないか、全く支援されないか、或いは妨げられる、特定のプリセットが設けられていてもよい。Cアーム自体が、サーボ支援による手動調節が可能である。操作者がCアームを手動でサーボ支援により調節するために設けられているさらなる把持要素17にも、同様に、操作者による把持の種類および/または場所を特徴付ける測定値を取得する、静電容量式センサ12および/またはさらなるセンサが配置されている。その後、測定値は、評価ユニットによって、把持の種類および/または場所に関して評価されてもよく、Cアームの調節モードに割り当てられてもよい。そして、調節モードは、自動的にシステムコントローラによって設定される。
【0028】
図3は、
図1の可動式CアームX線装置を操作支援する本発明に従う方法を示す。第1ステップ20において、センサ(12,15,16)により、少なくとも1つの人間の手による把持の種類および/または場所を特徴付ける測定データが取得される。その後、第2ステップ21において、測定データが、把持の種類および/または場所に関して評価され、装置カートの移動モードに割り当てられる。第3ステップ22において、算出された移動モードが自動的に設定される。
【0029】
本発明によって、操作者による目視なしの操作が保証されているので、プラットフォームをより効率的かつ直観的に操作することができる。どの移動モードが設定されているかが操作者にとって常に明らかであるのは、操作者が自身の把持の種類により直接的にそれを制御するからである。自動的に操作支援する方法は、理想的には、可動式CアームX線装置の制御ソフトウェアに実装されている。
【0030】
代替的に、様々な移動モードは、手動で、例えば、スイッチを介してまたはユーザインタフェースを介して設定されてもよい。
【0031】
さらに、少なくとも2つの移動モードで、モータ支援による移動が可能な装置カートを有する可動式装置は非医療用にも使用することができ、可動式装置は、少なくとも1つの把持要素を備え、少なくとも1つの把持要素は、装置を移動させるために、操作者の少なくとも1つの人間の手によって把持するために設けられており、可動式装置は更に、把持要素にまたは把持要素の直近傍に配置されており、少なくとも1つの人間の手による把持の種類および/または場所を特徴付ける測定データを取得するように構成されている少なくとも1つのセンサと、把持の種類および/または場所に関する測定データを評価し、装置カートの移動モードに割り当てるように構成されている評価ユニットと、装置カートの評価された移動モードを自動的に設定する制御ユニットと、を備える。可動式装置は、例えば、買い物カート、倉庫搬送台車などであってよい。特に、本発明は、簡単な操縦性を保証するために、大きな比重量を有する可動式装置に適用可能である。そうすれば、買い物カートであれば、片手操作(通常移動)の場合には第1移動モードが、両手操作(制動移動)の場合には第2移動モードが、設定され得る。片手操作と両手操作とを区別することにより、例えば傾斜がついた地形(例えば、駐車場)で、安全な移動を保証することができる。このようにして、買い物カートを、その重量に関係なく、正確かつ容易に制御することができる。倉庫搬送台車の場合、非常に大きな重量が正確に移動され得るが、その理由はロジスティクスセンターでは多数の搬送車両を依然として手動で移動させる必要があるからである。そうすると、両手操作の場合の第1移動モード(フロア上での通常移動)と、片手操作の場合の第2移動モード(棚に沿って平行な移動)とを区別してよい。
【0032】
本発明を簡潔にまとめると以下の通りである。少なくとも2つの移動モードで、モータ支援されて移動可能な装置カートを有する可動式医療装置、特に可動式CアームX線装置は、少なくとも1つの把持要素を備え、少なくとも1つの把持要素は、装置を移動させるために、操作者の少なくとも1つの人間の手によって把持するために設けられており、可動式医療装置はさらに、把持要素にまたは把持要素の直近傍に配置され、少なくとも1つの人間の手による把持の種類および/または場所を特徴付ける測定データを取得するように構成されている少なくとも1つのセンサと、把持の種類および/または場所に関する測定データを評価し、装置カートの移動モードに割り当てるように構成されている評価ユニットと、装置カートの評価された移動モードを自動的に設定する制御ユニットと、を備える、可動式医療装置である。