(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-18
(45)【発行日】2023-08-28
(54)【発明の名称】低汚染の劣化防止剤化合物、劣化防止剤組成物およびそれを含むタイヤ用ゴム組成物
(51)【国際特許分類】
C07C 211/54 20060101AFI20230821BHJP
C08L 21/00 20060101ALI20230821BHJP
C08K 5/18 20060101ALI20230821BHJP
C09K 15/18 20060101ALI20230821BHJP
B60C 1/00 20060101ALI20230821BHJP
【FI】
C07C211/54 CSP
C08L21/00
C08K5/18
C09K15/18
B60C1/00 A
B60C1/00 B
(21)【出願番号】P 2021573857
(86)(22)【出願日】2019-12-23
(86)【国際出願番号】 CN2019127506
(87)【国際公開番号】W WO2020248572
(87)【国際公開日】2020-12-17
【審査請求日】2022-08-19
(31)【優先権主張番号】201910516287.6
(32)【優先日】2019-06-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】319000517
【氏名又は名称】セニックス カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】弁理士法人エスエス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ガオ ヤン
(72)【発明者】
【氏名】リー ホイ
【審査官】早乙女 智美
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-532775(JP,A)
【文献】米国特許第03432460(US,A)
【文献】国際公開第2008/123941(WO,A1)
【文献】特開昭51-061547(JP,A)
【文献】特許第7162082(JP,B2)
【文献】八巻大輔,アミン系老化防止剤,日本ゴム協会誌,2018年,91(12),pp. 442-446
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 211/54
C08L 21/00
C08K 5/18
C09K 15/18
B60C 1/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iの化合物。
【化1】
(式Iにおいて、R
1とR
2は同一であるか、または異なり、それぞれ独立してC1-C12アルキルおよびC3-C8シクロアルキルから選択され、R
1とR
2が同時にメチルではない。)
【請求項2】
R
1がC1-C6アルキルまたはC3-C6シクロアルキルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
R
1がメチル、エチル、イソブチルまたはシクロヘキシルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
R
2がC1-C12アルキルまたはC3-C6シクロアルキルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
R
2がメチル、エチル、1,3-ジメチルブチル、1,4-ジメチルアミル、オクチル、1-メチル-6-エチルオクチル、またはシクロヘキシルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
式Iの第1化合物と、
式Iの第1化合物ではない第2劣化防止剤と、を含む
劣化防止剤組成物。
【化2】
(式Iにおいて、R
1およびR
2は同一であるか、または異なり、それぞれ独立してC1-C12アルキルおよびC3-C8シクロアルキルから選択される。)
【請求項7】
第2劣化防止剤が汚染型劣化防止剤である、請求項6に記載の劣化防止剤組成物。
【請求項8】
第2劣化防止剤が6PPD、IPPD、またはその両方である、請求項6に記載の劣化防止剤組成物。
【請求項9】
第1化合物と第2劣化防止剤との質量比が1:6~6:1である、請求項6に記載の劣化防止剤組成物。
【請求項10】
R
1がC1-C6アルキルまたはC3-C6シクロアルキルである、請求項6に記載の劣化防止剤組成物。
【請求項11】
R
2がC1-C12アルキルまたはC3-C6シクロアルキルである、請求項6に記載の劣化防止剤組成物。
【請求項12】
R
1がメチル、エチル、イソブチル、またはシクロヘキシルである、請求項6に記載の劣化防止剤組成物。
【請求項13】
R
2がメチル、エチル、1,3-ジメチルブチル、1,4-ジメチルアミル、オクチル、1-メチル-6-エチルオクチル、またはシクロヘキシルである、請求項6に記載の劣化防止剤組成物。
【請求項14】
請求項1に記載の化合物を含むゴム組成物。
【請求項15】
前記化合物は、ゴム組成物中に含まれるジエンエラストマーの含有量を100質量部として、0.5~5.0質量部の量で存在する、請求項14に記載のゴム組成物。
【請求項16】
請求項6に記載の劣化防止剤組成物を含むゴム組成物。
【請求項17】
請求項14に記載のゴム組成物をゴム成分として用いて調製されたゴム製品。
【請求項18】
前記ゴム製品がタイヤ、ゴムオーバーシューズ、シールストリップ、音響パネル、またはクラッシュパッドである、請求項17に記載のゴム製品。
【請求項19】
請求項14に記載のゴム組成物を用いて、ゴム製品またはリトレッドタイヤを調製することを含む、請求項14に記載のゴム組成物の使用方法。
【請求項20】
式Iの化合物をゴムまたはゴム製品に使用することを含む、ゴムまたはゴム製品の外観変色に対する耐性を改善する方法。
【化3】
(式Iにおいて、R
1およびR
2は同一であるか、または異なり、それぞれ独立してC1-C12アルキルおよびC3-C8シクロアルキルから選択される。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の参照
本願は、2019年6月14日に出願された中国特許出願番号CN201910516287.6の優先権を主張する。先行中国出願の内容および主題は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
技術分野
本発明はゴム化学品、特に、タイヤなどのゴム材料の調製に有用な劣化防止剤化合物および組成物、ならびにそれらを含むゴム組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
現在使用される200種類以上のゴム添加剤のうち、50%は劣化防止剤である。つまり、劣化防止剤は世界で最も重要なゴム添加剤とも言える。N-1,3-ジメチルブチル-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン(6PPD)は、ゴムに強力な耐オゾン性と耐屈曲性、熱、酸素、銅などの有害金属に対する抑制効果などの総合的な保護を提供し、銅やその他の重金属を触媒とした劣化に強いゴム製品ができるため、タイヤトレッド、タイヤサイドウォール、ホース、ケーブル、シールなどに広く使用されている劣化防止剤の一つである。
【0004】
タイヤが環境光、高温、オゾンなどに長時間さらされたり、化学的な腐食を受けたりすると、タイヤのトレッド部やサイド部がゴム材料の劣化によって変色し、車両用タイヤの全体的な外観に影響を与える。現在、市場で販売されているほとんどのタイヤは黒色である。ゴム原料は通常、ゴム製品の黒色に影響を与えないため、例えば黒色のタイヤなどのゴム製品を製造する際には、変色はあまり考慮されない。
【0005】
劣化防止剤による汚染や変色は、ゴム原料に含まれるあらゆる種類のゴム添加剤のうち最も深刻である。一部の劣化防止剤は、ゴムに着色や汚染の影響を与える。一部の劣化防止剤は、ゴムの中で転移し、それに接触する物質を汚染する。一部の劣化防止剤は、長期保存の間に、特に光によってゴム製品の変色を引き起こす。汚染型劣化防止剤(4010、6PPD、IPPDなど)を含むこれらの劣化防止剤は、白色や着色された製品の製造には適しない。外観への要求が高い一部のタイヤでは、フェノール系酸化防止剤や飽和ゴムの使用によって劣化防止剤の量が減らされ、タイヤの変色が抑えられる。タイヤの変色はフェノール系酸化防止剤の使用によって抑えられるものの、その劣化防止効果はp-フェニレンジアミン系酸化防止剤に及ばず、タイヤの耐熱酸素性(heat-oxygen resistance)、耐オゾン性、耐屈曲性が大きく低下する。また、EPDMなどの飽和ゴムをタイヤに使用することで、劣化防止剤の量をある程度減らしたり、劣化防止剤を全く使用しないことで、タイヤの外観が大幅に改善されるが、比較的に高価なため、製造コストが大幅に上昇し、また粘度が低いため、タイヤの接着性や成形性に問題を引き起こす。
【0006】
現在の技術では、ゴム製品の静的劣化防止特性を改善するために、6PPDが大量に使用される。6PPDは汚染型劣化防止剤であり、ゴム製品の表面に転移しやすいため、ゴム製品の変色の原因となる。しかし、あらゆる面で6PPDに代わる非汚染型劣化防止剤はまだ開発されていない。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、ゴム製品の機械的特性および劣化防止特性を維持しつつ、外観変色に対する耐性を改善する新規な低汚染型劣化防止剤を提供する。具体的に、本発明は、以下の構造を有する式Iの化合物を提供する:
【0008】
【化1】
ここで、R
1とR
2は同一であるか、または異なり、それぞれ独立してC1-C12アルキルおよびC3-C8シクロアルキルから選択され、そして、R
1とR
2が同時にメチルではない。
【0009】
本発明の式Iの化合物において、R1は、C1-C6アルキルまたはC3-C6シクロアルキルであってもよく、好ましくは、メチル、エチル、イソブチル、またはシクロヘキシルである。
【0010】
本発明の式Iの化合物において、R2は、C1-C12アルキルまたはC3-C6シクロアルキルであってもよく、好ましくは、メチル、エチル、1,3-ジメチルブチル、1,4-ジメチルアミル、オクチル、1-メチル-6-エチルオクチル、またはシクロヘキシルである。
【0011】
本発明において、式Iの化合物は以下の構造を有していてもよい。R1がメチルの場合、R2はエチル、1,3-ジメチルブチル、または1-メチル-6-エチルオクチルである;またはR1がエチルの場合、R2は1,4-ジメチルアミルまたはシクロヘキシルである;またはR1がイソブチルの場合、R2はシクロヘキシルである;またはR1がシクロヘキシルの場合、R2はオクチルである。
【0012】
本発明はさらに、式Iの化合物と、式Iの化合物以外の少なくとも1つの他の劣化防止剤とを含む劣化防止剤組成物を提供する。式Iの化合物は、以下の構造を有する:
【0013】
【化2】
ここで、R
1およびR
2は同一であるか、または異なり、それぞれ独立してC1-C12アルキルおよびC3-C8シクロアルキルから選択される。
【0014】
本発明の劣化防止剤組成物において、R1は、C1-C6アルキルまたはC3-C6シクロアルキルであってもよく、好ましくは、メチル、エチル、イソブチル、またはシクロヘキシルである。
【0015】
本発明の劣化防止剤組成物において、R2は、C1-C12アルキルまたはC3-C6シクロアルキルであってもよく、好ましくは、メチル、エチル、1,3-ジメチルブチル、1,4-ジメチルアミル、オクチル、1-メチル-6-エチルオクチル、またはシクロヘキシルである。
【0016】
本発明の劣化防止剤組成物において、式Iの化合物は以下の構造を有していてもよい。R1とR2はともにメチルである;またはR1がメチルの場合、R2はエチル、1,3-ジメチルブチル、または1-メチル-6-エチルオクチルである;またはR1がエチルの場合、R2は1,4-ジメチルアミルまたはシクロヘキシルである;またはR1がイソブチルの場合、R2はシクロヘキシルである;またはR1がシクロヘキシルの場合、R2はオクチルである。
【0017】
本発明の劣化防止剤組成物において、他の劣化防止剤は、汚染型劣化防止剤である。好ましくは、他の劣化防止剤は、6PPD、IPPD、またはその両方である。
【0018】
本発明の劣化防止剤組成物において、式Iの化合物と他の劣化防止剤との質量比は、1:6~6:1、好ましくは1:5~5:1である。
【0019】
本発明の劣化防止剤組成物において、劣化防止剤組成物は、本発明の式Iの化合物と、少なくとも1つの汚染型劣化防止剤とを含み、好ましくは、6PPD、IPPD、またはその両方を含む。
【0020】
本発明の劣化防止剤組成物において、劣化防止剤組成物は、式Iの化合物と他の劣化防止剤とを含み、式Iの化合物で、R1とR2がともにメチルであってもよく、また、他の劣化防止剤は、6PPD、IPPD、またはその両方などの1つまたは複数の汚染型劣化防止剤である。
【0021】
本発明はさらに、本発明の式Iの化合物または本発明の組成物を含むゴム組成物を提供する。好ましくは、本発明のゴム組成物において、劣化防止剤の量は、ゴム組成物中のジエンエラストマーの量を100質量部として、0.5~5.0質量部、好ましくは0.5~3.5質量部である。
【0022】
本発明はさらに、本発明のゴム組成物をゴム成分として用いて調製されるゴム製品を提供する。ゴム製品は、好ましくは、タイヤ、ゴムオーバーシューズ、シーリングストリップ、音響パネル、またはクラッシュパッドである。
【0023】
本発明はさらに、本発明のゴム組成物を、ゴム製品またはリトレッドタイヤの調製に使用する方法を提供する。
【0024】
本発明はさらに、ゴムまたはゴム製品の外観変色に対する耐性を改善するために式Iの化合物を使用する方法、またはゴムまたはゴム製品の外観変色に対する耐性を改善するための劣化防止剤を調製する方法を提供する。式Iの化合物は、以下の構造を有する:
【0025】
【化3】
ここで、R
1およびR
2は同一であるか、または異なり、それぞれ独立してC1-C12アルキルおよびC3-C8シクロアルキルから選択される。
【0026】
本発明の劣化防止剤組成物の使用方法において、R1は、C1-C6アルキルまたはC3-C6シクロアルキルであってもよく、好ましくは、メチル、エチル、イソブチル、またはシクロヘキシルである。
【0027】
本発明の劣化防止剤組成物の使用方法において、R2は、C1-C12アルキルまたはC3-C6シクロアルキルであってもよく、好ましくは、メチル、エチル、1,3-ジメチルブチル、1,4-ジメチルアミル、オクチル、1-メチル-6-エチルオクチル、またはシクロヘキシルである。
【0028】
本発明の劣化防止剤組成物の使用方法において、式Iの化合物は以下の構造を有していてもよい。R1とR2はともにメチルである;またはR1がメチルの場合、R2はエチル、1,3-ジメチルブチル、または1-メチル-6-エチルオクチルである;またはR1がエチルの場合、R2は1,4-ジメチルアミルまたはシクロヘキシルである;またはR1がイソブチルの場合、R2はシクロヘキシルである;またはR1がシクロヘキシルの場合、R2はオクチルである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明は、以下の詳細な説明によって説明される。当業者は、本発明の範囲を逸脱することなく、ここに記載されている本発明の内容を変更することができる。
【0030】
本発明の劣化防止剤は、下記の式Iの構造を有するN-フェニル-N’-二置換フェニル-p-フェニレンジアミンである:
【0031】
【化4】
ここでR
1およびR
2は同一であるか、または異なり、それぞれ独立してC1-C12アルキルおよびC3-C8シクロアルキルから選択される。
【0032】
本発明において、汚染型劣化防止剤とは、ゴム製品に使用される場合に外観変色を引き起こす劣化防止剤をいう。汚染型劣化防止剤の例は、N-イソプロピル-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン(IPPD)、N-1,3-ジメチルブチル-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン(6PPD)、N-シクロヘキシル-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン(4010)を含むが、これらに限定されない。非汚染型劣化防止剤とは、ゴム製品に使用される場合に外観変色を引き起こさない劣化防止剤をいう。非汚染型劣化防止剤の例は、2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾール(酸化防止剤264や酸化防止剤BHTとも呼ばれる)を含むが、これに限定されない。低汚染型劣化防止剤とは、ある程度の外観変色をもたらす劣化防止剤で、その程度は汚染型劣化防止剤と非汚染型劣化防止剤の間にあるが、通常は非汚染型劣化防止剤により近い。低汚染型劣化防止剤の例は、2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン(TMQまたはRDとも呼ばれる)を含むが、これらに限定されない。
【0033】
本発明において、「アルキル」は、直鎖状または分岐状のアルキルであってもよい。アルキルは、1~12個の炭素原子からなる長さを有する。本発明のいくつかの実施形態では、アルキルはC1-C6直鎖状または分岐状のアルキルである。アルキルの例は、メチル、エチル、n-ブチル、イソブチル、1,3-ジメチルブチル、1,4-ジメチルアミル、オクチル、1-メチル-6-エチルオクチル、および2,4,6-トリメチルオクチルを含むが、これらに限定されない。
【0034】
本発明において、「シクロアルキル」は、環を形成する環状アルキル基を意味する。環上における炭素原子の数は、通常3~8である。シクロアルキルの例は、シクロブチル、シクロアミル、シクロヘキシルを含む。
【0035】
いくつかの好ましい実施形態では、R1はC1-C8アルキルまたはC3-C6シクロアルキルであり、好ましくはC1-C6アルキルまたはC3-C6シクロアルキルであり、より好ましくはメチル、エチル、イソブチル、またはシクロヘキシルである。
【0036】
いくつかの好ましい実施形態では、R2はC1-C12アルキルまたはC3-C6シクロアルキルであり、好ましくはメチル、エチル、1,3-ジメチルブチル、1,4-ジメチルアミル、オクチル、1-メチル-6-エチルオクチル、またはシクロヘキシルである。
【0037】
本発明の化合物において、式Iの化合物は、R1とR2がともにメチルである化合物を含まなくてもよい。
【0038】
本発明の劣化防止剤は、ゴム製品における優れた耐劣化性や機械的特性を維持しつつ、外観変色に対する耐性を向上させるため、単独で使用してもよく、またはゴム製品を調製するための劣化防止剤組成物として他の公知の劣化防止剤と併用することもできる。
【0039】
本発明の劣化防止剤が唯一の劣化防止剤としてゴム組成物に添加される場合、その量は、ジエンエラストマーを100質量部として、通常0.5~5.0質量部、好ましくは0.5~3.5質量部、より好ましくは0.5~3.0質量部である。例えば、いくつかの実施形態では、R1とR2の両方がメチルである式Iの化合物が唯一の劣化防止剤としてゴム組成物に添加され、その量は、ジエンエラストマーを100質量部として、通常0.5~5.0質量部、好ましくは0.5~3.5質量部、より好ましくは0.5~3.0質量部である。
【0040】
さらに、本発明は、本発明の劣化防止剤化合物を含む劣化防止剤組成物を提供する。任意的に、本発明の劣化防止剤組成物は、式Iの劣化防止剤化合物以外の1つまたは複数の他の劣化防止剤をさらに含む。本発明に適用する他の劣化防止剤は、公知のp-フェニレンジアミン劣化防止剤(例えば、N,N’-ビス-(1,4-ジメチルアミル)-p-フェニレンジアミン(77PD)、N-イソプロピル-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン(IPPD)、N-1,3-ジメチルブチル-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン(6PPD)、N-シクロヘキシル-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン(4010)、ジフェニルと、ジトリルと、およびフェニルトリル-p-フェニレンジアミンとからなる混合物(3100)、またはこれらの組み合わせ)であり得る。いくつかの実施形態では、本発明の劣化防止剤組成物は、R1およびR2がともにメチルである式Iの化合物と、上述の通りの任意の他の劣化防止剤とを含む。
【0041】
本発明の劣化防止剤は、外観変色に対する耐性に優れている。本発明のいくつかの実施形態では、劣化防止剤組成物は、本発明の劣化防止剤化合物以外に、公知の汚染型劣化防止剤(アミン類、アルデヒドアミン類、ケトンアミン類などを含むが、これらに限定されない)も含む。汚染型劣化防止剤に、適量の本発明の劣化防止剤を加えることで、ゴムの機械的特性や劣化防止特性を損なうことなく汚染型劣化防止剤の量を減らすことができるだけでなく、ゴムの外観変色に対する耐性を大幅に改善させることができる。いくつかの実施形態では、汚染型劣化防止剤は、6PPD、IPPD、またはその両方である。さらに、いくつかの実施形態では、劣化防止剤組成物は、R1およびR2がともにメチルである式Iの化合物と、汚染型劣化防止剤(6PPD、IPPD、またはその両方など)とを含む。
【0042】
本発明の劣化防止剤組成物に、他の劣化防止剤を従来公知の量で添加してもよく、例えば、他の劣化防止剤の量が、本発明の劣化防止剤組成物中におけるジエンエラストマーを100質量部として、0.1~5質量部、0.3~3.0質量部、0.3~2.5質量部、0.5~3.0質量部、0.5~2.5質量部、または0.5~2.0質量部であってもいい。好ましくは、本発明の劣化防止剤組成物が1種以上の他の劣化防止剤を含む場合、他の劣化防止剤の総量は、従来知られている量よりも少なく、例えば、他の劣化防止剤の総量は、ジエンエラストマーを100質量部として、0.3~2.0質量部、0.5~2.0質量部、0.3~1.5質量部、0.5~1.5質量部、または1.0~1.5質量部であってもよい。
【0043】
いくつかの実施形態では、本発明の劣化防止剤組成物は、本発明の劣化防止剤と他の劣化防止剤とを含むか、もしくは、劣化防止剤組成物は、本発明の劣化防止剤と他の劣化防止剤とからなる。これらの実施形態において、本発明の劣化防止剤と他の劣化防止剤との質量比は1:6~6:1であってもよく、好ましくは1:5~5:1、より好ましくは1:1~5:1である。例えば、本発明の劣化防止剤組成物は、R1とR2がともにメチルである式Iの化合物と他の劣化防止剤とを含んでもよく、R1とR2がともにメチルである式Iの化合物と他の劣化防止剤とからなってもよく、R1とR2がともにメチルである式Iの化合物と他の劣化防止剤との質量比は、1:6~6:1であってもよく、好ましくは1:5~5:1、より好ましくは1:1~5:1である。
【0044】
本発明の劣化防止剤組成物が劣化防止剤としてゴム組成物に添加される場合、劣化防止剤組成物は、ジエンエラストマーを100質量部として、通常0.5~5質量部(例えば0.5~3.5質量部、0.5~3.0質量部、1.0~3.5質量部、1.0~3.0質量部、2.0~3.5質量部、または2.0~3.0質量部の量)で存在する。
【0045】
本発明の劣化防止剤は、ゴム組成物に対して、熱劣化やオゾン劣化に対する優れた長期耐性を与えるだけでなく、外観変色に対する優れた耐性を与えることもできる。したがって、本発明はさらに、本発明の劣化防止剤または本発明の劣化防止剤組成物を含むゴム組成物を提供する。例えば、本発明のゴム組成物は、R1およびR2がともにメチルである式Iの化合物と、任意の他の劣化防止剤とを含むゴム組成物であってもよい。ゴム組成物中の劣化防止剤または劣化防止剤組成物の量は、上述の通りである。一般的に、ゴム組成物は、ジエンエラストマー、補強用フィラー、および架橋剤をさらに含んでもよい。
【0046】
ジエンエラストマーとは、そのモノマーがジエンを含むエラストマーを指し、ジエンエラストマーの例としては、ブタジエン、イソプレンなどが挙げられる。本発明に適用するジエンエラストマーは、当該分野で様々な既知のジエンエラストマー(天然ゴム(NR)、ブタジエンゴム(BR)、イソプレンゴム、スチレンブタジエンゴム(SBR)、クロロプレンゴム(CR)、ニトリルブタジエンゴム(NBR)、イソプレン/ブタジエン共重合体、イソプレン/スチレン共重合体、イソプレン/ブタジエン/スチレン共重合体を含むが、これらに限定されない)であってもよい。本発明のゴム組成物のいくつかの実施形態では、ジエンエラストマーは天然ゴム(SCR5など)とブタジエンゴム(BR9000など)とからなり、天然ゴムとブタジエンゴムとの質量比は1:9~9:1(例えば、2:8~8:2、3:7~7:3、4:6~6:4、または1:1)である。
【0047】
本発明の劣化防止剤化合物および組成物は、ジエンエラストマー系のゴム組成物だけでなく、非ジエンエラストマーや熱可塑性エラストマーなどの他の種類のエラストマーにも有用である。当業者であれば、他の種類のエラストマー組成物中における本発明の化合物または組成物の量を調整して、同じ有益な効果を実現することができる。
【0048】
本発明のゴム組成物では、ジエンエラストマーを100質量部として、劣化防止剤は通常0.5~5.0質量部(例えば、0.5~3.5質量部、0.5~3.0質量部、1.0~3.5質量部、1.0~3.0質量部、2.0~3.5質量部、または2.0~3.0質量部)の量で存在する。
【0049】
本発明のゴム組成物は、さらに、フィラー、助剤、架橋剤、および促進剤を含むがこれらに限定されない、他の従来の成分を含んでいてもよく、フィラー、助剤、架橋剤、および促進剤の量は、当該分野で従来から知られているものでよい。
【0050】
補強用フィラーとしては、カーボンブラック、酸化チタン、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、クレー、タルクなどが挙げられる。一般的に、補強用フィラーは、ジエンエラストマー100質量部に対して、40~60質量部の量で使用される。
【0051】
助剤は、ゴム製品の加工性を向上させるための軟化剤であってもよい。軟化剤としては、加工油、潤滑油、パラフィン、流動パラフィン、石油アスファルト、ワセリンなどの石油系軟化剤、ひまし油、亜麻仁油、菜種油、ヤシ油などの脂肪油系軟化剤、ビーワックス、カルナウバワックス、ラノリンなどのワックス、トール油、リノール酸、パーム酸、ステアリン酸、ラウリン酸などが挙げられる。また、助剤は、加硫速度を速めたり、ゴムの熱伝導性、耐摩耗性、耐引裂性を向上させることができる酸化亜鉛などの活性剤であってもよい。一般的に、助剤はジエンゴム100質量部に対して5~15質量部で用いられ、例えば、酸化亜鉛は2~8質量部、ステアリン酸は1~4質量部である。
【0052】
架橋剤は硫黄であってもよい。一般的に、架橋剤は、ジエンエラストマー100質量部に対して、1~3質量部の量で使用される。
【0053】
促進剤は一般的に加硫促進剤であり、スルホンアミド、チアゾール、チウラム、チオ尿素、グアニジン、ジチオカルバミン酸、アルジミン、アルデヒドアンモニア、イミダゾリン、キサンチン酸の加硫促進剤の少なくとも1つを含む。例えば、促進剤としては、N-tert-ブチル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド(NS)が挙げられる。一般的に、促進剤は、ジエンエラストマー100質量部に対して、0.5~1.5質量部の量で使用される。
【0054】
また、本発明のゴム組成物には、必要に応じて可塑剤(例えば、フタル酸ジメチル(DMP)、フタル酸ジエチル(DEP)、フタル酸ジブチル(DBP)、フタル酸ジヘプチル(DHP)、フタル酸ジオクチル(DOP)、フタル酸ジイソノニル(DINP)、フタル酸ジイソデシル(DIDP)、フタル酸ブチルベンジル(BBP)、フタル酸ジラウリル(DWP)、およびフタル酸ジシクロヘキシル(DCHP)など)を使用してもよい。可塑剤の使用量は、当業界で従来から知られており、例えば、ジエンエラストマー100質量部に対して0.1~30質量部程度である。
【0055】
本発明のゴム製品は、2段階の混合工程などの従来の方法で調製することができる。この方法では、第1段階の混合がインターナルミキサーで行われ、ジエンエラストマー、補強用フィラー、助剤、および劣化防止剤が配合され、ゴムが110℃以上、例えば130℃で排出される。第2段階の混合はオープンミルで行われ、第1段階の混合ゴムに硫黄と促進剤が配合され、シートが110℃以下、例えば70℃で排出される。加硫(硬化)温度は130℃~200℃、例えば145℃である。加硫時間は、加硫の温度、システム、ダイナミクスに依存し、一般的には15~60分、例えば、30分である。
【0056】
調製工程では、まずジエンエラストマーがインターナルミキサーなどの熱機械式混合機に投入される。しばらく混練した後、ジエンエラストマーに補強用フィラー、助剤、劣化防止剤を加え、均質になるまで混練を続ける。補強用フィラー、助剤、劣化防止剤は一括して添加してもよい。混練時の温度は、110℃以上190℃以下、好ましくは150℃以上160℃以下に制御される。その後、混合物が100℃以下に冷却される。次に、混合物に架橋剤と促進剤を加え、温度を110℃以下に制御しながら、2回目の混練を行う。最後に、加硫を行い、加硫ゴムを調製する。なお、混練で得られたゴム組成物は、加硫の前にカレンダー処理を行ってもよい。
【0057】
本発明はさらに、本発明のゴム組成物をゴム成分として用いて調製されるゴム製品を提供する。例えば、ゴム製品は、タイヤ、ゴムオーバーシューズ、シーリングストリップ、音響パネル、またはクラッシュパッドであってもよい。本発明のいくつかの実施形態では、ゴム製品は、タイヤのトレッド、ベルトプライ、およびサイドウォールである。タイヤのベルトプライとして、ゴム製品は、本発明のゴム組成物以外に、当該技術分野で従来から使用されている補強材をさらに含んでいてもよい。本発明はさらに、本発明のゴム組成物を、ゴム製品またはリトレッドタイヤの調製に使用する方法を提供する。
【0058】
本発明はさらに、ゴムまたはゴム製品の外観変色に対する耐性を改善するために本発明の劣化防止剤を使用する方法を提供する。具体的には、本発明は、ゴムまたはゴム製品の外観変色に対する耐性を改善するために式Iの化合物を使用する方法、またはゴムまたはゴム製品の外観変色に対する耐性を促進するための劣化防止剤組成物を調製するために式Iの化合物を使用する方法を提供する。式Iの化合物は、以下の構造を有する:
【0059】
【化5】
ここでR
1およびR
2は同一であるか、または異なり、それぞれ独立してC1-C12アルキルおよびC3-C8シクロアルキルから選択される。
【0060】
本発明のいくつかの実施形態では、R1はC1-C8アルキルまたはC3-C6シクロアルキルであり、好ましくはC1-C6アルキルまたはC3-C6シクロアルキルである。本発明のいくつかの実施形態では、R1は、メチル、エチル、イソブチル、またはシクロヘキシルである。
【0061】
本発明のいくつかの実施形態では、R2はC1-C12アルキルまたはC3-C6シクロアルキルである。本発明のいくつかの実施形態では、R2はメチル、エチル、1,3-ジメチルブチル、1,4-ジメチルアミル、オクチル、1-メチル-6-エチルオクチル、またはシクロヘキシルである。
【0062】
本発明のいくつかの実施形態では、式IにおいてR1とR2はともにメチルであり、式Iの化合物は、ゴムまたはゴム製品の外観変色に対する耐性を改善するために、単独でまたは劣化防止剤組成物中で使用される。
【0063】
本発明のいくつかの実施形態では、ゴムは天然ゴム、ブタジエンゴム、またはその両方である。
【実施例】
【0064】
本発明は、以下の実施例でさらに説明されているが、これらは説明のためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。特に指定のない限り、以下の実施例で使用される方法および材料は、当技術分野において従来のものである。
【0065】
調製例
本発明の式Iの化合物は、全体が参照により本明細書に組み込まれるCN106608827A(2018年8月23日に公開されたGuoらの米国特許出願公開US2018/0237376A1に対応)に開示された方法により調製される。例えば、CN106608827Aの実施例1を参照すると、R1がメチルであり、R2がエチルである本発明の劣化防止剤は、水素受容体である2-メチル-3-エチルフェノールおよび触媒の存在下で、N-フェニル-p-フェニレンジアミンと2-メチル-3-エチルシクロヘキサノンを反応させることによって調製される。生成物であるN-(2-メチル-3-エチルフェニル)-N’-フェニル-1,4-フェニレンジアミンの含有量は78.5%、収率は85.8%である。以下の実施例における劣化防止剤は、異なる対応の置換シクロヘキサノンを使用する以外は、同じ方法で調製される。
【0066】
実施例1:ゴム組成物の調製
表1の配合に従って、C-1~C-12と記された12種類の天然ゴムとブタジエンゴムとをベースとした組成物を調製した。
【0067】
【0068】
ゴム組成物C-1は、劣化防止剤として6PPDのみを含む参照サンプルである;ゴム組成物C-11は、劣化防止剤としてIPPDのみを含む参照サンプルである;ゴム組成物C-2~C-10およびC-12は、本発明の劣化防止剤を含む。
【0069】
C-2、C-3、C-12において、本発明の劣化防止剤はN-(2,3-ジメチルフェニル)-N’-フェニル-1,4-フェニレンジアミンであり、以下のように、R1とR2の両方がメチルである:
【0070】
【0071】
C-4において、本発明の劣化防止剤はN-(2-メチル-3-エチルフェニル)-N’-フェニル-1,4-フェニレンジアミンであり、以下のように、R1がメチルであり、R2がエチルである:
【0072】
【0073】
C-5において、本発明の劣化防止剤はN-(2-sec-ブチル-3-シクロヘキシルフェニル)-N’-フェニル-1,4-フェニレンジアミン であり、以下のように、R1がイソブチル、R2がシクロヘキシルである:
【0074】
【0075】
C-6 において、本発明の劣化防止剤はN-[2-エチル-3-(1,4-ジメチルペンチル)フェニル]-N’-フェニル-1,4-フェニレンジアミンであり、以下のように、R1がエチル、R2が1,4-ジメチルペンチルである:
【0076】
【0077】
C-7 において、本発明の劣化防止剤はN-(2-シクロヘキシル-3-オクチルフェニル)-N’-フェニル-1,4-フェニレンジアミンであり、以下のように、R1がシクロヘキシルであり、R2がオクチルである:
【0078】
【0079】
C-8 において、本発明の劣化防止剤はN-(2-エチル-3-シクロヘキシルフェニル)-N’-フェニル-1,4-フェニレンジアミンであり、以下のように、R1がエチルであり、R2がシクロヘキシルである:
【0080】
【0081】
C-9 において、本発明の劣化防止剤はN-[2-メチル-3-(1,3-ジメチルブチル)フェニル]-N’-フェニル-1,4-フェニレンジアミンであり、以下のように、R1がメチルであり、R2が1,3-ジメチルブチルである:
【0082】
【0083】
C-10 において、本発明の劣化防止剤はN-[2-メチル-3-(1-メチル-6-エチルオクチル)フェニル]-N’-フェニル-1,4-フェニレンジアミンであり、以下のように、R1がメチルであり、R2が1-メチル-6-エチルオクチルである:
【0084】
【0085】
すべてのゴム組成物は、以下のステップで調製された:
【0086】
1. ジエンエラストマー(天然ゴムNRとブタジエンラバーBR9000)をインターナルミキサーに加えて初期混練を行う。しばらく混練した後、補強用フィラー(カーボンブラックN550)、助剤(ZnOとステアリン酸)、劣化防止剤(6PPD、IPPD、本発明の劣化防止剤、またはそれらの組み合わせ)を一括で添加し、温度を150℃以上160℃以下に制御しながら、混合物が均一になるまで混練を続けた。
【0087】
2. 混合物全体を100℃以下に冷却した後、架橋系(硫黄と促進剤NS)を添加し、その後温度を110℃以下に制御しながら混合物全体を混練した。
【0088】
3. 得られたゴム組成物をシート状(厚さ2~3mm)にカレンダー加工し、加硫前の物理化学的特性を測定した。
【0089】
4. ゴム組成物を145℃で30分間加硫した。加硫後のゴム組成物の機械的特性および劣化特性を測定した。
【0090】
実施例2:ゴムの特性評価
実施例1のゴム組成物の特性は、GB/T 16584-1996“Rubber - Measurement of Vulcanization Characteristics With Rotorless Curemeters”に従って、加硫の前に測定した。実施例1で調製した加硫ゴムに、GB/T 3512-2014“Rubber , vulcanized or thermoplastic -accelerated aging and heat resistance tests -air oven method”に従って、熱風劣化試験を行った。加硫前のゴム組成物、加硫ゴムの劣化前後の特性に関する試験結果を表2に示す。
【0091】
【0092】
実施例2は、本発明の劣化防止剤を単独で、または6PPDもしくはIPPDと組み合わせて使用して調製したゴム組成物の機械的特性が、参照サンプルのものと類似していることを示している。
【0093】
実施例3:オゾン試験
実施例1で調製した加硫ゴムを、GB/T 11206-2003“Standard Test Method for Rubber Deterioration - Surface Cracking”およびGB/T 13642-2015“Rubber, Vulcanized or Thermoplastic - Resistance to Ozone Cracking - Dynamic Strain Testing”に従って、オゾン劣化測定室で静的および動的な耐オゾン性試験を実施した。オゾンの体積濃度は50pphm、温度は(40±2)℃、湿度は(50±5)%である。
【0094】
静的試験では、サンプルを一定の長さまで伸ばし、その長さを維持することで、静的な変形でオゾンクラックが発生するタイヤなどのゴム製品を模した試験を行った。この試験では、伸び率を20%とし、72時間連続で試験を行った。サンプルのクラッキングを観察し、その結果を表3に示す。
【0095】
【0096】
動的試験では、サンプルを繰り返し引張って伸ばし、解放して弛めることで、運転中のタイヤやその他のゴム製品が動的条件でオゾンクラックを受けることを模したものである。この試験では、伸び率は10%、周波数は0.5Hzで、72時間連続して試験を行った。サンプルのクラッキングを観察し、その結果を表4に示す。
【0097】
【0098】
表3及び表4において、「軽度」とは、クラックの幅が0.1mm以下であり、かつクラックの密度が10個/cm以下のものをいう。軽度のクラックは肉眼では判別しづらいもので、実際の使用や外観に影響を与えることがない。
【0099】
実施例3は、静的オゾンクラッキング試験では、組成物C-1~C-5およびC-10にはクラッキングがなく、組成物C-6~C-9、C-11およびC-12には程度の異なる、微細なクラッキングである軽度のクラッキングがあることを示している。動的オゾンクラッキング試験では、組成物C-1~C-4およびC-10にはクラッキングがなく、組成物C-5~C-9、C-11およびC-12には程度の異なる、微細なクラッキングである軽度のクラッキングがあることを示している。したがって、組成物C-5の動的オゾンクラッキング耐性がその静的オゾンクラッキング耐性よりも優れていないが、それ以外のすべての組成物は、動的オゾンクラッキング耐性を反映した良好な静的オゾンクラッキング耐性を示している。
【0100】
実施例4:UVおよび耐候性試験
実施例1で調製した加硫ゴムを,GB/T 16585-1996“Rubber, Vulcanized - Test Method of Resistance to Artificial Weathering (Fluorescent UV lamp)”に従って,UV劣化試験に供した。UVランプのモデルはUVA、波長は340nm、放射照度は0.98W/m2、実験温度は60℃にした。UV照射4時間、水分凝結(condensation)4時間のサイクルを採用し、72時間ごとにサンプルを観察した。総露光時間は288時間で、サンプルの表面に変色が見られた。結果は表5に示す。
【0101】
【0102】
耐候性試験では、実施例1で調製した加硫ゴムを屋外に置いた。観察は7日ごとに合計49日間行い、表面の変色を観察した。結果は表6に示す。
【0103】
【0104】
変色レベルは表7に記載されている。
【0105】
【0106】
実施例4は、6PPDまたはIPPDのみを使用して調製した参照ゴム組成物と比較して、本発明の劣化防止剤を単独または6PPDもしくはIPPDと組み合わせて使用したゴム組成物は、より優れた外観変色耐性を有することを示している。