(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-18
(45)【発行日】2023-08-28
(54)【発明の名称】電子装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/56 20060101AFI20230821BHJP
H01L 23/12 20060101ALI20230821BHJP
【FI】
H01L21/56 R
H01L23/12 501P
(21)【出願番号】P 2022511711
(86)(22)【出願日】2021-03-05
(86)【国際出願番号】 JP2021008786
(87)【国際公開番号】W WO2021199919
(87)【国際公開日】2021-10-07
【審査請求日】2022-07-05
(31)【優先権主張番号】P 2020061027
(32)【優先日】2020-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000220099
【氏名又は名称】三井化学東セロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】三浦 徹
(72)【発明者】
【氏名】栗原 宏嘉
【審査官】河合 俊英
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/017226(WO,A1)
【文献】特開2013-157470(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/56
H01L 23/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材層と、前記基材層の第1面側に設けられ、かつ、電子部品を仮固定するための粘着性樹脂層(A)と、前記基材層の第2面側に設けられた粘着性樹脂層(B)と、前記基材層と前記粘着性樹脂層(A)との間または前記基材層と前記粘着性樹脂層(B)との間に設けられ、かつ、外部刺激により架橋可能な凹凸吸収性樹脂層(C)と、を備える粘着性フィルムと、
前記粘着性フィルムの前記粘着性樹脂層(A)に貼り付けられ、かつ、凹凸構造を有する電子部品と、を備える構造体を準備する準備工程と、
前記構造体中の前記凹凸吸収性樹脂層(C)に対して外部刺激を与えることにより、前記凹凸吸収性樹脂層(C)を架橋する架橋工程と、
封止材により前記電子部品を封止する封止工程と、
を少なくとも備える電子装置の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の電子装置の製造方法において、
前記粘着性樹脂層(B)が外部刺激により粘着力が低下する層である電子装置の製造方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の電子装置の製造方法において、
前記外部刺激が熱または光である電子装置の製造方法。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の電子装置の製造方法において、
前記凹凸吸収性樹脂層(C)が少なくとも前記基材層と前記粘着性樹脂層(A)との間に設けられている電子装置の製造方法。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の電子装置の製造方法において、
前記電子部品の前記凹凸構造はバンプ電極を含む電子装置の製造方法。
【請求項6】
請求項5に記載の電子装置の製造方法において、
前記バンプ電極の高さをH[μm]とし、前記凹凸吸収性樹脂層
(C)の厚みをd[μm]としたとき、H/dが0.01以上1以下である電子装置の製造方法。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の電子装置の製造方法において、
前記凹凸吸収性樹脂層(C)を架橋して得られる凹凸吸収性樹脂層(C')の125℃における貯蔵弾性率E'が1.0×10
6Pa以上1.0×10
9Pa以下である電子装置の製造方法。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の電子装置の製造方法において、
前記凹凸吸収性樹脂層
(C)が架橋性樹脂を含む電子装置の製造方法。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか一項に記載の電子装置の製造方法において、
前記凹凸吸収性樹脂層
(C)の厚みが10μm以上1000μm以下である電子装置の製造方法。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか一項に記載の電子装置の製造方法において、
前記構造体が前記粘着性樹脂層(B)に貼り付けられた支持基板をさらに備える電子装置の製造方法。
【請求項11】
請求項10に記載の電子装置の製造方法において、
前記封止工程の後に、外部刺激を与えることにより前記粘着性樹脂層(B)の粘着力を低下させて前記構造体から前記支持基板を剥離する第1剥離工程をさらに備える電子装置の製造方法。
【請求項12】
請求項11に記載の電子装置の製造方法において、
前記第1剥離工程の後に、前記電子部品から前記粘着性フィルムを剥離する第2剥離工程をさらに備える電子装置の製造方法。
【請求項13】
請求項1乃至12のいずれか一項に記載の電子装置の製造方法において、
前記封止材がエポキシ樹脂系封止材である電子装置の製造方法。
【請求項14】
請求項1乃至13のいずれか一項に記載の電子装置の製造方法において、
前記粘着性樹脂層(A)を構成する粘着性樹脂が(メタ)アクリル系粘着性樹脂、シリコーン系粘着性樹脂、ウレタン系粘着性樹脂、オレフィン系粘着性樹脂およびスチレン系粘着性樹脂から選択される一種または二種以上を含む電子装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子装置(例えば、半導体装置)を製造する際、通常、半導体チップなどの電子部品を封止樹脂で覆って封止樹脂体を形成することが行われる。この際、支持板上に仮固定材を介して電子部品を固定した状態で封止樹脂で電子部品を覆う工程を採用されることがある。
【0003】
このような電子装置の製造方法に関する技術としては、例えば、特許文献1(国際公開第2015/098829号)に記載のものが挙げられる。
【0004】
特許文献1には、支持板、上記支持板上に積層された仮固定材及び上記仮固定材上に仮固定された半導体チップを備えるチップ仮固定体、上記チップ仮固定体上に配置された熱硬化性樹脂シート、並びに90℃の引張貯蔵弾性率が200MPa以上であり、上記熱硬化性樹脂シート上に配置されたセパレータを備える積層体を加圧して、上記半導体チップ及び上記半導体チップを覆う上記熱硬化性樹脂シートを備える封止体を形成する工程を含む半導体パッケージの製造方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らの検討によれば、粘着性フィルム上に、例えばバンプのような凹凸構造を有する電子部品を配置して封止材により電子部品を封止する際に、電子部品の水平方向に位置がずれてしまう(以下、電子部品の位置ずれとも呼ぶ。)場合や、粘着性フィルムと電子部品との間に封止材が侵入してしまう場合があることが明らかになった。
一方、本発明者らのさらなる検討によれば、粘着性フィルムとして、凹凸吸収性樹脂層を備える粘着性フィルムを用いることによって、封止工程における電子部品の位置ずれや粘着性フィルムと電子部品との間に封止材が侵入してしまうことを抑制できることを見出した。
しかし、
図4(a)~(c)に示すように、凹凸吸収性樹脂層を備える粘着性フィルム50Aを用いると、凹凸構造75Aを有する電子部品70Aを配置して封止材60Aにより電子部品を封止する際に、熱により凹凸吸収性樹脂層が軟化し、封止材60Aの圧力により電子部品70Aが粘着性フィルム50Aに沈みこみやすくなり、その結果、
図4(d)に示すような、スタンドオフ90という電子部品70Aの封止不良が起きてしまう場合があることが明らかになった。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、スタンドオフという電子部品の封止不良の発生を抑制することが可能な電子装置の製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を達成するために鋭意検討を重ねた。その結果、粘着性フィルムとして、外部刺激により架橋可能な凹凸吸収性樹脂層を備える粘着性フィルムを用いることによって、スタンドオフという電子部品の封止不良の発生を抑制できることを見出して、本発明を完成させた。
【0008】
本発明によれば、以下に示す電子装置の製造方法が提供される。
【0009】
[1]
基材層と、上記基材層の第1面側に設けられ、かつ、電子部品を仮固定するための粘着性樹脂層(A)と、上記基材層の第2面側に設けられた粘着性樹脂層(B)と、上記基材層と上記粘着性樹脂層(A)との間または上記基材層と上記粘着性樹脂層(B)との間に設けられ、かつ、外部刺激により架橋可能な凹凸吸収性樹脂層(C)と、を備える粘着性フィルムと、
上記粘着性フィルムの上記粘着性樹脂層(A)に貼り付けられ、かつ、凹凸構造を有する電子部品と、を備える構造体を準備する準備工程と、
上記構造体中の上記凹凸吸収性樹脂層(C)に対して外部刺激を与えることにより、上記凹凸吸収性樹脂層(C)を架橋する架橋工程と、
封止材により上記電子部品を封止する封止工程と、
を少なくとも備える電子装置の製造方法。
[2]
上記[1]に記載の電子装置の製造方法において、
上記粘着性樹脂層(B)が外部刺激により粘着力が低下する層である電子装置の製造方法。
[3]
上記[1]または[2]に記載の電子装置の製造方法において、
上記外部刺激が熱または光である電子装置の製造方法。
[4]
上記[1]乃至[3]のいずれか一つに記載の電子装置の製造方法において、
上記凹凸吸収性樹脂層(C)が少なくとも上記基材層と上記粘着性樹脂層(A)との間に設けられている電子装置の製造方法。
[5]
上記[1]乃至[4]のいずれか一つに記載の電子装置の製造方法において、
上記電子部品の上記凹凸構造はバンプ電極を含む電子装置の製造方法。
[6]
上記[5]に記載の電子装置の製造方法において、
上記バンプ電極の高さをH[μm]とし、上記凹凸吸収性樹脂層の厚みをd[μm]としたとき、H/dが0.01以上1以下である電子装置の製造方法。
[7]
上記[1]乃至[6]のいずれか一つに記載の電子装置の製造方法において、
上記凹凸吸収性樹脂層(C)を架橋して得られる凹凸吸収性樹脂層(C')の125℃における貯蔵弾性率E'が1.0×106Pa以上1.0×109Pa以下である電子装置の製造方法。
[8]
上記[1]乃至[7]のいずれか一つに記載の電子装置の製造方法において、
上記凹凸吸収性樹脂層が架橋性樹脂を含む電子装置の製造方法。
[9]
上記[1]乃至[8]のいずれか一つに記載の電子装置の製造方法において、
上記凹凸吸収性樹脂層の厚みが10μm以上1000μm以下である電子装置の製造方法。
[10]
上記[1]乃至[9]のいずれか一つに記載の電子装置の製造方法において、
上記構造体が上記粘着性樹脂層(B)に貼り付けられた支持基板をさらに備える電子装置の製造方法。
[11]
上記[10]に記載の電子装置の製造方法において、
上記封止工程の後に、外部刺激を与えることにより上記粘着性樹脂層(B)の粘着力を低下させて上記構造体から上記支持基板を剥離する第1剥離工程をさらに備える電子装置の製造方法。
[12]
上記[11]に記載の電子装置の製造方法において、
上記第1剥離工程の後に、上記電子部品から上記粘着性フィルムを剥離する第2剥離工程をさらに備える電子装置の製造方法。
[13]
上記[1]乃至[12]のいずれか一つに記載の電子装置の製造方法において、
上記封止材がエポキシ樹脂系封止材である電子装置の製造方法。
[14]
上記[1]乃至[13]のいずれか一つに記載の電子装置の製造方法において、
上記粘着性樹脂層(A)を構成する粘着性樹脂が(メタ)アクリル系粘着性樹脂、シリコーン系粘着性樹脂、ウレタン系粘着性樹脂、オレフィン系粘着性樹脂およびスチレン系粘着性樹脂から選択される一種または二種以上を含む電子装置の製造方法。
[15]
基材層と、上記基材層の第1面側に設けられ、かつ、電子部品を仮固定するための粘着性樹脂層(A)と、上記基材層と上記粘着性樹脂層(A)との間に設けられ、かつ、外部刺激により架橋可能な凹凸吸収性樹脂層(C)と、を備える粘着性フィルムと、
上記粘着性フィルムの上記粘着性樹脂層(A)に貼り付けられ、かつ、凹凸構造を有する電子部品と、を備える構造体を準備する準備工程と、
上記構造体中の上記凹凸吸収性樹脂層(C)に対して外部刺激を与えることにより、上記凹凸吸収性樹脂層(C)を架橋する架橋工程と、
封止材により上記電子部品を封止する封止工程と、
を少なくとも備える電子装置の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、スタンドオフという電子部品の封止不良の発生を抑制することが可能な電子装置の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明に係る実施形態の粘着性フィルムの構造の一例を模式的に示した断面図である。
【
図2】本発明に係る実施形態の電子装置の製造方法の一例を模式的に示した断面図である。
【
図3】本発明に係る実施形態の電子装置の製造方法の一例を模式的に示した断面図である。
【
図4】スタンドオフという電子部品の封止不良を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。なお、すべての図面において、同様な構成要素には共通の符号を付し、適宜説明を省略する。また、図は概略図であり、実際の寸法比率とは一致していない。また、数値範囲の「A~B」は特に断りがなければ、A以上B以下を表す。また、本実施形態において、「(メタ)アクリル」とはアクリル、メタクリルまたはアクリルおよびメタクリルの両方を意味する。
【0013】
1.電子装置の製造方法
はじめに、本実施形態に係る電子装置の製造方法について説明する。
図1は、本発明に係る実施形態の粘着性フィルム50の構造の一例を模式的に示した断面図である。
図2および3は、本発明に係る実施形態の電子装置の製造方法の一例を模式的に示した断面図である。
本実施形態に係る電子装置の製造方法は、以下の3つの工程を少なくとも備えている。
(1)基材層10と、基材層10の第1面10A側に設けられ、かつ、電子部品70を仮固定するための粘着性樹脂層(A)と、基材層10の第2面10B側に設けられた粘着性樹脂層(B)と、基材層10と粘着性樹脂層(A)との間または基材層10と粘着性樹脂層(B)との間に設けられ、かつ、外部刺激により架橋可能な凹凸吸収性樹脂層(C)と、を備える粘着性フィルム50と、粘着性フィルム50の粘着性樹脂層(A)に貼り付けられ、かつ、凹凸構造75を有する電子部品70と、を備える構造体100を準備する準備工程
(2)構造体100中の凹凸吸収性樹脂層(C)に対して外部刺激を与えることにより、凹凸吸収性樹脂層(C)を架橋する架橋工程と、
(3)封止材60により電子部品70を封止する封止工程
ここで、支持基板80として、例えば、チャックテーブル等を用いる場合、粘着性フィルム50は粘着性樹脂層(B)がなくても支持基板80に固定できる。そのため、粘着性フィルム50において、基材層10の第2面10B側に設けられた粘着性樹脂層(B)は設けなくてもよい。
【0014】
上述したように、本発明者らの検討によれば、粘着性フィルムとして、凹凸吸収性樹脂層を備える粘着性フィルムを用いることによって、封止工程における電子部品の位置ずれや粘着性フィルムと電子部品との間に封止材が侵入してしまうことを抑制できることを見出した。
しかし、
図4(a)~(c)に示すように、凹凸吸収性樹脂層を備える粘着性フィルム50Aを用いると、凹凸構造75Aを有する電子部品70Aを配置して封止材60Aにより電子部品を封止する際に、熱により凹凸吸収性樹脂層が軟化し、封止材60Aの圧力により電子部品70Aが粘着性フィルム50Aに沈みこみやすくなり、その結果、
図4(d)に示すような、スタンドオフ90という電子部品70Aの封止不良が起きてしまう場合があることが明らかになった。
【0015】
本発明者らは、封止工程における電子部品の位置ずれや粘着性フィルムと電子部品との間に封止材が侵入してしまうことを抑制できるとともに、封止工程におけるスタンドオフの発生を抑制することが可能な電子装置の製造方法を実現するために、鋭意検討を重ねた。その結果、基材層10と、基材層10の第1面10A側に設けられ、かつ、電子部品を仮固定するための粘着性樹脂層(A)と、基材層10の第2面10B側に設けられた粘着性樹脂層(B)と、基材層10と粘着性樹脂層(A)との間または基材層10と粘着性樹脂層(B)との間に設けられ、かつ、外部刺激により架橋可能な凹凸吸収性樹脂層(C)と、を備える粘着性フィルム50を用いることにより、封止工程における電子部品の位置ずれや粘着性フィルムと電子部品との間に封止材が侵入してしまうことを抑制できるとともに、封止工程におけるスタンドオフの発生を抑制できることを初めて見出した。
すなわち、本実施形態によれば、凹凸構造を有する電子部品を仮固定するための粘着性フィルムとして、外部刺激により架橋可能な凹凸吸収性樹脂層(C)を有する粘着性フィルム50を用いることで、凹凸構造を有する電子部品に対する粘着性フィルム50の密着性が向上するため、電子部品を封止する工程において、封止材の流動による圧力等によって電子部品の位置がずれてしまうことや、粘着性フィルムと電子部品との間に封止材が侵入してしまうことを抑制することができる。さらに、凹凸構造を有する電子部品を仮固定した後に、外部刺激によって凹凸吸収性樹脂層(C)を架橋硬化させて弾性率を高めることによって、電子部品の封止工程において、電子部品が粘着性フィルムに沈みこむことを抑制することができる。
以上のように、本実施形態に係る電子装置の製造方法によれば、封止工程における電子部品の位置ずれや粘着性フィルムと電子部品との間に封止材が侵入してしまうことを抑制できるとともに、封止工程におけるスタンドオフの発生を抑制することが可能となる。
【0016】
以下、本実施形態に係る電子装置の製造方法の各工程について説明する。
【0017】
((1)準備工程)
準備工程では、粘着性フィルム50と、粘着性フィルム50の粘着性樹脂層(A)に貼り付けられ、かつ、凹凸構造75を有する電子部品70と、を備える構造体100を準備する。ここで、構造体100は、粘着性フィルム50の粘着性樹脂層(B)に貼り付けられた支持基板80をさらに備えてもよい。
【0018】
このような構造体100は、例えば、以下の手順で作製することができる。
まず、支持基板80上に、粘着性フィルム50を、粘着性樹脂層(B)が支持基板80側となるように貼着する。粘着性樹脂層(B)上にはセパレータと称する保護フィルムが貼付けられていてもよく、当該保護フィルムを剥がし、粘着性樹脂層(B)の露出面を支持基板80表面に貼着することができる。
支持基板80としては、例えば、石英基板、ガラス基板、SUS基板等を使用することができる。
【0019】
次いで、粘着性フィルム50の粘着性樹脂層(A)上に電子部品70を配置することにより構造体100を得ることができる。
電子部品70としては、例えば、IC、LSI、ディスクリート、発光ダイオード、受光素子等の半導体チップや半導体パネル、半導体パッケージ等を挙げることができる。
電子部品70の表面は、例えば、電極を有することにより、凹凸構造75となっている。
また、電極は、例えば、電子装置を実装面に実装する際に、実装面に形成された電極に対して接合されて、電子装置と実装面(プリント基板等の実装面)との間の電気的接続を形成するものである。
電極としては、例えば、ボールバンプ、印刷バンプ、スタッドバンプ、めっきバンプ、ピラーバンプ等のバンプ電極が挙げられる。すなわち、電極は、通常凸電極である。これらのバンプ電極は1種単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
また、バンプ電極を構成する金属種は特に限定されず、例えば、銀、金、銅、錫、鉛、ビスマス及びこれらの合金等が挙げられる。これらの金属種は1種単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0020】
((2)架橋工程)
次いで、構造体100中の凹凸吸収性樹脂層(C)に対して外部刺激を与えることにより、凹凸吸収性樹脂層(C)を架橋する。
【0021】
凹凸吸収性樹脂層(C)の熱架橋方法としては架橋性樹脂を熱硬化できる方法であれば特に限定されないが、ラジカル重合開始剤による熱架橋が挙げられる。
ラジカル重合開始剤による熱架橋は、架橋性樹脂の架橋に用いられているラジカル重合開始剤を用いることができる。ラジカル重合開始剤としては、公知の熱ラジカル重合開始剤を用いることができる。
ラジカル重合開始剤による熱架橋の場合、加熱温度は、例えば、80℃~150℃であり、加熱処理時間は、例えば、5~120分である。
【0022】
また、凹凸吸収性樹脂層(C)に紫外線等の光を照射することによって、凹凸吸収性樹脂層(C)を架橋させて硬化させることができる。
紫外線架橋の場合、例えば、0~100℃の環境下で、高圧水銀ランプを用いて主波長365nmの紫外線を、照射強度1~50mW/cm2で紫外線量100~10000mJ/cm2の条件で凹凸吸収性樹脂層(C)に照射することによって、凹凸吸収性樹脂層(C)を架橋させて硬化させることができる。
また、いずれの架橋方法においても凹凸吸収性樹脂層(C)に架橋助剤を配合して凹凸吸収性樹脂層(C)の架橋をおこなってもよい。
【0023】
((3)封止工程)
次いで、封止材60により電子部品70を封止する。
封止材60により電子部品70を覆い、例えば150℃以下の温度で封止材60を硬化させて、電子部品70を封止する。ここで、粘着性フィルム50の粘着性樹脂層(B)が気体発生成分および熱膨張性の微小球から選択される少なくとも一種を含む場合は、封止材60を硬化させる温度は、気体が発生する温度や熱膨張性の微小球が熱膨張する温度を超えない範囲が好ましい。
また、封止材60の形態としては特に限定されないが、例えば、顆粒状、シート状または液状である。
【0024】
封止材60としては特に限定されないが、例えば、エポキシ樹脂を用いたエポキシ樹脂系封止材を用いることができる。
特に、粘着性フィルム50への封止材60の親和性がより良好になり、電子部品70をより一層ムラなく封止することが可能となる点から、液状のエポキシ樹脂系封止材が好ましい。
このようなエポキシ樹脂系封止材としては、例えば、ナガセケムテックス社製のT693/R4000シリーズやT693/R1000シリーズ、T693/R5000シリーズ等を用いることができる。
【0025】
封止方法としては、例えば、トランスファー成形、射出成形、圧縮成形、注型成形等が挙げられる。封止材60で電子部品70を封止後、例えば150℃以下の温度で加熱することによって封止材60を硬化させ、電子部品70が封止された構造体100が得られる。
【0026】
((4)第1剥離工程)
本実施形態に係る電子装置の製造方法において、
図3(4)に示すように、(3)封止工程の後に、外部刺激を与えることにより粘着性樹脂層(B)の粘着力を低下させて構造体100から支持基板80を剥離する第1剥離工程をさらに備えてもよい。
支持基板80は、例えば、電子部品70を封止した後、150℃を超える温度に加熱して、粘着性樹脂層(B)の接着力を低下させることにより、粘着性フィルム50から容易に除去することができる。
【0027】
((5)第2剥離工程)
本実施形態に係る電子装置の製造方法において、
図3(5)に示すように、第1剥離工程の後に、電子部品70から粘着性フィルム50を剥離し、電子装置200を得る第2剥離工程をさらに備えてもよい。
電子部品70から粘着性フィルム50を剥離する方法としては、例えば、機械的に剥離する方法や、粘着性フィルム50表面の粘着力を低下させてから剥離する方法等が挙げられる。
【0028】
(その他の工程)
本実施形態に係る電子装置の製造方法において、
図3(6)に示すように、得られた電子装置200の露出面に、配線層310およびバンプ320を形成し、電子装置300を得る工程(6)をさらに備えてもよい。
【0029】
配線層310は、最外面に形成された外部接続端子であるパッド(不図示)と、露出した電子部品70と該パッドとを電気的に接続する配線(不図示)と、を備える。配線層310は、従来公知の方法によって形成することができ、多層構造であってもよい。
【0030】
そして、配線層310のパッド上にバンプ320を形成し、電子装置300を得ることができる。バンプ320としては、はんだバンプや金バンプ等を挙げることができる。はんだバンプは、例えば、配線層310の外部接続端子であるパッド上にはんだボールを配置し、加熱してはんだを溶融させる(リフローする)ことにより形成することができる。金バンプは、ボールボンディング法、めっき法、Auボール転写法等の方法により形成することができる。
【0031】
また、本実施形態に係る電子装置の製造方法において、
図3(7)に示すように、電子装置300をダイシングし、複数の電子装置400を得る工程(7)をさらに備えてもよい。
電子装置300のダイシングは、公知の方法で行うことができる。
【0032】
2.粘着性フィルム
以下、本実施形態に係る粘着性フィルム50について説明する。
図1は、本発明に係る実施形態の粘着性フィルム50の構造の一例を模式的に示した断面図である。
【0033】
図1に示すように、本実施形態に係る粘着性フィルム50は、基材層10と、基材層10の第1面10A側に設けられ、かつ、電子部品を仮固定するための粘着性樹脂層(A)と、基材層10の第2面10B側に設けられた粘着性樹脂層(B)と、基材層10と粘着性樹脂層(A)との間または基材層10と粘着性樹脂層(B)との間に設けられ、かつ、外部刺激により架橋可能な凹凸吸収性樹脂層(C)と、を備える。
凹凸吸収性樹脂層(C)は、粘着性フィルム50の凹凸吸収性をより一層良好にする観点から、少なくとも基材層10と粘着性樹脂層(A)との間に位置することが好ましい。
基材層10と粘着性樹脂層(A)との間に凹凸吸収性樹脂層(C)が位置する場合、粘着性樹脂層(B)と基材層10との間にさらに別の凹凸吸収性樹脂層(C2)を備えてもよく、この場合、凹凸吸収性樹脂層(C)と凹凸吸収性樹脂層(C2)は材質、厚み等が同様でもよく異なっていてもよい。
【0034】
本実施形態に係る粘着性フィルム50全体の厚さは、機械的特性と取扱い性のバランスの観点から、好ましくは10μm以上1000μm以下であり、より好ましくは20μm以上500μm以下である。
【0035】
次に、本実施形態に係る粘着性フィルム50を構成する各層について説明する。
【0036】
<基材層>
基材層10は、粘着性フィルム50の取り扱い性や機械的特性、耐熱性等の特性をより良好にすることを目的として設けられる層である。
基材層10は特に限定されないが、例えば、樹脂フィルムが挙げられる。
上記樹脂フィルムを構成する樹脂としては、公知の熱可塑性樹脂を用いることができる。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(4-メチル-1-ペンテン)、ポリ(1-ブテン)等のポリオレフィン;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル;ナイロン-6、ナイロン-66、ポリメタキシレンアジパミド等のポリアミド;ポリアクリレート;ポリメタアクリレート;ポリ塩化ビニル;ポリ塩化ビニリデン;ポリイミド;ポリエーテルイミド;エチレン・酢酸ビニル共重合体;ポリアクリロニトリル;ポリカーボネート;ポリスチレン;アイオノマー;ポリスルホン;ポリエーテルスルホン;ポリフェニレンエーテル等から選択される一種または二種以上を挙げることができる。
これらの中でも、透明性や機械的強度、価格等のバランスに優れる観点から、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアミド、ポリイミドから選択される一種または二種以上が好ましく、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートから選択される少なくとも一種がより好ましい。
【0037】
基材層10は、単層であっても、二種以上の層であってもよい。
また、基材層10を形成するために使用する樹脂フィルムの形態としては、延伸フィルムであってもよいし、一軸方向または二軸方向に延伸したフィルムであってもよいが、基材層10の機械的強度を向上させる観点から、一軸方向または二軸方向に延伸したフィルムであることが好ましい。
【0038】
基材層10の厚さは、良好なフィルム特性を得る観点から、好ましくは1μm以上500μm以下、より好ましくは5μm以上300μm以下、さらに好ましくは10μm以上250μm以下である。
基材層10は、他の層との接着性を改良するために、表面処理を行ってもよい。具体的には、コロナ処理、プラズマ処理、アンダーコート処理、プライマーコート処理等を行ってもよい。
【0039】
<粘着性樹脂層(A)>
粘着性樹脂層(A)は、基材層10の一方の面側に設けられる層であり、例えば、電子装置の製造工程において封止材により電子部品を封止する際に、電子部品の表面に接触して電子部品を仮固定するための層である。
【0040】
粘着性樹脂層(A)は、粘着性樹脂(A1)を含む。
粘着性樹脂(A1)としては、例えば、(メタ)アクリル系粘着性樹脂(a)、シリコーン系粘着性樹脂、ウレタン系粘着性樹脂、オレフィン系粘着性樹脂、スチレン系粘着性樹脂等が挙げられる。
これらの中でも粘着力の調整を容易にする観点等から、(メタ)アクリル系粘着性樹脂(a)が好ましい。
【0041】
粘着性樹脂層(A)としては、放射線により粘着力を低下させる放射線架橋型粘着性樹脂層を用いることもできる。放射線架橋型粘着性樹脂層は、放射線の照射により架橋して粘着力が著しく減少するため、電子部品から粘着性フィルム50を剥離し易くなる。放射線としては、紫外線、電子線、赤外線等が挙げられる。
放射線架橋型粘着性樹脂層としては、紫外線架橋型粘着性樹脂層が好ましい。
【0042】
粘着性樹脂層(A)に使用される(メタ)アクリル系粘着性樹脂(a)としては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー単位(a1)および架橋剤と反応し得る官能基を有するモノマー単位(a2)を含む共重合体が挙げられる。
本実施形態において、(メタ)アクリル酸アルキルエステルとは、アクリル酸アルキルエステル、メタクリル酸アルキルエステル、またはこれらの混合物を意味する。
【0043】
本実施形態に係る(メタ)アクリル系粘着性樹脂(a)は、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(a1)および架橋剤と反応し得る官能基を有するモノマー(a2)を含むモノマー混合物を共重合することにより得ることができる。
【0044】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー単位(a1)を形成するモノマー(a1)としては、炭素数1~12程度のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられる。好ましくは炭素数1~8のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルである。具体的には、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸ブチル、アクリル酸-2-エチルヘキシル、メタクリル酸-2-エチルヘキシル等が挙げられる。これらは単独で使用してもよいし、2種以上を使用してもよい。
本実施形態に係る(メタ)アクリル系粘着性樹脂(a)において、(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー単位(a1)の含有量は、(メタ)アクリル系粘着性樹脂(a)中の全モノマー単位の合計を100質量%としたとき、10質量%以上98.9質量%以下であることが好ましく、50質量%以上97質量%以下であることがより好ましく、85質量%以上95質量%以下であることがさらに好ましい。
【0045】
架橋剤と反応し得る官能基を有するモノマー(a2)を形成するモノマー(a2)としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、メサコン酸、シトラコン酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸モノアルキルエステル、メサコン酸モノアルキルエステル、シトラコン酸モノアルキルエステル、フマル酸モノアルキルエステル、マレイン酸モノアルキルエステル、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、アクリル酸-2-ヒドロキシエチル、メタクリル酸-2-ヒドロキシエチル、アクリルアミド、メタクリルアミド、ターシャル-ブチルアミノエチルアクリレート、ターシャル-ブチルアミノエチルメタクリレート等が挙げられる。好ましくは、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸-2-ヒドロキシエチル、メタクリル酸-2-ヒドロキシエチル、アクリルアミド、メタクリルアミド等である。これらは単独で使用してもよいし、2種以上を使用してもよい。
本実施形態に係る(メタ)アクリル系粘着性樹脂(a)において、モノマー単位(a2)の含有量は、(メタ)アクリル系粘着性樹脂(a)中の全モノマー単位の合計を100質量%としたとき、1質量%以上40質量%以下であることが好ましく、1質量%以上20質量%以下であることがより好ましく、1質量%以上10質量%以下であることがさらに好ましい。
【0046】
本実施形態に係る(メタ)アクリル系粘着性樹脂(a)は、モノマー単位(a1)、モノマー単位(a2)以外に、2官能性モノマー単位(a3)や界面活性剤としての性質を有する特定のコモノマー(以下、重合性界面活性剤と称する)単位をさらに含んでもよい。
重合性界面活性剤は、モノマー(a1)、モノマー(a2)およびモノマー(a3)と共重合する性質を有すると共に、乳化重合する場合には乳化剤としての作用を有する。
【0047】
2官能性モノマー単位(a3)を形成するモノマー(a3)としては、メタクリル酸アリル、アクリル酸アリル、ジビニルベンゼン、メタクリル酸ビニル、アクリル酸ビニル、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレートや、例えば、両末端がジアクリレートまたはジメタクリレートで主鎖の構造がプロピレングリコール型(例えば、日本油脂(株)製、商品名;PDP-200、同PDP-400、同ADP-200、同ADP-400)、テトラメチレングリコール型(例えば、日本油脂(株)製、商品名;ADT-250、同ADT-850)およびこれらの混合型(例えば、日本油脂(株)製、商品名:ADET-1800、同ADPT-4000)であるもの等が挙げられる。
【0048】
本実施形態に係る(メタ)アクリル系粘着性樹脂(a)において、モノマー単位(a3)の含有量は、(メタ)アクリル系粘着性樹脂(a)中の全モノマー単位の合計を100質量%としたとき、0.1質量%以上30質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以上15質量%以下であることがより好ましく、0.1質量%以上20質量%以下であることがさらに好ましく、0.1質量%以上5質量%以下であることが特に好ましい。
【0049】
重合性界面活性剤の例としては、例えば、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルのベンゼン環に重合性の1-プロペニル基を導入したもの(第一工業製薬(株)製;商品名:アクアロンRN-10、同RN-20、同RN-30、同RN-50等)、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルの硫酸エステルのアンモニウム塩のベンゼン環に重合性の1-プロペニル基を導入したもの(第一工業製薬(株)製;商品名:アクアロンHS-10、同HS-20、同HS-1025等)、および分子内に重合性二重結合を持つ、スルホコハク酸ジエステル系(花王(株)製;商品名:ラテムルS-120A、同S-180A等)等が挙げられる。
本実施形態に係る(メタ)アクリル系粘着性樹脂(a)において、重合性界面活性剤の含有量は、(メタ)アクリル系粘着性樹脂(a)中の全モノマー単位の合計を100質量%としたとき、0.1質量%以上30質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以上15質量%以下であることがより好ましく、0.1質量%以上20質量%以下であることがさらに好ましく、0.1質量%以上5質量%以下であることが特に好ましい。
【0050】
本実施形態に係る(メタ)アクリル系粘着性樹脂(a)は、さらに必要に応じて、酢酸ビニル、アクリロニトリル、スチレン等の重合性2重結合を有するモノマーにより形成されたモノマー単位をさらに含有してもよい。
【0051】
本実施形態に係る(メタ)アクリル系粘着性樹脂(a)の重合反応機構としては、ラジカル重合、アニオン重合、カチオン重合等が挙げられる。(メタ)アクリル系粘着性樹脂(a)の製造コスト、モノマーの官能基の影響および電子部品表面へのイオンの影響等を考慮すればラジカル重合によって重合することが好ましい。
ラジカル重合反応によって重合する際、ラジカル重合開始剤として、ベンゾイルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、3,3,5-トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、ジ-2-エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、メチルエチルケトンパーオキサイド、t-ブチルパーオキシフタレート、t-ブチルパーオキシベンゾエート、ジ-t-ブチルパーオキシアセテート、t-ブチルパーオキシイソブチレート、t-ブチルパーオキシ-2-ヘキサノエート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート、アセチルパーオキサイド、イソブチリルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、t-ブチルパーオキサイド、ジ-t-アミルパーオキサイド等の有機過酸化物;過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム等の無機過酸化物;2,2'-アゾビスイソブチロニトリル、2,2'-アゾビス-2-メチルブチロニトリル、4,4'-アゾビス-4-シアノバレリックアシッド等のアゾ化合物が挙げられる。
【0052】
乳化重合法により重合する場合には、これらのラジカル重合開始剤の中で、水溶性の過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム等の無機過酸化物、同じく水溶性の4,4'-アゾビス-4-シアノバレリックアシッド等の分子内にカルボキシル基を持ったアゾ化合物が好ましい。電子部品表面へのイオンの影響を考慮すれば、過硫酸アンモニウム、4,4'-アゾビス-4-シアノバレリックアシッド等の分子内にカルボキシル基を有するアゾ化合物がさらに好ましく、4,4'-アゾビス-4-シアノバレリックアシッド等の分子内にカルボキシル基を有するアゾ化合物が特に好ましい。
【0053】
本実施形態に係る粘着性樹脂層(A)は、粘着性樹脂(A1)に加えて、架橋性の官能基を1分子中に2個以上有する架橋剤(A2)をさらに含むことが好ましい。
架橋性の官能基を1分子中に2個以上有する架橋剤(A2)は、粘着性樹脂(A1)が有する官能基と反応させ、粘着力および凝集力を調整するために用いる。
このような架橋剤(A2)としては、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、レソルシンジグリシジルエーテル等のエポキシ系化合物;テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチロールプロパンのトルエンジイソシアネート3付加物、ポリイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート等のイソシアネート系化合物;トリメチロールプロパン-トリ-β-アジリジニルプロピオネート、テトラメチロールメタン-トリ-β-アジリジニルプロピオネート、N,N'-ジフェニルメタン-4,4'-ビス(1-アジリジンカルボキシアミド)、N,N'-ヘキサメチレン-1,6-ビス(1-アジリジンカルボキシアミド)、N,N'-トルエン-2,4-ビス(1-アジリジンカルボキシアミド)、トリメチロールプロパン-トリ-β-(2-メチルアジリジン)プロピオネート等のアジリジン系化合物;N,N,N',N'-テトラグリシジル-m-キシレンジアミン、1,3-ビス(N,N'-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン等の4官能性エポキシ系化合物;ヘキサメトキシメチロールメラミン等のメラミン系化合物等が挙げられる。これらは単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、エポキシ系化合物、イソシアネート系化合物およびアジリジン系化合物から選択される一種または二種以上を含むことが好ましい。
【0054】
架橋剤(A2)の含有量は、通常、架橋剤(A2)中の官能基数が粘着性樹脂(A1)中の官能基数よりも多くならない程度の範囲が好ましい。しかし、架橋反応で新たに官能基が生じる場合や、架橋反応が遅い場合等、必要に応じて過剰に含有してもよい。
粘着性樹脂層(A)中の架橋剤(A2)の含有量は、粘着性樹脂層(A)の耐熱性や密着力とのバランスを向上させる観点から、粘着性樹脂(A1)100質量部に対し、0.1質量部以上15質量部以下であることが好ましい。
【0055】
粘着性樹脂層(A)は、その他の成分として、可塑剤、粘着付与樹脂等の添加剤を含んでもよい。粘着性樹脂層(A)が放射線架橋型粘着性樹脂層の場合は放射線架橋のための各種添加剤を含んでもよい。粘着性樹脂層(A)中の粘着性樹脂(A1)および架橋剤(A2)の含有量の合計は、粘着性樹脂層(A)の全体を100質量%としたとき、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上、特に好ましくは95質量%以上である。これにより、電子部品から粘着性フィルムを剥離する際の電子部品側の糊残りをより一層抑制することができる。
【0056】
粘着性樹脂層(A)の厚さは特に制限されないが、例えば、1μm以上100μm以下であることが好ましく、3μm以上50μm以下であることがより好ましい。
【0057】
粘着性樹脂層(A)は、例えば、基材層10上や凹凸吸収性樹脂層(C)上に粘着剤を塗布することにより形成することができる。粘着剤は溶剤に溶解して塗布液として塗布してもよいし、水系エマルジョンとして塗布してもよいし、液状の粘着剤を直に塗布してもよい。
中でも水系エマルジョン塗布液が好ましい。水系エマルジョン塗布液としては、例えば、(メタ)アクリル系粘着性樹脂(a)、シリコーン系粘着性樹脂、ウレタン系粘着性樹脂、オレフィン系粘着性樹脂、スチレン系粘着性樹脂等を水に分散させた塗布液が挙げられる。
有機溶剤に溶解した粘着剤塗布液を用いてもよい。有機溶剤は特に限定されず、溶解性や乾燥時間を鑑みて公知の中から適宜選択すればよい。有機溶剤としては、酢酸エチル、酢酸メチル等のエステル系;アセトン、MEK等のケトン系;ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン等の芳香族系;ヘプタン、ヘキサン、シクロヘキサン等の直鎖ないし環状脂肪族系;イソプロパノール、ブタノール等のアルコール系を例示することができる。有機溶剤として酢酸エチル、トルエンが好ましい。これらの溶剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
粘着剤塗布液を塗布する方法としては、従来公知の塗布方法、例えば、ロールコーター法、リバースロールコーター法、グラビアロール法、バーコート法、コンマコーター法、ダイコーター法等が採用できる。塗布された粘着剤の乾燥条件には特に制限はないが、一般的には、80~200℃の温度範囲において、10秒~10分間乾燥することが好ましい。さらに好ましくは、80~170℃において、15秒~5分間乾燥する。架橋剤と粘着剤との架橋反応を十分に促進させるために、粘着剤塗布液の乾燥が終了した後、40~80℃において5~300時間程度加熱してもよい。
また、基材層10と粘着性樹脂層(A)や凹凸吸収性樹脂層(C)とは共押出成形によって形成してもよいし、フィルム状の基材層10とフィルム状の粘着性樹脂層(A)とをラミネート(積層)して形成してもよい。
【0058】
<粘着性樹脂層(B)>
本実施形態に係る粘着性フィルム50は、基材層10の第1面10Aとは反対側の第2面10B側に粘着性樹脂層(B)を備える。
粘着性樹脂層(B)は、外部刺激により粘着力が低下する層であることが好ましい。これにより、外部刺激を与えることで支持基板から粘着性フィルム50を容易に剥離することができる。
ここで、外部刺激により粘着力が低下する粘着性樹脂層(B)としては、例えば、加熱により粘着力が低下する加熱剥離型の粘着性樹脂層や、放射線等の光により粘着力が低下する光剥離型の粘着性樹脂層等が挙げられる。これらの中でも加熱により粘着力が低下する加熱剥離型の粘着性樹脂層が好ましい。
加熱剥離型の粘着性樹脂層としては、例えば、気体発生成分を含む加熱膨張型粘着剤、膨張して粘着力を低減できる熱膨張性の微小球を含む加熱膨張型粘着剤、熱により接着剤成分が架橋反応することで粘着力が低下する加熱膨張型粘着剤等により構成された粘着性樹脂層が挙げられる。
【0059】
本実施形態において、粘着性樹脂層(B)に使用される加熱膨張型粘着剤は、例えば150℃を超える温度で加熱することで粘着力が低下または喪失する粘着剤である。例えば、150℃以下では剥離せず、150℃を超える温度で剥離する材料を選択することができ、電子装置の製造工程中に粘着性フィルム50が支持基板から剥離しない程度の粘着力を有していることが好ましい。
ここで、150℃を超える温度で加熱することで粘着力が低下または喪失することは、例えば、粘着性樹脂層(B)側をステンレス板に貼り付け、140℃で1時間の加熱処理をおこない、次いで、150℃を超える温度で2分間加熱した後に測定される、ステンレス板からの剥離強度により評価することができる。150℃を超える温度で加熱する際の具体的な加熱温度は、気体が発生する温度や熱膨張性の微小球が熱膨張する温度よりも高い温度に設定され、発生する気体や熱膨張性の微小球の種類によって適宜設定される。本実施形態において、粘着力が喪失するとは、例えば、23℃、引張速度300mm/分の条件で測定される180°剥離強度が0.5N/25mm未満になる場合をいう。
【0060】
加熱膨張型粘着剤に使用される気体発生成分としては、例えば、アゾ化合物、アジド化合物、メルドラム酸誘導体等を用いることができる。また、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、亜硝酸アンモニウム、水酸化ホウ素ナトリウム、各種アジド類等の無機系発泡剤や、水;トリクロロモノフルオロメタン、ジクロロモノフルオロメタン等の塩フッ化アルカン系化合物;アゾビスイソブチロニトリル、アゾジカルボンアミド、バリウムアゾジカルボキシレート等のアゾ系化合物;パラトルエンスルホニルヒドラジド、ジフェニルスルホン-3,3'-ジスルホニルヒドラジド、4,4'-オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)、アリルビス(スルホニルヒドラジド)等のヒドラジン系化合物;p-トルイレンスルホニルセミカルバジド、4,4'-オキシビス(ベンゼンスルホニルセミカルバジド)等のセミカルバジド系化合物;5-モルホリル-1,2,3,4-チアトリアゾール等のトリアゾール系化合物;N,N'-ジニトロソペンタメチレンテトラミン、N,N´-ジメチル-N,N'-ジニトロソテレフタルアミド等のN-ニトロソ系化合物等の有機系発泡剤等も用いることができる。気体発生成分は粘着性樹脂(B1)に添加されていてもよく、粘着性樹脂(B1)に直接結合されていてもよい。
【0061】
加熱膨張型粘着剤に使用される熱膨張性の微小球としては、例えば、マイクロカプセル化されている発泡剤を用いることができる。このような熱膨張性の微小球としては、例えば、イソブタン、プロパン、ペンタン等の加熱により容易にガス化して膨張する物質を、弾性を有する殻内に内包させた微小球等が挙げられる。上記殻を構成する材料として、例えば、塩化ビニリデン-アクリロニトリル共重合体、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスルホン等が挙げられる。熱膨張性の微小球は、例えば、コアセルベーション法や、界面重合法等により製造することができる。
熱膨張性の微小球は粘着性樹脂に添加することができる。
【0062】
気体発生成分および熱膨張性の微小球から選択される少なくとも一種の含有量は、加熱剥離型の粘着性樹脂層(B)の膨張倍率や粘着力の低下性等に応じて適宜設定することができ、特に限定されないが、例えば、加熱剥離型の粘着性樹脂層(B)中の粘着性樹脂(B1)100質量部に対して、例えば1質量部以上150質量部以下、好ましくは10質量部以上130質量部以下、さらに好ましくは12質量部以上100質量部以下である。
気体が発生する温度や熱膨張性の微小球が熱膨張する温度が、150℃を超える温度になるように設計することが好ましい。
【0063】
加熱膨張型粘着剤を構成する粘着性樹脂(B1)としては、例えば、(メタ)アクリル系樹脂(b)、ウレタン系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、フッ素系樹脂、スチレン-ジエンブロック共重合体系樹脂等を挙げることができる。これらの中でも(メタ)アクリル系樹脂(b)が好ましい。
【0064】
粘着性樹脂層(B)に使用される(メタ)アクリル系粘着性樹脂(b)としては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー単位(b1)および架橋剤と反応し得る官能基を有するモノマー単位(b2)を含む共重合体が挙げられる。
本実施形態において、(メタ)アクリル酸アルキルエステルとは、アクリル酸アルキルエステル、メタクリル酸アルキルエステル、またはこれらの混合物を意味する。
【0065】
本実施形態に係る(メタ)アクリル系粘着性樹脂(b)は、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(b1)および架橋剤と反応し得る官能基を有するモノマー(b2)を含むモノマー混合物を共重合することにより得ることができる。
【0066】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー単位(b1)を形成するモノマー(b1)としては、炭素数1~12程度のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられる。好ましくは炭素数1~8のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルである。具体的には、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸ブチル、アクリル酸-2-エチルヘキシル、メタクリル酸-2-エチルヘキシル等が挙げられる。これらは単独で使用してもよいし、2種以上を使用してもよい。
本実施形態に係る(メタ)アクリル系粘着性樹脂(b)において、(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー単位(b1)の含有量は、(メタ)アクリル系粘着性樹脂(b)中の全モノマー単位の合計を100質量%としたとき、10質量%以上98.9質量%以下であることが好ましく、50質量%以上97質量%以下であることがより好ましく、85質量%以上95質量%以下であることがさらに好ましい。
【0067】
架橋剤と反応し得る官能基を有するモノマー(b2)を形成するモノマー(b2)としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、メサコン酸、シトラコン酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸モノアルキルエステル、メサコン酸モノアルキルエステル、シトラコン酸モノアルキルエステル、フマル酸モノアルキルエステル、マレイン酸モノアルキルエステル、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、アクリル酸-2-ヒドロキシエチル、メタクリル酸-2-ヒドロキシエチル、アクリルアミド、メタクリルアミド、ターシャル-ブチルアミノエチルアクリレート、ターシャル-ブチルアミノエチルメタクリレート等が挙げられる。好ましくは、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸-2-ヒドロキシエチル、メタクリル酸-2-ヒドロキシエチル、アクリルアミド、メタクリルアミド等である。これらは単独で使用してもよいし、2種以上を使用してもよい。
本実施形態に係る(メタ)アクリル系粘着性樹脂(b)において、モノマー単位(b2)の含有量は、(メタ)アクリル系粘着性樹脂(b)中の全モノマー単位の合計を100質量%としたとき、1質量%以上40質量%以下であることが好ましく、1質量%以上20質量%以下であることがより好ましく、1質量%以上10質量%以下であることがさらに好ましい。
【0068】
本実施形態に係る(メタ)アクリル系粘着性樹脂(b)は、モノマー単位(b1)、モノマー単位(b2)以外に、2官能性モノマー単位(b3)や界面活性剤としての性質を有する特定のコモノマー(以下、重合性界面活性剤と称する)単位をさらに含んでもよい。
重合性界面活性剤は、モノマー(b1)、モノマー(b2)およびモノマー(b3)と共重合する性質を有すると共に、乳化重合する場合には乳化剤としての作用を有する。
【0069】
2官能性モノマー単位(b3)を形成するモノマー(b3)としては、メタクリル酸アリル、アクリル酸アリル、ジビニルベンゼン、メタクリル酸ビニル、アクリル酸ビニル、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレートや、例えば、両末端がジアクリレートまたはジメタクリレートで主鎖の構造がプロピレングリコール型(例えば、日本油脂(株)製;商品名:PDP-200、同PDP-400、同ADP-200、同ADP-400)、テトラメチレングリコール型(例えば、日本油脂(株)製;商品名:ADT-250、同ADT-850)およびこれらの混合型(例えば、日本油脂(株)製;商品名:ADET-1800、同ADPT-4000)であるもの等が挙げられる。
【0070】
本実施形態に係る(メタ)アクリル系粘着性樹脂(b)において、モノマー単位(b3)の含有量は、(メタ)アクリル系粘着性樹脂(b)中の全モノマー単位の合計を100質量%としたとき、0.1質量%以上30質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以上15質量%以下であることがより好ましく、0.1質量%以上20質量%以下であることがさらに好ましく、0.1質量%以上5質量%以下であることが特に好ましい。
【0071】
重合性界面活性剤の例としては、例えば、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルのベンゼン環に重合性の1-プロペニル基を導入したもの(第一工業製薬(株)製;商品名:アクアロンRN-10、同RN-20、同RN-30、同RN-50等)、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルの硫酸エステルのアンモニウム塩のベンゼン環に重合性の1-プロペニル基を導入したもの(第一工業製薬(株)製;商品名:アクアロンHS-10、同HS-20、同HS-1025等)、および分子内に重合性二重結合を持つ、スルホコハク酸ジエステル系(花王(株)製;商品名:ラテムルS-120A、同S-180A等)等が挙げられる。
本実施形態に係る(メタ)アクリル系粘着性樹脂(b)において、重合性界面活性剤の含有量は、(メタ)アクリル系粘着性樹脂(b)中の全モノマー単位の合計を100質量%としたとき、0.1質量%以上30質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以上20質量%以下であることがより好ましく、0.1質量%以上15質量%以下であることがさらに好ましく、0.1質量%以上5質量%以下であることが特に好ましい。
【0072】
本実施形態に係る(メタ)アクリル系粘着性樹脂(b)は、さらに必要に応じて、酢酸ビニル、アクリロニトリル、スチレン等の重合性2重結合を有するモノマーにより形成されたモノマー単位をさらに含有してもよい。
【0073】
本実施形態に係る(メタ)アクリル系粘着性樹脂(b)の重合反応機構としては、ラジカル重合、アニオン重合、カチオン重合等が挙げられる。(メタ)アクリル系粘着性樹脂(b)の製造コスト、モノマーの官能基の影響および電子部品表面へのイオンの影響等を考慮すればラジカル重合によって重合することが好ましい。
ラジカル重合反応によって重合する際、ラジカル重合開始剤として、ベンゾイルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、3,3,5-トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、ジ-2-エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、メチルエチルケトンパーオキサイド、t-ブチルパーオキシフタレート、t-ブチルパーオキシベンゾエート、ジ-t-ブチルパーオキシアセテート、t-ブチルパーオキシイソブチレート、t-ブチルパーオキシ-2-ヘキサノエート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート、アセチルパーオキサイド、イソブチリルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、t-ブチルパーオキサイド、ジ-t-アミルパーオキサイド等の有機過酸化物;過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム等の無機過酸化物;2,2'-アゾビスイソブチロニトリル、2,2'-アゾビス-2-メチルブチロニトリル、4,4'-アゾビス-4-シアノバレリックアシッド等のアゾ化合物が挙げられる。
【0074】
乳化重合法により重合する場合には、これらのラジカル重合開始剤の中で、水溶性の過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム等の無機過酸化物、同じく水溶性の4,4'-アゾビス-4-シアノバレリックアシッド等の分子内にカルボキシル基を持ったアゾ化合物が好ましい。電子部品表面へのイオンの影響を考慮すれば、過硫酸アンモニウム、4,4'-アゾビス-4-シアノバレリックアシッド等の分子内にカルボキシル基を有するアゾ化合物がさらに好ましく、4,4'-アゾビス-4-シアノバレリックアシッド等の分子内にカルボキシル基を有するアゾ化合物が特に好ましい。
【0075】
本実施形態に係る粘着性樹脂層(B)は、粘着性樹脂(B1)に加えて、架橋性の官能基を1分子中に2個以上有する架橋剤(B2)をさらに含むことが好ましい。
架橋性の官能基を1分子中に2個以上有する架橋剤(B2)は、粘着性樹脂(B1)が有する官能基と反応させ、粘着力および凝集力を調整するために用いる。
このような架橋剤(B2)としては、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、レソルシンジグリシジルエーテル等のエポキシ系化合物;テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチロールプロパンのトルエンジイソシアネート3付加物、ポリイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート等のイソシアネート系化合物;トリメチロールプロパン-トリ-β-アジリジニルプロピオネート、テトラメチロールメタン-トリ-β-アジリジニルプロピオネート、N,N'-ジフェニルメタン-4,4'-ビス(1-アジリジンカルボキシアミド)、N,N'-ヘキサメチレン-1,6-ビス(1-アジリジンカルボキシアミド)、N,N'-トルエン-2,4-ビス(1-アジリジンカルボキシアミド)、トリメチロールプロパン-トリ-β-(2-メチルアジリジン)プロピオネート等のアジリジン系化合物;N,N,N',N'-テトラグリシジル-m-キシレンジアミン、1,3-ビス(N,N'-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン等の4官能性エポキシ系化合物;ヘキサメトキシメチロールメラミン等のメラミン系化合物等が挙げられる。これらは単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、エポキシ系化合物、イソシアネート系化合物およびアジリジン系化合物から選択される一種または二種以上を含むことが好ましい。
【0076】
架橋剤(B2)の含有量は、通常、架橋剤(B2)中の官能基数が粘着性樹脂(B1)中の官能基数よりも多くならない程度の範囲が好ましい。しかし、架橋反応で新たに官能基が生じる場合や、架橋反応が遅い場合等、必要に応じて過剰に含有してもよい。
粘着性樹脂層(B)中の架橋剤(B2)の含有量は、粘着性樹脂(B1)100質量部に対し、0.1質量部以上10質量部以下であることが好ましく、0.5質量部以上5質量部以下であることがより好ましい。
【0077】
本実施形態に係る粘着性樹脂層(B)は、支持基板への密着性を向上させる観点から、粘着性樹脂(B1)に加えて、粘着付与樹脂を含むことが好ましい。粘着性樹脂層(B)に粘着付与樹脂を含有させることが、常温付近における支持基板との密着性の調整が容易となるために好ましい。粘着付与樹脂としては、その軟化点が100℃以上であるものが好ましい。粘着付与樹脂の具体例としては、エステル化等の処理をしたロジン系誘導体等のロジン系樹脂;α-ピネン系、β-ピネン系、ジペンテン系、テルペンフェノール系等のテルペン系樹脂;ガム系、ウッド系、トール油系等の天然系ロジン;これらの天然系ロジンに水素化、不均化、重合、マレイン化、石油樹脂;クマロン-インデン樹脂等を挙げることができる。
【0078】
これらのなかでも、軟化点が100~160℃の範囲内であるものがより好ましく、120~150℃の範囲であるものが特に好ましい。軟化点が上記範囲内である粘着付与樹脂を用いると、支持基板への汚染、糊残りが少ないばかりでなく、作業環境下における支持基板との密着性をさらに向上させることが可能となる。さらに、粘着付与樹脂として重合ロジンエステル系の粘着付与樹脂を用いると、支持基板への汚染、糊残りが少ないばかりか、80~130℃の環境下での支持基板との粘着性が向上するとともに、熱膨張性の微小球を含む加熱膨張型粘着剤の場合には、熱膨張性微小球の膨張後は、支持基板からさらに容易に剥離可能となる。
【0079】
粘着付与樹脂の配合割合は、粘着性樹脂層(B)の弾性率を所望とする所定の数値範囲内に調整することができるように適宜選択すればよく、特に制限はない。ただし、粘着性樹脂層(B)の弾性率と初期剥離力の面から、粘着性樹脂(B1)100質量部に対して、1~100質量部とすることが好ましい。粘着付与樹脂の配合割合が、粘着性樹脂(B1)100質量部に対して、上記下限値以上であると、作業時の支持基板との密着性が良好になる傾向にある。一方、上記上限値以下であると、常温における支持基板との貼り付け性が良好になる傾向にある。支持基板との密着性、及び常温における貼り付け性の面から、粘着付与樹脂の配合割合を、粘着性樹脂(B1)100質量部に対して、2~50質量部とすることがさらに好ましい。また、粘着付与樹脂の酸価は、30以下であることが好ましい。粘着付与樹脂の酸価が上記上限値以下であると剥離時に支持基板に糊残りが生じ難くなる傾向にある。
【0080】
粘着性樹脂層(B)は、その他の成分として、可塑剤等の添加剤を含んでもよい。粘着性樹脂層(B)中の粘着性樹脂(B1)、架橋剤(B2)および粘着付与樹脂の含有量の合計は粘着性樹脂層(B)の全体を100質量%としたとき、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上、特に好ましくは95質量%以上である。さらに粘着性樹脂層(B)が加熱膨張型粘着剤により構成されている場合は、粘着性樹脂層(B)中の粘着性樹脂(B1)、架橋剤(B2)、粘着付与樹脂、気体発生成分および熱膨張性の微小球の含有量の合計は、粘着性樹脂層(B)の全体を100質量%としたとき、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上、特に好ましくは95質量%以上である。
【0081】
粘着性樹脂層(B)の厚さは特に制限されないが、例えば、5μm以上300μm以下であることが好ましく、20μm以上150μm以下であることがより好ましい。
【0082】
粘着性樹脂層(B)は、例えば、基材層10上に粘着剤塗布液を塗布する方法や、セパレータ上に形成した粘着性樹脂層(B)を基材10上に移着する方法等により形成することができる。
粘着剤塗布液を塗布する方法としては、従来公知の塗布方法、例えば、ロールコーター法、リバースロールコーター法、グラビアロール法、バーコート法、コンマコーター法、ダイコーター法等が採用できる。塗布された粘着剤の乾燥条件には特に制限はないが、一般的には、80~200℃の温度範囲において、10秒~10分間乾燥することが好ましい。さらに好ましくは、80~170℃において、15秒~5分間乾燥する。架橋剤と粘着剤との架橋反応を十分に促進させるために、粘着剤塗布液の乾燥が終了した後、40~80℃において5~300時間程度加熱してもよい。
また、基材層10と粘着性樹脂層(B)とは共押出成形によって形成してもよいし、フィルム状の基材層10とフィルム状の粘着性樹脂層(B)とをラミネート(積層)して形成してもよい。
【0083】
<凹凸吸収性樹脂層(C)>
本実施形態に係る粘着性フィルム50は、基材層10と粘着性樹脂層(A)との間または基材層10と粘着性樹脂層(B)との間に、外部刺激により架橋可能な凹凸吸収性樹脂層(C)を有する。
凹凸吸収性樹脂層(C)は、電子部品の凹凸構造が形成された面への粘着性フィルム50の追従性を良好にし、電子部品の凹凸構造と粘着性フィルム50との密着性を良好にすることを目的として設けられる層である。さらに、凹凸吸収性樹脂層(C)は外部刺激によって架橋硬化することで、凹凸吸収性樹脂層(C)の弾性率を高めることができる。これによって、電子部品の封止工程において、電子部品が粘着性フィルムに沈みこむことを抑制することができる。
外部刺激としては、例えば、熱または光が挙げられる。
【0084】
凹凸吸収性樹脂層(C)を構成する樹脂は、凹凸吸収性を示すものであれば特に限定されないが、例えば、熱可塑性樹脂が好ましく、ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、および(メタ)アクリル系樹脂からなる群から選択される一種または二種以上がより好ましい。さらにまた、ASTM D-2240のD型ショアーによるショアーD型硬度が、好ましくは50以下、より好ましくは40以下の樹脂が好ましい。
熱可塑性樹脂でない場合でも上記と同等の凹凸吸収性を有することが好ましい。
【0085】
凹凸吸収性樹脂層(C)は架橋性樹脂を含むことが好ましい。凹凸吸収性樹脂層(C)が架橋性樹脂を含むことにより、外部刺激により凹凸吸収性樹脂層(C)をより効果的に架橋させることができ、凹凸吸収性樹脂層(C)の弾性率をより一層向上させることが可能となる。これにより、封止材により電子部品を封止する工程において、熱により凹凸吸収性樹脂層が軟化するのを抑制でき、その結果、封止材の圧力により電子部品が粘着性フィルム50に沈みこむことをより一層抑制することができる。
本実施形態に係る架橋性樹脂としては凹凸吸収性樹脂層(C)を形成でき、かつ、外部刺激によって架橋して弾性率が向上する樹脂であれば特に限定されないが、例えば、エチレンおよび炭素数3~20のα-オレフィンとを含むエチレン・α-オレフィン共重合体、高密度エチレン系樹脂、低密度エチレン系樹脂、中密度エチレン系樹脂、超低密度エチレン系樹脂、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)系樹脂、プロピレン(共)重合体、1-ブテン(共)重合体、4-メチルペンテン-1(共)重合体、エチレン・環状オレフィン共重合体、エチレン・α-オレフィン・環状オレフィン共重合体、エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体、エチレン・α-オレフィン・共役ポリエン共重合体、エチレン・芳香族ビニル共重合体、エチレン・α-オレフィン・芳香族ビニル共重合体等のオレフィン系樹脂;エチレン・不飽和無水カルボン酸共重合体、エチレン・α-オレフィン・不飽和無水カルボン酸共重合体等のエチレン・無水カルボン酸系共重合体;エチレン・エポキシ含有不飽和化合物共重合体、エチレン・α-オレフィン・エポキシ含有不飽和化合物共重合体等のエチレン・エポキシ系共重合体;エチレン・(メタ)アクリル酸エチル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸メチル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸プロピル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸ブチル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸ヘキシル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸-2-ヒドロキシエチル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸-2-ヒドロキシプロピル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸グリシジル共重合体等のエチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体;エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン・マレイン酸共重合体、エチレン・フマル酸共重合体、エチレン・クロトン酸共重合体等のエチレン・エチレン性不飽和酸共重合体;エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・プロピオン酸ビニル共重合体、エチレン・酪酸ビニル共重合体、エチレン・ステアリン酸ビニル共重合体等のエチレン・ビニルエステル共重合体;エチレン・スチレン共重合体等;(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体等の不飽和カルボン酸エステル(共)重合体;エチレン・アクリル酸金属塩共重合体、エチレン・メタアクリル酸金属塩共重合体等のアイオノマー樹脂;ウレタン系樹脂;シリコーン系樹脂;アクリル酸系樹脂;メタアクリル酸系樹脂;環状オレフィン(共)重合体;α-オレフィン・芳香族ビニル化合物・芳香族ポリエン共重合体;エチレン・α-オレフィン・芳香族ビニル化合物;芳香族ポリエン共重合体;エチレン・芳香族ビニル化合物・芳香族ポリエン共重合体;スチレン系樹脂;アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体;スチレン・共役ジエン共重合体;アクリロニトリル・スチレン共重合体;アクリロニトリル・エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン・スチレン共重合体;アクリロニトリル・エチレン・α-オレフィン・共役ポリエン・スチレン共重合体;メタアクリル酸・スチレン共重合体;エチレンテレフタレート樹脂;フッ素樹脂;ポリエステルカーボネート;ポリ塩化ビニル;ポリ塩化ビニリデン;ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー;ポリスチレン系熱可塑性エラストマー;ポリウレタン系熱可塑性エラストマー;1,2-ポリブタジエン系熱可塑性エラストマー;トランスポリイソプレン系熱可塑性エラストマー;塩素化ポリエチレン系熱可塑性エラストマー;液晶性ポリエステル;ポリ乳酸等から選択される一種または二種以上を用いることができる。
【0086】
これらの中でも、有機過酸化物等の架橋剤を用いた熱架橋や光架橋が容易であることから、エチレンおよび炭素数3~20のα-オレフィンからなるエチレン・α-オレフィン共重合体、低密度エチレン系樹脂、中密度エチレン系樹脂、超低密度エチレン系樹脂、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)系樹脂、エチレン・環状オレフィン共重合体、エチレン・α-オレフィン・環状オレフィン共重合体、エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体、エチレン・α-オレフィン・共役ポリエン共重合体、エチレン・芳香族ビニル共重合体、エチレン・α-オレフィン・芳香族ビニル共重合体等のオレフィン系樹脂、エチレン・不飽和無水カルボン酸共重合体、エチレン・α-オレフィン・不飽和無水カルボン酸共重合体、エチレン・エポキシ含有不飽和化合物共重合体、エチレン・α-オレフィン・エポキシ含有不飽和化合物共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・アクリル酸共重合体、エチレン・メタアクリル酸共重合体等のエチレン・不飽和カルボン酸共重合体、1,2-ポリブタジエン系熱可塑性エラストマーから選択される一種または二種以上を用いることが好ましい。
エチレンおよび炭素数3~20のα-オレフィンからなるエチレン・α-オレフィン共重合体、低密度エチレン系樹脂、超低密度エチレン系樹脂、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)系樹脂、エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体、エチレン・α-オレフィン・共役ポリエン共重合体、エチレン・不飽和無水カルボン酸共重合体、エチレン・α-オレフィン・不飽和無水カルボン酸共重合体、エチレン・エポキシ含有不飽和化合物共重合体、エチレン・α-オレフィン・エポキシ含有不飽和化合物共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・アクリル酸共重合体、エチレン・メタアクリル酸共重合体等のエチレン・不飽和カルボン酸共重合体から選択される一種または二種以上を用いることがより好ましい。
エチレンおよび炭素数3~20のα-オレフィンからなるエチレン・α-オレフィン共重合体、低密度エチレン系樹脂、超低密度エチレン系樹脂、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)系樹脂、エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体、エチレン・α-オレフィン・共役ポリエン共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・アクリル酸共重合体、エチレン・メタアクリル酸共重合体等のエチレン・不飽和カルボン酸共重合体から選択される一種または二種以上を用いることがさらに好ましい。
これらの中でも、エチレン・α-オレフィン共重合体およびエチレン・酢酸ビニル共重合体から選択される少なくとも一種が特に好ましく使用される。なお本実施形態においては上述した樹脂は、単独で用いてもよいし、ブレンドして用いてもよい。
【0087】
本実施形態における架橋性樹脂として用いられる、エチレンおよび炭素数3~20のα-オレフィンからなるエチレン・α-オレフィン共重合体のα-オレフィンとしては、通常、炭素数3~20のα-オレフィンを1種類単独でまたは2種類以上を組み合わせて用いることができる。中でも好ましいのは、炭素数が10以下であるα-オレフィンであり、とくに好ましいのは炭素数が3~8のα-オレフィンである。このようなα-オレフィンとしては、例えば、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、3-メチル-1-ブテン、3,3-ジメチル-1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン等を挙げることができる。これらの中でも、入手の容易さからプロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテンおよび1-オクテンが好ましい。なお、エチレン・α-オレフィン共重合体はランダム共重合体であっても、ブロック共重合体であってもよいが、柔軟性の観点からランダム共重合体が好ましい。
【0088】
凹凸吸収性樹脂層(C)としては、例えば、一般的な粘着剤に、紫外線硬化性モノマー成分やオリゴマー成分を配合した紫外線硬化性粘着剤を使用することもできる。
一般的な粘着剤としては、例えば、(メタ)アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤等が挙げられる。これらの中でも(メタ)アクリル系重合体をベースポリマーとする(メタ)アクリル系粘着剤が好ましい。
紫外線硬化性モノマー成分としては、例えば、ウレタンオリゴマー、ウレタン(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリストールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリストールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。また紫外線硬化性オリゴマー成分としては、例えば、ウレタン系、ポリエーテル系、ポリエステル系、ポリカーボネート系、ポリブタジエン系等種々のオリゴマー等が挙げられる。
紫外線硬化性モノマー成分やオリゴマー成分の含有量は、粘着剤を構成する(メタ)アクリル系重合体等のベースポリマー100質量部に対して、例えば5質量部以上500質量部以下、好ましくは40質量部以上150質量部以下である。
【0089】
また、凹凸吸収性樹脂層(C)としては、ベースポリマーとして、炭素-炭素二重結合をポリマー側鎖または主鎖中もしくは主鎖末端に有するものを用いた紫外線硬化性粘着剤を用いることができる。
上記炭素-炭素二重結合を有するベースポリマーは、炭素-炭素二重結合を有し、かつ粘着性を有するものを用いることができる。このようなベースポリマーとしては、(メタ)アクリル系重合体を基本骨格とするものが好ましい。
(メタ)アクリル系重合体への不飽和結合の導入法は特に制限されないが、例えば、(メタ)アクリル系重合体に官能基を有するモノマーを共重合した後、この官能基と反応しうる官能基および不飽和結合を有する化合物を、不飽和結合の紫外線硬化性を維持したまま縮合または付加反応させる方法が挙げられる。
これら官能基の組合せの例としては、カルボン酸基とエポキシ基、カルボン酸基とアジリジル基、ヒドロキシル基とイソシアネート基等が挙げられる。これら官能基の組合せの中でも、ヒドロキシル基とイソシアネート基との組合せが好ましい。(メタ)アクリル系重合体がヒドロキシル基を有し、上記化合物がイソシアネート基を有する場合が好ましい。炭素-炭素二重結合を有するイソシアネート化合物としては、例えば、メタクリロイルイソシアネート、2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネート、m-イソプロペニル-α,α-ジメチルベンジルイソシアネート等が挙げられる。また、(メタ)アクリル系重合体としては、ヒドロキシ基含有モノマーや2-ヒドロキシエチルビニルエーテル、4-ヒドロキシブチルビニルエーテル、ジエチレングルコールモノビニルエーテルのエーテル系化合物等を共重合したものが用いられる。
【0090】
上記紫外線硬化性粘着剤は、上記紫外線硬化性のモノマー成分やオリゴマー成分を配合することもできる。紫外線硬化性のモノマー成分やオリゴマー成分の含有量は、例えば、ベースポリマー100質量部に対して30質量部以下が好ましく、10質量部以下がより好ましい。
【0091】
紫外線硬化性粘着剤は、光重合開始剤を含むことが好ましい。光重合開始剤としては、例えば、4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル(2-ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン、α-ヒドロキシ-α,α´-ジメチルアセトフェノン、2-メチル-2-ヒドロキシプロピオフェノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等のα-ケトール系化合物;メトキシアセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフエノン、2,2-ジエトキシアセトフェノン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)-フェニル]-2-モルホリノプロパン-1等のアセトフェノン系化合物;べンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、アニソインメチルエーテル等のベンゾインエーテル系化合物;ベンジルジメチルケタール等のケタール系化合物;2-ナフタレンスルホニルクロリド等の芳香族スルホニルクロリド系化合物;1-フェノン-1,1-プロパンジオン-2-(o-エトキシカルボニル)オキシム等の光活性オキシム系化合物;ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、3,3′-ジメチル-4-メトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系化合物;チオキサンソン、2-クロロチオキサンソン、2-メチルチオキサンソン、2,4-ジメチルチオキサンソン、イソプロピルチオキサンソン、2,4-ジクロロチオキサンソン、2,4-ジエチルチオキサンソン、2,4-ジイソプロピルチオキサンソン等のチオキサンソン系化合物;カンファーキノン;ハロゲン化ケトン;アシルホスフィノキシド;アシルホスフォナート等が挙げられる。
【0092】
光重合開始剤の配合量は、粘着剤を構成する(メタ)アクリル系重合体等のベースポリマー100質量部に対して、0.1質量部以上が好ましく、0.5質量部以上がより好ましく、粘着剤の保存性を向上させる点から、15質量部以下が好ましく、5質量部以下がより好ましい。
【0093】
本実施形態に係る粘着性フィルム50において、架橋前の凹凸吸収性樹脂層(C)の貯蔵弾性率E'を例示すれば、100℃において架橋反応が起こらない場合には、100℃における貯蔵弾性率E'の下限は、電子部品の封止工程における電子部品の粘着性フィルムへの沈みこみをより一層抑制することができる点から、1.0×103Pa以上が好ましく、1.0×104Pa以上がより好ましい。同様に、100℃における貯蔵弾性率E'の上限は、封止工程における電子部品の位置ずれをより一層抑制することができる点から、2.0×105Pa以下が好ましく、1.0×105Pa以下がより好ましい。
架橋前の凹凸吸収性樹脂層(C)の貯蔵弾性率E'は、例えば、凹凸吸収性樹脂層(C)を構成する各成分の種類や配合割合を制御することにより上記範囲内に制御することができる。
【0094】
本実施形態に係る粘着性フィルム50において、凹凸吸収性樹脂層(C)を架橋して得られる凹凸吸収性樹脂層(C')の125℃における貯蔵弾性率E'の下限は、電子部品の封止工程における電子部品の粘着性フィルムへの沈みこみをより一層抑制することができる点から、1.0×106Pa以上が好ましく、5.0×106Pa以上がより好ましい。
また、本実施形態に係る粘着性フィルム50において、凹凸吸収性樹脂層(C')の125℃における貯蔵弾性率E'の上限は、封止工程における電子部品の位置ずれをより一層抑制することができる点から、1.0×109Pa以下が好ましく、5.0×108Pa以下がより好ましい。
凹凸吸収性樹脂層(C')の125℃における貯蔵弾性率E'は、例えば、凹凸吸収性樹脂層(C)を構成する各成分の種類や配合割合を制御することにより上記範囲内に制御することができる。
【0095】
凹凸吸収性樹脂層(C)の厚さは、電子部品の凹凸構造を埋め込むことができる厚さであれば、特に制限されないが、例えば、10μm以上1000μm以下であることが好ましく、20μm以上900μm以下であることがより好ましく、30μm以上800μm以下であることがさらに好ましく、50μm以上700μm以下であることが特に好ましい。
【0096】
ここで、電子部品の凹凸構造がバンプ電極を含む場合は、バンプ電極の高さをH[μm]とし、凹凸吸収性樹脂層(C)の厚みをd[μm]としたとき、H/dが1以下であることが好ましく、0.85以下であることがより好ましく、0.7以下であることがさらに好ましい。H/dが上記上限値以下であると、粘着性フィルム50の厚みをより薄くしつつ、凹凸吸収性をより良好にすることができる。
H/dの下限は特に限定されないが、例えば、0.01以上である。バンプ電極の高さは、一般的に2μm以上600μm以下である。
【0097】
<その他の層>
本実施形態に係る粘着性フィルム50は、本実施形態の効果を損なわない範囲で、各層の間に、例えば、易接着層等がさらに設けられていてもよい。
【0098】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【0099】
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【0100】
この出願は、2020年3月30日に出願された日本出願特願2020-061027号を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。
【符号の説明】
【0101】
A 粘着性樹脂層
B 粘着性樹脂層
C 凹凸吸収性樹脂層
C' 凹凸吸収性樹脂層
10 基材層
10A 第1面
10B 第2面
50 粘着性フィルム
50A 粘着性フィルム
60 封止材
60A 封止材
70 電子部品
70A 電子部品
75 凹凸構造
75A 凹凸構造
80 支持基板
80A 支持基板
90 スタンドオフ
100 構造体
200 電子装置
300 電子装置
310 配線層
320 バンプ
400 電子装置