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特許7334346ロドプシン転写体に特異的なトランススプライシングリボザイム及びその用途
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-18
(45)【発行日】2023-08-28
(54)【発明の名称】ロドプシン転写体に特異的なトランススプライシングリボザイム及びその用途
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/113 20100101AFI20230821BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20230821BHJP
   C12N 15/83 20060101ALI20230821BHJP
   C12N 15/861 20060101ALI20230821BHJP
   C12N 15/864 20060101ALI20230821BHJP
   C12N 15/867 20060101ALI20230821BHJP
   C12N 15/869 20060101ALI20230821BHJP
   C12N 15/863 20060101ALI20230821BHJP
   A61K 31/7105 20060101ALI20230821BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20230821BHJP
   A61K 35/76 20150101ALI20230821BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20230821BHJP
【FI】
C12N15/113 140Z
C12N15/63 Z ZNA
C12N15/83 Z
C12N15/861 Z
C12N15/864 100Z
C12N15/867 Z
C12N15/869 Z
C12N15/863 Z
A61K31/7105
A61K48/00
A61K35/76
A61P27/02
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2022522890
(86)(22)【出願日】2021-07-23
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-27
(86)【国際出願番号】 KR2021009555
(87)【国際公開番号】W WO2022019706
(87)【国際公開日】2022-01-27
【審査請求日】2022-04-15
(31)【優先権主張番号】10-2020-0092265
(32)【優先日】2020-07-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2021-0096986
(32)【優先日】2021-07-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】520062823
【氏名又は名称】アールズィーノミクス・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ソン-ウク・イ
(72)【発明者】
【氏名】ジ・ヒョン・キム
(72)【発明者】
【氏名】スン・リュル・ハン
【審査官】西 賢二
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第03/048362(WO,A2)
【文献】国際公開第2004/020631(WO,A2)
【文献】Lewin, A. S. et al.,"Ribozyme gene therapy: applications for molecular medicine",Trends Mol. Med.,2001年,Vol. 7,pp. 221-228
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
A61K 48/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロドプシン転写体を標的にする、トランススプライシングリボザイムとして、IGS(internal guide sequence)領域はロドプシン転写体の+30、+35、+42、+43、+52、+54、+55、+59、+75、+97、+116、+121、+123、+127、+132、+140、+154、+165、+171、+187、+191、+207、+215、+222、+230、+232、+235、+244、+256、+262、+273、+298、+308、+381、+403、+661又は+688標的部位の塩基を含む領域と相補的に結合しG/Uゆらぎ塩基対を形成できる5-10ntの長さの塩基配列からなり、前記部位は、配列番号1に表示される部位で確認されるトランススプライシングリボザイム。
【請求項2】
前記トランススプライシングリボザイムは、5’-IGS-リボザイム-3’の構造を有し、前記リボザイム が配列番号5に表示される塩基配列を含むか、または、配列番号5に表示される塩基配列と配列の相同性が90%以上の配列である、請求項1に記載のトランススプライシングリボザイム。
【請求項3】
前記トランススプライシングリボザイムは、前記リボザイムのダウンストリーム(downstream)方向にエクソン(exon)領域をさらに含む、請求項2に記載のトランススプライシングリボザイム。
【請求項4】
前記IGS領域は、ロドプシン転写体に相補的に結合できる5-10ntの長さの塩基配列からなる、請求項2に記載のトランススプライシングリボザイム。
【請求項5】
前記ロドプシン転写体はロドプシン突然変異を含む、請求項1に記載のトランススプライシングリボザイム。
【請求項6】
前記ロドプシン突然変異は、配列番号1に表示されるロドプシン転写体の1番ないし1142番の間の塩基のうち少なくとも1つの塩基に発生した突然変異である、請求項5に記載のトランススプライシングリボザイム。
【請求項7】
前記ロドプシン突然変異は、下記からなる突然変異群より選択される少なくとも1つを含む、請求項6に記載のトランススプライシングリボザイム。
L328P、T342M、Q344R/P/ter、V345L/M、A346P、P347A/R/Q/L/S/T、ter349/Q/E、N15S、T17M、V20G、P23A/H/L、Q28H、G51R/V、P53R、T58R/M、V87D/L、G89D、G106R/W、C110F/R/S/Y、E113K、L125R、W161R、A164E/V、C167R/W、P171Q/L/S、Y178N/D/C、E181K、G182S/V、C185R、C187G/Y、G188R/E、D190N/G/Y、H211R/P、C222R、P267R/L、S270R、K296N/E/M、R135G/L/P/W、T4K、T17M、M39R、N55K、G90V、M44T、V137M、G90D、T94I、A292E、A295V、F45L、V209M、F220C、P12R、R21C、Q28H、L40R、L46R、L47R、F52Y、F56Y、L57R、Y60ter、Q64ter、R69H、N78I、L79P、L88P、T92I、T97I、V104F、G109R、G114D/V、E122G、W126L/ter、S127F、L131P、Y136ter、C140S、T160T、M163T、A169P、P170H/R、S176F、P180A/S、Q184P、S186P/W、Y191C、T193M、M207R/K、V210F、I214N、P215L/T、M216R/L/K、R252P、T289P、S297R、A298D、K311E、N315ter、E341K、S343C及びQ312ter。
【請求項8】
前記トランススプライシングリボザイムは、配列番号2ないし配列番号4のいずれか1つに表示される塩基配列を含む、請求項1に記載のトランススプライシングリボザイム。
【請求項9】
請求項1に記載のトランススプライシングリボザイムを含む非ウイルス性遺伝子伝達体。
【請求項10】
請求項1に記載のトランススプライシングリボザイムを含む遺伝子コンストラクト(construct)。
【請求項11】
前記コンストラクトは、前記リボザイムのダウンストリーム(downstream)方向に目的遺伝子が追加に連結される、請求項10に記載のコンストラクト。
【請求項12】
前記目的遺伝子は、正常ロドプシン遺伝子又はリポーター遺伝子又はこれらの組み合わせである、請求項11に記載のコンストラクト。
【請求項13】
前記コンストラクトは、前記リボザイムのアップストリーム(upstream)方向に、アンチセンスをコーディングするヌクレオチドが連結されたものである遺伝子コンストラクトであって、
前記アンチセンスは、標的ロドプシン転写体に相補的な配列を有する、請求項10に記載の遺伝子コンストラクト。
【請求項14】
前記遺伝子コンストラクトに作動可能に連結されたプロモーター配列を含む、請求項10~13のいずれか一項に記載のコンストラクト。
【請求項15】
請求項10~13のいずれか一項に記載の遺伝子コンストラクトが含まれた組換え発現ベクター。
【請求項16】
請求項10~13のいずれか一項に記載の遺伝子コンストラクトを含む組換えウイルス。
【請求項17】
請求項10~13のいずれか一項に記載の遺伝子コンストラクトを含む非ウイルス性遺伝子伝達体。
【請求項18】
前記ウイルスは、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス(Adeno-associated viruses:AAV)、レトロウイルス、レンチウイルス、単純ヘルペスウイルス又はワクシニアウイルスからなる群より選択されるいずれか1つである、請求項16に記載の組換えウイルス。
【請求項19】
前記組換えウイルスは、
請求項1に記載のトランススプライシングリボザイムをコーディングするポリヌクレオチド配列を含み、前記ポリヌクレオチドは、プロモーターに作動可能に連結されたものである、組換えアデノ随伴ウイルス(Adeno-associated viruses:AAV)であって、
前記組換えAAVは、AAVの天然由来又は人工血清型又は単離体(isolate)又は系統群(clade)である、請求項16に記載の組換えウイルス。
【請求項20】
請求項1に記載のリボザイム、請求項9に記載の非ウイルス性遺伝子伝達体、請求項10~13のいずれか一項に記載の遺伝子コンストラクト、請求項15に記載の組換え発現ベクター、請求項16に記載の組換えウイルス、又は請求項17に記載の非ウイルス性遺伝子伝達体を有効成分として含む、網膜色素変性症の予防又は治療用薬学組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロドプシン転写体に特異的なトランススプライシングリボザイム及びその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
網膜色素変性症(retinitis pigmentosa、RP)は、網膜に分布する光受容体(photoreceptor)の機能異常により発生し、目に入ってきた光を電気信号に変える役割を果たす網膜の機能が消失する遺伝性及び進行性疾患であって、漸進的な網膜変性が特徴である。病気の初期に杆体光受容体(rod photoreceptor)細胞の機能的な異常を暗示する夜盲症を始め、視覚細胞が損傷して末梢視力の喪失をはじめとして次第に視野が狭くなり、窮極的に失明を招く。現在の網膜色素変性症に対する治療法は、視力損失を遅らせるなどの一部の選択肢があるだけで、根本的な治療剤は皆無である。
【0003】
網膜色素変性症は、様々な網膜視細胞などの遺伝子の突然変異によって発生するが、遺伝の態様は多様であり、常染色体の劣性/優性、X-関連RPなど、単一遺伝子の異常で観察される全ての遺伝態様に発生し得る。様々な遺伝的な原因のうち、15~25%が常染色体の優性RP(ADRP、Autosomal Dominant Retinitis Pigmentosa)である。数多くの遺伝子の突然変異がADRPに関わることが知られており、その中でも、ロドプシン(rhodopsin、RHO)遺伝子の突然変異は、約30%に達する高い比率を占めている。
【0004】
ロドプシンは、網膜の桿状細胞(rod cell)に存在するGPCR(G-protein coupled receptor)の1つとして目を通して入ってくる光を電気信号に伝達し、暗いところでさらに多く必要とする。RHO遺伝子の突然変異は、桿状細胞の機能障害及び死滅を誘発し、杆体錐体(rod-cone)の形態学的異常に続いて円錐細胞(cone cell)の機能障害及び死滅が続く。RHO遺伝子の突然変異は、常染色体の優性RP(ADRP)を誘発し、視力喪失を招く杆体光受容体(rod photoreceptor)の変性を誘導、網膜色素変性症を誘発する。この病気に関するRHO遺伝子の突然変異は、150個以上の互いに異なるミスセンス/ナンセンス(missense/nonsense)、挿入/結実(insertion/deletion)及びスプライス部位(splice site)の突然変異が知られており、現在も突然変異は持続的に発見されている(非特許文献1)。
【0005】
様々なRHO遺伝子の突然変異のうちP23H突然変異は、ADRP患者で最も多く発見される突然変異である。この突然変異は、RHOタンパク質のフォールディングに問題が生じて細胞膜へ輸送されず、視覚回路及び光エネルギー伝達に問題が発生する。ADRPの場合、突然変異遺伝子の除去及び対立遺伝子である正常(WT)遺伝子の発現が伴わなければならないため、RHO遺伝子の突然変異の除去及び機能的な対立遺伝子WT RHO遺伝子の保全はこの疾患に対して重要な治療法である。
【0006】
LCA(Leber congenital amaurosis)及び常染色体劣性(autosomal recessive)RP(retinitis pigmentosa)治療のために、Luxturna(商標名)を用いている。これは眼球の光受容体を保持する機能を担当しているRPE65遺伝子の突然変異に対する治療剤である。この製品は、RPE65遺伝子の突然変異患者にのみ限定して使用されるという問題がある。したがって、異なるRP要因であるRHO遺伝子の突然変異による網膜色素変性症の治療剤が別途必要とされる。
【0007】
ADRP治療剤として、CRISPR/cas9システムを用いた遺伝子矯正技術の適用が可能であるが、CRISPR/cas9システムを使用する場合、1つの遺伝子の突然変異についてのみ矯正可能である。あるいは二重伝達システム(dual delivery system)を用いて正常RHO遺伝子を伝達しなければならない。また、様々な突然変異を矯正するためには、各突然変異を標的にすることができる個別のsgRNAが必要である。即ち、各個別的な突然変異を矯正することのできる別個のシステムが必要である。また、免疫原性の誘発可能性があるcas9のような外部タンパク質を共に導入又は発現させなければならない短所を有する。
【0008】
また、siRNA/アンチセンスRNAを用いた遺伝子沈黙(gene silencing)技術を考えてみることができる。しかし、siRNA/アンチセンスRNAを使用する場合、CRISPR/cas9システムと同様に、1つの遺伝子の突然変異についてのみ沈黙するだけでなく、正常(WT)に取り戻すことができない。正常及び全ての突然変異を標的とするsiRNA/アンチセンスRNAを考慮することができるが、このような製剤と共にWT RHO遺伝子を別途導入しなければならない。
【0009】
上記で説明したように、現在進行中のRHO-ADRPに対して開発中である治療剤の現況は、アンチセンス(antisense)及びsiRNA/shRNAを用いたRNAターゲット治療剤、遺伝子矯正技術を用いた治療剤が全てである。結論として、これらの従来技術の問題を解決してADRPを治療するためには、WT RHO RNA発現を誘導できる遺伝子導入が別途必要である。
【0010】
ここで、本発明者は、トランススプライシングリボザイム(trans-splicing ribozyme)を用いて様々な種類のRHO転写体を除去することができ、同時に、野生型(WT)RHO遺伝子を発現させるための研究を続けることで本発明に至った。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0011】
【文献】Prog Retin Eye Res.2018 January;62:1-23.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、ロドプシン転写体を標的として、同時に野生型(WT)ロドプシン転写体の発現を誘導することができるトランススプライシングリボザイムを提供することにある。
【0013】
本発明の他の目的は、前記トランススプライシングリボザイムを含む遺伝子伝達体を提供することにある。
【0014】
本発明の他の目的は、前記トランススプライシングリボザイムを含む遺伝子コンストラクト(construct)を提供することにある。
【0015】
本発明の更なる目的は、前記遺伝子コンストラクトが含まれた組換え発現ベクターを提供することにある。
【0016】
本発明の更なる目的は、前記遺伝子コンストラクトが含まれた組換えウイルスを提供することにある。
【0017】
本発明の更なる目的は、前記リボザイム、前記遺伝子コンストラクト、前記組換え発現ベクター、又は前記組換えウイルスを有効成分として含む網膜色素変性症の予防又は治療用薬学組成物を提供することにある。
【0018】
本発明の更なる目的は、前記組成物を個体に投与することを含む網膜色素変性症の予防又は治療方法を提供することにある。
【0019】
このような発明が解決しようとする技術的な課題は、以上で言及した課題に制限されず、言及されていない他の課題は、以下の記載によって、この技術分野の当業者が明確に理解できるものである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
前記課題を解決するために、本発明は、ロドプシン転写体を標的とするトランススプライシングリボザイムを提供する。具体的に、ロドプシン転写体を標的として、同時に野生型(WT)RHO転写体の発現を誘導できる、トランススプライシングリボザイムを提供する。
【0021】
本発明の一実施形態として、前記トランススプライシングリボザイムは、5’-IGS(internal guide sequence)-リボザイム-3’の構造を有してもよい。
【0022】
本発明の他の実現例として、トランススプライシングリボザイムは、前記リボザイム次の3’方向にエクソン(exon)領域をさらに含んでもよい。即ち、前記トランススプライシングリボザイム、5’-IGS(internal guide sequence)-リボザイム-3’の構造にエクソン(exon)が連結され、5’-IGS(internal guide sequence)-リボザイム-エクソン(exon)-3’の構造を有するが、エクソンの部分には正常ロドプシン遺伝子が連結されてもよい。
【0023】
本発明の更なる実現例として、前記IGS領域は、ロドプシン転写体(RNA)に特異的に結合してG/Uゆらぎ塩基対(wobble base pair)を形成できる5~10ntの長さの塩基配列からなるものであってもよい。
【0024】
具体的に、前記IGS領域は、ロドプシン転写体の+30、+35、+42、+43、+52、+54、+55、+59、+75、+97、+116、+121、+123、+127、+132、+140、+154、+165、+171、+187、+191、+207、+215、+222、+230、+232、+235、+244、+256、+262、+273、+298、+308、+381、+403、+661又は+688部位、好ましくは、+59部位の塩基を含む領域と相補的に結合し、G/Uゆらぎ塩基対を形成できる5-10ntの長さの塩基配列からなるものであってもよい。前記部位は、配列番号1に表示される部位で確認される。
【0025】
本発明の更なる実現例として、ロドプシン転写体は、ロドプシン突然変異を含んでもよい。
【0026】
前記ロドプシン突然変異は、配列番号1に表示される野生型ロドプシン転写体の1番~1142番の間の塩基のうち少なくとも1つの塩基に発生した突然変異であってもよい。具体的に、前記ロドプシン突然変異転写体は、下記からなる突然変異群より選択される少なくとも1つを含んでもよいが、必ずしもこれらに制限されず、既に知られている、あるいは新たに発見されるロドプシン突然変異転写体を全て含むことができる。
【0027】
L328P、T342M、Q344R/P/ter、V345L/M、A346P、P347A/R/Q/L/S/T、ter349/Q/E、N15S、T17M、V20G、P23A/H/L、Q28H、G51R/V、P53R、T58R/M、V87D/L、G89D、G106R/W、C110F/R/S/Y、E113K、L125R、W161R、A164E/V、C167R/W、P171Q/L/S、Y178N/D/C、E181K、G182S/V、C185R、C187G/Y、G188R/E、D190N/G/Y、H211R/P、C222R、P267R/L、S270R、K296N/E/M、R135G/L/P/W、T4K、T17M、M39R、N55K、G90V、M44T、V137M、G90D、T94I、A292E、A295V、F45L、V209M、F220C、P12R、R21C、Q28H、L40R、L46R、L47R、F52Y、F56Y、L57R、Y60ter、Q64ter、R69H、N78I、L79P、L88P、T92I、T97I、V104F、G109R、G114D/V、E122G、W126L/ter、S127F、L131P、Y136ter、C140S、T160T、M163T、A169P、P170H/R、S176F、P180A/S、Q184P、S186P/W、Y191C、T193M、M207R/K、V210F、I214N、P215L/T、M216R/L/K、R252P、T289P、S297R、A298D、K311E、N315ter、E341K、S343C及びQ312ter。




【0028】
より具体的に、前記リボザイムは、ロドプシンP23H突然変異転写体を標的とすることができるが、必ずしもこれに制限されることはない。前記ロドプシンP23H突然変異は、正常ロドプシンの23番目の部位でプロリンがヒスチジンで突然変異が生じたものである。
【0029】
前記トランススプライシングリボザイムは、配列番号2~配列番号4のいずれか1つに表示される塩基配列を含むか、これからなるものであってもよい。
【0030】
また、本発明のトランススプライシングリボザイムは、前記配列番号2~配列番号4のいずれか1つに表示される塩基配列と配列の相同性が70%以上、80%以上、90%以上である配列は全て含む。
【0031】
本発明の一実施形態として、前記リボザイムの5’-末端方向にアンチセンス(AS)をコーディングするヌクレオチドが連結されてもよい。
【0032】
前記アンチセンスは、標的ロドプシン転写体に相補的な配列であってもよい。
【0033】
本発明の更なる実現例として、前記AS領域の長さは10nt~210nt、好ましくは、50nt~150ntであってもよい。
【0034】
本発明の更なる実現例として、前記トランススプライシングリボザイムは、配列番号6からなるIGS領域を含み、配列番号10の150ntの長さのAS領域を含んでもよい。
【0035】
本発明が異なる実現例に係る前記トランススプライシングリボザイムは、5’-IGS(internal guide sequence)-リボザイム-3’の構造、又は、5’-AS(antisense)-IGS-リボザイム-3’構造、又は、5’-IGS(internal guide sequence)-リボザイム-エクソン(exon)-3’、又は、5’-AS(antisense)-IGS-リボザイム-エクソン(exon)-3’構造の構造体を含んでもよい。
【0036】
本発明の更なる実現例として、前記IGS領域とAS領域との間には5~20個のランダムなヌクレオチドが含まれ、前記ランダムなヌクレオチドの配列は制限酵素の配列であってもよく、前記ランダムなヌクレオチドの配列は、好ましくは、8ntの長さであってもよく、図4に図式化されたP1(配列番号7)及びP10配列(配列番号8及び配列番号9)を含んでもよい。
【0037】
本発明の更なる実現例として、前記リボザイム領域は、配列番号5に表示される塩基配列を含むか、これからなるものであってもよい。
【0038】
また、前記上記リボザイム領域は、前記配列番号5に表示される塩基配列と配列の相同性が70%以上、80%以上、90%以上の配列は全て含む。
【0039】
本発明の更なる実現例として、前記エクソン領域は、正常ロドプシン遺伝子配列を全て又は一部又は最適化されたRHO遺伝子配列を全て又は一部を含んでもよい。
【0040】
本発明において、「リボザイム(ribozyme)」とは、酵素のように作用するRNA分子又はそのRNA分子を含むタンパク質で構成される分子であって、RNA酵素又は触媒的RNAとも呼ばれる。明確な3次構造を有するRNA分子で化学反応を行い、触媒的又は自己触媒的な特性を有し、いくつかのリボザイムは、自己又は他のRNA分子を切断して活性を阻害することが明らかになり、他のリボザイムは、リボソームのアミノ伝達酵素(aminotransferase)の活性を触媒することが確認された。このようなリボザイムには、ハンマーヘッド(hammerhead)リボザイム、VSリボザイム、及びヘアピン(hairpin)リボザイムなどが含まれてもよい。
【0041】
本発明において、具体的にトランススプライシング機能を有するリボザイム、より具体的に、ロドプシン転写体に関する特定遺伝子を標的にするトランススプライシングリボザイムを含むことができる。
【0042】
本発明において、「トランススプライシング(trans-splicing)リボザイム」は、別途存在する標的RNAとリボザイムのIGS(internal guide sequence)との塩基結合によって標的RNAを認知して切断した後、切断された標的RNAの標的塩基のすぐ後にリボザイムの3’エクソンを連結させる反応である、トランススプライシング機能を有するリボザイムを意味する。
【0043】
本発明において、リボザイムの配列は、DNA及びこれに対応するRNA配列で表示されてもよく、DNA配列で表示される場合、これに対応するRNA配列も本発明の範囲に含まれることはこの技術分野において極めて自明であると言える。
【0044】
本発明において、「ロドプシン転写体、又はRHO転写体又はRHO RNA」とは、正常ロドプシン又はロドプシン突然変異遺伝子又はこれらの組み合わせの転写によって作られた物質(例えば、RNA)を指す。本発明では、正常ロドプシン転写体と突然変異ロドプシン転写体とを区分するために、「ロドプシン突然変異転写体」は「RHO突然変異転写体」又は「RHO突然変異RNA」又は突然変異の部位により「P23H RHO」などと表示し、「正常ロドプシン転写体」は、「WT RHO転写体」又はWT RHO又は「WT RHO RNA」と表示する。
【0045】
また、「ロドプシン突然変異転写体部位のうち少なくとも1つを標的とするトランススプライシングリボザイム」とは、細胞内に注入されたときに網膜色素変性症に関与するロドプシンRNAを認識し、選択的なトランススプライシング反応を起こすように遺伝的に操作された形態のリボザイムを意味し、この技術分野において幅広く知られている方法によって制作することができる。例えば、リボザイムの5’末端に標的RNAの保全的部位に特異的な相補性配列を連結させることで、特定のRNAを標的とする基質特異性を有することができる。
【0046】
参考として、この技術分野でロドプシン突然変異遺伝子に関する情報はすでに多く知られている(非特許文献1、及びhttps://www.retina-international.org/files/sci-news/rhomut.htmなどを参考)。
【0047】
本発明は、予め知られたロドプシン突然変異遺伝子情報に基づいて、「ロドプシン転写体を標的とするトランススプライシングリボザイム」を制作し、突然変異ロドプシンを正常(野生型、WT)ロドプシンに変える技術である(図1)。
【0048】
機能的異常を誘発するRHO突然変異は、5’-UTR部位のダウンストリームで主に発生する。本発明のトランススプライシングリボザイムは、5’-UTR部位を標的としてトランススプライシングによって、突然変異を含むRHO転写体を切り出すと共に、WT RHO転写体の発現を誘導することができる。即ち、本発明のトランススプライシングリボザイムは、突然変異の種類に関係なく、疾患の治療及び/又は予防の用途に利用することができる。
【0049】
また、本発明のトランススプライシングリボザイムが正常ロドプシン転写体を標的とすることもできるが、この場合、再び正常ロドプシンに変形するため、本発明のトランススプライシングリボザイムは正常ロドプシンに影響を与えない。
【0050】
他の態様において、本発明は、前記トランススプライシングリボザイムを含む非ウイルス性遺伝子伝達体を提供する。具体的に、前記トランススプライシングリボザイムをRNA形態に非ウイルス性遺伝子伝達体に担持して生体内に直接伝達することができる。
【0051】
前記非ウイルス性遺伝子伝達体は、リポソーム、脂質ナノ粒子であってもよいが、必ずしもこれらに制限されることなく、この技術分野で知られている非ウイルス性遺伝子の伝達方法であればいずれのものも利用可能である。
【0052】
前記リポソームは、リポフェクタミン、リポフェクチン、セルフェクチン、リポフェクタスなどを使用してもよく、セルフェクチン、DMRIE-C、リポフェクチン、ポフェクタミンLTX、RNAiMAX、ポフェクタミン2000、ポフェクタミン3000、DOTAP、SAINT-RED、Avalanche-Omni、EX plex、polyfect、superfect、effectene、attractene、HiPerFectなど、市販のリポソームを制限されることなく使用できる。
【0053】
脂質ナノ粒子構成要素のうちリン脂質は、脂質ナノ粒子内でイオン化可能な脂質及び薬物が相互作用して形成されたコアを囲んで保護する役割を果たし、ターゲット細胞のリン脂質二重層と結合して、薬物の細胞内に伝達時に細胞膜の通過及びエンドソーム脱出(endosomal escape)を容易にする。
【0054】
前記リン脂質は、脂質ナノ粒子の融合を促進できるリン脂質が制限されることなく使用でき、例えば、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(dioleoylphosphatidylethanolamine、DOPE)、ジステアロイルホスファチジルコリン(distearoylphosphatidylcholine、DSPC)、POホスファチジルコリン(palmitoyloleoylphosphatidylcholine、POPC)、卵ホスファチジルコリン(egg phosphatidylcholine、EPC)、ジオレオイルホスファチジルコリン(dioleoylphosphatidylcholine、DOPC)、ジパルミトイルホスファチジルコリン(dipalmitoylphosphatidylcholine、DPPC)、ジオレオイルホスファチジルグリセロール(dioleoylphosphatidylglycerol、DOPG)、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール(dipalmitoylphosphatidylglycerol、DPPG)、ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(distearoylphosphatidylethanolamine、DSPE)、ホスファチジルエタノールアミン(Phosphatidylethanolamine、PE)、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン(dipalmitoylphosphatidylethanolamine)、1、2-dioleoyl-sn-glycero-3-phosphoethanolamine、1-palmitoyl-2-oleoyl-sn-glycero-3-phosphoethanolamine(POPE)、1-palmitoyl-2-oleoyl-sn-glycero-3-phosphocholine(POPC)、1、2-dioleoyl-sn-glycero-3-[phospho-L-serine](DOPS)、1、2-dioleoyl-sn-glycero-3-[phospho-L-serine]などからなる群より選択された1種以上であってもよい。
【0055】
陽イオン性脂質伝達体は、主に陽イオン性脂質からなるナノメートルのサイズのリポソームや脂質素材ナノ粒子の陽電荷を用いて陰電荷である遺伝子、遺伝子を含む発現ベクター又は核酸と複合体を形成させた後、この複合体を貪食作用により細胞内に伝達する方法である。細胞内に伝達された複合体は、エンドソームからリソソームに1次伝達された後、細胞質に抜け出て発現する。陽イオン性高分子伝達体は、脂質の代わりに高分子を使用することを除外すれば、陽イオン性脂質伝達体に類似の方式で遺伝子を伝達し、代表的な陽イオン性高分子として、ポリエチレンイミン(polyethyleneimine)、ポリリジン(poly-L-lysine)、キトサン(chitosan)などがある。
【0056】
本発明に係るトランススプライシングリボザイムに正常ロドプシン遺伝子のような目的遺伝子を連結した後、これを非ウイルス性遺伝子伝達体に担持することができる。前記非ウイルス性遺伝子伝達体を用いてRHO転写体を標的にし、正常ロドプシン遺伝子を伝達することができる。
【0057】
他の態様において、本発明は、前記トランススプライシングリボザイムを含む遺伝子コンストラクト(construct)を提供する。
【0058】
前記コンストラクトは、前記リボザイムの3’-末端方向に目的遺伝子が追加的に連結されてもよい。これは、前記言及したエクソン(exon)領域に目的遺伝子が追加的に連結されることを意味する。
【0059】
前記目的遺伝子は、正常ロドプシン遺伝子及び/又はリポーター遺伝子であってもよい。
【0060】
前記リポーター遺伝子は、ルシフェラーゼ(luciferase)、緑色蛍光タンパク質(GFP)、変形された緑色蛍光タンパク質(modified green fluorescent protein;mGFP)、増強された緑色蛍光タンパク質(enhanced green fluorescent protein;EGFP)、赤色蛍光タンパク質(RFP)、変形された赤色蛍光タンパク質(mRFP)、増強された赤色蛍光タンパク質(ERFP)、青色蛍光タンパク質(BFP)、増強された青色蛍光タンパク質(EBFP)、黄色蛍光タンパク質(YFP)、増強された黄色蛍光タンパク質(EYFP)、藍色蛍光タンパク質(CFP)及び増強された藍色蛍光タンパク質(ECFP)からなる群より選択される1種以上であってもよいが、必ずしもこれらに制限されず、この技術分野で知られたリポーター遺伝子は全て利用することができる。
【0061】
目的遺伝子として、リポーター遺伝子を挿入させることでロドプシン転写体特異的なリボザイムの発現程度を観察することができる。
【0062】
前記遺伝子コンストラクトは、前記遺伝子コンストラクトに作動可能に連結されたプロモーター配列を含んでもよい。
【0063】
前記プロモーターは、CMVプロモーター(cytomegalovirus promoter)、CAG(CMV early enhancer element +chicken beta-Actin promoter/SD+rabbit beta-Globin SA)プロモーター、SV40プロモーター、アデノウイルスプロモーター(major late promoter)、pLλプロモーター、trpプロモーター、lacプロモーター、tacプロモーター、T7プロモーター、ワクシニアウイルス7.5Kプロモーター、HSVのtkプロモーター、SV40E1プロモーター、呼吸器細胞融合ウイルス(Respiratory syncytial virus;RSV)プロモーター、LTRプロモーターなどの原核細胞又は哺乳類ウイルスのプロモーター、メタロチオネイン(metallothionin promoter)、ベータアクチンプロモーター、ユビキチンCプロモーター、EF1-アルファ(elongation factor 1-alpha)プロモーター、IL-2(interleukin-2)遺伝子プロモーター、リンホトキシン(lymphotoxin)遺伝子プロモーター、GM-CSF(granulocyte-macrophage colony stimulating factor)遺伝子プロモーターなどの動物細胞プロモーター、RHO(rhodopsin)遺伝子プロモーター、RK(rhodopsin kinase)遺伝子プロモーター、RedO(red opsin)遺伝子プロモーターなどのような網膜組織特異プロモーターなどからなる群より選択された1種以上であってもよいが、これらに制限されることはない。
【0064】
本発明において、「遺伝子コンストラクト(construct)」とは、標的ロドプシン転写体部位に対する特異性を高めるためのエレメント(element)を含む構造体を意味する。具体的に、前記トランススプライシングリボザイムを含む構造体であってもよい。
【0065】
前記コンストラクトのトランススプライシングリボザイムに追加的に連結されるアンチセンス配列は、標的ロドプシン転写体に対する特異性を増加させて治療効果を高めるためのもので、このような目的を達成するための配列であれば、制限されることなく含まれてもよい。
【0066】
また、本発明に係るコンストラクトは、リボザイムがロドプシン転写体部位を標的にし、標的ロドプシン転写体特異的なアンチセンス配列を含んでおり、ロドプシン転写体が発現する細胞にのみ特異的に発現してもよい。
【0067】
図2は、本発明の一実施形態により製造した、プロモーター、トランススプライシングリボザイム領域、正常ロドプシン遺伝子領域を含む遺伝子コンストラクト基本構成を示す模式図である。
【0068】
更なる態様において、本発明は、前記言及した遺伝子コンストラクトが含まれた組換え発現ベクターを提供する。
【0069】
更なる態様において、本発明は、前記言及した遺伝子コンストラクトが含まれた組換えウイルスを提供する。
【0070】
前記ウイルスは、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス(Adeno-associated viruses:AAV)、レトロウイルス、レンチウイルス、単純ヘルペスウイルス、又はワクシニアウイルスからなる群より選択されるいずれか1つであってもよいが、必ずしもこれらに制限されず、この技術分野で使用できるウイルスであれば、いずれのものも使用できる。
【0071】
本発明で用語「ベクター」とは、適切な宿主細胞で目的タンパク質を発現できる発現ベクターであって、遺伝子挿入物が発現されるように作動可能に連結された必須の調節要素を含む遺伝子の作製物をいう。本発明で用語「作動可能に連結された(operably linked)」とは、一般的な機能を行うように核酸発現調節の配列及び目的とするタンパク質をコーディングする核酸配列が機能的に連結(functional linkage)されていることをいう。例えば、リボザイム暗号化配列は、プロモーターに作動可能に連結させることによって、リボザイム暗号化配列の発現は、このプロモーターの影響又は調節下にある。2つの核酸配列(リボザイム暗号化配列とこの配列の5’末端のプロモーター部位配列)は、プロモーター作用が誘導されることによってリボザイム暗号化配列が転写される場合に作動可能に連結されたものであり、前記2つの配列間の連結特性がフレーム変更突然変異(frame-shift mutation)を誘導せず、発現の調節配列がリボザイムの発現を支配する能力を阻害しない場合、作動可能に連結されたという。組換えベクターとの作動可能な連結は、当技術分野で公知の遺伝子組換え技術を用いて製造することができ、部位-特異的DNAの切断及び連結は、この技術分野で一般に知られた酵素などを用いてもよい。
【0072】
本発明のベクターは、プロモーター、オペレーター、コザックコドン、開始コドン、終結コドン、ポリアデニル化シグナル、エンハンサーのような発現調節要素の他にも、標的化又は分泌のための信号配列又はリーダー配列を含み、目的に応じて多様に製造され得る。ベクターのプロモーターは構成的又は誘導性であってもよい。また、発現ベクターは、ベクターを含む宿主細胞を選択するための選択性マーカーを含み、複製可能な発現ベクターである場合、複製の起源を含み得る。ベクターは、自己複製するか、又は宿主DNAに統合されてもよい。前記ベクターは、プラスミドベクター、コスミドベクター、又はウイルスベクターなどを含んでもよく、具体的に、ウイルスベクターであってもよい。ウイルスベクターは、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス(Adeno-associated viruses:AAV)、レトロウイルス、レンチウイルス、単純ヘルペスウイルス、又はワクシニアウイルスなどに由来するベクターを含むが、これらに制限されることはない。
【0073】
本発明の更なる一実施形態は、前記組換えベクターが導入された形質転換細胞を提供する。
【0074】
本発明において、用語「導入」は、形質感染(transfection)又は形質導入(transduction)によって外来の遺伝子を細胞に流入させることを意味する。形質感染は、リン酸カルシウム-DNA共沈殿法、DEAE-デキストラン-媒介形質感染法、ポリブレン媒介形質感染法、エレクトロポレーション法、微細注射法、リポソーム融合法、リポフェクタミン及び原形質体融合法など、この技術分野で公知の様々な方法によって実行されてもよい。また、形質導入は、感染を手段として、ウイルス又はウイルスベクター粒子を用いて細胞内に遺伝子を伝達することができる。
【0075】
本発明において、用語「形質転換細胞」は、宿主細胞に目的とするポリヌクレオチドを導入した細胞を意味する。
【0076】
形質転換は、前記「導入」方法によって行われてもよく、この技術分野で公知のように宿主細胞により適切な標準技術を選択して行うことができる。
【0077】
具体的に、本発明の形質転換細胞は、ロドプシン転写体を標的にするリボザイムをコーディングするポリヌクレオチドを含む組換えベクターを導入させて製造したものであってもよい。
【0078】
本発明の一具体例として、前記組換えウイルスは、組換えアデノ随伴ウイルス(Adeno-associated viruses:AAV)であってもよい。具体的に、本発明に係るトランススプライシングリボザイムをコーディングするポリヌクレオチド配列を含み、前記ポリヌクレオチドは、プロモーターに作動可能に連結されたものである、組換えアデノ随伴ウイルス(Adeno-associated viruses:AAV)であってもよい。
【0079】
前記組換えAAVは、AAVの天然又は人工由来の血清型又は単離体(isolate)又は系統群(clade)であってもよい。
【0080】
前記トランススプライシングリボザイムをコーディングするポリヌクレオチド配列は、配列番号2~5のいずれか1つと、70%以上、80%以上、又は、90%以上の配列の相同性を有するものであってもよい。
【0081】
前記プロモーターは、CMVプロモーター又はRHOプロモーターであってもよい。
【0082】
前記組換えAAVは、追加的な調節配列(regulatory sequence)をさらに含んでもよい。
【0083】
前記調節配列は、スプライシング供与/スプライシング配列(SDSA)及び/又はWPRE(woodchuck hepatitis postregulatory element)配列であってもよい。
【0084】
本発明に係るSD/SAは、転写開始(transcription initiation)とRNA重合酵素(polymerase)IIのプロセッシング及びmRNAの核で細胞質への移動(nucleocytoplasmic export)を増加させる。
【0085】
本発明に係るWPREは、mRNAのプロセッシングと核から細胞質への移動を増加させ、それぞれpre-mRNAのレベルを増加させることができる。上記のような構成によって、細胞内でリボザイムのRNAレベルを著しく増加させて生体内において機能を向上することができる。
【0086】
本発明に係るSD/SA配列は、RNA転写体のイントロンを除去するスプライシング反応において、切り取られるイントロンの開始部分と終了部分に該当する配列であって、一般に、SD配列は、イントロン5’末端のGU配列であってもよく、SA配列は、イントロンの3’末端のAG配列であってもよい。
【0087】
本発明に係るWPREは、DNAに転写を促進する3次構造を誘導し、遺伝子の発現を増加させる配列を意味する。
【0088】
本発明において、前記SD/SA配列及びWPRE配列は、それぞれ配列番号11及び配列番号13の配列を含んでもよいが、目的遺伝子の発現カセット内に存在しながら目的遺伝子の発現を促進させ得る限り、これらに制限されることはない。
【0089】
AAVゲノムは、AAVの天然又は人工由来血の清型又は単離体又は系統群に由来し得る。したがって、AAVゲノムは、天然AAVウイルスゲノムであるか、又は人工的に作られたAAVウイルスゲノムであり得る。当業者に知られているように、AAVウイルスは、様々な生物学的なシステムにより分類されてもよい。
【0090】
一般に、AAVウイルスは、それらの血清型に応じて称される。血清型は、自身のカプシド表面の抗原の発現プロファイルのために、他の変異体の変種と区別するのに使用され得る独特の反応性を有するAAVの変異体の変種(variant subspecies)に該当する。一般に、特定のAAV血清型を有するウイルスは、他のAAV血清型に特異的な中和抗体と交差反応が効率的に発生しない。AAV血清型は、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10及びAAV11を含み、また、最近霊長類の脳で確認されたRec2及びRec3のような組換え血清型も含む。
【0091】
本発明に使用するために特に関心のある血清型は、網膜色素上皮のような眼球内の組織に効率よく形質導入されるAAV2、AAV5及びAAV8を含む。AAV血清型のレビューは、Choiら(Curr Gene Ther.2005;5(3);299-310)及びWuら(Molecular Therapy;14(3)、316-327)に見られる。
【0092】
AAVウイルスはまた、系統群又はクローンの観点で称される。これは天然又は人工由来のAAVウイルスの系統発生学的な関係、及び一般に共通先祖に遡ることができるAAVウイルスの系統発生学的な群を示し、その全ての子孫を含む。また、AAVウイルスは自然で探すことができるか、又は人工的に操作された、特定のAAVウイルスの遺伝的な単離体のような特定の単離体に応じて称されてもよい。用語の遺伝的な単離体(genetic isolate)は、他の天然AAVウイルスと制限的な遺伝子の混合(genetic mixing)が発生し、それによって遺伝子レベルで認識可能に区別される別個の集団(population)を定義する、AAVウイルス集団を記述する。
【0093】
一般に、AAVの天然又は人工由来の血清型又は単離体又は系統群のAAVゲノムは、1つ以上の逆位末端反復配列(ITR)を含む。ITR配列は、cis位置で機能的な複製基点を提供する役割を果たし、細胞のゲノムからベクターの融合及びそれからの切断を可能にする。好ましい具体例として、1つ以上のITR配列は、Rep-1又はその変異体をコーディングするポリヌクレオチド配列をフランク(flank)する。
【0094】
AAVゲノムはまた、一般にAAVウイルス粒子のためのパッケージング機能をコーディングするrep及び/又はcap遺伝子のようなパッケージング遺伝子を含む。rep遺伝子は、Rep78、Rep68、Rep52及びRep40又はその変異体タンパク質の1つ以上をコーディングする。cap遺伝子は、VP1、VP2及びVP3又はその変異体のような1つ以上のカプシドタンパク質をコーディングする。このようなタンパク質がAAVウイルス粒子のカプシドを構成している。プロモーターは、各パッケージング遺伝子に作動可能に連結されている。
【0095】
本発明のベクターに使用されるAAVゲノムは、天然又は人工AAVウイルスの全体ゲノムであってもよい。例えば、全体AAVゲノムを含むベクターがインビトロ(in vitro)でAAVウイルスを製造するために使用されてもよい。しかし、このようなベクターは、原則として患者に投与され得る。好ましくは、AAVゲノムは、患者に投与するための目的として誘導体化(derivatise)される。このような誘導体化は、この技術分野の標準であり、本発明は、AAVゲノムの周知の誘導体及びこの技術分野に知られた方式を適用して生成され得る誘導体の利用を含む。
【0096】
更なる態様において、本発明は、前記言及した遺伝子コンストラクトを含む非ウイルス性遺伝子伝達体を提供する。
【0097】
前記非ウイルス性遺伝子伝達体はリポソーム、脂質ナノ粒子であってもよいが、必ずしもこれらに制限されることなく、この技術分野で周知の非ウイルス性遺伝子伝達方法であれば、いずれも利用可能である。これに対する具体的な説明は前述したため省略する。
【0098】
更なる態様において、本発明は、前記リボザイム、前記非ウイルス性遺伝子伝達体、前記遺伝子コンストラクト、前記組換え発現ベクター、又は前記組換えウイルスを有効成分として含む網膜色素変性症の予防又は治療用薬学組成物を提供する。
【0099】
更なる態様において、本発明は、前記薬学組成物を個体に投与することを含む網膜色素変性症の予防又は治療方法を提供する。
【0100】
本発明において使用された「予防」という用語は、本発明に係る薬学組成物の投与で網膜色素変性症の発症を遅延させる全ての行為を意味する。
【0101】
本発明において使用された「治療」という用語は、本発明に薬学組成物の投与で網膜色素変性症が好転したり、有利に変更したりする全ての行為を意味する。
【0102】
本発明に係る医薬組成物は、薬学的に許容可能な担体、賦形剤又は希釈剤をさらに含むことができる。本発明の医薬組成物に用いられる薬学的に許容可能な担体、賦形剤及び希釈剤の例として、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、マルチトール、澱粉、アカシアゴム、アルジネート、ゼラチン、リン酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、炭酸カルシウム、セルロース、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン、水、メチルヒドロキシ安息香酸、プロピルヒドロキシ安息香酸、タルク、ステアリン酸マグネシウム、鉱物油などが挙げられる。
【0103】
本発明の医薬組成物は、目的とする方法により経口投与するか、又は非経口投与することができるが、非経口で投与することが好ましい。非経口の投与として眼球内に物質を投与できる経路は3つあり、硝子体内注射法(intravitreal injection)、脈絡膜上内注射法(suprachoroidal injection)、網膜下注射法(sunretinal injection)がある。
【0104】
本発明の一実施形態によれば、本発明に係る医薬組成物は、標的とする細胞が光受容体細胞として最も効率的であり、直接的に伝達できる投与経路として網膜下注射方法により投与することができる。本発明に係る注射剤は患者に投与するとき、そのまま利用できるように滅菌媒質に分散した形態であってもよく、投与時に注射用蒸留水を加えて適切な濃度で分散させてから投与する形態であってもよい。また、注射剤で製造されるとき、緩衝剤、保存剤、無痛化剤、可溶化剤、等張化剤、安定剤などと混合されてもよく、単位投薬アンプル又は多重投薬の形態に製造されてもよい。
【0105】
具体的に、AAV(Adeno-associated virus)を活用して、ヒトの誘電体に直接挿入する方法ではなく、エピソーマル状態で本発明に係るトランススプライシングリボザイムの発現を誘導し、標的RHO転写体の除去及びWT RHOタンパク質の発現を誘導してもよい。
【0106】
本発明の医薬組成物の投与量は、患者の状態、及び体重、病気の程度、薬物形態、投与経路、及び時間により異なるが、当業者によって適切に選択され得る。一方、本発明に係る医薬組成物は単独に使用されるか、又は他の治療剤と並行して使用されるか、又は外科的な手術療法などの補助治療方法と並行して使用されてもよい。
【発明の効果】
【0107】
本発明に係るトランススプライシングリボザイムは、標的ロドプシン転写体を除去すると共に、正常(野生型)ロドプシン遺伝子(RNA)に置換して正常ロドプシン遺伝子を発現させる効果を提供する。したがって、本発明に係るトランススプライシングリボザイムは、網膜色素変性症を根本的に治療する効果を提供する。特に、標的転写体部位は、全ての種類のロドプシン突然変異を含むロドプシン転写体を標的とすることができる部位を選択することで、1つの治療剤が様々なロドプシン突然変異患者に全て適用され得るという長所がある。また、患者細胞内で発現する標的ロドプシン転写体の発現量に応じて正常ロドプシンタンパク質を発現させることができるため、過剰な正常ロドプシンタンパク質の発現による副作用及び毒性誘導も最小化することができる。また、トランススプライシングリボザイムによるRNA置換機能は、内生細胞機作(endogenous cell machinery)を利用することなく、細胞内における機能のために外部のタンパク質導入が必要でないトランススプライシングリボザイムのRNA自体の機作で作動することから、より安全な治療剤になり得る。
【図面の簡単な説明】
【0108】
図1】本発明に係るRHO転写体を標的とするトランススプライシングリボザイムの機作を示した模式図である。
図2】本発明の一実施形態により製造した、プロモーター、トランススプライシングリボザイム領域、正常ロドプシン遺伝子領域を含む遺伝子コンストラクトの基本構成を示す模式図である。
図3A】インビトロマッピング及び細胞内マッピングによるRHO RNAの標的部位の選定過程及びその結果を示した模式図である。
図3B】インビトロマッピング及び細胞内マッピングによるRHO RNAの標的部位の選定過程及びその結果を示した模式図である。
図4】本発明の一実施形態に係るロドプシンRNA+59番目の塩基部位を標的とするトランススプライシングリボザイム(以下、「RHO標的リボザイム」という)を含むコンストラクトの最適化過程を示す模式図である。
図5】本発明の一実施形態に係るRHO標的リボザイムを含むベクター模式図である。
図6】RHO標的リボザイムを最適化するために293A細胞でコンストラクトの活性を比較する結果を示したものである。
図7】RHO標的リボザイムのインビトロ効能をstable cellを用いて確認した結果である。
図8】RHO標的リボザイムの様々な突然変異に対するインビトロ効能を確認した結果である。
図9】本発明の一実施形態に係るRHO標的リボザイムをアデノ随伴ウイルス(Adeno-associated viruses:AAV)ベクターで発現させるための組換えAAV発現ベクターの模式図である。
図10A】本発明の一実施形態に係るRHO標的リボザイムを含むAAV発現ベクターを用いて疾患動物モデルでリボザイムの効能を確認した結果を示したものである(Aは投与後2週、Bは投与後5週の結果である)。
図10B】本発明の一実施形態に係るRHO標的リボザイムを含むAAV発現ベクターを用いて疾患動物モデルでリボザイムの効能を確認した結果を示したものである(Aは投与後2週、Bは投与後5週の結果である)。
図11】本発明の一実施形態に係る疾患動物モデルでRHO標的リボザイムを含むAAVベクター投与後の血清内免疫及び炎症反応結果を示したものである(Aは投与後2週、Bは投与後5週の結果である)。
図12】本発明の一実施形態に係る動物モデルでRHO標的リボザイムを含むAAVベクター投与後の網膜(Retina)と網膜色素上皮細胞(retinal pigment epithelium;RPE)組織でリボザイムの効能を確認した結果である。
図13】本発明の一実施形態に係る疾患動物モデルでRHO標的リボザイムを含むAAVベクター投与後の生体内リボザイムの分布を確認した結果である。
図14】本発明の一実施形態に係る正常マウスにRHO標的リボザイムを含むAAVベクター投与後の毒性を分析した結果である。
図15】本発明の一実施形態に係る疾患動物モデルにRHO標的リボザイムを含むAAVベクター投与後の網膜電位図検査を行った結果である。
図16】本発明の一実施形態に係る疾患動物モデルにRHO標的リボザイムを含むAAVベクター投与後の血清(A)、及びリボザイムの活性を分析した結果である(B)。
図17】本発明の一実施形態に係るRHO標的リボザイムを含む様々な組換えAAVベクターの制作模式図である。
図18】本発明の一実施形態に係る疾患動物モデルにRHO標的リボザイムを含む組換えAAVベクター投与後3週目のリボザイム分布及びトランススプライシング活性を確認した結果である。
図19】本発明の一実施形態に係る疾患動物モデルにRHO標的リボザイムを含む組換えAAVベクター投与後の網膜電位図を検査した結果である。
図20】本発明の一実施形態に係る疾患動物モデルにRHO標的リボザイムを含む組換えAAVベクター投与後の網膜電位図を検査した結果である。
図21】本発明の一実施形態に係る疾患動物モデルにRHO標的リボザイムを含む組換えAAVベクター投与後の網膜のリボザイム分布及びリボザイムRNA発現を確認した結果である。
【発明を実施するための形態】
【0109】
本発明は、多様な変換を加えることができ、様々な実施例を有することができるが、以下に特定の実施例を図面に例示して、詳細な説明で詳しく説明することにする。しかし、これは、本発明を特定の実施例について限定するものではなく、本発明の思想及び技術範囲に含まれる全ての変換、均等物ないし代替物を含むものとして理解しなければならない。本発明の説明において、関連する公知技術に対する具体的な説明が本発明の要旨を曖昧にすると判断される場合、その詳細な説明は省略する。
【実施例
【0110】
実施例1:ロドプシン(RHO)RNA標的トランススプライシングリボザイムの設計
ターゲットRNA部位を選定するために、RHO RNA変異体の配列を比較し、RHO RNA標的トランススプライシングリボザイムを設計した(図2)。
【0111】
実施例2:インビトロマッピング及び細胞内マッピングによるロドプシン(RHO)RNAの標的部位選定
WT RHO RNAあるいはP23H RHO RNAとリボザイムRNAライブラリーを用いてインビトロマッピング(in vitro mapping)及び細胞内マッピングを行った。インビトロマッピングのために、テストチューブでロドプシンRNAとランダムライブラリーリボザイムとを混合して反応させてからRT-PCRを行った後、トランススプライシング産物として予想されるPCR DNAバンドの配列分析によってトランススプライシングが発生したロドプシンRNA部位を確認した。
【0112】
より具体的に、ロドプシンRNAをインビトロ転写過程により合成し、5’末端にランダムな配列(GNNNNN)を有するトランススプライシングRNAライブラリーをインビトロ転写過程により合成した。ロドプシンRNA0.1pmoleを1Xインビトロトランススプライシング反応バッファ(50mM Hepes(pH7.0)、150mM NaCl、5mM MgCl2)と混合して合計10uLに作り、リボザイムライブラリーRNA1pmoleを1Xインビトロトランススプライシング反応バッファと混合して合計9uLに作った後、1mM GTP1uLを入れて最終0.1mM GTPに濃度を合わせた。これをそれぞれ95℃で1分、37℃で3分反応させ、2つを混合した後、37℃で3時間反応させた。反応液をフェノール抽出/EtOH沈殿過程を経てRNAを回収した後、RT-PCRを行った。次に、リボザイム特異RTプライマー(5’-ATGTGCTGCAAGGCGATT-3’)を入れた後、20uL体積条件で逆転写によりcDNAを合成した。合成されたcDNA 2uLを用いてロドプシンRNA、特に、5’プライマー(5’-CTACTCAGCCCCAGCGGAGG-3’)、リボザイム特に3’プライマー(RY-TS)(5’-TGTAAAACGACGGCCAGTG-3’)をそれぞれ10pmoleずつ用いて95℃で30秒、55℃で30秒、72℃で30秒の条件で35サイクルのPCRを実行し、2%TBEアガロースゲルでPCRバンドを確認した。確認された全てのPCR産物をフェノール及び沈殿過程を経てバッファチェンジした後、ロドプシンRNAのいずれかの部位でトランススプライシング反応が生じたかを塩基配列分析によって確認した。トランススプライシングのシークエンシングによって分析した結果、RHO mRNAの5’UTR部分である59番目のサイトを最もよくターゲッティングすることが確認された(図3A及び図3B)。
【0113】
細胞内マッピングのために、テストチューブにロドプシンRNAとランダムライブラリーリボザイムとを混合して細胞内の共同形質感染(co-transfection)を行った。具体的に、293A細胞を35mm培養皿に1×10個に分注した後、37℃で5%COインキュベーターに培養した。1.5mlチューブに入れて混合した後、5分間常温でそれぞれ放置した。その後、前記2つのチューブの内容物を混合し、リポソーム(liposome)形態の複合体をなすように20分間常温で保管した。20分後にチューブを10秒間遠心分離した後、それぞれの細胞上に撒いて共同形質注入(co-transfection)し、4時間後に新しいバッジに取り替えた。37℃で5%、COインキュベーターで24時間培養した後、1X PBSで細胞を洗浄し、トリゾール(trizol)500ul処理してRNAを抽出した。抽出したRNA5μgをDNase I1μlを処理してgDNAを除去し、そのうち、1μgをリボザイム特異RTプライマー(5’-ATGTGCTGCAAGGCGATT-3’)を入れた後、20uL体積条件で逆転写によってcDNAを合成した。合成されたcDNA2uLを用いてロドプシンRNA、特に5’プライマー(5’-CTACTCAGCCCCAGCGGAGG-3’)、リボザイム、特に、3’プライマー(RY-TS)(5’-TGTAAAACGACGGCCAGTG-3’)をそれぞれ10pmoleずつ用いて95℃で30秒、55℃で30秒、72℃で30秒の条件で35サイクルのPCRを実行し、2%TBEアガロースゲルでPCRバンドを確認した。確認された全てのPCR産物をフェノール及び沈殿過程を経てバッファチェンジした後、ロドプシンRNAのいずれかの部位でトランススプライシング反応が生じたかを塩基配列分析によって確認した。
【0114】
実施例3:トランススプライシングリボザイムの製造
配列番号1に表示されるWT RHO、そして、P23H RHO配列のうち+59番目の塩基部位をターゲットにするトランススプライシングリボザイムを含むコンストラクトを最適化した(図4)。前記ターゲット部位は、RHO RNAの+59位置の塩基を含み、5’末端に前記ターゲット部位を標的とし得るIGS(5’-GCCCAA-3’:配列番号6)を導入した。細胞内におけるRHO RNA +59塩基を標的とするリボザイム(以下、「RHO標的リボザイム」という)のトランススプライシング活性を分析するために、改善されたRHO標的リボザイムコンストラクトを製造した。6-ntの長さのIGSだけを有するグループIイントロンは、哺乳類の細胞内で発現したときに不活性化するか、又は非特異的な活性を示すと知られているためである。改善されたRHO標的リボザイムコンストラクトを製造するために、リボザイムのIGSアップストリームに延長されたP1(配列番号7)及び7-ntの長さのP10螺旋(配列番号8及び配列番号9)を含む相補的なオリゴヌクレオチドを挿入することでリボザイムを変形した。
【0115】
実施例4:トランススプライシングリボザイムの最適化
実施例3で製造した第1、第2、及び第3デザインのRHO標的リボザイムのうち、トランススプライシングに最適化されたRHO標的リボザイムを確認するためにRHO標的リボザイムを含むベクターを制作した(図5)。
【0116】
図5において、AS150は配列番号10に、SD/SAは配列番号11に、5’UTR一部の配列は配列番号12に表示される。T2Aはリンカー配列であり、YFPは蛍光蛋白質配列であって、この技術分野で幅広く知られているため具体的な配列表示は省略する。polyA配列についてもこの技術分野において幅広く知られている。
【0117】
RHO標的リボザイムの3つのデザイン間のリボザイム効果をインビトロ(哺乳動物細胞)で比較検証した。その結果を図6に示した。第1デザインと第2デザインを比較したとき、第2デザインのトランススプライシング作用がより優れていることが確認された(図6A)。第2デザインと第3デザインを比較したとき、第2デザインによるトランススプライシング効率がより優れていることが確認された(図6B)。第2デザインを選択してリボザイムの特異性及び効率性を最適化するためにアンチセンスの長さを調節して比較し、アンチセンス150個の長さ(配列番号10)が最も効果が優れていることが確認された(図6C)。トランススプライシング産物が正確にトランススプライシングされたかを確認するためにシークエンシングを行い、標的部位でトランススプライシングが発生したことが確認された(図6D)。
【0118】
実施例5:インビトロでトランススプライシングの活性分析
RHO標的リボザイムのインビトロ効能をstable cellを用いて確認した。陽性対照群としてYFPがタグされた野生型RHO(wild Rho-YFP)を用いた。ロドプシンmRNAが安定的に発現する293A WT RHO、293A P23H RHO細胞株を制作し、この細胞株を介して機能分析を行った。正常ロドプシンタンパク質は、細胞膜に移動して偏在化(localization)するが、P23Hロドプシン突然変異の場合、タンパク質のフォールディングに問題が生じて、細胞膜に移動せずに細胞質の小胞体にとどまることになる。したがって、タンパク質の位置を確認することでロドプシンタンパク質の機能的な変化を確認することができる。
【0119】
RHO標的リボザイム発現ベクターをstable cellにトランスフェクションし、トランススプライシング効果を確認するためにRNAを抽出してRT-PCRを行った。
【0120】
具体的に、stable cellを35mm培養皿に1×10個に分注した後、37℃で5%COインキュベーターに培養した。RHO標的リボザイム発現ベクター2μgとOpti-MEM100μlを1.5mlチューブに入れて混合し、リポフェクタミン2000を2μlとOpti-MEM100μlを他の1.5mlチューブに入れて混合してから5分間常温で放置した。その後、前記2つのチューブの内容物を混合して、リポソーム(liposome)形態の複合体をなすように20分間常温で保管した。20分後にチューブを10秒間遠心分離してからそれぞれの細胞上に撒いて形質注入(transfection)し、4時間後に新しいバッジに取り替えた。37℃で5%のCOインキュベーターで48時間培養した後、1X PBSで細胞を洗浄し、トリゾール500ul処理してRNAを抽出した。抽出したRNA5μgをDNase I1μlを処理してgDNAを除去し、そのうち1μgを逆転写してcDNAを合成した。合成したcDNAを用いてPCRによりトランススプライシング産物を確認し、トランススプライシング作用が正確に発生したことを塩基配列分析から確認した(図7A)。
【0121】
また、上記のような方法でRHO標的リボザイム発現ベクターを形質注入した後、RHO抗体を用いてRHOタンパク質を染色した。2次抗体を、蛍光抗体を用いて蛍光学顕微鏡を用いてRHOタンパク質の細胞内分布を確認した。P23H突然変異によって細胞内にとどまっていたロドプシンタンパク質がリボザイムによって細胞膜として分布していることが確認された(図7B)。
【0122】
また、RHO標的リボザイムの様々な突然変異に対するインビトロ効能を293A細胞に共同形質感染(co-transfection)して確認した(図8)。具体的に、RHO標的リボザイム発現ベクター0.5μgと様々な突然変異発現ベクター2μgをOpti-MEM100μlを1.5mlチューブに入れて混合し、リポフェクタミン2000の2.5μlとOpti-MEM100μlを他の1.5mlチューブに入れて混合してから5分間常温で放置した。その後、上記のような方法により形質注入した後、RT-PCRを行った。その結果、標的な部位に正確にトランススプライシングが発生したことを確認することで、様々な突然変異の部位に対して正常RHO RNAに交替されることが確認された。したがって、本発明に係るロドプシン転写体を標的とするトランススプライシングリボザイムは、特定の突然変異遺伝子のみを矯正できるものではなく、突然変異の種類に関わらず突然変異の部位を交替できることが分かる。
【0123】
実施例6.組換えウイルス制作及び動物モデルでトランススプライシング効能確認
6-1:組換えウイルスの制作
実施例4の第2デザインのRHO標的リボザイムをアデノ随伴ウイルス(Adeno-associated viruses:AAV)ベクターで発現させるために、組換えAAV発現ベクターを制作した。プロモーターは、CMVプロモーターを使用した(図9)。pAAVバックボーンプラスミド20μgをE.coRIで反応させた後、アガロースゲルを溶出した。合成したリボザイム+RHO DNAをインフュージョン(infusion)酵素を用いて反応させてから形質転換(transformation)してコロニーを取得した。それぞれのコロニーを培養してプラスミドを取得し、シークエンシングによって配列が正常にクローニングされたクローンを選別した。このように作られたプラスミドをEcoRVとXbaIで反応させた後、アガロースゲル溶出した。合成したYFP DNAを、インフュージョン酵素を用いて反応させてから形質転換してコロニーを取得した。コロニーを培養してプラスミドを取得し、シークエンシングによって配列が正常にクローニングされたコロニーを選別した。アンチセンス配列を追加するために、E.coRIで反応させた後、アガロースゲルを溶出した。PCRによって取得したAS150配列を、インフュージョン酵素を用いて反応させてから形質転換してコロニーを取得した。同じ方法により、配列分析した後、最終のAAV-cRib-YFPプラスミドを取得した。
【0124】
AAVウイルスベクターを制作するために、293T細胞にHelperベクター、RHOリボザイム発現ベクター、Rep2Cap5ベクターを三重形質感染(triple transfection)し、72時間後に細胞はライシス(lysis)、上層液はPEGダウン(down)した。これをイオジキサノール勾配超遠心分離(iodixanol gradient ultracentrifuge)方法でAAV発現ベクターを取得した。
【0125】
6-2:動物モデルでトランススプライシングリボザイムの効能確認
実施例6-1のAAV発現ベクターを用いて疾患モデルであるhP23H-RFPマウスでリボザイムの効能を確認した。hP23Hマウス-RFPモデルは、人体P23H遺伝子とRFP蛍光タンパク質が融合した形態でノックイン(knock-in)されたRPマウスモデルとして、RHO P23H研究に幅広く用いられているモデルである。AAV発現ベクター1μl網膜下注射(subretinal injection)方法によりマウスの眼球に注入した。IOキットに連結されている34Gニードルを強膜穿刺(scleral puncture)により刺入させた後、1μl/eyeの体積で両眼に網膜下注射で投与した。投与が完了すると、マウスの眼球に抗生剤点眼液を一滴点眼して感染を防いだ後、FP/OCT撮影によって網膜のブレブ(bleb)形成を確認する方法で投与の成功可否を判定した。
【0126】
投与した後、2週あるいは5週目に眼球を摘出してスライドを制作した。AAV発現ベクターにはYFP蛍光物質が結合されているため、RHOタンパク質に対する追加染色は進まないものの、DAPI染色によって細胞内の核染色を行った。図10は、投与後2週(図10A)、投与後5週(図10B)の結果を示したものである。
【0127】
AAV5-YFP(蛍光positive)とAAV-WT hRho-YFP(gene、蛍光positive)をAAV5-cRib-YFPに対する対照群として活用した。AAV5-YFPとAAV-WT hRho-YFPの物質が網膜色素上皮細胞(retinal pigment epithelium;RPE)にも蛍光が発現することから、光受容体特異的に導入されないことを確認することができ、一方、RHO標的リボザイムが付着されたAAV5-cRib-YFPの場合、RPEで発現せず光受容体にのみ特異的に発現したことが確認された。
【0128】
実施例7:動物モデルでトランススプライシングリボザイムの投与後に免疫及び炎症反応確認
疾患モデルであるhP23H-RFPマウスでトランススプライシングリボザイムの投与後に血清内免疫及び炎症反応を確認した結果を図11に示した(A:投与後2週、B:投与後5週)。
【0129】
関連サイトカインのうち、IL-6、IL-17A、TNF-α、INF-γ、IL-10がAAV5-cRib-YFPに対して2週目に増加する様相を示し、IL-4及びIL-2に対しては変化の様相を示さなかった。このような変化は、対照群であるAAV5-YFPとAAV-WT hRho-YFP物質処理によっては反応を示していないため、ウイルスベクター自体の効果ではないものと考えられる。2週目に増加パターンを見せたサイトカインは、5週目に減少して対照群に類似の量に減少するという結果から、トランススプライシングリボザイムを発現するベクターの網膜下注射(subretinal injection)によって増加した炎症及び免疫反応が物質投与の初期には増加し、5週目には本来のレベルに復帰することを意味する。
【0130】
実施例8:動物モデルでトランススプライシングリボザイムの投与後の網膜と網膜色素上皮細胞(retinal pigment epithelium;RPE)組織でリボザイムの効能確認
疾患モデルに有効物質を投与した後、RHO RNAをターゲットにしてトランススプライシングが生体内の光受容体で発生したか否かを確認した。そのために、マウスの眼球を摘出して網膜と網膜色素上皮細胞(RPE/choroid)を分離し、各部位でRNAを抽出した後にRT-PCRを行って、トランススプライシング産物生成の有無を観察した。その結果を図12に示した。
【0131】
RPEでは、増幅したトランススプライシング産物PCRバンドを確認することができないが、網膜特異的にトランススプライシング産物が確認された(図12A)。増幅したトランススプライシング産物に対してシークエンシングを行って突然変異RHO RNAをターゲッティングして正常RHO RNAに置換されたことが確認された(図12B)。
【0132】
また、網膜及び網膜色素上皮細胞のgDNAを抽出してAAV ITR部位をqPCRしたとき、網膜よりも網膜色素上皮細胞でさらに多く検出されたが(図12C)、これはAAVベクターがRPEに円満に伝達されるものの、リボザイムによって調節されるトランスジーン(transgene)の発現は、光受容体特異的に示されることが確認された。
【0133】
実施例9:疾患モデルにトランススプライシングリボザイム投与後に生体内リボザイムの分布確認
疾患モデルであるhP23H-RFPマウスでリボザイムの投与後2週目に全臓器でリボザイム分布を確認した(図13)。投与後2週目にマウス犠牲後に全臓器を得て、gDNA錠剤を介してgDNAを取得した。それぞれの臓器の1μg gDNAを用いてトランススプライシングリボザイム特異的プライマーを用いてリアルタイムPCRを行った。全臓器のうち肝臓組織でトランススプライシングリボザイムを発現するベクターを投与し、全ての個体から検出範囲内でリボザイムが検出された。その他、一部の個体から、肺、小腸、前立腺組織で投与したベクターが検出範囲内でリボザイムが検出され、他の組織では検出されなかった。
【0134】
実施例10:正常マウスにトランススプライシングリボザイム投与後の毒性分析
正常マウス(C57BL/6J)で濃度別のトランススプライシングリボザイムの投与後、眼球変化を観察して毒性を確認するために、トランススプライシングリボザイムの投与後の週目ごとのFundus及びOCTイメージ、H&E染色結果を確認した(図14)。試験群で網膜下投与によるブレブが形成されることを確認して投与が正常になされたことが確認された(実線)。一部の個体で角膜の炎症及び硝子体の出血が発生した(点線)。H&E染色で確認したとき、3×10GC/eye以上の濃度を処理した群で水晶体の変性、網膜の変性、及び外側網膜の萎縮、脈絡膜の組織構成炎症の発生を確認した。したがって、1×10GC/eye以下の濃度では毒性がないことが確認された。
【0135】
実施例11:疾患モデルにトランススプライシングリボザイム投与後の網膜電位図検査
疾患モデルであるhP23H-RFPマウス(5週齢のマウス)においてトランススプライシングリボザイムの投与後の時間経過による網膜電位図検査の結果である(図15及び表1)。網膜電位図検査のために桿体系(scotopic)ERG測定を実施し、Bウェーブの振幅を比較した。網膜電位図を評価するために、マウスをケタミンで全身麻酔した後、麻酔点眼剤を眼球に点眼して追加局所麻酔した後、散瞳剤を点眼して散瞳誘導した。マウスを載置台上に乗せてからプローブをそれぞれ尾の尾根部、眉間、角膜に設置した状態でmono-flash刺激(0.9log cds/m2(10responses/intensity))に対するERGを測定した。測定が完了すると、マウスの眼球に抗生剤の点眼液を一滴点眼した。分析は、「LabScribeERG(iWorx DataAcquisition Software)」のプログラムを用いて実施した。
【0136】
ロドプシン遺伝子のP23H突然変異は、細胞内で正常な機能を果たすことができず、桿状細胞(rod cell)、円錐細胞(cone cell)の死滅を誘導して視覚的な機能が退行する。光受容体細胞(rod、cone)は、光エネルギーを電気信号に変える役割を果たすが、光受容体細胞の数及び機能が低下すれば、電気信号が減少することになる。このような電気信号に対する評価を網膜電位図の検査(ERG)によって確認することで、視覚的な機能差を確認しようと試みた。網膜電位図検査でBウェーブは、実際の電気信号が伝達されたかを判断する指標であり、RHO標的リボザイム(AAV5-cRib-YFP)投与によって5週目でBウェーブが有意に増加したことを確認し、この効果は、8週目まで継続している。したがって、AAV5-cRib-YFPによって疾患モデルで視覚的機能を保持改善するものと見られる。
【0137】
【表1】
【0138】
実施例12:疾患モデルにトランススプライシングリボザイム投与後の血清及びリボザイム活性分析
疾患モデルであるhP23H-RFPマウス(5週齢)でトランススプライシングリボザイムの投与後8週目で血清分析及びリボザイム活性を確認した(図16)。投与後8週目でもPBSを投与した正常動物(G1)と、PBSのみを投与したG2群を比較したとき、有効物質によるサイトカインの変化はなかった(図16A)。実施例7において、2週目でサイトカインの変化を示したのが5週目では正常動物と比較したときに差がなかったことを確認したが、この結果と比較して判断すると、8週目までもサイトカインの変化には影響を与えないことを意味する。
【0139】
物質の投与後にRHO RNAを標的にしてトランススプライシングが8週目にも持続的であるか否かを確認するために、マウスの眼球を摘出して網膜からRNAを抽出した後、RT-PCRによってトランススプライシング産物が生成されることを確認した(図16B)。これは、組換えAAVベクターが網膜に伝達されてAAV5-cRib-YFPの発現及び作用が8週目まで持続的に引き続いていることを意味する。
【0140】
実施例13:組換えウイルスベクターの最適化
網膜への感染能及び発現能を確認するために、様々な組換えAAVベクターを製造した(図17)。図17に示したように、5’末端にスプライシング供与/スプライシング受容配列(splicing donor/splicing acceptor sequence、SD/SA sequence)が連結され、3’末端にWPRE(Woodchuck hepatitis virus Posttranscriptional Regulatory Element)が連結された。SD/SA及びWPREの配列は、それぞれ配列番号11及び配列番号13に表示されている。最適な物質を選別するために、以前の実施例で使用したAAVベクターとは異なり、様々な組換えAAV血清(serotype)及びプロモーター(promoter)を有する物質を生産して利用した。これに対して、CMVプロモーターとRHOプロモーターを利用し、最終物質に対する効能を確認するためにYFP蛍光物質は除去し、発現を増加させるためにWPREを挿入した。
【0141】
13-1:リボザイムの分布及びトランス-スプライシンの効率確認
製造した組換えAAVベクターを疾患モデルであるhP23H-RFPマウス(5週齢)に投与した後、3週目でリボザイムの分布及びトランススプライシングを確認した(図18)。
【0142】
図18に表示されたG1~G7の構成は下記の表2の通りである。
【0143】
【表2】
【0144】
血清型(serotype)に対する感染率を確認するために、注入後3週目に眼球を摘出し、網膜とRPE/choloidを分離してそれぞれRNA及びgDNAを抽出してgDNAを比較したとき、AAV血清型5が血清型2あるいは8よりも、網膜及びRPEの両方によく感染した。RT-PCRによってRNA分析を同一に進行確認し、CMVプロモーターによって調節される場合、RPEにおいてもリボザイムの発現が高く示される一方、網膜ではCMVプロモーターによって調節されることで、RHOプロモーターによって調節されるリボザイムの発現がさらに高く示されることが確認された(図18A及び18B)。
【0145】
実際の網膜にトランススプライシングリボザイムが作用してトランススプライシング産物が生成されたかを確認し、AAV血清型5にRHOプロモーターから調節される物質のトランススプライシング産物PCRバンドが濃く示されることが確認された(図18C)。
【0146】
これによって、AAV血清型5RL-Rib-WPREが網膜への伝達及び発現に優れ、トランススプライシングの効率も優れていることが確認された。
【0147】
13-2:疾患モデルにトランススプライシングリボザイム投与後の網膜電位図検査
網膜への感染能疾患モデルであるhP23H-RFPマウス(5週齢)でトランススプライシングリボザイムの投与後6週目で網膜電位図検査を行った。その結果を図19及び表3に示した。
【0148】
【表3】
【0149】
正常マウス(G0)対比P23H-RFP疾患マウス(G1)において光に対するBウェーブ反応が有意的に低く示されることを確認したが、これは、P23H-RFPマウスでRHO突然変異によって光受容体細胞が損傷することにより電気信号伝達への問題が生じたことを意味する。
【0150】
疾患モデルにそれぞれのAAVを投与後の網膜電位図を測定したとき、全ての試験群で平均の桿体系B波振幅(scotopic B-wave amplitude)がPBS投与群(G1)対比増加することが確認された。特に、プロモーター間の比較では、CMVプロモーターよりもRHOプロモーターから調節される場合、PBS投与群(G1)対比Bウェーブが極めて増加し(G3<G4、G5<G6)、血清型間の比較では、AAV2/5投与群(G5、G6)とAAV2/8投与群(G7)でPBS投与群(G1)対比Bウェーブが増加した。そのうち、AAV2/5RL-Rib-WPREの投与群が有意的に最も増加したことを確認し、前記試験群では、AAV2/5RL-Rib-WPREの網膜下投与時に疾患モデルの視覚機能の改善効果が最も大きいと判断される。
【0151】
一方、図17に示す組換えAAVベクターのうち、AAV血清型5あるいは8とRHOプロモーターを含むAAV2/5RL-Rib-WPRE、AAV2/8RL-Rib-WPREの組換えAAVベクターを疾患モデルであるhP23H-RFPマウス(5週齢)に投与した後4週目で網膜電位図検査を比較実行し、図20及び表4に示した。
【0152】
【表4】
【0153】
表4及び図20に示されたように、投与後4週目でのBウェーブは、PBS投与群(H2)対比AAV2/5RL-Rib-WPRE投与群(H3)及びAAV2/8RL-Rib-WPRE投与群(H4)において全て有意に増加した。AAV2/8RL-Rib-WPRE投与群(H4)がPBS投与群(H2)とAAV2/5RL-Rib-WPRE投与群(H3)よりも投与前(0week)Bウェーブが高かったことを勘案すれば、AAV2/5RL-Rib-WPRE投与群(H3)及びAAV2/8RL-Rib-WPRE投与群(H4)のBウェーブ増加能が類似すると考えられる。したがって、AAV2/5RL-Rib-WPRE又はAAV2/8RL-Rib-WPREを網膜下投与時に疾患モデルの視覚機能の改善効果がPBS投与群(H2)に比べて非常に優れていると判断される。
【0154】
13-3:疾患モデルにトランススプライシングリボザイム投与後網膜のリボザイム分布及びトランススプライシング確認
以下の表5に示すように、疾患モデルであるhP23H-RFPマウス(5週齢)にトランススプライシングリボザイムの投与後6週目に網膜におけるリボザイム分布とトランススプライシングを確認して図21に示した。
【0155】
【表5】
【0156】
疾患モデルで機能的な効能を確認した後、眼球組織を摘出して網膜gDNAとRNAを分離分析し、実施例13-1の3週目の結果と同様に、AAV血清型5が網膜への伝達が円満に行われることが確認された。RNAを分析したときも、AAV血清型5による発現がより優れて示されるだけでなく、RHOプロモーターによって調節されるリボザイムの発現が高く示されることが確認された。これにより、AAV2/5RL-Rib-WPREの網膜への伝達及び発現が3週目と同様に6週目においても優れていることを示す。
【0157】
前記結果をまとめると、hRHO-P23H疾患モデルにおいて、AAV血清型5及び8による網膜及びRPEへの伝達が効果的であり、RHOプロモーターによって調節されるトランススプライシングリボザイムが網膜特異的に発現することが確認された。
【0158】
本発明に係るトランススプライシングリボザイムは、投与初期である3週目から6週目に至るまで発現が持続的に行われ、4週目及び6週目に網膜電位図検査による視覚機能を確認したとき、視覚改善に効果を与えることが確認された。
【0159】
以上で本発明内容の特定の部分を詳細に記述したが、この技術分野にける通常の知識を有する者にとって、このような具体的な技術は単に好ましい実施様態に過ぎず、これによって本発明の範囲が制限されないことを明らかにする。したがって本発明の実質的な範囲は添付された請求項とこれらの等価物によって定義されるものと言える。
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
図11
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図16
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図19
図20
図21
【配列表】
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