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特許7334350車両のためのセンサ装置、及び、多回路ブレーキシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-18
(45)【発行日】2023-08-28
(54)【発明の名称】車両のためのセンサ装置、及び、多回路ブレーキシステム
(51)【国際特許分類】
   B60T 8/17 20060101AFI20230821BHJP
   B60T 13/74 20060101ALI20230821BHJP
   B60T 17/18 20060101ALI20230821BHJP
   B60T 7/12 20060101ALI20230821BHJP
   B60T 7/22 20060101ALI20230821BHJP
【FI】
B60T8/17 A
B60T8/17 B
B60T13/74 G
B60T17/18
B60T7/12 Z
B60T7/22
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2022525850
(86)(22)【出願日】2020-10-22
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-04
(86)【国際出願番号】 EP2020079722
(87)【国際公開番号】W WO2021089334
(87)【国際公開日】2021-05-14
【審査請求日】2022-06-01
(31)【優先権主張番号】102020205961.6
(32)【優先日】2020-05-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(31)【優先権主張番号】102019217140.0
(32)【優先日】2019-11-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】390023711
【氏名又は名称】ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
【住所又は居所原語表記】Stuttgart, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】フェイ シー
(72)【発明者】
【氏名】ベアント シュテーア
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン ヘス
【審査官】大谷 謙仁
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-220050(JP,A)
【文献】特開2000-016263(JP,A)
【文献】特表2001-523619(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第19853036(DE,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0141530(US,A1)
【文献】特開2016-210267(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T 8/17
B60T 13/74
B60T 17/18
B60T 7/12
B60T 7/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両(1)のためのセンサ装置(10)であって、
それぞれの車輪(R1,R2,R3,R4)のためのそれぞれ1つの回転数センサ(WSS1,WSS2,WSS3,WSS4)であって、それぞれ対応する前記車輪(R1,R2,R3,R4)の回転数及び/又は回転速度に依存した少なくとも1つの物理量を検出し、前記回転数及び/又は回転速度に依存した少なくとも1つの物理量から、対応する前記車輪(R1,R2,R3,R4)の回転数情報(WSO1,WSO2,WSO3,WSO4)を特定し得る、回転数センサ(WSS1,WSS2,WSS3,WSS4)と、
前記車両(1)の第1の制動機能を実施するために個々の前記車輪(R1,R2,R3,R4)の特定された前記回転数情報(WSO1,WSO2,WSO3,WSO4)を評価する一次制御装置(PSG)と、
前記車両(1)の第2の制動機能を実施するために個々の前記車輪(R1,R2,R3,R4)の特定された前記回転数情報(WSO1,WSO2,WSO3,WSO4)を評価する二次制御装置(SSG)と、
を有するセンサ装置(10)において、
前記車輪(R1,R2,R3,R4)の領域に、それぞれ1つの車輪近傍の制御装置(SG1,SG2,SG3,SG4)が配置されており、
前記車輪近傍の制御装置(SG1,SG2,SG3,SG4)は、対応する前記車輪(R1,R2,R3,R4)の前記回転数センサ(WSS1,WSS2,WSS3,WSS4)に直接的に接続されており、前記回転数センサ(WSS1,WSS2,WSS3,WSS4)のセンサ信号を受信し、前記センサ信号から対応する前記車輪(R1,R2,R3,R4)に関する前記回転数情報(WSO1,WSO2,WSO3,WSO4)を特定し、
少なくとも前記一次制御装置(PSG)と少なくとも1つのさらなる制御装置とは、特定された前記回転数情報(WSO1,WSO2,WSO3,WSO4)を受信して、リアルタイムで評価し、
前記車輪近傍の制御装置(SG1,SG2,SG3,SG4)は、特定された前記回転数情報(WSO1,WSO2,WSO3,WSO4)を、前記車両(1)内に分配するために第1のセンサデータとしてデータバス(DB)を介して中央ネットワーク(ZNW)に供給する、
ことを特徴とするセンサ装置(10)。
【請求項2】
個々の前記回転数センサ(WSS1,WSS2,WSS3,WSS4)は、それぞれ2線式線路を介して対応する前記車輪近傍の制御装置(SG1,SG2,SG3,SG4)に電気的に接続されている、
請求項1に記載のセンサ装置(10)。
【請求項3】
前記車輪近傍の制御装置(SG1,SG2,SG3,SG4)は、特定された前記回転数情報(WSO1,WSO2,WSO3,WSO4)を、それぞれポイントツーポイント接続を介してリアルタイムで供給し、
前記車輪近傍の制御装置(SG1,SG2,SG3,SG4)は、追加的な回転数情報を、前記車両(1)内に分配するために前記データバス(DB)及び前記中央ネットワーク(ZNW)を介して供給する、
請求項1又は2に記載のセンサ装置(10)。
【請求項4】
前記車輪近傍の制御装置(SG1,SG2,SG3,SG4)は、追加的な回転数情報を、前記車両(1)内に分配するために前記データバス(DB)及び前記中央ネットワーク(ZNW)を介して供給する、
請求項1乃至3のいずれか一項に記載のセンサ装置(10)。
【請求項5】
前記車輪近傍の制御装置のうちの少なくとも2つの車輪近傍の制御装置(SG3,SG4)は、駐車制動機能を実施するために、それぞれ電気接続部を介して電気駐車ブレーキ(EPB1,EPB2)の対応するアクチュエータに電気的に接続されている、
請求項1乃至3のいずれか一項に記載のセンサ装置(10)。
【請求項6】
前記車輪近傍の制御装置のうちの前記少なくとも2つの車輪近傍の制御装置(SG3,SG4)は、それぞれ駆動信号を生成し、対応する前記電気接続部を介して前記電気駐車ブレーキ(EPB1,EPB2)の対応する前記アクチュエータに出力する、
請求項5に記載のセンサ装置(10)。
【請求項7】
前記車輪近傍の制御装置のうちの前記少なくとも2つの車輪近傍の制御装置(SG3,SG4)における前記駐車制動機能の起動は、前記中央ネットワーク(ZNW)及び前記データバス(DB)を介して前記車輪近傍の制御装置のうちの前記少なくとも2つの車輪近傍の制御装置(SG3,SG4)に送信し得る第2のセンサデータを介して実施される、
請求項5又は6に記載のセンサ装置(10)。
【請求項8】
前記駐車制動機能の手動操作要素(MBE)は、前記一次制御装置(PSG)、又は、前記少なくとも1つのさらなる制御装置、又は、前記中央ネットワーク(ZNW)に電気的に接続されている、
請求項7に記載のセンサ装置(10)。
【請求項9】
前記車輪近傍の制御装置のうちの前記少なくとも2つの車輪近傍の制御装置(SG3,SG4)は、1つの共通の車軸上の車輪(R3,R4)の領域に配置されている、
請求項5乃至8のいずれか一項に記載のセンサ装置(10)。
【請求項10】
前記一次制御装置(PSG)及び/又は前記少なくとも1つのさらなる制御装置は、前記車輪近傍の制御装置(SG1,SG2,SG3,SG4)として構成されている、
請求項1乃至9のいずれか一項に記載のセンサ装置(10)。
【請求項11】
前記車輪近傍の制御装置(SG1,SG2,SG3,SG4)は、それぞれ少なくとも1つの周囲センサ(UFS1,UFS2,UFS3,UFS4)に電気的に接続されており、
前記周囲センサ(UFS1,UFS2,UFS3,UFS4)は、事故に関連する少なくとも1つの物理量を検出し、対応するセンサ信号を対応する前記車輪近傍の制御装置(SG1,SG2,SG3,SG4)に送信する、
請求項1乃至10のいずれか一項に記載のセンサ装置(10)。
【請求項12】
前記車輪近傍の制御装置(SG1,SG2,SG3,SG4)は、前記周囲センサ(UFS1,UFS2,UFS3,UFS4)の前記センサ信号を、前記車両(1)内に分配するために第3のセンサデータとして前記データバス(DB)を介して前記中央ネットワーク(ZNW)に供給する、
請求項11に記載のセンサ装置(10)。
【請求項13】
前記制御装置(PSG,SSG,SG1,SG2,SG3,SG4)は、それぞれ1つの冗長的なエネルギ供給部を有する、
請求項1乃至12のいずれか一項に記載のセンサ装置(10)。
【請求項14】
前記少なくとも1つのさらなる制御装置は、前記二次制御装置(SSG)、又は、前記車両(1)の電気駆動部のインバータを駆動する駆動部制御装置、又は、移動軌跡を計算する中央制御装置である、
請求項1乃至13のいずれか一項に記載のセンサ装置(10)。
【請求項15】
前記一次制御装置(PSG)は、ESPシステム、又は、真空に依存しない電気液圧式ブレーキブースタを有するESPシステムを駆動する、
請求項1乃至14のいずれか一項に記載のセンサ装置(10)。
【請求項16】
前記二次制御装置(SSG)は、真空に依存しない電気液圧式ブレーキブースタ、又は、冗長的なブレーキユニットを駆動する、
請求項1乃至15のいずれか一項に記載のセンサ装置(10)。
【請求項17】
特に、高度に自動化された又は自律的な車両(1)のための多回路ブレーキシステムであって、
それぞれ車輪(R1,R2,R3,R4)に配置された複数の車輪ブレーキと、
前記車輪(R1,R2,R3,R4)の回転数及び/又は回転速度に依存した少なくとも1つの物理量を検出するセンサ装置(10)と、
前記車両(1)の第1の制動機能を実施するために個々の前記車輪(R1,R2,R3,R4)の特定された回転数情報(WSO1,WSO2,WSO3,WSO4)を評価する一次制御装置(PSG)と、
前記車両(1)の第2の制動機能を実施するために個々の前記車輪(R1,R2,R3,R4)の特定された前記回転数情報(WSO1,WSO2,WSO3,WSO4)を評価する二次制御装置(SSG)と、
を有する多回路ブレーキシステムにおいて、
前記センサ装置(10)は、請求項1乃至16のいずれか一項に記載のセンサ装置(10)である、
ことを特徴とする多回路ブレーキシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、独立請求項1の上位概念による車両のためのセンサ装置を起点とする。そのようなセンサ装置を有する対応する多回路ブレーキシステムも、本発明の対象である。
【背景技術】
【0002】
高度に自動化された又は自律的な運転のため、及び、半自動化された又は半自律的な運転機能のためには、典型的に、多くの障害発生時においてもセンサ及び機能の可用性が保証されるように、冗長性が要求される。従って、典型的には、車両の一次安定化及び二次安定化を用いるブレーキシステムが使用される。具体的には、制動のために、典型的に2つの独立したブレーキ装置又はブレーキ制御システムが使用される。理想的には両方とも、それぞれ1つの車輪に対応付けられた回転数センサから高可用性をもって回転数情報を受信することが要求されている。今日の解決策においては、回転数センサは、一次制御装置にポイントツーポイントで直接的に接続される。例えば、一次システムとしてのESPシステムと、二次システムとしての電気機械式又は他の電気式のブレーキブースタとのような、又は、一次システムとしての統合型ブレーキシステム(IPB)と、二次システムとしての冗長的なブレーキシステムRBU(RBU:Redundant Brake Unit)とのような、2ボックス型のシステムアプローチの場合には、追加的な労力及びコストを必要とし、また、全ての障害発生を担保するわけではないが、回転数センサのセンサ信号が一次制御装置を通って二次制御装置へとループされ、又は、障害発生時に、回転数センサがスイッチング装置を介して一次制御装置と二次制御装置との間で切り替えられる。その他の公知の解決策は、8つの回転数センサを想定するものであり、そのうちの4つが一次制御装置に直接的に接続されており、4つが二次制御装置に直接的に接続されている。この分配により、システムが車両を冗長的に安定化させることができるように、それぞれの車輪に2つの回転数センサが取り付けられる。このことは、即ち、1つの車両につき合計8つの回転数センサと、それに関連してセンサ及び配線のための2倍のコストとが費やされるということを意味する。
【0003】
例えば、独国特許出願公開第102015202335号明細書から、車両のための多回路ブレーキシステムであって、電気機械式ブレーキブースタと、少なくとも1つの電動液圧コンポーネントと、車輪の回転数及び/又は回転速度に関する少なくとも1つの第1のセンサ量を、車両の少なくとも1つの評価及び/又は制御装置に供給する第1のセンサ素子と、同一の車輪の回転数及び/又は回転速度に関する少なくとも1つの第2のセンサ量を、少なくとも1つの評価及び/又は制御装置に供給する第2のセンサ素子と、を有する多回路ブレーキシステムが公知である。さらに、第1のセンサ素子は、電気機械式ブレーキブースタと共に、少なくとも部分的にブレーキシステム内に形成されている第1の電流供給ネットワークに接続されており、第2のセンサ素子は、少なくとも1つの電動液圧コンポーネントと共に、少なくとも部分的にブレーキシステム内に形成されている第2の電流供給ネットワークに接続されている。
【0004】
例えば、独国特許出願公開第102018204615号明細書から、センサ素子と少なくとも2つの制御装置とを有する、上位概念に記載した形式のセンサ装置であって、当該センサ装置は、それぞれ1つの評価制御ユニットと、エネルギ源とを有し、第1の制御装置では、第1の評価制御ユニットが第1のエネルギ源に接続されており、第2の制御装置では、第2の評価制御ユニットが第2のエネルギ源に接続されている、センサ装置が公知である。少なくとも2つの制御装置とセンサ素子とは、少なくとも1つの別個のスイッチングモジュールを介して相互に接続されており、それぞれのスイッチングモジュールは、対応するセンサ素子の第1の端子を第1のエネルギ源及び/又は第2のエネルギ源に接続する。センサ素子の第2の端子は、アースに接続されている。この場合、センサ素子を流れるセンサ電流は、少なくとも、検出された測定量に関する情報を用いて変調され、第1の評価制御ユニット及び/又は第2の評価制御ユニットによって評価される。接続されているエネルギ源が故障した場合には、スイッチングモジュールは、センサ素子の第1の端子を他方のエネルギ源に接続する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】独国特許出願公開第102015202335号明細書
【文献】独国特許出願公開第102018204615号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明の開示
独立請求項1に記載の特徴を有する、車両のためのセンサ装置と、このようなセンサ装置を有する、特に、高度に自動化された又は自律的な車両のための多回路ブレーキシステムとは、それぞれ、標準的な回転数センサを用いた冗長的な回転数センサコンセプトを、スイッチング装置を用いることなく実現することができるという利点を有する。この場合、回転数情報は、少なくとも一次制御装置と、少なくとも1つのさらなる制御装置とにリアルタイムで供給される。これにより、一次制御装置の故障時に、回転数情報の送信のための待ち時間が発生しなくなる。なぜなら、さらなる制御装置としての二次制御装置も、車輪近傍の制御装置に直接的に接続することができるからである。回転数情報はさらに、中央ネットワークを介してさらなる制御装置にも供給され、このためには、回転数情報を送信するためのより長い待ち時間が発生する可能性がある。
【0007】
車両のための本発明に係るセンサ装置の実施形態によれば、有利には、追加的なスイッチング装置を用いることなく、標準的な回転数センサを使用することが可能となると共に、従来の制御装置を一次制御装置及び二次制御装置として使用することも可能となる。さらに、個々の回転数センサの回転数情報を、車輪近傍の制御装置との直接的な接続を介して、回転数情報を同様にリアルタイムで必要としている車両内の他の制御装置にも供給することが可能となる。
【0008】
本発明の実施形態は、車両のためのセンサ装置において、それぞれの車輪のためのそれぞれ1つの回転数センサであって、それぞれ対応する車輪の回転数及び/又は回転速度に依存した少なくとも1つの物理量を検出し、回転数及び/又は回転速度に依存した少なくとも1つの物理量から、対応する車輪の回転数情報を特定し得る回転数センサと、車両の第1の制動機能を実施するために個々の車輪の特定された回転数情報を評価する一次制御装置と、車両の第2の制動機能を実施するために個々の車輪の特定された回転数情報を評価する二次制御装置と、を有するセンサ装置を提供する。これに関して、車輪の領域に、それぞれ1つの車輪近傍の制御装置が配置されており、車輪近傍の制御装置は、対応する車輪の対応する回転数センサに直接的に接続されており、回転数センサのセンサ信号を受信し、センサ信号から対応する車輪に関する回転数情報を特定する。少なくとも一次制御装置と少なくとも1つのさらなる制御装置とは、特定された回転数情報を受信して、リアルタイムで評価し、車輪近傍の制御装置は、特定された回転数情報を、車両内に分配するために第1のセンサデータとしてデータバスを介して中央ネットワークに供給する。
【0009】
さらに、特に、高度に自動化された又は自律的な車両のための多回路ブレーキシステムであって、それぞれ車輪に配置された複数の車輪ブレーキと、車輪の回転数及び/又は回転速度に依存した少なくとも1つの物理量を検出するそのようなセンサ装置と、車両の第1の制動機能を実施するために個々の車輪の特定された回転数情報を評価する一次制御装置と、車両の第2の制動機能を実施するために個々の車輪の特定された回転数情報を評価する二次制御装置と、を有する多回路ブレーキシステムが提案される。
【0010】
本明細書における一次制御装置又は二次制御装置とは、検出されたセンサ信号を処理又は評価する電気的な装置であると理解することが可能である。このために、制御装置は、信号又はデータを処理するための少なくとも1つの評価制御ユニットと、信号又はデータを記憶するための少なくとも1つのメモリユニットと、センサからのセンサ信号を読み出すための又は制御信号をアクチュエータに出力するためのセンサ又はアクチュエータへの少なくとも1つのインタフェース、及び/又は、通信プロトコルに埋め込まれているデータを読み出すための又は出力するための少なくとも1つの通信インタフェースと、を有し得る。本明細書におけるアクチュエータは、例えば、制御装置によって相応に駆動することができる電磁弁又は圧力発生器として構成されている。少なくとも1つのインタフェースは、ハードウェア及び/又はソフトウェアの形態で構成可能である。ハードウェアの形態で構成されている場合には、インタフェースは、例えば、制御装置の種々の機能を含むいわゆるシステム回路の一部であるものとしてよい。このようなシステム回路は、好ましくは、特定用途向け集積回路(ASIC)として構成されている。例えば、評価制御ユニットは、ASICとして構成可能である。しかしながら、インタフェースを個別の集積回路とすることも、又は、少なくとも部分的にディスクリート部品から構成することも可能である。ソフトウェアの形態で構成されている場合には、インタフェースは、例えば、他のソフトウェアモジュールと共にマイクロコントローラ上に設けられているソフトウェアモジュールであるものとしてよい。計算ユニットは、例えば、信号プロセッサ、マイクロコントローラ等であるものとしてよく、メモリユニットは、フラッシュメモリ、EEPROM、又は、磁気メモリユニットであるものとしてよい。半導体メモリ、ハードディスクメモリ又は光メモリのような機械可読担体上に記憶されていて、かつ、評価制御ユニットのプログラムが実行された場合に評価を実施するために使用される、プログラムコードを有するコンピュータプログラム製品も有利である。2つの制御装置は、一次アクチュエータシステム又は二次アクチュエータシステムと共に、例えば、ABS機能、ESP機能、ASR機能、及び/又は、ヒルホールド機能(ABS:アンチロックブレーキシステム、ESP:横滑り防止装置、ASR:アンチスリップレギュレーション)のような種々の制動機能を実施することができる。この場合、2つの制御装置は、通常動作時にはそれぞれ異なる制動機能を実施することができる。2つの制御装置のうちの一方が故障した場合には、対応するフォールバックレベルを形成するために、故障した制御装置の制動機能を他方の制御装置が少なくとも部分的に引き継ぐことができる。
【0011】
本明細書における一次アクチュエータシステム又は二次アクチュエータシステムとは、ブレーキシステムにおける車輪ブレーキ内の圧力増加又は圧力低減のために、ABS機能(ABS:アンチロックブレーキシステム)又はASR機能(ASR:アンチスリップレギュレーション)又は横滑り防止装置(ESP)に関する対応する制御及び/又は調整プロセスを実施することができる、液圧式及び/又は電気機械式のアセンブリであると理解することが可能である。
【0012】
制御及び/又は調整プロセスを実施するために、一次アクチュエータシステム又は二次アクチュエータシステムは、少なくとも1つのブレーキ圧力発生器と、電磁弁を有する液圧弁ユニットとを含み、この電磁弁は、「磁力」、「ばね力」及び「液圧力」という相互に対抗する力に基づいて、多くの場合、一義的な位置に保持可能である。従って、「常開」及び「常閉」という電磁弁の種類が存在する。さらに、「常開」状態と「常閉」状態とをスイッチングすることができる双安定電磁弁も使用され、このような双安定電磁弁は、次のスイッチング信号までそれぞれの動作状態に持続的に留まる。ブレーキ圧力発生器は、特に、筋力、補助力、及び/又は、外部力によって操作可能である。「補助力」とは、ブレーキブースタによって支援された筋力による操作を意味する。
【0013】
本明細書における回転数センサとは、対応する車輪の領域において物理量又は物理量の変化を直接的又は間接的に検出し、好ましくは、電気センサ信号に変換する電気コンポーネントであると理解される。回転数情報は、好ましくは、磁気式エンコーダ又は強磁性歯車の走査によって特定される。磁気式エンコーダは、例えば、自身の周にわたって均等に分散配置された複数の磁気要素、特に複数の永久磁石を有する測定値発生器リングとして構成されており、これらの複数の磁気要素は、交互の磁気配向を有しており、磁極対を形成している。回転数センサにより、測定値発生器リングの回転時の磁気要素の磁界が検出され、それぞれの検出された磁界の磁束に依存して、出力電流が、電流インタフェースを介して制御装置に供給されて、回転数情報としてさらに使用される。回転数センサは、例えば、ホール素子、GMRセンサ素子、AMRセンサ素子、又は、TMRセンサ素子(GMR:巨大磁気抵抗、AMR:異方性磁気抵抗、TMR:トンネル磁気抵抗)を含み得る。この場合、それぞれの回転数センサは、自身の回転数情報を、例えば、AKプロトコル又はIプロトコルのようなデータプロトコルとして、電流インタフェースを介して対応する車輪近傍の制御装置に送信することができる。
【0014】
回転数センサは、例えば、回転数情報を特定するために磁極対のゼロ交差を検出し、磁極対のそれぞれのゼロ交差の際に、即ち、検出された磁界強度の符号変化の際に、本来の回転数情報を表すいわゆる「スピードパルス」が生成される。AKプロトコルは、回転数情報としての「スピードパルス」と、複数のプロトコルビットを有するデータワードとしての少なくとも1つの追加的な回転数情報とを含む。プロトコルビットは、少なくとも1つの追加的な回転数情報のデータ内容を定義する。少なくとも1つの追加的な回転数情報は、例えば、回転方向情報、空隙情報、温度情報等に関する。
【0015】
車両内の中央ネットワークは、例えば、CANバスシステム、イーサネット、又は、FlexRay(登録商標)であるものとしてよい。もちろん、回転数情報を分配するために、車両内の他の適当なネットワーク、又は、上述したネットワークの組合せを使用するものとしてもよい。
【0016】
従属請求項に記載された手段及び発展形態により、独立請求項1に記載された車両のためのセンサ装置を有利に改善することが可能である。
【0017】
個々の回転数センサが、それぞれ2線式線路を介して対応する車輪近傍の制御装置に電気的に接続可能であることが、特に有利である。このようにすると、それぞれの回転数センサを流れるセンサ電流を、検出された測定量に関する情報を用いて変調し、対応する車輪近傍の制御装置によって検出して、対応する回転数情報を表す電圧信号に変換することができる。さらに、車輪近傍の制御装置は、例えば、本来の回転数情報を表す「スピードパルス」を、電圧信号としてそれぞれポイントツーポイント接続を介してリアルタイムで供給することができる。ポイントツーポイント接続は、例えば、単線式線路として構成可能であり、車輪近傍の制御装置を一次制御装置又は少なくとも1つのさらなる制御装置に電気的に接続することができる。さらに、個々の車輪近傍の制御装置は、例えば、回転方向情報、空隙情報、温度情報等のような追加的な回転数情報を、車両内に分配するためにデータバス及び中央ネットワークを介して供給することができる。
【0018】
センサ装置のさらなる有利な実施形態においては、車輪近傍の制御装置のうちの少なくとも2つの車輪近傍の制御装置は、駐車制動機能を実施するために、それぞれ電気接続部を介して電気駐車ブレーキの対応するアクチュエータに電気的に接続可能である。この場合、車輪近傍の制御装置のうちの少なくとも2つの車輪近傍の制御装置は、それぞれ駆動信号を生成し、対応する電気接続部を介して電気駐車ブレーキの対応するアクチュエータに出力することができる。車輪近傍の制御装置によって電気駐車ブレーキのアクチュエータを駆動することにより、制御装置と対応するアクチュエータとの間の大電流を通す電気接続ケーブルを、従来技術よりも短く構成することが可能となる。さらに、既知のセンサ装置において電気駐車ブレーキのアクチュエータの駆動を実施する一次制御装置又は二次制御装置の負荷を軽減することができる。さらに、駐車制動機能を少なくとも2つの車輪近傍の制御装置に分配することにより、高度に自律的な又は高度に自動化された車両においても駐車制動機能の冗長性を改善することができる。
【0019】
センサ装置のさらなる有利な実施形態においては、車輪近傍の制御装置のうちの少なくとも2つの車輪近傍の制御装置における駐車制動機能の起動は、中央ネットワーク及びデータバスを介して車輪近傍の制御装置のうちの少なくとも2つの車輪近傍の制御装置に送信し得る第2のセンサデータを介して実施可能である。この場合、駐車制動機能の手動操作要素は、一次制御装置、又は、少なくとも1つのさらなる制御装置、又は、中央ネットワークに電気的に接続されるものとしてよい。このことは、即ち、手動操作要素に電気的に接続されている対応するコンポーネントが、操作を検出し、対応する起動信号を生成し、データバスを介して車輪近傍の制御装置に出力することができるということを意味する。さらに、運転者の介入なしに構成されている高度に自律的な又は高度に自動化された車両の場合には、そのような手動操作要素を省略することができる。
【0020】
センサ装置のさらなる有利な実施形態においては、車輪近傍の制御装置のうちの少なくとも2つの車輪近傍の制御装置は、1つの共通の車軸上の、好ましくは後車軸上の車輪の領域に配置可能である。
【0021】
センサ装置のさらなる有利な実施形態においては、一次制御装置及び/又は少なくとも1つのさらなる制御装置は、車輪近傍の制御装置として構成可能である。このことは、即ち、一次制御装置が、例えば、回転数センサのうちの1つに直接的に接続されており、その回転数センサの回転数情報を他の制御装置にリアルタイムで供給するということを意味する。追加的又は代替的に、二次制御装置又は他の制御装置が、回転数センサのうちの1つに直接的に接続されており、その回転数センサの回転数情報を他の制御装置にリアルタイムで供給するようにすることもできる。
【0022】
センサ装置のさらなる有利な実施形態においては、車輪近傍の制御装置は、それぞれ少なくとも1つの周囲センサに電気的に接続可能であり、周囲センサは、事故に関連する少なくとも1つの物理量を検出し、対応するセンサ信号を対応する車輪近傍の制御装置に送信する。例えば、超音波センサ、レーダセンサ等として構成されているこれらの周囲センサを介して、好ましくは、車両周囲のオブジェクトまでの距離を特定することができる。この距離情報は、例えば、駐車支援、距離警告装置、距離制御システム等のような運転者支援システムにおいて使用可能である。従って、車輪近傍の制御装置は、周囲センサのセンサ信号を、車両内に分配するために第3のセンサデータとしてデータバスを介して中央ネットワークに供給することができる。
【0023】
センサ装置のさらなる有利な実施形態においては、制御装置は、それぞれ1つの冗長的なエネルギ供給部を有し得る。これにより、エネルギ供給部の1つが故障した場合においても、回転数情報の送信と、対応する車両機能とを実施することができる。
【0024】
センサ装置のさらなる有利な実施形態においては、少なくとも1つのさらなる制御装置は、二次制御装置、又は、車両の電気駆動部のインバータを駆動する駆動部制御装置、又は、移動軌跡を計算する中央制御装置であるものとしてよい。
【0025】
センサ装置のさらなる有利な実施形態においては、一次制御装置は、ESPシステム、又は、真空に依存しない電気液圧式ブレーキブースタを有するESPシステムを駆動することができる。二次制御装置は、真空に依存しない電気液圧式ブレーキブースタ、又は、冗長的なブレーキユニットを駆動することができる。
【0026】
本発明の実施例は、図面に図示されており、以下の記載において、より詳細に説明される。図面においては、同一の参照記号は、同一の機能又は類似の機能を実施するコンポーネント又は要素を指している。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】車両のための本発明に係るセンサ装置の1つの実施例の概略ブロック図である。
図2】車両のための本発明に係るセンサ装置のさらなる実施例の概略ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の実施形態
図1及び図2から見て取れるように、車両1のための本発明に係るセンサ装置10,10A,10Bの図示された実施例は、それぞれの車輪R1,R2,R3,R4のためのそれぞれ1つの回転数センサWSS1,WSS2,WSS3,WSS4を含み、これらの回転数センサWSS1,WSS2,WSS3,WSS4は、それぞれ対応する車輪R1,R2,R3,R4の回転数及び/又は回転速度に依存した少なくとも1つの物理量を検出し、回転数及び/又は回転速度に依存した少なくとも1つの物理量から、対応する車輪R1,R2,R3,R4の回転数情報WSO1,WSO2,WSO3,WSO4を特定することができる。さらに、センサ装置10,10A,10Bは、車両1の第1の制動機能を実施するために個々の車輪R1,R2,R3,R4の特定された回転数情報WSO1,WSO2,WSO3,WSO4を評価する一次制御装置PSGと、車両1の第2の制動機能を実施するために個々の車輪R1,R2,R3,R4の特定された回転数情報WSO1,WSO2,WSO3,WSO4を評価する二次制御装置SSGと、を含む。これに関して、車輪R1,R2,R3,R4の領域に、それぞれ1つの車輪近傍の制御装置SG1,SG2,SG3,SG4が配置されており、これらの車輪近傍の制御装置SG1,SG2,SG3,SG4は、対応する車輪R1,R2,R3,R4の対応する回転数センサWSS1,WSS2,WSS3,WSS4に直接的に接続されており、回転数センサWSS1,WSS2,WSS3,WSS4のセンサ信号を受信し、このセンサ信号から対応する車輪R1,R2,R3,R4に関する回転数情報WSO1,WSO2,WSO3,WSO4を特定する。少なくとも一次制御装置PSGと少なくとも1つのさらなる制御装置とは、特定された回転数情報WSO1,WSO2,WSO3,WSO4を受信して、それぞれリアルタイムで評価する。さらに、車輪近傍の制御装置SG1,SG2,SG3,SG4は、特定された回転数情報WSO1,WSO2,WSO3,WSO4を、車両1内に分配するために第1のセンサデータとしてデータバスDBを介して中央ネットワークZNWに供給する。
【0029】
図1及び図2からさらに見て取れるように、図示された実施例においては、それぞれ4つの車輪近傍の制御装置SG1,SG2,SG3,SG4は、それぞれ車両1の角部領域に配置されている。この場合、車両の左側に配置された前輪に相当する第1の車輪R1の領域には、第1の回転数センサWSS1と、第1の車輪近傍の制御装置SG1とが配置されている。車両の右側に配置された前輪に相当する第2の車輪R2の領域には、第2の回転数センサWSS2と、第2の車輪近傍の制御装置SG2とが配置されている。車両の左側に配置された後輪に相当する第3の車輪R3の領域には、第3の回転数センサWSS3と、第3の車輪近傍の制御装置SG3とが配置されている。車両の右側に配置された後輪に相当する第4の車輪R4の領域には、第4の回転数センサWSS4と、第4の車輪近傍の制御装置SG4とが配置されている。個々の回転数情報WSO1,WSO2,WSO3,WSO4は、図示された実施例においては、詳細には図示されていない磁気式エンコーダの走査によって特定され、磁気式エンコーダは、例えば、自身の周にわたって均等に分散配置された複数の磁気要素、特に複数の永久磁石を有する測定値発生器リングとして構成されている。個々の回転数センサWSS1,WSS2,WSS3,WSS4により、測定値発生器リングの回転時の磁気要素の磁界が検出され、それぞれの検出された磁界の磁束に依存して、出力電流が、電流インタフェースを介して対応する車輪近傍の制御装置SG1,SG2,SG3,SG4に供給されて、回転数情報WSO1,WSO2,WSO3,WSO4としてさらに使用される。回転数センサは、回転数情報WSO1,WSO2,WSO3,WSO4を特定するために磁極対のゼロ交差を検出し、磁極対のそれぞれのゼロ交差の際に、即ち、検出された磁界強度の符号変化の際に、本来の回転数情報WSO1,WSO2,WSO3,WSO4を表すいわゆる「スピードパルス」が生成される。さらに、使用されるAKプロトコルを介して、例えば、回転方向情報、空隙情報、温度情報等のような追加的な回転数情報を、複数のプロトコルビットを有するデータワードとして、対応する車輪近傍の制御装置SG1,SG2,SG3,SG4に送信することができる。
【0030】
図1及び図2からさらに見て取れるように、個々の回転数センサWSS1,WSS2,WSS3,WSS4は、それぞれ2線式線路を介して対応する車輪近傍の制御装置SG1,SG2,SG3,SG4に電気的に接続されている。個々の車輪近傍の制御装置SG1,SG2,SG3,SG4は、それぞれ単線式線路を介して一次制御装置PSGと、図示された実施例においては二次制御装置SSGである少なくとも1つのさらなる制御装置とに電気的に接続されている。従って、図示された実施例においては、一次制御装置PSG及び二次制御装置SSGは、さらなる評価のために、並びに、第1及び第2の制動機能を実施するために、又は、車両の一次安定化を実施するために、若しくは、一次安定化が失敗した緊急時における車両の二次安定化を実施するために、それぞれ回転数情報WSO1,WSO2,WSO3,WSO4をリアルタイムで受信する。一次制御装置PSGは、第1の制動機能と、車両の一次安定化とを実施するために、詳細には図示されていない対応する公知の一次アクチュエータシステムを駆動し、一次アクチュエータシステムを介して、ブレーキシステムにおいて車輪ブレーキ内の圧力増加又は圧力低減を実施することができ、対応する制御及び/又は調整プロセスを実施することができる。二次制御装置SSGは、第2の制動機能と、車両の二次安定化とを実施するために、詳細には図示されていない対応する公知の二次アクチュエータシステムを駆動し、二次アクチュエータシステムを介して、ブレーキシステムにおいて車輪ブレーキ内の圧力増加又は圧力低減を実施することができ、対応する制御及び/又は調整プロセスを実施することができる。車輪近傍の制御装置SG1,SG2,SG3,SG4は、それぞれ、特定された回転数情報WSO1,WSO2,WSO3,WSO4と共に、個々の回転数センサWSS1,WSS2,WSS3,WSS4の追加的な回転数情報を、車両1内に分配するために第1のセンサデータとしてデータバスDBを介して中央ネットワークZNWに供給する。
【0031】
図2からさらに見て取れるように、センサ装置10Bの図示された実施例は、図1に図示されたセンサ装置10Aの実施例に加えてさらに駐車制動機能を含む。車輪近傍の制御装置SG1,SG2,SG3,SG4のうちの少なくとも2つの車輪近傍の制御装置は、駐車制動機能を実施するために、電気接続部を介して電気駐車ブレーキEPB1,EBP2の詳細には図示されていない対応するアクチュエータに電気的に接続されている。図示された実施例においては、車両の左側に配置された後輪に相当する第3の車輪R3の領域に配置されている第3の車輪近傍の制御装置SG3と、車両の右側に配置された後輪に相当する第4の車輪R4の領域に配置されている第4の車輪近傍の制御装置SG4とは、それぞれ対応する電気駐車ブレーキのアクチュエータに電気的に接続されている。この場合、第3の車輪近傍の制御装置SG3は、第3の車輪R3に配置された第1の電気駐車ブレーキEPB1のための駆動信号を生成する。第4の車輪近傍の制御装置SG4は、第4の車輪R4に配置された第2の電気駐車ブレーキEBP2のための駆動信号を生成する。生成された駆動信号は、その後、対応する電気接続部を介して対応するアクチュエータに出力される。2つの車輪近傍の制御装置SG3,SG4における駐車制動機能の起動は、図示された実施例においては、中央ネットワークZNWを介して2つの車輪近傍の制御装置SG3,SG4に送信される第2のセンサデータを介して実施される。もちろん、図示されていない代替的な実施例においては、後車軸上の車輪近傍の制御装置SG3,SG4に加えて前車軸上の車輪近傍の制御装置SG1,SG2も、駐車制動機能を実施するように構成することができる。
【0032】
図2からさらに見て取れるように、センサ装置10Bの図示された実施例は、駐車制動機能の手動操作要素MBEを含み、この手動操作要素MBEは、中央ネットワークZNWに電気的に接続されている。このことは、即ち、中央ネットワークZNWが、手動操作要素MBEの操作を認識し、対応する起動信号を生成し、データバスDBを介して車輪近傍の制御装置SG3,SG4に出力するということを意味する。破線が示すように、手動操作要素MBEは、追加的又は代替的に、一次制御装置PSG又は少なくとも1つのさらなる制御装置、ここでは二次制御装置SSGに電気的に接続されるものとしてもよい。さらに、運転者の介入なしに構成されている高度に自律的な又は高度に自動化された車両1の場合には、駐車制動機能の起動が自動的に実施されるので、手動操作要素MBEを省略することができる。図示された実施例においては、2つの車輪近傍の制御装置SG3,SG4における駐車制動機能の起動は、中央ネットワークZNW及びデータバスDBを介して2つの車輪近傍の制御装置SG3,SG4に送信される第2のセンサデータを介して実施される。
【0033】
図1及び図2からさらに見て取れるように、車輪近傍の制御装置SG1,SG2,SG3,SG4は、図示された実施例においては、それぞれ少なくとも1つの周囲センサUFS1,UFS2,UFS3,UFS4に電気的に接続されており、これらの周囲センサUFS1,UFS2,UFS3,UFS4は、事故に関連する少なくとも1つの物理量を検出し、対応するセンサ信号を対応する車輪近傍の制御装置SG1,SG2,SG3,SG4に送信する。図示された実施例においては、第1の車輪近傍の制御装置SG1は、左側前方の車両周囲を監視する第1の周囲センサUFS1に接続されている。第2の車輪近傍の制御装置SG2は、右側前方の車両周囲を監視する第2の周囲センサUFS2に接続されている。第3の車輪近傍の制御装置SG3は、左側後方の車両周囲を監視する第3の周囲センサUFS3に接続されている。第4の車輪近傍の制御装置SG4は、右側後方の車両周囲を監視する第4の周囲センサUFS4に接続されている。図示された実施例においては、周囲センサUFS1,UFS2,UFS3,UFS4は、超音波センサとして構成されている。代替的に、周囲センサUFS1,UFS2,UFS3,UFS4を、レーダセンサ、光センサ等として構成することもできる。周囲センサUFS1,UFS2,UFS3,UFS4を介して、対応する車両安全性システムが、車両1から車両周囲のオブジェクトまでの距離を特定することができる。この距離情報は、例えば、駐車支援、距離警告装置、距離制御システム等のような運転者支援システムにおいて使用可能である。車輪近傍の制御装置SG1,SG2,SG3,SG4は、周囲センサUFS1,UFS2,UFS3,UFS4のセンサ信号を、車両1内に分配するために第3のセンサデータとしてデータバスDBを介して中央ネットワークZNWに供給する。冗長的なエネルギ供給のために、車輪近傍の制御装置SG1,SG2,SG3,SG4は、それぞれ車両1の詳細には図示されていない第1のエネルギ供給部EV1と、第1のエネルギ供給部からは独立している、車両1の詳細には図示されていない第2のエネルギ供給部EV2とに電気的に接続されている。
【0034】
追加的又は代替的に、少なくとも1つのさらなる制御装置として、車両1の電気駆動部のインバータを駆動する駆動部制御装置、及び/又は、移動軌道を計算する中央制御装置を、それぞれ直接的な線路接続を介して車輪近傍の制御装置SG1,SG2,SG3,SG4に電気的に接続することができ、この駆動部制御装置及び/又は中央制御装置は、回転数情報WSO1,WSO2,WSO3,WSO4をリアルタイムで受信及び評価することができる。
【0035】
一次制御装置PSGの好ましい設置場所は、車両1の左側前方の縁部領域に位置しているので、本発明に係るセンサ装置10の図示されていない実施例における一次制御装置PSGは、第1の車輪近傍の制御装置SG1として構成されており、第1の回転数センサWSS1に直接的に接続されている。本実施例においては、一次制御装置PSGは、第1の回転数情報WSO1を少なくとも1つの他の制御装置にポイントツーポイント接続を介してリアルタイムで供給する。さらに、一次制御装置PSGは、第1の回転数センサWSS1の第1の回転数情報WSO1及び追加的な回転数情報を、車両1内に分配するためにデータバスDBを介して中央ネットワークZNWに供給する。二次制御装置SSGの好ましい設置場所は、車両1の右側前方の縁部領域に位置しているので、図示されていない本実施例における二次制御装置SSGは、第2の車輪近傍の制御装置SG2として構成されており、第2の回転数センサWSS2に直接的に接続されている。従って、二次制御装置SSGは、第2の回転数情報WSO2を少なくとも一次制御装置PSGと、必要に応じて少なくとも1つのさらなる制御装置とにポイントツーポイント接続を介してリアルタイムで供給する。さらに、二次制御装置SSGは、第2の回転数センサWSS2の第2の回転数情報WSO2及び追加的な回転数情報を、車両1内に分配するためにデータバスDBを介して中央ネットワークZNWに供給する。
【0036】
車輪R1,R2,R3,R4の回転数及び/又は回転速度に依存した少なくとも1つの物理量を検出する、車両1のための本発明に係るセンサ装置10の上述した実施例は、好ましくは、特に、高度に自動化された又は自律的な車両1のための多回路ブレーキシステムにおいて使用される。このような多回路ブレーキシステムは、それぞれ車輪R1,R2,R3,R4に配置された複数の車輪ブレーキと、車両1の第1の制動機能を実施するために個々の車輪R1,R2,R3,R4の特定された回転数情報WSO1,WSO2,WSO3,WSO4を評価する一次制御装置PSGと、車両1の第2の制動機能を実施するために個々の車輪R1,R2,R3,R4の特定された回転数情報WSO1,WSO2,WSO3,WSO4を評価する二次制御装置SSGと、を含む。
【0037】
この場合、一次制御装置PSGは、ESPシステム、又は、真空に依存しない電気液圧式ブレーキブースタを有するESPシステム、又は、統合型ブレーキシステム(IPB)を駆動することができる。二次制御装置SSGは、真空に依存しない電気液圧式ブレーキブースタ、又は、冗長的なブレーキユニットを駆動することができる。
図1
図2