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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-18
(45)【発行日】2023-08-28
(54)【発明の名称】リチウム抽出方法
(51)【国際特許分類】
   C22B 26/12 20060101AFI20230821BHJP
   C01D 15/08 20060101ALI20230821BHJP
   C01B 25/30 20060101ALI20230821BHJP
   C22B 3/10 20060101ALI20230821BHJP
   C22B 3/06 20060101ALI20230821BHJP
【FI】
C22B26/12
C01D15/08
C01B25/30 M
C22B3/10
C22B3/06
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2022543737
(86)(22)【出願日】2020-01-29
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-27
(86)【国際出願番号】 KR2020001372
(87)【国際公開番号】W WO2021153816
(87)【国際公開日】2021-08-05
【審査請求日】2022-07-19
(73)【特許権者】
【識別番号】522015113
【氏名又は名称】チョン ウン
【氏名又は名称原語表記】CHON,Uong
(74)【代理人】
【識別番号】110000590
【氏名又は名称】弁理士法人 小野国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チョン ウン
【審査官】岡田 隆介
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第2018-0069736(KR,A)
【文献】特表2018-522709(JP,A)
【文献】特許第5632169(JP,B2)
【文献】韓国公開特許第10-2018-0074073(KR,A)
【文献】韓国公開特許第10-2019-0035210(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22B 26/12
C01D 15/08
C01B 25/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
不純物を含むリン酸リチウムを準備する段階と;
前記リン酸リチウム及び不純物を酸(acid)性水溶液に溶解させる段階と;
前記リン酸リチウム及び不純物が酸性水溶液に溶解された溶解液に添加剤を投入し、リチウム含有溶液を収得する段階と;を含み、
前記添加剤は、リン酸陰イオン及び不純物を同時に析出させる物質であり、前記添加剤によって収得されたリチウム含有溶液は塩基性であり、前記不純物がアルカリ土類金属を含むものであるリチウム抽出方法。
【請求項2】
前記アルカリ土類金属は、ベリリウム(Be)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、ラジウム(Ra)又はこれらの組み合わせである、請求項に記載のリチウム抽出方法。
【請求項3】
前記リン酸リチウム及び不純物が酸性水溶液に溶解された溶解液内のリチウム濃度は、10g/L乃至35g/Lである、請求項1に記載のリチウム抽出方法。
【請求項4】
前記リン酸リチウム及び不純物を酸性水溶液に溶解させる段階において、
酸は、塩酸、次亜塩素酸、硝酸、酢酸又はこれらの組み合わせである、請求項1に記載のリチウム抽出方法。
【請求項5】
前記リン酸リチウム及び不純物が酸性水溶液に溶解された溶解液のpHは-0.1乃至4.5である、請求項1に記載のリチウム抽出方法。
【請求項6】
前記添加剤は、酸化物(oxide)又は水酸化物(hydoxide)である、請求項1に記載のリチウム抽出方法。
【請求項7】
前記添加剤は、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、ラジウム又はこれらの組み合わせの陽イオンの酸化物又は水酸化物である、請求項に記載のリチウム抽出方法。
【請求項8】
前記リン酸リチウム及び不純物が酸性水溶液に溶解された溶解液に添加剤を投入し、リチウム含有溶液を収得する段階において、
収得されたリチウム含有溶液のpHは9以上である、請求項1に記載のリチウム抽出方法。
【請求項9】
前記リン酸リチウム及び不純物が酸性水溶液に溶解された溶解液に添加剤を投入し、リチウム含有溶液を収得する段階において、
収得されたリチウム含有溶液のpHは11以上である、請求項1に記載のリチウム抽出方法。
【請求項10】
前記収得されたリチウム含有溶液に炭酸供給物質を投入し、炭酸リチウムを収得する、請求項1に記載のリチウム抽出方法。
【請求項11】
前記炭酸供給物質は、炭酸ナトリウム(NaCO)、炭酸カリウム(KCO)、炭酸アンモニウム((NHCO)、重炭酸ナトリウム(NaHCO)、重炭酸カリウム(KHCO)又はこれらの組み合わせである、請求項10に記載のリチウム抽出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウム抽出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、リチウム二次電池は、携帯電話、ノートパソコンなどのIT機器の電源としても多様に活用されているだけでなく、電気自動車の動力源としても注目されており、近い未来には、電気自動車及び新再生エネルギーの電気貯蔵システム(Electricity Storage System)が大きく活性化され、その需要が急増すると予想されている。
【0003】
電気自動車及び電気貯蔵システムの重要部品である正極材、負極材、電解質の原料としてのリチウムは、主に炭酸リチウム(LiCO)の形態で使用される。よって、需要が大きく増加すると予想される電気自動車及び電気貯蔵システムを安価で製造し、市場に円滑に供給するためには、炭酸リチウムを経済的に製造できる技術の開発が必要である。
【0004】
炭酸リチウムは、一般に、リチウムを0.2g/L乃至1.5g/L程度含有している天然の塩水(Brine)を自然に蒸発させ、リチウムを60g/L程度の高濃度に濃縮させた後で炭酸塩を投入し、炭酸リチウム(LiCO)の形態で析出させることによって生産される。しかし、炭酸リチウムの高い溶解度(13g/L)により、リチウムを60g/L程度に濃縮させるためには1年以上の長時間にわたって塩水を蒸発及び濃縮させなければならなく、蒸発及び濃縮過程で多量のリチウムが析出されて損失する。
【0005】
このような問題を改善するために、自然蒸発工程を最小化できるリン酸リチウム(LiPO)抽出法が開発された(大韓民国登録特許10-1363342)。リン酸リチウム抽出法を活用してリチウムをリン酸リチウムの形態で抽出するとき、リン酸リチウムの低い溶解度(0.39g/L)特性により、長期間にわたる塩水の蒸発及び濃縮過程を除いたり大きく短縮できるだけでなく、蒸発・濃縮過程で発生するリチウムの損失を抑制し、高い回収率でリチウムを抽出することができる。しかし、上述したように、リン酸リチウムは、リチウム二次電池の原料として使用するために炭酸リチウムに変換しなければならない。
【0006】
近年、高温(90℃以上)のリン酸リチウム-水懸濁液(slurry)にCa(OH)を混合することによってリチウム濃度5g/L以下の低濃度の水酸化リチウム溶液を作り、これを蒸発・濃縮することによってリチウム濃度30g/L以上の高濃度の水酸化リチウム溶液を作った後、二酸化炭素(CO)ガスを投入し、炭酸リチウムを製造する技術が開発された。
【0007】
しかし、このような方法でリン酸リチウムを炭酸リチウムに変換させるとき、リン酸リチウム懸濁液を高温に加熱した後で長時間にわたって反応させなければならなく、低濃度の水酸化リチウム溶液を蒸発・濃縮させなければならないので、エネルギー費用が増加するという問題がある(大韓民国登録特許10-1405486)。
【0008】
また、リン酸リチウムを酸に溶解させ、リチウム濃度が0.05g/L乃至0.16g/Lであるリチウム溶液を製造した後、イオン交換樹脂を用いて2価イオンアルカリ土類金属及びリンを除去し、バイポーラー電気透析を用いて得られた、リチウム濃度が3.5g/L乃至4.5g/Lである水酸化リチウム水溶液を二酸化炭素ガスと反応させることによって炭酸リチウムを製造する方法が開発された。
【0009】
しかし、この方法で炭酸リチウムを製造するとき、リチウム溶液のリチウム濃度が過度に低いので、リチウム回収率が低く、高価な大型電気分解設備が必要であるだけでなく、多量の電気を使用することによって製造費用が大きく増加するという問題がある(大韓民国登録特許10-1888181)。
【0010】
一方、リン酸リチウム-金属化合物(鉄、銅、鉛、亜鉛、マンガン、カルシウム、セリウム、イットリウム、又はランタン化合物のうち一つ)混合懸濁液に酸を投入して溶解させた後、水酸化アルカリを投入し、pHを1乃至10に調節することによって金属及びリンが除去された高濃度のリチウム溶液を製造し、これに炭酸塩を添加することによって炭酸リチウムを製造する方法が開発された。しかし、このような方法を用いると、リン酸リチウムと金属化合物の全てを溶解させるために酸の使用量が増加する。また、リン酸リチウムが溶解された酸性溶液中に存在する金属イオンが析出されるように誘導するためにアルカリを投入するとき、反応溶液のpHを1~10に限定することによって重金属イオンが完全に除去されない場合があり、リン酸リチウム-金属化合物混合物を溶解させた後、アルカリの投入によってpHを調節することによって、工程が複雑になり、原料・副原料の使用量が増加し、経済性が低下するという問題がある(日本登録特許JP5632169B2及びJP5528153B2)。
【0011】
上述したように、現在まで開発されたリン酸リチウムを用いた炭酸リチウムの製造方法を用いるとき、低いリチウム回収率、高いエネルギー費用と設備投資費、過多の原料・副原料費用及び工程の複雑性などで経済性が低下するという問題がある。よって、リン酸リチウムを用いて炭酸リチウムを経済的に生産できる技術の開発が切実に要求される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
そこで、本発明では、高いリチウム回収率を有するリチウムの抽出方法を提供する。
【0013】
また、前記方法は、エネルギー使用量、原料・副原料費用及び設備投資費用が少ないだけでなく、工程が単純であり、リン酸リチウムからリチウム化合物を経済的に生産することができる。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の一具現例では、不純物を含むリン酸リチウムを準備する段階;前記リン酸リチウム及び不純物を酸(acid)に溶解させる段階と;前記リン酸リチウム及び不純物が酸に溶解された溶解液に添加剤を投入し、リチウム含有溶液を収得する段階と;を含み、前記添加剤は、リン酸陰イオン及び不純物を同時に析出させる物質であり、前記添加剤によって収得されたリチウム含有溶液は塩基性であるリチウム抽出方法を提供する。
【0015】
前記不純物は、アルカリ土類金属を含むことができる。
【0016】
前記アルカリ土類金属は、ベリリウム(Be)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、ラジウム(Ra)又はこれらの組み合わせであってもよい。
【0017】
前記リン酸リチウム及び不純物が酸に溶解された溶解液内のリチウム濃度は、10g/L乃至35g/Lであってもよい。
【0018】
前記リン酸リチウム及び不純物を酸(acid)に溶解させる段階において、酸は、塩酸、次亜塩素酸、硝酸、酢酸又はこれらの組み合わせであってもよい。
【0019】
前記リン酸リチウム及び不純物が酸に溶解された溶解液のpHは、-0.1乃至4.5であってもよい。
【0020】
前記添加剤は、酸化物(oxide)又は水酸化物(hydoxide)であってもよい。
【0021】
前記添加剤は、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、ラジウム又はこれらの組み合わせの陽イオンの酸化物又は水酸化物であってもよい。
【0022】
より具体的に、前記添加剤は、水酸化カルシウム(Ca(OH))、水酸化マグネシウム(Mg(OH))、又はこれらの組み合わせであってもよい。
【0023】
これにより、リン酸陰イオン及び不純物が難溶性沈殿物の形態で析出され得る。
【0024】
前記難溶性沈殿物は、ヒドロキシルアパタイト(Hydroxylapatite、Ca(POOH)、ブルシャイト(Brushite、CaHPO・2HO)、非晶質カルシウム-リン化合物、水酸化カルシウム、ニューベリーアイト(Newberyite、MgHPO・3HO)、マグネシウムフォスフェート(Magnesium phosphate、Mg(PO)非晶質マグネシウム-リン化合物及び水酸化マグネシウム又はこれらの混合物であってもよい。
【0025】
前記リン酸リチウム及び不純物が酸に溶解された溶解液に添加剤を投入し、リチウム含有溶液を収得する段階において、収得されたリチウム含有溶液のpHは9以上であってもよい。
【0026】
前記リン酸リチウム及び不純物が酸に溶解された溶解液に添加剤を投入し、リチウム含有溶液を収得する段階において、収得されたリチウム含有溶液のpHは11以上であってもよい。
【0027】
前記収得されたリチウム含有溶液に炭酸供給物質を投入し、炭酸リチウムを収得することができる。
【0028】
前記炭酸供給物質は、炭酸ナトリウム(NaCO)、炭酸カリウム(KCO)、炭酸アンモニウム((NHCO)、重炭酸ナトリウム(NaHCO)、重炭酸カリウム(KHCO)又はこれらの組み合わせであってもよい。
【0029】
前記収得された炭酸リチウムを洗浄及び乾燥する段階をさらに含むことができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明の一具現例では、不純物(より具体的には、アルカリ土類金属)が含まれたリン酸リチウムからリチウムを抽出する方法を提供し、高いリチウム回収率と低い原料・副原料、エネルギー及び設備費用でリチウム化合物(例えば、炭酸リチウム)を経済的に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1図1及び表1は、リチウム濃度10g/Lの高濃度のリチウム溶液を製造するために、マグネシウム含有リン酸リチウム10gと、酸性度が異なる各塩酸水溶液0.1Lとをそれぞれ常温で混合して60分間撹拌した後、ろ過して得られた反応ろ液のpH及びリチウム濃度を示す。表2は、マグネシウムが含有されたリン酸リチウム10gを常温の塩酸水溶液0.1Lに投入することによってpH4.33のマグネシウム含有リン酸リチウム溶解液を製造し、水酸化カルシウムをそれぞれ2.3g乃至23.8g投入した後、2時間にわたって撹拌及びろ過して得られた反応ろ液の化学成分の含量及びpHを示す。
図2図2は、マグネシウムが含有されたリン酸リチウム10gを常温の塩酸水溶液0.1Lに投入することによってpH4.33のマグネシウム含有リン酸リチウム溶解液を製造し、水酸化カルシウムをそれぞれ2.3g乃至23.8g投入した後、2時間にわたって撹拌、ろ過、洗浄及び乾燥して得られた析出物のX線回折パターンを示す。
図3図3は、マグネシウム及びリンが除去された常温のリン酸リチウム溶解液0.1LにNaCOを6.478g投入した後、2時間にわたって撹拌、ろ過、洗浄及び乾燥して得られた析出物のX線回折パターンを示す。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、添付の本発明の多くの実施例に対して、本発明の属する技術分野で通常の知識を有する者が容易に実施できるように詳細に説明する。本発明は、様々な異なる形態で具現可能であり、ここで説明する各実施例に限定されない。
【0033】
本発明を明確に説明するために、説明と関係のない部分は省略し、明細書全体にわたって同一又は類似する構成要素に対しては同一の参照符号を付する。
【0034】
また、明細書全体において、一つの部分が一つの構成要素を「含む」としたとき、これは、特に反対の記載がない限り、他の構成要素を除外するのではなく、他の構成要素をさらに含み得ることを意味する。
【0035】
本発明の一具現例では、不純物を含むリン酸リチウムを準備する段階と;前記リン酸リチウム及び不純物を酸(acid)に溶解させる段階と;前記リン酸リチウム及び不純物が酸に溶解された溶解液に添加剤を投入し、リチウム含有溶液を収得する段階と;を含み、前記添加剤は、リン酸陰イオン及び不純物を同時に析出させる物質であり、前記添加剤によって収得されたリチウム含有溶液は塩基性であるリチウム抽出方法を提供する。
【0036】
本発明の一具現例は、前記酸性溶液の一例である塩酸水溶液を用いて不純物(例えば、アルカリ土類金属)が含まれたリン酸リチウムを常温で溶解することによって高濃度のリン酸リチウム溶解液を獲得し;前記添加剤の一例である水酸化カルシウムを常温で投入することによって不純物及びリンを除去する方法を例に挙げて具体的に説明する。
【0037】
これ以降の段階において、収得されたリチウム含有溶液に炭酸塩の一例である炭酸ナトリウムを常温で投入することによって炭酸リチウムを獲得し;これを水道水で洗浄し、高温(例えば、105℃)で乾燥することによって炭酸リチウムを経済的に製造する方法を説明する。
【0038】
前記本発明の一具現例に係る塩酸水溶液による不純物(アルカリ土類金属の一種であるマグネシウム)含有リン酸リチウムの溶解は、下記の反応式1によって進められ得る。
【0039】
[反応式1]
(Mg,Li)PO+2HCl+3HO→Li+Mg2++HPO +2Cl+3H
【0040】
すなわち、前記マグネシウム含有リン酸リチウムは、常温で塩酸に溶解され、Li、Mg2+、HPO 、Clが含有されたリン酸リチウム溶解液に変換される。
【0041】
前記リン酸リチウムを溶解させるための酸の具体的な例は、塩酸、次亜塩素酸、硝酸、酢酸又はこれらの組み合わせであってもよい。硫酸は、カルシウムなどのアルカリ土類金属と反応して沈澱を生成させ、酸性スラッジを発生させることができ、リン酸に含有されたリンは、最終的に除去されなければならない物質であるので、除去費用を減少させるために使用しないことが好ましい。ただ、多様な不純物の組み合わせによって硫酸の一部が選択的に使用されてもよい。
【0042】
前記炭酸リチウムの溶解度は、13g/Lであり、リチウム濃度に換算すると2.5g/Lである。よって、リン酸リチウム溶解液から炭酸リチウムを析出させて製造するとき、75%以上の高いリチウム回収率を得るために、リン酸リチウム溶解液のリチウム濃度は10g/L以上でなければならない。
【0043】
したがって、本発明では、リン酸リチウム溶解液のリチウム濃度を10g/L以上に限定する。一方、リン酸リチウム溶解液のリチウム濃度が30g/Lであると、リチウム回収率が91.7%であるのでさらに好ましい。
【0044】
下記の実施例に示したように、リチウム濃度10g/L以上のリン酸リチウム溶解液を得るために、リン酸リチウムと酸水溶液を混合して得られた反応溶液のpHが4.5以下でなければならない。これに対しては、後述する実施例でより詳細に説明する。
【0045】
本発明の一具現例に係るアルカリ土類金属及びリンの除去は、下記の反応式2又は反応式3によって進められ得る。
【0046】
[反応式2]
Li+Mg2++HPO +2Cl+3HO+Ca(OH)→Li+H+2Cl+Mg(OH) CaHPO・2HO+H
【0047】
[反応式3]
3Li+3Mg2++3HPO +6Cl+9HO+5Ca(OH)→3Li+Cl+2OH+3Mg(OH)+Ca(PO・OH+10HO+5HCl(g)
【0048】
前記アルカリ土類金属及びリンを除去するための添加剤は、常温でリンと反応して難溶性化合物を生成させると同時に、アルカリ土類金属と難溶性化合物を生成する水酸化イオン(OH)を発生させる物質であってもよい。これにより、リンと不純物であるアルカリ土類金属を同時に析出させることができる。
【0049】
より具体的に、前記添加剤は、アルカリ土類金属酸化物又は水酸化物であってもよい。
【0050】
具体的な例として、前記添加剤の陽イオンは、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、バリウム、ラジウム又はこれらの組み合わせであってもよく、添加剤は、これらの酸化物や水酸化物であってもよい。
【0051】
例えば、前記添加剤は、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、又はこれらの組み合わせであってもよく、他の例として、酸化カルシウムや酸化マグネシウムであることも可能である。
【0052】
例えば、炭酸カルシウム(CaCO)や炭酸マグネシウム(MgCO)を加熱し、酸化カルシウムや酸化マグネシウムを得ることができる。これから得られた酸化カルシウムや酸化マグネシウムに水を添加する場合、水酸化カルシウム及び水酸化マグネシウムを得ることができる。
【0053】
前記不純物(例えば、アルカリ土類金属)が含まれたリン酸リチウム溶解液から不純物(例えば、アルカリ土類金属)及びリンを除去するために、添加剤の一例である水酸化カルシウムが常温で投入されてもよい。
【0054】
前記具体的な例において、マグネシウムは、難溶性水酸化マグネシウムの形態で析出されてもよく、リンは、難溶性ヒドロキシルアパタイト(Hydroxylapatite、Ca(PO・OH)又はブルシャイト(Brushite、CaHPO・2HO)の形態で析出されてもよい。これらは、ろ過されてリン酸リチウム溶解液から除去されてもよい。
【0055】
前記添加剤の投入量は、前記リン酸リチウム溶解液に存在するリンを完全に除去するために、リン含量に対して1当量以上であってもよい。前記範囲を満足する場合、リンを完全に除去できるだけでなく、反応速度の側面でも有利になり得る。
【0056】
前記添加剤の投入量は、前記リン酸リチウム溶解液に存在するアルカリ土類金属及びリンが析出され、完全に除去され得るようにリン酸リチウム溶解液のpHを9以上又は好ましくは11以上に維持できる投入量であってもよい。
【0057】
本発明の一具現例に係る炭酸リチウムの製造は、下記の反応式4によって進められ得る。
【0058】
本発明の一具現例に係る前記アルカリ土類金属及びリンが除去された常温のリチウム含有溶液から炭酸リチウムを析出させるために、炭酸供給物質の一例である炭酸ナトリウムが投入されてもよい。
【0059】
[反応式4]
6Li+2Cl+4OH+20HO+3NaCO→3LiCO+6Na+2Cl+4OH+20H
【0060】
すなわち、前記炭酸ナトリウムは、常温でリチウムと反応して炭酸リチウムを生成及び析出させる。また、アルカリ土類金属及びリンが除去されたリチウム含有溶液を1当量以上投入すると、75%以上の高い回収率で炭酸リチウムを得ることができる。
【0061】
前記炭酸塩の具体的な例は、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸アンモニウムなどである。
【0062】
より具体的に、前記炭酸塩は、重炭酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、重炭酸カリウム、重炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム又はこれらの組み合わせであってもよい。
【0063】
前記炭酸リチウムの投入量は、前記リチウム含有溶液のリチウム含量に対して1当量以上であってもよい。前記範囲を満足する場合、反応速度の側面で有利になり得る。
【0064】
本明細書において、常温は、一定の温度を意味するのではなく、外部的なエネルギーの付加がない状態の温度を意味する。よって、常温は、場所及び時間によって変化し得る。
【0065】
以下、具体的な実施例を挙げて本発明を説明する。ただし、本発明の特許請求の範囲が下記の実施例に限定されるのではない。
【0066】
[実施例1]
リチウム濃度が10g/Lである高濃度のリチウム溶液を製造するために、マグネシウム含有リン酸リチウム10gと、酸性度が異なる塩酸水溶液0.1Lとをそれぞれ常温で混合した後で60分間撹拌した。
【0067】
撹拌が完了した後、各反応溶液をろ過し、pH及びリチウム濃度を測定した結果を図1及び表1に示した。
【0068】
図1に示したように、反応溶液のpHが減少することによってリン酸リチウムが溶解され、リチウム濃度が徐々に増加した。反応ろ液pHが4.5以下に到逹すると、リチウム濃度が約10g/Lを示し、反応ろ液のpHを4.5以下に減少させた場合にも、これ以上リチウム濃度が増加しないことが分かった。
【0069】
これにより、反応ろ液pH4.5以下では、投入された全てのリン酸リチウムが溶解されることが分かる。一方、反応ろ液のpHが-1.0以下と過度に低いときにも、リン酸リチウムを全て溶解させることはできるが、塩酸の使用量が過度に増加するという問題がある。
【0070】
【表1】
【0071】
[実施例2]
マグネシウムが含有されたリン酸リチウム10gを常温の塩酸水溶液0.1Lに投入し、1時間にわたって撹拌することによってpH4.33のマグネシウム含有リン酸リチウム溶解液を製造した。
【0072】
前記リン酸リチウム溶解液に水酸化カルシウムをそれぞれ2.3g乃至23.8g投入し、2時間にわたって撹拌した後で析出物をろ過した。
【0073】
下記の表2に示したように、反応ろ液のpHが11以上である場合、リンとマグネシウムが完全に除去されることが分かる。水酸化カルシウムを多量投入し、反応溶液のpHを14以上に増加させた場合にも、リンとマグネシウムを完全に除去できるが、原料・副原料の費用が増加し、未反応析出物の間に層間水が存在することからリチウム回収率を減少させるので、好ましくは、アルカリ土類金属酸化物又は水酸化物を投入したリン酸リチウム溶解液のpHを11乃至14以下に制御することができる。
【0074】
一方、反応溶液からろ過された析出物は、水道水で洗浄された後、105℃で24時間乾燥した。反応溶液pH11.35を示した析出物の鉱物相を、X線回折分析機を用いて分析した結果を図2に示した。
【0075】
図2に示したように、マグネシウムは、難溶性水酸化マグネシウムの形態で析出され、リンは、ほとんどが難溶性ヒドロキシルアパタイトの形態で、一部がリン酸リチウムの形態で析出され、マグネシウム含有リン酸リチウム溶解液から完全に除去された。
【0076】
【表2】
【0077】
[実施例3]
マグネシウム及びリンが除去された常温のリチウム含有溶液1LにNaCOを64.78g投入した後、2時間にわたって撹拌して反応させ、析出物をろ過した。
【0078】
反応溶液からろ過された析出物は、水道水で洗浄された後、105℃で24時間乾燥し、X線回折分析機を用いて鉱物相の分析が進められた。分析結果は、図3に示した。図3に示したように、析出物は、炭酸リチウム単一相として観察されることから、炭酸リチウムがうまく合成されたことが分かる。
【0079】
本発明は、前記各実施例に限定されるものではなく、互いに異なる多様な形態で製造可能であり、本発明の属する技術分野で通常の知識を有する者は、本発明の技術的思想や必須な特徴を変更せずとも、他の具体的な形態で実施され得ることを理解できるだろう。そのため、以上で記述した各実施例は、全ての面で例示的なものであり、限定的なものではないことを理解しなければならない。

図1
図2
図3