(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-21
(45)【発行日】2023-08-29
(54)【発明の名称】抗酸化用組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 36/73 20060101AFI20230822BHJP
A61K 36/185 20060101ALI20230822BHJP
A61K 36/736 20060101ALI20230822BHJP
A61K 36/734 20060101ALI20230822BHJP
A61K 36/28 20060101ALI20230822BHJP
A61K 31/353 20060101ALI20230822BHJP
A61P 39/06 20060101ALI20230822BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230822BHJP
A23L 33/105 20160101ALN20230822BHJP
A61K 131/00 20060101ALN20230822BHJP
A61K 133/00 20060101ALN20230822BHJP
【FI】
A61K36/73
A61K36/185
A61K36/736
A61K36/734
A61K36/28
A61K31/353
A61P39/06
A61P43/00 121
A23L33/105
A61K131:00
A61K133:00
(21)【出願番号】P 2019152663
(22)【出願日】2019-08-23
【審査請求日】2022-03-24
(73)【特許権者】
【識別番号】593106918
【氏名又は名称】株式会社ファンケル
(74)【代理人】
【識別番号】100162396
【氏名又は名称】山田 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100122954
【氏名又は名称】長谷部 善太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100194803
【氏名又は名称】中村 理弘
(74)【代理人】
【識別番号】100202430
【氏名又は名称】太田 千香子
(72)【発明者】
【氏名】今井 理恵
(72)【発明者】
【氏名】高橋 香織
【審査官】柴原 直司
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-225286(JP,A)
【文献】りんごポリフェノール, [online], (2014.12.05), わかさの秘密, [2023.03.16検索], インターネット, <https://himitsu.wakasa.jp/contents/apple-polyphenol/>
【文献】セイヨウサンザシ果実エキス〈植物エキス〉, [online], (2018), luamo-ルアモ公式ブランドサイト, [2023.03.16検索], インターネット, <https://www.luamo.jp/成分について/セイヨウサンンザシ果実エキス-植物エキス/>
【文献】カモミールティーの効果・効能とは?おすすめのアレンジ法で香りも味も楽しもう, [online], (2018.08.10), FELICE(フェリーチェ), [2023.03.16検索], インターネット, <https://felice-kaori.com/article/21792>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 36/00-36/9068
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
次のA成分及びB成分を有効成分として含有する抗酸化用組成物。
A成分:
果肉、果皮及び種から、水及び/又はアルコールにより抽出したリンゴエキス
B成分:
それぞれ、水及び/又はアルコールにより抽出した、ザクロ花エキス、サクラ花エキス、西洋サンザシエキス、カミツレ花エキス、白桃花エキスから選択される1以上。
【請求項2】
A成分乾燥質量1質量部に対して、B成分として選択されるいずれかの成分を乾燥質量で1~30質量部含有する請求項1に記載の抗酸化用組成物。
【請求項3】
A成分がポリフェノールを含有するものである請求項1または2に記載の抗酸化用組成物。
【請求項4】
A成分の乾燥質量あたりのポリフェノール含有量が、50質量%以上である請求項3に記載の抗酸化用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗酸化作用を発揮する組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
食品の添加物や健康食品に配合されるリンゴ抽出物(リンゴエキス)は、ポリフェノールを高含有しており、コラーゲン産生を促進し(特許文献1)、血行促進(特許文献2)、中性脂肪代謝促進(特許文献3)など多くの生理作用を有している。
また強い抗酸化作用を発揮し、生体内に蓄積したフリーラジカルなどスーパーオキサイドを低下させ、老化を抑制することが知られている(特許文献4)。近年、リンゴエキスが示す抗酸化効果や生理作用が注目されている。
【0003】
また、化学合成化合物ではなく、天然由来の組成物や、リンゴエキスなど天然抽出物が示す抗酸化効果が注目されている。そして多数の天然由来の化合物、抽出物や組成物が抗酸化効果を示すことが知られている。
特許文献5には、このような天然由来の抗酸化物や抽出物として、多数の物質が例示されている。例えば、ビタミンA 、ビタミンC 、ビタミンE 、ユビキノン、無機質セレン、マンガン、メラトニン、α - カロチン、β - カロチン、リコピン、ルテイン、ゼアンチン( z e a n t h i n ) 、クリプトキサンチン、レセルバトール、オイゲノール、ケルセチン、カテキン、ゴシポール、ヘスペレチン、クルクミン、フェルラ酸、チモール、ヒドロキシチロソル、ウコン、タイム、オリーブ油、リポ酸、グルタチオン、グルタミン、シュウ酸、トコフェロール、ペクチン、トコトリエノール、コエンザイムQ 1 0 、ゼアキサンチン、アスタキサンチン、カンタキサンチン、サポニン類、リモノイド類、ケンペロール、ミリセチン、イソラムネチン、プロアントシアニジン類、ルチン、ルテオリン、アピゲニン、タンゲリチン、ナリンゲニン、エリオジクチオール、フラバン- 3 - オール類( 例えば、アントシアニジン類) 、ガロカテキン類、エピカテキン及びそのガレート形態、エピガロカテキン及びそのガレート形態( E C G C ) 、テアフラビン及びそのガレート形態、テアルビンギン類、イソフラボン フィトエストロゲン類、ゲニステイン、ダイドゼイン、グリシテイン、アントシアニン類、シアニジン、デルフィニジン、マルビディン、ペラルゴニジン、ペオニジン、ペツニジン、エラグ酸、没食子酸、サリチル酸、ロスマリン酸、桂皮酸及びその誘導体( 例えば、フェルラ酸) 、クロロゲン酸、チコリ酸、ガロタンニン類、エラジタンニン類、アントキサンチン類、ベータシアニン類及び他の植物顔料、シリマリン、クエン酸、リグナン、栄養分吸収阻止剤、ビリルビン、尿酸、R - α - リポ酸、N - アセチルシステイン、エンブリカニン、リンゴ抽出物、リンゴの皮抽出物( アップルフェノン) 、ルイボス抽出物レッド、ルイボス抽出物グリーン、ホーソンベリー抽出物、レッドラズベリー抽出物、グリーンコーヒー酸化防止剤( G C A ) 、アロニア抽出物2 0 % 、ブドウの種子抽出物( V i n O s e e d ) 、ココア抽出物、ホップ抽出物、マンゴスチン抽出物、マンゴスチンの殻の抽出物、クランベリー抽出物、ザクロの抽出物、ザクロの皮の抽出物、ザクロの種子の抽出物、ホーソンベリー抽出物、ポメラザクロ抽出物、桂皮抽出物、ブドウの皮の抽出物、ビルベリー抽出物、松皮抽出物、ピクノゲノール、エルダーベリー抽出物、桑根抽出物、クコ( g o g i ) 抽出物、ブラックベリー抽出物、ブルーベリー抽出物、ブルーベリーの葉の抽出物、ラズベリー抽出物、ウコン抽出物、柑橘系バイオフラボノイド類、クロスグリ、ショウガ、アカイ粉末、グリーンコーヒー豆抽出物、緑茶抽出物、バラ抽出物、及びフィチン酸が記載されている。
【0004】
これらの抗酸化性を示す物質を併用した場合の抗酸化効果は、個々の物質が示す抗酸化効果の単なる相加作用に留まると考えられた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2012-62278号公報
【文献】特開2006-265220号公報
【文献】特開2006-151944号公報
【文献】特開平10-75740号公報
【文献】特表2009-523407号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の通り、相加的な抗酸化効果しか発揮しないと考えられていたが、これらの天然抗酸化物質や植物抽出エキスを用いて、本発明者らが相互の組み合わせ配合について予備試験を行ったところ、リンゴエキスと特定の天然抽出物の組み合わせにのみ、強い相乗的な抗酸化効果を発揮することを見出し、さらに研究を進めた結果、本発明を完成した。
【0007】
すなわち本発明の課題は、リンゴエキスと特定の天然抽出物を含有する抗酸化用組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の主な構成は、以下のとおりである。
(1)次のA成分及びB成分を有効成分として含有する抗酸化用組成物。
A成分:リンゴエキス
B成分:ザクロ花エキス、サクラ花エキス、西洋サンザシエキス、カミツレ花エキス、 白桃花エキスから選択される1以上。
(2)A成分乾燥質量1質量部に対して、B成分として選択されるいずれかの成分を乾燥質量で1~30質量部含有する(1)に記載の抗酸化用組成物。
(3)A成分がポリフェノールを含有するものである(1)または(2)に記載の抗酸化用組成物。
(4)A成分の乾燥質量あたりのポリフェノール含有量が、50質量%以上である(3)に記載の抗酸化用組成物。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、新規な抗酸化用組成物が提供される。
本発明の組成物は、リンゴエキスの持つ抗酸化効果と、特定の花エキスなどの抗酸化効果が相乗的に作用するため、少ない量でもスーパーオキサイドなどの生体酸化物質を抑制できる。
このため、スーパーオキサイドによって発生する老化や疾患の発生を予防することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】リンゴエキス1μg/mLにザクロ花エキスを併用したときの抗酸化効果を示すグラフである。
【
図2】リンゴエキス2μg/mLにザクロ花エキスを併用したときの抗酸化効果を示すグラフである。
【
図3】リンゴエキス1μg/mLにサクラ花エキスを併用したときの抗酸化効果を示すグラフである。
【
図4】リンゴエキス1μg/mLに西洋サンザシエキスを併用したときの抗酸化効果を示すグラフである。
【
図5】リンゴエキス1μg/mLにカミツレ花エキスを併用したときの抗酸化効果を示すグラフである。
【
図6】リンゴエキス1μg/mLに白桃花エキスを併用したときの抗酸化効果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、A成分:リンゴエキス、B成分:ザクロ花エキス、サクラ花エキス、西洋サンザシエキス、カミツレ花エキス及び白桃花エキスから選択される1以上、を有効成分として含有する抗酸化用組成物の発明である。
本発明の組成物は、経口投与あるいは摂取のための医薬品、健康食品、飲料、食品、さらには食品添加物として使用可能である。
【0012】
次に本発明の組成物の含有成分について説明する。
A成分:
リンゴエキス原料の、リンゴ(Malus pumila)の品種は、例えば、ふじ、国光、王林、紅玉、ジョナゴールド、デリシャス、さんさ、千秋などが挙げられ、特に制限されない。リンゴの抽出部位は、特に制限されず、例えば、果実、葉、幹、花などが挙げられ、好ましくは、果実である。前記果実は、例えば、未熟果(幼果)でも良く、完熟果でも良く、特に制限されない。抽出に用いる前記果実の部位は、特に制限されず、例えば、全果、果肉、果皮、種などが挙げられる。リンゴ抽出物は、これらの部位を、単独で、または2種以上組み合わせて抽出しても良い。
【0013】
リンゴエキスを抽出する方法は、特に制限されず、従来公知の方法を採用できる。抽出方法の具体例としては、例えば、以下のようであっても良い。
まず、リンゴの全果を、水洗後、グラインダーなどにより粉砕する。この粉砕物を、ペクチナーゼ処理に供し、遠心分離後、抽出溶媒により分配ろ過して、リンゴエキスを調製しても良い。前記ペクチナーゼ処理としては、特に制限されないが、例えば、20~60℃の温度条件下で、ペクチナーゼを10~50ppm添加して行っても良い。抽出溶媒としては、特に制限されないが、例えば、水、アルコール、ヘキサン、クロロホルムなどの有機溶媒が挙げられる。抽出溶媒を除去してリンゴエキスを得る。
【0014】
リンゴエキスは、市販のリンゴエキスを用いても良く、リンゴ果実から抽出して調製しても良く、特に制限されない。
本発明の組成物に含まれるリンゴエキスの含有量は、特に制限されないが、リンゴエキスとしては、リンゴ由来のポリフェノールを50質量%以上含むリンゴエキスが好ましい。
【0015】
リンゴエキスは、ポリフェノールを高濃度に含有するものであっても良い。ポリフェノールを濃縮するための分画方法は、特に制限されず、従来公知の方法を採用できる。ポリフェノールは、例えば、リンゴ抽出物をカラムに通液後、カラムの吸着物を溶出し、この溶出画分を減圧留去濃縮して分画しても良い。また、さらに、この濃縮液に粉末助剤を添加し、凍結乾燥または噴霧乾燥して調製された、ポリフェノール高濃度含有粉末であっても良い。
リンゴ抽出物由来のポリフェノール高濃度含有物を本発明のリンゴエキスとして用いる場合は、例えば、市販のリンゴ由来のポリフェノールとして販売されているものが使用可能である。このような市販品としては、例えばユニテックフーズ株式会社が販売する「リンゴポリフェノールアップリン AFPOMM 9051」、或いは「APPL’IN-POLYPHENOLIC APPLE EXTRACT POWDER」を例示できる。
【0016】
B成分:
ザクロ花エキスはザクロ( Punica granatum)の花の抽出物である。本発明において、ザクロの品種は、特に制限されない。
ザクロ花エキスを抽出する方法は、特に制限されず、従来公知の方法を採用できる。抽出方法の具体例としては、以下のような方法を採用することができる。まず、採取したザクロの花を、水洗後、グラインダーなどにより粉砕する。この粉砕物を、抽出原料とする。抽出溶媒としては、特に制限されないが、例えば、水やアルコール、ヘキサン、クロロホルムなどの有機溶媒が挙げられる。そして抽出溶媒を除去してザクロ花エキスを得る。
【0017】
ザクロ花エキスは、例えば、市販のザクロ花エキスを用いても良い。このような花エキスとしては、「ザクロ花エキス末:香栄興業株式会社製」を例示できる。
本発明の組成物にあっては、リンゴエキス乾燥質量1質量部に対して、ザクロ花エキスを乾燥質量で1~30質量部、好ましくは2~18質量部、特に好ましくは、2~10質量部配合する。
【0018】
サクラ花エキスは、バラ科モモ亜科スモモ属(サクラ属)(Prunus, Cerasus, Japanese cherry, Sakura)の花の抽出物である。本発明において、サクラの品種は、特に制限されない。
サクラ花エキスを抽出する方法は、特に制限されず、従来公知の方法を採用できる。抽出方法の具体例としては、以下のような方法を用いることができる。まず、採取したサクラの花を、水洗後、グラインダーなどにより粉砕する。この粉砕物を、抽出原料とする。抽出溶媒としては、特に制限されないが、例えば、水やアルコール、ヘキサン、クロロホルムなどの有機溶媒が挙げられる。そして抽出溶媒を除去してサクラ花エキスを得る。
【0019】
サクラ花エキスは、例えば、市販のサクラ花エキスを用いても良い。このような花エキスとしては、「桜の花エキス―P:オリザ油化株式会社製」を例示できる。
本発明の組成物にあっては、リンゴエキス乾燥質量1質量部に対して、サクラ花エキスを乾燥質量で1~30質量部、好ましくは2~18質量部、特に好ましくは、4~10質量部配合する。
【0020】
西洋サンザシエキスは、サンザシ属のアカバナサンザシ(Crataegus laevigata)、もしくはヒトシベサンザシ(C.monogyna)、別名ホーソン(英語:Hawthorn)の抽出物である。本発明において、植物の全草から抽出したエキスを用いる。
西洋サンザシエキスを抽出する方法は、特に制限されず、従来公知の方法を採用できる。抽出方法の具体例としては、以下のように行うことができる。まず、採取した西洋サンザシの全草を、水洗後、グラインダーなどにより粉砕する。この粉砕物を、抽出原料とする。抽出溶媒としては、特に制限されないが、例えば、水やアルコール、ヘキサン、クロロホルムなどの有機溶媒が挙げられる。そして抽出溶媒を除去して西洋サンザシエキスを得る。
【0021】
西洋サンザシエキスは、例えば、市販の西洋サンザシエキスを用いても良い。このようなエキスとしては、「西洋サンザシ乾燥エキスGMP133:アスク薬品株式会社製」を例示できる。
本発明の組成物にあっては、リンゴエキス乾燥質量1質量部に対して西洋サンザシエキスを乾燥質量で1~30質量部、好ましくは2~18質量部、特に好ましくは、2~4質量部配合する。
【0022】
カミツレ花エキスは、別名カモミールとも呼ばれる学名:Matricaria recutitaの抽出物である。本発明において、カミツレの花から抽出したエキスを用いる。
カミツレ花エキスを抽出する方法は、特に制限されず、従来公知の方法を採用できる。抽出方法の具体例としては、以下のように行うことができる。まず、採取したカミツレの花を、水洗後、グラインダーなどにより粉砕する。この粉砕物を、抽出原料とする。抽出溶媒としては、特に制限されないが、例えば、水やアルコール、ヘキサン、クロロホルムなどの有機溶媒が挙げられる。そして抽出溶媒を除去してカミツレ花エキスを得る。
【0023】
カミツレ花エキスは、例えば、市販のカミツレ花エキスを用いても良い。このようなエキスとしては、カミツレ花部を熱水抽出した「カミツレエキスパウダーH:日本粉末薬品株式会社製」、あるいはカミツレ花部を含水エタノール抽出した「カミツレ乾燥エキスGMP742:アスク薬品株式会社製」を例示できる。
本発明の組成物にあっては、リンゴエキス乾燥質量1質量部に対して、カミツレ花エキスを乾燥質量で1~30質量部、好ましくは2~20質量部、特に好ましくは、5~20質量部配合する。
【0024】
白桃花エキスは、白桃(Prunus persica Batsch)の花の抽出物である。
白桃花キスを抽出する方法は、特に制限されず、従来公知の方法を採用できる。抽出方法の具体例としては、以下のように行えば良い。まず、採取した白桃の花を、水洗後、グラインダーなどにより粉砕する。この粉砕物を、抽出原料とする。抽出溶媒としては、特に制限されないが、例えば、水やアルコール、ヘキサン、クロロホルムなどの有機溶媒が挙げられる。そして抽出溶媒を除去して白桃花エキスを得る。
【0025】
白桃花エキスは、例えば、市販の白桃花エキスを用いても良い。このようなエキスとしては、「白桃花エキスパウダーN:日本粉末薬品株式会社製」を例示できる。
本発明の組成物にあっては、リンゴエキス乾燥質量1質量部に対して、白桃花エキスを乾燥質量で1~30質量部、好ましくは2~18質量部、特に好ましくは、4~10質量部配合する。
【0026】
本発明の組成物を、医薬品又はサプリメント剤、ドリンク又はゼリーなどの飲食品に配合して摂取する場合には、一日当たり1mg~10g、好ましくは1mg~5g、特に好ましくは、1mg~3gを経口的に摂取することで、生体内の抗酸化効果を発揮することが期待できる。
【0027】
飲食品とする場合、その形態は制限されない。また、飲食品とする場合、本発明の組成物に配合するその他添加剤成分については、特に制限されない。
【実施例】
【0028】
<抗酸化効果測定>
ORAC法によって本発明の組成物の生体内抗酸化効果を確認する。ORACは、1992年、米国立老化研究所(National Institute on Aging)によって開発された評価手法である。
ORACは、蛍光物質であるFluoresceinを蛍光プローブとして使用し、ラジカル発生剤である2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩(AAPH)の存在下、これにより分解されるFluoresceinの蛍光強度を経時的に測定し、その変化を指標として抗酸化力を測定する方法である。この反応系に抗酸化物質が共存するとFluoresceinの蛍光強度の減少速度が遅延するため、標準物質存在下のFluoresceinの減少速度の遅延度合いと比較して、標準物質に換算した試料の抗酸化力を算出することができる。したがってこのORAC試験で高い値を示す場合、酸化に対する安定性が高いということができる。
なお、ORACは食品の生体内の抗酸化能を評価する指標として有用であるといわれている。
【0029】
1.抗酸化効果測定方法
ORACの測定原理は、上記したように蛍光物質であるFluoresceinを蛍光プローブとして使用し、ラジカル発生剤であるAAPHにより分解されるFluoresceinの蛍光強度を経時的に測定し、その変化を指標として抗酸化力を測定する方法である。具体的には、抗酸化物質非存在下の蛍光強度(RFU)を測定して蛍光強度の変化曲線(Blank)を作成し、ついでTrolox標準液または試料存在下の蛍光強度変化曲線(Antioxidant)を作成し、それぞれの曲線のAUCを計算する。Trolox標準液または試料存在下のAUC値から抗酸化物質非存在下のAUC値を減じたAUCをNet AUCとする。Trolox標準液の測定から作成した検量線を元に、試料のNet AUCからTroloxに換算した時の値、Trolox当量(TE)を算出し、この値をもって抗酸化能を評価した。
【0030】
2.試験試料
測定対象とした組成物は、予め行ったスクリーニングで抗酸化効果が相乗効果ありと判断した表1に記載の、市販の抽出物製品から調製した。
【0031】
【0032】
なお、表1に示したリンゴエキス中の乾燥質量あたりのポリフェノール含有量は80質量%であった。
試験に使用した試薬物質の内、Trolox((±)-6-ヒドロキシ-2,5,7,8-テトラメチルクロマン-2-カルボン酸)、フルオレセイン(Fluorescein)はSIGMA-ALDRICH社から、AAPHは東京化成工業株式会社から、メチル-β-シクロデキストリンは純正化学株式会社から購入した。また、リン酸水素二カリウム、リン酸二水素カリウム、ジメチルスルホキシド(DMSO)、エタノール、アセトンは富士フィルム和光純薬株式会社より購入した。
実験機器はマイクロプレートリーダー(INFINITE 200 PRO、TECANジャパン株式会社)、96 well プレート(3881-096、IWAKI)プレートシール(FG-BC100PCR、日本ジェネティクス株式会社)を使用した。
【0033】
3.測定方法
(1)試験試料の調製
上記の表1の試料を、それぞれ100mg/mLになるようDMSOに溶解し、-20℃で保存した。次いで、この溶液10μLにリン酸Buffer990μLを加えて溶解させ、1mg/mL(1%DMSO)の溶液を調製した。さらに、この溶液を1%DMSO リン酸Buffer溶液で希釈し、測定用試験試料として次の濃度の溶液を調製した。
A成分:リンゴエキス1μg/mL及び2μg/mL
B成分:
ザクロ花エキス8μg/mL、
サクラ花エキス8μg/mL、
西洋サンザシエキス2μg/mL及び4μg/mL、
カミツレ花エキスはカミツレ花エキス(E)8μg/mL
カミツレ花エキス(W)18μg/mL
白桃花エキス8μg/mL
なお上記濃度は、いずれも試料の乾燥質量ベースの濃度である。
【0034】
(2)試薬調製
1)Trolox 標準液
50 mM Trolox 5μL、DMSO 45μL、リン酸Buffer 450μLを加えて溶解し、Trolox500μMの溶液を調製した。この500μM Trolox 160μLに1%DMSO リン酸Buffer溶液 340μLを加えて希釈し、Trolox 160μMの溶液を調製した。以下、1%DMSO リン酸Buffer溶液で2倍希釈系列(0,6.25,12.5,25,50μM、1%DMSOリン酸Buffer溶液)を調製し、検量線作成のための標準液とした。
2)フルオレセイン
フルオレセイン39.8mgにリン酸Buffer 100mLを加え、1.2mM の溶液を調製した。ついでこの1.2mMフルオレセイン10 μLに、リン酸Buffer 2mLを加えて6.0μM stock solutionを調製した。
3)110.7nMフルオレセイン溶液
6.0μMフルオレセインstock solution 470μLにリン酸Buffer 25mLで希釈溶解しで調製した。
・31.7mM AAPH溶液(用時調製)
AAPH 129 mg にリン酸Buffer 15mLを加えて溶解させた。
【0035】
(3)測定操作手順
1) 96wellプレート用意し、上記で調製した試験試料を含む、次の組成の測定 溶液を分注した。
Trolox標準液:35μL
A成分の測定溶液:上記A成分の試験試料であるリンゴエキス溶液17.5μLと1% DMSO/リン酸Buffer溶液17.5μLの混合溶液
B成分の測定溶液:上記B成分の試験試料であるザクロの花エキス、桜の花エキス、西 洋サンザシエキス、カミツレエキス、白桃花エキス溶液のいずれかを 17.5μLと1%DMSO/リン酸Buffer溶液17.5μL の混合溶液
A成分+B成分の測定溶液:上記A成分の試験試料であるリンゴエキス溶液17.5μ Lと、上記B成分の試験試料であるザクロの花エキス、桜の 花エキス、西洋サンザシエキス、カミツレエキス、白桃花エ キス溶液のいずれかを17.5μLの混合溶液
2)110.7nMフルオレセイン溶液115μL添加し、プレートシールを貼った。
3)マイクロプレートリーダーに96wellプレートを入れ、Ex 485nm、E m 538nmで蛍光強度を測定後、37℃で10分間インキュベートした。
4)再度マイクロプレートリーダーでEx 485nm、 Em 538nmを測定、 96wellプレートを取り出した。
5) 31.7mM AAPH溶液50μLを加え、再びプレートシールを貼り、マイ クロプレートリーダーに入れる。2分間毎に90分間測定した。測定条件は以下の 通り。
プレート設定:温度:37℃、
波長:Ex 485nm/Em 538nm、
撹拌:10 sec、
Cycle:45 times、
Interval:2 min、
Gain:Manual 100%
【0036】
4.抗酸化効果の測定及び評価結果
抗酸化効果であるTrolox当量の測定結果及び相乗効果を
図1~
図6及び下記の表2~表3に示した。なお
図1~
図6に示すグラフ中の表示は表2~表3に括弧で示す略称で記載した。
相乗効果判定では、(実測値/理論値)×100%の計算値が120%以上の場合を「有」とし、A成分とB成分の併用による相乗効果ありと判断した。なお、理論値とは、A成分単独のTrolox当量測定結果とB成分単独のTrolox当量測定結果の合計値で、相加効果を示す場合での値をいう。
すなわち、実測値=A成分にB成分を混合した溶液の測定値
理論値=A成分単独の測定値+B成分単独の測定値
である。
【0037】
【0038】
【0039】
以上の通り、A成分:リンゴエキスにB成分のザクロ花エキス、サクラ花エキス、西洋サンザシエキス、カミツレ花エキス、白桃花エキスのいずれかを併用すると、抗酸化効果が相乗的に向上することが判明した。