(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-21
(45)【発行日】2023-08-29
(54)【発明の名称】包装袋
(51)【国際特許分類】
B65D 81/26 20060101AFI20230822BHJP
B65D 33/01 20060101ALI20230822BHJP
B65D 85/50 20060101ALI20230822BHJP
【FI】
B65D81/26 A
B65D33/01
B65D85/50 120
(21)【出願番号】P 2020139863
(22)【出願日】2020-08-21
【審査請求日】2021-04-22
【審判番号】
【審判請求日】2022-03-28
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390000387
【氏名又は名称】福助工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106024
【氏名又は名称】稗苗 秀三
(74)【代理人】
【識別番号】100167841
【氏名又は名称】小羽根 孝康
(74)【代理人】
【識別番号】100168376
【氏名又は名称】藤原 清隆
(72)【発明者】
【氏名】太田 智之
(72)【発明者】
【氏名】山内 克之
【合議体】
【審判長】山崎 勝司
【審判官】武市 匡紘
【審判官】藤原 直欣
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-129748(JP,A)
【文献】特開2001-63774(JP,A)
【文献】国際公開第2018/016443(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 67/00-79/02
B65D 81/18-81/30
B65D 81/38
B65D 85/88
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向する前面及び後面を有する袋本体と、前記袋本体の上部に形成された開口部とを備えた包装袋であって、前記後面は、紙基材に樹脂層を積層した積層基材からなり、前記前面は、下側部分が前記積層基材からなり、上側部分が
フィルム全体にわたって多数の通気孔を有する樹脂フィルムからなり、
前記袋本体の左右両端縁部に、前記前面と前記積層基材とがシールされたシール部が形成され、前記シール部に存在する前記通気孔が前記袋本体を左右方向に引裂くための引裂開始部として利用可能とされ、前記
前面の樹脂フィルムの上端部が前記後面の上端よりも上方に突出
して蓋部が形成され、前記蓋部を前記後面側に折り返して前記開口部を閉じた状態で、前記蓋部に形成された通気孔が開封用ミシン目として利用可能とされた包装袋。
【請求項2】
前記シール部において、前記前面にシールされる前記積層基材は、前記後面を構成する積層基材または前記後面とは別体のガゼット部形成用の積層基材である請求項1に記載の包装袋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水蒸気が発生する被包装物、特に、焼きいも、焼きとうもろこし、総菜などの加熱調理物を収納するのに適した包装袋に関する。
【背景技術】
【0002】
焼きいも、焼きとうもろこし、総菜等の加熱調理物を収納する包装袋として紙製包装袋が知られている。紙製包装袋は、軽量でありながら熱を伝えにくく、袋を介して加熱調理物に触れても手が熱くなりにくい。さらに、紙製包装袋は、通気性を有するため、被包装物から発生する水蒸気は袋を通過して外部に放出される。したがって、袋内部で結露が発生しにくく、結露水によって被包装物がふやけることがないという利点を有する。
【0003】
一方、紙製包装袋は、通気性を有するため、袋内での結露が生じにくいものの、被包装物が水分を多く含む場合、紙基材が水分を含んで破れやすくなったり、揚げ物を袋内に収納すると油が紙表面に染み出して周囲を汚すといった問題があった。
【0004】
上記問題を解決するため、特許文献1に示すように、通気性を有する紙基材層と、該基材層に積層される樹脂層とを有する積層体によって構成される包装材であって、前記樹脂層に通気性を有する微細孔を多数設け、微細孔により樹脂層を透過する水蒸気の量を調整可能としたものが知られている。また、特許文献2に示すように、合成樹脂製の包装袋であって、袋の下部に微小な透孔を複数形成したものも知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2007-69525号公報
【文献】実用新案登録第3219464号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1記載の包装材では、樹脂層と紙基材とが積層されている。すなわち、微細孔が紙基材で被覆されているため、微細孔を通過する水蒸気量は紙基材によって制限される。したがって、多量の水蒸気が発生する加熱調理物を包装材に収納した場合には袋内での結露の発生を抑止することが困難であった。
【0007】
また、特許文献2記載の包装袋では、袋が合成樹脂製であるため、袋を介して加熱調理物を持ったとき、手が熱くなり持ちにくくなるといった問題があった。さらに、特許文献2記載の包装袋は合成樹脂製であることから、植物の生育時のCO2吸収と燃焼時のCO2排出を同一にするカーボンニュートラルの観点から見た場合、紙基材を用いた包装袋に比べてCO2排出量の方が多くなり、環境負荷が大きくなるという問題もあった。
【0008】
そこで、本発明においては、包装袋の主要材料として環境負荷の少ない紙基材を用いながらも水濡れに強く、加熱調理物でも手に持ちやすく、袋内部での結露を抑制可能な包装袋を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の一態様としての包装袋は、対向する前面及び後面を有する袋本体と、前記袋本体の上部に形成された開口部とを備え、前記後面は、紙基材に樹脂層を積層した積層基材からなり、前記前面は、下側部分が前記積層基材からなり、上側部分が多数の通気孔を有する樹脂フィルムからなる構成とする。
【0010】
前記前面及び後面のうちいずれか一方の面の上端部が他方の面の上端よりも上方に突出する蓋部を形成してもよい。
【0011】
前記前面の樹脂フィルムに蓋部が形成され、前記多数の通気孔のうちの一部は前記蓋部の左右方向全域にわたって形成され、前記蓋部を前記他方の面側に折り返して前記開口部を閉じた状態で、前記蓋部に形成された通気孔を開封用ミシン目として利用可能としてもよい。
【0012】
前記多数の通気孔のうちの一部は前記樹脂フィルムの左右両端縁部に形成され、前記袋本体の左右両端縁部に、前記前面と前記積層基材とがシールされたシール部が形成され、前記シール部に存在する前記通気孔が前記袋本体を左右方向に引裂くための引裂開始部として利用可能としてもよい。
【0013】
前記シール部において、前記前面にシールされる前記積層基材は、前記後面を構成する積層基材または前記後面シートとは別体のガゼット部形成用の積層基材であってもよい。
【発明の効果】
【0014】
上記態様によれば、前面及び後面を備えた袋本体を、紙基材に樹脂層を積層した積層基材によって構成するとともに、前面の上側部分を積層基材の代わりに多数の通気孔を有する樹脂フィルムを用いるようにしたため、水濡れに強く、被包装物から発生する水蒸気は通気孔を通じて包装袋の外部へ放出可能で結露を抑制することができる。さらに、環境負荷を少なくすることができ、加熱調理物でも手に持ちやすい包装袋を得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図2】
図1における熱溶着部を示す包装袋の正面模式図
【
図6】本実施形態の包装袋に被包装物を収納した状態を示す模式斜視図
【
図7】
図6の包装袋の開口部を閉じた状態を示す模式斜視図
【
図8】
図6の包装袋の蓋部を切断した状態を示す模式斜視図
【
図9】
図6の包装袋の左右両端縁部から袋本体を引裂いた状態を示す模式斜視図
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について図面を基に説明する。
図1は本実施形態における包装袋を示す正面図であり、
図2は
図1における熱溶着部を示す包装袋の正面模式図である。
図3は
図1におけるA-B拡大図であり、
図4は
図3のC-C断面図を、
図5は
図3のD-D断面図をそれぞれ示す。
【0017】
図1において、矢印Xは包装袋の左右方向を示しており、矢印Yは包装袋の上下方向を示す。包装袋の前後方向、左右方向Xおよび上下方向Yは、包装袋における各部の相対的位置関係を明らかにするためのものであり、使用時における方向や印刷面の前後とは必ずしも一致するわけではない。
【0018】
また、
図1中、樹脂フィルムの表面に描かれた微細なドットは
図3~
図5に示す通気孔を表しているが、通気孔の密度(個/cm
2)が高くて分かりにくいため、
図2及び
図6~
図9においては、実際の通気孔の密度(個/cm
2)を下げてわかりやすく模式的に描いている。
【0019】
図1~
図5に示すように、本実施形態の包装袋は、対向する前面1及び後面2を有する袋本体3と、袋本体3の上部に形成された開口部4とを備え、後面2は、紙基材5に樹脂層6を積層した積層基材7からなり、前面1は、下側部分が積層基材7からなり、上側部分が多数の通気孔8を有する樹脂フィルム9からなる。
【0020】
積層基材7は矩形とされ、樹脂層6を内側にして長さ方向に折り返すことで前面の下側部分と後面とが連続形成される。前面1を構成する積層基材7と、樹脂フィルム9とは、樹脂層6が樹脂フィルム9と接するようにして一部重合した状態で熱溶着され、シール部11が形成される(
図2参照)。なお、
図2において、薄墨部分がシール領域を示している。本実施形態では、前面1の積層基材7と、後面2とは1枚の積層基材7を折り返すことで連続形成されているが、前面1の積層基材7と、後面2とを2枚の積層基材7で構成し、前面1及び後面2の下端縁部を互いにシールしてもよい。
【0021】
袋本体3の左右両端縁部は、前面1と後面2とが互いに熱溶着されてシール部12が形成される(
図2参照)。これにより、袋本体3は、上部に開口部4を備えた袋状に形成される。本実施形態では、前面1、すなわち、樹脂フィルム9の上端部が後面2の上端よりも上方に突出するように形成されており、この突出部分が蓋部13とされる。
【0022】
積層基材7に用いられる紙基材5としては、クラフト紙のようなパルプ紙や和紙などの天然繊維製の基材のほか、これら天然繊維にポリエチレン等の合成樹脂を混抄した混抄紙や、合成樹脂製紙基材であってもよいが、環境負荷の観点から天然繊維製紙基材が好ましい。
【0023】
積層基材7の樹脂層6に用いられる樹脂は、防液性を有するものであればよく、熱溶着可能なものであることが好ましい。熱溶着可能な樹脂としては、ポリエチレン、エチレン-メタクリル酸共重合体(EMAA)、エチレン-アクリル酸エチル共重合体(EAA)、アイオノマー、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂が使用できる。積層基材7の成形方法としては、Tダイから樹脂を押出して紙基材に積層する公知の押出ラミネーション法等で成形可能である。
【0024】
前面1を構成する樹脂フィルム9としては透明であることが好ましく、これにより包装袋に収納された被包装物Fを視認することができる。また、積層基材7の樹脂層6として熱溶着可能な樹脂を用いる場合、樹脂フィルム9として樹脂層6との接着性が良好であることが好ましく、その観点から、樹脂層6及び樹脂フィルム9ともにポリオレフィン系樹脂を使用するのが好ましく、ポリエチレンまたはポリプロピレンを用いるのがより好ましい。
【0025】
樹脂フィルム9に形成される通気孔8としては、被包装物Fから発生する水蒸気を外部に放出可能であればその径や数については特に限定されないが、外部からの異物の侵入の抑制を考慮すれば、通気孔8の径としては0.1~1.0mmであるのが好ましく、0.1~0.5mmであるのがより好ましい。
【0026】
また、樹脂フィルム9の表面積に対する通気孔8の面積の割合が0.5~5.0%であることが好ましく、0.8~3.0%であることがより好ましい。これによって、樹脂フィルムの強度を維持しつつ通気性を発揮することができる。通気孔8は樹脂フィルム9全体に分散形成することが好ましく、ランダムに形成することができるほか、千鳥状や格子状のように規則的に配置することができる。
【0027】
図6は、上記構成の包装袋に被包装物Fとして焼きいもを収納した状態を示す模式斜視図であり、
図7は蓋部13によって包装袋の開口部4を閉じた状態を示す模式斜視図である。図示のごとく、蓋部13を後面2側に折り返し、シール14によって蓋部13を後面2に固定することにより開口部4を閉じることができる。
【0028】
本実施形態では通気孔8は樹脂フィルム9全体にわたって千鳥状に形成されている。
図3中の二点鎖線Lは、樹脂フィルム9を蓋部13として折り返したときの折返し位置を示す。図示のごとく、樹脂フィルム9の折返し位置には複数の通気孔8が左右方向Xの全域にわたって線上に配列される。
【0029】
したがって、蓋部13の折返し部の内側に指を入れて上方に引き上げることで折返し位置に配置された通気孔が開封用ミシン目として機能し、蓋部13を左右方向に容易にカットすることができる。これにより、
図8に示すように、シール14を剥がすことなく、包装袋を開けることが可能となる。なお、蓋部13の左右端縁部のうち少なくとも一方に、切欠部、切込部、溝部等の脆弱部を形成すれば、より容易に蓋部13をカットすることができる。
【0030】
袋本体3の左右両端縁部に形成されるシール部12、12のうち、前面1を構成する樹脂フィルム9と後面2が熱溶着されたシール部分で袋本体3を左右方向に引裂こうとする場合、樹脂フィルム9に通気孔8が形成されていない状態では、樹脂フィルム9と後面2とが熱溶着により一体化して強度が高くなり、これを引裂くのは容易ではない。また、たとえシール部12の一部が引裂けたとしても樹脂フィルム9部分が伸びることにより積層基材7とともに樹脂フィルム9をきれいに引裂くことは困難であった。
【0031】
一方、本実施形態の包装袋は、樹脂フィルム9に多数の通気孔8が形成されているため、シール部12においても通気孔8の形成された部分は、通気孔8が形成されていない部分に比べて強度が低くなる。したがって、シール部12に引裂き力がかかった場合には、シール部12に存在する通気孔8が一種の切り欠きや切込等の引裂開始部(脆弱部)として機能し、容易に袋本体3を左右方向Xに引裂くことができる。
【0032】
また、袋本体3を引裂く破断面が樹脂フィルム9に及んだときには、左右方向Xに配列した通気孔8がミシン目として機能することで樹脂フィルム9をきれいに引裂くことが可能となる。これにより、
図9に示すように、被包装物Fが適度に露出するように樹脂フィルム9部分の任意の位置で袋本体3を引裂くことが可能となる。なお、左右端縁部のシール部12のうち少なくとも一方に、切欠部、切込部、溝部等の脆弱部を形成すれば、より容易に袋本体3を引裂くことができる。
【0033】
本実施形態では、前面1と後面2からなる包装袋について説明したが、これに限らず袋本体3の右端縁部、左端縁部及び下端縁部の少なくとも1箇所にガゼット部が形成された構成とすることも可能である。ガゼット部は、前面1又は後面2のいずれか一方の面の一部をガゼット折りし、ガゼット折りした他端側を他方の面とシールすればよい。
【0034】
包装袋にガゼット部を形成する方法としては、上述のごとく、前面1又は後面2のいずれか一方の面の一部にガゼット折り部を形成するようにしてもよいし、後面2と同じ材質で後面2とは別体のガゼット部形成用の積層基材を用いることも可能である。ガゼット部形成用の積層基材を用いれば、前面1、後面2及びガゼット部形成用の積層基材のすべてを熱溶着によって製袋することが可能となる。
【0035】
本発明に係る包装袋は、袋本体3を引裂く場合、ガゼット部の有無にかかわらず、樹脂フィルム9と積層基材7とのシール部12を起点にして左右方向Xに容易に引き裂くことが可能となる。
【0036】
以上、本発明の実施形態につき説明したが、本発明の範囲はこれに限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えて実施することができる。本実施形態では、前面1の上端部が後面2の上端よりも上方に突出した蓋部13を備えた構成としているが、これに限らず、後面2の上端部を前面1の上端よりも上方に突出させて蓋部としてもよい。また、蓋部を設けずに、前面1及び後面2の高さを揃えるようにすることも可能である。
【0037】
本実施形態では、シール部11及び12は積層基材7と樹脂フィルム9、又は、積層基材7、7同士を熱溶着することでシールしているが、これに限らず、熱溶着に比べて生産性は低下するものの接着剤を使用してシールすることも可能である。また、本実施形態では、通気孔8は千鳥状に配置された構成を採用しているが、上下左右方向に通気孔8を揃えて格子状に配置することも可能である。なお、この場合、通気孔8が配置されている格子部分と配置されていない部分とで樹脂フィルムの強度が変わり、蓋部13の開封、あるいは、袋本体3の引裂きがより容易となる。
【0038】
なお、実施形態及び上記変形例に開示されている構成要件は互いに組合せ可能であり、組合せることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。
【符号の説明】
【0039】
1 前面
2 後面
3 袋本体
4 開口部
5 紙基材
6 樹脂層
7 積層基材
8 通気孔
9 樹脂フィルム
11、12 シール部
13 蓋部
14 シール