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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-21
(45)【発行日】2023-08-29
(54)【発明の名称】凍結茶葉組成物
(51)【国際特許分類】
   A23F 3/06 20060101AFI20230822BHJP
【FI】
A23F3/06 Z
A23F3/06 S
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022075391
(22)【出願日】2022-04-12
【審査請求日】2022-04-12
(73)【特許権者】
【識別番号】593153093
【氏名又は名称】小川 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100178261
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 正二郎
(72)【発明者】
【氏名】小川 洋
【審査官】関根 崇
(56)【参考文献】
【文献】中国実用新案第201064162(CN,Y)
【文献】特開2007-135534(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23F
A23G9/
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
凍結された茶葉と、
前記茶葉の外側にあり水を主成分とする凍結された添加物と、
を備える凍結茶葉組成物であって、
前記茶葉が占める面積が最大となる第一仮想平面で前記凍結茶葉組成物を切った断面において前記凍結茶葉組成物の面積に対する前記茶葉が占める面積の割合は、
前記第一仮想平面に直交し前記茶葉の重心を通る第二仮想平面で前記凍結茶葉組成物を切った断面において前記凍結茶葉組成物の面積に対する前記茶葉が占める面積の割合の2倍以上であり、
前記茶葉の外周を茶葉外周部とし、
前記添加物の外周を添加物外周部とし、
前記茶葉外周部と前記添加物外周部との中間を中間部としたときに、
前記茶葉外周部と前記中間部との間における前記添加物の比重は、
前記中間部と前記添加物外周部との間における前記添加物の比重より低い
凍結茶葉組成物。
【請求項2】
前記茶葉における第一の面と前記添加物との間には隙間がある、
請求項1に記載の凍結茶葉組成物。
【請求項3】
前記茶葉における、前記第一の面に直交する第二の面と前記添加物との間には隙間がある、
請求項2に記載の凍結茶葉組成物。
【請求項4】
前記茶葉外周部と前記中間部との間における前記添加物の比重は、前記中間部と前記添加物外周部との間における前記添加物の比重の50%以下である、
請求項1に記載の凍結茶葉組成物。
【請求項5】
前記茶葉がある空間は前記添加物により2つの小空間に仕切られている、
請求項1に記載の凍結茶葉組成物。
【請求項6】
前記空間を2つに仕切る前記添加物における仕切る方向での寸法は、前記小空間における前記方向での寸法より小さい、
請求項5に記載の凍結茶葉組成物。
【請求項7】
凍結された茶葉と、
前記茶葉の外側にあり水を主成分とする凍結された添加物と、を備え、
前記茶葉の外周を茶葉外周部とし、
前記添加物の外周を添加物外周部とし、
前記茶葉外周部と前記添加物外周部との中間を中間部としたときに、
前記茶葉外周部と前記中間部との間における前記添加物の比重は、
前記中間部と前記添加物外周部との間における前記添加物の比重より低い、
凍結茶葉組成物
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、凍結茶葉組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
古来より日本をはじめ世界の各地で茶を飲む文化があり、茶葉を入れた急須に湯を注ぐ、ティーバックに入った茶葉を湯呑に入れて水や湯を注ぐ、粉末にした茶葉を湯呑に入れ水や湯で溶かすなど、様々な方法で茶が作られている。
【0003】
また、食品・飲料の鮮度を高く保つ目的で、これらを冷凍した状態で流通させ、消費の段階で消費者が解凍して飲食することは茶に限らず飲食物一般で広く行われている。なお特許文献1には、香味と鮮度が保持された冷凍状態で販売・流通が可能な凍結茶葉や凍結茶葉組成物の生産方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2020-68767号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、こうした技術においては、凍結した茶葉に水などの添加物を加える生産工程において茶由来の抽出物が水などの添加物に溶出していたり、凍結した茶葉の多くが凍結茶葉組成物の外面に露出していたりして、消費者が飲食する前の段階で鮮度が落ちているおそれがあった。
【0006】
本開示の目的は、凍結茶葉組成物の生産工程において主として水などの添加物へ茶由来の抽出物が溶出することや、茶葉の多くが凍結茶葉組成物の外周面に露出することを防ぎ、消費者が飲食する直前まで茶葉の鮮度を高く保つことにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様に係る凍結茶葉組成物は、凍結された茶葉と、前記茶葉の外側にあり水を主成分とする凍結された添加物と、を備える凍結茶葉組成物であって、前記茶葉が占める面積が最大となる第一仮想平面で前記凍結茶葉組成物を切った断面において前記凍結茶葉組成物の面積に対する前記茶葉が占める面積の割合は、前記第一仮想平面に直交し前記茶葉の重心を通る第二仮想平面で前記凍結茶葉組成物を切った断面において前記凍結茶葉組成物の面積に対する前記茶葉が占める面積の割合の2倍以上であり、前記茶葉の外周を茶葉外周部とし、
前記添加物の外周を添加物外周部とし、前記茶葉外周部と前記添加物外周部との中間を中間部としたときに、前記茶葉外周部と前記中間部との間における前記添加物の比重は、前記中間部と前記添加物外周部との間における前記添加物の比重より低い
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、茶葉を凍結茶葉組成物の中心側に位置させるに際し、茶葉同士には粘性がないため、水が主成分であり凍結された添加物の上に茶葉を高く積み上げることはできないが、茶葉を添加物に対して広く載せれば、凍結茶葉組成物に対する相対的な茶葉の量を多くすることが可能になる。そのうえで、凍結茶葉組成物の生産工程において主として水などの添加物へ茶由来の抽出物が溶出することや茶葉の多くが凍結茶葉組成物の外周面に露出することを防ぎ、消費者が飲食する直前まで茶葉の鮮度を高く保つことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、凍結茶葉組成物の例を示す図である。
図2図2は、茶葉の例を示す図である。
図3図3は、凍結茶葉組成物を生産する工程の例を示す図である。
図4図4は、凍結茶葉組成物に対する茶葉の占める面積の割合を示すイメージ図である。
図5図5は、凍結茶葉組成物を生産する工程の例を示す図である。
図6図6は、凍結茶葉組成物を生産する工程の例を示す図である。
図7図7は、凍結茶葉組成物の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施形態を列記して説明する。
[1]本開示による凍結茶葉組成物は、凍結された茶葉と、前記茶葉の外側にあり水を主成分とする凍結された添加物と、を備え、前記茶葉が占める面積が最大となる第一仮想平面で前記凍結茶葉組成物を切った断面において前記凍結茶葉組成物の面積に対する前記茶葉が占める面積の割合は、前記第一仮想平面に直交し前記茶葉の重心を通る第二仮想平面で前記凍結茶葉組成物を切った断面において前記凍結茶葉組成物の面積に対する前記茶葉が占める面積の割合の2倍以上である。
【0011】
これにより、茶葉を凍結茶葉組成物の中心側に位置させるに際し、茶葉同士には粘性がないため、水が主成分であり凍結された添加物の上に茶葉を高く積み上げることはできないが、茶葉を添加物に対して広く載せれば、凍結茶葉組成物に対する相対的な茶葉の量を多くすることが可能になる。そのうえで、凍結茶葉組成物の生産工程において主として水などの添加物へ茶由来の抽出物が溶出することや茶葉の多くが凍結茶葉組成物の外周面に露出することを防ぎ、消費者が飲食する直前まで茶葉の鮮度を高く保つことができる。
【0012】
[2]本開示の一態様に係る凍結茶葉組成物は、前記茶葉における第一の面と前記添加物との間には隙間がある、とすることが好ましい。
【0013】
凍結茶葉組成物の生産工程の一態様においては、あらかじめ成形した氷を型枠に入れ、その上に凍結させておいた茶葉を載せ、その上にあらかじめ成形しておいた氷を載せて、圧縮する。このため、氷を圧縮した後にも茶葉と氷の間に圧縮方向の隙間ができるような形状に氷をあらかじめ成形しておくことで、茶葉が氷により押圧・圧縮されて茶由来の抽出物が生産工程において溶出してしまうことを防止できる。
【0014】
[3]本開示の一態様に係る凍結茶葉組成物は、前記茶葉における、前記第一の面と直交する第二の面と前記添加物との間には隙間がある、とすることが好ましい。
【0015】
凍結茶葉組成物の生産工程の一態様においては、あらかじめ成形した氷を型枠に入れ、その上に凍結させておいた茶葉を載せ、その上にあらかじめ成形しておいた氷を載せて、圧縮する。このため、氷を圧縮した後にも、茶葉と氷の間に圧縮方向だけでなく、その直交方向にも隙間ができるような形状に氷をあらかじめ成形しておくことで、茶葉が氷により押圧・圧縮されたり氷に触れたりして茶由来の抽出物が生産工程において溶出してしまうことをより効果的に防止できる。
【0016】
[4]本開示の一態様に係る凍結茶葉組成物は、前記茶葉の外周を茶葉外周部とし、前記添加物の外周を添加物外周部とし、前記茶葉外周部と前記添加物外周部との中間を中間部としたときに、前記茶葉外周部と前記中間部との間における前記添加物の比重は、前記中間部と前記添加物外周部との間における前記添加物の比重より低い、とすることが好ましい。
【0017】
凍結茶葉組成物の生産工程の一態様においては、紛氷を型枠に入れ、その上に凍結させておいた茶葉を載せ、さらにその上に紛氷をかぶせてから圧縮する。この圧縮力により、または凍結茶葉組成物の最外周にある紛氷を一時的に加温することにより、凍結茶葉組成物の最外周の紛氷だけを一瞬溶かし、その後に圧縮・加温をやめて冷却することで氷結させる。これにより、凍結茶葉組成物の最外周に比べて茶葉近くの添加物は比重が低い状態になり、茶葉近くの添加物である紛氷は圧縮されないので、茶由来の抽出物が生産工程で添加物に溶出してしまうことを防止できる。
【0018】
[5]本開示の一態様に係る凍結茶葉組成物は、前記茶葉外周部と前記中間部との間における前記添加物の比重が、前記中間部と前記添加物外周部との間における前記添加物の比重の50%以下である、とすることが好ましい。
【0019】
これにより、生産工程で茶由来の抽出物が添加物に溶出してしまうことをより効果的に防止できる。
【0020】
[6]本開示の一態様に係る凍結茶葉組成物は、前記茶葉がある空間が前記添加物により2つの小空間に仕切られている、とすることが好ましい。
【0021】
凍結茶葉組成物の生産工程の一態様においては、あらかじめ成形した氷または紛氷を型枠に入れ、その上に凍結させておいた茶葉を載せ、その上に紛氷を被せ、圧縮または加温した後、その圧縮または加温された面を冷却して茶葉の全周を添加物で覆う。このようにして生産された凍結茶葉組成物を2つ用意し、それぞれの凍結茶葉組成物を載せた型枠を左右に並べ、互いの型枠を90度回転させ、先に圧縮または加温された面同士を合わせた後、さらに圧縮または加温することで、1つの凍結茶葉組成物を簡便に得ることができる。
【0022】
[7]本開示の一態様に係る凍結茶葉組成物は、前記空間を2つに仕切る前記添加物における仕切る方向での寸法が、前記小空間における前記方向での寸法より小さい、とすることが好ましい。
【0023】
仕切る方向とは、茶葉が載置される全体の空間が一の小空間と他の小空間とに隔てられる方向であり、例えば茶葉が載置される小空間が凍結茶葉組成物においてそれぞれ上と下とにある場合、仕切る方向とは上下方向である。この仕切る方向での空間を仕切る添加物の寸法を、小空間における仕切る方向での寸法より小さく抑えることで、凍結茶葉組成物に対する相対的な茶葉の量を多くすることができる。
【0024】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の凍結茶葉組成物の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。各図面では、説明の便宜上、構成の一部を誇張または簡略化して示す場合がある。また、各部分の寸法比率については各図面で異なる場合がある。なお本開示はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。本明細書における「平行」や「直交」は厳密に平行や直交の場合のみではなく、本実施形態における作用効果を奏する範囲内で概ね平行や直交の場合も含まれる。以下の説明において、上および下とは図3および図5における上および下を、右および左とは図3および図5における右および左を言うものとする。
【0025】
(凍結茶葉組成物1の全体構成)
凍結茶葉組成物1は、図1に示されるように、茶葉11と、その外側に位置する添加物60と、を備える。凍結茶葉組成物1の外形の形状は、立方体・直方体・円柱・錐・球など、消費者の嗜好に合わせたり、抽出時間を変えるために表面積/体積の比率をコントロールしたりして、任意の形状を選択することができる。ここで、茶葉11同士には粘性がないため高く積み上げることはできないが、茶葉11を添加物60に対して広く載せれば、凍結茶葉組成物1に対する相対的な茶葉11の量を多くすることが可能になる。図4に示すように、茶葉11が占める面積が最大となる第一仮想平面で凍結茶葉組成物1を切ったH-H断面において凍結茶葉組成物1の面積に対する茶葉11が占める面積の割合は、第一仮想平面に直交し茶葉11の重心を通る第二仮想平面で凍結茶葉組成物1を切ったV-V断面において凍結茶葉組成物1の面積に対する茶葉11が占める面積の割合の2倍以上である。
【0026】
(茶葉11)
茶葉11は、摘み取った生茶葉に対して加熱、揉み込み、裁断を適宜行なった後に凍結させたもので、葉だけでなく茎の部分も含んだ集合体である。葉の大きさや厚さ、茎の長さや太さは、葉や茎のもともとの大きさや裁断された位置などによりさまざまである。なお図5において、集合体である茶葉11における外周のうちの上面が第一の面12、右の面または左の面が第二の面13となっており、第一の面12およびこれに直交する第二の面13と添加物60である第二の氷40との間には隙間が形成されている。
【0027】
(茶葉由来の抽出物15)
茶葉由来の抽出物15には、カテキン、カフェイン、ビタミン、ミネラル、アミノ酸や、色素の元でもある葉緑素(クロロフィル)などが含まれている。
【0028】
(氷20)
氷20には、図2図3図5および図6に示すように第一の氷30、第二の氷40および第三の氷50がある。氷20には成形された氷と粉末状の氷である紛氷とがある。
【0029】
(第一の氷30)
第一の氷30は、図3図5および図6に示すように、後述の型枠70のうちの下型71に載置される。図3における第一の氷30は紛氷である。図5における第一の氷30は、その側面である右の面と左の面および下の面が、下型71の内面の側面である右の面と左の面および下の面に沿うように形成されている。図5および図6における第一の氷30の上面には茶葉11を載置できるような第一氷凹部31が形成されている。
【0030】
(第一氷凹部31)
第一氷凹部31には、その底面であり茶葉11が載置されたときに茶葉11の下面と対向する第一氷凹底面32と、第一氷凹底面32から立ち上がる第一氷凹側面33と、第一氷凹側面33の上側の端部から第一の氷30の側面につながる第一氷天面34が形成されている。第一氷天面34は、図5においては後述の第二の氷40が茶葉11の上に載置された際、第一氷天面34と第二氷下面44が面接触するように形成されている。第一氷天面34はまた、図6においては別の第一の氷30と合わせられた際、その別の第一氷天面34が面接触するように形成されている。
【0031】
(第二の氷40)
第二の氷40は、図3図5および図6に示すように、第一の氷30の上に茶葉が載置された後、茶葉11の上に載置される。その後、図3および図5の態様では後述の型枠70のうちの上型72によって上から圧縮される。図3および図6における第二の氷40は紛氷である。図5における第二の氷40は、その側面である右の面と左の面が下型71の内面の側面である右の面と左の面に、その上面が上型72の下の面に沿うように形成されている。図5における第二の氷40の下面には茶葉11を覆うことができるような第二氷凹部41が形成されている。
【0032】
(第二氷凹部41)
第二氷凹部41には、その上面であり茶葉11の上に第二の氷40が載置されたときに茶葉11の上面と対向する第二氷凹上面42と、第二氷凹上面42から下に降りる第二氷凹側面43と、第二氷凹側面43の下側の端部から第二の氷40の側面につながる第一氷下面44が形成されている。第二氷下面44は、第二の氷40が茶葉11の上に載置された際、第一氷天面34と面接触するように形成されている。なお第二の氷40は、第一の氷30と同形状でも良い。この場合、第一の氷30を上下反転して第二の氷40として用いる。
【0033】
(第三の氷50)
第三の氷50は、図2に示すように、茶葉11の外周に結着される。または、茶葉11が載置される前に第一の氷30の上に第三の氷50が載置される。さらに茶葉11の上に第三の氷50が載置されても良い。茶葉11が第一の氷30の上に載置された際、茶葉の自重の圧力により第一の氷30の表面が溶けて添加物60の主成分である水分がわずかながら溶け出ることがあるが、その溶け出た水分で茶葉11が部分的にでも解凍されてしまうことをこの第三の氷50が防止する。また茶葉11の上に第二の氷40が載置された際の自重の圧力により、さらに第二の氷40の上から上型72で圧縮される圧力により、または第一の氷30同士が合わせられる圧力により、第一の氷30と第二の氷40または第一の氷30同士の表面が溶けて添加物60の主成分である水分がわずかながら溶け出ることがあるが、その溶け出た水分で茶葉11が部分的にでも解凍されてしまうことをこの第三の氷50が防止する。
【0034】
(添加物60)
添加物60は、主として水を凍結させたものである。水としては飲用に適するあらゆる水が用いられ、水道水およびミネラルウオーターや、湧き水も用いることができる。この添加物60は、茶葉11の外側にあり、より好適には茶葉11の全周が添加物60により覆われている。本開示により、凍結された茶葉11から茶葉由来の抽出物15が溶出するのを防止して鮮度を高く保つことができるが、添加物60に初めから茶葉由来の抽出物15を添加しておくことや、逆に茶葉由来の抽出物15を添加物60に初めから含ませないようにしておくことを、消費者の嗜好に合わせて選択することができる。
【0035】
(型枠70)
型枠70は、図6に示すように下型71を備え、図3および図5においてはさらに上型72を備える。
【0036】
(生産方法)
図3および図5で示される態様においては、下型71に第一の氷30、茶葉11(態様によっては第三の氷50がその表面に結着した茶葉11)、第二の氷40が入れられ、その上から上型72で圧縮されて凍結茶葉組成物1とされる。
【0037】
別の態様では、上型72で圧縮される直前に氷温水が第二の氷40の上から注入された後に上型72で圧縮される。
【0038】
図6で示される態様においては、2つの下型71のそれぞれに第一の氷30、茶葉11(態様によっては第三の氷50がその表面に結着した茶葉11)、第二の氷40である紛氷が入れられ、その上から第2の氷40である紛氷が加温または図示しない上型72で圧縮され一時的に紛氷が溶けた後、冷却され氷結して凍結茶葉組成物1が生産される。その後、2つの下型71が連結された部分を中心に互いに向かい合う方向に90度回転され、2つの凍結茶葉組成物1の第一氷天面34同士が合わせられ、圧縮または加温されて表面が溶けた後に冷却されて1つの凍結茶葉組成物1とされる。図6において、茶葉11がある空間を仕切る方向である上下方向での添加物60の寸法がXであり、それぞれの仕切られた空間である小空間における同方向(上下方向)での寸法がYであり、YはX以上とされている。なお茶葉11が載置される全体の空間の同方向(上下方向)での寸法はZである。
【0039】
図7の態様では、円や四角など所定の断面の凍結茶葉組成物1を連続で押し出し成形し、所定の長さで裁断する。より詳しくは、図示しない筒状の型枠70に対して第1の氷30となる紛氷または氷温水を供給した後(氷温水を用いた場合はさらにそれが氷結した後)、第一の氷30の上に茶葉11を供給する。その上に第二の氷40となる紛氷または氷温水をさらに供給する。または、氷20を外周側に、茶葉11をその中心側に位置するように同時に型枠70に供給しても良い。その後、所定の長さで裁断することで、図7に示すように所望の断面と長さの凍結茶葉組成物1を得ることができる。
【0040】
本実施形態の作用効果について説明する。
[1]凍結茶葉組成物1は、凍結された茶葉11と、茶葉11の外側にあり水を主成分とする凍結された添加物60と、を備え、茶葉11が占める面積が最大となる第一仮想平面で凍結茶葉組成物1を切った断面において凍結茶葉組成物1の面積に対する茶葉11が占める面積の割合は、第一仮想平面に直交し茶葉11の重心を通る第二仮想平面で凍結茶葉組成物1を切った断面において凍結茶葉組成物1の面積に対する茶葉11が占める面積の割合の2倍以上である。
【0041】
これにより、茶葉11を凍結茶葉組成物1の中心側に位置させるに際し、茶葉11同士には粘性がないため、水が主成分であり凍結された添加物60の上に茶葉11を高く積み上げることはできないが、茶葉11を添加物60に対して広く載せれば、凍結茶葉組成物1に対する相対的な茶葉11の量を多くすることが可能になる。そのうえで、凍結茶葉組成物1の生産工程において主として水などの添加物60へ茶由来の抽出物15が溶出することや茶葉11の多くが凍結茶葉組成物1の外周面に露出することを防ぎ、消費者が飲食する直前まで茶葉11の鮮度を高く保つことができる。
【0042】
[2]茶葉11における第一の面と添加物60との間には隙間がある。
【0043】
凍結茶葉組成物1の生産工程の一態様においては、あらかじめ成形した氷20を型枠70に入れ、その上に凍結させておいた茶葉11を載せ、その上にあらかじめ成形しておいた氷20を載せて、圧縮する。このため、氷20を圧縮した後にも茶葉11と氷の間に圧縮方向の隙間ができるような形状に氷20をあらかじめ成形しておくことで、茶葉11が氷20により押圧・圧縮されて茶由来の抽出物15が生産工程において溶出してしまうことを防止できる。
【0044】
[3]茶葉11における、第一の面と直交する第二の面と添加物60との間には隙間がある。
【0045】
凍結茶葉組成物1の生産工程の一態様においては、あらかじめ成形した氷20を型枠70に入れ、その上に凍結させておいた茶葉11を載せ、その上にあらかじめ成形しておいた氷20を載せて、圧縮する。このため、氷20を圧縮した後にも、茶葉11と氷の間に圧縮方向だけでなく、その直交方向にも隙間ができるような形状に氷20をあらかじめ成形しておくことで、茶葉11が氷20により押圧・圧縮されたり氷に触れたりして茶由来の抽出物15が生産工程において溶出してしまうことをより効果的に防止できる。
【0046】
[4]茶葉11の外周を茶葉外周部とし、添加物60の外周を添加物外周部とし、茶葉外周部と添加物外周部との中間を中間部としたときに、茶葉外周部と中間部との間における添加物60の比重は、中間部と添加物外周部との間における添加物60の比重より低い。
【0047】
凍結茶葉組成物1の生産工程の一態様においては、紛氷20を型枠70に入れ、その上に凍結させておいた茶葉11を載せ、さらにその上に紛氷20をかぶせてから圧縮する。この圧縮力により、または凍結茶葉組成物1の最外周にある紛氷20を一時的に加温することにより、凍結茶葉組成物1の最外周の紛氷20だけを一瞬溶かし、その後に圧縮・加温をやめて冷却することで氷結させる。これにより、凍結茶葉組成物1の最外周に比べて茶葉11近くの添加物60は比重が低い状態になり、茶葉11近くの添加物60である紛氷20は圧縮されないので、茶由来の抽出物15が生産工程で添加物60に溶出してしまうことを防止できる。
【0048】
[5]茶葉外周部と中間部との間における添加物60の比重は、中間部と添加物外周部との間における添加物60の比重の50%以下である。
【0049】
これにより、生産工程で茶由来の抽出物15が添加物60に溶出してしまうことをより効果的に防止できる。
【0050】
[6]茶葉11がある空間が添加物60により2つの小空間に仕切られている。
【0051】
凍結茶葉組成物1の生産工程の一態様においては、あらかじめ成形した氷20または紛氷20を型枠70に入れ、その上に凍結させておいた茶葉11を載せ、その上に紛氷20を被せ、圧縮または加温した後、その圧縮または加温された面を冷却して茶葉11の全周を添加物60で覆う。このようにして生産された凍結茶葉組成物1を2つ用意し、それぞれの凍結茶葉組成物1を載せた型枠70を左右に並べ、互いの型枠70を90度回転させ、先に圧縮または加温された面同士を合わせた後、さらに圧縮または加温することで、1つの凍結茶葉組成物1を簡便に得ることができる。
【0052】
[7]空間を2つに仕切る添加物60における仕切る方向での寸法が、小空間におけるその方向での寸法より小さい。
【0053】
仕切る方向とは、茶葉11が載置される全体の空間が一の小空間と他の小空間とに隔てられる方向であり、例えば茶葉11が載置される小空間が凍結茶葉組成物1においてそれぞれ上と下とにある場合、仕切る方向とは上下方向である。この仕切る方向での空間を仕切る添加物60の寸法を、茶葉11が載置されたそれぞれの小空間における仕切る方向での寸法より小さく抑えることで、凍結茶葉組成物1に対する相対的な茶葉11の量を多くすることができる。
【0054】
なお上述したのはあくまでも一実施形態であり、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。
【符号の説明】
【0055】
1 凍結茶葉組成物
11 茶葉
12 第一の面
13 第二の面
15 茶葉由来の抽出物
20 氷
30 第1の氷
31 第一氷凹部
32 第一氷凹底面
33 第一氷凹側面
34 第一氷天面
40 第2の氷
41 第二氷凹部
42 第二氷凹上面
43 第二氷凹側面
44 第一氷下面
50 第3の氷
60 添加物
70 型枠
71 下型
72 上型
【要約】
【課題】凍結茶葉組成物の生産工程において主として水などの添加物へ茶由来の抽出物が溶出することや、茶葉が凍結茶葉組成物の多くが外周面に露出することを防ぎ、消費者が飲食する直前まで茶葉の鮮度を高く保つことにある。
【解決手段】凍結茶葉組成物1は、凍結された茶葉11と、茶葉11の外側にあり水を主成分とする凍結された添加物60と、を備え、茶葉11が占める面積が最大となる第一仮想平面で凍結茶葉組成物1を切った断面において凍結茶葉組成物1の面積に対する茶葉11が占める面積の割合は、第一仮想平面に直交し茶葉11の重心を通る第二仮想平面で凍結茶葉組成物1を切った断面において凍結茶葉組成物1の面積に対する茶葉11が占める面積の割合の2倍以上である。
【選択図】図4
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7