IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ブラザー工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-画像記録装置 図1
  • 特許-画像記録装置 図2
  • 特許-画像記録装置 図3
  • 特許-画像記録装置 図4
  • 特許-画像記録装置 図5
  • 特許-画像記録装置 図6
  • 特許-画像記録装置 図7
  • 特許-画像記録装置 図8
  • 特許-画像記録装置 図9
  • 特許-画像記録装置 図10
  • 特許-画像記録装置 図11
  • 特許-画像記録装置 図12
  • 特許-画像記録装置 図13
  • 特許-画像記録装置 図14
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-21
(45)【発行日】2023-08-29
(54)【発明の名称】画像記録装置
(51)【国際特許分類】
   B65H 7/02 20060101AFI20230822BHJP
   B65H 5/06 20060101ALI20230822BHJP
   B41J 11/42 20060101ALI20230822BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20230822BHJP
【FI】
B65H7/02
B65H5/06 J
B41J11/42
B41J2/01 305
B41J2/01 451
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019032041
(22)【出願日】2019-02-25
(65)【公開番号】P2020132408
(43)【公開日】2020-08-31
【審査請求日】2022-02-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002217
【氏名又は名称】弁理士法人矢野内外国特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野田 憲吾
(72)【発明者】
【氏名】高橋 宏明
【審査官】後藤 健志
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-051696(JP,A)
【文献】特開2014-156329(JP,A)
【文献】特開2010-047413(JP,A)
【文献】特開2010-234757(JP,A)
【文献】特開2016-124122(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 7/02- 7/14
B65H 5/06
B41J 11/42
B41J 2/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートを搬送方向へ搬送する搬送ローラと、
前記搬送ローラを回転させるための駆動力を付与するモータと、
前記搬送ローラと同期して回転する回転軸と、
前記回転軸を回転可能に支持する軸受と、
前記軸受を支持するフレームと、
前記回転軸の回転量を検出するロータリーエンコーダと、
前記回転軸に一体的に回転可能に支持されたギアと、
対象物を検出する光学センサと、
前記光学センサと対向し得る位置に配置され、回動可能なアクチュエータと、
前記ギアに設けられ前記アクチュエータと係合するカム面であって、前記搬送ローラの回転に同期して前記アクチュエータを回動させるカム面と、
制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記モータの駆動力により前記搬送ローラを回転させることで前記アクチュエータを回動させ、このときの前記ロータリーエンコーダによる前記回転量の検出結果、および前記光学センサによる前記対象物としての前記アクチュエータの検出結果に基づいて、前記搬送ローラの原点位置を決定する原点位置決定処理を実行し、
前記アクチュエータは、前記光学センサと対向し得る被検知部と、回動中心となる回動軸とを有し、
前記回動軸は、前記軸受に支持されている
ことを特徴とする画像記録装置。
【請求項2】
前記カム面における前記アクチュエータの係合部と係合する部分は、前記搬送方向において前記回転軸よりも下流側に配置され、
前記回動軸は、前記搬送方向において前記回転軸よりも上流側、且つ、上下方向において前記回転軸と重なる領域を除く位置に配置される
ことを特徴とする請求項1に記載の画像記録装置。
【請求項3】
前記回動軸は、前記搬送方向において前記回転軸よりも下流側に配置されることを特徴とする請求項に記載の画像記録装置。
【請求項4】
前記回動軸は、前記搬送方向において前記カム面よりも上流側に配置されることを特徴とする請求項に記載の画像記録装置。
【請求項5】
シートにインクを吐出して画像を記録する記録ヘッドをさらに備え、
前記アクチュエータは、上下方向において前記記録ヘッドよりも下方に配置される
ことを特徴とする請求項1~請求項の何れか一項に記載の画像記録装置。
【請求項6】
シートにインクを吐出して画像を記録する記録ヘッドをさらに備え、
前記搬送ローラは、上下方向において前記記録ヘッドよりも下方に配置され、
前記回動軸は、上下方向において前記搬送ローラの軸中心よりも上方に配置される
ことを特徴とする請求項1~請求項の何れか一項に記載の画像記録装置。
【請求項7】
前記記録ヘッドを前記搬送ローラの軸中心方向に沿って移動可能に支持するガイドレールと、
前記ガイドレールと前記アクチュエータとの間に介装され、前記アクチュエータを前記カム面側へ向けて付勢する付勢バネとをさらに備える
ことを特徴とする請求項に記載の画像記録装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送ローラの原点位置を決定する画像記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シートに画像を記録する画像記録装置においては、シートを搬送するための搬送手段として搬送ローラが設けられている。搬送ローラは、1回転を1周期として1周期以下の所定量だけ回転させる場合に、どの回転位相においても同じ搬送量だけシートを搬送するように設計されている。しかし、実際には搬送ローラ自体が偏心していること等を原因として、シートの搬送量が搬送ローラの回転位相によって若干異なることがある。
【0003】
このような問題に対しては、搬送ローラの所定の回転位相における搬送量のずれを予め検査等で取得しておき、シートに画像を記録する際の搬送ローラの駆動時に、取得した搬送量のずれに対応した補正値を用いて搬送ローラによるシートの搬送量を補正することが行われている。この場合、搬送ローラの駆動開始時に搬送ローラの外周におけるどの位相領域がシートと接触するのかを把握して、シートの搬送量を適切に補正することができるように、搬送ローラの駆動開始時における原点を取得することが行われている。
【0004】
例えば、特許文献1においては、機械的な機構を用いて搬送ローラの原点を検出している。つまり、特許文献1における画像記録装置は、搬送ローラと同軸上に設けられる搬送ローラギアと、搬送ローラギアの側面に設けられるカムと、搬送ローラの軸方向に沿って回動可能でありカムに向かって付勢されるアクチュエータとを備えており、搬送ローラギアが1回転する間にカムとアクチュエータとが係合して、アクチュエータがカム形状に沿って回動するように構成されている。また、アクチュエータは記録部に設けられるセンサによって検出される被検出部を有しており、アクチュエータの回動位置によってセンサによる被検出部の検出の有無が切り替わり、このセンサによる検出の有無の切り替わりに基づいて搬送ローラの原点を検出するように構成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2011-51696号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述のように、アクチュエータを搬送ローラギアの回転に連動して回動させ、回動するアクチュエータの位置によって搬送ローラの原点を検出する構成では、アクチュエータと搬送ローラギアとの相対的な位置関係が原点の検出精度に影響を及ぼす。
しかし、特許文献1に記載の画像記録装置においては、アクチュエータは搬送ローラを支持するフレームに複数の部品を介して支持されていたため、アクチュエータと搬送ローラギアとの相対的な位置精度を十分に確保することができずに、搬送ローラの原点位置の検出精度を最適化することができていなかった。
【0007】
本発明においては、機械的な機構を用いて搬送ローラの原点を検出する画像記録装置において、原点位置の検出精度を向上することが可能な画像記録装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する画像記録装置は、以下の特徴を有する。
即ち、画像記録装置は、シートを搬送方向へ搬送する搬送ローラと、前記搬送ローラを回転させるための駆動力を付与するモータと、前記搬送ローラと同期して回転する回転軸と、前記回転軸を回転可能に支持する軸受と、前記軸受を支持するフレームと、前記回転軸の回転量を検出するロータリーエンコーダと、前記回転軸に一体的に回転可能に支持されたギアと、対象物を検出する光学センサと、前記光学センサと対向し得る位置に配置され、回動可能なアクチュエータと、前記ギアに設けられ前記アクチュエータと係合するカム面であって、前記搬送ローラの回転に同期して前記アクチュエータを回動させるカム面と、制御部と、を備え、前記制御部は、前記モータの駆動力により前記搬送ローラを回転させることで前記アクチュエータを回動させ、このときの前記ロータリーエンコーダによる前記回転量の検出結果、および前記光学センサによる前記対象物としての前記アクチュエータの検出結果に基づいて、前記搬送ローラの原点位置を決定する原点位置決定処理を実行し、前記アクチュエータは、前記光学センサと対向し得る被検知部と、回動中心となる回動軸とを有し、前記回動軸は、前記軸受または前記フレームに支持されている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、機械的な機構を用いて搬送ローラの原点を検出する際に、搬送ローラの原点位置を精度よく検出することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】プリンタ部を備えた複合機を示す斜視図である。
図2】プリンタ部の内部構造を示す側面断面図である。
図3】プリンタ部の内部構造を示す平面図である。
図4】プリンタ部の内部構造を示す斜視図である。
図5】伝達ギア周辺の構成を示す斜視図である。
図6】伝達ギア周辺の構成を示す平面図である。
図7】伝達ギア周辺の構成を示す側面断面図である。
図8】伝達ギア周辺の構成を示す正面図である。
図9】制御部に接続される用紙検出センサ、光学センサ、およびモータを示すブロック図である。
図10】伝達ギアの回転位置と用紙検出センサにから出力される信号レベルとの関係を示す図である。
図11】原点位置決定処理のフローを示す図である。
図12】アクチュエータにおける回動軸の位置の違いによる被検知部の移動範囲の違いを示す図である。
図13】アクチュエータの回動軸を軸受により支持する構成としたプリンタ部における伝達ギア周辺の構成を示す側面断面図である。
図14】第2実施形態に係るプリンタ部における伝達ギア周辺の構成を示す側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、本発明を実施するための形態を、添付の図面を用いて説明する。
【0012】
[複合機の概略構成]
図1に示す複合機1は、本発明に係る画像記録装置を備えた複合機の一実施形態であり、下部に備えられた前記画像記録装置の一例としてのプリンタ部P1と、プリンタ部P1の上方に配置されたスキャナ部Sとを一体的に備えている。複合機1は、プリンタ機能、スキャナ機能、コピー機能、及びファクシミリ機能等を有しており、プリンタ機能を有するプリンタ部P1は、インクジェット記録方式のプリンタに構成されている。
【0013】
以下の説明においては、複合機1が使用可能に設置された状態(図1に示す状態)を基準として上下方向を定義し、給排紙用開口部4が形成される面を前面として前後方向を定義し、複合機1を前面から後方向に見た状態で左右方向を定義する。
【0014】
プリンタ部P1においては、複合機1に接続されたコンピュータ、デジタルカメラおよびUSBメモリ等の外部機器、ならびに複合機1に装着されたメモリーカード等の各種記憶媒体から入力される画像データ等に基づいて、シート10等の被記録媒体に画像等を記録する。
【0015】
複合機1の下部に配置されるプリンタ部P1は略直方体状に形成される筐体2を有しており、筐体2の前面11における左右中央部に給排紙用開口部4が形成されている。給排紙用開口部4内には、シートカセット20及び排出トレイ21が設けられている。シートカセット20は、筐体2に対して前面11から給排紙用開口部4を通じて挿抜可能となっている。また、前面11には、各種操作ボタンおよび液晶表示部を備える操作パネル13が設けられている。
【0016】
[プリンタ部の第1実施形態]
図2に示すように、第1実施形態に係るプリンタ部P1は、シートカセット20、給送ローラ25、搬送路23、搬送ローラ対28、記録部24、排出ローラ対29、及び排出トレイ21を備えている。シートカセット20には複数枚のシート10が積載されている。シートカセット20に積載されるシート10のうちの最上位置のシート10は、給送ローラ25により搬送路23へ向けて給送される。
【0017】
給送ローラ25は、給送アーム26により回転自在に支持されており、モータ85の駆動力により駆動される。搬送路23は、シートカセット20の後端部から上方へ向かって湾曲した後、筐体2の前方へ向かって直線状に延出している。搬送路23は筐体2の左右方向における略中央に位置している。
【0018】
搬送路23には搬送ローラ対28が設けられている。搬送ローラ対28は、搬送路23の上側に配置される搬送ローラ28aと、搬送路23を挟んで搬送ローラ28aの下側に配置されるピンチローラ28bとを有しており、ピンチローラ28bは搬送ローラ28a側へ付勢されている。搬送ローラ28aはピンチローラ28bの上側に配置されている。給送ローラ25により搬送路23へ向けて給送されたシート10は、搬送ローラ対28により搬送路23に沿って搬送される。搬送ローラ28aは、シート10を搬送方向へ搬送する搬送ローラの一例である。
【0019】
搬送路23における搬送ローラ対28よりも搬送方向下流側には記録部24が配置されており、搬送ローラ対28により搬送されるシート10が記録部24に到達すると、記録部24によりシート10に対して画像等の記録が行われる。
【0020】
画像等の記録が行われたシート10は、搬送路23における記録部24よりも搬送方向下流側に配置される排出ローラ対29により搬送されて、排出トレイ21に排出される。排出ローラ対29は、搬送路23の下側に配置される排出ローラ29aと、搬送路23を挟んで排出ローラ29aの上側に配置されるピンチローラ29bとを有しており、ピンチローラ29bは排出ローラ29a側へ付勢されている。
【0021】
記録部24は、記録ヘッド31、キャリッジ32、およびプラテン33を備えている。記録ヘッド31はキャリッジ32に搭載されており、キャリッジ32は搬送路23の上方に配置されている。記録ヘッド31の下面には、複数のノズルが開口している。記録ヘッド31の下面においては、複数のノズルがシート10の搬送方向に沿って列をなすように配置されている。ノズル35の前記列は、例えばシアン、マゼンタ、イエロー、およびブラックのインク色に対応した4列が記録ヘッド31の移動方向に沿って配置されている。
【0022】
図3図4に示すように、キャリッジ32は、左右方向へ延びるガイドレール44、45に支持されている。ガイドレール44とガイドレール45とは、シート10の搬送方向となる前後方向に所定の間隔を設けて配置されている。ガイドレール44はガイドレール45よりも搬送方向の上流側に配置されている。キャリッジ32は、ガイドレール44、45を跨ぐようにしてガイドレール44、45に載置されている。キャリッジ32は、ガイドレール45上に設けられモータ(不図示)により駆動されるベルト駆動機構46によって、ガイドレール44、45に沿って左右方向へ移動される。
【0023】
記録ヘッド31の下方にはプラテン33が配置されている。プラテン33はキャリッジ32の左右方向における移動領域の全域にわたって延設されており、搬送路23に沿って搬送されるシート10がプラテン33によって下方から支持されている。記録ヘッド31とプラテン33とは対向しており、キャリッジ32が左右方向へ移動する際に、記録ヘッド31からプラテン33に支持されたシート10に対して選択的にインクを吐出する。そして、吐出されたインクがシート10に着弾することにより、シート10に画像等が記録される。
【0024】
プラテン33の左右方向における一側端部(本実施形態においては左側端部)には、廃インクトレイ66が設けられている。キャリッジ32は、移動可能な範囲における左側端部に移動した際に、廃インクトレイ66と対向する位置まで移動することが可能である。廃インクトレイ66は、メンテナンスのために記録ヘッド31から吐出されるインク滴を受けるものである。
【0025】
廃インクトレイ66は、記録ヘッド31のノズル領域に対応するトレイ形状であり、その内部空間にインク吸収材が充填されている。インク吸収材は、記録ヘッド31から吐出されたインク滴を吸収して保持する。このような、メンテナンスのために記録ヘッド31からインク滴を吐出する動作はフラッシングと称される。
【0026】
搬送ローラ28aは回転軸76によって支持されており、回転軸76にはエンコーダディスク71が設けられている。回転軸76は搬送ローラ28aと一体的に回転可能に構成されている。つまり、回転軸76は搬送ローラ28aと同期して回転する。エンコーダディスク71は透明な円盤状部材により形成されており、光を遮るマークが周方向に所定ピッチで記されている。エンコーダディスク71は搬送ローラ28aの回転軸76に固定されており、搬送ローラ28aと一体的に回転可能に構成されている。
【0027】
エンコーダディスク71の下部には光学センサ55が設けられている。光学センサ55は、発光素子および受光素子が左右方向に所定の間隔を隔てて対向配置されたものである。光学センサ55は、発光素子と受光素子との間の空間にエンコーダディスク71の周縁が位置するように配置されている。
【0028】
光学センサ55の受光素子が光を受光すると、受光した光の輝度に応じたレベルの電気信号が光学センサ55で生成される。発光素子と受光素子との間にマークが位置している状態では、LOWレベルの電気信号が生成される。発光素子と受光素子との間にマークが位置していない状態では、HIレベルの電気信号が生成される。
【0029】
すなわち、光学センサ55によってエンコーダディスク71のマークが検出される毎にパルス信号が生成される。このパルス信号は、複合機1が備える制御部100(図9参照)へと出力される。制御部100は、入力された光学センサ55からのパルス信号をカウントすることにより回転軸76の回転数を算出し、算出した回転数に基づいてモータ85の駆動を制御する。エンコーダディスク71と光学センサ55とで、回転軸76の回転量を検出するロータリーエンコーダ70が構成されている。
【0030】
図2に示すように、キャリッジ32には用紙検出センサ34が設けられている。用紙検出センサ34は、キャリッジ32の下面に露出しており、記録ヘッド31よりも搬送方向の上流側に配置されている。用紙検出センサ34は、反射型の光学センサである。図2には詳細に現れていないが、用紙検出センサ34は発光素子と受光素子とを有している。
【0031】
この発光素子から光が下方へ照射され、用紙検出センサ34の下方からの反射光を受光素子が受光する。そして、用紙検出センサ34は、受光素子の受光レベルに対応した電気信号を出力する。つまり、用紙検出センサ34は、一定の強さの照射光に対する反射光の強さに応じた電気信号を出力する。用紙検出センサ34は、対象物を検出する光学センサの一例である。
【0032】
図5図8に示すように、プリンタ部P1は、搬送ローラ28aと同期して回転する回転軸76と、回転軸76を通じて搬送ローラ28aを回転させるための駆動力を付与するモータ85とを有している。モータ85から出力される駆動力は回転軸76を介して搬送ローラ28aに伝達され、搬送ローラ28aは伝達された駆動力により回転される。また、モータ85から出力される駆動力は排紙ローラ29aに伝達され、排紙ローラ29aは伝達された駆動力により回転される。モータ85としては、例えばDCモータを用いることが可能である。
【0033】
モータ85は、モータフレーム86の支持面部86aに支持されている。支持面部86aは、搬送ローラ28aの左側端部において搬送方向と直交する方向に面する面部である。回転軸76は軸受78に回転可能に支持されており、軸受78はモータフレーム86の支持面部86aに支持されている。モータフレーム86は、軸受を支持するフレームの一例である。また、廃インクトレイ66は、モータフレーム86の支持面部86aに支持されている。
【0034】
モータ85の出力軸には出力ギア75が一体的に回転可能に設けられている。回転軸76の左端部には、伝達ギア77が回転軸76と同軸に固定されている。回転軸76と伝達ギア77とは一体的に回転可能に構成されている。伝達ギア77は、回転軸に一体的に回転可能に支持されたギアの一例である。出力ギア75と伝達ギア77とは噛合しており、モータ85からの駆動力が出力ギア75および伝達ギア77を介して回転軸76に伝達される。
【0035】
搬送ローラ28aおよび排紙ローラ29aは、記録部24による画像記録が行われる際には、モータ85によって間欠駆動される。間欠駆動とは、所定の目標搬送量に相当する回転量だけ搬送ローラ28aおよび排紙ローラ29aが回転するまでモータ85が連続して駆動され、目標搬送量に到達すると所定時間だけモータ85が停止され、これらを交互に繰り返す駆動方式である。
【0036】
伝達ギア77の左右方向における内側面79には、カム面80が形成されている。カム面80は伝達ギア77の周方向に沿って形成されており、内側面79からキャリッジ32側となる左右内側へ向かって突出している。カム面80は伝達ギア77の周方向における全域にわたって形成されており、相対的に内側面79からの突出量が大きい第1領域80aと、第1領域80aよりも内側面79からの突出量が小さな第2領域80bと、第1領域80aと第2領域80bとの間に連続して配置される第3領域80cとを有している。第3領域80cは、第1領域80a側から第2領域80b側へ向けて突出量が減少する傾斜面に形成されている。
【0037】
回転軸76の搬送方向下流側にはアクチュエータ90が配置されている。アクチュエータ90は、回動軸91aを有する支持部91、支持部91の搬送方向下流側に配置される係合部92、および係合部92から搬送方向下流側へ延出する被検知部93を有している。
【0038】
モータフレーム86は、支持面部86aから左右方向内側に延出するブラケット86b(図7参照)を有しており、ブラケット86bにアクチュエータ90における支持部91の回動軸91aが回動可能に支持されている。つまり、アクチュエータ90の回動軸91aは、モータフレーム86に支持されている。アクチュエータ90は回動軸91aを中心として回動可能であり、アクチュエータ90は回動軸91aを中心として回動することにより、当接部92および被検知部93が一体的に搬送ローラ29aの軸方向となる左右方向に沿って移動可能である。
【0039】
アクチュエータ90の被検知部93は、キャリッジ32が廃インクトレイ66と対向する位置まで移動した際に、用紙検出センサ34と対向し得る位置に配置されている。つまり、アクチュエータ90は、用紙検出センサ34と対向し得る位置に配置され、回動可能なアクチュエータである。アクチュエータ90は、用紙検出センサ34と対向し得る被検知部93と、回動中心となる回動軸91aとを有している。被検知部93は、用紙検出センサ34の検出対象物である。
【0040】
アクチュエータ90の係合部92は伝達ギア77のカム面80と係合しており、伝達ギア77の回転に伴ってカム面80により左右に移動される。アクチュエータ90と廃インクトレイ66との間には、アクチュエータ90の係合部92を伝達ギア77側へ付勢するバネ94が介装されている。バネ94は、例えば圧縮コイルバネにより構成されている。バネ94により、カム面80とアクチュエータ90の係合部92との係合状態が保持され、伝達ギア77と一体的に回転する搬送ローラ28aの回転に同期してアクチュエータ90がカム面80によって左右に回動される。
【0041】
アクチュエータ90の係合部92がカム面80の第1領域80aと係合しているときにはアクチュエータ90の被検知部93は右方の第1位置に変位し、アクチュエータ90の係合部92がカム面80の第2領域80bと係合しているときにはアクチュエータ90の被検知部93は第1位置よりも左方の第2位置に変位する。
【0042】
アクチュエータ90の係合部92がカム面80の第3領域80cと係合していて、伝達ギア77の回転に伴って係合部92と第3領域80cとの係合箇所が第2領域80b側から第1領域80a側に変化するときは、係合部92がカム面80により押圧されて、被検知部93が右方の第1位置側へ移動する。
【0043】
アクチュエータ90の係合部92がカム面80の第3領域80cと係合していて、伝達ギア77の回転に伴って係合部92と第3領域80cとの係合箇所が第1領域80a側から第2領域80b側に変化するときは、係合部92がバネ94の付勢力により押圧されて、被検知部93が左方の第2位置側へ移動する。
【0044】
キャリッジ32が廃インクトレイ66と対向する位置に移動した状態において、アクチュエータ90の被検知部93が第1位置に変位しているときには、被検知部93は用紙検出センサ34と対向し、アクチュエータ90の被検知部93が第2位置に変位しているときには、被検知部93は用紙検出センサ34と対向しない。
【0045】
図9に示すように、制御部100には、用紙検出センサ34、ロータリーエンコーダ70の光学センサ55、およびモータ85が接続されている。用紙検出センサ34は、受光素子が受光した光量に応じたアナログの電気信号(電圧信号又は電流信号)を出力する。制御部100は、用紙検出センサ34から出力された信号の電気的なレベル(電圧値又は電流値)が所定の閾値以上の場合に信号レベルがHIであると判定し、所定の閾値未満の場合に信号レベルがLOWであると判定する。
【0046】
本実施形態では、被検知部93が第1位置に変位しているときに用紙検出センサ34から出力される信号レベルがHIであると判定され、用紙検出センサ34が被検知部93を検出した状態となる。一方、被検知部93が第2位置に位置しているときに用紙検出センサ34から出力される信号レベルがLOWであると判定され、用紙検出センサ34が被検知部93を検出していない状態となる。また、被検知部93が第1位置と第2位置との間の位置に変位しているときに、用紙検出センサ34から出力される信号レベルが前記閾値となり、前記信号レベルがLOWとHIとの間で切り替わる。
【0047】
ところで、プリンタ部P1においてシート10が高精度に搬送されるためには、ロータリーエンコーダ70によって検出される搬送ローラ28aの回転量と、搬送ローラ28aによるシート10の実際の搬送量との間に線形性が成り立っていることが好ましい。搬送ローラ28aとシート10との間に滑りがなければ、シート10の搬送量は搬送ローラ28aの表面の移動量と一致するが、回転体の表面の移動量は回転半径と回転角度の積であるから、搬送ローラ28aの回転半径がばらつけば、結果としてシート10の搬送量がばらついてしまう。
【0048】
プリンタ部P1においては、エンコーダディスク71の偏心、搬送ローラ28aの反りやコーティングの厚みムラ、伝達ギア77の偏心などを原因として、ロータリーエンコーダ70によって検出される回転量あたりの搬送ローラ28aによるシート10の搬送量が、搬送ローラ60の1周分を1周期として周期的に変動する。
【0049】
従って、制御部100は、搬送ローラ28aによるシート10の搬送量の周期的変動を抑制するために、モータ85の駆動を制御して搬送ローラ28aの回転量を補正している。制御部100による搬送ローラ28aの回転量の補正は、所定の補正値関数を用いて行われる。制御部100が搬送ローラ28aの回転量の補正を行うときには、搬送ローラ28aの回転方向における原点位置を予め決定しておき、搬送ローラ28aの駆動開始時に搬送ローラ28aの外周におけるどの位相領域がシート10と接触するのかを把握して、シート10の搬送量を適切に補正することができるようにしている。
【0050】
[搬送ローラの原点位置の決定方法]
次に、搬送ローラ28aの回転方向における原点位置の決定方法について説明する。プリンタ部P1においては、モータ85が駆動されると、伝達ギア77および搬送ローラ28aが一体的に回転し、伝達ギア77に形成されるカム面80によってアクチュエータ90が回動されて被検知部93が左右に移動する。
【0051】
例えばアクチュエータ90の係合部92がカム面80の第2領域80bと係合して被検知部93が第2位置に変位している状態から、伝達ギア77を1回転させると、アクチュエータ90は、被検知部93が第2位置に変位している状態を経て、被検知部93が第2位置から第1位置側へ移動する状態となった後に、被検知部93が第1位置に変位した状態へと変化する。さらに、被検知部93が第1位置に変位した状態を経て、被検知部93が第1位置から第2位置側へ移動する状態となった後に、被検知部93が第2位置に変位した状態へと変化する。
【0052】
従って、キャリッジ32が廃インクトレイ66と対向する位置に移動した状態で、被検知部93が第2位置に変位している状態から伝達ギア77を1回転させると、用紙検出センサ34から出力される信号レベルの制御部100による判定が、LOW→HI→LOWと変化する。図10には、伝達ギア77の回転位置と用紙検出センサ34にから出力される信号レベルとの関係を示しており、制御部100は信号レベルが閾値T未満のときにLOWと判定し、信号レベルが閾値T以上のときにHIと判定する。図10の下部には、カム面80の展開形状を伝達ギア77の回転位置に対応させて記載している。
【0053】
図10においては、伝達ギア77が回転を開始してから第1回転位置P1に達すると、用紙検出センサ34からの信号レベルが閾値Tに達して制御部100の判定がLOWからHIに変化する。その後、伝達ギア77が第2回転位置P2に達すると、用紙検出センサ34からの信号レベルが閾値Tより低くなって制御部100の判定がHIからLOWに変化する。用紙検出センサ34からの信号レベルは、第1回転位置P1と第2回転位置P2との中間の回転位置である中間回転位置Pcにおいて最も高くなっている。
【0054】
このような構成において、制御部100は、例えば図11に示すように、搬送ローラ28aの原点位置を決定する原点位置決定処理を実行する。
【0055】
制御部100は、モータ85を駆動して(ステップS01)、伝達ギア77、回転軸76および搬送ローラ28aを回転させた後、用紙検出センサ34からの信号レベルがLOWであるか否かの判定を行う(ステップS02)。制御部100は、ステップS02において信号レベルがLOWではないと判定すると、ステップS02を再度実行する。一方、制御部100は、ステップS02において信号レベルがLOWであると判定すると、用紙検出センサ34からの信号レベルがLOWからHIに切り替わったか否かの判定を行う(ステップS03)。
【0056】
制御部100は、ステップS03において信号レベルがLOWからHIに切り替わっていないと判定すると、ステップS03を再度実行する。一方、制御部100は、ステップS03において信号レベルがLOWからHIに切り替わったと判定すると、信号がLOWからHIに切り替わった時点での伝達ギア77(即ち回転軸76)の第1回転位置P1を算出する(ステップS04)。この場合、制御部100は、伝達ギア77の第1回転位置P1をロータリーエンコーダ70にて生成されるパルス信号のカウント値に基づいて算出する。
【0057】
その後、制御部100は、用紙検出センサ34からの信号レベルがHIからLOWに切り替わったか否かの判定を行う(ステップS05)。制御部100は、ステップS05において信号レベルがHIからLOWに切り替わっていないと判定すると、ステップS05を再度実行する。一方、制御部100は、ステップS05において信号レベルがHIからLOWに切り替わったと判定すると、信号レベルがHIからLOWに切り替わった時点での伝達ギア77の第2回転位置P2を算出する(ステップS06)。この場合、制御部100は、伝達ギア77の第2回転位置をロータリーエンコーダ70にて生成されるパルス信号のカウント値に基づいて算出する。
【0058】
さらに、制御部100は、伝達ギア77の第1回転位置P1と第2回転位置P2との中間の中間回転位置Pcを算出する(ステップS07)。そして、制御部100は、算出した中間回転位置Pcを搬送ローラ28aの原点位置として決定する(ステップS08)。
【0059】
なお、制御部100は、搬送ローラ28aの原点位置を決定する場合、搬送ローラ28aの原点位置として決定した伝達ギア77の中間回転位置Pcにおけるロータリーエンコーダ70のパルス信号のカウント値を0に設定する。そして、制御部100は、搬送ローラ28aの原点位置からカウントが開始されたロータリーエンコーダ70のパルス信号のカウント値に基づいて、搬送ローラ28aの原点位置からの回転位置を算出する。
【0060】
このように、制御部100は、モータ85の駆動力により搬送ローラ28aを回転させることでアクチュエータ90を回動させ、このときのロータリーエンコーダ70による回転軸76の回転量の検出結果、および用紙検出センサ34による対象物としてのアクチュエータ90の検出結果に基づいて、搬送ローラ28aの原点位置を決定する原点位置決定処理を実行する。
【0061】
また、プリンタ部P1においては、アクチュエータ90がカム80の形状に沿って回動するように構成され、アクチュエータ90は記録部24に設けられる用紙検出センサ34によって検出される被検出部93を有している。そして、アクチュエータ90の回動位置によって用紙検出センサ34による被検出部93の検出の有無が切り替わり、用紙検出センサ34による検出の有無の切り替わりに基づいて搬送ローラ28aの原点を検出している。このように、プリンタ部P1においては、機械的な機構を用いて搬送ローラ28aの原点を検出している。
【0062】
なお、本実施形態においては、制御部100による信号レベルの判定がLOWからHIへと切り替わった時点の第1回転位置P1と、HIからLOWへと切り替わった時点の第2回転位置P2との中間の中間回転位置Pcを搬送ローラ28aの原点位置として設定しているが、判定がLOWからHIへと切り替わった時点の第1回転位置P1を搬送ローラ28aの原点位置として設定したり、判定がHIからLOWへと切り替わった時点の第2回転位置P2を搬送ローラ28aの原点位置として設定したりすることも可能である。
【0063】
[アクチュエータの支持構造の第1実施形態]
上述のように、アクチュエータ90を搬送ローラ28aと同期して回転する回転軸76と一体的に回転する伝達ギア77の回転に連動して回動させ、回動するアクチュエータ90における被検知部93の位置によって搬送ローラ28aの原点位置を検出する構成では、アクチュエータ90と伝達ギア77との相対的な位置関係が原点位置の検出精度に影響を及ぼす。
【0064】
プリンタ部P1においては、アクチュエータ90の回動軸91aが、回転軸76の軸受78を支持するモータフレーム86のブラケット86bに支持されているため、アクチュエータ90と伝達ギア77との相対的な位置精度が高くなっている。つまり、アクチュエータ90の回動軸91aは、搬送ローラ28aと同期して回転する回転軸76の軸受78を支持するモータフレーム86に直接支持されている。これにより、アクチュエータ90の回動軸91aが、廃インクトレイ66等の他の複数の部品を介してモータフレーム86に支持されている場合に比べて、アクチュエータ90と伝達ギア77との相対的な位置精度を向上させることができ、搬送ローラ28aの原点位置を精度よく検出することが可能となっている。
【0065】
また、図7に示すように、アクチュエータ90の回動軸91aは、搬送ローラ28aの軸中心Cよりも搬送方向の下流側に配置されている。回動軸91aを搬送ローラ28aの軸中心Cよりも搬送方向の下流側に配置することで、回動軸91aをカム面80におけるアクチュエータ90の係合部92が係合する部分の近くに配置することができるため、搬送ローラ28aの原点位置の検出精度を向上させることが可能となっている。
【0066】
さらに、アクチュエータ90の回動軸91aは、カム面80の係合部92が係合する部分よりも搬送方向の上流側に配置されている。これにより、回動軸91aを、搬送ローラ28aと同期して回転する回転軸76と、カム面80におけるアクチュエータ90の係合部92が係合する部分との両方の近くに配置することができ、搬送ローラ28aの原点位置の検出精度をより向上させることが可能となっている。
【0067】
図12に示すように、アクチュエータ90の被検知部93は、係合部92がカム面80の第1領域80aと係合しているときには第1位置にあり、伝達ギア77が回転して係合部92がカム面80の第2領域80bと係合するようになると第2位置に変位する。ここで、回動軸91aを搬送ローラ28aの軸中心Cよりも搬送方向の下流側に配置した場合(図12(a)参照)、回動軸91aとカム面80とが搬送方向において近くに配置されることになるため、被検知部93の第1位置から第2位置までの左右方向の移動距離W1は、回動軸91aを搬送ローラ28aの軸中心Cよりも搬送方向の上流側に配置した場合(図12(b)参照)の移動距離W2よりも大きくなる。
【0068】
このように、被検知部93の第1位置と第2位置との間の移動距離W1が大きくなると、伝達ギア77の回転角度に対する被検知部93の左右方向への移動度合いを大きくすることができるため、被検知部93の左右位置によって出力信号レベルが変化する用紙検出センサ34を用いて検出される搬送ローラ28aの原点位置の検出精度を向上することが可能となる。
【0069】
また、図7に示すように、カム面80におけるアクチュエータ90の係合部92と係合する部分が回転軸76よりも搬送方向の下流側に配置されるプリンタ部P1においては、アクチュエータ90の回動軸91aは、搬送方向において回転軸76よりも上流側、且つ、上下方向において回転軸76と重なる領域R(図7において網掛けで示した領域)を除く位置に配置するように構成している。
【0070】
仮に、回動軸91aが、搬送方向において回転軸76よりも上流側、且つ、上下方向において回転軸76と重なる領域Rに配置されていると、アクチュエータ90を、回動軸91aからカム面80および用紙検出センサ34の位置まで回転軸76を迂回して配置する必要があり、アクチュエータ90の構成が複雑になって搬送ローラ28aの原点位置の検出精度が低下するおそれがある。
【0071】
しかし、本実施形態のように、回動軸91aを、搬送方向において回転軸76よりも上流側、且つ、上下方向において回転軸76と重なる領域Rを除く位置に配置すると、アクチュエータ90を回転軸76を迂回することなく配置することができ、アクチュエータ90の構成が簡単になって搬送ローラ28aの原点位置の検出精度を向上することができる。
【0072】
また、図7に示すように、アクチュエータ90は、キャリッジ32に搭載される記録ヘッド31よりも下方に配置されている。このように、アクチュエータ90を記録ヘッド31よりも下方に配置することで、アクチュエータ90が記録ヘッド31と干渉することがなく、アクチュエータ90の動作が阻害されることがないため、適切に搬送ローラ28aの原点位置を検出することが可能となっている。
【0073】
[アクチュエータの支持構造の第2実施形態]
図13に示すように、プリンタ部P1においては、アクチュエータ90の回動軸91aを、回転軸76の軸受78により支持するように構成することもできる。図13に示す軸受78は、軸受78の外周面から下方に延出するブラケット78aを有しており、ブラケット78aは、ブラケット78aから左右方向内側に突出する上下一対の支持片78bを有している。アクチュエータ90の回動軸91aは、軸受78の支持片78bによって回動可能に支持されている。つまり、アクチュエータ90の回動軸91aは、軸受78によって直接支持されている。
【0074】
このように、アクチュエータ90の回動軸91aを、伝達ギア77と一体的に回転可能な回転軸76を支持する軸受78によって直接支持することにより、アクチュエータ90と伝達ギア77との相対的な位置精度をより高精度にすることができ、搬送ローラ28aの原点位置の検出精度をより向上させることが可能となる。
【0075】
[プリンタ部の第2実施形態]
次に第2実施形態に係るプリンタ部P2について説明する。
図14に示すように、プリンタ部P2は、シート10を搬送路123に沿って搬送する搬送ローラ対128を備えている。搬送ローラ対128は、搬送路123の下側に配置される搬送ローラ128aと、搬送路123を挟んで搬送ローラ128aの上側に配置されるピンチローラ128bとを有しており、ピンチローラ128bは搬送ローラ128a側へ付勢されている。搬送ローラ128aは、シート10を搬送方向へ搬送する搬送ローラの一例である。
【0076】
搬送路123における搬送ローラ対128よりも搬送方向下流側には記録部124が配置されており、搬送ローラ対128により搬送されるシート10が記録部124に到達すると、記録部124によりシート10に対して画像等の記録が行われる。記録部124は、記録ヘッド131、キャリッジ132、および用紙検出センサ134を備えている。記録ヘッド131はキャリッジ132に搭載されており、キャリッジ132は搬送路123の上方に配置されている。搬送ローラ128aは記録ヘッド131よりも下方に配置されている。
【0077】
プリンタ部P2は、キャリッジ132を搬送ローラ128aの軸方向となる左右方向へ移動可能に支持するガイドレール144と、搬送ローラ128aを駆動するモータ185と、モータ185を支持するモータフレーム186とを備えており、ガイドレール144はモータフレーム186の上端部に支持されている。
【0078】
モータ185は、モータフレーム186の支持面部186aに支持されている。支持面部186aは、搬送ローラ128aの左側端部において搬送方向と直交する方向に面する面部である。モータ185は、搬送ローラを回転させるための駆動力を付与するモータの一例である。モータフレーム186は、軸受を支持するフレームの一例である。
【0079】
搬送ローラ128aは回転軸176によって支持されており、回転軸176と搬送ローラ128aとは一体的に回転可能に構成されている。つまり、回転軸176は搬送ローラ128aと同期して回転する。搬送ローラ128aの回転軸176における左端部には、伝達ギア177が回転軸176と同軸に固定されている。回転軸176と伝達ギア177とは一体的に回転可能に構成されている。伝達ギア177は、回転軸に一体的に回転可能に支持されたギアの一例である。回転軸176は軸受178に回転可能に支持されており、軸受178はモータフレーム186の支持面部186aに支持されている。
【0080】
伝達ギア177の左右方向における内側面179には、カム面180が形成されている。カム面180は伝達ギア177の周方向に沿って形成されており、内側面179から左右内側へ向かって突出している。カム面180は伝達ギア177の周方向における全域にわたって形成されており、相対的に内側面179からの突出量が大きい第1領域180aと、第1領域180aよりも内側面179からの突出量が小さな第2領域180bと、第1領域180aと第2領域180bとの間に連続して配置される第3領域180cとを有している。第3領域180cは、第1領域180a側から第2領域180b側へ向けて突出量が減少する傾斜面に形成されている。
【0081】
回転軸76の搬送方向下流側にはアクチュエータ190が配置されている。アクチュエータ190は、回動軸191aを有する支持部191、支持部191の搬送方向下流側に配置される係合部192、および係合部192から搬送方向下流側へ延出する被検知部193を有している。
【0082】
モータフレーム186は、支持面部186aから左右方向内側に延出するブラケット186bを有しており、ブラケット186bにアクチュエータ190における支持部191の回動軸191aが回動可能に支持されている。つまり、アクチュエータ190の回動軸191aは、モータフレーム186に支持されている。
【0083】
アクチュエータ190は回動軸191aを中心として回動可能であり、アクチュエータ190は回動軸191aを中心として回動することにより、当接部192および被検知部193が一体的に搬送ローラ129aの軸方向となる左右方向に沿って移動可能である。
【0084】
アクチュエータ190の係合部192は伝達ギア177のカム面180と係合しており、伝達ギア177の回転に伴ってカム面180により左右に移動される。アクチュエータ190とガイドレール144との間には、アクチュエータ190の係合部192を伝達ギア177側へ付勢するバネ194が介装されている。
【0085】
アクチュエータ190はバネ194により伝達ギア177のカム面80側へ付勢されている。バネ194は、搬送ローラ128aの上方に配置されている。バネ194は、付勢バネの一例であり、例えばトーションバネにより構成されている。バネ194により、カム面180とアクチュエータ190の係合部192との係合状態が保持され、伝達ギア177と一体的に回転する搬送ローラ128aの回転に同期してアクチュエータ190がカム面180によって回動される。なお、バネ194は、アクチュエータ190とモータフレーム186との間に介装されていてもよい。この場合、モータフレーム186に、アクチュエータ190よりも上方の位置でバネ194の上方側の一端と係合する部分を設ければよい。
【0086】
このように、バネ194を搬送ローラ128aの上方に配置することにより、バネ194が搬送ローラ128aの下方に配置されることがなく、搬送ローラ128aの下方のスペースを小さくすることが可能となっている。
【0087】
また、アクチュエータ190の回動軸191aは、搬送ローラ128aの軸中心Cよりも搬送方向の下流側に配置されている。回動軸191aを搬送ローラ128aの軸中心Cよりも搬送方向の下流側に配置することで、回動軸191aをカム面180におけるアクチュエータ190の係合部192が係合する部分の近くに配置することができ、搬送ローラ128aの原点位置の検出精度を向上させることが可能である。
【0088】
さらに、アクチュエータ190の回動軸191aは、搬送ローラ128aの軸中心Cよりも上方に配置されている。回動軸191aを搬送ローラ128aの軸中心Cよりも上方に配置することで、搬送ローラ128aの下方にアクチュエータ90の回動軸91aが配置されることがないため、搬送ローラ128aの下方のスペースを小さくすることが可能となっている。
【0089】
第2実施形態に係るプリンタ部P2のその他の構成は、第1実施形態に係るプリンタ部P1の構成と同様であるため、説明を省略する。
【0090】
[本実施形態おける効果]
本実施形態においては、複合機1が備える画像記録装置の一例であるプリンタ部P1は上述のように構成されている。
つまり、プリンタ部Pは、シート10を搬送方向へ搬送する搬送ローラ28aと、搬送ローラ28aを回転させるための駆動力を付与するモータ85と、搬送ローラ28aと同期して回転する回転軸76と、回転軸76を回転可能に支持する軸受78と、軸受78を支持するモータフレーム86と、回転軸76の回転量を検出するロータリーエンコーダ70と、回転軸76に一体的に回転可能に支持された伝達ギア77と、対象物を検出する用紙検出センサ34と、用紙検出センサ34と対向し得る位置に配置され、回動可能なアクチュエータ90と、伝達ギア77に設けられアクチュエータ90と係合するカム面80であって、搬送ローラ28aの回転に同期してアクチュエータ90を回動させるカム面80と、制御部100と、を備える。制御部100は、モータ85の駆動力により搬送ローラ28aを回転させることでアクチュエータ90を回動させ、このときのロータリーエンコーダ70による前記回転量の検出結果、および用紙検出センサ34による前記対象物としてのアクチュエータ90の検出結果に基づいて、搬送ローラ28aの原点位置を決定する原点位置決定処理を実行する。アクチュエータ90は、用紙検出センサ34と対向し得る被検知部93と、回動中心となる回動軸91aとを有し、回動軸91aは、軸受78またはモータフレーム86に支持されている
【0091】
このように、アクチュエータ90の回動軸91aが軸受78またはモータフレーム86に直接支持されているため、回動軸91aがモータフレーム86に複数の部品を介して支持されている場合に比べて、アクチュエータ90と伝達ギア77との相対的な位置精度を向上させることができる。これにより、搬送ローラ28aの原点位置を精度よく検出することが可能である。
【0092】
また、回動軸91aは、軸受78に支持されている。
【0093】
このように、アクチュエータ90の回動軸91aを、回転軸76を支持する軸受78によって直接支持することにより、アクチュエータ90と伝達ギア77との相対的な位置精度をより高精度にすることができ、搬送ローラ28aの原点位置の検出精度をより向上させることが可能である。
【0094】
また、カム面80は、搬送方向において回転軸76よりも下流側に配置され、回動軸91aは、搬送方向において回転軸76よりも上流側、且つ、上下方向において回転軸76と重なる領域Rを除く位置に配置される。
【0095】
このような構成により、アクチュエータ90を、回転軸76を迂回することなく配置することができ、アクチュエータ90の構成が簡単になって搬送ローラ28aの原点位置の検出精度を向上することができる。
【0096】
また、回動軸91aは、搬送方向において回転軸76よりも下流側に配置される。
【0097】
このような構成により、回動軸91aをカム面80におけるアクチュエータ90の係合部92が係合する部分の近くに配置することができ、搬送ローラ28aの原点位置の検出精度を向上させることが可能である。
【0098】
また、回動軸91aは、搬送方向においてカム面80よりも上流側に配置される。
【0099】
このような構成により、回動軸91aを、搬送ローラ28aと同期して回転する回転軸76と、カム面80におけるアクチュエータ90の係合部92が係合する部分との両方の近くに配置することができ、搬送ローラ28aの原点位置の検出精度をより向上させることが可能である。
【0100】
また、シート10にインクを吐出して画像を記録する記録ヘッド31をさらに備え、アクチュエータ90は、上下方向において記録ヘッド31よりも下方に配置される。
【0101】
このような構成により、アクチュエータ90が記録ヘッド31と干渉することがなく、アクチュエータ90の動作が阻害されることがないため、適切に搬送ローラ28aの原点位置を検出することが可能である。
【0102】
また、シート10にインクを吐出して画像を記録する記録ヘッド131をさらに備え、搬送ローラ128aは、上下方向において記録ヘッド131よりも下方に配置され、回動軸191aは、上下方向において搬送ローラ128aの軸中心Cよりも上方に配置される。
【0103】
このような構成により、搬送ローラ128aの下方にアクチュエータ90の回動軸91aが配置されることがないため、搬送ローラ128aの下方のスペースを小さくすることが可能である。
【0104】
また、記録ヘッド131を搬送ローラ128aの軸中心C方向に沿って移動可能に支持するガイドレール144と、ガイドレール144とアクチュエータ190との間に介装され、アクチュエータ190をカム面180側へ向けて付勢するバネ194とをさらに備える。
【0105】
このような構成により、バネ194が搬送ローラ128aの下方に配置されることがなく、搬送ローラ128aの下方のスペースを小さくすることが可能である。
【符号の説明】
【0106】
1 複合機
2 筐体
10 シート
24 記録部
28a、128a 搬送ローラ
31、131 記録ヘッド
32、132 キャリッジ
34、134 用紙検出センサ
44、144 ガイドレール
70 ロータリーエンコーダ
76、176 回転軸
77、177 伝達ギア
78、178 軸受
80、180 カム面
85、185 モータ
86、186 モータフレーム
90、190 アクチュエータ
91a、191a 回動軸
93、193 被検知部
94、194 バネ
100 制御部
C 軸中心
P1、P2 プリンタ部
R 領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14