(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-21
(45)【発行日】2023-08-29
(54)【発明の名称】スライドドア脱着用台車
(51)【国際特許分類】
B62B 3/00 20060101AFI20230822BHJP
B62B 3/04 20060101ALI20230822BHJP
B62B 3/10 20060101ALI20230822BHJP
B62D 65/06 20060101ALI20230822BHJP
【FI】
B62B3/00 D
B62B3/04 B
B62B3/10 Z
B62D65/06 A
(21)【出願番号】P 2019039417
(22)【出願日】2019-03-05
【審査請求日】2022-02-25
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成30年10月25日 ポートメッセなごや 第23回からくり改善くふう展2018にて
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002424
【氏名又は名称】ケー・ティー・アンド・エス弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】馬塲 博充
(72)【発明者】
【氏名】立石 敬二
【審査官】結城 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-269704(JP,A)
【文献】特開2009-248734(JP,A)
【文献】特開2015-186937(JP,A)
【文献】特開平10-58243(JP,A)
【文献】特開2002-29464(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62B 3/00,
B62D 65/06,
B23P 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のスライドドアを取り外すスライドドア脱着用台車であって、
前記スライドドアを受ける受部と、
前記受部を少なくとも2軸方向に移動可能に支持する支持機構と、
前記支持機構を昇降させる昇降機構と、
前記昇降機構を支持する台座と、
前記台座を移動させる車輪と、
前記車両と前記台座との位置決めを行う位置決め機構と、
前記台座に固定され、前記台座の移動を操作可能であるとともに、前記位置決め機構を操作する操作部と、
を備え
、
前記位置決め機構は、前記車両に向けてスライドする位置決め部材と、前記位置決め部材をスライドさせる第1スライド部を有する、
スライドドア脱着用台車。
【請求項2】
前記操作部は、回転移動する回転部を有し、
前記第1スライド部は、前記回転部が一方に回転移動した際に、前記位置決め部材
をスライドして突出
させ、
前記回転部が他方に回転移動した際に、前記位置決め部材
を引き込む、
請求項
1に記載のスライドドア脱着用台車。
【請求項3】
前記車両と前記受部とが、前記スライドドアと前記車両とが離間する方向に一定距離を保つようにガイドするガイド部をさらに備え、
前記支持機構は、
前記受部を前記離間する方向に移動可能に支持する第2スライド部と、
前記受部を前記スライドドアの開閉方向に移動可能に支持する第3スライド部と、
を有し、
前記支持機構は、前記第2スライド部によって前記受部を車両から離間させたのち、前記第3スライド部によって前記受部を前記スライドドアの開方向へ移動させるとともに、前記ガイド部に沿って前記受部を移動させる、
請求項1
または2に記載のスライドドア脱着用台車。
【請求項4】
前記昇降機構は、
前記台座に支持され、前記支持機構を上下に移動可能に支持する昇降部材と、
前記昇降部材に固定され、踏み込むことで前記昇降部材を上方へ移動させるペダルと、
を有する、
請求項1から
3のいずれか1項に記載のスライドドア脱着用台車。
【請求項5】
前記スライドドア
の開閉方向の端部を挟持する挟持部をさらに備える、
請求項1から
4のいずれか1項に記載のスライドドア脱着用台車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スライドドア脱着用台車、特に車両のスライドドアの取り外しに用いられる台車に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車製造工場内において使用されるスライドドアの組付用台車が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1のスライドドアの組付用台車では、自動車製造工場内の自動車組み立てラインに配置され、スライドドアの搬送と組付けの補助作業を行う。また、特許文献1のスライドドアの組付用台車は、フロアを走行移動する台車本体と、フリーローラと、台座と、を備える。台車本体は、スライドドアの受取り位置とスライドドアの組付け位置との間で移動する。フリーローラは、スライドドアを水平移動自在に載置する。台座は、台車本体に対して昇降可能かつ水平旋回可能に設けられる。組付用台車は、スライドドアの組付け位置まで移動し、水平回転と昇降を行う。その後、フリーローラ上のスライドドアを移動させて、スライドドアを組付け位置まで供給する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1のスライドドアの組付用台車は、生産ラインの設備として配置されるため、作業位置などが固定されている。このため、スライドドアの組付けに際して、微調整を要しない。また、特許文献1のスライドドアの組付用台車では、スライドドアを取り外す際の作業については、考慮されていない。自動車の製造工程においては、スライドドアを組付けたのち再度取り外して、スライドドアの建付けなどについて微調整を要することがある。このように、スライドドアを取り外す際は、複数の作業員によって車両を傷つけることなく慎重にスライドドアを取り外すことが必要となる。このため、作業員の負担が大きくなり、製造効率が悪化するという問題がある。
【0005】
本発明の課題は、簡易な操作によって、車両を傷つけることなく、スライドドアを取り外し可能なスライドドア脱着用台車を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るスライドドア脱着用台車は、車両のスライドドアを取り外す際に用いられる。スライドドア脱着用台車は、受部と、支持機構と、昇降機構と、台座と、車輪と、を備える。受部は、スライドドアを受ける。支持機構は、受部を少なくとも2軸方向に移動可能に支持する。昇降機構は、支持機構を昇降させる。台座は、昇降機構を支持する。車輪は、台座を移動させる。
【0007】
このスライドドア脱着用台車では、台座を、受部がスライドドアを受けることができる位置まで移動させたのち、スライドドアを受部に載せる。その後、受部を、昇降機構を用いて持ち上げることで、簡易な操作によってスライドドアの上下のアーム部材を、車両に取り付けられたドアレールから外すことができる。受部は、少なくとも2軸方向へ移動可能である。このため、受部を操作してドアレールから外れたスライドドアを、車両から離間させる方向に移動させることができる。これにより、スライドドアを構成する部品が、車両から離れる。この結果、取り外したスライドドアによって車両を傷つけることを防止できる。また、これにより、簡易な操作によって、車両を傷つけることなく、スライドドアを取り外し可能なスライドドア脱着用台車を提供できる。
【0008】
スライドドア脱着用台車は、位置決め機構と、操作部と、をさらに備えてもよい。位置決め機構は、車両と台座との位置決めを行う。操作部は、台座に固定され台座の移動を操作可能であるとともに、位置決め機構を操作してもよい。位置決め機構は、位置決め部材と、第1スライド部と、を有してもよい。位置決め部材は、車両に向けてスライドしてもよい。第1スライド部は、位置決め部材をスライドさせてもよい。
【0009】
この構成によれば、作業者は台座と車両の位置関係を固定したうえで、スライドドアを取り外しできる。また、位置決め部材を、例えば、車両のタイヤに向けてスライドさせることにより、車両のボデーに接触することなく、台座と車両の位置関係を固定できる。これにより、車両を傷つけることなく、受部が確実にスライドドアを受けることができる。この結果、操作がさらに簡易になる。
【0010】
操作部は、回転移動する回転部を有してもよい。第1スライド部は、回転部が一方に回転移動した際に、位置決め部材をスライドして突出させてもよい。第1スライド部は、回転部が他方に回転移動した際に、位置決め部材を引き込んでもよい。
【0011】
この構成によれば、作業者は操作部を操作するだけで、位置決め部材を操作できる。これにより、簡易な操作で台車と車両の位置決めを行うことができる。
【0012】
スライドドア脱着用台車は、ガイド部をさらに備えてもよい。ガイド部は、車両と受部とが、スライドドアと車両とが離間する方向に一定距離を保つようにガイドする。支持機構は、第2スライド部と、第3スライド部と、を有してもよい。第2スライド部は、受部を離間する方向に移動可能に支持してもよい。第3スライド部は、受部をスライドドアの開閉方向に移動可能に支持してもよい。支持機構は、第2スライドによって受部を車両から離間させたのち、第3スライド部によって受部をスライドドアの開方向へ移動させるとともに、ガイド部に沿って受部を移動させてもよい。
【0013】
この構成によれば、第2スライド部によって、受部が車両から離間する方向に移動したのち、第3スライド部によって受部が開方向に移動する。また、このとき、受部は、ガイド部によって車両と一定距離を保ったままスライドドアの開方向に移動する。支持機構は、受部に載せられたスライドドアを車両に設けられたスライドレールの後端まで移動させたのち、車両からスライドドアを外す。これにより、受部を開方向に移動させる際に、スライドドアに設けられた上部ヒンジおよび下部ヒンジによって車両が傷つくことを確実に防止できる。
【0014】
昇降機構は、昇降部材と、ペダルと、を有してもよい。昇降部材は、台座に支持され、支持機構を上下に移動可能に支持してもよい。ペダルは、昇降部材に固定され、踏み込むことで昇降部材を上方へ移動させてもよい。
【0015】
この構成によれば、作業者はペダルを踏むだけで、昇降部材を用いて支持機構を上下に移動させることができる。これにより、簡易な操作でスライドドアを持ち上げることができる。
【0016】
スライドドア脱着用台車は、挟持部をさらに備えてもよい。挟持部は、スライドドアの開閉方向の端部を挟持する。これにより、スライドドアを取り外す場合に、スライドドアが倒れることを防止できる。この結果、車両を傷つけることなく、スライドドアを取り外すことができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係るスライドドア脱着用台車では、簡易な操作によって、車両を傷つけることなく、スライドドアを取り外すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図2】本発明のスライドドア脱着用台車の支持機構を説明するための模式図。
【
図3】本発明のスライドドア脱着用台車の模式図のAA断面図。
【
図4】本発明のスライドドア脱着用台車の昇降機構を説明するための模式図。
【
図5】本発明のスライドドア脱着用台車の台座、位置決め機構、および、操作部を説明するための模式図。
【
図6】本発明のスライドドア脱着用台車のスライドドア取り外し手順(1)を説明するための図。
【
図7】本発明のスライドドア脱着用台車のスライドドア取り外し手順(2)を説明するための図。
【
図8】本発明のスライドドア脱着用台車のスライドドア取り外し手順(3)を説明するための図。
【
図9】本発明のスライドドア脱着用台車のスライドドア取り外し手順(4)を説明するための図。
【
図10】本発明のスライドドア脱着用台車のスライドドア取り外し手順(5)を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0020】
図1に示すように、スライドドア脱着用台車1は、受部2と、支持機構4と、ガイド部6と、昇降機構8と、台座10と、車輪12と、位置決め機構14と、操作部16と、挟持部18と、を備える。
図6に示すように、スライドドア脱着用台車1は、車両Cに横付けして使用する台車である。なお、本実施形態では、スライドドア脱着用台車1が車両Cに横付けされた場合における、車両C側の方向を車両方向A(
図1および
図6の矢印A参照)、車両Cと離間する方向を離間方向B(
図1および
図6の矢印B参照)と称する。また、車両CのスライドドアSが開く方向を開方向R(
図1および
図6の矢印R参照)、車両CのスライドドアSが閉じる方向を閉方向F(
図1および
図6の矢印F参照)、スライドドアSの開閉方向を開閉方向FR、もしくは、車両前後方向FRと称する。
【0021】
図1および
図2に示すように、受部2は、車両Cに取り付けられたスライドドアS(
図8参照)を受けるための部材である。受部2は、U字型の金属板の上に、ゴムなどの緩衝材が貼られ、スライドドアSを受けた場合(
図8参照)に、スライドドアSに傷がつくことを防止する。
図2および
図3に示すように、受部2の底面には、凸部22が設けられる。凸部22は、支持機構4に回転可能に支持されるとともに、後述するガイド部6にガイドされる。
【0022】
図2に示すように、支持機構4は、受部2を少なくとも2軸方向に移動可能に支持する機構である。また、支持機構4は、受部2を回転可能に保持する。支持機構4は、第2スライド部42と、第3スライド部44を有する。受部2は、第2スライド部42に、スライド可能に支持される。第3スライド部44は、第2スライド部42を、移動可能に支持する。すなわち、第3スライド部44は、受部2を、第2スライド部42を介して移動可能に支持する。第2スライド部42と第3スライド部44は、それぞれ異なる方向に配置されることで、受部2を少なくとも2軸方向に移動させる。本実施形態では、第2スライド部42と第3スライド部44が略直角に配置されることで、受部2が、車両方向A、離間方向B、および、開閉方向FRに自在に移動できる。
【0023】
図2および
図3に示すように、第2スライド部42は、受部2を車両Cと車両方向Aおよび離間方向Bに移動可能に支持する部材である。第2スライド部42は、一対のスライドレール42aおよびスライドレール42bと、孔部42cと、を含む。一対のスライドレール42aおよびスライドレール42bは、互いに平行に配置される。一対のスライドレール42aおよびスライドレール42bは、車両方向Aおよび離間方向Bに沿って延設される。
図2に示すように、受部2は、一対のスライドレール42aおよびスライドレール42b上をスライド可能に支持される。一対のスライドレール42aおよびスライドレール42bの両端には孔部42cが設けられる。孔部42cには、後述する第3スライド部44の一対のスライドレール44aおよびスライドレール44bが挿通する。
【0024】
図2に示すように、第3スライド部44は、受部2を開閉方向FRに移動可能に支持する部材である。第3スライド部44は、一対のスライドレール44aおよびスライドレール44bと、一対の接合部材44cと、を含む。一対のスライドレール44aおよび44bは、互いに平行に配置される。一対のスライドレール44aおよびスライドレール44bは、開閉方向FRに沿って延設される。一対のスライドレール44aおよびスライドレール44bは、第2スライド部42の孔部42cに挿通し、第2スライド部42を開閉方向FRに移動可能に支持する。一対のスライドレール44aおよびスライドレール44bは、互いに接合部材44cで接合され、枠状の第1フレーム45を構成する。
【0025】
図2および
図3に示すように、ガイド部6は、凸部22をガイドすることで、受部2と車両Cを、一定距離に保つ部材である。ガイド部6は、ガイド板62と、ガイド支持部材64と、を有する。ガイド板62は、開閉方向FRに沿って延設される。また、ガイド板62は、一対のスライドレール44aおよびスライドレール44bと、離間方向Bに離れて平行に配置される。ガイド板62は、一対のスライドレール44aおよびスライドレール44bよりも短い長さで延設される。
図3に示すように、ガイド板62は、ガイド支持部材64によって支持される。ガイド支持部材64は、第2フレーム65から延設される。より具体的には、
図1に示すように、第2フレーム65は、一対の短辺部材65aおよび短辺部材65bと、一対の長辺部材65cおよび長辺部材65dで構成された、長方形の枠状部材である。ガイド支持部材64は、第2フレーム65の長辺部材65cおよび長辺部材65dから延設される。
【0026】
図4(a)に示すように、昇降機構8は、支持機構4を昇降させる機構である。昇降機構8は、昇降部材82と、ペダル84と、昇降部付勢部材86と、を有する。昇降部材82は、第1昇降部材82aと、第2昇降部材82bと、支点O1を含む。第1昇降部材82aは、後述する台座10に、支点O2を介して回転可能に支持される。第2昇降部材82bの上端は、支持機構4を支持する。第1昇降部材82aおよび第2昇降部材82bは、支点O1を介して回転可能に接続される。
図1に示すように、昇降部材82は、支持機構4の一対の接合部材44cの延設方向に沿ってそれぞれ3つずつ配置され、支持機構4を支持する。第1昇降部材82aの下端にはペダル84が設けられ、3つの昇降部材82が連動するように固定される。
図4(a)に示すように、昇降部付勢部材86は、支持機構4および台座10に固定され、昇降機構8を自由長状態で支持する。本実施形態では、昇降部付勢部材86はコイルばねである。
【0027】
昇降機構8は、支持機構4が上方から押されると、昇降部材82が支点O1を中心に折れ曲がり、昇降部付勢部材86を押し締めて、支持機構4を降下させる。一方、
図4(b)に示すように、昇降機構8は、ペダル84が踏まれると、第1昇降部材82aが回転することで、昇降部材82が支点O1を中心に突っ張り、支持機構4を上昇させる。なお、本実施形態では昇降機構8は、スライドドア脱着用台車1の開閉方向FRの両方側に設けられる(
図8参照)。
【0028】
図5(a)は、位置決め機構14が引き込まれた状態における、スライドドア脱着用台車1の側面図の模式図と、上面視における模式図である。また、
図5(b)は、位置決め機構14の位置決め部材142が突出した状態における、スライドドア脱着用台車1の側面図の模式図と、上面視における模式図である。
【0029】
図5(a)に示すように、台座10は、昇降機構8、第2フレーム65、車輪12、位置決め機構14、および操作部16を支持する部材である。台座10は、第3フレーム105を有する。第3フレーム105は、一対の短辺部材105aおよび短辺部材105bと、一対の長辺部材105cおよび長辺部材105dで構成された、長方形の枠状部材である。一対の短辺部材105aおよび短辺部材105bには、一対のフレーム部材105eおよびフレーム部材105fが固定される。一対のフレーム部材105eおよびフレーム部材105fは、一対の長辺部材105cおよび長辺部材105dと間隔をあけて平行に設けられる。一対の短辺部材105aおよび短辺部材105bには、昇降機構8の支点O2を回転可能に支持する支点受102がそれぞれ3つずつ設けられる。
図1に示すように、第3フレーム105の各頂点には、支柱104が設けられ、第2フレーム65が固定される。
【0030】
車輪12は、台座10を移動させる部材である。車輪12は、一対のフレーム部材105eおよびフレーム部材105fに固定され、後述する操作部16を作業者が操作することで、スライドドア脱着用台車1が移動する。
【0031】
位置決め機構14は、台座10と車両Cの位置決めを行う機構である。位置決め機構14は、位置決め部材142と、第1スライド部144と、位置決め付勢部材146と、連通紐148と、を有する。
【0032】
位置決め部材142は、車両方向Aに向けてスライドする部材である。位置決め部材142は、2本の棒状部材142aおよび棒状部材142bが突出したフォーク状部材143と、フォーク状部材143に固定されるスライドレール142cを含む。位置決め部材142のフォークの幅は、車両CのタイヤTの前後長(車両前後方向FRの長さ)よりも大きく、タイヤTが棒状部材142aおよび142bの間に収まるように構成される。
【0033】
第1スライド部144は、位置決め部材142を車両方向Aに向けてスライドさせる部材である。第1スライド部144は、円筒形部材144aに、位置決め部材142のスライドレール142cが挿通することによって、位置決め部材142を車両方向Aにスライド可能に支持する。より具体的には、円筒形部材144aは、離間方向Bに孔部144b(
図5(a)および
図5(b)144の破線参照)が設けられ、孔部144bにスライドレール142cが挿通する。円筒形部材144aは、第3フレーム105のフレーム部材105eに固定される。
【0034】
位置決め付勢部材146は、位置決め部材142を車両方向Aに付勢する部材である。位置決め付勢部材146は、フォーク状部材143と、第3フレーム105のフレーム部材105fと、に固定される。位置決め付勢部材146は、位置決め部材142が車両方向Aに突出した状態が自由長となるように固定される。連通紐148は、位置決め部材142を、位置決め付勢部材146の付勢力に逆らって引っ張るための紐である。連通紐148の一端は、位置決め部材142に取り付けられる。連通紐148の他端は、第1滑車148aと、第2滑車148bを介して、後述する操作部16の回転部164に取り付けられる。
【0035】
図5(a)および
図5(b)に示すように、操作部16は、台座10に固定された車輪12を操作し、かつ位置決め機構14を操作する部材である。操作部16は、操作支柱162と、回転部164と、ロック部166と、支点O3と、を有する。操作支柱162は、台座10に固定される。回転部164は、操作支柱162に支点O3を介して回転可能に支持され、上下方向に回転移動する。ロック部166は、第1ロック部材166aと、第2ロック部材166bと、支点O4と、を含む。第1ロック部材166aは、操作支柱162に回転可能に支持される。第2ロック部材166bは、回転部164に回転可能に支持される。第1ロック部材166aと、第2ロック部材166bは、支点O4を介して、互いに回転可能に支持される。
【0036】
図5(a)に示すように、ロック部166は、回転部164が上方(一方)に回転移動すると、第1ロック部材166aおよび第2ロック部材166bが支点O4を中心として回転して互いに当接し、突っ張ることで操作支柱162に対する回転部164の回転をロックする。また、回転部164が上方(一方)に回転移動すると、連通紐148が引っ張られ、連通紐148が取り付けられた位置決め部材142が引き込む。
【0037】
一方、
図5(b)に示すように、ロック部166のロックを解除して、回転部164が下方(他方)に回転移動すると、連通紐148が緩み、位置決め付勢部材146の付勢力によって位置決め部材142がスライドして突出する。
【0038】
図1に示すように、挟持部18は、スライドドアSの開閉方向FRの端部を挟持するための部材である。挟持部18は、アーム部182と、チャック部184と、支点O5と、を有する。挟持部18は、操作支柱162の開閉方向FRに延設されるレール部材168に、開閉方向FRへ移動可能に支持される。アーム部182は、支点O5を介して、レール部材168に回転可能に支持され、レール部材168に対してアーム部182の角度を車両方向Aまたは離間方向Bへ変更可能に設けられる。チャック部184は、フォーク状の形状にゴムなどの緩衝材が巻かており、スライドドアSを傷つけることなく挟み込む。また、挟持部18は、開閉方向FRにそれぞれ1つずつ配置され、スライドドアSの開閉方向FRの端部をそれぞれ挟み込む。
【0039】
次に、
図6から
図10を用いて、スライドドア脱着用台車1を用いた車両CからスライドドアSを取り外すための5段階の作業手順について説明する。
図6から
図10は、車両Cおよびスライドドア脱着用台車1を上方から見た模式図である。なお、本実施形態では、車両Cの車両前後方向FRすなわち開閉方向FRの前方からみて、左側のスライドドアSの取り外し作業手順について説明する。
【0040】
また、
図6に示すように、車両Cは、アッパーレール201aと、センターレール201bと、ロアレール201cと、を備える。アッパーレール201aは、スライドドアSの開口上部に設けられる。センターレール201bは、スライドドアSの開口の車両後方に設けられる。ロアレール201cは、スライドドアSの開口下部に設けられる。スライドドアSには、アッパーアーム202a、センターアーム202b、および、ロアアーム202cが設けられる。また、アッパーアーム202aは、アッパーレール201aに対し下方からに嵌合される。すなわち、スライドドアSを下降させることで、アッパーレール201aからアッパーアーム202aを外すことができる。ロアアーム202cは、ロアレール201cに対し上方から嵌合される。すなわち、スライドドアSを上昇させることで、ロアレール201cからロアアーム202cを外すことができる。また、センターアーム202bは、センターレール201bから車両後方へ引き抜くことで外すことができる。
【0041】
図6に示すように、手順(1)では、スライドドア脱着用台車1を、車両Cの側方にセットする。その後、回転部164を下方に回転操作して位置決め部材142をスライドさせ、台座10から突出させる。この状態で、操作部16を操作し、スライドドア脱着用台車1を、車両CのタイヤTに近づける。
【0042】
次に、
図7に示すように、手順(2)では、位置決め部材142の棒状部材142aをタイヤTの前方面と当接させる。この状態で、車両Cと台座10の位置関係は固定する。また、スライドドアSを開方向Rに移動させ、スライドドアSの開方向端部Sоと受部2が、車両Cの上方から見て重なるように受部2をセットする。
【0043】
次に、
図8に示すように、手順(3)では、支持機構4を上から踏み込み操作することで、支持機構4を上方から押す。支持機構4が上方から押されると、閉方向F側の昇降部材82が支点O1を中心に折れ曲がり、昇降部付勢部材86を押し締めて、支持機構4を降下させる。これにより、受部2が下げられた状態となる。この状態で、支持機構4は、受部2を保持する。次に、受部2が下げられた状態で、スライドドアSを開方向Rへスライドさせて、受部2の上方まで移動させる。スライドドアSを移動させたのち、支持機構4の踏み込み操作を止めて、支持機構4を元の高さに戻し、受部2にスライドドアSを載せる。
【0044】
この状態で、昇降機構8のペダル84を踏み込むと、
図4(b)に示すように、昇降部材82は、第1昇降部材82aが支点O2を中心として回転して突っ張り、支点O1を押し上げるとともに、第1昇降部材82aが支持機構4を上昇させる。
図8に示すように、これにより、受部2が上昇し、ロアアーム202cがロアレール201cから上昇し、ロアアーム202cとロアレール201cとの嵌合が外れる。
【0045】
次に、再び、支持機構4を下方に押し下げ操作し、受部2を下げる。これにより、スライドドアSが下降するとともに、アッパーアーム202aがアッパーレール201aから下降し、嵌合が外れる。この状態になると、スライドドアSの閉方向端部Scは離間方向Bに自在に動くことができる。
【0046】
図9に示すように、手順(4)では、受部2の凸部22を中心として、スライドドアSの閉方向端部Scを離間方向Bに回転移動させ、アッパーアーム202aおよびロアアーム202cを離間方向Bに移動させる。その後、閉方向端部Scのチャック部184で挟持し、スライドドアSが転倒することを防止する。この状態で、受部2に載せられたスライドドアSを、受部2の凸部22をガイド部6に沿わせて、開方向Rへ移動操作する。このとき、挟持部18もレール部材168上を開方向Rに移動する。このように、ガイド部6に沿わせて、スライドドアSを開方向Rへ移動させることで、アッパーアーム202aおよびロアアーム202cが車両Cのボデーに接触し、車両Cを傷つけることを防止している。
【0047】
図10に示すように、手順(5)では、センターレール201bからセンターアーム202bが抜けるまで、スライドドアSを開方向Rへ移動操作する。センターレール201bからセンターアーム202bが抜けると、車両CからスライドドアSが完全に取り外される。その後、挟持部18のチャック部184で、スライドドアSの開方向端部Sоを挟持し、スライドドアSの転倒を防止する。この状態で、スライドドア脱着用台車1を離間方向Bへ移動操作して、スライドドアSの取り外し作業が完了する。
【0048】
以上説明した通り、本発明のスライドドア脱着用台車1では、車両Cを傷つけることなく、車両CからスライドドアSの取り外しが行える。しかも、スライドドアSは受部2に載せられて、第2スライド部42および第3スライド部44を用いて、離間方向B、車両方向A、開閉方向FRに自在に移動可能である。これにより、作業者はスライドドアSを移動方向に操作するだけで、スライドドアSは受部2を介して簡易に移動する。これにより、作業者は簡易な操作でスライドドアSを移動させることができる。また、スライドドアSは、昇降機構8を用いて持ち上げできる。これにより、作業者はスライドドアSを持ち上げることなく、アッパーアーム202aおよびロアアーム202cをアッパーレール201aおよびロアレール201cから外すことができる。この結果、作業者の負担が減り、ひいては作業が簡易になる。
【0049】
<他の実施形態>
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0050】
(a)本実施形態では、車両Cの車両前後方向FRの前方からみて、左側のスライドドアの取り外し作業する際の手順(1)から手順(5)について説明したが、本発明はこれに限定されない。このスライドドア脱着用台車1では、上記手順(1)から手順(5)の逆の手順を行うことで、スライドドアSを車両Cに取り付けも行うことができる。すなわち、スライドドア脱着用台車1は、スライドドアSを車両Cに対して脱着可能である。
【0051】
(b)さらに、本実施形態では、車両Cの車両前後方向FRの前方からみて、左側のスライドドアの取り外し作業について説明したが、本発明はこれに限定されない。このスライドドア脱着用台車1では、昇降機構8は、昇降部材82が支持機構4の接合部材44cの延設方向に沿ってそれぞれ3つずつ配置される。すなわち、昇降部材82は、スライドドアSの開方向Rおよび閉方向Fの両方に配置される。これにより、車両Cの車両前後方向FRの前方からみて、右側のスライドドアの脱着も可能である。
【符号の説明】
【0052】
1:スライドドア脱着用台車,2:受部,4:支持機構
6:ガイド部,8:昇降機構,10:台座,12:車輪
14:位置決め機構,16:操作部,18:挟持部
42:第2スライド部,44:第3スライド部,82:昇降部材
82a:昇降部材,84:ペダル,142:位置決め部材,144:第1スライド部
164:回転部,C:車両,S:スライドドア
A:車両方向,B:離間方向,FR:開閉方向