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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-21
(45)【発行日】2023-08-29
(54)【発明の名称】定着装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/20 20060101AFI20230822BHJP
   G03G 21/16 20060101ALI20230822BHJP
【FI】
G03G15/20 510
G03G21/16 147
G03G15/20 535
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019062907
(22)【出願日】2019-03-28
(65)【公開番号】P2020160398
(43)【公開日】2020-10-01
【審査請求日】2022-03-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116034
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 啓輔
(74)【代理人】
【識別番号】100144624
【弁理士】
【氏名又は名称】稲垣 達也
(72)【発明者】
【氏名】田口 和奈
(72)【発明者】
【氏名】半田 浩司
(72)【発明者】
【氏名】福江 修平
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 知範
(72)【発明者】
【氏名】竹内 健二
【審査官】三橋 健二
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-216910(JP,A)
【文献】特開2015-011142(JP,A)
【文献】特開2010-210912(JP,A)
【文献】特開2015-194785(JP,A)
【文献】特開昭60-198575(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/20
G03G 21/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒータと、
前記ヒータによって加熱される回転体と、
無端ベルトと、
前記回転体との間で前記無端ベルトを挟んでニップ部を形成するニップ形成部材と、
前記ニップ形成部材を保持するホルダと、
前記ホルダを支持する第1ステイと、
前記ニップ部における前記無端ベルトの移動方向において、前記第1ステイの上流側に配置され、前記ホルダを支持する第2ステイと、
前記第1ステイと前記第2ステイを連結する連結部材と、
前記第1ステイを前記回転体に向けて付勢する付勢部材と、を備え、
前記第1ステイは、
前記ホルダに接触する一端部を有するベース部と、
前記ベース部の他端部から屈曲して前記ベース部の前記一端部に向けて延びるヘミング曲げ部と、
を有し、
前記連結部材は、
前記無端ベルトの幅方向において、前記ヘミング曲げ部と異なる位置で前記ベース部に連結され
前記第2ステイにかしめられるカシメ部材と、前記第1ステイに前記カシメ部材を締結するネジと、を備えることを特徴とする定着装置。
【請求項2】
ヒータと、
前記ヒータによって加熱される回転体と、
無端ベルトと、
前記回転体との間で前記無端ベルトを挟んでニップ部を形成するニップ形成部材と、
前記ニップ形成部材を保持するホルダと、
前記ホルダを支持する第1ステイと、
前記ニップ部における前記無端ベルトの移動方向において、前記第1ステイの上流側に配置され、前記ホルダを支持する第2ステイと、
前記第1ステイと前記第2ステイを連結する連結部材と、
前記第1ステイを前記回転体に向けて付勢する付勢部材と、を備え、
前記第1ステイは、
前記ホルダに接触する一端部を有するベース部と、
前記ベース部の他端部から屈曲して前記ベース部の前記一端部に向けて延びるヘミング曲げ部と、
を有し、
前記連結部材は、
前記ベース部に直交する方向に延び、
前記第1ステイに、ネジによって締結され、
前記無端ベルトの幅方向において、前記ヘミング曲げ部と異なる位置で前記ベース部に連結されることを特徴とする定着装置。
【請求項3】
ヒータと、
前記ヒータによって加熱される回転体と、
無端ベルトと、
前記回転体との間で前記無端ベルトを挟んでニップ部を形成するニップ形成部材と、
前記ニップ形成部材を保持するホルダと、
前記ホルダを支持する第1ステイと、
前記ニップ部における前記無端ベルトの移動方向において、前記第1ステイの上流側に配置され、前記ホルダを支持する第2ステイと、
前記第1ステイと前記第2ステイを連結する連結部材と、
前記第1ステイを前記回転体に向けて付勢する付勢部材と、
前記ニップ部における前記無端ベルトの移動方向において、前記ニップ形成部材の上流側で前記無端ベルトの内周面をガイドする上流ガイドと、
前記移動方向において、前記ニップ形成部材の下流側で前記無端ベルトの内周面をガイドする下流ガイドと、を備え、
前記第1ステイは、
前記ホルダに接触する一端部を有するベース部と、
前記ベース部の他端部から屈曲して前記ベース部の前記一端部に向けて延びるヘミング曲げ部と、
を有し、
前記連結部材は、前記無端ベルトの幅方向において、前記ヘミング曲げ部と異なる位置で前記ベース部に連結され、
前記上流ガイドは、前記移動方向に延びるボスを含み、
前記第2ステイは、
前記ホルダと接触する複数の凸部と、
前記ボスが貫通する複数の孔であって、前記幅方向において、前記凸部と異なる位置に配置された複数の孔と、を有することを特徴とする定着装置。
【請求項4】
ヒータと、
前記ヒータによって加熱される回転体と、
無端ベルトと、
前記回転体との間で前記無端ベルトを挟んでニップ部を形成するニップ形成部材と、
前記ニップ形成部材を保持するホルダと、
前記ホルダを支持する第1ステイと、
前記ニップ部における前記無端ベルトの移動方向において、前記第1ステイの上流側に配置され、前記ホルダを支持する第2ステイと、
前記第1ステイと前記第2ステイを連結する連結部材と、
前記第1ステイを前記回転体に向けて付勢する付勢部材と、を備え、
前記第1ステイは、
前記ホルダに接触する一端部を有するベース部と、
前記ベース部の他端部から屈曲して前記ベース部の前記一端部に向けて延びるヘミング曲げ部と、
を有し、
前記連結部材は、前記無端ベルトの幅方向において、前記ヘミング曲げ部と異なる位置で前記ベース部に連結され
前記ニップ形成部材は、
前記回転体との間で前記無端ベルトを挟んで上流ニップ部を形成する上流ニップ形成部材と、
前記上流ニップ形成部材に対して前記移動方向の下流側に配置され、前記回転体との間で前記無端ベルトを挟んで下流ニップ部を形成する下流ニップ形成部材と、を備え、
前記移動方向において、前記ベース部の前記移動方向の中心から前記下流ニップ形成部材の前記移動方向の上流端までの距離は、前記ベース部の前記移動方向の中心から前記上流ニップ形成部材の前記移動方向の下流端までの距離よりも小さいことを特徴とする定着装置。
【請求項5】
前記ホルダは、
前記ニップ形成部材に対して前記回転体と反対側に位置し、前記ニップ形成部材を支持する支持壁と、
前記支持壁から突出して前記第1ステイに接触する複数のリブと、を有し、
前記複数のリブは、前記ニップ部における前記無端ベルトの移動方向に延び、前記無端ベルトの幅方向に間隔を空けて配置されていることを特徴とする請求項1から請求項のいずれか1項に記載の定着装置。
【請求項6】
前記第2ステイは、前記複数のリブのうち一部のリブと接触する少なくとも1つの凸部を有することを特徴とする請求項5に記載の定着装置。
【請求項7】
前記凸部から前記第2ステイの前記幅方向の中央までの距離が、前記凸部から前記第2ステイの前記幅方向の端部までの距離よりも小さいことを特徴とする請求項6に記載の定着装置。
【請求項8】
前記移動方向において、前記ニップ形成部材の下流側で前記無端ベルトをガイドする下流ガイドをさらに備え、
前記第1ステイは、前記下流ガイドを固定するための孔を有し、
前記孔は、前記幅方向において、前記リブとは異なる位置に位置することを特徴とする請求項から請求項7のいずれか1項に記載の定着装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無端ベルトを備えた定着装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ベルト方式の定着装置として、加熱ローラとの間で無端ベルトを挟むパッドと、パッドを支持するホルダと、ホルダを支持するU形状のステイとを備えたものが知られている(特許文献1参照)。具体的に、この技術では、ステイは、2つの壁と、各壁を繋ぐ屈曲部とを有している。そして、各壁の屈曲部とは反対側の端部が、ホルダに接触している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2002-372887号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来技術では、各壁が屈曲部とともに一体に形成されているため、各壁の端部の位置、つまりステイのホルダとの接触面の位置を精度良く配置することが難しかった。そのため、従来技術では、ステイの各端部がホルダに良好に接触せずに、ニップ圧のバラツキが大きくなるおそれがあった。
【0005】
そこで、本発明は、ステイのホルダとの接触面の位置を精度良く配置することができる定着装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明に係る定着装置は、ヒータと、前記ヒータによって加熱される回転体と、無端ベルトと、前記回転体との間で前記無端ベルトを挟んでニップ部を形成するニップ形成部材と、前記ニップ形成部材を保持するホルダと、前記ホルダを支持する第1ステイと、前記ニップ部における前記無端ベルトの移動方向において、前記第1ステイの上流側に配置され、前記ホルダを支持する第2ステイと、前記第1ステイと前記第2ステイを連結する連結部材と、前記第1ステイを前記回転体に向けて付勢する付勢部材と、を備える。
前記第1ステイは、前記ホルダに接触する一端部を有するベース部と、前記ベース部の他端部から屈曲して前記ベース部の前記一端部に向けて延びるヘミング曲げ部と、を有する。
前記連結部材は、前記無端ベルトの幅方向において、前記ヘミング曲げ部と異なる位置で前記ベース部に連結される。
【0007】
この構成によれば、例えばU形状のステイの2つの壁の各端部をホルダに接触させる構造と比べ、別体である各ステイの端部をホルダに接触させればよいため、各ステイのホルダとの接触面の位置を精度良く配置することができ、ニップ圧のバラツキを抑制することができる。また、第1ステイがヘミング曲げ部を有するので、第1ステイの剛性を高くすることができ、付勢部材の力をホルダに良好に伝達させることができる。さらに、連結部材がヘミング曲げ部とは異なる位置に配置されるため、ベース部のうちヘミング曲げ部によって剛性が高くなっている部位の強度が損なわれるのを抑制することができる。
【0008】
また、前記連結部材は、前記第2ステイにかしめられるカシメ部材と、前記第1ステイに前記カシメ部材を締結するネジと、を備えていてもよい。
【0009】
これによれば、例えばカシメ部材を第1ステイにかしめる構造と比べ、荷重が入力される第1ステイの平面度を保つことができる。
【0010】
また、前記第2ステイは、前記ホルダと接触する複数の凸部と、複数の孔とを有し、前記凸部は、前記幅方向において、前記孔と異なる位置に配置されていてもよい。
【0011】
これによれば、ホルダから力を受ける凸部の位置に孔が形成されないので、第2ステイの変形を抑制することができ、圧力分布のバラツキを抑制することができる。
【0012】
また、前記ホルダは、前記ニップ形成部材に対して前記回転体と反対側に位置し、前記ニップ形成部材を支持する支持壁と、前記支持壁から突出して前記第1ステイに接触する複数のリブと、を有し、前記複数のリブは、前記ニップ部における前記無端ベルトの移動方向に延び、前記無端ベルトの幅方向に間隔を空けて配置されていてもよい。
【0013】
これによれば、例えば支持壁の全面を第1ステイに接触させる構造と比べ、各リブの第1ステイとの接触面の精度を向上することができ、幅方向におけるニップ圧分布を略均一にすることができる。また、例えば幅方向に長いリブを設ける場合よりも、支持壁が第1ステイに沿って変形しやすくなるので、幅方向におけるニップ圧分布を略均一にすることができる。
【0014】
また、前記ニップ形成部材は、前記回転体との間で前記無端ベルトを挟んで上流ニップ部を形成する上流ニップ形成部材と、前記上流ニップ形成部材に対して前記移動方向の下流側に配置され、前記回転体との間で前記無端ベルトを挟んで下流ニップ部を形成する下流ニップ形成部材と、を備え、前記移動方向において、前記第1ステイから前記下流ニップ形成部材の前記移動方向の上流端までの距離は、前記第1ステイから前記上流ニップ形成部材の前記移動方向の下流端までの距離よりも小さくてもよい。
【0015】
これによれば、付勢部材から付勢力を受ける第1ステイが、下流ニップ形成部材寄りに配置されるので、下流ニップ部のニップ圧を適正な圧力にすることができる。
【0016】
また、前記第2ステイは、前記複数のリブのうち一部のリブと接触する少なくとも1つの凸部を有していてもよい。
【0017】
これによれば、第1ステイと第2ステイによって、支持壁を良好に支持することができる。
【0018】
また、前記凸部から前記第2ステイの前記幅方向の中央までの距離が、前記凸部から前記第2ステイの前記幅方向の端部までの距離よりも小さくてもよい。
【0019】
これによれば、凸部が第2ステイの幅方向の中央寄りに配置されるので、支持壁の第2ステイで支持される部分のうち幅方向の中央の部分が第2ステイ側に変形するのを抑制することができる。
【0020】
また、前記定着装置は、前記移動方向において、前記ニップ形成部材の下流側で前記無端ベルトをガイドする下流ガイドをさらに備え、前記第1ステイは、前記下流ガイドを固定するための孔を有し、前記孔は、前記幅方向において、前記リブとは異なる位置に位置していてもよい。
【0021】
これによれば、第1ステイのうちリブから力が伝わる部分に、孔がないので、第1ステイの変形を抑えることができ、ニップ圧をより安定させることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、ステイのホルダとの接触面の位置を精度良く配置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の一実施形態に係るレーザプリンタを示す断面図である。
図2】定着装置を示す断面図である。
図3】無端ベルトの内側に配置される各部材を示す分解斜視図である。
図4】ニップ形成部材、ホルダおよびバネを拡大して示す分解斜視図(a)と、取付ボス周りの構造を示す断面図(b)である。
図5】ニップ形成部材およびバネが取り付けられた状態のホルダを回転体側から見た平面図である。
図6】係合部周りの構造を示す斜視図(a)、平面図(b)および側面図(c)である。
図7】ニップ形成部材、ホルダ、ステイおよび下流ガイドを、回転体とは反対側から見た分解斜視図である。
図8】ホルダ本体を回転体とは反対側から見た斜視図(a)と、各延出壁と第1ステイとの関係を示す断面図(b)である。
図9】上流ガイドを移動方向下流側から見た斜視図であり、上流ガイドに摺動シートの上流端部を係合させた状態を示す図(a)と、上流ガイドと第2ステイとで摺動シートの上流端部を挟んだ状態を示す図(b)である。
図10】ステイの連結部材周りの構造を示す断面図(a)と、上流ガイド、第1ステイおよび下流ガイドを共締めする部分の構造を示す断面図(b)と、上流ガイドと第2ステイを固定する部分の構造を示す断面図(c)である。
図11】加圧ユニットを所定方向に直交する面で切った断面図であり、各ネジの位置関係などを示す図である。
図12】ホルダおよび第1ステイを移動方向の下流側から見た側面図である。
図13】押圧機構などを分解して示す分解斜視図である。
図14】ホルダ、第1ステイ、移動規制部材およびブラケット等を組み付けた状態を示す斜視図である。
図15】押圧機構などを幅方向内側から見た側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、発明の一実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
図1に示すように、実施形態に係る定着装置8は、レーザプリンタなどの画像形成装置1で使用される。画像形成装置1は、本体筐体2と、シート供給部3と、露光装置4と、現像剤像形成部5と、定着装置8とを備えている。
【0025】
シート供給部3は、本体筐体2内の下部に設けられ、紙などのシートSが収容されるシートトレイ31と、シート供給機構32とを備えている。シートトレイ31内のシートSは、シート供給機構32により現像剤像形成部5に供給される。
【0026】
露光装置4は、本体筐体2内の上部に配置され、図示しない光源装置、符号を省略して示すポリゴンミラー、レンズ、反射鏡などを備えている。露光装置4は、光源装置から出射される画像データに基づく光ビーム(一点鎖線参照)を感光体ドラム61の表面で高速走査することで、感光体ドラム61の表面を露光する。
【0027】
現像剤像形成部5は、露光装置4の下方に配置されている。現像剤像形成部5は、プロセスカートリッジとして構成され、本体筐体2の前部に設けられたフロントカバー21を開いたときにできる開口から本体筐体2に対して着脱可能となっている。現像剤像形成部5は、感光体ドラム61と、帯電器62と、転写ローラ63と、現像ローラ64と、供給ローラ65と、乾式トナーからなる現像剤を収容する現像剤収容部66とを備えている。
【0028】
現像剤像形成部5は、帯電器62により感光体ドラム61の表面を一様に帯電する。その後、感光体ドラム61は、露光装置4からの光ビームにより表面が露光されることで、表面に画像データに基づく静電潜像が形成される。また、現像剤像形成部5は、現像剤収容部66内の現像剤を、供給ローラ65を介して現像ローラ64に供給する。
【0029】
そして、現像剤像形成部5は、現像ローラ64上の現像剤を感光体ドラム61上に形成された静電潜像に供給する。これにより、静電潜像が可視像化され、感光体ドラム61上に現像剤像が形成される。その後、現像剤像形成部5は、シート供給部3から供給されたシートSを感光体ドラム61と転写ローラ63との間で搬送することにより感光体ドラム61上の現像剤像をシートSに転写する。
【0030】
定着装置8は、現像剤像形成部5の後方に配置されている。定着装置8の詳細については後述する。定着装置8は、現像剤像が転写されたシートSを通過させることにより現像剤像をシートSに熱定着する。画像形成装置1は、現像剤像が熱定着されたシートSを搬送ローラ23と排出ローラ24により本体筐体2の外の排紙トレイ22上に排出する。
【0031】
図2に示すように、定着装置8は、加熱ユニット81と、加圧ユニット82とを備えている。加圧ユニット82は、後述する押圧機構300(図15参照)によって加熱ユニット81に向けて付勢されている。なお、以下の説明では、加圧ユニット82を加熱ユニット81に付勢する方向を、「所定方向」と称する。本実施形態では、所定方向は、後述する幅方向および移動方向と直交する方向であり、加熱ユニット81と加圧ユニット82が向かい合う方向である。
【0032】
加熱ユニット81は、ヒータ110と、回転体120とを備えている。また、加圧ユニット82は、無端ベルト130と、ニップ形成部材Nと、ホルダ140と、ステイ200と、ベルトガイドGと、摺動シート150とを備えている。なお、以下の説明では、無端ベルト130の幅方向を単に「幅方向」という。幅方向は、回転体120の回転軸線が延びる方向である。幅方向は、所定方向に直交している。
【0033】
ヒータ110は、ハロゲンランプであり、通電によって発光するとともに発熱し、輻射熱によって回転体120を加熱する。ヒータ110は、回転体120の回転軸線に沿って回転体120の内側を通るように配置されている。
【0034】
回転体120は、幅方向に長い筒状のローラであり、ヒータ110によって加熱される。回転体120は、金属などからなる素管121と、素管121の外周面を覆う弾性層122とを有している。弾性層122は、シリコンゴムなどのゴムからなる。なお、本実施形態において、回転体120は、幅方向両端の外径が幅方向中央の外径よりも大きくなっており、幅方向の中央から両端に向かうにつれて外径が徐々に大きくなるコンケーブ形状を有している。但し、回転体の形状はこれに限定されない。回転体は、例えば、幅方向における外径が均一な円筒状のローラであってもよい。また、回転体は、その外径が幅方向の中央から両端に近づくにつれ徐々に小さくなるクラウン形状のローラであってもよい。
【0035】
回転体120は、後述するサイドフレーム83(図15参照)に回転可能に支持されており、本体筐体2内に設けられた図示しないモータから駆動力が入力されることで図2の反時計回りに回転駆動する。
【0036】
無端ベルト130は、長尺筒状の部材であり、可撓性を有している。図示は省略するが、無端ベルト130は、金属や樹脂などからなる基材と、基材の外周面を覆う離型層とを有している。無端ベルト130は、回転体120が回転したときに回転体120またはシートSとの摩擦によって図2の時計回りに従動回転する。無端ベルト130の内周面には、グリスなどの潤滑剤が付けられている。無端ベルト130の内側には、ニップ形成部材N、ホルダ140、ステイ200、ベルトガイドGおよび摺動シート150が配置されている。
【0037】
つまり、ニップ形成部材N、ホルダ140、ステイ200、ベルトガイドGおよび摺動シート150は、無端ベルト130に覆われている。ここで、ホルダ140およびステイ200は、ニップ形成部材Nを支持する支持部材として機能する。図3に示すように、ニップ形成部材N、ホルダ140、ステイ200、ベルトガイドGおよび摺動シート150は、幅方向の寸法が、幅方向に直交する各方向における寸法よりも大きくなるように形成されている。
【0038】
図2および図3に示すように、ニップ形成部材Nは、回転体120との間で無端ベルト130を挟んでニップ部NPを形成する部材である。ニップ形成部材Nは、上流ニップ形成部材N1と、下流ニップ形成部材N2とを備えている。
【0039】
上流ニップ形成部材N1は、上流パッドP1と、上流固定板B1とを有している。
上流パッドP1は、直方体状の部材である。上流パッドP1は、シリコンゴムなどのゴムからなる。上流パッドP1は、回転体120との間で無端ベルト130を挟んで上流ニップ部NP1を形成する。
【0040】
なお、以下の説明では、上流ニップ部NP1および後で詳述するニップ部NPにおける無端ベルト130の移動方向を単に「移動方向」という。なお、本実施形態において、移動方向は、回転体120の外周面に沿った方向であるが、この方向は、おおよそ所定方向と幅方向に直交する方向に沿った方向であるため、所定方向と幅方向に直交する方向として図示することとする。なお、移動方向は、ニップ部NPでのシートSの搬送方向と同じ方向である。
【0041】
上流パッドP1は、上流固定板B1の回転体120側の面に固定されている。上流パッドP1は、上流固定板B1の上流端よりも移動方向の上流側に僅かに突出している。
【0042】
上流固定板B1は、上流パッドP1よりも硬い部材、例えば金属などからなる。上流固定板B1は、幅方向における長さが上流パッドP1よりも長い。そして、上流固定板B1の幅方向の各端部B11,B12は、幅方向において、上流パッドP1の各端部よりも外側に位置している。
【0043】
下流ニップ形成部材N2は、上流ニップ形成部材N1に対して移動方向の下流側に間隔を空けて配置されている。下流ニップ形成部材N2は、下流パッドP2と、下流固定板B2とを有している。
【0044】
下流パッドP2は、直方体状の部材である。下流パッドP2は、シリコンゴムなどのゴムからなる。下流パッドP2は、回転体120との間で無端ベルト130を挟んで下流ニップ部NP2を形成する。下流パッドP2は、移動方向において、上流パッドP1から離れている。
【0045】
このため、上流ニップ部NP1と下流ニップ部NP2との間には、加圧ユニット82からの圧力が直接作用しない中間ニップ部NP3が存在する。この中間ニップ部NP3では、無端ベルト130は回転体120に接触するものの、回転体120との間で無端ベルト130を挟む部材が存在しないため、圧力はほとんど加わらない。従って、シートSは、回転体120によって加熱されつつ、ほぼ加圧されることなく中間ニップ部NP3を通過する。本実施形態では、上流ニップ部NP1の上流端から下流ニップ部NP2の下流端までの領域、即ち、無端ベルト130の外周面と回転体120とが接触する全ての領域をニップ部NPと称する。つまり、本実施形態では、ニップ部NPは、上流パッドP1および下流パッドP2からの押圧力が加わらない部分を含む。
【0046】
下流パッドP2は、下流固定板B2の回転体120側の面に固定されている。下流パッドP2は、下流固定板B2の下流端よりも移動方向の下流側に僅かに突出している。
【0047】
下流固定板B2は、下流パッドP2よりも硬い部材、例えば金属などからなる。下流固定板B2は、幅方向における長さが下流パッドP2よりも長い。そして、下流固定板B2の幅方向の各端部B21,B22は、幅方向において、下流パッドP2の各端部よりも外側に位置している。
【0048】
なお、上流パッドP1の硬さは、回転体120の弾性層122の硬さよりも大きい。また、下流パッドP2の硬さは、上流パッドP1の硬さよりも大きい。
【0049】
ここで、硬さとは、ISO7619-1に規定されているデュロメータ硬さのことである。デュロメータ硬さは,規定した条件下で試験片に規定の押針を押し込んだときの押針の押込み深さから得られる値である。例えば、弾性層122のデュロメータ硬さが5の場合、上流パッドP1のデュロメータ硬さは6~10、下流パッドP2のデュロメータ硬さは70~90であることが好ましい。
【0050】
なお、シリコンゴムの硬さは、製造時に添加する添加物(シリカ系充填剤やカーボン系充填剤)の比率を変えることで調整することができる。具体的には、添加物の比率を大きくすると、ゴムの硬さが大きくなる。また、シリコン系のオイルを添加することで、硬さを小さくすることもできる。ゴムの製法としては、液状射出成型や押出成型を採用することができる。一般的には、低硬度ゴムは、液状射出成型が適しており、高硬度ゴムは、押出成形が適している。
【0051】
ホルダ140は、ニップ形成部材Nを保持する部材である。ホルダ140は、耐熱性を有する樹脂などからなる。ホルダ140は、ホルダ本体141と、2つの係合部142,143とを有している。
【0052】
ホルダ本体141は、ニップ形成部材Nを保持する部位である。ホルダ本体141の大部分は、幅方向において、無端ベルト130の範囲内に配置されている。詳しくは、図5に示すように、ホルダ本体141のうち、後述する側壁W5の各突出部W10,W11よりも幅方向内側の部分が、無端ベルト130の幅BB内に配置され、側壁W5の各突出部W10,W11を含む部分が、無端ベルト130の幅BB外に配置されている。なお、後述するバネSPは、無端ベルト130の幅BB内に配置されている。図2および図3に示すように、ホルダ本体141は、ステイ200(後述する第1ステイ210および第2ステイ220)で支持されている。
【0053】
各係合部142,143は、ホルダ本体141の幅方向の各端部から延出している。各係合部142,143は、幅方向において、無端ベルト130と異なる位置に配置されている。詳しくは、図5および図12に示すように、各係合部142,143は、無端ベルト130の幅BB外に配置されている。図2および図3に示すように、各係合部142,143は、後述する第1ステイ210の幅方向の各端部に係合する。
【0054】
ステイ200は、ホルダ140に対してニップ形成部材Nと反対側に位置してホルダ140を支持する部材である。ステイ200は、第1ステイ210と、第2ステイ220とを備えている。
【0055】
第1ステイ210は、ホルダ140のホルダ本体141を支持する部材である。第1ステイ210は、金属などからなる。第1ステイ210は、ベース部211と、ヘミング曲げ部HBとを有している。
【0056】
ベース部211は、ホルダ140側の一端部に、ホルダ140のホルダ本体141に接触する接触面Ftを有している。接触面Ftは、所定方向と垂直な平面である。ベース部211は、ヘミング曲げ部HBに対して移動方向の下流側に配置される下流壁として構成されている。ベース部211は、移動方向の下流側に位置する下流面Faと、移動方向の上流側に位置する上流面Fbとを有している。
【0057】
ヘミング曲げ部HBは、ヘミング加工により曲げられた部分である。ヘミング曲げ部HBは、ベース部211の他端部から屈曲してベース部211の一端部に向けて延びている。ヘミング曲げ部HBは、ベース部211から屈曲する屈曲部212と、屈曲部212からホルダ本体141側に延出する上流壁213とを有している。上流壁213は、下流壁であるベース部211の移動方向の上流側に配置されている。上流壁213は、ベース部211と平行に配置されている。上流壁213は、第1ステイ210の板厚よりも小さな間隔を空けてベース部211と移動方向で対面している。
【0058】
ヘミング曲げ部HBは、幅方向における長さがベース部211よりも短い。ベース部211の幅方向の各端部は、幅方向において、ヘミング曲げ部HBの各端部よりも外側に位置している。
【0059】
ベース部211は、幅方向の両端部に、後述する押圧機構300(図15参照)から力を受ける荷重入力部211Aをそれぞれ有している。荷重入力部211Aは、所定方向においてニップ形成部材Nとは反対側に開口する凹部であり、所定方向においてベース部211のニップ形成部材Nとは反対側の端部に形成されている。
【0060】
荷重入力部211Aには、樹脂などからなる緩衝部材BFが取り付けられている。緩衝部材BFは、金属製のベース部211と、後述する金属製の押圧アーム310(図15参照)とが擦れ合うのを抑制するための部材である。緩衝部材BFは、荷重入力部211Aに嵌合する嵌合部BF1と、ベース部211の幅方向の端部に対して移動方向の上流側と下流側に配置される一対の脚部BF2とを有している。
【0061】
第2ステイ220は、ホルダ140のホルダ本体141を支持する部材である。第2ステイ220は、金属などからなる。第2ステイ220は、移動方向において、第1ステイ210の上流側に配置されている。第2ステイ220は、第1ステイ210の上流壁213と平行に配置されるベース部221と、ベース部221のニップ形成部材Nとは反対側の端部から第1ステイ210に向けて延びる延出部222とを有している。
【0062】
ベース部221は、幅方向の長さが延出部222および第1ステイ210のヘミング曲げ部HBよりも長い。ベース部221の幅方向の各端部は、幅方向において、延出部222およびヘミング曲げ部HBの各端部よりも外側に位置している。そして、第1ステイ210のベース部211の幅方向の各端部と、第2ステイ220のベース部221の幅方向の各端部は、連結部材CMによって連結されている。つまり、連結部材CMは、幅方向において、ヘミング曲げ部HBと異なる位置でベース部211に連結されている。
【0063】
図10(a)に示すように、連結部材CMは、第2ステイ220にかしめられるカシメ部材SWと、第1ステイ210にカシメ部材SWを締結する第2ネジSC2と、を備えている。カシメ部材SWは、第1ステイ210と第2ステイ220の間に挟まれるベース部SW1と、ベース部SW1の一端から突出する第1突起SW2と、ベース部SW1の他端から突出する第2突起SW3とを有している。
【0064】
第2ステイ220は、第2突起SW3を貫通させる孔Hfを有している。第2突起SW3は、孔Hfから移動方向の上流側に突出しており、突出した先端がかしめられている。これにより、第2突起SW3のかしめられた先端とベース部SW1の他端との間で、第2ステイ220が挟持されている。
【0065】
第1ステイ210は、第1突起SW2が入る孔H11を有している。第1突起SW2は、先端に、第2ネジSC2がねじ込まれる穴Haを有している。穴Haは、底を有する凹形状である。穴Haに第2ネジSC2がねじ込まれることで、第2ネジSC2の頭部SC21とベース部SW1の一端との間で、第1ステイ210が挟持されている。
【0066】
第1突起SW2が入る孔H11は、図3に示すように、2つの連結部材CMに対応した位置に配置されている。2つのうち一方の孔H11は、丸孔であり、他方の孔H11は、幅方向に長い長孔となっている。
【0067】
図2および図3に示すように、ベルトガイドGは、無端ベルト130の内周面131をガイドする部材である。ベルトガイドGは、耐熱性を有する樹脂などからなる。ベルトガイドGは、上流ガイドG1と、下流ガイドG2とを有している。
【0068】
上流ガイドG1は、無端ベルト130の回転方向、詳しくは、ニップ部NPにおける無端ベルト130の移動方向において、ニップ形成部材Nの上流側で無端ベルト130の内周面131をガイドする上流ガイド面Fuを有している。詳しくは、上流ガイド面Fuは、摺動シート150を介して無端ベルト130の内周面131をガイドしている。上流ガイドG1は、移動方向において、上流パッドP1から離れている。
【0069】
下流ガイドG2は、無端ベルト130の回転方向、詳しくは移動方向において、ニップ形成部材Nの下流側で無端ベルト130をガイドする下流ガイド面Fdを有している。詳しくは、下流ガイド面Fdは、摺動シート150を介して無端ベルト130の内周面131をガイドしている。下流ガイドG2は、移動方向において、下流パッドP2から離れている。下流ガイドG2は、所定方向において、下流パッドP2よりも回転体120の回転中心X1から離れている。
【0070】
摺動シート150は、各パッドP1,P2と無端ベルト130との摩擦抵抗を低減するための矩形のシートである。摺動シート150は、ニップ部NPにおいて、無端ベルト130の内周面131と各パッドP1,P2との間で挟まれている。摺動シート150は、弾性変形可能な材料からなる。なお、摺動シート150の材料は、どのようなものであってもよいが、本実施形態では、ポリイミドを含有した樹脂シートを採用している。
【0071】
摺動シート150は、ベース部151と、複数(6つ)のフック152とを有する。ベース部151は、矩形のシート状に形成されている。ベース部151は、無端ベルト130の内周面131に摺動する摺動面Fs(図2参照)を有している。ベース部151は、無端ベルト130の回転方向における上流端に位置する上流端部151Aと、下流端に位置する下流端部151Bとを有している。
【0072】
ベース部151の上流端部151Aは、上流ガイドG1に固定されている。ベース部151は、上流ガイド面Fu、ニップ形成部材Nおよび下流ガイド面Fdを覆うように配置されている。
【0073】
フック152は、ベース部151の下流端部151Bに設けられている。フック152は、摺動シート150の一部分である。言い換えると、フック152は、シート状であり、弾性変形可能となっている。フック152は、先端部152Aと、ネック部152Bとを有している。
【0074】
先端部152Aは、ベース部151から遠ざかるほど幅(幅方向の長さ)が狭くなる形状となっている。先端部152Aは、ネック部152Bから幅方向の一方側と他方側に突出している。ネック部152Bは、先端部152Aとベース部151を接続している。ネック部152Bの幅(幅方向の長さ)は、先端部152Aの最大幅よりも狭い。
【0075】
下流ガイドG2は、フック152が係合するフック係合部G21を有している。フック係合部G21は、複数のフック152に対応して複数(6つ)設けられている。フック152およびフック係合部G21は、幅方向において、間隔を空けて複数配置されている。
【0076】
フック係合部G21は、フック152が係合する開口Hgを有している。フック152の先端部152Aの先端の幅およびネック部152Bの幅は、開口Hgの幅よりも小さい。また、先端部152Aの最大幅は、開口Hgの幅よりも大きい。
【0077】
図2に示すように、フック係合部G21は、下流ガイド面Fdよりも無端ベルト130の回転方向の下流側の位置で、かつ、無端ベルト130から離れた位置に配置されている。フック係合部G21は、第1ステイ210のベース部211に対して移動方向の下流側に離れて配置されている。
【0078】
フック係合部G21は、第1ステイ210のベース部211と移動方向で対面している。詳しくは、フック係合部G21の開口Hgは、移動方向において、ベース部211と対向している。摺動シート150のフック152は、開口Hgに対して移動方向の下流側から差し込まれることで、開口Hgに係合する。
【0079】
フック係合部G21とベース部211の移動方向の間隔は、フック152の先端部152Aの長さよりも大きい。また、フック152のネック部152Bの長さは、フック係合部G21の厚さよりも大きい。
【0080】
図4(a)に示すように、ホルダ本体141は、支持壁W1と、上流壁W2と、中央壁W3と、下流壁W4と、一対の側壁W5とを有している。なお、ホルダ本体141は、幅方向に略対称な構造となっている。以下の説明では、ホルダ本体141の幅方向の端部の構造については、一方側(図示右側)を代表して説明し、他方側については説明を省略する。
【0081】
支持壁W1は、ニップ形成部材Nを支持する壁であり、ニップ形成部材Nに対して回転体120と反対側に位置している。支持壁W1は、上流固定板B1を支持する上流支持面F1と、下流固定板B2を支持する下流支持面F2とを有している。幅方向に直交する断面において、上流支持面F1および下流支持面F2は、所定方向に対して垂直となっている。上流支持面F1および下流支持面F2は、所定方向において同じ位置に配置されている。また、移動方向と直交する断面において、上流支持面F1および下流支持面F2は、幅方向の両端よりも幅方向の中央の方が回転体140の回転中心X1に近い湾曲形状を有している。言い換えると、上流支持面F1および下流支持面F2は、幅方向の中央が回転体120に向けて突出した中凸形状を有している。また、上流支持面F1と下流支持面F1の回転体120に向けた突出量は、ほぼ同じである。
【0082】
支持壁W1の幅方向の両端部には、取付ボスW6(図6(a)も参照)がそれぞれ設けられている。取付ボスW6は、後述するバネSPが取り付けられる部位である。図4(b)に示すように、取付ボスW6は、所定方向において、上流固定板B1および下流固定板B2よりも回転体120から遠い位置に位置している。図4(a)および図5に示すように、取付ボスW6は、支持壁W1の幅方向の各端部から幅方向外側に向けて突出している。取付ボスW6は、移動方向において、上流固定板B1の一端部B11と下流固定板B2の一端部B21との間、および、上流固定板B1の他端部B12と下流固定板B2の他端部B22との間に位置している。
【0083】
バネSPは、上流ニップ形成部材N1および下流ニップ形成部材N2を互いに離れる方向に付勢する部材である。詳しくは、バネSPは、移動方向において、上流ニップ形成部材N1を上流壁W2に向けて付勢するとともに、下流ニップ形成部材N2を下流壁W4に向けて付勢している。また、バネSPは、所定方向において、上流ニップ形成部材N1を支持壁W1の上流支持面F1に向けて付勢するとともに、下流ニップ形成部材N2を支持壁W1の下流支持面F2に向けて付勢している。
【0084】
バネSPは、コイル部S1と、第1アーム部S2と、第2アーム部S3とを有している。コイル部S1は、線材が一巻き以上に巻回された部分である。取付ボスW6は、コイル部S1に入ることで、バネSPを支持している。
【0085】
第1アーム部S2は、コイル部S1の一端から移動方向上流側および回転体120側に斜めに延びて上流固定板B1の一端部B11に接触する部分である。詳しくは、上流固定板B1の一端部B11の下流端には、上流側に向けて凹む凹部B13が形成されている。第1アーム部S2は、凹部B13内に入って、凹部B13の底に接触している。
【0086】
第2アーム部S3は、コイル部S1の他端から移動方向下流側および回転体120側に斜めに延びて下流固定板B2の一端部B21に接触する部分である。詳しくは、下流固定板B2の一端部B21は、下流固定板B2の幅方向の中央部よりも幅(移動方向の長さ)が小さく形成されている。下流固定板B2の一端部B21の上流端は、中央部の上流端よりも下流側に位置している。そして、上流固定板B1の一端部B11に形成される凹部B13の底と下流固定板B2の一端部B21との移動方向における間隔は、コイル部S1の外径よりも大きい。
【0087】
ここで、本実施形態では、ホルダ140の幅方向の一端側(図示右側)に配置されるバネSPと、他端側に配置されるバネSPは、同一形状のものが用いられている。そのため、図5に示すように、ホルダ140の幅方向の一端側(図示右側)に配置されるバネSPでは、上流固定板B1を付勢する第1アーム部S2が第2アーム部S3よりも幅方向内側に配置される。一方、ホルダ140の幅方向の他端側に配置されるバネSPでは、下流固定板B2を付勢する第2アーム部S3が第1アーム部S2よりも幅方向内側に配置される。
【0088】
上流固定板B1の他端部B12は、上流固定板B1の幅方向の中央部よりも幅が小さく形成されている。他端部B12の下流端は、一端部B11の凹部B13の底と、移動方向において、同じ位置に配置される。他端側に配置されるバネSPの第1アーム部S2は、上流固定板B1の他端部B12に接触している。
【0089】
下流固定板B2の他端部B22の上流端には、下流側に向けて凹む凹部B23が形成されている。凹部B23の底は、下流固定板B2の一端部B21の上流端と、移動方向において、同じ位置に配置される。他端側に配置されるバネSPの第2アーム部S3は、凹部B23内に入って、凹部B23の底に接触している。
【0090】
つまり、各固定板B1,B2の各凹部B13,B23は、それぞれ幅方向内側に位置するアーム部S2,S3と係合する位置に配置されている。ここで、幅方向外側に配置されるアーム部に対応して凹部を形成した場合には、固定板の端部の強度を確保すべく、固定板の幅方向の端を凹部から所定距離離す必要があるため、固定板の幅方向の長さが大きくなるおそれがある。これに対し、本実施形態では、各凹部B13,B23が、幅方向内側に位置するアーム部S2,S3と係合する位置に配置されるため、各固定板B1,B2が幅方向に大型化することが抑制されている。
【0091】
図4に戻って、第1アーム部S2の先端および第2アーム部S3の先端は、屈曲部S4をそれぞれ有している。屈曲部S4は、環状に形成されている。第1アーム部S2の屈曲部S4は、第1アーム部S2から第2アーム部S3に向けて突出している。また、第2アーム部S3の屈曲部S4は、第2アーム部S3から第1アーム部S2に向けて突出している。
【0092】
なお、バネSPは、定着装置8の状態が図2に示すニップ状態である場合において、摺動シート150と干渉しない大きさとなっている。具体的には、バネSPは、ホルダ140に取り付けられた状態において、回転体120側の端部が、上流壁W2や下流壁W4の回転体120側の端部と略同じ位置(もしくは端部よりも回転体120から離れた位置)に位置している。
【0093】
上流壁W2、中央壁W3および下流壁W4は、支持壁W1から回転体120に向けて突出している。上流壁W2は、上流ニップ形成部材N1の上流パッドP1と接触することで、移動方向において、上流ニップ形成部材N1の上流側への移動を規制する第1規制部材として機能している。上流壁W2は、支持壁W1の上流端に配置されている。上流壁W2は、幅方向において、支持壁W1よりも外側に延出し、幅方向外側の端部がニップ形成部材Nから離れる方向に延出している。
【0094】
下流壁W4は、下流ニップ形成部材N2の下流パッドP2と接触することで、移動方向において、下流ニップ形成部材N2の下流側への移動を規制する第2規制部材として機能している。下流壁W4は、支持壁W1の下流端に配置されている。下流壁W4は、幅方向において、支持壁W1よりも外側に延出し、幅方向外側の端部がニップ形成部材Nから離れる方向に延出している。
【0095】
中央壁W3は、移動方向において、上流壁W2と下流壁W4との間であって、上流壁W2および下流壁W4から離れた位置に配置されている。
【0096】
そして、上流壁W2と中央壁W3の間に、前述した上流支持面F1が配置されている。また、中央壁W3と下流壁W4の間に、前述した下流支持面F2が配置されている。なお、上流パッドP1は、中央壁W3から離れた位置に配置されている(図5参照)。また、下流パッドP2は、中央壁W3から離れた位置に配置されている(図5参照)。
【0097】
側壁W5は、幅方向において、支持壁W1と係合部142,143の間に配置されている。側壁W5は、幅方向と交差する方向、詳しくは直交する方向に延びている。側壁W5は、上流壁W2の幅方向の端部と下流壁W4の幅方向の端部を連結している。側壁W5は、幅方向において、支持壁W1から離れている。
【0098】
側壁W5は、回転体120側の端部に、回転体120から離れる方向に凹む切欠部W7を有している。切欠部W7は、移動方向において、取付ボスW6に対応する位置に位置している。言い換えると、取付ボスW6は、移動方向において、切欠部W7の範囲内に位置している。切欠部W7は、幅方向において、取付ボスW6と対向している。
【0099】
側壁W5は、切欠部W7の移動方向上流側に位置する第1部位W8と、切欠部W7の移動方向下流側に位置する第2部位W9とを有している。第2部位W9は、移動方向において、第1部位W8から下流側に離れて配置されている。
【0100】
取付ボスW6は、移動方向において、第1部位W8と第2部位W9との間に位置している。第1部位W8と第2部位W9との移動方向における間隔、つまり前述した切欠部W7の移動方向における長さは、バネSPのコイル部S1の外径よりも大きい。
【0101】
側壁W5は、第1部位W8の回転体120側の端部から幅方向内側に突出する第1突出部W10と、第2部位W9の回転体120側の端部から幅方向内側に突出する第2突出部W11とをさらに有している。第1突出部W10は、側壁W5から上流パッドP1に向けて幅方向に突出している。第1突出部W10は、上流固定板B1が回転体120側に移動するのを規制している。第2突出部W11は、側壁W5から下流パッドP2に向けて幅方向に突出している。第2突出部W11は、下流固定板B2が回転体120側に移動するのを規制している。
【0102】
図5に示すように、第1突出部W10の一部は、移動方向において、第1アーム部S2と同じ位置に配置されている。言い換えると、第1アーム部S2の一部は、移動方向において、第1突出部W10の範囲内に位置している。さらに、言い換えると、第1アーム部S2の一部を幅方向に投影すると、第1突出部W10と重なるようになっている。そして、第1突出部W10は、バネSPがわずかに傾いたり、幅方向にわずかに移動した場合に、第1アーム部S2と接触して、傾きや移動を規制することが可能となっている。
【0103】
また、第2突出部W11の一部は、移動方向において、第2アーム部S3と同じ位置に配置されている。言い換えると、第2アーム部S3の一部は、移動方向において、第2突出部W11の範囲内に位置している。さらに、言い換えると、第2アーム部S3の一部を幅方向に投影すると、第2突出部W11と重なるようになっている。そして、第2突出部W11は、バネSPがわずかに傾いたり、幅方向にわずかに移動した場合に、第2アーム部S3と接触して、傾きや移動を規制することが可能となっている。
【0104】
なお、第1突出部W10と第1アーム部S2の幅方向における間隔や、第2突出部W11と第2アーム部S3の幅方向における間隔は、小さいほど好ましい。例えば、前述した間隔は、バネSPの線径の3倍以下の大きさが好ましい。
【0105】
取付ボスW6は、幅方向において、第1突出部W10および第2突出部W11と重なる位置まで延びている。言い換えると、取付ボスW6は、各突出部W10,W11の幅方向内側の端部よりも幅方向外側に突出している。
【0106】
図4および図5に示すように、上流固定板B1の他端部B12は、移動方向において、上流壁W2から遠ざかる方向に凹む規制凹部B14を有している。また、下流固定板B2の他端部B22は、移動方向において、下流壁W4から遠ざかる方向に凹む規制凹部B24を有している。
【0107】
上流壁W2は、規制凹部B14に嵌まり、上流固定板B1の幅方向への移動を規制する規制突起W21を有している。下流壁W4は、規制凹部B24に嵌まり、下流固定板B2の幅方向への移動を規制する規制突起W41を有している。
【0108】
規制凹部B14,B24および規制突起W21,W41は、幅方向において、上流パッドP1および下流パッドP2の各端部と取付ボスW6との間に位置している。
【0109】
図6(a),(b)に示すように、規制突起W21,W41は、所定方向に沿って延びている。支持壁W1は、規制突起W21,W41が通る貫通孔Hj,Hkを有している。ここで、例えば規制突起を支持壁W1の回転体120側の面から突出させる場合には、ホルダ140を成型するための金型の関係上、規制突起と支持壁W1の面の間の隅に曲面や傾斜面が残ってしまう。そのため、この場合には、固定板B1,B2が支持壁W1から浮いてしまったり、あるいは、浮きを抑制するために規制凹部の大きさを大きくすると固定板B1,B2が幅方向にがたつくおそれがある。
【0110】
本実施形態では、上流壁W2や下流壁W4に形成した規制突起W21,W41を、支持壁W1に形成した貫通孔Hj,Hkを通過するように形成しているので、前述したような問題が生じるのを抑制することができる。なお、本実施形態では、貫通孔Hj,Hkを例示しているが、本発明はこれに限定されず、支持壁W1の回転体120側の面に、回転体体120から遠ざかる方向に凹む凹部を形成し、凹部の底から規制突起を突出させてもよい。つまり、支持壁W1の回転体120側の面のうち、規制突起の周囲の面を、その他の面よりも回転体120から遠い位置に配置すればよい。
【0111】
図6(a)~(c)に示すように、幅方向の他端側の係合部143は、一対の挟持壁W12と、一対の挟持壁W12を連結する第1連結壁W13とを有している。各挟持壁W12は、移動方向において、第1ステイ210のベース部211の幅方向の端部を挟んでいる。各挟持壁W12は、側壁W5から幅方向外側に延びている。
【0112】
第1連結壁W13は、ベース部211の幅方向の端部に対して回転体120と反対側に位置し、ベース部211の幅方向の端部と接触している。第1連結壁W13は、各挟持壁W12の幅方向外側の端部同士を連結している。第1連結壁W13は、側壁W5から幅方向に離れている。これにより、第1連結壁W13と側壁W5の間に隙間ができるので、この隙間を通して、前述した第1ステイ210の荷重入力部211A(図7参照)を下方に露出させることができる。そして、下方に露出した荷重入力部211Aに、前述した緩衝部材BF(図7参照)を取り付けることが可能となっている。
【0113】
また、ホルダ140は、一対の挟持壁W12を連結する第2連結壁W14と、挟持壁W12と側壁W5とを連結する補強部WAとをさらに有している。第2連結壁W14は、ベース部211の幅方向の端部に対して第1連結壁W13と反対側に位置している。第2連結壁W14は、ベース部211から所定方向に離れている。また、第2連結壁W14は、第1連結壁W13から幅方向に離れており、側壁W5に接続されている。
【0114】
補強部WAは、挟持壁W12を補強するための部位であり、各挟持壁W12に対して1つずつ設けられている。2つの補強部WAは、移動方向において対称な構造であるため、以下に一方側の補強部WAのみを説明し、他方側については説明を省略する。
【0115】
補強部WAは、一方の挟持壁W12と平行に配置され、側壁W5に連結される第1壁W15と、側壁W5と平行に配置され、第1壁W15と一方の挟持壁W12とを連結する第2壁W16とを有している。第1壁W15、第2壁W16、挟持壁W12および側壁W5は、矩形の筒状部を形成しており、これらの壁の内側には、所定方向に貫通する孔W17が形成されている。この孔W17は、前述した緩衝部材BFの脚部BF2(図7参照)が係合する孔となっている。
【0116】
図6(c)に示すように、第1部位W8と取付ボスW6との移動方向における間隔D1は、前述したバネSP(図4参照)の線径よりも大きい。また、第2部位W9と取付ボスW6との移動方向における間隔D2も、バネSPの線径よりも大きい。
【0117】
図6(a)に示すように、各挟持壁W12は、貫通孔W18と、切欠W19とを有している。貫通孔W18は、挟持壁W12を移動方向に貫通している。切欠W19は、挟持壁W12の回転体120側の端部に形成されている。貫通孔W18および切欠W19は、第2壁W16に対して側壁W5とは反対側に配置されている。貫通孔W18および切欠W19は、幅方向において同じ位置に配置されている。貫通孔W18および切欠W19には、図13および図14に示す移動規制部材Rが取り付けられる。
【0118】
移動規制部材Rは、幅方向において、ホルダ140に対して第1ステイ210が移動することを規制する部材である。移動規制部材Rは、金属製の線材からなるトーションバネである。図13に示すように、移動規制部材Rは、コイル部R1と、コイル部R1の一端から延びる第1アーム部R2と、コイル部R1の他端から延びる第2アーム部R3とを有している。
【0119】
第1ステイ210のベース部221の幅方向の端部は、貫通孔Hiを有している。貫通孔Hiは、荷重入力部211Aよりも幅方向外側に配置されている。
【0120】
図14に示すように、移動規制部材Rの第1アーム部R2は、各挟持壁W12および第1ステイ210の各貫通孔W18,Hiに挿通され、各貫通孔W18,Hiに係合する。移動規制部材Rの第2アーム部R3は、各挟持壁W12の切欠W19に係合する。
【0121】
なお、幅方向の一端側の係合部142は、貫通孔W18と切欠W19を有さない点で他端側の係合部143とは異なるが、その他の構造は、他端側の係合部143と同様の構造となっている。
【0122】
図7に示すように、ホルダ本体141は、複数(16個)のリブW30と、2つの第1延出壁W31と、2つの第2延出壁W32とをさらに有している。複数のリブW30は、支持壁W1からニップ形成部材Nとは反対側に向けて突出している。
【0123】
複数のリブW30は、移動方向に延び、幅方向に間隔を空けて配置されている。各リブW30の幅方向の間隔は、2つの第1延出壁W31の幅方向の間隔よりも小さい。各リブW30は、幅方向において対称に配置されている。複数のリブW30は、第1ステイ210と第2ステイ220に接触する。
【0124】
詳しくは、第1ステイ210のベース部211は、すべてのリブW30に接触する。第2ステイ220は、複数のリブW30のうち一部(4つ)のリブW30と接触する4つの凸部CVを有している。
【0125】
凸部CVは、第2ステイ220のベース部221のホルダ140側の端部から突出している。各凸部CVは、第2ステイ220の幅方向の中央C1に対して、幅方向に対称に配置されている。凸部CVから第2ステイ220の幅方向の中央C1までの距離D3は、凸部CVから第2ステイ220の幅方向の端部までの距離D4よりも小さい。ここで、図7では、中央C1から最も遠い凸部CVを代表して、距離関係を図示している。なお、中央C1に最も近い凸部CVについても、距離関係は同様に満たされている。
【0126】
第2ステイ220のベース部221は、後で詳述する複数の孔Hc2,Hd2,He2を有している。各凸部CVは、幅方向において、各孔Hc2,Hd2,He2と異なる位置に配置されている。
【0127】
2つの第1延出壁W31は、ホルダ140の幅方向の中央C2に対して、幅方向に対称に配置されている。各第2延出壁W32は、移動方向において、各第1延出壁W31の上流側に間隔を空けて並んでいる。第1延出壁W31および第2延出壁W32は、幅方向において、係合部142よりもホルダ140(ホルダ本体141)の幅方向の中央C2に近い位置に配置されている。詳しくは、第1延出壁W31および第2延出壁W32からホルダ140(ホルダ本体141)の幅方向の中央C2までの距離D5は、第1延出壁W31および第2延出壁W32から係合部142までの距離D6より小さい。
【0128】
ここで、図7では、中央C2に対して図示左側にある各延出壁W31,W32と係合部142との距離関係を図示している。なお、中央C2に対して図示右側にある各延出壁W31,W32と係合部143についても、距離関係は同様に満たされている。
【0129】
図8(a),(b)に示すように、第1延出壁W31は、支持壁W1の下流側の端部からニップ形成部材Nとは反対側に延びている。第1延出壁W31は、第2延出壁W32よりもニップ形成部材Nとは反対側に延びている。第1延出壁W31は、第1ステイ210のベース部211の下流面Faに接触している。
【0130】
第2延出壁W32は、支持壁W1からニップ形成部材Nとは反対側に延びている。第2延出壁W32は、リブW30よりもニップ形成部材Nとは反対側に延びている。第2延出壁W32は、第1ステイ210のベース部211の上流面Fbに接触している。つまり、第1延出壁W31と第2延出壁W32は、移動方向において、ベース部211を挟んでいる。
【0131】
図8(b)に示すように、第1ステイ210のベース部211は、移動方向において、下流ニップ形成部材N2寄りに配置されている。詳しくは、移動方向において、ベース部211の中央C3から下流パッドP2の移動方向の上流端までの距離D7は、ベース部211の幅方向の中央C3から上流パッドP1の移動方向の下流端までの距離D8よりも小さい。
【0132】
図9(a)に示すように、上流ガイドG1は、外周壁G11と、複数のリブG12と、複数(5つ)のボスG13と、2つの締結部G14と、2つの突起G15とを有している。外周壁G11は、断面視円弧状の壁であり、外側に上流ガイド面Fuを有している。
【0133】
リブG12は、外周壁G11の上流ガイド面Fuとは反対側の面から突出している。複数のリブG12の端面は、第2ステイ220(図9(b)参照)との間で摺動シート150の上流端部151Aを挟むための面となっている。
【0134】
ボスG13、締結部G14および突起G15は、外周壁G11の上流ガイド面Fuとは反対側の面から移動方向下流側に向けて突出している。ボスG13、締結部G14および突起G15は、幅方向に間隔を空けて並んでいる。ボスG13、締結部G14および突起G15は、円柱状に形成されている。ボスG13、締結部G14および突起G15は、幅方向において、リブG12と同じ位置に配置されている。
【0135】
突起G15は、締結部G14よりも移動方向下流側に突出している。ボスG13は、突起G15よりも移動方向下流側に突出している。
【0136】
ボスG13は、上流ガイドG1を下流ガイドG2とともに第1ステイ210に固定するためのボスである(図10(b)参照)。複数のボスG13は、幅方向に間隔を空けて並んでいる。各ボスG13は、上流ガイド面Fuと異なる位置に配置されている。詳しくは、各ボスG13は、外周壁G11の上流ガイド面Fuとは反対側に配置されている。また、各ボスG13は、所定方向において、上流ガイドG1の回転体120とは反対側の端部に配置されている。
【0137】
締結部G14は、上流ガイドG1を第2ステイ220に固定するための部位である(図10(c)参照)。締結部G14は、5つのボスG13のうち幅方向の最も外側に配置されるボスG13と、当該ボスG13と隣り合うボスG13との間に配置されている。
【0138】
突起G15は、上流ガイドG1を第2ステイ220に位置決めするための部位である。突起G15は、上流ガイドG1の幅方向の一端側と他端側にそれぞれ配置されている。詳しくは、幅方向において、2つの突起G15の間に、5つのボスG13が配置されている。
【0139】
摺動シート150の上流端部151Aは、5つのボスG13が通る5つの係合孔Hc1と、2つの締結部G14に対応した2つの孔Hd1と、2つの突起G15が通る2つの孔He1とを有している。各孔Hc1,Hd1,He1は、幅方向に長い長孔となっている。
【0140】
係合孔Hc1は、ボスG13に係合する孔である。係合孔Hc1がボスG13に係合した状態において、摺動シート150の上流端部151Aは、図9(b)に示すように、上流ガイドG1と第2ステイ220の間で挟まれて固定されている。
【0141】
第2ステイ220のベース部221は、5つのボスG13が通る5つの孔Hc2と、2つの締結部G14に対応した2つの孔Hd2と、2つの突起G15が通る2つの孔He2とを有している。孔Hc2は、ボスG13の外径よりも大きい。
【0142】
孔Hd2は、後述の第3ネジSC3の軸部SC32(図10(c)参照)が通る孔である。孔Hd2は、締結部G14の外径よりも小さく、第3ネジSC3の軸部SC32の外径よりも大きい。
【0143】
2つの孔He2のうち一方は、丸穴で、他方は、幅方向に長い長孔となっている。これにより、金属製の第2ステイ220に対して樹脂製の上流ガイドG1が幅方向に熱膨張しても、上流ガイドG1が歪むのを抑制することが可能となっている。
【0144】
また、ベース部221は、両端部に、前述したカシメ部材SW(図3参照)を固定するための孔Hfを有している。前述した各孔Hc2,Hd2,He2は、幅方向において、2つの孔Hfの間に配置されている。
【0145】
図10(b)に示すように、第1ステイ210の上流壁213は、ボスG13が通る第1孔Hc3を有している。第1孔Hc3は、ボスG13の外径よりも大きい。図3に示すように、第1孔Hc3は、5つのボスG13に対応して5つ設けられている。第1孔Hc3は、幅方向に長い長孔となっている。
【0146】
図10(b)に示すように、第1ステイ210のベース部221は、ボスG13に対応した第2孔Hc4を有している。第2孔Hc4は、下流ガイドG2を第1ステイ210のベース部221に固定するための孔である。第2孔Hc4には、第1ネジSC1の軸部SC12が通る。第2孔Hc4は、第1ネジSC1の軸部SC12の外径よりも大きい。図12に示すように、第2孔Hc4は、5つのボスG13に対応して5つ設けられている。第2孔Hc4は、幅方向において、各リブW30とは異なる位置に位置している。
【0147】
図10(b)に示すように、下流ガイドG2は、ボスG13に対応した孔Hc5を有している。孔Hc5には、第1ネジSC1の軸部SC12が通る。孔Hc5は、第1ネジSC1の軸部SC12の外径よりも大きい。図7に示すように、孔Hc5は、5つのボスG13に対応して5つ設けられている。
【0148】
下流ガイドG2は、孔Hc5を有する固定部分G22を5つ有している。固定部分G22は、下流ガイドG2を第1ステイ210のベース部221に固定するための部位である。固定部分G22は、前述したフック係合部G21よりも移動方向の上流側に配置されている。また、各固定部分G22は、幅方向において、間隔を空けて配置され、隣り合うフック係合部G21の間にそれぞれ配置されている。
【0149】
図10(b)に示すように、ボスG13は、移動方向下流側の先端に、第1ネジSC1がねじ込まれるネジ穴G16を有している。ネジ穴G16は、底を有する凹形状となっている。
【0150】
ここで、ネジ穴G16は、円筒状のボスG13の内周面にあらかじめネジ溝が切られた穴であってもよいし、円筒状のボスG13に第1ネジSC1がねじ込まれた際に第1ネジSC1によってネジ溝が切られる穴であってもよい。なお、後述するネジ穴G17(図10(c)参照)も同様である。
【0151】
ボスG13は、摺動シート150、第2ステイ220および第1ステイ210の上流壁213の各孔Hc1,Hc2,Hc3を通って、第1ステイ210のベース部211に接触している。また、ボスG13は、定着装置8が組み立てられた状態において、各孔Hc2,Hc3の縁と間隔を空けた状態で配置されている。
【0152】
第1ネジSC1は、下流ガイドG2および第1ステイ210のベース部211の各孔Hc5,Hc4を通って、ボスG13のネジ穴G16にねじ込まれている。これにより、ボスG13の先端と第1ネジSC1の頭部SC11との間で、下流ガイドG2および第1ステイ210のベース部211が挟持されている。言い換えると、ボスG13の先端と下流ガイドG2の固定部分G22の間で第1ステイ210のベース部211が挟まれた状態で、ボスG13の先端に第1ネジSC1が締結されることで、上流ガイドG1および下流ガイドG2がベース部211に固定されている。つまり、上流ガイドG1、第1ステイ210および下流ガイドG2が、第1ネジSC1で共締めされている。なお、第1ネジSC1は、ボスG13の先端に締結された状態において、各孔Hc5,Hc4の縁と間隔を空けた状態で配置されている。
【0153】
図10(c)に示すように、締結部G14は、移動方向下流側の先端に、第3ネジSC3がねじ込まれるネジ穴G17を有している。ネジ穴G17は、底を有する凹形状となっている。
【0154】
締結部G14は、摺動シート150の孔Hd1を通って、第2ステイ220のベース部221に接触している。第3ネジSC3は、第2ステイ220のベース部221の孔Hd2を通って、締結部G14のネジ穴G17にねじ込まれている。これにより、締結部G14の先端と第3ネジSC3の頭部SC31との間で第2ステイ220のベース部221が挟持されて、上流ガイドG1が第2ステイ220に第3ネジSC3で固定される。
【0155】
図11に示すように、第1ネジSC1の頭部SC11、第2ネジSC2の頭部SC21および第3ネジSC3の頭部SC31は、移動方向の下流側を向いている。突起G15は、幅方向において、第2ステイ220の中央C1に対して、第1ネジSC1よりも遠い位置に位置している。
【0156】
連結部材CMは、幅方向において、第1ステイ210の中央C1よりも、荷重入力部211Aに近い位置に位置している。ここで、第2ステイ220の幅方向の中央と、第1ステイ210の幅方向の中央は、幅方向において同じ位置に位置するため、同一の符号「C1」で示すこととする。
【0157】
詳しくは、連結部材CMは、幅方向において、第1ステイ210の中央C1と荷重入力部211Aの間に配置されている。連結部材CMから荷重入力部211Aまでの距離D9は、連結部材CMから第1ステイ210の中央C1までの距離D10よりも小さい。
【0158】
図13に示すように、定着装置8は、サイドフレーム83と、ブラケット84と、押圧機構300とをさらに備えている。
【0159】
サイドフレーム83は、加熱ユニット81および加圧ユニット82を支持するフレームである。サイドフレーム83は、金属などからなる。サイドフレーム83は、後述する付勢部材320の一端部と係合するバネ係合部83Aと、第1ステイ210のベース部211の幅方向の端部を通すための切欠部83Bとを有している。
【0160】
また、サイドフレーム83は、ブラケット84を位置決めするための2つの突起83Cと、ブラケット84を固定するための孔83Dとを有している。各突起83Cは、切欠部83Bに対して、移動方向の一方側と他方側に配置されている。各孔83Dは、切欠部83Bに対して、移動方向の一方側と他方側に配置されている。
【0161】
ブラケット84は、第1ステイ210を所定方向に移動可能に支持する第1長孔84Aと、位置決め用の2つの第2長孔84Cと、固定用の2つの第3長孔84Dとを有している。第1長孔84Aは、所定方向に長い長孔である。第1長孔84Aには、ホルダ140の係合部143が係合する(図14参照)。
【0162】
第2長孔84Cおよび第3長孔84Dは、移動方向に長い長孔である。各第2長孔84Cは、第1長孔84Aに対して、移動方向の一方側と他方側に配置されている。各第3長孔84Dは、第1長孔84Aに対して、移動方向の一方側と他方側に配置されている。
【0163】
各第2長孔84Cには、各突起83Cが係合可能となっている。そして、各第2長孔84Cが各突起83Cに係合された状態において、ブラケット84は、サイドフレーム83に対して移動方向に移動可能となっている。これにより、ブラケット84の第1長孔84Aの位置を、例えばサイドフレーム83に形成した所定の目印に合わせることで、加圧ユニット82をサイドフレーム83に良好に位置決めすることができる。
【0164】
なお、ブラケット84の位置決めを行った後は、各第3長孔84Dと各孔83Dとをネジで締結することで、ブラケット84がサイドフレーム83に固定される。前述した移動規制部材Rは、ブラケット84に幅方向外側から接触している(図14参照)。これにより、サイドフレーム83に対してホルダ140および第1ステイ210が幅方向に位置決めされている。
【0165】
押圧機構300は、押圧アーム310と、付勢部材320とを備えている。押圧アーム310は、緩衝部材BFを介して第1ステイ210を押圧するための部材である。押圧アーム310は、金属などからなるL形状の板状部材である。押圧アーム310は、サイドフレーム83に回動可能に支持される穴311と、付勢部材320の他端部と係合するバネ係合部312と、緩衝部材BFと係合する係合穴313とを有している。
【0166】
穴311は、押圧アーム310の一端に配置される。バネ係合部312は、押圧アーム310の他端に配置される。係合穴313は、押圧アーム310の屈曲部付近に配置される。
【0167】
付勢部材320は、第1ステイ210を回転体120に向けて付勢するための部材である。本実施形態では、付勢部材320は、引張コイルバネである。
【0168】
図15に示すように、サイドフレーム83には、カム85が回動可能に設けられている。カム85は、定着装置8の状態を、ニップ状態と、ニップリリース状態とに切り替えるための部材である。
【0169】
ここで、ニップ状態とは、加熱ユニット81と加圧ユニット82の間に所定のニップ圧が加わっている状態(図2の状態)をいう。また、ニップリリース状態とは、加熱ユニット81と加圧ユニット82の間に、ニップ圧が加わっていない、または、所定のニップ圧よりも小さなニップ圧が加わっている状態をいう。
【0170】
カム85が押圧アーム310から離れた状態において、定着装置8はニップ状態となる。カム85が図15に示す向きから反時計回りに略90°回動すると、押圧アーム310が付勢部材320の付勢力に抗して図示時計回りに回動することで、定着装置8はニップリリース状態となる。
【0171】
次に、本実施形態に係る定着装置8の作用効果について説明する。
図2および図4に示すように、ニップ状態において、バネSPによって各固定板B1,B2が各壁W2,W4に向けて付勢されることで、各パッドP1,P2が各壁W2,W4に接触し、各ニップ形成部材N1,N2の移動が規制される。また、ニップリリース状態においても、同様に、各パッドP1,P2が各壁W2,W4に接触し、各ニップ形成部材N1,N2の移動が規制される。そのため、ニップ状態・ニップリリース状態が繰り返されたとしても、各ニップ形成部材N1,N2のホルダ140に対する位置を一定に保つことができるので、上流ニップ部NP1および下流ニップ部NP2の位置、ひいては、ニップ部NP全体の位置を安定させることができる。
【0172】
また、各ニップ形成部材N1,N2の製造誤差、例えば各パッドP1,P2を各固定板B1,B2へ接着させる際の取付誤差が生じたとしても、バネSPの付勢力によって各パッドP1,P2が各壁W2,W4に接触するので、各パッドP1,P2のホルダ140に対する位置を一定に保つことができ、各ニップ部NP1,NP2の位置を安定させることができる。
【0173】
また、各固定板B1,B2の幅方向の両端は、バネSPによって支持壁W1に向けても付勢される。このため、本実施形態のように、支持壁W1の各支持面F1,F2が回転体120に向かって突出(湾曲)している形状の場合、各ニップ形成部材N1,N2を各支持面F1,F2の形状に倣って変形させることができる。すなわち、各パッドP1,P2の回転体120側の面を製造時に湾曲面とすることなく、定着装置8の組み立て後には、各パッドP1,P2の回転体120側の面を湾曲させることができる。また、ゴムによって構成される各パッドP1,P2の製造誤差よりも、樹脂等で構成されるホルダ140の製造誤差の方が小さいため、各パッドP1,P2の回転体120側の面を製造時に湾曲面とする場合よりも、ニップ部NPの幅方向における圧力分布の製造バラつきを抑制することができる。
【0174】
以上によれば、本実施形態において以下のような効果を得ることができる。
各ニップ形成部材N1,N2を各壁W2,W4に付勢して接触させるので、各ニップ形成部材N1,N2の製造誤差やニップ状態・ニップリリース状態の繰り返しなどによらず、各ニップ部NP1,NP2の位置を安定させることができる。また、例えばV形状の板バネに比べ、バネSPが一巻き以上のコイル部S1を有するので、バネSPを各ニップ形成部材N1,N2の間に配置する際にバネSPを押し縮めても、バネSPが塑性変形するのを抑制することができる。
【0175】
バネSPを各固定板B1,B2に接触させる構成とすることで、例えばバネを各パッドに接触させる構成と比べ、バネSPによって各パッドP1,P2の形状が変形することがないため、各ニップ部NP1,NP2の位置をより安定させることができる。
【0176】
コイル部S1に入る取付ボスW6をホルダ140に設けることで、バネSPのコイル部S1を取付ボスW6に取り付けるだけで、バネSPをホルダ140に組み付けることができるので、バネSPの組付作業を容易に行うことができる。
【0177】
取付ボスW6が所定方向において各固定板B1,B2よりも回転体120から遠い位置に位置することで、バネSPにより各ニップ形成部材N1,N2をホルダ140に押し付けることができるので、組付時に各ニップ形成部材N1,N2がホルダ140から脱落するのを抑制することができる。
【0178】
前記実施形態では、取付ボスW6が、移動方向において、上流固定板B1の端部B11と下流固定板B2の端部B21との間に位置し、上流固定板B1の端部B11と下流固定板B2の端部B21との移動方向における間隔が、コイル部S1の外径よりも大きくなっている。これにより、上流固定板B1と下流固定板B2の間を通してバネSPのコイル部S1を取付ボスW6に取り付けることができるため、バネSPの組付作業性を向上することができる。また、バネSPにより各固定板B1,B2をホルダ140に押さえつけることができるため、ニップ形成部材N1,N2のホルダ140からの脱落をより確実に抑制し、かつ、ニップ圧分布のバラつきも抑制できる。
【0179】
前記実施形態では、切欠部W7の移動方向の長さが、コイル部S1の外径よりも大きくなっている。これにより、切欠部W7を通してバネSPのコイル部S1を取付ボスW6に取り付けることができるため、バネSPの組付作業性を向上することができる。
【0180】
各突出部W10,W11の一部が、移動方向において、アーム部S2,S3と同じ位置に配置され、取付ボスW6が、幅方向において、各突出部W10,W11と重なる位置まで延びているので、各突出部W10,W11によって、バネSPの傾きや取付ボスW6からの脱落を抑制することができる。
【0181】
各固定板B1,B2の各規制凹部B14,B24に、規制突起W21,W24が嵌るので、各固定板B1,B2の幅方向の移動を規制することができる。また、規制凹部B14,B24および規制突起W21,W41が、幅方向において、各パッドP1,P2の各端部と取付ボスW6との間に位置しているので、例えば規制凹部および規制突起が取付ボスより幅方向の外側に位置する場合と比較して、定着装置8の幅方向のサイズを小さくすることができる。
【0182】
バネSPの各アーム部S2,S3の先端が屈曲部S4を有しているので、例えばピンセットを用いてバネSPを押し縮めた状態で保持する場合において、屈曲部S4がピンセットに係合することで、ピンセットからバネSPが脱落するのを抑制することができる。
【0183】
屈曲部S4が環状に形成されることで、例えばピンセットを用いてバネSPを押し縮めた状態で保持する場合において、ピンセットの先を環状の屈曲部S4に通すことができるので、ピンセットからバネSPが脱落するのをより抑制することができる。
【0184】
上流ガイドG1、第1ステイ210および下流ガイドG2が第1ネジSC1で共締めされるので、例えば上流ガイドを第1ステイに所定のネジで固定し、下流ガイドを第1ステイに別のネジで固定する構造に比べ、ネジの数を減らすことができる。
【0185】
ボスG13と第1孔Hc3の縁との間に間隔が空いているので、第1ステイ210が変形した場合であっても、第1ステイ210がボスG13に接触するのを抑制することができ、上流ガイドG1が変形するのを抑制することができる。
【0186】
ネジ穴G16が底を有する凹形状であるため、第1ネジSC1をネジ穴G16に締結した際に、切粉が発生した場合であっても、切粉をネジ穴G16内で保持することができる。
【0187】
荷重入力部211Aが第1ステイ210の幅方向の両端にある場合には、第1ステイ210の幅方向中央の変形量が端部よりも大きくなりやすい。前記実施形態では、連結部材CMが、幅方向において、第1ステイ210の中央よりも荷重入力部211Aに近い位置に配置されるため、例えば連結部材が第1ステイの中央に近い位置に位置する場合と比較して、第2ステイ220の変形を抑制することができる。
【0188】
また、連結部材CMが、幅方向において、第1ステイ210の中央C1と荷重入力部211Aの間に配置されているため、例えば連結部材を荷重入力部と同じ位置にする場合と比べ、第2ステイ220の幅方向の長さを短くすることができるので、定着装置8を軽量化することができる。
【0189】
カシメ部材SWを第2ステイ220にかしめるので、例えばカシメ部材を第1ステイにかしめる構造と比べ、荷重が入力される第1ステイ210の平面度を保つことができる。
【0190】
上流ガイドG1が第1ステイ210に第1ネジSC1で固定されるとともに、第2ステイ220に第3ネジSC3で固定されるので、上流ガイドG1を各ステイ210,220で強固に支持することができる。
【0191】
各ネジSC1~SC3の頭部SC11~SC31がいずれも移動方向の下流側を向くことで、各ネジSC1~SC3の締結方向が同じ方向になるので、各部材の組み付け作業を容易に行うことができる。また、例えば第1ネジの頭部を上流側に向けた場合には、上流ガイドに第1ネジの頭部を逃げるための貫通孔を形成する必要がある。この場合、上流ガイドの外周の上流ガイド面の貫通孔の縁がエッジになり、エッジが無端ベルトの搬送抵抗になる場合がある。これに対し、前記実施形態では、第1ネジSC1の頭部SC11を移動方向下流に向けるので、上流ガイドG1に第1ネジSC1の頭部SC11を逃げるための貫通孔を形成する必要がなくなり、上流ガイド面Fuにエッジが形成されるのを抑制することができる。
【0192】
上流ガイドG1の位置決め用の突起G15が第1ネジSC1よりも幅方向外側に配置されるので、例えば突起を第1ネジよりも幅方向内側に配置する構造に比べ、上流ガイドG1が第2ステイ220に傾いて組付けられてしまうのを抑制することができる。
【0193】
別体である第1ステイ210と第2ステイ220をそれぞれホルダ140に接触させるので、例えばU形状のステイの2つの壁の各端部をホルダに接触させる構造と比べ、各ステイ210,220のホルダ140との接触面の位置を精度良く配置することができ、ニップ圧のバラツキを抑制することができる。また、第1ステイ210がヘミング曲げ部HBを有するので、第1ステイ210の剛性を高くすることができ、付勢部材320の力をホルダ140に良好に伝達させることができる。さらに、連結部材CMがヘミング曲げ部HBとは異なる位置に配置されるため、ベース部211のうちヘミング曲げ部HBによって剛性が高くなっている部位の強度が損なわれるのを抑制することができる。
【0194】
第2ステイ220の凸部CVが、幅方向において、孔Hc2,Hd2,He2と異なる位置に配置されているので、ホルダ140から凸部CVに力が加わっても、第2ステイ220の変形を抑制することができ、圧力分布のバラツキを抑制することができる。
【0195】
荷重が入力される第1ステイ210の端部がホルダ140の係合部142,143に係合することで、第1ステイ210がホルダ140に直接位置決めされるので、荷重が入力される第1ステイ210に対するホルダ140の移動方向における位置精度を安定させることができ、ニップ圧分布が不均一になることを抑制できる。
【0196】
また、第1連結壁W13が、第1ステイ210の幅方向の端部に対して回転体120と反対側に位置し、第1ステイ210と接触するので、荷重入力方向(所定方向)において、第1ステイ210をホルダ本体141と第1連結壁W13とで挟むことができる。したがって、第1ステイ210に対するホルダ140の位置精度をより安定させることができる。また、ホルダ140と第1ステイ210を良好に仮組することができ、組付作業性を向上できる。
【0197】
一対の挟持壁W12を連結する第2連結壁W14を設けたので、係合部142,143の剛性を高くすることができる。
【0198】
例えば第2連結壁が第1ステイに接触する構成では、ニップ圧の幅方向における分布が変わるおそれがあるが、前記実施形態では、第2連結壁W14を第1ステイ210から離したので、このような問題が生じるのを抑えることができる。
【0199】
挟持壁W12が補強部WAで補強されるので、係合部142,143の剛性をより高くすることができる。
【0200】
第1延出壁W31が第1ステイ210の下流面Faに接触しているので、ホルダ140が移動方向の下流側に傾くのを抑制することができる。
【0201】
第2延出壁W32が第1ステイ210の上流面Fbに接触することで、第1延出壁W31と第2延出壁W32とで第1ステイ210が挟まれるので、ホルダ140の移動方向の変形やねじれなどを抑えることができる。
【0202】
第1延出壁W31および第2延出壁W32が、幅方向において、係合部142,143よりもホルダ本体141の幅方向の中央C2に近い位置に配置されているので、ホルダ140の端部に対するホルダ140の中央の移動方向の変形を抑えることができる。
【0203】
第1ステイ210および一対の挟持壁W12に、移動規制部材Rが挿通される貫通孔W18,Hiが設けられるので、ホルダ140に対して第1ステイ210を幅方向に位置決めすることができる。
【0204】
複数のリブW30を第1ステイ210に接触させるので、例えばホルダに形成した幅方向に長い平面を第1ステイの端部全体に接触させる構造と比べ、各リブW30の第1ステイ210との接触面の精度を向上することができ、幅方向におけるニップ圧分布を略均一にすることができる。また、リブW30が移動方向に延びることで、例えば幅方向に長いリブを設ける場合よりも、支持壁W1が第1ステイ210に沿って変形しやすくなるので、幅方向におけるニップ圧分布を略均一にすることができる。ここで、第1ステイ210の接触面Ftは、移動方向から見て、幅方向の中央が幅方向の端部よりもホルダ140側に突出した中凸形状(円弧形状)とすることができる。この場合には、前述した効果を特に発揮することができる。
【0205】
付勢部材320から力を受ける第1ステイ210が、下流ニップ形成部材N2寄りに配置されるので、下流ニップ部NP2のニップ圧を適正な圧力にすることができる。ここで、下流ニップ形成部材N2では、シートSを回転体120から剥離させるために、上流ニップ形成部材N1よりも圧力ピークが高くなっている。そのため、第1ステイ210を下流ニップ形成部材N2寄りに配置すると、このような圧力ピークを良好に出すことができる。
【0206】
第2ステイ220が、複数のリブW30のうち一部のリブW30と接触する凸部CVを有するので、第1ステイ210と第2ステイ220によって、支持壁W1を良好に支持することができる。
【0207】
凸部CVが第2ステイ220の幅方向の中央C1寄りに配置されるので、支持壁W1の幅方向の中央の部分が第2ステイ220側に変形するのを抑制することができる。
【0208】
第1ステイ210の第2孔Hc4が、幅方向において、各リブW30とは異なる位置に配置されている、つまり、第1ステイ210のうち各リブW30から反力が加わる部分に、第2孔Hc4がないので、第1ステイ210の変形を抑えることができ、ニップ圧をより安定させることができる。
【0209】
摺動シート150が弾性変形可能なフック152を有するため、フック152をフック係合部G21の開口Hgに大まかに合わしさえすれば、フック152を開口Hgに容易に係合させることができる。そのため、摺動シート150の組付作業を容易に行うことができる。
【0210】
フック152の先端部152Aの先端の幅およびネック部152Bの幅が、開口Hgの幅よりも小さく、先端部152Aの最大幅が、開口Hgの幅よりも大きいので、フック152を開口Hgに容易に差し込むことができるとともに、フック152を開口Hgから抜け難くすることができる。
【0211】
ネック部152Bの長さがフック係合部G21の厚さよりも大きいので、摺動シート150の下流端部151Bを、遊びを持った状態で、下流ガイドG2に固定することができる。
【0212】
フック係合部G21と第1ステイ210の間隔が、先端部152Aの長さよりも大きいので、フック152の先端部152Aを開口Hgに差し込んだ際に、先端部152Aが第1ステイ210に当たらないので、先端部152Aを開口Hgに差し込みやすくすることができる。
【0213】
隣り合う2つのフック係合部G21の間に、下流ガイドG2と第1ステイ210の固定部分G22が配置されているので、下流ガイドG2を第1ステイ210に固定する際に、フック係合部G21が邪魔にならないので、固定作業を容易に行うことができる。
【0214】
摺動シート150の上流端には、ニップ部NPにおいて無端ベルト130および摺動シート150が下流側に引っ張られることで張力がかかるが、摺動シート150の下流端には、張力がかかりにくい。本実施形態では、張力がかかりにくり摺動シート150の下流端部151Bにフック152を設けるので、ネジ等を用いることなく、フック152を開口Hgに係合させるだけで、摺動シート150の下流端部151Bを下流ガイドG2に固定することができる。したがって、例えば摺動シートの下流端をネジで固定する構造に比べ、部品点数を削減しつつ、摺動シート150の下流端部151Bを容易に固定することができる。
【0215】
摺動シート150の上流端部151Aに形成される係合孔Hc1が上流ガイドG1のボスG13に係合し、かつ、摺動シート150の上流端部151Aが上流ガイドG1と第2ステイ220の間で挟まれることで、摺動シート150の上流端部151Aを上流ガイドG1に固定することができるので、摺動シート150の上流端部151Aの固定作業も容易に行うことができる。
【0216】
摺動シート150が上流ガイド面Fuを覆うように配置されているので、上流ガイドG1と無端ベルト130の摺動抵抗を低減することができる。
【0217】
なお、本発明は前記実施形態に限定されることなく、以下に例示するように様々な形態で利用できる。
【0218】
前記実施形態では、ヒータとしてハロゲンランプを例示したが、ヒータは、例えばカーボンヒータなどであってもよい。
【0219】
前記実施形態では、回転体として、ヒータ110を内蔵した円筒状のローラを例示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、ヒータによって内周面が加熱される無端状のベルトであってもよい。また、ヒータを回転体の外部に配置し、回転体の外周面を加熱する外部加熱方式や、IH(Induction Heating)方式でもよい。また、無端ベルトの内部にヒータを配置し、無端ベルトの外周面に接触する回転体を間接的に加熱してもよい。また、回転体と無端ベルトがそれぞれヒータを内蔵していてもよい。
【0220】
前記実施形態では、無端ベルト130と各ニップ形成部材Nとの間に摺動シート150を設けたが、本発明はこれに限定されず、無端ベルトの内周面にニップ形成部材を接触させてもよい。また、無端ベルトとニップ形成部材との間に、フックを有さない摺動シートを設けてもよい。また、摺動シートの下流端部は、いずれの部材にも固定されない自由端としてもよい。
【0221】
前記実施形態では、2つのニップ形成部材N1,N2を設ける構成としたが、本発明はこれに限定されず、ニップ形成部材は1つであってもよい。
【0222】
前記実施形態では、ニップ形成部材を、パッドと固定板とで構成したが、本発明はこれに限定されず、ニップ形成部材は、例えば、パッドのみから構成されていてもよい。また、パッドは、加圧時においても弾性変形しない樹脂や金属などの硬質材料から構成されていてもよい。
【0223】
前記実施形態では、規制部材(壁W2,W4)をホルダ140に一体に設けたが、本発明はこれに限定されず、規制部材は、例えばホルダとは別の部材であってもよい。
【0224】
前記実施形態では、バネSPの各アーム部S2,S3に屈曲部S4を設けたが、本発明はこれに限定されず、バネは、屈曲部を有していなくもよく、また、バネの一方のアーム部のみに屈曲部を設けてもよい。
【0225】
前記実施形態では、屈曲部S4を環状に形成したが、本発明はこれに限定されず、屈曲部は、例えば、円弧状またはV形状に形成されていてもよい。
【0226】
前記実施形態では、連結部材CMを、カシメ部材SWと第2ネジSC2とで構成したが、本発明はこれに限定されず、例えば、各ステイにネジで締結される部材を連結部材としてもよい。
【0227】
前記実施形態では、付勢部材320を引張コイルバネとしたが、本発明はこれに限定されず、付勢部材は、例えば、圧縮コイルバネ、トーションバネ、板バネなどであってもよい。
【0228】
前記実施形態では、移動規制部材Rとしてトーションバネを例示したが、本発明はこれに限定されず、移動規制部材は、例えば、線材または板材をU形状に折り曲げた部材であってもよいし、ボルトおよびナットで構成されていてもよい。
【0229】
前記実施形態では、第2ステイ220に設ける凸部CVの数を4つとしたが、本発明はこれに限定されず、第2ステイは、凸部を少なくとも1つ有していればよい。
【0230】
前記実施形態では、支持部材としてホルダ140およびステイ200を例示したが、本発明はこれに限定されず、支持部材は、例えばホルダのみであってもよいし、ステイのみであってもよい。また、ホルダとステイを一体に構成してもよい。
【0231】
前記実施形態では、ベルトガイドGを2つのガイドG1,G2で構成したが、本発明はこれに限定されず、ベルトガイドは、例えば、上流ガイドのみで構成されていてもよいし、下流ガイドのみで構成されていてもよい。また、上流ガイドと下流ガイドを一体に構成してもよい。
【0232】
前記実施形態では、ステイ200を2つのステイ210,220で構成したが、本発明はこれに限定されず、ステイは、3つ以上であってもよい。
【0233】
前記実施形態では、摺動シート150の下流端部151Bにフック152を設けたが、本発明はこれに限定されず、摺動シートは、上流端部または下流端部の少なくとも一方にフックを有していればよい。
【0234】
前記実施形態では、フック152が係合するフック係合部G21を下流ガイドG2に設けたが、本発明はこれに限定されず、フック係合部は、上流ガイド、ホルダ、第1ステイおよび第2ステイのいずれかに設けてもよい。
【0235】
前記実施形態では、フック152の先端部152Aをネック部152Bから幅方向の両側に突出させたが、本発明はこれに限定されず、フックの先端部は、ネック部から幅方向の一方側のみに突出してもよい。
【0236】
前記実施形態では、摺動シート150の上流端部151Aを上流ガイドG1に固定したが、本発明はこれに限定されず、摺動シートの上流端部は、例えば、ホルダ、下流ガイド、第1ステイおよび第2ステイのいずれかに固定してもよい。
【0237】
前記実施形態では、摺動シート150は上流ガイド面Fu、ニップ形成部材Nおよび下流ガイド面Fdを覆うように配置されているが、本発明はこれに限定されず、摺動シートは、少なくともニップ形成部材を覆っていればよい。すなわち、無端ベルトの内周面にベルトガイドを接触させてもよい。
【0238】
前記した実施形態および変形例で説明した各要素を、任意に組み合わせて実施してもよい。
【符号の説明】
【0239】
8 定着装置
110 ヒータ
120 回転体
130 無端ベルト
140 ホルダ
210 第1ステイ
211 ベース部
220 第2ステイ
320 付勢部材
CM 連結部材
HB ヘミング曲げ部
N ニップ形成部材
NP ニップ部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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図15