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特許7334447パンケーキおよびパンケーキプレミックス
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  • 特許-パンケーキおよびパンケーキプレミックス 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-21
(45)【発行日】2023-08-29
(54)【発明の名称】パンケーキおよびパンケーキプレミックス
(51)【国際特許分類】
   A21D 2/18 20060101AFI20230822BHJP
   A21D 13/44 20170101ALI20230822BHJP
   A21D 13/32 20170101ALI20230822BHJP
【FI】
A21D2/18
A21D13/44
A21D13/32
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019074185
(22)【出願日】2019-04-09
(65)【公開番号】P2020171215
(43)【公開日】2020-10-22
【審査請求日】2021-10-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】弁理士法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】須田 ゆう子
(72)【発明者】
【氏名】桑谷 紀子
(72)【発明者】
【氏名】上野 浩義
【審査官】堂畑 厚志
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-165777(JP,A)
【文献】特開2017-051159(JP,A)
【文献】特開平10-117675(JP,A)
【文献】特開2019-135919(JP,A)
【文献】特開2020-115857(JP,A)
【文献】特開2017-093299(JP,A)
【文献】国際公開第2009/122900(WO,A1)
【文献】特開2006-129789(JP,A)
【文献】特開2004-105028(JP,A)
【文献】米国特許第05110612(US,A)
【文献】韓国公開特許第10-2011-0045797(KR,A)
【文献】楠みどり,ホットケーキミックスで簡単オムレット,レシピサイトNadia [online],2013年08月02日,[検索日:2022.09.15], インターネット<https://oceans-nadia.com/user/10254/recipe/101698>
【文献】GNPD - Purple Potatoes Sweet Hotteok,Mintel GNPD, [online],ID#6117637,2018年11月,[検索日:2023年3月3日], internet <URL: https://www.gnpd.com/sinatra/recordpage/6117637/>
【文献】"昭和冷凍食品、秋の新製品に新設ラインのホットケーキ _ 食品産業新聞社ニュースWEB", [online],2015年08月26日,[検索日:2023年3月6日], internet <URL: https://www.ssnp.co.jp/frozen/375820/>
【文献】"昭和冷凍食品、直径13cmの大型差別化サイズも", [online],2015年,[検索日:2023年3月6日], internet <URL: https://sv49.wadax.ne.jp/~food-eng-jp/?action_user_view=1&r=GrZ8CtaUUY7255>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A21D
A23G
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Google
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷凍パンケーキを解凍すること
解凍したパンケーキを折り曲げること、および
折り曲げた前記パンケーキの内側面の上下でフィリングを挟むことを含む
前記パンケーキで前記フィリングをサンドした食品の製造方法であって、
前記パンケーキの厚みは7mm~2cmであり、
前記冷凍パンケーキの生地が小麦粉、ヒドロキシプロピル化澱粉および全卵を含み、
前記生地において前記小麦粉100質量部に対し前記ヒドロキシプロピル化澱粉が120質量部~200質量部である、製造方法。
【請求項2】
ヒドロキシプロピル化澱粉がヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉である請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
ヒドロキシプロピル化澱粉がタピオカ澱粉の加工澱粉である請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記原料がベーキングパウダーおよび砂糖を含む請求項1~3のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項5】
前記生地を焼成して冷凍前のパンケーキを製造すること、および
前記冷凍前のパンケーキを冷凍して前記冷凍パンケーキを得ることを含む請求項1~4のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項6】
冷凍パンケーキの製造のためのパンケーキプレミックスであって、
前記冷凍パンケーキは解凍し折り曲げてフィリングをサンドするために用いられ、
前記パンケーキの厚みは7mm~2cmであり、
小麦粉、ヒドロキシプロピル化澱粉、および乾燥全卵を含み、
前記小麦粉100質量部に対し前記ヒドロキシプロピル化澱粉が120質量部~200質量部である、パンケーキプレミックス。
【請求項7】
ヒドロキシプロピル化澱粉がヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉である請求項6に記載のパンケーキプレミックス。
【請求項8】
ヒドロキシプロピル化澱粉がタピオカ澱粉の加工澱粉である請求項6または7に記載のパンケーキプレミックス。
【請求項9】
ベーキングパウダーおよび砂糖を含む請求項6~8のいずれか一項に記載のパンケーキプレミックス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パンケーキおよびパンケーキプレミックスに関する。
【背景技術】
【0002】
折り曲げたパンケーキにカスタードクリームやアイスクリームなどのフィリングをサンドした菓子において、折り曲げた部分が割れると外観上好ましくない。特にアイスクリームのように冷たいものをはさむ場合、割れが生じやすい。また、保存、流通、販売のために、パンケーキは、多くの場合、冷凍保存していたものを解凍して使用されるが、解凍後時間が経った場合にも割れが生じやすくなる。パンケーキの割れ防止のための方法として、特許文献1では、生地の混合条件を調整してパンケーキの内相膜を厚く、かつ不均一な、粗い目の気泡組織にする方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第3688826号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、折り曲げたときに割れが生じないパンケーキを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記課題の解決のための鋭意検討の過程で、パンケーキの原料の粉の組成を調整することにより、折り曲げたときの割れが生じにくくなることを見出した。本発明者らはこれらの知見に基づいて、さらに検討を重ね、本発明を完成させた。
具体的には、本発明は、以下の[1]から[14]を提供するものである。
【0006】
[1]小麦粉を含む生地を焼成して製造されるパンケーキであって、
上記生地がヒドロキシプロピル化澱粉を含むパンケーキ。
[2]ヒドロキシプロピル化澱粉がヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉である[1]に記載のパンケーキ。
[3]ヒドロキシプロピル化澱粉がタピオカ澱粉の加工澱粉である[1]または[2]に記載のパンケーキ。
[4]上記生地において上記小麦粉100質量部に対し上記ヒドロキシプロピル化澱粉が1質量部~200質量部である[1]~[3]のいずれかに記載のパンケーキ。
[5]上記生地において上記小麦粉100質量部に対し上記ヒドロキシプロピル化澱粉が120質量部~200質量部である[1]~[3]のいずれかに記載のパンケーキ。
[6]冷凍パンケーキである[1]~[5]のいずれかに記載のパンケーキ。
[7][1]~[5]のいずれかに記載のパンケーキを折り曲げること、および
折り曲げた上記パンケーキの内側面の上下でフィリングを挟むことを含む
上記パンケーキで上記フィリングをサンドした食品の製造方法。
【0007】
[8][6]に記載のパンケーキを解凍すること
解凍した上記パンケーキを折り曲げること、および
折り曲げた上記パンケーキの内側面の上下でフィリングを挟むことを含む
上記パンケーキで上記フィリングをサンドした食品の製造方法。
[9]小麦粉およびヒドロキシプロピル化澱粉を含むパンケーキプレミックス。
[10]ヒドロキシプロピル化澱粉がヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉である[9]に記載のパンケーキプレミックス。
[11]ヒドロキシプロピル化澱粉がタピオカ澱粉の加工澱粉である[9]または[10]に記載のパンケーキプレミックス。
[12]上記小麦粉100質量部に対し上記ヒドロキシプロピル化澱粉が1質量部~200質量部である[9]~[11]のいずれかに記載のパンケーキプレミックス。
[13]上記小麦粉100質量部に対し上記ヒドロキシプロピル化澱粉が120質量部~200質量部である[9]~[11]のいずれかに記載のパンケーキプレミックス。
[14]ベーキングパウダーおよび砂糖を含む[9]~[13]のいずれかに記載のパンケーキプレミックス。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、折り曲げたときに割れが生じにくいパンケーキが提供される。本発明はまた、上記のパンケーキを製造することができるパンケーキプレミックスを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施例3~5について、折り曲げたパンケーキを撮影した写真を示す図である。
図2】割れの評価基準を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下において、本発明について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、代表的な実施形態や具体例に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施形態に限定されるものではない。なお、本明細書において「~」を用いて表される数値範囲は「~」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
【0011】
<パンケーキ>
本明細書において、パンケーキは、小麦粉および水分(卵、牛乳、水など)などを混合して得られる生地を、平鍋またはホットプレートなどで焼いて(焼成して)作られる食品を意味する。パンケーキは一般的にパンケーキまたはホットケーキと呼ばれるものを含む。パンケーキは生地を焼成して製造される。生地は例えば円盤状などの平たい形状とした後、両面を焼成してパンケーキとされていればよい。パンケーキ表面の「割れ」は、パンケーキの焼成した2つの表面の少なくともいずれか一方に生じるひび割れを意味する。「割れ」は、特に、折り曲げた外側の表面に生じ易い。また、パンケーキ表面の「割れ」は、冷凍パンケーキを解凍した後に生じ易い。
【0012】
[ヒドロキシプロピル化澱粉]
本発明のパンケーキの材料となる生地はヒドロキシプロピル化澱粉を含む。ヒドロキシプロピル化澱粉は、ヒドロキシプロピル基を有する加工澱粉であり、未加工澱粉である澱粉種を酸化プロピレンでエーテル化することで得られる。ヒドロキシプロピル基を有するため、ヒドロキシプロピル化澱粉は親水性が高い。また、ヒドロキシプロピル化澱粉は老化耐性に優れている。本発明のパンケーキは、生地にヒドロキシプロピル化澱粉を含むことにより、弾力性があり、その結果、表面の割れが生じにくくなったと考えられる。本発明のパンケーキの弾力性は冷凍後解凍しても失われにくく、解凍後のパンケーキにおいても表面の割れは生じにくい。
【0013】
ヒドロキシプロピル化澱粉の原料である澱粉種は特に限定されず、任意の植物由来の澱粉であればよい。澱粉種の例としてはタピオカ澱粉、馬鈴薯澱粉、トウモロコシ由来の澱粉等が挙げられる。なお、トウモロコシ由来の澱粉としては、コーンスターチ、ワキシーコーンスターチ等が挙げられる。中でも、澱粉種はタピオカ澱粉であることが好ましい。すなわち、ヒドロキシプロピル化澱粉としては、ヒドロキシプロピル化タピオカ澱粉が好ましい。
【0014】
ヒドロキシプロピル化澱粉はα澱粉であっても、β澱粉であってよいが、α澱粉であることが好ましい。α澱粉の使用により、生地に適度な粘性を付与し、焼成中の保形性を高めることができる。そのため、嵩高なパンケーキを得ることができ、さらにパンケーキに弾力性を与えることができる。
【0015】
ヒドロキシプロピル化澱粉におけるヒドロキシプロピル化の程度(以下「HP化度」という)は、JECFA(FAO/WHO合同食品添加物専門家会議)が定めるニンヒドリン試液を使用する方法で測定することができる。本発明においては、1.5~5.0のHP化度のヒドロキシプロピル化澱粉を用いることが好ましく、2.0~4.0のHP化度のヒドロキシプロピル化澱粉を用いることがより好ましい。
【0016】
なお、上記のJECFAが定めるニンヒドリン試液を使用する方法は、HP化度7.0以下の場合は以下のように行うことができる。試料約50~100mgを精密に量り、0.5mol/L硫酸25mLを加えて沸騰水浴中で加熱して溶かし、冷後、水で正確に100mLとする。必要に応じてヒドロキシプロピル基が4mg/100mL以上とならないように希釈する。別に、未加工(非ヒドロキシプロピル化)澱粉について同様に操作し、吸光度測定の対照液とする。これらの液1mLずつを正確に量り、それぞれ25mLの目盛り付試験管に入れ、冷水で冷却しながらそれぞれに硫酸8mLを滴下する。よくかく拌後、沸騰水浴中で正確に3分間加熱し、直ちに氷水中で冷却する。冷却後、それぞれにニンヒドリン試液(加工デンプン用)0.6mLを注意しながら管壁に沿って加え、直ちに振り混ぜ、25℃の水浴中に100分間放置する。それぞれに硫酸を加えて25mLとし、栓をして振とうしないように静かに数回上下を逆にして試料溶液とする。試料溶液を直ちに吸光度測定用のセルに移し、正確に5分後に、対照液に対する590nmの吸光度を測定する。別に、プロピレングリコール約25mgを精密に量り、水を加えて正確に100mLとし、標準原液とする。標準原液2、4、6、8、10mLを正確に量り、それぞれに水を加えて正確に50mLとし、標準溶液とする。それぞれの標準溶液の1mLを正確に採り、25mLの目盛り付試験管に入れ、冷水中で硫酸8mLを滴下し、それぞれに上記の試料溶液調製の際と同様にニンヒドリン試液(加工デンプン用)を加え、以下、試料溶液と同様に操作して590nmの吸光度を測定し、検量線を作成する。検量線から試料溶液中のプロピレングリコール濃度(μg/mL)を求める得られた値から、次式によりヒドロキシプロピル基含量を求め、更に乾燥物換算を行って、求めた値(%)を単位無しで表したものがHP化度である。
【0017】
【化1】
【0018】
ヒドロキシプロピル化澱粉は、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉であることが好ましい。リン酸架橋澱粉は、リン酸架橋された澱粉であり、例えば、澱粉をトリメタリン酸ナトリウム又はオキシ塩化リンでエステル化することで得られる。リン酸架橋澱粉は、澱粉の分子内または分子間の水酸基が架橋して、糊化が抑制され、耐せん断性や耐酸性に優れている。製造されるパンケーキは、ヒドロキシプロピル化澱粉のリン酸架橋度がより高いことにより、よりふんわりした食感となり、一方、リン酸架橋度がより低いことにより、よりもっちりした食感となる傾向が見られる。このため、パンケーキに求められる食感、パンケーキが挟むフィリングに応じてヒドロキシプロピル化澱粉のリン酸架橋度を調整することも好ましい。
【0019】
なお、リン酸架橋澱粉(ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉を含む)のCL化度は、以下の方法で測定することができる。α化澱粉の場合、20℃以下の冷水を手撹拌しながら少しずつ未溶解(ダマ、ママコ)ができないように澱粉を添加し、4%濃度の澱粉溶液を作製する。その後、手撹拌しながら容器を30℃の水につけ、4%濃度、30℃の澱粉溶液を作製し、4%濃度、30℃での粘度を測定する。また、β澱粉の場合、4%濃度に調製した当該加工澱粉のスラリーを、90℃で20分間撹拌し、その後、30℃に冷却し、当該冷却時の粘度をB型粘度計(30℃、1~4のローターを用いて60rpmで1分間回転したときの粘度。ローターは粘度に応じて推奨されるNoを使用。)で測定することで把握することができる。30℃での粘度が80mPa・s~25000mPa・sとなるCL化度が好ましい。CL化度(粘度)が低いとふんわりした食感を得やすく、CL化度(粘度)が高いと弾力感のあるもっちりとした食感を得やすい。
【0020】
ヒドロキシプロピル化澱粉やヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉としては、市販品を用いることができ、例えば、王子コーンスターチ(株)製の、いかるが100、ひこぼし300、てんじん300、ふうりん300、てらす100、まいはま100、たなばた300、ファインテックスS-1、ファインテックスS-2等を用いることができる。
【0021】
ヒドロキシプロピル化澱粉の膨潤度は50~100であることが好ましく、70~90であることがより好ましい。ヒドロキシプロピル化澱粉の膨潤度は、以下の方法で測定した値である。まず、ヒドロキシプロピル化澱粉を乾燥質量で1.0g/100mlとなるように水中に分散し、90℃で30分間加熱後30℃に冷却することで糊化液とする。次いで、糊化液を遠心分離(3000rpm、10分間)してゲル層と上澄み層に分け、ゲル層の質量を測定してこれをWAとする。次いで、質量を測定したゲル層を乾燥し(105℃、恒量)、質量を測定してこれをWBとし、WA/WBを膨潤度とする。
【0022】
生地はヒドロキシプロピル化澱粉を一種含んでいても二種以上含んでいてもよい。例えば、ヒドロキシプロピル化タピオカ澱粉として、非α澱粉とともにα澱粉を含むものであってもよい。
【0023】
生地においてヒドロキシプロピル化澱粉は小麦粉の100質量部に対し、1質量部~200質量部であることが好ましく、120質量部~200質量部であることがより好ましく、130質量部~175質量部であることがさらに好ましい。ヒドロキシプロピル化澱粉の量が小麦粉よりも多い場合、好ましくはヒドロキシプロピル化澱粉は小麦粉の質量に対し120質量部以上である場合に、パンケーキ表面の割れがより防止できる傾向がある。小麦粉に対してヒドロキシプロピル化澱粉が多い場合は生地の粘度が下がり薄くなるので、生地中の牛乳や水の量を減らしてもよい。
【0024】
生地はヒドロキシプロピル化澱粉以外の加工澱粉などの非ヒドロキシプロピル化澱粉
(例えば、アセチル化アジピン酸架橋澱粉など)を含んでいてもよいが、非ヒドロキシプロピル化澱粉を含んでいないことが好ましい。
【0025】
[小麦粉]
本発明のパンケーキの材料となる生地は小麦粉を含む。小麦粉は生地の総質量に対して10~40質量%で含まれていることが好ましく、12~32質量%で含まれていることがより好ましく、13~30質量%で含まれていることがさらに好ましい。
小麦粉は、グルテン量の少ない薄力粉からなることが好ましい。または小麦粉は、80質量%以上、好ましくは90質量%以上の薄力粉と、残りに強力粉または中力粉を含むものであってもよい。
【0026】
また、小麦粉は小麦全粒から果皮や胚芽の部分が取り除かれた胚乳の部分のみを挽いた粉(精製小麦粉)であることが好ましい。または、小麦粉は、精製小麦粉を70質量%以上、好ましく80質量%以上含み、残りとして他の小麦粉を含むものであってもよい。他の小麦粉の例としては、全粒粉(小麦の表皮、胚芽、胚乳をすべて粉にしたもの)が挙げられる。
【0027】
[その他の成分]
生地は、小麦粉およびヒドロキシプロピル化澱粉以外に、通常パンケーキの生地に含まれる他の成分を含んでいればよい。例えば、他の成分は、ベーキングパウダー、砂糖(上白糖が好ましい)である。これらに加え、全卵および牛乳、水、豆乳、ジュースなどの液体を加えて生地が形成されていればよい。牛乳、水、豆乳、ジュースなどの液体は生地の総質量に対して20~40質量%で含まれていることが好ましく、24~37質量%で含まれていることがより好ましい。その他、生地は、食塩、油脂(植物油など)、水あめなどの液糖、乳化剤、風味付けパウダー、調味料、酸味料、甘味料、防腐剤、酸化防止剤、pH調整剤、着色料、保存料、香料、機能性素材などを含んでいてもよい。
【0028】
パンケーキ製造用の生地における上記各成分の適切な量は当業者に周知であり、必要とする甘みや風味、および使用するヒドロキシプロピル化澱粉の性質などに応じて適宜調整することができる。
【0029】
[パンケーキプレミックス]
生地は、乾燥成分を予め混合したパンケーキプレミックスを用いて用意してもよい。
パンケーキプレミックスは、小麦粉およびヒドロキシプロピル化澱粉を含み、さらに、ベーキングパウダー、砂糖を含むことが好ましい。さらに、全卵粉(乾燥全卵)を含んでいてもよい。パンケーキプレミックスは、さらに、食塩、油脂、液糖、乳化剤、風味付けパウダー、調味料、酸味料、甘味料、防腐剤、酸化防止剤、pH調整剤、着色料、保存料、香料、および機能性素材からなる群より選択される1または2以上の成分を含んでいてもよい。
【0030】
なお、風味付けパウダーとしては、例えば、果実風味パウダー、ココアパウダー、抹茶パウダーなどを挙げることができる。調味料としては、例えば、香辛料、ハーブ、ココナッツミルク等を挙げることができる。酸味料としては、例えば、クエン酸、酢酸、乳酸、グルコン酸等を挙げることができる。甘味料としては、例えば、糖類、糖アルコール類、ステビア、アスパルテーム等を挙げることができる。香料としては、例えば、バニラエッセンス、バター風香料、チーズ風香料等を挙げることができる。機能性素材としては、例えば、セラミド、アマニ、ポリフェノール、キシリトール、または難消化性デキストリン等を挙げることができる。
【0031】
パンケーキプレミックス中における小麦粉およびヒドロキシプロピル化澱粉以外の成分の含有量は、パンケーキプレミックスの全質量に対して45質量%以下であることが好ましく、40質量%以下であることがより好ましい。パンケーキプレミックスが全卵粉を含まない場合は40質量%以下であることが好ましく、40質量%以下であることがより好ましい。
【0032】
パンケーキプレミックスは、小麦粉、ヒドロキシプロピル化澱粉、およびその他の成分を混合して乾燥粉として製造できる。混合する際には各成分を予め篩にかけておくことが好ましい。
【0033】
パンケーキプレミックスを用いて生地を用意する際は、パンケーキプレミックスに牛乳または水などの水分を加えて混合すればよい。パンケーキプレミックスが全卵粉を含まない場合などにおいては、上記水分に加えてさらに卵を加えて混合すればよい。
【0034】
[パンケーキの製造方法]
パンケーキは、生地を、平鍋(パン、フライパンなど)またはホットプレート等で焼成することによって製造することができる。
生地は上記の各成分を混合して調製された後、放置し、その後焼成してもよい。放置して寝かせることにより、各成分をなじませることができる。放置時間(寝かせ時間)は、例えば5分~10分である。
【0035】
生地は、例えば円盤状などの平たい形状とした後、両面を焼成してパンケーキとすればよい。
パンケーキは厚みが5mm~3cm、好ましくは7mm~2cmとなるように製造することが好ましい。パンケーキの厚みは、焼成温度等の他、生地の粘度を調整することによって調整することができる。生地の粘度が高いほど、パンケーキの厚みを厚くできる。生地の粘度は生地の水分量と固形分量の比を調整することによって調整すればよい。また、パンケーキのサイズ(表面の面積)は用途に応じたサイズであればよく、特に制限はないが、通常直径8cm~20cm程度の円と同等のサイズであればよい。パンケーキのサイズは焼成の際の生地の量で調整することができる。
【0036】
パンケーキを焼成するときの平鍋またはホットプレートの温度は、120℃以上であることが好ましく、140℃以上であることがより好ましく、150℃以上であることがさらに好ましい。また、焼成温度は、230℃以下であることが好ましく、220℃以下であることがより好ましく、200℃以下であることがさらに好ましい。なお、加熱時間は、片面につき、1~3分に加えて、その反対側の面につき1~3分程度であればよく、両面を合わせて2~6分程度であることが好ましい。例えば、180℃で両面合わせて3分程度加熱することが好ましい。
【0037】
製造されたパンケーキは、そのまま直ぐに使用してもよいが、その後、冷凍することにより、長期保存が可能であり、また冷凍パンケーキとして流通させることができる。冷凍パンケーキとする場合、焼成後のパンケーキは、急速冷凍してもよい。本発明のパンケーキはヒドロキシプロピル化澱粉を原料として含むものであるため、耐冷凍性に優れており、冷凍パンケーキとし、その後に解凍した場合でもその食感や弾力性が損なわれない。
【0038】
<パンケーキを利用した食品の製造方法>
上記のように製造されたパンケーキの用途は特に限定されないが、フィリングをサンドした食品の製造に用いることができる。すなわち、パンケーキを折り曲げ、折り曲げたパンケーキの内側面の上下でフィリングを挟むことにより菓子などの食品を製造することができる。パンケーキの内側面の上下でフィリングを挟むとは、例えば、パンケーキの内側面でフィリングを包むように挟むことである。本発明のパンケーキは折り曲げたときにその表面に割れが生じにくく、このような食品の製造に用いるのに適している。冷凍したパンケーキを利用する場合は、上記のようにパンケーキを折り曲げる前に解凍を行えばよい。
【0039】
フィリングは特に限定されないが、例として、アイスクリーム、カスタードクリーム、ホイップクリーム、各種餡などが挙げられる。フィリングは、バナナなどの果物、トマトなどの野菜、ソーセージ、ハム、卵などであってもよい。パンケーキの表面への粘着性が低いフィリングを挟む場合は、各種クリーム、バター、マヨネーズなどの粘着性の高いものとともに挟むことが好ましい。
【実施例
【0040】
以下に実施例と比較例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0041】
<澱粉の調製>
馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉、α化タピオカ澱粉を原料としたヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉を、既知の方法で製造した。得られたヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉のHP化度と、CL化度の指標となる粘度を以下の方法で測定した。
【0042】
[澱粉(ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉)のHP化度]
以下のJECFAが定めるニンヒドリン試液を使用する方法で測定した。試料約50~100mgを精密に量り、0.5mol/L硫酸25mLを加えて沸騰水浴中で加熱して溶かし、冷後、水で正確に100mLとした。ヒドロキシプロピル基が4mg/100mL以上となった場合には希釈した。別に、原材料の澱粉について同様に操作し、吸光度測定の対照液とした。これらの液1mLずつを正確に量り、それぞれ25mLの目盛り付試験管に入れ、冷水で冷却しながらそれぞれに硫酸8mLを滴下した。よくかく拌後、沸騰水浴中で正確に3分間加熱し、直ちに氷水中で冷却した。冷却後、それぞれにニンヒドリン試液(加工デンプン用)0.6mLを注意しながら管壁に沿って加え、直ちに振り混ぜ、25℃の水浴中に100分間放置した。それぞれに硫酸を加えて25mLとし、栓をして振とうしないように静かに数回上下を逆にして試料溶液とした。試料溶液を直ちに吸光度測定用のセルに移し、正確に5分後に、対照液に対する590nmの吸光度を測定した。別に、プロピレングリコール約25mgを精密に量り、水を加えて正確に100mLとし、標準原液とした。標準原液2、4、6、8、10mLを正確に量り、それぞれに水を加えて正確に50mLとし、標準溶液とした。それぞれの標準溶液の1mLを正確に採り、25mLの目盛り付試験管に入れ、冷水中で硫酸8mLを滴下し、それぞれに上記の試料溶液調製の際と同様にニンヒドリン試液(加工デンプン用)を加え、以下、試料溶液と同様に操作して590nmの吸光度を測定し、検量線を作成した。検量線から試料溶液中のプロピレングリコール濃度(μg/mL)を求める得られた値から、次式によりヒドロキシプロピル基含量を求め、更に乾燥物換算を行って、求めた値(%)を単位無しで表した。それぞれの値を表1に示す。
【0043】
[澱粉(ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉)のCL化度]
α化澱粉については、20℃以下の冷水を手撹拌しながら少しずつ未溶解(ダマ、ママコ)ができないように澱粉を添加し、4%濃度の澱粉溶液を作製した。その後、手撹拌しながら容器を30℃の水につけ、4%濃度、30℃の澱粉溶液を作製し、4%濃度、30℃での粘度を測定し、CL化度とした。α化澱粉ではない澱粉(β澱粉)については、4%濃度に調製した当該β澱粉のスラリーを、90℃で20分間撹拌し、その後、30℃に冷却し、当該冷却時の粘度をB型粘度計(30℃、1~4のローターを用いて60rpmで1分間回転したときの粘度。ローターは粘度に応じて推奨されるNoを使用。)で測定し、CL化度とした。それぞれの値を表1に示す。
【0044】
<パンケーキの製造>
以下の手順で実施例1~5および比較例のパンケーキを製造し、冷凍した。
なお、以下において、薄力粉としては日清製粉株式会社製、日清フラワー、ベーキングパウダーとしてはアイコク株式会社製ベーキングパウダー、上白糖としては三井製糖株式会社製スプーン印上白糖、牛乳としては、雪印メグミルク株式会社製北海道牛乳、植物油としては日清オイリオグループ株式会社製日清キャノーラ油を用いた。
【0045】
(1)表1に記載の量の薄力粉、澱粉、ベーキングパウダー、上白糖を合わせて篩う。
(2)表1に記載の量のボウルに全卵、牛乳、植物油を合わせ、よく混ぜる。
(3)(2)に(1)を加え混ぜ、5分置き、その後再度よく混ぜる。
(4)フライパンに生地を40g流し180℃で片面1分30秒程度(両面3分)焼成する。
(5)パンケーキのあら熱がとれたあと、-30℃で急速冷凍し、1カ月間保存する。
【0046】
<パンケーキの評価>
解凍したパンケーキについて食感とひび割れやすさを評価した。ひび割れの評価は、パンケーキを、直径13.7mmの木製の棒に略半周巻き付け、割れ(ひび割れ)の程度は、パンケーキの解凍直後と解凍4時間後について以下の手順および基準で評価した。結果を表1に示す。また、実施例3~5について、折り曲げたパンケーキを撮影した写真を図1に示す。
【0047】
[割れの評価]
ひび割れにくい:折り曲げ部分に5mm以上の亀裂が見られない。(例:図2(b))
ひび割れやすい:折り曲げ部分に5mm以上の亀裂が10個以上見られるか、または、製品に一直線に亀裂が入る。(例:図2(a))
【0048】
【表1】
図1
図2