(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-21
(45)【発行日】2023-08-29
(54)【発明の名称】回転電気機械
(51)【国際特許分類】
H02K 1/2783 20220101AFI20230822BHJP
【FI】
H02K1/2783
(21)【出願番号】P 2019074595
(22)【出願日】2019-04-10
【審査請求日】2022-04-07
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 刊行物 一般社団法人 電気学会主催の「回転機研究会」において配布された「回転機研究会資料」 集会名、開催場所 平成30年一般社団法人 電気学会主催の「回転機研究会」、かごしま県民交流センター(鹿児島市山下町14-50)
(73)【特許権者】
【識別番号】518350381
【氏名又は名称】株式会社MARC研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100175330
【氏名又は名称】樹下 浩次
(72)【発明者】
【氏名】草瀬 新
【審査官】若林 治男
(56)【参考文献】
【文献】特許第5726386(JP,B1)
【文献】特開2009-038968(JP,A)
【文献】特開2007-14110(JP,A)
【文献】特開2016-67196(JP,A)
【文献】特開2015-133895(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 1/2783
(57)【特許請求の範囲】
【請求項4】
前記突出部において、前記吹出磁極磁石に隣接させ、磁界を前記吹出磁極磁石に対して対向させた第1の永久磁石と、前記吸込磁極磁石に隣接させ、磁界を吸込磁極磁石に対して逆対向させた第2の永久磁石と、前記第1の永久磁石の他方の端部と、前記第2の永久磁石の他方の端部とをリング磁性体で連結した構成、又は前記第1の永久磁石若しくは前記第2の永久磁石のいずれか一方を磁性体とした構成、であることを特徴とする請求項1
又は2に記載する回転電気機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、永久磁石のロータを有する回転電気機械に関する。
【背景技術】
【0002】
レース車用、航空機用、ドローンなどに使用される発電機やモータなどの回転電気機械は、特に小型・高出力が重視される。従来、回転電気機械の小型及び高出力にする方法として、永久磁石を有するロータの永久磁石を大きく設計することが行われている。近年、永久磁石のロータ上の配列構造として「ハルバッハ配列」が注目されている。例えば、特許文献1に記載されている特殊な磁石配列構造、いわゆるハルバッハ配列が用いられている。このハルバッハ配列の磁石は、ロータの径方向とその直交関係の周方向とに交互に配列される(二次元の円環状ハルバッハ配列)ことで、磁束を磁極に集中させて磁束量を増大させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、更に高性能を求めるF1レースなどの車用、航空機用、ドローンなどには、更に高出力な回転電気機械が求められている。従来の永久磁石の二次元の円環状ハルバッハ配列のロータは、磁束を磁極に集中させて磁束を増大させているが、ロータの端部では、磁束が減少している。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、以下の開示がある。開示1は、鉄心と巻き線を有するステータと、ステータとほぼ同一の幅を有するロータを備える回転電気機械において、ロータは、ハルバッハ配列である吹出磁極磁石、吸込磁極磁石及びヨーク磁石を有し、ロータの一方又両方の端部に永久磁石及び磁性体を有する突出部を有し、突出部内において永久磁石の磁界の方向の端面に磁性体を隣接させ、突出部の永久磁石の磁界及び/又は永久磁石の発生する集中磁束が、吹出磁極磁石には対向し、吸込磁極磁石には逆対向することを特徴とする回転電気機械である。開示2は、突出部の永久磁石により発生する集中磁束が、ロータの吹出磁極磁石の突出部及びヨーク磁石に隣接する端部から、吸込磁極磁石の突出部及びヨーク磁石に隣接する端部に集中して発生することを特徴とする開示1に記載する回転電気機械である。開示3は、ロータのヨーク磁石と突出部の間に空間を有することを特徴とする開示1又は2に記載する回転電気機械である。開示4は、突出部の永久磁石は、回転方向又は反回転方向の磁界を有するヨーク磁石に隣接させ、その磁界は隣接させたヨーク磁石と同じとする構成、又は回転方向又は反回転方向の磁界を有する永久磁石のいずれか一方を磁性体とした構成、であることを特徴とする開示1乃至3のいずれか1つに記載する回転電気機械である。開示5は、突出部において、吹出磁極磁石に隣接させ、磁界を吹出磁極磁石へ対向させた第1の永久磁石と、吸込磁極磁石に隣接させ、磁界を吸込磁極磁石に逆対向させた第2の永久磁石と、第1の永久磁石の他方の端部と第2の永久磁石の他方の端部とをリング磁性体で連結した構成、又は第1の永久磁石若しくは第2の永久磁石のいずれか一方を磁性体とした構成、であることを特徴とする開示1乃至3のいずれか1つに記載する回転電気機械である。
【発明の効果】
【0006】
従来に比べ性能である平均トルクが、約5~12%向上する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図4】第2実施形態のロータの磁束密度ベクトルを示す。
【
図5】第2実施形態のロータ表面の磁束密度。を示す
【
図6】磁界磁石と突出部の界面における集中磁束の出入。磁界磁石と突出部の界面における磁束の出入を示す。(a)磁束吸込み磁界磁石、(b)磁束吹出磁界磁石。
【
図11】平面形状のハルバッハ配列構造により発生する集中磁束を示す。
【
図12】従来例を示す。(a)ロータ及びステータ、(b)ステータ。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を適用した回転電気機械1の実施形態について図面を用いて説明する。 本発明は、以下の実施形態に限定されるものでなく、発明の範囲を逸脱しない限りにおいて、変更、修正、改良を加え得るものである。
【0009】
(ハルバッハ配列)
図11に平面形状の永久磁石のハルバッハ配列構造により発生する集中磁束を示す。平面状のハルバッハ配列構造の板1200(ロータ20に相当)には、永久磁石の磁界の集中による磁束時計回りの集中磁束131及び反時計回りの集中磁束132が発生する。対応する板1100はステータ110に相当する。磁束時計回りの集中磁束131及び反時計回りの集中磁束132は、吹出磁極磁石121から吹出し吸込磁極磁石125に吸込まれる。次に板1200の構成を記載する。永久磁石である吹出磁極磁石121の磁界122は板1100に向かって配置され、永久磁石である吸込磁極磁石125の磁界126は磁界122と反対方向に配置されている。吹出磁極磁石121と吸込磁極磁石125の間には、永久磁石であるヨーク磁石134が配置されている。ヨーク磁石134の磁界135は、吹出磁極磁石121に対して左右両方向から受ける(以下、対向すると記す)ように配置され、吸込磁極磁石125に対して左右の両方へ離散する形で受ける(以下逆対向と記す)ように配置される。板1200がこのように構成されることで、磁束時計回りの集中磁束131及び反時計回りの集中磁束132が発生する。ここで集中磁束131、132は、荒い破線で示す平板形状の板1200の外部に発生する集中磁束と、細かい破線で示す板1200の内部に発生する集中磁束とに分けられる。外部に発生する集中磁束131、132によりステータに相当する板1100に配置された鉄心111及び巻き線113と、そこに発生する電流により電磁力を高めることができる。一方、内部に発生する集中磁束131、132は、吹出磁極磁石125、次にヨーク磁石134、次に吹出磁極磁石121の順に発生する。
【0010】
(解析手段)
本開示に用いた解析条件は以下である。三次元過渡磁場解析に用いたFinite Element Analysis解析(以下、FEA解析と記す)は、ムラタソフトウェア(株)製のFemtetである。回転電気機械1の解析モデルは、ステータ10のコア外径Φ164mm、積厚(回転軸方向)50mmの内部にロータ20を設置し、ステータ10と50mm重なっている。突出部15高さ(回転軸方向の軸長さ)は20mmである。極数は8極、スロット数は48、1極1相あたりのスロット数は2、全節巻き、スロット当たりの導体本数は4である。巻き線は全直列、並列数1、Y結線である。160A(線間電流振幅値)であり、回転数は3000rpmである。鉄心11の材質は、50H230(新日鉄住金)である。永久磁石の特性は全て同じである。具体的には信越化学N36Z_140℃のデータを使用した。
【0011】
(従来例)
図12に永久磁石の二次元の円環状ハルバッハ配列構造を用いた従来の回転電気機械101の解析結果を示す。
図12(a)はインナーロータ型の回転電気機械101におけるステータ110とロータ120を示す。ステータ110の内側に一定のギャップを有してロータ120が嵌合している。ステータ110とロータ120の長手方向の幅の寸法はほぼ同じ、即ちほぼ同一の幅を有する。
図12(b)はロータ120の構造を示す。ロータ120は、吹出磁極磁石121と吸込磁極磁石125が、ヨーク磁石134を介して交互に配されている。吹出磁極磁石121の磁界122はステ-タ110に向き、吸込磁極磁石125の磁界126はステ-タ110と反対方向に向いている。ヨーク磁石134の磁界135は、吹出磁極磁石121に対し対向し、吸込磁極磁石125に対して逆対向している。
【0012】
ここで、回転電気機械101は解析上8極を想定している。よって、
図12(a)のステータ110は、解析モデルとして8分割する線が記載されており実物が分割されているわけではない。それに対応してロータ120は、分割されたステータ110の中央部に吹出磁極磁石121又は吸込磁極磁石125が配されて図示されている。ヨーク磁石1134の中央部には、ステータ110の分割線に対応して分割線がある。これも解析モデルであり実物が分割されているわけではない。以下、実施形態の解析モデルにおいて同じである。
【0013】
図13に従来例のロータ120の磁束密度ベクトルの解析結果を示す。吹出磁極磁石121の磁束密度ベクトル123は、ロータ120の円弧の半径方向の外側に向かっている。吸込磁極磁石125の磁束密度ベクトル127は、反対にロータ120の円弧の半径方向の内側に向かっている。吹出磁極磁石の磁束密度ベクトル123及び吸込磁極磁石の磁束密度ベクトル127の分布は、ヨーク磁石134の隣接部の辺に集中している。ヨーク磁石134の磁界密度ベクトル136は、ロータ120の円周方向に沿って、吹出磁極磁石121に対し対向し吸込磁極磁石125に対して逆対向している。吹出磁極磁石121から近接する吸込磁極磁石125へは、時計回りの集中磁束131及び反時計回りの集中磁束132が発生している。
【0014】
図14に従来例のロータ120の表面の磁束密度の解析結果を示す。一般に回転電気機械101の発生するトルクは磁極磁石の前縁部の磁束密度が影響している。吹出磁極磁石121及び吸込磁極磁石125のヨーク磁石134の隣接部、特に回転方向の前縁部には、磁束密度が集中して大きくなっている。
【0015】
図15に、従来例の回転電気機械101の発生する平均トルクの解析結果を示す。回転角(°)に対する発生したトルク(Nm)をし、平均トルクは40.3Nmである。
【0016】
(課題と対応)
発明者は、吹出磁極磁石121又は吸込磁極磁石125と、ヨーク磁石134の隣接部の回転方向の前縁部発生した大きな磁束密度は、ロータ120の両端部には発生していないことを見出した。これは端部では集中磁束の漏れが発生しているからである。よって、両端部の集中磁束の漏れを防ぎ磁束密度を大きくできれば、回転電気機械101の発生するトルクを大きくできる。
【0017】
(第1実施形態)
第1実施形態は、本開示の原理に関する。吹出磁極磁石21又は吸込磁極磁石25と、ヨーク磁石34の隣接部の回転方向の前縁部発生した大きな磁束密度と、同程度の磁束密度をロータ20の端部に発生させるために、ロータ20の一方又両方の端部に永久磁石16及び磁性体18を有する突出部15を設ける。
図1に第1実施形態のロータ20に隣接する突出部15の片側を模式的に示す。
【0018】
図1(a)は、ロータ20の一部とこれに隣接する突出部15の一部を示す。ロータ20は、吹出磁極磁石21、ヨーク磁石34、吸込磁極磁石25が順に隣接している。ヨーク磁石34の磁界35は、吸込磁極磁石25から吹出磁極磁石21に向いて配されている。即ち、吹出磁極磁石21には対抗し吸込磁極磁石には逆対向している。吹出磁極磁石21の磁界22は紙面の上方へ吸込磁極磁石25の磁界26は紙面の下方に向いている。突出部15の永久磁石16は、ヨーク磁石34に隣接して、その磁界17は磁界35と同じである。磁性体18は、吹出磁極磁石21及び吸込磁極磁石25に近接して配される。即ち、永久磁石16の磁界17方向の2つの端面に磁性体18が隣接している。突出部15の永久磁石16の磁界17により発生する集中磁束19は、吹出磁極磁石21には対向し、吸込磁極磁石25には逆対向する。ここで、永久磁石16の磁界17方向の長さは、集中磁束19の大きさを調節するために多少長く又は短くすることができる。ここで突出部15が一方のみの場合でも、永久磁石16の発生する集中磁束19の対向又は逆対向の配置は同じである。
【0019】
次に
図1(b)に、別のロータ20の一部とこれに隣接する突出部15の一部を示す。ロータ20は、
図1(a)と同じである。突出部15の永久磁石16は、ヨーク磁石34との間に空間15aを介し、その磁界17はヨーク磁石34の磁界35と同じ方向に配される。磁性体18は、吹出磁極磁石21及び吸込磁極磁石25に近接して配される。即ち、永久磁石16の磁界17方向の2つの端面に磁性体18が隣接している。突出部15の永久磁石16の磁界17により発生する集中磁束19は、吹出磁極磁石21には対向し、吸込磁極磁石25には逆対向する。永久磁石16の磁界17方向の長さは、集中磁束19の大きさを調節するために多少長く又は短くすることができる。ここで突出部15が一方のみの場合でも、永久磁石16の発生する集中磁束19の対向又は逆対向の配置は同じである。に空間15aは、回転電気機械1の作動時のロータを冷却する効果がある。
【0020】
次に
図1(c)に、別のロータ20の一部とこれに隣接する突出部15の一部を示す。ロータ20は、
図1(a)と同じである。突出部15の吹出磁極磁石21に隣接する一方の永久磁石16は、その磁界17を対向させ、他方の端面をリング磁性体61に隣接させて配される。また吸込磁極磁石25に隣接する他方の永久磁石16は、その磁界17を逆対向させ、他方の端面をリング磁性体61に隣接させて配される。よって、2つの永久磁石16によって発生する集中磁束19は吸込磁極磁石25から吹出磁極磁石21に向かって発生する。ここで、集中磁束19の大きさを調節するために2つの永久磁石の磁界17方向の長さを多少長く又は短くすることができる。また、いずれか一方の永久磁石16を無くして1つとすることかできる。よって、突出部15の永久磁石16の磁界17及び/又は永久磁石16により発生する集中磁束19は、吹出磁極磁石21には対向し、吸込磁極磁石25には逆対向する。ここで、突出部15が一方のみの場合でも、永久磁石16の磁界17及び/又は永久磁石16の発生する集中磁束19の対向又は逆対向の配置は同じである。空間15aは、回転電気機械1の作動時のロータを冷却する効果がある。
【0021】
以上、
図1(a)、(b)又は(c)に示す構成は、例えばまずロータ20の一方又両方の端部に突出部15を設け、突出部15の材質を磁性体18として磁束の通路を確保する。次に、突出部15の一部を永久磁石16とする。永久磁石16の磁界17は、吸込磁極磁石25から吹出磁極磁石21の方向とする。これにより突出部15の内部に永久磁石16の磁力により、吸込磁極磁石25から吹出磁極磁石21の方向とし、磁界17の方向に磁性体18が配されることで集中磁束19を発生させる。集中磁束19には、突出部15が無い場合に漏れていた集中磁束を回収する効果もある。よって、発生した集中磁束19は、ロータ20の端部において、時計回り集中磁束31及び反時計回り集中磁束32を補完して大きくすることができる。ロータ20の回転時、永久磁石16により発生する磁束19が、吹出磁極磁石21の回転方向の突出部15及びヨーク磁石34に隣接する端部から、吸込磁極磁石25の回転方向の突出部15及びヨーク磁石34に隣接する端部へ流すことができる回転電気機械1を提供できる。
【0022】
(第2実施形態)
第2実施形態は、
図1(a)に相当する。
図2に、第2実施形態の回転電気機械1のステータ10とロータ20の構造を示す。ステータ10は、鉄心11と巻き線13(図示せず)を備える。ロータ20の端部には突出部15として第1突出部40を有する。第1突出部40は、ステータ10に対して突起している。
【0023】
図3に第2実施形態のロータ20及び突出部15の構成を示す。第2実施形態において、突出部15は第1突出部40とする。ロータ20の両端に第1突出部40は配されるが、片方の端部のみでも良い。ロータ20の構成は従来のロータ120と同様である。吹出磁極磁石21と吸込磁極磁石25に隣接する第1突出部40には、磁性体18として磁極磁石隣接磁性体41が配される。ヨーク磁石34に隣接する第1突出部40には、永久磁石16としてヨーク磁石隣接磁石43が配される。ヨーク磁石隣接磁石43の磁界44は、隣接するヨーク磁石34の磁界35と同じである。よって、ヨーク磁石隣接磁石43の磁界44は、吹出磁極磁石21に対して対向し、吸込磁極磁石25に対しては逆対向する。ロータ20において発生する集中磁束である。ロータ20にて発生する時計回りの集中磁束31及び反時計回りの集中磁束32の大きさは、従来のロータ120と同等である。また、第1突出部40によって発生するロータ20の端部の集中磁束を、時計回りの集中磁束47及び反時計回りの集中磁束48を示す。図示する集中磁束31、32、47、48において、ロータ20の外部に発生するものを荒い破線、ロータ20及び第1突出部40の内部に発生するものを細かい破線で示す(以下、同じ)。
【0024】
第2実施形態においては、第1突出部40(突出部15)のヨーク磁石隣接磁石43(永久磁石16)の発生する時計回りの集中磁束47(集中磁束19)及び/又は反時計回りの集中磁束48(集中磁束19)が、吹出磁極磁石21は対向し、吸込磁極磁石25には逆対向する。ここで、かっこ()内は第1実施形態の構成を示す。ここで、第1突出部40が一方のみの場合でも、ヨーク磁石隣接磁石43の発生する計回りの集中磁束47及び/又は反時計回りの集中磁束48の対向、逆対向の配置は同じである。尚、第1実施形態との構成関係は、突出部15が第1突出部40、永久磁石16がヨーク磁石隣接磁石43、永久磁石の磁界17がヨーク磁石隣接磁石の磁界44、磁性体18が磁極磁石隣接磁性体41、集中磁束19が時計回り集中磁束47及び/又は反時計回りの集中磁束48である。
【0025】
図4に第2実施形態におけるロータ20及び第1突出部40の磁束密度ベクトルを示す。
吹出磁極磁石21と吸込磁極磁石25において、磁束密度ベクトルは、ヨーク磁石34の隣接する辺に集中している。よって、時計回りの集中磁束31及び反時計回りの集中磁束32は、吹出磁極磁石21の辺部からロータ20の外に出て隣接するヨーク磁石34を介して吸込磁極磁石25の辺部に発生する。更に、吸込磁極磁石25からヨーク磁石内部を介して吹出磁極磁石21に発生する。一方、第1突出部40に隣接するロータ20の端部の時計回りの集中磁束47及び反時計回りの集中磁束48は、ロータ20の外側については時計回りの集中磁束31及び反時計回りの集中磁束32と同様であるが、ロータ20の内側については第1突出部40を経由するので次のようになる。まず、吸込磁極磁石25の内部を集中磁束47a、48aとして発生、次にそれぞれ隣接する磁極磁石隣接磁性体41の内部を47b、48bとして発生、次にそれぞれ隣接するヨーク磁石隣接磁石の内部を47c、48cとして発生、次にそれぞれ隣接する磁極磁石隣接磁性体41の内部を47d、48dとして発生、最後にそれぞれ隣接する吹出磁極磁石21の内部に発生する。
【0026】
図5に第2実施形態のロータ20及び第1突出部40の表面の磁束密度を示す。一般に回転電気機械101の発生するトルクにはロータ20の回転による破極時の磁極磁石の前縁部の磁束密度が影響している。吹出磁極磁石21及び吸込磁極磁石25のヨーク磁石34の隣接部の回転方向の前縁部には、磁束密度が集中して大きくなっている。よって、時計回りの集中磁束31及び反時計回りの集中磁束32が発生している。一方、第1突出部40に隣接するロータ20の端部の時計回りの集中磁束47及び反時計回りの集中磁束48は、ロータ20の外側については時計回りの集中磁束31及び反時計回りの集中磁束32と同様であるが、ロータ20の内側については第1突出部40を経由するので次のようになる。まず、吸込磁極磁石25の内部を集中磁束47a、48aとして発生、次にそれぞれ隣接する磁極磁石隣接磁性体41の内部を47b、48bとして発生、次にそれぞれ隣接するヨーク磁石隣接磁石の内部を47c、48cとして発生、次にそれぞれ隣接する磁極磁石隣接磁性体41の内部を47d、48dとして発生、最後にそれぞれ隣接する吹出磁極磁石21の内部に発生する。時計回りの集中磁束47及び反時計回りの集中磁束48は、第1突出部40のヨーク磁石隣接磁石43の磁界44の方向に磁極磁石隣接磁性体41を隣接させることで発生させている。
【0027】
図6に吹出磁極磁石21及び吸込磁極磁石25と突出部40の界面における集中磁束の出入を示す。
図6(a)は、
図5の吸込磁極磁石25と隣接する磁性体41との界面49aを吸込磁極磁石25から見た集中磁束の状態を示す。集中磁束47b、48bは、ロータ20の下側(内側円弧又はステータ10の反対側)の吸込磁極磁石25のほぼ中央部から磁性体41に発生している。
図6(b)は、
図5の吹出磁極磁石21と隣接する磁性体41との界面49bを吹出磁極磁石21から見た集中磁束の状態を示す。集中磁束47b、48bは、ロータ20の下側(内側円弧又はステータ10の反対側)の磁性体41のほぼ中央部から吹出磁極磁石21に発生している。よって、第1突出部40(突出部15)のヨーク磁石隣接磁石43(永久磁石16)により発生する集中磁束47,48(磁束磁束19)は、第1突出部40(突出部15)から隣接する吹出磁極磁石21の時計回り集中磁束31又は反時計回り集中磁束32の吹出方向の反対側に集中して吹出し、第1突出部40(突出部15)に隣接する吸込磁極磁石25の時計回り集中磁束31又は反時計回り集中磁束32の吸込方向の反対側から集中して吸込まれている。ここで、かっこ()内は第1実施形態の構成を示す。
【0028】
6に第2実施形態の回転電気機械1の発生する平均トルクの解析結果を示す。回転角(°)に対する発生したトルク(Nm)をし、平均トルクは44.8Nmである。従来に比べ平均トルクは、4.5Nm(11.1%)向上した。第1突出部40を片側のみとした場合、約半分の平均トルクが向上する。また、回転方向又は反回転方向の磁界44(磁界17)を有するヨーク磁石隣接磁石43(永久磁石16)のいずれか一方を機極磁石隣接磁性体41(磁性体18)とした構成とすることもできる。この場合、ヨーク磁石隣接磁石43の磁界44を大きくしても良い。
【0029】
図1(b)に示すように、ヨーク磁石34とヨーク磁石隣接磁石43の間に、に空間15aを配することもできる。リング磁性体61とヨーク磁石34の間に空間15aを有することで、ロータ20の回転時に発生する熱を、に空間15aを通過する空気により効果的に放熱することができる。
【0030】
(第3実施形態)
図8に、第3実施形態の回転電気機械1のステータ10とロータ20の構造を示す。ステータ10は、鉄心11と巻き線13(図示せず)を備える。ロータ20の端部には突出部15として第2突出部50を有する。第2突出530は、ステータ10に対して突起している。
【0031】
図9に第3実施形態のロータ20及び突出部15の構成を示す。第2実施形態において、突出部15は第2突出部50とする。ロータ20の両端に第2突出部50は配されるが、片方の端部のみでも良い。ロータ20の構成は従来のロータ120と同様である。第2突出部50において、吹出磁極磁石21に隣接させる永久磁石16を吹出磁極磁石隣接磁石51とする。吹出磁極磁石隣接磁石51の磁界52(17)は吹出磁極磁石21に対して対向させる。吸込磁極磁石25に隣接させる永久磁石16を吸込磁極磁石隣接磁石55とする。吸込磁極磁石隣接磁石55の磁界56(17)は吸込磁極磁石25に対して逆対向させる。第1の永久磁石16である吹出磁極磁石隣接磁石51の他方の端部と、第2の永久磁石16である吸込磁極磁石隣接磁石55の他方の端部とは、磁性体(18)であるリング磁性体61で連結する。ヨーク磁石34とリング磁性体61の間は空間62である。
ロータ20には、第2実施形態と同様の時計回りの集中磁束31及び反時計回りの集中磁束32が発生している。ロータ20の端部には、第2突出部50の作用も加わって時計回りの集中磁束31及び反時計回りの集中磁束32と同程度の大きさの時計回りの集中磁束63及び反時計回りの集中磁束64が発生している。ロータ20の外側の集中磁束の発生は4つの集中磁束(31、32、63、64)でほぼ同様であるが、ロータ20の内部は異なる。時計回りの集中磁束31及び反時計回りの集中磁束32は、ヨーク磁石34の内部をその磁界35の方向に発生する。時計回りの集中磁束63及び反時計回りの集中磁束64は第2突出部50の内部に発生する。時計回りの集中磁束63は、吸込磁極磁石25から吸込磁極磁石隣接磁石55の内部をその磁界56の方向に集中磁束63aとして発生、次にリング磁性体61の内部を集中磁束63bとして発生、次に吹出磁極磁石隣接磁石51の内部をその磁界52の方向に集中磁束63cとして発生ぃ吹出磁極磁石21に戻る。同様に、反時計回りの集中磁束64は、吸込磁極磁石25から吸込磁極磁石隣接磁石55の内部をその磁界56の方向に集中磁束64aとして発生、次にリング磁性体61の内部を集中磁束64bとして発生、次に吹出磁極磁石隣接磁石51の内部をその磁界52の方向に集中磁束64cとして発生し吹出磁極磁石21に戻る。このように時計回りの集中磁束63及び反時計回りの集中磁束64が第2突出部50の内部に発生するためには、吹出磁極磁石隣接磁石51の磁極52の方向の端部、及び吸込磁極磁石隣接磁石55の磁界極56の方向の端部にリング磁性体61が隣接される必要がある。
【0032】
吹出磁極磁石隣接磁石51又は吸込磁極磁石隣接磁石55は、いずれか一方を磁性体18としても良い。この場合、時計回りの集中磁束63及び反時計回りの集中磁束64が小さくならないように吹出磁極磁石隣接磁石51の磁界52又は吸込磁極磁石隣接磁石55の磁界56を調整する。吹出磁極磁石隣接磁石51のみにした場合、吹出磁極磁石隣接磁石51が発生する時計回りの集中磁束63及び反時計回りの集中磁束64は、吸込磁極磁石25に対して逆対向する。また、吸込磁極磁石隣接磁石55のみにした場合、吸込磁極磁石隣接磁石5が発生する時計回りの集中磁束63及び反時計回りの集中磁束64は、吹出磁極磁石21に対して対向する。ここで、突出部50が一方のみの場合でも、吹出磁極磁石隣接磁石51及び/又は吸込磁極磁石隣接磁石5が発生する時計回りの集中磁束63及び反時計回りの集中磁束64は、吹出磁極磁石21に対しては対向、吸込磁極磁石25に対しては逆対向する。尚、第1実施形態との構成関係は、突出部15が第2突出部50、永久磁石16が吹出磁極磁石隣接磁石51及び/又は吸込磁極磁石隣接磁石55、永久磁石の磁界17が吹出磁極磁石隣接磁石の磁界52及び/又は吸込磁極磁石隣接磁石の磁界56、磁性体18がリング磁性体61、集中磁束19が時計回り集中磁束63及び/又は反時計回りの集中磁束64である。
【0033】
ここで、
図6に示す効果は第3実施形態でも同様である。よって第2突出部50(突出部15)の吹出磁極磁石隣接磁石51(永久磁石16)及び/又は吸込磁極磁石隣接磁石55(永久磁石16)により発生する集中磁束63,64(磁束19)は、第2突出部50(突出部15)から隣接する吹出磁極磁石21の時計回り集中磁束31又は反時計回り集中磁束32の吹出方向の反対側に集中して吹出し、第2突出部50(突出部15)に隣接する吸込磁極磁石25の時計回り集中磁束31又は反時計回り集中磁束32の吸込方向の反対側から集中して吸込まれている。ここで、かっこ()内は第1実施形態の構成を示す。
【0034】
リング磁性体61とヨーク磁石34の間には空間62を有することで、ロータ20の回転時に発生する熱を、空間62を通過する空気により効果的に放熱することができる。
【0035】
また、吹出磁極磁石隣接磁石51(第1の永久磁石16)若しくは吸込磁極磁石隣接磁石55(第2の永久磁石16)のいずれか一方を磁性体18とした構成とすることもできる。この場合、吹出磁極磁石隣接磁石51の磁界52又は吸込磁極磁石隣接磁石55の磁界56を大きくしても良い。
【0036】
図10に第3実施形態の回転電気機械1の発生する平均トルクの解析結果を示す。回転角(°)に対する発生したトルク(Nm)をし、平均トルクは44.0Nmである。従来に比べ平均トルクは、4.0Nm(10.0%)向上した。第2突出部50を片側のみとした場合、約半分の平均トルクが向上する。
【0037】
(第4実施形態)
第4実施形態は、アウターロータ型の回転電気機械1を示す(図示せず)。吹出磁極磁石21の磁界22を反転して内側とし、吸込磁極磁石25の磁界26を反転して外側とする。これで発生する集中磁界はロータ20の内側になる。よって、ステータ10は、ロータ20の内側に配される。これにより外側に配されたロータ20が回転するアウターロータ型の回転電気機械1を提供する。
【0038】
以上、第1実施形態乃至第4実施形態より本開示は以下となる。開示1は、鉄心11と巻き線13を有するステータ10と、ステータ10とほぼ同一の幅を有するロータ20とを備える回転電気機械1において、ロータ20は、ハルバッハ配列である吹出磁極磁石21、吸込磁極磁石25及びヨーク磁石34を有し、ロータ20の一方又両方の端部に永久磁石16及び磁性体18を有する突出部15を有し、突出部15内において永久磁石16の磁界17の方向の端面に磁性体18を隣接させ、突出部15の永久磁石16の磁界17及び/又は永久磁石16の発生する集中磁束19が、吹出磁極磁石21は対向し、吸込磁極磁石25には逆対向することを特徴とする回転電気機械1である。開示2は、突出部15の永久磁石16により発生する集中磁束19が、ロータ20の吹出磁極磁石21の突出部15及びヨーク磁石34に隣接する端部から、吸込磁極磁石25の突出部15及びヨーク磁石34に隣接する端部に発生することを特徴とする開示1に記載する回転電気機械1である。開示3は、ロータ20のヨーク磁石34と突出部15の間に空間隙15aを有することを特徴とする開示1又は2に記載する回転電気機械1である。開示4は、突出部15の永久磁石16は、回転方向又は反回転方向の磁界35を有するヨーク磁石34に隣接させ、その磁界17は隣接させたヨーク磁石34と同じとする構成、又は回転方向又は反回転方向の磁界を有する永久磁石16のいずれか一方を磁性体18とした構成、であることを特徴とする開示1乃至3のいずれか1つに記載する回転電気機械1である。開示5は、突出部15において、吹出磁極磁石21に隣接させ、磁界17を吹出磁極磁石21に対して対向させた第1の永久磁石16と、吸込磁極磁石25に隣接させ、磁界17を吸込磁極磁石25に対して逆対向させた第2の永久磁石16と、第1の永久磁石16の他方の端部と、第2の永久磁石16の他方の端部とを連結したリング磁性体61とした構成、又は第1の永久磁石16若しくは第2の永久磁石16のいずれか一方を磁性体18とした構成、であることを特徴とする開示1乃至3のいずれか1つに記載する回転電気機械1である。
【0039】
以上より、従来に比べ性能である平均トルクが、5~10%向上する。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本開示は、永久磁石ロータを用いた回転電気機械を、シンプルな技術で高性能化できる。電動機、発電機いずれにも適用できるので、更に高性能を求めるF1レースなどの車用、航空機用、ドローンなどの回転電気機械として提供できる。
【符号の説明】
【0041】
1:回転電気機械、10:ステータ、11:鉄心、13:巻線、15:突出部、15a:空間、16:永久磁石、17:永久磁石の磁界、18:磁性体、19:集中磁束、20:ロータ、21:吹出磁極磁石、22:吹出磁極磁石の磁界、23:吹出磁極磁石の磁束密度ベクトル、24:吹出磁極磁石の磁束密度、25:吸込磁極磁石、26:吸込磁極磁石の磁界、27:吸込磁極磁石の磁束密度ベクトル、28:吸込磁極磁石の磁束密度、31:時計回り集中磁束、32:反時計回り集中磁束、34:ヨーク磁石、35:ヨーク磁石の磁界、36:ヨーク磁石の磁束密度ベクトル、37:ヨーク磁石の磁束密度、40:第1突出部、41:磁極磁石隣接磁性体、43:ヨーク磁石隣接磁石、44:ヨーク磁石隣接磁石の磁界、45:ヨーク磁石隣接磁石の磁束密度ベクトル、46:ヨーク磁石隣接磁石の磁束密度、47:第1突出部の時計回り集中磁束、47の内部集中磁束:(47a:吸込磁極磁石、47b:磁性体、47c:ヨーク磁石隣接磁石、47d:磁性体、47e:吹出磁極磁石)、48:第1突出部の反時計回り集中磁束、48の内部集中磁束:(48a:吸込磁極磁石、48b:磁性体、48c:ヨーク磁石隣接磁石、48d:磁性体、48e:吹出磁極磁石)、49a:吸込磁極磁石25と隣接する磁性体41との界面、49b:吹出磁極磁石21と隣接する磁性体41との界面、50:第2突出部、51:吹出磁極磁石隣接磁石、52:吹出磁極磁石隣接磁石の磁界、55:吸込磁極磁石隣接磁石、56:吸込磁極磁石隣接磁石の磁界、61:リング磁性体、62:空間、63:第2突出部の時計回り集中磁束、63の内部集中磁束:(63a:吸込磁極磁石隣接磁石、63b:リング磁性体、63c:吹出磁極磁石隣接磁石)、64:第2突出部の反時計回り集中磁束、64の内部集中磁束:(64a:吸込磁極磁石隣接磁石、64b:リング磁性体、64c:吹出磁極磁石隣接磁石)、