(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-21
(45)【発行日】2023-08-29
(54)【発明の名称】対象物検出システムおよび対象物検出方法
(51)【国際特許分類】
G08G 1/09 20060101AFI20230822BHJP
G06T 7/00 20170101ALI20230822BHJP
【FI】
G08G1/09 D
G06T7/00 650A
(21)【出願番号】P 2019104198
(22)【出願日】2019-06-04
【審査請求日】2022-03-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100160691
【氏名又は名称】田邊 淳也
(74)【代理人】
【識別番号】100157277
【氏名又は名称】板倉 幸恵
(74)【代理人】
【識別番号】100182718
【氏名又は名称】木崎 誠司
(72)【発明者】
【氏名】木村 好克
(72)【発明者】
【氏名】上田 博之
(72)【発明者】
【氏名】菅井 賢
【審査官】西 秀隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-194962(JP,A)
【文献】登録実用新案第3120796(JP,U)
【文献】特開2005-182256(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00-99/00
G06T 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物検出システムであって、
道路に設けられた対象物上またはその近傍に配置された発光装置であって、発光条件を経時的に変調可能な発光装置と、
車両に搭載されて、前記車両の周辺に位置する前記発光装置を撮像する撮像部と、
前記撮像部の撮像画像の経時的変化を解析することにより、前記発光装置の前記発光条件に予め関連付けられている対象物を検出する対象検出部と、
を備え
、
前記発光装置は、道路の縁石上に配置され、発光方向に応じて異なる指向性を有する波長を発光し、
前記対象検出部は、
対象物としての前記縁石の位置を検出し、
前記撮像画像に複数の前記発光装置が含まれる場合に、各前記発光装置に対応する各前記縁石の位置と、各前記発光装置の指向性とを用いて、道路の形状を検出する、対象物検出システム。
【請求項2】
対象物検出システムであって、
道路に設けられた対象物上またはその近傍に配置された発光装置であって、発光条件を経時的に変調可能な発光装置と、
車両に搭載されて、前記車両の周辺に位置する前記発光装置を撮像する撮像部と、
前記撮像部の撮像画像の経時的変化を解析することにより、前記発光装置の前記発光条件に予め関連付けられている対象物を検出する対象検出部と、
を備え、
前記発光装置は、道路の横断歩道の少なくとも2箇所に配置され、
前記対象検出部は、
対象物としての前記横断歩道の位置を検出し、
前記撮像画像における各前記発光装置間の距離を用いて、前記車両から前記横断歩道までの距離を算出する、対象物検出システム。
【請求項3】
請求項1
または請求項2に記載の対象物検出システムであって、
前記発光装置は、道路の停止線上に配置されており、
前記対象検出部は、対象物としての前記停止線と、対象物としての前記停止線近傍に配置された横断歩道の位置との少なくとも一方を検出する、対象物検出システム。
【請求項4】
請求項1から請求項
3のいずれか一項に記載の対象物検出システムであって、
前記発光条件は、前記発光装置による発光の経時的なオンとオフとを繰り返したパルス状の発光パターンであり、
前記発光パターンは、パルスの波長と、パルスの発光強度と、パルスの幅および周期との少なくとも1つを変化させている、対象物検出システム。
【請求項5】
請求項
4に記載の対象物検出システムであって、
前記発光装置の前記発光パターンは、当該発光装置が関連付けられる対象物の種類に応じて設定され、
前記対象検出部は、前記撮像画像における前記発光装置の前記発光パターンの同期を解析することにより、異なる対象物を区別して検出する、対象物検出システム。
【請求項6】
対象物検出方法であって、
道路に設けられた対象物上またはその近傍に配置され、発光条件を経時的に変調可能な発光装置
であって、道路の縁石上に配置されて発光方向に応じて異なる指向性を有する波長を発光する発光装置を、車両に搭載された撮像部により撮像する撮像工程と、
前記撮像部の撮像画像の経時的変化を解析する解析工程と、
解析結果を用いて、前記発光装置の前記発光条件に予め関連付けられている対象物を検出する検出工程と、を備え
、
前記検出工程は、
対象物としての前記縁石の位置を検出し、
前記撮像画像に複数の前記発光装置が含まれる場合に、各前記発光装置に対応する各前記縁石の位置と、各前記発光装置の指向性とを用いて、道路の形状を検出する、対象物検出方法。
【請求項7】
対象物検出方法であって、
道路に設けられた対象物上またはその近傍に配置され、発光条件を経時的に変調可能な発光装置であって、道路の横断歩道の少なくとも2箇所に配置された発光装置を、車両に搭載された撮像部により撮像する撮像工程と、
前記撮像部の撮像画像の経時的変化を解析する解析工程と、
解析結果を用いて、前記発光装置の前記発光条件に予め関連付けられている対象物を検出する検出工程と、を備え、
前記検出工程は、
対象物としての前記横断歩道の位置を検出し、
前記撮像画像における各前記発光装置間の距離を用いて、前記車両から前記横断歩道までの距離を算出する、対象物検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象物検出システムおよび対象物検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載された車載カメラの撮像画像を用いて、横断歩道などの特定の対象物を検出する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載された技術は、撮像画像中の横断歩道を構成する白線部分と道路上の黒色部分とに対してパターンマッチングを行うことにより、横断歩道を検出している。特許文献2に記載された技術は、撮像画像中の複数のエッジ線により構成される複数の平面を認識することにより、道路面に垂直な縁石面を簡単に検出する。特許文献3に記載された路側物検出装置は、撮像画像中における撮像部近傍の三次元情報を用いることにより、撮像部遠方の路側物の検出精度を向上させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-192071号公報
【文献】特開2007-18037号公報
【文献】特開2014-2608号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1~3に記載された技術では、撮像画像に検出対象となる横断歩道および縁石の画像パターンが明確に写っていることを前提にしている。そのため、特許文献1~3に記載された技術を用いたシステムでは、夜間や雨天の場合に検出対象の画像パターンが撮像画像に明確に写らずに、検出対象を検出できないおそれがある。このような問題は、撮像部から離れるほど顕著になる。よって、夜間や雨天などの場合でも、撮像部近辺および遠方にかかわらず検出対象を検出したい課題があった。
【0005】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、撮像画像中から特定できない画像パターンの元となる検出対象を、明確に検出することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであり、以下の形態として実現できる。対象物検出システムであって、道路に設けられた対象物上またはその近傍に配置された発光装置であって、発光条件を経時的に変調可能な発光装置と、車両に搭載されて、前記車両の周辺に位置する前記発光装置を撮像する撮像部と、前記撮像部の撮像画像の経時的変化を解析することにより、前記発光装置の前記発光条件に予め関連付けられている対象物を検出する対象検出部と、を備え、前記発光装置は、道路の縁石上に配置され、発光方向に応じて異なる指向性を有する波長を発光し、前記対象検出部は、対象物としての前記縁石の位置を検出し、前記撮像画像に複数の前記発光装置が含まれる場合に、各前記発光装置に対応する各前記縁石の位置と、各前記発光装置の指向性とを用いて、道路の形状を検出する、対象物検出システム。対象物検出システムであって、道路に設けられた対象物上またはその近傍に配置された発光装置であって、発光条件を経時的に変調可能な発光装置と、車両に搭載されて、前記車両の周辺に位置する前記発光装置を撮像する撮像部と、前記撮像部の撮像画像の経時的変化を解析することにより、前記発光装置の前記発光条件に予め関連付けられている対象物を検出する対象検出部と、を備え、前記発光装置は、道路の横断歩道の少なくとも2箇所に配置され、前記対象検出部は、対象物としての前記横断歩道の位置を検出し、前記撮像画像における各前記発光装置間の距離を用いて、前記車両から前記横断歩道までの距離を算出する、対象物検出システム。そのほか、本発明は、以下の形態としても実現可能である。
【0007】
(1)本発明の一形態によれば、対象物検出システムが提供される。この対象物検出システムは、道路に設けられた対象物上またはその近傍に配置された発光装置であって、発光条件を経時的に変調可能な発光装置と、車両に搭載されて、前記車両の周辺に位置する前記発光装置を撮像する撮像部と、前記撮像部の撮像画像の経時的変化を解析することにより、前記発光装置の前記発光条件に予め関連付けられている対象物を検出する対象検出部と、を備える。
【0008】
この構成によれば、撮像部により発光装置が撮像された撮像画像における経時的変化が、対象検出部によって解析される。対象検出部は、発光装置の発光条件に予め関連付けられている対象物を検出する。これにより、例えば、道路上に設けられた停止線および横断歩道のような白色の路面パターンは、撮像画像中の画像パターンではなく、発光装置の発光条件として対象検出部に検出される。その結果、対象検出部は、車両から離れた位置にある対象物、および、撮像画像中から抽出しづらい対象物の画像パターンを、発光条件として明確に検出できる。
【0009】
(2)上記態様の対象物検出システムにおいて、前記発光装置は、道路の停止線上に配置されており、前記対象検出部は、対象物としての前記停止線と、対象物としての前記停止線近傍に配置された横断歩道の位置との少なくとも一方を検出してもよい。
この構成によれば、発光装置に関連付けられた対象物として、停止線と、停止線近傍に配置された横断歩道との少なくとも一方が、対象検出部により検出される。これにより、対象検出部は、車両が停止すべき停止線と、歩行者が存在するかもしれない横断歩道とを明確に検出できる。その結果、対象物検出システムを搭載している車両は、安全に道路を走行できる。
【0010】
(3)上記態様の対象物検出システムにおいて、前記発光装置は、道路の縁石上に配置されており、前記対象検出部は、対象物としての前記縁石の位置を検出してもよい。
この構成によれば、対象検出部は、道路と、道路以外との部分とを区切っている縁石と、を明確に検出できるため、車両の運転手は、安全に道路を走行できる。
【0011】
(4)上記態様の対象物検出システムにおいて、前記対象検出部は、前記撮像画像に複数の前記発光装置が含まれる場合に、各前記発光装置に対応する各前記縁石の位置から、道路の形状を検出してもよい。
この構成によれば、対象検出部は、道路上における発光装置の位置を検出することにより、道路の形状を検出している。これにより、車両の運転手は、走行予定の道路の形状を認識できるため、より安全に道路を走行できる。
【0012】
(5)上記態様の対象物検出システムにおいて、前記発光装置は、指向性を有する発光を行い、前記対象検出部は、各前記発光装置に対応する各前記縁石の位置と、各前記発光装置の指向性とを用いて、道路の形状を検出してもよい。
この構成によれば、対象検出部は、発光装置の発光パターンを用いて、道路上における発光装置の位置に加えて、指向性の発光を用いることにより発光装置の向きも検出する。これにより、対象検出部は、道路の形状をより明確に検出できる。
【0013】
(6)上記態様の対象物検出システムにおいて、前記発光装置は、道路の横断歩道上に配置されており、前記対象検出部は、対象物としての前記横断歩道の位置を検出してもよい。
この構成を採用している車両は、停止すべき対象の横断歩道を検出できるため、安全に道路を走行できる。
【0014】
(7)上記態様の対象物検出システムにおいて、前記発光装置は、前記横断歩道の少なくとも2箇所に配置され、前記対象検出部は、前記撮像画像における各前記発光装置間の距離を用いて、前記車両から前記横断歩道までの距離を算出してもよい。
この構成によれば、2箇所に配置された発光装置間の距離を用いて、当該構成を採用している車両から横断歩道までの距離を算出できる。これにより、当該車両は、注意すべき横断歩道までの距離を計測して減速等の動作制御を行えるため、より安全に走行できる。
【0015】
(8)上記態様の対象物検出システムにおいて、前記発光条件は、前記発光装置による発光の経時的なオンとオフとを繰り返したパルス状の発光パターンであり、前記発光パターンは、パルスの波長と、パルスの発光強度と、パルスの幅および周期との少なくとも1つを変化させていてもよい。
この構成によれば、パルスの波長等の組み合わせを変化させることにより、多様、かつ、対象検出部が区別して検出しやすい発光パターンを実現できる。
【0016】
(9)上記態様の対象物検出システムにおいて、前記発光装置の前記発光パターンは、当該発光装置が関連付けられる対象物の種類に応じて設定され、前記対象検出部は、前記撮像画像における前記発光装置の前記発光パターンの同期を解析することにより、異なる対象物を区別して検出してもよい。
この構成によれば、対象物の種類毎に発光装置の発光パターンの同期が異なる。これにより、対象検出部は、時系列に沿って撮像された撮像画像に対して同期を用いた特定の間隔に分けた撮像画像を解析することにより、より明確に対象物を区別して検出できる。
【0017】
(10)本発明の他の一形態によれば、対象物検出方法が提供される。この対象物検出方法によれば、道路上に設けられた対象物または対象物の近傍に配置され、発光条件を経時的に変調可能な発光装置を、車両に搭載された撮像部により撮像する撮像工程と、前記撮像部の撮像画像の経時的変化を解析する解析工程と、解析結果を用いて、前記発光装置の前記発光条件に予め関連付けられている対象物を検出する検出工程と、を備える。
【0018】
なお、本発明は、種々の態様で実現することが可能であり、例えば、対象物検出システム、制御装置およびこれらの装置を備える車両、および対象物検出方法、これら装置や方法を実行するためのコンピュータプログラム、このコンピュータプログラムを配布するためのサーバ装置、コンピュータプログラムを記憶した一時的でない記憶媒体等の形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の第1実施形態としての対象物検出システムの概略図である。
【
図2】車載カメラの撮像画像の一例を示す説明図である。
【
図3】本実施形態における対象物検出方法のフローチャートである。
【
図4】第2実施形態における対象物検出システムの概略図である。
【
図5】車両から横断歩道までの距離を算出するための説明図である。
【
図6】第3実施形態における発光装置の概略図である。
【
図7】道路の縁石上に配置された発光装置を含む撮像画像の概略図である。
【
図8】第4実施形態における車載カメラの撮像画像を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態としての対象物検出システム100の概略図である。対象物検出システム100は、車載カメラ11によって撮像された撮像画像の経時的変化を解析することにより、車載カメラ11により撮像された発光装置に予め関連付けられている対象物を検出するシステムである。
図1に示されるように、対象物検出システム100は、道路の停止線HL上に配置された発光装置51と、道路RDを走行している車両10とを備えている。
【0021】
本実施形態の発光装置51は、発光ダイオード(LED:light emitting diode)である。発光装置51の発光条件は、経時的に変調している。発光装置51の発光条件としては、例えば、発光の経時的なオンとオフとを繰り返したパルスの発光パターンである。本実施形態では、各発光パターンによって、パルスの波長と、パルスの発光強度と、パルスの幅および周期との少なくとも1つが異なる。
【0022】
図1に示されるように、車両10は、車両10の周辺に位置する発光装置51を含む外景を撮像する車載カメラ(撮像部)11と、車両10の各部を制御する制御装置20とを備えている。車載カメラ11は、車両10内のリアビューミラーの付近に配置されている。車載カメラ11は、車両10の周辺としての車両10の前方を撮像する。
【0023】
制御装置20は、CPU(Central Proccesing Unit)30と、ROM(Read Only Memory)21と、RAM(Random Access Memory)22と、各種データを記憶する記憶部40とを備えている。CPU30は、ROM21に記憶された各種プログラムを、RAM22に展開することにより実行する。
【0024】
記憶部40は、ハードディスクドライブ(HDD:Hard Disk Drive)などで構成されている。記憶部40は、地図情報を記憶している地図データベース(地
図DB)41と、発光装置51の発光条件に予め関連付けられている対象物を記憶している対象物データベース(対象物DB)42と、を備えている。本実施形態の対象物DB42には、車載カメラ11により撮像された発光装置51の発光パターンと、対象物としての停止線HLおよび停止線HL近傍に配置された横断歩道CWの位置との対応関係が記憶されている。
【0025】
CPU30は、他の装置などと情報を無線通信する通信部31と、図示されていないハンドル等の運転手の操作入力に応じて車両10の動作を制御する動作制御部32と、車載カメラ11の撮像画像の経時的変化を解析することにより停止線HLなどの対象物を検出する検出部33と、画像処理部34として機能する。通信部31は、他の装置から送信される各種発光装置の発光パターンに関連付けられた各種対象物、および、地図情報を受信する。
【0026】
画像処理部34は、車載カメラ11により撮像された撮像画像に対して各種処理を行う。検出部33は、車載カメラ11の各撮像画像中の各種発光装置の位置から、車両10に対する各種発光装置の位置を特定する。なお、本実施形態における検出部33および画像処理部34は、対象検出部として機能する。
【0027】
図2は、車載カメラ11の撮像画像IM1の一例を示す説明図である。
図2に示される撮像画像IM1は、車載カメラ11の各撮像画像が画像処理部34によって結合された画像である。撮像画像IM1には、道路RD上に配置された停止線HLおよび横断歩道CWと、停止線HL上に配置された発光装置51とが含まれている。撮像画像IM1に示されるように、車両10は、交差点(T字路)の直前の道路RDを走行している。横断歩道CWは、車両10から、停止線よりも遠い位置にある。
【0028】
発光装置51の発光パターンは、対象物DB42において、停止線HLと、停止線HL近傍に配置された横断歩道CWの位置とに関連付けられている。そのため、検出部33が撮像画像IM1における発光装置51の発光パターンの経時的変化を検出すると、検出した発光パターンを、対象物DB42に記憶された対応関係に照らし合わせる。検出された発光パターンと同一の発光パターンが対象物DB42に記憶されていると、検出部33は、当該発光パターンに関連付けられた対象物としての停止線HLおよび横断歩道CWの位置を検出する。
【0029】
図3は、本実施形態における対象物検出方法のフローチャート(以下、単に、「検出フロー」とも呼ぶ)である。
図3に示される検出フローでは、初めに、車載カメラ11が車両10の周辺を撮像する撮像工程を行う。(ステップS1)。次に、検出部33は、撮像画像IM1から発光装置51を検出する(ステップS2)。撮像画像IM1から発光装置51が検出されると(ステップS2:YES)、検出部33は、検出された発光装置51の発光条件の経時的変化を解析する(ステップS3)。
【0030】
検出部33は、解析の結果、検出された発光パターンと同一の発光パターンが対象物DB42に記憶されているか否かを判定する(ステップS4)。検出されたパターンと同一の発光パターンが対象物DB42に記憶されていない場合には(ステップS4:NO)、ステップS2以降の処理が行われる。検出された発光パターンと同一の発光パターンが対象物DB42に記憶されている場合には(ステップS4:YES)、検出部33は、検出された発光装置51に予め関連付けられている対象物としての停止線HLおよび横断歩道CWの位置を検出する検出工程を行い(ステップS5)、検出フローが終了する。なお、ステップS2からステップS4までの処理は、解析工程として機能している。
【0031】
以上説明したように、本実施形態の対象物検出システム100では、検出部33は、車載カメラ11により発光装置51が撮像された撮像画像における経時的変化を解析する。これにより、検出部33は、発光装置51の発光条件に予め関連付けられている停止線HLを検出する。そのため、本実施形態の対象物検出システム100は、道路RD上に設けられた停止線HLおよび横断歩道CWのような白色の路面パターンを、撮像画像IM1中の画像ではなく、発光装置51の発光条件として検出できる。これにより、検出部33は、車両10から離れた位置にある対象物、および、撮像画像IM1中から抽出しづらい対象物の画像パターンを、発光条件として明確に検出できる。
【0032】
また、本実施形態における発光装置51は、停止線HL上に配置されている。検出部33は、発光装置51に関連付けられた対象物として、停止線HLと、停止線HL近傍に配置された横断歩道CWを検出する。そのため、本実施形態の対象物検出システム100は、車両10が停止すべき停止線HLと、歩行者が存在するかもしれない横断歩道CWとを明確に検出する。これにより、対象物検出システム100を搭載している車両10は、安全に道路RDを走行できる。
【0033】
また、本実施形態の発光装置51の発光条件は、発光の経時的なオンとオフとを繰り返したパルス上の発光パターンである。そして、発光パターンは、パルスの波長と、パルスの発光強度と、パルスの幅および周期との少なくとも一つが異なっている。そのため、本実施形態の各種発光装置は、パルスの波長等の組み合わせを変化させることにより、多様、かつ、検出部33が区別して検出しやすい発光パターンを実現できる。
【0034】
<第1実施形態の変形例>
本発明は上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0035】
発光装置51が配置される位置は、停止線HL上でなくてもよく、また、停止線HL上のいずれの位置であってもよい。例えば、2つの発光装置51が、停止線HL上の両端に配置されていてもよい。発光装置51の数は、2以上であってもよく、各種発光装置の発光パターンやLEDの大きさは異なっていてもよい。
【0036】
各種発光装置の発光パターンは、各発光装置が関連付けられる対象物の種類(停止線HL、横断歩道CW、縁石など)に応じて設定されてもよい。また、検出部33は、対象物の種類毎に設定された発光パターンの同期を解析することにより、種類の異なる対象物を区別して検出してもよい。この変形例では、対象物の種類毎に発光装置の発光パターンの同期が異なる。そのため、検出部33は、時系列に沿って撮像された撮像画像IM1に対して同期を用いた特定の間隔に分けた撮像画像を解析することにより、より明確に対象物を区別して検出できる。
【0037】
制御装置20は、必ずしも地
図DB41を備えていなくてもよく、通信部31および動作制御部32として機能していなくてもよい。例えば、制御装置20は、車両10に搭載されずにクラウド上または通信可能な他の装置に設けられ、車両10の通信部31から送信される撮像画像IM1を用いて、車両10へと対象物の情報を送信してもよい。
【0038】
<第2実施形態>
図4は、第2実施形態における対象物検出システム100aの概略図である。第2実施形態の対象物検出システム100aでは、第1実施形態の対象物検出システム100と比較して、発光装置52,53が配置されている位置が異なり、さらに、制御装置20aにおける一部の処理が異なる。そのため、第2実施形態では、第1実施形態の対象物検出システム100と同じ構成および同じ制御についての説明を省略し、異なる構成および制御について説明する。
【0039】
図4に示されるように、対象物検出システム100aは、横断歩道CW上の一端に配置された発光装置52と、横断歩道CW中に配置された発光装置53と、車両10aとを備えている。発光装置52,53は、第1実施形態の発光装置51と同じ装置である。発光装置53は、車両10aの自車走行レーン幅を表すセンターラインCLの長手方向の延長と、横断歩道CWとが交差する位置近傍に配置されている。そのため、発光装置52,53間は、車両10aの走行レーン幅に相当する幅を示している。換言すると、発光装置52,53は、横断歩道CWの2箇所に配置されている。制御装置20aにおける対象物DB42aには、発光装置52,53の発光パターンに予め関連付けられた横断歩道CWの位置および発光装置52,53間の距離が記憶されている。
【0040】
検出部33aは、車両10の走行に伴い、撮像画像中における発光装置52,53間の画素数の変化を用いて、車両10から横断歩道CWまでの距離を算出する。
図5は、車両10から横断歩道CWまでの距離を算出するための説明図である。発光装置52,53間の距離W、車両10から横断歩道CWまで距離Z、焦点距離f、および撮像画像における発光装置52,53間の長さとしての画素数Bを、
図5に示すように定義した。検出部33aは、これらの定義から、車両10から横断歩道CWまで距離Zを、下記式(1)を解くことにより算出する。
Z=W・f/B・・・(1)
【0041】
以上説明したように、第2実施形態における発光装置52,53は、横断歩道CWの2箇所に配置される。検出部33aは、撮像画像における各発光装置52,53間の距離としての画素数を用いて、車両10から横断歩道CWまでの距離を算出する。そのため、第2実施形態の対象物検出システム100aを搭載している車両10aは、注意すべき横断歩道CWまでの距離を計測して減速等の動作制御を行えるため、より安全に走行できる。
【0042】
また、第2実施形態における検出部33aは、対象物として道路上に配置された横断歩道CWの位置を検出する。そのため、第2実施形態の対象物検出システム100aを採用している車両10aは、安全に道路を走行できる。
【0043】
<第2実施形態の変形例>
発光装置53は、横断歩道CWの中央近傍に配置されたが、横断歩道CWに関連付けられる発光装置52,53の配置および数については種々変形可能である。例えば、発光装置52,53は、横断歩道CWの両端に配置されていてもよい。また、横断歩道CWの領域を定義する4隅に、4つの発光装置が配置されてもよい。検出部33aは、焦点距離fを用いて、車両10から横断歩道CWまでの距離Zを算出したが、異なる方法によって距離Zを算出してもよい。例えば、検出部33aは、車速と、撮像画像における発光装置52,53間の距離を表す画素数Bの経時的変化を用いて距離Zを算出してもよい。
【0044】
<第3実施形態>
図6は、第3実施形態における発光装置54の概略図である。第3実施形態では、第1実施形態の対象物検出システム100と比較して、発光装置54~59の構成が異なり、さらに、制御装置20における一部の処理が異なる。そのため、第3実施形態では、第1実施形態の対象物検出システム100と同じ構成および同じ制御についての説明を省略し、異なる構成および制御について説明する。
【0045】
発光装置54は、発光波長の異なる5つのLEDを有する。すなわち、発光装置54は、指向性を有する発光を行う。
図6には、発光装置54を上から見た概略図が示されている。
図6に示されるように、発光装置54は、道路の端に位置する縁石ES(破線で図示)上に配置されている。また、発光装置54は、道路を走行する車両10の進行方向に直交する方向に緑色の波長Grを発する。発光装置54は、波長Grの発光方向から両方向に各角度α2,α3を成す方向に黄色の波長Yrを発する。また、発光装置54は、波長Grの発光方向から両方向に各角度(α2+α1),(α3+α4)を成す方向に赤色の波長Reを発する。なお、第3実施形態における角度α1~α4のそれぞれは、45度である。
【0046】
図7は、道路RDaの縁石ES上に配置された発光装置54~59を含む撮像画像IM2の概略図である。
図7に示されるように、曲がっている道路RDbの端に、複数の発光装置54~59が配置されている。各発光装置55~59は、発光装置54と同じ装置である。なお、
図7では、便宜上、各発光装置55~59の緑色の波長Grの発光方向を破線で示している。
【0047】
第3実施形態の対象物DB42には、各発光装置54~59の発光パターンと予め関連付けられた各発光装置54~59に対応する縁石の位置が記憶されている。
図7に示されるように、車載カメラ11と、各発光装置55~59との位置関係に応じて、車載カメラ11が撮像する各発光装置55~59の発光波長が異なる。例えば、発光装置54は、車両10のほぼ側面に位置するため、カメラ11は、発光装置54の発光波長として緑色の波長Grを撮像する。一方で、発光装置58における緑色の波長Grの方向は、発光装置58と、車両10とを結ぶ直線とおおよそ45度の角度を成している。そのため、カメラ11は、発光装置58の発光波長として黄色の波長Yrを撮像する。
【0048】
第3実施形態の検出部33bは、車載カメラ11により撮像された各発光装置55~59の波長(発光色)と、対象物DB42bに記憶された各発光装置55~59に対応する縁石の位置とを用いて、道路RDbの形状を検出する。以上説明したように、第3実施形態では、検出部33bは、各発光装置54~59の発光パターンを用いて、道路RDb上における各発光装置54~59の位置に加えて、指向性の発光を用いることにより各発光装置55~59の向きも検出する。そのため、第3実施形態の検出部33bは、道路RDbの形状をより明確に検出できる。その結果、車両10の運転手は、走行予定の道路の形状を認識できるため、より安全に道路RDbを走行できる。
【0049】
<第3実施形態の変形例>
指向性を有する発光を行う発光装置54については、種々変形可能である。例えば、
図6に示される各角度α1~α4は、異なる角度であってもよい。また、緑色の波長Grの方向に対して線対称の色の波長を選択する必要もなく、5つの方向に発光する各波長の長さが全て異なっていてもよい。また、各発光装置54~59は、異なる指向性を有する発光を行ってもよく、各発光装置54~59が設置される道路RDbのカーブの度合いに応じて設定されてもよい。また、道路RDbが直線状である場合にも各発光装置54~59が設置されてもよい。
【0050】
<第4実施形態>
図8は、第4実施形態における車載カメラ11の撮像画像IM4を示す説明図である。第4実施形態では、第1実施形態と比較して、停止線HL上に配置された発光装置51の代わりに、縁石ES上に配置された発光装置51cが検出部33により検出されることが異なる。そのため、第4実施形態では、第1実施形態と同じ構成および同じ制御についての説明を省略し、異なる構成および制御について説明する。
【0051】
対象物DB42には、発光装置51cの発光パターンに予め関連付けられた縁石ESの位置が記憶されている。なお、ここでいう縁石ESの位置とは、道路RDcに沿って直線状に形成されている縁石ESの内、発光装置51cが配置されている位置を指す。検出部33は、撮像画像IM4における発光装置51cの発光パターンの経時的変化を解析することにより、発光装置51cが縁石の位置を表していることを検出する。そのため、第4実施形態の検出部33は、道路と、道路以外との部分とを区切っている縁石ESを明確に検出できる。
【0052】
<第4実施形態の変形例>
第4実施形態では、道路RDcに沿って直線状に形成されている縁石ESの内の一カ所に発光装置51cが配置されたが、縁石ESの位置を示すための発光装置51cの配置方法については種々変形可能である。例えば、第3実施形態のように、複数の発光装置が、縁石ES上に所定の間隔を空けて連続的に配置されてもよい。このように複数の発光装置が縁石ES上に配置されることにより、検出部33は、道路RDcに沿って連続的に形成されている縁石ESをより明確に検出できる。
【0053】
以上、実施形態、変形例に基づき本態様について説明してきたが、上記した態様の実施の形態は、本態様の理解を容易にするためのものであり、本態様を限定するものではない。本態様は、その趣旨並びに特許請求の範囲を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本態様にはその等価物が含まれる。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することができる。
【符号の説明】
【0054】
10,10a…車両
11…車載カメラ(撮像部)
20,20a…制御装置
21…ROM
22…RAM
30…CPU
31…通信部
32…動作制御部
33,33a,33b…検出部(対象検出部)
34…画像処理部(対象検出部)
40…記憶部
42,42a,42b…対象物DB
41…地
図DB
51~59,51c…発光装置
100,100a…対象物検出システム
B…画素数
W…発光装置間の距離
Z…車両から横断歩道までの距離
f…焦点距離
CL…センターライン
CW…横断歩道
ES…縁石
HL…停止線
IM1,IM2,IM4…撮像画像
RD,RDb,RDc…道路
Gr…緑色の波長
Re…赤色の波長
Yr…黄色の波長