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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-21
(45)【発行日】2023-08-29
(54)【発明の名称】印刷装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 11/14 20060101AFI20230822BHJP
   B41J 29/13 20060101ALI20230822BHJP
   B41J 3/36 20060101ALI20230822BHJP
   B41J 2/32 20060101ALI20230822BHJP
【FI】
B41J11/14
B41J29/13
B41J3/36 T
B41J2/32 C
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019109647
(22)【出願日】2019-06-12
(65)【公開番号】P2020199729
(43)【公開日】2020-12-17
【審査請求日】2022-05-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104178
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 尚
(72)【発明者】
【氏名】加藤 伸夫
【審査官】羽鳥 公一
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-028977(JP,A)
【文献】特開2014-231191(JP,A)
【文献】特開平07-290802(JP,A)
【文献】特開昭61-242863(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/315-2/345
B41J 2/42-2/425
B41J 2/475-2/48
B41J 3/01-3/54
B41J 3/62
B41J 11/00-11/70
B41J 23/00-25/34
B41J 29/00-29/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、前記筐体に収容されたプラテンホルダによって回転可能に支持されるプラテンローラと、前記筐体に収容される印刷媒体を前記プラテンローラとの間で挟んで印刷する印刷ヘッドとを備える印刷装置であって、
前記筐体に設けられ前記印刷媒体を収容する開口部を開閉可能に覆うカバーであって、閉位置と開位置とに亙って前記筐体に揺動可能に枢支され、ユーザの操作によって移動する操作部材と、
前記操作部材に揺動可能に枢支された第1リンクと、
前記筐体に揺動可能に枢支された第2リンクと、
前記第1リンクと前記第2リンクとを連結する連結手段と、
前記第2リンクの揺動により移動する部材であって、前記第2リンクが作動位置から待機位置まで揺動するとき、前記プラテンホルダを、前記プラテンローラが前記印刷ヘッドを押圧する押圧位置から、前記プラテンローラが前記印刷ヘッドから離れた退避位置まで揺動させる移動部材とを備え、
前記連結手段は、
前記操作部材が第1可動範囲を移動するとき、前記第1リンクと前記第2リンクとの連結部を前記第1リンクにおける第1位置に維持して、前記第1リンクの揺動と連動して前記第2リンクを前記作動位置から前記待機位置まで揺動させ、
前記操作部材が第2可動範囲を移動するとき、前記第1リンクの揺動に伴って前記連結部を、前記第1位置から、前記第1リンクにおける第2位置まで移動させ、前記第2リンクを前記待機位置にて維持し、
前記第1可動範囲は、前記カバーの前記閉位置を含む可動範囲であり、
前記第2可動範囲は、前記第1可動範囲とは異なる範囲であって、前記カバーの前記開位置を含む可動範囲であることを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
前記連結手段は、
前記第1リンクに設けられたカム部と、
前記第2リンクに設けられ、前記カム部に係合するピンとを備え、
前記カム部は、
前記第1位置に設けられた略円弧形状の第1カムと、
前記第1カムから前記第2位置まで延び、前記第1カムの内径よりも溝幅が小さい溝カムとを備え、
前記ピンの長径は、前記第1カムの内径よりも小さく、且つ、前記溝カムの前記溝幅よりも大きく、
前記ピンの短径は、前記溝幅よりも小さく、
前記カバーが前記第1可動範囲を揺動するとき、前記第1リンクの揺動に伴って、前記ピンは、前記ピンの長径方向と前記溝カムの長手方向とが交差する状態で、前記長径方向と前記長手方向のなす角度が変化する方向へ前記第1カムの内側で回転し、
前記カバーが前記第2可動範囲を揺動するとき、前記第2リンクは前記長径方向が前記長手方向と略平行になる姿勢となり、前記ピンは前記溝カムに移行して摺動することを特徴とする請求項に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記ピンは、前記ピンの中心線が延びる方向と直交する横断面が略長円状となる形状をなすことを特徴とする請求項に記載の印刷装置。
【請求項4】
前記第1リンクは、突起部を備え、
前記第2リンクは、揺動中心から前記ピンよりも離れた位置に設けられた延出部を備え、
前記カバーが前記第2可動範囲から前記第1可動範囲に移行するタイミングで、前記突起部は、前記延出部を押圧して、前記待機位置にある前記第2リンクを前記作動位置に向けて揺動させることを特徴とする請求項2又は3に記載の印刷装置。
【請求項5】
前記第1カムは、前記ピンと遊隙を有して係合することを特徴とする請求項2から4のいずれかに記載の印刷装置。
【請求項6】
前記カム部は、前記第2位置に設けられ、且つ、前記第1カムと略同一の略円弧形状をなす第2カムを備えることを特徴とする請求項2から5のいずれかに記載の印刷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プラテンローラと印刷ヘッドとの位置関係をカバーの揺動に伴って切替える印刷装置が知られている。例えば特許文献1に開示されるファクシミリでは、リリースカムの係合溝にカバー部材の係合ピンが係脱可能に係合して、カバー部材の開閉動作により生じる力がリリースカムに伝達される。リリースカムが回動すると、記録ヘッドは、プラテンから離れる方向又はプラテンに近づく方向へ移動する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平4-166373号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記ファクシミリでは、閉じた状態のカバー部材を開ける途中で、係合ピンが係合溝から外れる。従って、開いた状態のカバー部材を閉じるときに、何らかの原因でリリースカムの姿勢が変わっていると、係合ピンが係合溝に係合できない虞がある。従って、カバー部材の開閉動作に伴い、プラテンと記録ヘッドの位置関係を安定的に切替えることができない虞がある。
【0005】
本発明の目的は、ユーザが操作する操作部材の移動に伴って、プラテンローラと印刷ヘッドとの位置関係を安定的に切替えることができる印刷装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の印刷装置は、筐体と、筐体に収容されたプラテンホルダによって回転可能に支持されるプラテンローラと、筐体に収容される印刷媒体をプラテンローラとの間で挟んで印刷する印刷ヘッドとを備える印刷装置であって、筐体に移動可能に設けられ、ユーザの操作によって移動する操作部材と、操作部材に揺動可能に枢支された第1リンクと、筐体に揺動可能に枢支された第2リンクと、第1リンクと第2リンクとを連結する連結手段と、第2リンクの揺動により移動する部材であって、第2リンクが作動位置から待機位置まで揺動するとき、プラテンホルダを、プラテンローラが印刷ヘッドを押圧する押圧位置から、プラテンローラが印刷ヘッドから離れた退避位置まで揺動させる移動部材とを備え、連結手段は、操作部材が第1可動範囲を移動するとき、第1リンクと第2リンクとの連結部を第1リンクにおける第1位置に維持して、第1リンクの揺動と連動して第2リンクを作動位置から待機位置まで揺動させ、操作部材が第2可動範囲を移動するとき、第1リンクの揺動に伴って連結部を、第1位置から、第1リンクにおける第2位置まで移動させ、第2リンクを待機位置にて維持することを特徴とする。
【0007】
上記構成によれば、操作部材が移動するとき、連結手段は、第1リンクと第2リンクの連結状態を維持するので、プラテンホルダは、押圧位置と退避位置との間を安定して揺動できる。よって、印刷装置は、ユーザが操作する操作部材の移動に伴って、プラテンローラと印刷ヘッドとの位置関係を安定的に切替えることができる。
【0008】
本発明では、操作部材は、筐体に設けられ印刷媒体を収容する開口部を開閉可能に覆うカバーであって、閉位置と開位置とに亙って筐体に揺動可能に枢支され、第1可動範囲は、カバーの閉位置を含む可動範囲であり、第2可動範囲は、第1可動範囲とは異なる範囲であって、カバーの開位置を含む可動範囲であってもよい。カバーは開口部を開放するとき、プラテンホルダは押圧位置から退避位置に揺動する。従って、カバーが開位置に到達したとき、ユーザは、印刷媒体を筐体から取出し易い。
【0009】
本発明では、連結手段は、第1リンクに設けられたカム部と、第2リンクに設けられ、カム部に係合するピンとを備え、カム部は、第1位置に設けられた略円弧形状の第1カムと、第1カムから第2位置まで延び、第1カムの内径よりも溝幅が小さい溝カムとを備え、ピンの長径は、第1カムの内径よりも小さく、且つ、溝カムの溝幅よりも大きく、ピンの短径は、溝幅よりも小さく、カバーが第1可動範囲を揺動するとき、第1リンクの揺動に伴って、ピンは、ピンの長径方向と溝カムの長手方向とが交差する状態で、長径方向と長手方向のなす角度が変化する方向へ第1カムの内側で回転し、カバーが第2可動範囲を揺動するとき、第2リンクは長径方向が長手方向と略平行になる姿勢となり、ピンは溝カムに移行して摺動してもよい。カバーが第1可動範囲を揺動するとき、ピンの長径方向と溝カムの長手方向が交差するので、ピンは溝カムに移行できない。従って、連結手段は、第1リンクと第2リンクの連結部を無理なく第1位置で維持できる。また、カバーが第1可動範囲から第2可動範囲に移行するタイミングで、ピンは溝カムに移行できる。カバーが第2可動範囲を揺動するとき、ピンは溝カムに沿って摺動し、ピンの回転は溝カムによって規制される。このとき、連結手段は、第2リンクを待機位置で無理なく維持できる。
【0010】
本発明では、ピンは、ピンの中心線が延びる方向と直交する横断面が略長円状となる形状をなしてもよい。この場合、印刷装置は連結手段の構成を簡易化できる。
【0011】
本発明では、第1リンクは、突起部を備え、第2リンクは、揺動中心からピンよりも離れた位置に設けられた延出部を備え、カバーが第2可動範囲から第1可動範囲に移行するタイミングで、突起部は、延出部を押圧して、待機位置にある第2リンクを作動位置に向けて揺動させてもよい。カバーが第2可動範囲から第1可動範囲に移行するとき、第2リンクの揺動中心からピンよりも離れた位置に設けられた延出部を第1リンクの突起部が押圧する。従って、第2リンクは待機位置から作動位置に向けてスムーズに揺動を始めることができる。
【0012】
本発明では、第1カムは、ピンと遊隙を有して係合してもよい。カバーが閉位置から揺動し始めるとき、第1リンクの第1カムは、遊隙分揺動した後にピンを移動させる。つまり、第1リンクは、第1カムが遊隙分を移動するときには、第2リンクは揺動せず、移動部材も移動しない。従って、カバーを開け始めるときの動作負荷を低減することができる。よって、カバーを開け始めるときの操作力を小さくすることができ、ユーザはカバーを開け易い。
【0013】
カム部は、第2位置に設けられ、且つ、第1カムと略同一の略円弧形状をなす第2カムを備えてもよい。印刷装置の組立時において、第2リンクのピンが第2カムに係合することで、第2リンクと第1リンクは連結できる。よって、印刷装置は組立性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】印刷装置1とテープカセット60の斜視図である。
図2】プラテンホルダ12、プラテンローラ64、搬送ローラ66の斜視図である。
図3】第1リンク110、第2リンク220、移動部材150の斜視図である。
図4】カバー6が第1可動範囲を揺動するときの過程を示す説明図である。
図5】カバー6が第2可動範囲を揺動するときの過程を示す説明図である。
図6】組立前の第1リンク110の斜視図である。
図7】ピン組248の右側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。以下説明では、図中で矢印によって示す上下、左右、前後を使用する。
【0016】
図1図4を参照し、印刷装置1の構成を説明する。図1に示すように、印刷装置1は略直方体状の筐体2を備える。筐体2の右前部には、印刷媒体5が排出される排出口11が設けられる。筐体2の内部であって、排出口11の後側には、印刷媒体5を切断する切断機構(図示略)が設けられる。筐体2には、上方に向けて開口する開口部である装着部8が設けられる。装着部8には、テープカセット60が装着される。
【0017】
テープカセット60は、一例としてレセプタタイプであり、支持孔65、67、ヘッド開口69、リボン巻取スプール68、及びテープ駆動ローラ46を備える。以下、詳しく図示しないが、支持孔65は、印刷媒体5を巻回したテープスプールを回転可能に保持する。支持孔67は、未使用のリボンを巻回したリボンスプールを回転可能に保持する。リボン巻取スプール68は、回転可能に設けられた円筒状であり、使用済みのリボンを巻き取る。ヘッド開口69は、上下方向に開口する。テープ駆動ローラ46は、回転可能に設けられた円筒状である。ヘッド開口69では、左側から順に、リボンと印刷媒体5が互に重なり合って配置される。
【0018】
図1に示すように、補助軸118が、装着部8の底部から上方に延びるように設けられる。図2に示すように、装着部8の底部よりも下側には、支持板32が設けられる。支持板32には、リボン巻取軸95、駆動軸100、及びヘッドホルダ74が設けられる。リボン巻取軸95、駆動軸100、及びヘッドホルダ74は、支持板32から上方に装着部8の内部まで立設する。装着部8にテープカセット60が装着された場合、リボン巻取軸95はリボン巻取スプール68に挿入され、補助軸118は支持孔65に挿入され、駆動軸100はテープ駆動ローラ46に挿入される。リボン巻取軸95と駆動軸100は、支持板32に設けられた搬送モータ33と駆動連結する。装着部8にテープカセット60が装着されることで、ヘッドホルダ74はヘッド開口69に挿入され、印刷媒体5は装着部8に収容される。ヘッドホルダ74の右面には、印刷ヘッド10が設けられる。本例の印刷ヘッド10は、上下方向に並ぶ複数の発熱素子を含むサーマルヘッドである。
【0019】
筐体2にはプラテンホルダ12が収容される。プラテンホルダ12は前後方向に延び、その後端部は、支持板32に設けられた支持軸35によって揺動可能に支持される。プラテンホルダ12は、プラテンローラ64と搬送ローラ66を回転可能に支持する。プラテンローラ64は印刷ヘッド10と対向し、搬送ローラ66はテープ駆動ローラ46と対向する。プラテンホルダ12は、支持軸35を中心に、押圧位置(図2参照)と退避位置との間を揺動可能である。プラテンホルダ12が押圧位置にあるとき、プラテンローラ64は印刷ヘッド10を押圧し、搬送ローラ66はテープ駆動ローラ46を押圧する。このとき、プラテンローラ64と印刷ヘッド10との間では、右方から順に配置された印刷媒体5とリボンが挟み込まれ、搬送ローラ66とテープ駆動ローラ46との間では、印刷媒体5が挟み込まれる。リボンは、ヘッド開口69とテープ駆動ローラ46との間で、テープカセット60内側に入り込み、リボン巻取スプール68に巻き取られる。プラテンホルダ12が退避位置にあるとき、プラテンローラ64は印刷ヘッド10から右方に離れ、搬送ローラ66はテープ駆動ローラ46から右方に離れる。なお、プラテンホルダ12が退避位置から押圧位置に揺動することで、プラテンローラ64と搬送モータ33は駆動連結した状態に切り替わる。
【0020】
プラテンホルダ12の右端部には、左後方から右前方へ延びる傾斜部(図示略)が設けられる。プラテンホルダ12は、トーションバネ(図示略)によって、支持軸35を中心として平面視で反時計回りに付勢される。これにより、プラテンホルダ12の傾斜部は、後述の移動部材150に設けられた回転ローラ82(図3参照)に押圧される。
【0021】
図1に示すように、筐体2の後部には、正面視で略U字状の一対の枢支部71が設けられ、各枢支部71は左右方向に延びる軸72を支持する。一対の軸72には、カバー6が揺動可能に枢支される。カバー6は、印刷媒体5を収容する開口部である装着部8を開閉可能である。なお、カバー6は、ユーザの操作によって移動する操作部材の一例である。
【0022】
ユーザによる操作に伴い揺動するカバー6は、閉位置(図4(a)参照)と開位置(図1参照)とに亙って揺動する。開位置にあるカバー6は装着部8を上方に向けて開放し、閉位置にあるカバー6は装着部8を閉鎖する。以下、カバー6の可動範囲のうちで、カバー6の閉位置を含む可動範囲を第1可動範囲といい、カバー6の開位置を含む可動範囲を第2可動範囲という。第1可動範囲は、図4の(a)~図4(c)で示すカバー6の揺動範囲であり、第2可動範囲は、図5(a)、図5(b)で示すカバー6の揺動範囲である。第2可動範囲は第1可動範囲と異なる範囲である。
【0023】
図1に示すように、カバー6は、閉位置に向けて突出する一対の軸受部7を備える。一対の軸受部7は左右方向に並んで設けられる。各軸受部7は、カバー6と一体的に形成された樹脂部材であり、側面視で矩形状をなす板状である。各軸受部7の先端部には、左右方向に開口する枢支穴7Aが形成される。
【0024】
図1図4(a)を参照し、カバー6とプラテンホルダ12の連結構造を説明する。カバー6とプラテンホルダ12は、第1リンク110、第2リンク220、及び移動部材150を介して互いに連結する。
【0025】
図2図3に示すように、第1リンク110は、左右方向と直交する方向に湾曲して延びる。第1リンク110の一端部には、左右方向の外側に向けて突出する一対の軸部111が設けられる。一対の軸部111はそれぞれ一対の枢支穴7A(図1参照)に揺動可能に嵌る。これにより、第1リンク110は、カバー6に揺動可能に枢支され、カバー6の揺動に連動して揺動可能である。
【0026】
図3図4(a)に示すように、第1リンク110の他端部にはカム部130が設けられる。本例のカム部130は、左右方向に開口する孔であり、第1カム131、第2カム132、溝カム133を備える。第1カム131は、第1リンク110における第1位置に設けられた略円弧状である。換言すると、第1位置は、第1カム131の内側空間の任意の位置であり、例えば、図4(a)における点P1に相当する。第2カム132は、第1リンク110における第2位置に設けられ、第1カム131と略同一の円弧形状をなす。第2位置は、第2カム132の内側空間の任意の位置であり、例えば図4(a)の点P2に相当する。第1位置と第2位置は、第1カム131の揺動と共に変位する位置である。溝カム133は、第1カム131から第2カム132まで(即ち第2位置まで)延びる。溝カム133は、点P1と点P2を結ぶ仮想直線に対して、前方に僅かに膨らむように湾曲した形状をなす。溝カム133の溝幅(寸法W)は、第1カム131の内径(寸法D)よりも小さい。第1リンク110は更に、突起部119(図4(a)参照)を備える。突起部119は、一対の軸部111とカム部130との間において右方に突出する円柱状である。
【0027】
図3に示すように、第2リンク220は、筐体2(図1参照)の内側右部に設けられた右板280が備える枢支軸281によって、揺動可能に枢支される。従って、第2リンク220は、筐体2に揺動可能に枢支される。第2リンク220は、枢支軸281に回転可能に嵌合する貫通孔(図示略)が形成された基部223と、基部223からそれぞれ突出する第1腕部221及び第2腕部222を備える。第2リンク220は、側面視で略L字形状をなす。第1腕部221の先端部には、左方に向けて突出するピン228が設けられ、第2腕部222の先端部には、第2腕部222が延びる方向と略平行に延びる長孔229が設けられる。ピン228は、カム部130に係合する。ピン228の中心線228Aが延びる方向である左右方向と直交するピン228の横断面は、長円状である。ピン228の長径(寸法S1)は第1カム131(寸法D)の内径よりも小さく、且つ、溝カム133の溝幅(寸法W)よりも大きい。ピン228の短径(寸法S2)は溝カム133の溝幅よりも小さい。以下、カム部130とピン228とを総称するとき、「連結手段88」という。連結手段88は、第1リンク110と第2リンク220とを連結する。
【0028】
第1腕部221の先端部には、更に、延出部225(図4(a)参照)が設けられる。延出部225は、枢支軸281から離れる方向へ延出する。枢支軸281と延出部225との距離は、枢支軸281とピン228との距離よりも大きい。即ち、延出部225は、第2リンク220の揺動中心である枢支軸281からピン228よりも離れた位置に設けられる。延出部225は、第1リンク110の突起部119と当接可能である。
【0029】
ピン228がカム部130に係合することによって、第1リンク110の揺動に伴って第2リンク220は、枢支軸281を中心に作動位置(図4(a)参照)と待機位置(図4(c)参照)との間で揺動する。第2リンク220が作動位置にあるとき、ピン228の長径方向は、溝カム133の溝幅方向と略平行となる。第2リンク220が待機位置にあるとき、ピン228の短径方向は、溝カム133の溝幅方向と略平行となる。
【0030】
尚、第1リンク110の第1カム131は、第2リンク220のピン228に対して遊隙を有して係合する(図4(a)、(b)参照)。ここで、遊隙を有して係合するとは、第1リンク110のピン228が第1カム131の内側で揺動しても第2リンク220が停止した状態を維持できる程度に、ピン228と第1カム131との間に隙間があることを指す。別の言い方をすれば、第1カム131とピン228との間には、僅かな遊びがある、ということである。
【0031】
移動部材150を説明する。移動部材150は、側面視で前後方向に延びる矩形状の板状部材である。移動部材150は、右板280から左方に突出する支持軸161,162によって前後方向に移動可能に支持される。移動部材150には、左方に突出する突出部151が設けられる。突出部151は、第2リンク220の長孔229と係合する。従って、第2リンク220が、枢支軸281を中心に揺動することにより、移動部材150は前後方向に移動する。
【0032】
移動部材150の前端部は回転ローラ82を保持する。回転ローラ82は、上下方向を軸方向として回転可能であり、プラテンホルダ12(図2参照)よりも右方に位置する。回転ローラ82には、トーションバネによって付勢されるプラテンホルダ12の傾斜部が押し当たる。移動部材150が前方に移動すると、回転ローラ82は傾斜部を転動しながら左方に付勢する。これにより、プラテンローラ64は押圧位置に向けて揺動する。移動部材150が後方に移動すると、回転ローラ82が傾斜部を転動するに従い、プラテンローラ64はトーションバネに付勢力によって、退避位置に向けて徐々に揺動する。このように、移動部材150が前後方向に移動することにより、プラテンホルダ12は、押圧位置と退避位置との間を揺動する。
【0033】
図4図5を参照し、カバー6が閉位置から開位置に揺動するときの第1リンク110、第2リンク220、プラテンホルダ12(図2参照)の動きを説明する。カバー6が閉位置に配置されているとき(図4(a)参照)、第1リンク110は可動範囲の下端にあり、第2リンク220は作動位置にあり、移動部材150は可動範囲前端にあり、プラテンホルダ12は押圧位置(図2参照)にある。また、このとき、第1カム131の下端は、ピン228から下方に離れている。
【0034】
ユーザはカバー6を開け始める。カバー6は、開位置に向けて第1可動範囲を揺動する(図4(a)、(b)参照)。カバー6が第1リンク110の一対の軸部111を引き上げることで、第1カム131の下端部はピン228に向けて上昇する。第1カム131とピン228との間には遊隙があるので、第2リンク220は作動位置で停止した状態を維持する。
【0035】
第1カム131が遊隙分揺動した後に、第1カム131の下端部がピン228に下方から当接する(図4(b)参照)。ピン228の長径が溝カム133の溝幅よりも大きいので、ピン228は溝カム133に移行不能である。従って、第1カム131はピン228を押し上げ、これにより、第2リンク220は作動位置から待機位置に向けて揺動する(図4(b)、(c)参照)。第2リンク220の揺動に伴って、ピン228は第1カム131の内側である第1位置において回転する。別の言い方をすれば、第1カム131に対するピン228の姿勢が変化する。詳細には、ピン228の回転時、ピン228の長径方向と溝カム133の長手方向とが交差した状態が維持されつつ、ピン228の長径方向と溝カム133の長手方向のなす角度θ(図4(b)参照)は変化する。同時に、第2リンク220の揺動によって長孔229は突出部151を後方に押圧する。移動部材150は後方へ移動し、プラテンホルダ12(図2参照)は、トーションバネの付勢力により押圧位置から退避位置に向けて揺動し始める。
【0036】
やがて、第2リンク220は待機位置に到達し(図4(c)参照)、移動部材150は可動範囲後端に到達し、プラテンホルダ12は退避位置に到達する。このとき、ピン228の短径方向は、溝カム133の溝幅方向と略平行となり、ピン228は、溝カム133に移行可能となる。また、第2リンク220の延出部225は第1リンク110の突起部119に最接近する(図4(c)参照)。
【0037】
カバー6は第1可動範囲から第2可動範囲に移行する(図5(a)参照)。カバー6は引き続き、一対の軸部111を引き上げる。ピン228は、溝カム133に進入する。ピン228は、姿勢(なす角度θ)が変わることなく溝カム133に対して摺動するので、第2リンク220は待機位置にて揺動を規制される。従って、移動部材150は停止した状態を維持し、プラテンホルダ12は退避位置で保持される。やがて、カバー6は開位置に到達し(図5(b)参照)、第1リンク110は可動範囲の上端に到達する。ピン228は第2カム132に入り込む。このときのピン228の短径方向は、溝カム133の溝幅方向と略平行である。ここで、溝カム133は上述したように湾曲しているので、ピン228は、溝カム133内をスムーズに摺動できる。
【0038】
次に、図4図5を参照し、カバー6が開位置から閉位置に揺動するときの第1リンク110、第2リンク220、プラテンホルダ12の動きを説明する。カバー6が開位置から閉位置へ揺動するときの第1リンク110、第2リンク220、プラテンホルダ12の動作は、図5(b)、(a)、図4(c)、(b)、(a)によって、順に示される。要するに、カバー6が開位置から閉位置に揺動するときは、前述した閉位置から開位置に揺動するときの逆の動作となる。
【0039】
図5(b)、(a)に示すように、ユーザはカバー6を閉じ始め、カバー6は開位置から閉位置に向けて第2可動範囲を揺動する。カバー6の揺動に連動して、第1リンク110は下方に向けて揺動する。ピン228の短手方向は溝カム133の溝幅方向と略平行であるので、ピン228は、第2カム132から溝カム133に移行し、溝カム133に対して摺動する。このとき、第2カム132は、待機位置で停止した状態を維持し、プラテンホルダ12(図2参照)は退避位置で保持される。
【0040】
ピン228が第1カム131に移行すると同時に(図4(c)参照)、カバー6は第2可動範囲から第1可動範囲に移行する。カバー6と連動して下方に揺動していた第1リンク110の突起部119は、延出部225に最接近する。ピン228が第1カム131の内側に進入すると略同時に、突起部119が延出部225に上方から当接する。詳細には、第1カム131の内側がピン228に接触する直前に、突起部119が延出部225に当接する。突起部119によって付勢された第2リンク220は、待機位置から作動位置に向けて揺動し始める。第2リンク220の長孔229が突出部151を前方に押圧することで、移動部材150は前方に移動し、プラテンホルダ12は待機位置から押圧位置に向けて揺動する。
【0041】
その後、延出部225は突起部119から離れるが(図4(b)参照)、ピン228の長径方向の両端と第1カム131とが互いに接触することにより、第1リンク110の揺動に伴って、ピン228は第1カム131と共に回転し、第2リンク220は引き続き、作動位置に向けて揺動する。やがて、ピン228の長径方向は、溝カム133の溝幅方向と略平行になる(図4(b)参照)。カバー6と第1リンク110は更に揺動し、第1カム131は更に下方に揺動する。カバー6は、閉位置に到達し(図4(a)参照)、第2リンク220は作動位置に到達し、プラテンホルダ12は押圧位置に到達する。
【0042】
次に、図1図2を参照し、印刷装置1の印刷動作を説明する。テープカセット60は装着部8に装着されており、カバー6は閉位置(図4(a)参照)にある。搬送モータ33が駆動すると、リボン巻取軸95、駆動軸100、プラテンローラ64は回転する。リボンスプールから繰り出されたリボンと、テープスプールから繰り出された印刷媒体5は、互いに重ね合わさった状態で、プラテンローラ64と印刷ヘッド10との間を通過する。印刷ヘッド10が発熱することにより、インクリンボンに含まれるインクは、印刷媒体5に転写される。これにより、印刷装置1は、印刷媒体5にキャラクタを印刷する。使用されたリボンはリボン巻取スプール68に巻き取られる。また、テープ駆動ローラ46は、搬送ローラ66との間で挟んだ印刷媒体5を排出口11に向けて搬送する。搬送モータ33が駆動を停止した後、切断機構は、印刷媒体5を切断する。これにより、ユーザは、排出口11から排出された印刷媒体5を取り出すことができる。
【0043】
図1図3図6を参照し、第1リンク110を、第2リンク220とカバー6とに連結させる組立方法を説明する。前述のように、カバー6は一対の枢支部71によって揺動可能に枢支されており、第2リンク220は、枢支軸281によって揺動可能に枢支されており、第2リンク220の長孔229は移動部材150の突出部151と係合している。第1リンク110の組立時には、カバー6は開位置にて保持され、第2リンク220は待機位置にあり、移動部材150は可動範囲後端にあり、プラテンホルダ12は退避位置にある。
【0044】
組立を行う作業者は、第2カム132がピン228の左方となる位置で第1リンク110を配置して、第1リンク110を右方に移動させる(図6の矢印L)。第2カム132がピン228に係合することで、第1リンク110は第2リンク220と連結する。作業者は、ピン228を中心に第1リンク110を回動させて、一対の軸部111を一対の軸受部7の枢支穴7Aにそれぞれ嵌める。以下、詳細に説明するが、文章を分かり易くするために「一対」の文言は省略する。図6に示すように、軸受部7は、内側に面取部7Bがそれぞれ形成されている。ピン228を中心に第1リンク110を回動させると、軸部111は面取部7Bに接触する。その状態で、作業者は、第1リンク110の上端部を軸受部7に向かって押し込む。それにより、面取部7Bは軸部111によって外側に押圧され、軸受部7はそれぞれ外側に拡がるように弾性変形する。軸受部7が外側に拡がることで、軸部111は、面取部7Bから枢支穴7Aに向かって移動できる。軸部111は、枢支穴7Aまで到達すると、軸受部7の弾性変形が元に戻り、枢支穴7Aに嵌まる。以上のように、一対の軸部111が一対の枢支穴7Aにそれぞれ嵌ることで、組立てが完了し、第1リンク110はカバー6と連結する。
【0045】
以上説明したように、カバー6の揺動に伴って、第2リンク220が作動位置から待機位置まで揺動するとき、移動部材150は、プラテンホルダ12を、押圧位置から退避位置まで揺動させる。カバー6が開位置に向けて第1可動範囲を揺動するとき、連結手段88は、第1リンク110と第2リンク220との連結部であるピン228を第1位置に維持して、第1リンク110の揺動と連動して第2リンク220を作動位置から待機位置まで揺動させる。カバー6が開位置に向けて第2可動範囲を揺動するとき、連結手段88は、第1リンク110の揺動に伴ってピン228を、第1位置から第2位置まで揺動させ、第2リンク220を待機位置にて維持する。カバー6が揺動するとき、ピン228がカム部130から外れることはなく、連結手段88は、第1リンク110と第2リンク220の連結状態を維持する。これにより、プラテンホルダ12は、押圧位置と退避位置との間を安定して揺動できる。よって、印刷装置1は、ユーザが操作する操作部材であるカバー6の移動に伴って、プラテンローラ64と印刷ヘッド10との位置関係を安定的に切替えることができる。また、カバー6が装着部8を開け始めるタイミングで、プラテンホルダ12は押圧位置から移動を開始できるので、プラテンホルダ12が退避位置まで到達するタイミングは早まる。また、カバー6が第2可動範囲を揺動するとき、待機位置にある第2リンク220の揺動は規制されるので、第1リンク110の揺動量を大きくできる。従って、カバー6の揺動量を大きくできるので、装着部8は大きく開放されるようになり、印刷媒体5を備えるテープカセット60は、装着部8に着脱され易くなる。
【0046】
カバー6は、印刷媒体5を収容する開口部である装着部8を開閉可能に覆う。カバー6は、閉位置から開位置まで揺動して装着部8を開放するとき、プラテンホルダ12は、押圧位置から退避位置まで揺動する。従って、カバー6が開位置に到達したとき、ユーザは、印刷媒体5を備えるテープカセット60を筐体2から取出し易い。
【0047】
カバー6が開位置に向けて第1可動範囲を揺動するとき、連結手段88は、ピン228を第1位置に維持して、第2リンク220を作動位置から待機位置まで揺動させる。カバー6が第2可動範囲を揺動するとき、第2リンク220は、ピン228の長径方向が溝カム133の長手方向と略平行となる姿勢となり、ピン228は溝カム133に移行して摺動する。カバー6が第1可動範囲を揺動するとき、ピン228の長径方向と溝カム133の長手方向とが交差するので(図4(a)、(b)参照)、ピン228は溝カム133に移行できない。また、カバー6が第1可動範囲から第2可動範囲に移行するタイミングで(図4(c)、図5(a)参照)、ピン228は溝カム133に移行できる。カバー6が第2可動範囲を揺動するとき、ピン228は溝カム133に沿って摺動し、ピン228の回転は溝カム133によって規制される。このとき、連結手段88は、第2リンク220を待機位置で無理なく維持できる。
【0048】
ピン228は、ピン228の中心線228Aが延びる左右方向と直交する断面である横断面が略長円状となる形状をなす。これにより、印刷装置1は、簡単なピン228の形状でもって、連結手段88の構成を簡易化できる。
【0049】
カバー6が第2可動範囲から第1可動範囲に移行するタイミングで、突起部119は延出部225を押圧して、待機位置にある第2リンク220を作動位置に向けて揺動させる(図4(c)参照)。カバー6が第2可動範囲から第1可動範囲に移行するとき、第2リンク220の揺動中心である枢支軸281から、ピン228よりも離れた位置に設けられた延出部225を第1リンク110の突起部119が押圧する。従って、第2リンク220は待機位置から作動位置に向けてスムーズに揺動を始めることができる。
【0050】
第1カム131は、ピン228と遊隙を有して係合する。カバー6が閉位置から揺動し始めるとき、第1リンク110の第1カム131は、遊隙分揺動した後に、ピン228を上方に移動させる。つまり、第1リンク110は、第1カム131が遊隙分を移動する時には、第2リンク220は揺動せず、移動部材150も移動しない。従って、カバー6を開け始めるときの動作負荷を低減することができる。よって、カバー6を開け始めるときの操作力を小さくすることができ、ユーザはカバー6を開け易い。
【0051】
カム部130は、第2カム132を備える。印刷装置1の組立時において、第2リンク220のピン228が第2カム132に係合することで、第2リンク220と第1リンク110は連結できる。よって、印刷装置1は、組立性を向上できる。
【0052】
上記実施例において、カバー6は、本発明の「操作部材」の一例である。装着部8は、本発明の「開口部」の一例である。
【0053】
本発明は、上記実施例に限定されない。カム部130は、孔である代わりに、第1リンク110の外周端面に形成されたカム面であってもよい。このとき、第2リンク220が弾性部材によって付勢されることで、ピン228はカム面に押し当たってもよい。溝カム133は、湾曲した形状ではなく、直線的な形状であってもよい。カバー6は、揺動可能に設けられる代わりに、例えば、スライド可能に筐体2に設けられてもよい。印刷装置1は、カバー6に代えて、レバーを備えてもよい。レバーは、ユーザによる操作により移動する操作部材であればよく、筐体2に設けられた開口部を開閉可能でなくてもよい。また、第1カム131とピン228は、遊隙を有して係合する構成であったが、遊隙を有していなくてもよい。
【0054】
第2リンク220のピン228は、横断面が略長円形状であったが、長径と短径がピン228と略同じ寸法であれば、略小判形状、略楕円形状、略矩形形状、又は略多角形形状であってもよい。また、図7に示すように、第2リンク220は、ピン228に代えて、二つのピン249からなるピン組248を備えていてもよい。二つのピン249は、それぞれ円柱形状をなす。二つのピン249によって、仮想的な長円250が形成される。長円250の長径(寸法T1)は、第1カム131の内径よりも小さく、溝カム133の溝幅よりも大きい。長円250の短径(寸法T2)は、溝カム133の溝幅よりも小さい。この場合でも、第2リンク220が作動位置にあるとき(図7参照)、ピン組248は溝カム133に移行不能であり、第2リンク220が待機位置にあるとき(図4(c)参照)、ピン組248は溝カム133に移行可能となる。
【0055】
第1リンク110のカム部130は、第2カム132を備えていなくてもよい。この場合、カム部130の形状は、第2カム132の代わりに、溝カム133が延長された形状となる。但しこの場合、第2カム132が無いので、第1リンク110は、上述した方法では組立てを行うことができない。よって、別の方法で組立てを行うために、第1リンクは、一対の軸部111の代わりに貫通穴が形成される。貫通穴の直径は、枢支穴7Aの直径と同一である。第2カム132が無く且つ貫通穴が形成された第1リンクを、特定第1リンクとする。また、貫通穴及び枢支穴7Aに挿入する軸部材を別途用意する。軸部材の長さは、一対の軸受部7の左右方向の長さよりも長い。
【0056】
特定第1リンクを組立てる方法を説明する。作業者は、特定第1リンクを、ピン228の左方位置に配置してから右方に移動させ、溝カム133の先端寄りの位置にピン228を係合させる。その後、特定第1リンクを、貫通孔と枢支穴7Aが一致する位置まで移動させる。貫通孔と枢支穴7Aの位置が一致したら、軸部材を挿入する。その後、軸受部7から外側に飛び出している軸部材の両端に、止め輪をそれぞれ固定して、特定第1リンクの組立てが完了する。
【符号の説明】
【0057】
1 印刷装置
2 筐体
5 印刷媒体
6 カバー
8 装着部
10 印刷ヘッド
12 プラテンホルダ
64 プラテンローラ
88 連結手段
110 第1リンク
119 突起部
130 カム部
131 第1カム
132 第2カム
133 溝カム
150 移動部材
220 第2リンク
225 延出部
228 ピン
228A 中心線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7