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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-21
(45)【発行日】2023-08-29
(54)【発明の名称】DC/DC変換機
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/28 20060101AFI20230822BHJP
【FI】
H02M3/28 H
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019125251
(22)【出願日】2019-07-04
(65)【公開番号】P2021013216
(43)【公開日】2021-02-04
【審査請求日】2022-06-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000107804
【氏名又は名称】スミダコーポレーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137589
【弁理士】
【氏名又は名称】右田 俊介
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 弘行
【審査官】佐藤 匡
(56)【参考文献】
【文献】実開昭51-088264(JP,U)
【文献】実開昭50-029216(JP,U)
【文献】特開平09-285116(JP,A)
【文献】特開2016-149864(JP,A)
【文献】特開2006-325286(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一回路及び第二回路を含む双方向のDC/DC変換機であって、
前記第一回路は、
電力を蓄積する直流の第一バッテリ装置と、
前記第一バッテリ装置から電圧の供給を受ける二つの第一FET(Field Effect Transistor)と、
前記二つの第一FETのいずれかがオン時に前記第一バッテリ装置から給電電流が供給される第一給電コイルと、
前記二つの第一FETのソース間に設けられており、前記第一給電コイルを流れる前記給電電流の流れ方向を切り換える第一コンデンサと、
前記第一バッテリ装置と前記第一給電コイルとの間に設けられた第一コイルと、
前記給電電流の流れ方向に応じて前記二つの第一FETをオン、オフする第一駆動コイルと、を備え、
前記第二回路は、
前記第一給電コイルに流れる給電電流によって誘導起電力が生じる第二給電コイル及び第二駆動コイルと、
前記第二駆動コイルに生じた誘導起電力によってオン、オフする二つの第二FETと、
前記二つの第二FETのいずれかがオン時に前記第二給電コイルから電力の供給を受ける直流の第二バッテリ装置と、
を備える、DC/DC変換機
【請求項2】
二つの第二FETをオンさせるための電力が供給されるノードに前記第二バッテリ装置の電力を供給する電力供給ノードをさらに含む、請求項1に記載のDC/DC変換機
【請求項3】
前記第一駆動コイルの両端は、前記二つの第一FETにゲート電圧を印加するノードとそれぞれ接続されている、請求項2に記載のDC/DC変換機
【請求項4】
前記第一給電コイルは、前記二つの第一FETに対応する二つの第一コイル部を有し、
前記第一コンデンサ、前記二つの第一コイル部に対して前記給電電流が交互に供給されるように切り換える、請求項2又は3に記載のDC/DC変換機
【請求項5】
前記第二給電コイルは、前記二つの第二FETに対応する二つの第二コイル部を有し、
前記第二回路は、
前記二つの第二コイル部に対して交互に供給電流を流す第二コンデンサと、
前記第二バッテリ装置と前記二つの第二コイル部の一方との間及び前記第二バッテリ装置と前記二つの第二コイル部の他方との間に設けられた第二コイルと、
を更に含む請求項1から4のいずれか一項に記載のDC/DC変換機。
【請求項6】
少なくとも前記第一回路は、前記第一バッテリ装置の電圧値を検出する電圧検出部と、当該電圧検出部により検出された電圧値が予め定められた値よりも高くなったとき、前記第一回路から前記第一バッテリ装置を切り離すバッテリ切断回路をさらに含む、
請求項1から5のいずれか一項に記載のDC/DC変換機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、DC/DC変換機に関する。
【背景技術】
【0002】
一台で充電、放電の両方が可能な電力の変換装置として、双方向コンバータがある。このような双方向コンバータとしては、例えば、特許文献1に記載の双方向DC/DCコンバータが挙げられる。このDC/DCコンバータは、一次側回路とトランス装置と二次側回路とを備え、一次側回路、二次側回路がそれぞれフルブリッジ構成の四つの逆導通型の半導体スイッチを備えている。4つの半導体スイッチは、それぞれ制御回路によってそのオン、オフが制御されている。制御回路は、四つの半導体スイッチのうち、対角線上に位置する半導体スイッチにそれぞれの位相が同期するゲート制御信号を与えている。また、制御回路は、ゲート電極間が短絡することを防ぐため、ゲート制御信号のオンデューティ比を1周期のうち最大で50%とし、隣り合って接続される半導体スイッチを同時にオンさせる制御信号を与えないように制御している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-234541号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のDC/DCコンバータは、一次側回路、二次側回路にそれぞれ上記した制御回路を設け、半導体スイッチを制御して半導体スイッチ同士を同期させている。このような制御回路は、上記の制御を高精度に行うため、回路構成が大きくなり、一台でバッテリの充電、放電の両方を管理して装置全体の小型化や構成の簡易化を図るということに不利である。
本発明は、このような点に鑑みてなされたものであり、一次側の回路と二次側の回路とを高精度に同期させることが可能であって、かつ小型化、簡易化に有利なDC/DC変換機に関する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のDC/DC変換機は、第一回路及び第二回路を含む双方向のDC/DC変換機であって、前記第一回路は、電力を蓄積する直流の第一バッテリ装置と、前記第一バッテリ装置から電圧の供給を受ける二つの第一FET(Field Effect Transistor)と、前記二つの第一FETのいずれかがオン時に前記第一バッテリ装置から給電電流が供給される第一給電コイルと、前記二つの第一FETのソース間に設けられており、前記第一給電コイルを流れる前記給電電流の流れ方向を切り換える第一コンデンサと、前記第一バッテリ装置と前記第一給電コイルとの間に設けられた第一コイルと、前記給電電流の流れ方向に応じて前記二つの第一FETをオン、オフする第一駆動コイルと、を備え、前記第二回路は、前記第一給電コイルに流れる給電電流によって誘導起電力が生じる第二給電コイル及び第二駆動コイルと、前記第二駆動コイルに生じた誘導起電力によって交互にオン、オフする二つの第二FETと、前記二つの第二FETのいずれかがオン時に前記第二給電コイルから電力の供給を受ける直流の第二バッテリ装置と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、一次側の回路と二次側の回路とを高精度に同期させることが可能であって、かつ小型化、簡易化に有利なDC/DC変換機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態の電力供給システムをDC/DC変換機として構成した例を示す図である。
図2】第一回路から第二回路へ給電する場合の電力供給システムの動作を説明するための図である。
図3】第一回路から第二回路へ給電する場合の電力供給システムの動作を説明するための他の図である。
図4】第二回路から第一回路へ給電する場合の電力供給システムの動作を説明するための図である。
図5】第二回路から第一回路へ給電する場合の電力供給システムの動作を説明するための他の図である。
図6図1に示す電力供給システムの変形例1を示す図である。
図7図1に示す電力供給システムの変形例2を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明の一実施形態の電力供給システムを説明する。なお、本実施形態は、発明の構成を例示して発明の技術思想を示すものであり、その具体的な構成を例示したものに限定するものではない。また、本実施形態で示す図においては、同様の構成を同様の符号で示し、その説明を一部略している。特に、図2から図5に示す電流は、回路において同じノードを流れる電流に同じ符号を示している。電流に示す符号の同一は、電流の向きまでが同じであることを示すものではない。
【0010】
図1は、本実施形態の電力供給システム1を説明するための回路図である。電力供給システム1は、バッテリ装置をそれぞれ備える一次側の第一回路10、二次側の第二回路20を含み、互いのバッテリ装置に電力を供給し合うものである。ただし、本実施形態においては、電力供給システム1のバッテリ装置18、28をそれぞれ直流のバッテリ装置とし、電力供給システム1を双方向のDC/DC変換機として構成した例を示す。
電力供給システム1は、第一回路10、第二回路20のうちのいずれか一方のバッテリ装置が予め定められた規定電圧以下になった場合、他方のバッテリ装置が自励的に規定電圧以下のバッテリ装置に充電するシステムである。
【0011】
(第一回路)
上記の構成のうち、先ず、第一回路について説明する。
図1に示すように、電力供給システム1は、第一回路10、第二回路20を含んでいる。第一回路10と第二回路20は完全に絶縁された状態になっていて、電磁誘導により互いに電力を授受し得るように構成されている。第一回路10は、電力を蓄積する第一バッテリ装置であるバッテリ装置18と、バッテリ装置18から電圧の供給を受ける第一スイッチング素子であるトランジスタ素子11、12と、トランジスタ素子11、12のオン時にバッテリ装置18から給電電流が供給される第一給電コイルを構成するコイル部13、14と、コイル部13、14を流れる給電電流の流れ方向を切り換える切換素子であるコンデンサ17と、給電電流の流れ方向に応じてトランジスタ素子11、12をオン、オフする第一駆動コイルである駆動コイル15と、を備えている。
【0012】
バッテリ装置18から電圧の供給を受けるトランジスタ素子11、12は、バッテリ装置18から常時閾値電圧値以下の電圧の供給を受けると共に、バッテリ装置18から電力の供給を受ける駆動コイル15から駆動電圧の供給を受けている。したがって、トランジスタ素子11、12は、バッテリ装置18の充電電圧が低下するとオンすることができなくなる。このような本実施形態は、バッテリ装置18の充電電圧を監視する必要がなく、充電電圧によってトランジスタ素子11、12の発振を始動、または停止することができる。
【0013】
少なくとも第一回路10において、第一スイッチング素子は、二つのトランジスタ素子11、12を有するトランジスタ対として構成される。図1に示すトランジスタ素子11、12は、FET(Field Effect Transistor)であり、トランジスタ素子11、12のソース間にコンデンサ17が設けられている。また、コイル部13、14は、トランジスタ素子11、12の各々に対応する二つのコイル部であって、コイル対を構成する。ここで、「対応する」とは、トランジスタ素子11がオンする場合にコイル部13に電流が流れ、トランジスタ素子12がオンする場合にコイル部14に電流が流れることをいう。
【0014】
また、第一回路10は、コンデンサ17がコイル対に含まれる二つのコイル部13、14に対して給電電流が交互に供給されるように切り換えている。本実施形態のコンデンサ17は、トランジスタ素子11、12のソース間で充放電し、コンデンサ17の充放電によりコイル部13、14に対して交互に給電電流が供給される。コイル部13、14への給電の切換のタイミングはトランジスタ素子11、12のオン、オフのタイミングに一致する。このため、第一回路10の駆動周波数は、コンデンサ17の容量、コイル部13、14と共にトランスを構成する第二回路20のコイル部23、24の巻き比及びインダクタンスとコンデンサ27の容量とによって設定される。
【0015】
上記のように、トランジスタ素子を使って整流動作する本実施形態の電力供給システム1は、トランジスタのゲート端子にトランジスタをオンさせる閾値電圧以上の電圧を印加することによって動作することができる。トランジスタの閾値電圧は多くの場合ダイオードの順電圧より低い。このことから、本実施形態は、整流動作にダイオードを使う構成の回路よりも省力化に有利であって、かつ動作効率が高いものといえる。
【0016】
トランジスタ素子11、12のゲート端子には抵抗素子r11、r12、r13、r14により構成される抵抗群R1が接続されている。抵抗素子r11、r12、r13、r14の値は、トランジスタ素子11、12の閾値電圧に比較的近い電圧がトランジスタ素子11、12に印加されるように設定されている。
【0017】
また、トランジスタ素子11、12はいずれも抵抗群R1に接続されている。しかし、発振の開始時において、トランジスタ素子11、12の製造上の特性バラつきによりトランジスタ素子11、12の一方が他方に先んじてオンする。トランジスタ素子11、12の一方がオンした後、トランジスタ素子11,12は駆動コイル15によって交互にオン、オフされる。このような動作により、トランジスタ素子11、トランジスタ素子12は、抵抗群R1で発生する電圧値が閾値電圧以下になるまで発振を継続することができる。
【0018】
駆動コイル15は、その両端がノードg11及びノードg12に接続されていて、ノードg11、g12は、トランジスタ素子11,12のゲート端子と接続されている。このため、駆動コイル15にはトランジスタ素子11またはトランジスタ素子12をオンするために印加される電圧と値が等しく、逆相の電圧が印加されて駆動電流が流れる。ここで「等しい電圧」とは、トランジスタ素子11、12のゲート端子と駆動コイル15とが同一の抵抗群R1のノードg11、g12と接続されるために略同一であり、配線長さや素子特性により生じる差異を許容する。
【0019】
駆動コイル15の両端は、ノードg11、g12に接続されている。コンデンサ17の充電期間と放電期間とで抵抗群R1を流れる流路が切り替わり、ノードg11に閾値電圧より大きい電圧が印加されている間にはノードg12に閾値電圧より小さい電圧が印加される。このようにすることにより、本実施形態は、ノードg11、g12に閾値電圧より高い駆動電圧と閾値電圧よりも低い駆動電圧とを交互に与え、トランジスタ素子11、12を交互にオン、オフすることができる。
また、本実施形態では、ノードg11、g12に与える駆動電圧の切換周期とコンデンサ17の充放電の周期とが一致しているので、コイル部13に供給電流が流れるときにトランジスタ素子11をオンさせて、かつ、コイル部14に供給電流が流れるときにトランジスタ素子12をオンさせて両者を発振させることができる。
【0020】
駆動コイル15には、ノードg11に閾値電圧より大きい電圧が印加されてトランジスタ素子11がオンしている間にはコイル部13を流れる電流が流れる。また、駆動コイル15には、ノードg12に閾値電圧より大きい電圧が印加されてトランジスタ素子12がオンしている間にはコイル部14を流れる電流が流れる。つまり、駆動コイル15には、コイル部13、14に流れる電流が駆動電流として交互に供給される。交互に流れる駆動電流を合成すると、トランジスタ素子11、12の閾値電圧を中心にして振幅がプラス、マイナスに切り換るパルス状の電流になる。
【0021】
さらに、第一回路10は、バッテリ装置18の電圧値を検出する電圧検出部である電圧監視回路19と、電圧監視回路19により検出された電圧値が予め定められた値よりも高くなったとき、第一回路10からバッテリ装置18を切り離すバッテリ切断回路をさらに含んでいる。図1に示す例では、電圧監視回路19の出力に接続されるドライブ回路36、抵抗素子39、34、トランジスタ素子37が切断回路を構成する。電圧監視回路19は、例えば、バッテリ装置18の電圧に対応する電位差を生じる抵抗素子32、33間の電圧をモニターし、この電圧が予め定められた値以上である場合にトランジスタ素子37に対してゲート電圧を印加する。図1に示す例では、トランジスタ素子37をP型のMOSトランジスタとし、ゲート電圧の印加によってオフするものとした。
【0022】
トランジスタ素子37がオフすることにより、第一回路10からバッテリ装置18が切り離される。このような構成によれば、バッテリ装置18に何らかの異常が生じた場合にバッテリ装置18の異常が電力供給システム1に影響することをなくし、電力供給システム1を保護することができる。
なお、このような電圧監視回路19は、第一回路10、第二回路20の両方に設けられるものであってもよいし、第一回路10、第二回路20のうちバッテリ装置の過充電が起こり易い側にのみ設けるようにしてもよい。
さらに、電圧検出部及びバッテリ切断回路は、図1に示す構成に限定されるものでなく、バッテリ装置18の異常を検出してバッテリ装置18を第一回路10から電気的に切り離すものであればどのようなものであってもよい。
【0023】
上記した構成の他、第一回路10は、ヒューズ35、電解コンデンサ31及びコイル38を備えている。ヒューズ35は、第一回路10の自励発振回路に異常が発生して過大な電流が発生した場合に溶融してバッテリ装置18を第一回路から切り離し、バッテリ装置18がさらに高温になることを防ぐものである。電解コンデンサ31は、バッテリ装置18の充放電に伴う電圧の変化を吸収する。コイル38は、第一回路10のリアクタンス成分を調整するものである。
【0024】
(第二回路)
第二回路20は、コイル部13、14に流れる給電電流によって誘導起電力が生じる第二給電コイルを構成するコイル部23、24及び第二駆動コイルである駆動コイル25と、駆動コイル25に生じた誘導起電力によってオン、オフする第二スイッチング素子であるトランジスタ素子21、22と、を備えている。さらに、第二回路20は、トランジスタ素子21、22のオン時にコイル部23、24から電力の供給を受ける負荷を備えている。電力供給システム1をDC/DC変換機として構成する本実施形態では、負荷を第二バッテリ装置であるバッテリ装置28としている。
また、本実施形態の第二回路20は、第一回路と同様に、コイル部23、24に対して交互に給電電流を流すコンデンサ27、抵抗素子 21 から抵抗素子 24 により構成される抵抗群R2を有している。
【0025】
上記の構成によれば、例えば、第一回路10から第二回路20に給電する場合、コイル部13に給電電流が流れると、コイル部23に誘導起電力が生じる。コイル部13に給電電流が流れている間はトランジスタ素子11がオン、トランジスタ素子12がオフ状態になっている。このとき、駆動コイル15にはコイル部13を流れる電流に同期した電流が駆動電流として供給される。このとき、駆動コイル25にもコイル部13を流れる電流に同期した誘導電流が生じる。
誘導電流が流れることによってトランジスタ素子21のゲート端子がオンする。このとき、コイル部23、コイル38、ヒューズ35、バッテリ装置28を通ってコイル部23に戻る電流の流路が形成される。流路の形成により、コイル部23に生じた誘導起電力がバッテリ装置28に蓄積される。
【0026】
次に、コイル部14に給電電流が流れると、駆動コイル25に誘導起電力が生じ、トランジスタ素子21がオフし、トランジスタ素子22がオンする。トランジスタ素子22がオンすることにより、コイル部24、コイル38、ヒューズ35、バッテリ装置28を通ってコイル部24に戻る電流の流路が形成される。流路の形成により、コイル部24に生じた誘導起電力がバッテリ装置28に蓄積される。
【0027】
本実施形態は、コイル部13、14に交互に給電電流を供給することによりコイル部23、24に交互に誘電起電力を発生させる。そして、駆動コイル15、25によってトランジスタ素子21、22を駆動して第二回路20の側で誘導電流の流路を形成し、発生した誘導起電力をバッテリ装置28に充電する。
また、第二回路20は、トランジスタ素子21、22をオンさせるための電力が供給されるゲート端子にバッテリ装置28の電力を供給する電力供給ノードであるノードg21、22をさらに含んでいる。このような構成により、第二回路20は、バッテリ装置28の電圧が規定電圧に達した後はトランジスタ素子21、22に対してバッテリ装置28から電圧を供給するようにできる。このような本実施形態によれば、第一回路10のバッテリ装置18が規定電圧以下になった場合にはバッテリ装置28に蓄積されている電圧をバッテリ装置18に供給することができる。なお、図1に示した例では、電力供給ノードがトランジスタ素子のゲート端子に接続されて電圧を印加するものとしているが、電力供給ノードはトランジスタ素子をオンさせるための電圧、電流のいずれを与えるものであってもよく、トランジスタ素子の構成により適宜選択される。
以下、このような動作を順を追って詳細に説明する。
【0028】
図2から図5は、電力供給システム1の動作を説明するための図である。図2及び図3は、第一回路10の側から第二回路20へ給電する動作を説明するための図である。第一回路10から第二回路20へ給電する場合、電力供給システム1は、図2に示す動作と、図3に示す動作とを繰り返す。図4及び図5は、第二回路20の側から第一回路10の側へ給電する動作を説明するための図である。第二回路20から第一回路10へ給電する場合、電力供給システム1は、図4に示す動作と、図5に示す動作とを繰り返す。
【0029】
なお、第一回路10、第二回路20の一方から他方への給電は、給電側のバッテリ装置18、28が規定電圧以上の電圧を有する間継続される。バッテリ装置18、28の充電は、自身の電圧が規定電圧以下である間に行われるが、トランジスタ素子11、12及びトランジスタ素子21、22の発振は、バッテリ装置18、28が共に規定電圧以下になるまで継続する。なお、バッテリ装置18、28が共に規定電圧である場合、トランジスタ素子11、12及びトランジスタ素子21、22が共に発振する。このとき、第一回路10、第二回路20は、共に負荷が接続されていない所謂オープンの状態になる。
【0030】
バッテリ装置18の電圧が規定電圧以上であって、かつバッテリ装置28が規定電圧以下である場合、コンデンサ17の充電期間はバッテリ装置18から電流i1が流れ、コイル38を通過して電流i2としてコイル部13に流れ込こみ、電流i3がコイル部13を通過する。このような場合、抵抗群R1のノードg11、g12に接続された駆動コイル15には図2中にH(High)、L(Low)で示す電位差が生じる。Hの側に接続されているトランジスタ素子11のゲート端子はオンし、Lの側に接続されているトランジスタ素子12のゲート端子はオフする。このため、電流i4がトランジスタ素子11を通って電流i5、i6としてバッテリ装置18に帰還する。
【0031】
一方、第二回路20においては、コイル部23に生じた誘導起電力により電流i3と反対向きの電流i9が発生する。駆動コイル25には駆動コイル15を流れる電流により図に示すH、Lで示す電位差が生じる。この電位差がノードg21、g22に印加され、Hの側に接続されているトランジスタ素子21のゲート端子はオンし、Lの側に接続されているトランジスタ素子22のゲート端子はオフする。このため、電流i9が電流i10、i11としてバッテリ装置28に充電される。バッテリ装置28からは電流i12、i13が流れ、電流i14としてトランジスタ素子21を通過する。
【0032】
コンデンサ17は、充電完了後に放電する。このとき、図3に示すように、電流i1、i2は、電流i8としてコイル部14を通過する。このとき、ノードg12が高電位になると共に、ノードg11が低電位になり、トランジスタ素子12がオンすると共にトランジスタ素子11がオフする。電流i4は、トランジスタ素子12を通過して電流i5、i6としてバッテリ装置18に帰還する。
【0033】
このとき、コイル部24においては、電流i8により生じた誘導起電力によって電流i7が流れる。また、駆動コイル25には駆動コイル15により誘起された電位差が生じ、Hの側にゲート電極が接続されているトランジスタ素子22がオンする。また、Lの側にゲート電極が接続されているトランジスタ素子21がオフする。トランジスタ素子22がオンすることにより、電流i7はコイル部24を通過して電流i10、i11としてバッテリ装置28に流れ込み、バッテリ装置28を充電する。電流i12は、バッテリ装置28から流れて電流i13を経て電流i14としてトランジスタ素子22を通過する。
【0034】
次に、バッテリ装置28の電圧が規定電圧以上であって、かつバッテリ装置18が規定電圧以下である場合の電力供給システム1の動作を説明する。図4に示すように、コンデンサ27の充電期間はバッテリ装置28から電流i11が流れ、電流i10を経て電流i9としてコイル部23を通過する。トランジスタ素子21がオンし、トランジスタ素子22がオフしている場合、駆動コイル25には図4中にH、Lで示す電位差が生じ、H側のトランジスタ素子21がオンしてトランジスタ素子22がオフする。電流i4は、トランジスタ素子21を通過して電流i13を経て電流i12としてバッテリ装置28に帰還する。
【0035】
一方、第一回路10においては、コイル部13に生じた誘導起電力により電流i9と反対向きの電流i3が発生する。駆動コイル15には駆動コイル25を流れる電流により図4に示すH、Lで示す電位差が生じる。この電位差がノードg11、g12に印加され、Hの側に接続されているトランジスタ素子11はオンし、Lの側に接続されているトランジスタ素子12はオフする。このため、電流i3が電流i2、i1としてバッテリ装置18に充電される。バッテリ装置18からは電流i6、i5が流れ、電流i4としてトランジスタ素子11を通過する。
【0036】
次に、コンデンサ27が放電する。このとき、図5に示すように、電流i11、i10は、電流i7としてコイル部24を通過する。このとき、ノードg22が高電位になると共に、ノードg21が低電位になり、トランジスタ素子22がオンしてトランジスタ素子21がオフする。電流i4は、トランジスタ素子22を通過して電流i13、i12としてバッテリ装置28に帰還する。
【0037】
このとき、コイル部14においては、電流i7により生じた誘導起電力によって電流i8が流れる。また、駆動コイル15には駆動コイル25により誘起された電位差が生じ、Hの側に接続されているトランジスタ素子12がオンする。また、Lの側に接続されているトランジスタ素子11がオフする。トランジスタ素子12がオンすることにより、電流i8はコイル部14を通過して電流i2、i1としてバッテリ装置18に流れ込み、バッテリ装置18を充電する。電流i6は、バッテリ装置18から流れて電流i5を経て電流i4としてトランジスタ素子12を通過する。
【0038】
以上説明した本実施形態によれば、第一回路10と第二回路20とを設け、例えば第一回路10においてバッテリ装置18から電圧をトランジスタ素子11、12に供給することにより、バッテリ装置18の電圧が規定電圧以上であれば自動的にトランジスタ素子11、12を発振させることができる。このため、本実施形態は、バッテリ装置18の電圧を監視して発振させる構成が必要ない。
【0039】
また、本実施形態は、トランジスタ素子11、12のオン時にバッテリ装置18から給電電流が供給されるコイル部13、14を備えている。このため、本実施形態は、バッテリ装置18の電圧が規定電圧以上である場合にコイル部13、14に給電電流を流すことができる。さらに、本実施形態は、トランジスタ素子11、12をオン、オフする駆動コイル15を備えている。トランジスタ素子11、12がオン、オフすることにより、コイル部13、14に流れる給電電流が変化し、第二回路20のコイル部23、24及び駆動コイル25に誘導起電力を生じさせることができる。
【0040】
さらに、本実施形態は、駆動コイル15に発生する電位差によってトランジスタ素子11、12をオン、オフすることにより、トランジスタ素子11、12のゲート電圧を外部から制御する構成が不要になる。ゲート電圧の制御回路は、電力供給システム1の他に設けられる構成であるから電力供給システム1を大型化、複雑化、ひいては高コスト化する一因になり得る。このような制御回路が不要な本実施形態は、電力供給システム1の小型化、簡易化、低コスト化に有利である。
また、本実施形態は、バッテリ装置28を備えたことにより、コイル部23、24の誘導起電力により生じた電力を蓄積することができ、第二回路20、第一回路10の双方向の給電が可能になる。また、本実施形態は、第一回路10、第二回路20を電流により自動的に高い精度で同期させることができる。さらに、本実施形態の電力供給システム1は、第一回路10、第二回路20が共に電流スイッチング構成であるため、出力のリップルを軽減し易い構成となっている。
【0041】
以上説明したように、本実施形態は、一次側の回路と二次側の回路とを高精度に同期させることが可能であって、かつ小型化、簡易化に有利な電力供給システム及びDC/DC変換機を提供することができるものといえる。
【0042】
(変形例1)
図6は、先に説明した実施形態のように電圧の監視にトランジスタ素子を使うことに代えてリレースイッチ67を用いた電力供給システム2を示す図である。図1図6に示すように、バッテリ装置18、28を切り離す構成は、電圧を監視し、第一回路10、第二回路20に異常が発生したとき速やかに第一回路10からバッテリ装置18を、第二回路20からバッテリ装置28を切り離すことができるものであればどのような構成であってもよいし、第一回路10、第二回路20で異なる構成を用いても良い。また、第一回路10、第二回路20の両方に設けるものに限定されず、異常の発生が懸念される一方にのみ設けるようにしてもよい。
【0043】
(変形例2)
さらに、本実施形態の電力供給システムは、第一回路10と第二回路20とを一対一に設けることに限定されるものではなく、二次側に複数の回路を設けるようにしてもよい。図7は、上記実施形態の電力供給システム1の二次側に二つの第二回路20、第三回路60を設けた電力供給システム6を説明するための図である。第三回路60は、第一回路10、第二回路20と同様に構成されており、バッテリ装置68、抵抗素子r61から抵抗素子r64、トランジスタ素子61、62、コンデンサ27、コイル部63、64及び駆動コイル65を備えている。また、第三回路60においても異常を検出し、バッテリ装置68を第三回路60から切り離すための構成が設けられている。
【0044】
第三回路60は、第一回路10によって第二回路20と同様に動作する。すなわち、コイル部13に給電電流が流れるタイミングで駆動コイル65に駆動電流が流れてトランジスタ素子61がオンする。また、コイル部14に給電電流が流れるタイミングで駆動コイル65に先の駆動電流とは反対方向に駆動電流が流れてトランジスタ素子62がオンする。トランジスタ素子61、62が交互にオン、オフを繰り返す間にコイル部3、4に生じた誘導電流がバッテリ装置68に流れ込み、バッテリ装置68はバッテリ装置28と共に充電される。
また、第三回路60は、第一回路10のバッテリ装置18の電圧が規定の電圧より低下した場合、バッテリ装置68からバッテリ装置18、28を充電することができる。このような変形例2は、第一回路10、第二回路20及び第三回路60の各バッテリ装置18、28、68の電圧が異なっていてもよく、例えば、400V、48V、12Vのバッテリ装置間で充放電することが可能になる。
【0045】
上記実施形態は、以下の技術思想を包含するものである。
(1)第一回路及び第二回路を含む電力供給システムであって、前記第一回路は、電力を蓄積する第一バッテリ装置と、前記第一バッテリ装置から電圧の供給を受ける第一スイッチング素子と、前記第一スイッチング素子のオン時に前記第一バッテリ装置から給電電流が供給される第一給電コイルと、前記第一給電コイルを流れる前記給電電流の流れ方向を切り換える切換素子と、前記給電電流の流れ方向に応じて前記第一スイッチング素子をオン、オフする第一駆動コイルと、を備え、前記第二回路は、前記第一給電コイルに流れる給電電流によって誘導起電力が生じる第二給電コイル及び第二駆動コイルと、前記第二駆動コイルに生じた誘導起電力によってオン、オフする第二スイッチング素子と、前記第二スイッチング素子のオン時に前記第二給電コイルから電力の供給を受ける負荷と、を備える、電力供給システム。
(2)前記負荷が第二バッテリ装置であり、前記第二バッテリ装置の電圧に対応する電圧を前記第二スイッチング素子に印加して前記第二スイッチング素子をオンさせる電圧印加ノードをさらに含む、(1)の電力供給システム。
(3)少なくとも前記第一回路において、前記第一スイッチング素子は少なくとも二つのトランジスタ素子を有するトランジスタ対を含み、前記第一給電コイルは前記トランジスタ素子の各々に対応する少なくとも二つのコイル部を有するコイル対を含み、前記第一駆動コイルが前記トランジスタ素子を交互にオン、オフさせる、(1)または(2)の電力供給システム。
(4)前記第一駆動コイルの両端は、二つの前記トランジスタ素子にゲート電圧を印加するノードとそれぞれ接続されている、(3)の電力供給システム。
(5)前記切換素子は、前記コイル対に含まれる前記二つのコイル部に対して前記給電電流が交互に供給されるように切り換える、(3)または(4)の電力供給システム。
(6)少なくとも前記第一回路は、前記第一バッテリ装置の電圧値を検出する電圧検出部と、当該電圧検出部により検出された電圧値が予め定められた値よりも高くなったとき、前記第一回路から前記第一バッテリ装置を切り離すバッテリ切断回路をさらに含む、(1)から(5)のいずれか一つの電力供給システム。
(7)第一回路及び第二回路を含む双方向のDC/DC変換機であって、前記第一回路は、電力を蓄積する直流の第一バッテリ装置と、前記第一バッテリ装置から電圧の供給を受ける二つの第一スイッチング素子と、前記第一スイッチング素子のオン時に前記第一バッテリ装置から給電電流が供給される二つの第一給電コイルと、前記第一給電コイルを流れる前記給電電流の流れ方向を切り換える切換素子と、前記給電電流の流れ方向に応じて前記第一スイッチング素子をオン、オフする第一駆動コイルと、を備え、前記第二回路は、前記第一給電コイルに流れる給電電流によって誘導起電力が生じる二つの第二給電コイル及び二つの第二駆動コイルと、前記第二駆動コイルに生じた誘導起電力によって交互にオン、オフする二つの第二スイッチング素子と、前記第二スイッチング素子のオン時に前記第二給電コイルから電力の供給を受ける直流の第二バッテリ装置と、を備える、DC/DC変換機。
【符号の説明】
【0046】
1、2、6・・・電力供給システム
10・・・第一回路
11、12,21、22、37、61、62・・・トランジスタ素子
13、14、23、24、63、64・・・コイル部
15、25、65・・・駆動コイル
17、27・・・コンデンサ
18、28・・・バッテリ装置
19・・・電圧監視回路
20・・・第二回路
31・・・電解コンデンサ
32、33、34、39、40・・・抵抗素子
35・・・ヒューズ
36・・・ドライブ回路
38・・・コイ
60・・・第三回路
11、r12、r13、r14、r21、r22、r23、r24・・・抵抗素子
R1、R2・・・抵抗群
11、g12、g21、g22・・・ノード
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7