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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-21
(45)【発行日】2023-08-29
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/56 20060101AFI20230822BHJP
   A61F 13/511 20060101ALI20230822BHJP
   A61F 13/493 20060101ALI20230822BHJP
   A61F 13/62 20060101ALI20230822BHJP
【FI】
A61F13/56 211
A61F13/511 100
A61F13/56 210
A61F13/493
A61F13/62 100
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019138846
(22)【出願日】2019-07-29
(65)【公開番号】P2021019928
(43)【公開日】2021-02-18
【審査請求日】2022-03-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 哲
【審査官】須賀 仁美
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-000475(JP,A)
【文献】実開平06-044533(JP,U)
【文献】特開2004-167026(JP,A)
【文献】特開2017-189242(JP,A)
【文献】特開2002-143215(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F13/15-13/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
着用者の股下に装着される吸収性物品であって、
吸収体と、
前記吸収体よりも前記着用者側に配置されており、前記着用者の肌が当接する液透過性のシートと、
少なくとも前記吸収体の前記着用者側の面または前記シートに形成される溝状部と、
前記吸収性物品の外装面に接合されており、前記吸収性物品を前記着用者に固定するためのテープが貼着される非通気性のフィルムと、
前記溝状部に対応する位置において前記フィルムを貫通する通気孔と、を備え
前記通気孔は、前記フィルムに対応する部分の一部において、一または複数本の列を形成するように複数設けられており、
前記溝状部は、前記通気孔の列と交差する方向に延在する、
吸収性物品。
【請求項2】
前記通気孔は、前記溝状部の長手方向に交差する方向に沿って複数個並んでおり、少なくとも何れか1つが前記溝状部に対応する位置に形成される、
請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記溝状部は、前記吸収性物品の長手方向に延在する形態で複数本が平行に形成されている、
請求項1または2に記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記溝状部は、前記フィルムに対応する部分の少なくとも一部において、前記吸収性物品の長手方向に対して直交する横方向に延在する形態で複数本が平行に形成されている、
請求項1または2に記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記通気孔は、前記溝状部に対応する領域を更に拡張した領域に複数形成される、
請求項1から4の何れか一項に記載の吸収性物品。
【請求項6】
前記フィルムは、前記吸収性物品の外装面のうち前記着用者の前身頃に対応する部位に接合されている、
請求項1から5の何れか一項に記載の吸収性物品。
【請求項7】
前記吸収性物品の外装面のうち前記着用者の後身頃から左右両側に突設されており、前記吸収性物品を前記着用者の胴回りにおいて固定するための前記テープを備える、
請求項1から6の何れか一項に記載の吸収性物品。
【請求項8】
前記フィルムは、前記テープの表面に形成されたフックに係合するループを表面に配列した面ファスナーである、
請求項1から7の何れか一項に記載の吸収性物品。
【請求項9】
前記通気孔は、前記吸収性物品の長手方向に沿って延在する楕円形状である、
請求項1から8の何れか一項に記載の吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
使い捨ておむつ、尿パッド、生理用品等の吸収性物品は、尿や体液等の液体を吸収する吸収体を備えている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-175885号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
吸収性物品には、着用者の胴回りに固定するための面ファスナー等を備えたいわゆるテープ型と呼ばれるタイプが存在する。そして、テープが貼着される部位は、例えば、通気性の無いフィルム製の素材で形成されることがある。また、着用者の様々な体形に対応するため、当該フィルム製の素材は、吸収性物品の外装面にある程度の面積で接合される場合がある。フィルム製の素材が接合されている部分は通気性が低下する。
【0005】
そこで、本発明は、通気性を向上可能な吸収性物品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明では、吸収体の着用者側の面またはシートに形成される溝状部に対応する位置において、テープが貼着される非通気性のフィルムに通気孔を設けることにした。
【0007】
詳細には、本発明は、着用者の股下に装着される吸収性物品であって、吸収体と、吸収体よりも着用者側に配置されており、着用者の肌が当接する液透過性のシートと、少なくとも吸収体の着用者側の面またはシートに形成される溝状部と、吸収性物品の外装面に接合されており、吸収性物品を着用者に固定するためのテープが貼着される非通気性のフィルムと、溝状部に対応する位置においてフィルムを貫通する通気孔と、を備える。
【0008】
なお、通気孔は、溝状部の長手方向に交差する方向に沿って複数個並んでおり、少なくとも何れか1つが溝状部に対応する位置に形成されていてもよい。
【0009】
また、溝状部は、吸収性物品の長手方向に延在する形態で複数本が平行に形成されていてもよい。
【0010】
また、溝状部は、フィルムに対応する部分の少なくとも一部において、吸収性物品の長手方向に対して直交する横方向に延在する形態で複数本が平行に形成されていてもよい。
【0011】
また、通気孔は、溝状部に対応する領域を更に拡張した領域に複数形成されていてもよい。
【0012】
また、フィルムは、前記吸収性物品の外装面のうち前記着用者の前身頃に対応する部位に接合されていてもよい。
【0013】
また、吸収性物品は、吸収性物品の外装面のうち着用者の後身頃から左右両側に突設されており、吸収性物品を着用者の胴回りにおいて固定するためのテープを備えていてもよい。
【0014】
また、フィルムは、テープの表面に形成されたフックに係合するループを表面に配列した面ファスナーであってもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、通気性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、実施形態に係るおむつの斜視図である。
図2図2は、おむつの分解斜視図である。
図3図3は、非装着状態におけるおむつを、長手方向の中心を幅方向に沿って切断した場合の断面図である。
図4図4は、溝状部とフロントパッチに設けられている通気孔との位置関係を示した図である。
図5図5は、溝状部と通気孔との位置関係の第1変形例を示した図である。
図6図6は、溝状部と通気孔との位置関係の第2変形例を示した図である。
図7図7は、溝状部と通気孔との位置関係の第3変形例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、図面を参照して本発明の実施形態に係る吸収性物品について説明する。なお、以下の実施形態の構成は例示であり、本発明はこれらの実施の形態の構成に限定されるものではない。
【0018】
<実施形態>
本実施形態では、テープ型使い捨ておむつ(本願でいう「吸収性物品」の一例であり、以下、単に「おむつ」という)について、着用者の腹部に対向して配置される前身頃と背部に対向して配置される後身頃とを結ぶ方向を長手方向とする。これらの前身頃(長手方向の一側)と後身頃(長手方向の他側)との間(長手方向の中央)には、着用者の股下に配置(股間に対向して配置)される股下部が位置する。また、紙おむつが着用者に装着された状態(以下「装着状態」と略称する)において、着用者の肌に向かう側(装着された状態で内側)を肌面側とし、肌面側の反対側(装着された状態で外側)を非肌面側とする。さらに、肌面側と非肌面側とを結ぶ方向を厚み方向とし、長手方向と厚み方向の何れにも直交する方向を幅方向とする。そのほか、厚み方向から視ることを平面視とする。
【0019】
図1は、本実施形態に係るおむつの斜視図である。おむつ1は、装着状態において着用者の陰部を覆う股下領域に対応する部位である股下領域1Bと、股下領域1Bの前側に位置し、着用者の前身頃に対応する部位である前身頃領域1Fと、股下領域1Bの後ろ側に位置し、着用者の後身頃に対応する部位である後身頃領域1Rとを有する。後身頃領域1Rの左右両側の縁には、前身頃領域1Fの非着用者側の面に設けられたフロントパッチ2Fへ貼着可能なテープ2L,2Rが設けられている。よって、おむつ1は、前身頃領域1Fが着用者の腹側に配置され、後身頃領域1Rが着用者の背側に配置された状態でテープ2L,2Rがフロントパッチ2Fに貼着されると、着用者の腹囲と大腿部を取り巻く状態で着用者の身体に固定される。おむつ1がこのような形態で着用者の身体に固定されるので、着用者はおむつ1を着用した状態で立ち歩き可能である。
【0020】
おむつ1には、液体を吸収して保持することができる吸収体が主に股下領域1B付近を中心に配置されている。また、おむつ1には、おむつ1と着用者の肌との間に液体の流出
経路となる隙間が形成されるのを抑制するべく、着用者の大腿部を取り巻く部位に立体ギャザー3BL,3BRが設けられ、着用者の腹囲を取り巻く部位にウェストギャザー3Rが設けられている。立体ギャザー3BL,3BRとウェストギャザー3Rは、糸ゴムの弾性力で着用者の肌に密着する。よって、着用者の陰部から排出される液体は、おむつ1から殆ど漏出することなくおむつ1の吸収体に吸収される。
【0021】
図2は、おむつ1の分解斜視図である。また、図3は、非装着状態におけるおむつ1を、長手方向の中心を幅方向に沿って切断した場合の断面図である。おむつ1は、装着状態において外表面を形成するカバーシート4を有する。カバーシート4は、長辺に相当する部位に括れ4KL,4KRを設けた略長方形の外観を有するシート状の部材であり、おむつ1の外装面を形成する。括れ4KL,4KRは、着用者の大腿部が位置する箇所に設けられる。カバーシート4は、後述するバックシート5の補強や手触りの向上のために設けられ、例えば、排泄物の漏れを抑制するために、液不透過性の熱可塑性樹脂からなる不織布をその材料として用いることができる。液不透過性の熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)等が例示できる。カバーシート4は、単層構造に限らず、インナカバーシートおよびアウターカバーシートを有する多層構造であってもよい。
【0022】
そして、おむつ1は、カバーシート4の着用者側の面において順に積層されるバックシート5、吸収体6C、トップシート7を有する。バックシート5、吸収体6C、トップシート7は、何れも略長方形の外観を有するシート状の部材であり、長手方向がカバーシート4の長手方向と一致する状態でカバーシート4に順に積層されている。バックシート5は、カバーシート4と同様に、排泄物の漏れを抑制するために液不透過性の熱可塑性樹脂を材料として形成されたシートである。バックシート5は、着用状態での蒸れを抑えるため、透湿性を併せもつ材料で構成されることが好ましい。また、トップシート7は、吸収体6Cの吸水面を被覆するように着用者の肌面側に配置される、シート状の部材である。このトップシート7は、その一部又は全部において液透過性を有する。そのため、おむつ1が装着された状態において、着用者から排泄された液体は、着用者の肌に接触し得るトップシート7を通って吸収体6Cに進入し、そこで吸収される。例えば、織布、不織布、多孔質フィルムがトップシート7の材料として材用できる。トップシート7は親水性を有していてもよい。
【0023】
バックシート5、吸収体6C、トップシート7は、何れも前身頃領域1Fから後身頃領域1Rにまで延在する。よって、バックシート5と吸収体6Cとトップシート7が積層されているカバーシート4で着用者の陰部を覆うと、バックシート5と吸収体6Cとトップシート7の各長手方向の両端部は、着用者の腹側と背側に位置する状態となる。すなわち、着用者の陰部は、着用者の腹側から背側まで吸収体6Cに覆われる状態となる。したがって、着用者が腹を下へ向けた姿勢と背を下へ向けた姿勢の何れの姿勢で液体を体外へ排出しても、排出された液体はトップシート7を介して吸収体6Cに接触することになる。
【0024】
また、おむつ1は、上述した立体ギャザー3BL,3BRを形成するための細長い帯状のサイドシート8L,8Rを有する。サイドシート8L,8Rは、トップシート7の長辺の部分に設けられる液不透過性のシートである。サイドシート8L,8Rには、おむつ1の立体ギャザー3BL,3BRと同様、着用者の大腿部が位置する箇所に括れ8KL,8KRが設けられる。そして、サイドシート8L,8Rには糸ゴム8EL,8ERが長手方向に沿って編み込まれている。よって、サイドシート8L,8Rは、おむつ1が装着状態の形態、すなわち、おむつ1が側面視U字状の形態になると、糸ゴム8EL,8ERの収縮力で長手方向に引き寄せられてトップシート7から立ち上がり、液体の流出を防ぐ立体ギャザーとなる。
【0025】
また、上述したウェストギャザー3Rを形成するための糸ゴム9ERは、吸収体6Cの端部よりも更に背側の位置において、バックシート5とトップシート7の間に設けられる。糸ゴム9ERは、伸縮方向となる長手方向がおむつ1の左右方向となる向きでバックシート5とトップシート7の間に設けられる。よって、糸ゴム9ERの左右両側に設けられるテープ2L,2Rが、着用者の腹側においてフロントパッチ2Fに貼着されると、糸ゴム9ERは、収縮力を発揮しておむつ1を着用者に密着させ、おむつ1と着用者の腹囲との間に隙間が形成されるのを防ぐ。なお、カバーシート4にも、おむつ1と着用者の腹囲との間に隙間が形成されるのを防ぐ糸ゴム4SL,4SRが糸ゴム4Cの長手方向に沿って設けられている。糸ゴム4SL,4SRは、おむつ1において設計上要求される弾性力(収縮力)などに応じて決定された適宜の本数で適宜の位置に設けられる。
【0026】
吸収体6Cは、パルプ繊維、レーヨン繊維、またはコットン繊維のようなセルロース系繊維の短繊維や、ポリエチレン、ポリプロピレン、またはポリエチレンテレフタレート等の合成繊維に親水化処理を施した短繊維の隙間に、水を吸収し保持することのできる架橋構造を持つ親水性ポリマーであるSAP(高吸収性重合体:Super Absorbent Polymer)等の粒状の吸収性樹脂を保持させた構造を有する。よって、吸収体6Cでは、液体を吸収する前後の吸収性樹脂の体積変動は、基本的には吸収性樹脂を隙間に保持する短繊維内で行われることになる。したがって、吸収体6C全体を俯瞰してみると、液体を吸収した吸収体6Cの厚みの膨張率は、吸収性樹脂自体の膨張率ほど大きくはないと言える。
【0027】
本実施形態のSAP粒子とは、SAPを含む樹脂組成物を粒状としたものを指す。ここで言う「SAPを含む樹脂組成物」とは、SAPのみからなる組成物、SAPを主成分とし、これに吸水性に悪影響を及ぼさない程度に他の物質が含まれた組成物、の双方を包含する概念である。「他の物質」としては、添加剤(粒子表面を疎水化する目的で添加される表面改質剤等)、SAPの合成時に残存した未反応のモノマー等を挙げることができる。
【0028】
ところで、本実施形態のおむつ1では、トップシート7に溝状部7Hが設けられ、吸収体6Cに溝状部6CHが設けられている。溝状部6CH及び溝状部7Hは、股下領域1Bから前身頃領域1Fへ延びる凹状の部位であり、図2に示されるように、おむつ1の幅方向の中央において長手方向に延びる仮想の中心線を挟んで二本平行に形成されている。
【0029】
溝状部6CH及び溝状部7Hは、例えば、吸収体6Cに貫通孔または溝のスリットを形成することにより凹設されるか、或いは、トップシート7が積層された吸収体6Cを部分的にプレス(圧搾)することにより凹設(エンボス加工)される。後者の場合には、溝状部6CHの設けられた吸収体6Cが圧搾(圧密化)された状態をなしている。言い換えれば、溝状部6CHは、吸収体6Cの圧搾により形成されたものと言える。また、溝状部6CHは、トップシート7が積層される前の吸収体6Cを部分的にプレスすることで形成することもできる。この場合、溝状部7Hはトップシート7から省略される形態となり、折曲保持構造は溝状部6CHで形成されることになる。また、溝状部6CHは、例えば、吸収体6Cを貫通する孔によって形成されていてもよい。
【0030】
なお、溝状部6CH及び溝状部7Hは、図2では、幅方向における中心線を挟んで互いに平行に形成される二本で一対をなす直線状に図示されていた。しかし、溝状部6CH及び溝状部7Hは、長手方向の一方から他方に向かうにつれて離間あるいは接近する形状であってもよいし、弧状や波型といった他の形状であってもよい。また、溝状部6CH及び溝状部7Hは、各々三本以上形成されていてもよい。
【0031】
また、本実施形態のおむつ1には、既述したようにフロントパッチ2Fが前身頃領域1
Fに設けられている。フロントパッチ2Fは、テープ2L,2Rの貼着が可能な面ファスナーとしての機能を発揮するものであり、テープ2L,2Rに設けられている微細なフックを引っ掛けるための微細なループを、プラスチックフィルムの表面に縦横に接着した微細な糸で形成したものである。フロントパッチ2Fのループは、例えば、微細な格子状のポリエステル繊維の糸を、ポリウレタン接着剤でプラスチックフィルムの表面に接着することにより形成される。また、フロントパッチ2Fのプラスチックフィルムとしては、例えば、ポリオレフィン、ポリエステル、塩化ビニル、その他各種素材のプラスチックフィルムが挙げられる。よって、フロントパッチ2Fは、全体的に通気性の無い樹脂製のフィルムで構成されていると言える。したがって、おむつ1の着用者は、フロントパッチ2Fの部分に蒸れを感じやすい。しかし、本実施形態のおむつ1では、フロントパッチ2Fに以下のような通気孔が設けられているため、おむつ1の着用者がフロントパッチ2Fの部分に感じる蒸れを抑制することができる。このような非通気性のフィルムを用いた面ファスナーのフロントパッチ2Fは、不織布製の面ファスナーより安価なので、例えば、大人用の紙おむつのように大面積の面ファスナーを設ける必要がある場合に好適である。
【0032】
図4は、溝状部6CHとフロントパッチ2Fに設けられている通気孔2FTとの位置関係を示した図である。本実施形態のおむつ1では、フロントパッチ2Fに通気孔2FTが設けられている。そして、通気孔2FTは、フロントパッチ2Fのうち溝状部6CHに対応する部位に設けられている。よって、本実施形態のおむつ1であれば、通気孔2FTがフロントパッチ2Fに設けられていないものに比べて、おむつ1の内部の湿分が図4に示すように溝状部6CHに集まり、溝状部6CHから通気孔2FTを通じておむつ1の外部へ排出されやすい。このため、フロントパッチ2Fの部分におけるおむつ1内の蒸れを可及的に抑制することができる。テープ型使い捨ておむつは、着用者の腹囲に密着して固定するので、通気性の無いフロントパッチ2Fの部分が蒸れやすい。この点、上記実施形態のおむつ1であれば、フロントパッチ2Fに通気孔2FTが設けられているため、このような局部的な蒸れを防ぐことができる。
【0033】
なお、通気孔2FTは、フロントパッチ2Fに対して予め設けられている。そして、フロントパッチ2Fをカバーシート4へ接合する際は、通気孔2FTが溝状部6CHに対応する位置となるように、カバーシート4に対するフロントパッチ2Fの位置合わせが行われる。よって、おむつ1の製造時におけるこのような位置合わせをより容易にするため、上記実施形態のおむつ1は、以下のように変形してもよい。以下、おむつ1の変形例について説明する。
【0034】
図5は、溝状部6CHと通気孔2FTとの位置関係の第1変形例を示した図である。本第1変形例では、おむつ1の製造時における溝状部6CHと通気孔2FTとの相対的な位置合わせを容易にするため、通気孔2FTを溝状部6CHに対応しない位置にも多数設けたものである。すなわち、本第1変形例では、おむつ1の製造プロセスにおいて想定されるフロントパッチ2Fの位置ずれの範囲内の何れにフロントパッチ2Fが接合されても、複数ある通気孔2FTのうち少なくとも何れかが溝状部6CHに対応する位置となるように、通気孔2FTがフロントパッチ2Fの所定の領域に複数設けられている。当該所定の領域とは、おむつ1の製造プロセスにおいて想定されるフロントパッチ2Fの位置ずれを考慮して決定される領域であり、例えば、設計上の溝状部6CHに対応する領域を更に拡張した領域である。本第1変形例によれば、おむつ1の製造時に溝状部6CHと通気孔2FTとの位置関係に多少の誤差があっても、複数ある通気孔2FTのうちの少なくとも何れかが、溝状部6CHに対応する部位に位置することになる。そして、おむつ1の内部のうちフロントパッチ2Fに対応する部分の湿分が溝状部6CHに集まり、複数ある通気孔2FTのうち溝状部6CHに対応する部位にある通気孔2FTを通じておむつ1の外部へ排出される。よって、本第1変形例も上記実施形態と同様、おむつ1内の蒸れを可及的に抑制することができる。
【0035】
図6は、溝状部6CHと通気孔2FTとの位置関係の第2変形例を示した図である。本第2変形例では、トップシート7と着用者の肌との接触部分を減らして着用感を向上させるべく、溝状部6CHが吸収体6C全体に格子状に設けられている。格子状の溝状部6CHは、トップシート7が積層された吸収体6Cを格子状の型でプレス(圧搾)して凹設することが好ましいが、例えば、吸収体6Cに溝を格子状に形成することにより凹設してもよい。本第2変形例においては、おむつ1の長手方向に沿って並ぶ複数個の通気孔2FTがフロントパッチ2Fに設けられる。また、本第2変形例においては、溝状部6CHがおむつ1の長手方向に対して斜めの方向に延在する状態で格子状に形成される。よって、本第2変形例によれば、おむつ1の製造時に溝状部6CHと通気孔2FTとの位置関係を正しく調整しなくても、複数ある通気孔2FTのうちの少なくとも何れかが、溝状部6CHに対応する部位に位置することになる。そして、溝状部6CHに集まった湿分が、溝状部6CHに対応する部位にある通気孔2FTを通じておむつ1の外部へ排出される。よって、本第2変形例も上記実施形態と同様、おむつ1内の蒸れを可及的に抑制することができる。
【0036】
図7は、溝状部6CHと通気孔2FTとの位置関係の第3変形例を示した図である。本第3変形例では、溝状部6CHを股下領域1Bから前身頃領域1Fへかけて形成するのではなく、前身頃領域1Fの部分に設けている。そして、本第3変形例では、溝状部6CHがおむつ1の長手方向に沿って延在するのではなく、おむつ1の長手方向に対して直交する横方向に延在している。また、本第3変形例では、横方向に延在する溝状部6CHが平行に複数本設けられている。また、本第3変形例では、通気孔2FTがおむつ1の長手方向に沿って複数個並んでいる。よって、本第3変形例によれば、通気孔2FTが溝状部6CHに対して直交する方向に複数並ぶ状態となり、おむつ1の製造時に溝状部6CHと通気孔2FTとの位置関係を正しく調整しなくても、複数ある通気孔2FTのうちの少なくとも何れかが、溝状部6CHに対応する部位に位置することになる。そして、おむつ1の内部の湿分が溝状部6CHに集まり、溝状部6CHに対応する部位にある通気孔2FTを通じておむつ1の外部へ排出される。よって、本第3変形例も上記実施形態と同様、おむつ1内の蒸れを可及的に抑制することができる。なお、通気孔2FTは、溝状部6CHに対して斜めに交差する方向に複数並んでいてもよい。
【0037】
なお、上記実施形態及び変形例のおむつ1は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変形可能である。おむつ1は、例えば、溝状部6CH及び通気孔2FTを上記実施形態及び変形例のものと異なる形態で備えるものであってもよい。また、おむつ1は、溝状部6CH及び溝状部7CHのうち何れか一方が省略されていてもよい。
【0038】
また、上記実施形態及び変形例のおむつ1は、おむつ1を着用者の腹囲において固定するためのテープ2L,2R及びフロントパッチ2Fが、テープ2L,2Rに設けられている微細なフックをフロントパッチ2Fのループに引っ掛ける面ファスナーを構成する形態となっていた。しかし、おむつ1は、このような面ファスナータイプのものに限定されるものではない。おむつ1は、例えば、テープ2L,2Rが粘着テープであり、ループ面を有しない平坦なフィルム製のフロントパッチ2Fに当該粘着テープを貼着する形態であってもよい。
【0039】
また、通気孔2FTは、例えば、フロントパッチ2Fの表面に配列されたループの間に設けられていてもよい。この場合、フロントパッチ2Fの表面に配列されるループは、通気孔2FTが形成される前のフィルムに設けられてもよいが、通気孔2FTが形成された後のフィルムに設けられたものであれば、通気孔2FTの形成に伴うループの糸の欠損を防ぐことができる。
【0040】
また、通気孔2FTが形成された後のフィルムにループが形成される場合、通気孔2FTは、フィルムの表面に形成されるループの外径より小さいことが望ましい。ループの外径より小さい通気孔2FTを設けたフィルムであれば、フィルムの表面にループを貼着した際にループが通気孔2FT内に位置してしまい、ループを構成する糸がフックの力で切れてしまう可能性を抑制できる。
【0041】
また、通気孔2FTは、おむつ1の長手方向に沿って延在する楕円形状であることが好ましい。フロントパッチ2Fは、通常、着用者の呼吸や飲食に伴う腹囲の拡縮に応じた左右方向の外力を縦方向の外力よりも多く受ける。ここで、例えば、フロントパッチ2Fのループが、例えば、円形または正方形のように縦方向の寸法と左右方向の寸法とが略同一の形態の場合に、通気孔2FTがこのようにおむつ1の長手方向に沿って延在する楕円形状で形成されていれば、ループが通気孔2FTの部分に位置する確率は、縦方向よりも左右方向の方が少なくなる。よって、通気孔2FTをおむつ1の長手方向に沿って延在する楕円形状にしておけば、通気孔2FTが真円のものに比べて、左右方向におけるループのフィルムに対する接合強度を高めることができる。したがって、腹囲の拡縮に応じた左右方向の外力に対する抗力が高まる。
【0042】
また、通気孔2FTは、例えば、糸ゴム4SL,4SR,4Cの端部からおむつ1の前側端部までの間にある、糸ゴムを接合するためのホットメルト接着剤が塗布されない部分に設けられていてもよい。ホットメルト接着剤が塗布されていない部分は、ホットメルト接着剤が塗布されている部分よりも通気性が高い。よって、このような部分に通気孔2FTが設けられれば、当該部分における通気性を更に高めることができる。
【符号の説明】
【0043】
1・・おむつ
1B・・股下領域
1F・・前身頃領域
1R・・後身頃領域
2F・・フロントパッチ
2FT・・通気孔
2L,2R・・テープ
3BL,3BR・・立体ギャザー
3R・・ウェストギャザー
4・・カバーシート
4KL,4KR・・括れ
5・・バックシート
6C・・吸収体
6CH・・溝状部
7・・トップシート
7H・・溝状部
8・・サイドシート
4CKL,8KR・・括れ
4C,4SL,4SR,8EL,8ER,9ER・・糸ゴム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7