IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三菱自動車工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-車両の報知システム 図1
  • 特許-車両の報知システム 図2
  • 特許-車両の報知システム 図3
  • 特許-車両の報知システム 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-21
(45)【発行日】2023-08-29
(54)【発明の名称】車両の報知システム
(51)【国際特許分類】
   G02B 30/56 20200101AFI20230822BHJP
   B60K 35/00 20060101ALI20230822BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20230822BHJP
【FI】
G02B30/56
B60K35/00 Z
G08G1/16 C
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019144795
(22)【出願日】2019-08-06
(65)【公開番号】P2021026131
(43)【公開日】2021-02-22
【審査請求日】2022-07-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002424
【氏名又は名称】ケー・ティー・アンド・エス弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】相原 匡紀
【審査官】鈴木 俊光
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-045098(JP,A)
【文献】国際公開第2016/103418(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/115542(WO,A1)
【文献】特開2018-202927(JP,A)
【文献】特開2008-275677(JP,A)
【文献】特開2018-156173(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2015-0054024(KR,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0077417(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 30/56
B60K 35/00
G08G 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転席を有する車両の報知システムであって、
投影部で投影する画像を、前記運転席に対して立体像結像として表示する立体像結像装置と、
前記車両の周囲の障害物を検知する検知部と、
前記報知システムを制御する制御部と、
を備え、
前記立体像結像装置は、
前記投影部で投影する画像の光を前記運転席と異なる位置に反射させる鏡面部を有する鏡面体と、
前記画像のに対して前記鏡面体による反射が行われる反射状態と、前記画
像の光に対して前記鏡面体による反射が行われない非反射状態とを切り替える切替手段と、
を有し、
前記制御部は、前記車両の周囲の障害物が前記車両に接近した場合、前記切替手段を操作して、前記反射状態にする、
車両の報知システム。
【請求項2】
前記検知部は、前記車両の運転席と反対側の前方側端部から障害物までの距離を計測することで前記障害物を検知し、
前記制御部は、前記距離が所定値よりも小さい場合に、前記切替手段を操作して前記反射状態にする、
請求項1に記載の車両の報知システム。
【請求項3】
前記切替手段は、前記鏡面体の前記鏡面部を覆うカバー部と、前記カバー部を前記鏡面部から脱着する脱着部とを含み、
前記制御部は、前記距離が所定値よりも小さい場合に、前記脱着部を操作して前記カバー部を前記鏡面部から外す、
請求項2に記載の車両の報知システム。
【請求項4】
前記画像は、前記前方側端部の位置を示すコーナポールである、
請求項に記載の車両の報知システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転席を有する車両の報知システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両のコーナポールを光学的に表示する報知システムが開示されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1の報知システムでは、レーザー発振装置から出力されたレーザービームを、XYZスキャナと集光レンズとにより、空気中の1点にフォーカスさせて、空気をプラズマ化して発光させる。これにより、報知システムは、コーナポールと同等の形状の映像を、車両の運転席と反対側の前方側端部に表示する。また、特許文献1の報知システムは、障害物との距離を測定し、障害物に車両が近づくと、コーナポールの表示を点滅させることで、乗員に危険を報知する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-98724号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1の報知システムでは、コーナポールに代わって、コーナポールの映像を映し出すため、運転席のドライバ以外の乗員にも、この映像が見える。ドライバ以外にコーナポールが見えると、ドライバの運転操作によっては、ドライバ以外の乗員に不安を与えるという問題がある。
【0005】
一方、車両と障害物の距離が近い場合には、周囲の障害物にドライバが気付いていない場合もある。特許文献1の報知システムでは、映像を点滅させることでドライバおよびドライバ以外の乗員に障害物の接近を報知する。しかし、乗員は映像に注視していなければ点滅に気が付かない可能性もある。
【0006】
本発明の課題は、車両のドライバのみに車両の周囲の状態を報知しながらも、車両の周囲の障害物が接近した場合には、ドライバ以外の乗員に障害物の接近を的確に報知できる、車両の報知システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る車両の報知システムは、運転席を有する車両の報知システムである。車両の報知システムは、立体像結像装置と、検知部と、制御部と、を備える。立体像結像装置は、投影部で投影する画像を、運転席に対して立体像結像として表示する。検知部は、車両の周囲の障害物を検知する。制御部は、報知システムを制御する。立体像結像装置は、鏡面体と、切替手段と、を有する。鏡面体は、投影部で投影する画像の光を運転席と異なる位置に反射させる鏡面部を有する。切替手段は、光の反射を、反射状態と、非反射状態に切り替える。制御部は、車両の周囲の障害物が車両に接近した場合、切替手段を操作して、反射状態にする。
【0008】
この車両の報知システムによれば、車両の周囲の障害物が車両に接近していない場合、運転席のドライバのみに立体像結像として画像が表示される。これにより、ドライバのみに車両の周囲の状態を報知できる。一方、車両の周囲の障害物が車両に接近した場合、投影部で投影した画像から出る光を、運転席以外の位置に反射せることができる。これにより、運転席のドライバ以外の乗員が光を見ることができる。この結果、車両の運転席のドライバのみに車両の周囲の状態を報知しながらも、車両の周囲の障害物が接近した場合には、ドライバ以外の乗員に障害物の接近を的確に報知できる、車両の報知システムを提供できる。
【0009】
検知部は、車両の運転席と反対側の前方側端部から障害物までの距離を計測することで障害物を検知してもよい。制御部は、距離が所定値よりも小さい場合に、切替手段を操作して反射状態にしてもよい。
【0010】
この構成によれば、運転席から最も遠い距離にある前方側端部から障害物までの距離が所定値よりも小さい場合に、運転席のドライバ以外の乗員に車両の周辺状況を報知できる。
【0011】
切替手段は、カバー部と、脱着部と、を含んでもよい。カバー部は、鏡面体の鏡面部を覆ってもよい。脱着部は、カバー部を鏡面部から脱着してもよい。制御部は、距離が所定値よりも小さい場合に、脱着部を操作してカバー部を鏡面部から外してもよい。
【0012】
この構成によれば、簡単な構造によって、反射状態と非反射状態を切り替えることができる。
【0013】
画像は、前方側端部の位置を示すコーナポールであってもよい。
【0014】
この構成によれば、コーナポールを画像として映し出すので、運転席から最も遠い車両の前方側端部の状況を、ドライバが把握しやすい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、車両の運転席のドライバのみに車両の周囲の状態を報知しながらも、車両の周囲の障害物が接近した場合には、ドライバ以外の乗員に的確に報知できる、車両の報知システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態による車両の報知システムのシステム図。
図2】本発明の一実施形態による反射状態の立体像結像装置の概要を示す側面図。
図3】本発明の一実施形態による非反射状態の立体像結像装置の概要を示す側面図。
図4】本発明の一実施形態による制御部の制御フローを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0018】
図1に示すように、本発明の一実施形態による車両Cの報知システム1は、立体像結像装置2と、検知部4と、制御部6と、備える。車両Cは、ハンドル10が配置される運転席12を有する。車両Cは、運転席12以外に、運転席12の隣に配置された助手席14、後部座席16などの複数の座席を有する。本実施形態では、車両Cは、進行方向右側にハンドル10が配置される右ハンドル車である。車両Cは、運転席12と車幅方向反対側(本実施形態では左側)の前方側端部18を有する。前方側端部18は、運転席12のドライバ12aからは最も離れた位置の車両Cの端部であり、車両Cが曲がる際などに最も注意が必要な部位である。
【0019】
立体像結像装置2は、図2および図3に示すように、投影部21で投影する画像N1を、運転席12に対して立体像結像N2として表示する。画像N1は、前方側端部18の位置を示すコーナポールPである。すなわち、投影部21には、コーナポールPの画像N1が投影される。
【0020】
図1に示すように、立体像結像N2は、運転席12のドライバ12aから前方側端部18を結んだ仮想線X上に配置される。これにより、ドライバ12aは、立体像結像N2が、あたかも前方側端部18にコーナポールとして存在するかのように見える。しかし、ドライバ12a以外の乗員14a、および乗員16a、乗員16bには、立体像結像N2は見えない。
【0021】
図2に示すように、立体像結像装置2は、投影部21と、プレート22と、鏡面体23と、切替手段24と、有する。投影部21は、画像N1を映し出すためのディスプレである。プレート22は、例えば特開2018-124534号公報の明細書に記載された立体像結像装置に用いるプレートであり、投影部21で発した光を制御して、プレート22を挟んで投影部21と反対側に、立体像結像N2を生成する。ドライバ12aは、プレート22が生成した立体像結像N2を視認する。
【0022】
鏡面体23は、投影部21で投影する画像N1の光を運転席12と異なる位置に反射させる。鏡面体23は、プレート22と異なる角度で配置される。鏡面体23は、光を反射する鏡面部23aを有する。鏡面部23aは、投影部21で投影された画像N1の光を、反射する。鏡面体23で反射された画像の光Rは、プレート22が生成する立体像結像N2とは異なる位置で結像する。これにより、鏡面体23で反射された光Rが結像した画像は、ドライバ12aとは異なる車両Cの乗員によって視認される。本実施形態では、鏡面体23は、投影部21で投影された画像N1の光Rを、ドライバ12aの左隣りに着座した助手席14の乗員14aが視認するように、反射し結像させる(図1の一点鎖線参照)。
【0023】
切替手段24は、鏡面体23の光の反射を、反射状態と、非反射状態に切り替える。図2は、切替手段24が鏡面体23の光の反射を反射状態に切り替えた場合を示す。また、図3は、切替手段24が鏡面体23の光の反射を非反射状態に切り替えた場合を示す。
【0024】
図2に示すように、切替手段24が鏡面体23の光の反射を反射状態に切り替えた場合、鏡面体23は、投影部21で投影された画像N1の光を反射する。これにより、プレート22が生成した立体像結像N2と、鏡面体23が反射した光Rが立体像結像N2と異なる位置で結像した画像と、が生成される。立体像結像N2と異なる位置で結像した画像は、投影部21で投影された画像N1を暈した画像、もしくは画像N1に含まれる一部の光のみが見える画像となる。このため、切替手段24が鏡面体23を反射状態に切り替えた場合、ドライバ12aは、投影部21で投影された画像N1の光を、立体像結像N2として視認する。さらに、ドライバ12aとは異なる車両Cの乗員は、投影部21で投影された画像N1の光を、鏡面体23が反射した光Rが立体像結像N2と異なる位置で結像した画像として視認する。
【0025】
図3に示すように、切替手段24が鏡面体23を非反射状態に切り替えた場合、鏡面体23は、投影部21で投影された画像N1の光を反射しない。これにより、プレート22が生成した立体像結像N2のみが生成される。このため、切替手段24が鏡面体23を反射状態に切り替えた場合、ドライバ12aは、投影部21で投影された画像N1の光を、立体像結像N2として視認する。一方で、ドライバ12aとは異なる車両Cの乗員は、投影部21で投影された画像N1の光を視認することはない。これにより、ドライバ12aは、他の車両Cの乗員に知られることなく、車両Cの前方側端部18の位置を立体像結像N2によって認識することができる。
【0026】
図2および図3に示すように、切替手段24は、カバー部25と、脱着部26と、含む。
【0027】
カバー部25は、切替手段24が鏡面体23を非反射状態に切り替えた場合、鏡面体23の鏡面部23aを覆う。本実施形態では、カバー部25は、鏡面体23の鏡面部23aよりも大きい板状部材である。カバー部25は、脱着部26によって下方にスライドすることで、鏡面体23の鏡面部23aを露出させる。
【0028】
脱着部26は、カバー部25を鏡面体23の鏡面部23aから脱着する。脱着部26は、切替手段24が鏡面体23を反射状態に切り替えた場合、カバー部25を鏡面体23の鏡面部23aから移動させる。これにより、鏡面体23の鏡面部23aが、カバー部25から露出する。また、脱着部26は、切替手段24が鏡面体23を非反射状態に切り替えた場合、カバー部25を上方にスライドさせて鏡面体23の鏡面部23aを覆う位置に移動させる。これにより、鏡面体23の鏡面部23aが、カバー部25で覆われる。
【0029】
図1に示すように、検知部4は、車両Cの周囲の障害物を検知する。検知部4は、車両Cの運転席12の反対側の前方側端部18から障害物までの距離を計測することで障害物を検知する。本実施形態では、検知部4は、車両Cの前方側端部18の付近に配置され、超音波の反射によって車両Cの前方側端部18から障害物までの距離を計測する、例えば超音波センサである。
【0030】
制御部6は、報知システム1を制御する。制御部6は、車両Cの周囲の障害物が車両Cに接近した場合、切替手段24を操作して、鏡面体23の光の反射を反射状態にする。制御部6は、前方側端部18から障害物までの距離が所定値よりも小さい場合に、切替手段24を操作して鏡面体23の光の反射を反射状態にする。制御部6は、前方側端部18から障害物までの距離が所定値よりも小さい場合に、脱着部26を操作してカバー部25を下方にスライドさせて鏡面体23の鏡面部23aから外す。
【0031】
次に、図4のフローチャートを用いて、報知システム1の制御の内容を説明する。
【0032】
投影部21は、画像N1を投影する(S1)。制御部6は、検知部4からの出力によって、前方側端部18から障害物までの距離が所定値以下か否かを判定する(S2)。制御部6は、前方側端部18から障害物までの距離が所定値以下であると判断した場合(S2,Yes)、切替手段24の脱着部26を操作してカバー部25を下方にスライドさせる(S3)。これにより、鏡面体23の光の反射を、反射状態に切り替える。
【0033】
制御部6は、前方側端部18から障害物までの距離が所定値より大きいか否かを判定する(S4)。制御部6は、前方側端部18から障害物までの距離が所定値より大きいと判断した場合(S4,Yes)、切替手段24の脱着部26を操作してカバー部25を上方にスライドさせて(S5)、制御をリターンさせる。これにより、鏡面体23の光の反射を、非反射状態に戻す。
【0034】
制御部6は、前方側端部18から障害物までの距離が所定値より小さい場合(S2,No)、制御をリターンさせる。また、制御部6は、前方側端部18から障害物までの距離が所定値以下である場合(S4,No)、制御をS3に戻す。
【0035】
以上説明した通り、本発明によれば、車両の運転席のドライバのみに車両の周囲の状態を報知しながらも、車両の周囲の障害物が接近した場合には、ドライバ以外の乗員に的確に報知できる、車両の報知システムを提供できる。
【0036】
<他の実施形態>
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。特に、本明細書に書かれた複数の変形例は必要に応じて任意に組合せ可能である。
【0037】
(a)上記実施形態では、切替手段24はカバー部25と脱着部26とによって、鏡面体23の光の反射を、反射状態と非反射状態とに切り替えたが、本発明はこれに限定されない。すなわち、切替手段24は、鏡面体23の鏡面部23aを露出させた状態と覆った状態とで切り替えることができればよく、シャッターやブラインド等で構成されてもよい。
【0038】
(b)上記実施形態では、鏡面体23が反射した光Rは、助手席14に着座した乗員14aが視認できる位置で結像したが、本発明はこれに限定されない。すなわち、鏡面体23が反射した光Rによる画像は、ドライバ12a以外の車両Cの乗員が視認できる位置で結像すればよく、結像する位置は車両Cの内部で任意に設定することができる。
【符号の説明】
【0039】
1:報知システム,2:立体像結像装置,12:運転席,
4:検知部,6:制御部,18:前方側端部,21:投影部,
23:鏡面体,23a:鏡面部,24:切替手段,25:カバー部,26:脱着部,
C:車両,N1:画像,N2:立体像結像,P:コーナポール
図1
図2
図3
図4