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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-21
(45)【発行日】2023-08-29
(54)【発明の名称】媒体処理装置及び自動取引装置
(51)【国際特許分類】
   G07D 11/40 20190101AFI20230822BHJP
   B65H 29/58 20060101ALI20230822BHJP
   B65H 31/24 20060101ALI20230822BHJP
【FI】
G07D11/40
B65H29/58 A
B65H31/24
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019213498
(22)【出願日】2019-11-26
(65)【公開番号】P2021086300
(43)【公開日】2021-06-03
【審査請求日】2022-08-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000000295
【氏名又は名称】沖電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100174104
【弁理士】
【氏名又は名称】奥田 康一
(72)【発明者】
【氏名】門田 健志
(72)【発明者】
【氏名】細川 和宏
(72)【発明者】
【氏名】須藤 育男
【審査官】平野 貴也
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-124644(JP,A)
【文献】特開2017-033558(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G07D 1/00 - 3/16,
9/00 - 13/00
G07F 19/00
B65H 29/58,
31/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部ユニットと下部ユニットとを備え、
前記上部ユニットと前記下部ユニットとに形成された、媒体を搬送する為の搬送路に、使用者との間で媒体の授受を行う媒体入出部と、媒体を鑑別する鑑別部と、媒体を一時的に保留する一時保留部と、再利用可能な媒体を収納する媒体収納庫と、再利用できない媒体を収納するリジェクト庫と、使用者が前記媒体入出部から取り忘れた取り忘れ媒体を収納する取り忘れ収納庫とが接続され、
前記媒体入出部と、前記鑑別部と、前記一時保留部と、前記リジェクト庫と、前記取り忘れ収納庫とが、前記上部ユニットに設けられ、
前記媒体収納庫が、前記下部ユニットに設けられ、
前記上部ユニットに設けられた前記リジェクト庫と前記取り忘れ収納庫は、上下方向に並べて配置され
前記搬送路は、
前記上部ユニットに設けられた、前記鑑別部を通る環状の第1環状搬送路と、前記上部ユニットと前記下部ユニットとを跨ぐように設けられた、前記鑑別部を通る環状の第2環状搬送路とを有し、
前記第1環状搬送路に、前記媒体入出部と、前記一時保留部とが接続され、
前記第2環状搬送路に、前記リジェクト庫と、前記取り忘れ収納庫と、前記媒体収納庫とが接続され、
前記下部ユニットには、
複数の前記媒体収納庫が前後方向に並べて設けられ、
さらに前記下部ユニットには、
前記媒体収納庫に補充する為の媒体又は前記媒体収納庫から回収した媒体を収納する補充回収庫と、前記補充回収庫から前記媒体収納庫に補充できなかった再利用できない媒体を収納する補充リジェクト庫とで構成され、前記補充回収庫が後側、前記補充リジェクト庫が前側に配置された補充回収カセットが、前記複数の媒体収納庫の後方に設けられ、
さらに前記下部ユニットには、
前記複数の媒体収納庫及び前記補充回収カセットの上方に、前記第2環状搬送路の一部が設けられ、
前記複数の媒体収納庫と前記補充回収庫は、それぞれの上面の後側に、前記第2環状搬送路との間で媒体を受け渡す為の受渡口が設けられている
ことを特徴とする媒体処理装置。
【請求項2】
前記リジェクト庫と前記取り忘れ収納庫は、一体に設けられている
ことを特徴とする請求項1に記載の媒体処理装置。
【請求項3】
前記リジェクト庫と前記取り忘れ収納庫は、前記上部ユニットに対して一体に着脱される
ことを特徴とする請求項2に記載の媒体処理装置。
【請求項4】
前記一時保留部は、前記上部ユニットの後部に設けられ、
前記リジェクト庫と前記取り忘れ収納庫は、
前記一時保留部の下方に設けられている
ことを特徴とする請求項3に記載の媒体処理装置。
【請求項5】
前記取り忘れ収納庫は、
前記第2環状搬送路のうち、前記媒体入出部に投入された媒体を前記媒体収納庫へと搬送する際、及び前記媒体収納庫に収納されている媒体を前記媒体入出部へと搬送する際に媒体が通らない箇所に接続されている
ことを特徴とする請求項に記載の媒体処理装置。
【請求項6】
前記取り忘れ媒体を、前記第1環状搬送路と前記第2環状搬送路を介する、前記鑑別部を通る搬送経路で、前記媒体入出部から前記取り忘れ収納庫へと搬送して収納する
ことを特徴とする請求項に記載の媒体処理装置。
【請求項7】
請求項1~のいずれかに記載の媒体処理装置を備えた
ことを特徴とする自動取引装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、媒体処理装置及び自動取引装置に関するものであり、例えば紙幣などの媒体を投入して所望の取引を行う現金自動預払機(ATM:Automatic Teller Machine)などに適用して好適なものである。
【背景技術】
【0002】
従来、金融機関などで使用される現金自動預払機では、使用者(例えば金融機関の顧客)との取引内容に応じて、使用者に紙幣や硬貨などの現金を入金させる入金取引や、使用者へ現金を出金する出金取引などの各種取引を行うようになっている。
【0003】
このような現金自動預払機は、例えば、紙幣の入出金に関する処理を行う紙幣入出金機を有している。またこの紙幣入出金機として、例えば、上部ユニットと下部ユニットとを有し、上部ユニットと下部ユニットとに形成された、紙幣を搬送する為の搬送路に、使用者との間で紙幣の授受を行う接客部と、紙幣を鑑別する鑑別部と、紙幣を一時的に保留する一時保留部と、再利用可能な紙幣を金種ごとに収納する複数の紙幣収納庫と、再利用すべきでない紙幣を収納するリジェクト庫と、使用者が接客部から取り忘れた紙幣を収納する取り忘れ収納庫とが接続されたものがある。この紙幣入出金機では、上部ユニット側に、接客部と、鑑別部と、一時保留部と、リジェクト庫が配置され、下部ユニット側に、複数の紙幣収納庫と取り忘れ収納庫とが前後方向に並べて配置されていて、保守作業時に下部ユニットを前方もしくは後方に引き出すことで、複数の紙幣収納庫と取り忘れ収納庫にアクセスできるようになっていた(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-124644号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の紙幣入出金機では、下部ユニット側に、複数の紙幣収納庫と取り忘れ収納庫とが前後方向に並べて配置されている為、下部ユニットの前後方向の長さをこれ以上短くすることが難しく、下部ユニットを引き出す為に紙幣入出金機の前方もしくは後方に必要な保守作業スペースを狭小化することが困難であるという問題を有していた。
【0006】
本発明は以上の点を考慮したものであり、保守作業スペースを狭小化し得る媒体処理装置及び自動取引装置を提案しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる課題を解決するため本発明の媒体処理装置においては、上部ユニットと下部ユニットとを備え、前記上部ユニットと前記下部ユニットとに形成された媒体を搬送する為の搬送路に、使用者との間で媒体の授受を行う媒体入出部と、媒体を鑑別する鑑別部と、媒体を一時的に保留する一時保留部と、再利用可能な媒体を収納する複数の媒体収納庫と、再利用できない媒体を収納するリジェクト庫と、使用者が媒体入出部から取り忘れた媒体を収納する取り忘れ収納庫とが接続されていて、前記媒体入出部と、前記鑑別部と、前記一時保留部と、前記リジェクト庫と、前記取り忘れ収納庫とが、前記上部ユニットに設けられ、前記複数の媒体収納庫が、前記下部ユニットに設けられ、前記上部ユニットに設けられた前記リジェクト庫と前記取り忘れ収納庫は、上下方向に並べて配置され、前記搬送路は、前記上部ユニットに設けられた、前記鑑別部を通る環状の第1環状搬送路と、前記上部ユニットと前記下部ユニットとを跨ぐように設けられた、前記鑑別部を通る環状の第2環状搬送路とを有し、前記第1環状搬送路に、前記媒体入出部と、前記一時保留部とが接続され、前記第2環状搬送路に、前記リジェクト庫と、前記取り忘れ収納庫と、前記媒体収納庫とが接続され、前記下部ユニットには、複数の前記媒体収納庫が前後方向に並べて設けられ、さらに前記下部ユニットには、前記媒体収納庫に補充する為の媒体又は前記媒体収納庫から回収した媒体を収納する補充回収庫と、前記補充回収庫から前記媒体収納庫に補充できなかった再利用できない媒体を収納する補充リジェクト庫とで構成され、前記補充回収庫が後側、前記補充リジェクト庫が前側に配置された補充回収カセットが、前記複数の媒体収納庫の後方に設けられ、さらに前記下部ユニットには、前記複数の媒体収納庫及び前記補充回収カセットの上方に、前記第2環状搬送路の一部が設けられ、前記複数の媒体収納庫と前記補充回収庫は、それぞれの上面の後側に、前記第2環状搬送路との間で媒体を受け渡す為の受渡口が設けられている。
【0008】
このように、リジェクト庫と取り忘れ収納庫とを上下方向に並べて上部ユニット側に設けたことにより、下部ユニットの前後方向の長さを、従来と比べて短くすることができる。
【発明の効果】
【0009】
かくして本発明は、保守作業スペースを狭小化し得る媒体処理装置及び自動取引装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】現金自動預払機の外観構成を示す斜視図である。
図2】紙幣入出金機の内部構成を示す側断面図である。
図3】下部ユニットを前方に引き出した状態の紙幣入出金機を示す側断面図である。
図4】上部ユニットの内部構成を示す拡大図である。
図5】リジェクト庫と取り忘れ収納庫の外観構成を示す斜視図である。
図6】下部ユニットの内部構成を示す拡大図である。
図7】補充回収カセットの外観構成を示す斜視図である。
図8】取込処理時の紙幣の搬送経路を示す図である。
図9】補充処理時の紙幣の搬送経路を示す図である。
図10】回収処理時の紙幣の搬送経路を示す図である。
図11】取込処理時の紙幣の搬送経路の他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、発明を実施するための形態(以下実施の形態とする)について、図面を用いて説明する。
【0012】
[1.現金自動預払機の全体構成]
図1に、自動取引装置としての現金自動預払機1の外観を示す。この現金自動預払機1は、例えば金融機関や各種商業施設などに設置され、使用者(例えば金融機関や商業施設の顧客)との間で、入金処理や出金処理などの現金に関する取引を行う装置である。尚、ここでは、使用者と対峙する正面側を現金自動預払機1の前側、その反対側を現金自動預払機1の後側、現金自動預払機1の前側に対峙する使用者から見て上側、下側、左側、右側を、それぞれ現金自動預払機1の上側、下側、左側、右側と定義する。
【0013】
現金自動預払機1は、略箱型の筐体2によって外観を形成している。筐体2は、その前側に対峙した使用者が紙幣の投入やタッチパネルによる操作などをし易い箇所に、応対部3が設けられている。応対部3は、使用者との間で例えば現金やカードなどを直接やり取りすると共に、取引に関する情報の通知や操作指示の受付を行うようになっており、通帳入出口4、カード入出口5、硬貨入出金口6、紙幣入出金口7及び操作表示部8などが設けられている。
【0014】
通帳入出口4は、通帳が挿入され、また排出する部分である。通帳入出口4の奥側には、通帳の裏表紙などに設けられた磁気記録部から磁気情報を読み取ったり、通帳に取引の内容を記録したりする通帳処理部(図示せず)が設けられている。カード入出口5は、キャッシュカードなどの各種カードが挿入または排出される部分である。カード入出口5の奥側には、各種カードに磁気記録された口座番号などの読み取りを行うカード処理部(図示せず)が設けられている。
【0015】
硬貨入出金口6は、顧客によって入金される硬貨が投入されると共に、使用者へ出金する硬貨が排出される部分である。紙幣入出金口7は、顧客によって入金される紙幣が投入されると共に、使用者へ出金する紙幣が排出される部分である。この硬貨入出金口6及び紙幣入出金口7は、それぞれシャッタを駆動することにより開放又は閉塞するようになっている。操作表示部8は、取引に際して操作画面や取引内容などを表示する液晶表示パネルと、使用者の入力操作を検知するタッチセンサとが一体化されたタッチパネルである。
【0016】
筐体2の内部には、現金自動預払機1全体を統括制御する主制御部9や、硬貨に関する種々の処理を行う硬貨入出金機(図示せず)、紙幣に関する種々の処理を行う紙幣入出金機10などが設けられている。主制御部9は、図示しないCPU(Central Processing Unit)を中心に構成され、図示しないROM(Read Only Memory)やフラッシュメモリ等から所定のプログラムを読み出して実行することにより、入金処理や出金処理等の種々の処理を行う。また主制御部9は、内部にRAM(Random Access Memory)、ハードディスクドライブやフラッシュメモリ等でなる記憶部を有しており、この記憶部に種々の情報を記憶させる。
【0017】
[2.紙幣入出金機の構成]
次に、図2を用いて、紙幣入出金機10の内部構成について説明する。尚、図2は、紙幣入出金機10の側断面図である。紙幣入出金機10は、大きく分けて、全体の上側部分を占有する上部ユニット10Uと、全体の下側部分を占有する下部ユニット10Lと、全体の外枠部分を形成するとともに、上部ユニット10Uと下部ユニット10Lとを保持するフレーム10Fとで構成されている。
【0018】
フレーム10Fは、筐体2(図1)の内部に取り付けられている。フレーム10Fは、上部ユニット10Uと下部ユニット10Lを、それぞれ前後方向に延びるスライドレール(図示せず)を介して保持している。この為、紙幣入出金機10は、図3(A)に示すように、筐体2の前扉(もしくは後扉)が開放された状態で、フレーム10Fから上部ユニット10Uと下部ユニット10Lをそれぞれ前方(もしくは後方)へ引き出すことができ、また引き出した上部ユニット10Uと下部ユニット10Lをそれぞれフレーム10F側に押し入れて、フレーム10F内に格納できるようになっている。
【0019】
尚、紙幣入出金機10は、図3(A)に示すように、前方に保守作業スペースが設けられている場合には、現金自動預払機1の筐体2(図1)の前扉を開放して、上部ユニット10Uと下部ユニット10Lのそれぞれをフレーム10Fから前方に(つまり前方の保守作業スペースに)引き出すようになっている。尚、図3(A)は、フレーム10Fから下部ユニット10Lを前方に引き出した例である。また一方で、紙幣入出金機10は、後方に保守作業スペースが設けられている場合には、筐体2の後扉を開放して、上部ユニット10Uと下部ユニット10Lのそれぞれをフレーム10Fから後方に(つまり後方の保守作業スペースに)引き出すようになっている。
【0020】
[2-1.上部ユニットの構成]
つづけて、図4(A)に示す拡大図を用いて、上部ユニット10Uについてさらに詳しく説明する。この図4(A)に示すように、上部ユニット10Uには、全体を統括制御する紙幣制御部11と、接客部12と、上前搬送部13と、鑑別部14と、上後搬送部15と、一時保留部16と、リジェクト庫17と、取り忘れ収納庫18が設けられている。
【0021】
紙幣制御部11は、図示しないCPUを中心に構成され、図示しないROMやフラッシュメモリなどから所定のプログラムを読み出して実行することにより、紙幣の搬送先を決定する処理や各部の動作を制御する処理など、種々の処理を行う。また紙幣制御部11は、内部にRAMやフラッシュメモリなどでなる記憶部を有しており、この記憶部に種々の情報を記憶させる。尚、図4(A)に示す紙幣制御部11の位置は、一例であり、他の位置に設けられていてもよい。
【0022】
媒体入出部としての接客部12は、上部ユニット10U内部の前側上部に配置されていて、使用者との間で紙幣を受け渡すことにより、使用者に紙幣を入金させたり、使用者へ紙幣を出金したりする部分である。接客部12は、紙幣を収容する収容器30を有している。この収容器30は、上端が紙幣入出金口7(図1)と繋がる開口部となっている。またこの収容器30は、底部の前端に、収容器30に投入された紙幣を取り込む為の取込口30aが設けられ、底部の後端に、収容器30へ紙幣を放出する為の放出口30bが設けられている。接客部12は、収容器30の開口部を可動式のシャッタ31により開放又は閉塞するようになっている。また接客部12は、収容器30の取込口30aと接客部12の前側下方に位置する上前搬送部13とを繋ぐ搬送路32と、収容器30の放出口30bと接客部12の後方に位置する上後搬送部15とを繋ぐ搬送路33とを有している。
【0023】
この接客部12は、収容器30内に収容された紙幣を1枚ずつに分離しながら取込口30aから取り込み、図中丸印で示す搬送ローラにより搬送路32に沿って上前搬送部13へと搬送する。また接客部12は、上後搬送部15から搬送されてきた紙幣を、搬送ローラにより搬送路33に沿って収容器30まで搬送し、放出口30bから収容器30内へ放出させるようになっている。
【0024】
上前搬送部13は、上部ユニット10U内部の前側下部に配置されていて、上前搬送部13のほぼ中央に位置する分岐箇所P1を有する搬送路40(40A~40C)と、分岐箇所P1に設けられた、紙幣の搬送経路を切り替える切替器41とを有している。搬送路40は、3本の搬送路40A、40B、40Cにより構成されている。搬送路40Aは、分岐箇所P1から上方に位置する接客部12の搬送路32へと延び、搬送路32と接続されている。搬送路40Bは、分岐箇所P1から後方に位置する鑑別部14へと延び、鑑別部14と接続されている。搬送路40Cは、分岐箇所P1から下方に位置する下部ユニット10Lの前部へと延び、下部ユニット10Lの前部と接続されている。尚、搬送路40Cの先端は、下部ユニット10Lとの間で紙幣を受け渡す為の上部ユニット側受渡口T1Uとなっている。
【0025】
この上前搬送部13は、紙幣制御部11の制御に従って2ウェイの切替器41を動作させることで、分岐箇所P1を通る紙幣の搬送経路を、搬送路40Aと搬送路40Bを繋ぐ搬送経路(つまり接客部12の搬送路32と鑑別部14とを繋ぐ搬送経路)、又は搬送路40Bと搬送路40Cを繋ぐ搬送経路(つまり鑑別部14と下部ユニット10Lの前部とを繋ぐ搬送経路)に切り替えることができるようになっている。そして、上前搬送部13は、このようにして切り替えた搬送経路に沿って搬送ローラにより紙幣を搬送するようになっている。
【0026】
これにより、上前搬送部13は、例えば、接客部12から搬送されてきた紙幣を、搬送路40Aと搬送路40Bを通る搬送経路で、鑑別部14へと搬送したり、鑑別部14から搬送されてきた紙幣を、搬送路40Bと搬送路40Cを通る搬送経路で、下部ユニット10Lへと搬送したり、下部ユニット10Lから搬送されてきた紙幣を、搬送路40Bと搬送路40Cを通る搬送経路で、鑑別部14へと搬送したりすることができるようになっている。
【0027】
鑑別部14は、接客部12の下方且つ上前搬送部13の後方に配置されている。鑑別部14は、前方の上前搬送部13及び後方の上後搬送部15と接続された直線状の搬送路50を有していて、この搬送路50に沿って複数のセンサが配置されている。鑑別部14は、搬送路50に沿って搬送ローラにより紙幣を搬送しながら、複数のセンサから得られる検知結果をもとに、紙幣の金種、真偽、正損(損傷しているか否か)などを判断すると共に搬送状態を認識し、これらを鑑別結果として、紙幣制御部11に送るようになっている。
【0028】
上後搬送部15は、接客部12及び鑑別部14の後方に位置している。この上後搬送部15は、図4(B)にデフォルメした拡大図を示すように、4つの分岐箇所P2~P5を有する搬送路60(60A~60H、60J)と、4つの分岐箇所P2~P5のそれぞれに設けられた、4つの切替器61~64とを有している。
【0029】
搬送路60は、9本の搬送路60A~60H、60Jにより構成されている。搬送路60Aは、接客部12の後方近傍に位置する分岐箇所P2から前方に位置する接客部12の搬送路33へと延び、搬送路33と接続されている。搬送路60Bは、分岐箇所P2から上方に位置する一時保留部16へと延び、一時保留部16と接続されている。搬送路60Cは、分岐箇所P2から、分岐箇所P2の後方ななめ下で鑑別部14の後方近傍に位置する分岐箇所P3へと延びている。搬送路60Dは、分岐箇所P3から前方に位置する鑑別部14の搬送路50へと延び、この搬送路50と接続されている。搬送路60Eは、分岐箇所P3から、分岐箇所P3の後方でリジェクト庫17の前方近傍に位置する分岐箇所P4へと延びている。
【0030】
搬送路60Fは、分岐箇所P4から後方に位置するリジェクト庫17へと延び、リジェクト庫17と接続されている。搬送路60Gは、分岐箇所P4から分岐箇所P4の下方で取り忘れ収納庫18の前方近傍に位置する分岐箇所P5へと延びている。搬送路60Hは、分岐箇所P5から後方に位置する取り忘れ収納庫18へと延び、取り忘れ収納庫18と接続されている。搬送路60Jは、分岐箇所P5から下方に位置する下部ユニット10Lの後部へと延び、下部ユニット10Lの後部と接続されている。尚、搬送路60Jの先端は、下部ユニット10Lとの間で紙幣を受け渡す為の上部ユニット側受渡口T2Uとなっている。
【0031】
この上後搬送部15は、紙幣制御部11の制御に従って分岐箇所P2に設けられた3ウェイの切替器61を動作させることで、分岐箇所P2を通る紙幣の搬送経路を、搬送路60Aと搬送路60Bを繋ぐ搬送経路(つまり接客部12の搬送路33と一時保留部16とを繋ぐ搬送経路)、搬送路60Aと搬送路60Cを繋ぐ搬送経路(つまり接客部12の搬送路33と分岐箇所P3とを繋ぐ搬送経路)、搬送路60Bと搬送路60Cとを繋ぐ搬送経路(つまり一時保留部16と分岐箇所P3とを繋ぐ搬送経路)のいずれかに切り替えることができるようになっている。
【0032】
また上後搬送部15は、分岐箇所P3に設けられた2ウェイの切替器62を動作させることで、分岐箇所P3を通る紙幣の搬送経路を、搬送路60Cと搬送路60Dを繋ぐ搬送経路(つまり分岐箇所P2と鑑別部14とを繋ぐ搬送経路)、または搬送路60Dと搬送路60Eを繋ぐ搬送経路(つまり鑑別部14と分岐箇所P4とを繋ぐ搬送経路)に切り替えることができるようになっている。
【0033】
さらに上後搬送部15は、分岐箇所P4に設けられた3ウェイの切替器63を動作させることで、分岐箇所P4を通る紙幣の搬送経路を、搬送路60Eと搬送路60Fを繋ぐ搬送経路(つまり分岐箇所P3とリジェクト庫17とを繋ぐ搬送経路)、搬送路60Eと搬送路60Gを繋ぐ搬送経路(つまり分岐箇所P3と分岐箇所P5とを繋ぐ搬送経路)、搬送路60Fと搬送路60Gを繋ぐ搬送経路(つまりリジェクト庫17と分岐箇所P5とを繋ぐ搬送経路)のいずれかに切り替えることができるようになっている。
【0034】
さらに上後搬送部15は、分岐箇所P5に設けられた2ウェイの切替器64を動作させることで、分岐箇所P5を通る紙幣の搬送経路を、搬送路60Gと搬送路60Jを繋ぐ搬送経路(つまり分岐箇所P4と下部ユニット10Lの後部とを繋ぐ搬送経路)、または搬送路60Hと搬送路60Jを繋ぐ搬送経路(つまり取り忘れ収納庫18と下部ユニット10Lの後部とを繋ぐ搬送経路)に切り替えることができるようになっている。
【0035】
そして、上後搬送部15は、このようにして切り替えた搬送経路に沿って搬送ローラにより紙幣を搬送するようになっている。
【0036】
これにより、上後搬送部15は、例えば、鑑別部14から搬送されてきた紙幣を、搬送路60D、60C、60Aを通る搬送経路で、接客部12へと搬送したり、鑑別部14から搬送されてきた紙幣を、搬送路60D、60C、60Bを通る搬送経路で一時保留部16へと搬送したり、鑑別部14から搬送されてきた紙幣を、搬送路60D、60E、60Fを通る搬送経路で、リジェクト庫17へと搬送したり、鑑別部14から搬送されてきた紙幣を、搬送路60D、60E、60G、60Jを通る搬送経路で、下部ユニット10Lへと搬送したりすることができるようになっている。
【0037】
また上後搬送部15は、例えば、一時保留部16から搬送されてきた紙幣を、搬送路60B、60C、60Dを通る搬送経路で鑑別部14へと搬送したり、一時保留部16から搬送されてきた紙幣を、搬送路60B、60Aを通る搬送経路で、接客部12へと搬送したりすることができるようになっている。
【0038】
さらに上後搬送部15は、例えば、下部ユニット10Lから搬送されてきた紙幣を、搬送路60J、60G、60E、60Dを通る搬送経路で、鑑別部14へと搬送したり、下部ユニット10Lから搬送されてきた紙幣を、搬送路60J、60G、60Fを通る搬送経路で、リジェクト庫17へと搬送したり、下部ユニット10Lから搬送されてきた紙幣を、搬送路60J、60Hを通る搬送経路で、取り忘れ収納庫18へと搬送したりすることができるようになっている。
【0039】
一時保留部16は、上後搬送部15の後方ななめ上で上部ユニット10U内部の後側上部に位置している。この一時保留部16は、例えばテープ方式であり、上後搬送部15から搬送されてきた紙幣をテープとともにドラムの周側面に巻き付けて収納する。また一時保留部16は、紙幣を繰り出す場合、ドラムの周側面からテープと共に紙幣を引き剥がし、これを上後搬送部15に引き渡すようになっている。
【0040】
リジェクト庫17は、一時保留部16の下方且つ上後搬送部15の後方に位置していて、例えば損傷の程度が大きく出金すべきで無いと判断されたリジェクト紙幣を収納する部分である。このリジェクト庫17は、上後搬送部15から紙幣(つまりリジェクト紙幣)が搬送されてくると、この紙幣を内部の収納空間へ放出して収納する。
【0041】
取り忘れ収納庫18は、リジェクト庫17の下方に配置されている。つまり、リジェクト庫17と取り忘れ収納庫18は、一時保留部16の下方且つ上後搬送部15の後方に、上下方向に並べて配置されている。この取り忘れ収納庫18は、出金取引時に、使用者が接客部12の収容器30から取り忘れた紙幣(取り忘れ紙幣)を収納する部分である。この取り忘れ収納庫18は、上後搬送部15から紙幣(つまり取り忘れ紙幣)が搬送されてくると、この紙幣を内部の収納空間へ放出して収納する。
【0042】
リジェクト庫17と取り忘れ収納庫18は、図5に示すように1つの直方体状のフレームRfにより一体に保持されていて、上部ユニット10Uがフレーム10Fから前方(もしくは後方)に引き出され、さらに一時保留部16が後方にスライドさせられた状態で、上部ユニット10Uに対してこのフレームRfごと上下方向に着脱可能となっている。このフレームRfは、例えば後扉RfDを開けることで、リジェクト庫17の収納空間と取り忘れ収納庫18の収納空間にアクセスできるようになっている。つまり、紙幣入出金機10では、フレームRfを上部ユニット10Uから取り外して後扉RfDを開けることで、リジェクト庫17に収納されているリジェクト紙幣と取り忘れ収納庫18に収納されている取り忘れ紙幣を取り出すことができるようになっている。上部ユニット10Uの構成は、以上のようになっている。
【0043】
[2-2.下部ユニットの構成]
つづけて、図6に示す拡大図を用いて、下部ユニット10Lについてさらに詳しく説明する。この図6に示すように、下部ユニット10Lは、その上端部が下搬送部19となっていて、この下搬送部19の下方に下部フレーム20が設けられている。
【0044】
下部フレーム20は、上面が開口部となっている中空の直方体状であり、内部が、前後方向に複数(例えば4つ)の装填空間に区切られている。下部フレーム20の4つの装填空間には、再利用(リサイクル)可能な紙幣を収納する3つの紙幣収納庫21(21A~21C)と、現金自動預払機1に補充する紙幣及び現金自動預払機1から回収する紙幣を収納する1つの補充回収カセット22とが装填されている。尚、補充回収カセット22は、4つの装填空間のうち、1番後ろの装填空間に装填されている。
【0045】
また下部フレーム20の右側面の上端(もしくは左側面の上端)には、前後方向を回転軸とする図示しない蝶番が設けられている。下部フレーム20は、この蝶番により下搬送部19を回動可能に支持している。つまり、下部フレーム20は、この蝶番を介して下搬送部19が回動されることで、上面の開口部を閉塞または開放できるようになっている。そして下部フレーム20は、上面の開口部を開放すると、各装填空間から紙幣収納庫21や補充回収カセット22を取り出したり、各装填空間に紙幣収納庫21や補充回収カセット22を装填したりできる状態となる。よって、現金自動預払機1では、下部ユニット10Lがフレーム10Fから前方(もしくは後方)に引き出され、さらに下搬送部19が回動されて下部フレーム20の上面の開口部が開放された状態で、各装填空間から紙幣収納庫21や補充回収カセット22を取り出されたり、各装填空間に紙幣収納庫21や補充回収カセット22が装填されたりするようになっている。
【0046】
媒体収納庫としての紙幣収納庫21(21A~21C)は、何れも同様に構成されたカセットであり、上下方向に長い直方体状となっている。各紙幣収納庫21の内部には、紙幣を集積して収納する収納空間70が設けられている。さらに各紙幣収納庫21の内部には、収納空間70の上方(つまり各紙幣収納庫21の内部の上端部)に、紙幣の分離及び放出を行う分離放出部71と、紙幣を搬送する搬送部72が、前後方向に並べて設けられている。具体的には、搬送部72は、各紙幣収納庫21の内部の後側に配置されていて、この搬送部72の前方に、分離放出部71が配置されている。この為、各紙幣収納庫21は、上面の後部に、下搬送部19と搬送部72との間で紙幣を受け渡す為の受渡口73が設けられている。
【0047】
各紙幣収納庫21は、紙幣収納時には、下搬送部19から搬送されてきた紙幣を搬送部72により収納空間70へと搬送して分離放出部71により収納空間70に放出して集積する。また各紙幣収納庫21は、紙幣繰り出し時には、収納空間70に集積されている紙幣を分離放出部71により上から1枚ずつに分離し、その紙幣を搬送部72により下搬送部19へと搬送して下搬送部19に引き渡すようになっている。尚、各紙幣収納庫21は、それぞれ収納すべき紙幣の金種が予め設定されている。
【0048】
補充回収カセット22は、補充回収庫23と補充リジェクト庫24とが一体になったカセットであり、補充回収カセット22の後部が補充回収庫23、前部が補充リジェクト庫24となっている。補充リジェクト庫24は、紙幣収納庫21と比較して上下方向及び左右方向の長さが同等である一方、前後方向の長さが1/3程度となっている。この補充リジェクト庫24の内部には、紙幣を収納する収納空間80が設けられている。さらに補充リジェクト庫24の内部には、収納空間80の上方(つまり補充リジェクト庫24の内部の上端部)に、紙幣を搬送して収納空間80に放出する搬送部81が設けられている。またこの補充回収カセット22の上面には、下搬送部19から搬送部81へと紙幣を引き渡す為の引渡口82が設けられている。この補充リジェクト庫24は、下搬送部19から搬送されてきた紙幣を搬送部81により収納空間80へ放出して収納する。
【0049】
補充回収庫23は、紙幣収納庫21とほぼ同様の構成で、且つほぼ同サイズとなっている。すなわち補充回収庫23の内部には、紙幣収納庫21と同様、収納空間90と、分離放出部91と、搬送部92とが設けられている。ここで、搬送部92は、補充回収庫23の内部の後側に配置されている。この為、補充回収庫23も、紙幣収納庫21と同様、上面の後部に、下搬送部19と搬送部92との間で紙幣を受け渡す為の受渡口93が設けられている。補充回収庫23は、このような構成でなり、紙幣収納庫21と同様にして、紙幣を収納または繰り出すことができるようになっている。
【0050】
尚、補充リジェクト庫24は、紙幣収納庫21及び補充回収庫23と比較して前後方向の長さが1/3程度である為、収納空間80の前後方向の長さが、紙幣収納庫21の収納空間70及び補充回収庫23の収納空間90の前後方向の長さより短くなっている。一方で、補充リジェクト庫24は、収納空間80の上方に分離放出部を設ける為のスペースが必要ない為、収納空間80の上下方向の長さが、紙幣収納庫21の収納空間70及び補充回収庫23の収納空間90の上下方向の長さより長くなっている。
【0051】
さらに補充回収カセット22は、図7(A)、(B)、(C)に示すように、補充リジェクト庫24の一部(搬送部81よりも下側に位置する部分であり、収納空間80が配置されている部分)24aが補充回収庫23に対して回動可能な扉となっている。以下、この一部24aを、外扉24aと呼ぶ。具体的に、補充回収カセット22は、例えば、補充回収庫23の右側面の前端(もしくは左側面の前端)と、外扉24aの右側面の後端(もしくは左側面の前端)とを繋ぐ、上下方向を回転軸とする図示しない蝶番により、補充回収庫23に対して外扉24aが回動可能となっている。さらにこの外扉24aには、補充回収庫23と対向する後面に回動可能な内扉83が設けられている。
【0052】
この補充回収カセット22は、図7(A)に示すように、補充回収庫23に対して外扉24aを閉じると直方体状の1つのカセットとなり、この状態で、下部フレーム20に装填されるようになっている。さらにこの補充回収カセット22は、例えば保守作業時に、下部フレーム20から取り出されて、図7(B)に示すように、補充回収庫23に対して外扉24aが開かれると、補充回収庫23の前面側から収納空間90が露出して、収納空間90へとアクセスできる状態(つまり紙幣の装填及び取り出しが可能な状態)となる。さらに補充回収カセット22は、図7(C)に示すように、外扉24aに設けられた内扉83が開かれると、補充リジェクト庫24の収納空間80が露出して、収納空間80へとアクセスできる状態(つまり紙幣の取り出しが可能な状態)となる。
【0053】
紙幣入出金機10では、このような構成を有する補充回収カセット22の補充回収庫23を、紙幣収納庫21と同様に機能させることもできる。この場合、紙幣入出金機10は、補充回収庫23を4つ目の紙幣収納庫21とする4カセットで運用することができる。
【0054】
一方で、紙幣入出金機10は、補充回収カセット22を、補充回収庫23に各紙幣収納庫21に補充する為の紙幣を収納したり、各紙幣収納庫21から回収した紙幣を収納したりする補充回収モードで動作させることもできる。この場合、紙幣入出金機10では、各紙幣収納庫21(21A~21C)を下部フレーム20に装填したり下部フレーム20から取り出したりすることなく、補充回収カセット22のみを下部フレーム20に装填したり下部フレーム20から取り出したりすることで、紙幣の補充、回収を行うことができる。この為、紙幣入出金機10では、補充回収カセット22を補充回収モードで動作させる場合、3つの紙幣収納庫21を着脱不可能なスタッカとして運用することもできる。
【0055】
図6に戻り、下搬送部19は、5つの分岐箇所P6~P10を有する搬送路100(100A~100H、100J~100L)と、5つの分岐箇所P6~P10のそれぞれに設けられた、切替器101、102、103、104、105とを有している。
【0056】
搬送路100は、11本の搬送路100A~100H、100J~100Lにより構成されている。搬送路100Aは、上部ユニット側受渡口T1U(図4(A))の下方で、且つ1番前の紙幣収納庫21Aの受渡口73の上方に位置する分岐箇所P6から、上方に位置する上部ユニット側受渡口T1Uへと延び、この上部ユニット側受渡口T1Uと接続されている。尚、搬送路100Aの先端は、上部ユニット側受渡口T1Uとの間で紙幣を受け渡す為の下部ユニット側受渡口T1Lとなっている。搬送路100Bは、分岐箇所P6から下方に位置する紙幣収納庫21Aの受渡口73へと延び、この受渡口73と接続されている。搬送路100Cは、分岐箇所P6から、分岐箇所P6の後方で前から2番目の紙幣収納庫21Bの受渡口73の上方に位置する分岐箇所P7へと延びている。
【0057】
搬送路100Dは、分岐箇所P7から下方に位置する紙幣収納庫21Bの受渡口73へと延び、この受渡口73と接続されている。搬送路100Eは、分岐箇所P7から、分岐箇所P7の後方で前から3番目の紙幣収納庫21Cの受渡口73の上方に位置する分岐箇所P8へと延びている。搬送路100Fは、分岐箇所P8から下方に位置する紙幣収納庫21Cの受渡口73へと延び、この受渡口73と接続されている搬送路100Gは、分岐箇所P8の後方で補充リジェクト庫24の引渡口82の上方に位置する分岐箇所P9へと延びている。搬送路100Hは、分岐箇所P8から、補充リジェクト庫24の引渡口82へと延び、この引渡口82と接続されている。
【0058】
搬送路100Jは、分岐箇所P9から、分岐箇所P9の後方で、上部ユニット側受渡口T2Uの下方に位置する分岐箇所P10へと延びている。尚、この分岐箇所P10は、補充回収庫23の前部上方に位置している。搬送路100Kは、分岐箇所P10から上方に位置する上部ユニット側受渡口T2U(図4(A))へと延び、この上部ユニット側受渡口T2Uと接続されている。尚、搬送路100Kの先端は、上部ユニット側受渡口T2Uとの間で紙幣を受け渡す為の下部ユニット側受渡口T2Lとなっている。搬送路100Lは、分岐箇所P10の後方ななめ下に位置する補充回収庫23の受渡口93へと延び、この受渡口93と接続されている。
【0059】
この下搬送部19は、紙幣制御部11の制御に従って分岐箇所P6に設けられた2ウェイの切替器101を動作させることで、分岐箇所P6を通る紙幣の搬送経路を、搬送路100Aと搬送路100Bを繋ぐ搬送経路(つまり上部ユニット10Uの前部と1番前の紙幣収納庫21Aとを繋ぐ搬送経路)、または搬送路100Aと搬送路100Cを繋ぐ搬送経路(つまり上部ユニット10Uの前部と分岐箇所P7とを繋ぐ搬送経路)に切り替えることができるようになっている。
【0060】
さらに下搬送部19は、分岐箇所P7に設けられた2ウェイの切替器102を動作させることで、分岐箇所P7を通る紙幣の搬送経路を、搬送路100Cと搬送路100Dを繋ぐ搬送経路(つまり分岐箇所P6と前から2番目の紙幣収納庫21Bとを繋ぐ搬送経路)、または搬送路100Cと搬送路100Eとを繋ぐ搬送経路(つまり分岐箇所P7と分岐箇所P8とを繋ぐ搬送経路)に切り替えることができるようになっている。
【0061】
さらに下搬送部19は、分岐箇所P8に設けられた2ウェイの切替器103を動作させることで、分岐箇所P8を通る紙幣の搬送経路を、搬送路100Eと搬送路100Fを繋ぐ搬送経路(つまり分岐箇所P7と前から3番目の紙幣収納庫21Cとを繋ぐ搬送経路)、または搬送路100Eと搬送路100Gを繋ぐ搬送経路(つまり分岐箇所P7と分岐箇所P9とを繋ぐ搬送経路)に切り替えることができるようになっている。
【0062】
さらに下搬送部19は、分岐箇所P9に設けられた2ウェイの切替器104を動作させることで、分岐箇所P9を通る紙幣の搬送経路を、搬送路100Gと搬送路100Hを繋ぐ搬送経路(つまり分岐箇所P8と補充リジェクト庫24とを繋ぐ搬送経路)、または搬送路100Gと搬送路100Jを繋ぐ搬送経路(つまり分岐箇所P8と分岐箇所P10とを繋ぐ搬送経路)に切り替えることができるようになっている。
【0063】
さらに下搬送部19は、分岐箇所P10に設けられた3ウェイの切替器105を動作させることで、分岐箇所P10を通り紙幣の搬送経路を、搬送路100Jと搬送路Kを繋ぐ搬送経路(つまり分岐箇所P9と上部ユニット10Uの後部とを繋ぐ搬送経路)、搬送路100Jと搬送路100Lを繋ぐ搬送経路(つまり分岐箇所P9と補充回収庫23とを繋ぐ搬送経路)、搬送路100Kと搬送路100Lを繋ぐ搬送経路(つまり上部ユニット10Uの後部と補充回収庫23とを繋ぐ搬送経路)のいずれかに切り替えることができるようになっている。
【0064】
そして、下搬送部19は、このようにして切り替えた搬送経路に沿って搬送ローラにより紙幣を搬送するようになっている。
【0065】
これにより、下搬送部19は、例えば、上部ユニット10Uの前部から下部ユニット側受渡口T1Lを介して搬送されてきた紙幣を、搬送路100A、100Bを通る搬送経路で紙幣収納庫21Aへと搬送したり、搬送路100A、100C、100Dを通る搬送経路で紙幣収納庫21Bへと搬送したり、搬送路100A、100C、100E、100Fを通る搬送経路で紙幣収納庫21Cへと搬送したりすることができるようになっている。また下搬送部19は、これとは逆に、紙幣収納庫21A、21B、21Cから受け取った紙幣を、下部ユニット側受渡口T1Lを介して上部ユニット10Uの前部へと搬送することができるようにもなっている。
【0066】
さらに下搬送部19は、上部ユニット10Uの前部から下部ユニット側受渡口T1Lを介して搬送されてきた紙幣を、搬送路100A、100C、100E、100G、100Hを通る搬送経路で補充リジェクト庫24へと搬送したり、搬送路100A、100C、100E、100G、100J、100Lを通る搬送経路で補充回収庫23へと搬送したり、搬送路100A、100C、100E、100G、100J、100Kを通る搬送経路で下部ユニット側受渡口T2Lを介して上部ユニット10Uの後部へと搬送したりすることができるようになっている。さらに下搬送部19は、これとは逆に、補充回収庫23から受け取った紙幣を、下部ユニット側受渡口T1Lを介して上部ユニット10Uの前部へと搬送することができるようにもなっている。
【0067】
さらに下搬送部19は、上部ユニット10Uの後部から下部ユニット側受渡口T2Lを介して搬送されてきた紙幣を、搬送路100K、100Lを通る搬送経路で、補充回収庫23へと搬送することができるようにもなっている。さらに下搬送部19は、これとは逆に、補充回収庫23から受け取った紙幣を、下部ユニット側受渡口T2Lを介して上部ユニット10Uの後部へと搬送することができるようにもなっている。下部ユニット10Lの構成は、以上のようになっている。
【0068】
以上の構成により、図2図4(A)及び図6に示すように、紙幣入出金機10の内部には、鑑別部14を通る2本の環状の搬送路110U、110Lが形成される。このうち、搬送路110Uは、上部ユニット10U側に形成されていて、収容器30を含めて、搬送路32、40A、40B、50、60D、60C、60A、33により形成されている。以下、この搬送路110Uを、第1環状搬送路110Uと呼ぶ。この第1環状搬送路110Uに、接客部12と一時保留部16が接続されている。一方、搬送路110Lは、第1環状搬送路110Uの下側に位置していて、上部ユニット10Uと下部ユニット10Lとを跨ぐように形成されている。この搬送路110Lは、上部ユニット10U側に形成されている搬送路40C、40B、50、60D、60E、60G、60Jと、下部ユニット10L側に形成されている搬送路100A、100C、100E、100G、100J、100Kとにより形成されている。この第2環状搬送路110Lに、リジェクト庫17と取り忘れ収納庫18と紙幣収納庫21と補充回収庫23と補充リジェクト庫24が接続されている。以下、この搬送路110Lを、第2環状搬送路110Lと呼ぶ。
【0069】
尚、第2環状搬送路110Lは、上部ユニット10Uと下部ユニット10Lとを接続する接続口として、前側に位置する上部ユニット側受渡口T1Uと下部ユニット側受渡口T1Lからなる前側接続口111と、後側に位置する上部ユニット側受渡口T2Uと下部ユニット側受渡口T2Lからなる後側接続口112とを有している。
【0070】
[3.入金取引時及び出金取引時の動作]
次に、紙幣入出金機10による入金取引時及び出金取引時の動作について簡単に説明する。まず入金取引時の動作から説明する。入金取引時、紙幣入出金機10は、使用者に入金された紙幣の金種などを鑑別しながら枚数を計数する入金計数処理を行い、その後、各紙幣を適切な収納先へ搬送して収納する入金収納処理を行うようになっている。尚、この入金計数処理及び入金収納処理は、紙幣制御部11が各部を制御して行う処理である。
【0071】
具体的に、紙幣入出金機10は、操作表示部8(図1)を介して使用者から入金取引を開始する旨の操作指示を受け付けると、入金計数処理を開始する。入金計数処理を開始すると、紙幣入出金機10は、接客部12のシャッタ31(図4(A))を開く。その後、紙幣入出金機10は、使用者により収容器30内へ紙幣が投入されると、接客部12のシャッタ31を閉じ、収容器30内の紙幣を1枚ずつに分離して、上前搬送部13を介して鑑別部14へ搬送する。ここで、紙幣入出金機10は、鑑別結果が正常紙幣であると判別された紙幣については、鑑別部14から上後搬送部15を介して一時保留部16へ搬送して収納する。一方で、鑑別結果が入金に適さない入金リジェクト紙幣であると判別された紙幣については、鑑別部14から上後搬送部15を介して接客部12の搬送路33へ搬送し、搬送路33上に退避させる。
【0072】
そして収容器30内に投入された紙幣を全て繰り出し終えると、紙幣入出金機10は、搬送路33上に退避させている紙幣(つまり入金リジェクト紙幣)を収容器30に戻してシャッタ31を開くことで使用者に返却する。一方で、搬送路33上に退避させている紙幣が存在しない場合、紙幣入出金機10は、入金計数処理を完了する。その後、紙幣入出金機10は、接客部12から取り込んだ紙幣の金種及び枚数の集計結果を基に入金額を算出すると共に、所定の操作指示画面を操作表示部8(図1)に表示させ、使用者に入金額を提示すると共に入金取引を継続するか否かを選択させる。
【0073】
ここで、使用者により入金取引の中止が指示された場合、紙幣入出金機10は、一時保留部16に収納している全ての紙幣を、上後搬送部15を介して接客部12の収容器30へ戻し、シャッタ31(図4(A))を開くことで使用者に返却する。一方で、使用者により入金取引の継続が指示された場合、紙幣入出金機10は、入金収納処理を開始する。入金収納処理を開始すると、紙幣入出金機10は、一時保留部16に収納している紙幣(つまり正常紙幣)を順次繰り出し、上後搬送部15を介して鑑別部14へ搬送して金種を判別する。そして紙幣入出金機10は、金種が判別された紙幣を、鑑別部14から上前搬送部13及び下搬送部19を順次介して、その金種に対応する紙幣収納庫21へ搬送して収納する。一時保留部16に収納されている全ての紙幣を収納し終えると、紙幣入出金機10は、この入金収納処理を終了する。紙幣入出金機10による入金取引時の動作は、以上のようになっている。
【0074】
次に、紙幣入出金機10による出金取引時の動作について説明する。出金取引時、紙幣入出金機10は、使用者に指定された金額に応じた金種及び枚数の紙幣を出金する出金処理を行うようになっている。尚、この出金処理も、紙幣制御部11が各部を制御して行う処理である。
【0075】
具体的に、紙幣入出金機10は、操作表示部8(図1)を介して使用者から出金取引を開始する旨及び出金額を指定する旨の操作指示を受け付けると、出金処理を開始する。出金処理を開始すると、紙幣入出金機10は、出金額に応じた紙幣の金種及び枚数を決定する。そして、紙幣入出金機10は、決定した金種及び枚数に応じて、各紙幣収納庫21から紙幣を1枚ずつ繰り出し、下搬送部19及び上前搬送部13を順次介して鑑別部14へ搬送する。
【0076】
ここで、紙幣入出金機10は、鑑別結果が正常紙幣であると判別された紙幣については、鑑別部14から上後搬送部15を介して接客部12へ搬送して収容器30内に集積する。一方で、鑑別結果が出金に適さない出金リジェクト紙幣であると判別された紙幣については、鑑別部14から上後搬送部15を介してリジェクト庫17へ搬送して収納する。そして、紙幣入出金機10は、出金額分の紙幣が収容器30内に集積されると、接客部12のシャッタ31を開くことで、収容器30内に集積された紙幣を使用者に取り出させる。紙幣入出金機10による出金取引時の動作は、以上のようになっている。
【0077】
さらに紙幣入出金機10は、出金取引時に使用者が収容器30から紙幣を取り忘れた場合に、この紙幣を内部に取り込んで取り忘れ収納庫18に収納する取込処理を行うようにもなっている。さらに紙幣入出金機10は、保守作業時に、補充回収カセット22の補充回収庫23に収納されている紙幣を各紙幣収納庫21へと搬送して収納する補充処理や、各紙幣収納庫21に収納されている紙幣を補充回収カセット22の補充回収庫23へと搬送して収納する回収処理を行うようにもなっている。以下、これら取込処理、補充処理、回収処理を行うときの動作について順に説明する。
【0078】
[4.取込処理時の動作]
まず紙幣入出金機10による取込処理時の動作について説明する。尚、この取込処理も、紙幣制御部11が各部を制御して行う処理である。紙幣入出金機10は、出金取引時に、出金額分の紙幣を収容器30内に集積し終えると、接客部12のシャッタ31を開いて使用者に紙幣が取り出されるのを待ち受ける。このとき、紙幣入出金機10は、図示しないセンサを用いて収容器30から紙幣が取り出されたか否かを監視している。そして紙幣入出金機10は、シャッタ31を開いてから所定時間(例えば30秒間)以内に紙幣が取り出されなかった場合に、収容器30内に残された紙幣(以下、これを取り忘れ紙幣と呼ぶ)を内部に取り込んで取り忘れ収納庫18に収納する取込処理を行う。
【0079】
尚、取り忘れ紙幣は、使用者の所有物であり、使用者に引き渡されるべき紙幣である。この為、紙幣入出金機10では、この取り忘れ紙幣を、取込処理により取り忘れ収納庫18に収納することで、金融機関などが所有する他の紙幣とは区別して管理するようになっている。
【0080】
具体的に、この取込処理時、紙幣入出金機10は、図8(A)に示すように、収容器30内に残された取り忘れ紙幣を1枚ずつに分離して、搬送路32、40A、40Bを介して鑑別部14の搬送路50へ搬送する。ここで、紙幣入出金機10は、この紙幣を鑑別部14により鑑別させる。このとき、紙幣入出金機10は、鑑別部14による鑑別結果をもとに、取り忘れ紙幣の金種と金種ごとの枚数を特定する。さらに紙幣入出金機10は、この取り忘れ紙幣を、鑑別部14から、搬送路60D、60C、60Bを介して一時保留部16へ搬送して収納する。
【0081】
収容器30内に残された取り忘れ紙幣の全てを、一時保留部16に収納し終えると、紙幣入出金機10は、図8(B)に示すように、一時保留部16に収納している取り忘れ紙幣を順次繰り出し、搬送路60B、60C、60D、鑑別部14の搬送路50、搬送路40B、40Cを順次介して、下搬送部19の前部へと搬送する。さらに紙幣入出金機10は、この取り忘れ紙幣を、搬送路100A、100C、100E、100G、100J、搬送路100Kを介して、下搬送部19の前部から後部、そして上後搬送部15へと搬送する。さらに紙幣入出金機10は、取り忘れ紙幣を、搬送路60J、60Hを介して取り忘れ収納庫18へ搬送して収納する。
【0082】
この取込処理時、紙幣入出金機10の紙幣制御部11は、後で使用者に取り忘れ紙幣を引き渡す為に、例えば、取引日時と、キャッシュカードから読み取った情報と、鑑別部14の鑑別結果から特定した取り忘れ紙幣の金種と金種ごとの枚数とを対応付けて記憶部に記憶するようになっている。
【0083】
尚、紙幣入出金機10の取り忘れ収納庫18には、1回の出金取引で発生した取り忘れ紙幣(つまり出金取引1回分の取り忘れ紙幣)を収納する収納庫であり、1回の出金取引で出金可能な枚数分の紙幣を収納可能となっている。よって、取り忘れ紙幣の取込処理は、取り忘れ収納庫18に取り忘れ紙幣が収納されていない場合にのみ行われる処理となっている。取込処理時の動作は、以上のようになっている。
【0084】
[5.補充処理時の動作]
つづけて、紙幣入出金機10による補充処理時の動作について説明する。尚、この補充処理も、紙幣制御部11が各部を制御して行う処理である。上述したように、紙幣入出金機10では、各紙幣収納庫21を下部フレーム20に装填したまま、補充回収カセット22を下部フレーム20に対して着脱することで、紙幣入出金機10へ紙幣を補充できるようになっている。この場合、紙幣入出金機10では、補充回収庫23を上述した補充回収モードで動作させ、各紙幣収納庫21にのみ再利用可能な紙幣を収納する。
【0085】
具体的に、紙幣入出金機10では、金融機関の職員などの作業者により、下部フレーム20から補充回収カセット22が取り外されて、補充回収カセット22の補充回収庫23に新たな紙幣が収納され、その後、再びこの補充回収カセット22が下部フレーム20に装填される。ここで、紙幣入出金機10では、例えば操作表示部8を介して作業者から補充先の紙幣収納庫21及び移動する紙幣の枚数などの指示を受け付けると、補充回収庫23から鑑別部14を介して紙幣収納庫21へ紙幣を搬送して収納する補充処理を行う。
【0086】
この補充処理時、紙幣入出金機10は、図9に示すように、補充回収庫23に収納されている紙幣を1枚ずつに分離しながら繰り出して、搬送路100Lに順次引き渡す。さらに紙幣入出金機10は、この紙幣を、搬送路100Lから、搬送路100Kを介して上部ユニット10Uの後部へと搬送する。さらに紙幣入出金機10は、この紙幣を、搬送路60J、60G、60E、60Dを介して鑑別部14の搬送路50へ搬送する。ここで、紙幣入出金機10は、この紙幣を鑑別部14により鑑別させる。さらに、紙幣入出金機10は、この紙幣を鑑別部14から搬送路40B、40Cを介して下搬送部19の前部へと搬送する。
【0087】
ここで、紙幣入出金機10は、鑑別部14による鑑別結果をもとに、走行状態に問題がなく、金種が補充先の紙幣収納庫21に設定された金種と一致し、且つ損傷の程度が小さい紙幣を、再利用可能な紙幣と判断する一方で、これ以外の紙幣を補充リジェクト紙幣と判断する。
【0088】
そして、紙幣入出金機10は、再利用可能な紙幣については、その搬送先を、補充先の紙幣収納庫21に決定し、搬送路100A、100Bを介して、または搬送路100A、100C、100Dを介して、もしくは搬送路100A、100C、100E、100Fを介して、補充先の紙幣収納庫21(紙幣収納庫21A、21B、21Cのいずれか)へと搬送して収納する。
【0089】
また一方で、紙幣入出金機10は、補充リジェクト紙幣については、その搬送先を、補充リジェクト庫24に決定し、搬送路100A、100C、100E、100G、100Hを介して補充リジェクト庫24へと搬送して収納する。
【0090】
このように、紙幣入出金機10は、補充処理時、補充回収庫23から繰り出した紙幣を、第2環状搬送路110Lを利用して搬送するようになっていて、この紙幣を、鑑別部14を介して、補充先の紙幣収納庫21、または補充リジェクト庫24へと搬送して収納するようになっている。補充処理時の動作は、以上のようになっている。
【0091】
[6.回収処理時の動作]
つづけて、紙幣入出金機10による回収処理時の動作について説明する。尚、この補充処理も、紙幣制御部11が各部を制御して行う処理である。上述したように、紙幣入出金機10では、各紙幣収納庫21を下部フレーム20に装填したまま、補充回収カセット22を下部フレーム20に対して着脱することで、紙幣入出金機10から紙幣を回収できるようになっている。この場合、紙幣入出金機10では、補充回収庫23を上述した補充回収モードで動作させ、各紙幣収納庫21の紙幣を補充回収庫23へと搬送して収納する。
【0092】
具体的に、紙幣入出金機10では、金融機関の職員などの作業者により、例えば操作表示部8を介して回収元の紙幣収納庫21及び移動する紙幣の枚数などの指示を受け付けると、各紙幣収納庫21から鑑別部14を介して補充回収庫23へ紙幣を搬送して収納する回収処理を行う。
【0093】
この回収処理時、紙幣入出金機10は、図10に示すように、回収元の紙幣収納庫21(紙幣収納庫21A~21Cのいずれか)に収納されている紙幣を1枚ずつに分離しながら繰り出し、搬送路100B、100Aを介して、または搬送路100D、100C、100Aを介して、もしくは搬送路100F、100E、100C、100Aを介して、上部ユニット10Uの前部へと搬送する。さらに紙幣入出金機10は、この紙幣を、搬送路40C、40Bを介して鑑別部14の搬送路50へ搬送する。ここで、紙幣入出金機10は、この紙幣を鑑別部14により鑑別させる。ここで、紙幣入出金機10は、鑑別部14による鑑別結果をもとに、走行状態に問題がなく正常な紙幣を、回収可能な紙幣と判断する一方で、これ以外の紙幣をリジェクト紙幣と判断する。
【0094】
そして、紙幣入出金機10は、回収可能な紙幣については、その搬送先を、補充回収庫23に決定し、鑑別部14から搬送路60D、60E、60G、60Jを介して、下搬送部19の後部へと搬送する。さらに紙幣入出金機10は、この紙幣を、搬送路100K、100Lを介して補充回収庫23へと搬送して収納する。
【0095】
また一方で、紙幣入出金機10は、リジェクト紙幣については、その搬送先を、リジェクト庫17に決定し、鑑別部14から搬送路60D、60E、60Fを介してリジェクト庫17へと搬送して収納する。
【0096】
そして、紙幣入出金機10では、作業者により、下部フレーム20から補充回収カセット22が取り外されて補充回収庫23内の紙幣が回収され、その後、再びこの補充回収カセット22が下部フレーム20に装填される。
【0097】
このように、紙幣入出金機10は、回収処理時、回収元の紙幣収納庫21から繰り出した紙幣を、第2環状搬送路110Lを利用して搬送するようになっていて、この紙幣を、鑑別部14を介して、補充回収庫23、またはリジェクト庫17へと搬送して収納するようになっている。回収処理時の動作は、以上のようになっている。
【0098】
尚、紙幣入出金機10では、上述した補充処理及び回収処理の際に、補充回収カセット22を下部フレーム20から取り出すことになるが、この場合、まず下部ユニット10Lをフレーム10Fから前方(もしくは後方)に引き出し、その後、下搬送部19を回動させて下部フレーム20の上面の開口部を開放させて、この開口部から補充回収カセット22を上方に引き抜くようになっている。
【0099】
この為、紙幣入出金機10は、例えば前方に保守作業スペースが設けられている場合、補充回収カセット22を下部フレーム20から取り出すには、下部ユニット10Lの後端が上部ユニット10Uの前端よりも前方に位置するまで、下部ユニット10Lを前方に引き出す必要がある。つまり、現金自動預払機1の前方には、下部ユニット10Lのほぼ全体を引き出し得る大きさの保守作業スペースが必要となる。
【0100】
[7.まとめと効果]
ここまで説明したように、本実施の形態の紙幣入出金機10は、上部ユニット10Uと下部ユニット10Lとに形成された第1環状搬送路110U及び第2環状搬送路110Lに、接客部12と、鑑別部14と、一時保留部16と、紙幣収納庫21と、リジェクト庫17と、取り忘れ収納庫18と、補充回収カセット22とを接続するようにした。そのうえで紙幣入出金機10は、上部ユニット10U側に、接客部12と、鑑別部14と、一時保留部16と、リジェクト庫17と、取り忘れ収納庫18とを設け、下部ユニット10L側に、紙幣収納庫21と、補充回収カセット22とを設けるようにした。さらに紙幣入出金機10は、リジェクト庫17と取り忘れ収納庫18とを上下方向に並べて配置するようにした。
【0101】
ここで、図3(A)、(B)に、本実施の形態の紙幣入出金機10と、比較対象となる紙幣入出金機10Xを示す。紙幣入出金機10Xは、取り忘れ収納庫18を下部ユニット10L側に設けたものであり、補充回収カセット22の後方に取り忘れ収納庫18が配置されている。この図3(A)、(B)から明らかなように、紙幣入出金機10Xは、下部ユニット10Lの前後方向の長さが、取り忘れ収納庫18の分だけ、紙幣入出金機10より長くなっている。
【0102】
このように、紙幣入出金機10では、リジェクト庫17と取り忘れ収納庫18とを上下方向に並べて上部ユニット10Uに設けたことにより、紙幣入出金機10Xと比べて、下部ユニット10Lの前後方向の長さを短くすることができる。
【0103】
また紙幣入出金機10は、下部ユニット10Lの前後方向の長さが短くなることにより、紙幣入出金機10Xと比較して、下部ユニット10Lを前方(もしくは後方)に引き出す際の引き出し量が小さくなり、この結果、前方(もしくは後方)に必要となる保守作業スペースを、紙幣入出金機10Xと比べて、小さくすることができる。
【0104】
さらに紙幣入出金機10は、紙幣収納庫21の上面に設けられている、下搬送部19との間で紙幣を受け渡す為の受渡口73を、紙幣収納庫21の上面の後側に設けるようにした。別の言い方をすると、紙幣入出金機10は、下部ユニット10Lの一番後側に位置する、受渡口93が上面の後側に設けられている補充回収庫23に合わせて、紙幣収納庫21の上面の後側に受渡口73を設けるようにした。こうすることで、紙幣入出金機10は、受渡口73が紙幣収納庫21の上面の前側に設けられている紙幣入出金機10Xと比較して、下搬送部19の搬送路100の前後方向の長さを短くすることができる。
【0105】
これにより紙幣入出金機10は、搬送路100に沿って配置される搬送ローラなどの駆動部品を削減できるとともに、紙幣の搬送に要する時間を短縮して取引時間を短縮することができる。
【0106】
さらに紙幣入出金機10は、下搬送部19の搬送路100の前後方向の長さが短くなることにより、上部ユニット10Uと下部ユニット10Lとを接続する前側接続口111と後側接続口112との距離を、紙幣入出金機10Xと比較して短くすることができる。
【0107】
さらに紙幣入出金機10は、前側接続口111と後側接続口112との距離が短くなることにより、上部ユニット10Uの上前搬送部13の前後方向の長さを、紙幣入出金機10Xと比較して短くすることができる。つまり、紙幣入出金機10は、上部ユニット10Uの下部の前後方向の長さを、紙幣入出金機10Xと比較して短くすることができる。
【0108】
このように上部ユニット10Uの下部の前後方向の長さが短くなることにより、紙幣入出金機10は、下部ユニット10Lを前方(もしくは後方)に引き出す際の引き出し量がより一層小さくなり、この結果、前方(もしくは後方)に必要となる保守作業スペースの大きさを、紙幣入出金機10Xと比べて、より一層狭くすることができる。
【0109】
かくして、紙幣入出金機10は、紙幣入出金機10Xと比較して、より狭小なスペースに設置することが可能となる。
【0110】
さらに紙幣入出金機10と紙幣入出金機10Xとを比較してみると、紙幣入出金機10は、図3図4図6に示したように、補充回収庫23に繋がる搬送路100L上に分岐箇所がない代わりに、上後搬送部15の搬送路60Gと搬送路60Jの間に取り忘れ収納庫18へと繋がる分岐箇所P5が設けられている。
【0111】
ここで、搬送路100は、例えば、補充回収庫23を紙幣収納庫21の一つとして機能させる場合に、出金取引により補充回収庫23から繰り出される紙幣、及び入金取引により補充回収庫23へと収納される紙幣が頻繁に通る。一方で、搬送路60Gと搬送路60Jは、取込処理時、補充処理時、及び回収処理時といった入金収納処理及び出金処理と比べて実行される頻度が少ない処理時に紙幣が通るだけであり、搬送路100と比べると、紙幣が通る頻度が少ない。
【0112】
つまり、紙幣入出金機10は、紙幣が通る頻度が多い搬送路100ではなく、紙幣が通る頻度が少ない搬送路60Gと搬送路60Jの間に取り忘れ収納庫18へと繋がる分岐箇所P5を設けるようにした。別の言い方をすると、紙幣入出金機10は、入金取引時に収容器30に投入された紙幣を各紙幣収納庫21(補充回収庫23を含む)へと搬送する際、及び出金取引時に紙幣収納庫21(補充回収庫23を含む)に収納されている紙幣を収容器30へと搬送する際に紙幣が通らない搬送路60Gと搬送路60Jの間に取り忘れ収納庫18へと繋がる分岐箇所P5を設けるようにした。こうすることで、紙幣入出金機10は、例えば、入金取引時及び出金取引時に、紙幣が切替器のある分岐箇所で詰まったり傷ついたりしてしまう状況を、紙幣入出金機10Xと比較して抑制することができる。
【0113】
[8.他の実施の形態]
[8-1.他の実施の形態1]
尚、上述した実施の形態では、取込処理時に、収容器30内に残された取り忘れ紙幣を一時保留部16へと搬送して収納した後、一時保留部16から繰り出し、下搬送部19を経由して取り忘れ収納庫18へと搬送して収納するようにした。これに限らず、収容器30内に残された取り忘れ紙幣を、一時保留部16を経由しない搬送経路で取り忘れ収納庫18へと搬送して収納するようにしてもよい。
【0114】
この場合、上後搬送部15の構成を、取り忘れ収納庫18の近傍に位置する分岐箇所P5を通る紙幣の搬送経路を2ウェイの切替器64により、搬送路60Gと搬送路60Jを繋ぐ搬送経路(つまり分岐箇所P4と下部ユニット10Lの後部とを繋ぐ搬送経路)、または搬送路60Gと搬送路60Hを繋ぐ搬送経路(つまり分岐箇所P4と取り忘れ収納庫18とを繋ぐ搬送経路)に切り替えることができるような構成とする。
【0115】
そのうえで、図11に示すように、収容器30内に取り残された取り忘れ紙幣を、搬送路32、40A、40Bを介して鑑別部14へ搬送する。さらにこの紙幣を、鑑別部14から搬送路60D、60E、60G、60Hを介して取り忘れ収納庫18へと搬送して収納するようにする。
【0116】
このようにすれば、取り忘れ紙幣の搬送経路を短くすることができ、取り忘れ紙幣が搬送経路の途中で詰まったりすることを防ぐことができ、また取込処理に要する時間を短縮することもできる。このように、収容器30内に残された取り忘れ紙幣については、第1環状搬送路110Uと第2環状搬送路110Lを介する鑑別部14を通る搬送経路で取り忘れ収納庫18へと搬送して収納すればよい。
【0117】
[8-2.他の実施の形態2]
また上述した実施の形態では、下部ユニット10L側に、3個の紙幣収納庫21と、1個の補充回収カセット22を設けたが、これに限らず、下部ユニット10L側に、4個の紙幣収納庫21を設けるようにしてもよい。つまり、下部ユニット10L側から補充回収カセット22を省略した構成としてもよい。この場合、例えば、下部ユニット10Lに対して各紙幣収納庫21を着脱することで、紙幣の補充、回収を行うようにすればよい。またこれに限らず、下部ユニット10L側に5個以上の紙幣収納庫21を設けたりしてもよい。
【0118】
[8-3.他の実施の形態3]
さらに上述した実施の形態では、リジェクト庫17が上側、取り忘れ収納庫18が下側となるように、リジェクト庫17と取り忘れ収納庫18とを上下方向に並べて配置するようにしたが、これに限らず、リジェクト庫17が下側、取り忘れ収納庫18が上側となるように、リジェクト庫17と取り忘れ収納庫18とを上下方向に並べて配置するようにしてもよい。尚、このようにリジェクト庫17と取り忘れ収納庫18の上下の位置を変える場合、これに合わせて、上後搬送部15の構成も変えるようにすればよい。
【0119】
[8-4.他の実施の形態4]
さらに上述した実施の形態では、リジェクト庫17と取り忘れ収納庫18とを、フレームRfにより一体に設けられているとしたが、これに限らず、リジェクト庫17と取り忘れ収納庫18とを、別体に設けるようにしてもよい。
【0120】
[8-5.他の実施の形態5]
さらに上述した実施の形態では、下部ユニット10Lの一番後側に、補充回収カセット22を設けたが、これに限らず、下部ユニット10Lの一番前側に補充回収カセット22を設けてもよい。この場合、下搬送部19の構成、補充回収カセット22の構成、及び紙幣収納庫21の構成を、それぞれ例えば図2に示す構成とは前後反転した構成とすればよい。例えば、補充回収カセット22については、前側に補充回収庫23、後側に補充リジェクト庫24を配置するようにし、補充回収庫23の上面の前側に受渡口93を設けるようにする。また紙幣収納庫21については、上面の前側に受渡口73を設けるようにする。
【0121】
[8-6.他の実施の形態6]
さらに上述した各実施の形態では、本発明を、媒体処理装置としての紙幣入出金機10に適用したが、これに限らず、例えば、切符や帳票などの紙幣以外の媒体を処理する媒体処理装置に適用してもよい。さらに上述した各実施の形態では、本発明を、自動取引装置としての現金自動預払機1に適用したが、これに限らず、例えば、切符や帳票などの紙幣以外の媒体を扱う自動取引装置に適用してもよい。
【0122】
[8-7.他の実施の形態7]
さらに、本発明は、上述した各実施の形態に限定されるものではない。すなわち本発明は、上述した実施の形態と他の実施の形態の一部または全部を任意に組み合わせた実施の形態や、一部を抽出した実施の形態にもその適用範囲が及ぶものである。
【産業上の利用可能性】
【0123】
本発明は、紙幣などの媒体を処理する媒体処理装置で広く利用することができる。
【符号の説明】
【0124】
1……現金自動預払機、10……紙幣入出金機、10U……上部ユニット、10L……下部ユニット、12……接客部、13……上前搬送部、14……鑑別部、15……上後搬送部、16……一時保留部、17……リジェクト庫、18……取り忘れ収納庫、19……下搬送部、21……紙幣収納庫、22……補充回収カセット、23……補充回収庫、24……補充リジェクト庫、32、33、40(40A~40C)、60(60A~60H、60J)、100(100A~100H、100J~100L)……搬送路、73、82、93……受渡口、41、61~64、101~105……切替器、110U……第1環状搬送路、110L……第2環状搬送路、P1~P10……分岐箇所。
図1
図2
図3
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図5
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図7
図8
図9
図10
図11