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特許7334604偏光板用粘着剤組成物、粘着剤層付偏光板、及び、車載表示装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-21
(45)【発行日】2023-08-29
(54)【発明の名称】偏光板用粘着剤組成物、粘着剤層付偏光板、及び、車載表示装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/30 20060101AFI20230822BHJP
   C09J 133/06 20060101ALI20230822BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20230822BHJP
   C09J 133/02 20060101ALI20230822BHJP
   C09J 133/14 20060101ALI20230822BHJP
   C09J 7/10 20180101ALI20230822BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20230822BHJP
   G02F 1/1335 20060101ALI20230822BHJP
【FI】
G02B5/30
C09J133/06
C09J11/06
C09J133/02
C09J133/14
C09J7/10
C09J7/38
G02F1/1335 510
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019223932
(22)【出願日】2019-12-11
(65)【公開番号】P2020129103
(43)【公開日】2020-08-27
【審査請求日】2022-07-12
(31)【優先権主張番号】P 2019021540
(32)【優先日】2019-02-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004592
【氏名又は名称】日本カーバイド工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】金子 裕也
(72)【発明者】
【氏名】亀山 義弘
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 良
(72)【発明者】
【氏名】狩野 肇
【審査官】小久保 州洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-188310(JP,A)
【文献】特開2016-188309(JP,A)
【文献】特開2017-160382(JP,A)
【文献】特開2017-160383(JP,A)
【文献】国際公開第2016/152275(WO,A1)
【文献】特開2017-161860(JP,A)
【文献】特開2015-117342(JP,A)
【文献】国際公開第2009/008470(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/30
C09J 133/06
C09J 11/06
C09J 133/02
C09J 133/14
C09J 7/10
C09J 7/38
G02F 1/1335
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルにより形成される構成単位、水酸基を有するモノマーにより形成される構成単位、及び、カルボキシ基を有するモノマーにより形成される構成単位を含む、(メタ)アクリル系共重合体と、
トリレンジイソシアネート系架橋剤と、
を含有し、
前記(メタ)アクリル系共重合体中の、前記水酸基を有するモノマーにより形成される構成単位と前記カルボキシ基を有するモノマーにより形成される構成単位との合計の含有率が、全構成単位に対して0質量%を超え0.40質量%以下であり、
前記水酸基及び前記カルボキシ基の合計モル数に対する前記トリレンジイソシアネート系架橋剤中のイソシアネート基のモル数の比が3.0~10.0である、
車載表示装置用偏光板用粘着剤組成物。
【請求項2】
前記(メタ)アクリル系共重合体が、芳香族環を有する(メタ)アクリル系モノマーにより形成される構成単位を含む、請求項1に記載の車載表示装置用偏光板用粘着剤組成物。
【請求項3】
前記(メタ)アクリル系共重合体中の水酸基及びカルボキシ基の合計モル数に対する前記トリレンジイソシアネート系架橋剤中のイソシアネート基のモル数の比が、6.0~10.0である、請求項1又は請求項2に記載の車載表示装置用偏光板用粘着剤組成物。
【請求項4】
前記(メタ)アクリル系共重合体において、前記カルボキシ基を有するモノマーにより形成される構成単位の含有率が、前記水酸基を有するモノマーにより形成される構成単位の含有率よりも多い、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の車載表示装置用偏光板用粘着剤組成物。
【請求項5】
前記(メタ)アクリル系共重合体において、前記カルボキシ基を有するモノマーにより形成される構成単位の含有率と、前記水酸基を有するモノマーにより形成される構成単位の含有率と、が同量である、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の車載表示装置用偏光板用粘着剤組成物。
【請求項6】
前記(メタ)アクリル系共重合体の重量平均分子量が、100万以上である、請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の車載表示装置用偏光板用粘着剤組成物。
【請求項7】
架橋触媒として、有機金属化合物を更に含む、請求項1~請求項6のいずれか1項に記載の車載表示装置用偏光板用粘着剤組成物。
【請求項8】
前記有機金属化合物が、錫化合物、亜鉛化合物、ジルコニウム化合物、及び、鉄化合物よりなる群から選択される少なくとも1種の化合物である、請求項7に記載の車載表示装置用偏光板用粘着剤組成物。
【請求項9】
請求項1~請求項8のいずれか1項に記載の車載表示装置用偏光板用粘着剤組成物の架橋物である粘着剤層を備える、車載表示装置用粘着剤層付偏光板。
【請求項10】
請求項9に記載の車載表示装置用粘着剤層付偏光板を備える、車載表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偏光板用粘着剤組成物、粘着剤層付偏光板、及び、車載表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話、携帯端末等の携帯電子機器は、液晶表示装置が組み込まれているものが多い。一般に、液晶表示装置は、2枚のガラス基板に液晶層が挟まれた液晶セルと、液晶セルの両面に配置される偏光板とを備えている。液晶セルと偏光板とは、液晶表示装置の視認性を確保する観点から、一般的には、アクリル系粘着剤により形成される粘着剤層を介して貼合される。
【0003】
偏光板は、通常、収縮率の異なる部材を積層して構成されているため、温度、湿度等の変化によって偏光板に反りが生ずる場合があり、反りが生じた偏光板と粘着剤層との界面において、気泡、浮き、及び剥がれが生じる場合がある。そのため、液晶セルと偏光板との貼合に用いられる粘着剤には、苛酷な環境下に曝された場合でも、気泡、浮き、及び剥がれの発生を抑制できる性質(いわゆる、耐久性)を備えることが求められる。
【0004】
例えば、特許文献1には、耐久性及び光漏れ防止効果に優れる偏光板用粘着剤組成物として、カルボキシ基含有モノマーを0.1~5質量%含み、トリレンジイソシアネート系架橋剤を4~12重量部含み、ゲル分率が91%以上の偏光板用粘着剤が開示されている。
また、例えば、特許文献2には、高温高湿下での耐久性に優れ、白ヌケの発生を抑制する粘着剤組成物として、イソシアネート化合物が5質量部以上30質量部以下含む粘着剤組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2010/79653号
【文献】特開2010-090354号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
偏光板を備えた各種光学表示装置を、例えば、100℃以上の環境下に設置した場合、偏光板の粘着剤層に含まれる水分が気化するため発泡しやすく、また、粘着剤層(すなわち、偏光板)が収縮すること(以下、「粘着剤層の反り」ともいう場合がある。)で白抜け等が発生してしまい、光学特性の変化、外観不良等も起きやすい。
近年、偏光板を備えた各種光学表示装置において、従来よりも高い温度、例えば、115℃以上、での耐久性が求められている。
たとえば、上記特許文献1には、80℃、500時間での耐久評価試験の評価に優れる偏光板用粘着剤組成物が記載されており、これら偏光板用粘着剤組成物を、80℃以上の高温下に曝露した場合、耐久性に劣る可能性がある。
また、特許文献2に記載の粘着剤組成物は、例えば、115℃等の高温条件下での耐久性及び反りについて更なる改善が求められる。
【0007】
本発明の一実施形態が解決しようとする課題は、高温条件下において、得られる粘着剤層からの発泡及び得られる粘着剤層の反りの抑制に優れた偏光板用粘着剤組成物を提供することである。
また、本発明の他の実施形態が解決しようとする課題は、偏光板用粘着剤組成物を用いた粘着剤層付偏光板、及び、粘着剤層付偏光板を備えた車載表示装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための手段には、以下の態様が含まれる。
<1> (メタ)アクリル酸アルキルエステルにより形成される構成単位と、水酸基を有するモノマーにより形成される構成単位、及び、カルボキシ基を有するモノマーにより形成される構成単位よりなる群から選択される少なくとも1種の構成単位と、を含む、(メタ)アクリル系共重合体と、トリレンジイソシアネート系架橋剤と、を含有し、上記(メタ)アクリル系共重合体中の、上記水酸基を有するモノマーにより形成される構成単位と上記カルボキシ基を有するモノマーにより形成される構成単位との合計の含有率が、全構成単位に対して0質量%を超え0.45質量%以下であり、
上記水酸基及び上記カルボキシ基の合計モル数に対する上記トリレンジイソシアネート系架橋剤中のイソシアネート基のモル数の比が3.0~22.0である、偏光板用粘着剤組成物。
<2> 上記(メタ)アクリル系共重合体は、上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルにより形成される構成単位、上記水酸基を有するモノマーにより形成される構成単位、及び、上記カルボキシ基を有するモノマーにより形成される構成単位を含む、<1>に記載の偏光板用粘着剤組成物。
<3> 上記(メタ)アクリル系共重合体中の水酸基及びカルボキシ基の合計モル数に対する上記トリレンジイソシアネート系架橋剤中のイソシアネート基のモル数の比が、が6.0~13.0である、<1>又は<2>に記載の偏光板用粘着剤組成物。
<4> 上記(メタ)アクリル系共重合体において、上記カルボキシ基を有するモノマーにより形成される構成単位の含有率が、上記水酸基を有するモノマーにより形成される構成単位の含有率よりも多い、<1>~<3>のいずれか1つに記載の偏光板用粘着剤組成物。
<5> 上記(メタ)アクリル系共重合体において、上記カルボキシ基を有するモノマーにより形成される構成単位の含有率と、上記水酸基を有するモノマーにより形成される構成単位の含有率と、が同量である、<1>~<3>のいずれか1つに記載の偏光板用粘着剤組成物。
<6> 上記(メタ)アクリル系共重合体の重量平均分子量が、100万以上である、<1>~<5>のいずれか1つに記載の偏光板用粘着剤組成物。
<7> 架橋触媒として、有機金属化合物を更に含む、<1>~<6>のいずれか1つに記載の偏光板用粘着剤組成物。
<8> 上記有機金属化合物が、錫化合物、亜鉛化合物、ジルコニウム化合物、及び、鉄化合物よりなる群から選択される少なくとも1種の化合物である、<7>に記載の偏光板用粘着剤組成物。
<9> <1>~<8>のいずれか1つに記載の偏光板用粘着剤組成物の架橋物である粘着剤層を備える、粘着剤層付偏光板。
<10> <9>に記載の粘着剤層付偏光板を備える、車載表示装置。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一実施形態によれば、高温条件下において、得られる粘着剤層からの発泡及び得られる粘着剤層の反りの抑制に優れた偏光板用粘着剤組成物を提供することができる。
また、本発明の他の実施形態によれば、偏光板用粘着剤組成物を用いた粘着剤層付偏光板、及び、粘着剤層付偏光板を備えた車載表示装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。
本明細書において「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。
本明細書中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本明細書中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
また、本明細書において組成物中の各成分の量は、組成物中に各成分に該当する物質を複数種併用する場合には、特に断らない限り、その成分に該当する複数種の物質の合計量を意味する。
【0011】
また、本明細書中の「工程」の用語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であっても、その工程の所期の目的が達成されれば本用語に含まれる。 また、本発明において、「質量%」と「重量%」とは同義であり、「質量部」と「重量部」とは同義である。
更に、本発明において、2以上の好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
【0012】
(メタ)アクリルとは、アクリル及びメタクリルの少なくとも一方を意味し、(メタ)アクリレートとは、アクリレート及びメタアクリレートの少なくとも一方を意味する。
本明細書において(メタ)アクリル系共重合体とは、これを構成するモノマーのうち少なくとも主成分であるモノマーが(メタ)アクリロイル基を有するモノマーが重合して形成された重合体を意味する。
(メタ)アクリル系共重合体における主成分とは、重合体を形成するモノマー成分の中で最も含有率(質量%)が多いことを意味し、例えば、(メタ)アクリル系共重合体の場合、(メタ)アクリロイル基を有するモノマーにより形成される構成単位の含有率が全構成単位の50質量%以上であるモノマーを意味する。
粘着剤層とは、(メタ)アクリル系共重合体と架橋剤とが実質的に架橋した後の層であって、例えば、固形状又はゲル状の層を意味する。
【0013】
(偏光板用粘着剤組成物)
本発明に係る偏光板用粘着剤組成物(以下、単に「粘着剤組成物」ともいう)は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルにより形成される構成単位と、水酸基を有するモノマーにより形成される構成単位、及び、カルボキシ基を有するモノマーにより形成される構成単位よりなる群から選択される少なくとも1種の構成単位と、を含む、(メタ)アクリル系共重合体(以下、「特定(メタ)アクリル系共重合体」ともいう。)と、トリレンジイソシアネート系架橋剤(以下、「特定架橋剤」ともいう。)と、を含有し、上記(メタ)アクリル系共重合体中の、上記水酸基を有するモノマーにより形成される構成単位と上記カルボキシ基を有するモノマーにより形成される構成単位との合計の含有率が、全構成単位に対して0質量%を超え0.45質量%以下であり、上記水酸基及び上記カルボキシ基(以下、「特定官能基」ともいう。)の合計モル数に対する上記トリレンジイソシアネート系架橋剤中のイソシアネート基のモル数の比が3.0~22.0である。
【0014】
一般に、粘着剤層において、発泡の抑制等の耐久性と、粘着剤層(すなわち、偏光板)が収縮することで生じる液晶パネルの「反り」に起因する白抜け等の光学特性と、の両立は難しい。本発明者らが鋭意検討した結果、本発明に係る粘着剤組成物は上記構成を有することで、高温環境下において、得られる粘着剤層からの発泡及び得られる粘着剤層の反りの抑制に優れることを見出した。上記効果が得られる詳細なメカニズムは不明であるが、以下のように推測される。
【0015】
粘着剤組成物が、水の沸点を超える温度条件下、例えば、100℃以上の高温環境下に放置される場合には、粘着剤組成物からの発泡の抑制が求められる。
本発明に係る粘着剤組成物は、特定架橋剤と、(メタ)アクリル酸アルキルエステルにより形成される構成単位と、水酸基を有するモノマーにより形成される構成単位、及び、カルボキシ基を有するモノマーにより形成される構成単位よりなる群から選択される少なくとも1種の構成単位と、を含み、(メタ)アクリル系共重合体中の、水酸基を有するモノマーにより形成される構成単位とカルボキシ基を有するモノマーにより形成される構成単位との合計含有率が0質量%を超え0.45質量%以下とすることで、粘着剤組成物中の水分となりうる特定官能基の含有率を低減し、例えば、100℃以上の高温環境下において、粘着剤組成物中の水分の気化を抑制することができる。
また、上記合計含有率が特定量以下であるので、特定官能基と特定架橋剤とが過架橋となることを抑制することができ、形成された架橋構造の網目構造が広くなるので、得られた粘着剤層は応力緩和性に優れるため、高温環境下における粘着剤層の反りの抑制に優れると推定される。
本発明に係る粘着剤組成物に含まれるトリレンジイソシアネート系架橋剤は、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート系架橋剤等の架橋剤と比べて構造的な自由度が小さく、より剛直な構造を有する架橋剤である。本発明に係る粘着剤組成物は、上記の特定架橋剤と、(メタ)アクリル酸アルキルエステルにより形成される構成単位と、水酸基を有するモノマーにより形成される構成単位、及び、カルボキシ基を有するモノマーにより形成される構成単位よりなる群から選択される少なくとも1種の構成単位と、を含み、(メタ)アクリル系共重合体において、トリレンジイソシアネート系架橋剤のイソシアネート基のモル数を、(メタ)アクリル系共重合体中の水酸基及びカルボキシ基(特定官能基)の合計モル数に対して、モル当量比で3.0~22.0とすることで、粘着剤組成物中に上記特定架橋剤を十分に存在させて、上記特定架橋剤と特定官能基との架橋反応効率が高く十分に架橋されるため、粘着剤組成物の凝集力が高まり、高温環境下においても、発泡の抑制に優れる。
また、架橋反応に寄与しないイソシアネート系架橋剤が縮合物を形成し、この縮合物が上記網目構造に取り込まれることで、粘着剤層は応力緩和性を維持しつつ、高温環境下における粘着剤層からの発泡及び粘着剤層の反りの抑制に優れると推定される。
以下、本発明に係る粘着剤組成物に含まれる各構成要件の詳細について説明する。
【0016】
なお、本明細書においては、高温環境とは、少なくとも、大気圧下において115℃以上の温度環境を意味する。
【0017】
<<特定(メタ)アクリル系共重合体>>
本発明に係る粘着剤組成物は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルにより形成される構成単位と、水酸基を有するモノマーにより形成される構成単位、及び、カルボキシ基を有するモノマーにより形成される構成単位よりなる群から選択される少なくとも1種の構成単位と、を含有する(メタ)アクリル系共重合体(特定(メタ)アクリル系共重合体)を含む。
高温環境下における得られる粘着剤層からの発泡及び得られる粘着剤層の反りを抑制する観点から、本発明に係る粘着剤組成物は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルにより形成される構成単位、水酸基を有する(メタ)アクリレートモノマーにより形成される構成単位、及び、カルボキシ基を有する(メタ)アクリレートモノマーにより形成される構成単位を含有する(メタ)アクリル系共重合体を含むことが好ましい。
【0018】
<(メタ)アクリル酸アルキルエステル>
特定(メタ)アクリル系共重合体は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルにより形成される構成単位を含む。
特定(メタ)アクリル系共重合体が、(メタ)アクリル酸アルキルエステルにより形成される構成単位を含むことにより、得られる粘着剤層は、優れた粘着力が付与され得る。
特定(メタ)アクリル系共重合体は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルにより形成される構成単位を1種単独で含んでいてもよく、2種以上を含んでいてもよい。
【0019】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、特に制限されず、例えば、置換又は無置換の(メタ)アクリル酸アルキルエステルであってもよいが、後述の水酸基を有するモノマー及びカルボキシ基を有するモノマーと付加重合しやすいとの観点から、置換又は無置換のアクリル酸アルキルエステルであることが好ましい。
(メタ)アクリル酸アルキルエステル中のアルキル基としては、特に制限はなく、直鎖状、分岐鎖状又は環状のいずれであってもよい。
また、粘着剤層の被着体に対する粘着力及び基材との密着性の観点から、上記アルキル基の炭素数は、1~18であることが好ましく、1~12であることがより好ましい。
【0020】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、s-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-ノニル(メタ)アクリレート、イソニル(メタ)アクリレート、n-デシル(メタ)アクリレート、n-ドデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0021】
これらの中でも、粘着力の観点から、(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、アクリル酸アルキルエステルであることが好ましく、メチルアクリレート(MA)、t-ブチルアクリレート(t-BA)、及び、n-ブチルアクリレート(n-BA)よりなる群から選択される少なくとも1種のモノマーであることがより好ましく、n-ブチルアクリレート(n-BA)であることが更に好ましい。
【0022】
特定(メタ)アクリル系共重合体中の(メタ)アクリル酸アルキルエステルにより形成される構成単位の含有率としては、粘着力の観点から、特定(メタ)アクリル系共重合体の全構成単位に対して、50質量%以上99.95質量%以下であることが好ましく、60質量%以上99.95質量%以下であることがより好ましく、70質量%以上99.95質量%以下であることが更に好ましく、80質量%以上99.95質量%以下であることが特に好ましい。
【0023】
<水酸基を有するモノマーにより形成される構成単位>
特定(メタ)アクリル系共重合体は、水酸基を有するモノマーにより形成される構成単位、及び、カルボキシ基を有するモノマーにより形成される構成単位よりなる群から選択される少なくとも1種の構成単位を含む。
高温環境下における得られる粘着剤層からの発泡及び得られる粘着剤層の反りを抑制する観点から、特定(メタ)アクリル系共重合体は、水酸基を有するモノマーにより形成される構成単位を含むことが好ましい。
水酸基を有するモノマーにより形成される構成単位は、1種単独で含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0024】
水酸基を有するモノマーとしては、例えば、1分子中に、水酸基及びエチレン性不飽和結合を有する基をそれぞれ少なくとも1つ含有するモノマーが挙げられる。
エチレン性不飽和結合を有する基としては、ビニル基、アリル基、ビニルフェニル基、(メタ)アクリルアミド基、又は、(メタ)アクリロイルオキシ基等が挙げられ、反応性及び製造上の観点から、(メタ)アクリロイルオキシ基であることが好ましい。
【0025】
水酸基を有するモノマーとしては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、10-ヒドロキシデシル(メタ)アクリレート、12-ヒドロキシラウリル(メタ)アクリレート、3-メチル-3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、1,1-ジメチル-3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、1,3-ジメチル-3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2,2,4-トリメチル-3-ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、2-エチル-3-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
【0026】
高温環境下における粘着剤層からの発泡の抑制及び後述の特定架橋剤との反応性の観点から、水酸基を有するモノマーとしては、1分子中に、1つの(メタ)アクリロイルオキシ基と1つのヒドロキシ基(水酸基)とを有するヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートであることが好ましく、炭素数1~5のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートがより好ましく、炭素数が2~4のヒドロキシアルキル基を有するヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートが更に好ましい。
【0027】
-含有率-
特定(メタ)アクリル系共重合体が水酸基を有するモノマーにより形成される構成単位を含む場合、特定(メタ)アクリル系共重合体中の水酸基を有するモノマーにより形成される構成単位の含有率は、高温環境下における得られる粘着剤層からの発泡の抑制及び粘着剤層の反りの抑制により優れる観点から、後述のカルボキシ基を有するモノマーにより形成される構成単位の含有率と、同量であることが好ましい。
なお、本明細書において、「同量」とは、含有率が等しい場合だけでなく、水酸基を有するモノマーにより形成される構成単位とカルボキシ基を有するモノマーにより形成される構成単位との含有率との差が±5%以内である場合も包含する。
特定(メタ)アクリル系共重合体が水酸基を有するモノマーにより形成される構成単位を含む場合、高温環境下における得られる粘着剤層の反りの抑制により優れる観点からは、特定(メタ)アクリル系共重合体中の水酸基を有するモノマーにより形成される構成単位の含有率は、カルボキシ基を有するモノマーにより形成される構成単位よりも少ないことが好ましい。また、特定(メタ)アクリル系共重合体が水酸基を有するモノマーにより形成される構成単位を含む場合、同様の観点から、特定(メタ)アクリル系共重合体中の水酸基を有するモノマーにより形成される構成単位の含有率は、特定(メタ)アクリル系共重合体の全構成単位に対して、0.45質量%以下であり、0.3質量%以下であることが好ましく、0.01質量%以上0.25質量%以下であることがより好ましく、0.05質量%以上0.15質量%以下であることが更に好ましい。
【0028】
<カルボキシ基を有するモノマーにより形成される構成単位>
特定(メタ)アクリル系共重合体は、水酸基を有するモノマーにより形成される構成単位、及び、カルボキシ基を有するモノマーにより形成される構成単位よりなる群から選択される少なくとも1種の構成単位を含む。
高温環境下における粘着剤層からの発泡及び反りを抑制する観点から、特定(メタ)アクリル系共重合体は、カルボキシ基を有するモノマーにより形成される構成単位を含むことが好ましい。
【0029】
カルボキシ基を有するモノマーとしては、特に制限はなく、例えば、1分子中に少なくとも1つのカルボキシ基及びエチレン性不飽和結合を有する基を含有するモノマーが挙げられる。
エチレン性不飽和結合を有する基としては、既述の水酸基を有するモノマーにおけるエチレン性不飽和結合を有する基と同義であり、好ましい基も同様である。
【0030】
カルボキシ基を有するモノマーとしては、例えば、アクリル酸(AA)、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、グルタコン酸、シトラコン酸、ω-カルボキシ-ポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート(例えば、ω-カルボキシ-ポリカプロラクトン(n≒2)モノアクリレート)、コハク酸エステル(例えば、2-アクリロイルオキシエチル-コハク酸)、蟻酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ネオデカン酸ビニル等が挙げられる。
これらの中でも、後述の特定架橋剤との反応性の観点から、カルボキシ基を有するモノマーとしては、アクリル酸及びω-カルボキシ-ポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレートよりなる群から選択される少なくとも1種のモノマーであることが好ましく、アクリル酸であることがより好ましい。
【0031】
特定(メタ)アクリル系共重合体がカルボキシ基を有するモノマーにより形成される構成単位を含む場合、特定(メタ)アクリル系共重合体中のカルボキシ基を有するモノマーにより形成される構成単位の含有率は、上記水酸基を有するモノマーにより形成される構成単位と同量であってもよいが、弾性率が過剰になりにくく、高温環境下において、得られる粘着剤層の反りの抑制により優れる観点から、水酸基を有するモノマーにより形成される構成単位よりも多いことが好ましい。
また、特定(メタ)アクリル系共重合体がカルボキシ基を有するモノマーにより形成される構成単位を含む場合、水酸基を有するモノマーにより形成される構成単位の含有率は、特定(メタ)アクリル系共重合体の全構成単位に対して、0.45質量%以下であり、0.05質量%以上0.30質量%以下であることが好ましく、0.05質量%以上0.25質量%以下であることがより好ましい。
【0032】
<水酸基を有するモノマーにより形成される構成単位及びカルボキシ基を有するモノマーにより形成される構成単位の合計含有率>
本発明に係る粘着剤組成物において、特定(メタ)アクリル系共重合体中の水酸基を有するモノマーにより形成される構成単位及びカルボキシ基を有するモノマーにより形成される構成単位の合計含有率は、0質量%を超え0.45質量%以下である。
上記合計含有率が0.45質量%以下であると、高温環境下において、粘着剤組成物中に含まれる水分の気化が低減されるため、得られる粘着剤層からの発泡の抑制に優れる。 また、上記合計含有率が0質量%を超えると、後述の特定架橋剤と架橋反応することができるので、高温環境下において得られる粘着剤層からの発泡の抑制に優れる。
上記観点から、特定(メタ)アクリル系共重合体中の水酸基を有するモノマーにより形成される構成単位及びカルボキシ基を有するモノマーにより形成される構成単位の合計含有率としては、0.05質量%以上0.3質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以上0.4質量%以下であることがより好ましく、0.15質量%以上0.35質量%以下であることが更に好ましく、0.15質量%以上0.25質量%以下であることが特に好ましい。
【0033】
特定(メタ)アクリル系共重合体は、本発明の効果が発揮される範囲内において、上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルにより形成される構成単位、水酸基を有するモノマーにより形成される構成単位、及び、カルボキシ基を有するモノマーにより形成される構成単位以外の構成単位(以下、「その他の構成単位」ともいう。)を含んでいてもよい。
その他の構成単位を構成するモノマーは、上記(メタ)アクリル酸アルキルエステル、水酸基を有するモノマー及びカルボキシ基を有するモノマーと共重合できるものであれば特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができる。
【0034】
その他の構成単位を構成するモノマーとしては、アルキレンオキシド基、グリシジル基、アミド基、N-置換アミド基、三級アミノ基などの官能基を有するモノマーや、多官能(メタ)アクリル系モノマー、芳香族モノビニルモノマー、シアン化ビニルモノマー、芳香族環を有する(メタ)アクリル系モノマーを挙げられる。
【0035】
アルキレンオキシド基を有するモノマーとしては、例えば、メトキシエチル(メタ)アクリレート、2-(エトキシエトキシ)エチルアクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート及びメトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0036】
グリシジル基を有するモノマーとしては、グリシジル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、グリシジルビニルエーテル、3,4-エポキシシクロヘキシルビニルエーテル、グリシジル(メタ)アリルエーテル、3,4-エポキシシクロヘキシル(メタ)アリルエーテルなどを挙げることができる。
【0037】
アミド基又はN-置換アミド基を有するモノマーとしては、アクリルアミド、メタクリルアミド、N-メチル(メタ)アクリルアミド、N-エチル(メタ)アクリルアミド、N-メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-エトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-プロポキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-tert-ブチルアクリルアミド、N-オクチルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミドなどを挙げることができる。
【0038】
三級アミノ基を有するモノマーとしては、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドなどを挙げることができる。
【0039】
多官能(メタ)アクリル系モノマーとしては、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性ジ(メタ)アクリレート、ジ(メタ)アクリロキシエチルイソシアヌレート、トリシクロデカンジメタノール(メタ)アクリレート、ジメチロールジシクロペンタンジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性ヘキサヒドロフタル酸ジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノール(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール変性トリメチルプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジグリセリンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどを挙げることができる。
【0040】
芳香族モノビニルモノマーとしては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、t-ブチルスチレン、p-クロロスチレン、クロロメチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルピリジンが挙げられる。
シアン化ビニルモノマーとしては、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリルが挙げられる。
【0041】
芳香族環を有する(メタ)アクリル系モノマーとしては、例えば、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド(EO)変性クレゾール(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド(EO)変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル化β-ナフトールアクリレート、ビフェニル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0042】
特定(メタ)アクリル系共重合体がその他の構成単位を含む場合、特定(メタ)アクリル系共重合体中のその他の構成単位の含有率としては、5質量%~25質量%が好ましく、8質量%~20質量%がより好ましく、11質量%~18質量%が更に好ましい。
【0043】
本発明に係る粘着剤組成物において、特定(メタ)アクリル系共重合体の含有率は、目的に応じて適宜調整することができるが、粘着力の観点から、粘着剤組成物の全固形分に対して、80質量%~99質量%が好ましく、85質量%~99質量%がより好ましく、90質量%~98質量%が更に好ましい。
なお、固形分総質量とは、粘着剤組成物から、溶剤などの揮発性成分を除いた残渣の総質量を意味する。
【0044】
<<特定(メタ)アクリル系共重合体の重量平均分子量(Mw)>>
特定(メタ)アクリル系共重合体の重量平均分子量(Mw)は、とくに制限はなく、粘着力を向上させる点から、10万~200万であることが好ましく、60万~200万であることがより好ましく、100万~200万であることが更に好ましい。重量平均分子量は、重合反応温度、時間、有機溶媒の量等により調整することができる。
【0045】
-重量平均分子量(Mw)の測定方法-
特定(メタ)アクリル系共重合体の重量平均分子量(Mw)は、下記の測定方法により求められる。
より具体的には、下記(1)~(3)に従って測定して、重量平均分子量(Mw)を求めることができる。
(1)特定(メタ)アクリル系共重合体の溶液を剥離紙に塗布し、100℃で1分間乾燥し、フィルム状の特定(メタ)アクリル系共重合体を得る。
(2)上記(1)で得られたフィルム状の特定(メタ)アクリル系共重合体をテトラヒドロフランにて固形分0.2質量%になるように溶解させる。
(3)下記条件にて、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて、標準ポリスチレン換算値として、特定(メタ)アクリル系共重合体の重量平均分子量(Mw)を測定する。
【0046】
(条件)
GPC:HLC-8220 GPC〔東ソー(株)製〕
カラム:TSK-GEL GMHXL〔東ソー(株)製〕4本使用
移動相溶媒:テトラヒドロフラン
流速:0.8mL/分
カラム温度:40℃
【0047】
特定(メタ)アクリル系共重合体のガラス転移温度(Tg)は、得られる粘着剤層の粘着力を高め、かつ、加熱冷却後のタックを低く抑える観点から、-60℃~-5℃であることが好ましく、-50℃~-30℃であることがより好ましい。
【0048】
特定(メタ)アクリル系共重合体のガラス転移温度(Tg)は、下記式の計算により求められるモル平均ガラス転移温度である。
【0049】
【数1】
式中、Tg、Tg、・・・・・及びTgは、モノマー1、モノマー2、・・・・・及びモノマーnそれぞれの単独重合体の絶対温度(K)で表されるガラス転移温度である。m、m、・・・・・及びmは、それぞれのモノマー成分のモル分率である。
【0050】
なお、「単独重合体の絶対温度(K)で表されるガラス転移温度」は、そのモノマーを単独で重合して製造した単独重合体の絶対温度(K)で表されるガラス転移温度をいう。単独重合体のガラス転移温度は、その単独重合体を、示差走査熱量測定装置(DSC)(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン(株)製、DSC2500)を用い、窒素気流中、測定試料10mg、昇温速度10℃/分の条件で測定を行い、得られたDSCカーブの変曲点を、単独重合体のガラス転移温度としたものである。
【0051】
代表的なモノマーの「単独重合体のセルシウス温度(℃)で表されるガラス転移温度」は、メチルアクリレートは5℃であり、エチルアクリレートは-27℃であり、n-ブチルアクリレートは-57℃であり、2-エチルヘキシルアクリレートは-76℃であり、2-ヒドロキシエチルアクリレートは-15℃であり、4-ヒドロキシブチルアクリレートは-39℃であり、2-ヒドロキシエチルメタクリレートは55℃であり、tert-ブチルアクリレートは41℃であり、tert-ブチルメタクリレートは107℃であり、ベンジルアクリレートは6℃であり、フェノキシエチルアクリレートは-22℃であり、アクリル酸は163℃であり、ω-カルボキシ-ポリカプロラクトン(n≒2)モノアクリレートは-41℃である。例えば、これら代表的なモノマーを用いることで、前述のガラス転移温度を適宜調整することが可能である。
なお、絶対温度(K)から273を引くことで絶対温度(K)をセルシウス温度(℃)に換算可能であり、セルシウス温度(℃)に273を足すことでセルシウス温度(℃)を絶対温度(K)に換算可能である。
【0052】
〔特定(メタ)アクリル系共重合体の製造方法〕
特定(メタ)アクリル系共重合体の製造方法は、特に制限されるものではなく、溶液重合、乳化重合、懸濁重合等の方法でモノマーを重合して製造できる。
なお、製造後に本発明に係る粘着剤組成物を調製するにあたり、処理工程が比較的簡単かつ短時間で行えることから、特定(メタ)アクリル系共重合体は、溶液重合を用いて製造されることが好ましい。
【0053】
溶液重合は、一般に、重合槽内に所定の有機溶媒、モノマー、重合開始剤、及び、必要に応じて用いられる連鎖移動剤を仕込み、窒素気流中又は有機溶媒の還流温度で、撹拌しながら数時間加熱反応させるなどの方法を使用することができる。なお、特定(メタ)アクリル系共重合体の重量平均分子量は、反応温度、時間、溶剤量、触媒の種類及び量を調整することにより、所望の値にすることができる。
【0054】
特定(メタ)アクリル系共重合体の重合反応時に用いられる有機溶媒としては、特に制限はないが、芳香族炭化水素化合物、脂肪系又は脂環族系炭化水素化合物、エステル化合物、ケトン化合物、グリコールエーテル化合物、アルコール化合物等が挙げられる。
これらの有機溶媒は、それぞれ1種単独でも用いてもよく、2種以上混合して用いてもよい。
【0055】
重合反応時に用いられる有機溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、n-プロピルベンゼン、tert-ブチルベンゼン、o-キシレン、m-キシレン、p-キシレン、テトラリン、デカリン、及び、芳香族ナフサに代表される芳香族炭化水素系有機溶媒、n-ヘキサン、n-ヘプタン、n-オクタン、イソオクタン、n-デカン、ジペンテン、石油スピリット、石油ナフサ、及び、テレピン油に代表される脂肪族炭化水素系又は脂環族炭化水素系の有機溶媒、酢酸エチル、酢酸n-ブチル、酢酸n-アミル、酢酸2-ヒドロキシエチル、酢酸2-ブトキシエチル、酢酸3-メトキシブチル、及び安息香酸メチルに代表されるエステル系有機溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチル-イソブチルケトン、イソホロン、シクロヘキサノン、及び、メチルシクロヘキサノンに代表されるケトン系有機溶媒、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、及び、ジエチレングリコールモノブチルエーテルに代表されるグリコールエーテル系有機溶媒、並びに、メチルアルコール、エチルアルコール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブチルアルコール、イソブチルアルコール、s-ブチルアルコール、及び、tert-ブチルアルコールに代表されるアルコール系有機溶媒などが挙げられる。
【0056】
また、重合開始剤としては、例えば、通常の重合方法で使用できる有機過酸化物、アゾ化合物が挙げられる。
【0057】
<特定架橋剤>
本発明に係る粘着剤組成物は、トリレンジイソシアネート系架橋剤(特定架橋剤)を含有する。トリレンジイソシアネート系架橋剤(特定架橋剤)は、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート系架橋剤と比べて、剛直な構造を有するため、本発明に係る粘着剤組成物は、特定架橋剤と、上記特定(メタ)アクリル系共重合体とを含有することで、高温環境下において得られる粘着剤層からの発泡の抑制に優れる。
特定架橋剤は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0058】
特定架橋剤としては、特に制限はなく、例えば、トリレンジイソシアネートの2量体若しくは3量体、又は、トリレンジイソシアネートとトリメチロールプロパン等のポリオールとのアダクト体などが挙げられる。
【0059】
特定架橋剤は上市されている市販品を用いてもよい。特定架橋剤の市販品としては、例えば、住友バイエルウレタン(株)製の商品名「デスモジュールIL1451CN」、「デスモジュールILBA」、「デスモジュールHL」、「スミジュールFL-2」、「スミジュールFL-3」、及び「SBUイソシアネート0817」、東ソー(株)製の商品名「コロネートL」、「コロネート2030」、「コロネート2031」、「コロネート2037」、並びに、SAPIC社製の商品名「Polurene KC」及び「Polurene HR」を挙げることができる。これらの中でも、架橋反応性の観点から、特定架橋剤としては、トリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体である「コロネートL」が好ましい。
【0060】
-含有率-
特定架橋剤の含有率としては、特定(メタ)アクリル系共重合体100質量部に対して、1質量部~20質量部であることが好ましく、1.5質量部~15質量部であることがより好ましく、3.5質量部~10質量部であることが更に好ましく、5.0質量部~10質量部であることが特に好ましい。
【0061】
<<水酸基及びカルボキシ基の合計モル数に対する特定架橋剤中のイソシアネート基のモル数の比>>
本発明に係る粘着剤組成物において、上記水酸基及び上記カルボキシ基(特定官能基)の合計モル数に対する特定架橋剤中のイソシアネート基のモル数の比(モル当量比)は、3.0~22.0ある。
モル当量比が、3.0~22.0であると、特定(メタ)アクリル系共重合体中に含まれる特定官能基よりも、上記特定架橋剤中のイソシアネート基が粘着剤組成物中に多く存在するため、特定官能基と特定架橋剤とが効率よく反応することができ、粘着剤層が十分な凝集力を持つので、高温環境下において得られる粘着剤層からの発泡の抑制に優れる。また、粘着剤組成物中の特定官能基が多すぎず、特定官能基と特定架橋剤とが過架橋となりすぎないため応力緩和性に優れ、得られる粘着剤層の高温環境下における粘着剤層の反りの抑制に優れる。
上記観点から、上記モル当量比としては、3.5~22.0であることが好ましく、5.0~15.0であることがより好ましく、7.0~10.0であることが更に好ましい。
【0062】
上記モル当量比は、特定架橋剤が有するイソシアネート基のモル数(下記式(1))及び(メタ)アクリル系共重合体が有する特定官能基の合計モル数(下記式(2))で表される式(3)により求められる。
【0063】
モル当量比の計算に用いる特定架橋剤が有するイソシアネート基のモル数は、架橋剤イソシアネート基含有率と、特定架橋剤の固形分量と、配合量(添加する質量部)と、を用いて下記式(1)より求めることができる。
【0064】
特定架橋剤中のイソシアネート基のモル数(単位:mmol/特定(メタ)アクリル系共重合体の固形分量100g)
=[(特定架橋剤中のイソシアネート基の含有率(単位:質量%)×特定架橋剤の配合量(単位:g))/特定架橋剤の固形分(単位:質量%)]/イソシアネート基の分子量(単位:g/mol)×1000・・・式(1)
【0065】
特定官能基の合計モル数(単位:mmol/特定(メタ)アクリル系共重合体の固形分量100g)
=[特定(メタ)アクリル系共重合体中のカルボキシ基を有する単量体により形成される構成単位の含有率(単位:質量%)×カルボキシ基を有する単量体により形成される構成単位中のカルボキシ基の個数(価数)×1000/カルボキシ基を有する単量体により形成される構成単位の分子量(単位:g/mol)]+[特定(メタ)アクリル系共重合体中の水酸基を有する単量体により形成される構成単位の含有率(単位:質量%)×水酸基を有する単量体により形成される構成単位中の水酸基の個数(価数)×1000/水酸基を有する単量体により形成される構成単位の分子量(単位:g/mol)]・・・式(2)
【0066】
水酸基及びカルボキシ基の合計モル数に対する特定架橋剤中のイソシアネート基のモル数の比=上記式(1)/上記式(2)・・・式(3)
【0067】
本発明に係る粘着剤組成物は、特定架橋剤以外の架橋剤(以下、「その他の架橋剤」ともいう。)を含んでいてもよいが、高温環境下における粘着剤層からの発泡の抑制に優れる観点から、その他の架橋剤を含まないことが好ましい。
本発明に係る粘着剤組成物がその他の架橋剤を含む場合、高温環境下における粘着剤層の反りの抑制の観点から、その他の架橋剤の含有率としては、特定(メタ)アクリル系共重合体100質量部に対して、1質量部以下であることが好ましく、0.5質量部以下であることがより好ましく、0.3質量部以下であることがさらに好ましく、実質的に含まないことが特に好ましい。
なお、実質的に含まないとは、含有率が0.05質量%未満であることをいい、0.01質量%未満であることが好ましい。
【0068】
その他の架橋剤としては、特定(メタ)アクリル系共重合体を架橋できる公知の架橋剤が挙げられ、例えば、エポキシ化合物、上記特定架橋剤以外のイソシアネート化合物、アジリジン化合物、及び金属キレート化合物が挙げられる。本発明に係る粘着剤組成物が、その他の架橋剤を含む場合、エポキシ化合物、及び金属キレート化合物が好ましい。
【0069】
エポキシ化合物としては、例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ポリテトラメチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセロールジグリシジルエーテル、グリセロールトリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、レゾルシンジグリシジルエーテル、2,2-ジブロモネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、アジピン酸ジグリシジルエステル、フタル酸ジグリシジルエステル、トリス(グリシジル)イソシアヌレート、トリス(グリシドキシエチル)イソシアヌレート、1,3-ビス(N,N-グリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、N,N,N’,N’-テトラグリシジル-1,3-ベンゼンジ(メタンアミン)、フェニルグリシジルエーテルが挙げられる。
これらのエポキシ化合物は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0070】
エポキシ化合物の市販品としては、例えば、三菱ガス化学(株)製の「TETRAD-X」及び「TETRAD-C」、ナガセケムテックス(株)製の「デナコールEX-201」、「デナコールEX-203」、「デナコールEX-141」、「デナコールEX-313」、「デナコールEX-946L」、「デナコールEX-991」、「デナコールEX-991L」、「デナコールEX-992L」の商品名により市販されているものが挙げられる。
なお、被着体に対するリワーク性に優れる点では、同一分子内に有するエポキシ基の数が2以下であるエポキシ化合物を用いることがより好ましい。
【0071】
イソシアネート化合物としては、例えば、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネートに代表される芳香族ポリイソシアネート化合物、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、上記芳香族ポリイソシアネート化合物の水素添加物に代表される鎖状又は環状の脂肪族ポリイソシアネート化合物、これらのポリイソシアネート化合物のビュレット体、2量体、3量体又は5量体、これらのポリイソシアネート化合物と、トリメチロールプロパンなどのポリオール化合物とのアダクト体が挙げられる。
これらのイソシアネート化合物は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0072】
イソシアネート化合物の市販品としては、例えば、東ソー(株)製の「コロネートHX」、「コロネートHL-S」、「コロネート2234」、「コロネート2785」、「アクアネート200」、及び「アクアネート210」、住化コベストロウレタン(株)製の「スミジュールN3300」、「デスモジュールN3400」、及び「スミジュールN-75」、旭化成ケミカルズ(株)製の「デュラネートE-405-80T」、「デュラネート24A-100」、及び「デュラネートTSE-100」、並びに、三井化学(株)製の「タケネートD-110N」、「タケネートD-120N」、「タケネートM-631N」、及び「MT-オレスターNP1200」の商品名により市販されているものを好適に使用できる。
【0073】
-シランカップリング剤-
本発明に係る粘着剤組成物は、シランカップリング剤を含んでいてもよい。粘着剤組成物がシランカップリング剤を含む場合、粘着剤組成物より形成された粘着剤層の高温環境下における発泡等の耐久性を向上させることができる。
【0074】
本発明に係る粘着剤組成物がシランカップリング剤を含む場合、シランカップリング剤としては、粘着剤組成物に用いられる公知のシランカップリング剤を好適に用いることができる。
シランカップリング剤として、特に制限はないが、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、及び、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等の重合性不飽和基含有シラン化合物、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、及び、3-メルカプトプロピルジメトキシメチルシラン等のチオール基含有シラン系化合物、及び、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシ基含有シラン化合物、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、及び、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン等のアミノ基含有シラン化合物、並びに、トリス-(3-トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート等が挙げられる。
シランカップリング剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0075】
シランカップリング剤は、上市されている市販品を用いてもよく、市販品としては、例えば、信越化学工業(株)製の商品名「KBM-803」、「KBM-802」、「X-41-1810」、「X-41-1805」、「X-41-1818」等のチオール基を有するシランカップリング剤、信越化学工業(株)製の商品名「KBM-403」、「KBM-303」、「KBM-402」、「KBE-402」、「KBE-403」等のエポキシ基を有するシランカップリング剤等を好適に使用することができる。
【0076】
本発明に係る粘着剤組成物がシランカップリング剤を含む場合、粘着剤組成物中のシランカップリング剤の含有率としては、高温環境下における粘着剤層からの発泡等の耐久性を向上させる観点から、特定(メタ)アクリル系共重合体100質量部に対して、0.01質量部~2.0質量部が好ましく、0.05質量部~1.0質量部であることがより好ましく、0.1質量部~0.5質量部であることが更に好ましい。
【0077】
-架橋触媒-
本発明に係る粘着剤組成物は、架橋触媒を含んでいてもよい。
本発明に係る粘着剤組成物が架橋触媒を含む場合、かさ高い分子構造を有するモノマーを含む場合においても架橋反応が進みやすく、架橋密度が高い粘着剤層を形成することができ、粘着剤層の高温環境下における耐久性及びリワーク性がより優れやすい。
本発明に係る粘着剤組成物が架橋触媒を含む場合、架橋触媒は1種単独で含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0078】
架橋触媒としては、粘着剤組成物に用いることができる公知の架橋触媒を好適に用いることができる。
架橋触媒としては、特に制限はなく、例えば、1,2-ジメチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、及び2,3-ジヒドロ-1H-ピロロ[1,2-a]ベンズイミダゾールに代表されるイミダゾール化合物、ジオクチルチンジラウレート、及び1,3-ジアセトキシテトラブチルスタノキサンに代表される有機金属化合物、並びに、トリエチレンジアミン、及びN-メチルモルホリンに代表される第3級アミン化合物が挙げられる。
【0079】
イミダゾール化合物である架橋触媒は、市販品を使用してもよく、イミダゾール化合物の市販品としては、例えば、四国化成工業(株)の「キュアゾール(登録商標)1B2MZ」、「キュアゾール(登録商標)1B2PZ」、「キュアゾール(登録商標)TBZ」、及び「キュアゾール(登録商標)1,2DMZ」(いずれも商品名)が挙げられる。
【0080】
本発明に係る粘着剤組成物は、架橋触媒として有機金属化合物を更に含むことが好ましい。
本発明に係る粘着剤組成物が架橋触媒として有機金属化合物を含む場合、有機金属化合物が触媒として作用することで、特定(メタ)アクリル系共重合体の特定官能基と配位結合を効率よく形成し、この架橋反応により粘着剤組成物の凝集力がより高まることで、高温環境下における粘着剤層からの発泡の抑制により優れる傾向がある。
また、本発明に係る粘着剤組成物が有機金属化合物を含む場合、架橋構造の変化により、凝集力が高くても応力緩和性に優れ、高温環境下における粘着剤層の反りの抑制性により優れる傾向がある。
有機金属化合物としては、上述の有機金属化合物の他に、例えば、錫化合物、亜鉛化合物、ジルコニウム化合物、鉄化合物、アルミニウム化合物、チタン化合物が挙げられる。
有機金属化合物としては、上記観点から、特に、錫化合物、亜鉛化合物、ジルコニウム化合物及び鉄化合物よりなる群から選択される少なくとも1種を用いることが好ましく、錫化合物を用いることがより好ましい。
なお、耐久性、粘着剤層の着色、及び経時での剥離紙に対する粘着力の上昇を抑制できる点等、総合的な観点からは、有機金属化合物として亜鉛化合物を用いることが好ましい。
有機金属化合物は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0081】
有機金属化合物は、市販品を使用してもよい。有機金属化合物の市販品としては、例えば、錫化合物であるジオクチルチンジラウレートとしてADEKA(株)製の「DOTDL(OT-1)」、亜鉛化合物として日本化学(株)製の「ナーセム亜鉛」、ジルコニウム化合物として、日本化学(株)製の「ナーセムジルコニウム」、鉄化合物として、日本化学(株)製の「ナーセム鉄」、アルミニウム化合物として、川研ファインケミカル(株)製の「アルミキレートA」、及びチタン化合物として、マツモトファインケミカル(株)製の「オルガチックスTC-100又はTC-401」の商品名により市販されているものが挙げられる。
【0082】
本発明に係る粘着剤組成物が架橋触媒を含む場合、養生時間をより短縮できる観点から、架橋触媒の含有率としては、特定(メタ)アクリル系共重合体100質量部に対して、0.01質量部~1.5質量部であることが好ましく、0.05質量部~1.0質量部であることがより好ましく、0.05質量部~0.5質量部であることが更に好ましい。
【0083】
〔その他の成分〕
本発明に係る粘着剤組成物は、上記特定(メタ)アクリル系共重合体、及び、特定架橋剤の他に、必要に応じて、有機溶媒、耐候性安定剤、可塑剤、軟化剤、剥離助剤、染料、顔料、無機充填剤、界面活性剤、酸化防止剤、金属腐食防止剤、及び、粘着付与樹脂、帯電防止剤、並びに、紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系化合物等に代表される光安定剤等を適宜含有してもよい。
【0084】
帯電防止剤としては、例えば、ピリジニウムカチオン、アンモニウムカチオン等の窒素オニウムカチオンと、フルオロスルホニルイミドアニオン、トリフルオロメタンスルホニルイミドアニオン等のフッ素含有イミドアニオンとの塩が挙げられる。
このような帯電防止剤の市販品は、スリーエムジャパン(株)製の商品名「FC―4400」、第一工業製薬(株)製の商品名「MP―402A」、「MP―430」、「AS―804」及び「AS―110」を好適に使用することができる。
【0085】
-ゲル分率-
本発明に係る粘着剤組成物において、架橋反応終了後のゲル分率(質量%)、すなわち、上記(メタ)アクリル系共重合体と上記特定架橋剤との間で架橋構造が形成された後のゲル分率(以下、「架橋反応終了後のゲル分率」ともいう。)は、75質量%未満であることが好ましい。架橋反応終了後のゲル分率が75質量%未満であると、(メタ)アクリル系共重合体と特定架橋剤との架橋反応を適度に進行させて、得られる粘着剤層が適度な凝集力を持ち、応力緩和性に優れ、高温環境下における粘着剤層の反りの抑制性により優れる。
上記観点から、架橋反応終了後のゲル分率としては、30質量%~65質量%であることがより好ましく、35質量%~60質量%であることが更に好ましい。
【0086】
架橋反応終了後のゲル分率は、下記(1)~(17)の手順に従い求められる。
(1)粘着剤組成物を100μmの厚さのPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムセパレーター(剥離紙)上に塗布し、室温で30分間風乾した後、100℃で5分間本乾燥させ、粘着剤層を形成し、セパレーター付き粘着剤層を得る。
(2)得られたセパレーター付き粘着剤層を23℃、相対湿度65%の条件にて10日間養生する。その後、セパレーター付き粘着剤層を75mm×75mmの大きさに切り出す。切り出されたサンプルの粘着剤層の重さは、概ね0.2g程度となる。
【0087】
(3)250メッシュ(線径0.03mm、目開き72μm、ステンレス製)の金属金網を用意し、金属金網を100mm×100mmの大きさに切り出す。
(4)上記金属金網は酢酸エチルで脱脂した後、乾燥させる。脱脂、乾燥後の金属金網は、デシケーター内に保管する。また、金属金網の端部の解れは、測定誤差の原因となるため、予め取り除く。
(5)金属金網の質量を正確に測定する。この質量をAとする。
【0088】
(6)金属金網の中央に、75mm×75mmの大きさに切り出した(2)のセパレーター付き粘着剤層を貼り付けた後、粘着剤層からPETフィルムセパレーターを剥がし取る。なお、粘着剤層の金属金網への貼付は、後述の(7)~(9)の工程により金属金網を折り畳んだ後の面内において粘着剤層が配置される位置となるように行う。
(7)金属金網は、フィルム状の粘着剤層を貼り付けた面を内側にして、奥側の辺から手前側に半分に折り畳む。
(8)半分に折った金属金網(手前側に端部が2辺ある)の手前側3分の1を奥側に折りたたみ、さらに奥側3分の1を手前側に折り畳む(縦方向を100mmの6分の1に折り畳み、横方向は折り畳んでいない状態)。
(9)上記金網を左から3分の1の部位で右側に折り畳み、同様にして右から3分の1の部位で左側に折り畳む。これを試料1とする。試料1では、元の金属金網の大きさから、縦方向が6分の1に折り畳まれ、横方向が3分の1に折り畳まれている。
(10)上記の試料1の質量を正確に測定する。この質量をBとする。
【0089】
(11)試料1の折り目が開かないようにホッチキスで留める。これを試料2とする。試料2の質量を測定する。この質量をCとする。
(12)粘着剤組成物の1種類につき、ゲル分率測定用の試料2を2個作製する。
【0090】
(13)試料2を、酢酸エチル80gを入れたガラス瓶に入れ、蓋をする。
(14)試料2を入れたガラス瓶を23℃、相対湿度65%の条件にて3日間放置する。
(15)試料2をガラス瓶から取り出し、酢酸エチルで簡単に洗浄する。
(16)試料2を120℃で24時間乾燥した後、質量を正確に測定する。これをDとする。
【0091】
(17)下式によりゲル分率を計算する。
ゲル分率[質量%] = (D-(A+(C-B)))/(B-A)×100
【0092】
〔粘着剤組成物の用途〕
本発明に係る粘着剤組成物の用途としては、特に制限はないが、粘着剤層を介して偏光板を被着体に貼着させる用途に好適に挙げられ、具体的には、偏光板を液晶セルに貼着させる用途、偏光板を位相差フィルム等の光学フィルムに貼着させる用途等が挙げられる。
これらの中でも、高温環境下における得られる粘着剤層からの発泡及び反りの抑制、加工性、並びに、ガラスに貼着した際の反り抑制性により優れる点から、本発明に係る粘着剤組成物は、偏光板を液晶セルに貼着させる用途に用いることが好ましい。
【0093】
〔粘着剤層付偏光板〕
本発明に係る粘着剤層付偏光板は、偏光板と、上記偏光板上に設けられ、上記粘着剤組成物の架橋物である粘着剤層と、を備える。
本発明に係る粘着剤層付偏光板は、本発明に係る粘着剤組成物の架橋物である粘着剤層を備えるため、高温環境下において得られる粘着剤層からの発泡及び粘着剤層の反りの抑制に優れる。
また、本発明に係る粘着剤層付偏光板は、例えば、液晶セルのガラス基板に貼着した場合であっても、高温環境下において粘着剤層付偏光板の反りが生じ難い。
【0094】
本発明に係る粘着剤層付偏光板に用いられる偏光板は、少なくとも偏光子を有していれば、偏光子単体であってもよく、偏光子と保護フィルムとを積層したものであってもよい。
偏光板は、偏光子単独の1層構造であってもよく、偏光子の片面に保護フィルムを有する2層構造であってもよく、偏光子の両面に保護フィルムを有する3層構造であってもよい。
偏光子の素材としては、特に制限はなく、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)フィルムが挙げられる。
保護フィルムとしては、特に制限はなく、例えば、トリアセチルセルロース(TAC)フィルム、ポリシクロオレフィン(COP)フィルム、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、及びアクリルフィルムが挙げられる。
【0095】
本発明に係る粘着剤層付偏光板の層構成としては、例えば、粘着剤層/偏光子、粘着剤層/偏光子/保護フィルム、粘着剤層/保護フィルム/偏光子/保護フィルム、及び粘着剤層/保護フィルム/偏光子が挙げられる。
なお、偏光子と保護フィルムとの間、保護フィルムと粘着剤層との間、及び偏光子と粘着剤層との間に、位相差フィルム(例えば、EWV(Excellent wide view)層に代表される光学機能性層、接着剤層、及び易接着層)などの層を有していてもよい。
また、粘着剤層付偏光板の最も外側の面は、剥離フィルムで保護されていてもよい。
【0096】
粘着剤層側の面を保護する剥離フィルムとしては、剥離フィルムを粘着剤層から剥離しやすくするため、例えば、フッ素系樹脂、パラフィンワックス、シリコーン等の離型剤で表面に離型処理を施したポリエステル等の合成樹脂フィルムが好ましく挙げられる。
粘着剤層側の面と反対側の面を剥離フィルムで保護する場合、剥離フィルムとしては、ハードコートされたポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム等の表面保護フィルムが挙げられる。
【0097】
本発明に係る粘着剤層付偏光板における粘着剤層の厚さは、基材及び被着体の種類、基材及び被着体の表面粗さ等に応じて、適宜設定できる。一般には、粘着剤層の厚さは、1μm~100μmであり、好ましくは5μm~50μmであり、更に好ましくは10μm~30μmである。
【0098】
本発明に係る粘着剤層付偏光板は、公知の方法により作製される。
粘着剤層付偏光板の作製方法としては、特に制限はないが、例えば、本発明に係る粘着剤組成物を剥離フィルム上に塗布し、乾燥させ、剥離フィルム上に粘着剤組成物の塗布層を形成した後、この塗布層を偏光板上に転写、養生させることで粘着剤層付偏光板を作製する方法が挙げられる。
また、粘着剤層付偏光板の作製方法の他の一例としては、本発明に係る粘着剤組成物を剥離フィルム上に塗布し、乾燥させ、剥離フィルム上に粘着剤組成物の塗布層を形成した後、塗布層の露出面に剥離フィルムを密着させて設け、支持体のない両面粘着テープを作製する。次いで、塗布層を養生させて粘着剤層とする。次いで、一方の剥離フィルムを剥離し、露出した粘着剤層を偏光板上に転写させることで粘着剤層付偏光板を作製する方法が挙げられる。
また、粘着剤層付偏光板の作製方法の他の一例としては、本発明に係る粘着剤組成物を偏光板上に塗布し、乾燥、養生させることで粘着剤層付偏光板を作製する方法が挙げられる。
なお、乾燥の条件としては、例えば、熱風乾燥機を用いて、70℃~120℃で1分間~3分間乾燥させる条件が挙げられる。
【0099】
〔車載表示装置〕
本発明に係る車載表示装置は、上記粘着剤層付偏光板を備える。
本発明に係る車載表示装置は、本発明に係る粘着剤組成物の架橋物である粘着剤層を備える粘着剤層付偏光板を備えることで、高温環境下になりやすい車内において、得られる粘着剤層からの発泡及び粘着剤層の反りの抑制に優れるため、車内環境に適した車載表示装置として好適である。
車載表示装置としては、例えば、位置情報、速度情報等の各種情報を表示するモニター、ヘッドアップディスプレイなどが例示される。
【実施例
【0100】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例のガラス転移温度(Tg)、重量平均分子量(Mw)、及び、ゲル分率(質量%)は既述の方法で測定及び計算したものである。
【0101】
<(メタ)アクリル系共重合体の製造>
(製造例1;(メタ)アクリル系共重合体1)
温度計、撹拌機、窒素導入管、及び、還流冷却管を備えた反応器内に、n-ブチルアクリレート(n-BA)45.000質量部、メチルアクリレート(MA)37.775質量部、ベンジルアクリレート(BZA)17.000質量部、2-ヒドロキシエチルアクリレート(2HEA)0.075質量部、アクリル酸(AA)0.15質量部、及び、酢酸エチル110質量部を入れて混合した後、反応器内を窒素置換した。次いで、反応器内の混合物を撹拌しながら70℃に昇温した後、重合開始剤として2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(ABVN)0.02質量部と、酢酸エチル40質量部と、を逐次添加し、6時間保持して重合反応させた。重合反応終了後、酢酸エチルで希釈し、固形分を17.3質量%にし、重量平均分子量(Mw)が160万である(メタ)アクリル系共重合体1の溶液を得た。
特定官能基の合計モル数は、上述の式(2)より求めたところ、2.73ミリモル([0.15(単位:質量%)×1/72(単位:g/mol)+0.075(単位:質量%)×1/116(単位:g/mol)]×1000)であった。なお、AAの分子量は72、価数は1であり、2HEAの分子量は116、価数は1である。
なお、「固形分」とは、(メタ)アクリル系共重合体の溶液から溶媒等の揮発性成分を除去した残渣量を意味する。
【0102】
(製造例2~20;(メタ)アクリル系共重合体2~20)
表1に示すモノマー組成とし、有機溶媒及び重合開始剤の量を変更して重量平均分子量を調整した以外は(メタ)アクリル系共重合体1と同様にして、(メタ)アクリル系共重合体2~20を合成した。
(メタ)アクリル系共重合体2~20のモノマー組成、及び、重量平均分子量(Mw)を表1に示す。
【0103】
【表1】
【0104】
表1中の「-」は、該当の成分を含まないことを示す。表1中、(A)+(B)含有率(質量%)とは、水酸基を有するモノマーにより形成される構成単位とカルボキシ基を有するモノマーより形成される構成単位との合計含有率を示す。
表1における略号は以下の通りである。
・BA:n-ブチルアクリレート
・MA:メチルアクリレート
・t-BA:t-ブチルアクリレート
・PHEA:フェノキシエチルアクリレート
・BZA:ベンジルアクリレート
・2HEA:2-ヒドロキシエチルアクリレート
・4HBA:4-ヒドロキシブチルアクリレート
・2HEMA:2-ヒドロキシエチルメタクリレート
・AA:アクリル酸
・M-5300:ω-カルボキシ-ポリカプロラクトン(n≒2)モノアクリレート(商品名;アロニックスM-5300、東亞合成(株)製)
【0105】
(実施例1)
<<粘着剤組成物の調製>>
上記で調製した(メタ)アクリル系共重合体1の溶液100質量部(固形分換算値)と、コロネート(登録商標)L45E(トリレンジイソシアネート(TDI)、固形分:45質量%、イソシアネート基の含有率:7.9質量%、東ソー(株)製)6.0質量部(固形分換算値)と、シランカップリング剤(商品名:KBM-403、固形分:100質量%、信越化学工業(株)製)0.2質量部と、を十分に撹拌し、混合して粘着剤組成物を得た。
上記特定架橋剤中のイソシアネート基のモル数は、上述の式(1)により求めたところ、25.08ミリモル((7.9(単位:質量%)×6(単位:g)/45(単位:質量%))/42(単位:g/mol)×1000)であった。
なお、イソシアネート基の分子量は42として計算した。
得られた粘着剤組成物における、(メタ)アクリル系共重合体1が有する特定官能基の合計モル数に対するコロネート(登録商標)L45Eが有するイソシアネート基のモル数の比(トリレンジイソシアネート化合物が有するイソシアネート基のモル数/(メタ)アクリル系共重合体が有する特定官能基の合計モル数)は、上述の式(3)により求めたところ、25.08/2.73≒9.2であった。
また、得られた粘着剤組成物のゲル分率は52%であった。
【0106】
<<粘着剤層付偏光板の作製>>
上記にて調製した粘着剤組成物を用い、以下のようにして、粘着剤層付偏光板を作製した。
シリコーン系離型剤で表面処理された剥離フィルム(商品名:フィルムバイナ(登録商標)100E-0010N023、藤森工業(株)製)の表面処理面側に、乾燥後の厚みが25μmとなるように上記粘着剤組成物を塗布し、塗布膜を形成した。次いで、形成した塗布膜を、熱風循環式乾燥機を用いて、乾燥温度100℃で90秒間乾燥させ、剥離フィルム上に粘着剤層を形成した。次いで、トリアセチルセルロース(TAC)層/ポリビニルアルコール(PVA)層/TAC層の積層構造を有する偏光板の一方の面と、剥離フィルム上に形成した粘着剤層の面と、を重ねて貼り合わせた後、加圧ニップロールに通して圧着した。圧着後、オートクレーブ処理(温度:50℃、圧力:5kg/cm、処理時間:20分間)を施し、次いで、雰囲気温度23℃、50%RHの環境下で96時間養生させ、剥離フィルム/粘着剤層/偏光板の積層構造を有する粘着剤層付偏光板を作製した。
【0107】
<評価>
<<発泡評価用サンプルの作製>>
粘着剤層付偏光板を、吸収軸に対して長辺が0°になるように切断し、50mm×89mm(長辺)の大きさの試験片を1枚準備した。
試験片の剥離フィルムを剥離し、剥離により露出した粘着剤層の表面を、250mm×350(長辺)の大きさで、厚みが1.8mmのガラスの片面に貼り合わせ、ラミネーターを用いて圧着し、粘着剤層付偏光板とガラスとの積層体を作製した。作製した積層体に対し、オートクレーブ処理(温度:50℃、圧力:5kg/cm、処理時間:20分間)を施した後、23℃、50%RHの条件下で1時間放置し、発泡評価用サンプルを作製した。
【0108】
〔発泡の抑制性〕
上記にて作製した発泡評価用サンプルを、115℃に、168時間放置した。放置後の発泡評価用サンプルの外観を目視により観察し、下記の評価基準に従って、高温環境下(115℃)における発泡の抑制性を評価した。
なお、評価結果が「A」「B」、又は「C」であれば、発泡の抑制性に優れるといえる。
-評価基準-
A:発泡が認められない。
B:発泡試験用サンプルの端部から0.3mm以内の部分にわずかに発泡が認められる。
C:発泡試験用サンプルの端部から0.3mmを超えて0.5mm以内の部分に発泡が認められる。
D:発泡試験用サンプルの全面に発泡が認められる。
【0109】
<<反り評価用サンプルの作製>>
上記にて作製した粘着剤層付偏光板を50mm×160mm(長辺)の大きさに切断した。
粘着剤層付偏光板の剥離フィルムを剥離し、剥離により露出した粘着剤層の表面を、50mm×160mm(長辺)の大きさで、厚みが0.5mmのガラスの片面に貼り合わせ、ラミネーターを用いて圧着し、積層体を作製した。作製した積層体に対し、オートクレーブ処理(温度:50℃、圧力:5kg/cm、処理時間:20分間)を施した後、23℃、50%RHの条件下で1時間放置し、反り評価用サンプルを作製した。
【0110】
〔反りの抑制性〕
上記にて作製した反り評価用サンプルを、115℃に、168時間放置した。放置後の反り評価用サンプルを、23℃、50%RHの条件下で、平滑な台の上に置き、レーザー変位計((株)キーエンス社製、LK-H027K型番)を用いて上記サンプル両端の反りの大きさを測定した。両端における測定値の平均した値を下記の評価基準に従って、反りの抑制性を評価した。
なお、評価結果が「A」「B」、又は「C」であれば、反りの抑制性に優れるといえる。
-評価基準-
A:反りが3.0mm未満である。
B:反りが3.0mm以上3.3mm未満である。
C:反りが3.3mm以上3.6mm未満である。
D:反りが3.6mm以上である。
【0111】
(実施例2~34及び比較例1~7)
表2~表4に示す(メタ)アクリル系共重合体2~20に変更した以外は、実施例1と同様にして、粘着剤組成物を調製し、この粘着剤組成物を用いて粘着剤層付偏光板をそれぞれ作製した。作製した粘着剤層付偏光板を用いて、実施例1と同様にして各試験用サンプルを作製し、各試験用サンプルについて、実施例1と同様にして各評価を行った。結果を表2~表4に示す。
【0112】
【表2】
【0113】
【表3】
【0114】
【表4】
【0115】
表2~表4における略号は以下の通りである。なお、表2~表4中の質量部数は、固形分又は有効成分の換算値である。また、表2~表4中の「モル数の比」とは、(メタ)アクリル系共重合体中の水酸基及びカルボキシ基の合計モル数に対するトリレンジイソシアネート系架橋剤中のイソシアネート基のモル数の比を示し、モル数の比は上記式(3)より求めた。表2~表4中の「-」は、該当の成分を含まないことを示す。
表2~表4中、(メタ)アクリル系共重合体の製造例の欄は、表1に記載の製造例の番号を表している。例えば、表3の実施例26では、製造例16で合成された(メタ)アクリル系共重合体16と製造例17で合成された(メタ)アクリル系共重合体17とを用いていることを表している。
表2~表4中、実施例26~34は、(メタ)アクリル系共重合体16及び(メタ)アクリル系共重合体17をブレンドして粘着剤組成物を調製したことを示している。例えば、表3の実施例26の配合量は、(メタ)アクリル系共重合体16が80質量部であり、(メタ)アクリル系共重合体17が20質量部であることを示している。
表2~表4中、評価の欄における、反りの抑制性の評価結果のカッコ内の数値は、反りの大きさの実測値を表す。
【0116】
・TDI:トリレンジイソシアネート系架橋剤(製品名;コロネートL45E、東ソー(株)製、トリレンジイソシアネートとトリメチロールプロパンとのアダクト体)
・HMDI:ヘキサメチレンジイソシアネート(商品名;「スミジュール N-75」、住化コベストロウレタン(株)製)
・XDI:キシリレンジイソシアネート(商品名;「タケネートD-110」、三井化学(株)製))
・TETRAD-X:エポキシ化合物(三菱ガス化学(株)製、N,N,N’,N’-テトラグリシジル-1,3-ベンゼンジ(メタンアミン))、〔同一分子内に有するエポキシ基の数は4〕
・EX-141:エポキシ化合物(ナガセケムテックス(株)製、フェニルグリシジルエーテル)、〔同一分子内に有するエポキシ基の数は1〕
・EX-201:エポキシ化合物(ナガセケムテックス(株)製、レゾルシンジグリシジルエーテル)、〔同一分子内に有するエポキシ基の数は2〕
・KBM-403:シランカップリング剤(固形分:100質量%、信越化学工業(株)製)
・X-41-1053:シランカップリング剤(固形分:100質量%、信越化学工業(株)製)
・キュアゾール:架橋触媒であるイミダゾール化合物(1B2PZ 1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、固形分換算値、四国化成工業(株)製)
・Sn化合物:架橋触媒である有機金属化合物(錫化合物)(ADEKA(株)製、商品名;DOTDL(OT-1))
・Zn化合物:架橋触媒である有機金属化合物(亜鉛化合物)(日本化学(株)製、商品名;ナーセム亜鉛)
・Zr化合物:架橋触媒である有機金属化合物(ジルコニウム化合物)(日本化学(株)製、商品名;ナーセムジルコニウム)
・Fe化合物:架橋触媒である有機金属化合物(鉄化合物)(日本化学(株)製、商品名;ナーセム鉄)
【0117】
表2~表4の結果に示すとおり、実施例1~実施例34の偏光板用粘着剤組成物より形成された粘着剤層は、比較例1~7の粘着剤組成物より形成された粘着剤層に比べて、高温環境下における粘着剤層からの発泡の抑制及び粘着剤層の反りの抑制の双方に優れることが分かる。