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特許7334606浮遊容量の変化検出回路と浮遊容量の変化検出回路を用いた静電容量式タッチパネル
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  • 特許-浮遊容量の変化検出回路と浮遊容量の変化検出回路を用いた静電容量式タッチパネル 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-21
(45)【発行日】2023-08-29
(54)【発明の名称】浮遊容量の変化検出回路と浮遊容量の変化検出回路を用いた静電容量式タッチパネル
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/041 20060101AFI20230822BHJP
   G06F 3/044 20060101ALI20230822BHJP
   G01R 27/26 20060101ALI20230822BHJP
【FI】
G06F3/041 512
G06F3/044 120
G01R27/26 C
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019225148
(22)【出願日】2019-12-13
(65)【公開番号】P2021096496
(43)【公開日】2021-06-24
【審査請求日】2022-06-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000102500
【氏名又は名称】SMK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095636
【弁理士】
【氏名又は名称】早崎 修
(72)【発明者】
【氏名】吉川 治
【審査官】菅原 浩二
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第106885948(CN,A)
【文献】特開2010-002949(JP,A)
【文献】特表2012-528393(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0127003(US,A1)
【文献】特開2011-186509(JP,A)
【文献】特開2011-113504(JP,A)
【文献】特開2012-146173(JP,A)
【文献】特開2013-200631(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/041
G06F 3/044
G01R 27/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定周期でドライブ信号を高圧側端子と基準電位の低圧側端子間に出力する信号源と、
前記信号源の高圧側端子に接続するドライブ端子と、
前記ドライブ端子との間に浮遊容量Cpが形成されるレシーブ端子と、
前記浮遊容量Cpに直列に接続することにより、前記信号源の高圧側端子と低圧側端子間に閉ループが形成される放電用抵抗素子と、
前記レシーブ端子と前記信号源の前記低圧側端子間に接続され、前記浮遊容量Cpより十分に大きい容量の検出用コンデンサCxと、
前記レシーブ端子から前記検出用コンデンサCxの方向を順方向として、前記レシーブ端子と前記検出用コンデンサCxの間に接続されるダイオードとを備え、
前記検出用コンデンサCxの充電電圧の充電速度の変化から前記浮遊容量Cpの微小変化を検出すること特徴とする浮遊容量の変化検出回路。
【請求項2】
前記検出用コンデンサCxの充電電圧が上昇する所定時を基準時として、基準時から前記充電電圧が所定のスレッショルド電圧に達するまでの経過時間を計測する計時手段を更に備え、
前記経過時間が相対的に長くなることから、前記浮遊容量Cpの容量が減少したことを検出し、前記経過時間が相対的に短くなることから、前記浮遊容量Cpの容量が増加したことを検出すること特徴とする請求項1に記載の浮遊容量の変化検出回路。
【請求項3】
固定周波数のドライブ信号を高圧側端子と基準電位の低圧側端子間に出力する信号源と、
絶縁パネルに沿って配線され、前記信号源の高圧側端子に接続するドライブ端子と、
前記絶縁パネルに沿って配線され、前記ドライブ端子との間に入力操作で変化する浮遊容量Cpが形成されるレシーブ端子と、
前記レシーブ端子と前記信号源の前記低圧側端子間に接続される放電用抵抗素子と、
前記レシーブ端子と前記信号源の前記低圧側端子間に接続され、前記浮遊容量Cpより十分に大きい容量の検出用コンデンサCxと、
前記レシーブ端子から前記検出用コンデンサCxの方向を順方向として、前記レシーブ端子と前記検出用コンデンサCxの間に接続されるダイオードと、
直列に接続される前記検出用コンデンサCxと前記ダイオードの接続点に接続し、前記検出用コンデンサCxの前記基準電位に対する充電電圧を入力する入力端子とを備え、
前記入力端子に入力される前記充電電圧の充電速度の低下から、前記ドライブ端子と前記レシーブ端子の配線位置間への入力操作を検出することを特徴とする浮遊容量の変化検出回路を用いた静電容量式タッチパネル。
【請求項4】
前記絶縁パネルに沿って互いに絶縁して配線される複数の前記ドライブ端子と、
前記絶縁パネルに前記ドライブ端子と異なる方向に沿って互いに絶縁して配線され、複数の前記ドライブ端子との各交差位置に、それぞれ前記浮遊容量Cpが形成される複数の前記レシーブ端子と、
前記前記信号源の高圧側端子を、1又は2以上の前記ドライブ端子に選択的に接続するセレクタと、
複数の前記レシーブ端子毎に、前記信号源の前記低圧側端子との間に接続される複数の前記放電用抵抗と、複数の前記検出用コンデンサCxと、複数の前記ダイオードと、
複数の前記レシーブ端子毎に、直列に接続される前記検出用コンデンサCxと前記ダイオードの接続点に接続される複数の前記入力端子とを備え、
前記信号源の高圧側端子に接続する全ての前記ドライブ端子と、当該ドライブ端子に交差する全ての前記レシーブ端子との組み合わせから、前記入力端子に入力される前記充電電圧の充電速度が最も遅い前記ドライブ端子と前記レシーブ端子の組み合わせを選択し、選択した前記ドライブ端子と前記レシーブ端子の各配線位置から前記絶縁パネルへの入力操作の入力操作位置を検出することを特徴とする請求項3に記載の浮遊容量の変化検出回路を用いた静電容量式タッチパネル。
【請求項5】
前記信号源の高圧側端子に接続する前記ドライブ端子との間に前記浮遊容量Cpが形成される前記レシーブ端子の前記入力端子の電位を前記基準電位とし、前記検出用コンデンサCxの充電電圧を0Vとするリセット手段と、
複数の前記各入力端子から入力される前記充電電圧を、0Vと前記検出用コンデンサCxの飽和電圧との間に設定するスレッショルド電圧と比較し、リセット手段で前記検出用コンデンサCxの充電電圧を0Vとした基準時後、前記充電電圧がスレッショルド電圧に達するまでの経過時間を計測する計時手段とを更に備え、
前記信号源の高圧側端子に接続する全ての前記ドライブ端子と、当該ドライブ端子との間に前記浮遊容量Cpが形成される全ての前記レシーブ端子との組み合わせから、前記計時手段が最長の経過時間を計測した前記ドライブ端子と前記レシーブ端子の組み合わせを選択し、選択した前記ドライブ端子と前記レシーブ端子の各配線位置から前記絶縁パネルへの入力操作の入力操作位置を検出することを特徴とする請求項4に記載の浮遊容量の変化検出回路を用いた静電容量式タッチパネル。
【請求項6】
前記スレッショルド電圧は、前記検出用コンデンサCxの前記飽和電圧よりわずかに低い電圧に設定されることを特徴とする請求項5に記載の浮遊容量の変化検出回路を用いた静電容量式タッチパネル。
【請求項7】
前記ドライブ端子と前記レシーブ端子の全ての組み合わせで、前記入力端子から入力される前記充電電圧が、前記基準時後の所定時間内にスレッショルド電圧に達するように、複数の全ての前記放電用抵抗の各抵抗値を調整することを特徴とする請求項5又は請求項6のいずれか1項に記載の浮遊容量の変化検出回路を用いた静電容量式タッチパネル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浮遊容量の微小変化を拡大させて検出する浮遊容量の変化検出回路と、この浮遊容量の変化検出回路を用いた静電容量式タッチパネルに関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器のディスプレーに表示されたアイコンなどを指示入力するポインティングデバイスとして、指などの入力操作体を絶縁パネル上の入力操作面へ接近させた位置で、絶縁パネルに配線した端子の浮遊容量が変化することを利用し、非接触で絶縁パネルへの入力操作や入力操作位置を検出する静電容量式タッチパネルが知られている。
【0003】
入力操作による浮遊容量Cpの変化は、浮遊容量Cpに直列に接続されるような検出抵抗Rを検出端子に接続し、R-C直列回路を構成する浮遊容量Cpと検出抵抗Rの一側に所定の電圧Vccを加えて、時定数RCに依存する充電時間若しくは放電時間の変化から検出できる。
【0004】
しかしながら、時定数の変化を利用して浮遊容量の変化から入力操作位置を検出するには、指を検出端子へ接近させた際の浮遊容量の容量変化が大きくても10pF程度であるので、1MΩの検出抵抗を直列に接続したとしても、時定数は、約10-5秒変化するだけであり、充電時間や放電時間の比較から直接検出端子への入力操作を検出することは、極めて困難であった。この問題を解決するために、より大きい容量のコンデンサを用意しておき、浮遊容量の充電を繰り返す毎に、蓄積された電荷をこのコンデンサへ移し、コンデンサの充電時間で浮遊容量の変化を比較するチャージトランスファー方式の浮遊容量の変化検出回路100が提案されている(特許文献1)。
【0005】
以下、チャージトランスファー方式の浮遊容量の変化検出回路100を、図6図7を用いて説明する。図6に示すコンデンサC1は、微小容量c1の浮遊容量であり、例えば、操作者の指と検出端子101との間に生じる微小浮遊容量のコンデンサである。コンデンサC1の一側は、操作者を介して接地され、他側のSW1がON動作している間、充電電圧Vccで充電される。また、コンデンサC1と並列に、SW2を介してコンデンサC1の容量c1に対して充分に大きい容量c2のコンデンサC2が接続されている。
【0006】
このように構成された検出回路について、第1ステップで、SW1をON、SW2をOFFとして、コンデンサC1を充電電圧Vccで充電し、充電後、第2ステップで、SW1とSW2をともにOFFとする。この第2ステップでは、コンデンサC1の電圧V1は、Vccである。続いて、第3ステップで、SW1をOFF、SW2をONとし、コンデンサC1の充電電荷の一部をコンデンサC2へ移し、その後、第4ステップで、SW1とSW2を再びともにOFFとする。この第4ステップでは、コンデンサC1の電圧V1とコンデンサC2の電圧V2は等しくなる。
【0007】
第1ステップから第4ステップまでの処理をN回繰り返したときのコンデンサC2の電圧V2は、V2=Vcc×(1-c2/(c1+c2))で表され、充電電圧Vcc、コンデンサC2の容量c2が既知であるので、図7に示す充電電圧Vccの1/2に設定したVrefまでコンデンサC2の電圧V2が達成する回数Nを求めれば、検出しようとするコンデンサC1の静電容量c1が得られる。
【0008】
図7に示すように、静電容量c1が増加する程、Vrefに達する繰り返し回数Nは短くなるので、検出端子への入力操作体の接近のみを検出できれば充分な静電容量式タッチパネルでは、繰り返し回数のしきい値Nrefを例えば図中の1100に設定し、このしきい値Nrefより短い繰り返し回数でVrefに達した場合に、入力操作の指が接近して、10pF以上の浮遊容量が生じたものとして、検出端子への入力操作を検出する。
【0009】
また、このチャージトランスファー方式の浮遊容量の変化検出回路を用いて絶縁パネルへの入力操作や入力操作位置を検出する静電容量式タッチパネルは、多数の浮遊容量の変化検出回路100の各検出端子101を絶縁パネルの入力操作面に沿った異なる位置に配線し、図示しないマイコンの共通する発信源から各検出回路100の浮遊容量C1を充電する充電電圧Vccを出力し、マイコンに内蔵の比較回路で各検出回路100のコンデンサC2の電圧V2がVrefに達するまでの時間を比較する。
【0010】
自己容量方式で入力操作位置を検出する静電容量式タッチパネルでは、絶縁パネルへの入力操作が行われると、その入力操作位置に最も近い検出端子101の浮遊容量が増加するので、コンデンサC2の電圧V2が最も速くVrefに達した検出回路100の検出端子101の配線位置から、絶縁パネルへの入力操作位置を検出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】特許第4363281号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従来のチャージトランスファー方式の浮遊容量の変化検出回路100は、SW1とSW2を設ける必要があるとともに、これらのスイッチを所定のタイミングでON、OFF制御する制御回路が必要となり、構造が複雑、大型化する。
【0013】
また、複数の浮遊容量の変化検出回路100を備えた上述の静電容量式タッチパネルは、複数の浮遊容量の変化検出回路100毎に、SW1、SW2とこれらのスイッチをシーケンス制御する制御回路が必要となるので、更に全体の構造が複雑、大型化する。
【0014】
特に汎用のマイコンには、発信源や比較回路が内蔵されているものの、SW1、SW2は内蔵されていないので、複数の検出端子101毎にSW1、SW2を設けたり、これらのSW1、SW2の開閉動作を制御する制御線を配線する必要があり、検出端子101を微小ピッチで配線し、入力操作位置の分解能を上げるには限界があった。
【0015】
本発明は、このような従来の問題点を考慮してなされたものであり、スイッチ等の開閉手段を一切設けることなく、浮遊容量より十分に大きい容量の検出用コンデンサの充電速度に、浮遊容量の微小容量変化を拡大して表す浮遊容量の変化検出回路を提供することを目的とする。
【0016】
また、スイッチ等の開閉手段や開閉手段を制御する制御回路を設けることなく、浮遊容量より十分に大きい容量の検出用コンデンサの充電速度に、入力操作による浮遊容量の微小容量変化を拡大して表し、入力操作や入力操作位置を検出する静電容量式タッチパネルを提供することを目的とする。
【0017】
また、スイッチ等の開閉手段を内蔵しない汎用のマイコンを用いて、検出用コンデンサの充電速度に、入力操作による浮遊容量の微小容量変化を拡大して表し、入力操作や入力操作位置を検出する静電容量式タッチパネルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上述の目的を達成するため、請求項1の浮遊容量の変化検出回路は、所定周期でドライブ信号を高圧側端子と基準電位の低圧側端子間に出力する信号源と、信号源の高圧側端子に接続するドライブ端子と、ドライブ端子との間に浮遊容量Cpが形成されるレシーブ端子と、浮遊容量Cpに直列に接続することにより、信号源の高圧側端子と低圧側端子間に閉ループが形成される放電用抵抗素子と、レシーブ端子と信号源の低圧側端子間に接続され、浮遊容量Cpより十分に大きい容量の検出用コンデンサCxと、レシーブ端子から検出用コンデンサCxの方向を順方向として、レシーブ端子と検出用コンデンサCxの間に接続されるダイオードとを備え、
検出用コンデンサCxの基準電位に対する充電電圧の充電速度の変化から浮遊容量Cpの微小変化を検出すること特徴とする。
【0019】
ドライブ信号の信号電圧をVs、ダイオードでの電圧降下をVf、検出用コンデンサCxに充電されている充電電圧をVcx’、浮遊容量Cpの容量をc1、検出用コンデンサCxの容量をc2として、一周期のドライブ信号の電圧が上昇する間に、ダイオードに順方向の充電電流が流れることによる検出用コンデンサCxの充電電圧Vcxの電圧上昇分ΔVcxは、
【0020】
【数1】
【0021】
となる。
【0022】
また、その後、一周期のドライブ信号の電圧が基準電位まで下降する間には、浮遊容量Cpに逆方向の電圧が加わり、浮遊容量Cpの充電電荷は、放電用抵抗素子を通して放電される。一方、検出用コンデンサCxには、放電電流が流れる方向を逆方向とするダイオードが接続されているので、検出用コンデンサCxの充電電圧Vcxは低下せず、各周期毎にΔVcx上昇する。従って、一周期で充電される浮遊容量Cpの充電速度に比べて、多周期で充電される検出用コンデンサCxの充電速度は、大幅に低下し、浮遊容量Cpの微小変化を拡大させた検出用コンデンサCxの充電速度の変化から検出できる。
【0023】
請求項2の浮遊容量の変化検出回路は、検出用コンデンサCxの充電電圧が上昇する所定時を基準時として、基準時から充電電圧が所定のスレッショルド電圧に達するまでの経過時間を計測する計時手段を更に備え、経過時間が相対的に長くなることから、浮遊容量Cpの容量が減少したことを検出し、経過時間が相対的に短くなることから、浮遊容量Cpの容量が増加したことを検出すること特徴とする。
【0024】
浮遊容量Cpの微小変化を拡大して表す検出用コンデンサCxの充電速度の変化は、計時手段が計測する充電電圧Vcxが所定の基準時から所定のスレッショルド電圧に達するまでの経過時間を比較して検出でき、検出用コンデンサCxの充電電圧Vcxが一周期で上昇する電圧上昇分ΔVcxは、
【0025】
【数1】
【0026】
であるので、浮遊容量Cpの容量c1が減少すれば、経過時間は長くなり、容量c1が増加すれば、経過時間は短くなり、計時手段が計測する経過時間の変化から浮遊容量Cpの容量c1の増減を検出できる。
【0027】
請求項3の浮遊容量の変化検出回路を用いた静電容量式タッチパネルは、固定周波数のドライブ信号を高圧側端子と基準電位の低圧側端子間に出力する信号源と、絶縁パネルに沿って配線され、信号源の高圧側端子に接続するドライブ端子と、絶縁パネルに沿って配線され、ドライブ端子との間に入力操作で変化する浮遊容量Cpが形成されるレシーブ端子と、レシーブ端子と信号源の低圧側端子間に接続される放電用抵抗素子と、レシーブ端子と信号源の低圧側端子間に接続され、浮遊容量Cpより十分に大きい容量の検出用コンデンサCxと、レシーブ端子から検出用コンデンサCxの方向を順方向として、レシーブ端子と検出用コンデンサCxの間に接続されるダイオードと、直列に接続される検出用コンデンサCxとダイオードの接続点に接続し、検出用コンデンサCxの基準電位に対する充電電圧を入力する入力端子とを備え、入力端子に入力される充電電圧の充電速度の低下から、ドライブ端子とレシーブ端子の配線位置間への入力操作を検出することを特徴とする。
【0028】
ドライブ信号の信号電圧をVs、ダイオードでの電圧降下をVf、検出用コンデンサCxに充電されている充電電圧Vcx’、浮遊容量Cpの容量をc1、検出用コンデンサCxの容量をc2として、一周期のドライブ信号の電圧が上昇する間に、ダイオードに順方向の充電電流が流れることによる検出用コンデンサCxの充電電圧Vcxの電圧上昇分ΔVcxは、
【0029】
【数1】
【0030】
である。
【0031】
また、その後、一周期のドライブ信号の電圧が基準電位まで下降する間には、浮遊容量Cpに逆方向の電圧が加わり、浮遊容量Cpの充電電荷は、放電用抵抗素子を通して放電される。一方、検出用コンデンサCxには、放電電流が流れる方向を逆方向とするダイオードが接続されているので、検出用コンデンサCxの充電電圧Vcxは低下せず、各周期毎にΔVcx上昇する。従って、一周期で浮遊容量Cpが充電される充電速度に比べて、多数の周期で充電される検出用コンデンサCxの充電速度は大幅に低下し、ドライブ端子とレシーブ端子の間へ入力操作を行うことによって微減する浮遊容量Cpの容量C1の変化は、検出用コンデンサCxの充電速度の低下に拡大して表れ、充電速度の低下からドライブ端子とレシーブ端子の配線位置間への入力操作を検出できる。
【0032】
請求項4の浮遊容量の変化検出回路を用いた静電容量式タッチパネルは、絶縁パネルに沿って互いに絶縁して配線される複数のドライブ端子と、絶縁パネルにドライブ端子と異なる方向に沿って互いに絶縁して配線され、複数のドライブ端子との各交差位置に、それぞれ浮遊容量Cpが形成される複数のレシーブ端子と、信号源の高圧側端子を、1又は2以上のドライブ端子に選択的に接続するセレクタと、複数のレシーブ端子毎に、信号源の低圧側端子との間に接続される複数の放電用抵抗と、複数の検出用コンデンサCxと、複数のダイオードと、複数のレシーブ端子毎に、直列に接続される検出用コンデンサCxとダイオードの接続点に接続される複数の入力端子とを備え、信号源の高圧側端子に接続する全てのドライブ端子と、当該ドライブ端子と交差する全てのレシーブ端子との組み合わせから、入力端子に入力される充電電圧の充電速度が最も遅いドライブ端子とレシーブ端子の組み合わせを選択し、選択したドライブ端子とレシーブ端子の各配線位置から絶縁パネルへの入力操作の入力操作位置を検出することを特徴とする。
【0033】
検出用コンデンサCxの充電電圧Vcxが一周期で上昇する電圧上昇分ΔVcxは、
【0034】
【数1】
【0035】
であるので、いずれかのドライブ端子とレシーブ端子の各配線位置間に入力操作があると、その間の浮遊容量Cpの容量C1が減少し、検出用コンデンサCxの充電速度が低下する。
【0036】
従って、各ドライブ端子とレシーブ端子の組み合わせ毎に、浮遊容量Cpを所定のタイミングで充放電するための開閉手段を設けることなく、複数の各入力端子から入力される検出用コンデンサCxの充電電圧の充電速度を比較し、充電速度が最も遅いドライブ端子とレシーブ端子の組み合わせを選択し、選択したドライブ端子とレシーブ端子の各配線位置から絶縁パネルへの入力操作の入力操作位置を検出できる。
【0037】
請求項5の浮遊容量の変化検出回路を用いた静電容量式タッチパネルは、信号源の高圧側端子に接続するドライブ端子との間に浮遊容量Cpが形成されるレシーブ端子の入力端子の電位を基準電位とし、検出用コンデンサCxの充電電圧を0Vとするリセット手段と、複数の各入力端子から入力される充電電圧を、0Vと検出用コンデンサCxの飽和電圧との間に設定するスレッショルド電圧と比較し、リセット手段で検出用コンデンサCxの充電電圧を0Vとした基準時後、充電電圧がスレッショルド電圧に達するまでの経過時間を計測する計時手段とを更に備え、信号源の高圧側端子に接続する全てのドライブ端子と、当該ドライブ端子との間に浮遊容量Cpが形成される全てのレシーブ端子との組み合わせから、計時手段が最長の経過時間を計測したドライブ端子とレシーブ端子の組み合わせを選択し、選択したドライブ端子とレシーブ端子の各配線位置から絶縁パネルへの入力操作の入力操作位置を検出することを特徴とする。
【0038】
検出用コンデンサCxの充電電圧Vcxが一周期で上昇する電圧上昇分ΔVcxは、
【0039】
【数1】
【0040】
であるので、いずれかのドライブ端子とレシーブ端子の各配線位置間に入力操作があると、その間の浮遊容量Cpの容量c1が減少し、計時手段が計測する経過時間が長くなる。
【0041】
複数の各入力端子から入力される検出用コンデンサCxの充電電圧の充電速度を、計時手段が計測する経過時間で定量的に表し、全てのドライブ端子と全てのレシーブ端子との各組み合わせ毎に、計時手段が計測する経過時間から検出用コンデンサCxの充電電圧の充電速度を相対比較できる。
【0042】
請求項6の浮遊容量の変化検出回路を用いた静電容量式タッチパネルは、スレッショルド電圧が、検出用コンデンサCxの飽和電圧よりわずかに低い電圧に設定されることを特徴とする。
【0043】
検出用コンデンサCxの充電電圧Vcxは、ドライブ信号の一周期毎に、
【0044】
【数1】
【0045】
で上昇するので、充電電圧Vcxが飽和電圧に近づくほど、上昇する充電電圧Vcxの傾斜が緩くなり、飽和電圧よりわずかに低い電圧にスレッショルド電圧を設定することにより、充電速度の変化が経過時間の変化に拡大して表れる。
【0046】
請求項7の浮遊容量の変化検出回路を用いた静電容量式タッチパネルは、ドライブ端子とレシーブ端子の全ての組み合わせで、入力端子から入力される充電電圧が、基準時後の所定時間内にスレッショルド電圧に達するように、複数の全ての放電用抵抗の各抵抗値を調整することを特徴とする。
【0047】
検出用コンデンサCxの充電電圧Vcxが飽和電圧に達するまでの経過時間は、ドライブ信号の電圧が上昇する際の電圧変化率と、浮遊容量Cpの容量値と、放電用抵抗の抵抗値に依存する。電圧変化率は既知の値であり、浮遊容量Cpの容量値は、既知の微小範囲で変動するだけなので、放電用抵抗の抵抗値を調整することによって、検出用コンデンサの充電電圧Vcxがスレッショルド電圧に達するまでの時間を調整できる。
【発明の効果】
【0048】
請求項1の発明によれば、一周期のドライブ信号の電圧が上昇するタイミングで、浮遊容量Cpと検出用コンデンサCxを充電し、ドライブ信号の電圧が下降するタイミングで、充電されている浮遊容量Cpのみを放電するので、検出用コンデンサCxを充電するタイミングや、浮遊容量Cpを充放電するタイミングを、スイッチなどの開閉手段を用いずにタイミング制御できる。
【0049】
請求項2の発明によれば、検出用コンデンサCxの充電速度の変化を、計時手段が計測する経過時間から定量的に比較でき、経過時間の短長から微小に変化する浮遊容量Cpの容量c1の増減を検出できる。
【0050】
請求項3の発明によれば、スイッチなどの開閉手段を用いずに、入力操作によって微減する浮遊容量Cpの容量C1の変化を拡大して表す検出用コンデンサCxの充電速度の低下から、ドライブ端子とレシーブ端子の配線位置間への入力操作を検出できる
【0051】
請求項4の発明よれば、スイッチ等の開閉手段や開閉手段を制御する制御回路を設けることなく、絶縁パネルへの入力操作位置を検出できる。
【0052】
また、信号源や入力端子、リセット手段、計時手段を有する汎用のマイコンを用いて、絶縁パネルへの入力操作位置を検出できる。
【0053】
請求項5の発明よれば、複数の各入力端子から入力される検出用コンデンサCxの充電電圧の充電速度の変化を、計時手段が計測する経過時間から定量的に比較できる。
【0054】
請求項6の発明よれば、入力操作による浮遊容量Cpのわずかな減少が計時手段が計測する経過時間に拡大して表れるので、入力操作を高精度に検出できる。
【0055】
請求項7の発明よれば、各周期の所定時間内に全ての組み合わせのドライブ端子とレシーブ端子間の浮遊容量Cpの容量変化を検出し、入力操作位置を検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
図1】本発明の一実施の形態に係る浮遊容量の変化検出回路1を示す回路図である。
図2図1の各部の波形図である。
図3】浮遊容量Cpの容量c1と放電用抵抗2の抵抗値r1の組み合わせが異なる5種類の検出用コンデンサCxの充電電圧Vcxの波形a、b、c、d、eを示す波形図である。
図4】浮遊容量Cpの容量c1がわずかに異なる3種類の検出用コンデンサCxの充電電圧Vcxの波形f、g、hを拡大して示す波形図である。
図5】本発明の一実施の形態に係る浮遊容量の変化検出回路を用いた静電容量式タッチパネル10のブロック図である。
図6】従来の浮遊容量の変化検出回路100を示すブロック図である。
図7図6に示す従来の浮遊容量の変化検出回路100による充電回数NとコンデンサC2の電圧V2との関係を示す波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0057】
以下、本発明の一実施の形態に係る浮遊容量の変化検出回路(以下、検出回路という)1を、図1乃至図4を用いて説明する。この検出回路1は、微小容量c1の浮遊容量Cpの変化を、容量c1より十分に大きい容量c2の検出用コンデンサCxの充電電圧Vcxの充電速度に拡大して表し、この充電速度の変化から検出するものである。本実施の形態において、浮遊容量Cpは、図示しない絶縁パネル上に配線された一組のドライブ端子Tとレシーブ端子T間に形成される容量c1が10pF程度の静電容量であり、接地された人体の一部の指などが接近すると、数pF以下のレベルで低下する。
【0058】
図1に示すように、ドライブ端子Tには、1MHzの固定周波数でパルス高さが3.3vのパルス波形のドライブ信号を出力する発信回路2の高圧側端子2aが接続し、発信回路2の低圧側端子2bは接地されている。レシーブ端子Tと発信回路2の低圧側端子2bの間には、浮遊容量Cpに充電されている電荷を放電する放電用抵抗素子Rが接続され、浮遊容量Cpに直列に接続することにより、発信回路2の高圧側端子2aと低圧側端子2b間に閉ループが形成される。
【0059】
この放電用抵抗素子Rと並列に、すなわち、レシーブ端子Tと発信回路2の低圧側端子2bの間に、直列に逆流防止ダイオード3と浮遊容量Cpの容量c1より十分に大きい1nF程度の容量c2の検出用コンデンサCxが直列に接続されている。逆流防止ダイオード3は、アノードをレシーブ端子Tに、カソードを検出用コンデンサCxに接続することにより、レシーブ端子Tから検出用コンデンサCxの方向を順方向として接続される。
【0060】
また、逆流防止ダイオード3のカソードと検出用コンデンサCxの接続点は、電圧計4の入力端子4aに接続し、検出用コンデンサCxの充電電圧Vcxを検出している。
【0061】
以下、このように構成された検出回路1の動作を、図2の波形図の各経過時点に沿って説明する。発信回路2からドライブ信号を出力する図中t0の基準時には、逆流防止ダイオード3のカソードと検出用コンデンサCxの接続点に接続する入力端子4aを接地させ、検出用コンデンサCxと浮遊容量Cpを全て放電しておき、各充電電圧を0Vとしておく。
【0062】
入力端子4aの接地接続を解いて、基準時t0からドライブ信号のパルス波形の立ち上がりでドライブ端子Tの電位Vが上昇するが、逆流防止ダイオード3の順方向特性による0.7Vの電圧(以下、ダイオード降下分Vfという)を越えるt1までは、逆流防止ダイオード3に電流が流れず、レシーブ端子Tの電位Vがドライブ端子Tの電位Vに追従して上昇する。
【0063】
レシーブ端子Tの電位Vがダイオード降下分Vfの0.7Vを越えるt1からドライブ信号のパルス波形の立ち上がりが終了するt2まで、ドライブ信号の電圧上昇によって、検出用コンデンサCxと浮遊容量Cpの充電電圧も上昇する。ドライブ信号の立ち上がり期間(t0-t2)の電圧変化を無視し、ドライブ信号の電圧をV、浮遊容量Cpの充電電圧をVpとし、検出用コンデンサCxに充電電圧をVcx’が残されていないものとすると、逆流防止ダイオード3を介して接続される浮遊容量Cpと検出用コンデンサCxの両端に加わる電圧は、V-Vfであり、浮遊容量Cpと検出用コンデンサCxとにそれぞれ蓄積される電荷は等しいので、c1xVp=c2xVcxの関係から、t1からt2までの一回の周期の立ち上がり期間に充電される浮遊容量Cpの充電電圧上昇分ΔVpと検出用コンデンサCxの充電電圧上昇分ΔVcx(0)は、それぞれ
【0064】
【数2】
【0065】
【数3】
【0066】
で表される。
【0067】
c1は、c2に比べて十分に小さいので、図2のア、イ、に比較して示すように、検出用コンデンサCxの充電電圧Vcxは、浮遊容量Cpの充電電圧Vpに比べて、極めて緩やかな勾配で上昇する。
【0068】
パルス波形の立ち上がりが終了するt3以降は、ドライブ信号の電圧変化がないので、浮遊容量Cpと検出用コンデンサCxは、それぞれその両端に直流電圧が加わったのと同様に作用し、逆流防止ダイオード3には電流が流れずOFFとなる。これにより、浮遊容量Cpと放電用抵抗素子RとのR-C直列回路が構成され、その両端にt3での浮遊容量Cpの充電電圧Vpより高い3.3Vのドライブ信号の電圧Vが加わるので、過渡現象によって浮遊容量Cpの充電電圧Vpは、3.3Vの充電電圧Vpに達するt3まで上昇する。浮遊容量Cpの充電がすすむと、図2に示すように、レシーブ端子Tの電位Vは、浮遊容量Cpの充電電圧Vpの上昇によって下降し、浮遊容量Cpが飽和するt3で接地電位となる。この間、検出用コンデンサCxには、充電電圧Vcxの充電方向と逆方向の電圧が加わるが、逆流防止ダイオード3の順方向に対して逆方向の電圧であるので、検出用コンデンサCxの充電電圧Vcxは放電されない。
【0069】
その後、t4からドライブ信号のパルス波形が立ち下がり、ドライブ端子Tの電位Vがt4の3.3Vからt5の0Vまで下降すると、浮遊容量Cpの充電電圧Vpにより、レシーブ端子Tの電位Vも、0Vから下降し、t5でダイオード降下分Vfが差し引かれた2.6Vまで下降する。これにより、3.3Vの充電電圧Vpで充電されていた浮遊容量Cpの両端の極性は、充電方向の極性と逆転し、浮遊容量Cpを放電する放電電流が放電用抵抗素子Rに流れ、過渡現象によって浮遊容量Cpに蓄積されている電荷は、充電電圧Vpが0Vとなるt6まで放電される。
【0070】
尚、t5の後のレシーブ端子Tの電位Vは、浮遊容量Cpの充電電圧Vpが低下するにともなって上昇し、充電電圧Vpが0Vとなるt6で0Vまで上昇する。また、t3以降、この周期が完了するまで、逆流防止ダイオード3のカソード側の電位が接地電位に至るアノード側の電位より高くなるが、順方向に対して逆方向の電圧であるので、検出用コンデンサCxの充電電圧Vcxは放電されない。つまり、検出用コンデンサCxに充電電圧をVcx’が0Vである状態から、この1回目の周期が経過した後の検出用コンデンサCxの充電電圧Vcx(1)は、
【0071】
【数4】
【0072】
となる。
【0073】
検出回路1は、ドライブ信号の各周期で上記動作を繰り返すが、2回目以降のn回目の周期では、その直前のn-1回目の周期で、検出用コンデンサCxに一定の充電電圧Vcxが充電されているので、その充電電圧をVcx’とすれば、
n回目の周期のt2で充電される検出用コンデンサCxの充電電圧上昇分ΔVcxは、
【0074】
【数1】
【0075】
となる。
【0076】
また、(1)式から、c1/(c1+c2)をkとして、n回目の周期を終えた際の検出用コンデンサCxの充電電圧Vcx(n)は、
【0077】
【数5】
【0078】
で表される。
【0079】
従って、図3に示すように、一周期で検出用コンデンサCxに充電される充電電圧上昇分ΔVcxは、nが増加するほど小さくなり、検出用コンデンサCxの充電電圧Vcxが上昇するほど緩やかな傾斜となってV-Vfに近づく。つまり、検出用コンデンサCxの飽和電圧は、V-Vfとなる。
【0080】
ここで、上記(1)式において、c1はc2に比べて1/100程度と小さいので、一周期に充電される検出用コンデンサCxの充電電圧上昇分ΔVcxは、c1/c2に比例するとみなすことができ、浮遊容量Cpの容量c1がわずかに低下しただけでも、検出用コンデンサCxの充電電圧Vcxの上昇する波形の傾きは大きく低下する。特に、充電電圧Vcxを、検出用コンデンサCxの飽和電圧よりわずかに低い電圧に設定するスレッショルド電圧と比較すると、充電電圧Vcxが基準時からスレッショルド電圧に達するまでの経過時間の大きな時間差となって表れ、数10乃至数100fFの容量c1の微小変化を検出できる。
【0081】
図4は、放電用抵抗素子Rの抵抗値r1と検出用コンデンサCxの容量値c2がそれぞれ同一で、浮遊容量Cpの容量c1が、10.05pFの充電電圧Vcxの波形f、10pFの充電電圧Vcxの波形g、9.95pFの充電電圧Vcxの波形hを示す波形図で、スレッショルド電圧を飽和電圧よりわずかに低い1.6Vに設定すると、図に示すように、50fFの浮遊容量Cpの容量c1の変化であっても、基準時からスレッショルド電圧に達するまでの経過時間に19乃至23μsecの時間差が生じ、50fFの容量c1の変化を確実に検出できる。
【0082】
本実施の形態では、検出用コンデンサCxの充電電圧Vcxが、0Vの基準時から飽和電圧よりわずかに低い電圧に設定するスレッショルド電圧に達するまでの経過時間を計測する図示しない計時手段を備え、相対的に短い経過時間を計測することから、ドライブ端子Tとレシーブ端子T間への入力操作を検出する。
【0083】
また、本実施の形態では、ドライブ信号の電圧Vを、3.3V、逆流防止ダイオード3のダイオード降下分Vfを0.7Vとしているので、検出用コンデンサCxの充電電圧Vcxが収束する飽和電圧は、2.6Vとなるが、図3に示す充電電圧Vcxの各波形が示す飽和電圧は、2.2V以下と、これを下回っている。これは、ドライブ信号の立ち上がり期間(t0-t2)で、ドライブ信号の電圧が変化することにより、浮遊容量Cpと検出用コンデンサCxのそれぞれに、電圧の変化率に反比例する容量リアクタンスと、検出用コンデンサCxに並列に接続される放電用抵抗素子Rのインピーダンスが生じるためと考えられる。
【0084】
すなわち、ドライブ信号が3.3Vに安定するt2以降は、逆流防止ダイオード3がOFFとなるので、各周期での検出用コンデンサCxの充電は、ドライブ信号の電圧が変化するt0-t2の期間に行われ、この間、レシーブ端子Tの電位は、ドライブ端子Tとレシーブ端子T間の浮遊容量Cpの容量リアクタンスと、レシーブ端子Tと低圧側端子2b間の並列に接続された検出用コンデンサCxと放電用抵抗素子Rのインピーダンスとの比で定まる分圧となる。検出用コンデンサCxの充電電圧Vcxは、このレシーブ端子Tの分圧からダイオード降下分Vfを引いた電圧であるので、浮遊容量Cpの容量c1が減少すれば、検出用コンデンサCxの飽和電圧は低下し、検出用コンデンサCxの容量c2の低下や、放電用抵抗素子Rの抵抗値r1の増加で、飽和電圧は上昇する。
【0085】
図3は、検出回路1の他の回路素子の回路定数が同一であり、浮遊容量Cpの容量c1と放電用抵抗素子Rの抵抗値r1との組み合わせが異なるa、b、c、d、eの充電電圧Vcxの各波形を比較して示し、放電用抵抗素子Rの抵抗値r1が同一の1.5kΩであれば、波形b、c、dに示すように、浮遊容量Cpの容量c1が低下するにつれて飽和電圧は低下する。また、aとb、又はdとeの波形を比較して明らかなように、浮遊容量Cpの容量c1が同一であれば、放電用抵抗素子Rの抵抗値r1が低下すると、飽和電圧は低下する。
【0086】
ドライブ端子Tとレシーブ端子T間に形成される容量c1は、既知の固定値であり、入力操作によるその変化レベルも数pF以下と微小であるので、浮遊容量Cpの容量c1による飽和電圧の変化は少なく、放電用抵抗素子Rの抵抗値r1若しくは検出用コンデンサCxの容量c2を調整することにより、検出用コンデンサCxの飽和電圧を調整できる。
【0087】
以下、本発明の第2実施の形態に係る静電容量タッチパネル(以下、タッチパネルという)10を、図5を用いて説明する。尚、このタッチパネル10は、第1実施の形態に係る検出回路1を用いている物であり、本実施の形態の説明において、上述の検出回路1と同一若しくは相当する構成については、同一の番号を付してその説明を省略する。
【0088】
図5に示すように、このタッチパネル10は、図示しない絶縁パネルの表面を入力操作領域として、入力操作領域に、Y方向に沿って配線されたj本のドライブ端子TD1~TDjと、X方向に沿って配線されたi本のレシーブ端子TR1~TRiが配線されている。j本のドライブ端子TD1~TDjは、X方向に等ピッチで、i本のレシーブ端子TR1~TRiは、Y方向に等ピッチで配線され、ドライブ端子Tとレシーブ端子Tの各交差位置では、互いに絶縁して配線され、その間に浮遊容量Cpが形成されている。
【0089】
本実施の形態では、ドライブ端子TD1~TDjとレシーブ端子TR1~TRiとの組み合わせ毎に、第1実施の形態に係る検出回路1を用いて、その交差位置に形成される浮遊容量Cpの変化を検出するものであり、各ドライブ端子TD1~TDjの一端は、マイコン11のパルス波形のドライブ信号が出力される各出力ポートPA1~PAに接続され、各レシーブ端子TR1~TRiの一端と接地間に、放電用抵抗素子Rと、直列に接続された逆流防止ダイオード3及び検出用コンデンサCxが接続されている。また、各レシーブ端子TR1~TRi毎に、逆流防止ダイオード3のカソードと検出用コンデンサCxの間の入力端子4aは、マイコン11の各入力ポートPB1~PBに接続し、入力端子4aが接続する検出用コンデンサCxの充電電圧Vcxをマイコン11へ出力している。
【0090】
マイコン11は、信号源となる発信回路2と、発信回路2の出力に接続されたセレクタ14と、各レシーブ端子TR1~TRi毎に接続される入力端子4aを接地させるリセット手段と各入力端子4aから入力される検出用コンデンサCxの充電電圧Vcxを、スレッショルド電圧VTHと比較する比較手段を兼ねたポート読み込み部15と、絶縁パネル上で浮遊容量Cpを介して互いに交差する全てのドライブ端子TD1~TDjとレシーブ端子TR1~TRiとの組み合わせについて、充電電圧Vcxがスレッショルド電圧VTHに達するまでの経過時間を計測する計時手段となるテーブル16及びカウンタ17とを備えている。
【0091】
発信回路2は、上述のように、1MHzの固定周波数でパルス高さが3.3Vのパルス波形のドライブ信号を出力し、セレクタ14は、セレクトパターン制御部13の制御によって、発信回路2から出力されるドライブ信号を、出力ポートPA1~PAを介して1又は2以上の各ドライブ端子TD1~TDjへ選択的に出力する。ここでは、所定時間の走査周期でセレクタ14の出力を各出力ポートPA~PA毎に切り換え、一走査周期毎に各ドライブ端子TD1~TDjへドライブ信号を出力する。また、セレクトパターン制御部13の出力は、ポート読み込み部15とカウンタ17と後述する正規化演算処理部12にも接続し、ドライブ信号の出力を各ドライブ端子TD1~TDj毎に切り換えるリセットのタイミングが伝えられる。
【0092】
いずれかのドライブ端子TD1~TDjにドライブ信号が出力されることにより、ドライブ信号が出力されているドライブ端子(以下、ドライブ端子T’で表す)に交差する全てのレシーブ端子TR1~TRiについて、各レシーブ端子レシーブ端子Tに接続する検出用コンデンサCxがドライブ信号により充電され、ドライブ信号の周期毎に検出用コンデンサCxの充電電圧Vcxが上昇する。
【0093】
一方、全ての入力ポートPB1~PBに接続するポート読み込み部15は、ドライブ信号の出力が各ドライブ端子TD1~TDj間で切り替わる毎に、全ての入力ポートPB1~PBを「L」とし、各入力端子4aを接地させる。その結果、入力端子4aに接続する検出用コンデンサCxに蓄積されている電荷が放電され、全ての入力ポートPB1~PBを「L」とする基準時に、全ての検出用コンデンサCxの充電電圧Vcxは0Vとなっている。その後、ポート読み込み部15は、全ての入力ポートPB1~PBを「H」に切り換え、「H」に切り換えられた各入力ポートPB~PBから、ドライブ端子T’にドライブ信号が出力されることによって基準時から上昇する各検出用コンデンサCxの充電電圧Vcxを入力する。
【0094】
ポート読み込み部15は、各入力ポートPB~PBを介して入力端子4aから入力される検出用コンデンサCxの充電電圧Vcxを、所定電圧に設定するスレッショルド電圧VTHと比較し、「L」の状態とした全ての入力ポートPB~PBから入力された充電電圧Vcxがスレッショルド電圧VTHに達した入力ポートPBを「H」の状態とする。ここでは、スレッショルド電圧VTHは、全てのドライブ端子Tとレシーブ端子Tとが交差する全ての交差位置(x,y)をそれぞれ入力操作した際に検出される全ての検出用コンデンサCxの飽和電圧のうち最低飽和電圧より更に低い電圧に設定する。
【0095】
ポート読み込み部15の出力側には、全ての入力ポートPB~PBの状態をカウンタ17から出力されるカウント値と関連づけて記憶するテーブル16が接続され、ポート読み込み部15は、いずれかの入力ポートPBが「L」から「H」に変化する毎に、割り込み信号をテーブル16へ出力するとともに、「L」から「H」に変化した状態が変化した入力ポートPBを含む全ての入力ポートPB~PBについて、各入力ポートPB~PBの状態を、16進のデータで表し、テーブル16へ出力する。すなわち、各入力ポートPB~PB毎に1ビットを割り当て、「L」を0、「H」を1で表した2進のiビットデータを16進のデータに変換してテーブル16へ出力する。
【0096】
テーブル16は、割り込み信号が入力される毎に、同時にポート読み込み部15から出力される16進のデータを、その時、カウンタ17から出力されるカウント値と関連づけて記憶する。本実施の形態では、カウンタ17は、発信回路2の出力に接続し、1MHzのドライブ信号に同期してカウント値をカウントアップし、ドライブ信号の出力が各ドライブ端子TD1~TDj間で切り替わる基準時毎にリセットされるので、テーブル16に16進のデータに関連づけられたカウント値は、基準時からその16進のデータがテーブル16に記憶されるまでの経過時間を表している。
【0097】
正規化演算処理部12は、テーブル16に記憶された16進のデータを、2進のiビットデータに再変換して、その直前にテーブル16に記憶された16進のデータから再変換した2進のiビットデータと比較し、0から1に変化したビットの位置から、「L」から「H」に変化した入力ポートPBとその入力ポートPBに接続するレシーブ端子Tを特定する。また、テーブル16に16進のデータに関連づけて記憶されたカウント値は、このように特定されたレシーブ端子(以下、0から1に変化したビットの位置から特定されたレシーブ端子をレシーブ端子T’と表す)に接続する検出用コンデンサCxの充電電圧Vcxが基準時からスレッショルド電圧VTHに達するまでの経過時間をドライブ信号の1周期の単位で表している。従って、ドライブ信号の1周期である1μsec内に複数のレシーブ端子Tに接続する各検出用コンデンサCxの充電電圧Vcxがスレッショルド電圧VTHに達した場合には、複数のレシーブ端子T’が特定される。
【0098】
正規化演算処理部12は、テーブル16に記憶された全ての16進のデータについて、同様の処理を繰り返すことによって、ドライブ端子T’に浮遊容量Cpを介して交差する全てのレシーブ端子TR1~TRiについて、検出用コンデンサCxの充電電圧Vcxがスレッショルド電圧VTHに達するまでの経過時間(カウント値)を得て、ドライブ端子T’とレシーブ端子T’で特定される組み合わせ毎に、そのカウント値を関連づけて記憶部18に記憶する。
【0099】
その後、セレクトパターンに従ったセレクトパターン制御部13の制御によって、セレクタ14は、次の出力ポートPAに接続する。これによりドライブ信号の出力が新たなドライブ端子T’に切り換えられ、同様に、全てのドライブ端子TD1~TDjがドライブ端子T’となるまで、上述の処理を繰り返し、ixj通りのドライブ端子T’とレシーブ端子T’の組み合わせ毎に、経過時間を表すカウント値を記憶部18に記憶する。
【0100】
記憶部18は、ixj通りのドライブ端子T’とレシーブ端子T’の各組み合わせを、ドライブ端子T’とレシーブ端子T’の交差位置(x、y)で表し、ixj通りの交差位置(x、y)と、カウント値をそれぞれ関連づけて記憶する。交差位置(x、y)に関連づけて記憶されたカウント値は、そのドライブ端子T’に出力されるドライブ信号が、レシーブ端子T’との交差位置に形成される浮遊容量Cpを介して、レシーブ端子T’に接続する検出用コンデンサCxを充電し、その充電電圧Vcxがスレッショルド電圧VTHに達するまでの経過時間を表している。
【0101】
いずれかのX方向のxの位置に配線されたドライブ端子T(x)と、Y方向のyの位置に配線されたレシーブ端子T(y)との交差位置(x,y)に入力操作があったとすると、ドライブ端子T(x)とレシーブ端子T(y)間の浮遊容量Cpが減少し、そのレシーブ端子T(y)に接続する検出用コンデンサCxの充電速度が遅なくなり、ドライブ端子T(x)とレシーブ端子T(y)の交差位置(x、y)に関連づけて記憶部18に記憶されているカウント値が増加する(経過時間が長くなる)。そこで、タッチ位置検出部19は、ixj通りの全てのドライブ端子T’とレシーブ端子T’の組み合わせから、経過時間を表すカウント値が最大となるドライブ端子T(x)とレシーブ端子T(y)の組み合わせを選択し、ドライブ端子T(x)とレシーブ端子T(y)との交差位置(x,y)への入力操作を検出するとともに、交差位置(x,y)を入力操作位置(x,y)として検出する。
【0102】
尚、入力操作によって、入力操作位置(x,y)の周囲で交差するドライブ端子T(x)とレシーブ端子T(y)間の浮遊容量Cpも減少し、その組み合わせに関連づけて記憶されたカウント値も増加するので、選択したドライブ端子T(x)とレシーブ端子T(y)の周囲で交差するドライブ端子T(x)とレシーブ端子T(y)の交差位置(x’、y’)について記憶されたカウント値を考慮して、入力操作位置(x,y)を検出してもよい。
【0103】
本実施の形態では、スレッショルド電圧VTHを、全ての交差位置(x,y)についてそれぞれ入力操作した際の各検出用コンデンサCxの最低飽和電圧より更に低い電圧に設定しているが、検出用コンデンサCxの飽和電圧は、上述の通り、放電用抵抗素子Rの抵抗値r1や検出用コンデンサCxの容量c2の変化によって変動し、いずれかのドライブ端子TD1~TDjへドライブ信号を出力する1走査周期内に、検出用コンデンサCxの充電電圧Vcxがスレッショルド電圧VTHに達しない場合が生じる。
【0104】
そこで、全ての交差位置(x,y)について入力操作があったときの検出用コンデンサCxの飽和電圧を求めた後、全ての各飽和電圧がほぼ同一となるように各放電用抵抗素子Rの抵抗値r1を調整し、ほぼ同一に調整した飽和電圧よりわずかに低い電圧をスレッショルド電圧VTHとする。このようにスレッショルド電圧VTHを設定すれば、少なくともドライブ端子T’が切り換えられる1走査周期内に全てのドライブ端子T’とドライブ端子T’に交差するレシーブ端子Tの組み合わせについて、その間の浮遊容量Cpの容量c1変化を検出できる。
【0105】
また、スレッショルド電圧VTHを検出用コンデンサCxの飽和電圧よりわずかに低い電圧に設定するので、図4に示すように、入力操作による浮遊容量Cpの容量c1の50fF程度の変化であっても、大きいカウント値(経過時間)の変化から検出することができ、確実に入力操作を検出できる。
【0106】
また、上述の実施の形態では、ドライブ信号の出力が各ドライブ端子TD1~TDj間で切り替わる1走査周期毎に、カウント値をリセットし、テーブル16に記憶されたデータをリセットしているが、全てのドライブ端子TD1~TDjがドライブ端子T’となる全期間中、連続してカウンタ17のカウント値をカウントアップし、一つのテーブル16に、全期間中に変化する全ての入力ポートPB~PBの状態とその状態に関連づけられるカウント値とをまとめて記憶し、カウント値からいずれのドライブ端子TD1~TDjにドライブ信号が出力されているかを判別し、ixj通りのドライブ端子T’とレシーブ端子T’の組み合わせ毎のカウント値を求めて、記憶部18に記憶させてもよい。
【0107】
上述の各実施の形態では、ドライブ端子Tとレシーブ端子T間に形成される浮遊容量Cpの容量c1の変化を、基準時から充電電圧Vcxがスレッショルド電圧VTHに達するまでのカウント値(経過時間)から検出しているが、容量c1の変化は、入力端子4aから入力される検出用コンデンサCxの充電速度の変化からも検出できるので、検出用コンデンサCxの充電電圧Vcxの変化をA/Dコンバータなどで読み取り、充電電圧Vcxの上昇変化率の低下から浮遊容量Cpの容量c1が低下する入力操作を検出してもよい。
【0108】
また、検出用コンデンサCxの充電が開始される充電電圧Vcxが0Vの時点を基準時としているが、充電電圧Vcxが上昇している間の他の時点としてもよい。
【0109】
また、上述の各実施の形態では、パルス波形のドライブ信号を信号源から出力しているが、電圧変動があれば、必ずしも矩形波に限らず、正弦波などのドライブ信号であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0110】
本発明は、入力操作によって微小に変化する静電容量から非接触で入力操作を検出する浮遊容量の変化検出回路を用いた静電容量式タッチパネルに適している。
【符号の説明】
【0111】
1 浮遊容量の変化検出回路
2 発信回路(発信源)
3 逆流防止ダイオード
10 静電容量式タッチパネル
ドライブ端子
レシーブ端子
R 放電用抵抗素子
Cx 検出用コンデンサ
Vcx 検出用コンデンサCxの充電電圧
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7