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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-21
(45)【発行日】2023-08-29
(54)【発明の名称】車両のスライドドア装置
(51)【国際特許分類】
   B60J 5/06 20060101AFI20230822BHJP
   B60J 5/04 20060101ALI20230822BHJP
   E05F 11/54 20060101ALI20230822BHJP
   E05F 15/655 20150101ALI20230822BHJP
【FI】
B60J5/06 H
B60J5/04 C
E05F11/54 A
E05F15/655
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020024972
(22)【出願日】2020-02-18
(65)【公開番号】P2021130317
(43)【公開日】2021-09-09
【審査請求日】2022-04-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000110321
【氏名又は名称】トヨタ車体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】玉井 貴也
(72)【発明者】
【氏名】成瀬 厚司
(72)【発明者】
【氏名】小松 教裕
【審査官】久保田 信也
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-061766(JP,A)
【文献】特開2019-131123(JP,A)
【文献】特開平07-076222(JP,A)
【文献】特開平06-171367(JP,A)
【文献】特開2007-276551(JP,A)
【文献】特開2010-037762(JP,A)
【文献】特開2019-107988(JP,A)
【文献】特開平2-60825(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0356068(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0356069(US,A1)
【文献】米国特許第6328374(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60J 5/06
B60J 5/04
E05F 11/54
E05F 15/655
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両ボディのドア開口部を開閉するスライドドアをスライド可能に保持する車両のスライドドア装置であって、
前記車両ボディのドア開口部の上下に設けられており、前記スライドドアのスライドをガイドする上下のガイドレールと、
前記スライドドアの上下に設けられており、前記上下のガイドレールに沿ってそれぞれ移動可能に構成された上下のローラーユニットと、
を有しており、
前記上下のローラーユニットと前記スライドドア間には、前記上下のローラーユニットと前記スライドドアとをそれぞれスライド方向に相対移動可能に保持する上下の相対移動機構が設けられており、
前記上下の相対移動機構は、スライド方向に延びる支持レールと、前記支持レールに嵌合して、その支持レールに沿って摺動可能な摺動子とを備えている車両のスライドドア装置。
【請求項2】
請求項1に記載された車両のスライドドア装置であって、
前記ローラーユニットのブラケット部には、前記スライドドアが閉じられたときに、前記車両ボディの被嵌合部と嵌合する嵌合部が設けられている車両のスライドドア装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2のいずれかに記載された車両のスライドドア装置であって、
前記スライドドアは、車両ボディ側のモータの駆動力を利用して前記車両ボディに対して移動する構成であり、
前記相対移動機構は、スライドドア内蔵モータの駆動力を利用して前記ローラーユニットを前記スライドドアに対して移動させる構成であり、
前記車両ボディ側のモータと前記スライドドア内蔵モータとが同時に駆動されるように構成されている車両のスライドドア装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両ボディのドア開口部を開閉するスライドドアをスライド可能に保持する車両のスライドドア装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両のスライドドア装置に関する技術が特許文献1に記載されている。特許文献1のスライドドア装置では、図11に示すように、スライドドア100側に、そのスライドドア100のスライドをガイドするガイドレール102が設けられている。また、車両ボディ側には、前記ガイドレール102に沿って相対移動可能なローラーユニット104がブラケット105に支持された状態で設けられている。ローラーユニット104は、ブラケット105に対して、図11の二点鎖線に示す位置(全閉位置)と実線に示す位置(全開位置)間で水平回動できるように構成されている。これにより、スライドドアの開閉ストローク量をブラケット105に対するローラーユニット104の回動分だけ大きくできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-107988号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記したように、ブラケット105に対してローラーユニット104を回動させる構造では、スライドドアの開閉ストローク量を希望する値にまで大きくすることは難しい。このため、車両ボディのドア開口部からの後部座席への乗降性を十分に向上させることができない。
【0005】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、本発明が解決しようとする課題は、ドア開口部からの後部座席への乗降性を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した課題は、各発明によって解決される。第1の発明は、車両ボディのドア開口部を開閉するスライドドアをスライド可能に保持する車両のスライドドア装置であって、前記車両ボディのドア開口部の上下に設けられており、前記スライドドアのスライドをガイドする上下のガイドレールと、前記スライドドアの上下に設けられており、前記上下のガイドレールに沿ってそれぞれ移動可能に構成された上下のローラーユニットとを有しており、前記上下のローラーユニットと前記スライドドア間には、前記上下のローラーユニットと前記スライドドアとをそれぞれスライド方向に相対移動可能に保持する上下の相対移動機構が設けられており、前記上下の相対移動機構は、スライド方向に延びる支持レールと、前記支持レールに嵌合して、その支持レールに沿って摺動可能な摺動子とを備えている。
【0007】
本発明によると、相対移動機構によりローラーユニットとスライドドアとがスライド方向に相対移動可能に保持されている。このため、例えば、スライドドアを開く際、スライドドアに設けられたローラーユニットがガイドレールの端部に到達した場合でも、前記スライドドアは相対移動機構の動作によりローラーユニットに対してスライド方向に移動可能になる。即ち、ローラーユニットに対してスライドドアが移動可能な寸法だけ、スライドドアのスライド量が増加する。これにより、ドア開口部を広く開放できるようになり、ドア開口部から後部座席への乗降性が向上する。
また、上下の相対移動機構は、スライド方向に延びる支持レールと、前記支持レールに嵌合して、その支持レールに沿って摺動可能な摺動子とを備えている。
このため、スライドドアの開閉ストローク量を希望する値にまで大きくできる。
【0009】
第2の発明によると、ローラーユニットのブラケット部には、スライドドアが閉じられたときに、車両ボディの被嵌合部と嵌合する嵌合部が設けられている。これにより、スライドドアが閉じられた状態で、車両ボディに対するスライドドアのガタツキを抑制できる。
【0010】
第3の発明によると、スライドドアは、車両ボディ側のモータの駆動力を利用して車両ボディに対して移動する構成であり、相対移動機構は、スライドドア内蔵モータの駆動力を利用してローラーユニットをスライドドアに対して移動させる構成であり、前記車両ボディ側のモータと前記スライドドア内蔵モータとが同時に駆動されるように構成されている。これにより、相対移動機構を備えるスライドドアの開閉動作が相対移動機構を有しないスライドドアの開閉動作と同じ時間で行えるようになる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によると、ドア開口部からの後部座席への乗降性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態1に係るスライドドア装置を備える車両のスライドドア閉時の模式斜視図である。
図2】前記車両のスライドドア開時の模式斜視図である。
図3】前記車両のスライドドア開時における車両ボディとスライドドアとの関係を表す正面図である。
図4】前記車両ボディのアッパーガイドレール、前記スライドドアのアッパーローラーユニット、上部相対移動機構等を表す縦断面図(図1のIV-IV矢視断面図)である。
図5】前記車両ボディ、及び前記スライドドアのアッパーローラーユニット、上部相対移動機構等を前上方から見た斜視図(図2のV矢視図)である。
図6】前記車両ボディのロアガイドレール、前記スライドドアのロアローラーユニット、下部相対移動機構等を表す縦断面図(図1のVI-VI矢視断面図)である。
図7】下部相対移動機構を表す模式拡大図(図6のVII矢視拡大図)である。
図8】前記車両ボディ、及び前記スライドドアのロアローラーユニット、下部相対移動機構等を左前方から見た斜視図(図2のVIII矢視図)である。
図9】前記スライドドアのロアローラーユニット、下部相対移動機構等を前方から見た斜視図である。
図10】センターローラーユニット、スライドドア中央部を左後方から見た斜視図(図2のX矢視図)である。
図11】従来のスライドドア装置の動作を表す模式平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
〔実施形態1〕
以下、図1図10に基づいて本発明の実施形態1に係る車両のスライドドア装置について説明する。本実施形態に係るスライドドア装置は、車両左側に設けられたスライドドア装置である。ここで、図中に示す前後左右、及び上下は、本実施形態に係るスライドドア装置を備える車両の前後左右、及び上下に対応している。
【0014】
<車両ボディ10の概要について>
車両ボディ10の側面には、図2に示すように、前部座席に対応するフロントドア開口部11と、中央座席R1、及び後部座席R2に対応するリヤドア開口部12が形成されている。そして、フロントドア開口部11がドアヒンジ(図示省略)を中心に回動可能なフロントドア15により開閉可能に構成されている。また、リヤドア開口部12が、図1図2に示すように、スライドドア40により開閉可能に構成されている。
【0015】
<スライドドア装置の概要について>
車両ボディ10には、図2図3に示すように、スライドドア40をスライド方向にガイドするアッパーガイドレール21とロアガイドレール22とセンターガイドレール23とが車両前後方向に延びるように設けられている。アッパーガイドレール21とロアガイドレール22とは、リヤドア開口部12の上下に設けられており、センターガイドレール23は、図1図3に示すように、リヤドア開口部12の後側で車両ボディの外側面の高さ方向中央位置に設けられている。
【0016】
アッパーガイドレール21には、図3等に示すように、スライドドア40の前端上部に設けられた上部ローラーユニット31がアッパーガイドレール21に沿って転動可能な状態で連結されている。ロアガイドレール22には、スライドドア40の前端下部に設けられた下部ローラーユニット32がロアガイドレール22に沿って転動可能な状態で連結されている。同様に、センターガイドレール23には、図10に示すように、スライドドア40の後端中央部に設けられた中央部ローラーユニット33がセンターガイドレール23に沿って転動可能な状態で連結されている。これにより、スライドドア40は各ガイドレール21,22,23に沿ってスライドが可能になる。
【0017】
<アッパーガイドレール21の取付け部周辺構造について>
アッパーガイドレール21は、図4に示すように、断面略逆U字形に形成されたレールであり、車両ボディ10のルーフサイド部160の下側に形成されたレール収納空間S1内に設けられている。レール収納空間S1は、車幅方向外側が開口部となるように断面略コ字形に形成されている。ルーフサイド部160は、アウタパネル161とインナパネル162とが互いのフランジ部161f,162fの位置で合わせられることで車両前後方向に延びる筒状に形成されている。また、ルーフサイド部160のインナパネル162における車幅方向内側の縦壁部162wには、図4に示すように、レール収納空間S1を形成する断面略L字形のL形パネル17が接合されている。
【0018】
ルーフサイド部160の下側のフランジ部161f,162fは、図4に示すように、レール収納空間S1の開口位置に設けられている。そして、ルーフサイド部160のフランジ部161f,162fには、ルーフサイド部160とスライドドア40間をシールする上部ウエザストリップ16wが取付けられている。アッパーガイドレール21は、上部ウエザストリップ16wに対してレール収納空間S1の内側に入り込んだ状態でルーフサイド部160のインナパネル162の下面に水平に取付けられている。また、L形パネル17の下端縁には、リヤドア開口部12の周縁とスライドドア40間をシールする枠状のウエザストリップ17wの上辺部が取付けられている。
【0019】
<ロアガイドレール22の取付け部周辺構造について>
ロアガイドレール22は、図6に示すように、断面略逆U字形に形成されたレールであり、車両ボディ10のロッカー部180に形成されたレール収納空間S2内に設けられている。レール収納空間S2は、車幅方向外側が開口部となるように断面略コ字形に形成されている。ロッカー部180は、リヤドア開口部12の下辺部において車両前後方向に延びる筒状の骨格部材である。ロッカー部180は、ロッカーインナー181と、ロッカーアウター183と、そのロッカーアウター183の上部外側を覆うサイドアウター187とから構成されている。
【0020】
ロッカーインナー181は、断面略横向きU字形に形成されており、上端位置と下端位置とにフランジ部181u,181dが形成されている。また、ロッカーインナー181の上端角部には、フロアパネル19が上から重ねられた状態で接合されている。ロッカーアウター183は、断面略L字形の上部パネル184と、上部パネル184の下側でレール収納空間S2の天井部を形成する天井パネル185と、レール収納空間S2の底部を形成する断面略横向きU字形の下部パネル186とから構成されている。
【0021】
ロッカーアウター183の上部パネル184には、上端位置に縦向きフランジ部184uが形成されており、この縦向きフランジ部184uがサイドアウター187のフランジ部187uとともにロッカーインナー181のフランジ部181uと接合されている。そして、また、ロッカーアウター183の下部パネル186の下端位置には縦向きフランジ部186dが形成されており、この縦向きフランジ部186dがロッカーインナー181のフランジ部181dと接合されている。これにより、ロッカー部180は、レール収納空間S2を備える筒状に形成される。
【0022】
ロッカー部180の上部のフランジ部181u,184u,187uには、リヤドア開口部12の周縁とスライドドア40間をシールする枠状のウエザストリップ17wの下辺部が取付けられている。さらに、ウエザストリップ17wからロッカーインナー181、フロアパネル19を覆って固定ステップ12sが設けられている。ロアガイドレール22は、図6に示すように、レール収納空間S2の車幅方向に中央位置でロッカー部180(ロッカーアウター183)の天井パネル185の下面に水平に取付けられている。また、レール収納空間S2には、スライドドア40をスライドさせる駆動機構、及び駆動モータ(図示省略)が収納されている。
【0023】
<センターガイドレール23の取付け部周辺構造について>
センターガイドレール23は、図1図3及び図10に示すように、車両ボディの外側面(意匠面)の高さ方向中央位置に設けられている。センターガイドレール23は、アッパーガイドレール21、及びロアガイドレール22よりも一定寸法だけ長くなるように形成されており、センターガイドレール23の後端部がバックランプユニット14のケース部14cの内側まで延びている(図10参照)。このため、バックランプユニット14のケース部14cには、中央部ローラーユニット33との干渉を避けるため、センターガイドレール23に沿って切欠14xが形成されている。
【0024】
<スライドドア40について>
スライドドア40は、ドア本体部40mと、ドア本体部40mの上側に設けられた窓枠部40wとを備えている。そして、上記したように、スライドドア40の窓枠部40wの前端上部に、図3に示すように、上部ローラーユニット31が設けられており、スライドドア40のドア本体部40mの前端下部に下部ローラーユニット32が設けられている。また、スライドドア40のドア本体部40mの後端上部に、図10に示すように、中央部ローラーユニット33が設けられている。
【0025】
<上部ローラーユニット31について>
上部ローラーユニット31は、スライドドア40の上部を支えた状態で、アッパーガイドレール21に沿って転動するユニットであり、図4図5に示すように、上部相対移動機構50を介してスライドドア40の窓枠部40wの前端上部に取付けられている。上部ローラーユニット31は、図4に示すように、アッパーガイドレール21内を転動する水平な転動ローラ31rと、転動ローラ31rの軸心が縦向きになるように、その転動ローラ31rを回転自在に支持するブラケット部31bとから構成されている。そして、上部ローラーユニット31のブラケット部31bが上部相対移動機構50の支持レール51に固定されている。また、上部ローラーユニット31のブラケット部31bには、図5に示すように、スライドドア40が閉じられたときに車両ボディ10の位置決め孔(図示省略)と嵌合する位置決めピン31pが設けられている。
【0026】
<上部相対移動機構50について>
上部相対移動機構50は、上部ローラーユニット31をスライド方向に移動可能な状態でスライドドア40の窓枠部40wの前端上部に取付ける機構である。上部相対移動機構50は、上記した支持レール51と、その支持レール51に沿って摺動可能に連結された摺動子53とから構成されている。支持レール51は、直線状のレールであり、図5に示すように、スライド方向(車両前後方向)に延びている。そして、前記支持レール51の前端部に上部ローラーユニット31のブラケット部31bが固定されている。また、摺動子53は、図4に示すように、スライドドア40の窓枠部40wの上部所定位置に固定されている。これにより、上部ローラーユニット31は、スライドドア40に対してスライド方向に相対移動可能な状態に保持される。
【0027】
<下部ローラーユニット32について>
下部ローラーユニット32は、スライドドア40の下部を支えた状態で、ロアガイドレール22に沿って転動するユニットであり、図6図9に示すように、下部相対移動機構60を介してスライドドア40のドア本体部40mの前端下部に取付けられている。下部ローラーユニット32は、図6に示すように、ロアガイドレール22内を転動する水平な転動ローラ32rと、ロッカー部180の下部パネル186上を転動する荷重受けローラ(図示省略)と、転動ローラ32r、及び荷重受けローラを回転自在に支持するブラケット部32bとから構成されている。そして、下部ローラーユニット32のブラケット部32bが下部相対移動機構60のブラケット支持部62に固定されている。
【0028】
<下部相対移動機構60について>
下部相対移動機構60は、下部ローラーユニット32をスライドドア40に対してスライド方向に移動させる機構である。下部相対移動機構60は、図6図8に示すように、上記したブラケット支持部62と、そのブラケット支持部62の外側面に設けられた複数本(図では3本)の支持レール63と、それぞれの支持レール63に沿って摺動可能に連結された摺動子64とを備えている。そして、前記摺動子64が、図6に示すように、スライドドア40(ドア本体部40m)のインナパネル43の下端部に固定されている。
【0029】
ブラケット支持部62は、図7図9に示すように、略箱形に形成されており、スライドドア40の内側の前端下部に形成された凹部43k(図9参照)に格納できるように構成されている。即ち、ブラケット支持部62がスライドドア40の凹部43kに格納された状態で、ブラケット支持部62の前端面62fがスライドドア40の前端面40fに合わせられる(格納位置)。また、ブラケット支持部62は、支持レール63と摺動子64の働きで、図8に示すように、スライドドア40の前端面40fから一定寸法だけ前方に張り出した張り出し端位置まで移動できるようになる。また、ブラケット支持部62の前端面62fには、図9に示すように、スライドドア40が閉じられたときに車両ボディ10の壁面(図示省略)に当接するストッパ62sと、位置決め部材(図示省略)と嵌合する嵌合部材62xとが設けられている。
【0030】
下部相対移動機構60は、図7に示すように、ブラケット支持部62をスライドドア40に対して格納位置と張り出し端位置間で移動させるラック65とピニオン66、及び前記ピニオン66を回転させるモータ67を備えている。ラック65は、支持レール63の上面にスライド方向(車両前後方向)に延びるように位置決めされた状態で固定されている。ピニオン66は、モータ67の回転軸に固定された状態で、ラック65と噛合している。そして、前記モータ67が、図6に示すように、モータブラケット67bを介してスライドドア40のインナパネル43に支持されている。
【0031】
上記構成により、モータ67が正転すると、ラック65とピニオン66の噛合作用でブラケット支持部62に対して張り出し端位置方向(前方向)の駆動力が加わる。これにより、ブラケット支持部62、及びそのブラケット支持部62に支持されている下部ローラーユニット32が支持レール63と摺動子64の働きにより、スライドドア40に対して前方に移動する。即ち、モータ67が正転することで、ブラケット支持部62、及び下部ローラーユニット32が張り出し端位置まで移動できるようになる。また、モータ67が逆転することで、上記とは逆にブラケット支持部62、及び下部ローラーユニット32が張り出し端位置から格納位置まで戻るようになる。
【0032】
<中央部ローラーユニット33について>
中央部ローラーユニット33は、スライドドア40のドア本体部40mの上部を支えた状態で、センターガイドレール23に沿って転動するユニットであり、図10に示すように、ドア本体部40mの裏側上部に直接的に取付けられている。即ち、中央部ローラーユニット33は、スライドドア40のドア本体部40mに対して相対移動不能に保持されている。このため、相対移動機構50,60を介してスライドドア40に取付けられている上部、下部のローラーユニット31,32と比べて、相対移動機構が存在しない中央部ローラーユニット33は、その分だけ長いセンターガイドレール23が必要になる。このため、センターガイドレール23は、上記したように、アッパーガイドレール21、及びロアガイドレール22よりも一定寸法だけ長くなるように構成されている。
【0033】
<スライドドア装置の動作について>
スライドドア40の開スイッチが操作されると、ドアロック(図示省略)が解除されてロッカー部180のレール収納空間S2に収納された前記駆動装置、及び駆動モータが動作し、スライドドア40が上部、中央部、及び下部のガイドレール21,22,23に沿って開方向(後方向)にスライドする。この状態で、スライドドア40内の下部相対移動機構60のモータ67が正転方向に駆動され、ラック65とピニオン66の噛合作用でブラケット支持部、及び下部ローラーユニット32が張り出し端位置まで前方に移動する(図8参照)。
【0034】
次に、スライドドア40が全開位置の近傍まで到達すると、スライドドア40の上部ローラーユニット31がアッパーガイドレール21の後端部に当接する。このとき、スライドドア40は後方にスライド中であるため、前記スライド力により上部ローラーユニット31に連結されている上部相対移動機構50の支持レール51がスライドドア40の上部の摺動子53から前方に引き出される。即ち、上部ローラーユニット31がアッパーガイドレール21の後端部に到達しても、上部相対移動機構50の支持レール51と摺動子53との働きで、スライドドア40の後方スライドが妨げられない。そして、下部ローラーユニット32と中央部ローラーユニット33とがそれぞれアッパーガイドレール21とセンターガイドレール23との後端部に到達した段階で、スライドドア40が停止して、スライドドア40は全開位置に保持される。
【0035】
スライドドア40が全開位置にある状態で、スライドドア40の閉スイッチが操作されると、前記駆動装置、及び駆動モータが動作し、スライドドア40が上部、中央部、及び下部のガイドレール21,22,23に沿って閉方向(前方向)にスライドする。さらに、スライドドア40内の下部相対移動機構60のモータ67が逆転方向に駆動され、ブラケット支持部、及び下部ローラーユニット32が格納位置まで後方に移動する。そして、スライドドア40が全閉位置の近傍まで到達すると、スライドドア40の上部ローラーユニット31がアッパーガイドレール21の前端部に当接し、さらに上部ローラーユニット31の位置決めピン31pが車両ボディ10の位置決め孔(図示省略)と嵌合する。
【0036】
これにより、スライドドア40の前方スライド力で上部ローラーユニット31、上部相対移動機構50の支持レール51がスライドドア40の上部の摺動子53に対して押し込まれるようになる。そして、下部ローラーユニット32と中央部ローラーユニット33とがそれぞれアッパーガイドレール21とセンターガイドレール23との前端部に到達した段階で、スライドドア40が停止して、スライドドア40は全閉位置に保持される。さらに、スライドドア40が閉じられることで、下部相対移動機構60のブラケット支持部62のストッパ62sが車両ボディ10の壁面(図示省略)に当接し、ブラケット支持部62の嵌合部材62xが車両ボディ10の位置決め部材(図示省略)と嵌合するようになる。
【0037】
<本実施形態において使用した用語と本発明に係る用語との対応>
本実施形態のアッパーガイドレール21、ロアガイドレール22が本発明のガイドレールに相当し、上部ローラーユニット31、下部ローラーユニット32が本発明のローラーユニットに相当する。また、上部ローラーユニット31の位置決めピン31pと下部ローラーユニット32の嵌合部材62xとが本発明のローラーユニットの嵌合部に相当する。さらに、上部相対移動機構50、及び下部相対移動機構60が本発明の相対移動機構に相当する。また、下部相対移動機構60のモータ67が本発明のスライドドア内蔵モータに相当する。
【0038】
<本実施形態に係るスライドドア装置の長所について>
本実施形態に係るスライドドア装置によると、上下の相対移動機構50,60により上下のローラーユニット31,32とスライドドア40とがスライド方向に相対移動可能に保持されている。このため、例えば、スライドドア40を開く際、スライドドア40に設けられたローラーユニット31,32がガイドレール21,22の端部に到達した場合でも、スライドドア40は相対移動機構50,60の動作によりローラーユニット31,32に対してスライド方向に移動可能になる。即ち、ローラーユニット31,32に対してスライドドア40が移動可能な寸法だけ、スライドドア40のスライド量が増加する。これにより、リヤドア開口部12を広く開放できるようになり、リヤドア開口部12から後部座席への乗降性が向上する。
【0039】
また、ローラーユニット31,32のブラケット部31b,32bには、スライドドア40が閉じられたときに、車両ボディ10の位置決め孔、位置決め部材(被嵌合部)と嵌合する位置決めピン31p、嵌合部材62x(嵌合部)が設けられている。これにより、スライドドア40が閉じられた状態で、車両ボディ10に対するスライドドア40のガタツキを抑制できる。また、車両ボディ側のモータと下部相対移動機構60のモータ67とが同時に駆動されるため、相対移動機構50,60を備えるスライドドア40の開閉動作が相対移動機構を有しないスライドドアの開閉動作と同じ時間で行えるようになる。
【0040】
[変更例]
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明を逸脱しない範囲における変更が可能である。例えば、本実施形態では、ラック65とピニオン66の機構、及びモータ67により、下部ローラーユニット32とスライドドア40とを相対移動させる構成を例示した。しかし、ラック65、ピニオン66、及びモータ67を省略して、手動により下部ローラーユニット32とスライドドア40とを相対移動させる構成でも可能である。また、本実施形態では、中央部ローラーユニット33とスライドドア40とを直接的に連結する例を示した。しかし、中央部ローラーユニット33とスライドドア40とを相対移動機構を介して連結することで、センターガイドレール23を短く製作し、バックランプユニット14との干渉を避けることが可能になる。
【符号の説明】
【0041】
10・・・・車両ボディ
12・・・・リヤドア開口部
21・・・・アッパーガイドレール(ガイドレール)
22・・・・ロアガイドレール(ガイドレール)
23・・・・センターガイドレール(ガイドレール)
31p・・・位置決めピン(嵌合部)
31・・・・上部ローラーユニット(ローラーユニット)
32・・・・下部ローラーユニット(ローラーユニット)
33・・・・中央部ローラーユニット(ローラーユニット)
40・・・・スライドドア
50・・・・上部相対移動機構
51・・・・支持レール
53・・・・摺動子
60・・・・下部相対移動機構
62x・・・嵌合部材(嵌合部)
63・・・・支持レール
64・・・・摺動子
65・・・・ラック
66・・・・ピニオン
67・・・・モータ
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