IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日油株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-21
(45)【発行日】2023-08-29
(54)【発明の名称】樹脂用添加剤および樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 101/00 20060101AFI20230822BHJP
   C08L 71/00 20060101ALI20230822BHJP
   C08L 71/02 20060101ALI20230822BHJP
   C08K 5/3492 20060101ALI20230822BHJP
   C08G 65/26 20060101ALI20230822BHJP
【FI】
C08L101/00
C08L71/00 Y
C08L71/02
C08K5/3492
C08G65/26
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020025540
(22)【出願日】2020-02-18
(65)【公開番号】P2021130750
(43)【公開日】2021-09-09
【審査請求日】2022-06-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000004341
【氏名又は名称】日油株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002826
【氏名又は名称】弁理士法人雄渾
(72)【発明者】
【氏名】村岡 俊秀
(72)【発明者】
【氏名】藤井 基隆
【審査官】尾立 信広
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-251399(JP,A)
【文献】特開昭62-195054(JP,A)
【文献】特開昭53-096097(JP,A)
【文献】特開平07-282619(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0098363(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00-13/08
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂と金属材料間の密着性を向上させるための樹脂用添加剤であって、
下記一般式(1)で表される、トリアジン骨格を有するポリアルキレングリコール誘導体からなることを特徴とする、脂用添加剤。
【化1】
(式(1)中、Rは、芳香族炭化水素基を表し、AOは炭素数2~4のオキシアルキレン基を表す。mは、オキシプロピレン基の平均付加モル数を表し、1~40である。nは、前記オキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、0~40である。)
【請求項2】
前記式(1)中のRがフェニル基であることを特徴とする、請求項1に記載の脂用添加剤。
【請求項3】
樹脂100質量部に対して、請求項1または2に記載の脂用添加剤0.01~30質量部を配合してなることを特徴とする、樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂と金属材料間の密着性を向上させるための樹脂用添加剤および該添加剤を含有する樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂等の樹脂材料は、半導体材料、電子部品、プリント基板、塗料分野において、接着剤、封止材、放熱材、絶縁材、レジスト材料、バインダー、インク材料等、様々な原料として使用されている。近年、機器の軽量化および耐久性の向上、電子材料のさらなる高性能化に対応するため、上記のような樹脂材料を用いた金属-樹脂複合材料が開発されている。
樹脂材料には種々の特性が求められるが、特に金属と樹脂の密着性が不十分であると、剥がれや電子部品の絶縁不良、強度低下を引き起こすため、さらなる密着性の向上が求められている。
【0003】
このような課題を解決するための手段として、特許文献1には、環状アミンまたは炭素数5以上の非環状アミンのアルキレンオキシド付加物ビニルカルボン酸エステルを構成単位として含有する重合体を、密着性向上剤として使用することを特徴とする、基材の密着性向上方法が示されている。この密着性向上剤は、ガラス、金属、プラスチック、紙、繊維、木材、コンクリート、石膏ボード、レンガ、陶器などへの塗膜の密着性を向上させることが記載されている。しかし、これらの誘導体は、分子構造中にエステル結合を有しているため、使用条件によっては加水分解が生じ、樹脂の劣化を引き起こす可能性があった。
【0004】
特許文献2には、グアニジン化合物とトリアゾール類もしくはテトラゾール類からなることを特徴とする、有機溶剤可溶性樹脂硬化被膜の基材への密着性を向上させるための密着性向上剤が示されている。この密着性向上剤は、樹脂硬化被膜と基材との密着性を向上させ、有機溶剤樹脂溶液に直接添加することができ、基材表面を処理することができるため、用途が広範囲にわたり、コスト的にも有利となることが記載されている。しかし、これらの化合物は、添加量が多くなると有機溶剤可溶性樹脂への溶解性が低下することがあるため添加量を抑える必要があり、十分な密着性向上効果が得られないことがあった。
【0005】
特許文献3には、2,4-ジアミノ-6-[2-(2-アミノエチルチオ)エチル]-1,3,5-トリアジン等の硫黄を含有するトリアジン誘導体が示されている。このトリアジン化合物をポリマーの添加剤として使用した場合には、電子部品やプリント基板等のマイグレーション防止や、電子部品やプリント基板を構成する金属材料および無機材料と、ポリマーとの密着性を高める効果を発揮することが記載されている。しかし、これらの誘導体は分子構造中に硫黄原子を有しているため、特に電子用途で使用した場合には、硫黄系ガスの発生による腐食等が問題となる可能性があった。
【0006】
また、これらの誘導体は、室温における有機溶剤への溶解性の観点から、使用可能な溶剤が限られることがあった。電子部品・材料用途においては、樹脂組成物を成型する際に溶剤を使用することは一般的であり、例えば、特許文献4には、積層板に接着剤層を形成する際に、ポリビニルブチラール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂をメチルエチルケトン/トルエンの混合溶剤に溶解させ、銅箔上に塗布することが記載されている。このように、樹脂用添加剤を用いる場合には、加温等を行うことなく、室温にて幅広い溶剤に溶解すること求められる。さらに、環境配慮等の観点から、水溶解性樹脂もしくはエマルジョンタイプなどの水系樹脂も広く利用されており、水系樹脂でも使用可能な添加剤が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開平8-1090号公報
【文献】国際公開第2014/125589号
【文献】特開2015-218152号公報
【文献】特開平7-26242号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、添加量が多い場合でも樹脂との相溶性が低下せず、室温での溶剤に対する溶解性が優れ、樹脂と金属材料間の密着性を向上させるための樹脂用添加剤および該添加剤を含有する樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、トリアジン骨格を有するポリアルキレングリコール誘導体からなる脂用添加剤が、上記の課題を解決することの知見を見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は下記の[1]~[3]である。
[1]樹脂と金属材料間の密着性を向上させるための樹脂用添加剤であって、下記一般式(1)で表される、トリアジン骨格を有するポリアルキレングリコール誘導体からなる脂用添加剤。
【化1】
(式(1)中、Rは、芳香族炭化水素基を表し、AOは炭素数2~4のオキシアルキレン基を表す。mは、オキシプロピレン基の平均付加モル数を表し、1~40である。nは、前記オキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、0~40である。)
[2]前記式(1)中のRがフェニル基である、[1]に記載の樹脂用添加剤。
[3]樹脂100質量部に対して、[1]または[2]に記載の脂用添加剤0.01~30質量部を配合してなる樹脂組成物。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、添加量が多い場合でも樹脂との相溶性が低下せず、室温での溶剤に対する溶解性が優れ、樹脂と金属材料間の密着性を向上させるための樹脂用添加剤および該添加剤を含有する樹脂組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。
脂用添加剤]
本発明の脂用添加剤は、下記一般式(1)で表される、トリアジン骨格を有するポリアルキレングリコール誘導体からなり、オキシプロピレン基と炭素数2~4のオキシアルキレン基を有している。
【化2】
(式(1)中、Rは、芳香族炭化水素基を表し、AOは炭素数2~4のオキシアルキレン基を表す。mは、オキシプロピレン基の平均付加モル数を表し、1~40である。nは、前記オキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、0~40である。)
【0013】
本発明の脂用添加剤は、トリアジン骨格が必須である。トリアジン骨格を有することにより、金属材料、基板に対して配向しやすくなり、樹脂と金属材料間の密着性を向上させることができる。
【0014】
式(1)において、Rは、芳香族炭化水素基を表し、芳香族炭化水素から誘導された官能基であり、単環又は複数の環を有する炭化水素基である。単環を有する炭化水素基としては、例えば、フェニル基、ベンジル基、トリル基、o-キシリル基などが挙げられる。また、複数の環を有する炭化水素基としては、例えば、ナフチル基などが挙げられる。芳香族炭化水素基の総炭素数は、特に制限されないが、好ましくは30以下であり、より好ましくは20以下である。特に好ましい芳香族炭化水素基は、フェニル基である。
【0015】
式(1)において、AOは炭素数2~4のオキシアルキレン基を表し、オキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシブチレン基、オキシテトラメチレン基が挙げられ、好ましくはオキシエチレン基である。オキシプロピレン基と炭素数2~4のオキシアルキレン基の付加形態は、ブロック、ランダムのいずれでも良い。
【0016】
mは、オキシプロピレン基の平均付加モル数を表し、1~40であり、好ましくは1~30であり、より好ましくは2~20であり、更に好ましくは5~15である。mが1より小さいと、樹脂との相溶性が低下し、mが40より大きいと、脂用添加剤中のトリアジン骨格の割合が小さくなり、密着性向上効果が十分に得られない。
【0017】
nは、炭素数2~4の平均付加モル数(ただし、オキシプロピレン基の平均付加モル数を除く。)を表し、0~40であり、好ましくは0~30であり、より好ましくは0~20であり、最も好ましくは0~5である。nが40より大きいと、脂用添加剤中のトリアジン骨格の割合が小さくなり、密着性向上効果が十分に得られない。
【0018】
式(1)で表されるトリアジン骨格を有するポリアルキレングリコール誘導体の水酸基価(JIS K 0070)から換算した平均分子量は、300~10,000であり、好ましくは300~6,000であり、より好ましくは400~5,000であり、最も好ましくは1,500~2,500である。水酸基価換算平均分子量が300より大きい場合には、樹脂成型時や加工時にガスの発生を抑制し、樹脂の成型不良の発生を低減することができる。水酸基価換算平均分子量が10,000より小さい場合には、脂用添加剤中のトリアジン骨格の割合が高くなり、密着性向上効果が一層発揮される。
【0019】
本発明の脂用添加剤の製造方法は、特に制限はなく、任意の方法で製造することができる。例えば、トリアジン誘導体に対して、プロピレンオキシドおよび炭素数2~4のアルキレンオキシドを付加重合させることで得ることができる。付加重合の際には溶剤を使用することができ、特に限定されないが、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒、メチルシクロヘキサン等の炭化水素系溶媒、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル等のグリコールエーテル系溶媒、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノイソプロピルエーテルアセテート、エチレングリコールモノイソプロピルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のグリコールエステル系溶媒が挙げられ、好ましくはグリコールエーテル系およびグリコールエステル系溶媒である。また、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のポリアルキレングリコール誘導体を溶媒として使用しても良い。
【0020】
[樹脂組成物]
本発明の樹脂組成物は、樹脂と本発明の脂用添加剤を含有する。
本発明の樹脂組成物において、脂用添加剤の配合量は、樹脂100質量部に対して0.01~30質量部であり、好ましくは0.05~25質量部であり、より好ましくは0.10~20質量部である。配合量が0.01質量部より多いと、密着性向上効果を十分に発揮することができる。また、本発明の脂用添加剤は、樹脂との相溶性に優れることから、配合量を高めることにより密着性を向上し、さらに濁りのない優れた外観の樹脂フィルムを得ることができる。配合量が30質量部より小さいと、樹脂の作用を十分に発揮することができる。また、配合量が30質量部より小さいと、樹脂組成物の強度が低下せず、十分な強度が得られる。
【0021】
本発明の樹脂組成物に使用可能な樹脂は、特に限定されないが、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂および光硬化性樹脂等と制限はなく、1種類での使用または2種類以上を配合して使用できる。
【0022】
本発明の樹脂組成物に使用可能な熱可塑性樹脂としては、特に限定されないが、ポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリエーテルケトンケトン樹脂、アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂、ポリ(メタ)アクリル酸系樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリアセタール樹脂、フッ素樹脂、熱可塑性ポリウレタン樹脂等が挙げられる。
本発明の樹脂組成物に使用可能な熱硬化性樹脂としては、特に限定されないが、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、シリコーン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、シアナートエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、アルキド樹脂等が挙げられる。
【0023】
本発明の樹脂組成物に使用可能な光硬化性樹脂としては、特に限定されないが、ポリ(メタ)アクリル酸系樹脂、ポリビニルエーテル樹脂、ウレタンアクリレート樹脂、エポキシアクリレート樹脂、ポリエステルアクリレート樹脂、脂環式エポキシ樹脂、グリシジル型エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0024】
本発明の樹脂組成物には、任意成分として本発明の効果を阻害しない範囲内で、溶媒、無機充填材、顔料、繊維状充填材、導電性充填材、硬化剤、開始剤、光安定剤、酸化防止剤、滑剤、難燃剤、可塑剤、可撓性付与剤、帯電防止剤、レベリング剤、表面調整剤、消泡剤、分散剤、防汚剤、紫外線吸収剤、シランカップリング剤等を配合することができる。
【0025】
本発明の樹脂組成物に使用可能な溶剤としては、特に限定されないが、蒸留水、イオン交換水等の水、メタノール、エタノール、n-プロパノール、i-プロパノール、n-ブタノール、i-ブタノール、t-ブタノール、2-エチルヘキサノール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、ベンジルアルコール、グリセリン等のアルコール系溶媒、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のグリコールエーテル系溶媒、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸ノルマルプロピル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、エチレングリコールモノブチルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、メトキシブチルアセテート、エチル-3-エトキシプロピオネート、プロピレングリコールモノメチルエーテルプロピオネート、炭酸シメチル等のエステル系溶媒、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル等のエーテル系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、ジアセトンアルコール等のケトン系溶媒、トルエン、n-ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、スチレン等の炭化水素系溶媒、アセトニトリル、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン等の窒素系溶媒、メチレンクロライド、トリクロロエチレン、1-ブロモプロパン、クロロホルム等のハロゲン系溶媒、エポキシ系、(メタ)アクリル系、ポリエーテル系等の反応性希釈剤が挙げられる。好ましくは、アルコール系溶媒、ケトン系溶媒、炭化水素系溶媒であり、より好ましくは、アルコール系溶媒、炭化水素系溶媒である。アルコール系溶媒では、エタノールが好ましく、ケトン系溶媒では、メチルエチルケトンが好ましく、炭化水素系溶媒ではトルエンが好ましい。
【0026】
本発明の樹脂組成物が適用可能な金属としては、特に限定されないが、普通鋼、高炭素鋼、高張力鋼、合金鋼、ステンレス鋼等の鉄鋼類、アルミニウム、銅、マグネシウム、ニッケル、亜鉛、チタン、金、銀等の非鉄金属類が挙げられる。好ましくは、アルミニウム、銅、金、銀であり、より好ましくは、銅である。
【0027】
本発明の樹脂組成物は、1種または2種以上の金属材料の表面処理工程や接合技術と組み合わせて使用することもできる。金属材料の表面処理としては、脱脂等の洗浄工程、乾式研磨、湿式研磨等の研磨工程、化学被膜処理、陽極酸化処理等の化学的処理、化学エッチング、レーザー照射が挙げられる。接合技術としては、加熱接合、機械的接合等が挙げられる。
【0028】
本発明の樹脂組成物の使用用途としては、特に限定されないが、電気・電子材料用途、輸送機器用途、エネルギー関連用途、土木・建築材料用途、産業機械用途、医療用途等の様々な分野の製品に使用することが可能である。
【0029】
例えば、電気・電子材料用途としては、半導体封止材、アンダーフィル材、レジスト材、プリント配線板形成材料、放熱シート、接着剤、接着シート等の電子部品形成材料、プリント基板形成材料およびフレキシブル基板形成材料、光学部品形成材料等が挙げられる。また、輸送機器用途としては、自動車、航空機、船舶、鉄道等に使用される接着剤、粘着剤、シール材、プライマー、コーティング材等が挙げられる。エネルギー関連用途としては、風力発電、圧力容器、燃料電池、太陽電池、二次電池等に使用される接着剤、粘着剤、封止材、シール材、プライマー、コーティング材等が挙げられる。土木・建築材料用途としては、橋梁、道路、建築物の内装、外装等に使用される接着剤、粘着剤、シール材、プライマー、コーティング材等が挙げられる。産業機械用途としては、ロボットアーム、ロール、機械部品の接着剤、粘着剤、シール材、コーティング材等が挙げられる。医療用途としては、医療器具、医療機器等の接着剤、シール材、コーティング材等が挙げられる。
【0030】
以下に実施例を挙げて本発明を詳細に説明する。
【実施例
【0031】
脂用添加剤の作製>
表1に記載の化合物種について、次の方法に従い作製した。
<合成例1>
撹拌装置、温度計、および圧力ゲージを備えた5Lのオートクレーブに、ベンゾグアナミン93.6g(0.5モル)、カリウムtert-ブトキシド1.0g、およびプロピレングリコールジメチルエーテル93.6gを入れ、系内を窒素ガスで置換した後、プロピレンオキサイド(4.0モル)を温度110℃で5時間かけて圧入し、さらに4時間反応を継続した。その後、オートクレーブより生成物を取り出し、中和した後、窒素をバブリングしながら100℃まで加温し、4kPa以下、100℃で1時間脱水を行った。さらに脱水後生成した塩を濾別し、表1の化合物1を得た。
<合成例2>
プロピレンオキサイドを7.0モル使用した以外は、合成例1と同様に製造を行い、化合物2を得た。
<合成例3>
プロピレンオキサイドを15.6モル使用した以外は、合成例1と同様に製造を行い、化合物3を得た。
<合成例4>
プロピレンオキサイドを2.0モル反応させた後、プロピレンオキサイド1.0モルとエチレンオキサイド2.0モルをランダムで反応させた以外は、合成例1と同様に製造を行い、化合物4を得た。
【0032】
得られた脂用添加剤について、水、有機溶剤(エタノール、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、トルエン、ヘキサン)への溶解性を評価した。溶解性の評価方法は、脂用添加剤の5%溶液を調製し、25℃における不溶物の有無を目視で観察した。
不溶物が無い:○、不溶物が認められる:×
【0033】
<試験樹脂溶液の作製>
ポリビニルブチラール(PVB)樹脂(積水化学工業製、エスレックBH-3)2.0gを、トルエン/エタノール=1/1溶液18.0gに加えて溶解させた。均一な溶液になるまで撹拌した後、得られた樹脂溶液に、脂用添加剤を加えて均一になるまで撹拌し、試験樹脂溶液を得た。
【0034】
<密着性評価>
得られた試験樹脂溶液を、自動塗工装置(テスター産業製、PI-1210)にて銅板上に均一に塗布し、室温で5分、80℃恒温槽で10分間乾燥させた後、銅板まで貫通するよう、樹脂フィルムに2mm間隔の碁盤目状に25マスの切り込みを入れた。切り込みを入れた樹脂フィルムに均一にセロハンテープを貼り、勢いよく剥がした際に残ったマス数により、銅に対する密着性を評価した。
◎:残りマス数21~25、○:残りマス数16~20、×:残りマス数0~15
【0035】
<樹脂との相溶性評価>
得られた試験樹脂溶液を、自動塗工装置にてガラス板状に均一に塗布し、室温で5分、80℃恒温槽で10分間乾燥させた。得られた樹脂フィルムの外観を目視で観察した。
○:濁りなし、×:濁りありもしくは添加剤が樹脂溶液に不溶
【0036】
【表1】
【0037】
【表2】
【0038】
表2を参照すると、化合物1~4を添加することにより、PVB樹脂の密着性が向上することがわかる。
また、実施例1、3、4を対比すると、オキシプロピレン基の付加モル数が大きくなると、密着性が一層向上することがわかる。
また、実施例1と2、及び、実施例5と6を対比すると、本発明の脂用添加剤の含有量を増加すると、密着性が一層向上することがわかる。さらには、本発明の脂用添加剤は、PVB樹脂との相溶性に優れており、得られた樹脂フィルムには濁りがなく、優れた外観の樹脂フィルムを得ることができる。