(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-21
(45)【発行日】2023-08-29
(54)【発明の名称】自動変速機の変速制御システム
(51)【国際特許分類】
F16H 61/02 20060101AFI20230822BHJP
F16H 61/68 20060101ALI20230822BHJP
F16H 59/08 20060101ALI20230822BHJP
F16H 59/44 20060101ALI20230822BHJP
B60K 20/00 20060101ALI20230822BHJP
B62D 1/04 20060101ALI20230822BHJP
B60K 20/02 20060101ALN20230822BHJP
【FI】
F16H61/02
F16H61/68
F16H59/08
F16H59/44
B60K20/00 B
B62D1/04
B60K20/02 G
(21)【出願番号】P 2020065470
(22)【出願日】2020-04-01
【審査請求日】2023-02-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100197561
【氏名又は名称】田中 三喜男
(72)【発明者】
【氏名】白砂 俊明
(72)【発明者】
【氏名】大久保 智広
(72)【発明者】
【氏名】安部 祥司
(72)【発明者】
【氏名】西 英之
(72)【発明者】
【氏名】大山 一
(72)【発明者】
【氏名】肥後 公則
【審査官】角田 貴章
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-51300(JP,A)
【文献】特開2010-242944(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 59/00-61/12
61/16-61/24
61/66-61/70
63/40-63/50
B60K 20/00-20/08
B62D 1/00- 1/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
イグニッションスイッチがオンされることで始動する車両に搭載され、自動変速モード又は手動変速モードに設定できる自動変速機の変速制御システムであって、
前記手動変速モードにおいて、前記自動変速機の変速段を任意で切り替える手動変速指示を入力できるシフトスイッチを備えており、
前記手動変速モードは、
前記シフトスイッチを用いて前記手動変速指示を入力することにより、前記変速段を切り替えて保持する第1マニュアルモードと、前記変速段を切り替えた後、復帰条件を満足することにより前記自動変速モードに復帰する第2マニュアルモードとを有しており、
前記変速制御システムは、
前記第1マニュアルモード又は前記第2マニュアルモードのいずれかが設定されることを予め選択するモード選択手段を備えており、
前記モード選択手段は、前記イグニッションスイッチがオンされたとき、前記自動変速機が前記第2マニュアルモードに設定されることを予め選択する、変速制御システム。
【請求項2】
前記復帰条件は、前記変速制御システムが前記第2マニュアルモードに設定されているとき、前記車両の速度が所定値になることである、請求項1に記載の変速制御システム。
【請求項3】
前記シフトスイッチは、前記車両のステアリングホイールの左右に1つずつ設けられており、
前記シフトスイッチの一方は、前記変速段をシフトアップするように構成されており、
前記シフトスイッチの他方は、前記変速段をシフトダウンするように構成されている、請求項1又は2に記載の変速制御システム。
【請求項4】
前記モード選択手段は、
コマンダースイッチとディスプレイを含み、
前記ディスプレイに表示される前記第1マニュアルモード又は前記第2マニュアルモードのアイコンが前記コマンダースイッチを操作して選択されて、前記手動変速指示が前記シフトスイッチに入力されると、前記第1マニュアルモード又は前記第2マニュアルモードが設定されることを予め選択するように構成されている、請求項1~3のいずれかに記載の変速制御システム。
【請求項5】
前記モード選択手段は、
触圧式のタッチパネルを含み、
前記タッチパネルに表示される前記第1マニュアルモード又は前記第2マニュアルモードのアイコンを直接押すことにより、前記手動変速指示が前記シフトスイッチに入力されると、前記第1マニュアルモード又は前記第2マニュアルモードが設定されることを予め選択するように構成されている、請求項1~3のいずれかに記載の変速制御システム。
【請求項6】
前記変速制御システムが前記第1マニュアルモード又は前記第2マニュアルモードの一方に設定されているとき、前記シフトスイッチで所定時間入力し続けることにより、前記自動変速モードに設定される、請求項1~5のいずれかに記載の変速制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動変速機の変速制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の自動変速機は、車両を駐車させるときに用いるパーキングレンジ、車両を後退させるときに用いるリバースレンジ、駆動力を車両に伝達させないようにするときに用いるニュートラルレンジ、及び変速段を自動的に切り替えるドライブレンジ(自動変速モード)に設定できるように構成されている。
【0003】
一方、例えば2速発進ができるように、自動変速機の変速段を手動で切り替えて走行したいという要求がある。この要求に応えるため、マニュアルモード(手動変速モード)を備える自動変速機の制御装置が、例えば特許文献1に提案されている。この自動変速機の制御装置は、マニュアルモードに設定されているとき、例えばステアリングホイールに設けられたシフトスイッチにより変速段をシフトアップ又はシフトダウンできる。したがって、車両が停止しているとき、シフトアップにより変速段を2速段に切り替えておくことにより、2速発進ができるようになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【0005】
また、マニュアルモードを一時的に、例えば車両が停止するまで使用したいという要求がある。この要求に応えるため、自動変速機の制御装置は、手動で切り替えられた変速段を保持する通常マニュアルモードと、変速段が手動で切り替えられた後、所定の条件を満たす、例えば車速が所定の閾値を越えてから0になることでドライブレンジに設定される一時的マニュアルモードとを備えることが考えられる。この一時的マニュアルモードは、変速段が2速段に切り替えられた状態で、車両が停止し続けることができるように、車速が所定の閾値、例えば20km/hを越えない限り、変速段を2速段に保持し続ける。
【0006】
上述の通常マニュアルモードと一時的マニュアルモードとを備える自動変速機の制御装置は、例えば通常マニュアルモードに設定できるマニュアルレンジが追加されたセレクトレバーとシフトスイッチとを操作して、いずれかのモードに設定できるように一般的に構成されている。一方、このような通常マニュアルモード又は一時的マニュアルモードを選択する操作は、複雑であり、乗員の誤操作に繋がる虞がある。
【0007】
したがって、通常マニュアルモードと一時的マニュアルモードとを備える自動変速機の制御装置は、通常マニュアルモードと一時的マニュアルモードのいずれかに設定されることを予め選択することにより、いずれかのモードに容易な操作で設定できるように構成されていることが好ましい。
【0008】
また、通常マニュアルモードと一時的マニュアルモードとを備える自動変速機の制御装置は、できる限り、一時的マニュアルモードに設定されると操作が煩雑にならない。自動変速機の制御装置が通常マニュアルモードに設定されているとき、乗員は、シフトスイッチにより変速段をシフトアップ又はシフトダウンする操作を適宜要求される。一方、自動変速機の制御装置が一時的マニュアルモードに設定されているとき、乗員は、シフトスイッチにより変速段をシフトアップ又はシフトダウンする操作を一時的に要求されるが、車両が一度停止すれば、それ以降、従来のドライブレンジで運転できるようになる。したがって、一時的マニュアルモードは、通常マニュアルモードに比べて、操作が煩雑でないため、従来の自動変速機を搭載した車両の運転に慣れている乗員が容易に操作できるモードである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明は、イグニッションスイッチがオンされたとき、第1マニュアルモード(通常マニュアルモード)と第2マニュアルモード(一時的マニュアルモード)の内、第2マニュアルモードに設定されることが予め選択される自動変速機の変速制御システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的を達成するために、本発明の実施形態に係る、イグニッションスイッチがオンされることで始動する車両に搭載され、自動変速モード又は手動変速モードに設定できる自動変速機の変速制御システムは、
前記手動変速モードにおいて、前記自動変速機の変速段を任意で切り替える手動変速指示を入力できるシフトスイッチを備えており、
前記手動変速モードは、
前記シフトスイッチを用いて前記手動変速指示を入力することにより、前記変速段を切り替えて保持する第1マニュアルモードと、前記変速段を切り替えた後、復帰条件を満足することにより前記自動変速モードに復帰する第2マニュアルモードとを有しており、
前記変速制御システムは、
前記第1マニュアルモード又は前記第2マニュアルモードのいずれかが設定されることを予め選択するモード選択手段を備えており、
前記モード選択手段は、前記イグニッションスイッチがオンされたとき、前記自動変速機が前記第2マニュアルモードに設定されることを予め選択する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、自動変速機の変速制御システムは、イグニッションスイッチがオンされたとき、自動変速機が第2マニュアルモード(一時的マニュアルモード)に設定されることが予め選択される。したがって、乗員は、煩雑な操作を必要としない第2マニュアルモードで車両を容易に運転できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施形態に係る、自動変速機の変速制御システムを搭載した車両の室内を示す概略図である。
【
図2】
図1に示す変速制御システムの制御ブロック図である。
【
図3】
図1に示すコマンダースイッチの概略図である。
【
図4】
図1に示すディスプレイに表示されるモード選択画面である。
【
図5】
図1に示す変速制御システムのモード選択フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照して、本発明に係る自動変速機の変速制御システムの実施形態を説明する。
【0014】
[1:車両の構成]
図1は、自動変速機の変速制御システムを搭載した車両200の室内を示す。車両200は、車両200の運転を行う乗員が搭乗する運転席202、車幅方向において運転席202と対称な位置に配置されている助手席204、運転席202と助手席204の前方に配置され、車幅方向に伸びるインスツルメントパネル206、運転席202と助手席204との間に配置されているセンターコンソール208、及び該インスツルメントパネル206の運転席202側に設けられ、車両200の操舵指示を入力できる略円形のステアリングホイール210を備える。図の運転席202とステアリングホイール210は車幅方向右側に配置されているが、車幅方向左側に配置されてもよい。
【0015】
実施形態において、車両200は、インスツルメントパネル206の車幅方向中央部分において、液晶ディスプレイ10を備える。この液晶ディスプレイ10は、例えばオーディオ機能の操作画面(図示せず)、ナビゲーション機能の操作画面(図示せず)、及び後述するマニュアルモード(第1マニュアルモード若しくは通常マニュアルモード)又はダイレクトモード(第2マニュアルモード若しくは一時的マニュアルモード)のいずれかが設定されることを予め選択する又は予約するためのモード選択画面を表示できるように構成されている。
【0016】
車両200は、センターコンソール208において、パーキングレンジ、リバースレンジ、ニュートラルレンジ、及びドライブレンジへの設定指示を入力できるセレクター部20を備える。このセレクター部20は、運転席202に搭乗した乗員が保持できるように、車両200の上下方向に伸びるセレクトレバー22を有する。
【0017】
実施形態において、セレクター部20は、パーキングレンジ、リバースレンジ、ニュートラルレンジ、及びドライブレンジに対応する4つのレンジポジションを有する(
図2参照)。リバースレンジ、ニュートラルレンジ、及びドライブレンジのレンジポジションは、それぞれ、車両200の前方から後方に向かって配置されている。また、パーキングレンジのレンジポジションは、リバースレンジ、ニュートラルレンジ、及びドライブレンジのレンジポジションよりも運転席202側に位置するように、リバースレンジのレンジポジションに隣接して配置されている。
図1に示すセレクトレバー22は、セレクター部20の内部に設けられているガイド部(図示せず)にガイドされて、各レンジポジションに移動できるように構成されている。また、セレクター部20は、セレクトレバー22が位置するレンジポジションを検出するポジションセンサ(図示せず)を備えており、検出されたレンジポジションを電気信号として、後述するコントロールユニット50に出力するように構成されている。
【0018】
図1に戻り、車両200は、センターコンソール208において、セレクター部20よりも車両後方側に配置され、液晶ディスプレイ10に表示されている画面の操作指示を入力できるコマンダースイッチ30を備える。
【0019】
図3に示すように、コマンダースイッチ30は、液晶ディスプレイ10に表示されている画面上で選択及び決定指示を入力できるコマンダーノブ32、液晶ディスプレイ10にホーム画面(図示せず)を表示する指示を入力できるホーム画面スイッチ34、オーディオ機能の操作画面を表示する指示を入力できるオーディオ画面スイッチ35、ナビゲーション機能の操作画面を表示する指示を入力できるナビゲーション画面スイッチ36、及び1つ前の画面を表示する指示を入力できるリターンスイッチ37を備える。
【0020】
実施形態において、コマンダーノブ32は、車両200の上下方向を軸として回転する、又は車両200の前後方向に傾けることにより選択指示を入力できるように、また車両200の上下方向に押し込むことにより決定指示を入力できるように構成されている。
【0021】
図1に戻り、車両200は、ステアリングホイール210の背面の車幅方向右端部にシフトアップスイッチ42、及びステアリングホイール210の背面の車幅方向左端部にシフトダウンスイッチ44を備える。シフトアップスイッチ42は、後述するマニュアルモードとダイレクトモードにおいて、シフトアップ指示を入力できるように構成されている。また、シフトダウンスイッチ44は、マニュアルモードとダイレクトモードにおいて、シフトダウン指示を入力できるように構成されている。これにより、運転席202に搭乗している乗員は、ステアリングホイール210から手を離すことなく、シフトアップ指示又はシフトダウン指示を容易に入力できる。
【0022】
[2:変速制御システムの構成]
図2は、車両200の内部に設けられている自動変速機300、及び該自動変速機300の変速段の切り替えを制御する変速制御システム100のブロック構成を示す。この変速制御システム100は、自動変速機300と電気的に接続されたコントロールユニット50を備える。
【0023】
実施形態において、コントロールユニット50は、上述の液晶ディスプレイ10、セレクター部20、コマンダースイッチ30、シフトアップスイッチ42、シフトダウンスイッチ44、さらに車速センサ60及びイグニッションスイッチ70と電気的に接続されている。したがって、コントロールユニット50は、液晶ディスプレイ10、セレクター部20、コマンダースイッチ30、シフトアップスイッチ42、シフトダウンスイッチ44から入力される信号、車速センサ60から送信される車速信号、及びイグニッションスイッチ70から送信される点火信号に基づいて、変速段の切り替え指示を含む信号を自動変速機300に出力するように構成されている。
【0024】
コントロールユニット50は、自動変速モード制御部52、手動変速モード制御部54、及びモード選択部(モード選択手段)56を含む。
【0025】
自動変速モード制御部52は、セレクター部20のセレクトレバー22がドライブレンジのレンジポジションにあるとき、自動変速機300の変速段を自動的に切り替える自動変速モードに変速制御システム100を設定するように構成されている。変速制御システム100が自動変速モードに設定されているとき、自動変速モード制御部52は、車速センサ60とエンジン負荷検出センサ(図示せず)から送信される車両200の走行状態に関する信号、及び車両200の走行状態に応じて適切な変速段を決定するアルゴリズムに基づいて、自動変速機300の変速段を自動的に切り替えるように構成されている。
【0026】
手動変速モード制御部54は、変速制御システム100が自動変速モードに設定されている状態で、シフトアップスイッチ42又はシフトダウンスイッチ44がオンされるとき、入力されたシフトアップ指示又はシフトダウン指示に応じて自動変速機300の変速段を切り替えるマニュアルモード(第1マニュアルモード)又はダイレクトモード(第2マニュアルモード)に変速制御システム100を設定するように構成されている。
【0027】
変速制御システム100がマニュアルモードに設定されているとき、手動変速モード制御部54は、入力されたシフトアップ指示又はシフトダウン指示に応じて自動変速機300の変速段を切り替えて保持するように構成されている。例えば、変速制御システム100が自動変速モードに設定され、変速段が3速段に切り替えられているとき、シフトアップスイッチ42が1度オンされることにより、変速制御システム100はマニュアルモードに設定され、変速段は4速段に切り替えられる一方、シフトダウンスイッチ44が1度オンされることにより、変速制御システム100はマニュアルモードに設定され、変速段は2速段に切り替えられる。
【0028】
変速制御システム100がダイレクトモードに設定されているとき、手動変速モード制御部54は、入力されたシフトアップ指示又はシフトダウン指示に応じて自動変速機300の変速段を切り替えた後、所定の復帰条件を満たすことで変速制御システム100を自動変速モードに設定するように構成されている。
【0029】
実施形態における復帰条件は、変速制御システム100がダイレクトモードに設定されているとき、車両200の速度が所定値、例えば20km/hを越えてから0km/hになり、車両200が停止することである。これにより、例えば、車両200の運転席202に搭乗している乗員が、変速制御システム100を自動変速モードに設定し、且つ車両200を停止させている状態で、次回発進時のみ、2速発進を利用しようとしているとき、シフトアップスイッチ42をオンすることにより、変速制御システム100がダイレクトモードに設定され、且つ自動変速機300の変速段が2速段に切り替えられ、結果として車両200が2速発進できるようになる。その後、車両200が再び停止したとき、変速制御システム100はダイレクトモードから自動変速モードに自動的に復帰するため、自動変速モードに復帰させる操作を乗員に要求することがない。
【0030】
実施形態において、変速制御システム100がマニュアルモード又はダイレクトモードに設定されているとき、コントロールユニット50は、シフトアップスイッチ42又はシフトダウンスイッチ44が所定時間、例えば2秒以上オンされ続けることにより、変速制御システム100を自動変速モードに設定するように構成されている。これにより、乗員は、変速制御システム100のモードを自由に選択できる。
【0031】
モード選択部56は、手動変速モード制御部54により、変速制御システム100がマニュアルモード又はダイレクトモードのいずれかに設定されることを予め選択する又は予約するように構成されている。
【0032】
実施形態において、液晶ディスプレイ10は、コマンダースイッチ30のホーム画面スイッチ34がオンされて、ホーム画面を表示している状態で、コマンダーノブ32が操作されて、「ステアリングシフトスイッチ」のアイコンが選択されることにより、モード選択画面を表示するように構成されている(
図4参照)。このモード選択画面は、コマンダーノブ32を車両200の前後方向に傾けることにより、マニュアルモードのアイコン又はダイレクトモードのアイコンが選択され、コマンダーノブ32を上下方向に押し込むことにより、選択されたモードがモード選択部56に送信されるように構成されている。上記モード選択画面において選択されたモードを受信したモード選択部56は、シフトアップスイッチ42又はシフトダウンスイッチ44がオンされると、手動変速モード制御部54により、変速制御システム100が選択されたモードに設定されることを予め決定するように構成されている。
【0033】
[3:モード選択]
図5は、運転席202に搭乗する乗員が、コマンダースイッチ30を操作して、変速制御システム100が設定されるモードを予め選択する又は予約するときのフローを示す。変速制御システム100のコントロールユニット50は、このフローと並行して、自動変速モードにおける自動変速機300の変速段の自動的切り替え、又はマニュアルモード若しくはダイレクトモードにおける自動変速機300の変速段の手動的切り替えを別途実施している。
【0034】
図5のステップS1において、変速制御システム100のコントロールユニット50は、セレクター部20から送られるセレクトレバー22のレンジポジション信号、ステップS1における変速制御システム100のモード(自動変速モード、マニュアルモード、又はダイレクトモードのいずれか)、車速センサ60から送信される車速信号、及びイグニッションスイッチ70から送信される点火信号などの各種情報を取得する。これらの各種情報は、所定周期ごとに取得されている。
【0035】
このとき、コントロールユニット50は、取得された点火信号から、イグニッションスイッチ70がオンされたか否かを判断する(ステップS2)。イグニッションスイッチ70がオンされたとき(ステップS2でYESへ分岐するとき)、コントロールユニット50のモード選択部56は、シフトアップスイッチ42又はシフトダウンスイッチ44がオンされると、変速制御システム100がダイレクトモードに設定されることを予め決定する(ステップS3)。
【0036】
ステップS3において、変速制御システム100がダイレクトモードに設定されることを予め決定した後、又はイグニッションスイッチ70がオンされたときでなければ(ステップS2でNOへ分岐するとき)、コントロールユニット50は、取得された車速信号から、車両200が停車状態であるか否かを判断する(ステップS4)。車両200が停車状態でなければ(ステップS4でNOへ分岐するとき)、このフローは最初のステップS1に戻る。
【0037】
車両が停車状態であれば(ステップS4でYESへ分岐するとき)、乗員は、コマンダースイッチ30を操作して、
図4に示すモード選択画面を液晶ディスプレイ10に表示して、マニュアルモードのアイコンを選択するか否かを決めることができる(ステップS51)。このとき、乗員は、マニュアルモードのアイコンを選択しないで(ステップS51でNOへ分岐した後)、ダイレクトモードのアイコンを選択してもよい(ステップS52)。
【0038】
乗員が、モード選択画面上のマニュアルモードのアイコンを選択したとき(ステップS51でYESへ分岐するとき)、モード選択部56は、シフトアップスイッチ42又はシフトダウンスイッチ44がオンされると、変速制御システム100がマニュアルモードに設定されることを予め選択する(ステップS61)。一方、乗員が、モード選択画面上のダイレクトモードのアイコンを選択したとき、モード選択部56は、シフトアップスイッチ42又はシフトダウンスイッチ44がオンされると、変速制御システム100がダイレクトモードに設定されることを予め選択する(ステップS62)。
【0039】
ステップS61において、モード選択部56が、変速制御システム100がマニュアルモードに設定されることを選択した後、コントロールユニット50は、変速制御システム100がダイレクトモードに設定されているか否かを判断する(ステップS71)。変速制御システム100がダイレクトモードに設定されているとき(ステップS71でYESへ分岐するとき)、コントロールユニット50は、変速制御システム100を自動変速モードに設定する(ステップS81)。一方、変速制御システム100がマニュアルモードに設定されているとき(ステップS71でNOへ分岐するとき)、乗員が変速制御システム100のモードを変更する意思を有していないと考えられるため、変速制御システム100はマニュアルモードに設定された状態を保たれ、このフローは最初のステップS1に戻る。
【0040】
また、ステップS62において、モード選択部56が、変速制御システム100がダイレクトモードに設定されることを選択した後、コントロールユニット50は、変速制御システム100がマニュアルモードに設定されているか否かを判断する(ステップS72)。変速制御システム100がマニュアルモードに設定されているとき(ステップS72でYESへ分岐するとき)、コントロールユニット50は、変速制御システム100を自動変速モードに設定する(ステップS82)。一方、変速制御システム100がダイレクトモードに設定されているとき(ステップS72でNOへ分岐するとき)、乗員が変速制御システム100のモードを変更する意思を有していないと考えられるため、変速制御システム100はダイレクトモードに設定された状態を保たれ、このフローは最初のステップS1に戻る。
【0041】
ステップS81,S82において、変速制御システム100が自動変速モードに設定された後、このフローは最初のステップS1に戻る。
【0042】
上述のように、実施形態のフローによれば、変速制御システム100は、イグニッションスイッチ70がオンされたとき、モード選択部56により、ダイレクトモードに設定されることを予め選択される。したがって、乗員は、煩雑な操作を必要としない、すなわち自動変速モードに自動的に復帰するダイレクトモードで車両200を容易に運転できる。
【0043】
[4:他の実施形態]
上述した実施形態において、モード選択部56は、乗員が、液晶ディスプレイ10に表示されるモード選択画面上のアイコンをコマンダースイッチ30で選択することにより、設定されるモードを予め決めるように構成されているが、例えば液晶ディスプレイが触圧式タッチパネルであれば、乗員が、触圧式タッチパネルに表示されるモード選択画面上のアイコンを指で押すことにより、設定されるモードを予め決めるように構成されてもよい。
【符号の説明】
【0044】
100:変速制御システム
56:モード選択手段
70:イグニッションスイッチ
200:車両
300:自動変速機