IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東レ株式会社の特許一覧

特許7334725樹脂組成物、黒色樹脂膜、積層体および表示装置
<>
  • 特許-樹脂組成物、黒色樹脂膜、積層体および表示装置 図1
  • 特許-樹脂組成物、黒色樹脂膜、積層体および表示装置 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-21
(45)【発行日】2023-08-29
(54)【発明の名称】樹脂組成物、黒色樹脂膜、積層体および表示装置
(51)【国際特許分類】
   C08L 79/08 20060101AFI20230822BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20230822BHJP
   B32B 27/20 20060101ALI20230822BHJP
   C08G 73/10 20060101ALI20230822BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20230822BHJP
   C08K 5/00 20060101ALI20230822BHJP
   C08K 5/28 20060101ALI20230822BHJP
   G09F 9/30 20060101ALI20230822BHJP
【FI】
C08L79/08 Z
B32B27/00 A
B32B27/20 A
C08G73/10
C08K3/013
C08K5/00
C08K5/28
G09F9/30 349C
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020509119
(86)(22)【出願日】2020-02-13
(86)【国際出願番号】 JP2020005523
(87)【国際公開番号】W WO2020175150
(87)【国際公開日】2020-09-03
【審査請求日】2022-12-16
(31)【優先権主張番号】P 2019035483
(32)【優先日】2019-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】金 光男
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 大地
(72)【発明者】
【氏名】越野 美加
(72)【発明者】
【氏名】芦部 友樹
【審査官】久保田 葵
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第106280974(CN,A)
【文献】特表平8-509517(JP,A)
【文献】特開2009-149787(JP,A)
【文献】特開2011-17898(JP,A)
【文献】特開平5-275882(JP,A)
【文献】特開2006-307068(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 79/08
B32B 27/00
B32B 27/20
C08G 73/10
C08K 3/013
C08K 5/00
C08K 5/28
G09F 9/30
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学式(1)および(2)のいずれかで表される繰り返し単位を主成分とする樹脂顔料および硬化促進剤を含有する樹脂組成物:
【化1】
化学式(1)および(2)中、Xは、炭素数2以上の4価のテトラカルボン酸残基を示す;Yは、炭素数2以上の2価のジアミン残基を示す;ただし、Xを与えるテトラカルボン酸またはYを与えるジアミンの少なくとも一つは、波長380nm以上580nm以下の範囲に最大光吸収を有する;R’およびR”は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~10の炭化水素基、炭素数1~10のアルキルシリル基、アルカリ金属イオン、アンモニウムイオン、イミダゾリウムイオンまたはピリジニウムイオンを示す。
【請求項2】
化学式(1)および(2)のいずれかで表される繰り返し単位を主成分とする樹脂、および顔料を含有する樹脂組成物であって、前記顔料が波長580nm以上780nm以下の範囲に最大光吸収を有する樹脂組成物:
【化2】
化学式(1)および(2)中、Xは、炭素数2以上の4価のテトラカルボン酸残基を示す;Yは、炭素数2以上の2価のジアミン残基を示す;ただし、Xを与えるテトラカルボン酸またはYを与えるジアミンの少なくとも一つは、波長380nm以上580nm以下の範囲に最大光吸収を有する;R’およびR”は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~10の炭化水素基、炭素数1~10のアルキルシリル基、アルカリ金属イオン、アンモニウムイオン、イミダゾリウムイオンまたはピリジニウムイオンを示す。
【請求項3】
化学式(1)および(2)のいずれかで表される繰り返し単位を主成分とする樹脂、および顔料を含有する樹脂組成物であって、前記顔料が、黒色顔料、青色顔料および紫色顔料から選ばれる1種以上の顔料を含有する樹脂組成物:
【化3】
化学式(1)および(2)中、Xは、炭素数2以上の4価のテトラカルボン酸残基を示す;Yは、炭素数2以上の2価のジアミン残基を示す;ただし、Xを与えるテトラカルボン酸またはYを与えるジアミンの少なくとも一つは、波長380nm以上580nm以下の範囲に最大光吸収を有する;R’およびR”は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~10の炭化水素基、炭素数1~10のアルキルシリル基、アルカリ金属イオン、アンモニウムイオン、イミダゾリウムイオンまたはピリジニウムイオンを示す。
【請求項4】
前記化学式(1)および(2)中、XおよびYの少なくとも一つがペリレン構造を含む請求項1~3のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項5】
さらに感光剤を含む請求項1~のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項6】
前記感光剤がキノンジアジド化合物である請求項に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
前記感光剤が光重合開始剤である請求項に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
さらに化学式(3)および(4)のいずれかで表される繰り返し単位を主成分とする樹脂を含む請求項1~のいずれかに記載の樹脂組成物:
【化4】
化学式(3)および(4)中、Uは、化学式(5)~(7)で表される構造より選ばれる少なくとも1つの構造である;Vは、炭素数2以上の2価のジアミン残基を示す。
【化5】
【請求項9】
前記青色顔料がフタロシアニン誘導体である請求項に記載の樹脂組成物。
【請求項10】
化学式(1)で表される繰り返し単位を主成分とする樹脂、および顔料を含む樹脂膜であって、前記樹脂膜の、膜厚を5μmとしたときの波長380nm以上780nm以下の範囲における光透過率が5%以下である黒色樹脂膜:
【化6】
化学式(1)中、Xは、炭素数2以上の4価のテトラカルボン酸残基を示す;Yは、炭素数2以上の2価のジアミン残基を示す;ただし、Xを与えるテトラカルボン酸またはYを与えるジアミンの少なくとも一つは、波長380nm以上580nm以下の範囲に最大光吸収を有する。
【請求項11】
絶縁破壊電圧が2.7MV/cm以上である請求項10に記載の黒色樹脂膜。
【請求項12】
前記化学式(1)中のXおよびYの少なくとも一つがペリレン構造を含む請求項10または11のいずれかに記載の黒色樹脂膜。
【請求項13】
前記顔料が波長580nm以上780nm以下の範囲に最大光吸収を有する請求項1012のいずれかに記載の黒色樹脂膜。
【請求項14】
請求項1013のいずれかに記載の黒色樹脂膜と、化学式(3)で表される繰り返し単位を主成分とする樹脂を含有する樹脂膜とが積層された積層体:
【化7】
化学式(3)中、Uは、化学式(5)~(7)で表される構造より選ばれる少なくとも1つである。Vは、炭素数2以上の2価のジアミン残基を示す。
【化8】
【請求項15】
請求項1013のいずれかに記載の黒色樹脂膜、または請求項14に記載の積層体を含む表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物、黒色樹脂膜、積層体および表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
有機発光表示装置(有機ELディスプレイ)は自発光型表示装置であって、軽量薄形化、広視野角、低消費電力、高コントラストなどの特性を示す。
【0003】
有機発光表示装置は、その発光方式により、基板側に光を発する下部発光(ボトムエミッション)方式と、基板の反対面に光を発する上部発光(トップエミッション)方式とに分類される。有機発光表示装置はTFTおよび電極を有するが、これらは反射率が高く、屋内外の光を反射するので、画像の視認性が低下する。
【0004】
屋内外の光の反射による視認性の低下を防止する方法としては、TFT表面の反射の抑制、電極の反射の抑制、偏光板の使用、画像自体の明るさの向上などの方法がある。しかし、反射防止のために別の層を設けたりすることで、工程数が増加する問題、有機発光表示装置の厚さが厚くなる問題などがある。また、表示装置の柔軟性が減少する問題や、輝度を上げた場合に残光が生じる問題などもある。
【0005】
そこで、表示装置の基材を黒色化することにより、視認性を向上させようとする技術が提案されている。例えば特許文献1には、黒色顔料を含む基板を用いる方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】韓国特許出願公開第2018-0021342号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の方法では、遮光性が不足しており、十分な視認性が得られないという問題があった。
【0008】
本発明は、かかる従来技術の欠点に鑑み創案されたもので、その目的は、遮光性が良好な黒色樹脂膜を得られる樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、化学式(1)および(2)のいずれかで表される繰り返し単位を主成分とする樹脂、溶剤および顔料を含有する樹脂組成物である。
【0010】
【化1】
【0011】
化学式(1)および(2)中、Xは、炭素数2以上の4価のテトラカルボン酸残基を示す。Yは、炭素数2以上の2価のジアミン残基を示す。ただし、Xを与えるテトラカルボン酸またはYを与えるジアミンの少なくとも一つは、波長380nm以上580nm以下の範囲に最大光吸収を有する。R’およびR”は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~10の炭化水素基、炭素数1~10のアルキルシリル基、アルカリ金属イオン、アンモニウムイオン、イミダゾリウムイオンまたはピリジニウムイオンを示す。
【0012】
また、本発明の別の態様は、上記化学式(1)で表される繰り返し単位を主成分とする樹脂、および顔料を含む樹脂膜であって、前記樹脂膜の、膜厚を5μmとしたときの波長380nm以上780nm以下の範囲における光透過率が5%以下である黒色樹脂膜である。
【0013】
また、本発明の別の態様は、上記の黒色樹脂膜と、化学式(3)で表される繰り返し単位を主成分とする樹脂を含有する樹脂膜とが積層された積層体である:
【0014】
【化2】
【0015】
化学式(3)中、Uは、化学式(5)~(7)で表される構造より選ばれる少なくとも1つである。Vは、炭素数2以上の2価のジアミン残基を示す。
【0016】
【化3】
【0017】
また、本発明の別の態様は、上記の黒色樹脂膜または上記の積層体を含む表示装置である。
【発明の効果】
【0018】
本発明の樹脂組成物を用いることにより、遮光性が良好な黒色樹脂膜を得られる。
【0019】
本発明の黒色樹脂膜は、有機発光表示装置用基板、液晶ディスプレイ用基板、マイクロLEDディスプレイ用基板、フレキシブルカラーフィルタ用基板、フレキシブル電子ペーパー用基板、フレキシブルタッチパネル用基板などの表示装置用の基板として好適に用いられる。特に、有機発光表示装置用の基板として用いられることが好ましい。本発明の黒色樹脂膜を基板として用いることにより、コントラストが高く、色ズレが小さい表示装置が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】有機発光表示装置の一例を示す概略断面図。
図2】実施例における有機発光表示装置の暗輝度、明輝度および色度評価環境の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る樹脂組成物、黒色樹脂膜、積層体および有機発光表示装置の好適な実施の形態を詳細に説明する。ただし、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、目的や用途に応じて種々に変更して実施することができる。
【0022】
<樹脂組成物>
本発明にかかる樹脂組成物は、化学式(1)および(2)のいずれかで表される繰り返し単位を主成分とする樹脂、および顔料を含有する樹脂組成物である。ここで、主成分とは、化学式(1)および(2)のいずれかで表される繰り返し単位が、樹脂の全繰り返し単位の50モル%以上、好ましくは80モル%、より好ましくは90モル%を占めることである。
【0023】
【化4】
【0024】
化学式(1)および(2)中、Xは、炭素数2以上の4価のテトラカルボン酸残基を示す。Yは、炭素数2以上の2価のジアミン残基を示す。ただし、Xを与えるテトラカルボン酸またはYを与えるジアミンの少なくとも一つは、波長380nm以上580nm以下の範囲に最大光吸収を有する。なお、ここでいうテトラカルボン酸とは、テトラカルボン酸二無水物も含むものとする。R’およびR”は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~10の炭化水素基、炭素数1~10のアルキルシリル基、アルカリ金属イオン、アンモニウムイオン、イミダゾリウムイオンまたはピリジニウムイオンを示す。
【0025】
(樹脂)
前記化学式(1)はポリイミドの化学構造を示す。前記化学式(2)はポリアミド酸の化学構造を示す。ポリアミド酸は、後述の通り、テトラカルボン酸とジアミン化合物を反応させることで得られる。さらにポリアミド酸は、加熱処理や化学処理を行うことにより、ポリイミドに変換することができる。
【0026】
化学式(1)および(2)中、Xは、水素原子および炭素原子を必須成分とし、炭素数2~80の4価の有機基であることが好ましく、炭素数2~80の4価の炭化水素基であることがより好ましい。Xは、ホウ素、酸素、硫黄、窒素、リン、ケイ素およびハロゲンからなる群より選ばれる1種以上の原子を含んでもよい。X中におけるホウ素、酸素、硫黄、窒素、リン、ケイ素およびハロゲンの各原子の数は、それぞれ独立に、20以下が好ましく、10以下がより好ましい。
【0027】
本発明の樹脂組成物を用いて得られる樹脂膜を有機発光表示装置用基板として用いる場合には、耐熱性および絶縁性が要求されることから、Xとしては芳香族系のテトラカルボン酸残基が好ましく用いられる。
【0028】
Xを与えるテトラカルボン酸としては特に制限はなく、公知のものを用いることができる。例として、ピロメリット酸、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10-ペリレンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-パラターフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-メタターフェニルテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。
【0029】
反応性の観点から、さらに好ましくは、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、またはピロメリット酸二無水物が挙げられる。これらの芳香族テトラカルボン酸二無水物の1種以上を使用することができる。
【0030】
化学式(1)および(2)中、Yは、水素原子および炭素原子を必須成分とし、炭素数2~80の2価の有機基であることが好ましく、炭素数2~80の2価の炭化水素基であることがより好ましい。Yは、ホウ素、酸素、硫黄、窒素、リン、ケイ素およびハロゲンからなる群より選ばれる1種以上の原子を含んでもよい。Y中におけるホウ素、酸素、硫黄、窒素、リン、ケイ素およびハロゲンの各原子の数は、それぞれ独立に、20以下が好ましく、10以下がより好ましい。
【0031】
Yとしては芳香族系のジアミン残基が好ましく用いられる。Yを与えるジアミンとしては特に制限はなく、公知のものを用いることができる。例として、パラフェニレンジアミン、メタフェニレンジアミン、3,3’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-ジアミノジフェニルサルファイド、4,4’-ジアミノジフェニルサルファイド、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、2,2-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、9,9’-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン、ペリレンジアミン等から選ばれた1種以上を使用することができる。
【0032】
反応性の観点から、さらに好ましくは、ジアミン成分の少なくとも一部がパラフェニレンジアミン、メタフェニレンジアミン、3,3’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、9,9’-ビス(4-アミノフェニル)フルオレンおよびペリレンジアミンから選ばれた1種以上であることが好ましい。
【0033】
ただし、Xを与えるテトラカルボン酸およびYを与えるジアミンの少なくとも一つは、波長380nm以上580nm以下の範囲に最大吸収を有する化合物である。これにより、波長380nm以上580nm以下の光を、耐熱性の高い樹脂に効率的に吸収させることができる。
【0034】
波長380nm以上580nm以下の範囲に最大吸収を有する化合物としては、特に限定されないが、耐光性、耐熱性および耐薬品性の観点から例えば以下のいずれかの化学構造を含むものがあげられる。
【0035】
【化5】
【0036】
ここで、R~R30はそれぞれ同じでも異なっていてもよく、水素、重水素、ハロゲン、置換もしくは無置換のアルキル基、シクロアルキル基、複素環基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリールエーテル基、アリールチオエーテル基、アリール基、ヘテロアリール基、シアノ基、カルボニル基、カルボキシル基、オキシカルボニル基、カルバモイル基、アミノ基、アルキルアミノ基、ニトロ基およびシリル基から選ばれた少なくとも一種であり、隣接する置換基同士で結合し、環を形成していてもよい。
【0037】
さらなる絶縁性向上の観点から、XおよびYの少なくとも一つがペリレン構造を含むことが好ましい。
【0038】
波長380nm以上580nm以下の範囲に最大吸収を有するテトラカルボン酸およびジアミンとしては特に制限はなく、具体的には以下のような例が挙げられる。
【0039】
【化6】
【0040】
【化7】
【0041】
【化8】
【0042】
ここで、R17~R20は上記の通りである。
【0043】
波長380nm以上580nm以下の範囲に最大光吸収を有するテトラカルボン酸またはジアミンの残基を含有することにより、化学式(1)および(2)のいずれかで表される繰り返し単位を主成分とする樹脂は、波長380以上580nm以下の範囲に最大光吸収を有することが好ましい。
【0044】
樹脂組成物は、さらに化学式(3)および(4)のいずれかで表される繰り返し単位を主成分とする樹脂を含むことが好ましい。ここで、主成分とは、化学式(3)または(4)で表される繰り返し単位が、樹脂の全繰り返し単位の50モル%以上、好ましくは80モル%、より好ましくは90モル%を占めることである。
【0045】
【化9】
【0046】
化学式(3)および(4)中、Uは、化学式(5)~(7)で表される構造より選ばれる少なくとも1つの構造である。Vは、炭素数2以上の2価のジアミン残基を示す。Vを与えるジアミンとしては、上記Yを与えるジアミンとして例示したものが好ましく用いられる。R’およびR”は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~10の炭化水素基、炭素数1~10のアルキルシリル基、アルカリ金属イオン、アンモニウムイオン、イミダゾリウムイオンまたはピリジニウムイオンを示す。
【0047】
【化10】
【0048】
樹脂組成物が化学式(3)および(4)のいずれかで表される繰り返し単位を主成分とする樹脂を含むと、得られる樹脂膜の耐熱性および機械特性が良好となる。化学式(3)および(4)のいずれかで表される繰り返し単位を主成分とする樹脂を含む樹脂は、化学式(1)および(2)のいずれかで表される繰り返し単位を主成分とする樹脂100質量部に対して、10~1000質量部含まれることが好ましい。また、化学式(3)および(4)のいずれかで表される繰り返し単位を主成分とする樹脂と、化学式(1)および(2)のいずれかで表される繰り返し単位を主成分とする樹脂とを共重合させて、本発明の樹脂として用いてもよい。さらに樹脂組成物を樹脂膜に加工して使用する際は、後述する通り、化学式(3)および(4)のいずれかで表される繰り返し単位を主成分とする樹脂を含む樹脂組成物と、化学式(1)および(2)のいずれかで表される繰り返し単位を主成分とする樹脂を含む樹脂組成物とを別々に調製して、各樹脂組成物から得られる樹脂膜を積層してもよい。
【0049】
(硬化促進剤)
本発明の樹脂組成物は、硬化促進剤を含有することが好ましい。硬化促進剤としては特に限定されず、例えば酸無水物系硬化剤、アミン系硬化剤、フェノール系硬化剤などがあげられる。硬化促進剤の役割は、200℃以下でポリイミド前駆体のイミド化を進行させることである。樹脂組成物が硬化促進剤を含有することで、樹脂組成物に含まれる樹脂の一部もしくは全てをイミド化することができる。また、樹脂組成物を用いて樹脂膜を形成する工程においては、硬化促進剤を含有することで、低温での加熱硬化により樹脂膜が形成されるので、顔料の昇華を防ぐことができ、遮光性が均一なポリイミド膜を得ることができる。硬化促進剤は、一種類が単独で用いられてもよく、二種以上が併用されてもよい。
【0050】
酸無水物系硬化剤としては、例えば、無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、無水マレイン酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水ベンゾフェノンテトラカルボン酸などがあげられる。
【0051】
上記アミン系硬化剤としては、例えば、イミダゾール系硬化促進剤、3級アミン系硬化促進剤などがあげられる。中でも、硬化速度、硬化物の物性などの調整をするための反応系の制御をしやすいことから、イミダゾール系硬化促進剤が好ましい。イミダゾール系硬化促進剤としては、例えば、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール、6-[2-(2-エチル-4-メチル-1H-イミダゾール-1-イル)エチル]-1,3,5-トリアジンー2,4-ジアミン、1,3,5-トリアジンー2,4,6(1H,3H,5H)-トリワン with 6-2-(2-メチル-1H-イミダゾール-1-イル)-1,3,5-トリアジンー2,4-ジアミン、1-(2-シアノエチル)-2-ウンデシルイミダゾールなどがあげられる。
【0052】
硬化促進剤は、樹脂100質量部に対して1質量部以上含まれることが好ましく、20質量部以下含まれることが好ましい。ここで、「樹脂100質量部に対して」とは、化学式(1)および(2)のいずれかで表される繰り返し単位を主成分とする樹脂と化学式(3)および(4)のいずれかで表される繰り返し単位を主成分とする樹脂全ての含有量の合計を100質量部として、含有量を計算することを意味する。以下同様である。
【0053】
(感光剤)
本発明の樹脂組成物は、感光剤を含むことで感光性樹脂組成物とすることができる。感光剤として光酸発生剤を含む樹脂組成物は、ポジ型感光性樹脂組成物となる。ポジ型感光性樹脂組成物を用いた場合、光照射部に酸が発生して光照射部のアルカリ水溶液に対する溶解性が増大し、光照射部が溶解するポジ型のレリーフパターンを得ることができる。一方、感光剤として光重合開始剤を含む樹脂組成物は、ネガ型感光性樹脂組成物となる。ネガ型感光性樹脂組成物を用いた場合、光照射部の不飽和結合の重合が進行して光照射部のアルカリ水溶液に対する溶解性が低下し、光照射部が不溶化するネガ型のレリーフパターンを得ることができる。
【0054】
光酸発生剤としては、キノンジアジド化合物、スルホニウム塩、ホスホニウム塩、ジアゾニウム塩、ヨードニウム塩などが挙げられる。このうち、キノンジアジド化合物を好ましく用いることができる。
【0055】
キノンジアジド化合物としては、ポリヒドロキシ化合物にキノンジアジドスルホン酸がエステルで結合したもの、ポリアミノ化合物にキノンジアジドスルホン酸がスルホンアミド結合したもの、ポリヒドロキシポリアミノ化合物にキノンジアジドスルホン酸がエステル結合および/またはスルホンアミド結合したものなどが挙げられる。これらポリヒドロキシ化合物やポリアミノ化合物の官能基全体の50モル%以上がキノンジアジドで置換されていることが好ましい。
【0056】
本発明において、キノンジアジド化合物としては、5-ナフトキノンジアジドスルホニル基を有するもの、4-ナフトキノンジアジドスルホニル基を有するもののいずれも好ましく用いられる。4-ナフトキノンジアジドスルホニルエステル化合物は水銀灯のi線領域に吸収を持っており、i線露光に適している。5-ナフトキノンジアジドスルホニルエステル化合物は水銀灯のg線領域まで吸収が伸びており、g線露光に適している。露光する波長によって4-ナフトキノンジアジドスルホニルエステル化合物および5-ナフトキノンジアジドスルホニルエステル化合物のいずれかを選択することが好ましい。また、4-ナフトキノンジアジドスルホニルエステル化合物と5-ナフトキノンジアジドスルホニルエステル化合物を両方含有しても良いし、同一分子中に4-ナフトキノンジアジドスルホニル基および5-ナフトキノンジアジドスルホニル基を有するナフトキノンジアジドスルホニルエステル化合物を含有してもよい。
【0057】
光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、ミヒラーズケトン、4,4,-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、3,3,4,4,-テトラ(t-ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノンなどのベンゾフェノン類;3,5-ビス(ジエチルアミノベンジリデン)-N-メチル-4-ピペリドン、3,5-ビス(ジエチルアミノベンジリデン)-N-エチル-4-ピペリドンなどのベンジリデン類;7-ジエチルアミノ-3-テノニルクマリン、4,6-ジメチル-3-エチルアミノクマリン、3,3-カルボニルビス(7-ジエチルアミノクマリン)、7-ジエチルアミノ-3-(1-メチルメチルベンゾイミダゾリル)クマリン、3-(2-ベンゾチアゾリル)-7-ジエチルアミノクマリンなどのクマリン類;2-t-ブチルアントラキノン、2-エチルアントラキノン、1,2-ベンズアントラキノンなどのアントラキノン類;ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテルなどのベンゾイン類;エチレングリコールジ(3-メルカプトプロピオネート)、2-メルカプトベンズチアゾール、2-メルカプトベンゾキサゾール、2-メルカプトベンズイミダゾールなどのメルカプト類;N-フェニルグリシン、N-メチル-N-フェニルグリシン、N-エチル-N-(p-クロロフェニル)グリシン、N-(4-シアノフェニル)グリシンなどのグリシン類;1-フェニル-1,2-ブタンジオン-2-(o-メトキシカルボニル)オキシム、1-フェニル-1,2-プロパンジオン-2-(o-メトキシカルボニル)オキシム、1-フェニル-1,2-プロパンジオン-2-(o-エトキシカルボニル)オキシム、1-フェニル-1,2-プロパンジオン-2-(o-ベンゾイル)オキシム、ビス(α-イソニトロソプロピオフェノンオキシム)イソフタル、1,2-オクタンジオン-1-[4-(フェニルチオ)フェニル]-2-(o-ベンゾイルオキシム)、IRGACURE(登録商標、以下同様) OXE01、IRGACURE OXE02(以上、商品名、BASF(株)製)、N-1818、N-1919、NCI-831(以上、商品名、ADEKA(株)製などのオキシムエステル類;2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタン-1-2-メチル-1[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モリフォリノプロパン-1-オンなどのα-アミノアルキルフェノン類;2,2´-ビス(o-クロロフェニル)-4,4´,5,5´-テトラフェニルビイミダゾールなどが挙げられる。これらのうち、より高感度でパターン加工できる点で、オキシムエステル類が好ましい。光重合開始剤は2種類以上を組み合わせて用いることもできる。
【0058】
感光剤の含有量は、樹脂100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上、さらに好ましくは2質量部以上である。また、含有量は、好ましくは50質量部以下、より好ましくは30質量部以下、さらに好ましくは20質量部以下である。感光剤の含有量を0.5質量部以上とすることで、現像時の露光部の膜減りを低減することができる。感光剤の含有量を、50質量部以下とすることで、硬化膜の耐熱性を向上させることができる。必要に応じて増感剤をさらに含有してもよい。
【0059】
(顔料)
本発明に用いられる顔料としては、特に制限はないが、黒色顔料、青色顔料および紫色顔料から選ばれた顔料が挙げられる。これらの顔料は、1種単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0060】
黒色顔料としては、カーボンブラック、ペリレンブラック、アニリンブラック等が挙げられる。
【0061】
青色顔料としては、例えば、C.I.ピグメントブルー1、1:2、9、14、15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6、16、17、19、25、27、28、29、33、35、36、56、56:1、60、61、61:1、62、63、66、67、68、71、72、73、74、75、76、78または79が挙げられる。耐熱性および580~780nmの範囲における光吸収を両立する観点から、フタロシアニン誘導体が好ましく用いられる。具体例としては、C.I.ピグメントブルー15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6または60が好ましく、C.I.ピグメントブルー15:6がより好ましい。
【0062】
紫色顔料としては、例えば、C.I.ピグメントバイオレット1、1:1、2、2:2、3、3:1、3:3、5、5:1、14、15、16、19、23、25、27、29、31、32、37、39、42、44、47、49または50が挙げられる。C.I.ピグメントバイオレット19または23が好ましく、C.I.ピグメントバイオレット23がより好ましい。
【0063】
本発明に用いられる顔料は、波長580nm以上780nm以下の範囲に最大光吸収を有することが好ましい。この範囲に最大光吸収を有することにより、化学式(1)および(2)のいずれかで表される繰り返し単位を主成分とする樹脂と混合して得られる樹脂組成物を、より効果的に黒色にすることができる。
【0064】
また、波長380nm以上580nm未満の範囲に吸収を有する顔料は耐熱性が乏しく、350℃以上では分解あるいは昇華が起こり、有機発光表示装置の性能が低下する場合がある。かかる観点からも、波長580nm以上780nm以下の範囲に最大光吸収を有する顔料が好ましい。
【0065】
フタロシアニン誘導体は、吸光係数が大きいために、より少ない添加量により、波長580~780nm範囲で光吸収を制御できるので好ましい。
【0066】
上記顔料は、樹脂100質量部に対して1質量部以上、20質量部以下含有することが好ましい。
【0067】
(光重合性化合物)
ネガ型感光性樹脂組成物は、光重合性化合物を含むことができる。光重合性化合物は、分子内に不飽和結合を有し、ネガ型感光性樹脂組成物に含まれる光重合開始剤の作用によって重合が進行する。これにより光照射部のアルカリ水溶液に対する溶解性が低下し、光照射部が不溶化するネガ型のレリーフパターンを得ることができる。不飽和結合としては、例えば、ビニル基、アリル基、アクリロイル基、メタクリロイル基等の不飽和二重結合、プロパルギル基等の不飽和三重結合などが挙げられる。これらの中でも、アクリロイル基またはメタクリロイル基が重合性の面で好ましい。
【0068】
光重合性化合物として好適に用いられるアクリロイル基またはメタクリロイル基を含有する多官能モノマーとしては、例えば、ビスフェノールAジグリシジルエーテル(メタ)アクリレート、ポリ(メタ)アクリレートカルバメート、変性ビスフェノールAエポキシ(メタ)アクリレート、アジピン酸1,6-ヘキサンジオール(メタ)アクリル酸エステル、無水フタル酸プロピレンオキサイド(メタ)アクリル酸エステル、トリメリット酸ジエチレングリコール(メタ)アクリル酸エステル、ロジン変性エポキシジ(メタ)アクリレート、アルキッド変性(メタ)アクリレート、フルオレンジアクリレート系オリゴマー、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリアクリルホルマール、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートもしくはその酸変性体、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートもしくはその酸変性体、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートおよびその酸変性体、2,2-ビス[4-(3-アクリロキシ-2-ヒドロキシプロポキシ)フェニル]プロパン、ビス[4-(3-アクリロキシ-2-ヒドロキシプロポキシ)フェニル]メタン、ビス[4-(3-アクリロキシ-2-ヒドロキシプロポキシ)フェニル]スルホン、ビス[4-(3-アクリロキシ-2-ヒドロキシプロポキシ)フェニル]エーテル、4,4’-ビス[4-(3-アクリロキシ-2-ヒドロキシプロポキシ)フェニル]シクロヘキサン、9,9-ビス[4-(3-アクリロキシ-2-ヒドロキシプロポキシ)フェニル]フルオレン、9,9-ビス[3-メチル-4-(3-アクリロキシ-2-ヒドロキシプロポキシ)フェニル]フルオレン、9,9-ビス[3-クロロ-4-(3-アクリロキシ-2-ヒドロキシプロポキシ)フェニル]フルオレン、ビスフェノキシエタノールフルオレンジアクリレート、ビスフェノキシエタノールフルオレンジメタアクリレート、ビスクレゾールフルオレンジアクリレートまたはビスクレゾールフルオレンジメタアクリレートが挙げられる。
【0069】
これらの多官能モノマーに加え、オリゴマーや単官能モノマーを適宜選択して組み合わせることにより、得られるネガ型着色感光性樹脂組成物の感度または加工性等などの特性を調整することができる。中でも感度を向上させるためには、官能基を3以上有する化合物が好ましく、官能基を5以上有する化合物がより好ましく、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートもしくはジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートまたはそれらの酸変性体がさらに好ましい。
【0070】
また、現像性および加工性を向上させるため、2個のグリシジルエーテル基を有するエポキシ化合物とメタアクリル酸との反応物に、多塩基酸カルボン酸またはその酸無水物を反応させて得られた不飽和基含有アルカリ可溶性モノマーも好ましく用いることができる。さらに、現像時のパターン形状の制御のため、分子中に複数の芳香環を有し、かつ撥水性が高いフルオレン環を有する(メタ)アクリレートを併用することが好ましい。
【0071】
光重合性化合物の含有量は、樹脂100質量部に対して、好ましくは10質量部以上、より好ましくは20質量部以上、さらに好ましくは30質量部以上である。含有量は、好ましくは300質量部以下、より好ましくは200質量部以下、さらに好ましくは150質量部以下である。光重合性化合物の含有量を10質量部以上とすることで、現像時の露光部の膜減りを低減することができる。光重合性化合物の含有量を150質量部以下とすることで、得られる硬化膜の耐熱性を向上させることができる。
【0072】
(界面活性剤)
本発明の樹脂組成物は、塗布性および得られる膜の表面の均一性を良好にする目的で、あるいは、顔料の分散性を良好にする目的で、界面活性剤を含有してもよい。界面活性剤としては、住友3M(株)製の“フロラード”(登録商標)、DIC(株)製の“メガファック”(登録商標)、旭硝子(株)製の“スルフロン”(登録商標)などのフッ素系界面活性剤;信越化学工業(株)製のKP341、チッソ(株)製のDBE、共栄社化学(株)製の“ポリフロー”(登録商標)、“グラノール”(登録商標)、ビック・ケミー(株)製のBYKなどの有機シロキサン界面活性剤;共栄社化学(株)製のポリフローなどのアクリル重合物界面活性剤などが挙げられる。界面活性剤の含有量は、樹脂100質量部に対し、0.01質量部以上10質量部以下が好ましい。
【0073】
(密着性改良剤)
本発明の樹脂組成物は、ガラス基板、シリコンウエハーなどの無機物との接着性を向上させる目的で密着性改良剤を含有することができる。密着性改良剤としては、シランカップリング剤、チタンカップリング剤などを使用することができる。密着改良剤の含有量は、樹脂100質量部に対し、0.01質量部以上10質量部が好ましい。
【0074】
(熱架橋剤)
本発明の樹脂組成物は、熱架橋剤を含有することができる。熱架橋剤とは、熱反応性の官能基を分子内に少なくとも2つ有する化合物を指す。熱反応性の官能基としては、例えば、アルコキシメチル基、メチロール基、エポキシ基、オキセタニル基などが挙げられる。これらを2種以上含有してもよい。熱架橋剤を含有することにより、その他添加成分を架橋し、硬化膜の耐熱性、耐薬品性および硬度を高めることができる。また、硬化膜からのアウトガス量を低減し、有機発光表示装置の信頼性を向上させることができる。
【0075】
(溶剤)
本発明の樹脂組成物は、溶剤を含有していてもよい。溶剤としては、N-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミドなどのアミド系極性溶剤が好ましく使用される。
【0076】
溶剤の好ましい含有量は、化学式(1)または(2)で表される繰り返し単位を主成分とする樹脂100質量部に対して、好ましくは50質量部以上、より好ましくは100質量部以上であり、好ましくは2000質量部以下、より好ましくは1500質量部以下である。かかる条件を満たす範囲であれば、塗布に適した粘度となり、塗布後の膜厚を容易に調節することができる。また、後述する通り、溶剤中でテトラカルボン酸とジアミンを反応させて化学式(1)または(2)で表される繰り返し単位を主成分とする樹脂を製造することで、樹脂を単離せずに樹脂組成物として使用することができる。
【0077】
(分散方法)
本発明の樹脂組成物は、分散機を用いて樹脂溶液中に直接顔料を分散させる方法や、分散機を用いて水または有機溶剤中に顔料を分散することにより顔料分散液を作製し、その後、該顔料分散液を樹脂溶液と混合する方法などにより製造される。顔料の分散方法には特に限定はなく、ビーズミル、ボールミル、サンドグラインダー、3本ロールミル、高速度衝撃ミルなど、種々の方法をとりうる。分散効率と微分散化からビーズミルが好ましい。ビーズミルとしては、コボールミル、バスケットミル、ピンミル、ダイノーミルなどを用いることができる。ビーズミルのビーズとしては、チタニアビーズ、ジルコニアビーズ、ジルコンビーズなどを用いるのが好ましい。
【0078】
本発明の樹脂組成物の固形分濃度としては、塗工性・乾燥性の観点から5質量%以上40質量%以下が好ましく、さらには10質量%以上25質量%以下であることが好ましい。なお、本発明における固形分とは、樹脂組成物中の溶剤以外の成分である。
【0079】
(黒色樹脂膜)
本発明の黒色樹脂膜は、化学式(1)で表される繰り返し単位を主成分とする樹脂、および顔料を含む樹脂膜であって、膜厚を5μmとしたときの波長380nm以上780nm以下の範囲における光透過率が5%以下である。
【0080】
【化11】
【0081】
この化学式(1)で表される繰り返し単位を主成分とする樹脂、および顔料に関する詳細な説明は、前述の樹脂組成物に関する説明におけるものと同様である。
【0082】
本発明において黒色とは、樹脂膜の膜厚を5μmとしたときの波長380nm以上780nm以下の範囲における光透過率が5%以下であることを指す。なお、樹脂膜の膜厚が5μmではない場合、膜厚を5μmとしたときの透過率は、実際の樹脂膜の膜厚および透過率から、下記式により計算することができる。
=(T/100)^(5/F)×100
ここで、Tは膜厚が5μmのときの透過率[%]、Fは実際の樹脂膜の膜厚[μm]、Tは実際の樹脂膜の透過率[%]である。
【0083】
本発明の黒色樹脂膜の絶縁破壊電圧は、有機発光表示装置の性能をより向上させる観点から、2.70MV/cm以上であることが好ましい。
【0084】
本発明の黒色樹脂膜は、耐熱性を有することが好ましい。そのような黒色樹脂膜としては、1%重量減少温度が350℃以上であることが好ましく、380℃以上がより好ましい。
【0085】
<積層体>
本発明の積層体は、上記黒色樹脂膜と、前記化学式(3)で表される繰り返し単位を主成分とする樹脂を含有する樹脂膜とが積層された積層体である。上記黒色樹脂膜は遮光性が高く、前記化学式(3)で表される繰り返し単位を主成分とする樹脂を含有する樹脂膜は機械特性が良好である。これらの樹脂膜を積層させた場合、これらを形成する樹脂を混合して得られる膜と比較して、遮光性と機械特性の両方を向上させることが容易となる。
【0086】
<表示装置>
本発明の黒色樹脂膜および本発明の積層体は、有機発光表示装置用基板、液晶ディスプレイ用基板、マイクロLEDディスプレイ用基板、フレキシブルカラーフィルタ用基板、フレキシブル電子ペーパー用基板、フレキシブルタッチパネル用基板などの表示装置用の基板として好適に用いられる。特に、有機発光表示装置用の基板として用いられることが好ましい。
【0087】
図1は、有機発光表示装置の構成の一例を示す概略断面図である。この有機発光表示装置は、ガラス基板1の上に黒色樹脂膜2を有し、その上に、各発光色のセルに対応する第一電極3と、発光色ごとの発光層5R、5Gおよび5Bと、各発光層を区画する絶縁層4と、第二電極6とを備えている。この構成においてガラス基板1を黒色樹脂膜2から剥離することで、フレキシブル有機発光表示装置とすることも可能である。
【0088】
<樹脂組成物の製造方法>
上記樹脂、ならびに必要により顔料、硬化促進剤、感光剤、熱架橋剤、密着改良剤、および界面活性剤などを溶剤に溶解させることにより、本発明の樹脂組成物(以下、ワニスと呼ぶ)を得ることができる。溶解方法としては、撹拌や加熱が挙げられる。また、各成分の溶解順序は特に限定されず、例えば、溶解性の低い化合物から順次溶解させる方法がある。また、界面活性剤など撹拌溶解時に気泡を発生しやすい成分については、他の成分を溶解してから最後に添加することで、気泡の発生による他成分の溶解不良を防ぐことができる。
【0089】
なお、樹脂は既知の方法によって重合することができる。例えば、テトラカルボン酸と、ジアミンを反応溶媒中で重合させることにより、ポリアミド酸を得ることができる。ポリアミド酸は、カルボキシ基がアルカリ金属イオン、アンモニウムイオンまたはイミダゾリウムイオンと塩を形成したものでもあってもよく、炭素数1~10の炭化水素基または炭素数1~10のアルキルシリル基でエステル化されたものであってもよい。一方、ポリイミドは、後述する方法によってポリアミド酸をイミド化することで得られる。
【0090】
反応溶媒としては、N-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミドなどのアミド系極性溶剤が好ましく使用される。
【0091】
反応溶媒の使用量は、テトラカルボン酸およびジアミン化合物の合計量が、反応溶液の全体の0.1~50質量%となるように調整することが好ましい。また反応温度は-20℃~200℃が好ましく、0~160℃がより好ましい。さらに、反応時間は0.1~24時間が好ましく、0.5~12時間がより好ましい。また、反応で使用するジアミン化合物のモル数とテトラカルボン酸のモル数は等しいことが、高い機械特性の樹脂膜が得られやすいので好ましい。
【0092】
得られたポリアミド酸溶液は、樹脂を単離することなく、そのまま本発明の樹脂組成物として使用してもよい。この場合、反応溶剤に樹脂組成物として使用する溶剤と同じものを用いたり、反応終了後に溶剤を添加したりすることで、樹脂を単離することなく目的の樹脂組成物を得ることができる。
【0093】
また、得られたポリアミド酸は、さらにポリアミド酸の繰り返し単位の一部または全てをイミド化させてもよい。この場合、ポリアミド酸の重合で得られたポリアミド酸溶液をそのままイミド化反応に用いてもよく、ポリアミド酸を単離したうえで、イミド化反応に用いてもよい。
【0094】
ポリアミド酸をイミド化する方法としては、ポリアミド酸を加熱する方法、もしくは、ポリアミド酸に脱水剤を添加して必要に応じて加熱する方法が好ましい。後者の方法の場合、脱水剤の反応物やイミド化触媒などを除去する工程が必要になるため、前者の方法がより好ましい。
【0095】
<黒色樹脂膜の製造方法>
本発明の黒色樹脂膜の製造方法の一例を説明する。なお、黒色樹脂膜の製造方法は以下の内容に限られるものではない。
【0096】
まず、上記のようにして得られたワニスを支持体上に塗布する。支持体としては、シリコン、ガリウムヒ素などのウェハ基板;サファイアガラス、ソーダ石灰硝子、無アルカリガラスなどのガラス基板;ステンレス、銅などの金属基板あるいは金属箔;セラミックス基板などが挙げられる。中でも、表面平滑性および加熱時の寸法安定性の観点から、無アルカリガラス基板が好ましい。
【0097】
ワニスの塗布方法としては、スピン塗布法、スリット塗布法、ディップ塗布法、スプレー塗布法、印刷法などが挙げられる。これらを組み合わせて用いてもよい。樹脂膜を有機発光表示装置の基板として用いる場合には、大型サイズの支持体上に塗布する必要があるため、特にスリット塗布法が好ましく用いられる。
【0098】
塗布後は、ワニスの塗布膜を乾燥させることが一般的である。乾燥方法としては、減圧乾燥や加熱乾燥、あるいはこれらを組み合わせて用いることができる。減圧乾燥の方法としては、例えば、真空チャンバー内に塗布膜を形成した支持体を置き、真空チャンバー内を減圧することで行なう。また、加熱乾燥はホットプレート、オーブン、赤外線などを使用して行なう。ホットプレートを用いる場合、プレート上に直接、もしくは、プレート上に設置したプロキシピン等の治具上に塗布膜を保持して加熱乾燥する。
【0099】
最後に180℃以上500℃以下の範囲で加熱処理し、塗布膜を焼成することにより黒色樹脂膜を製造することができる。
【0100】
支持体と黒色樹脂膜との密着性を向上させるためには、熱処理する際の温度を樹脂のTgより高くすることが有効であるため、黒色樹脂膜の作製工程における加熱処理温度は380℃以上が好ましい。熱処理する際の温度を樹脂のTgより高くすることによって、内部応力の低下に伴い密着性が向上できる。
【0101】
以上の工程を経て得られた黒色樹脂膜は、有機発光表示装置の基板として用いる場合は、通常、支持体と剥離せずに次の工程に用いる。しかし、後述する剥離方法を用いて支持体から樹脂膜を剥離し、次の工程へ進めても良い。
【0102】
<表示装置の製造方法>
本発明の表示装置の製造方法について、有機発光表示装置の場合を例に挙げて説明する。
【0103】
前記の黒色樹脂膜の上に、無機膜を設けることが好ましい。これにより基板外部から水分や酸素が黒色樹脂膜を通過して画素駆動素子や発光素子の劣化を引き起こすのを防ぐことができる。無機膜としては、例えばケイ素酸化物(SiOx)、ケイ素窒化物(SiNy)、ケイ素酸窒化物(SiOxNy)などが挙げられる。これらは単層、あるいは複数の層を積層して用いることができる。また、これらの無機膜は例えばポリビニルアルコールなどの有機膜と交互に積層して用いることもできる。これらの無機膜の成膜方法は、化学気相成長法(CVD)等の蒸着法を用いて行われることが好ましい。
【0104】
必要に応じて前記無機膜の上にさらに樹脂膜を形成したり、さらに無機膜を形成したりすることで、無機膜や樹脂膜を複数層具備する有機発光表示装置の基板を製造することができる。なお、プロセスの簡略化の観点から、各樹脂膜の製造に用いられる樹脂組成物は同一の樹脂組成物であることが好ましい。
【0105】
得られた樹脂膜上(その上に無機膜等がある場合はさらにその上)に表示装置の各構成要素を形成する。当該構成要素としては、例えば、有機ELディスプレイの場合、画像駆動素子であるTFT、第一電極、有機EL発光素子(発光層)、第二電極、封止膜などが挙げられる。これらを順に形成して画像表示素子を形成する。カラーフィルター用基板の場合、必要に応じてブラックマトリックスを形成した後、赤色画素、緑色画素、青色画素などの着色画素を形成する。タッチパネル用基板の場合、配線層と絶縁層を形成する。
【0106】
最後に、支持体と黒色樹脂膜の界面で両者を剥離することで、支持体を除去する。剥離する方法としては、レーザーリフトオフ、機械的な剥離方法、支持体をエッチングする方法などが挙げられる。レーザーリフトオフを行う場合、ガラス基板などの支持体に対し、黒色樹脂膜および素子が形成されている側の反対側からレーザーを照射する。これにより、素子にダメージを与えることなく、剥離を行うことができる。
【0107】
レーザー光としては、紫外光から赤外光の波長範囲のレーザー光を用いることができるが、紫外光が特に好ましい。より好ましくは、308nmのエキシマレーザーが好ましい。剥離エネルギーは250mJ/cm以下が好ましく、200mJ/cm以下がより好ましい。
【実施例
【0108】
以下、実施例等をあげて本発明を説明する。まず、評価方法について説明する。
【0109】
<ワニスのろ過>
ADVANTEC製のPTFEのフィルター(フィルター孔径10μm)を使用し、ワニスをろ過した。上記フィルターでろ過が可能な場合をろ過性が「良好」、ろ過が不能な場合をろ過性が「不良」とした。
【0110】
<膜厚の測定>
各実施例および比較例における樹脂膜の膜厚は、表面粗さ測定機(サーフコム1400D;(株)東京精密製)を使用して測定した。
【0111】
<絶縁破壊電圧>
スピンコーター(ミカサ株式会社製 1H-DX2)を用いて、5cm×5cmのアルミ基板上にワニスをスピンコートし、つづいてホットプレート(アズワン株式会社製 HPD-3000BZN)を用いて110℃で10分間、乾燥した。つづいて、イナートオーブン(光洋サーモシステム株式会社製 INH-21CD)を用いて、窒素雰囲気下(酸素濃度20ppm以下)、50℃から昇温速度4℃/minで400℃まで昇温した。400℃で30分加熱し、アルミ基板上に、膜厚10μmのポリイミドフィルムを成膜した。
【0112】
絶縁抵抗試験器(菊水電子工業株式会社製 TOS9202)を用いて、ポリイミドフィルムの絶縁破壊電圧を測定した。
【0113】
<遮光性評価>
スピンコーター(ミカサ株式会社製 1H-DX2)を用いて、10cm×10cmの無アルカリガラス基板上にワニスをスピンコートし、つづいてホットプレート(アズワン株式会社製 HPD-3000BZN)を用いて110℃で10分間、乾燥した。つづいて、イナートオーブン(光洋サーモシステム株式会社製 INH-21CD)を用いて、窒素雰囲気下(酸素濃度20ppm以下)、50℃から昇温速度4℃/minで400℃まで昇温した。400℃で30分加熱し、ガラス基板上に、膜厚5μmのポリイミドフィルムを成膜した。
【0114】
分光光度計(U-4100;(株)日立ハイテクノロジーズ製)を用いて、ポリイミドフィルムの波長380nm以上780nm以下における透過率を測定した。波長380nm以上580nm未満の範囲における最大の透過率と、波長580nm以上780nm以下の範囲における最大の透過率が、両方とも5%以下ならA評価、少なくとも一方が5%を超えて10%以下ならB評価、両方とも10%を超えていたらC評価とした。
【0115】
<有機発光表示装置の暗輝度評価>
有機発光表示装置の暗輝度評価環境の概略図を図2に示す。各実施例および比較例により得られた有機発光表示装置7を、点灯していない状態で蛍光灯8の直下2.4mに、照度500lxの環境下で、水平に対して45°に傾けて設置した。次に、分光放射輝度計9(CS-1000;コニカミノルタ(株)製)を、有機発光表示装置7を反射面として蛍光灯8と分光放射輝度計9とが正対するように配置した。分光放射輝度計9を用いて、この環境における有機発光表示装置表面7の輝度を測定し、得られた輝度を暗輝度とした。
【0116】
<有機発光表示装置の明輝度、色度評価>
前述の暗輝度評価と同じ環境下(図2の配置)で、各実施例および比較例により得られた有機発光表示装置7を0.625mAの直流駆動にて発光させ、分光放射輝度計9を用いて、有機発光表示装置7の表面の輝度と色度を測定した。発光色である色度(x、y=0.350、0.600)を基準とし、基準と測定値との差異により色ズレを判定した。色ズレの判定は、x、y共に±0.01以内となれば色度優良(A)、x、y共に±0.02以上となれば色度不良(C)、それ以外を色度良好(B)とした。
【0117】
<有機発光表示装置のコントラスト評価>
上記方法により測定した暗輝度に対する明輝度の比を、暗輝度を1として算出した。比が大きいほどコントラストが高く好ましく、コントラストが1.8以上である場合に「良好」、1.8未満である場合に「不良」とした。
【0118】
<有機発光表示装置の信頼性評価>
各実施例および比較例により得られた有機発光表示装置を、発光面を上にして80℃に加熱したホットプレートに載せ、波長365nm、照度0.6mW/cmのUV光を照射した。照射直後(0時間)、250時間、500時間および1000時間経過後に、有機発光表示装置を0.625mAの直流駆動により発光させ、発光画素の面積に対する発光部の面積率(画素発光面積率)を測定した。
【0119】
<パターン加工性評価>
実施例により得られた感光性樹脂組成物を無アルカリガラス基板上にスピンコート法により塗布し、110℃のホットプレート上で2分間プリベークし、膜厚2.0μmの膜を得た。次に露光装置(マスクアライナー PEM-6M;ユニオン光学(株)製)を用い、100μmのライン・アンド・スペースパターン形成用のマスクを介し、超高圧水銀灯のi線(波長365nm)、h線(波長405nm)およびg線(波長436nm)で100mJ/cmの露光量で露光した。その後、自動現像装置(滝沢産業(株)製AD-2000)を用いて2.38質量%水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液を用いて60秒間シャワー現像し、次いで純水で30秒間リンスした。ポジ型感光性樹脂組成物の場合は、現像によって露光部の膜が完全に溶解し、未露光部に膜が残る状態となったものを、パターン加工性が良好と判定した。一方、ネガ型感光性樹脂組成物の場合は、現像によって未露光部の膜が完全に溶解し、露光部の膜が残る状態となったものを、パターン加工性が良好と判定した。
【0120】
以下、実施例で使用する化合物の略称を記載する。また、カッコ内に化合物の最大吸収波長を記載する。ここで、「<380nm」は、最大吸収波長が測定範囲の下限である380nmよりも短波長にあることを意味する。
PyDA:1,6-ジアミノピレン(440nm)
PMDA:ピロメリット酸二無水物(<380nm)
BPDA:3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(<380nm)
PTCDA:3,4,9,10-ペリレンテトラカルボン酸二無水物(520nm)
ODPA:4,4‘-オキシジフタル酸無水物(<380nm)
PDA:1,4-ジアミノベンゼン(<380nm)
BIS-A-AF:2,2’-ビス(4-アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン(<380nm)
BIS-AT-AF:2,2’-ビス(3-アミノ-4-メチルフェニル)ヘキサフルオロプロパン(<380nm)
TFDB:4,4’-ジアミノ-2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル(<380nm)
4,4’-DDS:4,4’-ジアミノジフェニルスルホン(<380nm)
3,3’-DDS:3,3’-ジアミノジフェニルスルホン(<380nm)
BIS-A-AP-AF:2,2-ビス[3-(3-アミノベンズアミド)-4-ヒドロキシフェニル]ヘキサフルオロプロパン(<380nm)
NMP:N-メチル-2-ピロリドン
GBL:γ-ブチロラクトン
APMDS:1,3-ビス(3-アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン
PMA:ポリメタクリレート
光重合開始剤A:“アデカアークルズ”(登録商標)NCI-831((株)ADEKA製)
光重合性化合物B:“KAYARAD”(登録商標)DPHAジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本化薬(株)製)
C11Z-CN:1-(2-シアノエチル)-2-ウンデシルイミダゾール。
【0121】
調製例1 青色顔料分散液(BD-1)の調製
C.I.ピグメントブルー15:6(DIC(株)製 EP193、フタロシアニン誘導体、波長580nm以上780nm以下の範囲に最大光吸収を有する) 120g、高分子分散剤(ビックケミー製 “BYK”6919 固形分濃度60質量%) 86.7g、アルカリ可溶性樹脂(ダイセル・オルネクス(株)製、“サイクロマー”(登録商標)P(ACA)Z250 固形分濃度45質量%) 88.9g、およびPMA 704.4gを混合してスラリーを作製した。スラリーを入れたビーカーをダイノーミルとチューブでつなぎ、メディアとして直径0.5mmのジルコニアビーズを使用して、周速14m/sで8時間の分散処理を行い、青色顔料分散液(BD-1)を作製した。
【0122】
調製例2 カーボンブラック分散剤(CB-1)の調製
文献(特許第3120476号公報;実施例1)記載の方法により、メチルメタクリレート/メタクリル酸/スチレン共重合体(重量比30/40/30)を合成後、グリシジルメタクリレート40重量部を付加させた。得られたポリマーを精製水で再沈し、濾過し、乾燥することにより、平均分子量(Mw)40,000、酸価110(mgKOH/g)のアクリルポリマー(P-1)粉末を得た。
【0123】
カーボンブラック(TPX1291;CABOT製)400g、アクリル樹脂(P-1)のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート40質量%溶液 187.5g、高分子分散剤(BYK21116;ビックケミー社製)62.5gおよびプロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート 890gをタンクに仕込み、ホモミキサー(特殊機化製)で1時間撹拌し、予備分散液2を得た。その後、0.10mmφジルコニアビーズ(東レ製)を70%充填した遠心分離セパレーターを具備した、ウルトラアペックスミル(寿工業製)に予備分散液2を供給し、回転速度8m/sで2時間分散を行い、固形分濃度35質量%、顔料/樹脂(重量比)=80/20のカーボンブラック顔料分散液CB-1を得た。
【0124】
調製例3 赤色顔料分散液(RED-1)の調製
PigmentRed254(TCI製、ジヒドロピロロピロール誘導体、波長380nm以上580nm未満の範囲に最大光吸収を有する) 105g、高分子分散剤(ビックケミー製 “BYK”6919 固形分濃度60質量%) 80.7g、アルカリ可溶性樹脂(ダイセル・オルネクス(株)製、“サイクロマー”(登録商標)P(ACA)Z250 固形分濃度45質量%) 85.6g、およびPMA 690.4gを混合してスラリーを作製した。スラリーを入れたビーカーをダイノーミルとチューブでつなぎ、メディアとして直径0.5mmのジルコニアビーズを使用して、周速14m/sで8時間の分散処理を行い、赤色顔料分散液(RED-1)を作製した。
【0125】
調製例4 青色顔料分散液(BD-2)の調製
Pigment Blue(SIGMA-ALDRICH製、インジゴ、波長580nm以上780nm以下の範囲に最大光吸収を有する) 110g、高分子分散剤(ビックケミー製 “BYK”6919 固形分濃度60質量%) 84.3g、アルカリ可溶性樹脂(ダイセル・オルネクス(株)製、“サイクロマー”(登録商標)P(ACA)Z250 固形分濃度45質量%) 86.9g、およびPMA 700.5gを混合してスラリーを作製した。スラリーを入れたビーカーをダイノーミルとチューブでつなぎ、メディアとして直径0.5mmのジルコニアビーズを使用して、周速14m/sで8時間の分散処理を行い、青色顔料分散液(BD-2)を作製した。
調製例5 光酸発生剤Cの合成
乾燥窒素気流下、TrisP-PA(商品名、本州化学工業(株)製)21.22g(0.05モル)と5-ナフトキノンジアジドスルホニル酸クロリド36.27g(0.135モル)を1,4-ジオキサン450gに溶解させ、室温にした。ここに、1,4-ジオキサン50gと混合したトリエチルアミン15.18gを、系内が35℃以上にならないように滴下した。滴下後30℃で2時間撹拌した。トリエチルアミン塩を濾過して除いた後、ろ液を水に投入した。析出した沈殿をろ過で集めた。この沈殿を真空乾燥機で乾燥させ、下記化学式で表される光酸発生剤Aを得た。
【0126】
【化12】
【0127】
合成例1:
300mL4つ口フラスコに、温度計および撹拌羽根付き撹拌棒をセットした。該フラスコに、乾燥窒素気流下、NMP120gを投入し、60℃に昇温した。昇温後、撹拌しながらPyDA21.48g(92.48mmol)を入れて、NMP20gで洗いこんだ。PyDAが溶解したことを確認し、BPDA28.05g(95.33mmol)を投入し、NMP20gで洗いこんだ。60℃で3時間反応させ、ポリイミド前駆体溶液1を得た。
【0128】
合成例2:
500mL4つ口フラスコに、温度計および撹拌羽根付き撹拌棒をセットした。該フラスコに、乾燥窒素気流下、NMP113.77gを投入し、60℃に昇温した。昇温後、撹拌しながらBIS-A-AF3.40g(10.17mmol)およびPTCDA2.54g(6.47mmol)を入れて、NMP60gで洗いこんだ。180℃に昇温し、8.0時間後、60℃に降温した。BPDA1.09g(3.70mmol)を投入し、NMP20gで洗いこんだ後、0.5時間撹拌した。続いて、PDA10.00g(92.47mmol)投入し、NMP20gで洗いこんだ後、5分間撹拌した。さらに、BPDA27.21g(92.47mmol)を投入し、NMP20gで洗いこんだ後、60℃で3時間反応させ、ポリイミド前駆体溶液2を得た。
【0129】
合成例3:
500mL4つ口フラスコに、温度計および撹拌羽根付き撹拌棒をセットした。該フラスコに、乾燥窒素気流下、NMP113.77gを投入し、60℃に昇温した。昇温後、撹拌しながらBIS-A-AF3.40g(10.17mmol)およびPTCDA2.54g(6.47mmol)を入れて、NMP40gで洗いこんだ。0.5時間撹拌し、硬化促進剤であるC11Z-CN 0.48gを投入し、NMP20gで洗いこんだ後、160℃に昇温した。2.5時間後、60℃に降温した。BPDA1.09g(3.70mmol)を投入し、NMP20gで洗いこんだ後、0.5時間撹拌した。続いて、PDA10.00g(92.47mmol)投入し、NMP20gで洗いこんだ後、5分間撹拌した。さらに、BPDA27.21g(92.47mmol)を投入し、NMP20gで洗いこんだ後、60℃で3時間反応させ、ポリイミド前駆体溶液3を得た。
【0130】
合成例4:
合成例3において、BIS-A-AFの代わりにBIS-AT-AF3.69g(10.17mmol)を用いた以外は同様に合成し、ポリイミド前駆体溶液4を得た。
【0131】
合成例5:
合成例3において、BIS-A-AFの代わりにTFDB3.26g(10.17mmol)を用いた以外は同様に合成し、ポリイミド前駆体溶液5を得た。
【0132】
合成例6:
合成例3において、BIS-A-AFの代わりに4,4’-DDS2.53g(10.17mmol)を用いた以外は同様に合成し、ポリイミド前駆体溶液6を得た。
【0133】
合成例7:
合成例3において、BIS-A-AFの代わりに3,3’-DDS2.53g(10.17mmol)を用いた以外は同様に合成し、ポリイミド前駆体溶液7を得た。
【0134】
合成例8:
500mL4つ口フラスコに、温度計、撹拌羽根付き撹拌棒をセットした。該フラスコに、乾燥窒素気流下、NMP113.77gを投入し、60℃に昇温した。昇温後、撹拌しながらBIS-A-AF3.40g(10.17mmol)およびPTCDA2.54g(6.47mmol)を入れて、NMP40gで洗いこんだ。0.5時間撹拌し、硬化促進剤であるC11Z-CN 0.48gを投入し、NMP20gで洗いこんだ後、160℃に昇温した。2.5時間後、60℃に降温した。BPDA1.09g(3.70mmol)を投入し、NMP20gで洗いこんだ後、0.5時間撹拌した。続いて、PDA10.00g(92.47mmol)投入し、NMP20gで洗いこんだ後、5分間撹拌した。さらに、BPDA13.60g(46.23mmol)、PMDA10.09g(46.23mmol)を投入し、NMP20gで洗いこんだ後、60℃で3時間反応させ、ポリイミド前駆体溶液8を得た。
【0135】
合成例9:
500mL4つ口フラスコに、温度計および撹拌羽根付き撹拌棒をセットした。該フラスコに、乾燥窒素気流下、NMP113.77gを投入し、60℃に昇温した。昇温後、撹拌しながらBIS-A-AF3.40g(10.17mmol)およびPTCDA2.54g(6.47mmol)を入れて、NMP40gで洗いこんだ。0.5時間撹拌し、硬化促進剤であるC11Z-CN 0.48gを投入し、NMP20gで洗いこんだ後、160℃に昇温した。2.5時間後、60℃に降温した。ODPA1.15g(3.70mmol)を投入し、NMP20gで洗いこんだ後、0.5時間撹拌した。続いて、BIS-A-AP-AF55.90g(92.47mmol)を投入し、NMP20gで洗いこんだ後、5分間撹拌した。さらに、ODPA28.68g(92.47mmol)を投入し、NMP20gで洗いこんだ後、60℃で3時間反応させた。その後、N,N-ジメチルホルムアミドジメチルアセタール23.83g(200.0mmol)をNMP50gで希釈した溶液を10分かけて滴下した。滴下後、50℃で3時間撹拌した。撹拌終了後、溶液を室温まで冷却した後、溶液を水2Lに投入して樹脂を析出させた。この樹脂を濾過で集めて、水で3回洗浄した後、80℃の真空乾燥機で24時間乾燥させた。得られた樹脂20gをGBL80gに溶解させてポリイミド前駆体溶液9を得た。
【0136】
合成例10:
合成例3において、BIS-A-AFの代わりにAPMDS2.53g(10.17mmol)を用いた以外は同様に合成し、ポリイミド前駆体溶液10を得た。
【0137】
合成例11:
300mL4つ口フラスコに、温度計および撹拌羽根付き撹拌棒をセットした。該フラスコに、乾燥窒素気流下、NMP120gを投入し、60℃に昇温した。昇温後、撹拌しながらPDA10.00g(92.47mmol)を入れて、NMP20gで洗いこんだ。PDAが溶解したことを確認し、BPDA28.05g(95.33mmol)を投入し、NMP20gで洗いこんだ。60℃で3時間反応させ、ポリイミド前駆体溶液11を得た。
【0138】
硬化促進剤を用いた合成例3~8では、これを用いていない合成例2と比べ、PTCDAと各種ジアミンとの反応温度を180℃から160℃に下げることができ、反応時間を8時間から2.5時間に短縮することができた。
【0139】
実施例1~12、比較例1~3
合成例1~11で得られたポリイミド前駆体溶液1~11について、上記の方法でろ過性を評価した。ポリイミド前駆体溶液10はろ過ができなかったため、以降の評価は行っていない(比較例1)。表1に記載のろ過後のポリイミド前駆体溶液50gに、表1に記載の顔料分散液を6g加えて混合し、ワニス1~14を得た。ただし、比較例2では顔料分散液を加えていない。実施例11では光酸発生剤Cを3.5g加えて混合した。実施例12では光重合開始剤Aを0.5gと光重合性化合物Bを2.5g加えて混合した。これらのワニスを用いて、上記の方法でガラス基板上およびアルミ基板上に樹脂膜を形成した。得られた樹脂膜について、上記の方法で遮光性および絶縁破壊電圧を測定した。結果を表1に示す。
【0140】
【表1】
【0141】
実施例1~12はろ過性が良好であった。実施例2~12は遮光性がA評価であった。実施例3~12は絶縁破壊電圧が2.70MV/cm以上であった。
【0142】
以上のように、本発明の樹脂組成物を用いて作製した黒色樹脂膜は遮光性が良好であった。また、好ましい態様として、フタロシアニン誘導体からなる青色顔料を用いた実施例3~12は絶縁破壊電圧が高かった。
【0143】
<有機EL素子作製>
実施例101~107、比較例101
有機発光表示装置として、以下の手順により、有機EL素子を作成し、評価した。
【0144】
スピンコーター(ミカサ株式会社製 1H-DX2)を用いて、38mm×46mmの無アルカリガラス基板1上に実施例2、4~9および比較例2で得られたワニス2、4~9、13を各々スピンコートし、つづいてホットプレート(アズワン株式会社製 HPD-3000BZN)を用いて110℃で10分間、乾燥した。つづいて、イナートオーブン(光洋サーモシステム株式会社製 INH-21CD)を用いて、窒素雰囲気下(酸素濃度20ppm以下)、50℃から昇温速度4℃/minで400℃まで昇温した。400℃で30分加熱し、ガラス基板1上に、膜厚10μmのポリイミドフィルム(黒色樹脂膜)2を成膜した。
【0145】
得られたポリイミドフィルムの上にCVDを用いてSiO膜およびSi膜の積層から成るガスバリア膜を成膜した。つづいて、この上にTFTを形成し、このTFTを覆うようにSiから成る絶縁膜をさらに形成した。次に、このTFTの上部の絶縁膜にコンタクトホールを形成し、このコンタクトホールを介してTFTに接続される配線を形成した。
【0146】
さらにこの上に、配線の形成による凹凸を平坦化するために、平坦化膜を形成した。次に、得られた平坦化膜上に、ITO膜を前記配線に接続させて形成した。その後ITO膜上にレジストを塗布した。レジストをプリベークした後、所望のパターンのマスクを介して露光し、現像することにより、所望のレジストパターンを得た。得られたレジストパターンをマスクとして、ITOエッチャントを用いたウエットエッチングにより、ITO膜のパターン加工を行い、第一電極3を得た。その後、レジスト剥離液(モノエタノールアミンとジエチレングリコールモノブチルエーテルの混合液)を用いて前記レジストパターンを剥離した。剥離後の基板を水洗し、加熱脱水して平坦化膜付き電極基板を得た。次に、第一電極3の周縁を覆う形状の絶縁膜4を形成した。
【0147】
次に、第一電極3上に、真空蒸着法にて、アルミニウムを100nm蒸着し、陽極とした。このアルミニウム陽極上に、正孔注入層としてN,N’-ジ-1-ナフチル-N,N’-ジフェニルベンジジン(NPD)とテトラフルオロテトラシアノキノジメタン(F4-TCNQ)からなる共蒸着膜(重量比97:3)を50nm蒸着した。ついで正孔輸送層としてN,N’-ジ-1-ナフチル-N,N’-ジフェニルベンジジン(NPD)を80nm蒸着した。さらに緑色発光層として4,4’,4’’-トリス(ジフェニルアミノ)トリフェニルアミン(GH)とトリス(2-フェニルピリジナト)イリジウム(III)(GD)の共蒸着膜層(重量比97:3)を20nm形成した。次いで電子輸送層としてアルミニウムトリキノリノール(Alq)を30nm蒸着し、電子注入層としてLiFを1nm蒸着した後に、半透過陰極としてMgAg(重量比10:1)を15nm蒸着した。さらにキャッピング層としてCPL(2,5-ビス(4-(N-ビフェニル-4-イル-3-ピリジルアミノ)フェニル)チオフェン)を60nm蒸着した。
【0148】
【化13】
【0149】
波長308nmのレーザー発振器(Coherent,Inc.製)を用いて、ポリイミドフィルム2が成膜されたガラス基板1に対し、ポリイミドフィルム2が成膜されていない側からレーザーを照射して、ガラス基板1とポリイミドフィルム2を剥離し、フレキシブルな有機EL素子を得た。レーザーの周波数は300Hzとした。得られた有機EL素子について、上記の方法で暗輝度、明輝度、色度、コントラストおよび信頼性の評価を行った。評価結果を表2に示す。
【0150】
実施例201、比較例201
ワニス7および13を用いて実施例101と同様の素子を作成し、円偏光板を有機発光表示装置の前面側に重ね合わせて装着し、実施例101と同様にして評価した。評価結果を表2に示す。
【0151】
【表2】
【0152】
実施例101~107および201では、コントラストが高く、色ズレも小さい有機発光表示装置が得られた。一方、比較例101および201の有機発光表示装置は、コントラストが劣り、色ズレも大きい結果となった。
【0153】
また、比較例101と比較例201との対比から、従来技術の有機発光表示装置においては、円偏光板を有機発光表示装置の前面側に重ね合わせることによって、色ズレが低減できることがわかる。一方、実施例105と実施例201との対比から、本発明の有機発光表示装置においては、円偏光板の有無に関わらず、色ズレが同等に低減できることが分かった。
【0154】
以上のように、本発明に係る樹脂組成物を用いて作製した黒色樹脂膜を用いると、コントラストに優れ、色ズレが小さい、視認性の良好な有機発光表示装置が得られる。
【0155】
実施例301
実施例11で使用したワニス11を用いて、上記の方法でパターン加工性評価を行った。その結果、露光部は現像によって残渣を生じることなく溶解し、一方の未露光部は樹脂膜が残る結果となり、良好なポジ型のレリーフパターンが得られることを確認した。
【0156】
実施例302
実施例12で使用したワニス12を用いて、上記の方法でパターン加工性評価を行った。その結果、未露光部は現像によって残渣を生じることなく溶解し、一方の露光部は樹脂膜が残る結果となり、良好なネガ型のレリーフパターンが得られることを確認した。
【符号の説明】
【0157】
1 ガラス基板
2 黒色樹脂膜
3 第一電極
4 絶縁層
5R、5G、5B 発光層
6 第二電極
7 有機発光表示装置
8 蛍光灯
9 分光放射輝度計
図1
図2