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特許7334734故障診断方法、蓄電素子の管理装置及びシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-21
(45)【発行日】2023-08-29
(54)【発明の名称】故障診断方法、蓄電素子の管理装置及びシステム
(51)【国際特許分類】
   H02H 7/00 20060101AFI20230822BHJP
   H02H 7/18 20060101ALI20230822BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20230822BHJP
   B60R 16/03 20060101ALI20230822BHJP
【FI】
H02H7/00 L
H02H7/18
H02J7/00 S
H02J7/00 Q
B60R16/03 A
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020516296
(86)(22)【出願日】2019-04-19
(86)【国際出願番号】 JP2019016741
(87)【国際公開番号】W WO2019208410
(87)【国際公開日】2019-10-31
【審査請求日】2022-02-15
(31)【優先権主張番号】P 2018082247
(32)【優先日】2018-04-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】507151526
【氏名又は名称】株式会社GSユアサ
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】弁理士法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井村 雅行
【審査官】清水 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-217170(JP,A)
【文献】特開2018-042462(JP,A)
【文献】特開2008-293057(JP,A)
【文献】特開2016-034220(JP,A)
【文献】特開2006-081292(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02H 7/00
H02H 7/10 - 7/20
H02J 7/00 - 7/12
H02J 7/34 - 7/36
B60R 16/00 - 17/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気負荷に電力を供給する第1の蓄電装置と、第2の蓄電装置及び充電器のいずれか一方である別の電源とが並列に接続されているシステムの故障診断方法であって、
前記第1の蓄電装置は、
前記第1の蓄電装置の正極外部端子と負極外部端子とを接続している電流経路に設けられている蓄電素子と、
前記電流経路に設けられており、前記蓄電素子に流れる電流の電流値及び当該電流の方向の少なくとも一方を検出する検出部と、
前記電流経路において前記蓄電素子を基準に前記検出部とは逆側、又は、前記蓄電素子と前記検出部との間に設けられている第1の遮断器と、
前記電流経路の前記蓄電素子と前記第1の遮断器とを含む区間であって前記検出部を含まない区間と並列に設けられているバイパス経路と、
前記バイパス経路に設けられている第2の遮断器と、
を備え、
当該故障診断方法は、
前記第1の蓄電装置の放電時に、前記第1の遮断器を開き、前記第2の遮断器を閉じた状態で前記検出部によって電流値及び方向の少なくとも一方を検出する第1の検出工程と、
前記第1の検出工程の検出結果に基づいて前記第1の遮断器の故障を判断する判断工程と、
を含み、
前記検出部は前記電流の方向を検出するものであり、
前記判断工程において、前記第1の検出工程で検出された方向が前記第1の蓄電装置を充電する充電方向の場合は正常と判断し、それ以外の場合は故障と判断する、故障診断方法。
【請求項2】
電気負荷に電力を供給する第1の蓄電装置と、第2の蓄電装置及び充電器のいずれか一方である別の電源とが並列に接続されているシステムの故障診断方法であって、
前記第1の蓄電装置は、
前記第1の蓄電装置の正極外部端子と負極外部端子とを接続している電流経路に設けられている蓄電素子と、
前記電流経路に設けられており、前記蓄電素子に流れる電流の電流値及び当該電流の方向の少なくとも一方を検出する検出部と、
前記電流経路において前記蓄電素子を基準に前記検出部とは逆側、又は、前記蓄電素子と前記検出部との間に設けられている第1の遮断器と、
前記電流経路の前記蓄電素子と前記第1の遮断器とを含む区間であって前記検出部を含まない区間と並列に設けられているバイパス経路と、
前記バイパス経路に設けられている第2の遮断器と、
を備え、
当該故障診断方法は、
前記第1の蓄電装置の放電時に、前記第1の遮断器を開き、前記第2の遮断器を閉じた状態で前記検出部によって電流値及び方向の少なくとも一方を検出する第1の検出工程と、
前記第1の検出工程の検出結果に基づいて前記第1の遮断器の故障を判断する判断工程と、
を含み、
前記検出部は前記電流の電流値を検出するものであり、
当該故障診断方法は、
前記第1の蓄電装置の放電時に、前記第1の遮断器を閉じ、前記第2の遮断器を開いた状態で前記検出部によって電流値を検出する第2の検出工程を更に含み、
前記判断工程において、前記第1の検出工程で検出された電流値と前記第2の検出工程で検出された電流値とが一致していない場合は正常と判断し、一致している場合は故障と判断する、故障診断方法。
【請求項3】
電気負荷に電力を供給する第1の蓄電装置と、第2の蓄電装置及び充電器のいずれか一方である別の電源とが並列に接続されているシステムの故障診断方法であって、
前記第1の蓄電装置は、
前記第1の蓄電装置の正極外部端子と負極外部端子とを接続している電流経路に設けられている蓄電素子と、
前記電流経路に設けられており、前記蓄電素子に流れる電流の電流値及び当該電流の方向の少なくとも一方を検出する検出部と、
前記電流経路において前記蓄電素子を基準に前記検出部とは逆側、又は、前記蓄電素子と前記検出部との間に設けられている第1の遮断器と、
前記電流経路の前記蓄電素子と前記第1の遮断器とを含む区間であって前記検出部を含まない区間と並列に設けられているバイパス経路と、
前記バイパス経路に設けられている第2の遮断器と、
を備え、
当該故障診断方法は、
前記第1の蓄電装置の放電時に、前記第1の遮断器を開き、前記第2の遮断器を閉じた状態で前記検出部によって電流値及び方向の少なくとも一方を検出する第1の検出工程と、
前記第1の検出工程の検出結果に基づいて前記第1の遮断器の故障を判断する判断工程と、
を含み、
前記システムは、前記第1の蓄電装置と前記電気負荷とを接続している電流経路、前記別の電源と前記電気負荷とを接続している電流経路、及び、前記別の電源の内部の電流経路のうち少なくとも一つに第3の遮断器が設けられており、
前記検出部は前記電流の方向を検出するものであり、
前記判断工程において、前記第1の検出工程で検出された方向が前記第1の蓄電装置を充電する充電方向の場合は前記第1の遮断器及び前記第3の遮断器がいずれも正常と判断し、それ以外の場合は前記第1の遮断器及び前記第3の遮断器の少なくとも一つが故障していると判断する、故障診断方法。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の故障診断方法であって、
前記別の電源は前記第2の蓄電装置である、故障診断方法。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の故障診断方法であって、
前記別の電源は前記第1の蓄電装置より電圧が高いものであり、前記システムは前記別の電源によって印加される電圧を降圧する降圧部を備える、故障診断方法。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の故障診断方法であって、
前記バイパス経路に抵抗又は定電流源が設けられている、故障診断方法。
【請求項7】
蓄電素子の管理装置であって、
前記蓄電素子が接続されている電流経路に設けられており、前記蓄電素子に流れる電流の電流値及び当該電流の方向の少なくとも一方を検出する検出部と、
前記電流経路において前記蓄電素子を基準に前記検出部とは逆側、又は、前記蓄電素子と前記検出部との間に設けられている第1の遮断器と、
前記電流経路の前記蓄電素子と前記第1の遮断器とを含む区間であって前記検出部を含まない区間と並列に設けられているバイパス経路と、
前記バイパス経路に設けられている第2の遮断器と、
管理部と、
を備え、
前記管理部は、
前記蓄電素子の放電時に、前記第1の遮断器を開き、前記第2の遮断器を閉じた状態で前記検出部によって電流値及び方向の少なくとも一方を検出する第1の検出処理と、
前記第1の検出処理の検出結果に基づいて前記第1の遮断器の故障を判断する判断処理と、
を実行し、
前記検出部は前記電流の方向を検出するものであり、
前記管理部は、前記判断処理において、前記第1の検出処理で検出された方向が前記蓄電素子を充電する充電方向の場合は正常と判断し、それ以外の場合は故障と判断する、蓄電素子の管理装置。
【請求項8】
蓄電素子の管理装置であって、
前記蓄電素子が接続されている電流経路に設けられており、前記蓄電素子に流れる電流の電流値及び当該電流の方向の少なくとも一方を検出する検出部と、
前記電流経路において前記蓄電素子を基準に前記検出部とは逆側、又は、前記蓄電素子と前記検出部との間に設けられている第1の遮断器と、
前記電流経路の前記蓄電素子と前記第1の遮断器とを含む区間であって前記検出部を含まない区間と並列に設けられているバイパス経路と、
前記バイパス経路に設けられている第2の遮断器と、
管理部と、
を備え、
前記管理部は、
前記蓄電素子の放電時に、前記第1の遮断器を開き、前記第2の遮断器を閉じた状態で前記検出部によって電流値及び方向の少なくとも一方を検出する第1の検出処理と、
前記第1の検出処理の検出結果に基づいて前記第1の遮断器の故障を判断する判断処理と、
を実行し、
前記検出部は前記電流の電流値を検出するものであり、
前記管理部は、前記蓄電素子の放電時に、前記第1の遮断器を閉じ、前記第2の遮断器を開いた状態で前記検出部によって電流値を検出する第2の検出処理を更に実行し、
前記判断処理において、前記第1の検出処理で検出された電流値と前記第2の検出処理で検出された電流値とが一致していない場合は正常と判断し、一致している場合は故障と判断する、蓄電素子の管理装置。
【請求項9】
電気負荷に電力を供給する第1の蓄電装置と、第2の蓄電装置及び充電器のいずれか一方である別の電源とが並列に接続されているシステムであって、
前記第1の蓄電装置は、
前記第1の蓄電装置の正極外部端子と負極外部端子とを接続している電流経路に設けられている蓄電素子と、
前記電流経路に設けられており、前記蓄電素子に流れる電流の電流値及び当該電流の方向の少なくとも一方を検出する検出部と、
前記電流経路において前記蓄電素子を基準に前記検出部とは逆側、又は、前記蓄電素子と前記検出部との間に設けられている第1の遮断器と、
前記電流経路の前記蓄電素子と前記第1の遮断器とを含む区間であって前記検出部を含まない区間と並列に設けられているバイパス経路と、
前記バイパス経路に設けられている第2の遮断器と、
管理部と、
を備え、
前記管理部は、
前記第1の蓄電装置の放電時に、前記第1の遮断器を開き、前記第2の遮断器を閉じた状態で前記検出部によって電流値及び方向の少なくとも一方を検出する第1の検出処理と、
前記第1の検出処理検出結果に基づいて前記第1の遮断器の故障を判断する判断処理と、
を実行し、
当該システムは、前記第1の蓄電装置と前記電気負荷とを接続している電流経路、前記別の電源と前記電気負荷とを接続している電流経路、及び、前記別の電源の内部の電流経路のうち少なくとも一つに第3の遮断器が設けられており、
前記検出部は前記電流の方向を検出するものであり、
前記管理部は、前記判断処理において、前記第1の検出処理で検出された方向が前記第1の蓄電装置を充電する充電方向の場合は前記第1の遮断器及び前記第3の遮断器がいずれも正常と判断し、それ以外の場合は前記第1の遮断器及び前記第3の遮断器の少なくとも一つが故障していると判断する、システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
電気負荷に電力を供給する蓄電装置と、蓄電装置及び充電器のいずれか一方である別の電源とが並列に接続されているシステムの故障診断方法、及び、蓄電素子の管理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、蓄電素子と直列に接続されている遮断器を備え、蓄電素子の過充電や過放電が予見される場合に遮断器を開いて蓄電素子を過充電や過放電から保護する蓄電装置を開示する。この蓄電装置では、遮断器が故障していると蓄電素子を過充電や過放電から保護できない場合がある。このため、遮断器の故障診断が行われている。
【0003】
特許文献2には、第1スイッチと第2スイッチとが並列に接続されている電池パックが記載されている。特許文献2では、先ず、第1スイッチにオープン指令信号を送信し、第2スイッチにクローズ指令信号を送信して開電圧VADを取得する。次に、第1スイッチにクローズ指令信号を送信し、第2スイッチにオープン指令信号を送信して開電圧VAEを取得する。そして、それらの電圧差ΔVから第1スイッチの故障を診断する。
【0004】
特許文献3には、互いに並列接続される複数個のスイッチと、複数個のスイッチの両端電圧に応じた両端電圧検出信号を出力する両端電圧検出部とを備える電池パックが記載されている。特許文献3では、複数個のスイッチを異なる時期に順次指定してオープン指令信号を与え、オープン指令信号を与えているときの両端電圧検出信号に基づき、スイッチ故障を判断する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-135834号公報
【文献】国際公開第2016/103721号
【文献】特開2014-036556号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献2及び特許文献3に記載されている技術はいずれも電気負荷に接続されている蓄電装置が一つだけであることが前提である。これらの特許文献に記載されている技術では、電気負荷に電力を供給する蓄電装置にほぼ同じ電圧の別の電源(蓄電装置あるいは充電器)が並列に接続された場合、遮断器を開いても電圧が変動せず、遮断機の故障を判断できない可能性がある。
【0007】
本明細書では、電気負荷に電力を供給する第1の蓄電装置と、第2の蓄電装置及び充電器のいずれか一方である別の電源とが並列に接続されているシステムにおいて、第1の蓄電装置の電圧と別の電源の電圧とがほぼ同じでも第1の蓄電装置が備える遮断器の故障をより確実に診断できる技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
故障診断方法は、電気負荷に電力を供給する第1の蓄電装置と、第2の蓄電装置及び充電器のいずれか一方である別の電源とが並列に接続されているシステムの故障診断方法であって、前記第1の蓄電装置は、前記第1の蓄電装置の正極外部端子と負極外部端子とを接続している電流経路に設けられている蓄電素子と、前記電流経路に設けられており、前記蓄電素子に流れる電流の電流値及び当該電流の方向の少なくとも一方を検出する検出部と、前記電流経路において前記蓄電素子を基準に前記検出部とは逆側、又は、前記蓄電素子と前記検出部との間に設けられている第1の遮断器と、前記電流経路の前記蓄電素子と前記第1の遮断器とを含む区間であって前記検出部を含まない区間と並列に設けられているバイパス経路と、前記バイパス経路に設けられている第2の遮断器と、を備え、当該故障診断方法は、前記第1の蓄電装置の放電時に、前記第1の遮断器を開き、前記第2の遮断器を閉じた状態で前記検出部によって電流値及び方向の少なくとも一方を検出する第1の検出工程と、前記第1の検出工程の検出結果に基づいて前記第1の遮断器の故障を判断する判断工程と、を含む。
【発明の効果】
【0009】
第1の蓄電装置の電圧と別の電源の電圧とがほぼ同じでも第1の蓄電装置が備える遮断器の故障をより確実に診断できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態1に係るエンジン始動システムの模式図(第1のリレーが閉、第2のリレーが開の状態)
図2】エンジン始動システムの模式図(第1のリレーが開、第2のリレーが閉の状態)
図3】エンジン始動システムの模式図(第1のリレー及び第2のリレーが閉の状態)
図4】第1のリレーの故障診断処理のフローチャート
図5】実施形態2に係る第1のリレーの故障診断処理のフローチャート
図6】実施形態3に係るエンジン始動システムの模式図(第1のリレーが閉、第2のリレーが開、第3から第5のリレーが閉の状態)
図7】各リレーの開閉の組み合わせと電流の有無及び方向との関係を示す図
図8】他の実施形態に係るエンジン始動システムの模式図(第1のリレーが閉、第2のリレーが開の状態)
【発明を実施するための形態】
【0011】
(本実施形態の概要)
本明細書によって開示される故障診断方法は、電気負荷に電力を供給する第1の蓄電装置と、第2の蓄電装置及び充電器のいずれか一方である別の電源とが並列に接続されているシステムの故障診断方法であって、前記第1の蓄電装置は、前記第1の蓄電装置の正極外部端子と負極外部端子とを接続している電流経路に設けられている蓄電素子と、前記電流経路に設けられており、前記蓄電素子に流れる電流の電流値及び当該電流の方向の少なくとも一方を検出する検出部と、前記電流経路において前記蓄電素子を基準に前記検出部とは逆側、又は、前記蓄電素子と前記検出部との間に設けられている第1の遮断器と、前記電流経路の前記蓄電素子と前記第1の遮断器とを含む区間であって前記検出部を含まない区間と並列に設けられているバイパス経路と、前記バイパス経路に設けられている第2の遮断器と、を備え、当該故障診断方法は、前記第1の蓄電装置の放電時に、前記第1の遮断器を開き、前記第2の遮断器を閉じた状態で前記検出部によって電流値及び方向の少なくとも一方を検出する第1の検出工程と、前記第1の検出工程の検出結果に基づいて前記第1の遮断器の故障を判断する判断工程と、を含む。
【0012】
第1の蓄電装置は、電流経路の蓄電素子と第1の遮断器とを含む区間であって検出部を含まない区間と並列に設けられているバイパス経路を備えている。この構成では、第1の蓄電装置の放電時に第1の遮断器の故障を診断すると、第1の蓄電装置の電圧と別の電源の電圧とがほぼ同じでも、第1の遮断器が故障していない場合(第1の遮断器が開いた場合)と故障している場合(第1の遮断器が開かない場合)とで検出部の検出結果が異なる。言い換えると、第1の遮断器が故障していない場合と故障している場合とで検出結果が変動する。このため、従来のように第1の蓄電装置の電圧と別の電源の電圧とがほぼ同じ場合は電圧が変動しない場合に比べて第1の遮断器の故障をより確実に診断できる。
【0013】
前記検出部は前記電流の方向を検出するものであり、前記判断工程において、前記第1の検出工程で検出された方向が前記第1の蓄電装置を充電する充電方向の場合は正常と判断し、それ以外の場合は故障と判断してもよい。
【0014】
放電時に第1の遮断器の故障を診断すると、第1の蓄電装置の電圧と別の電源の電圧とがほぼ同じでも第1の遮断器が故障している場合と故障していない場合とで電流の方向が逆になる。言い換えると、第1の遮断器が故障している場合と故障していない場合とで検出結果が変動する。このため、従来のように電圧が変動しない場合に比べて故障をより確実に判断できる。
第1の遮断器が故障していると、検出部によって検出される電流値が0A(アンペア)となる場合や、方向を判定できないほど小さい電流値となる場合もある。その場合は方向を判定できないが、上記の故障診断方法では充電方向以外の場合(放電方向であるか又は方向を判定できない場合)は故障と判断するので、方向を判定できない場合でも故障を判断できる。
【0015】
前記検出部は前記電流の電流値を検出するものであり、当該故障診断方法は、前記第1の蓄電装置の放電時に、前記第1の遮断器を閉じ、前記第2の遮断器を開いた状態で前記検出部によって電流値を検出する第2の検出工程を更に含み、前記判断工程において、前記第1の検出工程で検出された電流値と前記第2の検出工程で検出された電流値とに基づいて前記第1の遮断器の故障を判断してもよい。
【0016】
前述したバイパス経路を備える第1の蓄電装置は、第1の蓄電装置の電圧と別の電源の電圧とがほぼ同じでも、第1の蓄電装置の放電時に検出される電流値と、第1の遮断器を開いて第2の遮断器を閉じるように制御した後に検出される電流値とを比較した場合の比較結果が、第1の遮断器が故障している場合と故障していない場合とで異なる。言い換えると、第1の遮断器が故障していない場合と故障している場合とで比較結果が変動する。このため、従来のように電圧が変動しない場合に比べて第1の遮断器の故障をより確実に診断できる。
【0017】
前記システムは、前記第1の蓄電装置と前記電気負荷とを接続している電流経路、前記別の電源と前記電気負荷とを接続している電流経路、及び、前記別の電源の内部の電流経路のうち少なくとも一つに第3の遮断器が設けられており、前記検出部は前記電流の方向を検出するものであり、前記判断工程において、前記第1の検出工程で検出された方向が前記第1の蓄電装置を充電する充電方向の場合は前記第1の遮断器及び前記第3の遮断器がいずれも正常と判断し、それ以外の場合は前記第1の遮断器及び前記第3の遮断器の少なくとも一つが故障していると判断してもよい。
【0018】
上記の故障診断方法によると、第1の蓄電装置が備えている第1の遮断器だけでなく、第1の蓄電装置の外部に設けられている第3の遮断器についても第1の蓄電装置が故障を診断できる。
【0019】
前記別の電源は前記第2の蓄電装置でもよい。
【0020】
上記の故障診断方法によると、電気負荷に電力を供給する第1の蓄電装置と、第2の蓄電装置とが並列に接続されていても第1の遮断器の故障を診断できる。
【0021】
前記別の電源は前記第1の蓄電装置より電圧が高いものであり、前記システムは前記別の電源によって印加される電圧を降圧する降圧部を備えてもよい。
【0022】
例えば、第1の蓄電装置の電圧が12Vであり、別の電源の電圧が48Vであるといったように、別の電源の方が第1の蓄電装置より電圧が高い場合もある。そして、その場合に、別の電源によって印加される電圧が、システムが備える降圧部によって第1の蓄電装置とほぼ同じ電圧まで降圧される場合がある。上記の故障診断方法によると、別の電源の電圧が第1の蓄電装置とほぼ同じ電圧まで降圧されても第1の遮断器の故障をより確実に診断できる。
【0023】
前記バイパス経路に抵抗又は定電流源が設けられていてもよい。
【0024】
上記の故障診断方法によると、第2の遮断器を閉じたときに蓄電素子が短絡することを防止できる。
【0025】
本明細書によって開示される蓄電素子の管理装置は、前記蓄電素子が接続されている電流経路に設けられており、前記蓄電素子に流れる電流の電流値及び当該電流の方向の少なくとも一方を検出する検出部と、前記電流経路において前記蓄電素子を基準に前記検出部とは逆側、又は、前記蓄電素子と前記検出部との間に設けられている第1の遮断器と、前記電流経路の前記蓄電素子と前記第1の遮断器とを含む区間であって前記検出部を含まない区間と並列に設けられているバイパス経路と、前記バイパス経路に設けられている第2の遮断器と、管理部と、を備え、前記管理部は、前記蓄電素子の放電時に、前記第1の遮断器を開き、前記第2の遮断器を閉じた状態で前記検出部によって電流値及び方向の少なくとも一方を検出する第1の検出処理と、前記第1の検出処理の検出結果に基づいて前記第1の遮断器の故障を判断する判断処理と、を実行する。
【0026】
上記の管理装置によると、電気負荷に電力を供給する第1の蓄電装置と、第2の蓄電装置及び充電器のいずれか一方である別の電源とが並列に接続されているシステムにおいて、第1の蓄電装置の電圧と別の電源の電圧とがほぼ同じでも第1の遮断器の故障をより確実に診断できる。
【0027】
本明細書によって開示される技術は、装置、方法、これらの装置または方法を実現するためのコンピュータプログラム、そのコンピュータプログラムを記録した記録媒体等の種々の態様で実現できる。
【0028】
<実施形態1>
実施形態1を図1ないし図4によって説明する。
【0029】
(1)エンジン始動システムの構成
図1を参照して、実施形態1のエンジン始動システム1(システムの一例)について説明する。エンジン始動システム1は車両のエンジンを始動させるものである。エンジン始動システム1はエンジンのクランクシャフトを回転させるスタータ10(電気負荷の一例)、スタータ10に電力を供給する始動用の蓄電装置11(第1の蓄電装置の一例)、及び、車両に搭載されている補機類(ヘッドライト、エアコン、オーディオなど)に電力を供給する補機用の蓄電装置12(第2の蓄電装置及び別の電源の一例)を備えている。補機用の蓄電装置12は始動用の蓄電装置11と並列に接続されており、補機用の蓄電装置12からスタータ10に電力を供給できる。
【0030】
本実施形態では始動用の蓄電装置11の電圧と補機用の蓄電装置12の電圧とがほぼ同じであるとする。具体的には、スタータ10は12V負荷であり、始動用の蓄電装置11及び補機用の蓄電装置12はどちらも電圧が12Vであるとする。始動用の蓄電装置11の方が補機用の蓄電装置12より電圧が大きくてもよいし、補機用の蓄電装置12の方が始動用の蓄電装置11より電圧が大きくてもよい。
【0031】
(2)始動用の蓄電装置の電気的構成
図1に示すように、始動用の蓄電装置11は、正極外部端子13と負極外部端子14とを接続している電流経路15、電流経路15に設けられている組電池16、及び、電池管理装置17(Battery Management System、管理装置の一例)を備えている。
【0032】
組電池16は複数の蓄電素子18が直列接続されたものである。各蓄電素子18は繰り返し充電可能な二次電池であり、具体的には例えばリチウムイオン電池である。複数の蓄電素子18は並列接続されてもよいし、直列と並列とを組み合わせて接続されてもよい。
【0033】
BMS17は、蓄電素子18に流れる電流の方向を検出する検出部19、電流経路15を遮断する第1のリレー20、バイパス経路21、第2のリレー23、抵抗24及び管理部22を備えている。
検出部19は電流経路15に設けられており、蓄電素子18に流れる電流の方向を検出して管理部22に出力する。
【0034】
第1のリレー20は電流経路15において正極外部端子13と組電池16との間に設けられている。第1のリレー20は蓄電素子18の過充電や過放電が予見される場合に電流経路15を遮断するためのものである。
【0035】
バイパス経路21は第1のリレー20の故障を診断するためのものである。バイパス経路21は電流経路15の組電池16と第1のリレー20とを含む区間であって検出部19を含まない区間と並列に設けられている。
第2のリレー23及び抵抗24はバイパス経路21に設けられている。第2のリレー23は常開式であり、第1のリレー20の故障診断を行うときに管理部22によって閉じられる。抵抗24は第2のリレー23を閉じたときに蓄電素子18が短絡することを防止するためのものである。
【0036】
管理部22は組電池16から供給される電力によって動作するものであり、CPU、ROM、RAMなどを備えている。CPUはROMに記憶されている制御プログラムを実行することにより、後述する蓄電素子18の保護や第1のリレー20の故障診断などの各種の処理を実行する。
管理部22はCPUに替えて、あるいはCPUに加えてASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)などを備えていてもよい。
【0037】
(3)蓄電素子の保護
管理部22は蓄電素子18の充電状態(SOC:State Of Charge)を推定し、推定したSOCが所定の上限値以上の場合あるいは所定の下限値以下の場合は過充電や過放電が予見されるとして第1のリレー20を開く。これにより電流経路15が遮断され、蓄電素子18が過充電や過放電から保護される。
【0038】
(4)第1のリレーの故障診断
第1のリレー20が故障して開かないと蓄電素子18を過充電や過放電から保護できない。このため、管理部22は第1のリレー20の故障診断を行う。第1のリレー20の故障診断は始動用の蓄電装置11の放電時に行われる。より具体的には、第1のリレー20の故障診断は始動用の蓄電装置11から放電方向の電流(以下、放電電流という)が安定して流れているときに行われる。例えば車両のエンジンが停止中のときは始動用の蓄電装置11から放電電流が安定して流れる。このため第1のリレー20の故障診断は例えば車両のエンジンが停止中のときに行われる。
【0039】
図1を参照して、始動用の蓄電装置11の放電電流について説明する。始動用の蓄電装置11の放電電流は図1に示す経路Xを流れる。図1では放電電流が安定して流れているときの電流値をIbat1としている。始動用の蓄電装置11に放電電流が流れている場合は、検出部19によって検出される電流の方向は放電方向となる。
【0040】
図2に示すように、第1のリレー20の故障診断では、管理部22は第1のリレー20を開いて第2のリレー23を閉じるよう制御する。第1のリレー20が故障していない場合(すなわち第1のリレー20が開いている場合)は、図2において経路Yで示すように、補機用の蓄電装置12から始動用の蓄電装置11に電流Ibat2が流れる。経路Yで示すように電流Ibat2は始動用の蓄電装置11のバイパス経路21を流れる。電流Ibat2はIbat1と方向が逆であり、検出部19によって検出される電流の方向は充電方向となる。
【0041】
これに対し、図3に示すように、第1のリレー20が故障して開かない場合は、経路Xで示すように始動用の蓄電装置11からスタータ10に放電電流Ibat1が流れる。さらに、経路Zで示すように始動用の蓄電装置11からバイパス経路21に放電電流Ibat2が流れる。検出部19には電流Ibat1が流れるので、第1のリレー20が故障している場合は検出部19によって検出される電流の方向は放電方向となる。始動用の蓄電装置11の電圧と補機用の蓄電装置12の電圧とがほぼ同じであるので、図3では補機用の蓄電装置12によって供給される電流は現れてこない。
【0042】
第1のリレー20が故障していない場合と故障している場合とでは、第1のリレー20を開いて第2のリレー23を閉じるように制御した後に検出される電流の方向が逆になる。具体的には、第1のリレー20が故障していない場合は充電方向となり、故障している場合は放電方向となる。このため、電流の方向を検出することにより、第1のリレー20の故障を判断できる。
【0043】
第1のリレー20が故障していると、検出部19によって検出される電流値が0A(アンペア)となる場合や、方向を判定できないほど小さい電流値となる場合がある。その場合は方向を判定できない。このため管理部22は、充電方向以外の場合(放電方向であるか又は方向を判定できない場合)は故障と判断する。
【0044】
(5)第1のリレーの故障診断処理
図4を参照して、管理部22によって実行される第1のリレー20の故障診断処理について説明する。本処理は例えば車両のエンジンが停止中のときに行われる。
【0045】
S101では、管理部22は第1のリレー20を開いて第2のリレー23を閉じるよう制御する。
S102では、管理部22は検出部19によって電流の方向を検出する(第1の検出工程の一例)。
【0046】
S103では、管理部22はS102で検出した方向が充電方向であるかそれ以外であるかを判断し、充電方向の場合は第1のリレー20が故障していないと判断して本処理を終了し、それ以外の場合は第1のリレー20が故障していると判断してS104に進む(判断工程の一例)。
S104では、管理部22は所定のエラー処理を実行する。
【0047】
(5)実施形態の効果
実施形態1の故障診断方法によると、始動用の蓄電装置11は、電流経路15の組電池16と第1のリレー20とを含む区間であって検出部19を含まない区間と並列に設けられているバイパス経路21を備えている。この構成では、始動用の蓄電装置11の放電時に第1のリレー20の故障を診断すると、始動用の蓄電装置11の電圧と補機用の蓄電装置12の電圧とがほぼ同じでも、第1のリレー20が故障していない場合(第1のリレー20が開いた場合)と故障している場合(開かない場合)とで検出部19の検出結果が異なる。言い換えると、第1のリレー20が故障していない場合と故障している場合とで検出結果が変動する。このため、従来のように始動用の蓄電装置11の電圧と補機用の蓄電装置12の電圧とがほぼ同じ場合は電圧が変動しない場合に比べて第1のリレー20の故障をより確実に診断できる。
【0048】
実施形態1の故障診断方法によると、電流の方向で第1のリレー20の故障を判断する。放電時に第1のリレー20の故障を診断すると、始動用の蓄電装置11の電圧と補機用の蓄電装置12の電圧とがほぼ同じでも、第1のリレー20が故障していない場合と故障している場合とで電流の方向が逆になる。言い換えると、第1のリレー20が故障していない場合と故障している場合とで検出結果が変動する。このため、従来のように電圧が変動しない場合に比べて故障をより確実に判断できる。
第1のリレー20が故障していると、検出部19によって検出される電流値が0A(アンペア)となる場合や、方向を判定できないほど小さい電流値となる場合もある。その場合は方向を判定できないが、実施形態1の故障診断方法では充電方向以外の場合(放電方向であるか又は方向を判定できない場合)は故障と判断するので、方向を判定できない場合でも故障を判断できる。
【0049】
実施形態1の故障診断方法によると、バイパス経路21に抵抗24が設けられているので、第2のリレー23を閉じたときに蓄電素子18が短絡することを防止できる。
【0050】
実施形態1に係るBMS17によると、始動用の蓄電装置11と補機用の蓄電装置12とが並列に接続されているエンジン始動システム1において、始動用の蓄電装置11の電圧と補機用の蓄電装置12の電圧とがほぼ同じでも第1のリレー20の故障をより確実に診断できる。
【0051】
<実施形態2>
実施形態2を図2図3及び図5によって説明する。実施形態2に係るエンジン始動システムは検出部19として電流センサを備えており、電流センサによって計測された電流値から第1のリレー20の故障を診断する。実施形態2でも第1のリレー20の故障診断は実施形態1と同様に始動用の蓄電装置11から放電電流が安定して流れているときに行われる。
【0052】
図2に示すように、第1のリレー20の故障診断では、管理部22は始動用の蓄電装置11から放電電流が安定して流れているとき、第1のリレー20を開いて第2のリレー23を閉じるよう制御する。
【0053】
図2に示すように、第1のリレー20が故障していない場合は補機用の蓄電装置12から経路Yに電流Ibat2が流れる。第1のリレー20が故障していない場合は、始動用の蓄電装置11から放電電流が安定して流れているときの電流値(すなわち図1に示す電流Ibat1)と、第1のリレー20を開いて第2のリレー23を閉じるように制御した後に検出される電流値(Ibat2)とが一致しない。
【0054】
これに対し、図3に示すように、第1のリレー20が故障して開かない場合は、始動用の蓄電装置11から経路Xに電流Ibat1が流れる。検出部19は経路X上にあるので、第1のリレー20が故障している場合は検出部19によって電流値Ibat1が検出される。このため、第1のリレー20が故障している場合は、始動用の蓄電装置11から放電電流が安定して流れているときの電流値(Ibat1)と、第1のリレー20を開いて第2のリレー23を閉じるように制御した後に検出される電流値(Ibat1)とが一致する。
【0055】
このため、第1のリレー20を開いて第2のリレー23を閉じるように制御した後に検出される電流値が、始動用の蓄電装置11から放電電流が安定して流れているときに検出される電流値(Ibat1)と一致するか否かを判断することにより、第1のリレー20の故障を診断できる。
【0056】
(1)第1のリレーの故障診断処理
図5を参照して、実施形態2に係る第1のリレー20の故障診断処理について説明する。
S201では、管理部22は検出部19によって電流値を検出する(第2の検出工程の一例)。
S202では、管理部22は第1のリレー20を開いて第2のリレー23を閉じるよう制御する。
【0057】
S203では、管理部22は検出部19によって電流値を検出する(第1の検出工程の一例)。
S204では、管理部22はS201で検出した電流値とS203で検出した電流値とが一致しているか否かを判断し、一致していない場合は第1のリレー20が故障していないと判断して本処理を終了し、一致している場合は第1のリレー20が故障していると判断してS205に進む(判断工程の一例)。
S205では、管理部22は所定のエラー処理を実行する。
【0058】
(2)実施形態の効果
バイパス経路21を備える始動用の蓄電装置11は、始動用の蓄電装置11の電圧と補機用の蓄電装置12の電圧とがほぼ同じでも、始動用の蓄電装置11の放電時に検出される電流値と、第1のリレー20を開いて第2のリレー23を閉じるように制御した後に検出される電流値とを比較した場合の比較結果が、第1のリレー20が故障していない場合と故障している場合とで異なる。言い換えると、第1のリレー20が故障していない場合と故障している場合とで比較結果が変動する。このため、従来のように電圧が変動しない場合に比べて第1のリレー20の故障をより確実に診断できる。
【0059】
<実施形態3>
実施形態3を図6ないし図7によって説明する。図6に示すように、実施形態3に係るエンジン始動システム2は、実施形態1の構成に加えて第3のリレー30、第4のリレー31及び第5のリレー32を備えている。第3から第5のリレーはそれぞれ第3の遮断器の一例である。
【0060】
第3のリレー30は始動用の蓄電装置11とスタータ10とを接続している電流経路33に設けられている。第4のリレー31は補機用の蓄電装置12とスタータ10とを接続している電流経路34に設けられている。第3のリレー30及び第4のリレー31は車両のECUによって開閉される。
第5のリレー32は補機用の蓄電装置12の内部において蓄電素子18が接続されている電流経路35に設けられている。第5のリレー32は補機用の蓄電装置12が備える図示しない管理部22によって開閉される。
実施形態3に係る検出部19は電流値及び電流の方向の両方を検出可能である。
【0061】
実施形態3に係る管理部22は、実施形態1と同様の故障診断を行うことにより、第1のリレー20及び第3から第5のリレーがいずれも正常であるか、又は、これらのリレーのうち少なくとも一つが故障しているかを判断する。
【0062】
図7を参照して具体的に説明する。故障診断を行ったときに第1のリレー20が開けば第1のリレー20は正常である。このため、第1のリレー20については開が正常(〇)、閉が異常(×)である。
これとは逆に、第3から第5のリレーについては閉じていることが正常であるので、閉が正常(〇)、開が異常(×)である。図7において第4及び5のリレーが〇の場合は第4のリレー31及び第5のリレー32がともに閉(正常)であり、×の場合は第4のリレー31及び第5のリレー32のうち少なくとも一方が開(異常)であることを意味している。
【0063】
図7に示すように、実施形態1と同様の故障診断を行った場合、第1のリレー20及び第3から第5のリレーがいずれも正常(〇)の場合は検出部19によって0アンペアより大きい電流値が検出され(すなわち電流が有となり)、且つ、検出部19によって検出される電流の方向は充電方向となる。これに対し、これらのリレーのうち少なくとも一つが異常(×)の場合は検出部19に電流が流れない(すなわち電流が無)か、又は、検出される電流の方向が放電方向となる。
このため、実施形態3に係る管理部22は、検出部19を流れる電流の有無及び電流の方向から、第1のリレー20及び第3から第5のリレーがいずれも正常であるか、又は、これらのリレーのうち少なくとも一つが故障しているかを判断する。
【0064】
実施形態3に係る故障診断方法によると、始動用の蓄電装置11が備えている第1のリレー20だけでなく、始動用の蓄電装置11の外部に設けられている第3から第5のリレーについても始動用の蓄電装置11が故障を診断できる。
【0065】
<他の実施形態>
本明細書によって開示される技術は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本明細書によって開示される技術的範囲に含まれる。
【0066】
(1)上記実施形態では別の電源として第2の蓄電装置(補機用の蓄電装置12)を例に説明したが、別の電源は第1の蓄電装置を充電する着脱可能な外部の充電器でもよい。例えば、車両のシガーソケットに外部の充電器が接続され、接続された充電器によって始動用の蓄電装置11が充電される構成でもよい。この場合も第2の蓄電装置が接続されている場合と同様にして始動用の蓄電装置11の第1のリレー20の故障を診断できる。
【0067】
(2)上記実施形態では第2の蓄電装置として補機用の蓄電装置12を例に説明したが、第2の蓄電装置は始動用の蓄電装置11の電圧が低下した場合に始動用の蓄電装置11に代わって電気負荷(スタータ10)に電力を供給するバックアップ用の蓄電装置でもよい。
【0068】
(3)上記実施形態では第1の蓄電装置(実施形態1では始動用の蓄電装置11)の電圧と別の電源(実施形態1では補機用の蓄電装置12)の電圧とがほぼ同じである場合を例に説明した。これに対し、別の電源の電圧の方が第1の蓄電装置の電圧より高くてもよい。例えば始動用の蓄電装置11の電圧が12Vであり、補機用の蓄電装置12の電圧が24Vや48Vあるいはそれ以上であるといったように、補機用の蓄電装置12の方が始動用の蓄電装置11より電圧が高い場合もある。その場合に、補機用の蓄電装置12によって印加される電圧が、エンジン始動システムが備える降圧部(例えばDC-DCコンバータ)によって始動用の蓄電装置11とほぼ同じ電圧まで降圧される場合がある。上記実施形態で説明した故障診断方法によると、補機用の蓄電装置12の電圧が始動用の蓄電装置11とほぼ同じ電圧まで降圧されても第1のリレー20の故障をより確実に診断できる。
【0069】
(4)上記実施形態ではバイパス経路21に抵抗24が設けられている場合を例に説明したが、抵抗24に替えて定電流源(例えば定電流ダイオード)が設けられてもよい。
【0070】
(5)上記実施形態3ではエンジン始動システム2が第3の遮断器として第3から第5のリレーの3つを備えている場合を例に説明したが、エンジン始動システム2はこれらのリレーのうちいずれか1つあるいはいずれか2つだけを備えていてもよい。
【0071】
(6)上記実施形態では電気負荷としてスタータ10を例に説明したが、電気負荷はスタータ10に限られるものではなく、電力を消費する機器であれば任意の機器でもよい。上記実施形態ではシステムとしてエンジン始動システムを例に説明したが、システムは電気負荷に電力を供給する第1の蓄電装置と別の電源とが並列に接続されているものであれば任意のシステムでもよい。
【0072】
(7)上記実施形態2ではバイパス経路21が始動用の蓄電装置11の電流経路15の組電池16と第1のリレー20とを含む区間であって検出部19を含まない区間と並列に設けられている場合を例に説明した。これに対し、図8に示すエンジン始動システム3のように、バイパス経路21は組電池16、第1のリレー20及び検出部19(電流センサ)を含む区間と並列に設けられてもよい。その場合は、第1のリレー20が正常な場合は故障診断のときに第1のリレー20が開くので、電流センサによって計測される電流値は0A(アンペア)になる。これに対し、第1のリレー20が故障している場合は第1のリレー20が開かないので、電流センサによって計測される電流値は0Aより大きくなる。このため、電流センサによって計測された電流値が0Aであるか否かによって第1のリレー20の故障を判断できる。
【0073】
(8)上記実施形態3では検出部19が電流値及び電流の方向の両方を検出可能である場合を例に説明したが、電流の方向だけを検出してもよい。そして、第1のリレー20及び第3から第5のリレーがいずれも正常であるか、又は、これらのリレーのうち少なくとも一つが故障しているかを、電流の方向だけから判断してもよい。具体的には、電流の方向が充電方向の場合はいずれも正常であると判断し、それ以外の場合(放電方向であるか又は方向を判定できない場合)は故障と判断してもよい。
【0074】
(9)上記実施形態では蓄電素子18としてリチウムイオン電池を例に説明したが、蓄電素子18は電気化学反応を伴うキャパシタでもよい。
【符号の説明】
【0075】
1…エンジン始動システム(システムの一例)、2…エンジン始動システム(システムの一例)、10…スタータ(電気負荷の一例)、11…始動用の蓄電装置(第1の蓄電装置の一例)、12…補機用の蓄電装置(第2の蓄電装置及び別の電源の一例)、13…正極外部端子、14…負極外部端子、15…電流経路、17…電池管理装置(管理装置の一例)、18…蓄電素子、19…検出部、20…第1のリレー(第1の遮断器の一例)、21…バイパス経路、22…管理部、23…第2のリレー(第2の遮断器の一例)、24…抵抗、30…第3のリレー(第3の遮断器の一例)、31…第4のリレー(第4の遮断器の一例)、32…第5のリレー(第5の遮断器の一例)、33…電流経路、34…電流経路、35…電流経路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8