(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-21
(45)【発行日】2023-08-29
(54)【発明の名称】駆動装置、時計、駆動方法および駆動プログラム
(51)【国際特許分類】
G04C 3/14 20060101AFI20230822BHJP
H02P 8/16 20060101ALI20230822BHJP
H02P 8/18 20060101ALI20230822BHJP
【FI】
G04C3/14 U
G04C3/14 Q
H02P8/16
H02P8/18
(21)【出願番号】P 2021127023
(22)【出願日】2021-08-03
(62)【分割の表示】P 2017044510の分割
【原出願日】2017-03-09
【審査請求日】2021-08-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000001443
【氏名又は名称】カシオ計算機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 幸佑
【審査官】榮永 雅夫
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第95/027926(WO,A1)
【文献】特開2011-220753(JP,A)
【文献】特開昭50-10433(JP,A)
【文献】特開2013-164374(JP,A)
【文献】特開平7-123790(JP,A)
【文献】特開2013-107172(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04C 3/14
H02P 8/00 - 8/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
指針を運針するためのステッピングモータと、
動作保証電圧の下限が前記
ステッピングモータよりも高い負荷と、
制御部と、
前記
ステッピングモータを駆動させる駆動回路と、
を備え、
前記制御部は、
前記負荷を動作させない場合に、前記駆動回路に
前記ステッピングモータを駆動させるための第1動作パルスを印加し、
前記負荷を動作させる場合に、前記駆動回路に前記第1動作パルスよりも消費電流が小さい
、前記ステッピングモータを駆動させるための第2動作パルスを印加する、
ことを特徴とする駆動装置。
【請求項2】
前記第1動作パルスおよび前記第2動作パルスは、デューティー比が50%の第1パルスオン期間と、デューティー比が50%ではない第2パルスオン期間とを含み、且つ、前記第1パルスオン期間と前記第2パルスオン期間の和が等しく、
前記第2動作パルスは、前記第1動作パルスよりも前記第1パルスオン期間が長い、
ことを特徴とする請求項1に記載の駆動装置。
【請求項3】
前記第2動作パルスは前記第1動作パルスよりもオン期間が短い、請求項1又は2に記載の駆動装置。
【請求項4】
前記第2動作パルス及び前記第1動作パルスはPWM信号であり、前記第2動作パルスは前記第1動作パルスよりもオン・デューティが小さい、請求項1乃至3のいずれかに記載の駆動装置。
【請求項5】
前記第2動作パルスは前記第1動作パルスよりも動作保証電圧の下限が高い、請求項1乃至4のいずれかに記載の駆動装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載の駆動装置と、
前記
ステッピングモータにより運針される
指針と、
を備える時計。
【請求項7】
指針を運針するためのステッピングモータと、動作保証電圧の下限が前記
ステッピングモータよりも高い負荷と、前記
ステッピングモータを駆動させる駆動回路と、を備える駆動装置が実行する駆動方法であって、
前記負荷を動作させない場合に、前記駆動回路に
前記ステッピングモータを駆動させるための第1動作パルスを印加する第1動作パルス印加ステップと、
前記負荷を動作させる場合に、前記駆動回路に前記第1動作パルスよりも消費電流が小さい
、前記ステッピングモータを駆動させるための第2動作パルスを印加する第2動作パルス印加ステップと、
を有することを特徴とする駆動装置の駆動方法。
【請求項8】
指針を運針するためのステッピングモータと、動作保証電圧の下限が前記
ステッピングモータよりも高い負荷と、前記
ステッピングモータを駆動させる駆動回路と、を備える駆動装置のコンピュータを、
前記負荷を動作させない場合に、前記駆動回路に
前記ステッピングモータを駆動させるための第1動作パルスを印加する第1動作パルス印加手段、
前記負荷を動作させる場合に、前記駆動回路に前記第1動作パルスよりも消費電流が小さい
、前記ステッピングモータを駆動させるための第2動作パルスを印加する第2動作パルス印加手段、
として機能させることを特徴とする駆動装置の駆動プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動装置、時計、駆動方法および駆動プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
容量が小さいボタン電池で動作する電子時計は、様々なデバイスを動作させる場合の電力的な制約が大きい。電子時計が例えばセンサやGPS(Global Positioning System)受信IC(Integrated Circuit)を動作させながら針を動かすことは、消費電力の負荷が大きい。例えば特許文献1には、衛星信号の受信処理時の消費電力を低減できる電子時計に関する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電子時計において、もっとも重要なことは正確な時刻表示である。温度環境などによりバッテリ条件が悪くなった場合であっても、電子時計は、正確な時刻表示を保証しなければならない。その時刻表示に係る指針は、非常に厳しい条件下であっても運針できることを考慮する必要がある。しかし、このような厳しい条件下でも運針可能とするため、指針を駆動するステッピングモータに印加するパルスは、消費電流が大きくなり、よって電池寿命が短くなるおそれがある。
【0005】
そこで、本発明の一態様では、駆動装置において、駆動回路に印加する複数種類のパルスから、現在の条件にあったパルスを適切に選択することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記目的を達成するため、
指針を運針するためのステッピングモータと、
動作保証電圧の下限が前記ステッピングモータよりも高い負荷と、
制御部と、
前記ステッピングモータを駆動させる駆動回路と、
を備え、
前記制御部は、
前記負荷を動作させない場合に、前記駆動回路に前記ステッピングモータを駆動させるための第1動作パルスを印加し、
前記負荷を動作させる場合に、前記駆動回路に前記第1動作パルスよりも消費電流が小さい、前記ステッピングモータを駆動させるための第2動作パルスを印加する、
ことを特徴とする駆動装置である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ステッピングモータに印加する複数種類のパルスから、現在の条件に合ったパルスを適切に選択することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本実施形態における電子時計の概略を示す構成図である。
【
図3】ステッピングモータの駆動回路を示す図である。
【
図4】通常時にステッピングモータに印加するパルス波形である。
【
図5】GPS動作時にステッピングモータに印加するパルス波形である。
【
図6】動作保証電圧範囲と消費電流を示す図である。
【
図7】ステッピングモータを制御するフローチャートである。
【
図8】変形例のステッピングモータの駆動回路を示す図である。
【
図9】通常時にステッピングモータに印加するパルス波形である。
【
図10】GPS動作時にステッピングモータに印加するパルス波形である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以降、本発明を実施するための形態を、各図を参照して詳細に説明する。
図1は、本実施形態における電子時計1の概略を示す構成図である。
本実施形態の電子時計1は、回転部51、指示部52、時針・分針53、秒針54を独立のステッピングモータ4a~4dで各々駆動可能なものである。電子時計1は、例えば、腕に装着するためのバンドを備えた腕時計型の電子時計である。この電子時計1は、回転部51、指示部52、時針・分針53、秒針54を不図示の各輪列機構を介して回転駆動するステッピングモータ4a~4dと、駆動回路3と、マイクロコンピュータ2とを備えている。電子時計1は更に、操作受付部61と、電源部62と、振動子63と、GPS部7およびアンテナ71を備えている。なお図では、ステッピングモータ4a~4dのことを単に“モータ”と省略して記載している。
以下、各ステッピングモータ4a~4dを特に区別しない場合には、単にステッピングモータ4と記載する。
【0010】
駆動回路3は、各ステッピングモータ4を駆動させるブリッジ回路であり、マイクロコンピュータ2との組合せによりモータ駆動装置を構成する。マイクロコンピュータ2は、メインとなる大規模集積回路(LSI:Large-Scale Integration)である。マイクロコンピュータ2は、CPU(Central Processing Unit)21と、発振回路22と、分周回路23と、計時回路24とを含んで構成される。
【0011】
ステッピングモータ4a~4dは、例えば、複数のコイルを備えた高トルクのモータである。ステッピングモータ4a~4dは、それぞれ不図示の輪列機構を介して回転部51、指示部52、時針・分針53、秒針54を運針させて、これら指針に所定方向を指し示させるものである。
【0012】
時針53aと分針53bと秒針54は、文字盤8(
図2参照)の中央の回転軸に対して、回転自在に設けられている。回転部51を構成するディスク針は、文字盤8の6時の方向に穿たれた扇型の窓を介して視認可能であり、自身の回転軸を中心に回転可能に設けられている。指示部52は、文字盤8の9時の方向に設けられた指示針であり、自身の回転軸を中心に回転自在に設けられている。
【0013】
駆動回路3は、マイクロコンピュータ2から入力された制御信号に基づいて、ステッピングモータ4を駆動するためのパルスを、適切なタイミングで出力する。この駆動回路3は、マイクロコンピュータ2からの制御信号に基づき、ステッピングモータ4に印加するパルス幅を調整して出力可能である。駆動回路3は、ステッピングモータ4に対して正転方向または逆転方向に駆動電圧信号を出力可能となっている。これにより、駆動回路3は、ステッピングモータ4を駆動させて指針を運針させることができる。
【0014】
CPU21は、各種演算処理を行い、電子時計1の全体動作を統括制御する。CPU21は、不図示のROM(Read Only Memory)から制御プログラムを読み出して実行し、継続的に各部に時刻表示に係る動作を行わせる。CPU21は、操作受付部61であるスイッチやリュウズによる入力操作に基づいてリアルタイムで、または、設定されたタイミングで要求された動作を行わせる。この動作とは、例えばGPS信号の受信や、センサ信号の受信などをいう。
【0015】
これらスイッチやリュウズによって動作を受け付けると、CPU21は、駆動回路3によりステッピングモータ4を駆動させ、回転部51、指示部52、時針53aおよび分針53b、秒針54を運針させる。CPU21は、時針53aおよび分針53b、秒針54、指示部52、回転部51が運針する目標位置を設定し、駆動回路3により、ステッピングモータ4の駆動を制御する制御部である。
【0016】
発振回路22は、固有の周波数信号を生成して分周回路23に出力する。発振回路22としては、例えば、水晶などの振動子63と組み合わせて発振する回路が用いられる。
分周回路23は、発振回路22から入力された信号をCPU21や計時回路24が利用する各種周波数の信号に分周して出力する。
【0017】
計時回路24は、分周回路23から入力された所定の周波数信号の回数を計数し、初期時刻に加算していくことで現在時刻を計数するカウンタ回路である。計時回路24により計数される現在時刻は、CPU21により読み出されて時刻表示に用いられる。この時刻の計数は、ソフトウェア的に制御されてもよい。
【0018】
操作受付部61は、例えばリュウズであり、ユーザの操作を受け付けてマイクロコンピュータ2に伝達する。
電源部62は、電子時計1を長期間に亘って継続的、かつ安定的に動作させることが可能な構成となっており、例えば電池とDC-DCコンバータとの組合せである。これにより動作中の電源部62の出力電圧は、所定値を保つ。
【0019】
振動子63は、例えば水晶などであり、発振回路22と組み合わされて固有の周波数信号を生成する。
GPS部7は、GPS受信ICで構成されており、GPS衛星から送信される極超短波の衛星信号をアンテナ71によって受信し、現在位置や現在時刻を計測するものである。このGPS部7は、負荷(load)が大きく、動作保証電圧の下限が他の部位よりも高い。
【0020】
この電子時計1を構成する各部の動作保証電圧は、マイクロコンピュータ2の動作が1.0V以上、通常の運針が1.65V、GPS受信ICの動作が1.86Vである。
電子時計1の通常使用を考えると、運針の動作保障電圧の下限は1.65Vまでカバーする必要がある。しかし、GPS受信ICなどのような高負荷を動作させている場合は、そこまでカバーする必要はない。また、このように運針条件を緩めることで、消費電流を抑えたパルスで針を動かすことや、短いパルスで、より早く運針させることもできる。
よって、マイクロコンピュータ2が高負荷を動作させている場合は、1.8Vを動作保証電圧の下限とした別のパルスをステッピングモータ4に印加する。これにより通常時のパルスよりも消費電流を抑えることができ、全体的な消費電力を下げることが可能になる。また、通常時よりも早く運針させることもできる。
【0021】
図2は、電子時計1の文字盤8の外観を示す図である。
電子時計1は、円盤状の文字盤8を備えている。回転部51は、ディスク針が自身の回転軸を中心に回転可能に設けられ、文字盤8の6時の方向に穿たれた扇型の窓を介して視認可能である。指示部52は、文字盤8の9時の方向に設けられた指示針であり、自身の回転軸を中心に回転可能である。
【0022】
この文字盤8の中央には、時針53aと分針53bと秒針54の回転軸が設けられている。回転部51のディスク針、「0°」、「60°」などが刻印されており、この刻印により、現在の経度を指し示す。
指示部52は、左方向に「0°」、上方向に「N」、下方向に「S」が刻印されている。「0°」の刻印から「N」の刻印の間には、「30°」と「60°」が刻印されている。「0°」の刻印から「S」の刻印の間には、「30°」と「60°」が刻印されている。指示部52は、これら刻印と指針により、現在の緯度を指し示す。
GPS部7による測位の結果、現在の緯度と経度が決定されたならば、回転部51によって経度が指し示され、指示部52によって緯度が指し示される。
【0023】
以下、
図3から
図7を参照しつつ、本実施形態を説明する。本実施形態のステッピングモータ4aは、複数のコイルを備えており、これら複数のコイルにパルスを印加することで、ステップ駆動を行わせることができる。
【0024】
図3は、ステッピングモータ4aと、その駆動回路3を示す図である。
図3において、電圧入力端31と接地端32との間には、電源部62によって電源電圧Vccが印加される。電圧入力端31と接地端32との間には、スイッチ素子Q1,Q2がノードN1を介して直列に接続されている。同様に、電圧入力端31と接地端32との間には、スイッチ素子Q3,Q4がノードN2を介して直列に接続され、スイッチ素子Q5,Q6がノードN3を介して直列に接続されている。また、ノードN1,N2の間にはステッピングモータ4aのコイルL1が接続され、ノードN2,N3の間にはコイルL2が接続されている。これらコイルL1,L2は、ステッピングモータ4aを駆動するコイルである。スイッチ素子Q1~Q6は、例えばMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)である。
【0025】
パルスP1は、コイルL1を介してノードN2からノードN1の方向に印加される電圧パルスである。スイッチ素子Q3,Q2がオン状態にされ、他のスイッチ素子Q1,Q4~Q6はオフ状態にされる。これにより、コイルL1の右端から左端に向けて電源電圧Vccが印加され、ノードN2からノードN1に向かう方向に電流が流れる。この場合、パルスP1は正のパルスとなる。
【0026】
パルスP2は、コイルL2を介してノードN3からノードN2の方向に印加される電圧パルスである。スイッチ素子Q3,Q6がオン状態にされ、他のスイッチ素子Q1,Q2,Q4,Q5はオフ状態にされる。これにより、コイルL2の左端から右端に向けて電源電圧Vccが印加され、ノードN3からノードN2に向かう方向に電流が流れる。この場合、パルスP2は負のパルスとなる。
【0027】
また、スイッチ素子Q3,Q2,Q6がオン状態にされ、他のスイッチ素子Q1,Q4,Q5はオフ状態にされる。この場合、パルスP1が正のパルスとなると共に、パルスP2が負のパルスとなる。
【0028】
図4は、通常時にステッピングモータ4に印加する第1動作パルスの波形である。
ここで、通常時とは、GPS部7やセンサ(不図示)などの高負荷が動作していない場合をいう。
期間DP1において、駆動回路3は、コイルL1に正のパルスP1を印加する。その次の期間DP2において、駆動回路3は、コイルL2に負のパルスP2を印加する。更に期間DP3において、駆動回路3は、コイルL1に正のパルスP1を印加し、同時にコイルL2に負のパルスP2を印加する。
【0029】
第1動作パルスは、期間DP1~DP3においてコイルL1,L2に印加するパルスのことをいう。CPU21は、駆動回路3により、この第1動作パルスをステッピングモータ4aに印加して1ステップ分の駆動を行わせ、よってディスク針を運針する。
このように、第1動作パルスには2つのコイルを同時に駆動する期間が含まれている。
【0030】
図5は、GPS動作時にステッピングモータ4aに印加する第2動作パルスの波形である。
ここでGPS動作時とは、高負荷であるGPS部7が正常に動作している場合をいう。
期間DP1aにおいて、駆動回路3は、コイルL1に正のパルスP1を印加する。その次の期間DP2aにおいて、駆動回路3は、コイルL2に負のパルスP2を印加する。
第2動作パルスは、期間DP1a,DP2aにおいてコイルL1,L2に印加するパルスのことをいう。CPU21は、駆動回路3により、この第2動作パルスをステッピングモータ4aに印加して1ステップ分の駆動を行わせ、よってディスク針を運針する。
【0031】
このように、第2動作パルスには、2つのコイルを同時に駆動する期間が含まれない。更に、
図5と
図4とで示したように、第2動作パルスは、第1動作パルスよりも短い。よって、CPU21は、第2動作パルスによって、通常動作時よりも早く運針させることもできる。
【0032】
図6は、動作保証電圧範囲と消費電流を示す図である。
図4に示した通常時の第1動作パルスの動作保証電圧範囲は1.65~2.10[V]であり、消費電流は8.4μA/STEPである。
図5に示したGPS動作時のパルスは、第2動作パルスであり、動作保証電圧範囲は1.80~2.10[V]であり、消費電流は5.0μA/STEPである。
GPS部7(
図1参照)の動作保証電圧の下限は、1.86[V]である。
【0033】
このように、通常時の第1動作パルスの動作保障電圧の下限が、高負荷(GPS受信用IC)の動作保障電圧の下限より低い。更に高負荷動作時の第2動作パルスの動作保障電圧の下限が、高負荷の動作保障電圧の下限と同等レベルに設定されている。高負荷動作時の第2動作パルスの消費電流は、通常時の第1動作パルスの消費電流よりも低い。CPU21は、高負荷を動作させない場合には、駆動回路3に第1動作パルスをステッピングモータ4aに印加させ、高負荷を動作させる場合(高負荷動作時)には、駆動回路3に第2動作パルスをステッピングモータ4aに印加させることができる。これにより消費電力を削減可能である。
【0034】
なお、第2動作パルスの動作保証電圧の下限は、GPS部7が動作しなくなる電圧よりも低く設定することが望ましい。これにより、電源電圧VccがGPS部7の動作保証電圧の下限よりも低く、かつGPS部7が動作している場合であっても、第2動作パルスによるステッピングモータ4の駆動動作を保証することができる。
【0035】
図7は、ステッピングモータ4を制御するフローチャートである。
CPU21は、ステッピングモータ4aをステップ駆動させる毎に、このフローチャートを実行する。
ステップS10において、CPU21は、高負荷であるGPS部7が動作中か否かを判定する。CPU21は、GPS部7が動作中ならば(ステップS10→Yes)、第2動作パルスを出力する(ステップS11)。第2動作パルスは、後記する第1動作パルスと比べて、動作保証電圧の下限がより高い1.80[V]であり、消費電流がより小さい。これにより、消費電力を削減することができ、電源電圧Vccの低下を抑制することができる。これにより、CPU21は、GPS部7を好適に動作させることができる。
また、GPS部7が動作中なので、現在の電源電圧Vccは、GPS部7の動作保証電圧の下限よりも高く、よって第2動作パルスの動作保証電圧の下限よりも高い。よって、第2動作パルスによって、ステッピングモータ4aを確実に駆動し、確実に運針させることができる。
【0036】
CPU21は、GPS部7が動作中でないならば(ステップS10→No)、第1動作パルスを出力する(ステップS12)。ここでGPS部7が動作中でない場合とは、CPU21がGPS部7を動作していない場合と、GPS部7の動作を試みたにも関わらず動作しない場合とが含まれる。第1動作パルスは、第2動作パルスと比べて、消費電流がより大きいが、動作保証電圧の下限がより低い1.65[V]である。これにより、電池が消耗した状態であっても、確実に運針させることができる。
【0037】
以下、
図8から
図10を参照しつつ、変形例を説明する。変形例のステッピングモータ4aは、単一のコイルを備えている。この単一コイルにパルスを印加することで、ステップ駆動を行わせることができる。
図8は、変形例のステッピングモータ4aの駆動回路3を示す図である。
図8において、電圧入力端31と接地端32との間には、電源部62によって電源電圧Vccが印加される。そして、電圧入力端31と接地端32との間には、MOSFETであるスイッチ素子Q7,Q8がノードN4を介して直列に接続されている。同様に、電圧入力端31と接地端32との間には、スイッチ素子Q9,Q10がノードN5を介して直列に接続されている。また、ノードN4,N5の間にはステッピングモータ4aのコイルL3が接続されている。
【0038】
パルスP3は、コイルL3を介してノードN5からノードN4の方向に印加される電圧パルスである。スイッチ素子Q9,Q8がオン状態にされ、他のスイッチ素子Q7,Q10はオフ状態にされる。これにより、コイルL3の右端から左端に向けて電源電圧Vccが印加され、ノードN5からノードN4に向かう方向に電流が流れる。この場合、パルスP3は正のパルスとなる。
【0039】
図9は、通常時にステッピングモータ4aに印加する第1動作パルスの波形である。
期間DP4において、駆動回路3は、コイルL3に正のパルスP3を印加する。その次の期間DP5において、駆動回路3は、コイルL3にデューティ50%のパルスを印加する。このように、通常時のパルスは、オン期間とパルス期間との組合せである。
変形例において通常時パルスは、期間DP4,DP5においてコイルL3に印加するパルスのことをいう。駆動回路3は、この通常時パルスにより、ステッピングモータ4aに1ステップ分の駆動を行わせ、よってディスク針を運針する。
【0040】
図10は、GPS動作時にステッピングモータ4aに印加する第2動作パルスの波形である。
期間DP4aにおいて、駆動回路3は、コイルL3に正のパルスP3を印加する。期間DP4aは、通常時における期間DP4よりも短い。その次の期間DP5aにおいて、駆動回路3は、コイルL3にデューティ50%のパルスを印加する。このように、GPS動作時のパルスは、オン期間とパルス期間との組合せである。
期間DP5aは、通常時における期間DP5よりも長い。かつ期間DP4と期間DP5の和は、期間DP4aと期間DP5aの和と同等である。
【0041】
変形例において通常時の第1動作パルスは、期間DP4a,DP5aにおいてコイルL3に印加するパルスのことをいう。駆動回路3は、この第1動作パルスにより、ステッピングモータ4aに1ステップ分の駆動を行わせ、よってディスク針を運針する。
変形例においても、電子時計1は、1つの針に対して、動作保障条件が異なる2以上の動作パルスを持つ。第1動作パルスは、前述した通常の時計計時などで使用する通常時のパルスである。第2動作パルスは、高負荷と同時に使用する高負荷動作時のパルスである。
【0042】
ただし、通常時の第1動作パルスの動作保障電圧下限は、高負荷(GPS受信IC)の動作保障電圧の下限よりも小さく、高負荷動作時の第2動作パルスの動作保障電圧の下限は、高負荷の動作保障電圧の下限と同等レベルである。更に高負荷動作時の第2動作パルスの消費電流は、通常時の第1動作パルスの消費電流よりも小さい。
このように設定することで、高負荷動作時と通常時など、現在の条件に合ったパルスを適切に選択することができる。これにより、消費電力を削減することができる。
【0043】
(変形例)
本発明は、上記実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、変更実施が可能であり、例えば、次の(a)~(g)のようなものがある。
【0044】
(a) 高負荷は、GPS受信ICに限定されず、センサや通信部など他の機能を実現する部位であり、かつ、これらが正常に動作しているか否かがマイクロコンピュータ2から判定できるものであればよい。
(b) 高負荷動作時の第2動作パルスは、通常時の第1動作パルスよりもオン期間が短いものであってもよい。
(c) 高負荷動作時の第2動作パルスと通常時の第1動作パルスはPWM信号であり、高負荷動作時の第2動作パルスは、通常時の第1動作パルスよりもオン・デューティが小さいものであってもよい。
(d) 高負荷動作時の第2動作パルスと通常時の第1動作パルスの電圧値が異なり、高負荷動作時の第2動作パルスは、通常時の第1動作パルスよりも電圧が高いものであってもよい。
(e) 複数のパルスを切り替える対象は、回転部51を運針させるステッピングモータに限定されず、時針・分針・秒針など、任意の針を運針させるステッピングモータであってもよい。
(f) 電子時計1は、高負荷動作時の第2動作パルスにより、通常時よりも速く運針させるようにしてもよい。これにより、指針の動きに表現力をつけることができる。
(g) 電子時計1は、高負荷動作時の第2動作パルスにより、並行して運針させる指針を通常時よりも多くしてもよい。これにより、指針の動きに表現力をつけることができる。
【0045】
以下に、この出願の願書に最初に添付した特許請求の範囲に記載した発明を付記する。付記に記載した請求項の項番は、この出願の願書に最初に添付した特許請求の範囲の通りである。
〔付記〕
【0046】
《請求項1》
負荷と、
ステッピングモータに所定の動作パルスを印加することで前記ステッピングモータを駆動して指針を運針させる駆動回路と、
前記負荷を動作させない場合には前記駆動回路に、前記所定の動作パルスとして、第1動作パルスを前記ステッピングモータに印加させ、前記負荷を動作させる場合には前記駆動回路に、前記所定の動作パルスとして、前記第1動作パルスよりも消費電流の小さい第2動作パルスを前記ステッピングモータに印加させる制御部と、
を備えることを特徴とする駆動装置。
《請求項2》
所定の動作保証電圧以上で動作が保証される負荷と、
ステッピングモータに所定の動作パルスを印加することで前記ステッピングモータを駆動して指針を運針させる駆動回路と、
前記負荷を動作させない場合には前記駆動回路に、前記所定の動作パルスとして、第1動作パルスを前記ステッピングモータに印加させ、前記負荷を動作させる場合には前記駆動回路に、前記所定の動作パルスとして、前記第1動作パルスの動作保証電圧の下限と前記負荷の動作保証電圧の下限との間のいずれかを動作保証電圧の下限とする第2動作パルスを前記ステッピングモータに印加させる制御部と、
を備えることを特徴とする駆動装置。
《請求項3》
前記第2動作パルスは、前記第1動作パルスよりもパルス幅が短い、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の駆動装置。
《請求項4》
前記第1動作パルスおよび前記第2動作パルスは、オン期間とパルス期間との組合せであり、前記第1動作パルスのオン期間は、前記第2動作パルスのオン期間よりも長い、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の駆動装置。
《請求項5》
前記第1動作パルスおよび前記第2動作パルスは、PWM信号であり、前記第2動作パルスは、前記第1動作パルスよりもオン・デューティが小さい、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の駆動装置。
《請求項6》
前記第2動作パルスは、前記第1動作パルスよりも電圧が低い、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の駆動装置。
《請求項7》
前記ステッピングモータは、2つのコイルを備えており、
前記第1動作パルスには前記2つのコイルを同時に駆動する期間が含まれており、前記第2動作パルスには前記2つのコイルを同時に駆動する期間が含まれない、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の駆動装置。
《請求項8》
請求項1ないし7のうちいずれか1項に記載の駆動装置を備える、
ことを特徴とする電子時計。
《請求項9》
負荷を動作させない場合に、第1動作パルスをステッピングモータに印加する第1動作パルス駆動ステップと、
前記負荷を動作させる場合には、前記第1動作パルスよりも消費電流の小さい第2動作パルスを前記ステッピングモータに印加する第2動作パルス駆動ステップと、
を含むことを特徴とする駆動方法。
《請求項10》
所定の動作保証電圧以上で動作が保証される負荷を動作させない場合に、第1動作パルスをステッピングモータに印加する第1動作パルス駆動ステップと、
前記負荷を動作させる場合には、前記第1動作パルスの動作保証電圧の下限と前記負荷の動作保証電圧の下限との間のいずれかを動作保証電圧の下限とする第2動作パルスを前記ステッピングモータに印加する第2動作パルス駆動ステップと、
を含むことを特徴とする駆動方法。
【符号の説明】
【0047】
1 電子時計
2 マイクロコンピュータ
21 CPU (制御部)
22 発振回路
23 分周回路
24 計時回路
3 駆動回路
31 電圧入力端
32 接地端
4,4a~4d ステッピングモータ
51 回転部
52 指示部
53 時針・分針
53a 時針
53b 分針
54 秒針
61 操作受付部
62 電源部
63 振動子
7 GPS部 (負荷)
71 アンテナ
8 文字盤
Q1~Q10 スイッチ素子
L1~L3 コイル
N1~N5 ノード
P1~P3 パルス
DP1~DP3 期間 (第1駆動パルス)
DP4,DP5 期間 (第1駆動パルス)
DP1a,DP2a 期間 (第2駆動パルス)
DP4a,DP5a 期間 (第2駆動パルス)