(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-21
(45)【発行日】2023-08-29
(54)【発明の名称】電力変換システムの制御装置
(51)【国際特許分類】
H02M 7/48 20070101AFI20230822BHJP
【FI】
H02M7/48 Z
H02M7/48 L
H02M7/48 R
(21)【出願番号】P 2021563484
(86)(22)【出願日】2019-12-10
(86)【国際出願番号】 JP2019048236
(87)【国際公開番号】W WO2021117124
(87)【国際公開日】2021-06-17
【審査請求日】2022-02-09
(73)【特許権者】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】東芝三菱電機産業システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】深澤 一誠
(72)【発明者】
【氏名】木下 雅博
【審査官】白井 孝治
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/047415(WO,A1)
【文献】特開2011-217429(JP,A)
【文献】国際公開第2017/043197(WO,A1)
【文献】特開平07-079573(JP,A)
【文献】特開2001-037293(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/00~ 7/98
H02M 3/00~ 3/44
H02J 3/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電源と交流電源との間に接続された電力変換器の環境において現時点が夜間であるか否かを判定する判定部と、
前記判定部により現時点が夜間であると判定されている場合は、前記交流電源または直流電源と前記電力変換器との間に設けられたスイッチを閉じた状態に維持し、前記電力変換器を運転させることで前記電力変換器での電力の消費を維持する制御部と、
を備え、
前記電力変換器は、交流側にフィルタコンデンサを有し、夜間は前記フィルタコンデンサが
前記交流電源側に流出する無効電力を打ち消すよう、無効電力を出力する電力変換システムの制御装置。
【請求項2】
直流電源と交流電源との間に接続された電力変換器の環境において現時点が夜間であるか否かを判定する判定部と、
前記判定部により現時点が夜間であると判定されている場合は、前記交流電源または直流電源と前記電力変換器との間に設けられたスイッチを閉じた状態に維持し、前記電力変換器を運転させることで前記電力変換器での電力の消費を維持する制御部と、
を備え、
前記電力変換器は、
交流側でトランスを介して
前記交流電源と接続され、夜間は前記トランスが
前記交流電源側に流出する無効電力を打ち消すよう、無効電力を出力する電力変換システムの制御装置。
【請求項3】
前記制御部は、温度を認識する手段を有し、温度が低い場合のみ、夜間に前記電力変換器との間のスイッチを閉じる請求項1または請求項2に記載の電力変換システムの制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電力変換システムの制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、電力変換システムを開示する。当該電力変換システムによれば、突入電流を抑えながら、系統と連系し得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の電力変換システムにおいて、夜間において、太陽光発電設備が発電しない間、電力変換器は、運転を停止する。このため、電力変換器の主回路は、太陽光発電設備と交流電源とから切り離される。この状態において、電力変換器の筐体の内部の温度が下がることを抑制するため、スペースヒータにより加熱する必要がある。
【0005】
この発明は、上述の課題を解決するためになされた。この発明の目的は、スペースヒータを別途設けることなく、筐体の内部の温度が下がることを抑制できる電力変換システムの制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る電力変換システムの制御装置は、直流電源と交流電源との間に接続された電力変換器の環境において現時点が夜間であるか否かを判定する判定部と、前記判定部により現時点が夜間であると判定されている場合は、前記交流電源または直流電源と前記電力変換器との間に設けられたスイッチを閉じた状態に維持し、前記電力変換器を運転させることで前記電力変換器での電力の消費を維持する制御部と、を備え、前記電力変換器は、交流側にフィルタコンデンサを有し、夜間は前記フィルタコンデンサが前記交流電源側に流出する無効電力を打ち消すよう、無効電力を出力する。
【0007】
この発明に係る電力変換システムの制御装置は、直流電源と交流電源との間に接続された電力変換器の環境において現時点が夜間であるか否かを判定する判定部と、前記判定部により現時点が夜間であると判定されている場合は、前記交流電源または直流電源と前記電力変換器との間に設けられたスイッチを閉じた状態に維持し、前記電力変換器を運転させることで前記電力変換器での電力の消費を維持する制御部と、を備え、前記電力変換器は、交流側でトランスを介して前記交流電源と接続され、夜間は前記トランスが前記交流電源側に流出する無効電力を打ち消すよう、無効電力を出力する。
【発明の効果】
【0008】
この発明によれば、制御装置は、現時刻が夜間であると判定されている場合は、交流スイッチを閉じた状態に維持する。このため、交流電源からの電力が消費される。その結果、スペースヒータを別途設けることなく、筐体の内部の温度が下がることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施の形態1における電力変換システムの制御装置が適用される電力システムの構成図である。
【
図2】実施の形態1における電力変換システムの制御装置のハードウェア構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
この発明を実施するための形態について添付の図面に従って説明する。なお、各図中、同一または相当する部分には同一の符号が付される。当該部分の重複説明は適宜に簡略化ないし省略する。
【0011】
実施の形態1.
図1は実施の形態1における電力変換システムの制御装置が適用される電力システムの構成図である。
【0012】
図1において、直流電源1は、太陽電池である。交流電源2は三相で、電力会社等に運用される。
【0013】
電力変換システムは、筐体3と電力変換器4と直流コンデンサ5と直流放電抵抗6と直流スイッチ7と交流リアクトル8と交流コンデンサ9と交流放電抵抗10と交流スイッチ11と制御装置12とを備える。
【0014】
筐体3は、電力変換システムの外郭をなす。電力変換器4は、直流電源1と交流電源2との間に接続される。直流コンデンサ5は、直流電源1と電力変換器4との間に接続される。直流放電抵抗6は、直流コンデンサ5と並列に接続される。直流スイッチ7は、直流電源1と直流コンデンサ5との間に接続される。交流リアクトル8は、交流電源2と電力変換器4との間に接続される。交流コンデンサ9は、交流電源2と交流リアクトル8との間に接続される。交流放電抵抗10は、交流コンデンサ9と並列に接続される。交流スイッチ11は、交流電源2と交流コンデンサ9との間に接続される。
【0015】
制御装置12は、判定部13と制御部14とを備える。
【0016】
判定部13は、現時点が夜間であるか否かを判定する。例えば、判定部13は、太陽電池である直流電源1の出力側の電力と電圧と電流とのうちの少なくとも一つの値に基づいて現時点が夜間であるか否かを判定する。例えば、判定部13は、タイマーにより現時点が夜間であるか否かを判定する。例えば、判定部13は、外部からの情報に基づいて現時点が夜間であるか否かを判定する。
【0017】
制御部14は、判定部13の判定結果に基づいて電力変換器4と直流スイッチ7と交流スイッチ11とを制御する。例えば、判定部13により現時点が夜間であると判定されている場合、制御部14は、電力変換器4の運転を停止したうえで、直流スイッチ7を開いた状態に維持し、交流スイッチ11とを閉じた状態に維持する。
【0018】
この際、直流放電抵抗6と交流放電抵抗10とは、交流電源2からの電力により電力を消費する。その結果、直流放電抵抗6と交流放電抵抗10とは、熱を発する。
【0019】
以上で説明した実施の形態1によれば、制御装置12は、現時刻が夜間であると判定されている場合は、交流スイッチ11を閉じた状態に維持し、電力変換器4の筐体3の内部において主回路に設けられた直流放電抵抗6と交流放電抵抗10での電力の消費を維持する。このため、スペースヒータを別途設けることなく、筐体3の内部の温度が下がることを抑制できる。その結果、結露の発生を抑制したり筐体3の内部の温度が電力変換システムの構成部品の使用温度を下回ったりすることを抑制できる。
【0020】
なお、スペースヒータが不要となることで、電力変換システムの構成を簡略化できる。その結果、電力変換システムのコストを削減できる。
【0021】
また、制御装置12において、現時刻が夜間であると判定されている場合は、交流スイッチ11を閉じた状態に維持し、電力変換器4を運転し、交流コンデンサ9が交流電源2に流出する無効電力を打ち消すようにしても良い。この場合、電力変換器の電力変換損失によって、熱を発する。さらに、交流スイッチ11を閉じた状態に維持することによって、交流コンデンサが交流電源2に流出する無効電力を抑制できる。この場合も、スペースヒータを別途設けることなく、筐体3の内部の温度が下がることを抑制できる。
【0022】
また、電力変換器4を運転しつつ、電流を零に保持したままでもよい。この場合も、電力変換器の電力変換損失によって、熱を発する。この場合も、スペースヒータを別途設けることなく、筐体3の内部の温度が下がることを抑制できる。
【0023】
また、直流電源1として蓄電設備が使用された電力システムに実施の形態1の制御装置15を適用してもよい。この場合は、交流スイッチ11の代わりに直流スイッチ7を閉じた状態に維持し、電力変換器を無負荷運転する。この場合も、電力変換器の電力変換損失によって、熱を発する。この場合も、スペースヒータを別途設けることなく、筐体3の内部の温度が下がることを抑制できる。
【0024】
また、筐体内の温度を制御装置に認識させ、温度が閾値を下回った場合のみ、夜間に交流スイッチ11または直流スイッチ7を閉じるようにしても良い。
【0025】
次に、
図2を用いて、制御装置12の例を説明する。
図2は実施の形態1における電力変換システムの制御装置のハードウェア構成図である。
【0026】
制御装置12の各機能は、処理回路により実現し得る。例えば、処理回路は、少なくとも1つのプロセッサ100aと少なくとも1つのメモリ100bとを備える。例えば、処理回路は、少なくとも1つの専用のハードウェア200を備える。
【0027】
処理回路が少なくとも1つのプロセッサ100aと少なくとも1つのメモリ100bとを備える場合、制御装置12の各機能は、ソフトウェア、ファームウェア、またはソフトウェアとファームウェアとの組み合わせで実現される。ソフトウェアおよびファームウェアの少なくとも一方は、プログラムとして記述される。ソフトウェアおよびファームウェアの少なくとも一方は、少なくとも1つのメモリ100bに格納される。少なくとも1つのプロセッサ100aは、少なくとも1つのメモリ100bに記憶されたプログラムを読み出して実行することにより、制御装置12の各機能を実現する。少なくとも1つのプロセッサ100aは、中央処理装置、処理装置、演算装置、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、DSPともいう。例えば、少なくとも1つのメモリ100bは、RAM、ROM、フラッシュメモリ、EPROM、EEPROM等の、不揮発性または揮発性の半導体メモリ、磁気ディスク、フレキシブルディスク、光ディスク、コンパクトディスク、ミニディスク、DVD等である。
【0028】
処理回路が少なくとも1つの専用のハードウェア200を備える場合、処理回路は、例えば、単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサ、並列プログラム化したプロセッサ、ASIC、FPGA、またはこれらの組み合わせで実現される。例えば、制御装置12の各機能は、それぞれ処理回路で実現される。例えば、制御装置12の各機能は、まとめて処理回路で実現される。
【0029】
制御装置12の各機能について、一部を専用のハードウェア200で実現し、他部をソフトウェアまたはファームウェアで実現してもよい。例えば、判定部13の機能については専用のハードウェア200としての処理回路で実現し、判定部13の機能以外の機能については少なくとも1つのプロセッサ100aが少なくとも1つのメモリ100bに格納されたプログラムを読み出して実行することにより実現してもよい。
【0030】
このように、処理回路は、ハードウェア200、ソフトウェア、ファームウェア、またはこれらの組み合わせで制御装置12の各機能を実現する。
【産業上の利用可能性】
【0031】
以上のように、この発明に係る電力変換システムの制御装置は、電力変換システムの筐体の内部の温度が下がることを抑制するシステムに利用できる。
【符号の説明】
【0032】
1 直流電源、 2 交流電源、 3 筐体、 4 電力変換器、 5 直流コンデンサ、 6 直流放電抵抗、 7 直流スイッチ、 8 交流リアクトル、 9 交流コンデンサ、 10 交流放電抵抗、 11 交流スイッチ、 12 制御装置、 13 判定部、 14 制御部、 100a プロセッサ、 100b メモリ、 200 ハードウェア