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特許7334879高空間分解能ヒートマップを生成するための熱衛星画像データの相関
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-21
(45)【発行日】2023-08-29
(54)【発明の名称】高空間分解能ヒートマップを生成するための熱衛星画像データの相関
(51)【国際特許分類】
   G06T 7/00 20170101AFI20230822BHJP
   G01J 5/48 20220101ALI20230822BHJP
【FI】
G06T7/00 640
G01J5/48 E
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020562185
(86)(22)【出願日】2019-05-08
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-09-02
(86)【国際出願番号】 EP2019061790
(87)【国際公開番号】W WO2019215210
(87)【国際公開日】2019-11-14
【審査請求日】2022-04-25
(31)【優先権主張番号】102018207265.5
(32)【優先日】2018-05-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】598080163
【氏名又は名称】フラウンホッファー-ゲゼルシャフト ツァー フェーデルング デア アンゲバンテン フォルシュング エー ファー
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ガルド、マックス
【審査官】▲広▼島 明芳
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0146996(US,A1)
【文献】国際公開第2017/200622(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 7/00 - 7/90
G06V 10/00 - 20/90
G01J 5/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の衛星の記録装置によって記録された、領域を含んでいる第1の景観の第1の熱画像を受信する段階であって、前記第1の熱画像は前記領域と空間的に関連している画素を含み、前記第1の熱画像は、画素毎に、各々の第1の測定値を前記領域に割り当てる、受信する段階と、
第2の衛星の記録装置によって記録された、前記領域を含んでいる第2の景観の第2の熱画像を受信する段階であって、前記第2の熱画像は前記領域と空間的に関連している画素を含み、前記第2の熱画像は、画素毎に、それぞれの場合において第2の測定値を前記領域に割り当てる、受信する段階とであって、
前記第1の熱画像が記録される時間と前記第2の熱画像が記録される時間との間に、時間的オフセットが存在し、前記時間的オフセットは設定された制限を下回り、前記第1の熱画像の放射測定精度は前記第2の熱画像の放射測定精度より高く、前記第2の熱画像の空間分解能は前記第1の熱画像の空間分解能より高い段階と、
前記第2の熱画像の第1の画素群であって、前記領域と空間的に関連しており、かつ複数の画素を含んでいる第1の画素群に対して、前記第2の熱画像の前記第1の画素群の前記画素の相対的な測定値と、前記第2の熱画像の前記第1の画素群と少なくとも部分的に空間的に関連している前記第1の熱画像の少なくとも1つの画素の前記第1の測定値とを比較することによって、前記第1の画素群の測定値オフセットを決定する段階と、
前記第1の画素群の前記画素の前記第2の測定値および前記測定値オフセットに基づいて、前記領域と関連している前記第1の画素群の前記画素の修正された絶対測定値を決定する段階と、
前記修正された絶対測定値に基づいて、前記領域の正確なヒートマップを作成する段階と
を備える、領域のヒートマップを作成するための方法。
【請求項2】
前記方法が特に、前記第2の熱画像の前記第1の画素群の相対的な測定値と、前記第2の熱画像の前記第1の画素群と空間的に関連している前記第1の熱画像の前記画素の前記第1の測定値とを比較することによって、前記第2の熱画像の前記第1の画素群の前記測定値オフセットを決定する段階を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記正確なヒートマップおよび地表モデルおよび/または発光モデルに基づいて、前記領域の地表温度を決定する段階を更に備える、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の熱画像および第2の熱画像が赤外線画像である、請求項1から3の何れか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記第2の熱画像の前記空間分解能が、前記第2の熱画像の前記空間分解能より少なくとも1桁または2桁大きい、請求項1から4の何れか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記測定値が温度値であり、前記第1の熱画像の画素毎の放射測定の逸脱が2K未満であり、前記第2の熱画像の放射測定の逸脱が平均して2Kを超える、請求項1から5の何れか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記第1の熱画像が、前記放射測定精度を増大させるように校正された前記第1の衛星の記録装置で記録された、請求項1から6の何れか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記第1の熱画像が、高い地球軌道にある静止衛星または低い地球軌道にある大型の非静止衛星などの大型衛星プラットフォームの前記記録装置によって記録された、請求項1から7の何れか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記第2の熱画像が、小型衛星の前記記録装置によって記録された、請求項1から8の何れか1項に記載の方法。
【請求項10】
受信した第1の熱画像および第2の熱画像を使用して、請求項1から9のいずれか1項に記載の方法に従って、第1の時点で前記領域の第1のヒートマップを決定する段階と、
受信した第3の熱画像および第4の熱画像を使用して、請求項1から9のいずれか1項に記載の方法に従って、第2の時点で前記領域の第2のヒートマップを決定する段階と、
前記第1のヒートマップおよび第2のヒートマップに基づいて前記領域の温度の時系列を作成する段階と、
を備える、時限に亘り領域の温度の変化を決定するための方法。
【請求項11】
前記第1の時点および第2の時点は設定された時限内であり、前記第1の熱画像および第3の熱画像は各々高い放射測定精度を有し、かつ各々第1の大型衛星プラットフォームによって記録され、前記第2の熱画像は高空間分解能を有し、かつ第2の衛星の前記記録装置によって記録され、前記第4の熱画像は高空間分解能を有し、かつ第3の衛星の前記記録装置によって記録され、前記第2のおよび第3の衛星が異なる小型衛星である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
追加の時点で前記領域の複数の追加のヒートマップを決定する段階であって、前記追加の時点における2つの連続した時点は、それぞれの場合において設定された時限内にある段階と、
前記第1のヒートマップ、前記第2のヒートマップ、および前記追加のヒートマップに基づいて、前記領域の前記温度の時系列を作成する段階と、
を更に備える、請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
領域のヒートマップを決定するためのコンピュータプログラムであって、前記コンピュータプログラムが、コンピュータ上で実行されるとき、請求項1から12のいずれか1項に記載の方法を実施する命令を含む、コンピュータプログラム。
【請求項14】
領域のヒートマップを作成するための装置であって、
第1の衛星の記録装置によって記録された、領域を含んでいる第1の景観の第1の熱画像を受信することであって、前記第1の熱画像は前記領域と空間的に関連している画素を含み、前記第1の熱画像は、画素毎に、各々の第1の測定値を前記領域に割り当てる、受信することと、
第2の衛星の記録装置によって記録された、前記領域を含んでいる第2の景観の第2の熱画像を受信することであって、前記第2の熱画像は前記領域と空間的に関連している画素を含み、前記第2の熱画像は、画素毎に、第2の測定値を前記領域に割り当てる、受信することと
を行うように構成された少なくとも1つの受信部であって、
前記第1の熱画像が記録される時間と前記第2の熱画像が記録される時間との間に、時間的オフセットが存在し、前記時間的オフセットは設定された制限を下回り,前記第1の熱画像の放射測定精度は前記第2の熱画像の放射測定精度より高く,前記第2の熱画像の空間分解能は前記第1の熱画像の空間分解能より高い、受信部と,
前記第2の熱画像の第1の画素群であって、前記領域と空間的に関連しており、かつ複数の画素を含んでいる第1の画素群に対して、前記第1の画素群の前記画素の相対的な測定値と、前記第2の熱画像の前記第1の画素群と少なくとも部分的に空間的に関連している前記第1の熱画像の前記少なくとも1つの画素の前記第1の測定値とを比較することによって、前記第1の画素群の測定値オフセットを決定することと、
前記第1の画素群の前記画素の第2の温度値および前記測定値オフセットに基づいて、前記第1の画素群の前記画素の修正された絶対測定値を決定することと、
前記修正された絶対測定値に基づいて、前記領域の前記ヒートマップを作成することと
を行うように構成された決定部と
を備える、装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱衛星画像データを使用する高空間分解能ヒートマップの決定に関する。
【0002】
可能な限り正確に決定される地表温度(LST)は、例えば、山火事の検出、都市温度分布における極大値(都市ヒートアイランド、UHL)の測定、農業における植生指標の決定、または局所および世界的な気候のモデリングの間など、多くの様々な用途の主要な構成要素である。広い表面積に亘りかつ正確に地表温度を測定することは、衛星を使用してのみ可能になっている。
【0003】
温度は、例えば、直接測定されないが、衛星に搭載されている検出器で放射輝度から算出される。放射輝度Rλは、所与の方向の所与のスペクトル領域における所与の時間に表面から発される放射束(エネルギー)であり、平方メートル毎におよびステラジン毎にワットで示される。
【0004】
検出器自体はグレースケール画像を記録するが、グレースケール画像では、単一の画素の輝度が、測定された放射輝度と関連付けられ得る。
【0005】
グレー値DNの放射輝度への関連付けは、例えば、
【数1】
の形の一次方程式で実施される。ここで、定数であるaおよびbは、検出器の校正によって確認される。
【0006】
プランクの放射則を使用して、かつ、波長λについての知識があれば、以下の関係を介して温度Tを直接推定することができる:
【0007】
【数2】
ここで、hはプランク定数であり、cは真空における光速であり、σはボルツマン定数である。測定された出力変数は、そこから温度が算出され得るが、検出器のタイプに依存し得る。例えば、マイクロボロメータとして知られているものの場合、温度に依存した電気抵抗が測定されるか、または、吸収体の温度変化が温度計によって直接測定される。まず第1に、温度は、抵抗と温度との間で予め確認された関数依存性から推定される。
【0008】
水銀カドニウムテルル(MCT)検出器の場合、半導体素子が用いられるが、この検出器内で捕えられる画素当たりのエネルギー量は、その照度と良好な近似で線形に相関する。従って、画素の視野および暴露時間の情報があれば、放射輝度を推定することができるが、上述の通り、放射輝度は温度に関連する。
【0009】
もう1つの検出器タイプは量子井戸型赤外光検出器(QWIP)であり、この検出器にでは同様に、赤外線(IR)光線が入射されるとき電荷担体が放出され、それにより大きな電流を発生させる。
【0010】
他の検出器タイプも存在するが、それらは全て、測定が容易な物理的パラメータ(抵抗、電圧など)を変化させることによって、温度が算出された変数として決定されるという共通点を有する傾向がある。
【0011】
宇宙から赤外線カメラによってLSTを測定するときに一般的な問題は、高い絶対放射測定精度、すなわち、地球の表面の測定された放射温度の精度を達成することである。測定温度は、平均して、可能な限り正確に測定された面積の実際の放射温度を反映するべきである。この点で、とりわけ、検出器の温度変動、測定される赤外線放射の大気の通過、地球の表面の波長および視角に依存する放射率、測定された面積における異なる放射率を有する異なる表面タイプ(道路、田畑、森林、建造物など)、反射された日射、結果の物理的な解釈のため、問題点が生じる。放射温度はこのようにして通常測定され、次に、表面モデルによって表面温度を推定することが試みられる。
【0012】
上述の用途の多くは、例えばUHIのまたは蒸発散の日内周期を記録するように、高時間分解能および高空間分解能を同時に必要とする。この要件は、現在存在する衛星プラットフォームによっても、また、今後数年に計画されている衛星プラットフォームよっても満たされ得ない。
【0013】
GOESまたはメテオサットなどの静止衛星は、非常に高い時間的反復率(MSG/SEVIRIの急速走査モードで5分)と高い放射測定精度とを有するが、これらの静止衛星は、数平方キロメートルという予測される画素サイズを有する限られた空間分解能を有する。
【0014】
ランドサット7号または8号(ETM+、TIRS)およびテラ(ASTER)などの高空間分解能プラットフォームは、約60m~120mの空間分解能を提供するが、これらのプラットフォームは約2週間の反復率でグローバルなカバレッジを可能にするのみである。
【0015】
一般的に、表面温度を正確に測定するための衛星に搭載された高品質な校正方法は非常に複雑で、これまで、大型衛星内でのみ実装可能であった。これらのプラットフォームは、高空間分解能を有するが(ランドサット7号および8号など)、同じ領域が再び観測され得るまで低軌道で非常に長い時間が経過するという欠点を有し、複数のそのようなシステムから成る構成を使用することは、多大な金銭的支出を伴うであろう。より離れたプラットフォーム(メテオサット、GOES)は、上述の通り、乏しい空間分解能という問題によって悪影響を受けている。それ故に、高空間分解能を有し、かつ、任意に高時間分解能も有する正確な熱データを放射解析によって生成するための複数の方法が存在する。これらの方法は全て、複雑な校正方法を搭載したメテオサットおよびランドサットなどの主要なプラットフォームの既存の正確な熱衛星データを、空間的により高く分解された補助データと結合するという点で共通している。空間的により高く分解された熱画像を得るために、そして、例えば、加えて時間的により高く分解された時系列の範囲内でこれらの熱画像を使用するために、熱データのそのようなダウンサンプリングを用いることができる。
【0016】
現時点では、空間分解能のこのような増大を達成する2つの方法タイプが存在する。熱鮮鋭化(TSP)は、高分解能物理環境モデルを使用し、矩形のサブピクセルネットワークにおいて温度を推定する。これらは、例えば、発光係数または局所のアルベドに関して正確な情報を含むマップであり得る。この場合、記録された粗い温度画素が、そのサブピクセル構成要素の線形結合として表され得ると仮定される。これらはパラメータセットに応じてクラスに分けられ(例えば「森林」、「草原」、「通り」、「建造物」)、例えば多重線形回帰または逐次モンテカルロ法によって相関される。
【0017】
発光係数
【数3】
は、次の関係:
【数4】
を使用して、物体の測定された放射温度Tと動的表面温度T0との間の関係を決定する。 遠隔測定方法においては、通常、温度と発光係数の積が測定される。互いに独立した帯域においては、同時に両方の変数を決定することができないため、問題は劣決定される。従って、追加の情報が必要とされる。発光係数を決定するための種々の選択肢が存在する。
【0018】
1つの選択肢は、景観のタイプに関する詳細な情報を含む、観測された領域のマップによるものである(CORINEは欧州のためのそのようなマップであり、約2年毎に更新される)。景観のタイプが既知である場合、いわゆるスペクトルライブラリ(Gillespie et al. 1998)から関連する発光係数(または、密接に関連する反射係数)を読み出して、これらを関連付けることができる。代替として、発光係数および温度は、複数のスペクトル帯(少なくとも3つ)を使用して区分され得る。植物で覆われている領域に対しては、発光係数は、頻繁に正規化差植生指数(NDVI)(Valor&Caselles 1996)によっても推定される。
【0019】
TSPの使用は、分解能の適度な増大(およそ10の倍数)を伴う相対的に正確な結果と、約2K~3Kの平均LST誤差(二乗平均平方根誤差、RMSE)を伴う好ましいデータ可用性をもたらし得る。より少ないクラスとサブコンポーネントが選択されるほど、結果はより正確である。しかし、メテオサットデータへの実際の適用の場合、分解能の増大(ダウンサンプリング)の倍数は、用途に応じて約40~100であり、多数のクラスが粗い画素内に存在する(SEVIRIの画素サイズは最小9.6km、中央ヨーロッパ上空で約15km)。最良の場合、平均誤差は約5Kであるが、20K以上逸脱する個々の外れ値の可能性を伴う。
【0020】
代替として、スペクトル分解(温度分解、TUM)によって不規則に形成されたサブピクセル構成要素を推定することが試みられる。この方法では、例えば、複数の熱バンドが同時に解析され、出力データの分解能の増大を達成する。代替として、領域の空間分解能を向上させるように、更なる、同期して記録された熱バンドにおける同じ領域、異なる視角、または異なる分解能の年代順の画像シーケンスを使用することもできる。しかし、複数の視角から領域を記録する衛星センサはほとんど存在せず、多重バンドが使用されるとき必要な発光係数を決定するのは困難であり、表面パラメータが時間とともに可変であるときに年代順に連続をパラメータ化するのは困難である。
【0021】
対照的に、高空間分解能を有し、より低価格の小型衛星は、高い放射測定精度を有する画像を記録することができない。従って、ピコサットまたはナノサットなどの、より小型の衛星プラットフォームが使用されるとき、高空間分解能熱データを作成するための方法は、通常、既知の温度を有する参照物体を合わせた、高空間分解能IR画像の校正に基づく。IR画像内で参照物体を識別することによって、これは適切に校正され得る。代替として、第2のセンサが使用され、画像セクションの正確な温度情報を提供する。加えて、冷却式検出器が小型衛星で使用されるが、これは通常、数ケルビン未満の精度で温度を決定するのに十分でない。
【0022】
従って、高空間分解能および高い放射測定精度で熱画像を作成するための、および、高い放射測定精度を有する種々の高空間分解能熱画像から成る高時間分解能を有する時系列を作成するための、簡単かつ費用効果の高い解決法に対する必要性が存在する。
【0023】
本特許出願は、独立請求項に従って本目的を達成する。加えて、有利な改良が従属請求項および本明細書で説明される。
【0024】
従って、提供されている解決法は、地球の表面の高空間分解能ヒートマップを、同時に高い放射測定精度を有して作成するための、小型衛星の使用を含む。導かれる原則は、以下の組合せに基づく:1)高い絶対測定精度を有するが低い空間分解能を有する、衛星によって記録された熱データであって、2)第2の衛星プラットフォームから時間的および空間的に共登録される方法で、すなわち、時間および同じ領域という点で同期して記録され、低い測定精度を有するが、より著しく高い空間分解能を有する熱データ。
【0025】
測定量は、例えば、物理的放射輝度(従って、放射温度)と関連付けられ得る光センサのグレー値、温度と直接関連付けされ得る電気抵抗もしくは電圧、または温度の非接触測定のために使用される更なる物理的測定変数である。
【0026】
本明細書で説明されている方法および装置は、両方の測定の利点を併せ持ち、従って、高い温度精度と高空間分解能の両方をもたらす。それによって、衛星がサポートするLSTの空間分解のための慣習的方法によって生じる不確実性は、少なくとも大部分は、回避され得る。加えて、高空間分解能ヒートマップの時系列を作成するための方法および説明されている方法を実施するためのコンピュータプログラム製品が説明される。
【0027】
説明されている方法は領域のヒートマップを決定するよう、好ましくは例えば高い温度精度などの高い測定精度を有する高空間分解能ヒートマップを決定するよう設計されている。
【0028】
方法は第1の熱画像を受信する段階と、第2の熱画像を受信する段階とを備え、熱画像は異なるプラットフォームによって提供され、従って異なる特性を有する。
【0029】
熱画像は、領域に関する物理単位のグラフィック表示であり、放射輝度(W/msr)または温度(K)などの様々な物理単位を表すことができる。
【0030】
第1の熱画像は、第1の衛星の記録装置によって記録され、高い放射測定精度を有するが、低い空間分解能を有する。第1の熱画像は領域を含んでいる第1の景観の記録された熱放射を示し、第1の熱画像は領域と空間的に関連している画素を含み、第1の熱画像は各々の測定された第1の温度値、放射輝度、または他の放射測定された変数の値を、画素毎に領域と関連付ける。
【0031】
第2の熱画像は、第2の衛星、または、代替として、ドローン、気球、もしくは他の有人または無人航空機の記録装置によって記録され、第1の熱画像と比較して、より低い放射測定精度を有するが、より高い空間分解能を有する。第2の熱画像は領域を含んでいる第2の景観の記録された熱放射を示し、第2の熱画像は領域と空間的に関連している画素を含み、第2の熱画像は各々の測定された第2の温度値を、画素毎に領域と関連付ける。
【0032】
それに対してヒートマップが決定される「領域」とは、例えば、単一の建造物もしくは田畑などの景観の小さな一部分、または、例えば町、地区、もしくは都市全体などの熱画像に示される景観のより大きな部分の、両方であり得る。従って、「領域」は、少なくとも第2の熱画像の種々の画素に亘り得る。
【0033】
異なる値が、2つの熱画像の個々の画素とそれぞれの場合において関連付けられ得る。加えて、第2の熱画像の空間分解能は第1の熱画像の空間分解能より高く、その結果、それぞれの場合において、第2の熱画像の複数の画素が第1の熱画像の1つの画素と空間的に関連付けられる。
【0034】
第1の熱画像および第2の熱画像は、更に、同期して、または、好ましくは数分、例えば10分という設定された制限を下回る時間差がほとんどなく、記録された。時間に関する許容度は、領域の温度または放射線放出特性が著しく変化する特性時限によって提供される。この時限は、気象状況などの一般的な条件および意図された用途の関数として異なり得る。
【0035】
第1の熱画像の高い放射測定精度、従って温度精度、またはより一般的な用語では測定精度は、例えば、第1の衛星の記録装置に起因し、第1の衛星は好ましくは大型衛星、例えば気象衛星であり、かつ、例えば特別に温度制御された黒体またはセンサを使用するなど、複雑な校正技術を備えている。高い測定精度、例えば温度精度を有する画像を記録できる衛星は、先行技術から周知である。しかし、必要な校正技術は、ピコサット、ナノサット、またはマイクロサットなどの小型衛星にとって非常に高コストで大型すぎる。第1の衛星は静止衛星であり得るが、静止衛星は更に、記録された熱画像の高い時間的反復率を可能にする。しかし、静止気象衛星は、地球からの大きな距離のため、高空間分解能を有する画像を記録できない。例えば、第1の熱画像の空間分解能は、画素毎1~数平方キロメートルの範囲である。
【0036】
代替として、第1の衛星は、例えばランドサット衛星で知られているように、低い地球軌道にある大型衛星であり得る。そのような衛星は、同様に校正技術によって高い放射測定精度を有する熱画像を記録するように構成されるが、静止衛星より著しく良好な空間分解能を可能にする。しかし、同時に、空間分解能は、多くの用途にとってまだ改善の余地もある。加えて、そのような大型衛星は、低い地球軌道にあると、数日から数週間の間隔で地球の表面の同じ部分を記録できるのみであり、それにより希望する時点で記録すること、もしくは複数回の記録の時系列を準備することができない。または、これは、非常に低い時間分解能で、もしくは、いくつかのそのような衛星を結合することによってのみ、可能である。しかし、大型衛星は非常に高コストであるので、向上した時間的精度を達成するのに必要な、低い地球軌道にある(地球から2000km未満の距離にある)複数の大型衛星を使用することは、大きな金銭的支出を必要とする。
【0037】
第2の熱画像は、最大約1kgのピコサット、最大約10~15kgのナノサット、または最大約100kgのマイクロサットなどの、1000kgより著しく少ない、または500kg未満の、地球のより近くで周回している小型衛星によって記録され得る。地球に近いため、より高い空間分解能が可能となり得る。そのような衛星は、地球の表面から通常300km~1000kmの間の距離で、例えば、地球の表面から500km~800kmの間の距離で、低い地球軌道で周回する。一般的に、より小型の衛星およびより短い実用寿命を有する衛星は、より大型の衛星および/またはより長い実用寿命を有する衛星より、地球により近くで周回する。しかし、技術的な選択肢、および搭載される校正技術などの複雑な技術のためのスペースは、数桁低価格である小型衛星の場合、限られている(2018年の時点で、静止衛星のコストは約10億ユーロの範囲であるが、ナノサットのコストは約100万ユーロから1000万ユーロの間である)。その結果、小型衛星によって測定される熱画像は、温度または放射輝度などの実際の測定変数から著しく逸脱する場合がある。逸脱は、例えば、記録のために使用される赤外線センサの温度変動のため、生じ得る。小型衛星は気象衛星より著しく地球近くで周回するため、小型衛星は、例えば、100m未満の、好ましくは50m未満、30mから50mの間、または30m未満の個々の画素のエッジ長のより著しく高い分解能を有する熱画像を記録できる。記録された画像を後処理するときに、例えば複数の記録された画像を使用または重畳することによって、更により高い空間分解能、例えば20m未満または10m未満も可能である。その記録装置が第2の熱画像を記録するために使用される第2の衛星は、一般的に低い地球軌道にあり、特に第1の衛星より低い地球軌道にあり、それによって、単一の衛星は、例えば領域の画像に対し、例えば、約100mの比較的高い分解能で、少なくとも数時間もしくは数日、または2~4週間のより低い再訪期間を可能にするのみである。再訪期間は、分解能の関数とみなされ得る。高空間分解能を有する画像が記録されるとき、限られた検出器サイズのため必然的に小さい領域が記録される。従って、この領域が再びカバーされるまで、比較的長い時間がかかる(地球の表面の全体カバレッジを犠牲にして特定の領域上空がより頻繁に通過されるように、軌道が正確に設定されなかった限り)。従って、再訪時間は検出器の視野の関数であり、従って、分解能に直接結合することができる。
【0038】
ヒートマップを決定するための方法は更に、領域と空間的に関連している第2の熱画像の第1の画素群の、温度オフセットなどの測定された可変オフセットを決定する段階であって、第1の画素群は複数の画素を含む、決定する段階を備える。上述の通り、第2の熱画像の絶対測定精度、例えば温度精度は低く、例えば測定変数が温度である場合、数度、例えば2Kを超える、またはより頻繁には5Kを超える、または10K~20Kを超える程度にさえ、実値から逸脱し得る。しかし、第2の熱画像の相対的な測定値、例えば相対的な温度値は、特に、隣接する画素の、または、互いに近接して、例えば互いに数画素以内に位置する画素の、相対的な測定値は十分に正確であると仮定され得る。
【0039】
第1の画素群の測定変数平均値、例えば温度平均値を、第1の熱画像の基準画素の同じ測定変数の値と比較することによって、第1の画素群の測定変数オフセットを決定することができる。例えば、測定変数オフセットの決定の間、第1の熱画像に関して隣接している画素(すなわち、少なくとも1つの第1の画素のうち隣接している画素)および第2の熱画像に関して隣接している画素(すなわち、第1の画素群のうち隣接している画素)の両方を考慮に入れることができる。第1の熱画像の「より粗い」基準画素は、この場合、線形結合として、または第1の画素群の加重和として表すことができる。第1の画素群の画素は、その面積の割合の加重を用いた平均値の計算の間、考慮に入れられる。このようにして、異なるサイズの画素を考慮に入れることも可能である。測定量は、画素毎にスカラー測定変数であり得るし、または、同時に多値を検出し、その結果、次に個々の測定値をベクトル形式で利用することもできる。
【0040】
方法は更に、第1の画素群の画素の第2の測定値および測定値オフセットに基づいて、領域と関連している第1の画素群の画素の修正された絶対測定値を決定する段階を含む。
【0041】
第1の画素群の画素の修正された絶対測定値は、好ましくは、第2の測定値および予め決定された測定値オフセットを追加することによって決定される。
【0042】
方法は加えて、修正された絶対測定値に基づいて高い放射測定精度を有する高空間分解能ヒートマップを決定するまたは生成するための段階を含む。
【0043】
例えば、測定変数は、例えばケルビンで測定された温度である。この場合、次に、2つの熱画像の間の温度オフセットが決定される。しかし、温度オフセットは、例えば、平方メートル毎におよびステラジアン毎にワットで測定された放射線変数、例えば、オームで測定された電気抵抗、または、例えば、ボルトで測定された電圧でもあり得る。
【0044】
従って、異なる特性を有する2つの記録された熱画像を結合することによって、領域の著しく向上したヒートマップを作成することができる。
【0045】
特に、地表の放射温度は、例えば、特に赤外線による方法で決定される。加えて、地表温度は、用途に応じて、特定の表面のタイプの関数として、特定の表面の放射率を用いて、決定されたヒートマップにより提供される放射温度から正確に決定され得る。
【0046】
ここで、赤外線センサは、第1の熱画像および第2の熱画像の測定された放射輝度の比較のために、各々の、好ましくは一致した面に統合された放射強度すなわち放射輝度を初めに測定することに注意しなければならない。放射温度は、特定の面積に対して平均化され得、次に測定値から決定され得る。
【0047】
この目的のために、画素は、例えば、赤外領域において一定量のエネルギーで照射され、従って特定の照度を有する。考慮される範囲において通常ほぼ線形である既知の画素応答(例えば、処理を開始する前に実験室において測定された)から、ここで、例えば平滑化関数またはルックアップテーブルによって画素輝度から物理単位を推定することができる。本件の場合、これはスペクトル放射輝度(W/(m sr μm))である。従って、(放射)温度は、プランクの放射則に直接起因する。次に、表面温度がこれおよび発光係数から決定され得る。
【0048】
説明されている方法によって生成される熱画像の高空間分解能および高い放射測定精度のため、先行技術から周知である方法と比較して、労力を著しく減らして表面温度を決定できる。
【0049】
好ましくは、第1の熱画像のちょうど1つの画素は、第2の熱画像の第1の画素群と空間的に関連している。この場合、第2の熱画像の第1の画素群の測定値オフセットは、好ましくは、第2の熱画像の第1の画素群と空間的に関連している第1の熱画像の画素の第1の測定値と比較した、第2の熱画像の第1の画素群の相対的な測定値の、加重された可能性のある和によって決定される。
【0050】
この算出は、第2の熱画像の第1の画素群の画素の測定値の平均値が、高い測定精度で測定された第1の熱画像の第1の画素の値の結果として既知であるという仮定の下に実施される。次に、測定値オフセットΔTを得ることが可能である。このオフセットは、一方で、第1の熱画像の第1の画素の測定値の平均値の、他方で、第2の熱画像の第1の画素群の画素の測定値と、比較した差異によって与えられる。
【数5】
次式が適用される:
【数6】
(x、y)は画素(x,y)の第1の熱画像の記録された測定変数であり、T(i,j)は第1の画素群内に位置する全ての画素(i,j)中の第2の熱画像の測定の記録された測定変数であり、w(i,j)は第1の画素と空間的に関連した全表面に関連する画素(i,j)の面積の特定の割合を表す。その結果、画素(i,j)が第1の画素の全表面に完全に含まれるとき、
【数7】
が適用される。
【0051】
温度が測定量として選択される場合、数十ケルビン、例えば20Kまたは30Kの最大記録温度と最小記録温度との間の差異を用いて、通常単一の熱画像上で見いだされるため、この線形方法は地球上で見いだされる300K付近の平均温度範囲に良好な近似で適用される。
【0052】
代わりに放射輝度が測定量として選択される場合、数学的定式化はエネルギー保存の原理に対応し、これは正確に適用される。
【0053】
更に好ましくは、第1の画素群の画素の修正された絶対温度値が算出されたあと、方法が地表モデルを使用して第1の画素群の画素の後処理段階を任意選択的に含むことが可能である。そのような地表モデルは、例えば、特定の表面に関連する発光係数を使用して、放射温度を示す修正された絶対温度値から正確な表面温度を算出するために使用され得る。
【0054】
本出願は更に、領域のヒートマップを決定するための装置を含み、その装置は少なくとも1つの受信部と少なくとも1つの決定部とを含む。
【0055】
受信部は領域を含んでいる第1の景観の第1の熱画像を受信するように構成され、第1の熱画像は第1の衛星の記録装置によって記録され、第1の熱画像は領域と空間的に関連している画素を含み、第1の熱画像は、画素毎に、各々の第1の記録された測定値を領域に割り当てる。
【0056】
少なくとも1つの受信部は更に、領域を含んでいる第2の景観の第2の熱画像を受信するように構成され、第2の熱画像は第2の衛星の記録装置によって記録され、第2の熱画像は領域と空間的に関連している画素を含み、第2の熱画像は、画素毎に、第2の記録された測定値を領域に割り当てる。
【0057】
好ましくは数分、例えば30分未満、または10分未満という設定された制限を下回るわずかな時間差のみが、第1の熱画像の記録と第2の熱画像の記録との間に存在する。
【0058】
方法に関してすでに説明されたように、加えて、第1の熱画像の放射測定精度は、第2の熱画像の放射測定精度より高く、第2の熱画像の空間分解能は第1の熱画像の空間分解能より高い。
【0059】
領域のヒートマップを決定するための装置の決定部は、領域と空間的に関連している第2の熱画像の第1の画素群であって、複数の画素を含む第1の画素群の測定値オフセットを、第1の熱画像の少なくとも1つの第1の画素の第1の記録された測定値と比較した、第1の画素群の画素の相対的な測定値の和または線形結合によって決定するように構成され、第1の熱画像の少なくとも1つの第1の画素は、第2の熱画像の第1の画素群と少なくとも部分的に空間的に関連している。
【0060】
測定量が温度値である場合、温度オフセットの決定は、例えば、式(1)および(2)に基づいて実施され得る。
【0061】
放射データが集められるとき、オフセットの確認の前または後に放射温度が選択的に算出され得ることに注意しなければならない。従って、式(1)および(2)にて説明されたように、センサデータを温度値に変換し、次に第1の熱画像および第2の熱画像の温度値を比較することによって温度オフセットを決定することが可能である。しかし、代替として、測定値オフセットは、別の測定されたまたは算出された変数に基づいて達成されることもでき、温度値への変換はその後で実施され得る。
【0062】
決定部は更に、第1の画素群の画素の第2の記録された測定値および測定値オフセットに基づいて、第1の画素群の画素の修正された絶対測定値を決定するように構成される。
【0063】
以下、ヒートマップを決定するための方法および装置のための、任意の有利な実施形態を説明する。
【0064】
好ましくは、第1の熱画像および第2の熱画像の両方が赤外線画像であり、それらの画像は各々、第1の衛星および第2の衛星の赤外線センサによって記録されている。
【0065】
地球上で生じる大きな表面積温度の範囲、例えば-40℃~60℃の通常のLSTに対し、例えば8μm~14μmの赤外線波、およびしばしば10.8μm~12μmの赤外線さえ使用される。例えば3μm~5μmの間の、より短い波長の赤外領域は、山火事に対して重要である。従って、大部分の気象衛星は、0.5μm~13μmの範囲をカバーする多重バンドを有する。従って、記録された測定値は、ベクトル形式で存在し得る。
【0066】
第1の熱画像の空間分解能は、一般的に、少なくとも1桁または2桁もしくは3桁さえも、第2の熱画像の空間分解能より著しく粗い。例えば、第1の熱画像の画素は少なくとも約1kmのエッジ長を有することができ、その結果、第1の熱画像の場合、1つの画素によってカバーされる面積は約1kmの範囲、または1kmを超えるもしくは3kmさえ超える範囲である。対照的に、第2の熱画像の1つの画素のエッジ長は、好ましくは100m未満、または、70m未満、もしくは50m未満でさえある。第2の熱画像の1つの画素のエッジ長は、理想的には、わずか10mの範囲であり、その結果、第2の熱画像の1つの画素によってマッピングされる面積は、わずか数100mである。
【0067】
しかし、代替として、本明細で説明されている方法は、第1の熱画像の空間分解能が1桁未満、例えばわずか1の倍数または2もしくは3の倍数だけ第2の熱画像の空間分解能より粗いときに、用いられることもできる。方法は、第1の熱画像の空間分解能より、第2の熱画像の空間分解能がより高いか、またはより粗くない、いかなる画像ペアにも適用可能である。
【0068】
加えて、第1の熱画像の放射測定精度は、第2の熱画像の放射測定精度より高い。熱画像のこの特性は、例えば黒体または特別な冷却式もしくは温度制御式センサの使用により、理想的には画素当たり、または、記録された熱画像全体の平均で、好ましくは2K未満の、または、特に好ましくは1K未満でさえもある高い放射測定精度を確保する、対応する修正技術を含む第1の衛星の記録装置によって、好ましくは達成される。精度への確保を増大させるように、衛星の記録装置は、好ましくは記録された画素当たりの、記録装置のセンサによって推定される測定精度を示すデータを更に提供することもできる。第2の熱画像の放射測定精度は、例えば、第2の熱画像が、対応する正確な校正技術を備えていない、より費用効果の高い小型衛星または他の有人もしくは無人航空機の記録装置によって記録されている結果、より低い。
【0069】
本出願は、例えば、1時間、1日以内、または更に1週間、1ヶ月、もしくは1年以内などの時限に亘って領域内で測定量の変化を決定するための方法を更に備える。可能な限り正確に時間に亘る領域の測定量の変化を決定することによって、例えば都市ヒートアイランド現象が検出でき、その原因が解析できる。そのような測定量時系列は、都市計画、例えば緑地、種々の屋根のタイプ、または水の広がりが都市の気候に及ぼす効果に対し、調査結果も提供する。
【0070】
領域内の測定量の変化を決定するための上述の方法は、少なくとも2つ、および好ましくは10より多くまたは100より多くの複数の、異なる時点における可能な限り正確である領域のヒートマップを決定する段階をまず備え、2つのヒートマップは上述の方法に従って決定された。
【0071】
特に、第1のヒートマップは、領域の第1の熱画像および第2の受信した熱画像を使用して決定され、第1の熱画像および第2の熱画像は、第1の熱画像および第2の熱画像から、第1の時点で同期して、またはほぼ同期して記録され、第1の熱画像はより高い放射測定精度を有し、第2の熱画像はより高い空間分解能を有する。
【0072】
更に、第2のヒートマップは、領域の第3のおよび第4の受信した熱画像を使用して決定され、第3のおよび第4の熱画像は、第3のおよび第4の熱画像から、第2の時点で同期して、またはほぼ同期して記録され、第3の熱画像はより高い放射測定精度を有し、第4の熱画像はより高い空間分解能を有する。
【0073】
次に、領域の第1のヒートマップおよび第2のヒートマップから領域内の測定量の時系列を作成することができる。
【0074】
任意には、このようにして領域の複数の時点のヒートマップを決定し、領域の複数のヒートマップに基づいて領域内の測定量の時系列を作成することができる。
【0075】
第1の時点および第2の時点は、領域内の測定量の時系列の高時間分解能を確実にするように、例えば、1日以内に測定量の変化を検出するように、好ましくは設定された時限以内、例えば、1日以内、または数時間以内、または1時間もしくは30分以内でさえある。
【0076】
そのような高い時間分解能を達成するように、例えば、第1の熱画像および第3の熱画像が各々、高い放射測定精度を確実にするための対応する校正技術を含む、例えば静止気象衛星などの大型衛星プラットフォームによって記録されることが可能である。静止衛星によって記録される第1の熱画像および第3の熱画像を使用するとき、好ましくは、第1の熱画像および第3の熱画像の両方が同じ静止衛星の記録装置によって記録される。代替として、第1の熱画像および第3の熱画像は、同様のカバレッジを有する異なる静止衛星から生じることもできる。
【0077】
更に、代替として、第1の熱画像および第3の熱画像が、低い地球軌道にあり、大型であるが静止していない異なる衛星の記録装置によって記録されることも可能であり、その場合、記録装置は高い測定精度のための校正技術を各々備えているべきである。第1の熱画像および第3の熱画像が異なる非静止衛星プラットフォームから生じるとき、このことが可能なのは、これらの2つの衛星プラットフォームが予め規定された時限内に領域に亘って位置した場合のみである。ランドサットなどの非静止の大型衛星は、予め規定された領域に関して数日から数週間の再訪時間を有するので、そのような画像は、現在利用できる衛星基盤を使用して異なる非静止衛星によって、予め規定された時間枠内で、特に好機を見計らえば可能であるが、例えば10を超えたまたは100を超えた多数の画像ペアを含む選択された領域に亘る連続した時系列を作成するのには適しておらず、それぞれの場合において2つの連続的に記録された画像ペアのための時間間隔は、数分または数時間である。
【0078】
1つの時系列、および画像ペアの許容可能な時間間隔を作成するのにいくつの画像ペアが必要とされるかは、一般的に、用途に高く依存している。例えば、温度傾向が1年に亘って観測されるいくつかの用途に対しては、例えば、1日当たり1つまたは2つの画像で十分でありえるが、例えば1日に亘る熱傾向を調査する他の用途にとっては、ほんの数分、例えば10分未満または30分未満の時間分解能が望ましい。10を超えるまたは100を超える画像ペアから成る、より長い時系列を作成するように、より高い放射測定精度を有し、各々同期して記録された画像ペアの第1の熱画像が常に、または少なくともほとんどの場合、同じ静止衛星によって記録されているとき有用である。同時に高空間分解能を達成するように、第2の熱画像と更には第4の熱画像が各々、小型衛星または他の有人もしくは無人航空機の記録装置によって記録され、これは、地球に近接しているため、記録された熱画像の高空間分解能を提供できる。
【0079】
上述したこれらの小型衛星は、一般的に、低軌道で地球を周回する。高時間分解能を達成するように、好ましくは、ピコサット、ナノサット、またはマイクロサットなどの複数の異なる小型衛星の熱画像が使用されることができ、その結果、第2の熱画像は第1の小型衛星の記録装置によって記録されたが、一方、第4の熱画像は第2の小型衛星の記録装置によって記録された。キューブサットなどの小型衛星は、大型の静止衛星より製造するのに費用効果が高いので、領域内で測定量の高時間分解能を有する時系列を生成するために、種々の小型衛星を使用することができる。
【0080】
本明細書は更に、熱画像を算出するためのコンピュータプログラム製品を含み、コンピュータプログラム製品は、コンピュータ上で実行されるとき、上述の方法を実施する命令を含む。命令は選択的に、領域の、高空間分解され、また正確に測定された熱画像を決定するための命令であり得、または、命令は領域内の測定量の時系列を決定するための命令であり得る。いずれの場合においても、命令は異なる衛星プラットフォームの熱画像に基づき、コンピュータの対応する受信部によって受信される。
【0081】
コンピュータは、固定したPCまたはモバイルコンピュータであり得る。コンピュータは分散システムまたはクラウドベースのサービスの一部をなすこともでき、プログラム命令を実行するのに適している。
【0082】
ヒートマップを作成するための方法または装置に関する上述の特徴は更に、方法、装置、またはコンピュータプログラム製品に関しても使用されることができる。
【0083】
以下に、更に有利な実施形態が図に基づいて説明される。この場合、説明を容易にするため、温度を測定量として選択した。しかし、代替として、測定量は、使用された衛星のセンサによって検出された、または検出された測定量から算出された放射輝度または他のデータなどの、他の放射測定データを含むこともできる。
【図面の簡単な説明】
【0084】
図1】領域のヒートマップを決定するための、装置の概略図を示す。
【0085】
図2】領域のヒートマップを決定するための、一連の方法の概略図を示す。
【0086】
図3A】第1の衛星Aによって記録された、地球の表面の熱画像の概略図を示す。
【0087】
図3B図3Bと同期して第2の衛星Bによって記録された、地球の表面の熱画像の概略図を示す。
【0088】
図4A】衛星Aによって記録された図3Aの熱画像の、単一の画素の概略図を示す。
【0089】
図4B図4Aに示されるのと同じ領域の、衛星Bの測定の概略図を示す。
【0090】
図4C図4Bおよび決定された温度オフセットに基づく、決定されたヒートマップの概略図を示す
【発明を実施するための形態】
【0091】
図1は、領域のヒートマップを決定するための装置を示す。装置101は受信部102を含み、受信部102は地球106を周回している異なる衛星104および105の信号を受信できる。衛星104、105の信号は、通常、間接的、すなわち、衛星から直接的にではなく、中継装置107を介して受信され、中継装置107は衛星104、105の何れかまたは両方の信号を受信し、次にそれらの信号を転送するかまたはそれらをダウンロードに利用できるようにする。受信部は特に、衛星104および105の記録装置によって記録された地球の表面の熱画像データを受信する。数メーターから数十メーターの範囲の高空間分解能、および、高い温度精度などの高い放射測定精度を有する、領域の詳細なヒートマップを作成するように、受信装置102は、初めに第1の衛星104の第1の熱画像および第2の衛星105の第2の熱画像を受信するように構成される。
【0092】
ここで、第1の衛星104は、例えば静止気象衛星などの高い温度精度を有している大型衛星、またはランドサットなどの低い地球軌道で周回している大型衛星である。好ましくは2K未満の温度精度を達成するように、第1の衛星104は、組み込まれた修正技術を備える。しかし、静止している第1の衛星の場合、この第1の衛星104は、地球からの大きな距離のため、比較的粗い空間分解能のみを有し、その結果、記録された画素は数平方キロメートルのサイズを有する。代替として、第1の衛星104としてランドサットなどの大きな衛星を低い地球軌道で使用する場合、空間分解能は上述の静止衛星を超えてすでに向上しているが、第2の衛星プラットフォームの空間的により高く分解している熱画像を考慮に入れると、更なる向上の可能性がある。例えば、ランドサット8号は、現在100mの分解能を有する。補助衛星として小型衛星を使用することによって、この分解能は、60m未満まで著しく向上し得る。データの後処理時には、より低い分解能、例えば30m未満さえ可能である。
【0093】
第2の衛星105は、小型衛星つまりキューブサットであり、第1の衛星より高い空間分解能を有するが、第1の衛星と比較して低減した測定精度を有する。
【0094】
説明されている装置の受信部102は、2つの衛星104および105の空間的に共登録された景観の、時間的におよび同期して記録された第1の熱画像および第2の熱画像を受信する、すなわち、地球の表面の記録された部分的な領域が少なくとも部分的に重複する。ここで、両方の熱画像において表される領域の正確なヒートマップを作成するように、装置101は更に、決定部103を含む。
【0095】
決定部103は、第1の衛星の第1の熱画像の画素を、第2の衛星の第2の熱画像の画素群と空間的に関連付け、第2の熱画像の画素群の測定変数オフセットまたは温度オフセットを算出するように構成される。この算出は、第2の熱画像の画素の温度の逸脱または測定変数の逸脱が少なくとも局所的に一定である、すなわち、画素の相違は、隣接する画素の相違と異ならない、またはほんのわずか異なるのみであるという仮定の下に実施される。更に、第1の熱画像の画素の測定変数(高精度で測定された)または温度が、第2の熱画像の関連する画素の(加重された)和または線形結合として表され得るという仮定がなされている。このようにして、第2の熱画像の画素群に対する測定変数オフセットは、第2の熱画像群の画素の相対的な測定変数の差異および第1の熱画像の関連する画素の記録された測定変数から決定され得る。決定部103は、更に、第2の熱画像の測定変数オフセットおよび記録された測定変数から、領域の正確なヒートマップを作成するように構成される。
【0096】
図2は、領域の正確なヒートマップを決定するための方法を概略的に示し、方法は、例えば、方法を実施するための対応する命令を含む上述のシステムによってまたはコンピュータプログラム製品によって、実施されることができる。
【0097】
本明細書で説明されている、領域の正確なヒートマップを決定するための方法は、次の段階を備える:
【0098】
S201:第1の衛星の記録装置によって記録された、領域を含んでいる第1の景観の第1の熱画像を受信する段階であって、第1の熱画像は領域と空間的に関連している画素を含み、第1の熱画像は、画素毎に、各々の第1の記録された測定値を領域に割り当てる段階。
【0099】
S202:第2の衛星の記録装置によって記録された、領域を含んでいる第2の景観の第2の熱画像を受信する段階であって、第2の熱画像は領域と空間的に関連している画素を含み、第2の熱画像は、画素毎に、それぞれの場合において第2の記録された測定値を領域に割り当てる段階。
【0100】
段階S201およびS202がいかなる任意の順序でも、または、同時にも、実施され得ることに注意しなければならない。
【0101】
受信した第1の熱画像および第2の熱画像は、加えて、方法を実施するための以下の要件を満たさなければならない:好ましくは10分未満、または5分未満でさえである、設定された制限を下回る時間的オフセットのみが、第1の衛星画像が記録される時間と第2の衛星画像が記録される時間との間に存在し得る。これは、2つの熱画像が記録された時間の間の時間差がより大きかった場合、2つの画像で与えられる熱測定値の相関が可能でないか、または、困難を伴ってのみ可能であるからである。時間的制限は、この一般的な条件の関数として選択され得る。従って、2つの画像が記録される時間の間のより長い時間差は、状況によっては、安定した気象状況の下では、変わりつつある気象条件の下よりは許容され得る。
【0102】
更に、第1の熱画像の放射測定精度、すなわち、記録された測定変数の精度は、第2の熱画像の放射測定精度より高いが、第2の熱画像の空間分解能は第1の熱画像の空間分解能より高い。
【0103】
2つの熱画像を受信すると、以下の更なる方法段階が実施され得る:
【0104】
S203:第2の熱画像の第1の画素群と少なくとも部分的に空間的に関連している、第1の熱画像の少なくとも1つの画素の第1の記録された測定値と比較した、第2の熱画像の第1の画素群の画素の相対的な測定値の加重和によって、領域と空間的に関連している第2の熱画像の第1の画素群であって、複数の画素を含む第1の画素群の測定値オフセットを決定する段階。例えば、第1の熱画像の第1の領域の1つの測定値または複数の測定値に関して、例えば差異の形でオフセットを決定するように、第1の画素群の測定値の平均値はこの段階で決定される。
【0105】
S204:第1の画素群の画素の第2の測定値および測定値オフセットに基づいて、領域と関連している第1の画素群の画素の修正された絶対測定値を決定する段階。
【0106】
S205:修正された絶対測定値に基づいて、領域の正確なヒートマップを作成する段階。
【0107】
高い測定精度を有し空間的に高く分解しているヒートマップを決定するための上述の方法は更に、図3A、3B、4A、4B、および4Cに基づいて説明される。ここで導かれる方法は、大型衛星プラットフォームの放射測定精度を、第2の衛星プラットフォーム、例えば、小型衛星つまりキューブサットの空間分解能と結合している。方法は、画素の放射強度(放射輝度)がそのサブピクセル構成要素の線形結合(線形混合モデル)に起因するという仮定に基づいている。理想的には、非常に高い放射測定精度を有し(センチネル3号)、一方で高時間分解能も提供する(メテオサット第2世代および第3世代)衛星プラットフォームが、大型衛星プラットフォームとして使用される。
【0108】
追加の、より小型の衛星プラットフォームに対する唯一の必要条件は、それが同期して記録できること、すなわち、同時に同じ領域のIR画像を記録するということである。図3Aおよび3Bでは、記録された画像が、両方の衛星に対し概略的に表されているが、この場合、温度が関連した測定変数として選択された。図中、衛星A(図3A)は、高い放射測定精度を有するプラットフォームであり、衛星B(図3B)は高空間分解能を有するプラットフォームである。
【0109】
描画されているグリッドは、衛星Bの画像のどの領域が、衛星Aのどの画素と関連付けられるかを示している。衛星Bのデータは、放射温度の測定の間、未知の温度オフセットΔTを有するが、このことだけが衛星Bの正確な絶対温度決定を可能にするわけではない。例えば、隣接する画素の間の相対的な温度の差異が、衛星Bによって正しく測定される(器具の事前の校正によって確実にされる)。
【0110】
衛星Aによって記録される画像の結果、衛星Bの画像からの描写された各グリッドセルの平均値が分かる。このようにして、まだ未知である温度オフセットΔTを推定することができる。これは、2つの画像の各セルの平均値の差異によって与えられる。
【0111】
【数8】
次式が適用される:
【数9】
【0112】
(x、y)はセル(x,y)における衛星Aの測定温度であり、T(i,j)は、衛星Aのこのセル(x,y)内に位置する全ての画素(i,j)における衛星Bの温度測定の測定温度であり、w(i,j)という面積の各々の割合を有する。
【0113】
図4A、4B、および4Cでは、単一のセルの測定方法が概略的に示されている。衛星B(図4B)の示された全ての画素の平均値は、衛星A(図4A)の対応する画素の値にまだ対応していない。差異に起因する温度オフセットを減算することによって、衛星Bの画像のセル全体が校正され、ここで衛星A(図4C)によって記録されたのと同じ平均値を有する。
【0114】
既存の方法に勝るいくつかの利点がある:導かれた方法は、更なるデータソースを用いることなしに、これらが一方で高い放射測定精度であり、他方で高空間分解能という両方の測定の利点を併せ持つ。これによって、数メートルほどの大きさの分解能を達成することができ、これはUHIおよび衛星をベースとした農業の分野における用途にとって特に非常に重要である。
【0115】
衛星Bの高空間分解能のため、実施されなくてはならないダウンサンプリングは全くないか、または非常に限られ、画素当たりの表面クラスの数は高分解能によって著しく減じられる。このことは、決定されたヒートマップによって与えられる放射温度の地表モデルおよび知られる放射率を考慮にいれることによって決定され得る、地表温度の測定の安定性と精度が向上する。
【0116】
加えて、可視画像とIR画像との間の不安定な相関の使用が回避され、表面クラスの不十分な数の選択による温度均一化の影響が著しく緩和される。加えて、衛星センサの地上分解能と補助データの分解能との間の分解能の大きな差による誤差が回避される。
【0117】
この概念のための校正ベンチマークとして機能し得る高い放射測定精度を有する熱データは、すでに存在する。例えば、コペルニクスは、センチネル3号によって、1kmの分解能で<0.2Kの精度を有する温度資料を提供する。これらのデータは、自由かつ公的にコペルニクスプログラムを介してアクセス可能である。メテオサット9号は、例えば、約2Kの温度精度および数分の時間分解能で、9km~15kmの分解能を提供し、その一方で、大きな表面積カバレッジを提供する。
【0118】
加えて、メテオサット9号によるヨーロッパ上空の約10分~15分の、または最大5分の反復率で、2つのデータストリームの時間的および空間的同期を実施することは容易である。
【0119】
従って、この概念は、適切な構成の複数の(小型)衛星を使用した、高い時間的反復率での測定にも適している。このようにして、特定の時限に亘って、例えば1日に亘って領域内の測定変数の変化が解析されおよび/または視覚化されることを可能にする、領域内の測定変数の時系列を作成することが可能である。
【0120】
領域の予め決定されたヒートマップが時系列に結合されるが、時系列の2つの連続したヒートマップの記録時点は、それぞれの場合において設定された時限内である。ヒートマップが記録される時間は、このヒートマップと関連した第1の熱画像および第2の熱画像が記録される時点であり得るし、または、2つの熱画像が2つの衛星によって同期して記録される時間の間のわずかな時間的オフセットの場合、熱画像が記録される2つの時点の中間の時点または2つの時点のペアでもあり得る。設定された時限は用途に応じて異なり得るが、多くの場合、数時間以内、1時間未満、または、約10分の範囲でさえある。従って、多くの場合、複数の連続した画像は、静止衛星によって、または低い地球軌道にある複数の衛星によって、設定された時限内のみで記録され得る。
【0121】
衛星BのIR検出器に関する要件は比較的低く、その結果、この方法は、従来の衛星ミッションより著しく低価格である小型衛星またはキューブサットの使用に適している。このようにして、従来の衛星ミッションに比べてわずかなコストで、既存の利用できる空間分解能を数桁向上させることができる。達成可能な最大空間分解能は、基本形には、衛星の検出器および光学系によってのみ制限される。
【0122】
衛星Bに搭載されている検出器の面倒かつ複雑な絶対校正は、その過程で生じる地表温度の精度の悪化なく、不要となる。方法は、画像中の物体のいかなる追跡または識別も、地上測定も必要としない。
【0123】
ダウンサンプリングの結果として生じる誤差原因を導くことなしの、空間分解能の著しい増大は、例えば、交通状態の局所的な予測(濡れたまたは凍結した道路など)の間、環境研究(氷河上の堆積岩の動き、山火事など)において、農業(蒸発散による植物の健康)において、医薬(過熱の健康リスクなど)において、および、これらに密接に関連する都市計画(建造物のエネルギー効率決定または都市微気候の測定など)の間、多数の新しいまたは向上した用途を可能にする。
【0124】
後者は、都市ヒートアイランド現象および対応する対策の効果を調査するための、特に興味深い用途である。平方キロメートルから建造物または建築用ブロックのサイズまでの分解能の増大は、エネルギー効率、温度傾向、および都市の気候に対する緑地、緑化屋上もしくは反射性の屋根、または水のオープンな広がりによる影響に関し、重要な情報を提供する。これまでは、対応する確認は、切り離された地上測定と合わせて、シミュレートされたモデルの寄せ集め、および、上述のダウンサンプリング方法の1つによって生成されたデータに基づいている。高時間・高空間分解能方法は、今後の都市計画がより健康的かつより環境配慮型になる一助となり得る。
図1
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図4C