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特許7334883置換弁を受け取るための弁形成術用リング
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-21
(45)【発行日】2023-08-29
(54)【発明の名称】置換弁を受け取るための弁形成術用リング
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/24 20060101AFI20230822BHJP
【FI】
A61F2/24
【請求項の数】 7
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021214189
(22)【出願日】2021-12-28
(62)【分割の表示】P 2017564010の分割
【原出願日】2016-06-08
(65)【公開番号】P2022037213
(43)【公開日】2022-03-08
【審査請求日】2021-12-28
(31)【優先権主張番号】62/172,722
(32)【優先日】2015-06-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/241,664
(32)【優先日】2015-10-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500041019
【氏名又は名称】ノースウェスタン ユニバーシティ
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】パトリック エム. マッカーシー
【審査官】細川 翔多
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2013/0331864(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2003/0040793(US,A1)
【文献】国際公開第2012/027500(WO,A2)
【文献】米国特許出願公開第2005/0256569(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0076549(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リング内弁手技のための弁形成術用リングであって、前記弁形成術用リングは、
循環系内に埋め込まれるとヒト血液弁に適合するように構成される形状を有する長いコアであって、前記細長いコアは、リング内弁埋込術の間、前記細長いコアが静置状態から伸展状態に伸展されることを可能にする弾性材料を備え長いコアと、
前記長いコア内の複数の離間されたワイヤであって、それらの間に空間を有し、前記複数の離間されたワイヤは、前記細長いコアの前記静置状態および前記長いコアの前記伸展状態の両方において、前記長いコアに剛性を追加する、複数の離間されたワイヤと、
前記長いコアを被覆するカバーと
を備え、前記細長いコアは、前記静置状態に向かって付勢されていることにより、置換人工弁が前記リング内に埋め込まれると、前記細長いコアの前記弾性材料が、前記置換人工弁に圧搾力をかけ、それによって、弁周囲漏出を防止するようにする、弁形成術用リング。
【請求項2】
前記形状は、完全な円形を備える、請求項1に記載の弁形成術用リング。
【請求項3】
前記形状は、「D」形状を備える、請求項1に記載の弁形成術用リング。
【請求項4】
前記弾性材料は、前記細長いコアの少なくとも1つのテーパ状区分を備える、請求項1に記載の弁形成術用リング。
【請求項5】
前記少なくとも1つのテーパ状区分は、円形、正方形、長方形、コイル形状を含む群から選択された断面を備える、請求項4に記載の弁形成術用リング。
【請求項6】
前記弾性材料は、前記細長いコアの少なくとも1つのアコーディオン状区分を備える、請求項1に記載の弁形成術用リング。
【請求項7】
前記アコーディオン状区分は、前記細長いコアの実質的に全体に沿って延在する、請求項6に記載の弁形成術用リング。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本願は、2015年6月8日に出願された米国仮特許出願第62/172,722号(発明の名称「Annuloplasty Ring for Receiving a Replacement Valve」)および2015年10月14日に出願された米国仮特許出願第62/241,664号(発明の名称「Annuloplasty Ring for Receiving a Replacement Valve」)の利益およびこれらに基づく優先権を主張し、これにより、これらの両方は、これらの全体が参照により本明細書に援用される。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、僧帽弁疾患および三尖弁疾患を含む、心臓弁逆流のための処置に関し、大動脈および肺動脈弁疾患にも適用可能であり得る。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
心臓弁障害の処置のための弁形成術用リングおよびそのようなリングを埋め込む種々の方法が、ここ数年にわたって公知となっており、心臓病の処置における有意な進歩を表している。弁形成術用リングは、患者弁輪に縫合される、クリップ留めされる、または別様に固着され、弁形成術用リングは、拡大または罹患心臓弁の直径を縮小させるために使用され、それによって、弁尖が癒合を確立または再確立することを可能にし、それによって、弁を通した逆流を低減または排除する。
【0004】
しかしながら、一部の患者において、リングが罹患弁を適切に処置するが、弁状態が悪化し続け、したがって、弁置換を余儀なくすることが観察されている。歴史的には、そのような弁置換は、最初に、弁形成術用リングの切除し、その後、新しい弁を埋込むことを含む、別の観血心臓外科手術を要求する。この複数ステッププロセスは、有用であり、多数の患者の命を救い、延命させることが証明されているが、切除および埋込プロセスは、執刀医にとって時間がかかり、困難であり、潜在的に、患者にとっても非常に危険である。例えば、弁および周囲組織の状態が特に罹患している場合、リングの切除は、多くの場合、新しい置換弁をしっかりと取り付けるために好適な組織を見つけることを非常に困難にし得る。
【0005】
観血心臓外科手術におけるリングの切除の必要性は、既存のリングの剛性および/または非弾力性、非応柔性性質から生じる。リングはまた、弁の口を狭窄し、適切にサイズ決定された人工弁がリングの内側に留置されることを不可能にし得る。リングはまた、人工弁を歪曲させ、人工弁内の逆流漏出を生じさせ得る。リングの形状およびサイズは、人工弁に良好に対応しない場合があり、弁周囲逆流と呼ばれる、リングと人工弁との間の逆流漏出につながり得る。たいていのリングは、略D形状であって、殆ど全ての人工弁置換品は、丸形であり、したがって、これらの空間関係は、弁をリングの内側に留置する実践的用途を非常に困難にしている。
【0006】
その結果、罹患弁の初期処置の成功(例えば、弁逆流の処置)と、次いで、後日、患者の弁が悪化し続け、置換を要求する場合に備えて、置換弁を受け取るためのプラットフォームとの両方を提供する、弁形成術用リングのための明瞭な必要性がある。そのような弁形成術用リングは、そのような状況において切除を要求せず、むしろ、以前に埋め込まれた弁形成術用リング内における人工心臓弁の留置および固定を可能にする特性をもたらす。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
(発明の概要)
本発明は、罹患弁の初期処置成功と、本明細書では「リング内弁」または「VIR」手技とも称される、置換弁を受け取るためのプラットフォームの両方を提供する、弁形成術用リングに関する前述の必要性を満たすことを対象とする。本発明は、人工弁の周囲で伸展および変形し、次いで、いったん解放されると、ゴムバンドのように人工弁を圧搾する、弁形成術用リングを提供することによって、これを遂行する。
【0008】
より具体的には、本発明のリングは、循環系内に埋め込まれるとヒト血液弁のための最適周界を確立するように構成される形状を有する、細長いコアを有し、コアが静置状態から伸展状態に伸展されることを可能にする、少なくとも1つの弾性特徴を含み、コアは、上記静置状態に向かって付勢される。リングは、患者自身の弁の性能を最適化するように設計される静置状態において埋め込まれ、リングの弾性性質はまた、リングが血圧力および血流の変化に反応して伸展することを可能にする。これは、リングが天然弁挙動により近似して模倣し、望ましくない組織応力が縫合糸および同等物等のリング固定機構を囲繞する区域に集中することを防止することを可能にする。リングの伸展特性は、人工弁への弁輪の長期癒合を助長する圧搾力を天然弁輪にかけるように、リング内弁埋込術の間、リングが伸展されることを可能にする。
【0009】
弾性リングの圧搾特性は、リングを伸展可能かつ変形可能にし、したがって、埋込式経カテーテル弁(TCV)、「無縫合弁」、または他のプロテーゼ等の人工弁を受け取るために比類なく適している。弾性材の圧搾効果に起因して、リングは、人工弁の周囲でガスケットまたはゴムバンドのように機能する。圧搾は、リングを弁の周囲に密着させ、それによって、弁周囲漏出を防止する。
【0010】
本発明の一側面は、サドル形状と呼ばれる3次元外観も有し得る、完全または不完全な円形または「D」形状のいずれかの形状を伴う、弁形成術用リングを提供する。円形形状は、典型的には、大動脈弁等の解剖学的円形弁と関連付けて使用される一方、「D」形状弁は、典型的には、僧帽弁等の解剖学的「D」形状またはインゲン豆形状弁と関連付けて使用される。三尖弁は、サドル形状の独特の長円変形例を有する。
【0011】
本発明の別の側面では、弾性特徴は、細長いコアの少なくとも1つのテーパ状区分を備える。テーパ状区分は、最適弾性性能特性を提供するように成形される断面を有してもよい。非限定的実施例は、円形、正方形、長方形、およびコイル形状を含む。
【0012】
本発明のさらに別の側面では、少なくとも1つの弾性特徴は、コアの長さに対して短くあり得る、または実質的にコアの長さに延在し得る、アコーディオン状区分の形態をとる。
【0013】
本発明のさらに別の側面では、弁形成術用リングは、細長いコアを通って延在する内側ワイヤを含んでもよい。本内側ワイヤは、リングの剛性を増加させるために含まれてもよい。弾性は、少なくとも1つの弾性特徴の区域内において内側ワイヤを中断することによって維持されてもよい。代替として、内側ワイヤは、少なくとも1つの弾性特徴の場所内に位置する縮小直径の区域を含んでもよい。
【0014】
本発明はまた、罹患心臓弁を処置または置換する方法を含む。最初に、弁形成術手技が、本発明の弁形成術用リングを逆流弁の周囲に設置することによって行われる。弁形成術用リングは、天然弁尖の癒合を再確立する。天然弁尖または周囲構造が、後に罹患し、罹患弁が置換される必要があると決定される場合、本方法は、経カテーテル弁、無縫合弁を使用して、または観血心臓外科手術を通して、設置された弁形成術用リング内に、人工弁を留置することを伴う。これは、リングを除去せずに、かつ天然心臓弁を除去して、または除去せずに、行われる。人工弁は、リングに直接、縫合される、または別様に取り付けられてもよい。リングは、したがって、人工心臓弁を受け取るための理想的形状のプラットフォームを提供する。
【0015】
本発明は、観血手術を介して、または経皮的に、弁輪に固着され得る、リングを提供する。弁形成術用リングを埋め込むための経皮的アプローチは、現在開発中である。Valtech Cardio(Or Yehuda, Israel)によって開発され、Cardiobandと呼ばれる、経皮的アプローチは、一例を提供し、参照によって本明細書に援用される。さらなる情報は、http://www.valtechcardio.comに提供されている。デバイスおよび方法の実施形態は、2009年5月7日に出願され、参照によって本明細書に援用される、「Annuloplasty Ring
With Intra-Ring Anchoring」と題されたZipory et al.の米国特許第8,715,342号に図示および説明されている。しかしながら、Cardiobandは、弾性ではなく、人工心臓弁を受け取るために設計されていない。リングの弾性性質および特に不完全実施形態は、リングを経カテーテル送達ならびに後続人工弁の受入に特に好適にする。
【0016】
Edwards Lifesciences Corp.(Irvine California)によって開発された別の例は、2008年9月19日に出願され、参照によって本明細書に援用される、Keidar et al.の「Transformable Annuloplasty Ring Configured to Receive a Percutaneous Prosthetic Heart Valve Implantation」と題された米国特許第8,287,591号に説明されている。しかしながら、本デバイスは、人工弁を受け取るために、デバイスを拡張させるためのバルーンを要求する。
【0017】
当業者は、本発明の方法およびリング実施形態が、新規であり、かついくつかの理由から有利であることを理解するが、その理由のうちのいくつかは、VIR手技のために設計されていること、可撓性、変形性、放射線不透過性等の最適性能特性を提供すること、および事前バルーン手技の排除を含む。さらに、本発明のリングの実施形態は、新規であるが、埋め込みを行う外科医にとって習得が容易となるよう使用の容易性を最適化するように設計された慣れ親しんだ外観を提供する。リング設計はまた、製造が比較的に容易である。
本発明は、例えば、以下を提供する。
(項目1)
弁形成術用リングであって、前記弁形成術用リングは、循環系内に埋め込まれるとヒト血液弁のための最適周界を確立するように構成される形状を有する細長いコアを備え、前記コアが静置状態から伸展状態に伸展されることを可能にする少なくとも1つの弾性特徴を含み、前記コアは、前記静置状態に向かって付勢されている、弁形成術用リング。
(項目2)
前記形状は、不完全な円形を備える、項目1に記載の弁形成術用リング。
(項目3)
前記形状は、完全な円形を備える、項目1に記載の弁形成術用リング。
(項目4)
前記形状は、健康な僧帽弁周界を模倣する不完全「D」形状を備える、項目1に記載の弁形成術用リング。
(項目5)
前記形状は、健康な僧帽弁周界を模倣する不完全「D」形状を備える、項目1に記載の弁形成術用リング。
(項目6)
前記少なくとも1つの弾性特徴は、前記細長いコアの少なくとも1つのテーパ状区分を備える、項目1に記載の弁形成術用リング。
(項目7)
前記少なくとも1つのテーパ状区分は、円形、正方形、長方形、コイル形状を含む群から選択された断面を備える、項目6に記載の弁形成術用リング。
(項目8)
前記少なくとも1つの弾性特徴は、前記細長いコアの少なくとも1つのアコーディオン状区分を備える、項目1に記載の弁形成術用リング。
(項目9)
前記アコーディオン状区分は、前記細長いコアの実質的に全体に沿って延在する、項目8に記載の弁形成術用リング。
(項目10)
前記細長いコアを通って延在する内側ワイヤをさらに備える、項目1に記載の弁形成術用リング。
(項目11)
前記内側ワイヤは、前記少なくとも1つの弾性特徴の場所において中断される、項目10に記載の弁形成術用リング。
(項目12)
前記内側ワイヤは、前記少なくとも1つの弾性特徴の場所に縮小直径の区域を有する、項目10に記載の弁形成術用リング。
(項目13)
設置された弁形成術用リングを有する心臓弁を置換する方法であって、前記リングを弾性的に伸展させながら、前記弁形成術用リング内に人工心臓弁を設置することを含む方法。
(項目14)
前記弁形成術用リング内に人工心臓弁を設置することは、前記弁形成術用リングに前記人工心臓弁を取り付けることを含む、項目13に記載の方法。
(項目15)
罹患心臓弁を処置する方法であって、
弁形成術用リングを罹患心臓弁の周囲に埋め込むことにより、前記罹患心臓弁の弁尖を癒合させることであって、前記弁形成術用リングは、少なくとも1つの弾性特徴を含み、少なくとも1つの弾性特徴は、前記リングが静置状態から伸展状態に伸展されることを可能にし、前記リングは、前記静置状態に向かって付勢される、ことと、
長期間にわたって前記弁を周期的に監視することと、
前記天然弁が罹患状態を再発する場合、前記リング内に人工弁を設置することと
を含む、方法。
(項目16)
前記少なくとも1つの弾性特徴は、前記細長いコアの少なくとも1つのテーパ状区分を備える、項目15に記載の方法。
(項目17)
前記少なくとも1つのテーパ状区分は、円形、正方形、長方形、コイル形状を含む群から選択された断面を備える、項目16に記載の方法。
(項目18)
前記少なくとも1つの弾性特徴は、前記細長いコアの少なくとも1つのアコーディオン状区分を備える、項目15に記載の方法。
(項目19)
前記アコーディオン状区分は、前記細長いコアの実質的に全体に沿って延在する、項目18に記載の方法。
(項目20)
前記細長いコアを通って延在する内側ワイヤをさらに備える、項目15に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0018】
本発明の実施形態が可能にする、これらおよび他の側面、特徴、ならびに利点は、付随の図面を参照して本発明の実施形態の以下の説明から明白かつ解明される。
【0019】
図1図1は、本発明のリングの実施形態の平面図である。
【0020】
図2図2は、標的弁部位に留置されている、本発明のリングの実施形態の斜視図である。
【0021】
図3図3は、本発明のリングの実施形態の平面図である。
【0022】
図4図4は、本発明のリングの実施形態の平面図である。
【0023】
図5図5は、本発明のリングの実施形態の平面図であり、図5A~5Dは、リングの弾性特徴の断面形状の種々の実施例を示し、それらのすべては、図5の切断線A-Aに沿って得られる
【0024】
図6図6は、本発明のリングの実施形態の平面図である。
【0025】
図7図7は、本発明のリングの実施形態の平面図である。
【0026】
図8図8は、VIR手技が行われた後の本発明のリングの実施形態の平面図である。
【0027】
図9図9は、カバーを有する、VIR手技が行われた後の本発明のリングの実施形態の平面図である。
【0028】
図10図10は、三尖弁の弁輪内に埋め込まれた本発明のリングの実施形態の斜視図である。
【0029】
図11図11は、VIR手技が行われた後の本発明のリングの実施形態の平面図である。
【0030】
図12図12は、本発明のリングの実施形態の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
(発明の実施形態の説明)
次に、付随の図面を参照して、本発明の特定の実施形態について説明する。しかしながら、本発明は、多くの異なる形態において具現化されてもよく、本明細書に記載される実施形態に限定されるものと解釈されるべきではない。むしろ、これらの実施形態は、本開示が、徹底的かつ完全となり、発明の範囲が当業者に完全に伝達されるように提供される。付随の図面で図示される実施形態の詳細な説明において使用される用語は、本発明を限定するものとして意図されるものではない。図面中、同様の番号は、同様の要素を指す。
【0032】
ここで図に目を向け、最初に、図1を参照すると、本発明の弁形成術用リングの実施形態10が、示されている。リング10は、概して、第1の端部14と第2の端部16との間に延在する細長いコア12を含む。図8にのみ示されるが、本明細書に説明されるリング実施形態は全て、当技術分野において一般的な材料、例えば、二重ベロア布地または他のDacron布地によって被覆されてもよい。そのような布地は、縫合糸を受け取り、また、組織の内部成長を助長するための媒体を提供することによって、係留を補助する。加えて、選択されたコア材料の性能に応じて、カバーの必要性は、排除されてもよい。
【0033】
コア12は、循環系内に埋め込まれるとヒト血液弁のための最適周界を確立するように構成される形状を有する。例えば、図1に示されるリング10は、心臓の僧帽弁に対応する、「D」形状、および、3次元サドル形状を有する。
【0034】
本明細書に説明される種々のリング実施形態は全て、静置状態から伸展状態への弾性伸展性をリングに与える弾性特徴を含む。ゴムバンドのように、リングは、その静置状態において埋め込まれるが、可撓性であり、弁の通常伸展および機能を可能にする。リングが伸展状態にあるとき、圧搾力が、伸展状態においてデバイスにかかる血圧等の力または物体に付与される。弾性リングの圧搾特性は、リングを伸展可能かつ変形可能にし、したがって、埋込式経カテーテル弁(TCV)または他のプロテーゼ等の人工弁を受け取るために比類なく適している。弾性材の圧搾効果に起因して、リングおよびそれが固定される環状組織は、人工弁の周囲でガスケットまたはゴムバンドとして機能する。圧搾は、リングおよび組織を弁の周囲に密着させ、それによって、弁周囲漏出を防止し、弁が、移動、移行、または塞栓し得るリスクを低減させる。
【0035】
図1に示される実施形態をより具体的に参照すると、リング10は、コアが静置状態から伸展状態に伸展されることを可能にする、少なくとも1つの弾性特徴20を含む。本実施形態10では、弾性特徴20は、コア12の残りの断面より小さい断面を有する、テーパ状区分の形態をとる。
【0036】
一例として、図1に示されるリング10は、2つのテーパ状区分20を有する。テーパ状区分20の数および場所は、リング10の意図される埋込場所および配向に従って変動し得る。例えば、図2は、長円形状を有し、三尖弁に適合する、リングの実施形態30を示す。大動脈弁または肺動脈弁等の丸形天然弁もまた、リングを用いて処置されてもよい。リング30は、端部34と36との間に延在し、端部34と36との間の単一テーパ状区分40を含む、コア32を有する。テーパ状区分40は、三尖弁の交連と整合される。端部34および36もまた、テーパ状であるように示される。
【0037】
当業者は、弁形成術用リングが、天然弁に順応するようにサイズ決定されるが、いったん取り付けられると、組織の弾性性質を前提として、力を組織に付与することも理解する。したがって、弁が天然弁に適合するようにサイズ決定および成形されると本明細書に記載されるとき、天然弁輪もまた、ある程度、リングに適合することを理解されたい。後者の適合は、弁尖の癒合を再確立するために必要である。したがって、リングは、罹患弁に精密に適合するように成形されない。むしろ、リングは、いったん埋め込まれると、天然弁輪を所望の構成に再成形するようにサイズ決定および成形される。
【0038】
所望の力を標的組織に付与するために、本明細書に説明される種々の実施形態の細長いコアは、可撓性かつ弾力性である。コアは、シリコーン、医療グレードゴム、e ptfe、Goretex(R)、またはその他等の適切な生体適合性材料から構築されてもよい。代替として、シリコーン層で被覆される、他の材料が、使用されてもよい。ある場合には、付加的剛性が、選択されたコア材料の能力に加えて所望され得る。付加的剛性は、ワイヤコアを利用することによって提供されてもよい。例えば、図3は、第1の端部54と第2の端部56との間で「D」形状に延在し、2つのテーパ状区分60を含む、コア52を有する、リングの実施形態50を示す。内側ワイヤ62は、コア52を通つて延在し、剛性を追加する。内側ワイヤ62は、限定ではないが、ニチノールまたは合金、ステンレス鋼、コバルトクロム、チタン、ニッケル、またはその他を含む、生体適合性材料から構築されてもよい。図3に見られるように、内側ワイヤ62は、テーパ状区分60によって提供される弾性に干渉しないように構成される。内側ワイヤ62は、ワイヤ、64、66、および68の3つの区分を形成するように中断される。3つの区分64、66および68は、テーパ状区分60において中断または離間される。
【0039】
代替として、さらなる剛性がテーパ状区分において要求される場合、図4に示されるもの等の内側ワイヤの実施形態70が、提供されてもよい。図4は、図3に示されるもの等のリング50を示し、中断された内側ワイヤ62は、非中断内側ワイヤ70と置換されている。しかしながら、内側ワイヤ70は、テーパ状区分60に対応する縮小直径の区域72を有する。縮小直径の区域72は、比較的に増加された直径の3つの区分74、76、および78の形成をもたらす。これらの区分74、76、および78は、したがって、テーパ状区分60間のコア52のより堅牢な区域内に位置する。
【0040】
内側ワイヤ62はまた、放射線不透過性をリングに追加してもよい。付加的放射線不透過性が所望される場合、マーカバンドまたはコーティングもまた、シリコーンまたは布地内に組み込まれてもよい。
【0041】
内側ワイヤの使用または非使用に加え、テーパ状区分の弾性特性は、テーパ状区分における種々の断面形状の使用によって制御されてもよい。例えば、図5は、前述のように、図3のリング50を示す。テーパ状区分60を通って延在する切断線A-Aに沿って得られた種々の断面形状もまた、示される。図5Aは、円形断面を示し、図5Bは、正方形断面を示し、図5Cは、長方形断面を示し、図5Dは、渦巻またはコイル形状断面を示す。各形状は、異なる可撓性および伸展特性を呈し、提供される実施例は、非限定的として見なされるべきである。
【0042】
リングの弾性特性はさらに、弾性特徴の他の実施形態を採用することによって変動され得る。例えば、ここで図6を参照すると、本発明のリングの実施形態80が、示されている。リング80は、概して、第1の端部84と第2の端部86との間に延在する、細長いコア82を含む。コア82は、心臓の僧帽弁に対応する「D」形状を有するが、三尖弁のような長円弁または円形弁等の他の弁にも適合するようにも成形され得る。
【0043】
リング80は、コアが静置状態から伸展状態に伸展されることを可能にする、少なくとも1つの弾性特徴90を含む。本実施形態80では、少なくとも1つの弾性特徴90は、別の円柱状であるコア82におけるアコーディオン状区分90の形態をとる。図6の少なくとも1つのアコーディオン状区分90は、一例として、2つの離間されたアコーディオン状区分90として示され、標的心臓弁の交連と一致するように留置されてもよい、またはそうではなくてもよい。
【0044】
代替として、異なる弾性特性を提供するために、概して、第1の端部104と第2の端部106との間に延在する、細長いコア102を含む、図7に示される実施形態100が、提供される。コア102は、心臓の僧帽弁に対応する「D」形状を有するが、また、円形弁または三尖弁のような長円等の他の弁に適合するように成形されてもよい。
【0045】
リング100は、コアが静置状態から伸展状態に伸展されることを可能にする、弾性特徴110を含む。本実施形態100では、少なくとも1つの弾性特徴110は、第1の端部104と第2の端部106との間の実質的に全範囲に沿って延在するアコーディオン状区分110の形態をとる。本明細書の実施形態に示される種々の特徴は、全変形例が図に示されない場合でも、他の実施形態によって採用されてもよいことを理解されたい。例えば、アコーディオン状弾性特徴を組み込む、実施形態は、増加された剛性が所望される場合、内側ワイヤと併用されてもよい。
【0046】
性能特性のさらなる変形例は、完全リングを備える、本発明の実施形態によって提供されてもよい。以前に説明される実施形態は全て、第1の端部および第2の端部とともに、2つの端部間に延在する細長いコアを含む、不完全リングを構成していた。これらの不完全コアは、コアに合致するよう不完全であるか、または完全であり、それによって、コアの第1の端部と第2の端部との間の間隙を布で跨架させるかのいずれかである、布カバーと併用されてもよいことに留意されたい。この場合、コアを含むリングの区域のみを縫合することが望ましくあり得る。この実施形態は、第1の端部204と第2の端部206との間に延在する細長いコア202を有する、丸形不完全リングの実施形態200を示す、図8に見られ得る。コア202は、テーパ形状における少なくとも1つの弾性特徴210を含む。リング200はまた、コア202の詳細を明らかにするために想像線によって示される、布カバー220を含む。縫合糸222が、リング200を弁輪に固着させるために使用され、人工弁Vが、VIR手技を介して、リング200内に留置されている。縫合糸222は、布220およびコア202を通って延在するが、第1の端部204と第2の端部206との間の間隙224内には含まれない。
【0047】
図9は、コア(図示せず)を被覆する布カバー220とともに、図8の実施形態200を示す。リング200は、その中に弁Vが埋め込まれている。縫合糸222は、リング220のコアが不完全である間隙区域224を除き、リング200の周界の周囲に延在する。図9の実施形態は、大動脈弁のように丸形である。図10は、布カバー220、縫合糸222、および間隙区域224を含む、類似実施形態201を示す。実施形態201は、三尖弁に好適な長円形状を有するという点においてのみ200と異なる。201の実施形態は、三尖弁の弁輪内に埋め込まれるように示される。人工弁は、リング201内に埋め込まれていないが、将来的に必要に応じて埋め込まれ得る。
【0048】
ここで図11を参照すると、概して、僧帽弁等の弁に対応するように円形を形成する、完全形状を有するリングの実施形態120が、示されている。弾性特徴130は、前述のように、テーパ状区分として示される。リング120が完全であるため、3つのテーパ状区分130が、随意に、均一弾性特徴を与えるために提供される。弾性特徴130は、図8では、前述の実施形態のうちのいくつかに示されるように交連点ではなく、弁尖の中央に留置されている。リング120は、随意に、リング120の弾性特徴130が、容易に可視化され、正しく留置されるように、マーカ126を含む。
【0049】
図11はまた、リング120内に設置された人工弁Vを含むように示されている。本明細書に説明されるリングの実施形態は全て、リングが埋め込まれ、必要に応じて、長時間にわたって原位置で使用された後でも、人工弁のための最適取付プラットフォームを提供するように設計されることを理解されたい。さらに、図11に示される実施形態120は、一例として、患者内の定位置に縫合されるように示される。図11の完全リングは、経皮的インプラントの代わりに、外科手術用インプラントのためにより好適であり得ると考えられる。
【0050】
図12の実施形態140は、「D」形状の完全リング140を実証する。リング140は、コア142と、リング140の円周の周囲に離間されたアコーディオン状区分、この場合、3つのアコーディオン状区分を備える、1つまたは複数の弾性特徴144とを有する。アコーディオン状区分の数および長さは、前述のように、変動してもよい。Dリング全体が、連続アコーディオン状区分であってもよい。
【0051】
特定の実施形態および用途に関して本発明を説明したが、当業者は、本教示に照らして、請求された発明の精神から逸脱すること、または範囲を超えることなく、付加的な実施形態および修正を生成することができる。したがって、本明細書の図面および説明は、本発明の理解を促進するように一例として提供され、その範囲を限定すると解釈されるべきでないことを理解されたい。
図1
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図11
図12