(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-21
(45)【発行日】2023-08-29
(54)【発明の名称】エアカーテンを備えたインキュベータ
(51)【国際特許分類】
C12M 1/00 20060101AFI20230822BHJP
C12M 1/06 20060101ALI20230822BHJP
【FI】
C12M1/00 C
C12M1/06
(21)【出願番号】P 2022514748
(86)(22)【出願日】2020-09-03
(86)【国際出願番号】 US2020049149
(87)【国際公開番号】W WO2021046185
(87)【国際公開日】2021-03-11
【審査請求日】2022-09-14
(32)【優先日】2019-09-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】522085079
【氏名又は名称】エンブリエント,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Embrient,Inc.
【住所又は居所原語表記】9030 Carroll Way, Unit 1, San Diego, CA 92121 United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100109634
【氏名又は名称】舛谷 威志
(74)【代理人】
【識別番号】100129263
【氏名又は名称】中尾 洋之
(72)【発明者】
【氏名】ローゼンバーグ,バリー イー.
(72)【発明者】
【氏名】ソン,キョン-ス
(72)【発明者】
【氏名】リー,ロイヤル キュー.
【審査官】小田 浩代
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-166747(JP,A)
【文献】特開2010-124703(JP,A)
【文献】特開2017-185213(JP,A)
【文献】特開2006-204187(JP,A)
【文献】韓国登録実用新案第20-0412920(KR,Y1)
【文献】特開2016-059363(JP,A)
【文献】特開2017-175944(JP,A)
【文献】特開2017-201886(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/00- 3/10
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インキュベータであって、
開口部を有する内部容器を少なくとも部分的に取り囲む筐体と、
前記筐体及び/又は前記内部容器に連結され、前記インキュベータの外側の位置から前記内部容器にアクセスすることを可能とする第1の位置と、前記インキュベータの前記外側の位置から前記内部容器にアクセスすることを防止する第2の位置との間で運動可能なドアと、
前記筐体及び/又は前記内部容器に連結され、一次エアベールを、前記開口部を覆う仮想平面に沿って、又は前記仮想平面に平行に導く一次気流制御装置と、
前記筐体及び/又は前記内部容器に連結され、前記一次エアベールと平行な二次エアベールを導く二次気流制御装置と、
前記一次気流制御装置に連結され、前記一次エアベールを前記内部容器に導くように
可動である
可動羽根と、を備え、
前記一次エアベール及び前記二次エアベールが前記内部容器の前記開口部を遮蔽する
インキュベータ。
【請求項2】
一次及び/又は二次吸込ファンを更に含み、前記一次吸込ファンは前記一次エアベールから空気を受け取れるように配置され、前記二次吸込ファンは前記二次エアベールから空気を受け取れるように配置される、請求項1に記載のインキュベータ。
【請求項3】
前記一次エアベール及び/又は前記二次エアベールは、指向ベール又は層流ベールである、請求項1に記載のインキュベータ。
【請求項4】
前記可動羽根は、インキュベータ制御ユニットからの信号に応答して動く、請求項1に記載のインキュベータ。
【請求項5】
前記ドアが、前記開口部から前記ドアを遠ざけ、且つ前記開口部から前記ドアを上方に動かす複合運動により運動可能である、請求項1に記載のインキュベータ。
【請求項6】
前記筐体、前記内部容器、及び前記一次気流制御装置が、前記一次エアベール内の空気の再循環を可能とする再循環スペースを形成するように互いに相対的に配置される、請求項1に記載のインキュベータ。
【請求項7】
前記一次エアベール内の空気の再循環により前記一次エアベール内の前記空気の少なくとも70%が再循環される、請求項6に記載のインキュベータ。
【請求項8】
前記再循環スペースに設けられた、フィルタユニット、吸収ユニット、滅菌ユニット、温度制御ユニット、温度センサ、湿度センサ、気圧センサ、及び/又はガスセンサを更に含む、請求項6に記載のインキュベータ。
【請求項9】
外部供給源からのガスがそれを通して前記再循環スペースに供給されるガス入口を更に含む、請求項6に記載のインキュベータ。
【請求項10】
前記ドア、前記一次気流制御装置、及び前記二次気流制御装置に電子的に連結され、前記ドアが前記第1の位置から前記第2の位置へ運動し始めると、前記一次及び/又は二次気流制御装置を作動させるようにプログラムされた制御回路を更に含む、請求項1に記載のインキュベータ。
【請求項11】
ユーザの命令を受けとるように、及び/又は前記インキュベータの認定ユーザを認証するようにプログラムされたアクセス制御装置を更に含む、請求項1に記載のインキュベータ。
【請求項12】
前記インキュベータに流体的に連結され、窒素富化産物を生成するメンブレンフィルタ又は圧力スイング吸着ユニットを備えたガス発生器を更に含む、請求項1に記載のインキュベータ。
【請求項13】
前記内部容器に運動可能に連結されたトレイを更に含み、前記トレイは、前記トレイを貫通し、一次層流エアベールの通路となるハニカム構造の流路を含む、請求項1に記載のインキュベータ。
【請求項14】
前記筐体の外への前記内部容器の運動を可能にする可動継手を介して前記内部容器が前記筐体に連結されている、請求項1に記載のインキュベータ。
【請求項15】
インキュベータであって、
開口部を有する内部容器を少なくとも部分的に取り囲む筐体と、
前記筐体及び/又は前記内部容器に連結され、一次エアベールを、前記開口部を覆う仮想平面に沿って、又は前記仮想平面に実質的に平行に導く一次気流制御装置と、
前記筐体及び/又は前記内部容器に連結され、前記一次エアベールと平行な二次エアベールを導く二次気流制御装置と、
前記一次気流制御装置に連結され、前記一次エアベールを前記内部容器に導くように可能である羽根と、
を備え、
前記一次エアベール及び前記二次エアベールが前記内部容器の前記開口部を遮蔽し、
前記筐体、前記内部容器、及び前記一次気流制御装置が、前記一次エアベール内の空気の再循環を可能とする再循環スペースを形成するように互いに相対的に配置され、
前記再循環スペースは、CO
2センサ、O
2センサ、湿度センサ、気圧センサ、及び温度センサからなる群から選択される複数のセンサを少なくとも部分的に取り囲み、更に滅菌ユニット、高効率微粒子空気(HEPA)フィルタ、活性炭フィルタ、及び/又はヒータを少なくとも部分的に取り囲む、インキュベータ。
【請求項16】
一次及び/又は二次吸込ファンを更に含み、前記一次吸込ファンは前記一次エアベールから空気を受け取れるように配置され、前記二次吸込ファンは前記二次エアベールから空気を受け取れるように配置される、請求項15に記載のインキュベータ。
【請求項17】
前記二次気流制御装置が周囲空気を受け入れるように構成され、前記二次吸込ファンが周囲空気へ前記二次エアベールを放出する、請求項16に記載のインキュベータ。
【請求項18】
前記一次エアベール及び/又は前記二次エアベールは、指向ベール又は層流ベールである、請求項15~17のいずれか一項に記載のインキュベータ。
【請求項19】
前記一次気流制御装置が、前記再循環スペースを通る前記一次エアベール内の全空気の90%以上を再循環させる、請求項15に記載のインキュベータ。
【請求項20】
前記再循環スペースが、前記CO
2センサ、前記O
2センサ、前記滅菌ユニット、前記高効率微粒子空気(HEPA)フィルタ、前記活性炭フィルタ、及び/又は前記ヒータのうち少なくとも2つを少なくとも部分的に取り囲む、請求項15に記載のインキュベータ。
【請求項21】
前記再循環スペースが、前記CO
2センサ、前記O
2センサ、前記滅菌ユニット、前記高効率微粒子空気(HEPA)フィルタ、前記活性炭フィルタ、及び/又は前記ヒータのうち少なくとも3つを少なくとも部分的に取り囲む、請求項15に記載のインキュベータ。
【請求項22】
前記再循環スペースが、前記CO
2センサ、前記O
2センサ、前記滅菌ユニット、前記高効率微粒子空気(HEPA)フィルタ、前記活性炭フィルタ、及び前記ヒータを少なくとも部分的に取り囲む、請求項請求項15に記載のインキュベータ。
【請求項23】
二酸化チタンを含む表面の方に向けられた紫外線源を前記滅菌ユニットが含む、請求項15に記載のインキュベータ。
【請求項24】
インキュベータの外側の位置から内部容器にアクセスすることを可能とする第1の位置と、前記インキュベータの前記外側の位置から前記内部容器にアクセスすることを防止する第2の位置との間で運動可能なドアを有し、更に一次気流制御装置及び二次気流制御装置を備えた前記インキュベータのためのインキュベータ制御回路であって、前記インキュベータ制御回路は、
マイクロプロセッサと、前記マイクロプロセッサ上で実行可能な指令を記憶するメモリと、を備え、前記指令は、前記制御回路に、
a)前記ドアが前記第2の位置へと運動している際に、前記一次気流制御装置を下方制御させると共に、必要に応じて羽根を前記一次気流制御装置に連結させ、
b)前記ドアが前記第1の位置へと運動している際に、前記一次気流制御装置を上方制御させ、
c)前記ドアが第1の位置にあるときに、羽根を前記一次気流制御装置に連結させるように運動させ、且つ
d)前記ドアが前記第1の位置へと運動している際に、前記二次気流制御装置を上方制御させる、インキュベータ制御回路。
【請求項25】
前記制御回路が、温度センサ、ガスセンサ、気圧センサ、及び/又は湿度センサに更に電子的に連結され、前記指令が、前記制御回路にヒータを作動させるか、ガスバルブを開いて前記インキュベータ内にガスを流入させるか、及び/又は加湿機を作動させる指令である、請求項24に記載のインキュベータ制御回路。
【請求項26】
前記指令が、前記ドアが前記第1の位置にある間、前記制御回路に更に、前記ヒータを作動させるか、前記ガスバルブを開いて前記インキュベータ内に前記ガスを流入可能にするか、及び/又は前記加湿機を作動させる指令である、請求項25に記載のインキュベータ制御回路。
【請求項27】
前記ガスセンサが、O
2センサ又はCO
2センサである、請求項25に記載のインキュベータ制御回路。
【請求項28】
前記制御回路は、ユーザの命令を受け取るように、及び/又は前記インキュベータの認定ユーザを認証するようにプログラムされたアクセス制御装置に電子的に更に連結され、前記指令が、前記ユーザの命令を受け取った際、及び/又は前記認定ユーザを認証した際に、前記制御回路に前記ドアを前記第1の位置から前記第2の位置へと運動させる、請求項24~27のいずれか一項に記載のインキュベータ制御回路。
【請求項29】
前記ユーザの命令が音声命令である、請求項28に記載のインキュベータ制御回路。
【請求項30】
前記認定ユーザは顔認識によって認証される、請求項28に記載のインキュベータ制御回路。
【請求項31】
前記制御回路が更に電子的に滅菌ユニットに連結され、前記指令は前記制御回路に前記滅菌ユニットを作動させる指令である、請求項24に記載のインキュベータ制御回路。
【請求項32】
インキュベータ内の制御雰囲気を維持する方法であって、
前記インキュベータの外側の位置からの、前記インキュベータの内部容器へのアクセスが可能な間、前記内部容器の開口部を覆っている仮想平面に沿って、又は前記仮想平面と平行に一次エアベールを流すことと、
前記一次エアベールと実質的に平行に二次エアベールを流すことと、を含み、
前記一次エアベール内の空気の90%以上が前記インキュベータ内の再循環スペースによって再利用され、
前記再循環スペース内のセンサによって大気パラメータの乱れを感知すると
、可動羽根を使用して前記一次エアベールを前記内部容器に導く、方法。
【請求項33】
前記制御雰囲気が低酸素雰囲気である、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記一次エアベール内の空気の少なくとも95%が前記インキュベータによって再利用される、請求項32又は33に記載の方法。
【請求項35】
前記二次エアベール内の空気の10%未満が前記インキュベータによって再利用される、請求項32に記載の方法。
【請求項36】
前記一次エアベール及び/又は前記二次エアベールは、指向ベール又は層流ベールである、請求項32に記載の方法。
【請求項37】
前記一次エアベールが、複数の一次気流制御装置を用いて形成される、請求項32に記載の方法。
【請求項38】
ガスバルブ、ヒータ、及び/又は加湿機を制御するインキュベータ制御回路を用いるステップを更に含み、前記制御回路は、ガスセンサ、温度センサ、及び/又は湿度センサから信号を受け取り、前記ガスセンサ、前記温度センサ、及び/又は前記湿度センサが、前記インキュベータによって再利用される空気内のガス、温度、及び/又は湿度を感知する、請求項32に記載の方法。
【請求項39】
前記インキュベータの外側の位置からの、前記内部容器へのアクセスが可能な間、温度の逸脱が5℃未満になるように前記雰囲気が制御される、請求項32に記載の方法。
【請求項40】
前記インキュベータの外側の位置からの、前記内部容器へのアクセスが可能な間、ガス濃度の逸脱が、絶対値(absolute)で2%未満になるように前記雰囲気が制御される、請求項32に記載の方法。
【請求項41】
前記インキュベータの外側の位置からの、前記内部容器へのアクセスが可能な間、湿度の逸脱が絶対値(absolute)で5%未満になるように前記雰囲気が制御される、請求項32に記載の方法。
【請求項42】
前記一次エアベール及び/又は前記二次エアベールは、指向ベール又は層流ベールである、請求項32に記載の方法。
【請求項43】
インキュベータ内の制御雰囲気を再確立する方法であって、
前記インキュベータの内部容器内の開口部を覆う仮想平面に沿って、又は前記仮想平面に実質的に平行に伸びる一次エアベール及び二次エアベールを通過する、前記インキュベータの外側の位置からの前記内部容器へのアクセスであって、そのアクセスにより前記制御雰囲気が変化するアクセスを許可することと、
アクセスが可能な間、前記インキュベータの再循環スペースを通して前記一次エアベール内の空気の少なくとも一部を再循環することと、
前記一次エアベールが再循環される間、前記再循環スペース内で前記制御雰囲気の少なくとも1つのパラメータを測定することと、
前記一次エアベールが再循環される間、前記再循環スペース内にガスを注入するか、及び/又は前記再循環スペース内で空気を加熱することによって前記少なくとも1つのパラメータを調整することと、を含み、
再循環された空気の少なくとも一部は
、可動羽根を介して前記内部容器内に導かれる、方法。
【請求項44】
前記一次エアベール内の空気の90%以上が前記インキュベータによって再利用される、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
アクセスが可能な間に、前記調整するステップが行われる、請求項43又は44に記載の方法。
【請求項46】
前記可動羽根は一次気流制御装置に連結されている、請求項43に記載の方法。
【請求項47】
前記一次エアベールは、指向ベール又は層流ベールである、請求項43に記載のインキュベータ。
【請求項48】
前記内部容器内へ前記一次エアベールの少なくとも一部を導くステップを更に含む、請求項43に記載の方法。
【請求項49】
前記少なくとも1つのパラメータがO
2濃度、CO
2濃度、湿度、及び/又は温度である、請求項43に記載の方法。
【請求項50】
前記インキュベータの前記制御雰囲気が、最も逸脱してから1分以内に再確立される請求項43に記載の方法。
【請求項51】
インキュベータの外側の位置からの、前記インキュベータの内部容器へのアクセスを開放している間、前記インキュベータ内の制御雰囲気の環境パラメータの逸脱を低減する方法であって、
ドアを開けて前記インキュベータの前記内部容器へアクセスできるようにする前に、前記インキュベータの前記内部容器内の開口部を覆う仮想平面に沿って又は前記仮想平面に平行に一次エアベールを流すことと、
前記一次エアベールを確立すると、前記ドアを前記開口部から遠ざけ、前記開口部から横方向に運動させる複合運動において前記ドアを運動させることと、
前記ドアを運動させると、前記一次エアベールと平行に二次エアベールを流すことと、を含む方法。
【請求項52】
前記一次エアベール内の空気の90%以上を前記インキュベータ内で再循環させ、前記二次エアベール内の空気の10%以下を前記インキュベータ内で再循環させる、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記ドアを運動させるとき又はさせた後に前記一次エアベールの流量を増加させる、請求項51または52に記載のインキュベータ。
【請求項54】
前記一次エアベールの一部を前記インキュベータの前記内部容器へ導く、請求項51または52に記載のインキュベータ。
【請求項55】
前記一次エアベールが、複数の一次気流制御装置によって生成される、請求項51または52に記載の方法。
【請求項56】
制御雰囲気インキュベータ内のガスの消費を低減させる方法であって、
前記インキュベータ内の再循環スペースであって、一次気流制御装置に流体的に連結された再循環スペースに、空気、窒素、及び/又は二酸化炭素を供給することと、
前記インキュベータの外側の位置からの、前記インキュベータの内部容器へのアクセスが可能な間、前記一次気流制御装置を用いて、前記インキュベータの内部容器の開口部を覆っている仮想平面に沿って、又は前記仮想平面に平行に一次エアベールを流すことと、
前記一次エアベールと平行に二次エアベールを流すことと、を含み、
前記一次エアベール内の空気の90%以上が前記インキュベータによって再利用され、
可動羽根を使用して一時的に前記一次エアベールを前記内部容器に導く、方法。
【請求項57】
前記一次エアベール内の空気の95%以上が前記インキュベータによって再利用される、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
前記一次エアベールは、指向ベール又は層流ベールである、請求項56又は57に記載のインキュベータ。
【請求項59】
前記ガスの消費は、トライガス(tri-gas)の消費である、請求項56に記載の方法。
【請求項60】
前記窒素は、メンブレンフィルタ又は圧力スイング吸着ユニットから供給される、請求項56に記載の方法。
【請求項61】
前記制御雰囲気が低酸素雰囲気である、請求項56に記載の方法。
【請求項62】
インキュベータであって、
開口部を有する内部容器を少なくとも部分的に取り囲む筐体と、
前記筐体及び/又は前記内部容器に連結され、一次エアベールを、前記開口部を覆う仮想平面に沿って、又は前記仮想平面に平行に導くように、前記内部容器に相対的に配置される一次気流制御装置と、
前記筐体及び/又は前記内部容器に連結され、前記一次エアベールに平行に二次エアベールを導くように、前記内部容器に相対的に配置される二次気流制御装置と、
前記一次気流制御装置に連結され、前記一次エアベールを前記内部容器に導くように少なくとも1つのセンサからの信号に応答して可能である羽根と、
ドアであって、前記ドア全体が前記仮想平面から離れ、かつ前記ドア全体が水平方向又は垂直方向に運動可能なように、前記筐体及び/又は前記内部容器に連結されたドアと、を備えるインキュベータ。
【請求項63】
前記筐体、前記内部容器、及び前記一次気流制御装置が、前記一次エアベールの空気の再循環を可能とする再循環スペースを形成するように互いに相対的に配置される、請求項62に記載のインキュベータ。
【請求項64】
前記再循環スペースは、CO
2センサ、O
2センサ、湿度センサ、気圧センサ、及び温度センサからなる群から選択される複数のセンサを少なくとも部分的に取り囲み、更に滅菌ユニット、高効率微粒子空気(HEPA)フィルタ、活性炭フィルタ、及び/又はヒータを少なくとも部分的に取り囲む、請求項63に記載のインキュベータ。
【請求項65】
一次及び/又は二次吸込ファンを更に含み、前記一次吸込ファンは前記一次エアベールから空気を受け取れるように配置され、前記二次吸込ファンは前記二次エアベールから空気を受け取れるように配置される、請求項62~64のいずれか一項に記載のインキュベータ。
【請求項66】
前記二次気流制御装置が周囲空気を受け入れるように構成され、前記二次吸込ファンが周囲空気へ前記二次エアベールを放出する、請求項65に記載のインキュベータ。
【請求項67】
前記一次エアベール及び/又は前記二次エアベールは、指向ベール又は層流ベールである、請求項62に記載のインキュベータ。
【請求項68】
前記一次気流制御装置が、前記再循環スペースを通る一次エアベール内の全空気の90%以上を再循環させる、請求項63に記載のインキュベータ。
【請求項69】
前記一次気流制御装置が一次エアベールの向きを制御する可動羽根を更に含む、請求項62に記載のインキュベータ。
【請求項70】
マイクロプロセッサと、前記マイクロプロセッサ上で実行可能な指令を記憶するとメモリと、を有する制御ユニットを備え、前記指令は、前記制御ユニットに、
a)前記ドアが閉じられた位置へと運動している際に、前記一次気流制御装置を下方制御させると共に、羽根を前記一次気流制御装置に連結させるよう運動させるか、
b)前記ドアが開かれた位置へと運動している際に、前記一次気流制御装置及び二次気流制御装置を上方制御させるか、及び/又は
c)前記ドアが前記開かれた位置にあるときに、前記一次気流制御装置に連結させるよう羽根を運動させる指令である、請求項62に記載のインキュベータ。
【請求項71】
前記制御ユニットが、温度センサ、ガスセンサ、気圧センサ及び/又は湿度センサに更に電子的に連結され、前記指令が、前記制御ユニットにヒータを作動させるか、ガスバルブを開いて前記インキュベータ内にガスを流入させるか、及び/又は加湿機を作動させる指令である、請求項70に記載のインキュベータ。
【請求項72】
前記制御ユニットは、ユーザの命令を受け取るように、及び/又は前記インキュベータの認定ユーザを認証するようプログラムされたアクセス制御装置に電子的に更に連結され、前記指令が、ユーザの命令を受け取った際、及び/又は認定ユーザを認証した際に、前記制御ユニットに前記ドアを前記閉じられた位置から前記開かれた位置へと運動させる、請求項70に記載のインキュベータ。
【請求項73】
前記ユーザの命令が音声命令又はユーザのジェスチャーであり、及び/又は前記認定ユーザが顔認識により認証される、請求項72に記載のインキュベータ
【請求項74】
前記ドアが閉じられた位置にあるとき、前記ドアが前記二次エアベールによって占められる領域に位置する、請求項62に記載のインキュベータ。
【請求項75】
前記一次エアベール及び/又は前記二次エアベールは、0.3~0.6m/秒の間の気流を有する、請求項62に記載のインキュベータ。
【請求項76】
前記内部容器の容積が10~200Lである、請求項62に記載のインキュベータ。
【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
本願は、2019年9月4日に出願された米国仮特許出願第62/895,587号の、本願出願人による係属中の仮出願に対する優先権を主張し、その内容は参照により援用される。
【技術分野】
【0002】
本開示は、雰囲気が制御されたインキュベータの装置、システム、及び方法に関し、特に低酸素雰囲気での細胞及び組織の培養を行うためのもの関する。
【背景技術】
【0003】
背景の説明は、本開示を理解するのに役立つ可能性のある情報を含む。但しそれは本開示で提供されるいずれかの情報が先行技術であるか、本願の特許請求の範囲に記載した発明に関連するということを自認するものではなく、また具体的に又は暗示的に参照されたいずれかの刊行物が先行技術であることを自認するものでもない。
【0004】
本開示内の全ての刊行物及び特許出願は、個々の刊行物又は特許出願が、参照により援用されるように具体的かつ個別に示されているのと同程度に、参照により援用される。援用された参照の中における用語の定義や使用が本開示で提示されるその用語の定義と一致しない場合又は相反する場合、本開示で提示されたその用語の定義が適用され、参照の中のその用語の定義は適用しない。
【0005】
周知のように、酸素は、海面位で、空気中に約21体積%含まれ、そして、多くの細胞と組織の培養実験は細胞と組織を培養するためのインキュベータで酸素含有量の特定の制御なしで行われる。結果として、そのようなインキュベータで増殖する細胞及び組織は、生体内(インビボ)における生理的に通常の酸素濃度を表していない酸素濃度に曝露される。実際、生きている多細胞生物のうち、全て又はほとんど全ての細胞が、大気中の酸素濃度よりもかなり低い酸素濃度の環境の中に存在することが主張されている(例えば、Int J Mol Sci.2019;20,1195;doi:10.3390/ijms20051195を参照のこと)。例えば、典型的には酸素は脳の中で0.5~7%、眼の中で1~5%、肝臓、心臓、腎臓の中で4~12%、子宮の中で3~5%見つかる。特定の細胞及び組織に対する様々な酸素濃度を背景にして、生理的に適切な酸素濃度を「フィソキシア(Physoxia)」と称する(Stem Cell Research & Therapy(2018)9:148)。また、細胞及び組織の培養における大気中酸素濃度が様々な代謝過程及び発生過程に大きく影響を及ぼすことが示されている。例えば、「ノルモキシック(normoxic)」な(すなわち、O2が21%の)培養条件は、様々な遺伝子の生体外(インビトロ)での遺伝子発現、細胞分化、細胞増殖、及び多数の幹細胞株の生存能を抑制し、多数の細胞株の調節遺伝子及びハウスキーピング遺伝子の発現を抑制する。またほとんどの細胞の代謝と代謝経路に影響を及ぼす傾向がある。
【0006】
さらに、特定の細胞及び組織に対する適切な酸素濃度の重要性は、細胞培養における酸素濃度が報告されなかったか、適切に調整されなかった場合に、実験の再現性が危うくなるか、実験の再現が不可能になることすらあることを実証した多数の研究において認められている(PLOS ONE|https://doi.org/10.1371/journal.pone.0204269 October 16,2018)。適切な酸素制御と関連のある困難の少なくとも一部を克服するのを助けるために、インキュベータは、インキュベータ内の酸素濃度を調整するためのガスを供給することができ、トライガス(tri-gas)インキュベータはそのような装置の一般的な改良体の1つである(例えば,Thermo Fischer Scientific,トライガスインキュベータ(Tri-gas incubators)を参照のこと)。ここでは、二酸化炭素と窒素は、比較的一定のガス状態を維持するために、制御された速度でインキュベータに供給される。しかしながら、残念なことに、運転中、なかでも特に培養容器を入れるか取り出すためにインキュベータのドアを開けるときに、そのようなトライガス(tri-gas)インキュベータでもなお酸素が大きく逸脱する。さらに別のもう一つのアプローチでは、モジュラーインキュベータチャンバを用いて環境条件をより厳密に制御することができる(例えば、Billups-Rothenberg社のMIC-101を参照)。そのようなインキュベータは、大気を封じ込めるための単純であるが有効な方法を提供し、モジュラーインキュベータ内に配置することができる適切なガス混合システムとモジュラー酸素モニターを用いてさらにそのインキュベータを監視し、制御することができる。しかしながら、そのようなシステムは容量に限界があることが多く、温度調節のために既存のインキュベータ内での静置を必要とすることも多い。
【0007】
上記の困難は、例えば、目視での分析や細胞の計数、給餌又は媒体の交換、及び細胞収穫のための、一つ以上の培養容器をインキュベータから取り出すことが求められる、細胞培養における通常の操作によって悪化する。実際、標準的な大きさのインキュベータがわずか1、2時間以内に複数回繰り返し開閉されることは珍しくない。直ちに理解されるように、インキュベータが開かれるたびに、制御された大気の状態は失われて、インキュベータを閉じる際に、適当な培養状態を確保するために、制御された大気の状態を再び確立しなければならない。残念なことに、アクティブな気流循環を用いたとしても、
図1において例示的に描かれているように、インキュベータが開かれるたびに、直ちに適切な温度、湿度、及び酸素含有量を再確立するための時間は5~10分を超える。結果として、インキュベータ内の細胞又は組織の培養は、大気の状態に対する設定点からの複数の且つ有意な逸脱を経験する。またさらに、インキュベータの各開閉サイクルによって、内部の空間(ボリューム)及び培養容器全体を潜在的な微生物汚染に曝露し、それによりインキュベータ内の内容物全てを危うくし得る。
【0008】
このように、様々な細胞培養用インキュベータが当該技術分野で知られていていたとしても、それらの全て、又はほとんど全ては様々な欠点を有している。中でも注目すべきは、インキュベータの通常の使用ではインキュベータ内の大気の状態が乱れ、適切な状態を再び確率するのに時間がかかることである。したがって、現在公知のインキュベータ内の細胞及び組織は、目標の条件とは離れた条件や、目標通りの条件を再確立する間の変化する条件、及び微生物汚染に長時間曝される。さらに、従来のインキュベータは、ドアを開ける際に大量の空気の流入を受け、そのことは微生物汚染の相当な増加の原因となる。したがって、微生物汚染への曝露を減少させる、有効な大気及び環境の制御を提供する、改善されたインキュベータへの提供に対するニーズが未だある。
【発明の概要】
【0009】
インキュベータの開口部に沿って、又は開口部に平行に一次エアベールを導く一次気流制御装置を少なくとも用いる、効果的な大気及び環境の制御を備えたインキュベータが本開示において開示される。最も典型的には、温度及び/又は組成の変化に適応するために、一次エアベール内の空気の相当な部分は再循環され、必要に応じて温度及び/又は組成が調整される。
【0010】
一態様においては、本発明者らは、開口部を有する内部容器を少なくとも部分的に取り囲む筐体を有するインキュベータを想定している。ドアは、筐体及び/又は内部容器に連結され、インキュベータの外側の位置から内部容器にアクセスすることを可能とする第1の位置と、上記インキュベータの上記外側の位置から上記内部容器にアクセスすることを防止する第2の位置との間で運動可能である。さらに、上記インキュベータは、上記筐体及び/又は上記内部容器に連結され、一次エアベールを、上記開口部を覆う仮想平面に沿って、又は仮想平面に実質的に平行に導く一次気流制御装置を備える。
【0011】
ある想定された態様において、上記インキュベータは、筐体及び/又は内部容器に連結され、一次エアベールと実質的に平行な二次エアベールを導く二次気流制御装置を更に含む。さらに、想定されたインキュベータが、一次及び/又は二次吸込ファンを更に含むのが好ましいことは理解されるはずである。ここで、上記一次吸込ファンは一次エアベールから空気を受け取れるように配置され、上記二次吸込ファンは二次エアベールから空気を受け取れるように配置される。必須ではないが、最も典型的には、一次エアベール及び/又は二次エアベールは、指向ベール又は層流ベールである。さらに、一次気流制御装置が一次エアベールから内部容器に空気(の一部又は全部)を一時的に導く可動羽根を備えていてもよいことが想定されている。
【0012】
更なる想定される態様において、インキュベータの上記ドアは、開口部からドアを遠ざけ、且つ開口部からドアを上方に動かす複合運動により運動可能である。さらに、筐体、内部容器、及び一次気流制御装置が、一次エアベール内の空気の再循環を可能とする再循環スペースを形成するように互いに相対的に配置されることが想定されている。有利には、一次エアベール内の空気の再循環によって、上記ベール内の空気の70%以上、又は80%以上、又は90%以上を再循環させる。
【0013】
想定されるインキュベータは、フィルタユニット、吸収ユニット、滅菌ユニット、温度制御ユニット、温度センサ、湿度センサ、気圧センサ、及び/又はガスセンサを更に含んでもよく、それらは上記再循環スペース内に少なくとも部分的に配置されるのが好ましい。更にインキュベータは、外部供給源からのガスがそれを通して上記再循環スペースに供給されるガス入口を更に含んでもよい。
【0014】
所望であれば、インキュベータは、ドア、一次気流制御装置、及び二次気流制御装置に電子的に連結された制御回路を含む。好ましくは、ドアが第1から第2の位置へ運動し始めると、制御回路は、例えば、一次及び/又は二次気流制御装置を作動させるようにプログラムされている。さらに、想定されたインキュベータは、ユーザの命令を受け取るように、及び/又はインキュベータの認定ユーザを認証するようにプログラムされたアクセス制御装置を含んでもよく、またインキュベータは、下記により詳しく述べるように、インキュベータに送達される窒素富化産物を生成するメンブレンフィルタ又は圧力スイング吸着ユニットに更に連結されていてもよい。
【0015】
インキュベータは、内部容器に運動可能に連結され、トレイが一次エアベールを通って引き出されたとき、一次層流エアベールの通路となる、(例えば、ハニカム構造の)トレイを貫通する流路を有する一以上のトレイを更に含んでいてもよい。加えて、インキュベータの内部容器が、筐体から外に内部容器が運動することを可能にする可動継手(例えば、レール又は伸縮システム)を介して筐体に連結されることもまた想定されている。
【0016】
したがって、異なる視点から見ると、本発明者らは、開口部を有する内部容器を少なくとも部分的に取り囲む筐体を備えたインキュベータもまた想定されている。そのようなインキュベータは、上記筐体及び/又は上記内部容器に連結され、一次エアベールを、上記開口部を覆う仮想平面に沿って、又は仮想平面に実質的に平行に導く一次気流制御装置をさらに備える。最も典型的には、筐体、内部容器、及び一次気流制御装置が、一次エアベール内の空気の再循環を可能とする再循環スペースを形成するように互いに相対的に配置され、再循環スペースは、CO2センサ、O2センサ、湿度センサ、気圧センサ、及び温度センサからなる群から選択される複数のセンサを少なくとも部分的に取り囲み、更に滅菌ユニット、高効率微粒子空気(HEPA)フィルタ、活性炭フィルタ、及び/又はヒータを少なくとも部分的に更に取り囲む。
【0017】
所望であれば、上記インキュベータは、筐体及び/又は内部容器に連結され、一次エアベールと実質的に平行に二次エアベールを導く二次気流制御装置を更に含む。さらに、インキュベータが、一次及び/又は二次吸込ファンを更に含んでもよいことが想定される。ここで、上記一次吸込ファンは一次エアベールから空気を受け取れるように配置され、上記二次吸込ファンは二次エアベールから空気を受け取れるように配置される。必須ではないが、好ましくは、二次気流制御装置が周囲空気を受け入れるように構成され、二次吸込ファンが周囲空気へ二次エアベールを放出する。
【0018】
想定される更なる態様において、一次エアベール及び/又は二次エアベールは指向ベール又は層流ベールであるか、及び/又は一次気流制御装置は再循環スペースを通る一次エアベール内の全空気のうち90%以上を再循環させる。ある実施形態においては、再循環スペースが、CO2センサ、O2センサ、滅菌ユニット、高効率微粒子空気(HEPA)フィルタ、活性炭フィルタ、及び/又はヒータのうち少なくとも2つを少なくとも部分的に取り囲む。別の実施形態においておいては、上記再循環スペースが、CO2センサ、O2センサ、滅菌ユニット、高効率微粒子空気(HEPA)フィルタ、活性炭フィルタ、及び/又はヒータのうち少なくとも3つを少なくとも部分的に取り囲み、更なる実施形態においては、上記再循環スペースが、CO2センサ、O2センサ、滅菌ユニット、高効率微粒子空気(HEPA)フィルタ、活性炭フィルタ、及びヒータを少なくとも部分的に取り囲む。所望であれば、二酸化チタンを含む表面の方に向けられた紫外線源を滅菌ユニットが含む。
【0019】
更なる想定された態様においては、本発明者らは、インキュベータの外側の位置から内部容器にアクセスすることを可能とする第1の位置と、インキュベータの外側の位置から内部容器にアクセスすることを防止する第2の位置との間で運動可能なドアを有し、更に一次気流制御装置を備えたインキュベータのためのインキュベータ制御ユニットをも想定している。特に好ましい態様においては、上記インキュベータ制御ユニットは、マイクロプロセッサと、マイクロプロセッサ上で実行可能な指令を記憶するとメモリを備え、上記指令は、制御ユニットに、(a)ドアが第2の位置へと運動している際に、一次気流制御装置を下方制御させると共に、必要に応じて羽根を一次気流制御装置に連結させるよう運動させるか、(b)ドアが第1の位置へと運動している際に、一次気流制御装置及び必要に応じて設けてもよい二次気流制御装置を上方制御させるか、及び/又は(c)ドアが第1の位置にあるときに、羽根を一次気流制御装置に連結させるように運動させる。
【0020】
直ちに理解されるように、制御ユニットは、温度センサ、ガスセンサ、気圧センサ及び/又は湿度センサに更に電子的に連結されていてもよく、上記指令が、制御ユニットにヒータを作動させるか、ガスバルブを開いてインキュベータ内にガスを流入させるか、及び/又は加湿機を作動させる指令であってもよい。追加で、又は代わりに、上記指令が、制御ユニットに更に、ドアが第1の位置にある間、ヒータを作動させるか、ガスバルブを開いてインキュベータ内にガスを流入させるか、及び/又は加湿機を作動させる指令であってもよい。最も典型的には、ガスセンサはO2センサ及び/又はCO2センサである。
【0021】
ある実施形態においては、制御ユニットは、ユーザの命令を受け取るように、及び/又はインキュベータの認定ユーザを認証するようにプログラムされたアクセス制御装置に更に電子的に連結されている。最も典型的には、ユーザの命令を受ける際、及び/又はインキュベータの認定ユーザを認証する際に、指令によって制御ユニットがドアを第1の位置から第2の位置へと運動させる。発明の主題を限定するわけではないが、ユーザの命令は音声命令、又は視認可能な/ジェスチャーによる命令である。したがって、実施形態の一部においては、認定ユーザは、顔認識によって認証される。さらに、制御ユニットはまた滅菌ユニットに電子的に連結されていてもよく、また指令によって制御ユニットに滅菌ユニットを作動させてもよい。
【0022】
発明の主題の更なる想定された態様において、本発明者らは、インキュベータ内の制御雰囲気(例えば低酸素雰囲気)を維持する方法であって、インキュベータの外側の位置から内部容器へのアクセスが可能な間、インキュベータの内部容器の開口部を覆う仮想平面に沿って、又は仮想平面に平行に一次エアベールを流すことを含み、一次エアベール内の空気の90%以上がインキュベータを通して再利用される方法を想定している。
【0023】
前に述べたように、一次エアベール内の空気の90%以上又は95%以上がインキュベータによって再利用されるように想定されている。さらに、想定された方法は、一次エアベールと実質的に平行に二次エアベールを流すステップを更に含んでもよい。最も典型的には、二次エアベールの10%未満がインキュベータを通して再利用されるか、及び/又は一次エアベール及び/又は二次エアベールは、指向ベール又は層流ベールである。更に好適な実施形態において、一次及び/又は二次エアベールは、複数の一次/二次気流制御装置を用いて形成される。最も典型的には、二次エアベールは一次エアベールと実質的に平行に流れるか、及び/又は一次エアベール及び/又は二次エアベールは、指向ベール又は層流ベールである。
【0024】
更に好適な方法は、ガスバルブ、ヒータ及び/又は加湿機を制御するインキュベータ制御回路を用いるステップを含み、その中で制御回路は、ガスセンサ、温度センサ、及び/又は湿度センサから信号を受け取り、ガスセンサ、温度センサ、及び/又は湿度センサが、インキュベータを通して再利用される空気内のガス、温度、及び/又は湿度を感知する。例えば、インキュベータの外側の位置からの内部容器へのアクセスが可能な間、温度の逸脱が5℃未満になるように雰囲気が制御される。別の例においては、インキュベータの外側の位置から内部容器へのアクセスが可能な間のガス濃度の逸脱が2%(絶対値(absolute))未満であるように雰囲気が制御され、さらに別の例においては、インキュベータの外側の位置から内部容器へのアクセスが可能な間の湿度の逸脱が5%(絶対値(absolute))未満であるように、雰囲気が制御される。
【0025】
異なる視点から見ると、本発明者らは更に、インキュベータ内の制御雰囲気を再確立する方法であって、内部容器内の開口部を覆う仮想平面に沿って、又は仮想平面に実質的に平行に伸びる一次エアベールを通過する、インキュベータの外側の位置から内部容器へのアクセスであって、そのアクセスにより制御雰囲気が変化するアクセスを許可するステップを含む方法をも想定している。別のステップでは、アクセスが可能な間、一次エアベール内の空気の少なくとも一部がインキュベータ内の再循環スペースを通して再循環され、更なるステップでは、一次エアベールが再循環される間、制御雰囲気の少なくとも1つのパラメータ(例えば、O2濃度、CO2濃度、湿度、及び/又は温度)が再循環スペースで測定される。さらに、その後、一次エアベールが再循環される間、再循環スペース内にガスを注入するか、及び/又は再循環スペース内で空気を加熱することによって少なくとも1つのパラメータを調整することができる。
【0026】
必須ではないが、好ましくは、一次エアベール内の空気の90%以上をインキュベータによって再利用するか、及び/又は、アクセスが可能な間に、上記調整するステップが行われる。さらに、想定される方法は、一次エアベールを生成することによりインキュベータの内部容器内の空気を混合することを可能とする一次気流制御装置において、羽根の角度を変えるステップを更に含む。最も典型的には、一次エアベールは、指向ベール又は層流ベールである。想定される方法の更なる態様においては、一次エアベールの少なくとも一部は、内部容器内へ導かれてもよい。ほとんどの場合、インキュベータの制御雰囲気は、最も逸脱してから1分以内に再確立される。
【0027】
更なる態様においては、インキュベータの外側の位置からの、インキュベータの内部容器へのアクセスを開放している間、インキュベータ内の制御雰囲気の環境パラメータの逸脱を低減する方法が想定される。そのような方法は、ドアを開けてインキュベータの内部容器にアクセスできるようにする前に、インキュベータの内部容器内の開口部を覆う仮想平面に沿って、又は仮想平面に平行に一次エアベールを流すステップを含む。一次エアベールを確立すると、次にドアを開口部から遠ざけ、開口部から横方向に運動させる複合運動においてドアを運動させ、ドアが運動させると、二次エアベールが一次エアベールと実質的に平行に流される。
【0028】
例えば、一次エアベール内の空気の90%以上をインキュベータ内で再循環させてもよく、二次エアベール内の空気の10%以下をインキュベータ内で再循環させてもよい。他の例において、ドアを動かす際又は動かした後に一次エアベールの流量を増加させてもよく、一次エアベールの一部をインキュベータの内部容器内に導いてもよい。所望であれば、一次エアベールが、複数の一次気流制御装置によって生成される。
【0029】
想定された更なる態様において、本発明者らは、制御雰囲気インキュベータ内でのガスの消費(例えば、トライガス(tri-gas)の消費)を低減する方法もまた想定しており、そのような方法はインキュベータ内の再循環スペースであって、一次気流制御装置に流体的に連結された再循環スペースに、空気、窒素、及び/又は二酸化炭素を供給するステップを含む。別のステップにおいては、インキュベータの外側の位置からの、インキュベータの内部容器へのアクセスが可能な間、インキュベータの内部容器の開口部を覆っている仮想平面に沿って、又は仮想平面に平行に一次エアベールを流すために一次気流制御装置が用いられる。最も典型的には、一次エアベール内の空気の90%以上又は95%以上がインキュベータによって再利用される。
【0030】
発明の主題を限定するものではないが、一次エアベールが指向ベール又は層流ベールであるか、及び/又は二次エアベールが一次エアベールと実質的に平行に流されるのが概して好ましい。実施形態の一部においては、上記窒素はメンブレンフィルタ又は圧力スイング吸着ユニットから供給され、最も典型的には、上記制御雰囲気は低酸素雰囲気である。
【0031】
さらに、本発明者らは、第1の導管を介してガス混合装置に流体的に連結される周囲空気コンプレッサと、周囲空気コンプレッサを、窒素富化産物を生成する圧力スイング吸着(PSA)ユニット又は膜濾過ユニットに連結させる第2の導管とを含む制御雰囲気インキュベータのためのガス供給システムをも想定している。最も典型的には、第2の導管はPSA又は膜ユニットをガス混合装置に更に連結させ、第3の導管はガス混合装置を制御雰囲気インキュベータに連結させる。所望であれば、ガス供給システムは、第4の導管を介してガス混合ユニットに流体的に連結された圧縮CO2の供給源を更に含む。
【0032】
好ましい態様において、第1、第2、第3及び/又は第4の導管は、流量調節弁及び/又は質量流量計を含む。最も典型的には、ガス供給システムは、ガス混合ユニットの下流に、O2とCO2センサも更に有する。好ましくは、第1の及び/又は第2の導管はサージタンクを含む、及び/又は、第3の導管は制御雰囲気インキュベータの上流でリザーバに流体的に連結される。さらに、本開示で想定されているガス供給システムにおいて、第3の導管が第2の制御雰囲気インキュベータの上流で第2のリザーバに流体的に連結されていてもよいことが理解されるはずである。
【0033】
更なる実施形態においては、本発明者らは、開口部を有する内部容器(典型的には、容積が10L~200Lの内部容器)を少なくとも部分的に取り囲む筐体を有するインキュベータをも想定している。一次気流制御装置は筐体及び/又は内部容器に連結され、開口部をカバーしている仮想平面に沿って、又は仮想平面に実質的に平行に一次エアベールが導かれるように内部容器と相対的に配置され、二次気流制御装置は筐体及び/又は内部容器に連結され、一次エアベールと平行に二次エアベールが導かれるように内部容器と相対的に配置される。さらに、ドアは、ドア全体が仮想平面から離れ、かつドア全体が水平方向又は垂直方向に運動可能なように、筐体及び/又は内部容器に連結されている。
【0034】
ある実施形態においては、内部容器、及び一次気流制御装置が、一次エアベール内での空気の再循環を可能とする再循環スペースを形成するように互いに相対的に配置されている。最も典型的には、再循環スペースは複数のセンサ(例えば、CO2センサ、O2センサ、湿度センサ、気圧センサ、及び/又は温度センサ)を少なくとも部分的に取り囲み、さらに付加的な機能性部品(例えば、滅菌ユニット、高効率微粒子空気(HEPA)フィルタ、活性炭フィルタ、及び/又はヒータ)を少なくとも部分的に取り囲んでもよい。
【0035】
所望であれば、インキュベータは、一次及び/又は二次吸込ファンを更に含んでもよく、ここで、上記一次吸込ファンは一次エアベールから空気を受け取れるように配置され、上記二次吸込ファンはエアベールから空気を受け取れるように配置される。更なる実施形態においては、二次気流制御装置が周囲空気を受け入れるように構成され、二次吸込ファンが周囲空気へ二次エアベールを放出する。
【0036】
必須ではないが、典型的には、一次エアベール及び/又は二次エアベールは、指向ベール又は層流ベールである。追加の実施形態において、一次気流制御装置は、再循環スペースを通る一次エアベール内の全空気の90%以上を再循環させ、及び/又は一次エアベールの向きを制御する可動羽根を更に有するか、可動羽根に更に連結されていてもよい。更なる実施形態においては、一次エアベール及び/又は二次エアベールは、約0.3~0.6m/秒の間の気流を有する。
【0037】
さらに、マイクロプロセッサと、そのマイクロプロセッサ上で実行可能な指令を記憶するメモリと、を有する制御ユニット備えてもよいインキュベータを想定している。ここで上記指令は、制御ユニットに、a)ドアが閉じられた位置へ運動している際に、一次気流制御装置を下方制御させると共に、必要に応じて羽根を一次気流制御装置に連結させるよう運動させるか、b)ドアが開かれた位置へ運動している際に、一次気流制御装置及び必要に応じて設けてもよい二次気流制御装置を上方制御させるか、及び/又はc)ドアが開かれた位置にあるときに、羽根を一次気流制御装置に連結させるように運動させる、指令である。所望であれば、制御ユニットが、温度センサ、ガスセンサ、気圧センサ、及び/又は湿度センサに更に電子的に連結されていてもよく、上記指令が、制御ユニットにヒータを作動させるか、ガスバルブを開いてインキュベータ内にガスを流入させるか、及び/又は加湿機を作動させる指令であってもよい。さらに、制御ユニットは、ユーザの命令(例えば、音声命令又はユーザのジェスチャー)を受け取るように、及び/又は(例えば、顔認識による)インキュベータの認定ユーザを認証するようにプログラムされたアクセス制御装置に電子的に連結されていてもよく、指令は、制御ユニットに、ユーザの命令を受ける際、及び/又は認定ユーザを認証する際に閉じられた位置から開かれた位置にドアを運動させる。
【0038】
更なる実施形態において、ドアが閉じられた位置であるとき、ドアは(二次エアベールが作動していない状態で)二次エアベールによって占められている領域内に配置されていてもよい。
【0039】
様々な物、特徴、態様、及び利点は、添付の図面と共に、好ましい実施形態の以下のより詳細な説明からより明らかになるであろう。なお図面においては同様の数字は同様の構成要素を表す。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1】公知のインキュベータの選択された環境パラメータの回復のための、例示的なグラフを表す。
【0041】
【
図2】発明の主題による、ドアが閉じられた状態でのインキュベータ内の概略的な気流の例示的な図を表す。
【0042】
【
図3】発明の主題による、ドアが開かれている時のインキュベータ内の概略的な気流の例示的な図を表す。
【0043】
【
図4】発明の主題による、ドアが開かれた状態でのインキュベータ内の概略的な気流の例示的な図を表す。
【0044】
【
図5】発明の主題による、フラッシュモードにおいてドアが開かれた状態でのインキュベータ内の概略的な気流の例示的な図を表す。
【0045】
【
図6】選択された構成部品を示す、内部容器と再循環スペースの例示的な図を表す。
【0046】
【
図7】流れ高さと出口速度の関数としての、気流の特徴の例示的なグラフを表す。
【0047】
【
図8】
図6の内部容器及び再循環スペースを備えたインキュベータ内の、低い気流速度での計算流体力学モデリングを用いてシミュレーションされた気流の例示的な図を表す。
【0048】
【
図9】内部容器及び再循環スペースを備えた
図6のインキュベータ内の、高い気流速度での計算流体力学モデリングを用いてシミュレーションされた気流の例示的な図を表す。
【0049】
【
図10】内部容器と再循環スペースが同一の広がりをもたない代替的な構造の一つの例示的な図を表す。
【0050】
【
図11】発明の主題による、ドアが閉じられた状態でのインキュベータの例示的な図を表す。
【0051】
【
図12】発明の主題による、ドアが開かれた状態でのインキュベータの例示的な図を表す。
【0052】
【
図13】一次及び二次吸込ファンのため吸気口を示す例示的な詳細図を表す。
【0053】
【
図14】一次及び二次気流制御装置を示す例示的な詳細図を表す。
【0054】
【
図15】細胞培養液容器を備えた、発明の主題によるインキュベータの例示的な斜視図を表す。
【0055】
【
図16】発明の主題による、ガス供給システムの例示的な概略図を表す。
【0056】
【
図17】発明の主題による、複数のインキュベータを独立に運転するためのガス供給システムの例示的な概略図を表す。
【発明の詳細な説明】
【0057】
本発明者らは、優れた大気及び環境の制御を提供する概念的に単純であるが効果的な方法で、細胞及び組織の培養用インキュベータが製造され、運転できることを発見した。実際、本開示で提案されるインキュベータは、インキュベータ内の制御雰囲気状態に関して、たとえインキュベータが開放され、インキュベータ内の内容物にユーザが作用する場合であっても、これまでには得られなかった運転上の安定性を示した。そのような運転上の有益性は、開口部を覆う仮想平面に沿って、又は仮想平面に実質的に平行に導かれる一以上のエアベールを使用することによって達成され、そのエアベール内の空気のかなりの部分は再循環される。さらに、エアベールの組成、流量、及び/又は温度又は空気はリアルタイムに調整することができ、所望であれば、エアベールの一部は(例えば、可動羽根を使用して)インキュベータ内に導かれ、インキュベータの内部から失われた空気を交換又は補充する。
【0058】
対照的に、本開示において提案される、想定されたインキュベータ及びそのための方法は、チャンバ全体の中の空気が垂直流に曝される層流無菌箱、層流ワークステーション、又はバイオセイフティキャビネットとは有意に区別されるものであることが理解されるはずである。上記のような装置でチャンバ内の細胞や材料を保護しようとすると、これらの装置では細胞又は組織の培養の厳しい条件の中で運転パラメータを維持することが困難であることから、上記のような装置は細胞及び組織の培養には適していない。最も典型的には、なんらかの重要な制御(例えば、幹細胞培養の低酸素条件の維持など)を提供することもなく、空気がこれらの装置に引き込まれ、濾過され、装置を出る。異なる視点から見ると、そのような層流フローキャビネット内の気流は、終始単一のパス・フローである。
【0059】
したがって、そして、発明の主題のより包括的な態様において、細胞又は組織の培養容器を収容できる大きさ及び寸法に設定された内部容器であって、それを通って細胞又は組織の培養容器を内部容器に入れる、又は内部容器から取り出すことが可能な開口部を備えている内部容器を少なくとも部分的に囲む筐体を有するインキュベータを、本発明者らは想定している。最も典型的には、ドアが筐体及び/又は内部容器に連結され、インキュベータの外側の位置から内部容器にアクセスすることを可能とする開かれた位置(第1の位置)と、上記外側の位置から内部容器にアクセスすることを防止する閉じられた第2の位置(第2の位置)との間で運動可能である。所望であれば、筐体及び/又はドアは、インキュベータ、関連の機器、及び/又はインキュベータ内の細胞や組織との電磁放射の干渉を防止するためのEMI遮蔽を更に含んでもよい。
【0060】
直ちに理解されるように、内部容器の大きさ、寸法、及び容積はかなり変わり得るものであり、特定の使用によってこれらの寸法に関するパラメータを少なくとも部分的に決定する。最も典型的には、内部容器は、現在公知の細胞と組織の培養用インキュベータに従って大きさや寸法が決められる。このように、内部容器の容積は特定の需要により変わり得るものであり、典型的には10~30L、又は30~50L、又は50~150L、又は100~200L、又は150~300Lであり、さらにそれより大きい場合もある。最も典型的には、本開示において提案されるインキュベータは、細胞又は組織の培養用インキュベータとして用いられるが、他の実施形態において、本開示において提案される装置は、インキュベータシェーカ、冷蔵庫、フリーザ、ワークベンチ、グローブレスグローブボックスなどとして構成することもできる。従って、好適な容積は10L以上、又は20L以上、又は50L以上、又は100L以上、又は150L以上、又は200L以上であり、又はそれよりも大きい場合もある。
【0061】
次に、一次気流制御装置は、一次エアベールを、開口部を覆う仮想平面に沿って、又は仮想平面に実質的に平行に導く筐体及び/又は内部容器に連結される。この文脈において、「開口部を覆う仮想平面に沿って、又は仮想平面に平行に」という表現は、エアベールが開口部の実質的に全て(例えば、開口部の85%以上、又は90%以上、又は95%以上)を横断して延在することを表現するのを意図している点に留意する必要がある。同様に、エアベールが仮想平面と実質的に平行である場合、仮想平面とエアベールの間の角度は30度未満であるか、又は20度未満であるか、15度未満であるか、又は10度未満である。したがって、エアベールは、開口部の前に配置されてもよく、開口部の後に配置されてもよく、及び/又は開口部内に配置されてもよい。さらに、エアベールは同一の厚みを持っているシート状の構造である必要はなく、一端に薄い部分を有し、他端に幅広い部分を持つエアベールとして構成されてもよいことも認識されるはずである。さらに、そして、下記に更に詳細に述べられるように、エアベールは、協調して単一のベールのように振る舞う、複数の個々のベール部から構成された複合ベールであってもよい。
【0062】
発明の主題を限定するわけではないが、上記インキュベータは、筐体及び/又は内部容器に連結され、一次エアベールと実質的に平行な二次エアベールを導く二次気流制御装置を更に含んでもよいことは理解されるはずである。再度になるが、「一次エアベールと実質的に平行な二次エアベール」という表現は、2つのエアベールが交差せず、それらの間に距離があり、そのため互いの間に角度(30°未満、又は20°未満、又は15°未満、又は10°未満)があってもよいことを表現することを意図している点に留意すべきである。典型的には二次エアベールは同一の厚みであるが、二次エアベールが一端でより薄く、もう一端でより厚くてもよいこともまた想定されている。
【0063】
なお更なる想定された態様において、一次及び二次エアベールは、共に上下の流れ方向に向いているか、又は同一の方向(例えば両方とも横方向)に流れているのが好ましい。しかしながら、ある態様では、少し好ましさの点では劣るものの、エアベールが同じ方向に向いている必要はない。向きに関係なく、エアベールが一次及び/又は二次気流制御装置で生成されるのが典型的には好ましく、そして横流ファン、エアジェット、及び/又は一般のファンによって生成されるのが最も望ましい。必要又は所望に応じて、一つ以上の装置(例えば、ハニカム構造、狭窄部があってもなくてもよい円筒状構造、複数のブレード又は羽根等)を通して更に導かれてもよく、それにより非乱流の(指向性又は薄層状の)気流を支援してもよい。発明の主題を制限するものではないが、一次及び/又は二次気流制御装置が一次及び/又は二次吸込ファンに支援されてエアベールが安定するのを助けることも更に想定されている。したがって、発明の主題の好ましい態様においては、一次吸込ファンが一次エアベールから空気を受け取るように配置され、二次吸込ファンは二次エアベールから空気を受け取るように配置される。したがって、更に好ましい態様においては、一次エアベール及び/又は二次エアベールは、指向ベール及び/又は層流ベールであってもよい。さらに他の想定された装置では、エアベールは、指向性の非層流を生成する反転ファンによって形成されてもよい。
【0064】
前に述べたように、一次エアベール内の空気の相当な部分がインキュベータを通して再循環されるのが一般的に好ましい。可能であれば、そのような再循環は二次エアベールには典型的には実装されない(又は必要でさえない)。したがって、二次エアベールのための空気は、インキュベータの外側の位置から引きこまれてもよく、インキュベータの外側の別の位置に、二次吸込ファンを経て排出されてもよい。少なくともその意味においては、第1及び第2のエアベールと一次及び/又は二次気流制御装置は、それぞれに独立に作動される、又は作動されてもよい。加えて、少なくとも一次気流制御装置が一次エアベールの向き及び/又はジオメトリーを制御する機構(例えば、可動羽根)を含むことは、概して想定されている。下記に更に詳細に検討されるように、一次エアベールの一部が内部容器内に導かれることにより内部容器内の雰囲気のパラメータ(例えば、温度、ガス濃度、湿度等)の一つ以上を迅速に調整する場合に、そのような制御は特に有利である。
【0065】
さらに、再循環スペースを通して一次エアベールからの空気を再循環することにより、再循環されている空気(例えば、ガス組成、温度、湿度など)のパラメータの一つ以上を迅速に調整でき、インキュベータ内の環境制御が可能になることが理解されるはずである。最も典型的には、再循環スペースは、再循環されている空気のパラメータの一つ以上を制御及び/又は調整するためのさらにいくつかの追加の装置及び/又はセンサを最も典型的には含む、筐体と内部容器との間の空間によって形成される。例えば、フィルタユニット(例えば、HEPAフィルタ)、吸収ユニット(例えば活性炭フィルタ)、滅菌ユニット(例えば紫外線を用いる滅菌ユニット)、温度制御ユニット(例えばヒータ)、温度センサ、湿度センサ、気圧センサ、及び/又はガスセンサ(例えばO2及び/又はCO2センサ)が再循環スペース内に設けられてもよい。さらに、外部の供給源からのガスがそこを通って再循環スペース内の空気に供給され得る一つ以上のガス入口が再循環スペースに備えられていてもよい。しかしながら、下記により詳細に示すように、再循環スペースは、内部容器に流体的に連結される別々のスペース/空間(ボリューム)として構成されてもよい。
【0066】
実施形態の一部において、想定されたインキュベータは、内部容器内の空気を内部容器外の空気から切り離すために、異なるスペース(例えば、外側の再循環スペースと内部容器)を使用する。実際には、再循環スペースが
図6、8及び9の例示的なインキュベータで示されるような内部容器の周囲を包むことが必須であるというわけではない。実際、横並びのものや、パイプ状の設計などの、同じ一次及び/又は二次気流制御装置を維持する構成であればどのような構成でも動作することを想定している。しかしながら、図示されているような、周囲を包むデザインの一つの重要な利点は、空気が循環するにつれて、空気が遠心挙動を示すということである。その遠心挙動により粒子を再循環スペースの外側端部の近くに優先してとどまらせ、再循環スペースに組み込まれる濾過システムにその粒子を通過させ、その濾過システムにより粒子を捕捉させる。さらに、開口部を通して囲い(エンクロージャ)に入り込む未計量の空気は、空気調節される再循環スペースを通して捕捉されて送られ、内部容器に環境的にとどまる期間を低減できる。想定された構成のもう一つの有益性は、運転の間、保守(メンテナンス)(例えばフィルタ交換)が容易であることである。
【0067】
好適なドアに関し、開口部を少なくとも一時的に閉じることができるどんなドアでも本開示における使用に適していると考えられることが想定され、想定されているドアは(例えば、ヒンジを中心とした)回転/旋回運動、(例えば、伸縮ギアを使用した)垂直又は水平並進運動、又は(例えばトランメルピボット又は複合ピボットを用いた)複合運動によって内部容器にアクセスできるようにすることができる。しかしながら、ドアを(まず)開口部から遠ざけ、(その後)開口部から上方へ動くような様式でドアが筐体及び/又は内部容器に連結されることが概して好ましい。そのような開き方によって、インキュベータの内部から外部へ空気を押しやる空気の動き及び/又はドアとインキュベータ室の内部との間の乱気流の量の厳密さを有利に低減する。例えば、ドアは、典型的には(内部容器に向かって、又は内部容器から離れるような)Y軸に沿った第1の動きと、開口部(X軸又はZ軸)に渡って延在する仮想平面に平行な第2の動きによる、(ドアの一端に沿って延在するヒンジ又は他の旋回機構に基づくものではない)非旋回運動において運動可能であるのが好ましい。そのような運動は連続的であるのが好ましく、また単一の合成運動で行われてもよい。あるいは、上記ドアは、(典型的には、最初に回転ドアを開口部から離した後、)ドアの周囲の近く、ドアの周囲、あるいはドアの周囲の外側の軸を中心に回転してもよい。更なる実施形態において、ドアは、可撓性のコネクタ又はフィルムを介して次々に連結された各セグメントを備える、可撓性の又はセグメント化された(したがってセグメント化されたガレージ用ドアと類似する)カバーとして構成されていてもよい。そのような可撓性の又はセグメント化されたドアは、開口部に実質的に平行で、内部容器又は筐体の上壁又は側壁に向かうスライド運動により動かすことができる。
【0068】
さらに、ドアがインキュベータの内側と外側の間の圧力差に適応するための磁気(又は機械的)ドアシールを使用してもよい点に留意する必要がある。所望であれば、ドアは、棚やオペレータが閉じ込められるのを防ぐように設計された安全機構を含んでもよいことが更に想定され、好適な安全機構はトルク増加センサ、光学センサ、及び/又は接近センサに基づくものであってもよい。なおそれらのセンサは全て当該技術分野において周知である。特に、そのように改変されたインキュベータがグローブボックス、(バイオセーフティレベル2+)の細胞又は組織の培養ベンチ、換気フード等として使用できるように、ドアを全く有する必要がないインキュベータも想定されていることは理解されるはずである。このように、内部容器の開口部が二重のエアカーテン/ベールによって遮蔽されることは理解されるはずである。有利にも、これまで公知のインキュベータでは一般的であるような内部容器に吸い込まれる汚染された空気がないために、そのような遮蔽によって汚染が有意に減少されるか、又は汚染を完全に回避さえする。別の視点から見ると、エアベールは、内部容器の環境を保存しつつ、汚染を防止する仮想エアロックとして作用する。
【0069】
直ちに認識されるように、様々な外部装置(例えば、スマートフォン、タブレット、ネットワークノード、又はアクセスポイント等)と情報的に通信するように典型的にさらに構成される、予めプログラムされた、及び/又はプログラム可能な制御回路を介して、想定されたインキュベータの運転を制御するのが好ましい。典型的な態様において、制御回路は少なくともドア、一次気流制御装置、及び/又は二次気流制御装置に電子的に連結され、最も典型的には、温度センサ、ガスセンサ(例えば、O2センサ又はCO2センサ)、気圧センサ、及び/又は湿度センサとも電子的に連結される。ここで、下記に更に詳細に述べられるように、上記制御回路はヒータを作動させ、インキュベータ内にガスを導入させるためにバルブを開き、及び/又は加湿機を作動させるようにプログラムされている。またさらに、上記制御回路は、ユーザの命令(例えば、音声命令)を受け取るように、及び/又はインキュベータの認定ユーザを(例えば、画像認識を経て)認証するようにプログラムされたアクセス制御装置に電子的に連結されていてもよいこと、及び使用者のユーザの命令を受け取ると、及び/又は認定ユーザを認証すると、上記制御回路がドアを開ける及び/又は閉じることは理解されるはずである。
【0070】
例えば、好適なセンサには、CO2及びO2ガスセンサ(N2濃度は、検出されたCO2とO2の濃度から求められ得る点に注意)、温度センサ、湿度センサ、及び気圧センサが含まれる。好ましい実施形態において、「スプリットブレイン(分割脳)」検出エラーを回避するために、各環境パラメータに対するセンサが三重に存在し、それらのセンサは、より迅速な応答とより精密な制御を得るために、空気の通路内の要所に配置することができる。想定されたインキュベータにおいて使用されるセンサはが名目上「迅速な」カテゴリーと、「精密な」カテゴリーに分けることができることは更に認識されるはずである。迅速なセンサはリアルタイムの結果(一般に1秒未満)を合理的な正確さで得ることができ、一方、精密なセンサは、整定するまでに最大15秒かかる場合があるが、「較正」レベルの精度を提供し得る。迅速なセンサの一例は、典型的な精度が0.5℃~5℃(モデルに依存する)で、典型的な応答時間が10分の1秒の、一般に調達できる熱電対である。精密なセンサの例は、プラチナRTD(測温抵抗体)センサである。プラチナRTDセンサは精度が0.1℃~1℃で、整定時間が1~30秒の範囲で一般的に利用可能である。
【0071】
正常で安定な閉ループ運転において、精密なセンサは、運転環境の非常に精密な制御を維持するのに用いられる。環境の摂動が検出される(例えば、ドアが開けられる)と、インキュベータは迅速なセンサを用いて、検出された逸脱に迅速にアクセスして修正する。一旦逸脱が落ち着くと、インキュベータは精密なセンサに戻って制御する。例えば、加熱(及び周囲が37℃を超える場合は適度な冷却)能力を提供できる、再循環スペースの後部に配置される熱電モジュールによって温度調節がなされ得る。当該技術分野で周知のような窒素タンクと濾過された圧縮空気によるか、又は特別な混合ガス発生器を介するか、のいずれかによって、酸素/窒素制御がなされ得る。CO2は、当該技術分野で周知のようなガスタンクから通常提供される。湿度調節のために、上記ユニットは、湿度を減少させるための、周知の伝統的な加熱パンから専用の湿度制御技術(モレキュラーシーブ吸着等)に至るまでの技術、及び湿度を増加させるための外部湿度発生器を使用できることも想定されている。必要に応じて、上記ユニットは、典型的にはインキュベータにガスを供給するか、又はインキュベータからガスを抜き取ることによって、精密に気圧を制御することもできる。
【0072】
図2は、ドアが閉じられた状態における、インキュベータ内の例示的な構成と気流の側面図を表す。この例示的な図においては、ドアが閉じられた位置にあり、一次空気制御のみが運転中(気流は矢印で示されている)であることは認識されるはずである。認識されるように、インキュベータ200の内部容器の雰囲気の環境制御は、筐体210と内部容器220との間に形成される再循環スペース212を通して(可動羽根232を備えている)一次気流制御装置230を通した空気の再循環によって維持される。
図2から分かるように、再循環スペースは、O
2及びCO
2センサ270,272、ヒータ280、ガス入口282、フィルタ283(活性炭)、フィルタ284(HEPA)、並びに滅菌ユニット290を含む。エアベールは、一次気流制御装置と一次吸込ファン240との間に形成され、エアベールのジオメトリーと向きは可動羽根232によって制御される。ドアが閉じた位置にあるこの例示的な構成においては、ドアが開けられている場合と比較して、(例えば、気流の体積の50~90%、又は気流の体積の20~50
%に)エアベールが絞られてもよく、またエアベールは所望の場合のみ一時的に作動させてもよい。二次気流制御装置250と二次吸込ファン260は、この例ではオフになっている。さらに、エアベール内の空気の少なくとも一部が一次吸込ファンを経て再循環の前に内部容器に導かれるように、羽根が動かされてもよい点に留意すべきである。大気パラメータのための特定の設定点に応じて、大気のパラメータを所望のレベルに維持するためのヒータ、ガス入口、及びその他の装置を作動させるためにセンサが信号を制御ユニット(図示せず)に提供してもよいことに留意すべきである。ここでは、全ての測定をリアルタイムに行うことができ、全ての修正処置をリアルタイムに実行することができ、且つベールと再循環スペースを通しての空気の再循環によって大気パラメータを迅速に平衡にすることができることが特に認識されるはずである。
【0073】
例えば、内部容積の0.01~0.1倍、又は0.1~1.0倍、又は1.0~3.0倍、又は3.0~5.0倍、又は5.0~10.0倍(及びさらにより高い量)が、10秒~60秒、又は1分~5分、又は5分~15分、又は15分~1時間の間に再循環されるように再循環速度が調整されてもよい。当然ながら、これらの再循環速度が特定の動作条件によって変わり得ることは認識されるはずである。例えば、ドアが頻繁に開閉される場合、オペレータが内部容器に頻繁にアクセスする場合、ガス濃度の設定点を次々に変更する必要がある場合などでは、より高速の再循環速度が典型的に必要である。反対に、ドアが長期間閉じられたままの場合には、再循環速度はより低くてもよい。このように、一次気流制御装置は、0.1~1リットル/分、又は1~10リットル/分、又は10~100リットル/分、又は100~500リットル/分(STP(標準温度及び気圧))の気流を送達してもよい。当然ながら、この文脈において、再循環量が動作条件に依存するだけでなく、内部容器の容積にも依存することは認識されるはずである。しかしながら、多くの実施形態においては、内部容器の容積は、10~100リットル、又は100~200リットル、又は200~400リットル、又は400~1,000リットル、又は1,000~5,000リットルであって、それよりさらに大きい場合もある。
【0074】
ドアが(例えば、上述のような複合運動で)を開けられると、
図3に示されているように、二次エアベールが確立されてもよい。ここでは、気流が矢印でもう一度示されており、二次エアベールは、二次気流制御装置と二次吸込ファンを経て発生する。注目すべきは、この例においては、第2のエアベールが再循環されない、又は実質的に再循環されない(すなわち、二次エアベール内の空気の10%未満のみ再循環される)が、インキュベータの外側に排出されることは理解されるはずである。いずれの理論や仮説にも拘束されることは望んでいないが、ドアが開かれている時、及び/又は開けられた状態で、二次エアベールが一次エアベールを保護して、環境の乱れに対する第1のバリアを確立すると考えられる。さらに、ユーザの手又は腕が両方のエアベールを透過する際、一次及び二次エアベールはインキュベータの内部容器内の環境の乱れを最小化するように協働する。更に認められるように、どのような潜在的な空気中の汚染物質であっても、主に最初に再循環空気流に入って、フィルタと滅菌ユニットで除去される。このように、エアベールは環境の乱れを減少させるだけでなく、滅菌運転をも維持する。
図4は、ドアが完全に開けられた状態での、インキュベータ内の気流のもう一つの例示的な図を表す。例示的に示されているように、一次及び二次風が内部容器内の設定された大気パラメータを維持するのを助けるのと同時に、再循環されている空気の濾過と滅菌が容易に達成される。
【0075】
本開示において提案されるインキュベータ部品の更に有利な使用においては、
図5に例示的に示されるように、一次及び/又は二次エアベールを維持しつつ、大気パラメータのどのような乱れでもリアルタイムに修正できる点に留意すべきである。ここでは、一次気流制御装置の羽根は、再循環スペースに再び入る前の一次ベールからの気流の少なくとも一部を内部容器へと導くように制御される。ドアが開かれている間、再循環スペース内のセンサによって測定される大気パラメータにおける乱れがリアルタイムで修正できることから、上記のように再度導き直す(リダイレクションする)ことは特に有利であり、その修正(例えば、熱、湿度、N
2及び/又はCO
2の追加)はリアルタイムに実行され得る。
【0076】
一次及び二次エアベール内の、体積測定される気流に関し、必要に応じて、柔軟で且つ予めプログラムされた方法でこれらの気流が調整され得る点に留意すべきである。例えば、ユーザの手又は腕が一次及び/又は二次ベールを通過しているのを一つ以上のセンサが検出した場合、一次及び/又は二次エアベール内で気流を減少させて乱気流を減少することができる。一方、ドアが開かれている時に、一次及び/又は二次エアベール内において予めプログラムされた方法で気流を増加することができる。代わりに又は追加として、複数の気流制御装置を実行して単一のエアベールが生成されるよりきめ細かい方法(例えば、手又は腕が検出された際に流量を減少させ、それ以外の場合には流量を増やすなど)で気流の流量を調節してもよい。このように、複数の気流制御装置は、障害物「周辺で」エアベールを生成するために用いることができる。上記の観点から、発明の主題によるインキュベータは、インキュベータの外側の状態や、ユーザが内部容器にアクセスする際の時間すらも関係なく、インキュベータの内部の大気パラメータの変動や逸脱を実質的に減少するか、排除さえするものである。
【0077】
したがって、インキュベータの特定の大きさと構成に応じて、一次エアベール及び/又は二次エアベール内の気流は、0.1L/分以上、又は0.2L/分以上、又は0.5L/分以上、又は1.0L/分以上、又は2.0L/分以上、又は5.0L/分以上、又は10L/分以上、又は20L/分以上、又は50L/分以上、又は100L/分以上であってもよい。例えば、一次エアベール及び/又は二次エアベール内の典型的な気流は、0.1L/分~1.0L/分の間であってもよく、又は1.0L/分~5.0L/分の間であってもよく、又は5.0L/分~10L/分の間であってもよく、又は10L/分~50L/分の間であってもよく、又は50L/分~100L/分の間であってもよく、又はそれより高くさえあってもよい。
【0078】
図6は、本開示で想定されているインキュベータを、一次及び二次気流制御装置と、対応する一次及び二次吸込ファンと共に示す、別の例示的な斜視図を提供する。好適な気流に関し、
図7は、エアベールの高さと、気流制御装置からの空気の出口速度との関数として気流の挙動が示された例示的なグラフを表す。直ちに理解されるように、相対的に適度な出口速度でかなりの距離にわたって層流を達成することができる。さらに、気流が直線状でもなく、完全には乱れてもいない(遷移領域)かなりの遷移領域がある点に留意すべきである。そのような遷移流もまた、気流がなお長距離にわたって指向性であり得ることから、本願で開示する使用に適していると考えられる。実際、整然とした、あるいはやや整然とした気流は、比較的長い距離でのみ乱れる。
【0079】
所望の気流を確立するために、内部容器と再循環スペースのための経路は、経験的な試験に加え、拡張計算流体力学モデリングを用いて設計された。エアベールの概念は、指向性の流れを維持することができるあらゆる方法で機能するものの、環境的な封じ込めで最高の効率を得るためには可能な限り層流を生成するのが典型的には好まれる。そのために、エアベールを、連携して動く2台の別々の気流制御装置で発生させ、外部の空気をインキュベータ内の空気調節された空気から分離するための気流境界を保持するガイド層を生成した。特に、気流制御装置からの差分気流速度を使用することにより、開口部の端部を分割する気流境界の操舵が可能となった。(
図6(開かれた位置にあるドアは図示していない)で示すような)1つの例示的な構成において、外側の空気は全て、濾過、衛生、及び補償のためにまず再循環スペースに送られた。この例においては、外側(二次)エアベールは2セットのファンを有していた。上部ファンは、HEPAフィルタを用いた周囲空気の事前濾過を採用し、層流状の気流を作るのを助けるために、成形された出口ダクトを用いた。底部の(吸込)ファンを用いて、層流の空気の通路を形づくり、部屋内に収集した空気を排出した。このように、二次エアベールは再循環させなかった。
【0080】
内部の(一次)エアベールは再循環スペースから空気を引き込み、成形されたダクトを通して排出し、開口部を横切るように層流状の空気を再度形成し、一方の側では外側のエアベールによって生成された層流状の空気によって囲まれ、他の側では内部容器によって囲まれていた。空気の通路の端部には、底部(吸込)ファンを介した関連のフィルタリング及び空気調整技術により再循環スペースに戻る開口部がある。しかしながら、外部のエアベールを実行することは厳密には必要でないが、それがない場合には、(理想的なものからは劣る気流プロフィールのために)補償されることができたはずの空気の交換をより多く行うことになることは理解されるはずである。
【0081】
(経験的な測定に基づく入力による)計算流体力学モデリングシミュレーションにおいて、設計を何度も繰り返して望ましいフロー特性を調べた。
図6の例において、本発明者らは、エアベールの望ましい気流が約0.3メートル/秒~0.6メートル/秒のものであり、それにより層流又は層流に近い状態に至ると判断した。気流速度が早いほどより乱流遷移領域(空気の境界線においてより多くの混合が引き起こされることにより、全体の封じ込め効率が低下する)になりやすく、気流速度が遅いほど、エアベールの近傍で、速い移動気流のような外部の干渉(例えば、室内ファンやそばを歩く人々等)の影響を受けやすい。それにもかかわらず、エアベールの代替的な気流は0.05~0.1メートル/秒、又は0.1~0.2メートル/秒、又は0.2~0.3メートル/秒の範囲内であってもよく、又は0.6~0.7メートル/秒、又は0.7~0.8メートル/秒、0.8~0.9メートル/秒、又は0.9~1.0メートル/秒の範囲内であってもよく、それより高くすらあってもよい。
【0082】
一次エアベールの気流が可変であってもよく、特定の運転モードによる需要によって調整されてもよいことはさらに理解されるはずである。例えば、ドアが閉められている場合、ドアが開かれている時よりも気流はより低くてもよい。一方、新しい運転条件が設定された場合、定常運転と比較して気流が増加されてもよい。同様に、二次エアベールの気流が可変で、特定の状況に調整されてもよい。例えば、ドアが閉じられたときには、気流は存在しなくてもよい。ドアを開けると、気流を増加させて、一次エアベールと同じ又は類似の気流へと増加させてもよい。一方、開口部に入っている個人の手又は腕が検出された場合、一次エアベールの気流を上回る流量にまで二次エアベール内の気流を増加させてもよい。
【0083】
正常な運転の間の更なる態様において、想定されたインキュベータは、(ハリケーンの目と同じように)内部容器内の気流を最小化してもよい。しかしながら、例えばインキュベータが初めて始動される際のように、迅速な空気の交換が求められる機会があることは認識されるはずである。そのような場合、2つのベールユニットの間の差分気流速度を用いることによって、又は内部容器に直接空気を導く羽根/ノズルを単に使用することによって、気流を内部容器内部で操舵し、形作ることができる。
【0084】
二重室設計(再循環スペースと内部容器)の空気の通路により、再循環スペース内において環境パラメータの変動が保たれ、より平静な内部容器内に変動が拡散する前に修正されることもまた理解されるはずである。
図8と
図9は、様々な気流速度での計算流体力学モデリングからの例示的な結果を表し、
図8の中の気流は
図9の中の気流より少なかった。
図10は、再循環スペースが内部容器と分離されており、入口及び出口ダクトによって内部容器に流体的に連結される別々の外部チャンバの中で一つ以上の環境パラメータの調整が行われる代替的な構成を表す。
【0085】
図11は、スクリーンと、スクリーンより上部にあるカメラとを備えた、発明の主題によるインキュベータの斜視図を表す。この例では、スクリーンは、例えば、インキュベータ内の大気パラメータを設定するため、及び/又はアクセスが制限されている場合にパスワードを入力するためのユーザの入力を受け付けることができるタッチ感応スクリーンであることが好ましい。さらに、スクリーンは、さらに別のユーザ制御(例えば、プログラムされたモードを無効にする、一つ以上のパラメータを修正する、など)及び運転ステータス等をも典型的には提供する。ビデオカメラに関し、特定の(例えば、事前に承認された)ユーザを認定するためだけでなく、特定の運転制御に相当するジェスチャーを認識するための画像認識にカメラを使用できることが想定されている。当然ながら、また、アクセス制御は、音声命令を可能にするための、画像認識と適合されていてもよいマイクロホンと音声処理ソフトウェアの使用を含んでもよいことにも留意されるべきである。
図12は、開かれた構成における、
図11のインキュベータを表し、
図13は、一次及び二次吸込ファンのための吸気部を示している
図12のインキュベータの詳細図である。
図14は、可動羽根に加えて、開かれたドアと、一次及び二次気流制御装置とを示している、
図12のインキュベータのもう一つの詳細図である。最後に、
図15は例示的なインキュベータの透視図を表す。
【0086】
例えば、好適なユーザ・インタフェースは制御ユニットの一部であってもよく、分離され、ユーザ・インタフェースと電子的に連結されていてもよい。他のオプションの中で、想定されたユーザ・インタフェース機能は、顔面の検出とアクセスの記録のための正面カメラ、インキュベータ機能の非接触制御のための、ジェスチャー認識用の3D走査技術(例えば、インテルのRealsense 3D)及び/又は単純な制御のための音声検出を含む。更なる実施形態において、インキュベータは迅速なステータス検査と、オプションのより簡単な案内のための、大きなフロントパネルディスプレイを備えている。インキュベータをPC又はタブレットから監視できるように、内蔵型ネットワークユニットを備えていてもよく、運転上の又は他の技術的問題がある場合にユーザに通知するために警報を設定することもできる。所望であれば、クラウドアクセスにより、様々な細胞系に対する既知の理想的な/作業の環境状態を保存し、及び/又は引き出すことを可能とし、かつ研究者同志の協力を容易にしてもよい。
【0087】
したがって、好ましい一部の態様において、意図されるインキュベータは、開口部を有する内部容器を少なくとも部分的に取り囲む筐体を有している。一次気流制御装置は筐体及び/又は内部容器に連結され、開口部を覆う仮想平面に沿って、又は仮想平面と実質的に平行に一次エアベールを導く。また筐体、内部容器、及び一次気流制御装置は一次エアベール内の空気の再循環を可能にする再循環スペースを形成するように互いに相対的に配置される。上記のように、再循環スペースは、複数のセンサ(例えばCO2センサ、O2センサ、湿度センサ、気圧センサ、及び/又は温度センサ)を少なくとも部分的に取り囲み、更に殺菌ユニット、高効率微粒子空気(HEPA)フィルタ、活性炭フィルタ、及び/又はヒータを少なくとも部分的に取り囲む。さらに、再循環スペースもまた、それを通して一つ以上のガス(例えば周囲空気、N2、CO2等)を再循環スペースに送達することができる、一つ以上の部品を含むのが典型的には好ましい。
【0088】
特定の構成に関係なく、想定されたインキュベータは、マイクロプロセッサと、そのマイクロプロセッサ上で実行可能な指令を記憶するメモリと、を有するインキュベータ制御ユニットを更に含む(又はそれらに情報的に/電子的に連結される)。ここで上記指令は、制御ユニットに、ドアが第2の位置へ運動している際に、一次気流制御装置を下方制御させると共に、必要に応じて羽根を一次気流制御装置に連結させるよう運動させるか、ドアが第1の位置へ運動している際に、一次気流制御装置及び必要に応じて設けてもよい二次気流制御装置を上方制御させるか、及び/又はドアが第1の位置にあるときに、羽根を一次気流制御装置に連結させるように運動させる、指令である。
【0089】
当然ながら、制御ユニットは、インキュベータの内で一つ以上の大気パラメータを維持し、調節し、及び/又は調整するための様々なセンサとエフェクター回路にも電子的に連結されていることが好ましい。例えば、制御ユニットは、温度センサ、ガスセンサ(例えば、O2センサ又はCO2センサ)、気圧センサ、及び/又は湿度センサに電子的に連結されていてもよく、上記指令が、制御ユニットにヒータを作動させるか、ガスバルブを開いてインキュベータ内にガスを流入させるか、及び/又は加湿機を作動させる指令であってもよい。直ちに認められるように、単一センサではうまくいかない場合であっても、連続運転を確実に行うために、同じ型の複数(例えば、3以上)の余剰のセンサを用いてもよい。例えば、上記指令が、ドアが開かれている時又は開かれた位置にあるときに、制御ユニットに、ヒータを作動させるか、ガスバルブを開いてインキュベータ内にガスを流入させるか、及び/又は加湿機を作動させる指令であってもよい。所望であれば、また既に上述したように、制御ユニットは、ユーザの命令を受け取るように、及び/又はインキュベータの認定ユーザを認証するようプログラムされたアクセス制御装置に電子的に更に連結されていてもよい。ここで指令は、ユーザの命令を受け取った際、及び/又は認証済みユーザを認証した際に、制御ユニットにドアを開けさせる、又は閉じさせる。直ちに認められるように、停電又は他の操作上の停滞が生じた場合に、システムに重複性を提供するために、手動の、機械式の、又はアナログの制御装置によって制御ユニットの一つ以上の機能(例えば、ドアの開閉、運転パラメータの調整、ガス流、気流制御装置の作動、及び/又は羽根位置)を有効化してもよい。
【0090】
発明の主題の更なる態様では、想定されたインキュベータは、インキュベータの特定の地理的な位置に関わりなくガスの分圧を補正するための気圧センサ及び/又は高度計も更に含んでもよい。さらに、ほとんどの状況下で想定されたインキュベータが周囲圧力レベルで作動するとしても、本開示にて想定されるインキュベータが、圧力が高くても運転が可能なように、圧力制御ユニットを含んでもよいことが想定されている。所望の場合、(例えば、運転データ及び/又は運転ステータスを収集/伝達するため、運転上のパラメータを変更するため、等のために)赤色光源、一つ以上のコンセントや電子的接続部、一つ以上の無線インターフェース等の補助機能を好適なインキュベータが更に含んでいてもよい。
【0091】
インキュベータ内の大気パラメータの逸脱を更に減らすために、棚やその他の可動部分がエアベールを最小化するように構成されていてもよいこともまた想定されている。例えば、トレイは、乱気流の発生なく(又は乱気流を大きく減少させた状態で)エアベールが流れるようにする、トレイを貫通して延在する流路を含むように構成されていてもよい。他のオプションの中では、トレイは、気流がトレイを横切れるようにするハニカム構造を備えるように構成されていてもよい。更に様々な構成要素のサービスを容易にする、及び/又は様々な構成要素へのアクセスを容易にするために、筐体が静止したままで、且つ内部容器が筐体から遠ざかるように動かされるよう、内部容器が筐体に(例えば、レール又は伸縮機構によって)摺動可能に連結されていてもよいことが典型的には好ましい。
【0092】
なお更なる想定された態様において、一次及び/又は二次エアベールが、本開示において提案されるインキュベータと共に使用するのに好適なだけでなく、エアベールがグローブボックスで実施されてもよいことは理解されるはずである。したがって、グローブボックスは、グローブポートでの機械的に密封された環境をもはや必要としないものの、但しオペレータに相対する正面封止部の少なくとも一部が完全に開放されていても一次及び/又は二次エアベールによって保護されていればよい点に留意すべきである。
【0093】
想定されたインキュベータは、一つ以上の定義済みのガス(例えばN2及び/又はCO2等)を用いるほとんどの従来型のインキュベータのように操作することもできるが、ガスが別個のガス供給システムによって提供されてもよいことも更に想定されている。最も好ましくは、想定されたガス供給システムは、圧縮ガスを供給するための周囲空気コンプレッサを含む。直ちに認められるように、必要であれば、圧縮された周囲空気は、冷却、(例えば、深冷、モレキュラーシーブ、吸着剤などを介した)除湿、及び脱油に典型的には供される。圧縮されると、次に圧縮された周囲空気の少なくとも一部に対し、空気分離の工程が、好ましくは窒素透過膜及び/又は圧力スイング吸着(PSA)ユニットを用いて行われ、N2が富化された(典型的にはN2が80%以上、又は85%以上、又は90%以上、又は95%以上、又は98%以上である)産出流を生じさせる。このN2富化産出流は、好ましくはそこから混合ユニットに一部を供給することができる窒素緩衝タンクに保存される。圧縮された周囲空気の少なくとも別の一部(約21%のO2を含む)を混合ユニットに供給することができる。所望であれば、(例えば、CO2の純度が80%以上、又は85%以上、又は90%以上、又は95%以上、又は98%以上である)CO2の供給源が混合ユニットに流体的に連結されていてもよい。ほとんどの実施形態において、混合ユニットは、圧縮空気、N2富化産出流、及びCO2産出物を受け取ることができ、圧縮空気、N2富化産出流、及びCO2産出物の混合物の出口を有するマニホールドとして構成される。必須ではないが、動的ミキサー又は静的ミキサーによってガスの混合を支援してもよい。
【0094】
直ちに認められるように、圧縮空気、N
2富化産出流、及びCO
2産出物を送達する導管の各々は、典型的には混合ユニットに送達されるガスの量の精密な制御を確認するための電子流量弁と質量流量計とを備える。さらに、混合ユニットを出る混合物のための導管は、予め定められた設定点又は設定帯にガスの組成を正確に制御するための信号を制御ユニット(インキュベータ制御ユニット又は外部制御ユニットであってもよい)に提供する一つ以上のガスセンサ(例えば、O
2及びCO
2センサ)を更に含むのも典型的には好ましい。必須ではないが、典型的には、混合ユニットを出る混合物は、サージタンク又は貯蔵タンクに供給されてもよく、その後サージタンク又は貯蔵タンクはガス混合物をインキュベータに送達する。典型的なガス供給システムは
図16の中で表されている。複数のインキュベータがそれぞれ異なる気体組成で使用される場合、各インキュベータは別々のサージタンク又は貯蔵タンクから供給を受けてもよい。なお、サージタンク又は貯蔵タンクは全て、例示的に
図17に示されているような、同一のガス供給システムから供給を受けてもよい。
【0095】
発明の主題の更なる想定された態様において、本開示において提案されるインキュベータが生のガス又は99~100%未満の純度のガス、及び/又は組成の特定がより曖昧な(又は正確ではない)ガスを供給するガス供給源を有利にも使用してもよいことは認識されるはずである。さらに、想定されたインキュベータは、組成が変化するガスでさえ受け入れ得る。ほとんどの典型的なインキュベータが、(高価であることで有名な)組成が公知の認証ガスの使用を必要とすることから、上記のような特徴は特に有益である。例えば、ほとんどのインキュベータは、純窒素及び/又は純CO2、又は事前に混合された「トライガス(trigas)の供給を必要とする。ガス入口に一式のガスセンサを設置し、リアルタイムの供給ガス濃度を測定することによって、必要に応じてリアルタイムに弁調整を行い、所望のガス混合物を維持することができる。この文脈において、ほとんどの組織培養実験は、海面位で、約5%~6%のCO2(緩衝剤として)と、<0.5~20.95%のO2と、残部がN2のガス濃度で行われることに留意すべきである。したがって、認証された高純度(例えば、100%濃度)のガスが全く必要とされず、例えば、99.5%の窒素の供給源、又は95%(この数値は、細胞型の必要条件によって変わり得る)の窒素供給源ですら使用できるのは明白である。したがって、窒素発生器の単段の生の出力を、緩衝タンクと共に又は緩衝タンクなしで使用することができる。なお更なる例において、本開示において提案されるインキュベータは、一般的に知られたCO2インキュベータのように運転することができる(そのため、必ずしも酸素センサを必要としない場合もある)ことにもまた留意すべきである。このように、上記装置と方法には、使用するための幅広い操作上の柔軟性があることは認識されるはずである。
【0096】
更なる想定された態様において、想定されたガス供給システムは、(例えば、圧縮性に関して)N2やO2のガス挙動から大きく逸脱する場合があるCO2などの非理想気体に対し補正因子を提供するルックアップ表も利用する。次にこれらの補正因子は、適切なCO2供給源を制御するための式において使用できる。
【0097】
さらに他の想定された態様において、本開示において提案されるようなインキュベータが、後付けキットを用いて従来のインキュベータから組み立てられてもよいことが理解されるはずである。最も典型的には、そのようなシナリオにおける従来のインキュベータのインキュベータドアは、一次気流制御装置と、一次吸込ファンと、(さらに必要であれば二次気流制御装置と二次吸込ファンと)に連結された取付フレームを備える後付けキットで置き換えられる。この場合、再循環は、例えば好適な配管とオプションのサージ容器とを介して、外部の再循環空間(ボリューム)により、一次気流装置と一次吸込ファンとの間で形成される。外部の再循環空間(ボリューム)は、上で述べたようなセンサ、ガス入口、フィルタ等の一つ以上の機能的要素を含むのが好ましい。終わりに、想定された装置と方法の使用は特に細胞及び組織の培養に好適であるものの、想定された装置と方法は、温度が20℃以下であるか、10℃以下であるか、4℃以下であるか、0℃以下であるか、-10℃以下であるか、-20℃以下であるか、-40℃以下であるか、さらにより低温の環境にも好適であることが理解されるはずである。
【0098】
最後に、運転アセンブリ(すなわち、内部容器と再循環スペース)は、フィルタのような消耗品の交換の保守(メンテナンス)を容易にするために単一のユニット(例えば、アセンブリは引き出し可能であってもよい)ごとに取り外せるように構成されていてもよいことは留意すべきである。
【0099】
本開示での値の範囲の記載は、その範囲内の各個別の値に個々に言及する簡易な方法として機能することを単に意図したものである。本開示において特に示されない限り、個々の値それぞれが、あたかも本開示に個別に記載されたかのように本明細書に組み込まれる。本開示において述べられる全ての方法は、本開示において特に明示しない限り、又は文脈によって明確に否定されていない限り、どんな適切な順序ででも実行することができる。本開示におけるある実施形態に関して提供される例、又は例示的な文言(例えば、「等」)のいずれか及び全ての使用は、本開示の全範囲をより明らかにすることを単に意図したものであって、別途請求の範囲に記載される本発明の範囲を制限するものではない。明細書の文言は、請求の範囲に記載された発明の実施に不可欠な、請求の範囲には記載されていない要素を示すものと解釈されるべきではない。
【0100】
本開示において開示される概念の全範囲から逸脱することなく、既に述べられているものに加えてより多くの改変が可能であることは当業者にとって明らかなはずである。したがって、開示された主題は添付の請求の範囲を除いて制限されるものではない。そのうえ、明細書と請求の範囲の両方を解釈する上で、全ての用語は、文脈と整合する可能な限り広い方法で解釈されるべきである。特に、「含む・備える(comprises)」及び「含んでいる・備えている(comprising)」という用語は、非排他的な方法で要素、構成部品又はステップに言及するものとして解釈されるべきであり、参照された要素、構成部品又はステップが、明示的に参照されていない他の要素、構成部品又はステップと共に存在してもよく、又は共に利用されてもよく、又は組み合わされてもよいことを示す。明細書及び請求の範囲がA、B、C,・・・及びNからなる群から選択される少なくとも1つの何かに言及する場合、その文はその群からの1つの要素のみを必要とし、AとN、又はBとNなどは必須ではないと解釈されるべきである。