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特許7334892回転角度検出装置、動力伝達装置、回転角度検出方法、およびロボット
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-21
(45)【発行日】2023-08-29
(54)【発明の名称】回転角度検出装置、動力伝達装置、回転角度検出方法、およびロボット
(51)【国際特許分類】
   G01D 5/12 20060101AFI20230822BHJP
   G01D 5/245 20060101ALI20230822BHJP
   B25J 17/00 20060101ALI20230822BHJP
【FI】
G01D5/12 B
G01D5/245 110W
B25J17/00 E
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2022079314
(22)【出願日】2022-05-13
【審査請求日】2022-09-09
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000107147
【氏名又は名称】ニデックドライブテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135013
【弁理士】
【氏名又は名称】西田 隆美
(74)【代理人】
【識別番号】100138689
【弁理士】
【氏名又は名称】梶原 慶
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼木 大輔
(72)【発明者】
【氏名】ゴドレール イヴァン
【審査官】吉田 久
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2006/115029(WO,A1)
【文献】特開2021-96105(JP,A)
【文献】特開平9-218054(JP,A)
【文献】国際公開第2015/115029(WO,A1)
【文献】特開2009-243992(JP,A)
【文献】特開2018-100859(JP,A)
【文献】特開2018-179532(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 5/00-5/38
H02K 7/00-7/20、
29/00-29/14
G01B 7/00-7/34
B25J 1/00-21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1回転速度で回転する第1部材と、前記第1部材の回転に伴い前記第1回転速度よりも低い第2回転速度で回転する第2部材と、を有する動力伝達装置の回転角度検出装置であって、
前記第1部材の回転角度を検出する第1検出部と、
前記第2部材の回転角度を検出する第2検出部と、
前記第1検出部により検出される回転角度と、前記第2検出部により検出される回転角度とに基づいて、前記第1部材の多回転角度を出力する演算部と、
を備え、
前記第2検出部は、所定のビット数で示される離散値を出力し、
前記第1検出部の出力値をA、
前記第2検出部の出力値をP、
前記ビット数をB、
前記動力伝達装置の変速比をN、
として、
前記演算部は、A、P、B、Nに基づいて、前記第1部材の多回転角度を算出する、回転角度検出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の回転角度検出装置であって、
前記第1検出部は、所定の角度範囲における前記第1部材の絶対回転角度を検出する、回転角度検出装置。
【請求項3】
請求項1に記載の回転角度検出装置であって、
前記第2検出部は、所定の角度範囲における前記第2部材の絶対回転角度を検出する、回転角度検出装置。
【請求項4】
請求項1に記載の回転角度検出装置であって、
前記第1検出部が、前記第1部材の絶対回転角度を検出できる角度範囲をθ1、
前記第2検出部が、前記第2部材の絶対回転角度を検出できる角度範囲をθ2、
前記第1部材の多回転角度をIN、
小数点以下を切り捨てる関数をFLOOR()、
θ1で割ったときの余りを示す関数をMODθ1()
として、
I=(θ2/2^B)*P*N (1)
IN=FLOOR(I/θ1)*θ1+A (2)
IN={FLOOR(I/θ1)+1}*θ1+A (3)
前記演算部は、
A≧MODθ1(I)の場合、上式(1),(2)によりINを算出し、
A<MODθ1(I)の場合、上式(1),(3)によりINを算出する、回転角度検出装置。
【請求項5】
請求項1に記載の回転角度検出装置であって、
前記第1検出部が、前記第1部材の絶対回転角度を検出できる角度範囲をθ1として、
θ1=180°
である、回転角度検出装置。
【請求項6】
請求項1に記載の回転角度検出装置であって、
前記第1検出部が、前記第1部材の絶対回転角度を検出できる角度範囲をθ1として、
θ1=360°
である、回転角度検出装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の回転角度検出装置であって、
前記第1検出部は、
180°の角度範囲における前記第1部材の絶対回転角度を検出する第1センサと、
180°ごとにON/OFFが切り替わる360°周期の信号を出力する第2センサと、
を有する、回転角度検出装置。
【請求項8】
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の回転角度検出装置であって、
前記第2部材は、前記第2部材の回転軸の周方向に配列され、前記回転軸の径方向に延びる複数の歯を有し、
前記歯の前記周方向における角度が記憶されている、回転角度検出装置。
【請求項9】
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の回転角度検出装置であって、
前記第2部材は、前記第2部材の回転軸の周方向に配列され、前記回転軸の径方向に延びる複数の歯を有し、
前記歯と前記周方向に隣接する前記歯とのピッチと、前記歯の前記周方向における角度が記憶されている、回転角度検出装置。
【請求項10】
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の回転角度検出装置であって、
前記第1検出部は、前記動力伝達装置に含まれる環状体に配置された歪みゲージを有する、回転角度検出装置。
【請求項11】
請求項10に記載の回転角度検出装置であって、
前記演算部は、前記第1部材の多回転角度に基づいて、前記歪みゲージの出力値を補正する、回転角度検出装置。
【請求項12】
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の回転角度検出装置であって、
前記回転角度検出装置は、前記動力伝達装置に含まれる外歯歯車の外歯及び内歯歯車の内歯の少なくとも一方における、周方向の回転角度及び周方向におけるピッチの少なくとも一方を記憶している、回転角度検出装置。
【請求項13】
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の回転角度検出装置を有する、動力伝達装置。
【請求項14】
第1回転速度で回転する第1部材と、前記第1部材の回転に伴い前記第1回転速度よりも低い第2回転速度で回転する第2部材と、を有する動力伝達装置において、前記第1部材の多回転角度を検出する回転角度検出方法であって、
前記第1部材の回転角度および前記第2部材の回転角度を検出する第1工程と、
前記第1工程により検出される前記第1部材の回転角度および前記第2部材の回転角度に基づいて、前記第1部材の多回転角度を出力する第2工程と、
を有し、
前記第2工程において、所定のビット数で示される離散値を出力し、
前記第1部材の回転角度の出力値をA、
前記第2部材の回転角度の出力値をP、
前記ビット数をB、
前記動力伝達装置の変速比をN、
として、
前記第2工程において、A、P、B、Nに基づいて、前記第1部材の多回転角度を出力する、回転角度検出方法。
【請求項15】
請求項14に記載の回転角度検出方法であって、
前記第1工程において、前記動力伝達装置に含まれる環状体に配置された歪みゲージによって前記第1部材の回転角度を検出する、回転角度検出方法。
【請求項16】
第1回転速度で回転する第1部材と、
前記第1部材の回転に伴い、前記第1回転速度よりも低い第2回転速度で回転する第2部材と、
前記第1部材の回転角度を検出する第1検出部と、
前記第2部材の回転角度を検出する第2検出部と、
環状体と、
前記第1検出部により検出される回転角度と、前記第2検出部により検出される回転角度とに基づいて、前記第1部材の多回転角度を出力する演算部と、
を備え、
前記第2検出部は、所定のビット数で示される離散値を出力し、
前記第1検出部の出力値をA、
前記第2検出部の出力値をP、
前記ビット数をB、
力伝達装置の変速比をN、
として、
前記演算部は、A、P、B、Nに基づいて、前記第1部材の多回転角度を算出する、動力伝達装置。
【請求項17】
請求項16に記載の動力伝達装置を有する、ロボット。
【請求項18】
請求項16に記載の動力伝達装置と、
前記第1検出部により検出される回転角度と、前記第2検出部により検出される回転角度とに基づいて、前記第1部材の多回転角度を出力する演算部と、
を備える、ロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転角度検出装置、動力伝達装置、回転角度検出方法、およびロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、モータから出力される回転運動を減速させる減速機が知られている。減速機は、例えば、産業用ロボットの関節に組み込まれ、モータの動力をアームに伝達するために使用される。従来の減速機については、例えば、特許文献1に記載されている。
【文献】特開2005-312223号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
この種の減速機を備えたロボットでは、電源投入時に、アームの回転角度を把握する必要がある。従来のロボットは、モータに搭載されたエンコーダの出力信号に基づいて、アームの回転角度を把握していた。しかしながら、当該方法では、モータのエンコーダが必須となる。このため、モータのエンコーダに依存することなく、減速機において、アームの回転角度を検出することが求められている。
【0004】
減速器においてアームの回転角度を検出するためには、例えば、減速機の出力側の部材に、回転角度を検出するセンサを取り付けることが考えられる。しかしながら、その場合には、高い分解能のセンサが必要となるため、減速器の製造コストが上昇する。一方、減速器の入力側において、高速回転する部材の回転角度を検出すれば、高い分解能で回転角度を検出しやすい。ただし、減速器の入力側で回転角度を検出する場合、1回転内の絶対角度ではなく、多回転における絶対角度を検出することが必要となる。
【0005】
本発明の目的は、動力伝達装置の高速側の部材の多回転角度を検出できる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1発明は、第1回転速度で回転する第1部材と、前記第1部材の回転に伴い前記第1回転速度よりも低い第2回転速度で回転する第2部材と、を有する動力伝達装置の回転角度検出装置であって、前記第1部材の回転角度を検出する第1検出部と、前記第2部材の回転角度を検出する第2検出部と、前記第1検出部により検出される回転角度と、前記第2検出部により検出される回転角度とに基づいて、前記第1部材の多回転角度を出力する演算部と、を備え、前記第2検出部は、所定のビット数で示される離散値を出力し、前記第1検出部の出力値をA、前記第2検出部の出力値をP、前記ビット数をB、前記動力伝達装置の変速比をN、として、前記演算部は、A、P、B、Nに基づいて、前記第1部材の多回転角度を算出する
【0007】
第2発明は、第1回転速度で回転する第1部材と、前記第1部材の回転に伴い前記第1回転速度よりも低い第2回転速度で回転する第2部材と、を有する動力伝達装置において、前記第1部材の多回転角度を検出する回転角度検出方法であって、前記第1部材の回転角度および前記第2部材の回転角度を検出する第1工程と、前記第1工程により検出される前記第1部材の回転角度および前記第2部材の回転角度に基づいて、前記第1部材の多回転角度を出力する第2工程と、を有し、前記第2工程において、所定のビット数で示される離散値を出力し、前記第1部材の回転角度の出力値をA、前記第2部材の回転角度の出力値をP、前記ビット数をB、前記動力伝達装置の変速比をN、として、前記第2工程において、A、P、B、Nに基づいて、前記第1部材の多回転角度を出力する
【0008】
第3発明は、動力伝達装置であって、第1回転速度で回転する第1部材と、前記第1部材の回転に伴い、前記第1回転速度よりも低い第2回転速度で回転する第2部材と、前記第1部材の回転角度を検出する第1検出部と、前記第2部材の回転角度を検出する第2検出部と、環状体と、を備え、前記第2検出部は、所定のビット数で示される離散値を出力し、前記第1検出部の出力値をA、前記第2検出部の出力値をP、前記ビット数をB、動力伝達装置の変速比をN、として、前記演算部は、A、P、B、Nに基づいて、前記第1部材の多回転角度を算出する。
【発明の効果】
【0009】
第1発明、第2発明、および第3発明によれば、第1部材の多回転角度を出力できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、ロボットの概要図である。
図2図2は、動力伝達装置の縦断面図である。
図3図3は、動力伝達装置を軸方向一方側から見た図である。
図4図4は、動力伝達装置を軸方向他方側から見た図である。
図5図5は、図2のA-A位置から見た動力伝達装置の横断面図である。
図6図6は、センサ基板の付近における環状体の部分縦断面図である。
図7図7は、センサ基板の平面図である。
図8図8は、センサ基板の部分平面図である。
図9図9は、第1ブリッジ回路の回路図である。
図10図10は、第2ブリッジ回路の回路図である。
図11図11は、第3ブリッジ回路の回路図である。
図12図12は、第4ブリッジ回路の回路図である。
図13図13は、第3電圧計の計測値と第4電圧計の計測値との時間変化を示したグラフである。
図14図14は、第1検出部および第2検出部の出力値の例を示したグラフである。
図15図15は、第1変形例に係る動力伝達装置を、軸方向一方側から見た図である。
図16図16は、第2部材および環状体の一部分を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本願の例示的な実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0012】
<1.ロボットについて>
図1は、一実施形態に係る動力伝達装置1を搭載したロボット100の概要図である。ロボット100は、例えば、工業製品の製造ラインにおいて、部品の搬送、加工、組立等の作業を行う、いわゆる産業用ロボットである。図1に示すように、ロボット100は、ベースフレーム101、アーム102、モータ103、および動力伝達装置1を備える。
【0013】
アーム102は、ベースフレーム101に対して、回動可能に支持されている。モータ103および動力伝達装置1は、ベースフレーム101とアーム102との間の関節部に、組み込まれている。モータ103に駆動電流が供給されると、モータ103から回転運動が出力される。また、モータ103から出力される回転運動は、動力伝達装置1により減速されて、アーム102へ伝達される。これにより、ベースフレーム101に対してアーム102が、減速後の速さで回動する。
【0014】
<2.動力伝達装置の構成>
続いて、動力伝達装置1の詳細な構造について、説明する。
【0015】
なお、以下では、動力伝達装置1の中心軸9と平行な方向を「軸方向」、動力伝達装置1の中心軸9に直交する方向を「径方向」、動力伝達装置1の中心軸9を中心とする円弧に沿う方向を「周方向」、とそれぞれ称する。ただし、上記の「平行な方向」は、略平行な方向も含む。また、上記の「直交する方向」は、略直交する方向も含む。
【0016】
図2は、一実施形態に係る動力伝達装置1の縦断面図である。図3は、動力伝達装置1を、軸方向一方側(図2における左側)から見た図である。図4は、動力伝達装置1を、軸方向他方側(図2における右側)から見た図である。図5は、図2のA-A位置から見た動力伝達装置1の横断面図である。図の煩雑化を避けるため、図5においては、断面を示すハッチングが省略されている。
【0017】
この動力伝達装置1は、波動減速機である。動力伝達装置1は、モータ103から得られる第1回転速度の回転運動を、第1回転速度よりも遅い第2回転速度に減速する。図2から図5に示すように、動力伝達装置1は、第1部材10、第2部材20、環状体30、および波動発生器40を有する。
【0018】
第1部材10は、減速前の第1回転速度で回転する部材である。第1部材10は、モータ103の出力軸に接続される。第1部材10は、中心軸9に沿って、軸方向に延びる。本実施形態の第1部材10は、中心軸9を中心とする円筒状である。第1部材10は、動力伝達装置1を軸方向に貫通する。なお、第1部材10は、モータ103の出力軸と同一の部材であってもよい。
【0019】
第2部材20は、第1部材10の回転に伴い、第1回転速度よりも低い第2回転速度で回転する部材である。第2部材20は、アーム102に対して固定される。第2部材20は、後述する外歯32の径方向外側に配置される。第2部材20の剛性は、環状体30の後述する胴部31の剛性よりも、十分に高い。
【0020】
第2部材20は、中心軸9を中心とする円環状の内歯歯車である。第2部材20は、複数の内歯21を有する。複数の内歯21は、第2部材20の径方向内側面から、径方向内方へ突出する。複数の内歯21は、第2部材20の内周面において、周方向に一定のピッチで配列されている。
【0021】
環状体30は、撓み変形可能な環状の外歯歯車である。環状体30は、ベースフレーム101に対して固定される。図2および図5に示すように、環状体30は、胴部31、複数の外歯32、ベース部33、および肉厚部34を有する。
【0022】
胴部31は、中心軸9を中心とする筒状の部分である。胴部31の軸方向一方端は、ベース部33に接続される。胴部31は、ベース部33の径方向内端部から、軸方向他方側へ向けて延びる。胴部31の軸方向他方側の端部は、波動発生器40の径方向外側、かつ、第2部材20の径方向内側に位置する。胴部31は、可撓性を有するため、径方向に撓み変形可能である。
【0023】
複数の外歯32は、胴部31の径方向外側面から、径方向外方に突出する。複数の外歯32は、胴部31の軸方向他方端の径方向外側面に配置される。複数の外歯32は、周方向に一定のピッチで配列されている。複数の外歯32の一部と、上述した複数の内歯21の一部とは、互いに噛み合う。第2部材20が有する内歯21の数と、環状体30が有する外歯32の数とは、僅かに相違する。
【0024】
ベース部33は、中心軸9を囲み、中心軸9と交差する方向に広がる。ベース部33は、好ましくは、中心軸9に対して直交する面に沿って広がる。ベース部33は、胴部31の軸方向一方端から、径方向外側へ向けて広がる。また、ベース部33は、中心軸9を囲む環状である。ベース部33は、薄肉状であるため、僅かに撓み変形可能である。
【0025】
肉厚部34は、ベース部33の径方向外側に位置する、円環状の部分である。肉厚部34の軸方向の厚みは、ベース部33の軸方向の厚みよりも厚い。肉厚部34は、ベースフレーム101に、直接、または他の部材を介して、固定される。
【0026】
波動発生器40は、環状体30に周期的な撓み変形を発生させる機構である。波動発生器40は、外歯32の径方向内側に配置される。波動発生器40は、カム41および可撓性軸受42を有する。本実施形態では、第1部材10およびカム41が、単一の部品で形成されている。ただし、カム41は、第1部材10とは別の部品であってもよい。その場合、第1部材10に対してカム41が固定されていればよい。カム41の径方向外側面は、中心軸9を中心とする楕円形である。
【0027】
可撓性軸受42は、撓み変形可能な軸受である。可撓性軸受42は、カム41の径方向外側面と、環状体30の胴部31の径方向内側面との間に配置される。
【0028】
可撓性軸受42の内輪は、カム41の径方向外側面に接触する。可撓性軸受42の外輪は、胴部31の径方向内側面に接触する。このため、胴部31は、カム41の径方向外側面に沿った楕円形状に変形する。その結果、当該楕円の長軸の両端に相当する2箇所において、環状体30の外歯32と、第2部材20の内歯21とが噛み合う。周方向の他の位置においては、外歯32と内歯21とが噛み合わない。
【0029】
モータ103を駆動させると、第1部材10とともにカム41が、中心軸9を中心として第1回転速度で回転する。これにより、環状体30の上述した楕円の長軸も、第1回転速度で回転する。そうすると、外歯32と内歯21との噛み合い位置も、周方向に第1回転速度で変化する。また、上述の通り、第2部材20の内歯21の数と、環状体30の外歯32の数とは、僅かに相違する。この歯数の差によって、カム41の1回転ごとに、外歯32と内歯21との噛み合い位置が、周方向に僅かに変化する。その結果、環状体30に対して第2部材20が、中心軸9を中心として、第1回転速度よりも遅い第2回転速度で回転する。
【0030】
<3.トルクセンサについて>
動力伝達装置1は、トルクセンサ50を有する。トルクセンサ50は、上述した環状体30のベース部33にかかるトルクを検出するためのセンサである。図2に示すように、トルクセンサ50は、センサ基板51を有する。センサ基板51は、ベース部33の表面に固定される。図6は、センサ基板51の付近における環状体30の部分縦断面図である。図7は、センサ基板51の平面図である。図6および図7に示すように、センサ基板51は、絶縁層511および抵抗線512を有する。
【0031】
絶縁層511は、柔軟に変形可能である。絶縁層511は、中心軸9に対して交差する方向に広がる。また、絶縁層511は、中心軸9を中心とする円環状である。絶縁層511は、絶縁体である樹脂または無機絶縁材料からなる。絶縁層511は、ベース部33の表面に配置される。
【0032】
抵抗線512は、絶縁層511の表面に形成される。抵抗線512の材料には、導体である金属が使用される。抵抗線512の材料には、例えば、銅合金、クロム合金、または銅が使用される。抵抗線512は、第1抵抗線部W1と、第2抵抗線部W2とを有する。第1抵抗線部W1および第2抵抗線部W2は、歪みゲージである。すなわち、第1抵抗線部W1および第2抵抗線部W2の抵抗値は、ベース部33のひずみに応じて変化する。
【0033】
第1抵抗線部W1は、内側第1抵抗線部W11と、外側第1抵抗線部W12とを有する。外側第1抵抗線部W12は、内側第1抵抗線部W11よりも、径方向外側に配置される。
【0034】
内側第1抵抗線部W11は、2つの第1領域Ra,Rbを有する。2つの第1領域Ra,Rbは、周方向に間隔をあけて配置されている。2つの第1領域Ra,Rbは、それぞれ、中心軸9を中心とする約180°の範囲に、半円弧状に設けられている。2つの第1領域Ra,Rbは、同心かつ線対称に配置される。また、中心軸9から第1領域Raまでの径方向の距離と、中心軸9から第1領域Rbまでの径方向の距離と、は略同一である。
【0035】
図8は、センサ基板51の部分平面図である。図8に示すように、2つの第1領域Ra,Rbは、それぞれ、複数の第1の部位r1を有する。第1の部位r1は、径方向および周方向の両方の成分を有する方向に延びる。複数の第1の部位r1は、互いに略平行な姿勢で、周方向に配列される。2つの第1領域Ra,Rbのうち、一方の第1領域Raの第1の部位r1は、径方向に対して、周方向一方側に傾斜する。他方の第1領域Rbの第1の部位r1は、径方向に対して、周方向他方側に傾斜する。径方向に対する第1の部位r1の傾斜角度は、例えば45°である。周方向に隣り合う第1の部位r1の端部同士は、径方向内側または径方向外側で交互に接続される。これにより、複数の第1の部位r1が、全体として直列に接続される。
【0036】
外側第1抵抗線部W12は、2つの第1領域Rc,Rdを有する。2つの第1領域Rc,Rdは、周方向に間隔をあけて配置されている。2つの第1領域Rc,Rdは、それぞれ、中心軸9を中心とする約180°の範囲に、半円弧状に設けられている。2つの第1領域Rc,Rdは、同心かつ線対称に配置される。また、中心軸9から第1領域Rcまでの径方向の距離と、中心軸9から第1領域Rdまでの径方向の距離と、は略同一である。
【0037】
図8に示すように、2つの第1領域Rc,Rdは、それぞれ、複数の第1の部位r1を有する。第1の部位r1は、径方向および周方向の両方の成分を有する方向に延びる。複数の第1の部位r1は、互いに略平行な姿勢で、周方向に配列される。2つの第1領域Rc,Rdのうち、一方の第1領域Rcの第1の部位r1は、径方向に対して、周方向他方側に傾斜する。他方の第1領域Rdの第1の部位r1は、径方向に対して、周方向一方側に傾斜する。径方向に対する第1の部位r1の傾斜角度は、例えば45°である。周方向に隣り合う第1の部位r1の端部同士は、径方向内側または径方向外側で交互に接続される。これにより、複数の第1の部位r1が、全体として直列に接続される。
【0038】
第2抵抗線部W2は、内側第2抵抗線部W21と、外側第2抵抗線部W22とを有する。外側第2抵抗線部W22は、内側第2抵抗線部W21よりも、径方向外側に配置される。
【0039】
内側第2抵抗線部W21は、2つの第2領域Re,Rfを有する。2つの第2領域Re,Rfは、周方向に間隔をあけて配置されている。2つの第2領域Re,Rfは、それぞれ、中心軸9を中心とする約180°の範囲に、半円弧状に設けられている。2つの第2領域Re,Rfは、同心かつ線対称に配置される。また、中心軸9から第2領域Reまでの径方向の距離と、中心軸9から第2領域Rfまでの径方向の距離と、は略同一である。
【0040】
図8に示すように、2つの第2領域Re,Rfは、それぞれ、複数の第2の部位r2を有する。第2の部位r2は、径方向および周方向の両方の成分を有する方向に延びる。複数の第2の部位r2は、互いに略平行な姿勢で、周方向に配列される。2つの第2領域Re,Rfのうち、一方の第2領域Reの第2の部位r2は、径方向に対して、周方向一方側に傾斜する。他方の第2領域Rfの第2の部位r2は、径方向に対して、周方向他方側に傾斜する。径方向に対する第2の部位r2の傾斜角度は、例えば45°である。周方向に隣り合う第2の部位r2の端部同士は、径方向内側または径方向外側で交互に接続される。これにより、複数の第2の部位r2が、全体として直列に接続される。
【0041】
外側第2抵抗線部W22は、2つの第2領域Rg,Rhを有する。2つの第2領域Rg,Rhは、周方向に間隔をあけて配置されている。2つの第2領域Rg,Rhは、それぞれ、中心軸9を中心とする約180°の範囲に、半円弧状に設けられている。2つの第2領域Rg,Rhは、同心かつ線対称に配置される。また、中心軸9から第2領域Rgまでの径方向の距離と、中心軸9から第2領域Rhまでの径方向の距離と、は略同一である。
【0042】
図6に示すように、2つの第2領域Rg,Rhは、それぞれ、複数の第2の部位r2を有する。第2の部位r2は、径方向および周方向の両方の成分を有する方向に延びる。複数の第2の部位r2は、互いに略平行な姿勢で、周方向に配列される。2つの第2領域Rg,Rhのうち、一方の第2領域Rgの第2の部位r2は、径方向に対して、周方向他方側に傾斜する。他方の第2領域Rhの第2の部位r2は、径方向に対して、周方向一方側に傾斜する。径方向に対する第2の部位r2の傾斜角度は、例えば45°である。周方向に隣り合う第2の部位r2の端部同士は、径方向内側または径方向外側で交互に接続される。これにより、複数の第2の部位r2が、全体として直列に接続される。
【0043】
図9は、第1抵抗線部W1の4つの第1領域Ra,Rb,Rc,Rdを含む第1ブリッジ回路C1の回路図である。図9に示すように、4つの第1領域Ra,Rb,Rc,Rdは、互いに接続されて、第1ブリッジ回路C1を構成する。
【0044】
第1領域Raと第1領域Rbとは、この順に直列に接続される。第1領域Rcと第1領域Rdとは、この順に直列に接続される。そして、電源電圧の+極と-極との間において、2つの第1領域Ra,Rbの列と、2つの第1領域Rc,Rdの列とが、並列に接続される。また、2つの第1領域Ra,Rbの中間点M11と、2つの第1領域Rc,Rdの中間点M12とが、第1電圧計V1に接続される。
【0045】
4つの第1領域Ra,Rb,Rc,Rdの各第1の部位r1の抵抗値は、ベース部33にかかるトルクに応じて変化する。例えば、ベース部33に、中心軸9を中心として、周方向の一方側へ向かうトルクがかかると、2つの第1領域Ra,Rdの各第1の部位r1の抵抗値が低下し、他の2つの第1領域Rb,Rcの各第1の部位r1の抵抗値が増加する。一方、ベース部33に、中心軸9を中心として、周方向の他方側へ向かうトルクがかかると、2つの第1領域Ra,Rdの各第1の部位r1の抵抗値が増加し、他の2つの第1領域Rb,Rcの各第1の部位r1の抵抗値が低下する。このように、2つの第1領域Ra,Rdと、他の2つの第1領域Rb,Rcとは、トルクに対して互いに逆向きの抵抗値変化を示す。
【0046】
そして、4つの第1領域Ra,Rb,Rc,Rdの各抵抗値が変化すると、2つの第1領域Ra,Rbの中間点M11と、2つの第1領域Rc,Rdの中間点M12との間の電位差が変化するので、第1電圧計V1の計測値も変化する。したがって、この第1電圧計V1の計測値に基づいて、ベース部33にかかるトルクの向きおよび大きさを検出することができる。
【0047】
図10は、第2抵抗線部W2の4つの第2領域Re,Rf,Rg,Rhを含む第2ブリッジ回路C2の回路図である。図10に示すように、4つの第2領域Re,Rf,Rg,Rhは、互いに接続されて、第2ブリッジ回路C2を構成する。
【0048】
第2領域Reと第2領域Rfとは、この順に直列に接続される。第2領域Rgと第2領域Rhとは、この順に直列に接続される。そして、電源電圧の+極と-極との間において、2つの第2領域Re,Rfの列と、2つの第2領域Rg,Rhの列とが、並列に接続される。また、2つの第2領域Re,Rfの中間点M21と、2つの第2領域Rg,Rhの中間点M22とが、第2電圧計V2に接続される。
【0049】
4つの第2領域Re,Rf,Rg,Rhの各第2の部位r2の抵抗値は、ベース部33にかかるトルクに応じて変化する。例えば、ベース部33に、中心軸9を中心として、周方向の一方側へ向かうトルクがかかると、2つの第2領域Re,Rhの各第2の部位r2の抵抗値が低下し、他の2つの第2領域Rf,Rgの各第2の部位r2の抵抗値が増加する。一方、ベース部33に、中心軸9を中心として、周方向の他方側へ向かうトルクがかかると、2つの第2領域Re,Rhの各第2の部位r2の抵抗値が増加し、他の2つの第2領域Rf,Rgの各第2の部位r2の抵抗値が低下する。このように、2つの第2領域Re,Rhと、他の2つの第2領域Rf,Rgとは、トルクに対して互いに逆向きの抵抗値変化を示す。
【0050】
そして、4つの第2領域Re,Rf,Rg,Rhの各抵抗値が変化すると、2つの第2領域Re,Rfの中間点M21と、2つの第2領域Rg,Rhの中間点M22との間の電位差が変化するので、第2電圧計V2の計測値も変化する。したがって、この第2電圧計V2の計測値に基づいて、ベース部33にかかるトルクの向きおよび大きさを検出することができる。
【0051】
動力伝達装置1は、ハウジング60および信号処理基板70を、さらに有する。図2に示すように、ハウジング60は、環状体30の軸方向一方側に位置する。ハウジング60は、環状体30を、軸方向一方側から覆う。ハウジング60は、環状体30に対して固定される。
【0052】
信号処理基板70は、ハウジング60の表面に固定される。信号処理基板70は、演算部71を有する。演算部71は、マイクロプロセッサを備えた電気回路により構成される。演算部71は、第1抵抗線部W1および第2抵抗線部W2と電気的に接続されている。演算部71は、第1電圧計V1および第2電圧計V2の出力信号に基づき、ベース部33にかかるトルクを検出する。
【0053】
なお、演算部は、後述する第1検出部により検出される回転角度と、後述する第2検出部により検出される回転角度とに基づいて、第1部材の多回転角度を出力するものであればよい。例えば、演算部は、アナログ信号処理とマイコンによって離散的な演算を行い、第1部材の多回転角度を検出できればよい。一方、トルクセンサは、動力伝達装置のベース部にかかるトルクを歪みゲージ等によって電気信号に変換する要素であればよい。よって、演算部とトルクセンサは独立に構成されていてもよいし、ある回路の中で一部の素子又は機能が共有されている構成であってもよい。
【0054】
上記のように、本実施形態のトルクセンサ50は、第1ブリッジ回路C1および第2ブリッジ回路C2の2つのブリッジ回路を有する。このため、いずれか一方のブリッジ回路に異常が発生した場合でも、他方のブリッジ回路によってトルクを検出できる。
【0055】
<4.第1検出部について>
動力伝達装置1は、第1検出部D1を有する。第1検出部D1は、第1部材10の回転角度を検出するセンサである。本実施形態では、トルクセンサ50のセンサ基板51に、第1検出部D1が搭載されている。第1検出部D1は、センサ基板51に配置された抵抗線により構成される。抵抗線の抵抗値は、環状体30の歪みに応じて変化する。すなわち、第1検出部D1は、歪みゲージを有する。
【0056】
図7に示すように、第1検出部D1を構成する抵抗線は、8つの第3領域Ri,Rj,Rk,Rl,Rm,Rn,Ro,Rpを有する。8つの第3領域Ri,Rj,Rk,Rl,Rm,Rn,Ro,Rpは、周方向に間隔をあけて配置される。8つの第3領域Ri,Rj,Rk,Rl,Rm,Rn,Ro,Rpは、それぞれ、1本の導線により形成される。各第3領域Ri,Rj,Rk,Rl,Rm,Rn,Ro,Rpは、周方向に沿って円弧状に広がる。
【0057】
各第3領域Ri,Rj,Rk,Rl,Rm,Rn,Ro,Rpは、第3の部位r3を含む。第3の部位r3は、周方向に延びる。ただし、周方向に延びる第3の部位r3が、径方向に繰り返し配置されていてもよい。また、第3の部位r3は、径方向に延びていてもよい。また、径方向に延びる第3の部位r3が、周方向に繰り返し配置されていてもよい。
【0058】
8つの第3領域Ri,Rj,Rk,Rl,Rm,Rn,Ro,Rpのうち、互いに隣接しない4つの第3領域Ri,Rk,Rm,Roは、互いに接続されて、第3ブリッジ回路C3を形成する。図11は、第3ブリッジ回路C3の回路図である。図11に示すように、第3領域Riと第3領域Rkとは、この順に直列に接続される。第3領域Roと第3領域Rmとは、この順に直列に接続される。そして、電源電圧の+極と-極との間において、2つの第3領域Ri,Rkの列と、2つの第3領域Ro,Rmの列とが、並列に接続される。また、2つの第3領域Ri,Rkの中間点M31と、2つの第3領域Ro,Rmの中間点M32とが、第3電圧計V3に接続される。
【0059】
8つの第3領域Ri,Rj,Rk,Rl,Rm,Rn,Ro,Rpのうち、残りの4つの第3領域Rj,Rl,Rn,Rpは、互いに接続されて、第4ブリッジ回路C4を形成する。図12は、第4ブリッジ回路C4の回路図である。図12に示すように、第3領域Rpと第3領域Rnとは、この順に直列に接続される。第3領域Rjと第3領域Rlとは、この順に直列に接続される。そして、電源電圧の+極と-極との間において、2つの第3領域Rp,Rnの列と、2つの第3領域Rj,Rlの列とが、並列に接続される。また、2つの第3領域Rp,Rnの中間点M41と、2つの第3領域Rj,Rlの中間点M42とが、第4電圧計V4に接続される。
【0060】
動力伝達装置1の駆動時には、環状体30のベース部33に、周方向に伸長する部分(以下「伸長部」と称する)と、周方向に収縮する部分(以下「収縮部」と称する)とが、発生する。具体的には、2つの伸長部と2つの収縮部とが、周方向に交互に発生する。伸長部と収縮部とは、中心軸9を中心として、周方向に90°の間隔で交互に発生する。そして、これらの伸長部および収縮部の発生する箇所が、上述した第1回転速度で回転する。
【0061】
8つの第3領域Ri,Rj,Rk,Rl,Rm,Rn,Ro,Rpの各抵抗値は、ベース部33の周方向の伸縮に応じて変化する。例えば、上述した伸長部が、ある第3領域と重なるときには、その第3領域の抵抗値が増加する。また、上述した収縮部が、ある第3領域と重なるときには、その第3領域の抵抗値が低下する。
【0062】
図7の例では、収縮部が第3領域Ri,Rmと重なるときには、伸長部が第3領域Rk,Roと重なる。また、伸長部が第3領域Ri,Rmと重なるときには、収縮部が第3領域Rk,Roと重なる。したがって、第3ブリッジ回路C3では、第3領域Ri,Rmと、第3領域Rk,Roとが、逆向きの抵抗値変化を示す。
【0063】
また、図7の例では、収縮部が第3領域Rp,Rlと重なるときには、伸長部が第3領域Rn,Rjと重なる。また、伸長部が第3領域Rp,Rlと重なるときには、収縮部が第3領域Rn,Rjと重なる。したがって、第4ブリッジ回路C4では、第3領域Rp,Rlと、第3領域Rn,Rjとが、逆向きの抵抗値変化を示す。
【0064】
図13は、第3ブリッジ回路C3の第3電圧計V3の計測値v3と、第4ブリッジ回路C4の第4電圧計V4の計測値v4との、時間変化を示したグラフである。図13のグラフの横軸は、時刻を示す。図13のグラフの縦軸は、電圧値を示す。動力伝達装置1の駆動時には、図13のように、第3電圧計V3および第4電圧計V4から、それぞれ、周期的に変化する正弦波状の計測値v3,v4が出力される。この計測値v3,v4の周期Tは、上述した第1部材10の回転周期の1/2倍(180°)に相当する。また、第3電圧計V3の計測値v3の位相に対して、第4電圧計V4の計測値v4の位相が、第1部材10の回転周期の1/8倍(45°)進んでいるか、それとも第1部材10の回転周期の1/8倍(45°)遅れているかにより、第1部材10の回転の向きが特定される。
【0065】
すなわち、第1検出部D1は、上記の第3電圧計V3の計測値v3および第4電圧計V4の計測値v4に基づいて、第1部材10の回転角度を検出する。より具体的には、第1検出部D1は、所定の角度範囲θ1における第1部材10の絶対回転角度を検出する。「絶対回転角度」は、ベースフレーム101を含む固定系に対する回転角度を示し、回転角度毎に固有の値をとる。本実施形態では、第1検出部D1が、第1部材10の絶対回転角度を検出できる角度範囲θ1は、θ1=180°である。
【0066】
上述の通り、動力伝達装置1の駆動時には、環状体30に、周期的な撓み変形が生じる。このため、第1抵抗線部W1の出力信号および第2抵抗線部W2の出力信号には、本来計測したいトルクを反映した成分と、環状体30の周期的な撓み変形に起因する誤差成分(リップル誤差)とが含まれる。当該リップル誤差は、第1部材10の回転角度に応じて180°の周期で変化する。
【0067】
第1検出部D1は、上述した演算部71と、電気的に接続されている。第1検出部D1は、演算部71に、第1部材10の回転角度を示す検出信号を出力する。演算部71は、第1検出部D1から出力された回転角度に応じて、上述したリップル誤差を算出する。そして、演算部71は、第1抵抗線部W1の出力信号および第2抵抗線部W2の出力信号を、算出されたリップル誤差を用いて補正する。その結果、演算部71は、環状体30にかかるトルクを、より精度よく出力できる。
【0068】
なお、本実施形態では、第1検出部D1は、第1抵抗線部W1および第2抵抗線部W2よりも、径方向外側に配置されている。しかしながら、第1検出部D1は、第1抵抗線部W1および第2抵抗線部W2よりも、径方向内側に配置されていてもよい。また、第1検出部D1は、第1抵抗線部W1の径方向外側かつ第2抵抗線部W2の径方向内側に、配置されていてもよい。
【0069】
<5.第2検出部について>
動力伝達装置1は、第2検出部D2を有する。第2検出部D2は、第2部材20の回転角度を検出するセンサである。図4に示すように、第2検出部D2は、被検出部D21と、信号生成部D22とを有する。
【0070】
被検出部D21は、第2部材20または第2部材20に固定された部材に、配置される。被検出部D21は、中心軸9を中心として円環状に配列された複数のパターンを有する。パターンは、例えば、溝または突起である。信号生成部D22は、環状体30または環状体30に固定された部材に、配置される。信号生成部D22は、被検出部D21のパターンを検出することにより、第2部材20の絶対回転角度を検出する。信号生成部D22の検出方式には、例えば、機械式(接触式)、光学式、磁気式、または静電容量式の検出器を使用することができる。
【0071】
第2検出部D2は、所定の角度範囲における第2部材20の絶対回転角度を検出する。「絶対回転角度」は、ベースフレーム101を含む固定系に対する回転角度を示し、回転角度毎に固有の値をとる。本実施形態では、第2検出部D2が、第2部材20の絶対回転角度を検出できる角度範囲θ2は、θ2=360°である。
【0072】
ただし、第2検出部D2は、連続値ではなく、所定のビット数Bで示される離散値を出力する。すなわち、第2検出部D2は、第2検出部D2の回転角度を、360°/2^Bの分解能で検出する。このように、第2検出部D2の出力値を、連続値ではなく、離散値とすることで、第2検出部D2の構成を簡素化できる。したがって、第2検出部D2にかかるコストを低減できる。
【0073】
ビット数Bは、動力伝達装置1の減速比(第1部材10の回転速度/第2部材20の回転速度)をNとして、2^B≧2Nを満たす値とされる。動力伝達装置1の減速比の範囲が50から160の場合、ビット数Bは、7ビット(0-127)から9ビット(0-511)あれば十分である。
【0074】
第2検出部D2は、上述した演算部71と、電気的に接続されている。第2検出部D2は、演算部71に、第2部材20の回転角度を示す検出信号を出力する。
【0075】
なお、被検出部D21が、環状体30または環状体30に固定された部材に配置され、信号生成部D22が、第2部材20または第2部材20に固定された部材に配置されていてもよい。
【0076】
<6.多回転角度検出について>
上述の通り、第1検出部D1は、所定の角度範囲における第1部材10の絶対回転角度を検出する。しかしながら、第1検出部D1は、単独では、上記の角度範囲よりも広い範囲における第1部材10の絶対回転角度(以下「多回転角度」と称する)を検出することはできない。例えば、第1検出部D1が絶対回転角度を検出可能な角度範囲が180°の場合、第1検出部D1は、第1部材10の回転角度が90°のときと、270°のときとを、区別して検出することはできない。
【0077】
そこで、演算部71は、第1検出部D1により検出される回転角度と、第2検出部D2により検出される回転角度とに基づいて、第1部材10の多回転角度を出力する。
【0078】
図14は、第1検出部D1および第2検出部D2の出力値の例を示したグラフである。図14の横軸は、第1部材10の多回転角度を示している。図14には、第1検出部D1の出力値Aと、第2検出部D2の出力値Pとが、示されている。動力伝達装置1の駆動時には、第2検出部D2の出力値Pが、0°から360°まで1回変化する間に、第1検出部D1の出力値Aが、0から180°の変化を複数回繰り返す。演算部71は、このような2つの出力値A,Pを組み合わせることにより、第2部材20が1回転する間の第1部材10の多回転角度を出力する。
【0079】
具体的には、第1検出部D1の出力値をA、第2検出部D2の出力値をP、第2検出部D2の出力値のビット数をB、動力伝達装置1の変速比(第1部材10の回転速度/第2部材20の回転速度)をNとして、演算部71は、A、P、B、Nに基づいて、第1部材10の多回転角度を算出する。これにより、モータ103のエンコーダに依存することなく、第1部材10の多回転角度を出力できる。
【0080】
より具体的には、第1検出部D1が第1部材10の絶対回転角度を検出できる角度範囲をθ1、第2検出部D2が第2部材20の絶対回転角度を検出できる角度範囲をθ2、第1部材10の多回転角度をIN、小数点以下を切り捨てる関数をFLOOR()、θ1で割ったときの余りを示す関数をMODθ1()として、演算部71は、次式(1),(2),(3)によりINを算出する。
I=(θ2/2^B)*P*N (1)
IN=FLOOR(I/θ1)*θ1+A (2)
IN={FLOOR(I/θ1)+1}*θ1+A (3)
【0081】
ただし、A≧MODθ1(I)の場合、上式(1),(2)によりINを算出し、A<MODθ1(I)の場合、上式(1),(3)によりINを算出する。これにより、第1部材10の多回転角度を、精度よく算出できる。
【0082】
このように、本実施形態の回転角度検出装置は、第1部材10の回転角度を検出する第1検出部D1と、第2部材20の回転角度を検出する第2検出部D2と、第1検出部D1により検出される回転角度と、第2検出部D2により検出される回転角度とに基づいて、第1部材10の多回転角度を出力する演算部71と、を備える。これにより、第1検出部D1だけでは第1部材10の多回転角度を検出できない場合であっても、第2部材20の回転角度から第1部材10の多回転角度検出できる。よって、例えば、モータ103のエンコーダに依存することなく、第1部材10の多回転角度を出力できる。
【0083】
上述の通り、本実施形態の回転角度検出方法は、第1部材10の多回転角度を検出できる回転角度検出方法である。すなわち、本実施形態の回転角度検出方法は、第1部材10の回転角度および第2部材20の回転角度を検出する第1工程と、第1工程により検出される第1部材10の回転角度および第2部材20の回転角度に基づいて、第1部材10の多回転角度を出力する第2工程と、を有する。これにより、第1工程だけでは第1部材10の多回転角度を検出できない場合であっても、第2部材20の回転角度から第1部材10の多回転角度検出できる。よって、例えば、モータ103のエンコーダに依存することなく、第1部材10の多回転角度を出力できる。
【0084】
上記の通り、第1検出部D1は、所定の角度範囲θ1においてのみ、第1部材10の絶対回転角度を検出可能である。しかしながら、第1検出部D1の出力値Aだけではなく、第2検出部D2の出力値Pを用いることで、上記の角度範囲よりも大きい角度範囲における第1部材10の多回転角度を出力できる。
【0085】
本実施形態では、第1検出部D1が、第1部材10の絶対回転角度を検出できる角度範囲をθ1として、θ1=180°である。このように、第1検出部D1が、第1部材10の絶対回転角度を検出できる角度範囲θ1が360°に満たない場合でも、第2検出部D2の検出ビット数Bを適切に設定すれば、第1部材10の多回転角度を出力できる。
【0086】
また、上記の通り、第2検出部D2は、所定の角度範囲θ2においてのみ、第2部材20の絶対回転角度を検出可能である。本実施形態では、第2検出部D2は、360°の範囲においてのみ、第2部材20の絶対回転角度を検出可能である。しかしながら、ロボット100の用途では、アーム102の回転範囲は、360°以下である場合が多い。したがって、第2部材20が1回転する範囲で、第1部材10の多回転角度を検出することができれば、実使用上十分である。
【0087】
また、上記の通り、第2検出部D2は、所定のビット数Bで示される離散値を出力する。第2検出部D2の出力値Pを、連続値ではなく、離散値とすることで、第2検出部D2の構成を簡素化できる。したがって、第2検出部D2にかかるコストを低減できる。また、第2検出部D2の出力値Pが離散値であるため、第2検出部D2の出力値Pに減速比Nを単純に乗算するだけでは、第1部材10の多回転角度INを正確に算出することができない。しかしながら、上記のように、第1検出部D1の出力値Aおよび第2検出部D2の出力値Pの双方を用いることで、第1部材10の多回転角度INを、精度よく算出できる。
【0088】
また、上記の通り、第1検出部D1は、動力伝達装置1に含まれる環状体30に配置された歪みゲージを有する。本実施形態では、トルクセンサ50のリップル補正のために設けられた第1検出部D1を、第1部材10の多回転検出に利用している。換言すると、第1検出部D1は、リップル補正と、第1部材10の多回転検出の2つの目的に使用される。このようにすれば、リップル補正のための角度検出部と、第1部材10の多回転検出のための角度検出部とを、別々に設ける場合よりも、角度検出部の数を減らすことができる。
【0089】
また、上記の通り、本実施形態では、動力伝達装置1が、第1部材10の多回転角度を検出する角度検出装置を有する。このため、モータ103のエンコーダなどの動力伝達装置1の外部の要素に依存することなく、第1部材10の多回転角度を検出できる。
【0090】
また、上記の通り、動力伝達装置1は、第1部材10の回転角度を検出する第1検出部D1と、第2部材20の回転角度を検出する第2検出部D2と、を備える。このため、これらの2つの検出部の出力値を利用して、第1部材10の多回転角度を検出できる。
【0091】
また、上記の通り、ロボット100は、第1検出部D1および第2検出部D2を備えた動力伝達装置1を有する。このため、例えば、モータ103のエンコーダに依存することなく、第1部材10の多回転角度を検出することが可能なロボット100を提供できる。
【0092】
<7.変形例>
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記の実施形態には限定されない。
【0093】
<7-1.第1変形例>
図15は、第1変形例に係る動力伝達装置1を、軸方向一方側から見た図である。第1変形例では、第1検出部D1が、第1センサおよび第2センサを有する。
【0094】
第1センサは、上記の実施形態における第1検出部D1と同等の構成を有する。すなわち、第1センサは、センサ基板51に配置された8つの第3領域Ri,Rj,Rk,Rl,Rm,Rn,Ro,Rpにより構成される。第1センサは、180°の角度範囲における第1部材10の絶対回転角度を検出する。
【0095】
第2センサは、被検出部D11と、信号生成部D12とを有する。被検出部D11は、第1部材10または第1部材10に固定された部材に、配置される。被検出部D11は、中心軸9を中心として180°の角度範囲に形成されたパターンを有する。パターンは、例えば、溝または突起である。信号生成部D12は、例えば、信号処理基板70に配置される。信号生成部D12は、被検出部D11のパターンを検出する。信号生成部D12の検出方式には、例えば、機械式(接触式)、光学式、磁気式、または静電容量式の検出器を使用することができる。第2センサは、第1部材10が180°回転する毎にON/OFFが切り替わる360°周期の信号を出力する。
【0096】
このようにすれば、第2センサの出力信号に基づいて、第1部材10の回転角度が、0から180°の範囲にあるのか、180°から360°の範囲にあるのかを、特定することができる。したがって、第1検出部D1は、第1センサの出力信号と、第2センサの出力信号とに基づいて、360°の角度範囲における第1部材10の絶対回転角度を検出することができる。すなわち、第1検出部D1が第1部材10の絶対回転角度を検出できる角度範囲をθ1として、θ1=360°とすることができる。なお、第1検出部は、単一のセンサによって、第1部材10の360°の角度範囲における回転角度を検出してもよい。
【0097】
<7-2.第2変形例>
トルクセンサ50の出力値は、角度伝達誤差や、第2部材20の偏心などにより、第2部材20の1回転周期で発生する誤差を含む場合がある。そのような場合、演算部71は、第1検出部D1よび第2検出部D2の出力値に基づいて算出された第1部材10の多回転角度INに基づいて、トルクセンサ50の出力値を補正してもよい。すなわち、演算部71は、第1部材10の多回転角度INに基づいて、歪みゲージの出力値を補正してもよい。これにより、環状体30にかかるトルクを、より精度よく検出できる。
【0098】
<7-3.第3変形例>
図16は、第2部材20および環状体30の一部分を示した図である。図16に示すように、第2部材20は、複数の内歯21を有する。すなわち、第2部材20は、第2部材20の回転軸の周方向に配列され、回転軸の径方向に延びる複数の歯を有する。
【0099】
以下では、隣り合う内歯21の歯先21aの間の周方向の間隔を「ピッチ」と称する。複数の内歯21は、理想的には、周方向に一定のピッチPc0で配置される。しかしながら、第2部材20の製造誤差により、一部の隣り合う内歯21のピッチが、理想的なピッチPc0とは異なる場合がある。図16の例では、一部の隣り合う内歯21のピッチPc1が、理想的なピッチPc0よりも大きくなっている。また、図16の例では、他の一部の隣り合う内歯21のピッチPc2が、理想的なピッチPc0よりも小さくなっている。
【0100】
このように、隣り合う内歯21のピッチが理想的なピッチPc0と異なる位置では、内歯21と外歯32の噛み合いにずれが発生し、中心軸9回りにおける、環状体30と第2部材20との相対的な回転角度にずれが発生する。つまり、中心軸9回りにおける、第1部材10と第2部材20との相対的な回転角度にずれが発生する。そうすると、第1部材10の回転角度に伴って本来第2部材20があるべき回転角度と、実際の第2部材20の回転角度との間にずれが生じる。その結果、ロボット100のアーム102にも位置ずれが生じる場合がある。
【0101】
そこで、演算部71は、各内歯21の周方向の位置の誤差を、予め記憶していてもよい。そして、演算部71は、第1部材10の多回転角度に基づいて、各内歯21の周方向における絶対回転角度を出力するようにしてもよい。すなわち、回転角度検出装置は、歯の周方向における角度が記憶されていてもよい。これにより、回転角度検出装置は、歯の周方向における角度を出力可能であり、又は、当該角度が他の部位によって読み出し可能となる。このように、予め記憶されている各内歯21の周方向の位置の誤差に基づいて、内歯21毎に回転角度を出力すれば、各内歯21の製造誤差を考慮に入れた上で、第2部材20が、本来第1部材10の回転に伴ってあるべき、中心軸9回りの回転角度になるように調整できる。したがって、回転角度検出装置の出力信号に基づいて、より高精度な制御を行うことができる。
【0102】
また、演算部71は、隣り合う内歯21の周方向のピッチと、内歯21の周方向における絶対回転角度とを、関連付けて出力してもよい。すなわち、回転角度検出装置は、歯と周方向に隣接する歯とのピッチと、歯の周方向における角度とが記憶されていてもよい。これにより、回転角度検出装置は、周方向に隣接する歯のピッチと、歯の周方向における角度を出力可能であり、又は、当該角度が他の部位によって読み出し可能となる。このように、隣り合う内歯21のピッチと、内歯21の回転角度とを、関連付けて出力すれば、ピッチの誤差を考慮して、各内歯21の回転角度を調整できる。つまり、各ピッチの製造誤差を考慮に入れた上で、第2部材20が、本来第1部材10の回転に伴ってあるべき、中心軸9回りの回転角度になるように調整できる。したがって、回転角度検出装置の出力信号に基づいて、より高精度な制御を行うことができる。
【0103】
なお、演算部に代わって、回転角度検出装置が隣り合う内歯の周方向における回転角度を記憶していてもよい。つまり、動力伝達装置の何れかの部位が、内歯の周方向における回転角度を記憶していればよい。また、演算部や回転角度検出装置、又は動力伝達装置の何れかの部材が記憶すべき対象は、外歯の周方向における回転角度、又は、周方向に隣接する外歯の周方向におけるピッチであってもよく、内歯及び外歯の両方の周方向における回転角度、又は、周方向に隣接する内歯及び外歯の両方の周方向におけるピッチであってもよい。
【0104】
<7-4.第4変形例>
上記の実施形態では、動力伝達装置1が、演算部71を備えていた。しかしながら、演算部71は、動力伝達装置1の外部に設けられていてもよい。例えば、ロボット100が、動力伝達装置1と、演算部71とを備えていてもよい。この場合、動力伝達装置1が備える第1検出部D1および第2検出部D2の出力値に基づいて、ロボット100の演算部71が、第1部材10の多回転角度を検出できる。
【0105】
<7-5.他の変形例>
上記の実施形態の動力伝達装置1は、環状体30がベースフレーム101に固定され、第2部材20である内歯歯車が、減速後の第2回転速度で回転していた。したがって、第2検出部D2は、内歯歯車の回転角度を検出していた。しかしながら、内歯歯車がベースフレーム101に固定され、環状体30が減速後の第2回転速度で回転してもよい。この場合、環状体30が第2部材となるので、第2検出部D2は、環状体30の回転角度を検出すればよい。
【0106】
また、上記の実施形態の環状体30は、ベース部33が、胴部31から径方向外側へ向けて広がる、いわゆる「ハット型」の可撓性外歯歯車であった。しかしながら、環状体30は、ベース部33が、胴部31から径方向内側へ向けて広がる、いわゆる「カップ型」の可撓性外歯歯車であってもよい。
【0107】
また、上記の実施形態では、ロボット100に搭載される動力伝達装置1について説明した。しかしながら、同様の構造の動力伝達装置1を、アシストスーツ、無人搬送台車などの他の装置に搭載してもよい。
【0108】
その他、回転角度検出装置、動力伝達装置、およびロボットの細部の構成については、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜に変更してもよい。また、上記の実施形態および変形例に登場した要素を、矛盾が生じない範囲で、適宜に組み合わせてもよい。
【0109】
<8.総括>
本技術は、以下の構成をとることが可能である。
【0110】
(1)第1回転速度で回転する第1部材と、前記第1部材の回転に伴い前記第1回転速度よりも低い第2回転速度で回転する第2部材と、を有する動力伝達装置の回転角度検出装置であって、前記第1部材の回転角度を検出する第1検出部と、前記第2部材の回転角度を検出する第2検出部と、前記第1検出部により検出される回転角度と、前記第2検出部により検出される回転角度とに基づいて、前記第1部材の多回転角度を出力する演算部と、を備える、回転角度検出装置。
【0111】
(2)(1)に記載の回転角度検出装置であって、前記第1検出部は、所定の角度範囲における前記第1部材の絶対回転角度を検出する、回転角度検出装置。
【0112】
(3)(1)または(2)に記載の回転角度検出装置であって、前記第2検出部は、所定の角度範囲における前記第2部材の絶対回転角度を検出する、回転角度検出装置。
【0113】
(4)(1)から(3)のいずれか1つに記載の回転角度検出装置であって、前記第2検出部は、所定のビット数で示される離散値を出力する、回転角度検出装置。
【0114】
(5)(4)に記載の回転角度検出装置であって、前記第1検出部の出力値をA、前記第2検出部の出力値をP、前記ビット数をB、前記動力伝達装置の変速比をN、として、前記演算部は、A、P、B、Nに基づいて、前記第1部材の多回転角度を算出する、回転角度検出装置。
【0115】
(6)(5)に記載の回転角度検出装置であって、前記第1検出部が、前記第1部材の絶対回転角度を検出できる角度範囲をθ1、前記第2検出部が、前記第2部材の絶対回転角度を検出できる角度範囲をθ2、前記第1部材の多回転角度をIN、小数点以下を切り捨てる関数をFLOOR()、θ1で割ったときの余りを示す関数をMODθ1()として、
I=(θ2/2^B)*P*N (1)
IN=FLOOR(I/θ1)*θ1+A (2)
IN={FLOOR(I/θ1)+1}*θ1+A (3)
前記演算部は、A≧MODθ1(I)の場合、上式(1),(2)によりINを算出し、A<MODθ1(I)の場合、上式(1),(3)によりINを算出する、回転角度検出装置。
【0116】
(7)(1)から(6)のいずれか1つに記載の回転角度検出装置であって、前記第1検出部が、前記第1部材の絶対回転角度を検出できる角度範囲をθ1として、θ1=180°である、回転角度検出装置。
【0117】
(8)(1)から(6)のいずれか1つに記載の回転角度検出装置であって、前記第1検出部が、前記第1部材の絶対回転角度を検出できる角度範囲をθ1として、θ1=360°である、回転角度検出装置。
【0118】
(9)(1)から(8)のいずれか1つに記載の回転角度検出装置であって、前記第1検出部は、180°の角度範囲における前記第1部材の絶対回転角度を検出する第1センサと、180°ごとにON/OFFが切り替わる360°周期の信号を出力する第2センサと、を有する、回転角度検出装置。
【0119】
(10)(1)から(9)のいずれか1つに記載の回転角度検出装置であって、前記第2部材は、前記第2部材の回転軸の周方向に配列され、前記回転軸の径方向に延びる複数の歯を有し、前記歯の前記周方向における角度が記憶されている、回転角度検出装置。
【0120】
(11)(1)から(9)のいずれか1つに記載の回転角度検出装置であって、前記第2部材は、前記第2部材の回転軸の周方向に配列され、前記回転軸の径方向に延びる複数の歯を有し、前記歯と前記周方向に隣接する前記歯とのピッチと、前記歯の前記周方向における角度が記憶されている、回転角度検出装置。
【0121】
(12)(1)から(11)のいずれか1つに記載の回転角度検出装置であって、前記第1検出部は、前記動力伝達装置に含まれる環状体に配置された歪みゲージを有する、回転角度検出装置。
【0122】
(13)(12)に記載の回転角度検出装置であって、前記演算部は、前記第1部材の多回転角度に基づいて、前記歪みゲージの出力値を補正する、回転角度検出装置。
【0123】
(14)(1)から(13)のいずれか1つに記載の回転角度検出装置を有する、動力伝達装置。
【0124】
(15)第1回転速度で回転する第1部材と、前記第1部材の回転に伴い前記第1回転速度よりも低い第2回転速度で回転する第2部材と、を有する動力伝達装置において、前記第1部材の多回転角度を検出する回転角度検出方法であって、前記第1部材の回転角度および前記第2部材の回転角度を検出する第1工程と、前記第1工程により検出される前記第1部材の回転角度および前記第2部材の回転角度に基づいて、前記第1部材の多回転角度を出力する第2工程と、を有する、回転角度検出方法。
【0125】
(16)第1回転速度で回転する第1部材と、前記第1部材の回転に伴い、前記第1回転速度よりも低い第2回転速度で回転する第2部材と、前記第1部材の回転角度を検出する第1検出部と、前記第2部材の回転角度を検出する第2検出部と、を備える、動力伝達装置。
【0126】
(17)(16)に記載の動力伝達装置を有する、ロボット。
【0127】
(18)(16)に記載の動力伝達装置と、前記第1検出部により検出される回転角度と、前記第2検出部により検出される回転角度とに基づいて、前記第1部材の多回転角度を出力する演算部と、を備える、ロボット。
【産業上の利用可能性】
【0128】
本発明は、回転角度検出装置、動力伝達装置、回転角度検出方法、およびロボットに利用できる。
【符号の説明】
【0129】
1 動力伝達装置
9 中心軸
10 第1部材
20 第2部材
21 内歯
30 環状体
31 胴部
32 外歯
33 ベース部
34 肉厚部
40 波動発生器
41 カム
42 可撓性軸受
50 トルクセンサ
51 センサ基板
60 ハウジング
70 信号処理基板
71 演算部
100 ロボット
101 ベースフレーム
102 アーム
103 モータ
511 絶縁層
512 抵抗線
C1 第1ブリッジ回路
C2 第2ブリッジ回路
C3 第3ブリッジ回路
C4 第4ブリッジ回路
D1 第1検出部
D11 被検出部
D12 信号生成部
D2 第2検出部
D21 被検出部
D22 信号生成部
W1 第1抵抗線部
W2 第2抵抗線部
【要約】      (修正有)
【課題】動力伝達装置の高速側の部材の多回転角度を検出できる技術を提供する。
【解決手段】動力伝達装置1は、第1部材10および第2部材20を有する。第1部材10は、第1回転速度で回転する。第2部材20は、第1部材10の回転に伴い、第1回転速度よりも低い第2回転速度で回転する。回転角度検出装置は、第1検出部、第2検出部、および演算部を備える。第1検出部は、第1部材10の回転角度を検出する。第2検出部は、第2部材20の回転角度を検出する。演算部は、第1検出部により検出される回転角度と、第2検出部により検出される回転角度とに基づいて、第1部材10の多回転角度を出力する。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16