(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-21
(45)【発行日】2023-08-29
(54)【発明の名称】検査対象物の状態評価装置および状態評価方法
(51)【国際特許分類】
G01N 29/11 20060101AFI20230822BHJP
G01N 29/48 20060101ALI20230822BHJP
【FI】
G01N29/11
G01N29/48
(21)【出願番号】P 2019139370
(22)【出願日】2019-07-30
【審査請求日】2022-07-01
(73)【特許権者】
【識別番号】302060926
【氏名又は名称】株式会社フジタ
(73)【特許権者】
【識別番号】304021417
【氏名又は名称】国立大学法人東京工業大学
(73)【特許権者】
【識別番号】598105732
【氏名又は名称】株式会社シスミック
(74)【代理人】
【識別番号】100089875
【氏名又は名称】野田 茂
(72)【発明者】
【氏名】添田 智美
(72)【発明者】
【氏名】藤沼 智洋
(72)【発明者】
【氏名】千葉 拓史
(72)【発明者】
【氏名】三上 貴正
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 秀太郎
(72)【発明者】
【氏名】岸村 雄平
【審査官】田中 洋介
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-082460(JP,A)
【文献】特開2009-145154(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 29/00ー29/52
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象物の表面をハンマーで打撃する打撃部と、
前記打撃部を中心にして前記打撃部から等距離で配置された、前記ハンマーによる打音を検出する複数のマイクと、
複数の前記マイクで集音された打音に基づいて、前記検査対象物の表面上の前記マイクに対応する位置を評価点とする複数の評価値を算出する評価値算出部と、
打撃毎に算出された複数の前記評価
値に基づいて、前記検査対象物の状態を評価する評価部と、を備え
、
前記評価部は、複数の前記評価点を含んだ領域を評価領域とし、複数の前記評価値の全てが閾値T以上の場合は前記評価領域全体に剥離が生じていると評価し、
前記評価部は、複数の前記評価値の一が閾値以上、前記評価値の他が閾値未満であり、複数の評価値の差分が大きい場合は、前記評価領域内に剥離がある第1の領域と剥離がない第2の領域があると、前記検査対象物の状態を評価する、
ことを特徴とする検査対象物の状態評価装置。
【請求項2】
前記評価部は、前記評価値のうち下位の第1の所定数を抽出し、前記第1の所定数の前記評価値の平均値をNa、前記評価値全体に対する前記第1の所定数の前記評価値の標準偏差をNbとしたときに、Na+β×Nb(βは正の数)を前記閾値とする、
ことを特徴とする請求項
1記載の検査対象物の状態評価装置。
【請求項3】
検査対象物の表面をハンマーで打撃する打撃部と、
前記打撃部を中心にして前記打撃部から等距離で配置された、前記ハンマーによる打音を検出する複数のマイクと、
複数の前記マイクで集音された打音に基づいて、前記検査対象物の表面上の前記マイクに対応する位置を評価点とする複数の評価値を算出する評価値算出部と、
打撃毎に算出された複数の前記評価
値に基づいて、前記検査対象物の状態を評価する評価部と、を備え
、
複数の前記マイクは、前記打撃部による打撃点を中心に対向する位置に設けられており、
前記評価部は、対向する2つのマイクに対応する2つの評価点の前記評価値同士の差分が第2の所定値以上の場合、前記打撃点の近傍に前記検査対象物の状態が異なる境界があると評価する、
ことを特徴とする検査対象物の状態評価装置。
【請求項4】
前記評価部は、前記境界を境として一方の領域は前記検査対象物の内部に剥離が生じていると評価し、他方の領域は前記検査対象物の内部に剥離が生じていないと評価する、
ことを特徴とする請求項
3記載の検査対象物の状態評価装置。
【請求項5】
前記評価部は、前記評価値の上位の第1の所定数を抽出し、前記第1の所定数の前記評価値の平均値に基づいて、前記検査対象物の表面から前記剥離までの距離を推定する、
ことを特徴とする請求項1から
4のいずれか1項記載の検査対象物の状態評価装置。
【請求項6】
検査対象物の表面をハンマーで打撃する打撃部と、
前記打撃部を中心にして前記打撃部から等距離で配置された、前記ハンマーによる打音を検出する複数のマイクと、を備える状態評価装置を用いた検査対象物の状態評価方法であって、
複数の前記マイクで集音された打音に基づいて、前記検査対象物の表面上の前記マイクに対応する位置を評価点とする複数の評価値を算出する評価値算出工程と、
打撃毎に算出された複数の前記評価
値に基づいて、前記検査対象物の状態を評価する評価工程と、
を含
み、
前記評価工程においては、複数の前記評価点を含んだ領域を評価領域とし、複数の前記評価値の全てが閾値T以上の場合は前記評価領域全体に剥離が生じていると評価し、
前記評価工程においては、複数の前記評価値の一が閾値以上、前記評価値の他が閾値未満であり、複数の評価値の差分が大きい場合は、前記評価領域内に剥離がある第1の領域と剥離がない第2の領域があると、前記検査対象物の状態を評価する、
ことを特徴とする検査対象物の状態評価方法。
【請求項7】
前記評価工程では、前記評価値のうち下位の第1の所定数を抽出し、前記第1の所定数の前記評価値の平均値をNa、前記評価値全体に対する前記第1の所定数の前記評価値の標準偏差をNbとしたときに、Na+β×Nb(βは正の数)を前記閾値とする、
ことを特徴とする請求項
6記載の検査対象物の状態評価方法。
【請求項8】
検査対象物の表面をハンマーで打撃する打撃部と、
前記打撃部を中心にして前記打撃部から等距離で配置された、前記ハンマーによる打音を検出する複数のマイクと、を備える状態評価装置を用いた検査対象物の状態評価方法であって、
複数の前記マイクで集音された打音に基づいて、前記検査対象物の表面上の前記マイクに対応する位置を評価点とする複数の評価値を算出する評価値算出工程と、
打撃毎に算出された複数の前記評価
値に基づいて、前記検査対象物の状態を評価する評価工程と、
を含
み、
複数の前記マイクは、前記打撃部による打撃点を中心に対向する位置に設けられており、
前記評価工程では、対向する2つのマイクに対応する2つの評価点の前記評価値同士の差分が第2の所定値以上の場合、前記打撃点の近傍に前記検査対象物の状態が異なる境界があると評価する、
ことを特徴とする検査対象物の状態評価方法。
【請求項9】
前記評価工程では、前記境界を境として一方の領域は前記検査対象物の内部に剥離が生じていると評価し、他方の領域は前記検査対象物の内部に剥離が生じていないと評価する、
ことを特徴とする請求項
8記載の検査対象物の状態評価方法。
【請求項10】
前記評価工程では、前記評価値の上位の第2の所定数を抽出し、前記第2の所定数の前記評価値の平均値に基づいて、前記検査対象物の表面から前記剥離までの距離を推定する、
ことを特徴とする請求項
6から
9のいずれか1項記載の検査対象物の状態評価方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査対象物の状態を評価する検査対象物の状態評価装置および状態評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建物の外装材(外壁材)の剥離、剥落を未然に防止するため、建物の状態を診断する方法が種々提案されている。
例えば、下記特許文献1には、建物躯体に接着された外装材の表面を打撃ハンマーで打撃した際に発生する打音を、打撃ハンマーの打撃点を中心にして当該中心から等距離で対象に配置した4つの第1~第4マイクにより検出し、それら4つのマイクからの検出信号に基づいて第1~第4検出回路により打音検出波形がそれぞれ生成され、各打音検出波形は第1~第4サンプリング部によってサンプリングされ評価部に供給される。打音検出波形のうち最初に発生する1周期分の波形を第1の波形としたとき、評価部は、第1の波形の振幅または波長に基づいて検査対象物の建物躯体に対する検査対象物の状態を評価する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来技術では、複数のマイクで集音された打音に基づいて検査対象物の状態を評価する評価値を算出しているが、評価値の算出方法や利用方法には更に改善の余地がある。
本発明はこのような事情に鑑みなされたものであり、その目的は、検査対象物の状態の評価を高精度に行なう上で有利な検査対象物の状態評価装置および状態評価方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述の目的を達成するため、請求項1記載の発明は、検査対象物の表面をハンマーで打撃する打撃部と、前記ハンマーによる打音を検出する複数のマイクと、複数の前記マイクで集音された打音に基づいて、前記検査対象物の表面上の前記マイクに対応する位置を評価点とする複数の評価値を算出する評価値算出部と、打撃毎に算出された複数の前記評価値の差分に基づいて、前記検査対象物の状態を評価する評価部と、を備えることを特徴とする。
請求項2記載の発明は、前記評価部は、複数の前記評価点を含んだ領域を打撃毎の評価領域とし、複数の前記評価値の差分が第1の所定値以上の場合、前記評価領域内に前記検査対象物の状態が異なる領域が混在していると判定する、ことを特徴とする。
請求項3記載の発明は、前記評価部は、前記評価値が所定の閾値以上の前記評価点を含む領域を第1の状態にある領域、前記評価値が前記閾値未満の前記評価点を含む領域を第2の状態にある領域と評価する、ことを特徴とする。
請求項4記載の発明は、前記評価部は、前記第1の領域は前記検査対象物の内部に剥離が生じていると評価し、前記第2の領域は前記検査対象物の内部に剥離が生じていないと評価する、ことを特徴とする。
請求項5記載の発明は、前記評価部は、前記評価値のうち下位の第1の所定数を抽出し、前記第1の所定数の前記評価値の平均値をNa、前記評価値全体に対する前記第1の所定数の前記評価値の標準偏差をNbとしたときに、Na+β×Nb(βは正の数)を前記閾値とする、ことを特徴とする。
請求項6記載の発明は、複数の前記マイクは、前記打撃部による打撃点を中心に対向する位置に設けられており、前記評価部は、対向する2つのマイクに対応する2つの評価点の前記評価値同士の差分が第2の所定値以上の場合、前記打撃点の近傍に前記検査対象物の状態が異なる境界があると評価する、ことを特徴とする。
請求項7記載の発明は、前記評価部は、前記境界を境として一方の領域は前記検査対象物の内部に剥離が生じていると評価し、他方の領域は前記検査対象物の内部に剥離が生じていないと評価する、ことを特徴とする。
請求項8記載の発明は、前記評価部は、前記評価値の上位の第1の所定数を抽出し、前記第1の所定数の前記評価値の平均値に基づいて、前記検査対象物の表面から前記剥離までの距離を推定する、ことを特徴とする。
請求項9記載の発明は、検査対象物の表面をハンマーで打撃する打撃部と、前記ハンマーによる打音を検出する複数のマイクと、を備える状態評価装置を用いた検査対象物の状態評価方法であって、複数の前記マイクで集音された打音に基づいて、前記検査対象物の表面上の前記マイクに対応する位置を評価点とする複数の評価値を算出する評価値算出工程と、打撃毎に算出された複数の前記評価値の差分に基づいて、前記検査対象物の状態を評価する評価工程と、を含むことを特徴とする。
請求項10記載の発明は、前記評価工程では、複数の前記評価点を含んだ領域を打撃毎の評価領域とし、複数の前記評価値の差分が第1の所定値以上の場合、前記評価領域内に前記検査対象物の状態が異なる領域が混在していると判定する、ことを特徴とする。
請求項11記載の発明は、前記評価工程では、前記評価値が所定の閾値以上の前記評価点を含む領域を第1の状態にある領域、前記評価値が前記閾値未満の前記評価点を含む領域を第2の状態にある領域と評価する、ことを特徴とする。
請求項12記載の発明は、前記評価工程では、前記第1の領域は前記検査対象物の内部に剥離が生じていると評価し、前記第2の領域は前記検査対象物の内部に剥離が生じていないと評価する、ことを特徴とする。
請求項13記載の発明は、前記評価工程では、前記評価値のうち下位の第1の所定数を抽出し、前記第1の所定数の前記評価値の平均値をNa、前記評価値全体に対する前記第1の所定数の前記評価値の標準偏差をNbとしたときに、Na+β×Nb(βは正の数)を前記閾値とする、ことを特徴とする。
請求項14記載の発明は、複数の前記マイクは、前記打撃部による打撃点を中心に対向する位置に設けられており、前記評価工程では、対向する2つのマイクに対応する2つの評価点の前記評価値同士の差分が第2の所定値以上の場合、前記打撃点の近傍に前記検査対象物の状態が異なる境界があると評価する、ことを特徴とする。
請求項15記載の発明は、前記評価工程では、前記境界を境として一方の領域は前記検査対象物の内部に剥離が生じていると評価し、他方の領域は前記検査対象物の内部に剥離が生じていないと評価する、ことを特徴とする。
請求項16記載の発明は、前記評価工程では、前記評価値の上位の第2の所定数を抽出し、前記第2の所定数の前記評価値の平均値に基づいて、前記検査対象物の表面から前記剥離までの距離を推定する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
請求項1および9記載の発明によれば、検査対象物をハンマーで打撃した際に発生する打音を複数のマイクで集音し、各マイクに対応した評価値を算出し、各評価点の差分に基づいて検査対象物の状態を評価する。これにより、比較的簡易な処理により検査対象物の評価を行うことができる。また、複数のマイクで得られた情報をそのまま活かして多くの評価点を設定し、特に検査対象物の状態が異なる境界部における状態判定の精度を向上させる上で有利となる。
請求項2および10記載の発明によれば、複数の評価値の差分が大きい(第1の所定値以上)場合、評価領域内に検査対象物の状態が異なる領域が混在していると判定するので、検査対象表面に対する状態分布を容易に把握する上で有利となる。
請求項3および11記載の発明によれば、検査対象物内部の状態を判定するので、表面からは観察できない検査対象物内部の状態を把握し、検査対象物のメンナンス性を向上させる上で有利となる。
請求項4および12記載の発明によれば、検査対象物内部の剥離(例えば外装材の剥離)の有無を判定するので、表面からは観察できない検査対象物内部の状態を把握し、検査対象物のメンナンス性を向上させる上で有利となる。
請求項5および13記載の発明によれば、評価値の一部を用いて検査対象物の状態が異なる領域の境界を識別する閾値を算出するので、閾値として固定値を用いる場合と比較して、より精度よく境界を識別する上で有利となる。
請求項6および14記載の発明によれば、対向して配置される2つの評価点の評価値同士の差分が第2の所定値以上の場合、打撃点の近傍に検査対象物の状態が異なる境界があると評価するので、検査対象物の状態が変化する箇所を容易に特定する上で有利となる。
請求項7および15記載の発明によれば、検査対象物内部の剥離(例えば外装材の剥離)の有無を判定するので、表面からは観察できない検査対象物内部の状態を把握し、検査対象物のメンナンス性を向上させる上で有利となる。
請求項8および16記載の発明によれば、評価値の一部を用いて検査対象物の表面から剥離までの距離を推定するので、剥離の位置をより詳細に把握する上で有利となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施の形態に係る検査対象物の状態評価装置の構成を示すブロック図である。
【
図2】検査対象物の状態評価装置の検出ユニットの側面図である。
【
図5】(A)は標準試験体の平面図、(B)は(A)の断面図である。
【
図6】外装材の状態と外装材の打音の音圧との関係を示す線図である。
【
図7】各マイク25A~25Dに対応するマイク別評価値Em1~Em4の一例をプロットした図である。
【
図8】評価部50による評価方法(方法1)を模式的に示す説明図である。
【
図9】評価部50による評価方法(方法2)を模式的に示す説明図である。
【
図10】評価部50による評価方法(方法2)を模式的に示す説明図である。
【
図12】マイク別評価値Emの上位平均値と剥離部深さとの関係を示すグラフである。
【
図13】検査対象物の状態評価装置の動作フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(実施の形態)
以下、本発明の実施の形態に係る検査対象物の状態評価装置(以下、状態評価装置という)について状態評価方法と共に図面を参照して説明する。
まず、
図1を参照して、本実施の形態の状態評価装置10の構成について説明する。
本実施の形態では、状態評価装置10が、検査対象物である建物外面部の状態、すなわち、タイルなどの外装材の浮きや剥がれなどの接着状態を評価する場合について説明する。
より詳細には、本実施の形態では、建物外面に接着剤を介して外装材が接着されている場合に、外装材と接着剤との界面、建物外面と接着剤との界面、接着剤の内部、外装材の内部、建物外面の内部のいずれかの箇所に、空隙、浮き、ひび(対向する部材同士の間に空隙は生じていない(略接触状態にある)ものの、接着されていない状態)等が生じているすなわち正常でない状態を総称して、「剥離」と称するものとする。
なお、本明細書において、検査対象物とは建物や構造物であり、検査対象物が建物であった場合、検査対象物は、平板状の建物外面部の他、例えば、室内の床、天井、壁面、室内のコンクリート躯体などを広く含むものである。
また、本明細書において建物外面とは、建物の最も外側に位置する建物の外面をいい、建物外面部とは、タイルやモルタルなどの外装材が設けられていない場合には、建物外面に加え、この建物外面近くの内部の状態を含むものとする。また、建物外面部とは、タイルやモルタルなどの外装材が設けられている場合には、外装材の表面に加え、外装材の表面の内側の外装材部分や外装材の内側の建物躯体の表面や表面近くの内部を含むものとする。
【0009】
状態評価装置10は、検出ユニット12Aと、本体ユニット14とで構成されている。
検出ユニット12Aは、作業者が把持して状態を評価すべき外装材2の表面に当て付けて使用されるものであり、本体ユニット14は、検出ユニット12Aで検出された打撃力、打音および振動のうち一以上の物理量を表す信号に基づいて外装材2の状態を評価するものである。
検出ユニット12Aと本体ユニット14とは、前記の信号を伝送する不図示のケーブルによって接続されている。
【0010】
図1から
図4に示すように、検出ユニット12Aは、筐体16と、3個のローラ18A、18B、18Cと、ハンマー20と、アクチュエータ22と、第1~第4マイク25A~25Dと、打撃力センサ26とを含んで構成されている。
筐体16は、矩形状の底壁1602と、底壁1602の四辺から起立する4つの側壁1604、1606、1608、1610と、4つの側壁1604、1606、1608、1610の上部を接続する上壁1612とを備えている。
底壁1602には後述するハンマー20を筐体16から出し入れするための開口1620が設けられている。
3個のローラ18A、18B、18Cのうち、2個のローラ18A、18Bは、底壁1602の対向する一対の端面に回転可能に取着され、同軸上に配置されている。
残りの1個のローラ18Cは、側壁1608の下部に金具17を介して回転可能に取着され、平面視したときにローラ18Cは、2個のローラ18A、18Bの軸線と平行する軸線上に配置されている。
そして、3個のローラ18A、18B、18Cは、それら3個のローラ18A、18B、18Cの外周面が外装材2の表面に当接された状態で底壁1602の下面と外装材2の表面とが一定の間隔Hをおいて互いに平行するように設けられている。
すなわち、筐体16は、ハンマー20で検査対象物を打撃する際には、検査対象物から離れた位置に配置される。なお、
図2等では底壁1602の下面と外装材2の表面との間隔Hがローラ18の半径程度となっているが、例えば間隔Hが数ミリ程度となるように筐体16に対するローラ18の取付位置を設計してもよい。または、ハンマー20による検査対象物の打撃時に間隔Hが任意の値になるように、筐体16を昇降させる昇降機構を設けてもよい。
【0011】
図3に示すように、ハンマー20は検査対象物である外装材2を打撃するものであり、アクチュエータ22はハンマー20に打撃方向の駆動力を加えるものである。
本実施の形態では、アクチュエータ22としてソレノイド22Aを用いている。
ソレノイド22Aは、コイルを備えるソレノイド本体2202、3個のローラ18A、18B、18Cが外装材2の表面に当接された状態で外装材2の表面と直交する方向に移動可能に設けられたプランジャ2204とを備えている。
本体部2202は、筐体16内の底壁1602上に設けられた台1614上に設置されている。
プランジャ2204は、コイルに駆動電力が供給されることでソレノイド本体2202から突出する突出位置に移動され、駆動電力の供給が停止されることでソレノイド本体2202に没入する没入位置に移動されるように構成されている。
図3、
図4に示すように、ハンマー20は、プランジャ2204の下端に設けられ、プランジャ2204の移動により底壁1602の開口1620を介して出没する。
3個のローラ18A、18B、18Cの外周面が外装材2の表面に当接された状態で、プランジャ2204が突出位置に移動することでハンマー20が外装材2の表面を打撃し、プランジャ2204が没入位置に移動することでハンマー20が外装材2の表面から離間する。
【0012】
第1マイク25A、第2マイク25B、第3マイク25C及び第4マイク25Dは、ハンマーによる打音を検出する。より詳細には、第1マイク25A、第2マイク25B、第3マイク25C及び第4マイク25Dは、ハンマー20が外装材2の表面を打撃したときに発生する打音を収音して打音に対応する検出信号(以下、「打音データ」という)を生成する。本実施の形態では、検出信号(打音データ)は電圧値である。
第1マイク25A、第2マイク25B、第3マイク25C及び第4マイク25Dは、ハンマー20による外装材2への打撃点P1(
図3参照)を中心にして当該中心から等距離離れて対称に配置されている。具体的には、打撃点P1を中心とする半径40mmの円周上に互いに90°の角度をおいて点対称に配置されている。よって、複数のマイク25A~25Dは、ハンマー20(打撃部)による打撃点を中心に対向する位置に設けられている。
なお、本実施の形態では、打撃点P1から各マイク25A~25Dまでの距離を40mmとした場合について説明するが、これに限らず、例えば0mm以上1000mm以下、5mm以上50mm以下、あるいは10mm以上100mm以下であればよい。
【0013】
このように配置された第1マイク25A、第2マイク25B、第3マイク25C及び第4マイク25Dのうち、第1マイク25Aは、
図2、
図4に示すように、筐体16を構成する前面側の側壁1604の外面下部に防振ゴム23を介して取着されている。
第2マイク25Bは、
図2、
図4に示すように、筐体16を構成する後面側の側壁1606の外面下部に防振ゴム23を介して取着されている。
第3マイク25Cは、
図3、
図4に示すように、筐体16を構成する左面側の側壁1608の外面下部に防振ゴム23を介して取着されている。
第4マイク25Dは、
図2、
図3、
図4に示すように、筐体16を構成する右面側の側壁1610の外面下部に防振ゴム23を介して取着されている。
本実施の形態では、第1マイク25A、第2マイク25B、第3マイク25C及び第4マイク25Dの4つのマイクを備える場合について説明するが、マイクの数は2つまたは6つ乃至それ以上であってもよい。マイクの数をより多くすれば一度の打撃により多くの打音データを得られる一方で、それぞれの打音データを処理するためのリソースが必要となる。
また、各マイク25A~25Dの受音面は、外装材2の検査対象面である表面に対して正対するように配置されており、外装材2の表面から各マイク25A~25Dまでの高さは0mm以上100mm以下、1mm以上10mm以下、あるいは1mm以上7mm以下であることが望ましい。
【0014】
図3に示すように、打撃力センサ26は、ハンマー20に取着され、ハンマー20の外装材2への打撃によってハンマー20に発生する反力(振動)、言い換えるとハンマー20の打撃力を検出して打撃力に対応する検出信号を生成するものである。このような打撃力センサ26として圧電センサなど従来公知の様々なセンサが使用可能である。
【0015】
次に、本体ユニット14について説明する。
図1に示すように、本体ユニット14は、駆動部30と、操作部31と、調整部32と、打撃力データ処理部33と、第1~第4打音データ処理部34A~34Dと、基準データ記憶部35と、第1~第4評価値算出部36A~36Dと、評価部50と、出力部52とを含んで構成されている。
なお、本体ユニット14の各構成部で行う処理は、本体ユニット14のみで行うに限らず、例えば複数の処理装置(マイコンとパーソナルコンピュータなど)で分散して行ってもよい。
【0016】
駆動部30は、ソレノイド本体2202のコイルに駆動電力を供給するものである。
操作部31は、作業者によって操作されることで駆動部30に対してコイルへの駆動電力の供給を指示するものであり、押しボタンスイッチなどにより構成されている。
調整部32は、駆動部30を制御してハンマー20に与える駆動力を調節するものである。
本実施の形態では、調整部32は、作業者によって操作されることでソレノイド本体2202のコイルに供給する駆動電力の電圧を増減するものであり、例えば、回転ボリューム(可変抵抗器)などにより構成されている。
このようにハンマー20に与える駆動力を調節可能とすることで、検査対象物の状態や材料に応じて適切な音圧の打音が得られるようにハンマー20の打撃力を調整できるように図られている。
本実施の形態では、ハンマー20、アクチュエータ22、駆動部30、操作部31、調整部32によって特許請求の範囲の打撃部が構成されている。
【0017】
打撃力データ処理部33は、打撃力センサ26で検出された打撃力に対応する検出信号を処理し、打撃毎に最大打撃力を特定する。
より詳細には、打撃力データ処理部33は、打撃力センサ26で生成された検出信号をA/D変換して打撃力検出波形を生成し、打撃力検出波形を予め定められたサンプリング周期でサンプリングする。そして、サンプリングした打撃力検出波形からハンマー20による打撃時にハンマー20に生じる打撃力の最大値、言い換えると打撃力のピーク値である最大打撃力Fを特定する。
【0018】
第1~第4打音データ処理部34A~34Dは、第1~第4マイク25A~25Dで生成された打音データを処理して、各打音データの波形特性値(本実施の形態では最大振幅値A)を算出する。
より詳細には、第1~第4打音データ処理部34A~34Dは、まずそれぞれ第1~第4マイク25A~25Dで生成された検出信号をA/D変換して打音検出波形を生成し、打音検出波形を予め定められたサンプリング周期でサンプリングする。
つぎに、第1~第4評価値算出部36A~36Dは、サンプリングされた打音検出波形を構成する複数周期の波形のうち、最も大きい振幅値(最大振幅値A)を波形特性値として検出する。
【0019】
一般的には、打音検出波形のうち最初に発生する1周期分の波形が2番目以降の波形に比較して振幅値が大きいため、打音検出波形のうち最初に発生する1周期分の波形の振幅値が最大振幅値Aとなると考えられる。しかしながら、第1~第4マイク25A~25Dの特性、検出時の環境、あるいは、検査対象物の状態などの諸条件によっては、打音検出波形のうち2番目以降に発生する波形が最も振幅値が大きなものとなる場合があり、この場合は、2番目以降に発生する波形の振幅値を最大振幅値Aとすればよい。
【0020】
また、本実施の形態では、波形特性値として最大振幅値Aを用いる場合について説明するが、波形特性値として波形の実行値を用いてもよく、この場合には、以下の説明の「振幅値」を「実効値」と読み替えればよい。
また、本実施の形態では、最大振幅値Aは、波形の最初の1周期の最大値と最小値との差分の絶対値とした。しかしながら、最大振幅値Aは、振幅の基準値(0V)を基準として波形の1周期のうち前半の波形のピーク値(極値)の絶対値としてもよく、あるいは、波形の1周期のうち後半の波形のピーク値(極値)の絶対値としてもよい。
【0021】
基準データ記憶部35は、予め定められた標準試験体(
図5参照)を打撃した際の最大打撃力および最大振幅値を記憶する。
より詳細には、基準データ記憶部35は、標準試験体をハンマー20で打撃した際の最大打撃力Fを基準打撃力F0、各マイク25A~25Dで得られた打音データの最大振幅値(波形特性値)Aを基準振幅値A0として記録する。本実施の形態では、標準試験体を複数回ハンマー20で打撃し、それぞれの打撃時に得られた最大打撃力Fの平均値を基準打撃力F0、各マイク25A~25Dの最大振幅値Aの平均値を基準振幅値A0(A01~A04)としている。
【0022】
図5(A)、(B)に標準試験体の一例を示す。
標準試験体54は、本体部5402と、空隙部5404とを含んで構成されている。
本体部5402は、平面視正方形の扁平な板状を呈しており、例えば、一辺の長さが300mm、高さが60mmである。
空隙部5404は、本体部5402の一方の面からくり抜かれた円形の空隙である。空隙部5404は、本体部5402の中心点Oを中心とした正円形状であり、その直径は160mm、高さは50mmである。
本実施の形態では、標準試験体54の材料として石英ガラスを用いた。なお、標準試験体54の材料としては、コンクリート、ガラス、金属材料、合成樹脂材料など従来公知の様々なソリッドな材料が使用可能である。
【0023】
本体部5402の空隙部5402が露出していない方の面(上面)には、本体部5402の対向する2辺の中央を延在し直交する2本の中心線CL1、CL2が表示されており、それら2本の中心線CL1、CL2の交差点が空隙部5404の中心点Oと一致しており、交差点がハンマー20で打撃する打撃目標点となっている。
なお、中心線CL1、CL2と、閉塞板5404の四辺との交点方向を、それぞれN方向、E方向、S方向、W方向とする(以下、単に「N」「E」「S」「W」等と記す)。
このように一部材で構成された標準試験体54によれば、状態評価装置10を用いてハンマー20により打撃目標点を打撃したときに閉塞板5404の箇所から発生する打音のばらつきが少なく、したがって、打音検出波形の振幅のばらつきが抑制されたものとなる。
【0024】
第1~第4評価値算出部36A~36Dは、第1~第4打音データ処理部34A~34Dで算出された波形特性値、基準データ記憶部35に記憶された基準打撃力F0および基準振幅値A0、打撃力データ処理部33で特定された最大打撃力等を用いて、ハンマー20での打撃ごとに、第1~第4マイク25A~25Dにそれぞれに対応したマイク別評価値Em(Em1~Em4)を算出する。
すなわち、第1~第4評価値算出部36A~36Dは、複数のマイク25A~25Dで集音された打音に基づいて、検査対象物の表面上のマイク25A~25Dに対応する位置を評価点とする複数の評価値Emを算出する。
なお、
図1では、図面の視認性の観点から、各第1~第4評価値算出部36A~36Dと基準データ記憶部35、および各第1~第4評価値算出部36A~36Dと打撃力データ処理部33との接続は、図示を省略している。
【0025】
以下、第1~第4評価値算出部36A~36Dでそれぞれ算出されたマイク別評価値Emを識別する必要がある場合には、評価値Em1~Em4(例えば評価値Em1は第1評価値算出部36Aで算出された第1マイク25Aのマイク別評価値)のように表記する。
本実施の形態では、それぞれ第1~第4評価値算出部36A~36Dは、検査対象物の打撃ごとに得られる最大打撃力Fと最大振幅値Aとを用いて、下記式(1)~(3)によりマイク別評価値Emを算出する。
Fr=F/F0・・・(1)
Ar=A/A0・・・(2)
Em=(Ar)i/(Fr)j(i=1,j=1/2)・・・(3)
【0026】
このように、基準振幅値A0を用いてマイク別評価値Emを算出することによって、より精度よくマイク別評価値Emを算出することができる。
すなわち、状態評価装置10を構成するマイク25A~25Dは、感度に個体差があり、同一音圧の打音を検出しても出力する検出信号の大きさにばらつきがある。そこで、最大振幅値Aを、基準振幅値A0で除すことによって、マイク25A~25Dの感度のばらつきの影響を受けることなく、同一音圧の打音を検出すると同一のマイク別評価値Emを得ることができる。
【0027】
また、式(3)におけるべき乗演算のべき指数(iやj)は一例であり、測定条件に応じて任意の数を設定することができる。べき指数は、例えば自然数(正の整数)の他、分数(3/4など)や小数を含む実数(1.5など)などであってもよい。また、iとjを同一の数値としてもよい。なお、任意の数=1の場合は、実質的にべき乗演算が行われないこととなるのでiまたはjの少なくともいずれかは1以外とするのが好ましい。
【0028】
なお、マイク別評価値Emの算出方法は上記に限らず、様々な方法を適用可能である。
例えば、最大打撃力を用いずに、下記式(4)~(5)のようにマイク別評価値Emを算出してもよい。
この場合も、式(5)のべき指数iは、測定条件に応じて任意の数を設定してよい。
Ar=A/A0・・・(4)
Em=(Ar)i=(Ai/A0)i(i=2)・・・(5)
また、検査対象物の打撃ごとに得られる最大振幅値Aをそのままマイク別評価値Emとしてもよい。
【0029】
評価部50は、マイク別評価値Emに基づいて検査対象物の状態を評価する。
評価部50の説明に先立って、打音波形の振幅と外装材2の剥離の有無との一般的な関係について説明する。
図6は、外装材2の状態と外装材2の打音の音圧との関係を示す線図であり、言い換えると打音検出波形を示す。
図6において、横軸は外装材2をハンマー20で打撃してからの経過時間(μs)を示し、縦軸は打音の音圧(Pa)を示す。
ハンマー20で打撃する外装材2の箇所として以下の4箇所を選んでいる。
なお、本明細書において、外装材2の健全部とは建物躯体に対する外装材2の接着状態が良好で剥離が無い部分を示し、外装材2の剥離部とは外装材2が部分的に建物躯体から剥離した部分を示す。
a:健全部
b:健全部きわ(健全部のうち外装材2が建物躯体から剥離した剥離部に近接した部分)
c:剥離部きわ(剥離部のうち健全部に近接した部分)
d:剥離部
図6から明らかなように、a:健全部、b:健全部きわの打音検出波形の振幅に対して、c:剥離部きわ、d:剥離部の打音検出波形の振幅が大きな値となっていることがわかる。
【0030】
また、
図7A~
図7Dは、検査対象物(外装材2)の表面に各マイク25A~25Dに対応するマイク別評価値Em1~Em4の一例をプロットした図である。図中、第1マイク25AをMic1、第2マイク25BをMic2、第3マイク25CをMic3、第4マイク25DをMic4、打撃点をImpact point(×)と表記している。各マイク25A~25Dに対応するプロットの半径が各マイク別評価値Emの大きさと比例しており、マイク別評価値Emが大きいほどプロットの面積が大きくなっている。
図7A~
図7Dにおいて、点線で囲まれた領域は剥離が生じている領域(剥離部)、点線から外側の領域は剥離が生じていない領域(健全部)である。
図7A~
図7Dでは、打撃点が3か所設定されており、打撃点aは健全部、打撃点bは剥離部、打撃点cは剥離部きわに位置している。
また、
図7A~
図7Dでは、検査対象物表面から剥離が生じている箇所までの距離(剥離部深さ)が異なる。
図7Aの剥離部深さは9mm、
図7Bの剥離部深さは19mm、
図7Cの剥離部深さは29mm、
図7Cの剥離部深さは39mmとなっている。
【0031】
例えば打撃点bのように打撃点が剥離部にあり、かつマイク25A~25Dも剥離部上に位置する場合は、全てのマイク25A~25Dにおいてマイク別評価値Emが大きくなる。
また、例えば打撃点cのように打撃点が剥離部にあるが、一部のマイク(
図7では第2マイク25B)の位置が剥離部上にない場合は、剥離部上にあるマイク(第1マイク25A、第3マイク25C、第4マイク25D)のマイク別評価値Emは大きくなるが、剥離部上にないマイク(第2マイク25B)のマイク別評価値Emは小さくなる。
また、例えば打撃点aのように打撃点が健全部にある場合は、マイク25A~25Dの位置に関わらず、全てのマイク25A~25Dにおいてマイク別評価値Emが小さくなる。
また、
図7A~
図7Dを比較すると、剥離部深さが深くなるほど打撃応答音振幅が小さくなり、この結果マイク別評価値Emが小さくなる。
このような知見から、例えば打音検出波形の振幅に対応するマイク別評価値Emと予め定められた閾値Tとの比較結果に基づいて外装材2の剥離の有無を判定することが可能となる。
【0032】
次に、評価部50について説明する。
評価部50は、打撃点の打撃毎に算出された複数のマイク別評価値Em1~Em4の差分に基づいて、検査対象物の状態を評価する。
本実施の形態では、評価部50は、以下の方法1または方法2により検査対象物の状態を評価する。
【0033】
<方法1>
図8は、評価部50による評価方法(方法1)を模式的に示す説明図である。
図8A~
図8Dは、
図7A~
図7Dに示すマイク別評価値Em1~Em4に基づいて評価を行った結果を示している。
図8中、網掛け部が剥離部と判定した領域となっている。
方法1では、検査対象物の表面に4つのマイクが面する位置(以下、単に「マイクの位置」という場合もある)を投影し、4つのマイクの位置(評価点)で囲まれた領域を打撃毎の評価領域とする。すなわち、複数の評価点を含んだ領域を打撃毎の評価領域とする。そして、複数のマイク別評価値Emの差分が所定値(以下「第1の所定値」とする)以上の場合、すなわち差分が大きい場合には、評価領域内に検査対象物の状態が異なる領域が混在していると判定する。例えば本実施の形態では、マイク別評価値Emの差分が大きい(差分が第1の所定値以上である)評価領域内に、剥離部と健全部との境界があると判定する。
図8では視認性の観点から評価領域をマイク25A~25Dの位置を結んだ領域よりも大きく図示している。実際には、マイク25A~25Dの位置を結んだ領域を評価領域としてもよいし、
図8のようにマイク25A~25Dの位置を結んだ領域よりも大きい領域を評価領域としてもよい。
【0034】
図8Aを参照すると、例えば、打撃点bの打撃時の評価領域は、符号Rbで示す範囲である。上述のように、打撃点bは打撃点が剥離部にあり、かつマイク25A~25Dも剥離部上に位置するので、全てのマイク25A~25Dにおいてマイク別評価値Emが大きく(後述する閾値T以上)なっており、マイク別評価値Em同士の差分は小さく(第1の所定値未満)なっている。よって、評価部50は、評価領域Rb全体が剥離部であると判定する。
また、打撃点cの打撃時の評価領域は、符号Rcで示す範囲である。上述のように、打撃点cは打撃点は剥離部にあるが、一部のマイク(マイク25B)は剥離部上なく、このマイク25Bではマイク別評価値Emが小さく(閾値T未満)であり、マイク別評価値Em同士の差分が大きく(第1の所定値以上)なっている。よって、評価部50は、評価領域Rc内に剥離部と健全部との境界があると判定する。具体的には、評価領域Rcのうち、第1マイク25A、第3マイク25Cおよび第4マイク25Dを含む領域Rc1は剥離部と判定し、第2マイク25Bを含む領域Rc2は健全部と判定する。
また、打撃点aの打撃時の評価領域は、符号Raで示す範囲である。上述のように、打撃点aは打撃点が健全部にあるので、全てのマイク25A~25Dにおいてマイク別評価値Emが小さく(閾値T未満)なっており、マイク別評価値Em同士の差分は小さく(第1の所定値未満)なっている。よって、評価部50は、評価領域Ra全体が健全部である判定する。
【0035】
すなわち、方法1では、評価部50は、複数の評価点を結んだ領域を打撃毎の評価領域とし、複数の評価値の差分が大きい(第1の所定値以上である)場合、評価領域内に検査対象物の状態が異なる領域が混在していると判定する。
この時、評価部50は、評価値が所定の閾値T以上の評価点を含む領域を第1の状態にある領域、評価値が閾値T未満の評価点を含む領域を第2の状態にある領域と評価する。より具体的には、評価部50は、第1の領域は検査対象物の内部に剥離が生じていると評価し、第2の領域は検査対象物の内部に剥離が生じていないと評価する。
【0036】
このようにすることで、1度の打撃で点ではなく面に対する評価を行うことができ、検査対象物の評価を効率的に行うことができる。
また、検査対象物の状態が異なる境界(例えば剥離部と健全部の境界)が識別しやすくなるので、例えばマイク別評価値Emの差分が大きい領域の打撃密度を高くするなどして、より精度の高い判定を行うことができる。
【0037】
なお、方法1では、個々のマイク位置を特定する必要があるので、検出ユニット12Aの向きについて留意する必要がある。すなわち、打撃位置に対して検出ユニット12Aが回転すると、各マイク25A~25Dの位置が周方向にずれてしまい、マイク位置(評価点)が正確に把握できなくなる。よって、例えばコンパス等により打撃点に対する検出ユニット12Aの方向(各マイク25A~25Dの位置)を確認しながら打撃を行う必要がある。
【0038】
つぎに、上記閾値Tの設定方法について説明する。
判定部50は、例えば各評価点の評価値(マイク別評価値Em)のうち下位の所定数(第1の所定数:ここではN個)を抽出し、N個のマイク別評価値Emの平均値をNa、マイク別評価値Emの全体数に対するN個のマイク別評価値Emの標準偏差をNbとしたときに、α×Na+β×Nb(α、βは任意の数)を閾値Tとする。本実施の形態では、α=1、β=正の数とし、閾値T=Na+β×Nbとする。
なお、所定数とは、具体的な個数ではなく、例えば評価点の数に対する割合(評価点のうち下位M%など)のように指定してもよい。
また、本実施の形態では、マイク別評価値Emが相対的に大きい領域を剥離あり(非健全部)と評価するため、下位の所定数とは、全ての評価点のマイク別評価値Emを大きい順に並べた場合の下位の所定数である。一方、例えばマイク別評価値Emが相対的に小さい領域を非健全部と評価する場合には、下位の所定数とは、全ての評価点のマイク別評価値Emを小さい順に並べた場合の下位の所定数とすればよい。
【0039】
なお、閾値Tの他の設定方法として、外装材2の接着状態、言い換えると、外装材2の剥離の有無のそれぞれに対応したマイク別評価値Emを予め求め、外装材2の剥離を確実に判定するに足る閾値Tを設定するようにしてもよい。あるいは、外装材2の健全部においてマイク別評価値Emを求め、そのマイク別評価値Emに予め定められた定数を乗算しあるいは定数を加算するなどして閾値Tを設定してもよい。
この方法は、例えば同条件での検査をくり返し行う場合(例えば同じサイズ、同じ素材の検査対象物をくり返し検査する場合)などに有効である。
【0040】
<方法2>
図9および
図10は、評価部50による評価方法(方法2)を模式的に示す説明図である。また、
図11は、模擬剥離試験体の平面図である。
方法2では、状態評価装置10の4つのマイク25A~25Dのうち、打撃点を挟んで対向する2つのマイク、例えば第1マイク25A(Mic1)と第3マイク25C(Mic3)や、第2マイク25B(Mic2)と第4マイク25D(Mic4)のマイク別評価値同士の差分を算出し、差分が所定値(以下「第2の所定値」とする)以上の場合、すなわち差分が大きい場合には、2つのマイク間、言い換えると打撃点の近傍に、検査対象物の状態が異なる境界があると評価する。
【0041】
図9および
図10は、
図11に示す模擬剥離試験体を打設した際の、対向するマイク同士のマイク別評価値Emの差分を打撃点にプロットした図であり、
図9は剥離部深さ9mmの模擬剥離試験体を、
図10は剥離部深さ29mmの模擬剥離試験体を、それぞれ打撃した場合の図である。
図11に示す模擬剥離試験体は、鉄筋コンクリート壁体に対して、二丁モザイクタイルをポリマーセメントモルタルを用いて張り付けたものであり、大きく3つの剥離部(斜線で示す範囲S、M、L)が形成されている。
【0042】
図9および
図10において、符号Aは第1マイク25Aのマイク別評価値Em1と第3マイク25Cのマイク別評価値Em3との差分(M1-M3)をプロットしたもの(マイク同士が図面縦方向に離れて位置)、符号Bは第2マイク25Bのマイク別評価値Em2と第4マイク25Dのマイク別評価値Em4との差分(M2-M4)をプロットしたもの(マイク同士が図面横方向に離れて位置)である。図中の丸は上記差分の大きさに半径が比例しており、白丸で示すのは(M1-M3)または(M2-M4)の値が負の場合、図中黒丸で示すのは(M1-M3)または(M2-M4)の値が負の場合である。
また、符号Cは(M1-M3)または(M2-M4)のうち差分値が大きい方の絶対値を打撃点にプロットしたものである。
【0043】
図9Cおよび
図10Cを参照すると、いずれも剥離部と健全部との境界付近(剥離部きわ)におけるマイク別評価値Emの差分が大きく(第2の所定値以上)なっており、剥離部と健全部との境界を精度よく判定することができる。また、剥離部の内部でもマイク別評価値Emの差分が生じており、健全部とは異なる状態であることが判別できる。
【0044】
すなわち、方法2では、複数のマイク25A~25Dは、ハンマー20による打撃点を中心に対向する位置に設けられており、評価部50は、対向する2つのマイクに対応する評価点の評価値同士の差分が第2の所定値以上の場合、打撃点の近傍に検査対象物の状態が異なる境界があると評価する。
この時、評価部50は、境界を境として一方の領域は検査対象物の内部に剥離が生じていると評価し、他方の領域は検査対象物の内部に剥離が生じていないと評価する。
【0045】
なお、例えば
図10に示すように、剥離部深さが大きい場合には、剥離部上のマイクであってもマイク別評価値Emが小さくなっており、剥離部と健全部との判別がしにくくなる。
このため、評価部50は、マイク別評価値Emの上位の所定数(第2の所定数:ここではL個)を抽出し、L個のマイク別評価値Emの平均値に基づいて、検査対象物の表面から剥離までの距離(剥離部深さ)を推定するようにしてもよい。
なお、この場合の所定数も、具体的な個数ではなく、例えば評価点の数に対する割合(評価点のうち上位L%など)のように指定してもよい。
【0046】
図12は、マイク別評価値Emの上位3%の平均値と剥離部深さとの関係を示すグラフである。
図12の各プロットは、模擬剥離試験体の剥離部を打撃した際のそれぞれのマイク別評価値Emを大きい順にならべた際の上位3%の平均値(以下、上位平均値という)であり、試料A-1は
図11に示す模擬剥離試験体の剥離部Sを、試料A-2は
図11に示す模擬剥離試験体の剥離部Mを、試料A-3は
図11に示す模擬剥離試験体の剥離部Lを、試料B~Dは図示しない模擬剥離試験体の剥離部を、それぞれ打撃して得られたマイク別評価値Emに基づいている。
試料A-1~A-3に着目すると、剥離部深さ9mm、19mm、29mm、39mmにそれぞれ形成した模擬剥離試験体を打撃した際の上位平均値は、剥離部深さと一定の相関関係があると考えられる。これは、上述した
図9、
図10からも明らかである。
このため、外装材2の剥離部深さとそれぞれの深さに対応したマイク別評価値Emの上位平均値との相関関係を予め求めておき、この相関関係に基づいて外装材2の剥離部深さを求めることができる。
【0047】
また、評価部50は、打撃力検出波形の振幅、言い換えると、最初に発生する打撃力検出波形の振幅が予め定められた評価中止閾値を下回ったときに外装材2の状態の評価を中止するようにしてもよい。
すなわち、何らかの原因によってハンマー20による外装材2の表面に対する打撃がなされなかった場合(空打ち)か、打撃が不十分であった場合には、外装材2の状態の評価を中止することで、外装材2の状態の評価を正確に行なう上で有利となる。
なお、評価中止閾値は、ハンマー20により外装材2の表面を打撃した場合と、空打ちした場合とのそれぞれで検出された打撃力検出波形の振幅を実測し、外装材2に対して正確に打撃がなされた状態と、空打ちあるいは不十分な打撃がなされた状態とを確実に判定するに足る評価中止閾値を設定すればよい。
【0048】
出力部52は、評価部50による評価結果やワイヤーフレームモデルを出力するものである。
出力部52として以下のものが例示される。
判定結果を表示するディスプレイ装置。
判定結果を印刷媒体に印刷するプリンタ装置。
判定結果を記録媒体に記録する記録装置。
判定結果を回線を介して各種端末装置やデータロガーに送信する通信装置。
【0049】
なお、上述した各種処理、すなわち本体ユニット14で行う各種処理は、コンピュータによって実行することができる。
コンピュータは、CPU、ROM、RAM、ハードディスク装置、キーボード、マウス、ディスプレイ装置、入出力インターフェースなどを有している。
ROMは所定の制御プログラムなどを格納し、RAMはワーキングエリアを提供するものである。
ハードディスク装置は、上記各種処理を実行するための制御プログラムを格納している。
キーボードおよびマウスは、操作者による操作入力を受け付けるものである。
ディスプレイ装置は、画像を表示するものであり、例えば、液晶表示装置などで構成される。ディスプレイ装置は出力部52として機能させることができる。
【0050】
次に状態評価装置10の動作について説明する。
図11のフローチャートを参照して説明する。
まず、標準試験体54を用いて基準振幅値A0等の基準データを決定する(ステップS100)。
より詳細には、状態評価装置10の検出ユニット12Aを標準試験体54の上に載置し、ハンマー20が打撃目標点(中心点O)の直上に位置するように位置決めする。この時、平面視した状態で第1~第4マイク25A~25Dの位置が2本の中心線CL1、CL2と一致するように、検出ユニット12Aの位置決めを行なう。
次に、作業者が操作部31を操作することにより、ハンマー20が閉塞板5404の打撃目標点を打撃する。この時生じた打音は、第1~第4マイク25A~25Dによって検出され、第1~第4打音データ処理部34A~34Dは、それら4つのマイクから生成された検出信号に基づいて各マイク25A~25Dに対応する最大振幅値を検出する。
つぎに、検出ユニット12Aの標準試験体54上の位置を90°回転させ、上記最大振幅値の検出をくり返す。すなわち、第1~第4マイク25A~25Dがそれぞれ「N」「E」「S」「W」に位置するように、標準試験体54の第1、第2中心線CL1、CL2との4種類の位置関係の全てについて最大振幅値を検出する。
各マイク25A~25Dについて4つ(90°回転毎)の最大振幅値が得られると、それぞれのマイク25A~25Dで平均値を算出して各マイク25A~25Dに対応する基準振幅値A0を決定する。
また、打撃力についても同様に、各打撃時における最大打撃力を特定し、最大打撃力の平均値を基準打撃力F0として決定する。
これら基準振幅値A0および基準打撃力F0は、基準データ記憶部35に記憶される。
なお、基準振幅値の決定は毎回(検査対象物の検査毎)行う必要はなく、2回目以降は基準データ記憶部35に記憶された基準振幅値A0および基準打撃力F0を用いればよい。
【0051】
次に、検査対象物の計測に移る。
作業者は、検出ユニット12Aの3個のローラ18A、18B、18Cを診断対象となる外装材2(任意の検査対象物)の表面に当接させ、操作部31を操作することにより、ハンマー20で外装材2(検査対象物)の表面を打撃する(ステップS102)。
【0052】
ハンマー20が外装材2の表面を打撃することで発生した打音は、第1~第4マイク25A~25Dによって検出される。それら4つのマイクで生成された検出信号は、第1~第4打音データ処理部34A~34Dで処理され、各マイクに対応する最大振幅値A(波形特性値)が算出される(ステップS104)。
また同時に、ハンマー20が外装材2の表面を打撃することでハンマー20に発生した打撃力は、打撃力センサ26によって検出され、打撃力データ処理部33で処理され、今回の打撃時における最大打撃力Fが特定される。
【0053】
次に、第1~第4評価値算出部36A~36Dは、各マイクに対応する最大振幅値A、打撃力データ処理部33で特定された最大打撃力F、基準データ記憶部35に記憶された基準振幅値A0および基準打撃力F0等を用いて、各マイク25A~25Dに対応したマイク別評価値Em1~Em4を算出する(ステップS106)。
【0054】
検査対象領域の打撃点を全て打撃するまでは(ステップS110:No)、作業者は検出ユニット12Aを次の打撃点に移動させて(ステップS112)、ステップS102に戻り以降の処理をくり返す。
検査対象領域の打撃点は、検査対象領域内で均一な密度となるように予め決めておくのが好ましい。本実施の形態では、例えば
図11に示した二丁モザイクタイル1枚につき6か所(横3か所、縦2か所)を打撃するものとした。
【0055】
検査対象領域の打撃点を全て打撃すると(ステップS110:Yes)、評価部50は、各打撃点で得られた複数のマイク別評価値Em1~Em4同士の差分に基づいて検査対象物の状態を評価する(ステップS118)。
すなわち、方法1の場合は、評価点を結んだ領域を打撃毎の評価領域とし、各評価点における評価値の差分が小さい場合(第1の所定値未満の場合)は評価領域内の状態は一致しており、差分が大きい場合(第1の所定値以上の場合)は評価領域内に状態が異なる町域が混在していると評価する。また、評価値が閾値T以上の評価点を含む領域は内部に剥離が生じていると評価し、評価値が閾値T未満の評価点を含む領域は内部に剥離が生じていないと評価する。
また、方法2の場合は、打撃点に対向して配置されている2つのマイクに対応する2つの評価点のマイク別評価値Em同士の差分が第2の所定値以上の場合、打撃点の近傍の境界を境として一方の領域は検査対象物の内部に剥離が生じていると評価し、他方の領域は検査対象物の内部に剥離が生じていないと評価する。
【0056】
出力部52は、評価部50から供給された外装材2の剥離の有無の判定結果、健全部と剥離部の剥離境界の検出結果を出力して(ステップS120)、一連の動作を終了する。これ以降、次の診断対象となる外装材2について上記と同様の処理を繰り返して行なう。
なお、上記のフローチャートでは、検査対象物の全領域の打撃が終了してから評価部50による評価を行うようにしているが、これに限らず、所定箇所の打撃で得られた複数のマイク別評価値Emが算出されたらすぐに評価部50による評価をおこなってもよい。言い換えると、ステップS118は、ステップS110の前に行ってもよい。
【0057】
以上説明したように、実施の形態にかかる検査対象物の状態評価装置10によれば、検査対象物をハンマー20で打撃した際に発生する打音を複数のマイク25A~25Dで集音し、各マイク25A~25Dに対応したマイク別評価値Emを算出し、各評価値の差分に基づいて検査対象物の状態を評価する。これにより、比較的簡易な処理により検査対象物の評価を行うことができる。また、複数のマイク25A~25Dで得られた情報をそのまま活かして多くの評価点を設定し、特に検査対象物の状態が異なる境界部における状態判定の精度を向上させる上で有利となる。
例えば上記評価方法1によれば、複数の評価値の差分が第1の所定値以上の場合、評価領域内に検査対象物の状態が異なる領域が混在していると判定するので、検査対象表面に対する状態分布を容易に把握する上で有利となる。より具体的には、検査対象物内部の剥離(例えば外装材の剥離)の有無を判定するので、表面からは観察できない検査対象物内部の状態を把握し、検査対象物のメンナンス性を向上させる上で有利となる。
また、評価値の一部を用いて検査対象物の状態が異なる領域の境界を識別する閾値Tを算出するようにすれば、閾値として固定値を用いる場合と比較して、より精度よく境界を識別する上で有利となる。
また、例えば上記評価方法2によれば、対向して配置される2つの評価点の評価値同士の差分が第2の所定値以上の場合、打撃点の近傍に検査対象物の状態が異なる境界があると評価するので、検査対象物の状態が変化する箇所を容易に特定する上で有利となる。
また、評価値の一部を用いて検査対象物の表面から剥離までの距離を推定するようにずれば、剥離の位置をより詳細に把握する上で有利となる。
【0058】
なお、実施の形態では、検査対象物が建物であり、タイル206などの外装材2の浮きや剥がれなどの接着状態を評価する場合について説明したが、本発明は、タイル206やモルタルなどの外装材2が設けられていない場合には、建物外面に加え、この建物外面近くの内部の状態を評価する場合、また、タイル206やモルタルなどの外装材2が設けられている場合には、外装材2の表面に加え、外装材2の表面の内側の外装材2部分や外装材2の内側の建物躯体の表面や表面近くの内部を評価する場合に広く適用可能である。
さらに、本発明は、建物の室内の床、天井、壁面、室内のコンクリート躯体などを評価する場合に広く適用可能である。
また、本発明は、検査対象物が建物に限定されず、高架橋やダムなどの構造物などを評価する場合に広く適用可能である。
【符号の説明】
【0059】
2 外装材(検査対象物)
10 状態評価装置
12A 検出ユニット
14 本体ユニット
20 ハンマー
25A-25D 第1~第4マイク
26 打撃力センサ
33 打撃力データ処理部
34A-34D 第1~第4打音データ処理部
35 基準データ記憶部
36A-36D 第1~第4評価値算出部
50 評価部
52 出力部