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特許7334939累進屈折力レンズの透過光評価における光学性能の推定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-21
(45)【発行日】2023-08-29
(54)【発明の名称】累進屈折力レンズの透過光評価における光学性能の推定方法
(51)【国際特許分類】
   G01M 11/02 20060101AFI20230822BHJP
   G02C 7/06 20060101ALI20230822BHJP
   G02C 13/00 20060101ALI20230822BHJP
   G06F 30/10 20200101ALI20230822BHJP
   G06F 30/20 20200101ALI20230822BHJP
【FI】
G01M11/02 B
G02C7/06
G02C13/00
G06F30/10
G06F30/20
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019137591
(22)【出願日】2019-07-26
(65)【公開番号】P2021021606
(43)【公開日】2021-02-18
【審査請求日】2022-05-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000219738
【氏名又は名称】東海光学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099047
【弁理士】
【氏名又は名称】柴田 淳一
(72)【発明者】
【氏名】太田 恵介
【審査官】平田 佳規
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-303900(JP,A)
【文献】特開2012-132689(JP,A)
【文献】特開平11-125580(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 11/00- G01M 11/02
G01B 11/00- G01B 11/30
G02C 7/06
G02C 13/00
G06F 30/10- G06F 30/398
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数種類の形状が既知である累進屈折力レンズ(以下、「既知レンズ群」とする)について、下記(1)及び(2)の工程で第1の光学性能データと第2の光学性能データを取得し、形状が未知である累進屈折力レンズ(以下、「未知レンズ」とする)について、下記(1)の工程で第1の光学性能データを取得し、前記既知レンズ群の前記第1の光学性能データと、前記未知レンズの前記第1の光学性能データを用いて主成分分析を実行し、主成分分析によって算出された主成分得点と寄与率に基づいて前記既知レンズ群のレンズごとの重みを算出し、その重みを下記(3)の工程で取得した差分データに加重平均して与えて、前記未知レンズの差分データを算出し、前記未知レンズの差分データを前記未知レンズの前記第1の光学性能データに付加することで、下記(2)の第2の光学性能データと同等とみなせる前記未知レンズの光学性能データを推定するようにしたことを特徴とする累進屈折力レンズにおける透過光評価の光学性能の推定方法。
(1)レンズを通って眼回旋中心に入射することを目的としない光線を解析することによって当該レンズの光学性能を評価するための第1の光学性能データを取得する第1の工程。
(2)レンズを通って眼回旋中心に入射することを目的とする光線を解析することによって当該レンズの光学性能を評価するための第2の光学性能データを取得する第2の工程。
(3)前記第1の工程で取得した第1の光学性能データと前記第2の工程で取得した第2の光学性能データの差分データを取得する第3の工程。
【請求項2】
複数種類の形状が既知である累進屈折力レンズ(以下、「既知レンズ群」とする)について、下記(1)及び(2)の工程で第1の光学性能データと第2の光学性能データを取得し、形状が未知である累進屈折力レンズ(以下、「未知レンズ」とする)について、下記(1)の工程で第1の光学性能データを取得し、前記既知レンズ群の前記第1の光学性能データと、前記未知レンズの前記第1の光学性能データを用いて主成分分析を実行し、主成分分析によって算出された主成分得点と寄与率に基づいて前記既知レンズ群のレンズごとの重みを算出し、その重みを下記(2)の工程で取得した第2の光学性能データに加重平均して与えることで、下記(2)の第2の光学性能データと同等とみなせる前記未知レンズの光学性能データを推定するようにしたことを特徴とする累進屈折力レンズにおける透過光評価の光学性能の推定方法。
(1)レンズを通って眼回旋中心に入射することを目的としない光線を解析することによって当該レンズの光学性能を評価するための第1の光学性能データを取得する第1の工程。
(2)レンズを通って眼回旋中心に入射することを目的とする光線を解析することによって当該レンズの光学性能を評価するための第2の光学性能データを取得する第2の工程。
【請求項3】
前記既知レンズ群のレンズごとの前記重みは、前記未知レンズの主成分得点を近似するように既知レンズ群の主成分得点に応じた重みを最適化計算によって主成分ごとに算出し、その後主成分ごとの重みと寄与率を加重平均することで得るようにことを特徴とする請求項1又は2に記載の累進屈折力レンズにおける透過光評価の光学性能の推定方法。
【請求項4】
複数種類の形状が既知である累進屈折力レンズ(以下、「既知レンズ群」とする)について、下記(1)及び(2)の工程で第1の光学性能データと第2の光学性能データを取得し、形状が未知である累進屈折力レンズ(以下、「未知レンズ」とする)について、下記(1)の工程で第1の光学性能データを取得し、前記既知レンズ群の前記第1の光学性能データと、前記未知レンズの前記第1の光学性能データを用いて最小二乗法によって前記既知レンズ群のレンズごとの重みを算出し、その重みを下記(3)の工程で取得した差分データに加重平均して与えて、前記未知レンズの差分データを算出し、前記未知レンズの差分データを前記未知レンズの前記第1の光学性能データに付加することで、下記(2)の第2の光学性能データと同等とみなせる前記未知レンズの光学性能データを推定するようにしたことを特徴とする累進屈折力レンズにおける透過光評価の光学性能の推定方法。
(1)レンズを通って眼回旋中心に入射することを目的としない光線を解析することによって当該レンズの光学性能を評価するための第1の光学性能データを取得する第1の工程。
(2)レンズを通って眼回旋中心に入射することを目的とする光線を解析することによって当該レンズの光学性能を評価するための第2の光学性能データを取得する第2の工程。
(3)前記第1の工程で取得した第1の光学性能データと前記第2の工程で取得した第2の光学性能データの差分データを取得する第3の工程。
【請求項5】
複数種類の形状が既知である累進屈折力レンズ(以下、「既知レンズ群」とする)について、下記(1)及び(2)の工程で第1の光学性能データと第2の光学性能データを取得し、形状が未知である累進屈折力レンズ(以下、「未知レンズ」とする)について、下記(1)の工程で第1の光学性能データを取得し、前記既知レンズ群の前記第1の光学性能データと、前記未知レンズの前記第1の光学性能データを用いて最小二乗法によって前記既知レンズ群のレンズごとの重みを算出し、その重みを下記(2)の工程で取得した第2の光学性能データに加重平均して与えることで、下記(2)の第2の光学性能データと同等とみなせる前記未知レンズの光学性能データを推定するようにしたことを特徴とする累進屈折力レンズにおける透過光評価の光学性能の推定方法。
(1)レンズを通って眼回旋中心に入射することを目的としない光線を解析することによって当該レンズの光学性能を評価するための第1の光学性能データを取得する第1の工程。
(2)レンズを通って眼回旋中心に入射することを目的とする光線を解析することによって当該レンズの光学性能を評価するための第2の光学性能データを取得する第2の工程。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、累進屈折力レンズの透過光評価における光学性能の推定方法等に関するものである。
【背景技術】
【0002】
形状が未知のレンズがある場合に、そのレンズの光学性能を取得したいという要望がある。しかし、単焦点レンズに比べて特に累進屈折力レンズは遠用部と近用部と加入部とを有し、レンズ形状が複雑であるため光学性能の取得は容易ではない。
例えばマッピング装置を使用してその光学性能を取得することが可能である。マッピング装置は眼鏡レンズの広範囲に渡って複数の光線を一方のレンズ面(一般には表面)から入射させ、他方のレンズ面から出射された際の各光線毎の屈折による変位を屈折力として算出するものであり、マッピングされた個々の位置の明確な点(マッピングポイント)における屈折力データ、例えばS度数、C度数、AX(乱視軸)、プリズム量、プリズム方向等を出力するものである。
レンズの光学性能として、このようなマッピング装置による屈折力データだけではなく、レンズを透過した光線が実際に人の眼にどのように入射しているかという光学性能、つまり透過光での屈折力データもレンズの光学性能として取得したいという要請がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2003-42905号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
既知の累進屈折力レンズでは、一般に形状データがあるため、その形状データを用いて設計ソフトによってコンピュータシミュレーションすることでマッピング装置と同等な光学性能も透過光での光学性能もいずれも正確に取得することができる(もちろん、マッピング装置を使用してマッピングによる光学性能を実測で取得してもよい)。
一方、形状が未知の累進屈折力レンズでは、実測することでマッピング装置による光学性能は問題なく取得できる。しかし、形状が未知の累進屈折力レンズについて、透過光の光学性能を取得するための前提として形状データを得るために形状測定装置で実測したとしても測定誤差が大きかったり補間計算が難しかったりして、実際には透過光の光学性能を正確に取得することはできない。また、形状測定することなく透過光の光学性能を取得する方法として特許文献1に開示されるような方法があるが、測定が非常に面倒である。
そのため、形状が未知の累進屈折力レンズについて形状を測定することなく、かつ比較的正確で迅速に透過光での光学性能データを取得するための手段が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために第1の手段では、複数種類の形状が既知である累進屈折力レンズ(以下、「既知レンズ群」とする)について、下記(1)及び(2)の工程で第1の光学性能データと第2の光学性能データを取得し、形状が未知である累進屈折力レンズ(以下、「未知レンズ」とする)について、下記(1)の工程で第1の光学性能データを取得し、前記既知レンズ群の前記第1の光学性能データと、前記未知レンズの前記第1の光学性能データを用いて主成分分析を実行し、主成分分析によって演算された主成分得点と寄与率に基づいて前記既知レンズ群のレンズごとの重みを演算し、その重みを下記(3)の工程で取得した差分データに加重平均して与えて、前記未知レンズの差分データを演算し、前記未知レンズの差分データを前記未知レンズの前記第1の光学性能データに付加することで、下記(2)の第2の光学性能データと同等とみなせる前記未知レンズの光学性能データを推定するようにした。
(1)レンズを通って眼回旋中心に入射することを目的としない光線を解析することによって当該レンズの光学性能を評価するための第1の光学性能データを取得する第1の工程。
(2)レンズを通って眼回旋中心に入射することを目的とする光線を解析することによって当該レンズの光学性能を評価するための第2の光学性能データを取得する第2の工程。
(3)前記第1の工程で取得した第1の光学性能データと前記第2の工程で取得した第2の光学性能データの差分データを取得する第3の工程。
【0006】
このような方法によれば、形状が未知の累進屈折力レンズについて実際に形状を測定することなく、かつ比較的正確で迅速に透過光での光学性能データを取得することができる。また、差分データを反映させるため、より推定の正確さが増すこととなる。
「主成分分析」とは、多変量解析の一手法であって、相関のある多数の数量データから相関のない少数で全体のばらつきを最もよく表す変数を合成するものである。第一主成分の分散を最大化し、続く主成分はそれまでに決定した主成分と直交するという拘束条件の下で分散を最大化するようにして選ばれる。主成分の分散を最大化することは、観測値の変化に対する説明能力を可能な限り主成分に持たせる目的で行われる。
【0007】
「光学性能」とは、既存レンズ評価において用いているレンズの性能のことであり、例えば、S度数、C度数、AX(乱視軸)、プリズム量、プリズム方向等である。また、「光学性能データ」とはそれらの光学性能を発揮させることができるレンズの固有の数値データである。
【0008】
上記(1)における「レンズを通って眼回旋中心に入射することを目的としない光線」とは、例えばレンズを通って裏面の法線方向に出射する光線(以下、「裏面光線追跡とする」)や、レンズの表面に対して平行に入射する光線である。このような光線による解析はマッピング装置によって行うことが出来る。マッピング装置として、例えば1)Visionix社製 「VM2000,」「VM 2500」、2)Topcon社製 「EZ-200」、3)Rotlex社製 「Class Plus」「 Mapper」「FFV」、4)Automation&Robotics社製 「Dual Lensmapper」、5)Lambda-X社製「NIMO」「TR4005」等が挙げられる。
また、測定するレンズの形状データがあれば、マッピング装置の測定原理に基づいた光線追跡法をシミュレーションソフトによるコンピュータ装置によって実行することでマッピング装置による解析結果と同等の結果を取得することができる。つまり実際にマッピング装置で測定をしなくともよい。
上記(1)における「第1の光学性能データ」の種類は、例えば、S度数、C度数、AX(乱視軸)、プリズム量、プリズム方向等である。
上記(2)における「レンズを通って眼回旋中心に入射することを目的とする光線を解析すること」(以下、「透過光光線追跡」とする)は、物体からの光線が実際にレンズによって屈折して眼に入射する際の光学性能として重要である。これもレンズの形状データがあれば、シミュレーションソフトによるコンピュータ装置によってシミュレーションして計算によって取得することができる。しかし、このようないわゆる透過光光線の追跡は、形状がわからないとシミュレーションは困難であり、また、仮に実測に基づいた形状データを使用した場合は、測定誤差や補間計算の影響で本来の設計値からの誤差が大きくなってしまう。一方、形状が既知であるレンズではシミュレーションが可能である。上記(2)における「第2の光学性能データ」の種類は、例えば、S度数、C度数、AX(乱視軸)、プリズム量、プリズム方向等である。
【0009】
第1の光学性能データと第2の光学性能データを用いる場合には、すべての種類を使用しなければならないわけではない。求める光学性能によって使用されるデータの種類は必ずしも同じではない。
S度数データ、C度数データ、AXデータを使用する場合には、JCC(ジャクソンクロスシリンダー)の式に変換することがよい。S度数、C度数、AXは極座標の表現方式であるため、加減乗除に適していないためである。
尚、これら用語の定義、意義は以下でも同様である。
【0010】
また、第2の手段では、複数種類の形状が既知である累進屈折力レンズ(以下、「既知レンズ群」とする)について、下記(1)及び(2)の工程で第1の光学性能データと第2の光学性能データを取得し、形状が未知である累進屈折力レンズ(以下、「未知レンズ」とする)について、下記(1)の工程で第1の光学性能データを取得し、前記既知レンズ群の前記第1の光学性能データと、前記未知レンズの前記第1の光学性能データを用いて主成分分析を実行し、主成分分析によって算出された主成分得点と寄与率に基づいて前記既知レンズ群のレンズごとの重みを算出し、その重みを下記(2)の工程で取得した第2の光学性能データに加重平均して与えることで、下記(2)の第2の光学性能データと同等とみなせる前記未知レンズの光学性能データを推定するようにした。
(1)レンズを通って眼回旋中心に入射することを目的としない光線を解析することによって当該レンズの光学性能を評価するための第1の光学性能データを取得する第1の工程。
(2)レンズを通って眼回旋中心に入射することを目的とする光線を解析することによって当該レンズの光学性能を評価するための第2の光学性能データを取得する第2の工程。
【0011】
このような方法によれば、形状が未知の累進屈折力レンズについて実際に形状を測定することなく、かつ比較的正確で迅速に透過光での光学性能データを取得することができる。また、差分データを反映させる必要がないため、差分データを算出する手間が少なくてすむ。
【0012】
また、第3の手段では第1及び第2の手段において、前記既知レンズ群のレンズごとの前記重みは、前記未知レンズの主成分得点を近似するように既知レンズ群の主成分得点に応じた重みを最適化計算によって主成分ごとに算出し、その後主成分ごとの重みと寄与率を加重平均することで得るようにすることがよい。
主成分分析では主成分毎に既知レンズ群の主成分得点が算出されるため、既知レンズごとの前記重みを1つに決定するために、主成分ごとの寄与率に基づいた加重平均を採用することで前記未知レンズの主成分得点を近似するより確からしい既知レンズごとの重みが得られる。
【0013】
また、第4の手段では、複数種類の形状が既知である累進屈折力レンズ(以下、「既知レンズ群」とする)について、下記(1)及び(2)の工程で第1の光学性能データと第2の光学性能データを取得し、形状が未知である累進屈折力レンズ(以下、「未知レンズ」とする)について、下記(1)の工程で第1の光学性能データを取得し、前記既知レンズ群の前記第1の光学性能データと、前記未知レンズの前記第1の光学性能データを用いて最小二乗法によって前記既知レンズ群のレンズごとの重みを算出し、その重みを下記(3)の工程で取得した差分データに加重平均して与えて、前記未知レンズの差分データを算出し、前記未知レンズの差分データを前記未知レンズの前記第1の光学性能データに付加することで、下記(2)の第2の光学性能データと同等とみなせる前記未知レンズの光学性能データを推定するようにした。
(1)レンズを通って眼回旋中心に入射することを目的としない光線を解析することによって当該レンズの光学性能を評価するための第1の光学性能データを取得する第1の工程。
(2)レンズを通って眼回旋中心に入射することを目的とする光線を解析することによって当該レンズの光学性能を評価するための第2の光学性能データを取得する第2の工程。
(3)前記第1の工程で取得した第1の光学性能データと前記第2の工程で取得した第2の光学性能データの差分データを取得する第3の工程。
【0014】
このような方法によれば、形状が未知の累進屈折力レンズについて実際に形状を測定することなく、かつ比較的正確で迅速に透過光での光学性能データを取得することができる。また、差分データを反映させるため、より推定の正確さが増すこととなる。
【0015】
また、第5の手段では、複数種類の形状が既知である累進屈折力レンズ(以下、「既知レンズ群」とする)について、下記(1)及び(2)の工程で第1の光学性能データと第2の光学性能データを取得し、形状が未知である累進屈折力レンズ(以下、「未知レンズ」とする)について、下記(1)の工程で第1の光学性能データを取得し、前記既知レンズ群の前記第1の光学性能データと、前記未知レンズの前記第1の光学性能データを用いて最小二乗法によって前記既知レンズ群のレンズごとの重みを算出し、その重みを下記(2)の工程で取得した第2の光学性能データに加重平均して与えることで、下記(2)の第2の光学性能データと同等とみなせる前記未知レンズの光学性能データを推定するようにした。
(1)レンズを通って眼回旋中心に入射することを目的としない光線を解析することによって当該レンズの光学性能を評価するための第1の光学性能データを取得する第1の工程。
(2)レンズを通って眼回旋中心に入射することを目的とする光線を解析することによって当該レンズの光学性能を評価するための第2の光学性能データを取得する第2の工程。
【0016】
このような方法によれば、形状が未知の累進屈折力レンズについて実際に形状を測定することなく、かつ比較的正確で迅速に透過光での光学性能データを取得することができる。また、差分データを反映させる必要がないため、差分データを算出する手間が少なくてすむ。
本発明の範囲は,明細書に明示的に説明された構成や限定されるものではなく、本明細書に開示される本発明の様々な側面の組み合わせをも,その範囲に含むものである。本発明のうち、特許を受けようとする構成を、添付の特許請求の範囲に特定したが、現在の処は特許請求の範囲に特定されていない構成であっても,本明細書に開示される構成を、将来的に特許請求の範囲とする意思を有する。
本願発明は以下の実施の形態に記載の構成に限定されない。各実施の形態や変形例の構成要素は任意に選択して組み合わせて構成するとよい。また各実施の形態や変形例の任意の構成要素と、発明を解決するための手段に記載の任意の構成要素または発明を解決するための手段に記載の任意の構成要素を具体化した構成要素とは任意に組み合わせて構成するとよい。これらについても本願の補正または分割出願等において権利取得する意思を有する。
【発明の効果】
【0017】
本願の発明によれば、形状が未知の累進屈折力レンズについて実際に形状を測定することなく、かつ比較的正確で迅速に透過光での光学性能データを取得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の推定方法の実施の形態において使用する演算用コンピュータ装置の概略を説明するブロック図。
図2】レンズについて取得したデータを行列形式で表現して説明する説明図。
図3】共分散行列の計算方法を説明する説明図。
図4】共分散行列のアルゴリズムを説明するプログラムの説明図。
図5】共分散行列の要素を計算していく過程を説明する説明図。
図6】実施例1における平均度数分布図と非点収差分布図であって(a)はシミュレーション結果(b)は推定結果、(c)は(a)と(b)の分布図を重ねた状態。
図7】実施例2における平均度数分布図と非点収差分布図であって(a)はシミュレーション結果(b)は推定結果、(c)は(a)と(b)の分布図を重ねた状態。
図8】実施例3におけるプリズム分布図であって(a)はシミュレーション結果(b)は推定結果、(c)は(a)と(b)の分布図を重ねた状態。
図9】実施例4における平均度数分布図と非点収差分布図であって(a)はシミュレーション結果(b)は推定結果、(c)は(a)と(b)の分布図を重ねた状態。
図10】実施例6における歪曲収差分布図であって(a)はシミュレーション結果(b)は推定結果、(c)は(a)と(b)の分布図を重ねた状態。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、具体的な実施の形態の説明をする。
図1は本発明の推定方法を実現するための一例としての演算用コンピュータ装置1の概略ブロック図である。演算用コンピュータ装置1には表示手段あるいは出力手段としてのモニター2とプリンタ3、キーボードやマウス等の入力装置4が接続されている。
演算用コンピュータ装置1はCPU(中央処理装置)5及び記憶装置6等の周辺装置によって構成される。CPU5は入力装置4からの命令により各種プログラムに基づいて処理を実行する。記憶装置6にはCPU5の動作を制御するためのプログラム、複数のプログラムに共通して適用できる機能を管理するOA処理プログラム(例えば、日本語入力機能や印刷機能等)等の基本プログラムが格納されている。また、本発明に特化してモニターレンズについての形状データ、検査対象レンズについての形状データ、形状データのあるレンズに対して裏面光線追跡や透過光光線追跡のシミュレーションを実行した結果、算出した第1の光学性能データと第2の光学性能データ等が格納される。また、第1の光学性能データと第2の光学性能データの差分データが格納される。
【0020】
CPU5は本発明に特化した処理として、CPU5は記憶装置6内に記憶されたシミュレーションソフトによってレンズの形状データに基づいて裏面光線追跡や透過光光線追跡のシミュレーションを実行する。また、CPU5は記憶装置6内に記憶された演算プログラムに従って主成分分析の演算や重みの計算、データの標準化等の各種演算を行う。また、得られたデータに基づいて等高線描画ソフトによって平均度数分布図、非点収差分布図、プリズム分布図、歪曲収差分布図等を作成し、モニター2やプリンタ3から出力させる。
尚、以下の計算においては必ずしも単一の演算用コンピュータ装置1で実行しなくともよく、一の演算用コンピュータ装置1で計算した結果に基づいて他の一の演算用コンピュータ装置1で実行させるようにしてもよい。
以下に、演算用コンピュータ装置1のアルゴリズムによって実行される実施例について説明する。
【0021】
(実施例1)
1.モニターレンズについての第1の光学性能データと第2の光学性能データのデータ列の獲得
実施例1では、形状データが既知である5種類の異なる累進屈折力レンズであるモニターレンズP~Pについて、裏面光線追跡をした第1の光学性能データと、透過光光線追跡した第2の光学性能データの2種類を得る。本実施の形態では第1の光学性能データと第2の光学性能データはモニターレンズP~Pの形状データに基づいて演算用コンピュータ装置1によるシミュレーションによって取得するものとする。
データはレンズのXY座標において、-48mmから+48mmまでの格子座標上の点を2mm間隔で取得した。径75mmのレンズを使用し、シミュレーションした内の径50mmの範囲を評価領域として採用した。評価点は489点となる。評価領域を実際の径よりも狭くした理由は、マッピング装置で実測した場合、径の境界部分における光学性能の信頼性が低いと思われるためである。CPU5はこれら評価点について第1の光学性能データと第2の光学性能データから、それぞれS度数データ、C度数データ、AXデータを選択して使用し、JCCのM(等価球面値、平均度数)とJ00とJ45へ変換して(つまり、標準化して)記憶装置6に格納する。
データは評価点1~評価点489点におけるM、評価点1~評価点489点におけるJ00、評価点1~評価点489点におけるJ45の順で直列のデータ列としてモニターレンズP~Pとの対応させて保存されている。例えば第1の光学性能データのデータ列は表1のように表現される。
次に、第1の光学性能データと第2の光学性能データの対応するモニターレンズP~Pの対応する評価点1~評価点489ごとに上記度M、J00、J45について「差分データ」を取得し保存する。
【0022】
【表1】
【0023】
2.検査対象レンズについての第1の光学性能データと第2の光学性能データのデータ列の獲得
形状データが未知である光学性能を推定する対象としての累進屈折力レンズついて、第1の光学性能データを取得する。
但し、実施例1では実際に形状データが未知のレンズを使用しても、本当に推定ができているかどうかの検証ができないため、本実施例1では未知のレンズとみなした形状の既知の、みなし未知レンズPを用いるようにする。
みなし未知レンズPは本来形状データが未知であるためシミュレーションはできないが、ここではシミュレーションにより求めた。みなし未知レンズPのレンズ面上のモニターレンズP~Pと同じXY座標平面状の評価点1~評価点489点について、CPU5はモニターレンズP~Pと同様に第1の光学性能データとしてS度数データ、C度数データ、AXデータを選択して使用し、JCCのMとJ00とJ45へ変換して記憶装置6に格納する。
【0024】
また、みなし未知レンズPについては、レファレンスデータとして、上記モニターレンズP~Pと同様に第2の光学性能データを取得し、CPU5は第2の光学性能データとしてS度数データ、C度数データ、AXデータを選択して使用し、MとJ00とJ45へ変換して記憶装置6に格納する。
【0025】
3.主成分分析による主成分得点と寄与率の計算
上記記憶装置6に格納されたデータに基づいてCPU5によって主成分分析が実行される。実行された主成分分析に基づいて主成分得点、固有値、寄与率等が算出される。具体的な計算手法は次の通りである。
(1)<共分散行列の計算>
モニターレンズP~Pとみなし未知レンズPについて上記のような第1の光学性能データ、第2の光学性能データを取得すると、それぞれ図2のようなデータ行列とすることができる。図2においては所定の行をi、列をjとする。本実施の形態では6つのレンズP~Pであるため6行となり、各レンズP~Pのデータ列は1467列となる。
共分散行列のw行j列の要素はこのようなデータ行列をもとに計算する。これは標準化されたデータ行列の、
1)1行のデータ行列におけるi行j列要素と転置データ行列におけるi列要素とを掛け合わせたもの
2)2行のデータ行列におけるi行j列要素と転置データ行列におけるi列要素とを掛け合わせたもの
3)w行のデータ行列におけるi行j列要素と転置データ行列におけるi列要素とを掛け合わせたもの
の合計をデータ数-1で割った商として求めることで得られる。
この作業はコンピュータによる計算で、例えば図4に示すようなアルゴリズムによって実行される。図4において、x[][]という2次元配列は図3のデータ行列の要素を表す。tx[][]という2次元配列はx[][]の転置行列を表す。a[][]という2次元配列は共分散行列の要素を表す。NNはデータ数であり、実施例1では6となる。Nはデータの要素数であり、実施例1では1467となる。
このアルゴリズムではw行j列の要素を図5に示すように図中矢印に沿って、上から順に求めていく。対角行列であるためw行j列の要素を求めるとき、同時にj行w列の要素を決定(同じ値)していることとなる。
【0026】
<固有値に基づく主成分の計算>
上記共分散行列の計算の結果から固有値λが求められる。実施例1における各主成分(第5主成分まで)毎の固有値は表2の通りである。
【0027】
【表2】
【0028】
<寄与率の算出>
寄与率は各主成分の固有値が固有値の総合計に占める割合である。この割合が大きいほど主成分の説明能力が大きいことになる。
第i主成分の寄与率=(λi/ 固有値の総和)×100で示される。
λi:第i固有値
この式に基づいて計算された第1主成分の寄与率は41.095131、第2主成分の寄与率は、29.656168、第3主成分の寄与率は、20.137603、第4主成分の寄与率は、9.742358、第5主成分の寄与率は、0.93042となった。
<主成分得点の決定>
レンズP~Pについて本実施例1では第1~第5主成分についてそれぞれ主成分得点を算出した。主成分得点を表3に示す。
主成分得点データ、寄与率データは一旦記憶装置6に格納し、重みの計算で用いる。
【0029】
【表3】
【0030】
4.最小二乗法による重みの計算
主成分分析の結果に基づいてCPU5によって最小二乗法による重みが算出される。CPU5が実行する具体的な計算手法は次の通りである。
まず、各モニターレンズP~Pについて寄与率を考慮していない第1の重みを算出する。第1の重みは主成分毎に各モニターレンズの数だけ存在するので、w[i][k]という2次元配列に適当な初期値を与えて格納する。今回の実施例ではi=1のときに1.0、それ以外で0.0という初期値を与えた。また、主成分得点データはscore[i][k]という2次元配列に格納した。(i:製品の数、k:主成分の数)
第1の重みの最適化計算は、最小二乗法を使用する。最小二乗法における計算の一般式は数1の数式で示される。数式1の偏導関数が0となるように、つまり数2を解いてw[i][k]を算出する。表4に第1の重みを示す。
【0031】
【数1】
【0032】
【数2】
【0033】
【表4】
【0034】
第1の重みは寄与率が考慮されていないので、これに寄与率を考慮した修正を加える必要がある。そのために、数3の式によって第1の重みに上記寄与率を与えて加重平均した第2の重みww[i]を算出する。累積寄与率は100として計算した。その結果として、
モニターレンズPの第2の重み・・・0.767667562
モニターレンズPの第2の重み・・・0.064229012
モニターレンズPの第2の重み・・・0.053045071
モニターレンズPの第2の重み・・・0.100294496
モニターレンズPの第2の重み・・・0.014763858
と算出された。
【0035】
【数3】
【0036】
得られた寄与率を考慮した第2の重みを、上記「1.モニターレンズについての第1の光学性能データと第2の光学性能データのデータ列の獲得」で取得して記憶装置6に格納してある「差分データ」に掛け、合成することにより未知のレンズPの「差分データ(推定値)」を得る。
このデータ取得は評価点ごとに行われる。実行されるプログラムの表現で実行される内容を説明すると、例えば評価点1では、
BT_M[6][1] = (BT_M[1][1]*w1) + (BT_M[2][1]*w2) + (BT_M[3][1]*w3) + (BT_M[4][1]*w4) + (BT_M[5][1]*w5)
というように、未知のレンズPの評価点1の差分データはモニターレンズP~Pの各評価点1のデータ値にレンズ固有の第2の重みw1~w5を掛けた数値を足すことで算出することができる。
この計算をすべての評価点(1~489)においてそれぞれM、J00、J45の1467個のすべてのデータ値について行う。このデータを未知レンズの第1の光学性能データに加算することで未知のレンズPの推定した第2の光学性能データを得ることができる。
CPU5はこのように得られた未知のレンズPの推定した第2の光学性能データはJCCの形態であるため、これをS、C、AXの状態の通常の屈折力データに戻し、等高線描画ソフトによって平均度数分布図と非点収差分布図を描画する。このように等高線描画ソフトによって図として描画することで推定した第2の光学性能を視覚的に把握することができる。評価点の間は等高線描画ソフトに組み込まれた双3次スプライン関数によって補間計算される。
【0037】
図6(a)は未知のレンズPの形状データから透過光光線追跡をシミュレーションした結果得られた第2の光学性能データによるレファレンスとしての平均度数分布図(上側)と非点収差分布図(下側)である。
図6(b)が上記の計算によって推定した第2の光学性能データによる平均度数分布図と非点収差分布図である。図6(c)が図6(a)と図6(b)を重ねて描画した図である。
これらの結果から、推定した分布図は極めてレファレンスに近く、形状が不明であってもかなり正確に未知のレンズPの透過光光線追跡での光学性能を推定できることがわかる。
【0038】
(実施例2)
実施例2では上記と同様の計算で第2の重みまで、実施例1と同様の計算で得るようにした。
実施例2では差分データを用いずに、第2の重みを上記1.で取得して記憶装置6に格納してあるモニターレンズP~Pの第2の光学性能データに掛け、合成することにより未知のレンズPの「第2の光学性能データ(推定値)」を得るようにした。上記と同様にこのデータ取得は評価点ごとに行われる。
上記段落0031と同様の計算をすべての評価点(1~489)においてそれぞれM、J00、J45の1467個のすべてのデータ値について行う。これによって未知のレンズPの推定した第2の光学性能データが得られる。
CPU5はこのように得られた未知のレンズPの推定した第2の光学性能データ上記と同様にS、C、AXの状態の通常の屈折力データに戻し、上記と同様に等高線描画ソフトによって平均度数分布図と非点収差分布図を描画する。
図7(a)は未知のレンズPの形状データから透過光光線追跡をシミュレーションした結果得られた第2の光学性能データによるレファレンスとしての平均度数分布図(上側)と非点収差分布図(下側)である。
図7(b)が上記の計算によって推定した第2の光学性能データによる平均度数分布図と非点収差分布図である。図7(c)が図7(a)と図7(b)を重ねて描画した図である。
これらの結果から、差分データを使用しなくとも推定した分布図は極めてレファレンスに近く、形状が不明であってもかなり正確に未知のレンズPの透過光光線追跡での光学性能を推定できることがわかる。但し、再現度は実施例1のほうがよい。
【0039】
(実施例3)
実施例3ではCPU5は実施例2で取得した未知のレンズPの推定した第2の光学性能データからプリズム量とプリズム方向のデータを使用して上記と同様に等高線描画ソフトによってプリズム分布図を描画する。
図8(a)は未知のレンズPの形状データから透過光光線追跡をシミュレーションした結果得られた第2の光学性能データによるレファレンスとしてのプリズム分布図である。
図8(b)が上記の計算によって推定した第2の光学性能データによるプリズム分布図である。図8(c)が図8(a)と図8(b)を重ねて描画した図である。
これらの結果から、プリズム分布図についても推定結果はレファレンスに近く、形状が不明であってもかなり正確に未知のレンズPの透過光光線追跡での光学性能を推定できることがわかる。
【0040】
(実施例4)
実施例4では、主成分分析をせずに重みを算出する場合である。
実施例1と同様に評価点(1~489)におけるそれぞれM、J00、J45のすべてのデータ値を取得する。
そして、6x1467=8802個のデータについて、数1の最小二乗法の式に基づいて各主成分得点に対応した各モニターレンズP~Pごとの第1主成分~第5主成分の重みを算出するようにする。
モニターレンズPの重み・・・ 1.258435503
モニターレンズPの重み・・・-0.275830739
モニターレンズPの重み・・・-0.005403117
モニターレンズPの重み・・・-0.050194388
モニターレンズPの重み・・・ 0.064845928
と算出された。
この重みを実施例1と同様に差分データに与え第2の光学性能データを得るようにする。そして、上記と同様にこのデータに基づいて等高線描画ソフトによって平均度数分布図と非点収差分布図を描画する。
図9(a)は未知のレンズPの形状データから透過光光線追跡をシミュレーションした結果得られた第2の光学性能データによるレファレンスとしての平均度数分布図(上側)と非点収差分布図(下側)である。
図9(b)が上記の計算によって推定した第2の光学性能データによる平均度数分布図と非点収差分布図である。図9(c)が図9(a)と図9(b)を重ねて描画した図である。
これらの結果から、主成分分析ではなく最小二乗法で算出した重みを使用して推定しても分布図は極めてレファレンスに近く、形状が不明であってもかなり正確に未知のレンズPの透過光光線追跡での光学性能を推定できることがわかる。
【0041】
(実施例5)
実施例5ではCPU5は実施例1で取得した未知のレンズPの推定した第2の光学性能データを使用して上記と同様に等高線描画ソフトによって歪曲収差図を描画する。歪曲収差図はモニターレンズの歪曲収差結果(データはX、Y座標のみ)を用意しておき、今回の手法で得た重みを元に未知レンズの歪曲収差結果を作成した。
図10(a)は未知のレンズPの形状データから透過光光線追跡をシミュレーションした結果得られた第2の光学性能データによるレファレンスとしての歪曲収差図である。
図10(b)が上記の計算によって推定した第2の光学性能データによる歪曲収差図である。図10(c)が図10(a)と図10(b)を重ねて描画した図である。両者にほとんどずれなく同様の歪曲収差であることが見て取れる。
これらの結果から、歪曲収差図についても推定結果はレファレンスに近く、形状が不明であってもかなり正確に未知のレンズPの透過光光線追跡での光学性能を推定できることがわかる。
【0042】
上記実施の形態は本発明の原理およびその概念を例示するための具体的な実施の形態として記載したにすぎない。つまり、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではない。本発明は、例えば次のように変更した態様で具体化することも可能である。
・実施例1~実施例4において第1の重みや第2の重みは上記以外の手段で取得するようにしてもよい。
・計算方法として上記の機械学習以外の学習方法で求めるようにしてもよい。
・実施例5において最小二乗法による計算は他の手法で求めるようにしてもよい。
その他本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更した態様で実施をすることは自由である。
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