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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-21
(45)【発行日】2023-08-29
(54)【発明の名称】養殖資材の圧縮装置
(51)【国際特許分類】
   A01K 61/56 20170101AFI20230822BHJP
   B30B 9/00 20060101ALI20230822BHJP
【FI】
A01K61/56 311
B30B9/00 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019196851
(22)【出願日】2019-10-30
(65)【公開番号】P2021069297
(43)【公開日】2021-05-06
【審査請求日】2022-08-10
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成30年11年23日に個人に販売 令和元年8月22日に個人に販売
(73)【特許権者】
【識別番号】300021002
【氏名又は名称】株式会社森機械製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000316
【氏名又は名称】弁理士法人ピー・エス・ディ
(72)【発明者】
【氏名】森 光典
【審査官】櫻井 健太
(56)【参考文献】
【文献】実開昭55-088906(JP,U)
【文献】実開昭55-033641(JP,U)
【文献】特開昭51-141483(JP,A)
【文献】特開昭49-039969(JP,A)
【文献】特開昭49-002370(JP,A)
【文献】実開平07-009805(JP,U)
【文献】特開2009-082955(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 61/00 - 61/95
B30B 9/00 - 9/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
養殖資材を圧縮して体積を減少させるための圧縮装置であって、
養殖資材を収容する収容部と、
前記収容部の内部を移動することにより養殖資材を圧縮する圧縮部材と、前記圧縮部材を移動させる送り機構とを有する、圧縮部と
を備え、
前記収容部は、圧縮された養殖資材を縛るための締結部材を通すことが可能な開口を有し、
前記圧縮部材は、圧縮された養殖資材に対向する位置に、締結部材を内部に配置することが可能な溝と、前記溝の養殖資材の方向に開放されている部分を覆うように配置された、締結部材を前記溝に保持するための保持部材と、を有しており、
前記保持部材は、前記溝に配置された締結部材に圧縮された養殖資材の方向への力がかかっていないときには締結部材を前記溝に保持し、締結部材を圧縮された養殖資材の方向に移動させたときには締結部材を前記溝から排出させるように構成された、
圧縮装置。
【請求項2】
前記保持部材は、前記圧縮部材に一部が固定された扉状弾性体である、請求項に記載の圧縮装置。
【請求項3】
前記収容部は、少なくとも養殖資材が圧縮されるときに前記圧縮部材が移動する方向の端部とは反対側の端部が、前記圧縮部材の移動軸線から離れる方向に移動可能に構成された、請求項1又は請求項2に記載の圧縮装置。
【請求項4】
前記収容部は、養殖資材が圧縮されるときに前記圧縮部材が移動する方向の端部とその反対側の端部とのうち前記反対側の端部のみが、前記圧縮部材の移動軸線から離れる方向に移動可能に構成された、請求項に記載の圧縮装置。
【請求項5】
前記収容部は、前記圧縮部材の移動軸線から離れる方向に移動したときに該移動軸線の方向に位置する部分に開閉部が設けられている、請求項に記載の圧縮装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、養殖貝の養殖に用いられる樹脂製の網状養殖資材を圧縮して、体積を減少させるための圧縮装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ホタテ稚貝は、ホタテ貝の幼生を採苗器に付着させることによって採取することができる。採苗器Nは、図1(a)に示されるように、目サイズの異なる2種類の樹脂製ネット(一般に「ネトロンネット」と呼ばれる)を組み合わせて作製することができ、例えば、網目の小さな外袋の中に、外袋より長く網目の大きな内袋を押し込み、外袋の両端を閉じて、全体的に膨らんだ形状にすることによって得られる。このようにして作製された採苗器N(一般に「ちょうちん」と呼ばれている)は、図1(b)に示されるように2個を1組として15~20組が連結され、これらの30個~40個の採苗器は、1連(複数の採苗器Ns)として海中に投入される。海中に投入される採苗器Nsの数は、地域や生産量によって異なるが、例えば佐呂間湖周辺であれば、300~500連の採苗器Nsが海中に投入されることになる。海中に投入された採苗器Nsは、数ヶ月後に水揚げされ、採苗器Nsから分離されたホタテ稚貝は、ザブトン籠などに入れ替えられる。ホタテ稚貝が取り除かれた採苗器Nsは、洗浄され、次に海中に投入される時期まで保管される。
【0003】
採苗器Nの素材であるネトロンネットは非常に軽いものであり、重量は一連の採苗器Nsでもせいぜい2kg程度であるが、一連の採苗器Nsの容積は、軽トラックの荷台に納まらない大きさとなる。そのため、30~40個の採苗器Nsを1連とし、全体で300~500連もの数からなる養殖資材は、そのままの状態では保管時に広い場所を占領するため、保管場所の確保が問題となる。また、容積の大きな養殖資材は、保管場所から漁船までトラックによって搬送する際や漁船に積載する際にも、その取り扱いが困難である。さらに、容積の大きな養殖資材は、漁船に積載できる量も制限されるとともに、航行中に海中に落下しないように縛る等の作業が必要であり、煩雑である
【0004】
従来、漁業者は、養殖資材を手作りの木箱に押し込み、押さえつけて圧縮し、ロープで縛ることによって減容させたり、養殖資材の減容の目的で作製された手押し式プレス装置を用いたりすることによって、養殖資材の容積の問題に対処してきた。前者の木箱については、一度に2~3連を入れることができる木箱が用いられる場合もあるが、手で押さえつけて圧縮するだけでは圧縮不足であり、ロープで縛っても小さい容積まで圧縮することができない。後者の装置は、本出願の出願人が漁業者の求めに応じて作製したものであり、こうした装置に類する装置は市販されておらず、本出願に記載すべき先行技術文献もない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、本発明は、複数の養殖資材を一度に圧縮することができるとともに、圧縮された養殖資材を圧縮された状態のままで容易に縛ることができる装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、養殖資材を圧縮して体積を減少させるための圧縮装置を提供する。本装置は、養殖資材を収容する収容部と、養殖資材を圧縮する圧縮部とを備える。収容部は、圧縮された養殖資材を縛るための締結部材を通すことが可能な開口を有する。圧縮部は、収容部の内部を移動することにより養殖資材を圧縮する圧縮部材と、圧縮部材を移動させる送り機構とを有する。圧縮部材は、圧縮された養殖資材に対向する位置に、締結部材を内部に配置することが可能な溝を有する。
【0007】
一実施形態においては、圧縮部材は、締結部材を保持するための保持部材を、溝を覆うように有している。保持部材は、溝に配置された締結部材に圧縮された養殖資材の方向への力がかかっていないときには締結部材を溝に保持することができる。また、保持部材は、締結部材を圧縮された養殖資材の方向に移動させたときには締結部材を溝から排出させることができる。一実施形態においては、保持部材は、圧縮部材に一部が固定された扉状弾性体であることが好ましい。
【0008】
一実施形態においては、収容部は、少なくとも養殖資材が圧縮されるときに圧縮部材が移動する方向の端部とは反対側の端部が、圧縮部材の移動軸線から離れる方向に移動可能に構成されていることが好ましい。この実施形態は、収容部が傾くように構成された形態だけでなく、収容部が傾くことなく姿勢を維持したまま横方向に移動するように構成された形態も含むものとすることができる。別の実施形態においては、収容部は、養殖資材が圧縮されるときに圧縮部材が移動する方向の端部とは反対側の端部のみが、圧縮部材の移動軸線から離れる方向に移動可能に構成されていることがより好ましい。この実施形態は、限定されるものではないが、典型的には、収容部が傾くように構成された形態である。また、収容部は、圧縮部材の移動軸線から離れる方向に移動したときに該移動軸線の方向に位置する部分に開閉部が設けられていることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、容積の大きな養殖資材を容易に収容部に収容して、自動的に圧縮し、圧縮された状態を維持したままロープによって縛ることが可能であり、圧縮後の養殖資材も収容部から容易に取り出すことができる。したがって、容積の大きな養殖資材もコンパクトなサイズまで容易かつ迅速に圧縮することができ、保管及び運搬が容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】ホタテ貝の養殖に用いられる養殖資材を示し、(a)は1個の採苗器を示す斜視図であり、(b)は2個1組の採苗器が複数組連結された状態の養殖資材を示す斜視図である。
図2】本発明の一実施形態による圧縮装置の外観の斜視図である。
図3】本発明の一実施形態による圧縮部の構造及び機能を示し、(a)は圧縮部の斜視図であり、(b)は圧縮部の圧縮部材の拡大側面図であり、(c)及び(d)は圧縮部材に設けられた溝に保持されたロープが溝から排出される工程を示す模式図である。
図4】本発明の一実施形態による圧縮装置において、採苗器を収容して圧縮する工程を示す模式図である。
図5】本発明の一実施形態による圧縮装置において、圧縮された採苗器を縛る工程を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら、本発明の一実施形態を詳細に説明する。図2は、本発明の一実施形態による、養殖資材を圧縮して締結部材で縛るための圧縮装置1の外観の斜視図である。養殖資材は、典型的には漁業用途で用いられる採苗器であるが、これに限定されるものではなく、使用状態では容積が大きいが圧縮することによって減容することが可能な資材であれば、本装置を用いて圧縮することができる。以下においては、養殖資材として採苗器が使用される場合の形態を説明する。また、締結部材は、典型的には漁業用途で使用されるロープを用いることができるが、これに限定されるものではなく、圧縮された資材をしっかり縛ることができ、縛った後でも容易に解け難い部材であればよい。圧縮装置1は、枠体10の内部において底板12の上に配置された収容部20と、収容部20の上方に配置された圧縮部40とを備える。
【0012】
収容部20は、網状に形成された樹脂製の採苗器Nを複数個(以下、複数の採苗器を「採苗器Ns」とする)収容することが可能な空間を、内部に有する。収容部20は、前面21a、側面21b及び21d、並びに後面21cと、底面21eとを有する、概ね直方体形状の中空の箱体として形成されている。収容部20は上面が開放されており、この開放された上面から、後述される圧縮部40の圧縮部材41を内部に進入させることができる。
【0013】
収容部20は、本実施形態においては直方体形状を有するが、これに限定されるものではなく、円柱形状又は他の多角柱形状を有するものであってもよい。ただし、圧縮後の採苗器Nsは、ロープで硬く縛られた立方体となっていれば、搬送時の積み下ろし作業において放り投げられるなどの取り扱いをされた場合でも、圧縮状態が解けにくい。したがって、圧縮された採苗器Nsの形状は、立方体に近い形状であることが好ましく、このような形状の立方体とするために、収容部20は、正方形に近い形状の底面を有する直方体形状であることがより好ましい。
【0014】
収容部20の大きさは、圧縮する採苗器Nsのサイズや数、圧縮後の所望の形状によって適宜選択すればよいが、ホタテ貝の養殖業者が通常使用する採苗器Nsを、概ね立方体の形状に圧縮するために用いられるのに適した大きさ(例えば3連の採苗器Nsを処理するための大きさ)は、例えば約40cm×約45cm×約110cmである。
【0015】
収容部20の前面21aには、前面21aを横切る方向に延びる前部把手22が設けられ、後面21cには、後面21cを横切る方向に延びる後部把手23が設けられることが好ましい。前部把手22を引くことによって、収容部20を、ヒンジ24を支点として前方(図2の左方向)に容易に傾けることができる(収容部20が傾けられた状態は、後述される図4を参照)。また、後部把手23を引くことによって、傾けられた収容部20を元の位置に容易に戻すことができる。収容部20を傾けることができるようになっていることにより、かさばる採苗器Nsを収容部20に収容し、圧縮後の採苗器Nsを収容部20から取り出す作業が容易になる。収容部20を傾けることができる角度は、特に限定されるものではないが、収容部20の傾け及び戻し、採苗器Nsの収容及び取出などを容易に行うことができる角度として、40度程度が好ましい
【0016】
本実施形態においては、収容部20が傾くように構成されているが、別の実施形態においては、収容部20の底面21eと底板12との間にレール機構を配置して、収容部20が、前部把手22を引くことによって傾くことなく当初の姿勢を維持したまま枠体10の外側に向かって移動するように構成されていてもよい。
【0017】
収容部20の後面21cには、上辺から高さ方向の70%程度の位置まで開口が設けられ、その開口には、開閉扉25が設けられていることが好ましい。開閉扉25は、限定されるものではないが、後面21cの幅と同じ幅を有し、後面21cの高さ方向の上部70%程度の高さを有するものとすることができる。開閉扉25は、下辺がヒンジを有しており、ヒンジを支点として回動させることによって、後面21cの開口を開放することができる。収容部20を傾けたときに開閉扉25を開けることによって、収容部20に上向きの開口が現れるため、収容部20への採苗器Nsの収容と、圧縮後の採苗器Nsの収容部20からの取り出し作業が、さらに容易になる。
【0018】
開閉扉25は、ロック機構(ロック板23a、突起23b)によってロックされるようになっていることが好ましい。この実施形態においては、後部把手23の両端にロック板23aが取り付けられ、ロック板23aは、ロック溝23a1が設けられており、軸23cを支点として回動可能に開閉扉25に取り付けられている。一方、収容部20の側面21bには、ロック溝23a1と係合可能な位置に、突起23bが設けられている。こうしたロック機構により、ロック溝23a1と突起23bとが係合しているときには、開閉扉25は閉じられた状態でロックされており、軸23cを支点としてロック板23aを、例えば後部取手23を上方に押し上げることにより回動させて、ロック溝23a1と突起23bとの係合を解くことによって、開閉扉25を開けることができる。
【0019】
収容部20の前面21a及び後面21cには、それらの下部に、ロープ通し開口26a、26b、26c、26dが設けられている。ロープ通し開口26a~26dは、収容部20内の採苗器Nsが圧縮された後に、圧縮された採苗器Nsを縛るロープRを通すための開口である。ロープ通し開口26a~26dの数は、圧縮された採苗器Nsを適切に縛るために必要となるロープRの数に応じて設けられていれば、特に限定されるものではないが、少なくとも2本のロープRを用いることができるように、前面21a及び後面21cの対向する位置に、それぞれ2つ以上が適当な間隔を空けて設けられることが好ましい。ロープ通し開口26a~26dの長さは、圧縮された採苗器Nsの高さより長ければ、特に限定されるものではない。また、幅は、ロープRの太さより広ければ、特に限定されるものではない。
【0020】
収容部20の上方には、圧縮部40が設けられる。図3は、本発明の一実施形態による圧縮部40の構造及び機能を示す。圧縮部40は、収容部20の開放された上面から内部に入り、下方に移動することによって採苗器Nsを圧縮する圧縮部材41と、圧縮部材41を上下に移動させる送り機構42とを有する。圧縮部40は、収容部20の上方に配置された天板11に支持されることが好ましい。
【0021】
圧縮部材41は、送り機構42によって上下に移動させることができる。送り機構42は、例えば台形ねじやボールねじなどを用いた一般的な機構のものを必要性に応じて適宜用いることができ、本実施形態においては、天板11に固定されたナットボックス44内に配置されたナット(図示せず)と、ナットの回転に応じて長さ方向に移動する台形ねじ43と、ナットを回転させるモータ45とを有するものとすることができる。送り機構42は、操作部46に設けられたボタン等によって、その動作を開始又は停止させることができる。
【0022】
圧縮部材41は、台形ねじ43の下端に取り付けられており、収容部20内の採苗器Nsに接して圧縮するプレス板47を有する。プレス板47は、その上面に、対向する辺の間にわたって、圧縮された採苗器Nsを縛るためのロープRを通すことができるロープ貫通溝48を有する。ロープ貫通溝48は、圧縮される採苗器Nsの方向に開放されている。ロープ貫通溝48の数は、圧縮された採苗器Nsを適切に縛るためのロープRの数に応じて設けられていれば、特に限定されるものではないが、少なくとも2本のロープRを用いることができるように、2つ以上であることが好ましい。ロープ貫通溝48の幅及び深さは、少なくともロープRを溝の中に通すことができる程度であればよい。
【0023】
ロープ貫通溝48は、図3(b)に示されるように、圧縮される採苗器Nsの方向に開放されている部分が、板49で覆われていることが好ましい。板49は、ロープ貫通溝48の幅より広く、ロープ貫通溝48の長さと同程度の長さを有し、幅方向の一端部がプレス板47に固定され、幅方向の他端部が扉状に開くように弾性体によって形成されている。板49は、ロープRがロープ貫通溝48の内部に通されるときに、ロープRの先端が溝内を滑らかに移動して内部に詰まらないように、ロープRを滑らせやすい材質のものであることが好ましい。板49は、例えば、ゴム製の扉状弾性体や、樹脂製の扉状弾性体とすることができる。
【0024】
板49は、ロープ貫通溝48の長さ全体を覆う1枚の材料で形成されていることが好ましいが、これに限定されるものではなく、ロープ貫通溝48を長さ方向全体にわたって覆う複数の板によって構成してもよく、又は、ロープ貫通溝48の長さ方向を各々が部分的に覆う複数の板によって構成してもよい。また、板49は、ロープ貫通溝48の幅方向中央部分で合わせられた、長さ方向全体を覆う2枚の材料で形成することもできる。この2枚の材料を用いる場合には、それぞれの幅方向の端部(2枚の材料の互いに遠い方の端部)がプレス板47に固定され、ロープ貫通溝48の幅方向中央部分から扉状に開くように構成することができる。
【0025】
板49は、図3(b)~図3(d)に示されるように機能する。ロープ貫通溝48にロープRが通され、ロープRに力がかかっていないときには、図3(b)に示されるように、ロープRは、板49によってロープ貫通溝48内に保持される。すなわち、板49は、ロープRの保持部材として機能する。ロープRを圧縮された採苗器Nの方向に移動させたときには、その方向への力が板49かかるため、一端部のみが固定された板49はロープRに押されて扉状に開き、ロープRがロープ貫通溝48から排出され始める(図3(c))。さらにロープRに同方向の力がかかると、ロープRは完全にロープ貫通溝48から排出されて、圧縮された採苗器Nsの上面に載り、板49は、再びロープ貫通溝48の開放部分を覆うように元の位置に戻る(図3(d))。
【0026】
次いで、本発明の一実施形態による圧縮装置1において、採苗器Nsを圧縮する工程を説明する。図4は、採苗器を収容して圧縮する工程を説明するための模式図である。採苗器Nsを収容部20に入れる前には、圧縮部材41が収容部20の上方に位置するように、圧縮部40を動作させておく(図4(a))。
【0027】
次に、収容部20の前部把手22を引いて収容部20を傾ける(図4(b))。このとき、収容部20は、採苗器Nsが圧縮されるときに圧縮部材41が移動する方向の端部(すなわち図4(a)における下方の端部)とは反対側の端部(すなわち、図4(a)における上方の端部)が、圧縮部材41の移動軸線(すなわち、図4(a)における台形ねじ43の長さ方向の延長線)から離れる方向に移動する、すなわち収容部20がヒンジ24を支点として傾くことになる。
【0028】
収容部20を傾けた後、ロック板23aのロック溝23a1を突起23bから外して、開閉扉25を開ける(図4(c))。開閉扉25は、収容部20において、圧縮部材41の移動軸線の方向に位置する部分に設けられている。開閉扉25が開けられた部分から、採苗器Nsが、収容部20内に収容される。開閉扉25が開放されると、コの字状の収容部20が現れているので、そこに個々の採苗器Nを順に並べることによって、複数の採苗器Nsを効率良く収容することができ、結果として、圧縮後の採苗器Nsを概ね直方体形状に整えることができる。
【0029】
採苗器Nsを収容した後、開閉扉25を閉じ、ロック板23aのロック溝23a1を突起23bに係合させ、収容部20を元の位置に戻す(図4(d))。その後、操作部46を操作して圧縮部40を動作させることによって、圧縮部材41が収容部20の内部を下方に移動し、採苗器Nsが圧縮される(図4(e))。
【0030】
次に、圧縮された採苗器Nsを縛る工程を説明する。図5は、圧縮された採苗器を縛る工程を説明するための模式図である。なお、図を簡単にするために、図5においては採苗器Nsは描かれていない。
収容部20には、ロープRを通すためのロープ通し開口26a~26dが設けられている。図5(a)に示されるように、収容部20の前面21a及び後面21cにおいて、ロープ通し開口26aと26dが互いに対向し、ロープ通し開口26bと26cとが互いに対向するように設けられている。収容部20に採苗器Nsが収容される前、好ましくは図4(a)の状態のときに、ロープ通し開口26a及び26dに一本のロープRを配置し、同様に、ロープ通し開口26b及び26cにもう一本のロープRを配置しておく。
【0031】
採苗器Nsが収容部20に収容され(図4(c)及び図4(d))、圧縮部材41によって圧縮(図4(e))された後、圧縮部材41は圧縮された採苗器Nsの上面上に位置している(図5(b))。この状態のときに、ロープ通し開口26a~26dにあらかじめ通された2本のロープRは、それぞれ、図5(c)に示されるように圧縮部材41のロープ貫通溝48に通される。2本のロープRは、それぞれ、一方の端部がロープ通し開口26a及び26bの下部から前面21aの前に現れ、他方の端部がロープ通し開口26a及び26bの上部から前面21aの前に現れた状態となる。
【0032】
次に、作業者が、ロープ貫通溝48に通された2本のロープRに、例えば前面21a側の部分と後面21c側の部分とを持って力をかけると、ロープRは、圧縮された採苗器Nsの方向に移動する。このとき、図3(c)及び図3(d)に示されるように、ロープRは、一端部が固定され他端部が開くように構成された板49を扉状に開き、ロープ貫通溝48から排出される。ロープ貫通溝48から排出されたロープRの部分は、前後方向に延びるように、圧縮された採苗器Nsの上に配置されることになる。
【0033】
最後に、作業者は、図5(d)に示されるように、2本のロープRを前面21aの前で縛り、その後、圧縮部材41を元の位置に向けて上昇させる。圧縮され、2本のロープRで縛られた採苗器Nsは、収容部20を図4(c)に示されるように傾け、開閉扉25を開けることによって、収容部20から容易に取り出すことができる。
【符号の説明】
【0034】
1 圧縮装置
10 枠体
11 天板
12 底板
20 収容部
21a、21b、21c、21d 側面
21e 底面
22 前部把手
23 後部把手
23a ロック板
23a1 ロック溝
23b 突起
23c 軸
24 ヒンジ
25 開閉扉
26a、26b、26c、26d ロープ通し開口
40 圧縮部
41 圧縮部材
42 送り機構
43 台形ねじ
44 ナットボックス
45 モータ
46 操作部
47 プレス板
48 ロープ貫通溝
49 板
N 1つの採苗器
Ns 複数の採苗器
R ロープ

図1
図2
図3
図4
図5