(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-21
(45)【発行日】2023-08-29
(54)【発明の名称】ロータリーダンパ及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
F16F 9/14 20060101AFI20230822BHJP
【FI】
F16F9/14 A
(21)【出願番号】P 2020006945
(22)【出願日】2020-01-20
【審査請求日】2022-08-09
(73)【特許権者】
【識別番号】519184930
【氏名又は名称】株式会社ソミックマネージメントホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】110000589
【氏名又は名称】弁理士法人センダ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山下 真人
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 圭吾
【審査官】児玉 由紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-300088(JP,A)
【文献】特開平07-027163(JP,A)
【文献】特開2016-090037(JP,A)
【文献】特開2002-266922(JP,A)
【文献】特開2004-124952(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 9/00- 9/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケースの開口部を塞ぐ蓋を有するロータリーダンパの製造方法であって、前記蓋で前記開口部を塞ぐように前記蓋を前記ケースの上に載せ、前記蓋に鉛直方向の圧力を加えた状態で前記ロータリーダンパの特性を測定し、測定結果が設定値を満たす場合に、前記蓋を変位させずに前記蓋を固定すること、及び測定結果が設定値を満たさない場合に、前記蓋を変位させ、前記蓋に鉛直方向の圧力を加えた状態で前記ロータリーダンパの特性を再度測定することを含み、
前記蓋を前記ケースの上に載せるときに前記蓋及び前記ケースのいずれか一方に形成された突起を前記蓋及び前記ケースのいずれか他方に形成された弧状の溝の勾配を有する底面に接触させ、前記蓋の変位は、前記突起を前記溝の底面に接触させながら前記蓋又は前記ケースを回転させることによって行われ
る方法。
【請求項2】
前記突起が弧状であり、前記突起の先端面が前記溝の底面と同じ勾配を有する請求項
1に記載の方法。
【請求項3】
ケースの開口部を塞ぐ蓋を有するロータリーダンパの製造方法であって、前記蓋で前記開口部を塞ぐように前記蓋を前記ケースの上に載せ、前記蓋に鉛直方向の圧力を加えた状態で前記ロータリーダンパの特性を測定し、測定結果が設定値を満たす場合に、前記蓋を変位させずに前記蓋を固定すること、及び測定結果が設定値を満たさない場合に、前記蓋を変位させ、前記蓋に鉛直方向の圧力を加えた状態で前記ロータリーダンパの特性を再度測定することを含み、
前記蓋を前記ケースの上に載せるときに前記蓋及び前記ケースのいずれか一方に形成された突起を前記蓋及び前記ケースのいずれか他方に形成された窪みの中の小突起に接触させ、前記蓋の変位は、前記突起が前記小突起を潰すように前記蓋に鉛直方向の圧力を加えることによって行われ
る方法。
【請求項4】
測定時に前記蓋に加えられる圧力の大きさが測定時の内圧に対抗し得る大きさである請求項1
又は3に記載の方法。
【請求項5】
前記特性が前記ケースに収容されたローターの動作時間又はトルクである請求項1
又は3に記載の方法。
【請求項6】
ケースの開口部を塞ぐ蓋、前記蓋及び前記ケースのいずれか一方に形成される突起、並びに前記蓋及び前記ケースのいずれか他方に形成される弧状の溝を有し、前記溝の底面が勾配を有し、前記突起が前記溝の底面に接触しながら前記溝の中を移動することによって前記蓋を変位させ得るロータリーダンパ。
【請求項7】
前記突起が弧状であり、前記突起の先端面が前記溝の底面と同じ勾配を有する請求項
6に記載のロータリーダンパ。
【請求項8】
ケースの開口部を塞ぐ蓋、前記蓋及び前記ケースのいずれか一方に形成される突起、前記蓋及び前記ケースのいずれか他方に形成される窪み、並びに前記窪みの中に形成される小突起を有し、前記突起が前記窪みに嵌まって前記小突起に支持され、前記突起が前記小突起を押し潰すことによって前記蓋を変位させ得るロータリーダンパ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケースの開口部を塞ぐ蓋を有するロータリーダンパの製造方法及びその製造方法に好適なロータリーダンパに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ロータリーダンパは、複数の部品、例えば、ケース、蓋及びローター等が組み合わされて構成されるものである。しかしながら、各部品の設計図には公差が示されるため、各部品を設計図通り製造しても、量産する場合には、各部品に寸法のばらつきが少なからず発生する。各部品の寸法のばらつきは、完成品の特性に影響を及ぼすため、均一な特性を得ることが困難であった。また、量産される製品のすべてにおいてオイルの粘度を均一にすることは困難である。粘度のばらつきも完成品の特性に影響を及ぼすため、均一な特性を得ることが困難であった。従って、特性の公差の幅を広く設計せざるを得なかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、より均一な特性を得ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記課題を解決するため、ケースの開口部を塞ぐ蓋を有するロータリーダンパの製造方法であって、前記蓋で前記開口部を塞ぐように前記蓋を前記ケースの上に載せ、前記蓋に鉛直方向の圧力を加えた状態で前記ロータリーダンパの特性を測定し、測定結果が設定値を満たす場合に、前記蓋を変位させずに前記蓋を固定すること、及び測定結果が設定値を満たさない場合に、前記蓋を変位させ、前記蓋に鉛直方向の圧力を加えた状態で前記ロータリーダンパの特性を再度測定することを含み、前記蓋を前記ケースの上に載せるときに前記蓋及び前記ケースのいずれか一方に形成された突起を前記蓋及び前記ケースのいずれか他方に形成された弧状の溝の勾配を有する底面に接触させ、前記蓋の変位は、前記突起を前記溝の底面に接触させながら前記蓋又は前記ケースを回転させることによって行われる方法を提供する。
また、本発明は、ケースの開口部を塞ぐ蓋を有するロータリーダンパの製造方法であって、前記蓋で前記開口部を塞ぐように前記蓋を前記ケースの上に載せ、前記蓋に鉛直方向の圧力を加えた状態で前記ロータリーダンパの特性を測定し、測定結果が設定値を満たす場合に、前記蓋を変位させずに前記蓋を固定すること、及び測定結果が設定値を満たさない場合に、前記蓋を変位させ、前記蓋に鉛直方向の圧力を加えた状態で前記ロータリーダンパの特性を再度測定することを含み、前記蓋を前記ケースの上に載せるときに前記蓋及び前記ケースのいずれか一方に形成された突起を前記蓋及び前記ケースのいずれか他方に形成された窪みの中の小突起に接触させ、前記蓋の変位は、前記突起が前記小突起を潰すように前記蓋に鉛直方向の圧力を加えることによって行われる方法を提供する。
また、本発明は、ケースの開口部を塞ぐ蓋、前記蓋及び前記ケースのいずれか一方に形成される突起、並びに前記蓋及び前記ケースのいずれか他方に形成される弧状の溝を有し、前記溝の底面が勾配を有し、前記突起が前記溝の底面に接触しながら前記溝の中を移動することによって前記蓋を変位させ得るロータリーダンパを提供する。
さらに、本発明は、ケースの開口部を塞ぐ蓋、前記蓋及び前記ケースのいずれか一方に形成される突起、前記蓋及び前記ケースのいずれか他方に形成される窪み、並びに前記窪みの中に形成される小突起を有し、前記突起が前記窪みに嵌まって前記小突起に支持され、前記突起が前記小突起を押し潰すことによって前記蓋を変位させ得るロータリーダンパを提供する。
【発明の効果】
【0006】
本発明に係る製造方法によれば、蓋でケースの開口部を塞ぐように蓋をケースの上に載せ、蓋に鉛直方向の圧力を加えた状態でロータリーダンパの特性を測定するため、製品として完成する前に完成時の特性を知ることができる。また、測定結果が設定値を満たす場合に、蓋を変位させずに蓋を固定するため、測定結果と略同一の特性を有する完成品を得ることができる。また、測定結果が設定値を満たさない場合に、蓋を変位させ、蓋に鉛直方向の圧力を加えた状態でロータリーダンパの特性を再度測定するため、測定値が設定値となるように特性を変化させることができる。従って、各部品の寸法及び/又はオイルの粘度のばらつきがあっても、より均一な特性を得ることができる。また、特性の公差の幅を従来の設計よりも格段に狭くすることができる。
本発明に係るロータリーダンパによれば、弧状の溝の底面が勾配を有し、突起が溝の底面に接触しながら溝の中を移動することによって蓋を変位させ得るため、蓋又はケースを回転させることによって蓋の位置を変えることができる。また、溝の底面が斜面であるため、蓋の位置の微調整が可能である。また、突起が溝の中で双方向に移動し得るため、蓋の位置を当初の位置から下げるだけでなく、上げることもできる。さらに、突起が溝の底面に接触しているため、蓋に鉛直方向の圧力を加えることによって完成時と同じように蓋を安定させることができ、それ故、特性を正確に測定できる。
本発明のロータリーダンパによれば、突起が小突起を押し潰すことによって蓋を変位させ得るため、突起が小突起を潰すように蓋に鉛直方向の圧力を加えることによって蓋の位置を変えることができる。また、蓋の位置は突起が小突起を押し潰す程度で決まるので、蓋の位置の微調整が可能である。さらに、突起が窪みに嵌まって小突起に支持されるため、蓋に鉛直方向の圧力を加えることによって完成時と同じように蓋を安定させることができ、それ故、特性を正確に測定できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、実施例1に係るロータリーダンパの平面図である。
【
図4】
図4は、実施例1で採用したケースの平面図である。
【
図9】
図9は、実施例1で採用した蓋の底面図である。
【
図16】
図16は、実施例2に係るロータリーダンパの平面図である。
【
図19】
図19は、実施例1で採用したケースの平面図である。
【
図24】
図24は、突起と窪みの嵌合状態を示す断面図である。
【
図25】
図25は、突起と窪みの嵌合状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態を図面に示した実施例に従って説明する。
【実施例1】
【0009】
最初に、
図1乃至
図3を参照しながら実施例1に係るロータリーダンパの構造を概略的に説明する。
図1に示したように、実施例1に係るロータリーダンパは、ケース110、ローター120及び蓋130を有して構成されている。
図3に示したように、ケース110は、円筒形の周壁111を有する。
図2に示したように、周壁111の一端は、周壁111と一体に成形された底壁112で塞がれ、周壁111の他端は、蓋130で塞がれている。蓋130は、ケース110の端部をかしめることによって固定されている。ローター120は、ケース110の中に収容され、ケース110及び蓋130によって支持されている。
図3に示したように、ケース110とローター120との間には、隔壁113で仕切られた油室140が形成され、油室140には、オイルが充填されている。ローター120は、油室140に配置されるベーン121を有している。
図2に示したように、ケース110と蓋130との間、蓋130とローター120との間及びローター120とケース110との間には、オイルの漏洩を防止するOリング150が配設されている。実施例1に係るロータリーダンパは、ローター120の回転によってベーン121が受けるオイルの抵抗を利用してローター120の回転速度を減速させるものである。
【0010】
次に、
図4乃至
図8を参照しながら実施例1で採用したケース110の特徴を説明する。
図4に示したように、実施例1で採用したケース110は、弧状の溝114を有する。溝114は、蓋130を水平に支持するために、2つ以上形成されることが好ましく、3つ以上形成されることがより好ましい。実施例1では、4つの溝114が等間隔で形成されている。
図5乃至
図8に示したように、溝114は、L字形の断面を有する。溝114の底面は、溝114の深さが溝114の一端115において最も浅く、溝114の他端116において最も深くなるように傾斜する勾配を有する。
図5において、溝114の一端115付近であるa点、溝114の他端116付近であるc点、a点とc点の中間であるb点の溝114の深さは、a>b>cである。
【0011】
次に、
図9乃至
図13を参照しながら実施例1で採用した蓋130の特徴を説明する。
図9に示したように、実施例1で採用した蓋130は、ケース110に形成された溝114の数と同じ数の突起131を有する。突起131の形状は、例えば円柱でもよいが、突起131の先端面と溝114の底面との接触面積を大きくするために、溝114と同じ形状、すなわち弧状であることが好ましい。実施例1では、蓋130の裏面に4つの弧状の突起131が等間隔で形成されている。
図10乃至
図13に示したように、突起131の先端面は、突起131の長さが突起131の一端132において最も長く、突起131の他端133において最も短くなるように傾斜する勾配を有する。
図10において、突起131の一端132付近であるd点、突起131の他端133付近であるf点、d点とf点の中間であるe点の突起131の長さは、d>e>fである。突起131の先端面の勾配は、溝114の底面の勾配と同一である。従って、突起131が溝114の中で移動しても蓋130が水平に保たれる。突起131の一端132における突起131の長さは、溝114の一端115における溝114の深さよりも長いため、突起131は、溝114の一端115から他端116までの間で、先端面を溝114の底面に接触させながら溝114の中を移動し得る。
【0012】
なお、実施例1に係るロータリーダンパは、ケース110の開口部を塞ぐ蓋130、蓋130に形成される突起131、及びケース110に形成される弧状の溝114を有する構造であるが、これに代えて、ケースの開口部を塞ぐ蓋、ケースに形成される突起、及び蓋に形成される弧状の溝を有する構造であってもよい。
【0013】
次に、実施例1に係るロータリーダンパの製造方法の一例を説明する。この例では、まず、ケース110の中にローター120を収容し、油室140にオイルを充填する。次に、蓋130でケース110の開口部(周壁111の他端)を塞ぐように蓋130をケース110の上に載せ、突起131を溝114に挿入する(
図14参照)。突起131の一端132の当初の位置は任意に設定し得る。この例では、突起131の一端132を溝114の中央(
図5のb点)に位置させているが、突起131の一端132を溝114の一端115付近(
図5のa点)又は溝114の他端116付近(
図5のc点)に位置させてもよい。
【0014】
次に、蓋130に鉛直方向の圧力を加えた状態でロータリーダンパの特性を測定する。この方法によれば、蓋130を固定していない状態、すなわち、製品として完成していない状態で完成時の特性を知ることができる。蓋130を固定していない状態で蓋130を変位させずに特性をより正確に測定するために、蓋130に加えられる圧力の大きさは、測定時の内圧に対抗し得る大きさであることが好ましい。測定する特性は、任意に設定し得るが、この例では、ローター120の動作時間である。ローター120の動作時間は、例えば、ローター120に形成された貫通孔122にシャフトを連結し、シャフトに一定の回転力を加えてローター120を回転させる。そして、このときにシャフトが一定の角度(例えば120°)回転するために要した時間を測定する。なお、測定する特性は、トルクであってもよい。トルクは、例えば、ローター120に形成された貫通孔122にシャフトを連結し、シャフトを回転させるトルクを測定する。実施例1に係るロータリーダンパは、突起131が溝114の底面に接触しているため、蓋130に鉛直方向の圧力を加えることによって完成時と同じように蓋130を安定させることができ、それ故、特性を正確に測定できる。
【0015】
測定値は、蓋130を同じ位置に置いて測定しても、各部品の寸法及び/又はオイルの粘度のばらつきによって均一でない場合がある。測定結果が設定値を満たさない場合には、蓋130を変位させ、蓋130に鉛直方向の圧力を加えた状態でロータリーダンパの特性を再度測定する。設定値は、特性の許容誤差の最大値と最小値の差である公差を含む。蓋130の変位は、蓋130に形成された突起131をケース110に形成された溝114の底面に接触させながら蓋130を回転させることによって行われる。この例では、蓋130を一方向に回転させることによって突起131が溝114の中で溝114の他端116に向かって移動し、それにより蓋130の位置を下げることができる(
図15参照)。また、蓋130を逆方向に回転させることによって突起131が溝114の中で溝114の一端115に向かって移動し、それにより蓋130の位置を上げることができる。なお、蓋130を回転させずにケース110を回転させてもよい。実施例1に係るロータリーダンパでは、蓋130の表面に形成された凸部134を利用して蓋130を回転させることができる(
図1及び
図2参照)。蓋を変位させるために、実施例1と異なる構造として、溝の底に階段状の段差を設ける構造を採用することもできる。この場合には、段差に沿って突起が移動することよって蓋を変位させることができるが、蓋の位置が段階的に決められるので、蓋の位置の微調整が困難である。この点、実施例1に係るロータリーダンパは、溝114の底面が斜面であり、斜面に沿って突起131が移動することによって蓋130を変位させるため、蓋130の位置の微調整が可能である。また、突起131が溝114の中で双方向に移動し得るため、蓋130の位置を当初の位置から下げるだけでなく、上げることもできる。この方法によれば、当初の測定結果が設定値を満たさない場合でも、測定値が設定値となるように特性を変化させることができるので、各部品の寸法及び/又はオイルの粘度のばらつきがあっても、より均一な特性を得ることができる。また、特性の公差の幅を従来の設計よりも格段に狭くすることができる。例えば、特性の公差の幅を従来の設計の1/3以下にすることが可能である。
【0016】
測定結果が設定値を満たす場合には、蓋130を変位させずに(すなわち、測定時の蓋130の位置で)蓋130を固定する。実施例1に係るロータリーダンパは、ケース110の端部をかしめることにより蓋130を固定しているが、溶着等の方法で蓋130を固定してもよい。
【実施例2】
【0017】
次に、
図16乃至
図18を参照しながら実施例2に係るロータリーダンパの構造を概略的に説明する。
図16に示したように、実施例2に係るロータリーダンパは、ケース210、ローター220及び蓋230を有して構成されている。
図18に示したように、ケース210は、円筒形の周壁211を有する。
図17に示したように、周壁211の一端は、周壁211と一体に成形された底壁212で塞がれ、周壁211の他端は、蓋230で塞がれている。蓋230は、ケース210の端部をかしめることによって固定されている。ローター220は、ケース210の中に収容され、ケース210及び蓋230によって支持されている。
図18に示したように、ケース210とローター220との間には、隔壁213で仕切られた油室240が形成され、油室240には、オイルが充填されている。ローター220は、油室240に配置されるベーン221を有している。
図17に示したように、ケース210と蓋230との間、蓋230とローター220との間及びローター220とケース210との間には、オイルの漏洩を防止するOリング250が配設されている。実施例2に係るロータリーダンパは、ローター220の回転によってベーン221が受けるオイルの抵抗を利用してローター220の回転速度を減速させるものである。
【0018】
次に、
図19乃至
図21を参照しながら実施例2で採用したケース210の特徴を説明する。
図19に示したように、実施例2で採用したケース210は、円形の窪み214を有する。窪み214は、蓋230を水平に支持するために、2つ以上形成されることが好ましい。
図20に示したように、実施例2では、2つの窪み214が周壁211及び底壁212と一体に成形された隔壁213に形成されている。
図21に示したように、窪み214の中には、小突起215が形成されている。
【0019】
次に、
図22及び
図23を参照しながら実施例2で採用した蓋230の特徴を説明する。
図22に示したように、実施例2で採用した蓋230は、ケース210に形成された窪み214の数と同じ数の突起231を有する。実施例2では、蓋230の裏面に2つの突起231が形成されている。
図23に示した突起231は、小突起215を押し潰すことができるものである。
【0020】
なお、実施例2に係るロータリーダンパは、ケース210の開口部を塞ぐ蓋230、蓋230に形成される突起231、ケース210に形成される窪み214、及び窪み214の中に形成される小突起215を有する構造であるが、これに代えて、ケースの開口部を塞ぐ蓋、ケースに形成される突起、蓋に形成される窪み、及び窪みの中に形成される小突起を有する構造であってもよい。
【0021】
次に、実施例2に係るロータリーダンパの製造方法の一例を説明する。この例では、まず、ケース210の中にローター220を収容し、油室240にオイルを充填する。次に、蓋230でケース210の開口部(周壁211の他端)を塞ぐように蓋230をケース210の上に載せ、突起231を窪み214に嵌め込む(
図24参照)。突起231の先端の当初の位置は任意に設定し得る。この例では、小突起215が突起231によって僅かに潰される位置に突起231の先端を配置している(
図24参照)。
【0022】
次に、蓋230に鉛直方向の圧力を加えた状態でロータリーダンパの特性を測定する。この方法によれば、蓋230を固定していない状態、すなわち、製品として完成していない状態で完成時の特性を知ることができる。蓋230を固定していない状態で蓋230の位置を変位させずに特性をより正確に測定するために、蓋230に加えられる圧力の大きさは、測定時の内圧に対抗し得る大きさであることが好ましい。測定する特性は、任意に設定し得るが、この例では、ローター220の動作時間である。なお、測定する特性は、トルクであってもよい。実施例2に係るロータリーダンパは、突起231が窪み214に嵌まって小突起215に支持されているため、蓋230に鉛直方向の圧力を加えることによって完成時と同じように蓋230を安定させることができ、それ故、特性を正確に測定できる。
【0023】
測定値は、蓋230を同じ位置に置いて測定しても、各部品の寸法及び/又はオイルの粘度のばらつきによって均一でない場合がある。測定結果が設定値を満たさない場合には、蓋230を変位させ、蓋230に鉛直方向の圧力を加えた状態でロータリーダンパの特性を再度測定する。蓋230の変位は、蓋230に形成された突起231でケース210に形成された小突起215を押し潰すことによって行われる。この例では、測定時よりも大きな鉛直方向の圧力を蓋230に加えることによって突起231が小突起215をさらに潰し、それにより蓋230の位置を下げることができる(
図25参照)。蓋230の位置は突起231が小突起215を押し潰す程度で決まるので、蓋230の位置の微調整が可能である。この方法によれば、当初の測定結果が設定値を満たさない場合でも、測定値が設定値となるように特性を変化させることができるので、各部品の寸法及び/又はオイルの粘度のばらつきがあっても、より均一な特性を得ることができる。また、特性の公差の幅を従来の設計よりも格段に狭くすることができる。例えば、特性の公差の幅を従来の設計の1/3以下にすることが可能である。
【0024】
測定結果が設定値を満たす場合には、蓋230を変位させずに(すなわち、測定時の蓋230の位置で)蓋230を固定する。実施例2に係るロータリーダンパは、ケース210の端部をかしめることにより蓋230を固定しているが、溶着等の方法で蓋230を固定してもよい。
【符号の説明】
【0025】
110 ケース
111 周壁
112 底壁
113 隔壁
114 溝
115 溝の一端
116 溝の他端
120 ローター
121 ベーン
122 貫通孔
130 蓋
131 突起
132 突起の一端
133 突起の他端
134 凸部
140 油室
150 Oリング
210 ケース
211 周壁
212 底壁
213 隔壁
214 窪み
215 小突起
220 ローター
221 ベーン
230 蓋
231 突起
240 油室
250 Oリング