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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-21
(45)【発行日】2023-08-29
(54)【発明の名称】リング状部材の積層保持具
(51)【国際特許分類】
   B65D 85/62 20060101AFI20230822BHJP
【FI】
B65D85/62
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020057253
(22)【出願日】2020-03-27
(65)【公開番号】P2021155079
(43)【公開日】2021-10-07
【審査請求日】2022-09-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000141864
【氏名又は名称】株式会社京都スペーサー
(74)【代理人】
【識別番号】100076406
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 勝徳
(72)【発明者】
【氏名】坂口 伸宏
(72)【発明者】
【氏名】横田 卓矢
【審査官】宮崎 基樹
(56)【参考文献】
【文献】実開昭57-117327(JP,U)
【文献】特開2012-229041(JP,A)
【文献】実開昭51-143630(JP,U)
【文献】特開2012-240803(JP,A)
【文献】実開平02-144535(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 85/62
B65D 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のリング状部材の筒状の周壁同士を上下に積み重ねた状態でズレ落ちないように保持する複数の保持具を備えたリング状部材の積層保持具であって、
前記各保持具は、
前記複数のリング状部材のうちの互いに上下で相隣なる2つのリング状部材の周壁の周方向略等間隔置きの複数箇所にそれぞれ位置し、かつ当該両リング状部材の周壁同士に跨るように互いの外周面の縁部に沿って上下両方向へ延びる外周片と、
前記各外周片の上下方向中途部に半径方向外側端が連結されて半径方向内方へ延び、前記両リング状部材の周壁同士の間に介在された繋ぎ片と、
前記各繋ぎ片の半径方向内側端に連結され、前記両リング状部材の周壁同士に跨るように互いの内周面の縁部に沿って上下両方向へ延びる内周片と、
を備えており、
前記各保持具の外周片及び内周片は、互いに上下方向へ略一致する長さに設定され、かつ前記リング状部材の周壁の外周面及び内周面に対し摺動自在に支持されているとともに、
前記各保持具の繋ぎ片の半径方向内外両側端は、当該各保持具の外周片及び内周片の上下方向の上側位置にそれぞれ連結されていることを特徴とするリング状部材の積層保持具。
【請求項2】
前記各リング状部材の周方向略等間隔置きの前記各保持具同士の間に対応する前記周壁の複数の対応位置には、前記各リング状部材をその上下両端から外周面側及び内周面側に回り込んで環状に拘束する複数の拘束ベルト材が設けられている請求項1に記載のリング状部材の積層保持具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のリング状部材の筒状の周壁同士を上下に積み重ねた状態でズレ落ちないように保持するリング状部材の積層保持具に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、このようなリング状部材は、皿状をなす剛性基板に、全体として釣鐘状をなす可撓膜体の下端部を連結してなるフレキシブルコンテナに用いられることがある(特許文献1参照)。具体的には、剛性基板に対し可撓膜体の下端部をその半径方向外方からリング状部材としてのフラットバーリングの周壁により締め付けることで、剛性基板に可撓膜体の下端部を強固に連結するようにしている。
【0003】
また、リング状部材が、鉄筋製の籠の補強筋として用いられることもある。このとき、リング状部材の周方向均等間隔置きに左右一対の孔を複数組設け、このリング状部材の周囲にその軸線に対しそれぞれ略平行に延びる複数の縦筋を略U字状の金具によって固定することで籠を形成している。
【0004】
ところで、フラットバーリングなどのリング状部材を移動させる場合には、複数のリング状部材を上下に積み重ねた状態で行われる。このようなリング状部材にあっては、上下で相隣なる2つのリング状部材の周壁同士が互いに対向する対向面が周壁に対しほぼ直交する平坦面に形成されている。
【0005】
このとき、複数のリング状部材の筒状の周壁が上下に積み重ねられていると、互いに対向する対向面同士が周壁に対しほぼ直交する平坦面であるが故に横方向へ移動し易い上、接触面積も非常に小さいものであるため、ズレ落ち易いものとなる。
【0006】
このため、積み重ねた複数のリング状部材には、その周方向等間隔置きの複数箇所において当該各リング状部材をその上下両端から外周面側及び内周面側に回り込んで環状に拘束する複数の拘束ベルト材といったリング状部材の積層保持具が用いられている。この積層保持具によって、各リング状部材の周壁同士を上下に積み重ねた状態でズレ落ちないように保持することが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開平6-56192号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところが、複数の拘束ベルト材のような積層保持具では、上下に積み重ねた複数のリング状部材に対し、移動時に横方向からの外力が作用すると、各拘束ベルト材の張力のみによる緊張では各リング状部材同士のズレ落ちを保持することができないおそれがある。これは、各リング状部材が互いに上下に接する厚み分の面積だけしか重なっていないため、横方向からの外力が作用した際に各拘束ベルト材の張力に緩みが生じると、互いに上下に接する各リング状部材の周壁の対向面同士の間に生じるズレが増幅されるからである。
【0009】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、移動時に横方向からの外力が作用しても上下の各リング状部材の周壁の対向面同士の間のズレを防止して上下に積み重ねた複数のリング状部材のズレ落ちを確実に防止することができるリング状部材の積層保持具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するため、本発明では、複数のリング状部材の筒状の周壁同士を上下に積み重ねた状態でズレ落ちないように保持する複数の保持具を備えたリング状部材の積層保持具を前提とする。そして、前記各保持具に、前記複数のリング状部材のうち、互いに上下で相隣なる2つのリング状部材の周壁の周方向略等間隔置きの複数箇所にそれぞれ位置し、かつ当該両リング状部材の周壁同士に跨るように互いの外周面の縁部に沿って上下両方向へ延びる外周片と、前記各外周片の上下方向中途部に半径方向外側端が連結されて半径方向内方へ延び、前記両リング状部材の周壁同士の間に介在された繋ぎ片と、前記各繋ぎ片の半径方向内側端に連結され、前記両リング状部材の周壁同士に跨るように互いの内周面の縁部に沿って上下両方向へ延びる内周片と、を備えている。
【0011】
また、前記各保持具の外周片及び内周片を、互いに上下方向へ略一致する長さに設定し、かつ前記リング状部材の周壁の外周面及び内周面に対し摺動自在に支持する。そして、前記各保持具の繋ぎ片の半径方向内外両側端を、当該各保持具の外周片及び内周片の上下方向の上側位置にそれぞれ連結することを特徴としている。
【0012】
更に、前記各リング状部材の周方向略等間隔置きの前記各保持具同士の間に対応する前記周壁の複数の対応位置に、前記各リング状部材をその上下両端から外周面側及び内周面側に回り込んで環状に拘束する複数の拘束ベルト材を設けることがこのましい。
【発明の効果】
【0013】
以上、要するに、上下に積み重ねた複数のリング状部材のうちの上下で相隣なる2つのリング状部材の周壁同士の外周面に跨る外周片と当該両リング状部材の周壁同士の内周面に跨る内周片とを当該両リング状部材の周壁同士の間に介在する繋ぎ片の半径方向内外両側端により連結してなる保持具を、両リング状部材の周壁同士の周方向略等間隔置きの複数箇所にそれぞれ設けることで、移動時に横方向からの外力が作用しても上下の各リング状部材の周壁の対向面同士の間のズレを防止して、上下に積み重ねた複数のリング状部材のズレ落ちを確実に防止することができる。
【0014】
また、互いに上下方向へ略一致する長さに設定した各保持具の外周片及び内周片の上下方向の上側位置に対し繋ぎ片の半径方向内外両側端をそれぞれ連結することで、上下で相隣なる2つのリング状部材のうちの下側のリング状部材の周壁の対向面(平坦面)に対し繋ぎ片の下端を当接させるように当該周壁の周方向略等間隔置きにそれぞれ保持具を設置すると、各保持具は、繋ぎ片を支点にして揺動するものの、外周片及び内周片のうちの繋ぎ片よりも下側の部位が上側の部位よりも長く重いために外周片及び内周片を上下方向へ伸ばした状態で静止する。このため、複数のリング状部材のうちの上下で相隣なる2つのリング状部材の周壁同士の周方向略等間隔置きの複数箇所に設置した各保持具の外周片及び内周片の間に上側のリング状部材の周壁がスムーズに挿通される。これにより、上下で相隣なる2つのリング状部材の周壁同士の間に繋ぎ片を介在させる保持具の設置作業を簡単に行うことができる。
【0015】
更に、各リング状部材の周方向略等間隔置きの各保持具同士の間に対応する周壁の複数の対応位置に設けた拘束ベルト材によって各リング状部材をその上下両端から外周面側及び内周面側に回り込んで環状に拘束することで、上下に積み重ねた複数のリング状部材の周壁の対向面同士の間のズレはもちろんのこと、当該各リング状部材の周壁の対向面同士が離間する方向への移動も規制され、上下に積み重ねた複数のリング状部材のズレ落ちをより確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の第1の実施の形態に係る積層保持具により複数のリング状部材を積み重ねて保持した状態を示す斜視図である。
図2図1の各リング状部材を上方から見た平面図である。
図3図1の各リング状部材を一側方から見た側面図である。
図4図3の各リング状部材をA-A線において切断した断面図である。
図5図1の上下のリング状部材を積層保持具の各保持具直前方で一部切り欠いた状態を示す一部切欠断面図である。
図6図5の保持具を示し、(a)は正面図、(b)は背面図、(c)は右側面図、(d)は左側面図、(e)は平面図、(f)は底面図、(g)は斜視図をそれぞれ示している。
図7図5の保持具を下側のリング状部材に装着した際に半径方向外方から見て左右方向への揺れが収まった状態を説明する説明図である。
図8】本発明の第2の実施の形態に係る積層保持具により複数のリング状部材を積み重ねて保持した状態を示す斜視図である。
図9図8の各リング状部材を上方から見た平面図である。
図10図8の各リング状部材を一側方から見た側面図である。
図11図10の各リング状部材をB-B線において切断した断面図である。
図12図8の各リング状部材を積層保持具の各保持具直前方で一部切り欠いた状態を示す一部切欠断面図である。
図13図8の各保持具を示し、(a)は正面図、(b)は背面図、(c)は右側面図、(d)は左側面図、(e)は平面図、(f)は底面図、(g)は斜視図をそれぞれ示している。
図14】第2の実施の形態の変形例に係る積層保持具により保持した周壁の厚いリング状部材同士を各保持具直前方で一部切り欠いた状態を示す一部切欠断面図である。
図15】第2の実施の形態のその他の変形例に係る積層保持具により保持した周壁の薄いリング状部材と周壁の厚いリング状部材とを各保持具直前方で一部切り欠いた状態を示す一部切欠断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態に係る網筋の組立装置を図面に基づいて説明する。
【0018】
図1は本発明の第1の実施の形態に係る積層保持具により複数のリング状部材としてのフラットバーリングを積み重ねて保持した状態を示す斜視図を示している。また、図2図1の各フラットバーリングを上方から見た平面図、図3図1の各フラットバーリングを一側方から見た側面図をそれぞれ示している。
【0019】
図1図3に示すように、各フラットバーリング1(リング状部材)は、スチールやステンレスにより直径が850mmの無端円筒状に形成されている。この各フラットバーリング1は、その円筒状の周壁10の高さが50mmに、厚さが4mmにそれぞれ設定されている。
【0020】
多数のフラットバーリング1,1,…、例えば10枚のフラットバーリング1,1,…は、それぞれの周壁10,10,…同士を上下に積み重ねた状態でズレ落ちないように積層保持具3によって保持されている。この積層保持具3は、各フラットバーリング1のうちの互いに相隣なる上下2枚のフラットバーリング1,1の周壁10,10同士の間にそれぞれ3つずつの保持具2,2,…を備えている。
【0021】
図4図3の各フラットバーリング1をA-A線において切断した断面図、図5図1の上下のフラットバーリング1,1を積層保持具3の各保持具2直前方で一部切り欠いた状態を示す一部切欠断面図をそれぞれ示している。図4及び図5にも示すように、各保持具2は、各フラットバーリング1の周壁10の周方向略等間隔置きの3箇所にそれぞれ位置するように配置されている。
【0022】
図6図1の各保持具2を示し、(a)は正面図、(b)は背面図、(c)は右側面図、(d)は左側面図、(e)は平面図、(f)は底面図、(g)は斜視図をそれぞれ示している。図6にも示すように、各保持具2は、上下2枚のフラットバーリング1,1の周壁10,10同士に跨るように互いの外周面11,11の縁部に沿って上下両方向へ延びる断面略矩形状の外周片21を備えている。この外周片21は、断面略矩形状となる2つの長辺側の面211,212が両フラットバーリング1の周壁10の周方向両側に位置している一方、短辺側の面213,214が両フラットバーリング1の周壁10の半径方向内外両側に位置している。このとき、外周片21の半径方向内外両側のうちの半径方向内側の短辺側の面213は、両フラットバーリング1,1の周壁10,10の外周面11,11に対し摺接している。
【0023】
また、各保持具2は、外周片21の上下方向中途部に半径方向外側端が連結されて半径方向内方へ延びる略正方形に近い断面略矩形状に形成された繋ぎ片22を備えている。この繋ぎ片22は、上下の両フラットバーリング1,1の周壁10,10同士の間に介在されている。また、繋ぎ片22は、その断面略矩形状となる2つの長辺側の面221,222が両フラットバーリング1,1の周壁10,10の対向面側(上下両端面側)にそれぞれ対向している一方、短辺側の面223,224が当該両フラットバーリング1,1の周壁10,10の周方向両側に位置している。
【0024】
更に、各保持具2は、繋ぎ片22の半径方向内側端に連結されて上下両方向へ延びる断面略矩形状の内周片23を備えている。この内周片23は、上下の両フラットバーリング1,1の周壁10,10同士に跨るように互いの内周面12,12の縁部に沿って上下両方向へ延びている。また、内周片23は、断面略矩形状となる2つの長辺側の面231,232が両フラットバーリング1,1の周壁10,10の周方向両側に位置している一方、短辺側の面233,234が当該両フラットバーリング1,1の周壁10,10の半径方向内外両側に位置している。このとき、内周片23の半径方向内外両側のうちの半径方向外側の短辺側の面234は、両フラットバーリング1,1の周壁10,10の内周面12,12に対し摺接している。
【0025】
図7図1の各保持具2を下側のフラットバーリング1に装着した際に半径方向外方から見て左右方向への揺れが収まった状態を説明する説明図を示している。この図7に示すように、各保持具2の外周片21及び内周片23は、互いに上下方向へ略一致する長さ(例えば24mm)に設定されている。
【0026】
そして、各保持具2の繋ぎ片22の半径方向内外両側端は、当該各保持具2の外周片21及び各内周片23の上下方向の上側位置(例えば上端から8mmの位置)にそれぞれ連結されている。このとき、各保持具2は、下側のフラットバーリング1の周壁10に装着した際、その装着時の反動によって、繋ぎ片22を支点にして左右方向(図7に矢印で示す方向)へ揺れる。この各保持具2の装着時の揺れは、繋ぎ片22の長辺側の面222が下側のフラットバーリング1の周壁10の対向面(上端面)に対面した状態で静止するまで継続する。
【0027】
各保持具2は、外周片21、繋ぎ片22及び内周片23によって略H字状に形成されている。外周片21の半径方向内側の短辺側の面213(摺接面)と上端面215との角が角面取りされている。また、外周片21の半径方向内側の短辺側の面213と下端面216との角も角面取りされている。このとき、半径方向内側の短辺側の面213と上端面215との角の角面取りは、半径方向内側の短辺側の面213と下端面216との角の角面取りよりも若干大きくなっている。
【0028】
内周片23は、その半径方向外側の短辺側の面234(摺接面)と上端面235との角が角面取りされている。この内周片23の半径方向外側の短辺側の面234と上端面235との角の角面取りは、外周片21の半径方向内側の短辺側の面213と上端面215との角の角面取りと同じ大きさである。これは、下側のフラットバーリング1の周壁10に対する各保持具2の装着が作業者自らの手で行えるために外周片21の下端のみの小さめな角面取りで十分であるのに対し、外周片21の上端及び内周片23の上端の角面取りをそれぞれ大きめとするのは、外周片21の上端及び内周片23の上端の間に上側のフラットバーリング1の周壁10の下端を挿通し易くするためである。
【0029】
また、各保持具2の外周片21と内周片23との間隔は、繋ぎ片22を挟んで上下で変更されている。具体的には、上下で相隣なる2枚のフラットバーリング1,1のうちの下側のフラットバーリング1の周壁10が挿通される繋ぎ片22よりも下側の外周片21と内周片23との間隔が各フラットバーリング1の周壁10の厚みと同じ4mmに設定されているのに対し、上側のフラットバーリング1の周壁10が挿通される繋ぎ片22よりも上側の外周片21と内周片23との間隔が各フラットバーリング1の周壁10の厚みよりも若干広い4.5mmに設定されている。
【0030】
更に、上下に積み重ねたフラットバーリング1,1,…の周方向略等間隔置きの各保持具同士の間に対応する周壁10の3箇所の対応位置には、各フラットバーリング1をその上下両端のフラットバーリング1,1からそれぞれの外周面11側及び内周面12側に回り込んで環状に拘束する3本の金属製の拘束ベルト材4,4,4が設けられている。
【0031】
したがって、本実施の形態では、上下に積み重ねた10枚のフラットバーリング1,1,…のうちの上下で相隣なる2枚のフラットバーリング1,1の周壁10,10同士の外周面11に跨る外周片21と当該両フラットバーリング1,1の周壁10,10同士の内周面12に跨る内周片23とをその両フラットバーリング1,1の周壁10,10同士の間に介在する繋ぎ片22の半径方向内外両側端により連結してなる保持具2,2,…が、両フラットバーリング1,1の周壁10,10同士の周方向略等間隔置きの3箇所にそれぞれ設けられている。これにより、移動時に横方向からの外力が作用しても上下の各フラットバーリング1,1の周壁10,10の対向面同士の間のズレを防止して、上下に積み重ねた複数のフラットバーリング1,1,…のズレ落ちを確実に防止することができる。
【0032】
また、互いに上下方向へ略一致する長さに設定した各保持具2の外周片21及び内周片23の上下方向の上側位置に対し繋ぎ片22の半径方向内外両側端がそれぞれ連結されているので、上下2枚のフラットバーリング1,1のうちの下側のフラットバーリング1の周壁10の対向面(平坦面)に対し繋ぎ片22の下端を当接させるように当該周壁10の周方向略等間隔置きの3箇所にそれぞれ保持具2,2,…を設置すると、各保持具2は、繋ぎ片22を支点にして揺動するものの、外周片21及び内周片23のうちの繋ぎ片22よりも下側の部位が上側の部位よりも長く重いために外周片21及び内周片23を上下方向へ伸ばした状態で静止する。このため、複数のフラットバーリング1,1,…のうちの上下で相隣なる2枚のフラットバーリング1,1の周壁10,10同士の周方向略等間隔置きの3箇所に設置した各保持具2の外周片21及び内周片23の間に上側のフラットバーリング1の周壁10がスムーズに挿通される。これにより、上下で相隣なる2枚のフラットバーリング1,1の周壁10,10同士の間に繋ぎ片22を介在させる保持具2の設置作業を簡単に行うことができる。
【0033】
更に、各フラットバーリング1の周方向略等間隔置き3箇所の各保持具2同士の間に対応する周壁10の3箇所の対応位置に設けた拘束ベルト材4,4,4によって、上下に10枚積み重ねたフラットバーリング1,1,…がその上下両端のフラットバーリング1,1から外周面11側及び内周面12側に回り込んで環状に拘束されているので、上下に積み重ねた10枚のフラットバーリング1,1,…の周壁10の対向面同士の間のズレはもちろんのこと、当該各フラットバーリング1の周壁10の対向面同士が離間する上下方向への移動も規制され、上下に積み重ねた10枚のフラットバーリング1,1,…のズレ落ちをより確実に防止することができる。
【0034】
次に、本発明の第2の実施の形態を図8図13に基づいて説明する。
【0035】
この実施の形態では、リング状部材としてのフラットバーリング、及び保持具の構成を変更している。なお、フラットバーリング及び保持具を除くその他の構成は前記第1の実施の形態の場合と同じであり、同一部分については同じ符号を付してその詳細な説明は省略する。
【0036】
図8は本発明の第2の実施の形態に係る積層保持具により複数のリング状部材としてのアングルリングを積み重ねて保持した状態を示す斜視図、図9図8の各アングルリングを上方から見た平面図、図10図8の各アングルリングを一側方から見た側面図をそれぞれ示している。また、図11図10の各アングルリングをB-B線において切断した断面図、図12図8の各アングルリングを積層保持具の各保持具直前方で一部切り欠いた状態を示す一部切欠断面図をそれぞれ示している。
【0037】
すなわち、本実施の形態では、図8図11に示すように、各アングルリング5(リング状部材)は、スチールやステンレスにより直径が850mmの無端円筒状に形成されている。また、各アングルリング5は、その円筒状の周壁50と、この周壁50の軸線方向一端より半径方向内方へ延びるリング状のリング壁51とを備えている。更に、各アングルリング5は、その円筒状の周壁50の高さが50mmに、リング状のリング壁51の半径方向の長さが50mmに、互いの厚さが4mmにそれぞれ設定されている。この場合、周壁50の外方端(反リング壁51側端)及びリング壁51の外方端(反周壁50側端)と内側面との角は、それぞれ丸面取りされている。
【0038】
多数のアングルリング5,5,…、例えば10枚のアングルリング5,5,…にあっては、上下のアングルリング5,5を交互に上下に反転させた状態で積み重ねられている。つまり、10枚のアングルリング5,5,…のうち、互いのリング壁51,51同士が上下に相隣なる上下2枚のアングルリング5,5は、当該両アングルリング5,5の互いに対向面積の広いリング壁51,51の対向面同士を重ね合わせた状態で上下に積み重ねられている。一方、互いの周壁50,50同士が上下に相隣なる上下2枚のアングルリング5,5は、当該両アングルリング5,5の周壁50,50同士を上下に積み重ねた状態でズレ落ちないように積層保持具7によって保持されている。
【0039】
積層保持具7は、各アングルリング5のうちの互いに相隣なる上下2枚のアングルリング5,5の周壁50,50同士の間にそれぞれ3つずつの保持具6,6,…を備えている。各保持具6は、各アングルリング5の周壁50の周方向略等間隔置きの3箇所にそれぞれ位置するように配置されている。
【0040】
図13図8の各保持具を示し、(a)は正面図、(b)は背面図、(c)は右側面図、(d)は左側面図、(e)は平面図、(f)は底面図、(g)は斜視図をそれぞれ示している。図13にも示すように、各保持具6は、互いの周壁50,50同士が上下に相隣なる上下2枚のアングルリング5,5の周壁50,50同士に跨るように互いの外周面52,52の縁部に沿って上下両方向へ延びる断面略矩形状の外周片61を備えている。この外周片61は、断面略矩形状となる2つの長辺側の面611,612が両アングルリング5,5の周壁50の周方向両側に位置している一方、短辺側の面613,614が両アングルリング5,5の周壁50の半径方向内外両側に位置している。このとき、外周片61の半径方向内外両側のうちの半径方向内側の短辺側の面613は、上下の両アングルリング5,5の周壁50,50の外周面52,52に対し摺接している。
【0041】
また、各保持具6は、外周片61の上下方向中途部に半径方向外側端が連結されて半径方向内方へ延びる略正方形に近い断面略矩形状に形成された繋ぎ片62を備えている。この繋ぎ片62は、上下の両アングルリング5,5の周壁50,50同士の間に介在されている。また、繋ぎ片62は、その断面略矩形状となる2つの長辺側の面621,622が上下の両アングルリング5,5の周壁50,50の対向面側(上下両端面側)にそれぞれ対向している一方、短辺側の面623,624が当該両アングルリング5,5の周壁50,50の周方向両側に位置している。
【0042】
更に、各保持具6は、繋ぎ片62の半径方向内側端に連結されて上下両方向へ延びる断面略矩形状の内周片63を備えている。この内周片63は、上下の両アングルリング5,5の周壁50,50同士に跨るように互いの内周面53,53の縁部に沿って上下両方向へ延びている。また、内周片63は、断面略矩形状となる2つの長辺側の面631,632が両アングルリング5,5の周壁50,50の周方向両側に位置している一方、短辺側の面633,634が両アングルリング5,5の周壁50,50の半径方向内外両側に位置している。このとき、内周片63の半径方向内外両側のうちの半径方向外側の短辺側の面634は、両アングルリング5,5の周壁50,50の内周面53,53に対し摺接している。
【0043】
そして、各保持具6の外周片61及び内周片63は、互いに上下方向へ略一致する長さ(例えば50mm)に設定されている。各保持具6の繋ぎ片62の半径方向内外両側端は、当該各保持具6の外周片61及び各内周片63の上下方向略中間位置(例えば上端から25mmの位置)にそれぞれ連結されている。
【0044】
各保持具6は、外周片61、繋ぎ片62及び内周片63によって略H字状に形成されている。外周片61の半径方向内側の短辺側の面613(摺接面)と上端面615との角が角面取りされている。また、外周片61の半径方向内側の短辺側の面613と下端面616との角も角面取りされている。このとき、外周片61の半径方向内側の短辺側の面613と上端面615との角の角面取りと、半径方向内側の短辺側の面613と下端面616との角の角面取りとは、互いの大きさが一致している。
【0045】
内周片63は、その半径方向外側の短辺側の面634(摺接面)と上端面635との角が角面取りされている。また、内周片63の半径方向内側の短辺側の面633と下端面636との角も角面取りされている。このとき、内周片63の半径方向内側の短辺側の面633と上端面635との角の角面取りと、半径方向内側の短辺側の面633と下端面636との角の角面取りとは、互いの大きさが一致している。
【0046】
更に、各保持具6の内周片63における半径方向外側の短辺側の面634には、繋ぎ片62の長辺側の面621,622(上下両側の面)に対し近接した位置の近接面部634a,634aと、離間した位置の離間面部634b,634bとがそれぞれ設けられている。両近接面部634a,634aは、外周片61の半径方向内側の短辺側の面613に対し対面している。一方、両離間面部634b,634bは、外周片61の半径方向内側の短辺側の面613に対し対面している。
【0047】
また、各保持具6の外周片61と内周片63との間隔は、繋ぎ片62を挟んで上下で変更されている。具体的には、上下の2枚のアングルリング5,5のうちの下側のアングルリング5の周壁50が挿通される繋ぎ片62よりも下側の外周片61の半径方向内側の短辺側の面613と内周片63の半径方向外側の短辺側の面634における近接面部634aとの間隔が各アングルリング5の周壁50の厚みと同じ4mmに設定されているのに対し、上側のアングルリング5の周壁50が挿通される繋ぎ片62よりも上側の外周片61の半径方向内側の短辺側の面613と内周片63の半径方向外側の短辺側の面634における近接面部634aとの間隔が各アングルリング5の周壁50の厚みよりも若干広い4.5mmに設定されている。
【0048】
一方、各保持具6の繋ぎ片62よりも下側の外周片61の半径方向内側の短辺側の面613と内周片63の半径方向外側の短辺側の面634における離間面部634bとの間隔が5mmに設定されているのに対し、上側の外周片61の半径方向内側の短辺側の面613と内周片63の半径方向外側の短辺側の面634における離間面部634bとの間隔が下側よりも若干広い5.5mmに設定されている。
【0049】
各保持具6の内周片63における半径方向外側の短辺側の面634において繋ぎ片62を挟んで互いに上下に隣接する近接面部634aと離間面部634bとは、それぞれ斜面部634cによって連結されている。各離間面部634bの上下方向の長さは、各近接面部634aの上下方向の長さの略2倍の長さに設定されている。このとき、各アングルリング5の周壁50は、厚さが4mmに設置されていることにより、各保持具6の外周片61の半径方向内側の短辺側の面613と、内周片63の半径方向外側の短辺側の面634の近接面部634aとの間に先端が繋ぎ片62に当接するまで摺動自在に挿通される。
【0050】
更に、上下に積み重ねたアングルリング5,5,…の周方向略等間隔置きの各保持具6,6同士の略中間位置に対応する周壁50及びリング壁51の3箇所の対応位置には、各アングルリング5をその上下両端のアングルリング5,5のリング壁51,51からそれぞれの外周面52側及び内側に回り込んで環状に拘束する3本の金属製の拘束ベルト材4,4,4が設けられている。
【0051】
したがって、本実施の形態では、上下に積み重ねた10枚のアングルリング5,5,…のうちの上下で相隣なる2枚のアングルリング5,5の周壁50,50同士の外周面52に跨る外周片61と当該両アングルリング5,5の周壁50,50同士の内周面53に跨る内周片63とをその両アングルリング5,5の周壁50,50同士の間に介在する繋ぎ片52の半径方向内外両側端により連結してなる保持具6,6,…が、両アングルリング5,5の周壁50,50の周方向略等間隔置きの3箇所にそれぞれ設けられている。これにより、移動時に横方向からの外力が作用しても上下の各アングルリング5,5の周壁50,50の対向面同士の間のズレを防止して、上下に積み重ねた複数のアングルリング5,5,…のズレ落ちを確実に防止することができる。
【0052】
また、各アングルリング5の周方向略等間隔置き3箇所の各保持具6同士の間に対応する周壁50及びリング壁51の3箇所の対応位置に設けた拘束ベルト材4,4,4によって、上下に10枚積み重ねたアングルリング5,5,…がその上下両端のアングルリング5,5のリング壁51,51から外周面52側及び内側に回り込んで環状に拘束されているので、上下に積み重ねた10枚のアングルリング5,5,…の周壁50の対向面同士の間のズレはもちろんのこと、当該各アングルリング5の周壁50の対向面同士及びリング壁51の対向面同士が離間する上下方向への移動も規制され、上下に積み重ねた10枚のアングルリング5,5,…のズレ落ちをより確実に防止することができる。
【0053】
なお、本発明は前記各実施の形態に限定されるものではなく、その他種々の変形例を包含している。例えば、前記第2の実施の形態では、上下で相隣なる2枚のアングルリング5,5の周壁50,50及びリング壁51,51の厚みをそれぞれ4mmに設定したが、図14に示すように、上下で相隣なる2枚のアングルリング8,8(リング状部材)の周壁80,80及びリング壁81,81の厚みがそれぞれ5mmに設定されていてもよい。この各アングルリング8は、スチールやステンレスにより直径が850mmの無端円筒状に形成され、その円筒状の周壁80と、この周壁80の軸線方向一端より半径方向内方へ延びるリング状のリング壁81とを備えている。また、各アングルリング8は、周壁80の高さが50mmに、リング壁81の半径方向の長さが50mmに、互いの厚さが5mmにそれぞれ設定されている。このとき、各アングルリング8の周壁80は、厚さが5mmに設置されていることにより、各保持具6の外周片61の半径方向内側の短辺側の面613と、内周片63の半径方向外側の短辺側の面634の離間面部634bとの間に先端が斜面部634cに当接するまで摺動自在に挿通される。
【0054】
また、上下で相隣なる2枚のアングルリングの厚みが変更されていてもよく、例えば、図15に示すように、周壁50,80及びリング壁51,81の厚みが4mmと5mmとにそれぞれ設定された上下2枚のアングルリング5,8であってもよい。このとき、下側のアングルリング8の周壁80は、厚さが5mmに設置されていることにより、各保持具6の外周片61の半径方向内側の短辺側の面613と、内周片63の半径方向外側の短辺側の面634の離間面部634bとの間に先端が斜面部634cに当接するまで摺動自在に挿通される。一方、上側のアングルリング5の周壁50は、厚さが4mmに設置されていることにより、各保持具6の外周片61の半径方向内側の短辺側の面613と、内周片63の半径方向外側の短辺側の面634の近接面部634aとの間に先端が繋ぎ片62の繋ぎ片62の長辺側の面621(上側の面)に当接するまで摺動自在に挿通される。
【0055】
更に、上下で相隣なる2枚のアングルリング5,8の厚みは、4mm又は5mmに限らず、その他の厚みであってもよい。また、フラットバーリング1の厚みについても、同様である。その場合、上下に積み重ねた複数のアングルリング又は複数のフラットバーリングを保持する各保持具の外周片と内周面との間隔を当該両リングの厚みに応じて変更したものを用いる必要がある。
【0056】
また、前記第1の実施の形態では、各保持具2の繋ぎ片22の半径方向内外両側端を当該各保持具2の外周片21及び各内周片23の上下方向の上側位置にそれぞれ連結したが、各保持具の繋ぎ片の半径方向内外両側端が当該各保持具の外周片及び各内周片の上下方向中間位置にそれぞれ連結されていてもよい。このとき、各保持具の内周片における半径方向外側の短辺側の面に、繋ぎ片の長辺側の面(上下両側の面)に対し近接した位置の近接面部と、離間した位置の離間面部とをそれぞれ設け、保持具の内周片における半径方向外側の短辺側の面において繋ぎ片を挟んで互いに上下に隣接する近接面部と離間面部とがそれぞれ斜面部によって連結されていてもよい。
【0057】
また、前記各実施の形態では、各フラットバーリング1及び各アングルリング8を直径が850mmの無端円筒状に形成したが、各フラットバーリング及び各アングルリングの直径はこれに限定されるものではなく、最大直径が略2500mmまでの無端円筒状に形成されたものであってもよい。
【0058】
また、前記第1の実施の形態では、各フラットバーリング1の周壁10の高さを50mmに設定する一方、前記第2の実施の形態では、各アングルリング8の周壁80の高さを50mmに、リング壁81の半径方向の長さを50mmにそれぞれ設定したが、各フラットバーリングの周壁の高さや、各アングルリングの周壁の高さ及びリング壁の半径方向の長さはこれに限定されるものではなく、その他の高さ及び長さに設定されていてもよいのはもちろんである。
【0059】
また、前記各実施の形態では、各保持具2,6を周壁10,50の周方向略等間隔置きの3箇所にそれぞれ位置するように配置したが、各保持具は周壁の周方向略等間隔置きの4箇所以上にそれぞれ位置するように配置されていてもよい。
【0060】
また、前記各実施の形態では、金属製の拘束ベルト材4を周壁10,50の周方向略等間隔置きの3箇所にそれぞれ位置するように設けたが、拘束ベルト材は、周壁の周方向略等間隔置きの2個所又は4箇所以上にそれぞれ位置するように配置されていてもよい。しかも、拘束ベルト材は、金属製に限定されることはなく、移動中に横方向からの外力が作用しても伸縮し難く切断し難い十分な強度を備えた合成樹脂製のものであってもよい。
【0061】
更に、前記各実施の形態では、10枚のフラットバーリング1,1,…又は10枚のアングルリング5,5,…の周壁10,50を上下に積み重ねた場合について述べたが、10枚未満又は11枚以上の複数組のフラットバーリングもしくはアングルリングの周壁を上下に積み重ねた場合であってもよいのはもちろんである。
【符号の説明】
【0062】
1 フラットバーリング(リング状部材)
10 周壁
11 周壁の外周面
12 周壁の内周面
2 保持具
21 外周片
22 繋ぎ片
23 内周片
3 積層保持具
4 拘束ベルト材
5 アングルリング(リング状部材)
50 周壁
52 周壁の外周面
53 周壁の内周面
6 保持具
61 外周片
62 繋ぎ片
63 内周片
7 積層保持具
8 アングルリング(リング状部材)
80 周壁
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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図10
図11
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