(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-21
(45)【発行日】2023-08-29
(54)【発明の名称】信号増幅器回路、電圧変換器およびシステム
(51)【国際特許分類】
H03F 1/30 20060101AFI20230822BHJP
H03F 1/32 20060101ALI20230822BHJP
H03F 3/26 20060101ALI20230822BHJP
【FI】
H03F1/30
H03F1/32
H03F3/26
(21)【出願番号】P 2020510152
(86)(22)【出願日】2018-04-27
(86)【国際出願番号】 EP2018060931
(87)【国際公開番号】W WO2018197694
(87)【国際公開日】2018-11-01
【審査請求日】2021-02-19
(31)【優先権主張番号】102017109213.7
(32)【優先日】2017-04-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(31)【優先権主張番号】102017109216.1
(32)【優先日】2017-04-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】518381662
【氏名又は名称】ブルメスター オーディオシステム ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ウエストファル、アーンスト-ハインリッヒ
【審査官】及川 尚人
(56)【参考文献】
【文献】特開昭55-060316(JP,A)
【文献】特開平09-130155(JP,A)
【文献】特開2014-049975(JP,A)
【文献】米国特許第04087761(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0275195(US,A1)
【文献】特開平04-042602(JP,A)
【文献】特開2008-092310(JP,A)
【文献】特開2000-295050(JP,A)
【文献】米国特許第04864249(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03F 1/00-3/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
-少なくとも1つの第1の増幅器トランジスタと少なくとも1つの第2の増幅器トランジスタであって、前記第1の増幅器トランジスタと前記第2の増幅器トランジスタとは、プッシュプル回路中で互いに接続されていて、かつ増幅器電圧源により給電される、少なくとも1つの第1の増幅器トランジスタと少なくとも1つの第2の増幅器トランジスタと、
-割り当てられた増幅器トランジスタとそれぞれ熱的にカップリングされている1つまたは複数のバイアスダイオードであって、前記1つまたは複数のバイアスダイオードは、クロスオーバーひずみの低減または回避のために前記増幅器トランジスタに対する並列接続で配置されている、1つまたは複数のバイアスダイオードと、を備える信号を増幅するための信号増幅器回路であって、
前記1つまたは複数のバイアスダイオードは
、前記増幅器電圧源から独立した電圧源を用いて給電され、
前記独立した電圧源は、前記1つまたは複数のバイアスダイオードに給電する定電流源の一部であ
り、
前記独立した電圧源は、外部の交流電圧を直流電圧に変換する無電位電圧源として構成されている、信号増幅器回路。
【請求項2】
前記1つまたは複数のバイアスダイオードは、前記独立した電圧源を用いて、バイアス増幅器を介して給電される、請求項1
に記載の信号増幅器回路。
【請求項3】
前記バイアス増幅器は、前記1つまたは複数のバイアスダイオードに給電する前記定電流源の一部である、請求項
2に記載の信号増幅器回路。
【請求項4】
前記定電流源は調節可能に構成されている、請求項
3に記載の信号増幅器回路。
【請求項5】
前記1つまたは複数のバイアスダイオードは、前記割り当てられた増幅器トランジスタと一緒にそれぞれ共通のハウジング内に配置されているか、または前記1つまたは複数のバイアスダイオードは、前記割り当てられた増幅器トランジスタのヒートシンクにそれぞれ配置されている、請求項1から
4までのいずれか1項に記載の信号増幅器回路。
【請求項6】
前記少なくとも1つの第1の増幅器トランジスタは、第1のダーリントン回路中で相互に接続された複数の第1の増幅器トランジスタを含み、および/または前記少なくとも1つの第2の増幅器トランジスタは、第2のダーリントン回路中で相互に接続された複数の第2の増幅器トランジスタを含む、請求項1から
5までのいずれか1項に記載の信号増幅器回路。
【請求項7】
前記信号増幅器回路は、オーディオ増幅器回路として、特にオーディオ出力段回路として構成されている、請求項1から
6までのいずれか1項に記載の信号増幅器回路。
【請求項8】
前記独立した電圧源は、
-第1の一次コイルと第1の二次コイルとを含む入力側の第1の変圧器と、
-前記第1の変圧器と接続された、第2の一次コイルと第2の二次コイルとを含む出力側の第2の変圧器とを有し、
前記第1の変圧器の前記第1の二次コイルは、前記第2の変圧器の前記第2の一次コイルと直接接続されている、請求項1から
7までのいずれか1項に記載の信号増幅器回路。
【請求項9】
前記第1の二次コイルおよび/または前記第2の一次コイルは、最大で5回巻、有利に最大で1回巻、好ましくは最大で半回巻を有する、請求項
8に記載の信号増幅器回路。
【請求項10】
前記第2の変圧器は、シールドにより取り囲まれていて、前記シールドは、前記第2の変圧器の前記第2の一次コイルの端子と接続されている、請求項
8または
9に記載の信号増幅器回路。
【請求項11】
前記第2の変圧器の前記第2の二次コイルの一方の端子は、第1の補正キャパシタンスを介して、および/または前記第2の二次コイルの他方の端子は、第2の補正キャパシタンスを介してアースに接続されているか、または増幅されるべき信号に追従する基準電位に保たれる、請求項
8から
10までのいずれか1項に記載の信号増幅器回路。
【請求項12】
前記第1の補正キャパシタンスおよび/または前記第2の補正キャパシタンスは調節可能である、請求項
11に記載の信号増幅器回路。
【請求項13】
前記第2の変圧器の前記第2の一次コイルの端子は接地されているか、または増幅されるべき信号に追従する基準電位に動的に保たれる、請求項
8から
12までのいずれか1項に記載の信号増幅器回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、信号増幅器回路、特にオーディオ増幅器回路に関する。特に、これはオーディオ出力段回路である。
【背景技術】
【0002】
現代の信号増幅器は、通常では、プッシュプル回路中で相互に接続されている増幅器トランジスタから構成されている。この級の増幅器は、B級増幅器とも言われる。このような増幅器の基本原理は、2つのコンプリメンタリトランジスタがそのエミッタと相互接続され、かつそのコレクタでそれぞれ正の増幅器電圧源と負の増幅器電圧源とに接続されていることにある。この場合、対称信号を前提として、両方のコンプリメンタリトランジスタの各々が、半分の振動サイクルの間に導通する。新型の信号増幅器の場合に、特に大きな出力を生成する出力段では、各振動サイクルについて頻繁に2つまたはそれ以上のトランジスタが提供され、これらのトランジスタはそれぞれ所定の電圧領域をカバーする。振動サイクル毎に2つのトランジスタの場合、4つのトランジスタを有するプッシュプル回路を意味するが、12までのトランジスタを有する増幅器も珍しくはない。
【0003】
両方のコンプリメンタリトランジスタのベース端子が、増幅器の入力信号に直接接続されている場合に、頻繁に、いわゆるクロスオーバーひずみの問題が生じる。これは、ベース-エミッタ閾値電圧を下回る場合に、割り当てられたトランジスタが導通していないことが原因であり、そのため、入力信号のゼロ遷移の際にクロスオーバーひずみが生じる。クロスオーバーひずみを低減するかまたは回避するために、トランジスタの一方がいつでも常に導通していることを補償しなければならない。これは、ベースにバイアスを加えることにより達成される。十分にわずかなクロスオーバーひずみを得るために、全く一定のバイアスを印加する必要性が生じる。このバイアスの結果、出力段を通る一定の待機電流が生じる。この待機電流が低すぎる場合、出力電流のゼロクロッシング付近に、出力段の増幅が、十分な制御の場合の値よりも明らかに小さい領域が存在する。それにより、相変わらずクロスオーバーひずみが生じる。それに対して待機電流が高すぎる場合、ゼロクロッシングの領域でプッシュプル回路の両方の分岐がアクティブになる。この場合でも、同様にクロスオーバーひずみが得られる、というのもクロスオーバー点での増幅が、「通常の」制御の場合よりも明らかに高いためである。
【0004】
このトランジスタまたはこれらのトランジスタのベース-エミッタ閾値電圧の温度係数は負である。したがって、ヒートシンク温度が変化する際にひずみ最適値を維持するために、バイアスは、同じ温度係数で低下しなければならない。これは、通常では、閾値電圧が同様に負の温度係数を有するダイオード(以後、バイアスダイオードまたはセンサダイオードと言う)を用いて達成され、この温度係数は、割り当てられたトランジスタのベース-エミッタ閾値電圧の温度係数とできる限り似ている。この場合、各トランジスタには、自身のバイアスダイオードが割り当てられていて、このバイアスダイオードと熱的にカップリングされている。プッシュプル回路の分岐が複数のトランジスタから形成されている場合、バイアスの生成のために、割り当てられたバイアスダイオードの相応する数がダイオードチェーン内に配置されている。
【0005】
増幅器の待機電流は、バイアスダイオードを通して流れるので、このバイアスは、トランジスタの温度が上昇するにつれて、ベース-エミッタ閾値電圧と同程度に低下する。通常では、バイアスダイオードは、増幅器トランジスタにも給電する同じ増幅器電圧源から給電される。このため、バイアスダイオードに並列にポテンショメータが配置され、このポテンショメータは、バイアスの「オフセット値」を、増幅器の期待されるべき平均動作温度でできる限り低いひずみに調節する。しかしながら、この「オフセット値」は、増幅器の電圧増幅器段を通る待機電流に依存し、この増幅器は実際に、特にオーディオ増幅器の場合に重要な、増幅器をスピードの基準に従って最適化する場合に、とりわけ著しく温度依存性である。したがって、バイアスの不所望な変動が生じ、これがまた、増幅器出力にひずみを引き起こすことがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、信号をわずかなひずみで増幅することができる信号増幅器回路を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題は、本発明により、請求項1の特徴を有する信号増幅器回路により解決される。本発明の有利な発展形態は、従属請求項に記載されている。
【0008】
本発明は、できる限り正確に再現可能であり、かつ温度に依存しない、できる限り的確な電流を、バイアスダイオードに供給するという考察に基づく。これは、本発明によると、バイアスダイオードを少なくとも部分的に、増幅器電圧源から独立した電圧源を用いて給電することにより達成される。バイアスダイオードまたはバイアス回路に給電するための、増幅器電圧源から独立した電圧源は、増幅器回路が、上流に接続された電圧増幅器段の要件から独立してサイズ決定することができるという利点を有する。増幅器電圧源から独立したとは、特に、電圧源が、増幅器電圧源とは電気的に別々であることを意味することができる。特に、電圧源は、増幅器電圧源から直接的にもまたは間接的にもそのエネルギーを受けていない。
【0009】
このような電圧源を実現する1つの方法は、バイアスダイオードの給電のためにバッテリーを使用することである。しかしながら、電圧源は持続電圧源であることが好ましい。これは、特に、電圧源が放電せず、しかも定期的に充填または交換する必要がないことを意味する。この種の電圧源は、例えば、太陽電池を、一定の光源、例えば1つまたは複数のLEDと組み合わせることにより実現することができる。好ましくは、このために、共通のハウジング内で、太陽電池がLEDフィールドと向かい合わせに置かれる。LED/太陽電池の移行部は、電気的分離を形成する。さらに、LED/太陽電池の移行部は、カップリング容量を形成しないかまたは極めてわずかなカップリング容量しか形成しない。これに対して代替的にまたは付加的に、電気的分離のための電圧源は、少なくとも1つの変圧器を有することができる。
【0010】
好ましい実施形態の場合に、独立した電圧源は、増幅トランジスタに関して無電圧の電圧源として構成されていることが予定されている。これは、特に電圧源が、電圧増幅器回路の出力からアースへの分路ではないことを意味する。換言すれば、電圧源は、電圧増幅器回路と電圧増幅器回路のアースまたはシグナルアースとの間の付加的なまたは別の接続路を形成しない。好ましくは、バイアスダイオード用とバイアス抵抗用の電流は、増幅器電圧源から引き出されず、または再び対称的に返送されるような程度で引き出されない。つまり、バイアスダイオードを通るバイアス電流は、信号電流に影響を及ぼすことなしに供給される。
【0011】
さらに、電圧源は好ましくは、接地に対してカップリング容量を有しないかまたは極めてわずかなカップリング容量しか有しないのが好ましい、というのも、この電圧源は、(コモンモードで)、増幅されるべき信号の信号周波数と「連動」し、かつこの電圧源のカップリング容量は、増幅器回路の高抵抗の信号出力に負荷をかけるためである。さらに、この電圧源は、好ましくはコモンモード干渉電圧を有しないかまたは無視することができるコモンモード干渉電圧を有するのが好ましい、というのも、この干渉電圧は、そうではないと、信号経路内の増幅器回路の高抵抗の信号出力に給電するためである。
【0012】
有利な発展形態の場合に、バイアスダイオードは、バイアス増幅器を介して独立した電圧源を用いて給電されることが予定されている。例えば、これは、例えば演算増幅器で構成されている直流電圧増幅器、特に精密直流電圧増幅器であることができる。通常では、増幅トランジスタと割り当てられたバイアスダイオードとの温度係数は、通常では約1.2の所定の係数だけ異なる。したがって、バイアスダイオードを介して低下する電圧にこの係数を掛ける場合が有利である。バイアス増幅器の増幅は、好ましくは温度に依存しない。
【0013】
合理的な実施形態の場合に、独立した電圧源および/またはバイアス増幅器は、バイアスダイオードに給電する定電流源の一部、特に精密定電流源の一部であることが予定されている。つまり、この定電流源は、電圧源および/またはバイアス増幅器および場合により他の電子構成部品から構成されている。したがって、バイアスダイオードを通して流れる定電流は、常に正確に再現可能であり、かつ温度に依存しない。
【0014】
好ましい発展形態の場合に、定電流源は調節可能に構成されていることが予定されている。それにより、精密定電流源から供給される定電流の変化を用いてバイアスの「オフセット」を増幅器回路の最小のひずみに調節することが可能である。ダイオードを介した順方向電圧は、電流とともに増加し、温度とともに低下する。しかしながら、順方向電圧の温度係数は、実際には電流に依存しない。
【0015】
好ましい実施形態の場合に、バイアスダイオードはそれぞれ、割り当てられた増幅器トランジスタとともに共通のハウジング内に配置されているか、またはバイアスダイオードはそれぞれ、割り当てられた増幅器トランジスタのヒートシンク上に配置されていることが予定されている。好ましくは、増幅器トランジスタのチップ温度の正確な像を得るために、各増幅器トランジスタについて熱的に密接にカップリングされたバイアスダイオードが設けられている。ダイオードを増幅器トランジスタのハウジング内に組み込むことは、特に密接な熱的なカップリングの利点をもたらすが、他方で、バイアスダイオードを自由に選択できないという欠点を有する。これは、バイアスダイオードと増幅器トランジスタとの間に存在する多様な電子特性を補償するバイアス回路に専念している。
【0016】
この増幅器トランジスタまたはこれらの増幅器トランジスタは、好ましくはバイポーラトランジスタとして構成されている。
【0017】
有利な発展形態の場合に、少なくとも1つの第1の増幅器トランジスタが、第1のダーリントン回路中で互いに接続された複数の第1の増幅器トランジスタを含み、および/または少なくとも1つの第2の増幅器トランジスタが、第2のダーリントン回路中で互いに接続された複数の第2の増幅器トランジスタを含むことが予定されている。ダーリントン回路中では、2つ、3つまたはそれ以上の増幅器トランジシタが接続されていて、かつ単一の増幅器トランジスタのように作用することができるが、遙かに高い(電流)増幅係数を有する。
【0018】
合理的な実施形態の場合に、信号増幅器回路は、オーディオ増幅器回路として、特にオーディオ出力段回路として構成されている。信号増幅器回路を用いて増幅された信号は、つまり、オーディオ信号である。オーディオ出力段回路は、特に信号増幅器回路の上流に入力増幅器段が接続されていることを意味する。
【0019】
好ましい発展形態の場合に、独立した電圧源は、第1の一次コイルと第1の二次コイルとを有する入力側の第1の変圧器と、その第1の変圧器と接続した、第2の一次コイルと第2の二次コイルとを有する出力側の第2の変圧器とを備え、第1の変圧器の第1の二次コイルは、第2の変圧器の第2の一次コイルと直接接続されていることが予定されている。これは、第1の変圧器の二次コイルまたは二次スプールが、第2の変圧器の一次コイルまたは一次スプールと直接接続されていることを意味する。第1の変圧器の第1の二次コイルが、第2の変圧器の第2の一次コイルと接続していることは、特に、両方のコイル間に電気的接続が存在し、つまり両方の変圧器は直列接続されていることを意味する。好ましくは、第1の変圧器の第1の二次コイルが、第2の変圧器の第2の一次コイルと直接接続されている。これは、特に、第1の二次コイル中に生じた電流が、電流プロフィールが本質的に変更されることなく、第2の一次コイルを流れることを意味する。好ましくは、この場合に、第1の二次コイルと第2の一次コイルとの間に、せいぜい単に純粋な抵抗要素、例えばオーム抵抗または1つまたは複数のライン部分が配置されているだけである。
【0020】
第2の二次コイルと出力端子との間に配置された整流器は、好ましくは、第2の二次コイルに存在する交流電圧を整流するために、ダイオードブリッジを有する。引き続き、整流された信号は、好ましくは、さらなる回路を用いて高調波を除去することができる。特に、ここでは、直列式コイルまたは直列式チョークを、場合により、ローパス回路として出力コンデンサと組み合わせて使用することが有利である。代替的または付加的に、整流器の各ダイオードに、RC直列回路(いわゆるスナバ)の並列接続が設けられていてよい。それにより、ダイオードの遮断移行時の発振が回避される。
【0021】
その入力端子では、電圧源に一次交流電圧を供給しなければならない。一次交流電圧の周波数(以後「一次周波数」とする)は、有利に10kHz~1MHz、好ましくは20kHz~500kHzの範囲内にある。有利に、一次交流電圧は、20kHz、25kHz、30kHz、35kHzまたは40kHzよりも大きい一次周波数を有する。一次交流電圧は、例えば、直流電圧を高周波数の交流電圧に変換することで生成することができる。この変換は、電子式遮断器を用いるかまたは発振器と線形増幅器を用いて行うことができる。電子式遮断器は、この場合、矩形波制御を生成し、これは、特に高効率を提供する。発振器と線形増幅器とは、それに対して、最も低いノイズレベルを提供する正弦波制御のために適している。さらに、矩形波電圧を使用する場合、これをLCフィルタによって「丸める」ことが可能であるため、相変わらず極めて良好な効率でさらに低減されたノイズレベルを達成することができる。
【0022】
一次周波数は、好ましくは、一次交流電圧が、例えばカップリング効果に基づき、増幅された信号中に付加的電圧成分を生成しないように選択される。信号増幅器がオーディオ増幅器である場合、一次周波数は、好ましくは、約20kHzのオーディオ帯限界と、通常では数百kHzであるオーディオ増幅器のカットオフ周波数との間にあり、好ましくはこの限界から遠く離れている。一次周波数が、増幅器カットオフ周波数から遠く離れれば離れるほど、可能な一次交流電圧ノイズは増幅器内の負帰還に基づきより効果的に抑制される。例えば、500kHzの増幅器カットオフ周波数の場合、約100kHzの一次周波数が適切である。この場合、オーディオ帯限界に対する間隔は、80kHzであり、増幅器カットオフ周波数に対する間隔は400kHzである。
【0023】
好ましくは、第1の変圧器は、第1のコアを有し、この第1のコアは、第2の変圧器の第2のコアから隔てられているので、第1のコアの磁束は、第2のコアに実質的に流れない。
【0024】
有利な発展形態の場合に、第1の二次コイルおよび/または第2の一次コイルは、最大5回巻、有利に最大3回巻、好ましくは最大1回巻を有することが予定されている。好ましくは、第1の二次コイルと第2の一次コイルとは、2つの変圧器の両方のコアを貫通する短絡コイルにより形成される。この場合、短絡コイルは、両方のコアのそれぞれ一方の脚部の周りに円を形成するか、またはこの両方の脚部の間の八の字形に交差することができる。わずかな巻数またはそれどころかこのような短絡コイルは、上述の容量カップリングを著しく低下させる、それというのも第1の変圧器から第2の変圧器へのエネルギー伝達が、高電流を用いると同時に極めて低い電圧で行われるためである。低い電圧に基づいても、1回巻または数回巻の低いカップリング容量に基づいても、第1の一次コイルと第2の二次コイルとの間の容量カップリングは著しく低減される。
【0025】
両方の変圧器の間の接続ラインまたは短絡コイルは、好ましくは、付加的にねじりによって低インダクタンスに構成されてよい。このように、両方の変圧器の間のまたは両方のコアの間の間隔をさらに拡張することが可能であり、このことは容量カップリングをさらに低減する。
【0026】
好ましくは、両方の変圧器の間の接続ラインまたは短絡コイルは、フェライト材料からなる管またはリングを通るように案内され、この管またはリングは、コアが存在する場合には、第1の変圧器のコアから第2の変圧器のコアまで延びる。しかしながら、この場合、管またはコアは、両方のコアを通り越してはならない。管またはリングは、この場合に、円形、正方形または他の形状の横断面を有することができる。管またはリングによって、接続ラインまたは短絡コイルを通る有効電流は、実質的に影響を受けない、というのもフェライト内で形成する磁気電流が逆向きに(逆平行に)流れる電流を実質的に相殺するためである。他方で、両方の接続ラインまたは短絡コイル(平行)の両方のラインを流れるコモンモードノイズ電流は、フェライトによって弱められる。
【0027】
好ましくは、両方の変圧器は、第1の一次コイルおよび/または第2の二次コイルが、第1の二次コイルおよび/または第2の一次コイルと同じ数回巻を有するように構成されている。これにより、特に、両方の変圧器の間の移行部の電圧が、変圧器ペアの入力電圧対出力電圧の比率で小さいことが生じる。好ましくは、第1の一次コイルおよび/または第2の二次コイルは、第1の二次コイルに印加される第1の二次電圧と、第1の一次コイルに印加される第1の一次電圧とが、最大で25%の比率を有するように寸法決定され、特にそうなるような程度の巻数を有する。
【0028】
合理的な実施形態の場合には、第1の変圧器と第2の変圧器とが、実質的に同じ構造を有することが予定されている。特に、この実施形態の場合には、第1の一次コイルと第2の二次コイルとが、同じ巻数を有する。さらに、2つの変圧器のコアは、存在する場合には、同じに構成されていてよい。それにより、第2の変圧器の出力で印加される電圧が、実質的に、第1の変圧器の入力端子もしくは入力に印加される一次交流電圧に相当することが保証される。
【0029】
好ましい発展形態の場合には、第2の変圧器および/または整流器は、シールドにより取り囲まれていて、このシールドは、第2の変圧器の第2の一次コイルの端子と接続されていることが予定されている。このようなシールドは、両方の変圧器もしくはそのコアのデカップリングを引き起こし、かつこのデカップリングに対して付加的にまたは代替的に、両方の変圧器の空間的な分離によって行うことができる。このシールドは、好ましくは、変圧器および/または整流器を覆うかまたは少なくとも部分的に取り囲む金属板または金属格子を用いて達成される。シールドと第2の一次コイルとの接続は、この場合、両方の変圧器の間の接続ラインと、または短絡コイルとの接続と同一視することができる。
【0030】
好ましくは、第2の変圧器の第2の一次コイルの端子および/または第1の変圧器の第1の二次コイルの端子は、接地されていることが予定されている。ここでも、特に両方の変圧器の間の接続ラインまたは短絡コイルは接地されていることを述べることができる。第2の変圧器の前述のシールドが設けられている場合、このシールドは同様に接地されていてよい。あるいは、変圧器端子の接地が行われない場合であっても、単に、シールド自体が接地されていることが可能である。
【0031】
好ましい実施形態の場合に、第2の変圧器の第2の一次コイルの端子は、増幅されるべき信号に追従する基準電位に動的に保たれることが予定される。この措置は、「ブートストラッピング」とも言われる。接続ラインまたは短絡コイルが、電位に従って動的に信号に追従することにより、接地に対する容量カップリングは、変圧器ペアの一次側の不変の容量デカップリングの際に低下されてよい。このため、基準電位は、好ましくは、それぞれの端子を備えたインピーダンス変換器を介して、接続ラインまたは短絡コイルと接続される。インピーダンス変換器は、例えば実質的に1の増幅率を有する緩衝増幅器を用いて形成することができる。基準電位とは、特に(インピーダンス変換器とデカップリングされた)信号自体であってよい。好ましくは、インピーダンス変換器は、プッシュプル回路を用いて、特にコンプリメンタリエミッタフォロアーとして実現されている。この場合に、基準電位は、好ましくは、バイアス抵抗の両端でタップされ、かつプッシュプル回路の両方の入力に供給される。この場合、プッシュプル回路の出力での信号は、ブートストラッピング信号として使用される。
【0032】
第2の変圧器の第2の二次コイルを介して、交流電圧が印加される。この交流電圧は、第2の二次コイルの両方の端子で逆相の振動を引き起こす。二次コイルの両方の端子からは、常に接地または先に記載された基準電位に対する寄生容量が存在する。これらの寄生容量は、一般的な場合には同じではないため、これによりコモンモードノイズ電圧が生じることがあり、これが次いで電圧源の出力に印加される。
【0033】
このさらなるコモンモードノイズ電圧を低減または完全に回避するために、有利な実施形態の場合には、第2の変圧器の第2の二次コイルの一方の端子が、第1の補正キャパシタンスを介して、および/または第2の二次コイルの他方の端子が、第2の補正キャパシタンスを介しアースに接続されていることが予定されている。このまたはこれらの補正キャパシタンスの正確な選択により、上述の寄生容量を補償することができる。補正キャパシタンスは、好ましくは、0.5pF~10pFの間の範囲内の値を有する。先に記載された接地に対して代替的に、好ましくは、第2の変圧器の第2の二次コイルの一方の端子が、第1の補正キャパシタンスを介して、および/または第2の二次コイルの他方の端子が、第2の補正キャパシタンスを介して、動的に基準電位と接続されていることが予定されていてよい。ここでも、基準電位は、好ましくは、インピーダンス変換器を介して1つの補正キャパシタンスまたは複数の補正キャパシタンスと接続されていて、ここで、インピーダンス変換器は、例えば緩衝増幅器によって形成されてよい。
【0034】
第1の補正キャパシタンスおよび/または第2の補正キャパシタンスは、好ましくは1つまたは複数のコンデンサから形成されている。補正キャパシタンスは、好ましくは、0.5pF~10pFの間の値を有する。
【0035】
第1の補正キャパシタンスおよび場合により第2の補正キャパシタンスが予定されている先に記載された全ての実施形態において、好ましくは第1の補正キャパシタンスおよび/または第2の補正キャパシタンスは調節可能に構成されている。このまたはこれらの調節可能な補正キャパシタンスを用いて、信号増幅回路の信号出力で出力信号を観察しながら、寄生容量の補正を行うことができ、この場合、出力信号内のコモンモードノイズ電圧は最小化することが努められる。調節可能な補正キャパシタンスとして、好ましくは、調節可能なもしくは可変のコンデンサが使用される。補正キャパシタンスは、上述の寄生容量と合計されそれぞれの全体キャパシタンスになる。両方の全体キャパシタンスを合わせることにより、対称性を作り出すことができる。この場合、二次コイルでのコモンモードノイズ電圧に対する両方の位相位置の寄与は、互いに相殺され、かつコモンモードノイズ電圧は消失する。好ましくは、第1の補正キャパシタンスは、寄生容量が製造時に変動する場合であっても常に最小に合わせるために、第2の補正キャパシタンスを用いて両方の方向の調整が可能であるように選択される。
【0036】
先行して、接地/ブートストラッピング、補正キャパシタンスおよびシールドの、独立した電圧源用の3つの異なる補償アプローチを別々に説明した。しかしながら、少なくとも2つの補償方法を同時に使用することが好ましい。より好ましくは、3つの全ての補償方法を同時に実施する。
【0037】
先に記載された、増幅器電圧源から独立した、バイアスダイオードまたはバイアス回路の給電のための電圧源は、電圧変換器の形で、また先に記載された電力増幅器から独立して、かつ全く別の適用範囲でも利用することができる。
【0038】
したがって、本発明は、出力側の直流電圧を提供するための電圧変換器にも関する。さらに、本発明は、電圧変換器とこの電圧変換器により給電される消費装置とを備えたシステムに関する。
【0039】
この種の電圧変換器は、通常では、変圧器と整流器とから構成されている。変圧器は、発振する一次電圧の電圧強度を、後続する回路の要求に適合させるために利用される。同時に、一次電圧と回路との間の電気的分離が達成される。後続する整流器内で、回路に交流電圧を供給するために、適合された交流電圧が整流される。整流器は、原則としてダイオードブリッジとローパスとを含む。
【0040】
極めて入念な設計の場合であっても、このような電圧変換器の場合、原則としてコモンモードノイズ電圧の出現を完全には回避することはできない。特に、医療測定技術の適用範囲および高級オーディオ技術において、この種のコモンモードノイズ電圧は、測定されたまたは増幅された信号に影響を及ぼすことがあるので、不所望な信号の重なり合いが生じることがある。
【0041】
本発明の課題は、コモンモードノイズ電圧を低減または回避する電圧変換器およびシステムを提供することである。
【0042】
この課題は、本発明により、請求項15の特徴を有する電圧変換器により、かつ請求項23の特徴を有するシステムにより解決される。本発明の有利な発展形態は、従属請求項に記載されている。
【0043】
本発明は、一次コイルと二次コイルとを備えた慣用の変圧器では、これらの両方のコイルは、磁気的にだけでなく、容量的にもカップリングされているという知見に基づく。コイルの容量カップリングにより、一次側の交流電圧の一部が、コモンモード電圧として整流器の出力までに達する。電圧変換器の両方の出力ラインは、一次側の基準電位に対してこの電圧を導く。この容量カップリングを低減するために、本発明によると、単一の変圧器の代わりに、互いに直接接続されている2つの変圧器からなる変圧器ペアを使用する。これは、第1の変圧器の二次コイルまたは二次スプールが、第2の変圧器の一次コイルまたは一次スプールと直接接続されていることを意味する。
【0044】
容量カップリングの低減は、このようにして、変圧器ペアの入力コイル(第1の一次コイル)と出力コイル(第2の二次コイル)との間の間隔を、変圧器のサイズとは無関係に高めることができることによりすでにある程度行われている。容量カップリングが低減されるのと同じ程度で、出力電圧に印加されるコモンモードノイズも低減される。
【0045】
第1の変圧器の第1の二次コイルが、第2の変圧器の第2の一次コイルと接続していることは、特に、両方のコイル間に電気的接続が存在し、つまり両方の変圧器は直列接続されていることを意味する。好ましくは、第1の変圧器の第1の二次コイルが、第2の変圧器の第2の一次コイルと直接接続されている。これは、特に、第1の二次コイル中に生じた電流が、電流プロフィールが本質的に変更されることなく、第2の一次コイルを流れることを意味する。好ましくは、この場合に、第1の二次コイルと第2の一次コイルとの間に、せいぜい単に純粋な抵抗要素、例えばオーム抵抗またはライン部分が配置されているだけである。
【0046】
第2の二次コイルと出力端子との間に配置された整流器は、第2の二次コイルに存在する交流電圧を整流するために、好ましくはダイオードブリッジを有する。引き続き、整流された信号の波形は、好ましくは、さらなる回路を用いて低減することができる。特に、ここでは、直列式コイルまたは直列式チョークを、場合により、ローパス回路として出力コンデンサと組み合わせて使用することが有利である。代替的または付加的に、整流器の各ダイオードに、RC直列回路(いわゆるスナバ)の並列接続が設けられていてよい。それにより、ダイオードの遮断移行時の発振が回避される。
【0047】
先にまたは後に記載された実施形態の1つによる電圧変換器を用いて、好ましくは、無電位である極めて敏感な信号用の信号処理する回路または回路部分が給電される。処理されるべき信号またはその基準電位によって電位を動的に変化することができる回路または回路部分は、無電位であると見なされる。電圧変換器は、この場合、無視できるコモンモードノイズ電圧を出すため、処理されるべき信号に影響を及ぼすことなく、この電圧変換器を用いて高抵抗の信号回路に給電することができる。
【0048】
好ましくは、この電圧変換器を用いて、信号を処理する消費装置に直流電圧が供給される。したがって、本発明は、先にまたは後に記載された実施形態の1つによる電圧変換器と、この電圧変換器を用いて給電される消費装置とを備えた相応するシステムにも関する。好ましくは、消費装置は、信号用の信号増幅器である。消費装置は、特に信号測定器、例えば医療測定器、またはオーディオ増幅器、特にオーディオ増幅器の出力段内の信号処理回路であってよい。
【0049】
その入力端子では、電圧変換器に一次交流電圧を供給しなければならない。一次交流電圧の周波数(以後「一次周波数」とする)は、有利に1kHz~10MHz、好ましくは10kHz~500kHzの範囲内にある。好ましくは、一次交流電圧の一次周波数は、1kHz、5kHz、10kHz、20kHzまたは30kHzよりも大きい一次周波数を有する。一次交流電圧は、例えば、直流電圧を高周波数の交流電圧に変換することで生成することができる。この変換は、電子式遮断器を用いるかまたは発振器と線形増幅器とを用いて行うことができる。電子式遮断器は、この場合、矩形波制御を生成し、これは、特に高効率を提供する。発振器と線形増幅器とは、それに対して、最も低いノイズレベルを提供する正弦波制御のために適している。さらに、矩形波電圧を使用する場合、これをLCフィルタによって「丸める」ことが可能であるため、相変わらず極めて良好な効率でさらに低減されたノイズレベルを達成することができる。
【0050】
電圧変換器がシステム内で、信号を処理する消費装置と接続されている場合、一次周波数は、好ましくは、一次交流電圧が、例えばカップリング効果に基づき、処理される信号内で付加的電圧成分を生成しないように選択される。消費装置が、オーディオ増幅器である場合、一次周波数は、好ましくは、約20kHzのオーディオ帯限界と、通常では数百kHzであるオーディオ増幅器のカットオフ周波数との間にあり、好ましくはこの限界から遠く離れている。一次周波数が、増幅器カットオフ周波数から遠く離れれば離れるほど、可能な一次交流電圧ノイズは増幅器内の負帰還に基づきより効果的に抑制される。例えば、500kHzの増幅器カットオフ周波数の場合、約100kHzの一次周波数が適切である。この場合、オーディオ帯限界に対する間隔は、80kHzであり、増幅器カットオフ周波数に対する間隔は400kHzである。
【0051】
好ましくは、第1の変圧器は、第1のコアを有し、この第1のコアは、第2の変圧器の第2のコアとは離れているので、第1のコアの磁束は、第2のコアに実質的に通らない。
【0052】
有利な発展形態の場合に、第1の二次コイルおよび/または第2の一次コイルは、最大5回巻、有利に最大3回巻、好ましくは最大1回巻を有することが予定されている。好ましくは、第1の二次コイルと第2の一次コイルとは、2つの変圧器の両方のコアを貫通する短絡コイルにより形成される。この場合、短絡コイルは、両方のコアのそれぞれ一方の脚部の周りに円を形成するか、またはこの両方の脚部の間の八の字形に交差することができる。わずかな巻数またはそれどころかこのような短絡コイルは、上述の容量カップリングを著しく低下させる、それというのも第1の変圧器から第2の変圧器へのエネルギー伝達が、高電流を用いると同時に極めて低い電圧で行われるためである。低い電圧に基づいても、1回巻または数回巻だけの低いカップリング容量に基づいても、第1の一次コイルと第2の二次コイルとの間の容量カップリングは著しく低減される。
【0053】
両方の変圧器の間の接続ラインまたは短絡コイルは、好ましくは、付加的にねじりによって低インダクタンスに構成されてよい。このように、両方の変圧器の間の間隔または両方のコアの間の間隔をさらに拡張することが可能であり、このことは容量カップリングをさらに低減する。
【0054】
好ましくは、両方の変圧器の間の接続ラインまたは短絡コイルは、フェライト材料からなる管またはリングを通るように案内され、この管またはリングは、コアが存在する場合には、第1の変圧器のコアから第2の変圧器のコアまで延びる。しかしながら、この場合、管またはコアは、両方のコアを通り越してはならない。管またはリングは、この場合に、円形、正方形または他の形状の横断面を有することができる。管またはリングによって、接続ラインまたは短絡コイルを通る有効電流は、実質的に影響を受けない、というのもフェライト内で形成する磁気電流が逆向きに(逆平行に)流れる電流を実質的に相殺するためである。他方で、両方の接続ラインまたは短絡コイル(平行)の両方のラインを流れるコモンモードノイズ電流は、フェライトによって弱められる。
【0055】
好ましくは、両方の変圧器は、第1の一次コイルおよび/または第2の二次コイルと、第1の二次コイルおよび/または第2の一次コイルとが有する数回巻または倍数巻を有するように構成されている。これにより、特に、両方の変圧器の間の移行部の電圧が、変圧器ペアの入力電圧と出力電圧との比率で小さいことが生じる。好ましくは、第1の一次コイルおよび/または第2の二次コイルは、第1の二次コイルに印加される第1の二次電圧と、第1の一次コイルに印加される第1の一次電圧とが、最大で25%の比率を有するように寸法決定され、特にそうなるような程度の巻数を有する。
【0056】
合理的な実施形態の場合には、第1の変圧器と第2の変圧器とが、実質的に同じ構造を有することが予定されている。特に、この実施形態の場合には、第1の一次コイルと第2の二次コイルとが、同じ巻数を有する。さらに、2つの変圧器のコアは、存在する場合には、同じに構成されていてよい。それにより、第2の変圧器の出力で印加される電圧が、実質的に、第1の変圧器の入力端子もしくは入力に印加される一次交流電圧に相当することが保証される。
【0057】
好ましい発展形態の場合には、第2の変圧器および/または整流器は、シールドにより取り囲まれていて、このシールドは、第2の変圧器の第2の一次コイルの端子と接続されていることが予定されている。このようなシールドは、両方の変圧器もしくはそのコアのデカップリングを引き起こし、かつこのデカップリングに対して付加的にまたは代替的に、両方の変圧器の空間的な分離を用いて行われる。このシールドは、好ましくは、変圧器および/または整流器を覆うかまたは少なくとも部分的に取り囲む金属板または金属格子を用いて達成される。シールドと第2の一次コイルとの接続は、この場合、両方の変圧器の間の接続ラインとまたは短絡コイルとの接続と同一視することができる。
【0058】
好ましくは、第2の変圧器の第2の一次コイルの端子および/または第1の変圧器の第1の二次コイルの端子は、接地されていることが予定されている。ここでも、特に両方の変圧器の間の接続ラインまたは短絡コイルは接地されていることを述べることができる。第2の変圧器の前述のシールドが設けられている場合、このシールドは同様に接地されていてよい。あるいは、変圧器端子の接地が行われない場合であっても、単に、シールド自体が接地されていることが可能である。
【0059】
電圧変換器がシステム内で、信号を処理する消費装置と接続されている場合、先に説明した接地に対して代替的に、好ましくは、第2の変圧器の第2の一次コイルの端子、第1の変圧器の第1の二次コイルの端子、両方の変圧器の間の接続ラインおよび/または短絡コイルは、動的に、消費装置内で処理される信号に追従する基準電位に保たれることが予定されていてよい。
【0060】
この措置は、「ブートストラッピング」とも言われる。接続ラインまたは短絡コイルが、電位に従って動的に信号に追従することにより、接地に対する容量カップリングを、変圧器ペアの一次側からの不変の容量デカップリングの際に低下することができる。このため、基準電位は、好ましくは、それぞれの端子を備えたインピーダンス変換器を介して、接続ラインまたは短絡コイルと接続される。インピーダンス変換器は、例えば実質的に1の増幅率を有する緩衝増幅器を用いて形成することができる。好ましくは、インピーダンス変換器は、プッシュプル回路を用いて、特にコンプリメンタリエミッタフォロアーとして実現されている。基準電位とは、特に信号自体であってよい。消費装置がオーディオ増幅器である場合、基準電位は、有利に増幅器入力で、より好ましくはオーディオ増幅器の出力段の入力に作用することができる。
【0061】
第2の変圧器の第2の二次コイルを介して、交流電圧が印加される。この交流電圧は、第2の二次コイルの両方の端子で互いに逆相である。二次コイルの両方の端子からは、常に接地または先に記載された基準電位に対する寄生容量が存在する。これらの寄生容量は、一般的な場合には同じではないため、これによりコモンモードノイズ電圧が生じることがあり、このコモンモードノイズ電圧が次いで電圧変換器の出力に印加される。
【0062】
このさらなるコモンモードノイズ電圧を低減または完全に回避するために、有利な実施形態の場合には、第2の変圧器の第2の二次コイルの一方の端子が、第1の補正キャパシタンスを介して、および/または第2の二次コイルの他方の端子が、第2の補正キャパシタンスを介してアースに接続されていることが予定されている。このまたはこれらの補正キャパシタンスの正確な選択により、上述の寄生容量を補償することができる。補正キャパシタンスは、好ましくは、0.5pF~10pFの間の範囲内の値を有する。電圧変換器がシステム内で、信号を処理する消費装置と接続されている場合、先に説明した接地に対して代替的に、好ましくは、第2の変圧器の第2の二次コイルの一方の端子が、第1の補正キャパシタンスを介して、および/または第2の二次コイルの他方の端子が、第2の補正キャパシタンスを介して、基準電位と動的に接続されていることが予定されていてよい。ここでも、基準電位は、好ましくは、インピーダンス変換器を介して1つの補正キャパシタンスまたは複数の補正キャパシタンスと接続されていて、ここで、インピーダンス変換器は、例えば緩衝増幅器によって形成されてよい。
【0063】
第1の補正キャパシタンスおよび/または第2の補正キャパシタンスは、好ましくは1つまたは複数のコンデンサから形成されている。補正キャパシタンスは、好ましくは、0.5pF~20pFの間の値を有する。
【0064】
第1の補正キャパシタンスおよび場合により第2の補正キャパシタンスが予定されている先に記載された全ての実施形態において、好ましくは第1の補正キャパシタンスおよび/または第2の補正キャパシタンスは調節可能に構成されている。調節可能な補正キャパシタンスを用いて、消費装置の出力信号を観察しながら、寄生容量の補正を行うことができ、この場合、出力信号内のコモンモードノイズ電圧は最小化することが努められる。調節可能な補正キャパシタンスとして、好ましくは、調節可能なもしくは可変のコンデンサが使用される。補正キャパシタンスは、上述の寄生容量と合計されそれぞれの全体キャパシタンスになる。両方の全体キャパシタンスを合わせることにより、対称性を作り出すことができる。この場合、二次コイルでのコモンモードノイズ電圧に対する両方の位相位置の寄与は、互いに相殺され、かつコモンモードノイズ電圧は消失する。好ましくは、第1の補正キャパシタンスは、寄生容量の製造時に変動する場合であっても常に最小に合わせるために、第2の補正キャパシタンスを用いて両方の方向の調整が可能であるように選択される。
【0065】
先行して、接地/ブートストラッピング、補正キャパシタンスおよびシールドの3つの異なる補償アプローチを別々に説明した。しかしながら、少なくとも2つの補償方法を同時に使用するのが好ましい。より好ましくは、3つの全ての補償方法を同時に実施する。
【0066】
本発明を、以下に、実施例を用いて、図面を参照しながら説明する。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【
図1】先行技術による信号増幅器回路の回路図を示す。
【
図2】本発明の一実施形態による信号増幅器回路の回路図を示す。
【
図3】好ましい実施形態によるバイアスダイオードによる給電のための定電流源の回路図を示す。
【
図4】バイアスダイオードの給電のための好ましい実施形態による無電位電圧源の回路図を示す。
【
図5】好ましい実施形態による電圧変換器の回路図を示す。
【
図6】ブートストラッピングを備えた他の好ましい実施形態による電圧変換器の回路図を示す。
【
図7】ブートストラッピングおよび補正キャパシタンスを備えた他の好ましい実施形態による電圧変換器の回路図を示す。
【
図8】3つの補償手段を備えた他の好ましい実施形態による電圧変換器の回路図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0068】
図1は、先行技術による信号増幅器回路の回路図を示す。オーディオ増幅器として構成されているこの公知の回路は、大まかには電圧増幅器段(VAS-voltage amplifier stage)と出力段に分けることができる。
【0069】
VASは、2つのトランジスタQ3、Q3'と2つの抵抗R3、R3'とからなる修正ダーリントン段を有する正の部分と、2つのトランジスタQ4、Q4'と2つの抵抗R4、R4'とを有する別の修正ダーリントン段を有する負の部分とから形成されている。入力差動増幅器段LTP(LTP-long-tailed pair)は、前置増幅器入力E+、E-に印加する信号を増幅しかつ前置増幅器出力A+、A-に供給するために用いられる。前置増幅された信号は、電圧増幅器段を通過し、ここで、信号の正の振動サイクルは、電圧増幅器段の正の部分を通過し、かつ負の振動サイクルは負の部分を通過して、出力段に到達する。
【0070】
出力段は、プッシュプル回路中の第1の増幅器トランジスタQ1、Q11、Q12と、第2の増幅器トランジスタQ2、Q21、Q22とから構成されている。ここに示された3つの第1の増幅器トランジスタQ1、Q11、Q12は、3つの第2の増幅器トランジスタQ2、Q21、Q22と同様に、互いに接続されてダーリントン回路になっている。遮断電圧増幅器段と出力段とにより増幅されたオーディオ信号は、最終的に、信号出力6に到達し、かつスピーカー装置(図示されていない)を制御するために使用することができる。
【0071】
電圧増幅器段と出力段とは、両方とも増幅器電圧源V+、V-により給電される。バイアスダイオード(センサダイオードとも言われる)D1、D11、D12、D2、D21、D22からなるダイオードチェーンは、増幅器トランジスタQ1、Q11、Q12、Q2、Q21、Q22に対して並列に配置されていて、増幅器トランジスタQ1、Q11、Q12、Q2、Q21、Q22の温度挙動に追従するバイアスを提供する。このために、バイアスダイオードD1、D11、D12、D2、D21、D22のそれぞれは、増幅器トランジスタQ1、Q11、Q12、Q2、Q21、Q22の割り当てられた1つと熱的にカップリングされている。この場合、バイアスダイオードD1は増幅器トランジスタQ1と、バイアスダイオードD2は増幅器トランジスタQ2とカップリングされている等々。熱的カップリングは、
図1では破線で示されていて、例えば、トランジスタとダイオードとを共通のハウジング内に配置することによるか、またはダイオードを、割り当てられたトランジスタのヒートシンクに固定することにより達成することができる。
【0072】
ダイオードの閾値電圧は、トランジスタのベース-エミッタ接合の閾値電圧と全く同じような負の温度係数を有する。したがって、バイアスダイオードD1、D11、D12、D2、D21、D22からなるダイオードチェーンの温度挙動は、増幅器トランジスタQ1、Q11、Q12、Q2、Q21、Q22の直列接続されたベース-エミッタ接合の温度挙動を反映し、このことにより、ダイオードチェーンを用いて生成されたバイアスも、相応する温度挙動を受けることになる。
【0073】
電圧増幅器段の待機電流は、ダイオードチェーンを通して流れる。しかしながら、実際には、ダイオードとトランジスタとの閾値電圧の温度係数は、公知の係数だけ、この場合にはほぼ1.202の係数だけ異なる。さらに、実際には、バイアスダイオードを自由に選択することはできない、というのも、原則として、共通のハウジング内でそれぞれバイアスダイオードと組み合わせられる増幅器トランジシタが使用されるためである。この不一致を補償するために、ダイオードチェーンに並列に配置されたバイアスポテンショメータPbが設けられ、このバイアスポテンショメータによって、バイアスのオフセット値が、増幅器の期待される平均作動温度での信号出力6での出力信号のできる限りわずかなひずみに調節される。このオフセット値は、電圧増幅器段を通る待機電流に依存する。この待機電流は、とりわけ出力段が速さについて最適化されている場合に著しく温度依存性である。これにより、バイアスの不所望な変動が生じる。
【0074】
この種の変動を低減するかまたはそれどころか回避するために、バイアスダイオードD1、D11、D12、D2、D21、D22は、本発明の場合に、増幅電圧源V+、V-から独立した電圧源Vbにより給電される精密定電流源Ibにより給電される。バイアス増幅器Abは、バイアスダイオードD1、D11、D12、D2、D21、D22の温度係数を、増幅トランジスタQ1、Q11、Q12、Q2、Q21、Q22の温度係数に適合するために設けられている。このバイアス増幅器は、約1.202の増幅率を有する。
【0075】
バイアス増幅器Abの出力は、電流を送り出すことも、電流を受け取ることもできる。このバイアス増幅器Abが存在しない場合には、バイアス抵抗Rbを介して電圧増幅器段の待機電流により引き起こされる電圧低下が生じる。この電圧低下が、設定された最適なバイアスに相当する値を超えた場合、バイアス増幅器Abは、再び正しいバイアスが生じる程度の大きさの電流を受け取る。それに対して電圧増幅器段の待機電流が、必要な電圧低下を生成するためには低すぎる場合には、バイアス増幅器Abは、所望のバイアスを達成するために、相応して付加的な電流を送り出す。これは、バイアス抵抗Rbを介して低下するバイアスが、電圧増幅器段の待機電流から独立していて、かつさらに増幅器トランジスタの温度推移を正確に補償するという結果になる。
【0076】
バイアス増幅器Abは、精密増幅器である。このバイアス増幅器は、好ましくは、容量性負荷を駆動することができるように周波数補償されている。
【0077】
図2に示された、バイアス増幅器Abと、定電流源Ibと、電圧源Vbとからなる配置は、単に、ダイオードチェーンを用いて生成されたバイアスを調整および調節するためのバイアス回路の概略図であるにすぎない。このバイアス回路は、本質的に直流電圧領域で作動する。信号周波数との相互作用を排除するために、バイアスコンデンサCbが設けられている。このバイアスコンデンサCbは、増幅されるべき信号の周波数領域内で短絡を示す。したがって、バイアス回路の機能群を、信号周波数領域または信号周波数帯での良好な特性のために設計する必要はない。
【0078】
バイアス回路の定電流源Ibの有利な実施形態は、
図3に示されている。定電流源Ibは、この実施形態の場合に、演算増幅器UAといくつかの他の構成要素とを用いて実現されている。
【0079】
シャント基準電圧源として機能する、
図3には示されていない付加的な回帰で、好ましくはバンドギャップ基準として実装されたツェナーダイオードDZで、さらに極めて温度安定性の電圧は、高い絶対精度で低下する。演算増幅器UAは、その正の入力に印加される電圧を、ポテンショメータP1および抵抗R1からなる直列回路を介して印加する。したがって、ポテンショメータP1と抵抗R1とを流れる電流は、ツェナーダイオードDZを介して低下する電圧をポテンショメータP1と抵抗R1との抵抗の合計で除算した電圧に等しい。この電流は、トランジスタQbのエミッタ入力にも流れ、そのベースは、演算増幅器UAの出力と接続されている。トランジスタQbのベース電流は、ここに関連する精度の範囲内で無視することができるので、トランジスタQbのコレクタ電流も印加され、ポテンショメータP1と抵抗R1とを流れる電流に等しくなる。したがって、またバイアスダイオードD1、D11、D12、D2、D21、D22のダイオードチェーンを通って流れるコレクタ電流は、コレクタに印加される電位から独立している。したがって、定義された温度安定性の電流は、バイアスダイオードD1、D11、D12、D2、D21、D22を通って流れる。この定電流源Ibの電流は、ポテンショメータP1の調節により制御される。トランジスタQbのコレクタでの「Usense」で印された信号は、入力信号として
図2からのバイアス増幅器Abに供給される。
【0080】
演算増幅器UAと、
図3内のバイアス回路のその他の構成要素とは、無電位電圧源Vbによって給電される。電圧源Vb用の有利な実施形態は、
図4に示されている。電圧源Vbは、入力端子Inと、出力端子Outとを有する。入力端子Inは、一次交流電圧2によって給電される。出力端子Outに、電圧源Vbは、例えば
図3に示されているように構成されていてよいバイアス回路を駆動する直流電圧を提供する。
【0081】
電圧源Vbの中央部は、それぞれ一次コイルT11、T21と二次コイルT12、T22とを備えた、2つの直列の、互いに離して接続された変圧器T1、T2である。第1の一次コイルT11には、入力端子Inを介して一次交流電圧2が供給され、第2の二次コイルT22には、交流電圧が印加され、この交流電圧は、同じ構造の変圧器T1、T2の場合に一次交流電圧2と本質的に同じである。第1の二次コイルT12と第2の一次コイルT21は、短絡コイル1により形成される。この短絡コイルは、変圧器T1、T2の両方のコアを通る短絡した部分ワイヤである。
【0082】
第2の二次コイルT22内に形成された交流電圧は、ダイオードブリッジ3と、整流器インダクタンスLと整流器キャパシタンスCとからなるローパスとから構成されている整流器によって整流される。
【0083】
短絡コイル1は、基準電位に保たれる。これは、ブートストラッピングともいわれ、短絡コイル1がインピーダンス変換器4を介して基準電位と接続され、このインピーダンス変換器はインピーダンス変換器入力41に接することにより行われる。基準電位は、信号増幅器回路中で増幅される信号であるか、またはこの基準電位は、その信号に追従する。基準電位は、ここに示された実施形態の場合に、バイアス抵抗Rbでタップされ、かつインピーダンス変換器入力41でインピーダンス変換器4に供給される。
【0084】
短絡コイル1のブートストラッピングに対して付加的に、第2の変圧器T2の出力の両方の端子は、つまり第2の二次コイルT22の両端は、第1の補正キャパシタンスCN1と第2の補正キャパシタンスCN2を介して基準電位と接続される。この場合、第2の補正キャパシタンスCN2は、調節可能なコンデンサとして構成されている。両方の補正キャパシタンスCN1、CN2を用いて、この第2の補正キャパシタンスCN2を信号増幅器回路の信号出力6で出力信号を観察しながら調節することにより、第2の二次コイルT22の各々の端部から基準電位までに存在する寄生容量が補償される。
【0085】
最終的に、
図4には、第2の変圧器T2と、ダイオードブリッジ3とLC回路とからなる整流器と、補正キャパシタンスCN1、CN2とのシールド5が概略的に表されている。シールド5は、特に金属ケージであり、この金属ケージは回路を取り囲み、それにより遮閉された構成要素を覆う。シールドも、同様に基準電位に保たれる。
【0086】
次に
図5~8を参照して説明する電圧変換器は、増幅器電圧源から独立した電圧源として、先に説明されたように、バイアスダイオードまたはバイアス回路の給電のために使用することができる。しかしながら、導入部で説明したように、電圧変換器は、その代わりに、他の消費装置用の電圧を提供するためにも、また全く別の適用分野でも使用することができる。
【0087】
図5では、好ましい実施形態の電圧変換器を回路図により概略的に示す。次の図面においても同様に、ここでは、本発明の説明のために最も重要な構成要素だけが示されている。電圧変換器は、入力端子Inと出力端子Outとを有する。入力端子Inは、一次交流電圧2によって給電される。出力端子Outで、電圧変換器は、1つまたは複数の消費装置に給電するために、直流電圧を提供し、この場合、消費装置は、図中に示されていない。
【0088】
電圧変換器の中央部は、それぞれ一次コイルT11、T21と二次コイルT12、T22とを備えた、2つの直列の、互いに離して接続された変圧器T1、T2である。第1の一次コイルT11には、入力端子Inを介して一次交流電圧2が供給され、第2の二次コイルT22には、交流電圧が印加され、この交流電圧は、同じ構造の変圧器T1、T2の場合に一次交流電圧2と本質的に同じである。第1の二次コイルT12と第2の一次コイルT21は、短絡コイル1により形成される。この短絡コイルは、変圧器T1、T2の両方のコアを通る短絡した部分ワイヤである。好ましくは、この短絡コイル1は、両方のコアの間で交差し、よって八の字を形成する。短絡コイル1は、
図5による実施形態の場合には接地されている。
【0089】
第2の二次コイルT22内に形成された交流電圧は、ダイオードブリッジ3と、整流器インダクタンスLと整流器キャパシタンスCとからなるローパスとから構成されている整流器によって整流される。
【0090】
この第1の実施形態により行われた、短絡コイル1の接地は、出力端子Outでのコモンモードノイズを低減または回避する措置である。他の措置は、
図6~8に概略的に示されている。これらの後続の実施例では、電圧変換器の基本的な構造は、先に説明されたように維持されていてよい。
【0091】
図6による実施形態の場合に、短絡コイル1は、接地に代えて、基準電位に保たれる。これは、短絡コイル1がインピーダンス変換器4を介して基準電位と接続され、このインピーダンス変換器がインピーダンス変換器入力41に接することにより行われる。この電圧変換器は、出力端子Outを介して消費装置(図示されていない)に給電する。基準電位は、この消費装置内で処理される信号であるか、または基準電位は、消費装置内で処理される信号に追従する。
【0092】
図6で説明された短絡コイル1のブートストラッピングに対して付加的に、第2の変圧器T2の出力の両方の端子は、つまり第2の二次コイルT22の両端は、第1の補正キャパシタンスCN1と第2の補正キャパシタンスCN2を介して基準電位と接続される。基準電位の代わりに、両方の補正キャパシタンスCN1、CN2が、
図5における短絡コイル1と同様に接地されていてよい。
【0093】
第2の補正キャパシタンスCN2は、調節可能なコンデンサとして構成されている。両方の補正キャパシタンスCN1、CN2を用いて、この第2の補正キャパシタンスCN2を消費装置の出力信号または出力端子Outで測定された電圧を観察しながら調節することにより、第2の二次コイルT22の各々の端部から基準電位までに存在する寄生容量を補償する。
【0094】
最終的に、
図8には、第2の変圧器T2と、ダイオードブリッジ3とLC回路とからなる整流器と、補正キャパシタンスCN1、CN2とのシールド5が概略的に分かり易く示されている。シールド5は、特に金属プレートであり、この金属プレートは、回路の上方に配置されていて、かつ遮閉された構成要素を覆う。シールドも、同様に基準電位に保たれる。あるいは、シールドは、
図5における短絡コイル1と同様に接地されていてよい。
【符号の説明】
【0095】
1 短絡コイル
2 一次交流電圧
3 ダイオードブリッジ
4 インピーダンス変換器
41 インピーダンス変換器入力
5 シールド
6 信号出力
A+、A- 前置増幅器出力
Ab バイアス増幅器
C 整流器キャパシタンス
Cb バイアスコンデンサ
CN1 第1の補正キャパシタンス
CN2 第2の補正キャパシタンス
D1、D11、D12、D2、D21、D22 バイアスダイオード(センサダイオード)
DZ ツェナーダイオード
E+、E- 前置増幅器入力
Ib 定電流源
In 入力端子
L 整流器インダクタンス
LTP 入力差動増幅器段
Out 出力端子
P1 ポテンショメータ
Pb バイアスポテンショメータ
Q1、Q11、Q12 第1の増幅器トランジスタ
Q2、Q21、Q22 第2の増幅器トランジスタ
Q3、Q3'、R3、R3' 電圧増幅器段、正
Q4、Q4'、R4、R4' 電圧増幅器段、負
Qb トランジスタ
R2 抵抗
Rb バイアス抵抗
T1 第1の変圧器
T11 第1の一次コイル
T12 第1の二次コイル
T2 第2の変圧器
T21 第2の一次コイル
T22 第2の二次コイル
UA 演算増幅器
V+、V- 増幅器電圧源
Vb 電圧源