(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-21
(45)【発行日】2023-08-29
(54)【発明の名称】検体の決定のためのナノセンサ方法および装置
(51)【国際特許分類】
G01N 21/41 20060101AFI20230822BHJP
B82Y 20/00 20110101ALI20230822BHJP
B82Y 40/00 20110101ALI20230822BHJP
G01N 21/03 20060101ALI20230822BHJP
G01N 21/78 20060101ALI20230822BHJP
G01N 33/543 20060101ALI20230822BHJP
C12Q 1/04 20060101ALI20230822BHJP
C12M 1/34 20060101ALI20230822BHJP
【FI】
G01N21/41 101
B82Y20/00
B82Y40/00
G01N21/41 102
G01N21/03 Z
G01N21/78 Z
G01N33/543 541Z
G01N33/543 545A
G01N33/543 595
C12Q1/04
C12M1/34 B
(21)【出願番号】P 2020513860
(86)(22)【出願日】2018-09-07
(86)【国際出願番号】 US2018049883
(87)【国際公開番号】W WO2019051181
(87)【国際公開日】2019-03-14
【審査請求日】2021-08-26
(32)【優先日】2017-09-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】507044516
【氏名又は名称】プレジデント アンド フェローズ オブ ハーバード カレッジ
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100189555
【氏名又は名称】徳山 英浩
(74)【代理人】
【識別番号】100100479
【氏名又は名称】竹内 三喜夫
(72)【発明者】
【氏名】チーミン・チュアン
(72)【発明者】
【氏名】フェン・リアン
【審査官】小野寺 麻美子
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-514225(JP,A)
【文献】特表2017-503483(JP,A)
【文献】特開2016-029400(JP,A)
【文献】特表2014-531043(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00 - G01N 21/09
G01N 21/17 - G01N 21/61
G01N 21/63 - G01N 21/65
G01N 21/78
G01N 33/543
B82Y 20/00
B82Y 40/00
C12Q 1/04
C12M 1/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナノ構造および、該ナノ構造の端部に遠位側に位置決めされたナノ粒子を含むウェルを含むマイクロウェルアレイと、該ウェルを封止するように構成された半透膜と、を備え、
ナノ粒子は、表面プラズモン共鳴、電気共鳴及び/又は磁気共鳴を介して入射光と相互作用するように構成され、該ウェルは、10マイクロメートル~50マイクロメートルの範囲から選択された直径を有する、物品。
【請求項2】
ナノ粒子に対して固定化された反応エンティティをさらに含む、請求項1に記載の物品。
【請求項3】
反応エンティティへの検体の結合が、ナノ粒子から屈折した光の変化を引き起こす、請求項2に記載の物品。
【請求項4】
反応エンティティは、抗体を含む、請求項2または3のいずれかに記載の物品。
【請求項5】
反応エンティティは、アプタマーを含む、請求項2~4のいずれか一項に記載の物品。
【請求項6】
反応エンティティは、タンパク質を含む、請求項2~5のいずれか一項に記載の物品。
【請求項7】
反応エンティティは、オリゴヌクレオチドを含む、請求項2~6のいずれか一項に記載の物品。
【請求項8】
ナノ粒子から屈折した光を検出するように位置決めされた検出器をさらに備える、請求項1~7のいずれか一項に記載の物品。
【請求項9】
検出器は、分光検出器である、請求項8に記載の物品。
【請求項10】
入射光は、平面偏光である、請求項1~9のいずれか一項に記載の物品。
【請求項11】
入射光は、可視光を含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の物品。
【請求項12】
入射光をナノ粒子に向けるように位置決めされた光源をさらに備える、請求項1~11のいずれか一項に記載の物品。
【請求項13】
光源は、レーザを含む、請求項12に記載の物品。
【請求項14】
レーザは、He-Neレーザである、請求項13に記載の物品。
【請求項15】
1つのナノ粒子だけがナノ構造に付着している、請求項1~14のいずれか一項に記載の物品。
【請求項16】
ナノ粒子は、金属を含む、請求項1~15のいずれか一項に記載の物品。
【請求項17】
ナノ粒子は、金を含む、請求項1~16のいずれか一項に記載の物品。
【請求項18】
ナノ粒子は、銀を含む、請求項1~16のいずれか一項に記載の物品。
【請求項19】
ナノ粒子は、量子ドットを含む、請求項1~16のいずれか一項に記載の物品。
【請求項20】
ナノ粒子は、少なくとも0.5nmで、3nm未満の直径を有する、請求項1~19のいずれか一項に記載の物品。
【請求項21】
ナノ構造は、シリコンを含む、請求項1~20のいずれか一項に記載の物品。
【請求項22】
ナノ構造は、マイクロウェルアレイに対して垂直に延びている、請求項1~21のいずれか一項に記載の物品。
【請求項23】
ナノ構造は、ナノニードルである、請求項1~22のいずれか一項に記載の物品。
【請求項24】
ナノ構造は、ナノワイヤである、請求項1~22のいずれか一項に記載の物品。
【請求項25】
ナノ構造は、ナノロッドである、請求項1~22のいずれか一項に記載の物品。
【請求項26】
ナノ構造は、ナノコーンである、請求項1~22のいずれか一項に記載の物品。
【請求項27】
ナノ構造は、ナノピラーである、請求項1~22のいずれか一項に記載の物品。
【請求項28】
ナノ構造は、少なくとも100nmで、5マイクロメートル未満の長さを有する、請求項1~27のいずれか一項に記載の物品。
【請求項29】
ナノ構造は、少なくとも50nmで、500nm未満の平均断面直径を有する、請求項1~28のいずれか一項に記載の物品。
【請求項30】
マイクロウェルアレイは、ガラスを含む、請求項1~29のいずれか一項に記載の物品。
【請求項31】
マイクロウェルアレイは、シリコンを含む、請求項1~30のいずれか一項に記載の物品。
【請求項32】
マイクロウェルアレイは、フォトリソグラフィーを用いて製造される、請求項1~31のいずれか一項に記載の物品。
【請求項33】
ナノ構造は、半導体を含む、請求項1~32のいずれか一項に記載の物品。
【請求項34】
ナノ構造は、シリコンを含む、請求項1~33のいずれか一項に記載の物品。
【請求項35】
ナノ構造およびマイクロウェルアレイは、実質的に同じ組成を有する、請求項1~34のいずれか一項に記載の物品。
【請求項36】
ウェルは、少なくとも20マイクロメートルで、40マイクロメートル未満の直径を有する、請求項1~
35のいずれか一項に記載の物品。
【請求項37】
ウェルは、少なくとも20ミクロンで、60ミクロン未満の深さを有する、請求項1~
36のいずれか一項に記載の物品。
【請求項38】
マイクロウェルアレイは、ナノ構造の端部に遠位側に位置決めされたナノ粒子をそれぞれ含む複数のウェルを含む、請求項1~
37のいずれか一項に記載の物品。
【請求項39】
マイクロウェルアレイは、ナノ構造の端部に遠位側に位置決めされたナノ粒子をそれぞれ含む、10個から1536個までのウェルを含む、請求項1~
38のいずれか一項に記載の物品。
【請求項40】
ナノ構造は、少なくとも1マイクロメートルで、100マイクロメートル未満のピッチを有する、請求項1~
39のいずれか一項に記載の物品。
【請求項41】
ウェルは、細胞をさらに含む、請求項1~
40のいずれか一項に記載の物品。
【請求項42】
ウェルは、細胞溶解物をさらに含む、請求項1~
41のいずれか一項に記載の物品。
【請求項43】
半透膜は、ポリカーボネートを含む、請求項1~
42のいずれか一項に記載の物品。
【請求項44】
ナノ粒子に電磁放射線を印加するステップを含み、(i)ナノ粒子は、表面プラズモン共鳴、電気共鳴、及び/又は磁気共鳴を介して電磁放射と相互作用し、電磁放射線を変化させるように構成され、(ii)マイクロウェルアレイが、ナノ構造を含むウェルと、該ウェルを封止する半透膜とを備え、ナノ粒子は、該ナノ構造の端部に遠位側に位置決めされ、該ウェルは、10マイクロメートル~50マイクロメートルの範囲から選択された直径を有し、
そして、変化した電磁放射線を測定するステップを含む、方法。
【請求項45】
電磁放射線は、可視光を含む、請求項
44に記載の方法。
【請求項46】
ナノ構造の端部に遠位側に位置決めされたナノ粒子を、検体を含むと疑われる溶液に曝すステップをさらに含み、該ナノ構造及び/又はナノ粒子は、検体と相互作用可能な反応エンティティをさらに含む、請求項
44または45に記載の方法。
【請求項47】
ウェルは、細胞溶解物をさらに含む、請求項
46に記載の方法。
【請求項48】
変化した電磁放射線を測定することによって、検体を決定するステップをさらに含む、請求項
46または47に記載の方法。
【請求項49】
マイクロウェルアレイのウェル内に細胞を位置決めするステップであって、ウェルはさらに、ナノ構造の端部に遠位側に位置決めされたナノ粒子と、該ナノ粒子上に少なくとも部分的にコートされた反応エンティティとを含み、該ウェルは、10マイクロメートル~50マイクロメートルの範囲から選択された直径を有する、ステップと、
ウェルを半透膜で封止する、ステップと、
ウェルを封止した後、溶解バッファを、半透膜を通じてウェルの中に導入し、ウェル内の細胞を溶解して、反応エンティティに結合可能であると疑われる検体を放出するステップと、
該ナノ粒子に電磁放射線を印加するステップであって、ナノ粒子は、表面プラズモン共鳴、電気共鳴及び/又は磁気共鳴を介して電磁放射線と相互作用して電磁放射線を変化させる、ステップと、
変化した電磁放射を測定して、検体を決定するステップと、を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本願は、米国仮特許出願第62/556186号(2017年9月8日出願、名称"Nanosensor Methods and Apparatuses for Determination of Analytes"、発明者"Quan, et al.")の利益を請求するものであり、これは参照により全体としてここに組み込まれる。
【0002】
(技術分野)
本発明は、一般に、いくつかの態様において、例えば、表面プラズモン共鳴、色変化などを介して、分子および他の構造(feature)の決定のためのナノセンサに関する物品および方法に関する。
【背景技術】
【0003】
免疫学的検定は、疾患診断に広範囲に使用されている。従来の免疫学的検定(例えば、酵素結合免疫吸着検定、ウエスタンブロット)は、蛍光標識分子または酵素反応に由来する蛍光または比色分析信号のバルク測定に起因して、検出感度を典型的には100pg/ml以上に制限している。さらに、現在の免疫学的検定は、多数の細胞についてのみ実施できる。既存の単細胞技術は、フローサイトメトリー法を含み、これは抗体の選択によって制限されており、典型的なフローサイトメトリー法は、利用可能な抗体の10%と適合性があるにすぎない。現在利用可能な技術のいずれも、高度に多重化されたフォーマットで単細胞レベルで細胞内分子を検出できない。
【0004】
従って、疾患の予後および薬剤開発のために検出限界の改善が必要である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、一般に、いくつかの態様において、例えば、表面プラズモン共鳴、電気双極子共鳴、磁気双極子共鳴、色変化などを介して、分子および他の構造の決定のためのナノセンサに関する物品および方法に関する。本発明の主題は、いくかの場合、相互に関連する製品、特定の問題に対する代替の解決法、及び/又は1つ以上のシステム及び/又は物品の複数の異なる使用を含む。
【0006】
一態様において、本発明は、一般に物品に関する。1組の実施形態において、物品は、ナノ構造の端部に遠位側に位置決めされたナノ粒子を含むウェルを含むマイクロウェルアレイを備え、ナノ粒子は、表面プラズモン共鳴、電気共鳴及び/又は磁気共鳴を介して入射光と相互作用する。
【0007】
他の組の実施形態によれば、物品は、ウェルを含むマイクロウェルアレイと、ウェル内に含まれるナノ構造の端部に遠位側に位置決めされたナノ粒子を含むナノセンサアレイとを備え、ナノ粒子は、表面プラズモン共鳴、電気共鳴及び/又は磁気共鳴を介して入射可視光と相互作用し、入射可視光を変化させるようにサイズ設定される。
【0008】
他の態様において、本発明は、一般に方法に関する。他の組の実施形態において、物品を組み立てる方法が記載される。該方法は、ナノ構造のアレイを含む第2基板に対してウェルを含むマイクロウェルアレイを含む第1基板を固定することを含み、少なくともいくつかのナノ構造は、ナノ構造の端部に遠位側に位置決めされたナノ粒子を含み、ナノ構造はウェル内に位置決めされる。
【0009】
1組の実施形態において、方法は、ナノ構造の端部に遠位側に位置決めされたナノ粒子に電磁放射線を印加することを含み、ナノ粒子は、表面プラズモン共鳴、電気共鳴、及び/又は磁気共鳴を介して電磁放射と相互作用して電磁放射線を変化させ、そして、変化した電磁放射線を測定することを含む。
【0010】
方法は、他の組の実施形態によれば、マイクロウェルアレイのウェル内に細胞を位置決めすることを含み、ウェルはさらに、ナノ構造の端部に遠位側に位置決めされたナノ粒子と、ナノ粒子に少なくとも部分的にコートされた反応エンティティ(entity)とを含む。他の組の実施形態において、方法はさらに、ウェル内の細胞を溶解して、反応エンティティに結合可能であると疑われる検体を放出することと、ナノ粒子に対して電磁放射線を印加することとをさらに含み、ナノ粒子は、表面プラズモン共鳴、電気共鳴及び/又は電磁共鳴を介して電磁放射線と相互作用して電磁放射線を変化させ、変化した電磁放射線を 測定して検体を決定する。
【0011】
さらに他の組の実施形態は、基板上のナノ構造のアレイの第1光学画像を取得することを含む方法に関するものであり、ナノ構造は、第1光学画像が取得される方向に対して直交する、700nm未満の断面寸法を有し、ナノ構造は、反応エンティティで少なくとも部分的にコートされている。他の組の実施形態において、方法はさらに、反応エンティティと検体との間の相互作用を生じさせることと、ナノ構造のアレイの第2光学カラー画像を取得することと、第1光学画像と第2光学画像との間の色変化を測定することとをさらに含み、色変化は、反応エンティティと検体との間の相互作用によって引き起こされる。
【0012】
1組の実施形態において、方法は、マイクロウェルアレイのウェル内にサンプルを位置決めすることを含み、ウェルは、ナノ構造の端部に遠位側に位置決めされたナノ粒子をさらに備え、さらにナノ粒子に電磁放射線を印加することを含む。表面プラズモン共鳴、電気共鳴及び/又は磁気共鳴を介して電磁放射線と相互作用して電磁放射を変化させ、変化した電磁放射線を測定する。
【0013】
他の組の実施形態は、検体を含むと疑われるサンプルをマイクロウェルアレイのウェルに追加することを含む方法であり、ウェルはさらに、ナノ構造の端部に遠位側に位置決めされたナノ粒子を含み、ナノ粒子は、反応エンティティで少なくとも部分的にコートされている。他の組の実施形態において、方法は、ナノ粒子に電磁放射線を印加することを含み、ナノ粒子は、表面プラズモン共鳴、電気共鳴及び/又は磁気共鳴を介して入射光と相互作用して電磁放射線を変化させ、変化した電磁放射線を測定し、検体との反応エンティティの相互作用を決定する。
【0014】
他の組の実施形態において、方法が、検体を含むと疑われる溶液を、ナノ構造の端部に遠位側に位置決めされたナノ粒子に曝すことを含み、ナノ構造は、検体と相互作用可能な反応エンティティをさらに含み、さらにナノ粒子に電磁放射線を印加することを含み、ナノ粒子は、表面プラズモン共鳴、電気共鳴及び/又は磁気共鳴を介して電磁放射線と相互作用して電磁放射線を変化させ、変化した電磁放射線を測定する。
【0015】
他の組の実施形態に係る方法は、基板上のナノ構造のアレイの第1および第2光学カラー画像を取得することを含み、ナノ構造は、400nm~700nmの断面寸法を有し、そして第1光学カラー画像と第2光学カラー画像との間の色の変化を測定することを含む。
【0016】
本発明の他の利点および新規の特徴は、添付図面と併せて考慮すると、本発明の様々な非限定的な実施形態の下記詳細な説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
本発明の非限定的な実施形態は、概略的でスケールどおりに描かれることを意図していない添付図面を参照して、例として説明している。図面において、図示した同一またはほぼ同一の各コンポーネントは、典型的には単一符号で表現している。明確さのために、全てのコンポーネントが全ての図でラベル付与されておらず、あるいは本発明の各実施形態の全てのコンポーネントが図示されておらず、図示は当業者が本発明を理解できるように必ずしもしていない。
【0018】
【
図1】いくつかの実施形態に係る、ナノセンサと検体との間の相互作用の説明を示すもので、これは入射電磁放射線を変化させる。
【
図2】
図2Aと
図2Bは、いくつかの実施形態に係る、検体と結合する際にナノセンサによって生ずる可視光の変化を示す。
【
図3】いくつかの実施形態に係る、ナノセンサおよび種々の濃度の検体を含む半透膜を備えたマイクロウェルアレイを示し、これが光学光を生成する。
【
図4】いくつかの実施形態に係る、マイクロウェルアレイの説明を示す。
【
図5】約70%の単一細胞捕獲効率でのHEK293細胞の捕獲の例示的な表現を示す。
【
図6】シリコンナノロッドナノセンサの例示的な表現を示す。
【
図7】
図7Aと
図7Bは、暗視野像下のシリコンナノロッドの色の例示的な表現を示す。
【
図8】
図8A~8Dは、いくつかの実施形態に係る、ナノコーン、ナノニードル、ナノワイヤおよびナノ粒子を含む、シリコンナノセンサの複数の形態を示す。
【
図9】
図9A~9Dは、BSAタンパク質の濃度が増加するときのナノセンサの色調のシフトの例示的な表現を示す。
【
図10】
図10A~
図10Cは、ストレプトアビジンの濃度が増加するときのナノセンサの色調のシフトの例示的な表現を示す。
【
図11】
図11A~
図11Cは、ストレプトアビジンの濃度が増加するときの種々の直径を備えたナノセンサの色調のシフトの例示的な表現を示す。
【
図12】
図12は、いくつかの実施形態に係る、~100nmの直径および~400nmの間隔を備えたナノロッドを示す。
【
図13】
図13A~
図13Cは、タンパク質がメタ表面に吸収されるときの、種々の濃度のBSAタンパク質での~100nm直径のナノロッドの色調のシフトの例示的な表現を示す。
【
図14】いくつかの実施形態に係る、~180nmの直径および~420nmの間隔を備えたナノロッドを示す。
【
図15】
図15A~15Cは、タンパク質がメタ表面に吸収されるときの、種々の濃度のBSAタンパク質での~180nm直径のナノロッドの色調のシフトの例示的な表現を示す。
【
図16】
図16Aと
図16Bは、タンパク質が、2次ラベルとして1.8nm直径の金ナノ粒子を備えたメタ表面に吸収されて色シフトを増幅するときの、種々の濃度のBSAタンパク質での~180nmのナノロッドの色調のシフトの例示的な表現を示す。
【
図17】各ウェルに3×3の個々のナノセンサアレイを備えたマイクロウェルアレイの暗視野像の例示的な表現を示す。
【
図18】
図18A~
図18Cは、マイクロウェルアレイおよびナノセンサアレイのセンサチップ上に付与される単細胞懸濁液の20マイクロリットルの液滴を示す。
【
図19】
図19A~
図19Cは、タンパク質濃度に相関する色シフトを誘発するナノセンサ上のタンパク質の結合の例示的な表現を示す。
【
図20】いくつかの実施形態に係る、10個のマイクロウェルアレイを備えた75mm×25mmのガラススライドを示す。
【
図21】
図21A~
図21Cは、マイクロウェルと同じ周期で離間したシリコンナノサイズまたはマイクロサイズのニードルの上にあるナノセンサの例示的な表現を示す。
【
図22】
図22A~
図22Iは、0.1~10pMのタンパク質濃度を検出するためのナノセンサアレイの例示的な表現を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明は、一般に、いくつかの態様において、例えば、表面プラズモン共鳴、電気共鳴、磁気共鳴、色変化などを介して、分子および他の構造(feature)の決定のためのナノセンサに関する物品および方法に関する。これらの物品および方法は、例えば、サンプル検出のために使用できる。本発明のいくつかの態様で説明される物品は、マイクロウェルアレイおよびナノセンサアレイを含む。いくつかの実施形態において、ナノセンサアレイは、単細胞などの検体を含むと疑われるサンプルと相互作用できる、ナノ構造上に位置決めされたナノ粒子を利用できる。ナノ粒子とサンプルとの間の相互作用は、入射可視光の表面プラズモン共鳴及び/又は他のタイプの共鳴によって引き起こされる印加エネルギーの変化、例えば、変化した電磁放射線などによって検出できる。電磁放射線がマイクロウェルアレイおよびナノセンサに印加でき、印加された電磁放射線は、ナノセンサが、検体を含むと疑われるサンプルと相互作用する際に変化し得る。さらに、いくつかの実施形態において、ナノセンサアレイは、ナノ構造を利用してもよく、検体の結合は、光学的または色の変化に基づいて決定してもよい。
【0020】
本発明の特定の態様は、一般に、例えば、細胞または他の供給源(source)から生じる、例えば、タンパク質または核酸などの生体分子を検出するためのシステムおよび方法に関する。いくつかの実施形態において、生体分子は、センサとして使用されるナノニードルまたは他のナノ構造を用いて、定性的及び/又は定量的に決定される。これらは、例えば、ウェルのアレイなどのアレイ内に存在し得る。
【0021】
1組の実施形態において、ナノニードルの端部にある粒子が、狭帯域スペクトルを有する。例えば、反応エンティティを介する、生体分子または他の検体の粒子への結合は、例えば、表面プラズモン共鳴、電気共鳴及び/又は磁気共鳴に起因して、入射光に共鳴する粒子の能力に影響を与えることがある。反応エンティティの例は、抗体、酵素、核酸または、後述するような他のエンティティを含む。共鳴の差を測定することによって、例えば、粒子に光を印加して、屈折及び/又は吸光度を測定することによって、粒子および生体分子についての結合相互作用が決定できる。
【0022】
非限定的な例として、
図1は、検体15が、ナノ粒子25に対して固定化された反応エンティティ20と相互作用し得るシステム10を示す。相互作用は、例えば、特異的または非特異的、共有結合的または非共有結合的などでもよい。ナノ粒子25は、ナノニードル35または他の適切なナノ構造の端部30に位置決めできる。ある場合には、ナノニードルは、ウェル40(例えば、隔離されたウェルまたはマイクロアレイのウェルなど)内に位置決めしてもよく、他の場合には、ナノニードルは、基板の上、必要に応じて適切なナノ構造上に位置決めしてもよく、必ずしもウェル内ではない。光源50からの入射光45が、ナノ粒子25と相互作用でき、プラズモン共鳴効果を介して粒子と相互作用できる。さらに、一部の光55は、例えば、粒子からの屈折を介して、検出器60に向けられる。検出器に到達する光の相違を測定することによって、検体15と反応エンティティ20との間の種々の相互作用が決定できる。
【0023】
他の組の実施形態において、生体分子または他の検体の結合は、例えば、可視光など、色の変化を用いて決定できる。いかなる理論によっても束縛されることを望まないが、特定のタイプのナノニードルまたは他のナノ構造が、基本モードでのみ(例えば、可視光に応答して)振動することが可能であると考えられる。基本モードは、例えば、ナノニードルへの生体分子の結合時に、例えば、反応エンティティに起因して変化することがある。従って、ナノニードルの可視特性の変化(例えば、色及び/又は強度の変化)を用いて、ナノニードルと生体分子の間の結合相互作用を決定できる。
【0024】
非限定的な例として、
図2Aは、システム10を示しており、ウェル25内に位置決めされたナノニードル15および反応エンティティ20は可視光30の色を生成する。検体35は、ナノニードル15または反応エンティティ20と相互作用せず、可視光を生成しない。
図2Bのシステム40において、ウェル25内に位置決めされたナノニードル15および反応エンティティ20が、検体35と結合する。その相互作用により、可視光45によって生成される光学色または外見の変化が生じ、それは可視光30とは異なることがある。
【0025】
ある場合には、生体分子(または他の検体)は細胞から生じる。例えば、細胞は、マイクロウェルプレートのウェル内で溶解でき、ここで説明するようなセンサとして使用されるナノニードルまたは他のナノ構造を用いて、定性的及び/又は定量的に決定できる。ある場合には、粒子も存在してもよい。生体分子は、例えば、ここで説明するように、プラズモン共鳴効果、色変化などを用いて決定できる。ある場合には、細胞は、例えば、膜を用いて粒子の中に導入され、その中に封止されてもよい。例えば、細胞溶解物から他方のウェルと一方のウェルの汚染を防止するために、細胞は、別個のウェル内で個別に溶解できる。ある場合には、半透膜を使用して、溶解試薬(例えば、溶解バッファ)の入場を許容して、ウェルに入ることができるが、溶解物がウェルから出るのを防止する。こうして、個々の細胞の溶解物は、特定の実施形態に従って個々に決定できる。
【0026】
図3は、ウェル25,30を含むシステム10の非限定的な例を示す。細胞15および細胞20は、ウェル25,30内にそれぞれ位置決めされる。細胞15,20は、例えば、ウェル25,30への溶解緩衝液(バッファ)の添加時に溶解できる。マイクロウェルアレイ35上には、半透膜55が位置決めされ、ウェル25およびウェル30の内容物の汚染を防止する。半透膜は、例えば、細胞をウェルに導入した後、そして細胞の溶解の前または後に追加してもよい。
【0027】
細胞15からの検体とのナノ粒子45の相互作用は、光学光60を生じさせるとともに、細胞20からの検体(細胞15よりも高濃度)とのナノ粒子45の相互作用は、光学光65を生じさせる。例えば、入射光が印加されことがあり、光の一部は、ナノニードルによって吸収され得る。検体の相違(たとえば、濃度、タイプなど)は、異なる光学光または異なるウェルまたはナノニードルの外見を生じさせることがある。他の例として、ウェルは、ナノニードル40およびナノニードル35の端部50に位置決めされたナノ粒子45を含むナノセンサを備えてもよい。入射光が、プラズモン共鳴効果によってこうしたシステムと相互作用でき、これは、検体とナノ粒子との間の異なる相互作用(例えば、反応エンティティを介して)に基づいて異なる屈折光または外見を生じさせ得る。こうした光を測定することによって、検体は決定できる。
【0028】
上記は、本発明の特定の実施形態の種々の非限定的な例を表す。しかしながら、他の実施形態も可能である。従って、より一般には、本発明の種々の態様は、例えば、表面プラズモン共鳴、色変化などを介して、分子および他の構造の決定のためのナノセンサに関連してここで説明している。
【0029】
本発明のいくつかの物品および方法は、ナノ構造上、例えば、ナノ構造の端部に遠位側に位置決めされる粒子(例えば、ナノ粒子)を含むセンサに関する。ある場合には、粒子は、検体と相互作用可能であり、例えば、後述するように、検体とナノ構造及び/又は粒子の間の相互作用は、光が粒子とどのように相互作用するかを決定することによって(例えば、定性的及び/又は定量的に)決定できる。例えば、光は、表面プラズモン共鳴効果を介して粒子と相互作用することができ、光の変化を使用して検体を決定できる。ある場合には、例えば、電気共鳴及び/又は磁気共鳴など、他の共鳴が発生することがある。
【0030】
本発明の種々の実施形態において、種々のサンプルが決定できる。例えば、特定の態様において、サンプルは細胞を含んでもよい。ナノセンサは、サンプル、例えば、細胞を光学的に調査または研究するために使用できる。ある場合には、例えば、検体またはサンプルの存在または濃度など、細胞または他のサンプルの特性が、ナノセンサ及び/又はナノセンサ上の反応エンティティと相互作用してもよく、これは光学的に決定できる。使用できる光学的調査手法の例は、蛍光、リン光、表面プラズマ共鳴、表面プラズモン共鳴、局在表面プラズマ共鳴、ラマン分光、表面増強ラマン分光などが含んでもよいが、これらに限定されない。
【0031】
特定の実施形態において、ナノ粒子は、金属、例えば、金(gold)、銀、銅などを含む。いくつかの実施形態によれば、ナノ粒子は、金を含む。他の組の実施形態において、ナノ粒子は、銀、量子ドット、または半導体ナノ粒子を含む。
【0032】
いくつかの実施形態では、粒子は、表面プラズモン共鳴効果を介して入射可視光と相互作用し、例えば、入射可視光を変化させるようにサイズ設定される。例えば、粒子との相互作用の際、入射光の一部が吸収、反射、屈折などすることがある。これにより、光に変化を生じさせ、これは何らかの方法で測定できる。さらに、ある場合には、粒子は、電気及び/又は磁気共鳴効果を介して入射可視光と相互作用するようにサイズ設定される。
【0033】
ある場合には、粒子は、ナノ粒子でもよい。例えば、粒子は、約1マイクロメートル未満の特徴的な特性直径(characteristic diameter)を有してもよい。粒子は、球形でも非球形でもよい。特性直径は、非球形粒子と同じ体積を有する完全な球の直径と考えてもよい。特定の実施形態によれば、ナノ粒子の直径は、少なくとも0.5nm、少なくとも1.0nm、少なくとも1.5nm、少なくとも2.0nm、少なくとも2.5nm、少なくとも3nm、少なくとも4nm、少なくとも5nm、少なくとも7nm、少なくとも10nm、少なくとも30nm、少なくとも100nm、少なくとも300nmなどである。いくつかの実施形態において、ナノ粒子の直径は、1000nm未満、500nm未満、未満、300nm未満、100nm未満、50nm未満、30nm未満、10nm未満、7nm未満、5nm未満、4nm未満、3.0nm未満、2.5nm未満、2.0nm未満、1.5nm未満、または1.0nm未満である。さらに、これらの任意の組合せも可能であり、例えば、特性直径は、0.5~3.0nmの範囲内でもよい。
【0034】
いくつかの実施形態において、粒子及び/又はナノ構造は、反応エンティティで少なくとも部分的にコートされる。用語「反応エンティティ」は、例えば、ある部材の特性、例えば、化学的特性、光学的特性、機械的特性、振動特性などの検出可能な変化を引き起こすような方法で検体と相互作用できる任意のエンティティを参照する。反応エンティティと検体との間の相互作用は、特異的または非特異的な結合でもよく、種々の相互作用を含んでもよい。検体との反応エンティティの相互作用は、例えば、光の変化に起因して、ここで議論するように決定可能である。
【0035】
いくつかの実施形態において、反応エンティティは、検体が結合する結合パートナーを含むことができる。反応エンティティは、検体の特異的または非特異的な結合パートナーを含むことができる。例えば、反応エンティティは、化学物質または生化学物質、例えば、金属、核酸、抗体、アプタマー、糖、炭水化物、タンパク質、ポリマー、オリゴヌクレオチド、触媒、量子ドットなどもよい。非限定的な例として、特定の実施形態において、ナノ粒子を少なくとも部分的にコートする反応エンティティは、抗体またはそのフラグメントである。抗体は、モノクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体などを含む任意の適切な抗体でもよい。いくつかの実施形態において、反応エンティティは、検体に標識化された発色性基質によって誘導された酵素反応生成物を含む。発色性基質は、例えば、3,3’,5,5’-テトラメチルベンジジン(TMB)、3,3’-ジアミノベンジジン(DAB)、2,2’-アジノ-ジ-(3-エチルベンゾチアゾリン-6-スルホン酸)(ABTS)などを含んでもよい。
【0036】
結合パートナーは、特定の検体との結合を受けることができる分子でもよく、当業者に知られているように、特異的、半特異的および非特異的な結合パートナーを含む。用語「特異的に結合」は、結合パートナー(例えば、タンパク質、アプタマー、核酸、抗体など)を参照する場合、異種分子の混合物における結合ペア(例えば、タンパク質およびその他の生物製剤)の1つまたは他のメンバーの存在及び/又は同一性を決定する反応を参照する。こうして、例えば、受容体(receptor)/リガンド結合ペアの場合、リガンドは、分子の複雑な混合物からその受容体を特異的及び/又は優先的に選択するようになり、またはその逆も同様である。酵素が、その基質に特異的に結合し、核酸が、その相補体に特異的に結合し、抗体がその抗原に特異的に結合するようになる。他の例は、これらの相補体に特異的に結合する(ハイブリッド化する)核酸、これらの抗原に特異的に結合する抗体などを含む。結合は、イオン相互作用、共有結合相互作用、疎水性相互作用、ファンデルワールス相互作用、及び/又は水素結合などを含む(しかし、これらに限定されない)種々の機構の1つ以上によるものでよい。
【0037】
別の例として、反応エンティティは、白金を含んでもよく、これは水素を決定するために使用できる。さらに他の例として、反応エンティティは、ヒドロゲルを含んでもよく、これは水または湿度を決定するために使用できる。反応エンティティの非限定的な例は、国際特許出願公開第2015/175398号に開示されたものを含み、これは、全ての目的で参照により全体としてここに組み込まれる。
【0038】
ある場合には、1つ以上の粒子は、例えば、1つ以上のリンカー(linker)またはスペーサー(spacer)を介して、直接的または間接的にナノ構造に対して固定化してもよい。例えば、粒子は、側部または端部など、ナノ構造上の任意の適切な場所に付着してもよい。一例として、ナノ構造は、第1端部で基板に付着してもよく、粒子は、第1端部から遠位側にある第2端部に付着してもよい。
【0039】
ナノ構造は、任意の適切な形状及び/又はサイズを有してもよい。ある場合には、例えば、ナノ構造は、ナノニードル、ナノワイヤ、ナノロッド、ナノコーンなどでもよい。例えば、
図8を参照。他の形状、例えば、ナノリボン、ナノフィラメント、ナノチューブ、ナノピラーなども可能である。特定の実施形態において、ナノ構造は、垂直に整列しているが、他の角度または整列も可能である。
【0040】
いくつかの実施形態において、ナノ構造は、基板との付着の端部またはポイントから決定される長さ、約100マイクロメートル未満、約50マイクロメートル未満、約30マイクロメートル未満、約20マイクロメートル未満、約10マイクロメートル未満、約5マイクロメートル未満、約3マイクロメートル未満、約2マイクロメートル未満、約1マイクロメートル未満、約500nm未満、約300nm未満、約200nm未満、約100nm未満、約50nm未満、約30nm未満、約20nm未満、約10nm未満などの長さを有する。ある場合には、その長さは、少なくとも約10nm、少なくとも約20nm、少なくとも約30nm、少なくとも約50nm、少なくとも約100nm、少なくとも約200nm、少なくとも約300nm、少なくとも約500nm、少なくとも約1マイクロメートル、少なくとも約2マイクロメートル、少なくとも約3マイクロメートル、少なくとも約5マイクロメートル、少なくとも約10マイクロメートル、少なくとも約20マイクロメートル、少なくとも約30マイクロメートル、少なくとも約50マイクロメートル、少なくとも約100マイクロメートルなどでもよい。これらの任意の組合せが可能であり、例えば、ナノ構造の長さは、0.2~2マイクロメートルの間でもよい。
【0041】
ナノ構造は、任意の適切な断面形状、例えば、正方形、円形、三角形、楕円形、多角形、星形、不規則な形状などを有してもよい。ナノ構造は、その全長にわたって同じ断面形状を維持してもよく、または、ナノ構造の異なる部分に異なる断面形状が存在してもよい。さらに、ナノ構造は、任意の適切な断面直径を有してもよい。断面直径は、一定でもよく(例えば、ナノニードルまたはナノロッドのように)、または変化してもよい(例えば、ナノコーンのように)。平均直径は、例えば、約1000nm未満、約500nm未満、約300nm未満、約200nm未満、約100nm未満、約50nm未満、約30nm未満、約20nm未満、約10nm未満などでもよい。ある場合は、長さは、少なくとも約10nm、少なくとも約20nm、少なくとも約30nm、少なくとも約50nm、少なくとも約100nm、少なくとも約200nm、少なくとも約300nm、少なくとも約500nm、少なくとも約1000nmなどでもよい。種々の実施形態において組合せも可能である。例えば、ナノ構造の平均直径は、50nm~300nmの間でもよい。
【0042】
ナノ構造は、任意の適切な材料で形成されてもよく、それが、例えば、垂直に取り付けられる基板と同じでも異なってもよい。一組の実施形態において、ナノ構造は、シリコン及び/又は他の適切な半導体材料(例えば、ゲルマニウム)で形成される。材料の追加の非限定的な例は、金属(例えば、ニッケルまたは銅)、シリカ、ガラスなどを含む。ある場合には、ナノ構造(基板に取り付けられてもよい)は、単一の材料で形成できる。
【0043】
ナノ構造を形成するために、任意の適切な方法が使用できる。例は、これらに限定されないが、リソグラフィー技術、例えば、電子ビームリソグラフィー、フォトリソグラフィー、X線リソグラフィー、極端紫外線リソグラフィー、イオン投影リソグラフィーなどを含む。他の例として、いくつかの実施形態において、ナノ構造は、適切なエッチャントでエッチングされやすい1つまたは複数の材料で形成してもよい。例えば、ナノ構造は、HF(フッ化水素酸)またはBOE(緩衝酸化物エッチング)を用いてエッチングできるシリカまたはガラスなどの材料を含んでもよい。他の例として、ナノ構造は、銅、鉄、ニッケル及び/又は鋼などの金属を含んでもよく、これらは、HCl(塩酸)、HNO3(硝酸)、硫酸(H2SO4)などの酸、及び/又は、他のエッチング化合物、例えば、塩化第二鉄(FeCl3)や硫酸銅(CuSO4)などを用いてエッチングできる。さらに他の例として、ナノ構造は、シリコンまたは他の半導体材料を含んでもよく、これらは、EDP(エチレンジアミンおよびピロカテコールの溶液)、KOH(水酸化カリウム)、及び/又はTMAH(水酸化テトラメチルアンモニウム)などのエッチャントを用いてエッチングできる。ナノ構造は、ある場合には、プラスチックまたはポリマー、たとえば、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリペルフルオロブテニルビニルエーテルなどを含んでもよく、これらは、KOH(水酸化カリウム)及び/又はここで記載されているような他の酸を用いてエッチングできる。
【0044】
ナノ構造は、いくつかの実施形態において、1つの材料または2つ以上の材料を含むか、または本質的にそれからなるものでもよい。例えば、一実施形態において、ナノ構造は、ここで議論しているように、エッチング可能な材料の単一ピースまたは固体ピースで形成される。
【0045】
本発明の特定の実施形態はまた、一般に、マイクロウェルアレイに関するものであり、例えば、これらは1つ以上のウェルを含み、これらは円形または非円形でもよい。任意の数のウェルが存在してもよく、例えば、少なくとも1個、少なくとも2個、少なくとも5個、少なくとも10個、少なくとも25個、少なくとも50個、少なくとも100個、少なくとも200個、少なくとも500個などでもよい。マイクロウェルはまた、ここで説明するような1つ以上のセンサを含んでもよく、例えば、1つ以上のナノニードルまたは他のナノ構造を含んでもよい。いくつかの実施形態において、マイクロアレイは、市販のANSI/SLAS規格に従って寸法設定してもよく、例えば、6ウェル、12ウェル、24ウェル、48ウェル、96ウェル、384ウェルまたは1536ウェルなどを備えてもよい。マイクロウェルアレイは、プラスチックまたはポリマー(例えば、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、シクロオレフィンなど)、シリカ、ガラス、金属などを含む適切な材料で形成してもよい。
【0046】
特定の実施形態において、ウェルが、10ミクロン~50ミクロンの範囲の直径を有してもよい。本発明のいくつかの実施形態によれば、ウェルの直径は、少なくとも10ミクロン、少なくとも20ミクロン、少なくとも30ミクロン、または少なくとも40ミクロンである。特定の実施形態において、ウェルの直径は、50ミクロン未満、40ミクロン未満、30ミクロン未満、または20ミクロン未満である。これらの任意の組合せも可能であり、例えば、ウェルは、20~40ミクロンの直径を有してもよい。
【0047】
特定の実施形態によれば、ウェルの深さは、少なくとも20ミクロン、少なくとも30ミクロン、少なくとも40ミクロン、または少なくとも50ミクロンである。本発明の特定の態様において、ウェルの深さは、60ミクロン未満、50ミクロン未満、40ミクロン未満、または30ミクロン未満である。これらの任意の組合せも可能であり、例えば、ウェルは、20ミクロン~60ミクロンの範囲の深さを有してもよい。
【0048】
いくつかの実施形態において、ウェルは、約1000マイクロメートル以下、約700マイクロメートル以下、約500マイクロメートル以下、約300マイクロメートル以下、約100マイクロメートル以下、約50マイクロメートル以下、約40マイクロメートル以下、約30マイクロメートル以下、約25マイクロメートル以下、約20マイクロメートル以下、約15マイクロメートル以下、約10マイクロメートル以下、約5マイクロメートル以下、約3マイクロメートル以下、約2マイクロメートル以下、約1マイクロメートル以下などのピッチ(またはウェル間の間隔)を有してもよい。ある場合には、ピッチは、少なくとも約1マイクロメートル、少なくとも約3マイクロメートル、少なくとも約5マイクロメートル、少なくとも約10マイクロメートル、少なくとも約15マイクロメートル、少なくとも約20マイクロメートル、少なくとも約25マイクロメートル、少なくとも約30マイクロメートル、少なくとも約40マイクロメートル、少なくとも約50マイクロメートル、少なくとも100マイクロメートル、少なくとも300マイクロメートル、少なくとも500マイクロメートル、少なくとも700マイクロメートル、少なくとも1000マイクロメートルなどでもよい。さらに、これらの任意の組合せも可能であり、例えば、ピッチは、約10マイクロメートル~100マイクロメートルの間でもよい。
【0049】
ある場合には、マイクロウェルアレイは、1つ以上の細胞を含むように構成されてもよい。例えば、細胞から生じる1つ以上の溶解物は、ここで説明するような1つ以上のセンサを用いて、1つ以上のウェルで決定してもよい。しかしながら、細胞(または細胞溶解物)は必要とされず、本発明の他の実施形態は、生物学的および非生物学的検体を含む他の供給源から生じる溶解物に関するものでもよいことは理解すべきである。
【0050】
ある場合には、マイクロウェルアレイは、ウェル当り1つの細胞、またはウェル当り2つ以上の細胞を有するように投入されてもよい。様々なウェルは、存在する同じ数または異なる数の細胞を有してもよい。細胞は、単離された細胞、細胞凝集体、または細胞培養物中に、細胞を含む組織構築物中に見られる細胞などでもよい。細胞の例は、これらに限定されないが、細菌または他の単細胞生物、真核細胞、植物細胞、または動物細胞を含む。細胞が動物細胞である場合、細胞は、例えば、無脊椎動物細胞(例えば、ミバエ(fruit fly)由来の細胞)、魚細胞(例えば、ゼブラフィッシュ細胞)、両生類細胞(例えば、カエル細胞)、爬虫類細胞、鳥細胞、またはヒトまたは非ヒト哺乳動物でもよい。細胞が多細胞生物に由来する場合、細胞は、生物の任意の部分に由来してもよい。
【0051】
いくつかの実施形態において、例えば、半透膜などの膜を用いて、1つ以上の細胞を1つ以上のウェルに追加し、必要に応じて所定場所で封止する(例えば、異なるウェル間の汚染または相互作用を防止するため)。しかしながら、いくつかの実施形態によれば、細胞は、ウェル内で溶解されて、1つ以上の対象検体、例えば、タンパク質、核酸などを放出してもよい。
【0052】
細胞を溶解するために種々の手法を使用してもよい。例えば、細胞は、溶解化学物質または細胞溶解緩衝液(例として、界面活性剤、例えば、トリトン-X(Triton-X)またはSDSなど、酵素、例えば、リゾチーム、リソスタフィン、チモラーゼ(zymolase)、セルラーゼ、ムタノリシン、グリカナーゼ、プロテアーゼ、マンナーゼ、プロテイナーゼKなど)、または物理的条件(例えば、超音波、紫外光、機械的攪拌など)への露出により溶解してもよい。もし溶解化学物質を使用する場合、細胞を追加する前及び/又は後に、溶解化学物質をウェルに追加してもよい。ある場合には、例えば、ウェル内に細胞を収納するために、膜を追加する前または後に、溶解化学物質を追加してもよい。ある場合には、膜は、透過性及び/又は半透過性であり、これは溶解化学物質の侵入を促進することがある。
【0053】
本発明のいくつかの実施形態は、一般に、例えば、ウェル内に細胞または他のサンプルを収納するために、マイクロウェルアレイ及び/又はナノ構造基板に付着できる半透膜に関する。特定の場合において、半透膜は、細胞の通過を防止するが、より小さな化合物の通過を許容するようにサイズ設定される。
【0054】
本発明の特定の実施形態において、半透膜が、マイクロウェルアレイとナノ構造基板との間、またはマイクロウェルアレイまたはナノ構造基板の上に位置決めできる。ある場合には、半透膜は、マイクロウェルアレイ及び/又はナノ構造基板から除去できる。特定の実施形態において、半透膜は、顕微鏡法、例えば、暗視野顕微鏡法または他の光学顕微鏡手法などによって評価される。
【0055】
例えば、種々の透過性(permeabilities)を有する種々の半透膜が使用できる。例えば、半透膜は、親水性または疎水性、多孔性または無孔性などでもよい。特定の実施形態において、半透膜は、例えば、ポリカーボネートなどのポリマーを含んでもよい。半透膜の他の例は、陽イオン交換膜、陰イオン交換膜などを含む。
【0056】
前述のように、物品および方法の実施形態は、マイクロウェルアレイに直接的または間接的に関連するナノ構造基板を含んでもよい。本発明のいくつかの実施形態において、ナノ構造基板は、ここで説明する複数のナノセンサを含む。特定の実施形態によれば、マイクロウェルアレイおよびナノ構造基板は、分離可能である。ある場合には、工具を使用することなく分離が実施できる。本発明の他の実施形態において、マイクロウェルアレイおよびナノ構造基板は分離不可能である。本発明の特定の実施形態において、マイクロウェルアレイおよびナノ構造基板は、例えば、ナノセンサがマイクロウェルアレイの少なくとも1つのウェルに存在するように、互いに直接取り付けられる。
【0057】
いくつかの実施形態において、例えば、ここで議論するように検体を決定するために、ナノセンサに光を印加してもよい。ある場合には、光は、表面プラズモン共鳴、及び/又は他の共鳴、例えば、電気共鳴及び/又は磁気共鳴などを介して、ナノセンサ(例えば、ナノセンサ内のナノ粒子)と相互作用してもよく、相互作用の効果は、例えば、光の屈折及び/又は吸光度を決定することによって、決定してもよい。一組の実施形態において、ナノセンサに印加される光は、例えば、He-Neレーザなどのレーザからの平面偏光光を含む入射ビームでもよい。他のレーザも市販されている。
【0058】
ある場合には、入射光は、基板表面、例えば、ある粒子のシリコン表面または金属表面(例えば、金)などに入射する。ある場合には、ナノセンサとの検体の相互作用(例えば、反応エンティティを介して)は、入射光の屈折率または他の特性を変化させることがあり、これは、例えば、検出器を用いて決定できる。例えば、特定の実施形態において、局在化表面プラズモン振動は、ナノセンサに光学的変化を生じさせることができ、これらは、例えば、紫外光及び/又は可視光の領域内で吸収を発生することがある。これらは、検体と反応エンティティ、例えば、タンパク質または核酸などとの間の結合または他の相互作用を決定するために、決定および使用できる。
【0059】
ある場合には、光は、顕微鏡及び/又は分光計、または他の光学検出器を用いて検出できる。分光計を含む種々の適切な光学検出器が市販されている。ある場合には、例えば、相互作用または検出を容易にするために、他の光学コンポーネントが存在することがある。光学コンポーネントの例は、これらに限定されないが、導波路、光センサ、光検出器、光ファイバなどを含む。
【0060】
しかしながら、ここで説明するような表面プラズモン共鳴効果に加えて、またはその代わりに、他の検出方法が利用可能であることは理解すべきである。例えば、いくつかの実施形態において、検体が、ナノ構造(即ち、これらはナノ粒子などの粒子を有してもよく、有さなくてもよい)に対して固定化された反応エンティティと相互作用でき、光学的外見の変化、例えば、色の変化が決定でき、反応エンティティへの検体の結合を決定できる。任意の適切な方法、例えば、光学顕微鏡法、蛍光分光法などを使用して、光学的外見の変化を決定してもよい。
【0061】
本発明の特定の実施形態において、検体が、ナノセンサと相互作用可能であり、ナノセンサが電気共鳴または磁気共鳴を介して入射光と相互作用するときに光学的外見の変化を引き起こすことがある。いかなる理論にも束縛されることを望まないが、電気共鳴または磁気共鳴が、ナノ粒子などのナノセンサまたはその一部との光の相互作用により生ずることがある。ある場合には、例えば、適切な電場または磁場の印加の際、共鳴が変化することがある。種々の電場及び/又は磁場発生器が容易に市販されている。
【0062】
ある場合には、周期的構造でのナノ構造間の距離またはピッチは、例えば、ナノ構造がメタ表面を形成するように制御できる。例えば、ピッチは、入射光の波長よりも小さくなるように設定してもよい。例えば、ピッチは、700nm未満、600nm未満、500nm未満でもよく、及び/又は、400nm超、500nm超、または600nm超でもよい。例えば、ピッチは、400nm~500nmの間でもよい。ナノ構造は、ここで提供される寸法のいずれかを有してもよい。ある場合には、ナノ構造の平均断面直径は、入射光の波長より小さい。
【0063】
いずれの理論にも束縛されることを望まないが、個々のナノ構造からの散乱光は、干渉することがあり、干渉の量は、ナノ構造に結合した検体または他のエンティティに対して敏感であることがある。こうして色の変化または他の光学特性の変化を使用して、検体相互作用の変化を決定できる。
【0064】
例えば、赤外光または紫外光を印加する場合、他のピッチが使用できることは理解すべきである。例えば、ピッチは、1000nm未満、約500nm未満、約300nm未満、約200nm未満、約100nm未満、約50nm未満、約30nm未満、約20nm未満、約10nm未満などでもよく、及び/又は、ピッチは、少なくとも約10nm、少なくとも約20nm、少なくとも約30nm、少なくとも約50nm、少なくとも約100nm、少なくとも約200nm、少なくとも約300nm、少なくとも約500nm、少なくとも約1000nmなどでもよい。これらの任意の組合せも種々の実施形態で可能である。
【0065】
国際特許出願公開第2015/175398号は、参照によりその全体でここに組み込まれる。さらに、米国仮特許出願第62/556186号(2017年9月8日出願、名称"Nanosensor Methods and Apparatuses for Determination of Analytes"、発明者"Quan et al.")も参照によりその全体でここに組み込まれる。
【0066】
下記の例は、本発明の特定の実施形態を例示することを意図しており、本発明の全範囲を例示するものではない。
【0067】
(例1)
シリコンナノ構造を、ラベルフリーのナノセンサとして製造して使用した。シリコンナノ構造を使用する利点は、製造プロセスがCMOS(相補的金属酸化膜半導体)と互換性があり、大量生産が可能であることである。製造したシリコンナノ構造は、例えば、この例では
図6に示すように、直径が50~300nmの間であり、高さが0.2~2ミクロンの間であるナノロッドの形態にできる。暗視野像の下で異なる直径を持つナノロッドの色は、種々のスペクトル色を表示する(
図7A~7Bを参照)。250nm未満の直径では、各ナノロッドは、独特の色を有する。直径が約300nmより大きい場合、色スペクトルは同じようになる。シリコンナノ構造はまた、
図8A~
図8に示すように、例えば、円錐、ニードル、ワイヤおよび粒子など、他の形態をとることもできる。使用した寸法は、50nm~1マイクロメートルの範囲である。
【0068】
シリコンナノロッドの感度を検査するために、チップまたはマイクロウェルアレイを、エタノール中2%APTM溶液(v/v)を用いて20分間機能化(functionalized)した。次に、10mMグルタルアルデヒド、10mMシアノ水素化ホウ素ナトリウム、および1/1000希釈した抗BSAをマイクロウェルアレイに滴下し、2時間培養した。そしてマイクロウェルアレイをすすいだ。様々な濃度のBSA溶液をナノセンサに滴下した。マイクロウェルアレイを脱イオン水で洗浄し、20倍の対物レンズを備えた暗視野顕微鏡で撮像した。
図9A~
図9Dに示すように、各ナノセンサの色調は、BSAタンパク質の濃度が増加すると、赤(即ち、波長の増加)にシフトする。
【0069】
(例2)
この例では、様々な濃度のストレプトアビジンを検査した(
図10A~
図10Cを参照)。ストレプトアビジン濃度が増加すると、色スペクトルは赤色シフトを有する。ストレプトアビジンの場合、各シリコンナノセンサは個別に動作する。従って、80,100,120,140,160,180,200,220および240nmの直径の9個の異なるシリコンナノロッドを製作し、
図11A~
図11Cに示すように、この例では様々な濃度のストレプトアビジン溶液に対するそれらの色応答を検査した。各シリコンナノセンサ間の間隔は5マイクロメートルであった。
【0070】
ナノセンサ間の距離が光子波長未満に減少した場合、個々のナノロッドからの散乱光は干渉し、集合的にシリコンのメタ表面を形成する。メタ表面は、センサとして機能し、タンパク質濃度を検出するために使用できる。例えば、
図12に示すように、各ナノロッドの直径が~100nmである場合、間隔は~400nmである。これにより、脱イオン水中で概して緑色を生成し、タンパク質がその表面に吸収され、
図13A~
図13Cに示すように、全体の色が赤色シフトする。
【0071】
個々のナノロッドの直径は、~180nmに減少し(
図14を参照)、間隔は、~420nmであった。全体的な色相は、脱イオン水中でオレンジグリーンであり、タンパク質がその表面に吸収されると、
図15A~
図15Cに示すように赤色シフトした。さらに、抗BSAで機能化された直径1.8nmの金粒子を、メタ表面ナノセンサからの色シフトを増幅するための二次標識として使用した。ナノ粒子の結合に起因した色相のシフトは、分子検体の結合に起因するシフトよりも1桁大きい(30nm対3nm)(
図16A~16B)。こうした色シフトは、例えば、適切な比色検出器を用いて定量化できる。
【0072】
(例3)
単細胞中のタンパク質の発現を検出するために、この例では、電子ビームリソグラフィーおよび反応性イオンエッチングを用いて、シリコンウェハ上にシリコンナノセンサを製作した。2%950K PMMA(A2)の単層を使用した。ウェハは、最初に150℃で30分間脱水した。次にPMMAを1600rpmで40秒間スピン回転し、100nmの厚さにした。ウェハは、200℃で2分間予備焼成した。ELIONIX F125を、125keVで1800マイクロクーロン/cm
2の線量で使用した。レジストは、1:3のメチルイソブチルケトン:イソプロピルアルコール(v/v)中で30秒間現像し、イソプロピルアルコール中ですすいだ。そしてウェハを熱蒸発器を用いて30nmのアルミナでコートし、熱アセトン中で3時間リフトオフした。そしてSTS-RIEを用いて2分間ウェハをエッチングした。
図17に示すように、各ウェル内に3×3の個々のナノセンサアレイを備えたマイクロウェルアレイを暗視野撮像で解析した。3×3グループ中の各ナノセンサは、僅かに異なる寸法を有するため、異なる色のように見えた。
【0073】
(例4)
この例では、単細胞懸濁液(細胞濃度20000個/mL)を作成し、20マイクロリットルをマイクロウェルアレイに滴下した。細胞は、マイクロウェルの幾何形状に対して敏感な捕集効率でマイクロウェルの中に拡散した。
【0074】
細胞をマイクロウェルアレイに投入する前に、マイクロウェルアレイをエタノール中の2%APTMS(v/v)で10分間培養した。マイクロウェルアレイをエタノールで完全にすすぎ、窒素ガスでブロー乾燥した。次に、10mMグルタルアルデヒド、10mMシアノ水素化ホウ素ナトリウム、および1/1000希釈の抗ベータ-アクチンをマイクロウェルアレイの中に滴下し、2時間培養した。そしてマイクロウェルアレイを脱イオン水ですすいだ。
図18A~
図18Cに示すように、マイクロウェルおよびナノセンサの両方を有するセンサチップ上に、単細胞懸濁液の液滴(20マイクロリットル)を付与した。チップ上に細胞を10分間播種した後、親水性の半透膜(10nmの細孔サイズと6ミクロン厚さのポリカーボネート膜)をマイクロウェルアレイに付着した。膜は、親水性に起因して表面を封止した。次に細胞溶解バッファの液滴をメンブレンに付与し、個々のマイクロウェルの中に通過させた。細胞は個々のマイクロウェル内で溶解し、ターゲットタンパク質をナノセンサで捕捉した。ナノセンサ上のタンパク質の結合は、色シフトを誘発し、それはタンパク質濃度と相関関係があり、
図19A~
図19Cに示す。
【0075】
(例5)
この例では、単細胞から複数のタンパク質を検出するために、複数のマイクロウェルアレイをガラススライドに集積した。単一のマイクロウェルアレイは、1cm×1cmのサイズを有し、1000個の細胞トラップを収納し、各マイクロウェル内にナノセンサが組み込まれている。
図20に示すように、75mm×25mmのガラススライドが、10個のマイクロウェルを受け入れた。各マイクロウェルは、異なる抗体で機能化した。従って、10個のマイクロウェルを備えたスライドガラスは、1000個の単細胞の10グループで10種類の異なるタンパク質を検出できる。
【0076】
単細胞の同じグループ内の複数のタンパク質を検出するために、シリコンのナノサイズまたはマイクロサイズのニードルの上にナノセンサを製作した。ナノセンサは、金、銀またはシリコンを使用した。ナノニードルは、マイクロウェルと同じ周期で間隔設定した(
図21A~
図21Cを参照)。従って、各ナノニードルは、各マイクロウェルと整列できる。各ナノニードルの上にあるナノセンサは、各マイクロウェルからの細胞溶解におけるタンパク質濃度を検出した。単細胞の同じグループからの複数のタンパク質を分析するために、異なる抗体で機能化された異なるナノニードルを同じマイクロウェルアレイと連続的に接触させた。
【0077】
(例6)
溶液中の検体がサブpMの濃度レベルに達した場合、最大数の1つの検体分子のみが個々のナノセンサを結合するために利用できるが、アレイ内の多くのナノセンサは結合した分子を有していない。この検出方式では、ナノセンサからの信号(例えば、色変化、蛍光)の閾値レベルが、1または0のいずれかに割り当て可能である。溶液中の検体の濃度は、1の信号割り当てを有するナノセンサの数を直接計数することで導出可能であり、従って、超低濃度における従来のバルク比色分析または蛍光測定に固有のノイズ信号を抑制する。
【0078】
ナノセンサアレイが1~10マイクロメートルの範囲の典型的なピッチを有するため、10000~1000000個のナノセンサを小さなエリア(例えば、1mm×1mm)に密集して詰め込むことが可能である。
図22A~
図22Iは、この方式下でのナノセンサアレイの光信号を図示する。
図22A~
図22Iにおいて、ナノセンサアレイの16個のブロックをシリコンチップ上に製作した。各ブロックは、2マイクロメートルの間隔で32×32個のナノセンサのマトリクスを有する。各ナノセンサは、直径95nm、長さ200nmのナノロッド形状を有する。
図22Aは、暗視野撮像下のチップを示し、各ナノセンサは、カラーカメラによって収集された緑色の散乱スポットを示す。ナノチップは、95%エタノール中の2%(3-アミノプロピル)トリメトキシシラン(APTMS)で10分間機能化し、エタノールで洗浄し、80℃で2時間加熱した。
【0079】
そしてチップを10mMのグルタルアルデヒドおよび10mMのシアノ水素化ホウ素ナトリウムで1時間機能化した。センサ表面は、1マイクログラム/mlのタウタンパク質でコートした。そして様々な濃度の抗タウタンパク質を検出ターゲットとしてチップ上に流した。抗タウタンパク質は、0.1%ゼラチンおよび150mMのNaClを含むPBSバッファ溶液で調製した。抗タウタンパク質は、西洋ワサビペルオキシダーゼで標識付与した。発色性基質と反応した後、不溶性の堆積物の層がナノセンサ表面上に形成され、ナノセンサの光学共鳴変化を生じさせた。
【0080】
図22Bは、検定後の暗視野像を示し、ナノセンサ上で機能化された抗体によって捕捉されたタンパク質を検出すると、各ナノセンサは、緑色から黄色に変化した。
図22Cは、
図22Aおよび
図22Bを整列させ、対応するスポットを引算することから抽出された色相変化を示す。10pMの抗タウタンパク質濃度で、
図22C中の全てのナノセンサは、約-40でデルタ色相を示した。
図22D~
図22Fは、抗タウタンパク質濃度が1pMに減少した実施形態を示す。
図22G~
図22Iは、抗タウタンパク質濃度が0.1pMに減少した実施形態を示す。ナノセンサのサブセットは、
図22D~
図22Fで観察可能なデルタ色相を有した。
図22G~
図22Iに示すように、多くのナノセンサは、観測可能なデルタ色相を有しないため、多くのナノセンサは、表面に結合したタンパク質を有していないことを示す。
【0081】
本発明のいくつかの実施形態をここで説明し図示したが、当業者は、その機能を実施し及び/又はその結果を取得するための種々の他の手段及び/又は構造、及び/又は、ここで説明した利点の1つ以上をを容易に想定するであろうし、こうした変形及び/又は変更の各々は本発明の範囲内であると見なされる。より一般には、当業者は、ここで説明した全てのパラメータ、寸法、材料及び/又は構成が例示であることを意味し、実際のパラメータ、寸法、材料及び/又は構成は、本発明の教示が使用される特定の用途に依存することを容易に理解するであろう。当業者は、日常的な実験のみを用いて、ここで説明した本発明の特定の実施形態との多くの等価物を認識し、または解明することができるであろう。従って、前述の実施形態は、例としてのみ提示され、添付の請求項およびその均等物の範囲内で、本発明は、具体的に説明し権利請求された以外の方法で実施できることは理解すべきである。本発明は、ここで説明した個々の構造、システム、物品、材料、キット及び/又は方法に関する。さらに、こうした構造、システム、物品、材料、キット及び/又は方法が相互に矛盾しなければ、こうした構造、システム、物品、材料、キット及び/又は方法の2つ以上の組合せは、本発明の範囲内に含まれる。
【0082】
本明細書および参照により組み込まれた文書が、矛盾し及び/又は一貫性のない開示を含む場合、本明細書が支配するものとする。参照により組み込まれた2つ以上の文書が、相互に矛盾し及び/又は一貫性のない開示を含む場合、より後の有効日を有する文書が支配するものとする。
【0083】
ここで定義され使用されるすべての定義は、辞書定義、参照により組み込まれる文書での定義、及び/又は定義された用語の通常の意味を支配すると理解すべきである。
【0084】
明細書および請求項において使用される不定冠詞「a」および「an」は、反対に明確に示されない限り、「少なくとも1つ」を意味すると理解すべきである。
【0085】
明細書および請求項で使用される語句「及び/又は」は、そのように結合された要素の「どちらかまたは両方」、即ち、ある場合には結合的に存在し、別の場合には分離的に存在する要素を意味すると理解すべきである。「及び/又は」を用いて列挙された複数の要素は、同じように、即ち、結合された要素の「1つ以上」と解釈すべきである。「及び/又は」語句によって具体的に識別される要素以外の他の要素が、具体的に識別された要素に関連するか関連しないかに関係なく、必要に応じて存在してもよい。こうして、非限定的な例として、「A及び/又はB」の参照が、「備える」などの制限なし言語と組み合わせて使用する場合、一実施形態では、Aのみ(任意にはB以外の要素を含む)、他の実施形態では、Bのみ(任意にはA以外の要素を含む)、さらに他の実施形態では、AおよびBの両方(任意には他の要素を含む)などを参照できる。
【0086】
明細書および請求項において使用するように、「または」は、上述で定義したような「及び/又は」と同じ意味を有すると理解すべきである。例えば、リスト内の項目を区切る場合、「または」または「及び/又は」は、包括的、即ち、要素の数またはリストの少なくとも1つの包含、2つ以上、そして任意には未列挙の追加のアイテムを含むものとして解釈すべきである。「1つのみ」または「1つだけ」など、明確に反対であることを示す用語だけは、あるいは請求項中に「からなる」が使用されている場合、要素の複数またはリストのうち1つだけの要素の包含を参照することになる。一般に、ここで使用するような用語「または」は、例えば、「いずれか」、「のうちの1つ」、「のうちの1つだけ」または「1つだけ」など、排他性の用語が先行する場合、排他的な代替品(即ち、「一方または他方で、両方ではない」)を示すものとして解釈すべきである。
【0087】
明細書および請求項において使用するように、1つ以上の要素のリストに関して語句「少なくとも1つ」は、要素のリスト内のいずれか1つ以上の要素から選択される少なくとも1つの要素を意味すると理解すべであるが、必ずしも要素のリスト内に具体的に列挙された全ての要素の少なくとも1つを含み、要素のリスト内の要素の組合せを排除しない。この定義は、語句「少なくとも1つ」が参照する要素のリスト内で具体的に識別される要素以外の要素が、具体的に識別される要素に関連するか関連しないかに関係なく、任意に存在してもよいことを許容する。こうして、非限定的な例として、「AおよびBの少なくとも1つ」(または、同等に「AまたはBの少なくとも1つ」または同等に「A及び/又はBの少なくとも1つ」)は、一実施形態において、Bが存在しない少なくとも1つのA、任意には2つ以上のAを含む(任意にはB以外の要素を含む)こと、他の実施形態において、Aが存在しない少なくとも1つのB、任意には2つ以上のBを含む(任意にはA以外の要素を含む)こと、さらに他の実施形態において、少なくとも1つのA、任意には2つ以上のA、そして少なくとも1つのB、任意には2つ以上のBを含む(任意には他の要素を含む)ことなどを参照する。
【0088】
数字に関して用語「約」をここで使用する場合、本発明のさらに他の実施形態が用語「約」の存在によって変更されないその数を含むことと理解すべきである。
【0089】
反対であると明確に示されない限り、2つ以上のステップまたは行為を含む請求項での任意の方法において、方法のステップまたは行為の順序は、方法のステップまたは行為が記述される順序に必ずしも限定されないことも理解すべきである。
【0090】
請求項では、上記明細書と同様に、例えば、「備える(comprising)」、「含む(including)」、「運ぶ(carrying)」、「有する(having)」、「含む(containing)」、「含む(involving)」、「保持する(holding)」、「で構成される(composed of)」など、全ての移行句は、制限なしとして、即ち、限定されることなく含むことを意味すると理解すべきである。米国特許庁の特許審査手続マニュアルのセクション2111.03に記載されているように、「からなる(consisting of)」および「から本質的になる(consisting essentially of)」の移行句だけが、それぞれ閉鎖式または半閉鎖式の移行句とすべきである。