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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-21
(45)【発行日】2023-08-29
(54)【発明の名称】フェルト針
(51)【国際特許分類】
   D04H 18/02 20120101AFI20230822BHJP
【FI】
D04H18/02
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020522100
(86)(22)【出願日】2019-05-17
(86)【国際出願番号】 JP2019019724
(87)【国際公開番号】W WO2019230450
(87)【国際公開日】2019-12-05
【審査請求日】2022-04-13
(31)【優先権主張番号】P 2018102045
(32)【優先日】2018-05-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000104021
【氏名又は名称】オルガン針株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100157912
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 健
(74)【代理人】
【識別番号】100074918
【弁理士】
【氏名又は名称】瀬川 幹夫
(72)【発明者】
【氏名】室賀 昌浩
(72)【発明者】
【氏名】荻原 太一
(72)【発明者】
【氏名】安藤 徹
【審査官】斎藤 克也
(56)【参考文献】
【文献】特開昭51-147680(JP,A)
【文献】特開2006-045759(JP,A)
【文献】特開平07-331575(JP,A)
【文献】韓国登録実用新案第0354617(KR,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D04H1/00-18/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブレードの表面にバーブが形成されたフェルト針であって、
前記バーブの両側面には、上端方向に行くに従って側方に突出するオーバーハング形状が形成されており、
前記オーバーハング形状の下端には、前記フェルト針の軸方向と平行な直線部分を有する略U字形の境界が形成されていることを特徴とする、フェルト針。
【請求項2】
前記バーブの針先側の前端部は、前記フェルト針の軸方向に対して垂直であることを特徴とする、請求項1記載のフェルト針。
【請求項3】
前記バーブの側面の上端縁に非オーバーハング領域を設けたことを特徴とする、請求項1または2記載のフェルト針。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、フェルト製品の繊維交絡に用いられるフェルト針に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のフェルト針として、断面三角形のブレードの角部に切り込みを入れることで、複数の小さな爪(バーブ)を形成したものが知られている(例えば特許文献1参照)。このようなフェルト針を使用してフェルト生地をパンチングすると、針を挿入したときにバーブが繊維を捕捉するとともに、針を引き抜くときに繊維が解放されることにより、繊維を効率よく絡み合わせることができる。
【0003】
こうしたフェルト針のバーブは、先端が突出したオーバーハング形状となっており、これにより、フェルト生地にフェルト針を挿入したときに効率よく繊維を捕捉できるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平7-331575号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、このようなフェルト針を継続使用していくと、繊維に接触するバーブの先端が摩耗していき、オーバーハング形状が消失してしまうという問題があった。オーバーハング形状が消失すると、繊維の保持性能が低下するため、繊維の交絡性能が低下することになる。このように、フェルト針の継続使用により、繊維の交絡性能が低下するという問題があった。
そこで、本発明は、継続使用した場合でも繊維の保持性能が低下しにくく、すなわち繊維の交絡性能が低下しにくいフェルト針を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記した課題を解決するためになされたものであり、ブレードの表面にバーブが形成されたフェルト針であって、前記バーブの両側面には、上端方向に行くに従って側方に突出するオーバーハング形状が形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明は上記の通りであり、バーブの両側面には、上端方向に行くに従って側方に突出するオーバーハング形状が形成されている。このような構成によれば、繊維が引っ張られてバーブから抜けようとした場合でも、両側面のオーバーハング形状によって繊維の移動を抑制することができる。すなわち、従来のようにバーブの前面ではなく、バーブの側面で繊維を保持することができるので、摩耗しやすいバーブの前面のオーバーハング形状に頼らずに繊維を保持することができる。このため、摩耗によるバーブ前面の角度変化にかかわらず、安定して繊維の保持性能を維持することができるので、長期間継続使用した場合でも繊維の交絡性能が低下しにくいフェルト針を提供することができる。
【0008】
なお、バーブの針先側の前端部は、フェルト針の軸方向に対して垂直に形成してもよい。言い換えれば、バーブの前面にはオーバーハング形状を設けなくてもよい。このような構成によれば、バーブの前面の摩耗の進行具合にかかわらず、繊維の保持性能を一定に保つことができる。また、繊維の保持性能が過度に高くなることもないので、フェルト針を引き抜くときに繊維がスムーズにバーブから外れるようにすることができる。
【0009】
また、バーブの側面の上端縁に非オーバーハング領域を設けてもよい。このような構成によれば、非オーバーハング領域によって、バーブの側面のオーバーハング形状の高さを調整することができる。例えば、繊維の保持性能が高くなりすぎて、フェルト針を引き抜くときに繊維がバーブから解放されないという問題を回避するために、オーバーハング形状の高さをあえて低く設定し、繊維が外れやすくすることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】フェルト針の外観図である。
図2】A部拡大図である。
図3】B部拡大図である。
図4】C-C線断面図である。
図5】D-D線断面図である。
図6】E-E線断面図である。
図7図3をF方向から見た図である。
図8】バーブ付近の一部拡大斜視図である。
図9】バーブ付近の拡大図であって、(a)フェルト針をフェルト生地に挿入したときの説明図、(b)フェルト針をフェルト生地から引き抜くときの説明図である。
図10】変形例1に係るバーブ付近の一部拡大斜視図である。
図11】変形例2に係るバーブ付近の一部拡大側面図(B部拡大図相当)である。
図12】変形例2に係るG-G線断面図である。
図13】変形例2に係るH-H線断面図である。
図14】変形例3に係るバーブ付近の一部拡大斜視図である。
図15】変形例3に係るバーブ付近の一部拡大側面図(B部拡大図相当)である。
図16】変形例3に係るI-I線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施形態について、図を参照しながら説明する。
本実施形態に係るフェルト針10は、フェルト製品の繊維交絡に用いられるものである。このフェルト針10は、図1に示すように、略L字形に形成されてシャンク11と、シャンク11の先端に連続するブレード12と、を備える。
【0012】
このフェルト針10は、例えばボードに装着して使用される。フェルト針10を取り付けるためのボードには、シャンク11の径とほぼ同じ大きさで複数の取付穴が形成されている。この取付穴にフェルト針10を挿入し、シャンク11側から叩くなどして、取付穴にシャンク11を圧入して取り付ける。このように複数のフェルト針10を取り付けたボードは、機械によって往復動させられる。この往復動するボードに対面するようにフェルト生地を配置すれば、フェルト針10の先端(ブレード12)が繰り返しフェルト生地に突き刺さる。この動作により、フェルト生地をパンチングして繊維50を交絡させるようになっている。
【0013】
本実施形態に係るブレード12は、図4に示すように、断面三角形状となっている。具体的には、ブレード12は、R形状の3つの角部12aを平坦な側面12bで繋いだ形状であり、面取りされた三角柱状となっている。
【0014】
また、このブレード12の表面には、図2に示すように、繊維50を引っ掛けるための複数のバーブ20が形成されている。バーブ20は、ブレード12の角部12aに切り込み部14を設けることで形成されており、ブレード12の3つの角部12aのそれぞれにおいて、所定間隔で複数設けられている。
【0015】
このバーブ20は鉤状に形成されており、フェルト針10でフェルト生地をパンチングしたときに、フェルト生地の繊維50を引っ張るように構成されている。すなわち、図9(a)に示すように、フェルト針10をフェルト生地に挿入すると、バーブ20が繊維50を捕捉しつつ、フェルト生地の内部へと進入する。これにより繊維50が引っ張られ、繊維50の引き締めが実行される。その後、図9(b)に示すように、フェルト針10をフェルト生地から引き抜くと、捕捉された繊維50がバーブ20から解放される。このような動作を繰り返すことで、フェルト生地の繊維50を絡み合わせて引き締めることができる。
【0016】
以下、上記したバーブ20の形状について詳述する。
上記したように、本実施形態に係るバーブ20は、ブレード12の角部12aに切り込み部14を設けることで形成されている。この切り込み部14は、図3~8に示すように、ブレード12の角部12aをカットして形成されており、カット面として、底面15と、底面15の針先29側に連続する傾斜面16と、を備える。バーブ20は、ブレード12の角部12aをカットして形成されているため、フェルト針10の軸方向に見たときにブレード12の外郭線から突出しないように形成されている。
【0017】
切り込み部14の底面15は、ブレード12の軸に対して平行に形成されている。ただし、この底面15は、ブレード12の軸に対して平行な曲面であり、中央がブレード12の外周方向に膨出するように形成されている。
切り込み部14の傾斜面16は、ブレード12の軸に対して傾斜して形成されている。この傾斜面16も、中央が膨出するように形成された曲面である。
【0018】
なお、上記したように底面15および傾斜面16が膨らんだ曲面で形成されることで、切り込み部14の縁部のエッジが緩和されている。縁部のエッジが緩やかに形成されることで、エッジに擦れて繊維50が切れてしまう可能性が低下するので、バーブ20による繊維50の保持性能が向上する。
【0019】
なお、本実施形態に係る切り込み部14は、図7に示すように、平面視で略U字形となっている。そして、略U字形の内部が切り欠かれずに残ることで、バーブ20が形成されている。このため、切り込み部14(底面15)とバーブ20との境界25は、略U字形となっている。
【0020】
このバーブ20は、図7に示すように、針先29に臨む前面21が平面視でR形状となっており、この前面21に連続する側面22が平面視で直線形状となっている。この前面21と両側の側面22とによって、図8に示すようなバーブ20の立ち上がり面が形成されている。また、曲面で形成された前面21を介して両側の側面22が接続されている。これにより、前面21と側面22との境目にエッジが存在せず、繊維50が損傷しにくい形状になっている。
【0021】
なお、本実施形態に係るバーブ20の前面21は、図3に示すように、先端がオーバーハングしない形状となっている。言い換えると、バーブ20の針先29側の前端部は、フェルト針10の軸方向に対して垂直に形成されている。
【0022】
一方、本実施形態に係るバーブ20の側面22は、図5および図6に示すように、斜めに立ち上がっており、上端方向(立ち上がり方向)に行くに従って側方に突出するオーバーハング形状となっている。言い換えると、フェルト針10の軸方向に垂直な断面で見たときに、バーブ20の上方(フェルト針10の中心から遠い側)の幅が下方(フェルト針10の中心に近い側)の幅よりも大きくなるように形成されている。
【0023】
具体的には、図5に示すように、バーブ20の上端における両側面22の幅W1が、バーブ20の下端における両側面22の幅W2よりも大きく形成されている。また、図6に示すように、バーブ20の上端における両側面22の幅W3が、バーブ20の下端における両側面22の幅W4よりも大きく形成されている。
【0024】
このような側面22を有することで、バーブ20が繊維50を確実に捕捉できるようになっている。すなわち、図9(a)に示すように、フェルト針10をフェルト生地に挿入すると、バーブ20に繊維50が引っ掛かる。バーブ20に引っ掛かった繊維50は、バーブ20の側面22のオーバーハング形状によって上方への移動が規制されるので、上方に抜けることなく保持される。そして、フェルト針10が引き抜かれると、繊維50をバーブ20に押し付けていた張力が失われるので、繊維50がバーブ20から外れて解放されるようになっている。
【0025】
このように、本実施形態に係るバーブ20の側面22には、上端方向に行くに従って側方に突出するオーバーハング形状が形成されている。このような構成によれば、繊維50が引っ張られてバーブ20から抜けようとした場合でも、両側面22のオーバーハング形状によって繊維50の移動を抑制することができる。すなわち、従来のようにバーブ20の前面21ではなく、バーブ20の側面22で繊維50を保持することができるので、摩耗しやすいバーブ20の前面21のオーバーハング形状に頼らずに繊維50を保持することができる。このため、摩耗によるバーブ20の前面21の角度変化にかかわらず、安定して繊維50の保持性能を維持することができるので、長期間継続使用した場合でも繊維50の交絡性能が低下しにくいフェルト針10を提供することができる。
【0026】
また、バーブ20の針先29側の前端部は、フェルト針10の軸方向に対して垂直に形成されている。言い換えれば、バーブ20の前面21にはオーバーハング形状が設けられていない。このような構成によれば、バーブ20の前面21の摩耗の進行具合にかかわらず、繊維50の保持性能を一定に保つことができる。また、繊維50の保持性能が過度に高くなることもないので、フェルト針10を引き抜くときに繊維50がスムーズにバーブ20から外れるようにすることができる。
【0027】
(変形例1)
上記した実施形態においては、図3に示すように、バーブ20の側面22に切り込み部14を設けることでオーバーハング形状を形成した。そして、このオーバーハング形状は、ブレード12の途中で切り上げられており、ブレード12の全長に渡って形成されているわけではない。
しかしながら、これに限らず、図10に示すように、ブレード12の全長に渡ってオーバーハング形状を形成するようにしてもよい。
【0028】
(変形例2)
上記した実施形態においては、バーブ20の針先29側の前端部は、フェルト針10の軸方向に対して垂直に形成されているようにした。
【0029】
しかしながら、これに限らず、バーブ20の針先29側の前端部が、フェルト針10の軸方向に対して傾斜するようにしてもよい。すなわち、図11~13に示すように、バーブ20の前面21にオーバーハング形状を設けてもよい。そして、この前面21のオーバーハング形状と、側面22のオーバーハング形状とによって、繊維50の保持性能を更に向上させてもよい。
【0030】
なお、この図10~13に示す例では、図12に示すように、バーブ20の上端における両側面22の幅W5が、バーブ20の下端における両側面22の幅W6よりも大きく形成されている。また、図13に示すように、バーブ20の上端における両側面22の幅W7が、バーブ20の下端における両側面22の幅W8よりも大きく形成されている。
【0031】
このような構成とすれば、バーブ20の前面21が摩耗することにより角度が変化したとしても、側面22のオーバーハング形状によって繊維50の保持性能を維持することができる。よって、長期間継続使用した場合でも繊維50の交絡性能が低下しにくいフェルト針10を提供することができる。
【0032】
(変形例3)
上記した実施形態においては、バーブ20の側面22において、側面22の全体がオーバーハング形状となるようにした。
【0033】
しかしながら、これに限らず、バーブ20の側面22の上端縁に非オーバーハング領域23を設けてもよい。すなわち、図14~16に示すように、バーブ20の側面22が、上方(フェルト針10の中心から遠い側)の非オーバーハング領域23と、下方(フェルト針10の中心に近い側)のオーバーハング領域24と、からなるようにしてもよい。
【0034】
非オーバーハング領域23においては、図16に示すように、フェルト針10の軸方向に垂直な断面で見たときに、上方(フェルト針10の中心から遠い方向)に行くに従って、両側面22の幅が徐々に小さくなるか、または、両側面22の幅が変化しないように形成されている。このため、非オーバーハング領域23においては、繊維50の移動を抑制するオーバーハング形状が形成されていない。
【0035】
一方、オーバーハング領域24においては、フェルト針10の軸方向に垂直な断面で見たときに、上方(フェルト針10の中心から遠い方向)に行くに従って、両側面22の幅が徐々に大きくなるように形成されている。例えば、図16に示すように、オーバーハング領域24の上端における両側面22の幅W9が、オーバーハング領域24の下端における両側面22の幅W10よりも大きく形成されている。このため、オーバーハング領域24においては、繊維50の移動を抑制するオーバーハング形状が形成されている。
【0036】
なお、上記した非オーバーハング領域23は、図15および図16に示すように、略三角柱状のブレード12の側面12bを利用して形成されている。すなわち、略三角柱状のブレード12の両側面12bは、角部12aに向かって次第に接近するように傾斜しているため、このブレード12の側面12bがバーブ20の側面22に表れるようにすることで、先窄まり形状の非オーバーハング領域23を形成してもよい。このようにブレード12の形状を生かして非オーバーハング領域23を作成すれば、非オーバーハング領域23を作成するための加工を省略することができる。また、非オーバーハング領域23とブレード12の側面12bとを面一にすることで、フェルト針10を挿入する際に余計な抵抗が発生しないようにすることができる。
【0037】
このような構成によれば、非オーバーハング領域23によって、バーブ20の側面22のオーバーハング形状の高さを調整することができる。非オーバーハング領域23を設けることで、オーバーハング形状の高さをあえて低く設定することができるので、繊維50がバーブ20から外れやすくすることができる。これにより、繊維50の保持性能が高くなりすぎてフェルト針10を引き抜くときに繊維50がバーブ20から解放されないという問題を回避することができる。
【0038】
なお、非オーバーハング領域23は、ブレード12の側面12bを利用して形成する態様に限らない。例えば、バーブ20の側面22の上端縁を面取り加工することで、非オーバーハング領域23を形成してもよい。
【符号の説明】
【0039】
10 フェルト針
11 シャンク
12 ブレード
12a 角部
12b 側面
14 切り込み部
15 底面
16 傾斜面
20 バーブ
21 前面
22 側面
23 非オーバーハング領域
24 オーバーハング領域
25 境界
29 針先
50 繊維
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16