(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-21
(45)【発行日】2023-08-29
(54)【発明の名称】肺気腫及びその他の形態のCOPDの治療のための組成物及び方法
(51)【国際特許分類】
A61K 33/34 20060101AFI20230822BHJP
A61K 31/726 20060101ALI20230822BHJP
A61K 31/727 20060101ALI20230822BHJP
A61K 31/56 20060101ALI20230822BHJP
A61K 31/706 20060101ALI20230822BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20230822BHJP
A61K 31/05 20060101ALI20230822BHJP
A61K 31/353 20060101ALI20230822BHJP
A61K 31/351 20060101ALI20230822BHJP
A61K 31/501 20060101ALI20230822BHJP
A61K 31/4406 20060101ALI20230822BHJP
A61K 31/5415 20060101ALI20230822BHJP
A61K 31/4409 20060101ALI20230822BHJP
A61K 31/536 20060101ALI20230822BHJP
A61K 31/122 20060101ALI20230822BHJP
A61K 33/06 20060101ALI20230822BHJP
A61K 31/16 20060101ALI20230822BHJP
A61K 31/4415 20060101ALI20230822BHJP
A61K 31/425 20060101ALI20230822BHJP
A61K 31/352 20060101ALI20230822BHJP
A61K 31/07 20060101ALI20230822BHJP
A61K 31/59 20060101ALI20230822BHJP
【FI】
A61K33/34
A61K31/726
A61K31/727
A61K31/56
A61K31/706
A61P11/00
A61K31/05
A61K31/353
A61K31/351
A61K31/501
A61K31/4406
A61K31/5415
A61K31/4409
A61K31/536
A61K31/122
A61K33/06
A61K31/16
A61K31/4415
A61K31/425
A61K31/352
A61K31/07
A61K31/59
(21)【出願番号】P 2020536053
(86)(22)【出願日】2019-01-11
(86)【国際出願番号】 NL2019050016
(87)【国際公開番号】W WO2019139479
(87)【国際公開日】2019-07-18
【審査請求日】2021-12-23
(32)【優先日】2018-01-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NL
(73)【特許権者】
【識別番号】520226012
【氏名又は名称】エンフィスィーマ ソリューションズ ベスローテン フェンノートシャップ
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヤンセン、ロブ
【審査官】内藤 康彰
(56)【参考文献】
【文献】特表2004-513071(JP,A)
【文献】BESIKTEPE, N. et al,The copper dependent-lysyl oxidases contribute to the pathogenesis of pulmonary emphysema in chronic obstructive pulmonary disease patients,Journal of Trace Elements in Medicine and Biology,2017年,Vol.44,pp.247-255
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-33/44
A61P 1/00-43/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅化合物を含む活性剤、及びグリコサミノグリカン又はその生理学的に許容される塩を含む、肺気腫及び他の形態のCOPDの治療方法で使用するための組成物。
【請求項2】
肺気腫及び他の形態のCOPDの治療が、気道壁肥厚、気管支拡張症、慢性気管支炎及び/又は小気道疾患の状態の治療を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
哺乳動物、特に成人ヒトの治療に使用される、請求項1
又は2に記載の組成物。
【請求項4】
銅化合物を含む活性剤が、硫酸銅、塩化銅、グルコン酸銅、酢酸銅、ヘプタン酸銅、酸化銅、メチオン酸銅、二銅酸化物、銅クロロフィリン、エデト酸カルシウム銅を含む生理学的に許容される銅塩である、請求項1から3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
グリコサミノグリカン又は塩が、12~18キロダルトンの平均分子量を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
グリコサミノグリカンがヘパリンである、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
ヘパリン又はヘパリン硫酸のナトリウム塩が使用される、請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
銅成分の投与量が1日あたり1μg~10mg、好ましくは1日あたり50μg~2mg、より好ましくは1日あたり100μg~1mgであり、最も好ましくは1日あたり200~500μg、グリコサミノグリカン成分の投与量は1日あたり100~1,500,000IU、好ましくは1日あたり5,000~1,000,000IU、より好ましくは1日あたり25,000~500,000IU、最も好ましくは1日あたり50,000~250,000IUである、請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
銅成分及びグリコサミノグリカン成分の用量が、1日1回、2回又は3回、好ましくは1日1回投与される、請求項1~8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
組成物を構成する治療的に活性な成分が同時に投与される、請求項1~9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
組成物を構成する治療的に活性な成分が、連続的に又は別々に投与される、請求項1~10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
組成物が、
a.ポリフェノールであるエピガロカテキン‐(3‐)ガレート(EGCG)及びペンタガロイルグルコース(PGG);
ミノキシジル、ニコランジル、ジアゾキシド、ピナシジル、及びクロマカリンから選択される、ATP依存性カリウムチャネルオープナー;
マグネシウム;
ビタミンK1;
ビタミンK2;
アミノグアニジン、ピリドキサミン、N‐フェナシルチアゾリウムブロミド、アラゲブリウム、及びフラボノイドから選択される、動脈のAGEのブレーカー;
から選択される、脈管構造におけるエラスチン代謝に影響を与える少なくとも1つの薬物又は物質、及び/又は
b.ビタミンA、ビタミンD及びペンタガロイルグルコースから選択される、肺のエラスチン代謝に影響を与える可能性のある少なくとも1つの化合物
をさらに含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
組成物が吸入を介して及び/又は点滴を介して投与される、請求項1~12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
組成物が、
(a)対象における肺エラスチン線維産生の再活性化;
(b)損傷したエラスチン線維の修復;
(c)エラスチン分解速度の減速;及び/又は
(d)最終糖化産物(AGE)の阻害
に使用するためのものである、請求項1~13のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
吸入コルチコステロイド及び経口マクロライドを含む、気管支拡張剤及び免疫調節剤を含む標準的な薬理学的COPD治療への添加剤として使用される、請求項1から14のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項16】
肺気腫又は別の形態のCOPDに罹患しているヒト以外の対象の治療方法であって、前記対象に銅化合物を含む活性剤、及びグリコサミノグリカン又はその生理学的に許容される塩を含む組成物の治療有効量を投与することを含む、上記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬物療法の分野にある。特に、本発明は、気流制限の有無にかかわらず、肺気腫、及び他の形態の慢性閉塞性肺疾患(COPD)の治療のための組成物及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
COPDは、最も一般的な非感染性疾患の1つである。COPDは、喫煙関連の固定された気流制限を共通の要素として持つ複雑な臨床状況であり、数か月の観察期間にわたって著しく変化することはない。さらに、気流の閉塞は、年齢とともに異常な急速な進行性の悪化を示す。疾患の経過は慢性呼吸器症状で最高潮に達する。
【0003】
COPDの病因は、慢性炎症と弾性線維の加速された損失によって特徴付けられる[1]1。COPDの慢性的な気流制限は、小気道疾患、肺実質破壊(すなわち、肺気腫)、又は両方の混合によって引き起こされる[1]。肺気腫は、プロテアーゼ/抗プロテアーゼ及びエラスチンの分解/修復の不均衡による肺実質のエラスチン線維の過剰な喪失を特徴とするCOPD表現型である。気腫の病原性におけるエラスチン分解の役割ほど評価されていないが、肺実質におけるコラーゲンの蓄積は、気腫の別の重要な病原性の特徴である[2]。
1 角括弧内の番号は、説明の最後にある参照リストの番号を参照している。
【0004】
弾性線維の主成分であるエラスチンは、肺に弾性、弾力性、変形能を提供するユニークなタンパク質であり、したがって呼吸の基本的な要件である[3]。エラスチンは主に子宮内及び幼児期に産生される[4]。
【0005】
エラスチン線維の産生は、いくつかの細胞型によるエラスチン前駆体であるトロポエラスチンの合成から始まる[4]。トロポエラスチンはその後、細胞外マトリックスで分泌され、フィブリル足場に輸送され、他の多くのトロポエラスチンタンパク質と整列してポリマーになり、最後に他のトロポエラスチンポリマーと架橋して、生涯持続するのに必要な成熟した耐久性のあるエラスチン線維になる[4]。架橋プロセスは、酵素LOX及びLOX様タンパク質(LOXL)1~4によって促進される[4]。フィブリン4及び5は、エラスチン線維の発達と維持にも重要な役割を果たす。プロトタイプLOXとフィブリン4は主にエラスチン線維の初期発達に関与しているが、LOXL1とフィブリン5はエラスチン修復に不可欠である。
【0006】
肺の弾性特性はエラスチン分解によって損なわれる[4]。これは、抗プロテアーゼの保護効果とプロテアーゼの破壊特性の間の不均衡のためにCOPD患者で増大する[3]。エラスチン分解の別の要因は、エラスチン分解とエラスチン修復の不均衡である。損傷したエラスチン線維は、天然線維よりもプロテアーゼによるさらなる破壊を受けやすいためである[5]。さらに、LOX酵素によって架橋されたエラスチン線維は、プロテアーゼに対して比較的耐性があるが、非架橋タンパク質は容易に分解される[6‐8]。加速された肺エラスチンの分解は、肺気腫の重要な病原性メカニズムであり、肺機能の喪失につながる[9]。
【0007】
エラスチン損失の加速に加えて、気腫患者の細胞外マトリックスには別の問題がある。気腫患者の肺のコラーゲン濃度は、コントロール群と比較して上昇しており[10]、1秒あたりの強制呼気量(FEV1)と逆相関していることが示される[11]。
【0008】
銅は、LOX酵素(すなわち、プロトタイプLOX及びLOXL1‐4)の活性化における補因子として機能する[12]。ニワトリの銅欠乏が誘発されると、LOX活性の低下によりエラスチンの架橋が阻害され、エラスチン含有量の純減少につながる[12]。非架橋トロポエラスチンは適切に架橋されたエラスチンよりもプロテアーゼの影響をずっと受けやすいため、銅欠乏症におけるエラスチン含有量が低い理由は分解の促進によるものと思われる[12]。銅欠乏ひよこにおける銅の補給は、プロテアーゼ耐性エラスチン線維の沈着を正常値近くに回復させる[7]。
【0009】
エラスチン線維の喪失は肺にCOPDを引き起こすが、皮膚にしわを形成する[13]。健康なコントロールの銅含有クリームは、皮膚のエラスチン架橋の増加を誘発する[14]。
【0010】
肺気腫の銅不足を示唆する証拠がある。ラット及びハムスターに銅欠乏食を与えることにより、気腫性変化を誘発することができる[15、16]。銅欠乏症により、エラスチン含有量が17%減少し、ラットの肺胞空間が35%増加した[15]。銅の補給は、肺エラスチンの超微細構造をほぼ正常に戻した[15]。
【0011】
炎症性サイトカイン腫瘍壊死因子アルファ(TNF‐α)の発現は、気腫で増強される[17、18]。肺特異的TNF‐α過剰発現のトランスジェニックマウスは、気腫性病変を発症する[19]。銅欠乏症は慢性的なTNF‐α誘発の肺炎症の後に起こり、これはおそらく炎症誘発の肺損傷に本質的な役割を果たすと結論付けられた。
【0012】
気腫の多い領域での局所的な銅欠乏を示唆するヒトの研究もある。タンパク質銅代謝ドメイン含有‐1(COMMD1)は、銅代謝の重要な調節因子である[20]。肺気腫の肺では、COMMD1及び活性なLOX、LOXL1、LOXL2のレベルが低下することが示されている[21]。
【0013】
COPD患者の呼気凝縮液中の銅濃度は低下し、FEV1と反比例する[22]。これは、COPD肺における銅欠乏症の存在を示唆している可能性がある。これに沿って、銅輸送の遺伝的障害であるメンケス病の個人は、重度の気腫を発症する可能性がある[23]。
【0014】
先行技術は、銅が気腫性肺におけるエラスチンの修復及び発生の有用な刺激物質であることを示唆しているかもしれないが、気腫患者の治療としての銅の使用を妨げる重大な問題が1つある。LOX酵素はエラスチン架橋の刺激剤であるだけでなく、コラーゲン架橋の刺激剤でもある。コラーゲンの架橋が増加すると、組織化、成熟が促進され、気腫性肺にコラーゲンが蓄積する。これは、肺気腫の患者でコラーゲンレベルがすでに増加しており、肺気腫から、別の壊滅的な肺疾患である肺線維症への移行を引き起こすため、非常に望ましくない。したがって、銅によるコラーゲン蓄積の刺激は、気腫患者の治療法として銅を使用することから遠ざける教示をしていることになる。
【0015】
COPD患者の最も重要な不満は、運動時の呼吸困難と後期の、また安静時の呼吸困難、及び運動不耐性である。メカニズムの観点から、COPDを一律の疾患の実体としてではなく症候群として見なす方が適切と思われる。COPD患者の気流閉塞は、小気道疾患、肺気腫、又はその両方の組み合わせによって引き起こされる。また、COPDのない(つまり、気流の閉塞がない)(以前の)喫煙者のコンピューター断層撮影(CT)でも、かなりの気腫が頻繁に見られる。
【0016】
息切れ、咳、喘鳴などの症状が似ているため、気腫と慢性気管支炎を区別することは臨床的に困難である。患者のかなりの部分に、慢性気管支炎又は気腫のいずれかに起因する特徴の組み合わせが存在する。
【0017】
胸部画像診断のためのフライシュナー協会(The Fleischner Society for Thoracic Imaging)は、COPDのCTで定義可能なサブタイプを説明する声明を発表した。区別できる主な病理学的カテゴリーは、気道壁の肥厚、気管支拡張症、小気道疾患及び気腫である。
【0018】
これらの放射線学的異常は、COPDのない個人でも特定できることを理解する必要がある。気腫は不可逆的な肺損傷を特徴とする。その結果、肺組織の弾性が失われ、気道がつぶれて空気の流れが妨げられる。慢性気管支炎は、肺内の小さな気道で始まり、徐々に大きな気道に進行する炎症性疾患である。気道の粘液を増やし、気管支の細菌感染を増やし、気流を妨げる。
【0019】
現在の薬理学的COPD療法は、呼吸器症状と悪化の頻度を改善し、生活の質と運動能力を改善することができる[1]。長時間作用型気管支拡張薬と副腎皮質ステロイドによる吸入療法の、肺機能低下率に対する減速効果も報告されている[2‐4]。残念ながら、吸入された気管支拡張薬とコルチコステロイドは、主にCOPDの気道成分を標的とし、気道優位のCOPD患者ほど気腫優位の患者ではそれほど効果がない。ただし、CTでの気腫の存在は死亡率と強く関連しているため、重要な所見である。
【0020】
肺移植以外の単一のCOPD介入は、肺機能の回復に効果的であることが証明されていない[1]。したがって、気腫の大規模な個人グループのための特定の薬物療法を確立することが急務である。
【0021】
WO03/068187A1は、COPDなどの呼吸器疾患、特に慢性気流制限(CAL)の治療のためのグリコサミノグリカン、例えばヘパリンの使用を開示する。
【0022】
WO2012/073025A1は、COPDの治療及び/又は予防に使用するためのヘパリンなどのグリコサミノグリカンを開示しており、対象への投与後、ヘパリンは対象の肺の炎症を軽減する。
【発明の概要】
【0023】
本発明は、銅と特定のグリコサミノグリカン、特にヘパリンの組み合わせが肺気腫及び他の形態のCOPDを治療するために使用できるという予想外の発見に基づいている。この組み合わせは、気腫患者の肺におけるエラスチン線維の修復と発達に有益な効果をもたらし、同時に銅によるコラーゲン架橋の刺激を防ぐ。
【0024】
先行技術はCOPD患者への吸入単剤療法としてのヘパリンの使用を開示しているが[24,25]、銅吸入療法にヘパリンを追加して、トロポエラスチン架橋の刺激を介してエラスチンの修復/発達過程をさらに刺激し、そしてさらに重要なことに、銅によるコラーゲン架橋の刺激を防ぐ相乗効果を教示も示唆もしていない。
【0025】
したがって、本発明は、一態様において、銅化合物を含む活性剤及びグリコサミノアミノグリカン又はその生理学的に許容される塩を含む、肺気腫及び他の形態のCOPDの治療方法で使用するための組成物を提供する。吸入による投与の使用が特に好ましい。
【0026】
好ましい実施形態において、本発明による組成物は、吸入コルチコステロイド及び経口マクロライドなどの気管支拡張剤及び免疫調節剤を含む標準的な薬理学的COPD治療への添加剤として使用される。
【0027】
本発明の別の態様では、肺気腫又は別の形態のCOPDに罹患している対象の治療方法が提供され、これは、銅化合物を含む活性剤及びグリコサミノグリカン又はその生理学的に許容される塩の組成物の治療有効量を対象に投与することを含む。
【0028】
エラスチン線維の修復及び発達及びコラーゲン蓄積の防止に関する本発明による組成物の活性成分の重要性は、以下の詳細な説明でより完全に概説される。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】肺線維症と肺気腫を併発した55歳の男性患者の外植された右肺。A.切除標本の肉眼的解剖学は、上葉と中葉の進行した気腫、上葉の水疱形成、及び中葉(
*)と下葉の小結節性胸膜の変化とともに肺全体の広範囲の変化を示し、これは広範囲の実質線維症に対応している。B.上葉の代表的な顕微鏡検査(ヘマトキシリン‐エオシン染色、2.5倍)は、広範囲の気腫変化(
*)と軽度の穏やかな間質性線維症を示す。C.下葉の代表的な顕微鏡検査(ヘマトキシリン‐エオシン染色、10倍)は、構造上の歪みを伴う進行した線維症と、通常の間質性肺炎パターンに相当する多数の線維芽細胞病巣(
**)を特徴とする。中葉は、気腫と進行した線維症の組み合わせを示した(図示せず)。
【0030】
【
図2】コントロール対象の肺、気腫、特発性肺線維症及び複合型肺線維症(CPFE;基底及び頂端の肺帯)の患者の肺における、エラスチン、コラーゲン、(イソ)デスモシン(DES)、及びヒドロキシプロリン(Hypro)の相対濃度。コントロール対象のレベルは100%に設定されている。
【0031】
【
図3】コントロール対象(100%に設定)及び気腫及び特発性肺線維症(IPF)の患者における血清及び呼気凝縮液(EBC)の相対的な銅濃度。
【0032】
【
図4】コントロール対象(100%に設定)及び気腫、特発性肺線維症(IPF)、及び肺線維症と気腫の併発(CPFE;頂端及び基底肺領域)の患者の肺実質における相対的な銅濃度。
【0033】
【
図5】追加の銅なし(ベースライン)又は(ベースライン銅濃度)+0.5、1、2、4、8、16、及び32
*ベースラインの線維芽細胞培地(インビトロ細胞培養)における(イソ)デスモシン(DES)レベル。
【0034】
【
図6】ベースライン+8
*ベースライン銅濃度のみ、銅とレチノイン酸(RA)、銅とミノキシジル及び銅とヘパリンで増殖させたリシルオキシダーゼ(LOX)、リシルオキシダーゼ様1(LOXL1)、エラスチン(ELN)、フィブリン‐5の相対遺伝子発現、及びトロポエラスチン、不溶性エラスチン、(イソ)デスモシン(DES)、及び線維芽細胞のコラーゲンのレベル(インビトロ細胞培養)。
【0035】
【
図7】ベースライン+8
*ベースライン銅濃度のみ、銅とビタミンK1、銅とビタミンK2、及び銅と硫酸マグネシウムで増殖させた線維芽細胞(インビトロ細胞培養)の不溶性エラスチンと(イソ)デスモシン(DES)の相対的なレベル。
【0036】
【
図8】コントロールマウス、銅マウス、銅/ヘパリンマウスの総肺容量(TLC)と平均線形切片(Lm)。
【0037】
【
図9】コントロールマウス、銅マウス、銅/ヘパリンマウスの(イソ)デスモシン(DES)、コラーゲン、ヒドロキシプロリン(Hypro)。
【0038】
【
図10】広範な気腫性変化を示すプラセボ群のマウスからの肺の顕微鏡検査(10倍)。
【0039】
【
図11】気腫性変化のない正常な肺胞を示す銅/ヘパリン群のマウスからの肺の顕微鏡検査(10倍)。
【0040】
【
図12】レーザー回折分析を使用した、5,000IUヘパリンと0.5mg銅を含む5mL塩化ナトリウム0.9%溶液の粒子サイズ分布の最初の測定。
【0041】
【
図13】レーザー回折分析を使用した、5,000IUヘパリンと0.5mg銅を含む5mL塩化ナトリウム0.9%溶液の粒子サイズ分布の重複測定。
【0042】
【
図14】レーザー回折分析を使用した、100,000IUヘパリン及び1.0mg銅を含む5mL塩化ナトリウム0.9%溶液の粒子サイズ分布の最初の測定。
【0043】
【
図15】レーザー回折分析を使用した、100,000IUヘパリン及び1.0mg銅を含む5mL塩化ナトリウム0.9%溶液の粒子サイズ分布の重複測定。
【発明を実施するための形態】
【0044】
発明の詳細な説明
肺エラスチン線維産生の再活性化と損傷したエラスチン線維の修復は、肺機能を取り戻すための前提条件である。成人の損傷したエラスチン線維を新しく産生し修復するためには、3つのステップが重要である:(a)トロポエラスチン合成の活性化、(b)トロポエラスチンタンパク質の高分子鎖へのアセンブリーの活性化、及び(c)リシルオキシダーゼを介した架橋の活性化。
【0045】
肺気腫及び他の形態のCOPDを治療するための組成物及び方法が提供される。これらの組成物は、銅を含む活性剤、及びグリコサミノアミノグリカン又はその生理学的に許容される塩を含む。
【0046】
本発明の組成物は、気流制限を伴う又は伴わない、肺気腫及び他の形態のCOPDに罹患しているか、又はそれらを発症するリスクがある対象を治療するために使用される。典型的には、対象は哺乳類、特にヒトであるが、脊椎動物であってもよい。通常、気流の制限は進行性であり、肺のエラスチン線維の弾性の低下にも関連している。
【0047】
肺気腫及び他の形態のCOPDを治療する方法が提供される。そのような方法は、対象の肺の1つ又は複数の障害を診断すること、及び銅を含む活性剤及びグリコサミノグリカン又はその生理学的に許容される塩を含む組成物の治療有効量を投与することを含む。
【0048】
「治療する」又は「治療」という用語は、損傷した肺を修復する、及び/又は疾患又は障害の進行の展開を防ぐために、1つ又は複数の組成物又は活性成分を患者(ヒト又はその他)に投与することを含み得るプロトコルの実行を指す。。「治療」又は「治療する」は、疾患の進行の完全な停止を必要とせず、すべての肺損傷の完全な回復を必要とせず、具体的には、患者にわずかな影響しか及ぼさないプロトコルを含む。
【0049】
「治療的有効量」という用語は、患者に投与されたときに、患者の状態の改善をもたらすのに十分である本組成物の量を意味する。改善は治癒を意味するものではなく、患者の状態のわずかな変化のみを含む場合がある。それはまた、状態を予防するか、又はその進行を停止又は遅延させる活性剤の量を含む。
【0050】
本発明の目的のために、「他の形態のCOPD」は、気道壁肥厚、気管支拡張症、慢性気管支炎及び/又は小気道疾患の状態として定義され得る。
【0051】
対象は通常、成熟した成人である。例えば、対象は、21~85歳、好ましくは25~70歳、より好ましくは30~60歳、さらにより好ましくは40~50歳であり得る。本明細書で言及される症状のいずれか、又は特定の症状の発症は、典型的には成人期であった。例えば、対象は、特定の症状を経験する前に、少なくとも25歳、より好ましくは少なくとも30歳、さらにより好ましくは少なくとも35歳、さらにより好ましくは少なくとも40歳であった可能性がある。特に、本明細書で言及されたもののいずれかなどの気腫のより進行した段階に関連する症状は、そのような人生の後期段階で発症する可能性がある。α1‐アンチトリプシン欠乏症のような気腫を発症する遺伝的素因のある対象は、早期に疾患を発症する可能性がある。例えば、彼らは、20~31歳、好ましくは22~28歳、又はより好ましくは24~26歳で、1つ又は複数の、又は特定の症状を示し得る。代わりに、彼らは最初にここに述べられた年齢範囲のいずれかで症状を示すかもしれない。対象は、本明細書に明記されている任意の年齢で、又は任意の年齢範囲内で診断されている可能性がある。
【0052】
対象がヒトでない場合、それは家畜又は農業的に重要な動物であるかもしれない。動物は、例えば、ヒツジ、ブタ、ウシ、雄牛、家禽、又は他の商業的に飼育された動物であってもよい。特に、動物は牛又は雄牛であってもよく、好ましくは乳牛である。動物は、犬、猫、鳥、又はげっ歯類などの飼いならされたペットであってもよい。好ましい実施形態では、動物は猫又は他のネコ科動物であり得る。動物は、ヒト以外の霊長類などのサルであってもよい。例えば、霊長類はチンパンジー、ゴリラ、又はオランウータンであり得る。本発明の好ましい実施形態では、動物は馬であってもよく、例えば、競走馬であってもよい。
【0053】
本発明の組成物の主な治療的に活性な成分は、銅及びグリコサミノグリカンである。これらの成分については、以下でより詳しく説明する。
【0054】
銅
本発明の組成物は、銅化合物を含む活性剤を使用する。本明細書で使用される「活性剤」という用語は、肺エラスチンの修復及び発生に対して刺激効果を有する化合物の化学要素を指す。活性剤は、銅化合物、特に銅塩を含む。さまざまな銅塩が銅化合物の供給源になる可能性がある。適切な銅塩には、硫酸銅、塩化銅、グルコン酸銅、酢酸銅、ヘプタン酸銅、酸化銅、メチオン酸銅、酸化二銅、クロロフィリン銅、及びエデト酸カルシウム銅が含まれるが、これらに限定されない。これらのうち、硫酸銅が好ましい。
【0055】
グリコサミノグリカン
本発明の組成物は、グリコサミノグリカン、特にヘパリンを使用する。グリコサミノグリカンは、D‐グルコサミン、ガラクトサミン、及びウロン酸残基で一般的に高度にN‐及びO‐硫酸化される特徴的な二糖反復配列を有する線状ヘテロ多糖である。
【0056】
本発明では、任意の適切なグリコサミノグリカンを使用することができる。本発明での使用に適したグリコサミノグリカン及びグリコサミノグリカン塩は、12から18kdの平均分子量を有する。グリコサミノグリカン又は塩は、この範囲内の様々な分子量サイズで存在し得る。さらなる詳細については、先行技術、特にWO03/068187及びその対応物であるEP1511466を参照することができ、これらの内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0057】
グリコサミノグリカンは、任意の適切な市販のグリコサミノグリカンであってよく、例えば、未分画グリコサミノグリカンであってよい。グリコサミノグリカンは、典型的には、動物などの天然源から単離されている。場合によっては、グリコサミノグリカンは、天然に存在する分子ではなく合成されたものであってもよい。
【0058】
本発明では、任意の適切な生理学的に許容されるグリコサミノグリカン塩、特に金属塩、例えばナトリウム塩、アルカリ金属又はアルカリ土類金属塩を使用することができる。他の塩には、カルシウム、リチウム及び亜鉛塩が含まれる。アンモニウム塩も使用できる。塩はグリコサミノグリカン酸ナトリウム又は硫酸グリコサミノグリカンであってもよい。本明細書で言及される特定のグリコサミノグリカンの誘導体の塩もまた、本発明において使用され得る。グリコサミノグリカンについて言及する本出願において、そのような言及には、その生理学的に許容される塩も含まれる。
【0059】
本発明の特に好ましい実施形態では、使用されるグリコサミノグリカンは、コンドロイチン硫酸A~Eのいずれか、ヘパリン、ヘパリン硫酸、ヘパラン、ヘパラン硫酸、ヒアルロン酸、ケラタン硫酸、それらのいずれかの誘導体又はそれらの生理的に許容される塩又はそれらの混合物又はそれらのいずれか2つである。
【0060】
ヘパリンは、さまざまな臓器や組織、特に肝臓、肺、大動脈に存在する天然のムコ多糖である。ヘパリンは、(1,4)グリコシド結合によって結合されたa‐D‐グルコサミン残基とヘキスロナート残基が交互に並んだポリマーである。グリコサミノアミノグリカンが自然界で合成される場合、それらは通常、中央のタンパク質コアに結合される。しかしながら、好ましくは、本発明において使用されるグリコサミノグリカンは、そのような中心コアを欠くであろう。グリコサミノグリカンの市販の調製物は、通常、コアがなく、使用することができる。
【0061】
好ましくは、未分画ヘパリンが製剤に使用される。未分画ヘパリンの代わりに、ダルテパリンとエノックスアパリンを含む低分子量ヘパリン、及びヘパラン硫酸を含むグリコサミノグリカンファミリーの他のメンバーを吸入製剤の銅化合物と併用して、トロポエラスチンの重合及び/又は銅により誘発されるコラーゲンの架橋を防ぐことができる。
【0062】
ヘパリンは臨床的に抗凝固剤として使用されており、抗トロンビンIII(AT‐III)とヘパリン補因子II及び他の凝固因子との相互作用を通じてその効果を発揮すると考えられている。典型的には、ヘパリンはある程度の抗凝固活性を保持する、すなわち、個体の凝固時間を増加させることができる。したがって、好ましくは、ヘパリンは、抗トロンビンIII(AT‐III)及び/又はヘパリン補因子II(HCII)に結合することができ、したがって凝固を阻害することができる。好ましくは、それはAT‐III、トロンビン及び凝固因子と複合体を形成することができるであろう。しかしながら、いくつかの実施形態では、抗凝固活性を欠くか、又は抗凝固活性が低下したヘパリンも使用され得る。したがって、ヘパリンは、修飾されていないヘパリンと比較して、修飾されていない形態の活性の0~80%、好ましくは5~60%、より好ましくは10~40%、さらにより好ましくは10~30%を有するように修飾されている可能性がある。他のグリコサミノグリカン、特にデルマタン硫酸も抗凝固活性を持っている。したがって、好ましくは、使用されるグリコサミノグリカン及びそれらの誘導体は、ヘパリン及びその誘導体について上記で考察したように、いくつかの抗凝固活性を保持するであろう。
【0063】
その他の成分
肺エラスチン線維産生の再活性化、損傷したエラスチン線維の修復、エラスチン分解速度の減速、及び終末糖化産物(AGE)形成の阻害のために、銅化合物及びグリコサミノグリカンを含む本発明の組成物を、単一の組成物中、又は同時、逐次、又は別々の投与のためのキットの形態で、他の健康的又は薬学的に活性な成分と組み合わせることは有益であり得る。例えば、本発明の組成物は、ポリフェノールであるエピガロカテキン‐(3‐)ガレート(EGCG)及びペンタガロイルグルコース(PGG);ATP依存性カリウムチャネルオープナー、例えばミノキシジル、ニコランジル、ジアゾキシド、ピナシジル、及びクロマカリン;マグネシウム;ビタミンK1;ビタミンK2;動脈のAGEのブレーカー、例えば、アミノグアニジン、ピリドキサミン、N‐フェナシルチアゾリウムブロミド、アラゲブリウム、フラボノイド(例えば、ケンフェロール、ゲニステイン、ケルシトリン、ケルセチン、及びエピカテキンなど)から選択される、血管系(脈管構造)におけるエラスチン代謝に影響を与える薬物又は物質、ビタミンA、ビタミンD、及びペンタガロイルグルコースから選択される、肺のエラスチン代謝に影響を与える可能性のある化合物と組み合わせて提供され得ることが想定される。
【0064】
対象の評価
本発明は、気腫を有する患者の肺におけるエラスチン線維の修復及び発達を促進し、銅により誘発されるコラーゲン架橋の刺激を防ぐのに使用するための、銅化合物を含む活性剤及びグリコサミノグリカン又はその塩を含む組成物を提供する。使用される銅化合物及びグリコサミノグリカン又は塩、送達経路、ならびに組成物及び治療される対象の他のパラメーターのいずれかは、本発明の他の実施形態のいずれかについて本明細書に記載されるものと同じであり得る。
【0065】
本発明の組成物は、好ましくは、対象の状態の改善及び/又は疾患進行の予防/減速を誘発する。したがって、組成物は、気腫及び/又は本明細書で定義されるような他の形態のCOPDを患っている、又はその傾向がある患者を管理するために使用され得る。それらは症状を防ぎ、改善し、改良し、又は治すかもしれない。それらは、気腫及び他の形態のCOPDの進行性の悪化特性を減速又は停止させ、場合によっては悪化の逆転を引き起こすことさえある。それらは、気腫及び他の形態のCOPDに関連する1つ又は複数の症状を予防、軽減又は逆転させる可能性がある。それらはまた、好ましくは、対象における幸福感及び彼らの生活の質を向上させる。
【0066】
本発明の組成物は、好ましくは、以下の1つ又は複数のさらなる増加を低減、排除、又は少なくとも防止する:
‐FEV1及び拡散能力を含むがこれらに限定されない肺機能パラメーターの加速された低下
‐肺の構造の損傷
【0067】
本発明の組成物による治療はまた、FEV1/FVCの比がそれ以上低下しないか、又は改善されることを意味し得る。たとえば、比率は健康な対象で予想される比率に近づく場合がある。
【0068】
組成物は、肺エラスチン分解を低減し、肺エラスチン修復を促進することができる。それらはまた、気腫性肺におけるコラーゲンの蓄積に対する予防効果を有する可能性がある。
【0069】
本発明の組成物は、気道及び肺胞におけるエラスチンの分解、したがって肺弾性の喪失などの肺の構造の破壊を低減することができる。それらは、肺の部分の崩壊及び/又は空気が閉じ込められる可能性がある拡大された空域の発達を低減又は防止することができる。組成物は、気腫及び本明細書で概説される他の形態のCOPDに関連する病理学的変化のいずれかを防止又は軽減することができる。特に、それらは病理学的変化の進行を防ぐことができる。彼らはまた、特定の病理学的変化の始まりを予防又は遅延することができる。
【0070】
本発明の組成物は、典型的には、拡散能力及びFEV1などの肺機能パラメーターの低下を10~100%、好ましくは20~80%、より好ましくは30~60%、さらにより好ましくは40~50%低下させることができる。それらは、FEV1の年間減少を、年間10~100ml、好ましくは20~60ml、さらにより好ましくは30~40ml減らすことができる。場合によっては、治療時に対象は肺機能パラメーターの改善を示し、FEV1と拡散能力が予測値の25~100%、好ましくは40~100%、より好ましくは60~100%、さらにより好ましくは80~100%になるようにする。
【0071】
CTスキャンによる肺密度の測定は、肺気腫の重症度を定量化する便利な方法である。本発明の組成物は、気腫を有する患者におけるCT‐肺密度の進行性の低下を減速又は停止させるか、又は肺密度を増加させることさえある。
【0072】
本発明の組成物は、肺組織の分解を低減し、損傷した肺組織の修復を促進することができる。
【0073】
本発明の組成物は、気腫及び本明細書に記載される他の形態のCOPDの症状及び特徴のいずれかの排除、発症の遅延、又は重症度の軽減をもたらし得る。
【0074】
投与及び製剤
本発明の医薬組成物は、少なくとも1つの銅化合物、好ましくは硫酸銅、及びグリコサミノグリカン、好ましくはヘパリンを、製薬業界で通常行われるように、標準的な生理学的、特に薬学的に許容される担体及び/又は賦形剤と共に製剤化することにより調製され得る。
【0075】
製剤の正確な性質は、使用される特定の銅化合物及びグリコサミノグリカン、ならびに所望の投与経路を含むいくつかの要因に依存するであろう。適切なタイプの製剤は、Remington's Pharma-ceutical Sciences, 22nd Edition, Mack Publishing Company, Eastern Pennsylvania, USAに完全に記載されており、その開示は参照により本明細書に全体として含まれる。
【0076】
特に好ましい実施形態では、銅化合物及びグリコサミノグリカンを含む組成物は、噴霧製剤の吸入、定量吸入器の吸入を含むがこれらに限定されない吸入療法として、又は乾燥粉末吸入器に適した形態で投与される。組成物は、ブリスターパック又は壊れやすいカプセル中に存在し得る。したがって、投与は典型的には口を介するものであり得る。
【0077】
本発明による組成物は、典型的には吸入又は設置により投与されるので、好ましくは、そのような経路による投与に適した形態である。特に、組成物は、吸入及び/又は設置に適した形態であり得る。
【0078】
吸入を介して投与される組成物を製剤化及び調製するための適切な方法は、当該分野で周知であり、本発明において使用され得る。噴霧療法として硫酸銅及びヘパリンによって例示される組成物は、生理食塩水を含む賦形剤と共に使用することができる。乾燥粉末製剤としての組成物は、乳糖を含む賦形剤と共に使用することができる。定量吸入器中の組成物は、ヒドロフルオロアルカン(HFA)を含む噴射剤、エタノールを含む共溶媒、及びオレイン酸を含む安定剤を含む賦形剤と共に使用することができる。
【0079】
投与される必要な用量は通常医師によって決定されるが、治療される状態及び患者の状態などの多くの要因に依存するであろう。用量及び用量範囲の例を以下に示す。投与の好ましい期間、投与の好ましい頻度及び投与の好ましい用量は、年齢、体重、及びCT肺密度測定及び肺機能検査により定量化される気腫病変の重症度を含むがこれらに限定されない様々な要因に依存する。治療期間は、典型的には2週間、1ヶ月、6ヶ月、1年又はそれ以上であり得る。多くの場合、対象は、本発明の組成物を永続的に又は長期間維持する。より深刻な形態の気腫を有する患者では、本発明を使用する好ましい期間は生涯にわたり、好ましい投与頻度は1日1回である。軽度の形態の気腫では、一時的な投与期間と、1日1回よりも頻度の少ない投与で十分である。
【0080】
肺の銅欠乏症の重症度は、治療強度のもう1つの決定要因である。呼気凝縮液中の銅測定は、銅吸入療法の強度と期間を導くために、肺の銅欠損を計算するための便利な方法である。
【0081】
硫酸銅及びヘパリンによって例示される本発明による医薬組成物は、とりわけ患者の年齢、性別、体重及び状態などの要因に応じて、以下の用量で好ましくかつ効果的に投与される。硫酸銅とヘパリンの両方の好ましい用量は、以下に説明する線維芽細胞を使用した細胞培養試験(「実験」セクションを参照)から導き出され、さまざまな用量と組み合わせがエラスチンの修復と発達への影響について評価される。
(a)銅塩に関しては、1日あたり1μg~10mg、好ましくは1日あたり50μg~2mg、より好ましくは1日あたり100μg~1mg、最も好ましくは1日あたり200~500μg。これらの用量は、典型的には1日1回、2回又は3回、好ましくは1日1回投与される。
(b)ヘパリンに関しては、1日あたり100~1,500,000IU、好ましくは1日あたり5,000~1,000,000IU、より好ましくは1日あたり25,000~500,000IU、最も好ましくは1日あたり50,000~250,000IU。ヘパリン活性の単位(米国薬局方)は、0.2mlの1%CaCl2を添加した後、1mlのクエン酸ヒツジ血漿が1時間凝固しないようにするヘパリンの量として定義される。これらの用量は、典型的には1日1回、2回又は3回投与され、好ましくは1日1回投与される。
【0082】
吸入に好ましい組成物は、約0.5~1mgの硫酸銅及び約150,000IUのヘパリンを含む。
【0083】
本発明による組成物を構成する治療的に活性な成分は、好ましくは同時に投与されるが、必要に応じて、順次又は別々に投与することもできる。
【0084】
いくつかの好ましい実施形態において、本発明の組成物は、エアロゾルとして製剤化され得る。医薬エアロゾルの製剤化は、当業者にとって日常的であり、例えば、レミントン(Remington)(上記)のSciarra、Jを参照のこと。薬剤は、溶液エアロゾル、乾燥粉末の分散又は懸濁液エアロゾル、エマルジョン又は半固体調製物として製剤化され得る。エアロゾルは、当業者に知られている任意の推進剤システムを使用して送達することができる。エアロゾルは下気道に適用されることがある。銅化合物及びヘパリンを含む組成物は、当業者に知られているリポソーム及びナノ粒子送達方法を使用して送達することができる。リポソーム、特にカチオン性リポソームを担体製剤に使用することができる。
【0085】
本発明に従って使用するための組成物は、活性成分に加えて、薬学的に許容される賦形剤、担体、緩衝剤、安定剤、又は当業者によく知られている他の材料を含むことができる。特に、それらは、薬学的に許容される賦形剤を含み得る。そのような物質は無毒であるべきであり、有効成分の効力と干渉すべきではない。担体又は他の物質の正確な性質は、投与経路に依存するであろう。適切な医薬担体は、レミントン(上記)に記載されている。
【0086】
本発明の組成物は、1つ又は複数の治療用組成物を下気道に導入するように適合された任意のデバイスによって送達することができる。いくつかの好ましい実施形態では、本発明のデバイスは、定量吸入器であり得る。デバイスは、本発明の治療組成物を、液体、泡又は粉末の細かく分散したミストの形態で送達するように適合され得る。デバイスは、圧電効果又は超音波振動を使用して、吸入に適したミストを生成するために、テープなどの表面に付着した粉末を取り除くことができる。デバイスは、ポンプ、液化ガス、圧縮ガスなどを含むがこれらに限定されない、当業者に知られている任意の推進剤システムを使用することができる。
【0087】
銅化合物及びヘパリンが粒子又は液滴の形で投与される場合、粒子/液滴サイズ及び/又は粒子/液滴の他の特性は、粒子が気道の特定の領域に確実に送達されるように選択され得る。たとえば、気道の下部のみに到達するように設計されている場合がある。銅化合物及びヘパリンが水性形態で送達される場合、好ましくは、溶液は等張性であり、対象への効果的な送達を確実にするのを助ける。特に、10μmの直径を有する粒子は、気道の下部に到達するのに効果的であると考えられており、したがって、そのような部位が組成物の望ましい標的である場合に使用することができる。例えば肺胞などの気道の下部に組成物を送達することが望まれる実施形態では、投与される粒子の直径は、10μM未満、好ましくは8μM未満、より好ましくは6μΜ未満、さらにより好ましくは4μΜ未満であってよい。好ましい実施形態では、粒子は3μM以下の直径を有してもよく、より好ましくは2μM以下の直径を有してもよい。特に好ましい実施形態では、粒子は、3~5μmの直径を有する。場合によっては、投与される粒子は、直径が1000nm未満、好ましくは500nm未満、より好ましくは250nm未満、さらにより好ましくは100nm未満であってもよい。サイズは、固体物質の粒子又は溶液及び懸濁液の液滴を指し得る。
【0088】
気道の特定の部分に浸透するのに必要な粒子のサイズは、当技術分野で知られており、したがって、粒子サイズは、標的サイズに合うように選択することができる。ミリングなどの技術を使用して、必要な非常に小さな粒子を生成することができる。場合によっては、気道の所望の部分が上気道であり、したがって、より大きな粒子サイズを使用することができる。粒子の密度及びそれらの形状はまた、所望の部位へのそれらの送達を容易にするように選択され得る。
【0089】
本発明の組成物は、様々な形態を取り得る。それらは、粉末、粉末ミクロスフェア、溶液、懸濁液、ゲル、ナノ粒子懸濁液、リポソーム、エマルジョン、又はマイクロエマルジョンの形態であり得る。存在する液体は、水又は他の適切な溶媒、例えばCFC又はHFAであり得る。溶液及び懸濁液の場合、これらは水性であり得るか、又は水以外の溶液を含み得る。
【0090】
本発明のデバイスは、典型的には、治療用組成物の流れが移動する1つ又は複数のバルブを有する容器と、流れを制御するためのアクチュエーターとを含む。本発明での使用に適したデバイスは、例えば、レミントン(上記)に見ることができる。本発明の組成物を投与するのに適したデバイスには、吸入器及びネブライザー、例えばステロイドを喘息患者に送達するために典型的に使用されるものが含まれる。場合によっては、スペーサーを吸入器と組み合わせて使用して、効果的な送達を確保できる。
【0091】
様々な設計の吸入器が市販されており、本発明の組成物を送達するために使用することができる。これらには、Accuhaler、Aerohaler、Aerolizer、Airmax、Autohaler、Breezhaler、Clickhaler、Diskhaler、Easi-breathe吸入器、Easyhaler、Evohaler、Ellipta、Fisonair、Handihaler、Integra、Jet inhaler、Miat-haler、Nexthaler、Novolizer吸入器、Pulvinal吸入器、Respimat、Rotahaler、Spacehaler、Spinhaler、Syncroner吸入器、及びTurbohalerデバイスが含まれる。特に望ましい粒子を生成する多くの製剤化技術が当技術分野で知られており、使用することができる。例えば、ナノ結晶、プルモソル、及びパルモスフィア技術を使用することができる。
【0092】
場合によっては、組成物は、設置(インストール)により投与されてもよい。そのような場合、典型的には、組成物は液体形態であり、例えば気管内チューブなどの人工気道を介して投与される。液体は通常、シリンジに吸い上げられ、次いで人工気道を通して対象の気道に排出される。設置(インストール)は、緊急の状況でしばしば使用される。多くの場合、それは、対象が比較的高度な形態のCALを有し、病院に入院している場合に使用される。
【0093】
組成物は、選択された特定の送達経路に対するそれらの適合性を最適化するために、様々な構成要素を含み得る。組成物の粘度は、薬学的に許容される増粘剤を使用して所望のレベルに維持することができる。使用できる増粘剤には、メチルセルロース、キサンタンガム、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボマー、ポリビニルアルコール、アルギン酸塩、アカシア、キトサン及びそれらの組み合わせが含まれる。増粘剤の濃度は、選択された薬剤及び所望の粘度に依存する。
【0094】
いくつかの実施形態では、組成物は保湿剤を含み得る。これは、粘液膜の乾燥を低減又は防止し、膜の刺激を防止するのに役立つ。適切な保湿剤には、ソルビトール、鉱油、植物油及びグリセロール;緩和剤;メンブレンコンディショナー;甘味料;及びそれらの組み合わせが含まれる。
【0095】
組成物は界面活性剤を含み得る。適切な界面活性剤には、非イオン性、アニオン性及びカチオン性界面活性剤が含まれる。使用することができる界面活性剤の例には、例えば、ソルビトール無水物の脂肪酸部分エステルのポリオキシエチレン誘導体、例えば、Tween80、ステアリン酸ポリオキシル40、ステアリン酸ポリオキシエチレン50、フシエート、胆汁酸塩及びオクトキシノールが含まれる。
【0096】
硫酸銅及びヘパリンによってそれぞれ例示される、銅化合物を含む活性剤及びグリコサミノグリカンを含む、吸入療法における本発明による組成物の相乗効果は、「実験」セクションでさらに実証される。
【実施例】
【0097】
実験
本発明の基礎となる研究は、肺気腫の患者に対する特定の治療法を確立することを目的とした体系的なアプローチに従う研究プロジェクトの一部である。
【0098】
このプロジェクトの焦点は、肺の細胞外マトリックスマクロタンパク質エラスチンとコラーゲン、及びエラスチンとコラーゲン線維の発達と修復プロセスに重要な役割を持つ他のタンパク質、つまりトロポエラスチン、フィブリン‐4、フィブリン‐5、「プロトタイプ」LOX、及びLOXL1にある。
【0099】
エラスチン架橋のレベルは、エラスチン特異的架橋アミノ酸デスモシン及びイソデスモシン(まとめてDESと呼ばれる)[3]を測定することにより定量化され、コラーゲン架橋のレベルは、コラーゲン特異的架橋アミノ酸ヒドロキシプロリンを測定することにより定量化された。
【0100】
出願人の研究プロジェクトでは、実験は次の順序で行われた。
1.気腫、特発性肺線維症(IPF)、複合型肺線維症及び気腫(CPFE)、及び実質肺疾患のないコントロール対象の患者の肺生検の組織学的検査。
2.抗活性LOXL1及びLOXL2抗体による肺生検の染色。
3.気腫、IPF、CPFE患者及び実質肺疾患のないコントロール対象の肺組織に関する遺伝子発現試験。
4.気腫とIPFのある患者と肺疾患のないコントロールの呼気凝縮液中の銅濃度の測定。
5.気腫、IPF、CPFE患者及び実質肺疾患のないコントロール対象の肺組織における銅レベルの測定。
6.肺ラット線維芽細胞を用いた細胞培養。
7.マウスのブタ膵臓プロテアーゼ誘発性気腫モデルにおける修復メカニズム。
8.レーザー回折分析法を用いたヘパリンナトリウム及び硫酸銅溶液の噴霧の分析。
【0101】
1.肺生検の組織学的検査
理論的根拠:このプロジェクトは、気腫、IPF、CPFE、及びコントロール対象の患者の細胞外マトリックスの検査から始めた。線維症患者の肺も試験する理由は、IPF及び気腫の病原性におけるいわゆる「発散因子」を解明することが、気腫性肺におけるエラスチン修復プロセスの失敗の原因となる欠陥を確立し、気腫患者のための特定の治療の確立を促進するのに役立つ可能性があると我々が期待したからである。
【0102】
方法:肺組織は、気腫の患者(n=10)とCOPD/気腫のない健常者コントロール(n=10)の外科的肺切除標本から得られた。腫瘍から適切な距離にある胸膜下領域の腫瘍のない肺組織を採取した。肺組織は、IPF患者の診断用外科的肺生検から得られた(n=10)。CPFE患者からの頂端(気腫性)及び基底(線維性)肺領域からの肺組織は、外植片の肺から得られた(n=4;
図1)。最初に、組織学的分析を用いて肺の細胞外マトリックスを調べた:コラーゲンについてはマッソン(Masson)の毛状突起染色及びエラスチンについてはVerhoeff‐Van Gieson染色。
【0103】
結果:エラスチン含有量は、肺気腫患者の肺実質では減少し、IPF患者では増加することがわかった(
図2)。コラーゲン含有量は、コントロール肺と比較して、気腫とIPFの両方の患者で増加した。ただし、IPFでコラーゲン線維のより顕著な増加を観察した。CPFE患者では、エラスチン含有量は基礎線維性肺実質で増加し、頂端気腫性肺実質で減少した。CPFE患者のコラーゲン含有量は、頂端気腫及び基底線維性肺実質の両方で増加したが、基底線維性肺領域でより顕著であった。DESレベルは、気腫性肺では減少し、IPF肺では増加した。ヒドロキシプロリン濃度は、肺気腫とIPF肺の両方で増加したが、後者ではるかに高かった。注目すべきことに、気腫とIPF肺の間のコラーゲンレベルの相対的な違いは、気腫とIPF肺の間のヒドロキシプロリンレベルの相対的な違いよりもはるかに低く、IPF肺と比較して、コラーゲンが気腫内であまり広範囲に架橋されていないことを示す。
【0104】
結論:線維性及び気腫性肺に関するこれらの分析から、我々は、気腫患者の我々の特定の治療はエラスチン線維の修復と発達を刺激するだけでなく、コラーゲンが気腫性肺に豊富に存在するため、コラーゲンの成熟、組織化及び蓄積を阻害もするはずであると結論付けた。
【0105】
2.活性LOXL1及び活性LOXL2の肺生検の染色
理論的根拠:LOX酵素は、トロポエラスチン前駆体を耐久性のあるエラスチン線維に架橋するだけでなく、プロコラーゲン前駆体を耐久性のあるコラーゲン線維に架橋する役割もある。エラスチン線維は弾性、弾力性、及び変形性を提供するが、コラーゲン線維は肺に引張強度を提供する。過剰なコラーゲン沈着は、肺線維症の特徴である。肺線維症形成の刺激は、LOX刺激の望ましくない副作用であろう。LOX酵素は気腫では減少し、線維症では増加するとの仮説を立てた。
【0106】
方法:組織学的分析に使用したのと同じ肺生検を、活性LOXL1(Novus Biologicals;NBP1‐82827)及び活性LOXL2(Novus Biologicals;NBP1‐32954)抗体で染色した。
【0107】
結果:コントロール対象と比較して、活性LOXL1と活性LOXL2の両方の染色の強度がIPF患者で増強され、気腫患者で減少した。CPFE患者では、活性LOXL1及び活性LOXL2染色の強度は、基底線維性肺実質で増強され、頂端気腫性肺実質で減少した。
【0108】
3.肺組織における遺伝子発現分析
理論的根拠:我々は、気腫で十分にアップレギュレートされておらず、効果的なエラスチン修復を達成するために刺激されるべきエラスチン修復遺伝子/タンパク質を特定するために、コントロールの肺と比較して、気腫、IPF、及びCPFE患者の肺における遺伝子発現(定量的リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応;qRT‐PCR)分析によって体系的な研究プロジェクトを進めた。
【0109】
方法:前述の肺生検で、トロポエラスチン(ELN)、LOX、LOXL1、LOXL2、フィブリン‐4、フィブリン‐5の遺伝子の発現を分析した。
【0110】
結果:驚いたことに、我々は、気腫とIPFの両方の患者でELNとフィブリン‐5が強くアップレギュレートされており、これらのタンパク質が肺気腫と線維症の「相違因子」ではないことを示唆していることを見出した。LOXL1は、コントロールと比較してIPF患者でアップレギュレートされた。気腫患者とコントロール対象の間で、LOXL1遺伝子発現に有意差は見られなかった。
【0111】
結論:遺伝子発現試験から、ELN及びフィブリン‐5合成の刺激は肺エラスチン修復の治療の必須の標的ではない可能性があると結論付けた。これらのタンパク質が気腫患者の肺ですでにアップレギュレートされているためである。
【0112】
中間分析
我々は、活性化したLOXL1レベルが気腫性肺で減少するというパラドックスに直面した。ただし、LOXL1の発現はqRT‐PCRで減少しなかった。体系的な研究プロジェクトの結果の中間分析に基づいて、タンパク質LOXL1のレベルが低下したために患者は気腫を発症しないと結論付け、LOXL1の必須補因子、すなわち銅のレベルが低下したために患者が気腫を発症する可能性があると仮定した。この仮説を検証するためにいくつかの試験を行った。
【0113】
4.呼気凝縮液及び血清中の銅
理論的根拠:銅はLOX酵素の活性化に不可欠な補因子であるため、気腫患者の銅濃度が低下すると仮定した。
【0114】
方法:最初に、気腫患者(n=10)とコントロール(n=10)の血清中の銅濃度を測定した。その後、RTube(商標)(Respiratory Research;www.repiratoryresearch.com)で呼気凝縮液(EBC)を収集し、銅濃度を測定した。
【0115】
結果:我々の仮説とは対照的に、気腫患者の血清銅濃度は低下せずに増加した(
図3)。ただし、EBC銅濃度は、コントロールと比較して気腫患者で減少した。
【0116】
結論:気腫には局所的な肺障害があり、全身の銅欠乏症はない。
【0117】
5.肺生検における銅濃度
理論的根拠:銅はLOX酵素の活性化に不可欠な補因子であるため、気腫患者では銅濃度が低下し、IPF患者では銅濃度が上昇すると仮定した。
【0118】
方法:気腫、IPF、CPFE患者の肺実質の銅濃度を測定した。
【0119】
結果:コントロールの肺と比較して、銅濃度は実際に気腫では減少し、線維症では増加することがわかった(
図4)。また、CPFE患者の肺の頂端気腫性(低銅レベル)と基底線維性(高銅レベル)実質との間の銅濃度に強い勾配があることもわかった。CPFE肺内の銅濃度のこれらの驚くべき違いについての我々の説明は、上部肺ゾーンへの銅の送達が下部肺ゾーンよりもはるかに低いということであり、これは、頂端肺ゾーンの灌流が非常に不十分であることを考えると論理的である。
【0120】
結論:(a)肺頂端は灌流よりもはるかに換気がよいため、そして(b)局所的な銅欠乏があって全身的な銅欠乏がないため、全身投与経路よりも銅吸入療法が優先される。経口投与よりも吸入銅療法を好む3番目の重要な理由もある。血清銅濃度は、アルツハイマー病を発症するリスクと明確に関連している[38]。肺(特に頂端肺ゾーン)で同じ濃度の銅を達成するために、経口療法よりも吸入療法の方がはるかに少ない用量の銅が必要である。銅を気管内にマウスに投与したところ、脳の銅濃度に対するこの介入の影響は確かに見つからなかった。
【0121】
IPF患者の肺実質及びCPFE患者の線維性基底肺領域の高銅濃度は、銅吸入療法によるLOX酵素の活性化を刺激すると、コラーゲンの架橋が刺激され、それによってコラーゲンの成熟/組織化が刺激されるという不安の基礎を形成した。LOX酵素はエラスチンの架橋剤であるだけでなく、コラーゲンの架橋剤でもあるからである[39]。(a)コラーゲンレベルが気腫性肺ですでに増加しており、(b)気腫から線維症への移行を引き起こす可能性(すなわち、1つの壊滅的な肺疾患から他の肺疾患への移行)があるため、銅誘発性の気腫性肺におけるコラーゲンの蓄積は有害である。
【0122】
したがって、我々は、銅が誘発するコラーゲンの蓄積を防ぐために、吸入製剤において銅を1つ又は複数の他の成分と組み合わせる必要があると結論付けた。
【0123】
6a.銅を追加した線維芽細胞培養
理論的根拠:気腫患者における効果のないエラスチン修復プロセスの最も可能性の高い原因としての銅欠乏に基づいて、我々は、銅補給がより多くのLOX酵素を活性化することによってエラスチンの発達/修復プロセスを刺激すると仮定した。
【0124】
方法:線維芽細胞を21日間増殖させ、その後溶解させ、mRNAを抽出した。培地は週に2回補充された。qPCRは、LOX、LOXL1及びエラスチン(トロポエラスチンをコードするELN)遺伝子の発現を測定するために実行された。Amplite Fluorimetrix LOX Assay Kit(AAT Bioquest、Sunnyvale、CA、USA)を使用して、LOX活性を測定した。細胞層に沈着した総不溶性エラスチンと可溶性トロポエラスチンは、Fastin(商標)エラスチンアッセイキット(Biocolor、英国)で測定した。DESレベルは、前述のように、Canisius-Wilhelmina病院(オランダ、ナイメーヘン)で液体クロマトグラフィー‐タンデム質量分析法を使用して測定された[9]。培地及びマトリックス中のコラーゲンは、Sircol(商標)INSOLUBLE Collagen Assays(Biocolor、英国)を使用して定量した。まず、線維芽細胞培地の銅レベルを測定した。続いて、追加の硫酸銅を濃度を上げて追加した。つまり、線維芽細胞培地の+0.5*初期銅濃度、+1*初期銅濃度、+2*初期銅濃度、+4*初期銅濃度、+8*初期銅濃度、+16*初期銅濃度及び+32*初期銅濃度。これは、銅濃度と他の変数の間の用量反応を行うためである。
【0125】
結果:硫酸銅は、用量依存的に、LOX及びLOXL1遺伝子発現、LOX活性、DESレベル(すべて好ましい;
図5)、及び不溶性コラーゲンレベル(好ましくない)を増加させた。硫酸銅はELN遺伝子発現に影響を与えなかった。
【0126】
結論:細胞培養培地に硫酸銅を追加すると、架橋エラスチン線維の蓄積に好ましい刺激効果があった。しかしながら、それはまた、不溶性コラーゲンレベルの蓄積に対して好ましくない刺激効果をもたらした。DESレベルに関する用量反応曲線は、線維芽細胞培地中、約+8
*初期銅濃度の銅濃度で上昇した(
図5)。
【0127】
6b.硫酸銅上でのレチノイン酸、ミノキシジル、及びヘパリンの潜在的な相乗効果を検証するための線維芽細胞培養
理論的根拠:細胞培養試験の第2部では、硫酸銅への他の物質の添加がエラスチンの発達/修復プロセスをさらに刺激するかどうかを評価した。
【0128】
方法:レチノイン酸、ミノキシジル、及びヘパリンを銅富化線維芽細胞培地に添加した(線維芽細胞培地中、+8*初期銅濃度の銅濃度)。
【0129】
結果(
図6):硫酸銅単剤療法とは対照的に、硫酸銅へのレチノイン酸の添加は、ELN遺伝子発現とトロポエラスチンレベルに刺激効果をもたらした。硫酸銅へのレチノイン酸の添加も、不溶性エラスチン濃度に追加の刺激効果があった。ただし、レチノイン酸はDESレベルに追加の影響はなかった。レチノイン酸は、LOX及びLOXL1遺伝子発現に対する硫酸銅単剤療法に追加の影響を与えなかった。硫酸銅へのミノキシジルの添加は、LOX、LOXL1、ELN及びフィブリン‐5遺伝子発現に刺激効果をもたらした。硫酸銅へのミノキシジルの添加は、硫酸銅単剤療法と比較して、トロポエラスチン、不溶性エラスチン及びDESレベルに追加の刺激効果をもたらした。硫酸銅へのミノキシジルの添加は、硫酸銅単剤療法と比較して、コラーゲンの蓄積に追加の刺激効果をもたらさなかった。しかしながら、ミノキシジルの添加はコラーゲン蓄積の抑制効果もなかった。硫酸銅へのヘパリンの添加は、LOX、LOXL1、ELN及びフィブリン‐5遺伝子発現のいずれかに対する硫酸銅単剤療法と比較して、追加の効果はなく;トロポエラスチンレベルには影響しなかった。硫酸銅へのヘパリンの添加は、硫酸銅単剤療法と比較して、総不溶性エラスチンレベルに対して小さな刺激効果をもたらした。ただし、DESレベルに追加の影響はなかった。さらに重要かつ驚くべきことに、硫酸銅へのヘパリンの添加は、硫酸銅単剤療法と比較して、コラーゲン蓄積に対して強力な抑制効果を示した。
【0130】
結論:レチノイン酸、ミノキシジル、及びヘパリンの添加は、硫酸銅単剤療法と比較して、エラスチンの発達と修復プロセスにいくつかの追加の影響を及ぼした。驚くべきことに、硫酸銅にヘパリンを添加すると、コラーゲンレベルに強い阻害効果があった。この試験から、ヘパリンは気腫の患者を治療して銅誘発性のコラーゲン蓄積を防ぐための銅の理想的な補助剤であると思われると結論付けた。
【0131】
6c.硫酸銅の上にビタミンKと硫酸マグネシウムの潜在的な相乗効果を検証するための線維芽細胞培養
理論的根拠:細胞培養試験の第3部では、硫酸銅への他の物質の添加がエラスチン分解速度を阻害するかどうかを評価した。
【0132】
方法:ビタミンK1、ビタミンK2、及び硫酸マグネシウムを銅富化線維芽細胞培地に添加した(線維芽細胞培地中、+8*初期銅濃度の銅濃度)。
【0133】
結果:硫酸銅へのビタミンK1、K2及び硫酸マグネシウムの添加は、ELN遺伝子発現、トロポエラスチンレベル、又はLOX及びLOXL1遺伝子発現に刺激効果を与えなかった。しかしながら、ビタミンK1、K2及び硫酸マグネシウムを硫酸銅に添加すると、不溶性エラスチンレベル及びDES蓄積に追加の刺激効果があった(
図7)。ビタミンK1、ビタミンK2、及び硫酸マグネシウムを硫酸銅に追加しても、硫酸銅単剤療法と比較して、コラーゲンの蓄積に対する追加の刺激効果はなかった。ただし、ビタミンK1、ビタミンK2、及び硫酸マグネシウムを添加しても、コラーゲンの蓄積を抑制する効果はなかった。
【0134】
結論:ビタミンK1、ビタミンK2、及び硫酸マグネシウムの添加は、硫酸銅単剤療法と比較して、エラスチンとDESの蓄積に追加の影響を及ぼした。ビタミンK1、ビタミンK2、及び硫酸マグネシウムはエラスチンの発達過程に影響を及ぼさなかったため、この効果の最も説得力のあるメカニズム的理由は、エラスチンの分解に対するビタミンK1、ビタミンK2、及び硫酸マグネシウムの阻害効果である。この試験から、ビタミンK1、ビタミンK2、及び硫酸マグネシウムは、気腫の患者を治療してエラスチンの分解速度を阻害するための銅の有用な補助剤であると結論付けた。
【0135】
7.ブタ膵臓エラスターゼの気管内投与により誘発された気腫
理論的根拠:細胞培養試験での硫酸銅にヘパリンを追加することのエラスチンとコラーゲン代謝の両方に対する非常に有望な効果に基づいて、我々はさらに、気腫の動物モデルでこれらの効果を評価した。
【0136】
方法:インビボでのエラスチンとコラーゲン代謝の両方に対する硫酸銅とヘパリンの影響を評価するために、ブタ膵臓エラスターゼ(PPE)による気腫モデルを使用した。試験は、約25gの開始体重で7週齢の雄BALB/cマウスで行われた。試験期間中、すべてのマウスは、フィルタートップケージで12/12時間の明暗サイクルで従来の動物ハウスに収容され、ペレット状の餌と水を自由に与えられた。25μL生理食塩水中の1.5Uのブタ膵臓エラスターゼを1日目に軽い麻酔下で気管内投与した。硫酸銅単剤療法(25μL生理食塩水で12.5μg;n=4)、硫酸銅(12.5μL生理食塩水で12.5μg)/ヘパリン(12.5μL生理食塩水で1,000IU;n=4)又はプラセボ(25μLの生理食塩水、n=4)のいずれかの25μLを、1、8、15、22、29日目に軽い麻酔下で気管内投与した。35日目に、キシラジン(8.5mg/kg)とケタミン(130mg/kg)の混合物でマウスを腹腔内麻酔し、マウスは気管切開され、全身プレチスモグラフに入れられて肺機能を評価した。肺機能測定後、ペントバルビタールの心臓内投与によりマウスを安楽死させた。左肺は液体窒素で急速冷凍され、ELN、LOX、及びLOXL1が測定される後続の遺伝子発現試験のために-80℃で保存される。右肺は、25cm液柱の一定の静水圧で24時間、6%パラホルムアルデヒドで固定した。脱水してパラフィンに包埋した後、矢状切片をさまざまな染色剤で染色し、組織学的分析に使用して空域の拡大(平均線形切片)を測定する。その後、この肺はDESと不溶性コラーゲンの両方の濃度を測定するために使用された。脳を取り出して銅濃度を測定した。
【0137】
結果:プラセボ群のマウスの肺機能検査では、硫酸銅及び硫酸銅/ヘパリン群よりも多くの過膨張が見られた(
図8)。硫酸銅と硫酸銅/ヘパリンを投与されたマウスでは、プラセボを投与されたマウスよりも肺組織のDESレベルが高かった(
図9)。硫酸銅及び硫酸銅/ヘパリンを投与されたマウスでは、プラセボを投与されたマウスよりも平均線形切片が低かった(
図8、10、及び11)。硫酸銅単剤療法を受けたマウスでは、プラセボと比較して、不溶性コラーゲンとヒドロキシプロリンのレベルが上昇した(
図9)。不溶性コラーゲンとヒドロキシプロリンのレベルは、硫酸銅/ヘパリンを投与されたマウスでは、硫酸銅単剤治療を受けたマウスと比較して有意に低く、プラセボを投与されたマウスと比較して少し低かった。ヘパリンは抗凝固剤としてよく知られている。しかし、気管内投与されたヘパリンは、マウスの全身性凝固に影響を与えなかった。
【0138】
結論:硫酸銅はエラスチン修復プロセスを非常に効果的に刺激するが、肺のコラーゲン線維の蓄積と成熟も誘導することを発見した。硫酸銅とヘパリンの組み合わせにより、損傷したエラスチン線維の修復が非常に効果的に促進され(硫酸銅の単剤療法よりもずっと優れている)、硫酸銅の単剤療法とは対照的に、硫酸銅とヘパリンはコラーゲンの蓄積につながらないことがわかった。コラーゲンとヒドロキシプロリンのレベルは、硫酸銅/ヘパリンによる治療後はプラセボによる治療後よりもさらに低かった。それにより、吸入されたヘパリンは、銅によるコラーゲンの蓄積を防ぎ、エラスチン修復プロセスを刺激するために、銅を含む吸入製剤のアジュバントとして理想的な化合物である。
【0139】
8.レーザー回折分析法を使用したヘパリンナトリウム及び硫酸銅溶液の噴霧の分析
理論的根拠:ヘパリンと銅の両方からなる溶液を、一般的に使用されるネブライザシステムで噴霧できるかどうか、及び粒子の適切な割合が5μm未満になるかどうかを知ることが重要である。
【0140】
方法1:比較的低濃度の銅とヘパリンを使用して噴霧実験を開始した。26mgのヘパリンナトリウム(191IU/mg)を1mLの塩化ナトリウム0.9%に溶解し、12.5mgの硫酸銅(5mg銅)を10mLの塩化ナトリウム0.9%に溶解し、そのうち1mLを使用した。3mLの塩化ナトリウム0.9%を1mLのヘパリンナトリウム(5,000IU)溶液と1mLの硫酸銅(0.5mg銅)溶液に加えた。5mLの噴霧溶液を再利用可能なネブライザー(PARILC(登録商標)Plus)にロードし、コンプレッサー(PARIBOY(登録商標)SX)で噴霧した。エアロゾルは、ネブライザーがスパッタし始めるまで、レーザー回折分析(LDA)を使用して30秒ごとに分析された。
【0141】
結果1:噴霧時間は約3分であった。X
10は0.81μm、X
50は2.34μm、及びX
90は6.58μmであった。5μm未満の粒子の割合は82.44%であった(
図12)。実験1の重複測定を行った。噴霧時間は約3分、X10は0.80μm、X
50は2.29μm、X
90は6.34μm、5μm未満の粒子の割合は83.58%であった(
図13)。
【0142】
方法2:100,000IUのヘパリン硫酸塩と1mgの銅を溶液で混合し、合計体積5mLになるように0.9%の塩化ナトリウムを追加した。
【0143】
結果2:噴霧時間は約4分であった。X
10は0.80μm、X
50は2.32μm、及びX
90は6.86μmであった(
図14)。5μm未満の粒子の割合は82.13%であった。実験2の重複測定を行った。噴霧時間は約5分、X
10は0.80μm、X
50は2.33μm、X
90は7.05μm、5μm未満の粒子の割合は81.19%であった(
図15)。
【0144】
結論:噴霧製剤にヘパリンと銅を組み合わせることができ、一般的に使用されるネブライザーシステムを使用すると、5μm未満の粒子の割合が高くなり、ヒトの肺の対象となる肺胞領域に効果的に到達する。
【0145】
参考文献一覧
1. the Global Strategy for the Diagnosis, Management and Prevention of COPD, Global Initiative for Chronic Obstructive Lung Disease (GOLD) 2017.から。http://goldcopd.org.から入手可能。(COPDの診断、管理、及び予防のためのグローバル戦略、慢性閉塞性肺疾患(GOLD)のためのグローバルイニシアチブ。)
2. Finlay GA, O'Donnell MD, O'Connor CM, et al. Elastin and collagen remodeling in emphysema. A scanning electron microscopy study. Am J Pathol. 1996;149:1405-15. (気腫におけるエラスチンとコラーゲンのリモデリング。走査型電子顕微鏡による研究。)
3. Turino GM, Ma S, Lin YY, et al. Matrix elastin: a promising biomarker for chronic obstructive pulmonary disease. Am J Respir Crit Care Med. 2011;184:637-41. (マトリックスエラスチン:慢性閉塞性肺疾患の有望なバイオマーカー。)
4. Mithieux SM, Weiss AS. Elastin. Adv Protein Chem. 2005;70:437-61.(エラスチン)
5. Umeda H, Aikawa M, Libby P. Liberation of desmosine and isodesmosine as amino acids from insoluble elastin by elastolytic proteases. Biochem Biophys Res Commun. 2011;411:281-6. (エラストリティックプロテアーゼによる不溶性エラスチンからのアミノ酸としてのデスモシン及びイソデスモシンの遊離)
【0146】
6. Bostancioglu K, Mecham RP, Wallach JM. Elastolysis of normal and partially cross-linked elastin. Biochem Int. 1987;15:263-9.(正常及び部分的に架橋されたエラスチンの弾性溶解。)
7. Tinker D, Romero-Chapman N, Reiser K, et al. Elastin metabolism during recovery from impaired crosslink formation. Arch Biochem Biophys. 1990;278:326-32.(損なわれた架橋形成からの回復中のエラスチン代謝。)
8. Liu X, Zhao Y, Gao J, et al. Elastic fiber homeostasis requires lysyl oxidase-like 1 protein. Nat Genet. 2004;36:178-82.(弾性線維の恒常性にはリシルオキシダーゼ様1タンパク質が必要である。)
9. Ma S, Lin YY, Cantor JO, et al. The Effect of Alpha-1 Proteinase Inhibitor on Biomarkers of Elastin Degradation in Alpha-1 Antitrypsin Deficiency: An Analysis of the RAPID/RAPID Extension Trials. Chronic Obstr Pulm Dis. 2016;4:34-44. (アルファ‐1アンチトリプシン欠乏症におけるエラスチン分解のバイオマーカーに対するアルファ‐1プロテイナーゼ阻害剤の影響:RAPID/RAPID延長試験の分析。)
10. Eurlings IM, Dentener MA, Cleutjens JP, et al. Similar matrix alterations in alveolar and small airway walls of COPD patients. BMC Pulm Med. 2014;14:90.(COPD患者の肺胞壁及び小気道壁における類似のマトリックス変化。)
【0147】
11. Kranenburg AR, Willems-Widyastuti A, Moori WJ, et al. Enhanced bronchial expression of extracellular matrix proteins in chronic obstructive pulmonary disease. Am J Clin Pathol. 2006;126:725-35.(慢性閉塞性肺疾患における細胞外マトリックスタンパク質の強化された気管支発現。)
12. Tinker D, Geller J, Romero N, et al. Tropoelastin production and tropoelastin messenger RNA activity. Relationship to copper and elastin cross-linking in chick aorta. Biochem J. 1986;237:17-23.(トロポエラスチン産生及びトロポエラスチンメッセンジャーRNA活性。ニワトリ大動脈における銅とエラスチンの架橋との関係。)
13. Maclay JD, McAllister DA, Rabinovich R, et al. Systemic elastin degradation in chronic obstructive pulmonary disease. Thorax. 2012;67:606-12.(慢性閉塞性肺疾患における全身性エラスチン分解。)
14. Mahoney MG, Brennan D, Starcher B, et al. Extracellular matrix in cutaneous ageing: the effects of 0.1% copper-zinc malonate-containing cream on elastin biosynthesis. Exp Dermatol. 2009;18:205-11.(皮膚の老化における細胞外マトリックス:エラスチン生合成に対する0.1%銅亜鉛マロン酸含有クリームの効果。)
15. O'Dell BL, Kilburn KH, McKenzie WN, et al. The lung of the copper-deficient rat. A model for developmental pulmonary emphysema. Am J Pathol. 1978;91:413-32.(銅欠乏ラットの肺。発達性肺気腫のモデル。)
【0148】
16. Soskel NT, Watanabe S, Sandberg LB. Mechanisms of lung injury in the copper-deficient hamster model of emphysema. Chest. 1984;85(6 Suppl):70S-73S.(気腫の銅欠乏ハムスターモデルにおける肺損傷のメカニズム。)
17. Lucey EC, Keane J Kuang PP, et al. Severity of elastase-induced emphysema is decreased in tumor necrosis factor-alpha and interleukin-1beta receptor-deficient mice. Lab Invest. 002;82:79-85.(エラスターゼ誘発性気腫の重症度は、腫瘍壊死因子‐α及びインターロイキン‐1β受容体欠損マウスで減少している。)
18. Vuillemenot BR, Rodriguez JF, Hoyle GW. Lymphoid tissue and emphysema in the lungs of transgenic mice inducibly expressing tumor necrosis factor-alpha. Am J Respir Cell Mol Biol. 2004;30:438-48.(腫瘍壊死因子‐アルファを誘導的に発現するトランスジェニックマウスの肺のリンパ組織と気腫。)
19. Liu L, Geng X, McDermott J, et al. Copper Deficiency in the Lungs of TNF-α Transgenic Mice. Front Physiol. 2016;7:234.(TNF‐αトランスジェニックマウスの肺の銅欠乏。)
20. McDonald FJ. COMMD1 and ion transport proteins: what is the COMMection? Focus on "COMMD1 interacts with the COOH terminus of NKCC1 in Calu-3 airway epithelial cells to modulate NKCC1 ubiquitination". Am J Physiol Cell Physiol. 2013;305:C129-30.(COMMD1とイオン輸送タンパク質:COMMectionとは何か?「COMMD1はCalu‐3気道上皮細胞のNKCC1のCOOH末端と相互作用して、NKCC1ユビキチン化を調節する」ことへの焦点。)
【0149】
21. Besiktepe N, Kayalar O, Ersen E, et al. The copper dependent-lysyl oxidases contribute to the pathogenesis of pulmonary emphysema in chronic obstructive pulmonary disease patients. J Trace Elem Med Biol. 2017;44:247-55.(銅依存性リシルオキシダーゼは、慢性閉塞性肺疾患患者の肺気腫の病因に貢献している。)
22. Mutti A, Corradi M, Goldoni M, et al. Exhaled metallic elements and serum pneumoproteins in asymptomatic smokers and patients with COPD or asthma. Chest. 2006;129:1288-97.(無症候性の喫煙者とCOPD又は喘息の患者における呼気金属元素と血清肺タンパク質。)
23. Grange DK, Kaler SG, Albers GM, et al. Severe bilateral panlobular emphysema and pulmonary arterial hypoplasia: unusual manifestations of Menkes disease. Am J Med Genet A. 2005;139A:151-5.(重度の両側小葉性肺気腫及び肺動脈低形成:メンケス病の異常な症状。)
24. Shute JK, Calzetta L, Cardaci V, et al. Inhaled nebulised unfractionated heparin improves lung function in moderate to very severe COPD: A pilot study. Pulm Pharmacol Ther. 2018;48:88-96.(吸入噴霧された未分画ヘパリンは中程度から非常に重度のCOPDで肺機能を改善する:パイロット研究。)
25. Shute JK, Puxeddu E, Calzetta L. Therapeutic use of heparin and derivatives beyond anticoagulation in patients with bronchial asthma or COPD. Curr Opin Pharmacol. 2018;40:39-45.(気管支喘息又はCOPD患者における抗凝固療法以外のヘパリン及び誘導体の治療的使用。)
【0150】
26. Setozaki S, Minakata K, Masumoto H, et al. Prevention of abdominal aortic aneurysm progression by oral administration of green tea polyphenol in a rat model. J Vasc Surg. 2017;65:1803-12.(ラットモデルにおける緑茶ポリフェノールの経口投与による腹部大動脈瘤の進行の防止。)
27. Isenburg JC, Simionescu DT, Starcher BC, et al. Elastin stabilization for treatment of abdominal aortic aneurysms. Circulation. 2007;115:1729-37.(腹部大動脈瘤の治療のためのエラスチン安定化。)
28. Sinha A, Nosoudi N, Vyavahare N. Elasto-regenerative properties of polyphenols. Biochem Biophys Res Commun. 2014;444:205-11.(ポリフェノールの弾性再生特性。)
29. Barber T, Esteban-Pretel G, Marin MP, et al. Vitamin a deficiency and alterations in the extracellular matrix. Nutrients. 2014;6:4984-5017.(ビタミンA欠乏症と細胞外マトリックスの変化。)
30. Frankenberger M, Hauck RW, Frankenberger B, et al. All trans-retinoic acid selectively down-regulates matrix metalloproteinase-9 (MMP-9) and up-regulates tissue inhibitor of metalloproteinase-1 (TIMP-1) in human bronchoalveolar lavage cells. Mol Med. 2001;7:263-70.(すべてのトランスレチノイン酸は選択的にマトリックスメタロプロテイナーゼ‐9(MMP‐9)をダウンレギュレートし、ヒト気管支肺胞洗浄細胞におけるメタロプロテイナーゼ‐1(TIMP‐1)の組織阻害剤をアップレギュレートする。)
【0151】
31. Brooks AD, Tong W, Benedetti F, et al. Inhaled aerosolization of all-trans-retinoic acid for targeted pulmonary delivery. Cancer Chemother Pharmacol. 2000;46:313-8.(標的肺送達のためのオールトランスレチノイン酸の吸入エアロゾル化。)
32. Frankenberger M, Heimbeck I, Moller W, et al. Inhaled all-trans retinoic acid in an individual with severe emphysema. Eur Respir J. 2009;34:1487-9.(重度の気腫のある人のオールトランス型レチノイン酸の吸入。)
33. Coquand-Gandit M, Jacob MP, Fhayli W, et al. Chronic Treatment with Minoxidil Induces Elastic Fiber Neosynthesis and Functional Improvement in the Aorta of Aged Mice. Rejuvenation Res. 2017;20:218-30.(ミノキシジルによる慢性治療は老齢マウスの大動脈において弾性線維の新合成と機能改善を誘発する。)
34. Slove S, Lannoy M, Behmoaras J, et al. Potassium channel openers increase aortic elastic fiber formation and reverse the genetically determined elastin deficit in the BN rat. Hypertension. 2013;62:794-801.(カリウムチャネル開口薬は大動脈弾性線維形成を増加させ、BNラットの遺伝的に決定されたエラスチン欠損を逆転させる。)
35. Tajima S, Hayashi A, Suzuki T, et al. Stimulation of elastin expression by minoxidil in chick skin fibroblasts. Arch Dermatol Res. 1995;287:494-7.(ヒヨコ皮膚線維芽細胞におけるミノキシジルによるエラスチン発現の刺激。)
【0152】
36. Hayashi A, Suzuki T, Wachi H, et al. Minoxidil stimulates elastin expression in aortic smooth muscle cells. Arch Biochem Biophys. 1994;315:137-41.(ミノキシジルは大動脈平滑筋細胞のエラスチン発現を刺激する。)
37. Raveaud S, Mezin P, Lavanchy N, et al. Effects of chronic treatment with a low dose of nicorandil on the function of the rat aorta during ageing. Clin Exp Pharmacol Physiol. 2009;36:988-94.(老化中のラット大動脈の機能に対する低用量のニコランジルによる慢性治療の効果。)
38. Li DD, Zhang W, Wang ZY, et al. Serum Copper, Zinc, and Iron Levels in Patients with Alzheimer's Disease: A Meta-Analysis of Case-Control Studies. Front Aging Neurosci. 2017;9:300.(アルツハイマー病患者の血清中の銅、亜鉛、及び鉄のレベル:症例コントロール研究のメタ分析。)
39. Harris ED, Rayton JK, Balthrop JE, et al. Copper and the synthesis of elastin and collagen. Ciba Found Symp. 1980;79:163-82.(銅及びエラスチンとコラーゲンの合成。)
【0153】
本発明は、例示された実施形態に関連して説明されてきたが、それらは、それらの実施形態に限定することを意図していないことが理解されよう。それどころか、本発明は、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明内に含まれ得るすべての代替物、修正物、及び均等物を網羅することを意図している。