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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-21
(45)【発行日】2023-08-29
(54)【発明の名称】アナライトの検出およびそのための方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/543 20060101AFI20230822BHJP
【FI】
G01N33/543 501D
【請求項の数】 26
(21)【出願番号】P 2021054838
(22)【出願日】2021-03-29
(62)【分割の表示】P 2017555682の分割
【原出願日】2016-04-27
(65)【公開番号】P2021103183
(43)【公開日】2021-07-15
【審査請求日】2021-04-28
(31)【優先権主張番号】62/153,523
(32)【優先日】2015-04-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/155,486
(32)【優先日】2015-05-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517367489
【氏名又は名称】オルフィディア リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ラチャミン,アーロン
(72)【発明者】
【氏名】レイビー,ジェイコブ
【審査官】海野 佳子
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-522581(JP,A)
【文献】特表2015-505828(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0227725(US,A1)
【文献】特開2007-024498(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48-33/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アッセイのシグナルのダイナミックレンジを制御するための方法であって、
サンプル中の1つ以上の標的アナライトを提供することと、
前記1つ以上の標的アナライトをコンジュゲート化結合試薬および非コンジュゲート化結合試薬の混合物と接触させることであって、前記コンジュゲート化結合試薬および前記非コンジュゲート化結合試薬が前記1つ以上の標的アナライトに対して特異的である、接触させることと、
前記1つ以上の標的アナライトと前記コンジュゲート化結合試薬および前記非コンジュゲート化結合試薬の前記混合物との間の相互作用を測定することと、
前記混合物中の前記コンジュゲート化結合試薬と前記非コンジュゲート化結合試薬の比率を調整することによってアッセイのシグナルのダイナミックレンジを制御することと、
前記1つ以上の標的アナライトと前記混合物との間の相互作用の測定の結果に基づいて、およびアッセイのシグナルのダイナミックレンジの制御に基づいて、前記サンプル中の前記1つ以上の標的アナライトを定量的に決定することと、
を含み、
前記混合物中の1つ以上のコンジュゲート化アナライトの比率の調整が計算装置によって実行され、
前記比率が、モル比、重量比および体積比ならびにそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、
方法。
【請求項2】
前記標的アナライトのそれぞれの濃度を決定することをさらに含む、請求項1の方法。
【請求項3】
1つ以上のコンジュゲート化アナライトを前記サンプルに添加することと、前記1つ以上の標的アナライトの希釈を生じさせることと、をさらに含む、請求項1または請求項2の方法。
【請求項4】
1つ以上の非コンジュゲート化アナライトを前記サンプルに添加することと、前記1つ以上の標的アナライトの希釈を生じさせることと、をさらに含む、請求項1~3のいずれか1項の方法。
【請求項5】
前記コンジュゲート化結合試薬または前記非コンジュゲート化結合試薬には以下のうちの1つ以上が包含される、請求項1~4のいずれか1項の方法:抗体、抗原、アプタマー、ペプチド、タンパク質、およびオリゴヌクレオチド。
【請求項6】
前記コンジュゲート化結合試薬には、酵素、タンパク質、フルオロフォア、ストレプトアビジン、アビジン、抗体、抗原、アプタマーおよびオリゴヌクレオチドからなる群より選択されるコンジュゲートと連結された結合試薬が包含される、請求項1~5のいずれか1項の方法。
【請求項7】
前記1つ以上の標的アナライトには以下のうちの1つ以上が包含される、請求項1~6のいずれか1項の方法:抗原、抗体、核酸、炭水化物、脂質、ペプチド、タンパク質、ポリマー、およびそれらの任意の組み合わせ。
【請求項8】
前記サンプルには生体液サンプルが包含される、請求項1~7のいずれか1項の方法。
【請求項9】
アッセイのシグナルのダイナミックレンジを制御するための方法であって、
サンプル中の1つ以上の標的アナライトを提供することと、
前記1つ以上の標的アナライトを少なくとも1つの結合試薬を含む混合物と接触させることであって、前記結合試薬が前記1つ以上の標的アナライトに対して特異的である、接触させることと、
前記1つ以上の標的アナライトと前記混合物との間の相互作用を測定することと、
1つ以上のコンジュゲート化アナライトを前記サンプルに添加して前記1つ以上の標的アナライトの希釈を生じさせることと、
前記混合物中の前記1つ以上のコンジュゲート化アナライトの比率を調整することによってアッセイのシグナルのダイナミックレンジを制御することと、
前記1つ以上の標的アナライトと前記混合物との間の相互作用の測定の結果に基づいて、およびアッセイのシグナルのダイナミックレンジの制御に基づいて、前記サンプル中の前記1つ以上の標的アナライトを定量的に決定することと、
を含み、
前記混合物中の1つ以上のコンジュゲート化アナライトの比率の調整が計算装置によって実行され、
前記比率が、モル比、重量比および体積比ならびにそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、
方法。
【請求項10】
前記少なくとも1つの結合試薬には非コンジュゲート化結合試薬が包含される、請求項9の方法。
【請求項11】
前記非コンジュゲート化結合試薬には以下のうちの1つ以上が包含される、請求項10の方法:抗体、抗原、アプタマー、ペプチド、タンパク質、およびオリゴヌクレオチド。
【請求項12】
前記少なくとも1つの結合試薬にはコンジュゲート化結合試薬が包含される、請求項9~11のいずれか1項の方法。
【請求項13】
前記コンジュゲート化結合試薬には以下のうちの1つ以上が包含される、請求項12の方法:抗体、抗原、アプタマー、ペプチド、タンパク質、およびオリゴヌクレオチド。
【請求項14】
前記コンジュゲート化結合試薬には、酵素、タンパク質、フルオロフォア、ストレプトアビジン、アビジン、抗体、抗原、アプタマーおよびオリゴヌクレオチドからなる群より選択されるコンジュゲートと連結された結合試薬が包含される、請求項12または13の方法。
【請求項15】
1つ以上の非コンジュゲート化アナライトを前記サンプルに添加することと、前記1つ以上の標的アナライトの希釈を生じさせることと、をさらに含む、請求項9~14のいずれか1項の方法。
【請求項16】
前記1つ以上の標的アナライトには以下のうちの1つ以上が包含される、請求項9~15のいずれか1項の方法:抗原、抗体、核酸、炭水化物、脂質、ペプチド、タンパク質、ポリマー、およびそれらの任意の組み合わせ。
【請求項17】
前記サンプルには生体液サンプルが包含される、請求項9~16のいずれか1項の方法。
【請求項18】
アッセイのシグナルのダイナミックレンジを制御するための方法であって、
(i)サンプル中の1つ以上の標的アナライトを提供することと、
(ii)前記1つ以上の標的アナライトを少なくとも1つの結合試薬を含む混合物と接触させることであって、前記結合試薬が前記1つ以上の標的アナライトに対して特異的である、接触させることと、
(iii)前記1つ以上の標的アナライトと前記混合物との間の相互作用を測定することと、
(iv)1つ以上の改変アナライトを前記サンプルに添加することと、
(v)前記混合物中の前記1つ以上の改変アナライトの比率を調整することによってアッセイのシグナルのダイナミックレンジを制御することと、
を含む方法。
【請求項19】
前記1つ以上の改変アナライトには、前記1つ以上の標的アナライト内の構造と同じ構造を有する分子が包含される、請求項18の方法。
【請求項20】
前記1つ以上の改変アナライトには、前記標的アナライトのうちの少なくとも1つのサブユニットが包含される、請求項18の方法。
【請求項21】
1つ以上のコンジュゲート化アナライトを前記サンプルに添加して前記1つ以上の標的アナライトの希釈を生じさせるステップをさらに含んでもよい、請求項18の方法。
【請求項22】
前記少なくとも1つの結合試薬には、非コンジュゲート化結合試薬またはコンジュゲート化結合試薬が包含される、請求項18の方法。
【請求項23】
アッセイのシグナルのダイナミックレンジを制御するためのシステムであって、
サンプル中の1つ以上の標的アナライトを提供して前記1つ以上の標的アナライトをコンジュゲート化結合試薬および非コンジュゲート化結合試薬の混合物と接触させるための容器であって、前記コンジュゲート化結合試薬および前記非コンジュゲート化結合試薬が前記1つ以上の標的アナライトに対して特異的である、容器と、
前記1つ以上の標的アナライトと前記コンジュゲート化結合試薬および前記非コンジュゲート化結合試薬の前記混合物との間の相互作用を測定するように構成されたセンサーと、
前記サンプル中の前記コンジュゲート化結合試薬と前記非コンジュゲート化結合試薬の比率を調整することによってアッセイのシグナルのダイナミックレンジを制御するように構成された制御器と、
を含むシステム。
【請求項24】
前記標的アナライトのそれぞれの濃度を決定するように構成された分析装置をさらに含む、請求項23のシステム。
【請求項25】
前記センサーには、以下のうちの1つ以上が包含されてもよい、請求項23のシステム:比色センサー、蛍光センサー、測光センサーおよび分光測定装置。
【請求項26】
前記分析装置は、前記センサーに動作可能に接続された計算装置を含んでもよい、請求項24のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、アナライトの検出に関する。より具体的には、本技術は、サンプル中の細胞型を同定するための方法およびシステムに関する。本技術はまた、アナライトの検出のためにアッセイの定量化のダイナミックレンジを制御するための方法およびシステムにも関する。
【0002】
関連出願
本出願は、2015年4月28日に出願された「Method and System for Identifying Cells in Blood Samples by Adding Antibodies Specific to Clusters of Differentiation」というタイトルの米国仮出願第62/153,523号の恩典を主張し、この仮出願の内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0003】
本出願は、2015年5月1日に出願された「Method and System for Controlling Dynamic Range of Assay Quantification for Analyte Detection」というタイトルの米国仮出願第62/155,486号の恩典を主張し、この仮出願の内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0004】
アナライトの検出は依然として、医療用途だけでなく、広く農業および獣医学の用途にも重要なツールである。血球数は、重要な診断ツールであり、これは、患者の健康に関する有益な情報を提供する。全血球計算は、患者の血液の単位体積あたりの様々なタイプの血液細胞の数を決定する。計数される血液細胞のタイプの1つが白血球(WBC)である。循環中の白血球が高レベルであることは、細菌感染症および/または炎症の発症を示し、血液サンプル中の白血球の分化に関する情報は、アレルギー反応、白血病、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、および免疫系の全体的な状態など、ある特定の状態に関する詳細な情報を提供し得る。赤血球の数の増加は、貧血および骨髄障害など、いくつかの状態の発症を示し得る。循環中の血小板の数の変化は、患者における出血または血栓のリスクを警告し得るし、それはまた、ウイルス感染症の発症も示し得る。
【0005】
Clusters of differentiation(CD)抗原は、種々のタイプの白血球ならびに赤血球および血小板の同定のために広く用いられる、血液細胞の表面上に発現される膜タンパク質である。分化抗原群(clusters of differentiation)の命名法は、the First International Workshop and Conference on Human Leukocyte Differentiation Antigens(HLDA)において提案および確立された。世界中で免疫学者が、白血球の細胞表面分子と反応するモノクローナル抗体を多数作製したが、これらの抗体はそれぞれ、異なる命名法と関連していた。比較研究がない場合、同じ分子が複数の抗体によって認識されるのかどうかを知ることが不可能であることが多かった。このワークショップの取り組みは、抗体をコード化および分類すること、ならびに、それらを複数の参加研究室に送って、複数の細胞型を比較させるブラインド分析を行うことであった。得られたデータは照合され、「クラスター分析」の統計学的手順によって分析された。この分析法により、分化の様々な段階にある白血球への結合のパターンが非常に類似している抗体のクラスターが同定された。このように、「分化抗原群(clusters of differentiation)」(CD)の命名法が作り出された。分化抗原群の命名法により、科学界は、共通する言葉で結果を伝えることが可能となった。
【0006】
分化抗原群の命名法は、同一の抗原を認識する、種々の供給源に由来する種々のモノクローナル抗体を定義する。提案された表面分子は、2種の特異的モノクローナル抗体がその分子に結合することが示されると、CD番号を割り当てられる。2種の一般に使用されるCD分子はCD4およびCD8であり、これらは一般に、Tリンパ球の2種の異なる亜型であるヘルパーT細胞および細胞傷害性T細胞のマーカーとしてそれぞれ使用される。CD4はHIVによって特異的に認識および結合され、これは、ウイルス感染およびCD4+T細胞の破壊をもたらす。同時に、多くの場合、HIVに感染した人においてCD8+細胞の割合の増加が観察される。従って、HIV感染症を診断するための従来の手法は、CD4+の数、CD4+の割合およびCD4+/CD8+の比率のモニタリングを含んでいる。
【0007】
細胞の計数および識別の方法の開発は、1世紀以上前に始まった。血球計数のための最も古い方法の1つは、血球計算盤を使用する。これらは、チャンバーを成す四角のくぼみを有する厚いガラスの顕微鏡用スライドからなる手動の細胞計数装置である。このチャンバーには、レーザーでエッチングされた垂直な線の格子が刻まれている。この装置は、線によって区切られた面積が既知であるように、およびチャンバーの深さも既知であるように慎重に作られる。従って、特定の体積の流体(例えば、血液)中の細胞または粒子の数を計数し、それにより流体全体における細胞の濃度を算出することが可能である。
【0008】
細胞計数の別の方法は、フローサイトメトリーと呼称される。これは、流体の流れの中に細胞を浮遊させ、それらを電子的検出装置に通すことによる、細胞計数だけでなく細胞選別、バイオマーカーの検出およびタンパク質工学においても使用される、現代のレーザーを利用した生物物理学的技術である。これは、1秒あたり最大数千個の粒子の物理的特性および化学的特性の複数のパラメータの同時分析を可能にする。
【0009】
フローサイトメトリーは、健康障害(特に血液癌)の診断に日常的に使用されているが、基礎研究、診療、および臨床試験における他の用途を数多く有する。一般的な変形は、目的の集団を精製するために粒子を、それらの特性に基づいて物理的に分類することである。
【0010】
病原体の検出および同定の方法も数多く知られている。その最も古い方法の1つがグラム染色である。グラム法とも呼称されるグラム染色は、細菌種を2つの大きな群(グラム陽性とグラム陰性)に区別する方法である。グラム染色は、グラム陽性細菌の厚い層に存在するペプチドグリカンを検出することにより、細菌の細胞壁の化学的特性および物理的特性によって細菌を区別する。グラム染色試験において、グラム陽性細菌はクリスタルバイオレット色素を保持するが、クリスタルバイオレットの後に添加される対比染色剤(通常はサフラニンまたはフクシン)は、全てのグラム陰性細菌に赤色またはピンク色の着色をもたらす。グラム染色は、ほぼ常に、細菌性生物の同定における最初のステップである。グラム染色は、臨床の場および研究の場の両方において有用な診断ツールであるが、この技術によって全ての細菌を決定的に分類できるわけではない。
【0011】
ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)は、デオキシリボ核酸(DNA)の鎖の特定の領域を数桁にわたって増幅するために使用される分子生物学における別の技術であり、特定のDNA配列を数千~数百万コピー生成する。PCRは、白血病およびリンパ腫などの悪性疾患の早期診断を可能にし、これは、現在、癌の研究において最も発展しており、既に日常的に使用されている。生物の培養も、腸内の細菌性病原体の臨床診断試験において使用されている。培養においてサンプルは、通常は非標的種に対する阻害剤を含む、調査される病原体に対して選択的な培地においてインキュベートされることが多い。その後、病原体の増殖を光学的に決定できる。これらの培養法には、顕微鏡観察薬物感受性アッセイ(Microscopic Observation Drug Susceptibility assay)(MODS)が包含される。これは、現在の培養を利用した結核検査と比べて、より感度が高く、より迅速で、より安価な検査であることが示されている培養法である。顕微鏡観察薬物感受性アッセイは、結核菌(Mycobacterium tuberculosis)の直接的な観察を伴い、同時に薬物耐性をもたらす。
【0012】
免疫磁気分離(IMS)は、体液または培養細胞から効率的に細胞を単離できる別の方法である。これはまた、食物、血液または糞便の病原性を定量化する方法として使用することもできる。DNA分析は、この技術とPCRの両方の併用を支持している。免疫磁気分離法は、抗体またはレクチンを介して細胞に小さな磁化可能な粒子を付着させることに基づく。混合された細胞集団が磁場中に置かれると、ビーズが付着した細胞は磁石に引き寄せられることになり、従って、標識されていない細胞から分離され得る。いくつかの型のビーズが利用可能であり、その一部は細胞選別用に特別に設計されており、他のものは分子(特に核酸)の精製用に設計されているが必要に応じて細胞選別に適合させることができる。種々のタイプのビーズが同じ原理で機能するが、細胞を分離するのに必要な磁場の強さはビーズのサイズによって異なる。
【0013】
抗体で被覆された常磁性ビーズは、細胞の表面上に存在する抗原に結合することになり、従って、細胞を捕捉し、これらのビーズが付着した細胞の濃縮を促進する。濃縮プロセスは、自身にビーズを引き付ける、試験管の側面に配置された磁石によってなされる。標的病原体に特異的な抗原を標的化するために、およびサンプルから病原体を分離するために、抗体で被覆された磁気ビーズを用いることができる。
【0014】
酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)は、抗体および色の変化を利用して物質を同定する、さらに別の試験である。ELISAは、固相酵素免疫測定法(EIA)を用いて液体サンプルまたは湿潤サンプルの中の物質(通常は抗原)の存在を検出する、「ウェットラボ」型の分析的生化学アッセイの一般的な形式である。ELISAは、医学および植物病理学における診断ツールとして、ならびに様々な産業における品質管理チェックとして、使用されている。ELISAの実施は、特定の抗原に対する特異性を有する少なくとも1種の抗体を伴う。未知の量の抗原を有するサンプルが固体支持体(通常はポリスチレンのマイクロタイタープレート)上に、(その表面への吸着によって)非特異的に、あるいは(「サンドイッチ」ELISAでは、同じ抗原に対して特異的な別の抗体による捕捉によって)特異的に、固定される。抗原が固定された後、検出抗体が添加され、抗原と複合体を形成する。検出抗体は、酵素に共有結合で連結されていてよく、または、バイオコンジュゲーションにより酵素に連結された二次抗体によってそれ自身が検出されてよい。
【0015】
このように、血液サンプル中の細胞型を識別する、当技術分野で公知の方法がいくつか存在する。しかし、これらの方法は、満足のいく結果を常にもたらすわけではなく、複雑で時間のかかる、かさばる装備を必要とする。従って、当技術分野では、血液サンプル中の細胞型を識別するための方法を改善することが依然として必要とされている。
【0016】
免疫測定法は、抗原-抗体相互作用によって形成される免疫複合体の原理に基づいて生体サンプル中の1つ以上の標的アナライトの存在または量を検出するために使用される生物学的分析法である。これらのアッセイは一般に、抗原-抗体複合体を利用して、サンプル中に存在する1つ以上のアナライトの量を示す測定可能なシグナルを生じさせる。免疫測定法は、疾患の診断、創薬、および医薬の分析において広く使用されている。
【0017】
アナライトの検出および定量化のために、種々のタイプの免疫測定法が用いられ、これらはそれぞれ、特定の用途に適している。酵素免疫測定法は、標的アナライト(抗原または抗体)への特異的結合のための、酵素で標識された試薬を利用する。結合した試薬は、「現像液」などの適切な基質を添加すると有色の、蛍光性の、発光性の、またはその他の方法で改変された、生成物をもたらす酵素活性を尺度として定量化される。競合的免疫測定法では、酵素がコンジュゲートされたアナライトが、支持体表面上にコーティングされた捕捉抗体上の結合部位に関して、サンプル中に存在するアナライトと競合する。サンプル中のアナライトの濃度が高くなるにつれて、抗体へのコンジュゲート化アナライトの結合は少なくなる。
【0018】
アッセイのダイナミックレンジは、その範囲にわたって正確な測定がなされ得る、標的アナライトの濃度の範囲である。サンプル中の標的分子の濃度がアッセイのダイナミックレンジの範囲内にあることが重要である。アッセイのダイナミックレンジは、読み取り装置の検出限界、現像液または他の基質の現像速度、インキュベーション時間等などの要因によって影響され得る。例えば、高濃度のアナライトに結合したレポーターからの蛍光シグナルが高すぎる場合には、光学センサー(例えば、フォトダイオード)が飽和している可能性があり、その結果、実際の光のレベルを正確に読み取ることができず、従って、アナライト濃度を決定できない。同様に、現像液の現像速度が速すぎる場合には、測定が行われる前に現像液が完全に現像された状態になる可能性があり、その結果、現像液がどの程度速く現像されたかを正確に決定できず、従って、正確なアナライト濃度を決定できない。既存のマルチプレックスアッセイ法では、アッセイ性能のダイナミックレンジを向上させるために、段階希釈法の使用、フローサイトメトリービーズを利用したプラットフォームならびに適切な条件下での基質に対する試薬と中性試薬の同時カップリングを含め、様々な戦略が採用された。他の方法は、シグナルを調べるために使用される計器のダイナミックレンジを増大することに集中している。例えば、化学発光を利用したマルチプレックスアッセイは、異なる標的を含む各領域に結合した抗体から放出される光を個別に分析することによって、異なる標的アナライトの濃度を決定することを促進する。しかし、上記の方法は、特にサンプル中に複数種のアナライトが存在する状況では、正確で迅速なアナライトの検出を常にもたらすわけではない。従って、当技術分野では、アナライトの検出のための方法を改善することが依然として必要とされている。
【0019】
本明細書における「好ましい」または「好ましくは」との言及は、単に例示を意図しているに過ぎないということが理解されるであろう。
【発明の概要】
【0020】
1つの広範な形態において、本技術は一般に、所定のCD抗原に対して特異的な抗体を添加することによって血液サンプルなどの生体サンプル中の細胞型を識別および/または同定するための方法およびシステムに関する。一実施形態において、抗体をCD抗原に結合させる、抗体のインキュベーションの後に、供された抗体の量およびサンプルの体積に基づいて初期抗体濃度を算出できる。あるいは、血液サンプルをアッセイして各抗体の初期濃度を決定する可能性がある。続いて、血液サンプルを濾過して細胞および結合した抗体を分離する。その後、濾液またはその画分を再度アッセイして、細胞の表面に結合しなかった各抗体の最終濃度を決定する。この技術では、特定のCD抗原を細胞表面上に発現する細胞の数が多いほど、濾液中に残ることになる抗体の濃度は低くなる。次いで、各CD抗原を発現する細胞の数および/または型を、濾過前と濾過後の抗体濃度の変化を算出することに基づいて決定する。
【0021】
他の実施形態では、細胞に結合した抗体の数は、細胞に付着している間にそのままアッセイされる。別の実施形態では、細胞に結合した抗体の数は、抗体を細胞から脱離、分離または脱結合させるように作用させた直後にアッセイされる。これらの実施形態では、特定のCD抗原を細胞表面上に発現する細胞の数が多いほど、アッセイによって決定される抗体の濃度は高くなる。
【0022】
様々な実施形態において、CD抗原は、任意の他の好適な細胞表面タンパク質、または特定の細胞型もしくは細胞型の群の細胞表面に特異的な他の分子、で置き換えることができる。さらに他の実施形態では、CD抗原は、本明細書で説明されるように抗体濃度を測定するのに適している任意の天然タンパク質または合成タンパク質を含んでよいか、またはそれで置換されてよい。さらに、抗体は、1つの特定のタンパク質(例えば、アプタマー)または他の細胞表面分子に対してのみ高い親和性を有する任意の他のタイプの化学分子で置き換えられる可能性がある。
【0023】
本開示の一態様によれば、生体サンプル中の細胞を識別するための方法が提供される。この方法は、(i)生体サンプルを細胞の少なくとも1つの表面マーカーに対するマーカー特異的分子と接触させるステップであって、マーカー特異的分子が第1の計数パラメータに関連しているステップと、(ii)生体サンプル中の細胞をマーカー特異的分子に結合させて、結合したマーカー特異的分子を生成するステップと、(iii)生体サンプルから細胞および結合したマーカー特異的分子を除去することにより生体サンプルを濾過して濾液を生じさせるステップと、(iv)濾液中のマーカー特異的分子の第2の計数パラメータをセンサーまたは分析装置によって決定するステップと、(v)第1の計数パラメータと第2の計数パラメータとの間の差に基づいて生体サンプル中の細胞の数を計算装置または分析装置によって算出するステップと、を含む。
【0024】
一部の実施形態において、第1の計数パラメータにはマーカー特異的分子の第1の濃度が包含されるが、第2の計数パラメータにはマーカー特異的分子の第2の濃度が包含される。他の実施形態では、第1の計数パラメータおよび第2の計数パラメータは、カウント数に関連してよい。
【0025】
一部の実施形態において、マーカー特異的分子には、少なくとも1つのタイプおよび/または特異性の1つ以上の抗体が包含される。他の実施形態では、マーカー特異的分子には、少なくとも1つのタイプおよび/または特異性の1つ以上のアプタマーが包含される。
【0026】
一部の実施形態において、表面マーカーのそれぞれは、異なる分化抗原群と関連している。
【0027】
一部の実施形態において、方法は、第1の計数パラメータと第2の計数パラメータとの間の差に基づいて細胞の1つ以上の型を同定するステップをさらに含んでよい。さらに他の実施形態では、方法は、表面マーカーが結合している個別の領域を含む分析装置構造の上に濾液を通すステップをさらに含んでよい。一部の実施形態において、方法は、分析装置構造中で濾液をインキュベートすることを含むステップをさらに含んでよい。
【0028】
一部の実施形態において、細胞の少なくとも1つの表面マーカーには、生体サンプル中の病原体の同定を促進する1つ以上の病原体表面マーカーが包含される。一部の実施形態において、細胞の少なくとも1つの表面マーカーには、細胞株におけるマイコプラズマの増殖の検出を促進する1つ以上のマイコプラズマ表面マーカーが包含される。
【0029】
一部の実施形態において、マーカー特異的分子の第1の計数パラメータは、予め決定されている。他の実施形態では、方法は、濾液を生じさせるよりも前にマーカー特異的分子の第1の計数パラメータをセンサーまたは分析装置によって決定するステップをさらに含んでよい。さらに他の実施形態では、方法は、第1の計数パラメータと第2の計数パラメータとの間の差に基づいて個体の疾患を計算装置または分析装置によって決定するステップをさらに含んでよい。
【0030】
特定の実施形態において、方法は、複数の治療推奨を計算装置または分析装置によって維持するステップと、個体の疾患の決定に基づいて治療推奨のうちの1つを計算装置または分析装置によって提供するステップと、をさらに含んでよい。
【0031】
本開示の別の態様によれば、生体サンプル中の細胞を識別するための方法が提供される。この方法は、(i)生体サンプルを細胞の少なくとも1つの表面マーカーに対するマーカー特異的分子と接触させるステップであって、マーカー特異的分子が計数パラメータに関連しているステップと、(ii)生体サンプル中の細胞をマーカー特異的分子に結合させて、結合したマーカー特異的分子を生成するステップと、(iii)生体サンプルを処理または濾過して生体サンプルから細胞および結合したマーカー特異的分子を除去し、濾液を生じさせるステップと、(iv)結合したマーカー特異的分子の計数パラメータをセンサーまたは分析装置によって決定するステップと、(v)マーカー特異的分子の計数パラメータおよび結合したマーカー特異的分子の計数パラメータに基づいて1つ以上の型の細胞の数を分析装置によって算出するステップと、を含む。
【0032】
本開示のさらに別の態様によれば、生体サンプル中の細胞を識別するためのシステムが提供される。このシステムは、(i)生体サンプルを細胞の少なくとも1つの表面マーカーに対するマーカー特異的分子と接触させ、生体サンプル中の細胞をマーカー特異的分子に結合させて、結合したマーカー特異的分子を生成するように構成されたサンプリングモジュールであって、マーカー特異的分子が第1の計数パラメータに関連している、サンプリングモジュールと、(ii)生体サンプルから細胞および結合したマーカー特異的分子を除去することにより生体サンプルを濾過して濾液を生じさせるように構成されたフィルターと、(iii)濾液中のマーカー特異的分子の第2の計数パラメータを決定し、第1の計数パラメータと第2の計数パラメータとの間の差に基づいて生体サンプル中の細胞の数を算出するように構成された分析装置と、を含む。
【0033】
本開示のさらに別の態様によれば、生体サンプル中の細胞を識別するためのシステムが提供される。このシステムは、(i)生体サンプルを細胞の少なくとも1つの表面マーカーに対するマーカー特異的分子と接触させ、生体サンプル中の細胞をマーカー特異的分子に結合させて、結合したマーカー特異的分子を生成するように構成されたサンプリングモジュールであって、マーカー特異的分子が第1の計数パラメータに関連している、サンプリングモジュールと、(ii)生体サンプルから細胞および結合したマーカー特異的分子を除去することにより生体サンプルを濾過するように構成されたフィルターと、(iii)細胞に結合したマーカー特異的分子の第2の計数パラメータを(結合している間に、あるいはそれらを細胞から脱結合させるように作用させてから)決定し、第1の計数パラメータと第2の計数パラメータとの間の差に基づいて生体サンプル中の細胞の数を算出するように構成された分析装置と、を含む。
【0034】
一部の実施形態において、分析装置には、少なくとも1つのプロセッサと、少なくとも1つのプロセッサによって実行されると少なくとも1つのプロセッサに、濾液中の少なくとも1つのマーカー特異的分子の第2の濃度を決定させ、第1の濃度と第2の濃度との間の差に基づいて生体サンプル中の細胞の数を算出させる、プロセッサによって実行可能な命令を記憶するメモリと、を有する計算装置が包含される。
【0035】
一部の実施形態において、システムは、限定されるものではないが診断、健康のモニタリング、血液型の決定およびHIVの進行のモニタリング、ウイルスもしくは細菌が原因の感染症の識別、病原体の検出および同定、生体液および組織サンプルに基づく診断、食品産業における利用、農業用途、水質試験、ならびに/または培養細胞株におけるマイコプラズマ汚染の検出を含め、様々な目的のための細胞の計数および識別に適用可能である迅速なフィールド/ポイントオブケアベースの方法を提供するために携帯型および/または使い捨てのシステムとして実施できる。この技術の利点は、フォームファクターが小さいマイクロ流体システムにおいて、フローサイトメトリーなどの従来の細胞計数技術よりも容易に実施できるということである。従って、この技術は、多くの有益な用途を有する携帯型システムにおける細胞計数を可能にする。
【0036】
一般に、本開示の方法は、有機成分または無機成分を含む可能性がある、商業的用途および非商業的用途に使用される任意の溶液または懸濁液における細胞計数のために実施できる。例えば、本開示の方法は、ヒト、動物に由来するか任意の生物(植物、真菌、細菌、または古細菌を含む)に関連する、任意の生体液に対して実施できる。一部の実施形態において、本開示の方法は、血球計数のために実施できる。
【0037】
さらに他の実施形態によれば、本開示の方法およびシステムは、患者が特定の疾患を有するかどうか、および/または対応する治療を前記患者が必要とするかどうか、を決定するために実施できる。この決定は、本明細書で説明されるような生体サンプル中の細胞の識別/同定の結果に基づいてよい。例えば、本開示の方法を用いた白血球数の決定は、抗生物質による治療に至る感染症を個体が有するかどうかを決定するために使用される可能性がある。別の実施形態では、本開示の方法を用いた赤血球数の決定は、個体が貧血であり、例えば鉄補給剤で、治療される必要があるかどうかを決定するために使用され得る。さらに別の実施形態では、白血球数または赤血球数の減少の決定は、特定の薬物(例えば、クロザピン)による治療の結果である可能性がある。従って、治療の選択も、細胞数に依存し得る。従って、血球数および他の生体サンプル中の細胞数の決定は、医療分野における治療法の決定にとって非常に重要であると見なすことができる。
【0038】
また、本発明は一般に、アッセイのシグナル、従って未加工の結果、のダイナミックレンジを制御することによる生体サンプル中の1つ以上の標的アナライトの定量的検出のための方法およびシステムにも関する。この技術は、従来技術の1つ以上の欠点を克服することを可能にし、正確で迅速なアナライトの検出をもたらす。
【0039】
この技術の一態様によれば、アッセイのシグナルのダイナミックレンジを制御するための方法が提供される。この方法は、(i)サンプル中の1つ以上の標的アナライトを提供するステップと、(ii)1つ以上の標的アナライトをコンジュゲート化結合試薬および非コンジュゲート化結合試薬の混合物と接触させるステップであって、コンジュゲート化結合試薬および非コンジュゲート化結合試薬が1つ以上の標的アナライトに対して特異的であるステップと、(iii)1つ以上の標的アナライトとコンジュゲート化結合試薬および非コンジュゲート化結合試薬の混合物との間の相互作用を測定するステップと、(iv)混合物中のコンジュゲート化結合試薬と非コンジュゲート化結合試薬の比率を調整することによってアッセイのシグナルのダイナミックレンジを制御するステップと、を含む。
【0040】
一部の実施形態において、方法は、標的アナライトのそれぞれの濃度を決定するステップをさらに含んでよい。さらに他の実施形態では、方法は、1つ以上のコンジュゲート化アナライトをサンプルに添加するステップと、1つ以上の標的アナライトの希釈を生じさせるステップと、をさらに含んでよい。さらに他の実施形態では、方法は、1つ以上の非コンジュゲート化アナライトをサンプルに添加するステップと、1つ以上の標的アナライトの希釈を生じさせるステップと、をさらに含んでよい。
【0041】
一部の実施形態において、コンジュゲート化結合試薬または非コンジュゲート化結合試薬には、以下のうちの1つ以上が包含される:抗体、抗原、アプタマー、ペプチド、タンパク質およびオリゴヌクレオチドならびにそれらの任意の組み合わせ。コンジュゲート化結合試薬には、酵素、タンパク質、ペプチド、フルオロフォア、ストレプトアビジン、アビジン、抗体、抗原、アプタマーおよびオリゴヌクレオチドならびにそれらの任意の組み合わせからなる群より選択されるコンジュゲートと連結された結合試薬が包含され得る。
【0042】
一部の実施形態において、標的アナライトには、以下のうちの1つ以上が包含され得る:抗原、抗体、核酸、炭水化物、脂質、ペプチド、タンパク質、ポリマーおよびそれらの任意の組み合わせ。一部の実施形態において、サンプルには、生体液が包含され得る。他の実施形態では、サンプルには、非生体液が包含され得る。さらなる実施形態において、方法は、1つ以上の標的アナライトと混合物との間の相互作用の測定の結果に基づいて、およびアッセイのシグナルのダイナミックレンジの制御に基づいて、サンプル中の1つ以上の標的アナライトを定量的に決定するステップをさらに含んでよい。
【0043】
本開示の別の態様によれば、アッセイのシグナルのダイナミックレンジを制御するための別の方法が提供される。この方法は、(i)サンプル中の1つ以上の標的アナライトを提供するステップと、(ii)1つ以上の標的アナライトを少なくとも1つの結合試薬を含む混合物と接触させるステップであって、結合試薬が1つ以上の標的アナライトに対して特異的であるステップと、(iii)1つ以上の標的アナライトと混合物との間の相互作用を測定するステップと、(iv)1つ以上のコンジュゲート化アナライトをサンプルに添加して1つ以上の標的アナライトの希釈を生じさせるステップと、(v)混合物中の1つ以上のコンジュゲート化アナライトの比率を調整することによってアッセイのシグナルのダイナミックレンジを制御するステップと、を含む。
【0044】
一部の実施形態において、少なくとも1つの結合試薬には、非コンジュゲート化結合試薬が包含される。特定の実施形態において、少なくとも1つの結合試薬には、コンジュゲート化結合試薬が包含される。さらなる実施形態において、方法は、1つ以上の標的アナライトと混合物との間の相互作用の測定の結果に基づいて、およびアッセイのシグナルのダイナミックレンジの制御に基づいて、サンプル中の1つ以上の標的アナライトを定量的に決定するステップをさらに含んでよい。
【0045】
本開示の別の態様によれば、アッセイのシグナルのダイナミックレンジを制御するための別の方法が提供される。この方法は、(i)サンプル中の1つ以上の標的アナライトを提供するステップと、(ii)1つ以上の標的アナライトを少なくとも1つの結合試薬を含む混合物と接触させるステップであって、結合試薬が1つ以上の標的アナライトに対して特異的であるステップと、(iii)1つ以上の標的アナライトと混合物との間の相互作用を測定するステップと、(iv)1つ以上の改変アナライトをサンプルに添加するステップと、(v)混合物中の1つ以上の改変アナライトの比率を調整することによってアッセイのシグナルのダイナミックレンジを制御するステップと、を含む。
【0046】
一部の実施形態において、1つ以上の改変アナライトには、1つ以上の標的アナライト内の構造と同じ構造を有する分子が包含される。例えば、1つ以上の改変アナライトには、標的アナライトのうちの少なくとも1つのサブユニットが包含される。他の実施形態では、方法は、1つ以上のコンジュゲート化アナライトをサンプルに添加して1つ以上の標的アナライトの希釈を生じさせるステップをさらに含んでよい。特定の実施形態において、少なくとも1つの結合試薬には、非コンジュゲート化結合試薬が包含される。一部の実施形態において、少なくとも1つの結合試薬には、コンジュゲート化結合試薬が包含される。さらに他の実施形態では、方法は、1つ以上の標的アナライトと混合物との間の相互作用の測定の結果に基づいて、およびアッセイのシグナルのダイナミックレンジの制御に基づいて、サンプル中の1つ以上の標的アナライトを定量的に決定するステップをさらに含んでよい。
【0047】
本開示のさらに別の態様によれば、アッセイのシグナルのダイナミックレンジを制御するためのシステムが提供される。このシステムは、サンプル中の1つ以上の標的アナライトを提供して1つ以上の標的アナライトをコンジュゲート化結合試薬および非コンジュゲート化結合試薬の混合物と接触させるための容器であって、コンジュゲート化結合試薬および非コンジュゲート化結合試薬が1つ以上の標的アナライトに対して特異的である、容器を含む。システムは、1つ以上の標的アナライトとコンジュゲート化結合試薬および非コンジュゲート化結合試薬の混合物との間の相互作用を測定するように構成されたセンサーをさらに含む。システムは、サンプル中のコンジュゲート化結合試薬と非コンジュゲート化結合試薬の比率を調整することによってアッセイのシグナルのダイナミックレンジを制御するように構成された制御器をさらに含む。
【0048】
一部の実施形態において、システムは、標的アナライトのそれぞれの濃度を決定するように構成された分析装置を含んでよい。特定の実施形態において、センサーには、以下のうちの1つ以上が包含され得る:比色センサー、蛍光センサー、測光センサーおよび分光測定装置。一部の実施形態において、分析装置は、センサーに動作可能に接続された計算装置を含んでよい。一部の実施形態において、制御器は、少なくとも1つのプロセッサと、少なくとも1つのプロセッサによって実行されるとシステムに、センサーによる測定を行わせ、混合物の比率を変更させ、1つ以上の標的アナライトを定量的に決定させる、プロセッサによって実行可能な命令を記憶するメモリと、を含む計算装置を含んでよい。
【0049】
上述の態様のうちのいずれか1つの好ましい実施形態において、比率は、モル比、重量比および体積比ならびにそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される。
【0050】
好ましくは、比率はモル比である。
【0051】
好ましくは、比率は重量比である。
【0052】
好ましくは、比率は体積比である。
【0053】
上述の態様のうちのいずれか1つの好ましい実施形態によれば、生体サンプルは血液サンプルである。
【0054】
冠詞「a」および「an」は、本明細書では、その冠詞の文法上の目的語の1つまたは2つ以上(すなわち、少なくとも1つ)を指すために使用される。例として、「要素(an element)」は、1つの要素または2つ以上の要素を意味する。本明細書で使用される場合、単数形の使用は、特に断りのない限り、複数形を包含する(逆もまた同様である)。
【0055】
本明細書全体にわたって、文脈が他の意味を要求しない限り、「含む(comprise)」、「含む(comprises)」および「含む(comprising)」なる語は、記載されたステップもしくは要素またはステップの群もしくは要素の群を包含することを意味するが、任意の他のステップもしくは要素またはステップの群もしくは要素の群を除外することは意味しないと理解されるであろう。従って、「含む(comprising)」なる用語および同様の用語の使用は、列挙された要素が必要または必須であることを示すが、他の要素は任意選択であり、存在しても存在しなくてもよいということを示す。「からなる(consisting of)」とは、「からなる(consisting of)」という語句に続くものを全て含み、且つそれらに限定されることを意味する。従って、「からなる(consisting of)」という語句は、列挙された要素が必要または必須であることを示すとともに、他の要素が存在し得ないということを示す。「本質的に~からなる(consisting essentially of)」とは、その語句の後に列挙された如何なる要素も包含し、列挙された要素の本開示において特定された活性または作用に干渉または寄与しない他の要素に限定されることを意味する。従って、「本質的に~からなる(consisting essentially of)」という語句は、列挙された要素が必要または必須であることを示すが、列挙された要素の活性または作用に影響を及ぼすかどうかに応じて、他の要素は任意選択であり、存在しても存在しなくてもよいということを示す。
【0056】
さらなる目的、利点および新規の特徴は、以下の詳細な説明にある程度記載されており、以下の詳細な説明および添付の図面を検討すれば、ある程度は当業者に明らかになるであろうし、あるいは例示的な実施形態の製造または実施によって理解され得る。これらの概念の目的および利点は、添付の特許請求の範囲において具体的に示される方法論、手段および組み合わせによって実現および達成され得る。
【図面の簡単な説明】
【0057】
図1図1は、一実施形態に従った、生体サンプル中の細胞または他の成分を識別および/または同定するための方法の図による表示である。
図2A図2Aは、CD4およびCD8に対する抗体を使用して、HIVの進行を評価するためにサンプル中のCD4+:CD8+の比率を決定する、生体サンプル中の細胞または他の成分を識別および/または同定するための方法のさらなる実施形態の図による表示である。
図2B図2Bは、図2Aの色による表現を白黒で再現したものである。
図3A図3Aは、グラム陽性細菌の表面マーカーに対する抗体を使用して、ある種の細菌感染症を決定する、生体サンプル中の細胞または他の成分を識別および/または同定するための方法の別の実施形態の図による表示である。
図3B図3Bは、図3Aの色による表現を白黒で再現したものである。
図4A図4Aは、サンプル中の細胞の数が最終的なシグナル強度にどのように影響するかについての図による表示である。
図4B図4Bは、図4Aの色による表現を白黒で再現したものである。
図5A図5Aは、サンプル中の細胞の数を決定するためのCD分子に対する抗体の使用方法の図による表示である。図5Aは、抗CD4抗体を使用してサンプル中の細胞の数を決定した結果を示す。この実施例では、CD表面マーカーを安定に発現するVL3細胞株を試験サンプルとして使用した。Y軸は蛍光である。X軸は、細胞数(逆数)=1/(細胞数×10e6)である。MFIは平均蛍光強度である。
図5B図5Bは、VL3細胞株によって発現されない表面マーカーであるCD19に対する抗体を使用して、図5Aで実証された効果が細胞への抗体の非特異的結合または抗体の凝集に起因する可能性があるかどうかを決定した結果を示す。Y軸は蛍光である。X軸は、細胞数(逆数)=1/(細胞数×10e6)である。
図6A図6Aは、一実施形態に従った、アッセイのダイナミックレンジを制御することによる1つ以上の標的アナライトの定量的検出のための方法の図による表示である。
図6B図6Bは、図6Aの色による表現を白黒で再現したものである。
図7A図7Aは、100%ビオチン化された検出抗体を、制御された比率の標識化ストレプトアビジンと非標識化ストレプトアビジンと共に使用する、アッセイのダイナミックレンジを制御することによる1つ以上の標的アナライトの定量的検出のための方法の図による表示である。
図7B図7Bは、ビオチン化検出抗体を、制御された比率の標識化ストレプトアビジンと非標識化ストレプトアビジンと共に使用することによってアッセイのダイナミックレンジを制御することによる定量的検出のための方法を示し、ここで、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)-コンジュゲート化ストレプトアビジンと混合したある範囲の非コンジュゲート化ストレプトアビジンを使用するプロラクチンサンドイッチELISAが行われた。図7Bでは、プロラクチン濃度(X軸)が、450nmにおける吸光度(Y軸)に対してプロットされている。
図7C図7Cは、図7Bの西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)-コンジュゲート化ストレプトアビジンと混合したある範囲の非コンジュゲート化ストレプトアビジンを使用したプロラクチンサンドイッチELISAの結果を示し、ここで、非コンジュゲート化ストレプトアビジンの濃度(X軸)が、450nmにおける吸光度(Y軸)に対してプロットされている。
図8図8は、標識化二次検出抗体と非標識化二次検出抗体の混合物と共に非標識化一次検出抗体を使用する、アッセイのダイナミックレンジを制御することによる1つ以上の標的アナライトの定量的検出のための例示的方法である。
図9図9は、それによって標識化結合試薬:非標識化結合試薬の比率の調整がシグナル強度を調整する本技術の方法の図による表示である。記載されている値は、標識化検出抗体対非標識化検出抗体の比率である。
図10図10は、図9のプロセスに関する実験結果、具体的にはコンジュゲート化検出抗体:非コンジュゲート化検出抗体の比率を調整した場合のHRP-TMBを使用したヒトプロラクチンの標準曲線、を図示する。X軸は、ヒトプロラクチンの濃度(pg/mL)である。Y軸は、450nmにおける吸光度である。曲線A~Fは、以下のような抗体混合物中の標識化検出抗体の量である:A=1;B=0.8;C=0.6;D=0.4;E=0.2;F=0。
図11A図11Aは、免疫測定法において検出シグナルのレベルを制御する方法の図による表示である。
図11B図11Bは、図11Aの色による表現を白黒で再現したものである。
【0058】
一部の図は、色による表現または実体を含む。カラーの図は、要請すれば出願人から、または適切な特許庁から、入手可能である。特許庁から取得する場合、手数料が課せられることがある。
【発明を実施するための形態】
【0059】
詳細な説明
別段の定義がない限り、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書で説明されるものと類似または同等の任意の方法および材料を本発明の実施または試験において用いることができるが、好ましい方法および材料が説明される。本発明の目的のために、以下の用語が以下で定義される。
【0060】
本明細書で説明される各実施形態は、特に断りの無い限り、各実施形態および全ての実施形態に準用されるべきである。
【0061】
実施形態を組み合わせることができ、他の実施形態を利用することができ、または特許請求の範囲から逸脱することなく構造の変更、論理の変更および動作の変更を行うことができる。従って、以下の詳細な説明は、限定的な意味で解釈されるべきではなく、その範囲は、添付の特許請求の範囲およびそれらの均等物によって定義される。
【0062】
本発明を容易に理解し、実用上の効果を発揮させることができるように、特定の好ましい実施形態が非限定的な例として説明され得る。
【0063】
以下の詳細な説明は、詳細な説明の一部を形成する添付の図面の参照を含む。図面は、例示的な実施形態と合致した図を示す。本明細書では「実施例」とも呼称される、これらの例示的な実施形態は、当業者が本発明の内容を実施できる程度に十分詳細に説明されている。
【0064】
分化抗原群に対して特異的な抗体を添加することによって生体サンプル中の細胞を同定するための方法およびシステム
本技術は、血液サンプルなどの生体サンプル中の細胞または他の成分(簡略化のため、まとめて「細胞」と呼称する)を識別および/または同定するための方法およびシステムを提供する。具体的には、方法は、細胞の特定の表面マーカーに特異的に結合する複数の抗体またはアプタマーなどの他の分子(簡略化のため、まとめて「抗体」と呼称する)と共にサンプルをインキュベートするステップを含む。本明細書で説明される方法は、1つ以上の特異性を有する1つ以上の抗体の使用を企図する。特定の表面マーカーの数およびタイプは、表面マーカーのそれぞれが特定のCDに関連するように予め選択できるか予め決定できる。さらに、サンプル(特に血液サンプル)中の抗体濃度は、計算または測定のいずれかによって決定される。一部の実施形態において、抗体濃度は、予め決定されていてよいか、既知であってよい。その後、結合した抗体から細胞を分離することによりサンプルを濾過し、濾液を生じさせる。さらに、濾液中に残っている抗体の濃度を測定する。最後に、濾過の前と後の抗体濃度を比較して、サンプル中の細胞の数および/または型を決定する。濾液には、その画分が包含されるということが理解されるであろう。
【0065】
図1は、このプロセスをさらに説明する。具体的には、図1は、サンプル中の異なる細胞型のための表面マーカーに蛍光標識抗体が接触する方法を示す。既知の濃度の、目的の細胞上の表面マーカーに対して特異的な標識化抗体をサンプルに添加する(ステップA)。サンプルを抗体とインキュベートして結合させる(ステップB)。ステップCでは、(i)サンプルをフィルターに通して細胞および結合した抗体を除去し、それにより、結合していない抗体を含む濾液を生じさせるか、あるいは(ii)沈降または遠心分離によりサンプルから細胞および結合した抗体を除去して、結合していない抗体を含む吸引液(aspirate)を生じさせる。ステップCの後、固定された表面タンパク質を含む領域を有する表面に濾液を供する(ステップD)。濾液をインキュベートして、固定された抗原に抗体を結合させる(ステップE)。洗浄の後、固定された標識化抗体からの発光強度を測定し、濾液中の抗体濃度を算出する(ステップF)。最後に、濾過前と濾過後の抗体濃度の差から各細胞型の数を算出する。
【0066】
図2(AおよびB)は、CD4およびCD8に対する抗体を使用して、HIVの進行を評価するためにサンプル中のCD4+:CD8+の比率を決定する、より具体的な例を示す。図3(AおよびB)は、グラム陽性細菌の表面マーカーに対する抗体を使用して、ある種の細菌感染症を決定する、別の例を示す。図4(AおよびB)は、サンプル中の細胞の数が最終的なシグナル強度にどのように影響するかについて示す。図4Aおよび図4BのそれぞれのパネルAは、サンプル中に少数の標的細胞が存在する場合には、これによりもたらされる濾液中の抗体の減少は小さく、従ってシグナルが高くなるということを示す。パネルBは、サンプル中に多数の標的細胞が存在する場合には、これによりもたらされる濾液中の抗体の減少が大きく、従ってシグナルが低くなるということを示す。図4Aおよび図4Bから総合的に見て取れるように、サンプル中の標的細胞の数が多いほど、濾過段階で除去される抗体の数が多くなり、従って、より低いシグナルが生成されることになる。
【0067】
細胞を識別および/または同定するためのシステムは、抗体と共にサンプルを収容してインキュベートするためのサンプリングモジュール、サンプルを濾過するためのフィルターおよび濾液の分析のための分析装置という3つの主要構成要素を含む。分析装置は、パーソナルコンピューター、ラップトップコンピューター、サーバーまたは同様のものなどの計算装置に動作可能に連結された1つ以上のセンサーを含んでよい。計算装置は、少なくとも1つのプロセッサと、プロセッサによって実行可能な命令を記憶する少なくとも1つのメモリと、を含む。これらの命令がプロセッサによって実行されると、それは、本明細書で説明されるような方法の1つ以上のステップを実行する。
【0068】
本開示の一部の実施形態によれば、フィルターは、全ての細胞または実質的に全ての細胞をサンプル、より好ましくは血液サンプル、から除去するために、2マイクロメートル未満の孔径を有する膜を含んでよい。他の実施形態では、フィルター、またはマーカーに結合した抗体と共に細胞を血液サンプルから除去する任意の他の器具、の代わりに磁気分離システムが使用されてよい。他の実施形態では、沈降、遠心分離によって、または標的細胞を固定もしくは除去するための抗体の使用によって、細胞が除去されてよい。
【0069】
本開示の一部の実施形態によれば、濾液中に残っている結合していない抗体または細胞に結合した抗体(結合している時のもの、あるいはそれらを細胞表面から脱結合させるための処理の後のもの)のいずれかが、さらなる分析を促進するであろう1つ以上の分子(レポーターなど)にコンジュゲートされてよい。コンジュゲートされる分子には、現像液(developer fluid)中で測定可能な変化を触媒できる酵素(西洋ワサビペルオキシダーゼなど)が包含され得る。他の実施形態では、コンジュゲートされる分子には、発光を介して測定できる蛍光プローブが包含され得る。さらに他の実施形態では、コンジュゲートされる分子には、ビオチン-ストレプトアビジン/ビオチン/アビジンのシステムを用いた高親和性結合プロセスによってさらなるレポーター分子を付着させることができるビオチンが包含され得る。一部の実施形態において、非コンジュゲート化抗体が使用されてよい。さらに他の実施形態では、二次レポーターが適用されてよい。例えば、非コンジュゲート化抗体を使用する場合には、酵素またはレポーター分子で標識された二次抗体が利用される。
【0070】
「レポーター」なる用語は、所定の抗原の検出を可能にする分析的に同定可能なシグナルをその化学的性質によって提供する分子を意味する。検出は、定性的または定量的のいずれかであってよい。レポーターのいくつかの例としては、酵素、フルオロフォア、金または放射性核種含有分子(すなわち、放射性同位体)が挙げられる。免疫測定法の場合、酵素は、一般的にはグルタルアルデヒドまたは過ヨウ素酸を用いて、第2または第3の免疫グロブリンにコンジュゲートされる。使用できる他のタイプの酵素には、西洋ワサビペルオキシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、β-ガラクトシダーゼおよび/またはアルカリホスファターゼが包含される。
【0071】
本開示の一部の実施形態において、例えば赤血球、血小板を同定するために、および/または白血球を識別するために、全血サンプルが、様々な表面マーカーに対する所定量の標識化抗体の混合物とインキュベートされる。血液サンプルは、表面抗原に抗体を結合させるためにさらにインキュベートされてよい。他の実施形態では、分離された白血球など、全血の特定の画分が、分析されてよい。
【0072】
本開示の一部の実施形態において、システムは、それに対して抗体が産生された表面マーカーが結合している個別の領域を含む構造を含んでよい。このような構造の非限定的な例は、マイクロタイタープレートまたはキュベットなど、好適なプラスチック材料から作製された構造である。この場合、この構造内で濾液をインキュベートして、残っている抗体(濾過の前に細胞に結合していないもの)を、固定された表面マーカーに結合させることができる。インキュベーションの後、この構造を洗浄して、結合していない濾液成分を全て除去できる。非コンジュゲート化抗体を利用するのであれば、二次レポーター分子(例えば、標識化二次抗体、ストレプトアビジンをコンジュゲートされた酵素、またはプローブ)を含む溶液とのさらなるインキュベーションが必要となる可能性がある。西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)などの酵素を標識化二次抗体として用いるのであれば、構造内に現像剤溶液を注ぐ必要がある可能性がある。現像剤溶液は、その速度が酵素の量に依存する測定可能な色の変化を起こすことができる3,3’,5,5’-テトラメチルベンジジン(TMB)に関連してよい。従って、結合した抗体の量は、測定された色の変化の程度に基づいて決定できる。他の実施形態では、現像剤溶液には、比色溶液、蛍光溶液および/または化学発光溶液が包含され得る。
【0073】
上記で説明されるように、濾過前と濾過後の抗体濃度の差を用いて、元の血液サンプル中の表面マーカーの濃度および/または比率を算出できる。表面マーカーの濃度および/または比率は次に、分化した白血球を含む、各型の細胞の数の算出の基礎にできる。
【0074】
本技術のさらに別の実施形態では、サンプル中の病原体を同定および定量化するために、病原体の表面マーカーに対する抗体が使用される。本開示のさらに別の実施形態では、細胞株におけるマイコプラズマの増殖を検出するために、マイコプラズマ細胞に対する表面マーカーが使用され得る。
【0075】
本開示の一部の実施形態において、血液サンプル中の細胞を同定するためのシステムは、バイオセンサーを含んでよい。バイオセンサーは、アナライトの分析のために使用できる分析装置である。バイオセンサーは、高感度の生物学的要素(例えば、組織、微生物、オルガネラ、細胞受容体、酵素、抗体、核酸、全血またはその画分等)、調査中のアナライトと相互作用する生物由来の材料またはバイオミメティック成分を含んでよい。生物学的に高感度の要素はまた、生物工学によって作製されてもよい。バイオセンサーは、アナライトと生物学的要素との相互作用から生じるシグナルを、より容易に測定および定量化できる別のシグナルに変換する、変換器または検出器(例えば、物理化学的装置、光学装置、圧電装置、または電気化学的装置)をさらに含む。バイオセンサーは、利用しやすい様式での結果の表示を主に担当する関連電子機器(例えば、計算装置)を備えたバイオセンサー読み取り装置をさらに含む。
【0076】
一部の実施形態において、本技術は、コロイド金などの呈色法(colour reporting method)を用いてサンプル中の1つ以上の成分(例えば、病原体)の有無、またはサンプル中の1つ以上の要素(例えば、CD4+細胞およびCD8+細胞)のレベル(図2を参照のこと)、の迅速な測定を提供する、膜を利用した装置に組み込まれてよい。
【0077】
様々な実施形態によれば、本技術はまた、それらのサンプル(好ましくは流体サンプル)が試験および分析された対象、個体または動物の疾患を決定するように構成されてもよい。さらに、本技術は、同定された疾患を治療するための自動的な推奨、提案または計画を提供してよい。治療様式の非限定的な例としては、放射線療法、手術、化学療法、ホルモン除去療法、アポトーシス促進療法、免疫療法、光線療法、凍結療法、毒素療法、抗感染症薬による治療、またはアポトーシス促進療法が挙げられる。当業者であれば、この列挙が治療様式のタイプを網羅しているわけではないということが分かるであろう。疾患は、本明細書で説明されるようなサンプル中の細胞の識別/同定の結果に基づいて決定できる。例えば、本開示の方法を用いた白血球数の決定は、抗生物質による治療に至る感染症を個体が有するかどうかを決定するために使用される可能性がある。別の実施形態では、本開示の方法を用いた赤血球数の決定は、個体が貧血であり、例えば鉄補給剤で、治療される必要があるかどうかを決定するために使用され得る。さらに別の実施形態では、白血球数または赤血球数の減少の決定は、特定の薬物(例えば、クロザピン)による治療の結果である可能性がある。従って、治療の選択も、細胞数に依存し得る。従って、血球数および他の生体サンプル中の細胞数の決定は、医療分野における治療法の決定にとって非常に重要であると見なすことができる。好ましい実施形態において、本明細書で説明される方法は、対象を治療するステップをさらに含む。
【0078】
本明細書で互換的に使用される「患者」、「対象」、「宿主」または「個体」なる用語は、治療または予防が望まれる任意の対象、具体的には脊椎動物対象、さらにより具体的には哺乳動物対象、を指す。「対象」なる用語は、ヒト哺乳動物対象およびヒト以外の哺乳動物対象を包含する。
【0079】
本明細書で使用される場合、「治療」、「治療する」なる用語および同様の用語は、所望の薬理学的および/または生理学的な効果を得ることを指す。この効果は、疾患もしくは状態および/または疾患もしくは状態に起因する有害作用の部分的または完全な治癒の観点から治療的であってよい。これらの用語はまた、哺乳動物(特にヒト)における状態または疾患の任意の治療も包含し、(a)疾患または状態を阻害すること、すなわち、その発達を停止させること;あるいは(b)疾患または状態を緩和すること、すなわち、疾患または状態の退行を生じさせること;を包含する。
【0080】
サンプル中の細胞の数を決定するためのCD分子に対する抗体の使用を図5Aおよび図5Bに示す。CD表面マーカーを安定に発現するVL3細胞株を実験に使用した。0.0008mg/mlという濃度の蛍光標識した抗CD4抗体を、1mlあたり4.6×10e6~0.009×10e6個の細胞という範囲の細胞濃度の細胞のサンプルとインキュベートした。細胞の表面上のCD4分子に抗体を結合させるためのインキュベーションの後、サンプルを遠心分離して細胞を除去した。上清を取り出し、上清中に残っている抗体の量をアッセイした。これは、抗体と結合するビーズを上清に添加し、インキュベートして、残っている抗体をビーズに結合させることにより行った。次いで、ビーズをBD FACSDivaフローサイトメーターに通して蛍光を測定した。図5Aに示されるように、上清中に存在する抗体の数とサンプル中の細胞の個数濃度との間には明確な逆の相関関係があった。1mlあたり1.4×10e5個の細胞という下限(矢印で示す)を超えると、この実験では細胞の数を決定できなかった。
【0081】
このプロセスを、VL3細胞株によって発現されない表面マーカーであるCD19に対する抗体を用いて繰り返し、この効果が細胞への抗体の非特異的結合または抗体の凝集に起因する可能性があるかどうかを決定した。図5Bを参照すると、非常に高い細胞濃度においてシグナルが少し減少するが、これは、発現されたCD分子への抗体の特異的結合によって得られる結果に干渉するには十分でない。このデータは、この方法が、サンプル中に存在する特定のマーカーを発現する細胞の数を決定するのに有効であること、およびサンプル中に存在する細胞型の識別および定量化におけるこの方法の適合性を裏付ける。
【0082】
当業者であれば、本技術は、血液サンプルにおける細胞の同定だけでなく、任意の他の生体液、組織サンプル、食物、水および培養細胞における細胞の同定も可能にするということを理解するであろう。開示される技術は、診断、健康のモニタリング、血液型の決定およびHIVの進行のモニタリング、ウイルスもしくは細菌が原因の感染症の識別、病原体の検出および同定、生体液および組織サンプルに基づく診断、食品産業における利用、農業用途、獣医用途、水質試験、ならびに/または培養細胞株におけるマイコプラズマ汚染の検出のための血液細胞の計数および識別に適用可能である迅速なフィールド/ポイントオブケアベースの方法を提供するための携帯型および/または使い捨てのユニットに組み込むことができる迅速で正確な低コストの方法およびシステムを提供する。
【0083】
生体材料は、精製されていてもいなくてもよい単離された生体材料であってよいということが理解されるであろう。「単離された」とは、そのままの状態では通常それに付随する成分を、あるいは合成手段によって精製または生成された場合にはその生成の間に存在する成分を、実質的または本質的に含まない材料を意味する。従って、「単離された」なる用語はまた、その範囲内に、精製された材料または合成の材料も包含する。本明細書で使用される場合、「精製された」なる用語は、細胞成分、または材料が由来する供給源からの他の混入物質、を実質的に含まない材料(例えば、血液サンプル、流体サンプル)を指す。「実質的に含まない」は、材料の調製物の純度が少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%であることを意味する。
【0084】
アナライトの検出のためにアッセイの定量化のダイナミックレンジを制御するための方法およびシステム
本技術はまた、検出シグナルの強度に依存してサンプル中のアナライトの濃度が決定される、免疫測定法に基づくアッセイの分析も提供する。これらの方法は一般に、生体液(例えば、血液)または非生体液などのサンプル中の抗原、抗体、タンパク質および核酸などのアナライトの検出および/または定量化に適用可能である。サンプルは単離されていてよく、精製されていてもいなくてもよい。
【0085】
「アッセイ」なる用語は、本明細書で使用される場合、限定されるものではないが酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)、放射免疫測定法(RIA)、化学発光法、生物発光法、蛍光免疫測定法、タンパク質マイクロアレイ、DNAマイクロアレイ、RNAマイクロアレイおよび/またはタンパク質バイオチップアッセイを含む、分析的検出法を指す。
【0086】
「標的アナライト」なる用語は、本明細書で使用される場合、生体サンプル中で検出または定量化される生化学物質を指し、以下のうちの1つ以上を含んでよい:抗原、抗体、タンパク質、脂質、炭水化物、および核酸、ならびにそれらの任意の組み合わせ。
【0087】
「固相」なる用語は、本明細書で使用される場合、免疫検出法において使用される平面または非平面の固体支持体表面を指し、以下のうちの1つ以上を含んでよい:ポリスチレンのマイクロタイタープレート、マイクロスフェア、ビーズ、膜、ポリマー、コポリマー、架橋型ポリマー、および同様のもの。
【0088】
「結合試薬」なる用語は、本明細書で使用される場合、標的アナライトと反応できるか、またはサンプル中の標的アナライトの存在を検出するために使用される、生化学物質を指す。結合試薬は、抗原、抗体、タンパク質および/またはオリゴヌクレオチドを指してよい。
【0089】
用語「検出シグナル」または単に「シグナル」は、本明細書で使用される場合、標識化アナライトまたはコンジュゲート化アナライトまたは標識化結合試薬またはコンジュゲート化結合試薬によって生成される測定可能なシグナルを指す。検出シグナルは、例えば以下の方法のうちの1つ以上を用いて測定されてよい:測光法、分光光度法、放射測定法、および蛍光測定法。当業者であれば、検出シグナルを測定するために質量分析などの他の方法も使用できるということを理解するであろう。
【0090】
アッセイの結果(シグナル)のダイナミックレンジ(または「検出範囲」)は、そのアッセイによって正確に検出され得るアナライト(本明細書では「標的アナライト」とも呼称される)の最低濃度から最高濃度と定義できる。測定のためには、アナライトの濃度は一般に、そのアッセイのダイナミックレンジまたは検出範囲の内に存在する必要がある。アッセイの結果のダイナミックレンジは、予め決定されてよいか、または動的に変更されてよい。
【0091】
一般に、本技術は、アッセイのダイナミックレンジを制御することによる1つ以上の標的アナライトの定量的検出のための方法に関する。この方法は、以下のステップを含む:(i)生体サンプル中の1つ以上の標的アナライトを提供するステップ;(ii)1つ以上の標的アナライトを少なくとも1つのコンジュゲート化結合試薬および少なくとも1つの非コンジュゲート化結合試薬の混合物と接触させるステップであって、少なくとも1つのコンジュゲート化結合試薬および少なくとも1つの非コンジュゲート化結合試薬が1つ以上の標的アナライトに対して特異的であるステップ;(iii)1つ以上の標的アナライトと少なくとも1つのコンジュゲート化結合試薬および少なくとも1つの非コンジュゲート化結合試薬の混合物との間の相互作用を測定するステップ;および(iv)混合物中の少なくとも1つのコンジュゲート化結合試薬と少なくとも1つの非コンジュゲート化結合試薬の比率を調整することによってアッセイのシグナルのダイナミックレンジを制御するステップ。
【0092】
「比率」なる用語は、標準的な意味での比率(別の要素の量と比較した、ある要素の量)を指す。これは、モル濃度、重量または体積で表される可能性がある。好ましくは、比率は、モル比、重量比および体積比ならびにそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される。好ましい実施形態において、比率はモル比である。他の好ましい実施形態では、比率は体積比である。さらに他の好ましい実施形態では、比率は重量比である。
【0093】
上記の方法は、以下で説明されるような、より限定的な例示的実施態様を有し得ることが明らかであろう。一部の実施形態において、方法は、標的アナライトを有するサンプル中にコンジュゲート化作用物質および非コンジュゲート化作用物質を提供し、その結果、これらの作用物質が互いに競合しながらアナライトに結合するようにすることに焦点を置いている。従って、コンジュゲート化作用物質および非コンジュゲート化作用物質を提供することで、アッセイのシグナルを減少させ、それによりダイナミックレンジを変更することができる。
【0094】
他の実施形態では、方法は、コンジュゲート化アナライトまたは非コンジュゲート化アナライトを使用することに焦点を置いており、これらは標的アナライトを希釈するためにサンプルに添加され、最終的にアッセイのシグナルの変化をもたらす。例えば、コンジュゲート化アナライトは、固相に結合された抗体に結合する可能性があり、この抗体はコンジュゲート化アナライトへの結合によって消光されるフルオロフォアを有する。コンジュゲート化アナライトおよび非コンジュゲート化アナライトを伴うことで、所与の濃度または量のアナライトについての消光の量を減少させ、それによりダイナミックレンジを変更することができる。
【0095】
あるいは、他の実施形態では、1つ以上のコンジュゲート化アナライトと当該1つ以上の標的アナライトに対して特異的な結合試薬とだけが必要とされる。コンジュゲート化アナライトは、結合が生じると改変あるいは活性化または不活性化されてコンジュゲート化アナライトからのシグナル(蛍光など)を増加または減少させるマーカーと結合されている。コンジュゲート化アナライトが試薬に結合すると、コンジュゲート化アナライトからのシグナルは増加または減少する。(サンプル中の、ならびに場合によっては追加的な非コンジュゲート化アナライトの添加も伴うサンプル中の)コンジュゲート化アナライトと非コンジュゲート化アナライトとの比率は、シグナルの増加または減少の規模を決定する。
【0096】
他の実施形態では、コンジュゲート化アナライトではなく、(単に、標的アナライトと同じ構造をいくらか含む分子である可能性がある)1つ以上の改変アナライトが使用される可能性がある。改変アナライトおよび標的アナライト(通常のアナライトの添加を伴うか伴わないサンプルに由来する)は両方とも、1つ以上の第1の試薬に結合する。次いで、1つ以上の第2のコンジュゲートされた試薬が添加されてよく、これらはそれぞれ、標的アナライトのうちの1つ以上または改変アナライトのうちの1つ以上のいずれかだけに結合する。改変アナライトと標的アナライトとの比率は、シグナルの増加または減少の規模を決定する。一部の実施形態において、1つ以上の改変アナライトは、標的アナライト内の構造と同じ構造を含む分子であり、例えば、改変アナライトの少なくともいくつかは、標的アナライトのうちの少なくとも1つのサブユニットであってよいか、そのサブユニットを含んでよい。一部の実施形態において、標的アナライトはタンパク質である可能性がある。一部の実施形態において、第1の試薬は、標的アナライトおよび改変アナライトをコンジュゲートされた試薬の両方に結合する抗体である可能性があるが、第2のコンジュゲートされた試薬は、標的アナライトだけに結合して改変アナライトには結合しない抗体である。一部の実施形態において、コンジュゲートされた試薬は、蛍光検出のためのフルオロフォアをコンジュゲートされている。
【0097】
他の実施形態では、1つ以上の標的アナライトおよび1つ以上の改変アナライトが存在し、これらは競合しながら、コンジュゲートされた試薬に結合する。標的アナライトまたは改変アナライトのいずれかの結合だけが、コンジュゲートされたマーカーの活性化または不活性化(例えば、フルオロフォアの消光)を生じさせる。従って、改変アナライトと標的アナライトとの比率は、シグナルの増加または減少の規模を決定する。
【0098】
「コンジュゲート化」なる用語は、本明細書で使用される場合、直接的シグナル生成マーカー(フルオロフォアなど)であろうとシグナル生成基を付着させるために用いることができる化学基(ビオチン基またはストレプトアビジン基など)であろうと、センサーで測定可能なシグナルをもたらすマーカーと連結されていることを意味する。
【0099】
試薬へのアナライトの結合は、その試薬に結合できるアナライトの数を抑えるか減少させるため、アナライトは競合しながら特定の試薬に結合するということに留意すべきである。
【0100】
一実施形態において、本技術には、アッセイのダイナミックレンジを制御することによる1つ以上の標的アナライトの定量的検出のための、以下の例示的方法が包含され得る。この方法は、(i)標的アナライトに特異的に結合する1つ以上の分子が固定された固相を提供するステップと;(ii)固相をサンプルと接触させるステップであって、1つ以上の標的アナライトの濃度または存在が測定されることになるステップと;(iii)レポーター分子(フルオロフォアなど)にコンジュゲートされているかコンジュゲートされていないであろう結合試薬(これは試薬の混合物を含むであろう)を供するステップと;(iv)コンジュゲート化結合試薬および非コンジュゲート化結合試薬を、固定された標的アナライトへの結合のために競合させるステップと;を含む。フルオロフォアの量は、発光を検出することによって測定できる。さらに、これらの測定値に基づいて標的アナライトの濃度を算出することができる。方法は、(v)コンジュゲート化結合試薬と非コンジュゲート化結合試薬の比率の調整によってシグナルのレベル(従って、ダイナミックレンジ)を制御するステップをさらに含んでよい。このプロセスは、図6でさらに説明されている。具体的には、図6は、4:6という(フルオロフォアをコンジュゲートされた検出抗体):(コンジュゲートされていない検出抗体)の比率を用いて、生成されるシグナルを低下させる、サンドイッチELISAを示す。
【0101】
1つ以上の実施形態において、コンジュゲート化結合試薬または非コンジュゲート化結合試薬には、抗体、抗原、アプタマー、タンパク質および/またはオリゴヌクレオチドが包含される。特定の実施形態において、コンジュゲート化結合試薬には、酵素、タンパク質、フルオロフォア、ストレプトアビジン、アビジン、抗体、抗原、アプタマーおよびオリゴヌクレオチドからなる群より選択されるコンジュゲートと連結された結合試薬が包含される。特定の実施形態において、コンジュゲート化結合試薬は、標的アナライトに結合したコンジュゲート化結合試薬を検出することを可能にする標識にコンジュゲートされている。標識には、対応する基質の存在下において測定可能な応答(例えば、可視的な色の変化)をもたらすことが可能な酵素が包含され得る。酵素には、限定されるものではないが、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)、アルカリホスファターゼ(AP)、ルシフェラーゼ、β-ガラクトシダーゼおよびグルコースオキシダーゼが包含され得る。結合試薬の検出のために使用される標識またはコンジュゲートはまた、フルオロフォア、ストレプトアビジンおよびアビジンなどのキャリア分子を含んでもよい。電子的シグナルまたは放射線シグナルの検出を可能にするために、他の例示的な標識が使用される可能性もある。様々な実施形態において、標的アナライトには、以下のうちの1つ以上が包含される:抗原、抗体、核酸、炭水化物、脂質、タンパク質、ポリマー、およびそれらの任意の組み合わせ。
【0102】
一実施形態において、結合試薬は、一次抗体など、アナライトに直接結合する一次結合分子を含んでよい。別の実施形態では、結合試薬は、二次抗体など、一次結合分子に結合する二次結合分子を含んでよい。この実施形態は、標識化二次検出抗体と非標識化二次検出抗体の混合物と共に非標識化一次検出抗体を用いる例示的な方法を示す図8によってさらに説明されている。
【0103】
さらに別の実施形態では、結合試薬は、アッセイにおいて測定を可能にする別の要素と反応することが可能である。例えば、ある要素にコンジュゲートされたストレプトアビジンに結合するビオチン化抗体の使用は、測定を可能にする。この実施形態はさらに、図7によって大まかに説明されている。図7Aは、100%ビオチン化された検出抗体を、制御された比率の標識化ストレプトアビジンおよび非標識化ストレプトアビジンと共に用いる、例示的な方法を示す。アッセイのレンジを制御するためのHRP-コンジュゲート化ストレプトアビジンと非コンジュゲート化ストレプトアビジンとの混合物は以下で説明されており、図7Bおよび図7Cに示されている。この実験の目的は、HRP-コンジュゲート化ストレプトアビジンを、ビオチン化検出抗体への結合に関してHRP-コンジュゲート化ストレプトアビジンと競合することになる非コンジュゲート化ストレプトアビジンと混合することによってシグナル、従ってアッセイのレンジ、を改変できるということを実証することであった。および、標準曲線を維持しながら、生成されるシグナルを低下させること。標的濃度の範囲で、様々なストレプトアビジン:HRP-ストレプトアビジンの比率を用いて行った。
【0104】
49pg/ml~5μg/mlという広範な濃度レベルにわたってヒトプロラクチンを用いて標準的なELISAを実施した。捕捉抗体で被覆されたプレート、標的としての組換えプロラクチン、ビオチン化検出抗体、HRP-コンジュゲート化ストレプトアビジン、および現像液としてのTMBを用いてアッセイを実施し、2MのH2SO4で停止させた。以下のように、標準的なプロトコルを用いた:プレートを捕捉抗体で被覆した後、リン酸緩衝食塩水-Tween20(登録商標)溶液(PBST)で洗浄した。プレートを1%BSA中の標的と共に2時間インキュベートし、PBSTで洗浄した。プレートをビオチン化検出抗体と共に1時間インキュベートし、PBSTで洗浄した。(ある範囲の非コンジュゲート化ストレプトアビジンを添加して)プレートをHRP-コンジュゲート化ストレプトアビジンと共にインキュベートした後、(上記のような)PBSTによる洗浄工程を行った。発色基質である3,3’,5,5’-テトラメチルベンジジン(TMB)を添加し、10分後に2MのH2SO4で反応を停止させ、450nmにて吸光度を読み取った。
【0105】
データは、非コンジュゲート化ストレプトアビジンの量を増加させるとシグナルのレベルが低下するということを示す。図7Bに示されるように、非コンジュゲート化ストレプトアビジンが0の場合、1.56ngというプロラクチン濃度で曲線が横ばいになり、これより下の濃度しか識別できない。73ng/mlの非コンジュゲート化ストレプトアビジンを添加した場合、シグナルは低下し、プロラクチン濃度が1.25μgに達するまで曲線の平坦化は起こらず、これで、それより下の濃度は全て識別できる。非コンジュゲート化ストレプトアビジンの量を増加させると、シグナルのレベルはさらに低下し、プラトーが遅れ、従って、アッセイによって決定できる標的の濃度が増加する。非コンジュゲート化ストレプトアビジンの濃度を225ng/mlまで増加させると、現像が完全に妨げられたようであり、これは、十分な量のHRP-コンジュゲート化ストレプトアビジンがビオチン化検出抗体に結合できていないということを示す。用いた非コンジュゲート化ストレプトアビジンの濃度に対して各標的濃度をプロットすることによって、特定の標的についてのアッセイのレンジを調整するのに必要とされる非コンジュゲート化ストレプトアビジンの量を決定できる(図7C)。
【0106】
上記で既に説明されているように、混合物は、1つ以上の所定の標的アナライトに対して特異的な、コンジュゲート化結合試薬と非コンジュゲート化結合試薬を含む。固相上に固定された標的アナライトの検出範囲を正確に制御するために、混合物中のコンジュゲート化結合試薬と非コンジュゲート化結合試薬の種々の比率を用いることができる。例えば、図9は、標識化結合試薬:非標識化結合試薬の比率の調整がシグナル強度を調整するプロセスを示す。図10は、コンジュゲート化検出抗体:非コンジュゲート化検出抗体の比率を変更することによってシグナル強度を調整できるということを示す、図9のプロセスに関しての実験結果を図示する。
【0107】
コンジュゲートまたは標識は、基質の存在下において測定可能な応答または検出シグナルをもたらし、それにより、結合試薬と標的アナライトとの間の正の相互作用を表す。検出シグナルは、色の変化、蛍光シグナル、および/または化学発光シグナルを含んでよく、これらは、測光法、分光光度法または比色法によって測定できる。標的アナライトの濃度は、検出シグナルのレベルに基づいて正確に決定できる(例えば、酵素コンジュゲートによる色の変化のレベルは、対応する標的アナライトの濃度を反映する)。
【0108】
一実施形態において、方法は、免疫測定法におけるHRP-コンジュゲート化抗体と非コンジュゲート化抗体とを含む結合試薬の混合物の使用を含む。HRP-コンジュゲート化抗体は、固体支持体上に固定された標的アナライト上の結合部位に関して非コンジュゲート化抗体と競合する。HRP-コンジュゲート化抗体対非コンジュゲート化抗体の比率の制御は、検出シグナルの減衰の正確な制御を可能にし、これが次に、サンプル中に存在しているか固体支持体に固定されている可能性がある標的アナライトの濃度範囲をカバーするためにアッセイのダイナミックレンジを向上させることを可能にする(図10も参照のこと)。
【0109】
試薬の混合物と標的アナライトとの間の相互作用には、固相上に固定された標的アナライト上の結合部位に対するコンジュゲート化結合試薬と非コンジュゲート化結合試薬との間の競合的結合が包含される(図6も参照のこと)。
【0110】
さらに別の例示的な実施形態では、標的アナライトは、固相支持体上に固定された抗原を含む。混合物は、固定された抗原に特異的に結合することができる非コンジュゲート化結合試薬と、固定された抗原に結合することができる酵素標識抗体を有するコンジュゲート化結合試薬と、を含んでよい。標的抗原を含む固相に混合物を添加すると、酵素標識抗体は、標的抗原の表面上の結合部位に関して非標識化抗体と競合する。
【0111】
複数種のアナライトの濃度が生体サンプル内で異なる可能性がある。例えば、生体サンプルにおいて、甲状腺刺激ホルモン(TSH)は通常、pg/mlの範囲で存在するが、黄体形成ホルモン(LH)および卵胞刺激ホルモン(FSH)はng/mlの範囲で存在する。別の例では、23トリソミー、ダウン症候群を試験するために、ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)、エストリオール(E3)およびα-フェトプロテイン(AFP)の濃度が測定される。試験サンプルにおいて、hCGは通常、mg/mLの範囲で存在し、E3はng/mLの範囲で存在し、AFPはpg/mLの範囲で存在する。サンプル内で種々のアナライトの濃度範囲が異なると、結果的にアッセイのダイナミックレンジが異なってしまうため、マルチプレックスアッセイがより困難になる。従って、定量的なアッセイ法は、より高濃度のアナライトを有するサンプルを分析するために、および複数種のアナライトを著しく異なる検出範囲で含むサンプルを分析するために、バランスのとれた測定および結合試薬の反応性の制御の必要性を必要とする。
【0112】
さらに他の実施形態によれば、本開示の技術は、免疫測定法において検出シグナルのレベルを制御する方法を提供する。各アナライトからの検出シグナルのレベルは、既知の濃度のコンジュゲート化結合試薬および非コンジュゲート化結合試薬を種々の比率で用いることによって正確に制御できる(図11を考慮のこと)。この方法は、サンプル中の広範な濃度の複数種の標的アナライトの正確な定量化を可能にし、シングルプレックスアッセイならびにマルチプレックスアッセイまたは多重シングルプレックスアッセイにおいて使用できる。方法はさらに、サンプル内の各アナライトの標準的な濃度または予想される濃度に従ってコンジュゲート化結合試薬対非コンジュゲート化結合試薬の比率のバランスを保つこと、および/またはその比率を最適化すること、を可能にする(図11も参照のこと)。サンプルは、異なる濃度の2種類の標的アナライトに対する抗体を有する固相に供される(ステップ1)。第1の標的アナライトが高濃度であるのに対し、第2の標的アナライトは低濃度である。標的アナライトが抗体に結合する(ステップ2)。検出抗体が固相に供され、ここで、アナライト1用のものは25%がコンジュゲートされており、アナライト2用のものは100%がコンジュゲートされている(ステップ3)。検出抗体が、固定された標的アナライトに結合する(ステップ4)。その後、同時分析を可能にするために、アナライト1からのシグナルが、アナライト2からのシグナルと同等化される(ステップ5)。
【0113】
アッセイのシグナルを変化させることで、シングルプレックス試験またはマルチプレックス試験の読み取りの、より大規模な制御を行うことができる。従って、本技術の原理をマルチプレックス試験に適用すれば、一度に複数の結果を得ることおよび現像時間を長くすることが、より容易になる。最終的には、これは、より正確な濃度の測定をもたらす。一実施形態において、これは、様々な甲状腺バイオマーカー(TSH、T3およびT4)のアッセイのシグナルを、たとえ濃度が異なっていても、同じである(または非常に類似したレンジを有する)ように変化させることを可能にするであろう。抗体のコンジュゲート化レベル対非コンジュゲート化レベルが分かっていることで、混合物において各抗体の濃度を個別に決定することが可能である。
【0114】
代替的な実施形態において、本技術は、検出シグナルのレベルを制御することによってアッセイのダイナミックレンジを制御するための方法に関する。この方法は、(i)標的アナライトに対して特異的な結合試薬が固定された固相を提供するステップと、(ii)固相を、標的アナライトおよびコンジュゲート化アナライトを含むサンプルの混合物と接触させるステップと、(iii)相互作用のための最適条件下で混合物と接触した状態で固相をインキュベートするステップと、(iv)固定された結合試薬と混合物との間の相互作用を測定するステップと、を含み、ここで、アッセイのダイナミックレンジは、混合物中のサンプルアナライト対コンジュゲート化アナライトの比率を調整することによって制御される。サンプル中に存在する標的アナライトは、アッセイのダイナミックレンジを制御することによって定量的に決定できる。
【0115】
例えば、試験される標的アナライトはタンパク質を含んでよい。さらに、混合物は、HRPなどの酵素をコンジュゲートされた既知の濃度の同一タンパク質と混合された標的タンパク質を含むサンプルを含んでよい。混合物はさらに、タンパク質と抗体との結合のための最適条件下で、タンパク質に対して特異的な抗体が固定された固相と反応する。酵素で標識されたタンパク質は、固定された抗体上の標的部位への結合に関して、サンプル中の標的タンパク質と競合し、混合物中のタンパク質の結合の差は、適切な基質を添加すると酵素によって生成される検出シグナルによって測定される。
【0116】
検出シグナルのレベルは、サンプル中のコンジュゲート化アナライト対標的アナライトの比率を最適化することによって制御できる。例えば、サンプル中でコンジュゲート化アナライトの濃度が標的アナライトよりも高ければ、固定された結合試薬へのコンジュゲート化アナライトの結合が増加することになり、従って、検出シグナルが増加する。同様に、より高濃度の標的アナライトとより低濃度のコンジュゲート化アナライトとを含む混合物の比率は、固定された結合試薬への標的アナライトの結合の増加をもたらし、従って、検出シグナルの低下をもたらす。例えば、検出シグナルは、コンジュゲートの酵素活性による、添加された基質の色の変化を含んでよい。色の強度の変化は、標的アナライトとコンジュゲート化アナライトとの間での、固定化された結合試薬または検出試薬に対する結合の差を示す。
【0117】
さらに別の実施形態では、本技術は、免疫測定法のダイナミックレンジを制御することによる1つ以上のアナライトの定量的検出のためのシステムを提供する。このシステムは、標的アナライトを生体サンプルに提供して標的アナライトをコンジュゲート化結合試薬と非コンジュゲート化結合試薬との混合物と接触させるための、容器または混合器を含む。一部の実施形態において、容器または混合器は、種々の所定の比率でコンジュゲート化結合試薬および非コンジュゲート化結合試薬を有する混合物を、固相上に固定された1つ以上のアナライトと反応させることを可能にしてよい。しかし、固相は、本明細書で説明される実施形態の全てに必要とされるわけではなく、従って、本開示は、固相の使用に限定されない。
【0118】
システムは、1つ以上の標的アナライトとコンジュゲート化結合試薬および非コンジュゲート化結合試薬の混合物との間の相互作用を測定するように構成されたセンサーをさらに含む。例えば、センサーは、固相上のアナライトと反応するコンジュゲート化結合試薬の第1の濃度および固相上のアナライトと反応する非コンジュゲート化結合試薬の第2の濃度を決定できる。
【0119】
システムは、混合物中のコンジュゲート化結合試薬と非コンジュゲート化結合試薬の比率を調整することによってアッセイのシグナルのダイナミックレンジを制御するように構成された制御器をさらに含む。システムは、標的アナライトのそれぞれの濃度を決定するように構成された分析装置をさらに含んでよい。例えば、分析装置は、混合物の各比率について結合試薬の第1の濃度および第2の濃度を分析することによって1つ以上の標的アナライトを定量的に決定できる。
【0120】
センサーは、標的アナライトと相互作用する結合試薬によって生成された検出シグナルの測定または定量化に適合させた比色測定装置、蛍光測定装置、測光装置および/または分光測定装置を含んでよい。制御器はまた、システムのセンサーに動作可能に接続された計算装置を含んでもよい。一部の実施形態において、計算装置は、少なくとも1つのプロセッサと、少なくとも1つのプロセッサによって実行されるとシステムに、センサーによる測定を行わせ、混合物の比率を変更させ、1つ以上の標的アナライトを定量的に決定させる、プロセッサによって実行可能な命令を記憶するメモリと、を含む。一部の実施形態において、分析装置はまた、パーソナルコンピューターまたはラップトップなどの計算装置も含む。さらに他の実施形態では、制御器および分析装置が、単一の装置にまとめられてよい。例えば、1つの計算装置が、制御器および分析装置として使用されてよい。
【0121】
容器は、マイクロタイタープレート、マイクロストリップ、ガラス管、および/または、アナライトもしくは1つ以上のアナライトを含むサンプルと共に試薬を収容または混合するように適合させた同様の装置、を含んでよい。
【0122】
一実施形態において、分析装置は、混合物中のコンジュゲート化結合試薬と非コンジュゲート化結合試薬の種々の所定の比率についての、固相と相互作用する結合試薬の複数の濃度値の間の差に基づいて、サンプル中の標的アナライトの濃度を決定する。アッセイのダイナミックレンジは、結合試薬を含む混合物の比率を調整することによって制御または改変される。従って、サンプル中の1つ以上のアナライトの濃度を決定するためにアッセイの感度が制御される。
【0123】
検出シグナルのレベルの制御またはアッセイのダイナミックレンジの制御によるアナライトの定量的決定に関連する本開示の方法およびシステムは、様々な免疫測定法(例えば、ビーズを利用したアッセイ、マイクロタイタープレートを利用したアッセイ、またはマイクロストリップを利用したアッセイ)、マイクロアレイ(例えば、タンパク質マイクロアレイ、DNAマイクロアレイ、RNAマイクロアレイ)、タンパク質バイオチップアッセイ、抗体アレイにおいて、およびマイクロ流体デバイスを用いて実施されるアッセイにおいて、使用できる。これらのアッセイは、典型的には生物学的アッセイであってよいが、本開示の原則的方法は任意の分子または他の化学的検出に適用され得るため、必ずしも生物学的アッセイでなくてもよい。
【0124】
特定の実施形態によれば、本技術はまた、本明細書で説明される方法を用いてその流体サンプルが試験および分析された対象の疾患を決定するように構成されてもよい。例えば、本明細書で開示される方法を用いたトロポニンおよびB型ナトリウム利尿ペプチド(BNP)というバイオマーカーの測定は、うっ血性心不全の決定およびその後のワルファリンによる治療につながる可能性がある。さらに、本技術は、同定された疾患を治療するための自動的な推奨、提案または計画を提供してよい。特に、本明細書で説明されるような生体サンプル中の1つ以上の標的アナライトの定量的検出の結果に基づいて、様々な疾患を決定できる。
【0125】
このように、生体サンプル中の細胞または他の成分を識別および/または同定するための方法およびシステムが説明されており、アッセイのシグナルのダイナミックレンジを制御することによる生体サンプル中の1つ以上の標的アナライトの定量的検出のための方法およびシステムが説明されている。特定の例示的な実施形態を参照しながら実施形態を説明してきたが、より広範な本出願の趣旨および範囲から逸脱することなく、これらの例示的な実施形態に対して様々な改変および変更を行うことができるということは明らかであろう。従って、明細書および図面は、限定的な意味ではなく例示的な意味で考慮されるべきである。
【0126】
本明細書で使用される場合、「合成」とは、天然には存在しないが人間の技術的介入によって作製されたことを意味する。合成のタンパク質、ペプチドおよび核酸の文脈において、これは、当技術分野で十分に理解されているような組換え技術、化学合成技術またはコンビナトリアル技術によって作製された分子を包含する。
【0127】
本明細書で引用された全ての特許、特許出願および刊行物の開示は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0128】
本明細書における参考文献の引用はいずれも、そのような参考文献が本出願に対する「先行技術」として利用可能であることを認めるものとして解釈されるべきではない。
【0129】
本明細書全体にわたって、その目的は、本発明を任意の一実施形態または特定の特徴の集合に限定することなく、本発明の好ましい実施形態を説明することである。従って、当業者であれば、本開示を考慮して、本発明の範囲から逸脱することなく、例示された特定の実施形態において様々な改変および変更を行うことができるということを理解するであろう。そのような改変および変更は全て、添付の特許請求の範囲の内に含まれることが意図される。
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B
図6A
図6B
図7A
図7B
図7C
図8
図9
図10
図11A
図11B