(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-21
(45)【発行日】2023-08-29
(54)【発明の名称】噛み心地評価装置
(51)【国際特許分類】
G01N 3/08 20060101AFI20230822BHJP
G01N 33/02 20060101ALI20230822BHJP
【FI】
G01N3/08
G01N33/02
(21)【出願番号】P 2022023425
(22)【出願日】2022-02-18
【審査請求日】2022-11-11
(73)【特許権者】
【識別番号】302019326
【氏名又は名称】株式会社トリニティーラボ
(74)【代理人】
【識別番号】110002697
【氏名又は名称】めぶき弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100110973
【氏名又は名称】長谷川 洋
(72)【発明者】
【氏名】野村 修平
【審査官】目黒 大地
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3138898(JP,U)
【文献】特開2016-45168(JP,A)
【文献】国際公開第2020/066314(WO,A1)
【文献】中国実用新案第208607097(CN,U)
【文献】中国特許出願公開第112903457(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 3/00-3/62
G01N 19/00
G01N 33/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料の噛み心地を評価するための噛み心地評価装置であって、
前記試料を支持する支持台と、
先端部が試料に接触可能であって、前記支持台に対向配置するよう固定された接触部材と、
前記試料と前記接触部材とが接近および離間する接近離間方向に前記支持台を往復移動させる駆動手段と、
前記接触部材に前記試料が押圧されることにより前記接触部材にかかる荷重を測定する荷重測定手段と、
前記支持台の基準位置からの前記接近離間方向における往復移動による変位を測定する変位測定手段と、
を備え、
前記駆動手段は、
モータと、
前記モータから動力を得て回転駆動する回転板と、
前記回転板の中心より偏心した位置に設けられ、前記回転板の回転駆動に連動して回転する連動部材と、
前記連動部材を挿入可能な挿入溝若しくは挿入孔を有し、前記連動部材を前記接近離間方向に略直交する方向に案内するガイド部材と、
前記ガイド部材と係合し、前記連動部材の駆動を前記支持台へ伝達して、前記支持台を前記接近離間方向へ摺動する駆動力伝達板と、
を備えることを特徴とする噛み心地評価装置。
【請求項2】
前記連動部材は、カムフォロアであることを特徴とする請求項1に記載の噛み心地評価装置。
【請求項3】
前記ガイド部材は、
前記接近離間方向に略直交する方向に沿って、前記駆動力伝達板に備えられるガイドレールと、
前記挿入溝若しくは前記挿入孔を備え、前記ガイドレールに係合して前記接近離間方向に略直交する方向に沿って摺動可能なスライド部材と、
を備え、
前記連動部材は、前記回転板の回転駆動に伴って、前記スライド部材を介して前記ガイドレールを往復移動することにより、前記駆動力伝達板を前記接近離間方向に往復移動させることを特徴とする請求項1または2に記載の噛み心地評価装置。
【請求項4】
前記回転板は、前記連動部材を取り付け可能な複数の連動部材取付部を備え、
前記複数の連動部材取付部は、前記回転板の中心からの距離が互いに異なることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の噛み心地評価装置。
【請求項5】
前記変位測定手段は、前記駆動力伝達板にレーザを照射して前記駆動力伝達板との変位を測定するレーザ変位計であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の噛み心地評価装置。
【請求項6】
前記駆動力伝達板は、前記支持台を係合する支持台係合領域を除く領域の少なくとも一部に、前記試料と前記接触部材とが離間する方向に切り欠かれた切り欠き部を備える板状部材であり、
前記変位測定手段は、前記駆動力伝達板の前記切り欠き部にレーザを照射して前記切り欠き部との変位を測定することを特徴とする請求項5に記載の噛み心地評価装置。
【請求項7】
前記荷重測定手段は、前記接触部材の鉛直方向の垂直荷重を測定して信号出力するロードセルであることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の噛み心地評価装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、噛み心地評価装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、食品の美味しさは、風味、香り、食感の3つから構成されると言われている。これらの中で、食感は、食品の化学特性である風味や香りと異なり、食品の力学特性、すなわち、摂食過程における食品の力応答と形態変化に起因する感触であり、極めて繊細かつ複合的な情報から構成されている。例えば、舌触りや口どけ感等の複合的な要因によって決まる食感は、数値化が特に難しい。そのため、このような食感については、複数の評価者による官能評価により評価される。官能評価は、人の感覚がそのまま数値化されるというメリットを有する。しかし、再現性の高い評価を得るためには、訓練された評価者を数多く養成する必要があり、コストと時間がかかる。
【0003】
そこで、近年では、力学的な試験装置を用いて食感を評価する手法が行われている。例えば、食品試料を一定速度で押圧し、押圧中の荷重および歪率を連続的に測定して、荷重および歪率の値に基づき、食品咀嚼時における食品の硬さを評価する手法が知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述の手法により得られる食感の指標は、単に食品の機械的特性である「かたさ」を表しているに過ぎない。例えば、人による咀嚼は、一定速度の押圧が連続的に繰り返されるものではなく、速度変化を伴う押圧動作である。よって、上述の手法では、人の感覚に近い食感、すなわち、「噛み心地」の評価および判定精度が十分でないという問題がある。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、様々な食品の噛み心地を精度良く評価可能な噛み心地評価装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)上記目的を達成するための一実施形態に係る噛み心地評価装置は、試料の噛み心地を評価するための噛み心地評価装置であって、前記試料を支持する支持台と、先端部が試料に接触可能であって、前記支持台に対向配置するよう固定された接触部材と、前記試料と前記接触部材とが接近および離間する接近離間方向に前記支持台を往復移動させる駆動手段と、前記接触部材に前記試料が押圧されることにより前記接触部材にかかる荷重を測定する荷重測定手段と、前記支持台の基準位置からの前記接近離間方向における往復移動による変位を測定する変位測定手段と、を備え、前記駆動手段は、モータと、前記モータから動力を得て回転駆動する回転板と、前記回転板の中心より偏心した位置に設けられ、前記回転板の回転駆動に連動して回転する連動部材と、前記連動部材を挿入可能な挿入溝若しくは挿入孔を有し、前記連動部材を前記接近離間方向に略直交する方向に案内するガイド部材と、前記ガイド部材と係合し、前記連動部材の駆動を前記支持台へ伝達して、前記支持台を前記接近離間方向へ摺動する駆動力伝達板と、を備える。
(2)別の実施形態に係る噛み心地評価装置において、前記連動部材は、カムフォロアであっても良い。
(3)別の実施形態に係る噛み心地評価装置において、前記ガイド部材は、前記接近離間方向に略直交する方向に沿って、前記駆動力伝達板に備えられるガイドレールと、前記挿入溝若しくは前記挿入孔を備え、前記ガイドレールに係合して前記接近離間方向に略直交する方向に沿って摺動可能なスライド部材と、を備え、前記連動部材は、前記回転板の回転駆動に伴って、前記スライド部材を介して前記ガイドレールを往復移動することにより、前記駆動力伝達板を前記接近離間方向に往復移動させても良い。
(4)別の実施形態に係る噛み心地評価装置において、前記回転板は、前記連動部材を取り付け可能な複数の連動部材取付部を備え、前記複数の連動部材取付部は、前記回転板の中心からの距離が互いに異なっていても良い。
(5)別の実施形態に係る噛み心地評価装置において、前記変位測定手段は、前記駆動力伝達板にレーザを照射して前記駆動力伝達板との変位を測定するレーザ変位計であっても良い。
(6)別の実施形態に係る噛み心地評価装置において、前記駆動力伝達板は、前記支持台を係合する支持台係合領域を除く領域の少なくとも一部に、前記試料と前記接触部材とが離間する方向に切り欠かれた切り欠き部を備える板状部材であり、前記変位測定手段は、前記駆動力伝達板の前記切り欠き部にレーザを照射して前記切り欠き部との変位を測定しても良い。
(7)別の実施形態に係る噛み心地評価装置において、前記荷重測定手段は、前記接触部材の鉛直方向の垂直荷重を測定して信号出力するロードセルであっても良い。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、様々な食品の噛み心地を精度良く評価可能な噛み心地評価装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係る噛み心地評価装置の正面図を示す。
【
図2】
図2は、本発明の実施形態に係る噛み心地評価装置の右側面図を示す。
【
図3】
図3は、本発明の実施形態に係る噛み心地評価装置の平面図を示す。
【
図4】
図4は、
図1の噛み心地評価装置が備える駆動ユニットの正面図を示す。
【
図5】
図5は、
図4に示す駆動ユニットを矢印A方向から見た側面図を示す。
【
図7】
図7は、
図4に示す駆動ユニットの一部である駆動手段の一部分解正面図を示す。
【
図8】
図8は、
図7に示す駆動手段の一部を矢印B方向から見た図を示す。
【
図9】
図9は、回転板における連結部材取付部の配置を説明するための図を示す。
【
図10】
図10は、駆動力伝達板およびガイドレールの正面図、側面図および平面図をそれぞれ示す。
【
図11】
図11は、スライド部材の正面図、側面図および平面図をそれぞれ示す。
【
図12】
図12は、駆動手段の動作を説明するための図を示す。
【
図13】
図13は、本発明の実施形態に係る噛み心地評価装置による測定結果の一例を示す。
【
図14】
図14は、本発明の実施形態に係る噛み心地評価装置による測定結果の一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また、実施形態の中で説明されている諸要素およびその組み合わせの全てが本発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0011】
図1は、本発明の実施形態に係る噛み心地評価装置の正面図を示す。
図2は、本発明の実施形態に係る噛み心地評価装置の右側面図を示す。
図3は、本発明の実施形態に係る噛み心地評価装置の平面図を示す。
【0012】
(1)概略構成
この実施形態に係る噛み心地評価装置1は、食品等の試料Sの噛み心地を評価するための装置である。試料Sは、噛み心地の評価の対象となるサンプルである。試料Sは、特に制約されないが、例えば、クッキー、ビスケット、せんべい、パン、パイ生地、ケーキ、ドーナツ、ワッフル、スコーン、バウムクーヘン、カステラ、ういろう、饅頭、餅、ガム、ゼリー、とんかつ、から揚げ、天ぷら等が挙げられる。本明細書において、「噛み心地」とは、人間が試料Sを口の中で咀嚼したときに知覚する感覚のうち、パリパリ、サクサク、バリバリ、カリカリ、ホロホロ、もちもち、ベタベタ、ネバネバ等の硬さ・脆さ・軽さ・粘り等の表現に置き換えて表すことができるものである。特に、本明細書において、「噛み心地」は、試料Sの機械的な硬さ・脆さ・軽さ・粘り等の特性である「食感」ではなく、人間が咀嚼により感じる硬さ・脆さ・軽さ・粘り等の特性をいう。噛み心地は、「噛みごたえ」、「歯ごたえ」若しくは「口当たり」等と言い換えることもできる。
【0013】
この実施形態における噛み心地評価装置1は、試料Sを支持する支持台21と、先端部12が試料Sに接触可能であって、支持台21に対向配置するよう固定された接触部材10と、試料Sと接触部材10とが接近および離間する接近離間方向(
図1および
図2における上下方向)に支持台21を往復移動させる駆動手段30と、接触部材10に試料Sが押圧されることにより接触部材10にかかる荷重を測定する荷重測定手段60と、支持台21の基準位置からの接近離間方向における往復移動による変位を測定する変位測定手段70(
図4を参照)と、を備える。この実施形態において、噛み心地評価装置1は、好ましくは、筐体80の内部に、少なくとも駆動手段30、荷重測定手段60および変位測定手段70を備える。また、噛み心地評価装置1は、好ましくは、筐体80の前方(
図2の左方向)に接触部材10および支持台21を備える。噛み心地評価装置1において、少なくとも接触部材10、駆動手段30、荷重測定手段60および変位測定手段70は、筐体80内部に備えられるフレーム部材82に固定されていることが好ましい。また、この実施形態において、噛み心地評価装置1は、好ましくは、駆動手段30の駆動に伴って接近離間方向へ往復移動する昇降板25を備える。以後、駆動手段30と昇降板25とからなる構成要素を駆動ユニット5とも称する。筐体80は、特に制約されないが、好ましくは、ポリカーボネート、ポリプロプレン、ポリアミドアロイ、ポリフェニレンエーテル等の樹脂を含有する材料から構成される部材である。ただし、筐体80は、樹脂に制約されず、ステンレス等の金属から構成されていても良いし、板金塗装が施されていても良い。なお、筐体80は、その内部に少なくとも接触部材10、支持台21、駆動手段30、荷重測定手段60および変位測定手段70を備えていれば、その形態に特に制約されず、種々の形態を採用できる。また、フレーム部材82は、少なくとも接触部材10、駆動手段30、荷重測定手段60および変位測定手段70を固定可能な部材であれば、その形態に特に制約されず、種々の形態を採用できる。また、噛み心地評価装置1は、好ましくは、緊急停止ボタン90を備える。緊急停止ボタン90は、ボタン部分が筐体80から突出して設けられ、ボタン部分が押圧されることにより、後述のモータ32の駆動を停止させる。なお、噛み心地評価装置1は、緊急停止ボタン90を備えていなくとも良い。
【0014】
次に、噛み心地評価装置1の各構成要素について説明する。
【0015】
(2)接触部材
接触部材10は、支持台21に載置された試料Sに対向配置される部材であって、試料Sに接触可能な先端部12と、先端部12に連結される棒状の柄部11と、を備える。柄部11は、先端部12が支持台21に対向配置されるように、先端部12と反対側の端部が筐体80に固定される部材である。先端部12は、駆動手段30による支持台21の往復移動により、試料Sに接触しさらに押圧する部材である。先端部12の形状は、試料Sの実際の咀嚼態様を考慮して選択されることが好ましい。例えば、試料Sが主として前歯で噛む食品の場合、先端部12はくさび形状であることが好ましい。また、例えば、試料Sが主として奥歯で噛む食品の場合、先端部は円柱形状であることが好ましい。そのため、先端部12は、柄部11に対して取り外し自在に構成されることが好ましい。この実施形態では、接触部材10は、一例として、円錐形状の先端部12が柄部11に取り付けられている(
図1および
図2を参照)。接触部材10は、試料Sよりも強度があればその構成材料は特に制約されないが、例えば、樹脂、木材、ステンレス等の金属、セラミックス、高分子材料等から選ばれ1種以上の材料から構成されることが好ましい。接触部材10の構成材料は、噛み心地評価装置1の使用環境および試料Sの種類等に応じて、適宜選択されることが好ましい。例えば、接触部材10は、試料Sや他の構成要素との接触により発生する音(共鳴音等)を抑制することを考慮すると、樹脂、木材、ステンレスおよび/またはセラミックスにより形成されることが好ましい。一方、接触部材10は、腐食性や吸湿性を考慮すると、樹脂、ステンレスおよび/またはセラミックスにより形成されることが好ましい。なお、接触部材10は、柄部11と先端部12とが同一材料から形成されていても良いし、互いに異なる材料から形成されていても良い。
【0016】
(3)支持台
支持台21は、試料Sを載置する台である。この実施形態において、支持台21は、平面視矩形状の板状部材である。ただし、支持台21の形態は、少なくとも試料Sを載置可能な形態であれば特に制約されず、例えば、平面視楕円形状、平面視円形状、平面視多角形状等であっても良い。支持台21は、好ましくは、連結板23上に固定されている(
図2を参照)。連結板23は、支持台21と昇降板25とを連結する部材であって、昇降板25の表面に対して略垂直に立設する部材である。支持台21は、昇降板25の往復移動に伴って連結板23が接近離間方向(
図2の上下方向)へ往復移動することにより、当該接近離間方向へ往復移動することができる。この往復移動に基づいて、試料Sが接触部材10の先端部12に接近する方向(
図2の上方向)へ支持台21が移動することにより試料Sが先端部12に接触し、さらに当該接近する方向へ支持台21が移動することにより試料Sが先端部12に押圧される。そして、試料Sが接触部材10の先端部12から離間する方向(
図2の下方向)へ支持台21が移動することにより、先端部12による押圧が解除され、試料Sが先端部12から離間する。なお、試料Sは、支持台21に直接載置されても良いし、例えば、薄いシート状の下敷きを介して支持台21に載置されても良い。また、試料Sは、例えば、水等の液体若しくは油が入ったバット等の容器内に入れられた状態で支持台21に載置されても良い。また、試料Sは、ヒータ等により加熱された状態で支持台21に載置されても良いし、ペルチェ等により冷却された状態で支持台21に載置されても良い。
【0017】
(4)駆動ユニット
図4は、
図1の噛み心地評価装置が備える駆動ユニットの正面図を示す。
図5は、
図4に示す駆動ユニットを矢印A方向から見た側面図を示す。
図6は、
図4に示す駆動ユニットの平面図を示す。
図7は、
図4に示す駆動ユニットの一部である駆動手段の一部分解正面図を示す。
図8は、
図7に示す駆動手段の一部を矢印B方向から見た図を示す。なお、本実施形態では、駆動ユニット5および駆動手段30は、噛み心地評価装置1に備えられた状態において噛み心地評価装置1の正面側(支持台21側)となる方向を駆動ユニット5および駆動手段30の正面側とする。
【0018】
駆動ユニット5は、好ましくは、駆動手段30と、昇降板25と、を備える。駆動手段30は、好ましくは、モータ32と、ギアヘッド33と、モータ32から動力を得て回転駆動する回転板34と、回転板34の中心より偏心した位置に設けられ、回転板34の回転駆動に連動して回転する連動部材37と、連動部材37を挿入可能な挿入溝若しくは挿入孔を有し、連動部材37を接近離間方向に略直交する方向(
図8の左右方向)に案内するガイド部材40と、ガイド部材40と係合し、連動部材37の駆動を支持台21へ伝達して、支持台21を接近離間方向(
図8の上下方向)へ摺動する駆動力伝達板50と、を備える。以下、駆動ユニット5の各構成要素について説明する。
【0019】
(4-1)モータ
モータ32は、例えば、サーボモータやステッピングモータ等の回転駆動可能なモータである。モータ32は、好ましくは、サーボモータである。モータ32は、ギアヘッド33が一体化されたいわゆるギアードモータであっても良い。モータ32は、好ましくは、制御回路(不図示)から入力される電流やパルスにより回転駆動する。モータ32の回転駆動力は、ギアヘッド33を介して回転板34に連動される。モータ32を回転させることにより、駆動力伝達板50を正弦波関数的に往復移動させることができる。駆動力伝達板50の往復移動については、詳細を後述する。
【0020】
(4-2)回転板
図9は、回転板における連結部材取付部の配置を説明するための図を示す。
【0021】
回転板34は、ギアヘッド33を介してモータ32からの回転駆動力を連動して回転駆動する円板状の部材である。回転板34は、好ましくは、その中心より偏心した複数の位置各々に、連動部材37を取り付け可能な連動部材取付部35を備える。複数の連動部材取付部35は、好ましくは、回転板34の中心からの距離が互いに異なるように配置される。この実施形態では、回転板34は、5つの連動部材取付部35a,35b,35c,35d,35eを備える。本願では、連動部材取付部35a,35b,35c,35d,35eを総称して、「連動部材取付部35」と称する。この実施形態において、連動部材取付部35a,35b,35c,35d,35eと回転板34の中心との距離D1,D2,D3,D4,D5は、互いに異なる距離であって、D1<D2<D3<D4<D5の大小関係を有している。なお、連動部材取付部35は、回転板34の中心より偏心した位置に少なくとも1つ設けられていれば、その数および配置は特に制約されない。例えば、連動部材取付部35は、回転板34の中心より偏心した位置に1つ設けられていても良いし、回転板34の中心から同じ距離の異なる位置にそれぞれ備えられていても良い。連動部材取付部35は、好ましくは、連動部材37を嵌合可能であって、その厚さ方向に貫通する孔である。連動部材取付部35は、より好ましくは、連動部材37を螺合可能な雌螺子である。ただし、連動部材取付部35は、連動部材37を取り付け可能な形態であれば特に制約されず、例えば、ギアヘッド33と反対側から厚さ方向に窪む凹部であっても良い。
【0022】
(4-3)連動部材
連動部材37は、回転板34の連動部材取付部35に取り付けられ、回転板34の回転駆動に連動して回転する部材である。連動部材37は、好ましくは、連動部材取付部35に嵌合可能な部材であり、より好ましくは、連動部材取付部35に螺合可能なカムフォロアである。連動部材37は、好ましくは、回転板34の中心からの距離が互いに異なる複数の連動部材取付部35の間で、取り付けおよび取り外し自在に構成される。連動部材37を取り付ける連動部材取付部35を変えることにより、連動部材37の回転駆動の径の大きさが変わるため、支持台21の接近離間方向の往復移動量を変更することができる。よって、連動部材37は、試料Sの種類や評価方法等に応じて、複数の連動部材取付部35のうちの1つを適宜選択して取り付けられることが好ましい。連動部材37は、好ましくは、連動部材取付部35と反対側の端部が、後述のスライド部材42の挿入孔43に嵌合する(
図7を参照)。なお、連動部材37は、少なくとも連動部材取付部35に取り付け可能かつ挿入孔43に嵌合可能な部材であれば、カムフォロアに制約されない。連動部材37は、例えば、楕円柱形状、多角柱形状等であっても良い。この場合、連動部材取付部35および挿入孔43は、その平面視形状が連動部材37の端部の平面視形状と同等の形状であることが好ましい。
【0023】
(4-4)ガイド部材
図10は、駆動力伝達板およびガイドレールの正面図、側面図および平面図をそれぞれ示す。
図11は、スライド部材の正面図、側面図および平面図をそれぞれ示す。なお、本実施形態では、駆動力伝達板50、ガイドレール44およびスライド部材42は、
図7の矢印B方向から見た側を正面側とする。
【0024】
ガイド部材40は、好ましくは、支持台21の接近離間方向に略直交する方向(
図8の左右方向)に沿って、駆動力伝達板50に備えられるガイドレール44と、挿入孔43を有していてガイドレール44に係合して接近離間方向に略直交する方向に沿って摺動可能なスライド部材42と、を備える。ガイドレール44は、好ましくは、駆動力伝達板50の下端に備えられるレールである。ガイドレール44は、接近離間方向に略直交する方向に沿ってスライド部材42が摺動可能であれば、その形態および配置は特に制約されない。また、ガイドレール44は、複数の連動部材取付部35のうち回転板34の中心からの距離が最も長い連動部材取付部35eに取り付けられた連動部材37の回転駆動に伴い摺動するスライド部材42の摺動量より長いレールであれば、その長さは制約されない。この実施形態において、スライド部材42は、その中央に、厚さ方向に貫通する挿入孔43を備える(
図11を参照)。この実施形態では、スライド部材42は、平面視円形状の貫通孔である。ただし、スライド部材42は、連動部材37の一端が嵌合可能な形態であれば特に制約されず、連動部材37の一端の平面視形状と同等の平面視形状を有する貫通孔であることが好ましい。また、スライド部材42は、挿入孔43に代えて、厚さ方向に窪む挿入溝であっても良い。駆動手段30は、ガイド部材40(スライド部材42およびガイドレール44)により連動部材37を接近離間方向に略直交する方向に摺動させるため、例えば、スコッチ・ヨーク機構のようなクランクピンが長穴を摺動する形態に比べ、摺動によるがたつきの発生や摩耗を抑制することができ、グリスの定期的な供給やメンテナンスの必要性を低減することができる。
【0025】
(4-5)駆動力伝達板
駆動力伝達板50は、好ましくは、下端にてガイド部材40と係合し、かつ上方にて昇降板25と係合する板状部材である(
図4を参照)。駆動力伝達板50は、好ましくは、連結板23および昇降板25を介して支持台21を係合する支持台係合領域51を除く領域の少なくとも一部に、試料Sと接触部材10とが離間する離間方向(
図10の下方向)に切り欠かれた切り欠き部52を備える板状部材である(
図10を参照)。この実施形態において、切り欠き部52は、駆動力伝達板50の一方の側面が当該離間方向へ二段階に湾曲して切り欠かれた波形状の領域である。また、この実施形態において、支持台係合領域51は、駆動力伝達板50における切り欠き部52と反対側上方の領域であって、ビス等により駆動力伝達板50の背面側(
図10の紙面裏側)へ略垂直に昇降板25を立設可能な領域である。このように駆動力伝達板50に昇降板25を立設することにより、駆動力伝達板50は、連動部材37の回転駆動による接近離間方向への往復移動を、昇降板25を介して支持台21へ伝達し、支持台21を接近離間方向へ摺動させることができる。切り欠き部52は、後述の変位測定手段70により駆動力伝達板50の変位の測定に用いられる領域である。より具体的には、変位測定手段70は、駆動力伝達板50の変位として、変位測定手段70と切り欠き部52との変位L1を測定する(
図5を参照)。噛み心地評価装置1は、駆動力伝達板50が切り欠き部52を備え、かつ変位測定手段70により当該切り欠き部52との変位が測定されるため、変位測定手段70を支持台係合領域51よりも離間方向に配置することができる(
図5を参照)。よって、噛み心地評価装置1の小型化を実現することができる。変位測定手段70による測定方法については、詳細を後述する。なお、切り欠き部52は、少なくとも支持台係合領域51に比べて離間方向へ切り欠かれた領域を備えていれば、上述の波形状に制約されず、例えば、略L字形状、略U字形状であっても良い。また、駆動力伝達板50は、切り欠き部52を備えていなくとも良い。
【0026】
(4-6)昇降板
昇降板25は、好ましくは、駆動力伝達板50の支持台係合領域51において、略垂直に立設する板状部材である(
図5および
図6を参照)。また、昇降板25は、好ましくは、その表面に連結板23を略垂直に立設する(
図2を参照)。昇降板25は、好ましくは、支持台21を載置する面が接触部材10側(
図2の上方向)を向くように、連結板23を立設する。よって、昇降板25は、駆動力伝達板50の往復移動に伴って接近離間方向へ往復移動することにより、連接板23および支持台21を接近離間方向へ往復移動させることができる。昇降板25は、好ましくは、連結板23と反対側に昇降スライド部材27を備える(
図6を参照)。昇降スライド部材27は、接近離間方向(
図6の紙面垂直方向)に沿ってフレーム部材82に設けられた昇降ガイドレール28に係合して、接近離間方向に摺動可能な部材である(
図6を参照)。昇降板25は、駆動力伝達板50の往復移動に伴って、昇降スライド部材27が昇降ガイドレール28に沿って摺動することにより、より安定して接近離間方向へ往復移動することができる。よって、昇降板25は、連接板23および支持台21をより安定して接近離間方向へ往復移動させることができる。なお、昇降スライド部材27および昇降ガイドレール28は、備えていなくとも良いし、昇降板25を接近離間方向へ摺動可能な他の形態であっても良い。
【0027】
次に、駆動手段30の動作について、説明する。
【0028】
図12は、駆動手段の動作を説明するための図を示す。
図12(b),(c),(d)は、
図12(a)の状態からモータ32が90°ずつ時計回りに回転した状態を示す図である。
【0029】
制御回路(不図示)から入力される電流やパルスによりモータ32がR方向へ回転駆動すると、モータ32の回転駆動に伴って、回転板34および連動部材37がR方向へ回転する。そして、回転板34および連動部材37がR方向へ回転することにより、スライド部材42がガイドレール44を接近離間方向に直交する方向(
図12の左右方向)へ摺動するとともに、ガイド部材40および駆動力伝達板50が接近離間方向(
図12の上下方向)へ摺動する。この実施形態では、まず、モータ32の回転駆動に伴って、
図12(a)に示す初期状態から連動部材37がR方向へ90度回転することにより、スライド部材42がガイドレール44の一端部(
図12では左端)から中央部へ摺動し、駆動力伝達板50が接触部材10へ接近する接近方向(
図12では上方向)へ距離L2だけ移動する(
図12(b)を参照)。そして、モータ32の回転駆動に伴ってさらに連動部材37がR方向へ90度回転することにより、スライド部材42がガイドレール44の中央部から他端部(
図12では右端)へ摺動し、駆動力伝達板50が接触部材10から離間する離間方向(
図12では下方向)へ距離L2だけ移動する(
図12(c)を参照)。このとき、駆動力伝達板50は、上述の初期状態(
図12(a)を参照)と同じ位置となる。そして、モータ32の回転駆動に伴ってさらに連動部材37がR方向へ90度回転することにより、スライド部材42がガイドレール44の他端部(
図12では右端)から中央部へ摺動し、駆動力伝達板50が離間方向へ距離L2だけ移動する(
図12(d)を参照)。そして、モータ32の回転駆動に伴ってさらに連動部材37がR方向へ90度回転することにより、スライド部材42がガイドレール44の中央部から一端部(
図12では左端)へ摺動し、駆動力伝達板50が接近方向へ距離L2だけ移動し、上述の初期状態に戻る(
図12(a)を参照)。駆動手段30がこのような動作を繰り返すことにより、駆動力伝達板50は、接近離間方向に2×L2の振幅で繰り返し往復移動する。よって、噛み心地評価装置1は、この駆動力伝達板50の往復移動を昇降板25、連結板23および支持台21へ伝達し、支持台21を接近離間方向に2×L2の振幅で繰り返し往復移動させることができる。スライド部材42とガイドレール44は、駆動力伝達板50を上下動のみとする機能を有する。また、噛み心地評価装置1は、モータ32を一定速度でR方向へ回転駆動させる。モータ32を一定速度でR方向へ回転駆動させることにより、駆動力伝達板50は、速度変化を伴って正弦波関数的に接近離間方向に往復移動することができる。よって、噛み心地評価装置1は、駆動力伝達板50の正弦波関数的な往復移動を昇降板25および連結板23を介して支持台21へ伝達することにより、支持台21を、速度変化を伴って正弦波関数的に接近離間方向に往復移動させることができる。一般に、正弦波関数的な往復移動(正弦波運動)は、人間の咀嚼動作をモデル化した動作であるといわれている。よって、噛み心地評価装置1は、一定速度の押圧動作ではなく、人による咀嚼のような速度変化を伴う押圧動作を試料Sに繰り返し行うことができる。なお、距離L2は、特に制約されないが、5~20mmが好ましく、10~15mmがより好ましい。また、駆動手段30の往復移動は、接近離間方向に2×L2の振幅での往復移動であれば、
図12(a)に示す状態を初期状態として往復移動を開始することに制約されず、例えば、
図12(b)に示す状態若しくは
図12(d)に示す状態を初期状態として往復移動を開始しても良い。また、モータ32は一定速度で回転するモータ以外のものでも良い。
【0030】
(5)荷重測定手段
荷重測定手段60は、好ましくは、接触部材10の鉛直方向の垂直荷重を測定して信号出力するロードセルである。荷重測定手段60は、支持台21の接近離間方向への移動に伴い、接触部材10の先端部12の試料Sへの押圧荷重を測定する。
【0031】
(6)変位測定手段
変位測定手段70は、好ましくは、駆動力伝達板50にレーザを照射して駆動力伝達板50との変位を測定するレーザ変位計である。変位測定手段70は、より好ましくは、駆動力伝達板50の切り欠き部52にレーザを照射して切り欠き部52との変位L1(
図5を参照)を測定するレーザ変位計である。変位測定手段70は、好ましくは、切り欠き部52の上方(試料Sと接触部材10とが接近する接近方向)に配置されることが好ましい。なお、変位測定手段70は、支持台係合領域51よりも接近方向に配置されていても良いし、支持台係合領域51よりも試料Sと接触部材10とが離間する離間方向(
図5の下方)に配置されていても良い。ただし、変位測定手段70は、支持台係合領域51よりも離間方向に配置されている方が、噛み心地評価装置1を小型化できる。なお、変位測定手段70は、レーザ変位計に制約されず、例えば、渦電流式変位計やリニアスケール等であっても良い。
【0032】
次に、噛み心地評価装置1による噛み心地の評価方法について説明する。
【0033】
噛み心地評価装置1を用いて試料Sの噛み心地を測定・評価する場合、まず、噛み心地評価装置1の電源スイッチ(不図示)をオンにし、支持台21の位置を調整して、試料Sを支持台21上に載置する。そして、操作部(不図示)からの指示を受けて、モータ32の駆動を開始する。これにより、噛み心地評価装置1は、駆動手段30の駆動が開始され、支持台21が速度変化を伴って正弦波関数的に接近離間方向へ往復移動を繰り返す。噛み心地評価装置1は、変位測定手段70により、この連続的な往復移動による支持台21の基準位置からの変位を連続的に測定する。また、噛み心地評価装置1は、荷重測定手段60により、この連続的な往復移動により接触部材10にかかる荷重を連続的に測定する。なお、支持台21の基準位置は、特に制約されず適宜設定可能であるが、この実施形態では、往復移動において支持台21が最も接触部材10と離間する位置を基準位置とする。すなわち、この実施形態において、支持台21の基準位置は、駆動手段30が最も離間方向に移動した状態(
図12(d)を参照)における支持台21の位置である。また、操作部からの指示としては、噛み心地評価装置1に設けられる操作パネル等の部材からの指示でも良いし、例えば、PC等の噛み心地評価装置1とは別の装置からの指示であっても良い。
【0034】
図13および
図14は、本発明の実施形態に係る噛み心地評価装置による測定結果の一例を示す。
図13および
図14において、実線は、支持台21の基準位置からの変位を示すものであり、破線は、接触部材10にかかる荷重(抵抗力)を示すものである。
【0035】
噛み心地評価装置1による測定結果において、荷重を示す波形(
図13および
図14の破線グラフ)のピーク値は、試料Sの硬さを示すものである。また、荷重を示す波形の振幅は、試料Sを圧縮中の振動に対応するものである。この荷重を示す波形の振幅に基づいて、パリパリ、サクサク、バリバリ、カリカリ等の人が咀嚼により感じる噛み心地を評価することができる。また、負の値の荷重(
図14を参照)は、測定した試料Sの粘りを示すものである。この負の値の荷重に基づいて、ベタベタ、ネバネバ等の噛み心地を評価することができる。また、この荷重を示す波形を構成する荷重データ(抵抗力データ)は、高速フーリエ変換(Fast Fourier Transformation;FFT)や標準偏差を用いて、例えば、圧縮中の振動等、周期的に評価することができる。
【0036】
図13に示す測定結果は、試料Sとしてビスケットを用いた際の噛み心地評価装置1による測定結果の一例である。
図13に示す測定結果において、支持台21は、基準位置から20mmの振幅で正弦波関数的に接近離間方向へ往復移動している。この往復移動により接触部材10にかかる荷重は、往復移動を繰り返すにつれて減少している。これは、接触部材10をビスケットに接触および押圧させることにより、ビスケットが破壊され、接触部材10に接触する接触面積が変化するため、荷重が減少する。よって、ビスケットを咀嚼した場合には、咀嚼を繰り返すことにより、バリバリ、カリカリ等の硬さを感じる噛み心地は減少していくことがわかる。また、
図13に示す測定結果では、荷重が負の値をとっていないため、ビスケットは咀嚼によりベタベタ、ネバネバ等の粘りを感じる噛み心地は得られないことがわかる。
【0037】
図14に示す測定結果は、試料Sとしてガムを用いた際の噛み心地評価装置1による測定結果の一例である。
図14に示す測定結果において、支持台21は、基準位置から20mmの振幅で正弦波関数的に接近離間方向へ往復移動している。この往復移動により接触部材10にかかる荷重は、往復移動を繰り返すにつれて減少しているが、
図13に示す測定結果に比べて荷重の変化が小さい。これは、ガムはビスケットに比べて接触部材10の押圧により破壊されにくいと考えられる。よって、ガムを咀嚼した場合には、ビスケットに比べて、咀嚼を繰り返すことによる硬さを感じる噛み心地の変化は小さいことがわかる。また、
図14に示す測定結果では、各振幅において荷重が負の値となる部分が生じている。よって、ガムを咀嚼することにより、ベタベタ、ネバネバ等の粘りを感じる噛み心地を得るこがわかる。
【0038】
このような噛み心地評価装置1によれば、モータ32を一定速度でR方向へ回転駆動させ、当該回転駆動に連動して、回転板34の中心より偏心した位置に設けられた連動部材37が回転することにより、駆動力伝達板50は、速度変化を伴って正弦波関数的に接近離間方向に往復移動することができる。よって、噛み心地評価装置1は、駆動力伝達板50の正弦波関数的な往復移動を昇降板25および連結板23を介して支持台21へ伝達させることにより、支持台21を、速度変化を伴って正弦波関数的に接近離間方向に往復移動させることができる。よって、噛み心地評価装置1は、一定速度の押圧動作ではなく、人による咀嚼のような速度変化を伴う押圧動作を試料Sに繰り返し行うことができ、様々な食品の噛み心地を精度良く評価することができる。
【0039】
(その他の実施形態)
上述のように、本発明の好適な各実施形態について説明したが、本発明は、これらに限定されることなく、種々変形して実施可能である。
【0040】
先述の実施形態において、ガイド部材40は、スライド部材42とガイドレール44とから構成されていたが、連動部材37を挿入可能な挿入溝若しくは挿入孔を有し、連動部材37を接近離間方向に略直交する方向に案内可能な部材であれば、特に制約されない。例えば、ガイド部材40は、連動部材37の一端部を挿入可能であって、当該接近離間方向に略直交する方向に沿う長穴であっても良い。この場合、連動部材37は、回転板34と反対側の一端部が当該長穴を摺動することにより、駆動力伝達板50を接近離間方向へ往復移動させることができる。
【0041】
また、先述の実施形態において、試料Sと接触部材10とは、接近離間方向として、水平面に直交する上下方向に沿って接近および離間していた。しかしながら、接近離間方向は上下方向に制約されず、例えば、水平面に対して45°以上90°未満の角度を有する斜め方向であっても良い。
【0042】
また、噛み心地評価装置1は、接触センサ10および/または支持台21に、振動を検出可能な振動センサを備えていても良い。振動センサとしては、特に制約されないが、例えば、加速度センサ、アコースティックエミッション(AE)センサ等が挙げられる。このように、噛み心地評価装置1は、振動センサを備えることにより、より高度な振動計測を行うことができる。
【0043】
また、噛み心地評価装置1による測定結果を用いて、人が指で押す動作により感じる押し心地や指で感じる所作を評価しても良い。ここで、「押し心地や指で感じる所作」とは、試料Sを押圧した際の機械的な物性ではなく、人間が指で押す動作を行った際に知覚する硬さ・脆さ・軽さ・粘り等の特性をいう。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明に係る噛み心地評価装置は、人による様々な食品の噛み心地の評価に利用可能である。
【符号の説明】
【0045】
1・・・噛み心地評価装置、10・・・接触部材、12・・・先端部、21・・・支持台、30・・・駆動手段、32・・・モータ、34・・・回転板、35(35a,35b,35c,35d,35e)・・・連動部材取付部、37・・・連動部材、40・・・ガイド部材、42・・・スライド部材、43・・・挿入孔、44・・・ガイドレール、50・・・駆動力伝達板、51・・・支持台係合領域、52・・・切り欠き部、60・・・荷重測定手段、70・・・変位測定手段、S・・・試料。
【要約】
【課題】
様々な食品の噛み心地を精度良く評価可能な噛み心地評価装置を提供する。
【解決手段】
本発明は、試料Sを支持する支持台21と、先端部12が試料Sに接触可能に支持台21に対向して固定された接触部材10と、試料Sと接触部材10との接近離間方向に支持台21を往復移動させる駆動手段30と、接触部材10にかかる荷重を測定する荷重測定手段60と、支持台21の往復移動の変位を測定する変位測定手段70と、を備え、駆動手段30は、モータ32と、モータ32の動力で回転する回転板34と、回転板34の中心より偏心した位置に設けられ、回転板34に連動して回転する連動部材37と、連動部材37を接近離間方向に略直交する方向に案内するガイド部材40と、ガイド部材40と係合し、連動部材37の駆動を伝達して支持台21を接近離間方向へ摺動する駆動力伝達板50と、を備える噛み心地評価装置1に関する。
【選択図】
図2