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特許7335026手術ロボット、及び手術ロボットの制御ユニット
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-21
(45)【発行日】2023-08-29
(54)【発明の名称】手術ロボット、及び手術ロボットの制御ユニット
(51)【国際特許分類】
   A61B 34/37 20160101AFI20230822BHJP
【FI】
A61B34/37
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022579845
(86)(22)【出願日】2022-08-23
(86)【国際出願番号】 JP2022031775
【審査請求日】2022-12-22
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】515075692
【氏名又は名称】リバーフィールド株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】只野 耕太郎
(72)【発明者】
【氏名】金澤 雅夫
【審査官】鈴木 敏史
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第06424885(US,B1)
【文献】特開2009-285099(JP,A)
【文献】特開平10-029177(JP,A)
【文献】特開平08-071072(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 34/37
B25J 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
手術ロボットであって、
使用者から操作を受け付けると共に、前記操作を行っている前記使用者に対し反力を付与するよう構成されたマスタ部と、
前記マスタ部を制御し、前記反力を発生させるよう構成されたマスタ制御部と、
術具を作動させるスレーブ部と、
前記マスタ部が受け付けた前記操作に基づく前記術具の状態である目標状態に基づき前記スレーブ部を制御し、前記術具を作動させるよう構成されたスレーブ制御部と、
前記術具の状態である術具状態を検出するよう構成されたスレーブ検出部と、
を備え、
前記スレーブ制御部は、前記術具状態と前記目標状態との差分に基づき、前記術具を制御するためのスレーブ制御値を算出し、前記スレーブ制御値に基づき前記スレーブ部を制御するよう構成され、
前記マスタ制御部は、前記術具状態と前記目標状態との差分に基づく比例制御により中間値を算出し、前記中間値と、前記スレーブ制御部から取得した前記スレーブ制御値とを用いた演算により、前記反力を制御するためのマスタ制御値を算出し、前記マスタ制御値に基づき前記マスタ部を制御するよう構成される、
手術ロボット。
【請求項2】
請求項1に記載の手術ロボットにおいて、
前記スレーブ制御部は、前記術具状態と前記目標状態とに基づく積分を行うことで、前記スレーブ制御値を算出するよう構成される
手術ロボット。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の手術ロボットにおいて、
前記スレーブ制御部は、前記術具状態と前記目標状態との差分に基づく比例制御により、前記スレーブ制御値を算出するよう構成され、
前記マスタ制御部は、前記術具状態と前記目標状態との差分に基づく比例制御により、前記マスタ制御値を算出するよう構成され、
前記マスタ制御部での比例制御のゲインは、前記スレーブ制御部での比例制御のゲインよりも大きい
手術ロボット。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載の手術ロボットにおいて、
前記マスタ制御部は、前記術具状態と前記目標状態との差分に基づく比例制御により、前記マスタ制御値を算出するよう構成され、
前記比例制御のゲインを表示するよう構成された表示部と、
前記比例制御のゲインを変更するための操作を受け付けるよう構成された受付部と、
をさらに備える手術ロボット。
【請求項5】
請求項1又は請求項2に記載の手術ロボットにおいて、
前記スレーブ制御部は、前記術具状態と前記目標状態との差分に基づく比例制御により、前記スレーブ制御値を算出するよう構成され、
前記比例制御のゲインを表示するよう構成された表示部と、
前記比例制御のゲインを変更するための操作を受け付けるよう構成された受付部と、
をさらに備える手術ロボット。
【請求項6】
請求項5に記載の手術ロボットにおいて、
前記スレーブ制御部は、前記術具状態と前記目標状態との差分に基づく積分制御をさらに行うことで、前記スレーブ制御値を算出するよう構成され、
前記表示部は、前記積分制御のゲインをさらに表示するよう構成され、
前記受付部は、前記積分制御のゲインを変更するための操作をさらに受け付けるよう構成される
手術ロボット。
【請求項7】
手術ロボットの制御ユニットであって、
使用者から操作を受け付けると共に、前記操作を行っている前記使用者に対し反力を付与するよう構成されたマスタ部を制御し、前記反力を発生させるよう構成されたマスタ制御部と、
術具を作動させるスレーブ部を、前記マスタ部が受け付けた前記操作に基づく前記術具の状態である目標状態に基づき制御し、前記術具を作動させるよう構成されたスレーブ制御部と、を備え、
前記スレーブ制御部は、スレーブ検出部により検出された前記術具の状態である術具状態と前記目標状態との差分に基づき、前記術具を制御するためのスレーブ制御値を算出し、前記スレーブ制御値に基づき前記スレーブ部を制御するよう構成され、
前記マスタ制御部は、前記術具状態と前記目標状態との差分に基づく比例制御により中間値を算出し、前記中間値と、前記スレーブ制御部から取得した前記スレーブ制御値とを用いた演算により、前記反力を制御するためのマスタ制御値を算出し、前記マスタ制御値に基づき前記マスタ部を制御するよう構成される、
手術ロボットの制御ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、マスタ・スレーブ型の手術ロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
マスタ・スレーブ型の手術ロボットは、マスタにて医師等の医療従事者(以後、使用者)から操作を受け付けると共に、例えば鉗子やメス等といった手術用の器具である術具をスレーブとして用いる。そして、マスタで受け付けた操作に従いスレーブが制御され、患者(以後、対象者)の手術が行われる。また、このような手術ロボットにおいて、バイラテラル制御により、手術中に術具が受けた力をスレーブからマスタに帰還させることで、使用者に力覚フィードバックを行う技術が知られている(例えば、特許文献1)。
【0003】
このような力覚フィードバックを行う手術ロボットのマスタ及びスレーブでは、比例制御が行われている。そして、力覚フィードバックの感度を向上させるため、マスタの比例制御のゲインを向上させることが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第7049069号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、例えば、術具に駆動力を伝達するためのワイヤのたるみや、術具と駆動力の伝達機構との間にギャップが存在する場合や、制御に遅延が生じる場合等には、マスタの比例制御ゲインを過度に向上させると術具の制御が困難になるおそれがある。このため、比例制御ゲインを向上させることには限界がある。
【0006】
本開示の一態様では、力覚フィードバックの感度を向上させるのが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様は、手術ロボットであって、マスタ部と、マスタ制御部と、スレーブ部と、スレーブ制御部と、スレーブ検出部と、を備える。マスタ部は、使用者から操作を受け付けると共に、操作を行っている使用者に対し反力を付与するよう構成される。マスタ制御部は、マスタ部を制御し、反力を発生させるよう構成される。スレーブ部は、術具を作動させる。スレーブ制御部は、マスタ部が受け付けた操作に基づく術具の状態である目標状態に基づきスレーブ部を制御し、術具を作動させるよう構成される。スレーブ検出部は、術具の状態である術具状態を検出するよう構成される。スレーブ制御部は、術具状態と目標状態とに基づき、術具を制御するためのスレーブ制御値を算出し、スレーブ制御値に基づきスレーブ部を制御するよう構成される。マスタ制御部は、術具状態及び目標状態と、スレーブ制御部から取得したスレーブ制御値とに基づき、反力を制御するためのマスタ制御値を算出し、マスタ制御値に基づきマスタ部を制御するよう構成される。
【0008】
上記構成によれば、スレーブ制御値を加味してマスタ制御値が算出され、マスタ制御値により使用者への反力が制御される。これにより、スレーブ制御値の変化をより迅速にマスタ制御値に反映でき、その結果、力覚フィードバックの感度が向上する。
【0009】
本開示の一態様では、スレーブ制御部は、術具状態と目標状態とに基づく積分を行うことで、スレーブ制御値を算出するよう構成されてもよい。
【0010】
上記構成によれば、スレーブ制御部における外乱(換言すれば、定常偏差)を抑制できる。このため、より精度良くスレーブ制御値を算出できる。
【0011】
本開示の一態様では、スレーブ制御部は、術具状態と目標状態との差分に基づく比例制御により、スレーブ制御値を算出するよう構成されてもよい。マスタ制御部は、術具状態と目標状態との差分に基づく比例制御により、マスタ制御値を算出するよう構成されてもよい。マスタ制御部での比例制御のゲインは、スレーブ制御部での比例制御のゲインよりも大きくてもよい。
【0012】
上記構成によれば、力覚フィードバックの感度が向上する。
【0013】
本開示の一態様は、マスタ制御部は、術具状態と目標状態との差分に基づく比例制御により、マスタ制御値を算出するよう構成されてもよい。手術ロボットは、表示部と、受付部と、をさらに備えてもよい。表示部は、比例制御のゲインを表示するよう構成される。受付部は、比例制御のゲインを変更するための操作を受け付けるよう構成される。
【0014】
上記構成によれば、力覚フィードバックの感度を調整可能となる。
【0015】
本開示の一態様は、スレーブ制御部は、術具状態と目標状態との差分に基づく比例制御により、スレーブ制御値を算出するよう構成されてもよい。手術ロボットは、表示部と、受付部と、をさらに備えてもよい。表示部は、比例制御のゲインを表示するよう構成される。受付部は、比例制御のゲインを変更するための操作を受け付けるよう構成される。
【0016】
上記構成によれば、より好適に術具を制御できるようにカスタマイズすることが可能となる。
【0017】
本開示の一態様では、スレーブ制御部は、術具状態と目標状態との差分に基づく積分制御をさらに行うことで、スレーブ制御値を算出するよう構成されてもよい。表示部は、積分制御のゲインをさらに表示するよう構成されてもよい。受付部は、積分制御のゲインを変更するための操作をさらに受け付けるよう構成されてもよい。
【0018】
上記構成によれば、より好適に術具を制御できるようにカスタマイズすることが可能となる。
【0019】
本開示の一態様は、手術ロボットの制御ユニットであって、マスタ制御部と、スレーブ制御部と、を備える。マスタ制御部は、使用者から操作を受け付けると共に、操作を行っている使用者に対し反力を付与するよう構成されたマスタ部を制御し、反力を発生させるよう構成される。スレーブ制御部は、術具を作動させるスレーブ部を、マスタ部が受け付けた操作に基づく術具の状態である目標状態に基づき制御し、術具を作動させるよう構成される。また、スレーブ制御部は、スレーブ検出部により検出された術具の状態である術具状態と目標状態とに基づき、術具を制御するためのスレーブ制御値を算出し、スレーブ制御値に基づきスレーブ部を制御するよう構成される。マスタ制御部は、術具状態及び目標状態と、スレーブ制御部から取得したスレーブ制御値とに基づき、反力を制御するためのマスタ制御値を算出し、マスタ制御値に基づきマスタ部を制御するよう構成される。
【0020】
上記構成によれば、スレーブ制御値を加味してマスタ制御値が算出され、マスタ制御値により使用者への反力が制御される。これにより、スレーブ制御値の変化をより迅速にマスタ制御値に反映でき、その結果、力覚フィードバックの感度が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】手術ロボットの説明図である。
図2】手術ロボットのブロック図である。
図3】1自由度系でモデル化されたマスタ・スレーブの説明図である。
図4】非対称側バイラテラル制御のブロック線図である。
図5】ゲインの設定画面の説明図である。
【符号の説明】
【0022】
1…手術ロボット、2…ロボットアーム、20…接続部、21…アーム、22…関節部、23~25…第1~第3駆動部、26…センサ部、3…制御ユニット、30…マスタ制御部、31…スレーブ制御部、32…ゲイン調整部、33…記憶装置、4…操作ユニット、40…操作装置、41…位置操作部、41A…可動部、41B…駆動部、42…把持操作部、42A…可動部、42B…駆動部、43…表示部、44…受付部、5…術具、50…把持部、50A…センサ部、51…開閉機構、52…リスト部、52A…センサ部、53…シャフト、54…アダプタ、6…トロッカー、7…設定画面、70~75…表示領域、76…カーソル。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本開示の実施形態について図面を用いて説明する。なお、本開示の実施の形態は、下記の実施形態に何ら限定されることはなく、本開示の技術的範囲に属する限り種々の形態を採りうる。
【0024】
[1.概要]
本実施形態の手術ロボット1は、同一の構成を有する2つのロボットアーム2、制御ユニット3、及び操作ユニット4を備える(図1、2参照)。また、各ロボットアーム2には、術具5が搭載される。なお、ロボットアーム2の数は、1つ又は3つ以上であっても良い。
【0025】
手術ロボット1は、マスタ・スレーブ型のロボットシステムとして構成される。手術ロボット1は、使用者による操作ユニット4の操作部(換言すれば、マスタ)の操作に応じて、ロボットアーム2及び術具5(換言すれば、スレーブ)を作動させ、対象者の手術を行う。また、手術ロボット1は、力覚フィードバックを行うよう構成されている。詳細は後述するが、手術ロボット1は、手術の際、使用者の操作に従い作動した術具が受けた力を、操作ユニット4の操作部を介して使用者に知覚させるよう構成されている。
【0026】
[2.術具]
術具5は、対象者の腹部などに穿刺されたトロッカー6を介して、先端が対象者の体内に挿入され、先端に設けられた部位を体内で作動させることで処置を行うよう構成される(図1参照)。本実施形態では、一例として、術具5として鉗子が用いられる。しかし、これに限らず、例えばメス等といった鉗子以外の術具が用いられても良い。
【0027】
術具5は、把持部50、開閉機構51、リスト部52、シャフト53、及びアダプタ54を備える(図1、2参照)。
【0028】
シャフト53は、細長い筒状の部位であり、先端の反対側の端部にアダプタ54が設けられている。
【0029】
把持部50は、シャフト53の先端に設けられており、トロッカー6を介して対象者の体内に挿入され、例えば、対象者の体内の組織を把持する等の処置を行う。把持部50は、第1及び第2部分と開閉機構51とを備え、開閉機構51は第1及び第2部分を接近及び離間(以後、開閉動作とも記載)させるよう構成される。第1及び第2部分が接近することで物体が把持され、第1及び第2部分が離間することで把持していた物体を開放する。
【0030】
また、把持部50は、開閉動作の状態(以後、開閉状態)を検出するセンサ部50Aを有する(図2参照)。具体的には、例えば、センサ部50Aは、第1部分と第2部分との間の距離、及び/又は、第1部分と第2部分との間の角度を、開閉状態として検出しても良い。
【0031】
リスト部52は、シャフト53における把持部50の近傍に設けられ、少なくとも1つの箇所にて回転可能であり、該箇所にて回転することで把持部50の向き(換言すれば、姿勢)を変化させる。また、リスト部52は、把持部50の向きを検出するセンサ部52Aを有する。
【0032】
なお、センサ部50A、52Aは、検出結果を示すセンサ信号を制御ユニット3に出力する。
【0033】
筒状のシャフト53の内側には、把持部50、及びリスト部52を作動させるため、これらの部位に駆動力を伝達する複数のワイヤが設けられている。
【0034】
[3.ロボットアーム]
ロボットアーム2は、先端に搭載された術具5を所定の位置にて保持すると共に、使用者による操作に応じて当該ロボットアーム2の姿勢を変化させ、術具5の位置及び向き(換言すれば、姿勢)を調整するよう構成される(図1参照)。
【0035】
ロボットアーム2の先端には、術具5のアダプタ54に着脱可能な接続部20が設けられており、接続部20を介して術具5が搭載される。ロボットアーム2の接続部20には、複数の種類の鉗子や、鉗子以外の術具が搭載可能となっている。
【0036】
ロボットアーム2は、リンク機構として構成されており、複数のアーム21と、アーム21の端部に設けられ、各アーム21を回転させる複数の関節部22(換言すれば、ジョイント)を有する。また、各アーム21は、関節部22を介して他のアーム21と接続されている。
【0037】
また、ロボットアーム2は、第1~第3駆動部23~25を備える(図2参照)。なお、第1~第3駆動部23~25、例えば、少なくとも1つの空気圧式のアクチュエータや、少なくとも1つのモータ等を有していても良い。
【0038】
第1駆動部23は、使用者による操作に応じて各関節部22を駆動するよう構成され、第1駆動部23が生じる駆動力は、複数のワイヤ及び複数のプーリを含む伝達機構を介して各関節部22に伝達される。第1駆動部23が各関節部22を駆動することで、各アーム21が変位してロボットアーム2の姿勢が変化し、これにより、術具5の向き及び位置が変化する。
【0039】
また、第2駆動部24は、使用者の操作に応じて術具5のリスト部52を駆動させるよう構成され、第2駆動部24が生じる駆動力は、伝達機構を介してリスト部52に伝達される。第2駆動部24がリスト部52を駆動することで、把持部50の向きが変化する。
【0040】
また、第3駆動部25は、使用者の操作に応じて術具5の開閉機構51を駆動させるよう構成され、第3駆動部25が生じる駆動力は、伝達機構を介して開閉機構51に伝達される。第3駆動部25が開閉機構51を駆動することで、把持部50の開閉状態が変化する。
【0041】
また、ロボットアーム2は、ロボットアーム2の姿勢を検出するセンサ部26を備える。センサ部26は、例えば、各関節部22が回転した角度を検出しても良いし、各関節部22を駆動する第1駆動部23の状態(例えば、圧縮空気の圧力等)を検出しても良い。また、センサ部26は、検出結果を示すセンサ信号を、制御ユニット3に出力する。
【0042】
[4.操作ユニット]
操作ユニット4は、使用者からロボットアーム2及び術具5の操作を受け付けるよう構成されており、各ロボットアーム2に対応して設けられる2つの操作装置40と、表示部43と、受付部44とを備える(図2参照)。また、各操作装置40は、位置操作部41と把持操作部42とを備える。
【0043】
位置操作部41は、当該位置操作部41が設けられた操作装置40に対応するロボットアーム2に搭載された術具5の把持部50の位置及び向きを調整するための操作を受け付ける。つまり、位置操作部41への操作に応じて、ロボットアーム2の姿勢が変化して術具5の位置や向きが調整されたり、術具5のリスト部52が作動して把持部50の向きが調整されたりする。
【0044】
把持操作部42は、当該把持操作部42が設けられた操作装置40に対応するロボットアーム2に搭載された術具5の把持部50に、開閉動作を実行させる操作を受け付ける。
【0045】
そして、操作装置40は、位置操作部41及び把持操作部42が受け付けた操作の内容を示す操作信号を、制御ユニット3に出力する。
【0046】
また、上述したように、手術ロボット1は力覚フィードバックを行うよう構成されている。このため、使用者の操作に従い術具5が作動することで対象者等から術具5が受けた力に応じた反力が、位置操作部41及び把持操作部42により使用者に付与される。
【0047】
具体的には、位置操作部41及び把持操作部42は、それぞれ、可動部41A、42Aと駆動部41B、42Bとを備える。駆動部41B、42Bは、例えば、空気圧式のアクチュエータやモータ等により可動部41A、42Aを駆動する。そして、位置操作部41の駆動部41Bは、制御ユニット3から入力された制御信号に従い可動部41Aを変位させることで、当該位置操作部41を操作している使用者に反力を付与する。同様に、把持操作部42の駆動部42Bは、制御ユニット3から入力された制御信号に従い可動部42Aを変位させることで、当該把持操作部42を操作している使用者に反力を付与する。
【0048】
表示部43は、一例として液晶ディスプレイとして構成され、制御ユニット3からの制御信号に従い作動し、例えば、設定画面、対象者の内視鏡画像、ロボットアーム2及び術具5の状態、又は、手術ロボット1の操作に必要な情報を表示する。なお、内視鏡画像は、例えば、患者の腹部などに穿刺された他のトロッカーを介して患者の体腔内に挿入された内視鏡から取得された、患者の体腔内の画像であっても良い。また、この内視鏡は、図示しない他のロボットアーム又は内視鏡保持装置によって保持されても良い。
【0049】
受付部44は、使用者等からの操作を受け付ける装置であり、例えば、キーボード、マウス、タッチパネル、又はフットスイッチ等を有する。受付部44は、受け付けた操作の内容を示す操作信号を制御ユニット3に出力する。
【0050】
[5.制御ユニット]
[(1)全体構成]
制御ユニット3は、各ロボットアーム2、各術具5、及び操作ユニット4を制御するよう構成される(図2参照)。制御ユニット3は、プロセッサ、ROM、RAM、バス、及び入出力部等を備えるコンピュータシステムとして構成される。制御ユニット3の機能は、ROM又はRAMに保存されたプログラムによりプロセッサが動作することで実現される。なお、プロセッサにより実現される機能の一部又は全部を、少なくとも1つのIC等のハードウェアにより実現しても良い。
【0051】
制御ユニット3は、マスタ制御部30、スレーブ制御部31、ゲイン調整部32、及び記憶装置33を備える。
【0052】
記憶装置33は、ハードディスクやフラッシュメモリ等の不揮発性の記憶媒体であり、制御ユニット3による処理に必要なプログラムや、手術ロボット1の操作に関する設定情報等が保存される。
【0053】
一方、マスタ制御部30及びスレーブ制御部31の機能は、プロセッサが動作することで実現される。マスタ制御部30は、操作ユニット4を制御するよう構成され、スレーブ制御部31は、各ロボットアーム2と、各ロボットアーム2に搭載された術具5とを制御するよう構成される。また、詳細は後述するが、マスタ制御部30及びスレーブ制御部31は、マスタ・スレーブ制御を行うことで、マスタの駆動力τm(換言すれば、マスタ制御値)とスレーブの駆動力τs(換言すれば、スレーブ制御値)とを算出する。
【0054】
なお、マスタの駆動力τmとは、操作ユニット4の各操作装置40における位置操作部41及び把持操作部42の駆動部41B、42Bの駆動力を意味する。また、スレーブの駆動力τsとは、各ロボットアーム2における第1~第3駆動部23~25の駆動力を意味する。
【0055】
マスタ制御部30は、位置操作部41及び把持操作部42の駆動部41B、42Bに制御信号を出力し、駆動部41B、42Bの各々が、駆動力τmにて可動部41A、42Aを作動させるよう制御することで、反力を発生させる。
【0056】
また、マスタ制御部30は、操作ユニット4からの操作信号に基づき、使用者が位置操作部41及び把持操作部42に対して行った操作を検出する。そして、マスタ制御部30は、検出した操作に基づき、把持部50の現在の位置及び向きと、開閉動作とについての目標状態(換言すれば、Xm)を特定する。なお、目標状態及びXmの詳細については、後述する。
【0057】
一方、スレーブ制御部31は、ロボットアーム2の第1~第3駆動部23~25に制御信号を出力する。これにより、スレーブ制御部31は、第1及び第2駆動部23、24が、駆動力τsにて複数の関節部22及びリスト部52を作動させるよう制御する。また、スレーブ制御部31は、第3駆動部25が、駆動力τsにて開閉機構51を作動させるよう制御する。
【0058】
また、スレーブ制御部31は、術具5の把持部50に設けられたセンサ部50Aからのセンサ信号に基づき、把持部50の開閉動作の現在の状態を、術具状態(換言すれば、Xs)として特定する。また、スレーブ制御部31は、術具5のリスト部52に設けられたセンサ部52Aからのセンサ信号と、ロボットアーム2に設けられたセンサ部26からのセンサ信号とに基づき、把持部50の現在の位置及び向きを、術具状態(換言すれば、Xs)として特定する。なお、術具状態及びXsの詳細については、後述する。
【0059】
[(2)非対称型のバイラテラル制御]
本実施形態のマスタ・スレーブは、図3に示す1自由度系でモデル化できる。この時、マスタ及びスレーブのダイナミクスは、以下の式で表される。
【0060】
【数1】
【0061】
【数2】
ここで、把持部50の位置及び向きの制御においては、操作に用いられる位置操作部41がマスタに相当し、把持部50がスレーブに相当する。また、把持部50の開閉動作の制御においては、操作に用いられる把持操作部42がマスタに相当し、把持部50がスレーブに相当する。
【0062】
また、Xmは、使用者からの操作により定められるマスタの現在の状態に基づき定められる、スレーブが到達すべき状態(換言すれば、スレーブの目標状態)を意味する。より詳しくは、把持部50における位置及び向きの目標値及び開閉状態の目標値が、目標状態に相当し得る。また、Mmはマスタの質量を、Dmはマスタ側のダンパの粘性摩擦係数を、Fmは使用者の操作によりマスタに加えられる外力をそれぞれ意味する。また、上述したように、τmは、位置操作部41及び把持操作部42において、反力を発生させるために駆動部が可動部を作動させる際の駆動力を意味する。
【0063】
また、Xsは、スレーブの現在の状態(換言すれば、術具状態)を意味する。より詳しくは、把持部50における現在の位置及び向きを示す値、及び、現在の開閉状態を示す値が、術具状態に相当する。また、Msはスレーブの質量を、Dsはスレーブ側のダンパの粘性摩擦係数を、Fsは作動中に対象者からスレーブに加えられる外力をそれぞれ意味する。また、上述したように、τsは、把持部50の位置及び向きを目標状態に到達させるため、第1及び第2駆動部23、24が関節部22及びリスト部52を作動させる際の駆動力を意味する。また、τsは、把持部50の開閉状態を目標状態に到達させるため、第3駆動部25が開閉機構51を作動させる際の駆動力を意味する。
【0064】
そして、マスタ制御部30及びスレーブ制御部31は、図4のブロック線図が示す非対称型のバイラテラル制御を行う。該制御では、加合せ点3AにてXmからXsを減算して差分が算出され、該差分は伝達要素3Bに入力される。また、伝達要素3Bは、該差分に基づく比例制御及び積分制御によりスレーブの駆動力τsを算出し、駆動力τsを、スレーブを示す伝達要素3Cと、加合せ点3Eとに出力する。伝達要素3Cは、加合せ点3Aに向けてXsを出力する。
【0065】
また、加合せ点3Aで算出されたXmとXsとの差分は、比例制御を行う伝達要素3Dに入力されると共に、伝達要素3Dは、該差分に基づく比例制御によりτm´を算出し、τm´を加合せ点3Eに出力する。加合せ点3Eでは、τm´からスレーブの駆動力τsを減算することでマスタの駆動力τmが算出され、駆動力τmは、マスタを示す伝達要素3Fに出力される。伝達要素3Fは、加合せ点3Aに向けてXmを出力する。
【0066】
なお、伝達要素3Bは、スレーブ制御部31での処理に相当し、Kpsをゲインとする比例制御と、Kisをゲインとする積分制御とを行う。また、伝達要素3D及び加合せ点3Eは、マスタ制御部30での処理に相当し、伝達要素3Dでは、-Kpmをゲインとする比例制御が行われる。
【0067】
つまり、マスタ制御部30は、Xm及びXsと、スレーブ制御部31から取得したスレーブの駆動力τsとに基づき、マスタの駆動力τmを算出する。また、-Kpmの絶対値(以後、|Kpm|)は、Kpsの絶対値(以後、|Kps|)よりも大きい。より詳しくは、一例として、|Kpm|は、|Kps|の2倍以上3倍以下となっていても良い。しかし、これに限らず、|Kpm|及び|Kps|は、適宜定められ得る。また、例えば、|Kpm|は|Kps|よりも小さくても良い。
【0068】
また、スケーリングを行った駆動力τmを、マスタを示す伝達要素3Fに入力しても良い。なお、スケーリングとは、マスタの駆動力τmに対し1を超える所定値の係数を乗算することを意味する。このようなスケーリングにより、スレーブが受けた力よりも大きな反力を使用者に付与することができ、使用者は、対象者の体内における微小な部位に対する処置や、緻密な処置を好適に行うことができる。
【0069】
図3のブロック線図は、以下の式(3)、(4)により表される。
【0070】
【数3】
【0071】
【数4】
ここで、式(1)、(2)に式(3)、(4)を代入し、ラプラス変換を行うと、以下の式(5)が得られる。
【0072】
【数5】
但し、G(s)は以下の式(6)を満たす。
【0073】
【数6】
ここで、T、aが式(7)、(8)を満たすとすると、式(9)が成り立つ。
【0074】
【数7】
【0075】
【数8】
【0076】
【数9】
つまり、式(9)から、非対称型のバイラテラル制御は、位相進み補償特性を有していることがわかる。したがって、マスタの比例制御のゲイン|Kpm|を、スレーブの比例制御のゲイン|Kps|よりも高くすることで、G(s)のゲインは、高周波領域ではaとなり、低周波領域では1となる。つまり、スレーブが対象物に接触した瞬間のように、スレーブに加えられる外力Fsの変化が大きいときには、a倍された力がマスタにフィードバックされ、定常時には1倍の力がマスタにフィードバックされる。このため、非対称型のバイラテラル制御により、積分制御によるスレーブの高精度な追従性能と、高感度な力覚フィードバックとが両立するよう促される。
【0077】
[(3)マスタ・スレーブ制御の変形例]
式(10)、(11)に示すように、式(3)、(4)において、それぞれ、加速度及び速度を用いて慣性力及び粘性力を補償しても良い。
【0078】
【数10】
【0079】
【数11】
式(10)、(11)から、式(12)が得られる。
【0080】
【数12】
式(12)から、式(10)、(11)のように補償を加えることで、マスタとスレーブとにおけるダイナミクスの影響を抑制できることがわかる。
【0081】
この他にも、スレーブ制御部31では、比例制御と積分制御とによりスレーブの駆動力τsが算出される。しかし、積分制御に替えて、外乱オブザーバによりスレーブの駆動力τsが算出されても良い。
【0082】
また、非対称型のバイラテラル制御では、マスタ制御部30は、伝達要素3Dから出力されたτm´からスレーブの駆動力τsを減算することで、マスタの駆動力τmを算出する。しかし、これに限らず、τmの算出方法は適宜定められ得る。具体的には、例えば、スレーブの駆動力τsに基づき所定の計算を行うことでτs´を算出し、τm´からからτs´を減算することで、τmが算出されても良い。なお、所定の計算とは、例えば、τsに対し所定の係数を乗算又は加算することであっても良い。また、例えば、τm´に対し、τs(又は、τs´)を乗算したり、除算したり、加算したりすることで、τmが算出されても良い。
【0083】
また、伝達要素3Bでは、積分制御及び外乱オブザーバを用いることなく、τsが算出されても良い。また、伝達要素3B、3Dでは、それぞれ、さらに微分制御を行うことで、τs又はτm´が算出されても良い。
【0084】
[(4)ゲインの調整]
ゲイン調整部32の機能は、制御ユニット3のプロセッサが動作することで実現される(図2参照)。ゲイン調整部32は、受付部44を介して使用者等から受け付けた操作に従い、非対称型のバイラテラル制御における比例制御及び積分制御のゲインを調整する。
【0085】
すなわち、記憶装置33には、各ロボットアーム2に対応して、マスタ制御部30における比例制御のゲインKpmと、スレーブ制御部31における比例制御のゲインKps及び積分制御のゲインKisとが保存されている。そして、例えば、手術ロボット1の起動時等には、制御ユニット3は、各ロボットアーム2に対応するKpm、Kps、及びKisを記憶装置33から読み出し、以後、読み出したKpm、Kps、及びKisを用いて上述したバイラテラル制御を行う。
【0086】
また、ゲイン調整部32は、ゲインの調整の指示を指示する操作信号を受付部44から受け付けると、表示部43に対し制御信号を出力し、ゲインの設定画面7を表示部43に表示する(図5参照)。ゲインの設定画面7は、各ロボットアーム2に対応して設けられており、対応するロボットアーム2のバイラテラル制御におけるゲインを調整するために用いられる。ゲイン調整部32は、受付部44から入力された操作信号に従い、表示部43に表示されているゲインの設定画面7を、異なるロボットアーム2に対応するゲインの設定画面7に切り替えるよう、表示部43に対し制御信号を出力する。
【0087】
ゲインの設定画面7は、把持部50の位置及び向きの制御におけるスレーブの比例制御のゲイン及び積分制御のゲインの表示領域70、71と、マスタの比例制御のゲインの表示領域72とを有する。また、ゲインの設定画面7は、把持部50の開閉状態の制御におけるスレーブの比例制御のゲイン及び積分制御のゲインの表示領域73、74と、マスタの比例制御のゲインの表示領域75とを有する。ゲイン調整部32は、表示部43に対し制御信号を出力し、これらの表示領域70~75に、対応する比例制御又は積分制御におけるゲインの現在の値を表示させる。
【0088】
また、ゲインの設定画面7には、表示領域70~75のいずれかに重ねてカーソル76が表示される。ゲイン調整部32は、受付部44から入力された操作信号に従い、表示領域70~75のうちのいずれかを選択すると共に、表示部43に対し制御信号を出力し、選択した表示領域に重ねてカーソル76を表示させる。また、ゲイン調整部32は、受付部44から入力された操作信号に従い、選択中の表示領域に表示されているゲインの値の変更を受け付け、表示部43に対し制御信号を出力することで、変更後のゲインの値を該表示領域に表示させる。
【0089】
そして、ゲイン調整部32は、受付部44から、ゲインの値の確定を指示する操作信号が入力されると、表示領域70~75に対応する比例制御又は積分制御のゲインの値を、該表示領域に表示されているゲインの値に更新する。以後、バイラテラル制御では、更新後のゲインの値が用いられる。また、ゲイン調整部32は、更新後の各ゲインの値を記憶装置33に保存する。
【0090】
[6.効果]
(1)従来のバイラテラル制御では、比例制御及び微分制御を用いた対称型又は力帰還型の方式が多く用いられていた。そして、制御の精度向上のためには、術具として鉗子が用いられる場合であれば、鉗子の先端に大きな外力(例えば、5~20N程度の外力)がかかった場合であっても誤差を極力抑える必要がある。そのためには、スレーブの制御における比例制御ゲインを大きくする必要があるが、上述したように、比例制御ゲインを向上させることには限界がある。そこで、積分制御や外乱オブザーバ等といった積分を用いた方式によりスレーブを制御する必要があるが、このような方式を導入すると、力覚フィードバックが遅延する恐れがある。
【0091】
これに対し、本実施形態における非対称型のバイラテラル制御では、スレーブ制御部31では、比例制御及び積分制御によりτsが算出される。このため、スレーブ制御部31にて外乱を良好に抑圧でき、τsの精度が向上する。また、マスタ制御部30は、スレーブ制御部31から取得したτsに基づきτmを算出し、τmによりマスタである位置操作部41及び把持操作部42にて生成される反力を制御する。このため、力覚フィードバックの感度が向上する。つまり、本実施形態では、積分を用いた方式によりスレーブを制御しているにも関わらず、力覚フィードバックの遅延を抑制できる。
【0092】
(2)また、マスタの比例制御のゲイン|Kpm|は、スレーブの比例制御のゲイン|Kps|よりも大きい。このため、力覚フィードバックの感度が向上する。
【0093】
(3)また、ゲイン調整部32では、受付部44を介して受け付けた操作に従い、各ボットアームに対応するバイラテラル制御における各ゲインを調整する。このため、力覚フィードバックの感度を調整したり、より好適に術具を制御できるようにカスタマイズしたりすることができる。
【0094】
[7.他の実施形態]
上記実施形態における1つの構成要素が有する複数の機能を、複数の構成要素によって実現したり、1つの構成要素が有する1つの機能を、複数の構成要素によって実現したりしてもよい。また、複数の構成要素が有する複数の機能を、1つの構成要素によって実現したり、複数の構成要素によって実現される1つの機能を、1つの構成要素によって実現したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加又は置換してもよい。
【0095】
[8.文言の対応関係]
操作装置40の位置操作部41及び把持操作部42が、マスタ部の一例に相当する。また、ロボットアーム2の第1~第3駆動部23~25が、スレーブ部の一例に相当し、ロボットアーム2のセンサ部26及び術具のセンサ部50A、52Aが、スレーブ検出部の一例に相当する。
【0096】
[9.本明細書が開示する技術思想]
[項目1]
手術ロボットであって、
使用者から操作を受け付けると共に、前記操作を行っている前記使用者に対し反力を付与するよう構成されたマスタ部と、
前記マスタ部を制御し、前記反力を発生させるよう構成されたマスタ制御部と、
術具を作動させるスレーブ部と、
前記マスタ部が受け付けた前記操作に基づく前記術具の状態である目標状態に基づき前記スレーブ部を制御し、前記術具を作動させるよう構成されたスレーブ制御部と、
前記術具の状態である術具状態を検出するよう構成されたスレーブ検出部と、
を備え、
前記スレーブ制御部は、前記術具状態と前記目標状態とに基づき、前記術具を制御するためのスレーブ制御値を算出し、前記スレーブ制御値に基づき前記スレーブ部を制御するよう構成され、
前記マスタ制御部は、前記術具状態及び前記目標状態と、前記スレーブ制御部から取得した前記スレーブ制御値とに基づき、前記反力を制御するためのマスタ制御値を算出し、前記マスタ制御値に基づき前記マスタ部を制御するよう構成される、
手術ロボット。
【0097】
[項目2]
項目1に記載の手術ロボットにおいて、
前記スレーブ制御部は、前記術具状態と前記目標状態とに基づく積分を行うことで、前記スレーブ制御値を算出するよう構成される
手術ロボット。
【0098】
[項目3]
項目1又は項目2に記載の手術ロボットにおいて、
前記スレーブ制御部は、前記術具状態と前記目標状態との差分に基づく比例制御により、前記スレーブ制御値を算出するよう構成され、
前記マスタ制御部は、前記術具状態と前記目標状態との差分に基づく比例制御により、前記マスタ制御値を算出するよう構成され、
前記マスタ制御部での比例制御のゲインは、前記スレーブ制御部での比例制御のゲインよりも大きい
手術ロボット。
【0099】
[項目4]
項目1から項目3のうちのいずれか1項に記載の手術ロボットにおいて、
前記マスタ制御部は、前記術具状態と前記目標状態との差分に基づく比例制御により、前記マスタ制御値を算出するよう構成され、
前記比例制御のゲインを表示するよう構成された表示部と、
前記比例制御のゲインを変更するための操作を受け付けるよう構成された受付部と、
をさらに備える手術ロボット。
【0100】
[項目5]
項目1から項目4のうちのいずれか1項に記載の手術ロボットにおいて、
前記スレーブ制御部は、前記術具状態と前記目標状態との差分に基づく比例制御により、前記スレーブ制御値を算出するよう構成され、
前記比例制御のゲインを表示するよう構成された表示部と、
前記比例制御のゲインを変更するための操作を受け付けるよう構成された受付部と、
をさらに備える手術ロボット。
【0101】
[項目6]
項目5に記載の手術ロボットにおいて、
前記スレーブ制御部は、前記術具状態と前記目標状態との差分に基づく積分制御をさらに行うことで、前記スレーブ制御値を算出するよう構成され、
前記表示部は、前記積分制御のゲインをさらに表示するよう構成され、
前記受付部は、前記積分制御のゲインを変更するための操作をさらに受け付けるよう構成される
手術ロボット。
【0102】
[項目7]
手術ロボットの制御ユニットであって、
使用者から操作を受け付けると共に、前記操作を行っている前記使用者に対し反力を付与するよう構成されたマスタ部を制御し、前記反力を発生させるよう構成されたマスタ制御部と、
術具を作動させるスレーブ部を、前記マスタ部が受け付けた前記操作に基づく前記術具の状態である目標状態に基づき制御し、前記術具を作動させるよう構成されたスレーブ制御部と、を備え、
前記スレーブ制御部は、スレーブ検出部により検出された前記術具の状態である術具状態と前記目標状態とに基づき、前記術具を制御するためのスレーブ制御値を算出し、前記スレーブ制御値に基づき前記スレーブ部を制御するよう構成され、
前記マスタ制御部は、前記術具状態及び前記目標状態と、前記スレーブ制御部から取得した前記スレーブ制御値とに基づき、前記反力を制御するためのマスタ制御値を算出し、前記マスタ制御値に基づき前記マスタ部を制御するよう構成される、
手術ロボットの制御ユニット。
【要約】
手術ロボットは、マスタ部と、マスタ制御部と、スレーブ部と、スレーブ制御部と、を備える。スレーブ制御部は、マスタ部が受け付けた操作に基づく術具の状態である目標状態と、術具状態とに基づき、術具を制御するためのスレーブ制御値を算出し、スレーブ制御値に基づきスレーブ部を制御するよう構成される。マスタ制御部は、術具状態及び目標状態と、スレーブ制御部から取得したスレーブ制御値とに基づき、反力を制御するためのマスタ制御値を算出し、マスタ制御値に基づきマスタ部を制御するよう構成される。
図1
図2
図3
図4
図5