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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-21
(45)【発行日】2023-08-29
(54)【発明の名称】ガスタービン燃焼器構造体
(51)【国際特許分類】
   F02C 7/20 20060101AFI20230822BHJP
   F01D 25/26 20060101ALI20230822BHJP
   F23R 3/30 20060101ALI20230822BHJP
   F23R 3/60 20060101ALI20230822BHJP
【FI】
F02C7/20 B
F01D25/26 B
F23R3/30
F23R3/60
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019203047
(22)【出願日】2019-11-08
(65)【公開番号】P2021076065
(43)【公開日】2021-05-20
【審査請求日】2022-02-21
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001092
【氏名又は名称】弁理士法人サクラ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊東 正雄
(72)【発明者】
【氏名】岩井 保憲
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 隆
(72)【発明者】
【氏名】森澤 優一
(72)【発明者】
【氏名】糟谷 宏樹
【審査官】落合 弘之
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-042973(JP,A)
【文献】国際公開第2016/139696(WO,A1)
【文献】実開平04-100660(JP,U)
【文献】特開2015-087091(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02C 7/00
F23R 3/00
F23R 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
超臨界COを作動流体に用いる超臨界COガスタービンのタービンロータの軸方向に垂直な方向から、前記超臨界COガスタービンのケーシングを貫通して配置されるガスタービン燃焼器構造体であって、
複数の燃焼器を備え、
各前記燃焼器は、
燃料と酸化剤を燃焼させる筒状の燃焼器ライナと、
前記燃焼器ライナの上流端に設けられ、燃料を前記燃焼器ライナ内に供給する燃料供給部と、
前記燃焼器ライナの上流端に設けられ、酸化剤を前記燃焼器ライナ内に供給する酸化剤供給部と
を具備し、
前記燃焼器構造体は、鉛直上方または鉛直下方から前記ケーシングを貫通していることを特徴とするガスタービン燃焼器構造体。
【請求項2】
前記燃料供給部および前記酸化剤供給部は、一つの燃料‐酸化剤供給機構を構成していることを特徴とする請求項1記載のガスタービン燃焼器構造体。
【請求項3】
複数の前記燃焼器が上流端に設けられ、各前記燃焼器の前記燃焼器ライナから排出された燃焼ガスを集合させて流す後部ライナを具備することを特徴とする請求項1または2記載のガスタービン燃焼器構造体。
【請求項4】
前記後部ライナの下流端に接続され、前記後部ライナから排出された燃焼ガスを前記タービンロータの軸方向に導くとともに前記タービンロータの周方向に導く流路を具備することを特徴とする請求項3記載のガスタービン燃焼器構造体。
【請求項5】
前記酸化剤は、酸素と前記超臨界COとの混合気であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載のガスタービン燃焼器構造体。
【請求項6】
前記ケーシングは、内部ケーシングと、前記内部ケーシングの外周側に設けられた外部ケーシングとを備えることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載のガスタービン燃焼器構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、ガスタービン燃焼器構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
ガスタービン燃焼器は、燃料と酸化剤を燃焼領域に供給する燃料‐酸化剤供給機構を備えている。この燃料‐酸化剤供給機構として、拡散燃焼方式の供給機構や予混合燃焼方式の供給機構がある。拡散燃焼方式の供給機構は、例えば、燃料を供給する燃料供給部と、燃料供給部の周囲から酸化剤を供給する酸化剤供給部とを備える。予混合燃焼方式の供給機構は、例えば、燃料と酸化剤の混合気を噴出する混合気供給部を備える。
【0003】
燃料‐酸化剤供給機構は、所定の最適なサイズに設計されるため、一つの燃料‐酸化剤供給機構から供給可能な燃料流量は限られる。そのため、ガスタービン燃焼器として要求される熱量を確保するためには、複数の燃料‐酸化剤供給機構を備えることが必須となる。
【0004】
従来のガスタービン燃焼器として、例えば、一つの燃料‐酸化剤供給機構を備えた燃焼ライナをタービンロータの周方向に複数配置するキャニュラ燃焼器がある。また、従来のガスタービン燃焼器として、例えば、タービンロータの周囲に設けられた環状ライナと、環状ライナの上流端に周方向に配置された複数の燃料‐酸化剤供給機構とを備えたアニュラ燃焼器がある。
【0005】
ここで、従来の大部分のガスタービン燃焼器は、例えば、タービンロータの軸方向に対して0~30度程度の角度でケーシングを貫通して配置されている。
【0006】
近年、上記したようなガスタービン燃焼器を備える発電プラントにおいて、二酸化炭素の削減や省資源などの要求から、高効率化が進められている。そのような中、燃焼器において生成した二酸化炭素の一部を超臨界圧まで加圧して燃焼器に循環させる超臨界COガスタービンが検討されている。
【0007】
この超臨界COガスタービンにおいては、超高圧の環境下での運転条件となるため、内部ケーシングおよび外部ケーシングを備える二重ケーシング構造の採用が必須となる。
【0008】
この二重ケーシング構造を備える超臨界COガスタービンに、上記した従来のガスタービン燃焼器の配置構成を採用した場合、ガスタービン燃焼器は、タービンロータの軸方向に対して上記した所定の角度で外部ケーシングおよび内部ケーシングを貫通して配置されることとなる。
【0009】
この場合、外部ケーシングと内部ケーシングとの熱伸び差によって、外部ケーシングと内部ケーシングとの間のシール性能を維持することが困難となる。そのため、このような超臨界COガスタービンにおいては、二重ケーシング構造においてもシール性能を維持しやすい垂直サイロ型燃焼器が採用される。垂直サイロ型燃焼器においては、燃焼器は、外部ケーシングの鉛直上方、もしくは鉛直下方から挿入される。すなわち、垂直サイロ型燃焼器は、タービンロータの軸方向に対して90度の角度で外部ケーシングおよび内部ケーシングを貫通して配置される。
【0010】
また、超臨界COガスタービンの燃焼器では、燃焼器入口条件が超高圧で高温となる。さらに、超臨界COガスタービンの燃焼器では、燃焼ガスの一部を循環させるため、燃焼器から排出される燃焼ガス中に、余剰の燃料や酸素が残存しないように、燃料および酸素の流量は、量論混合比(当量比1)に設定される。
【0011】
このような条件下において、超臨界COガスタービンの燃焼器に予混合燃焼方式を採用した場合には、燃焼領域に噴出される前の予混合気が予混合気供給管内で自己着火することがある。そのため、超臨界COガスタービンの燃焼器には、拡散燃焼方式が採用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】特開平6-18037号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上記したように、超臨界COガスタービンにおいては、拡散燃焼方式の垂直サイロ型燃焼器が採用される。ここで、図7は、従来の拡散燃焼方式の垂直サイロ型燃焼器200の縦断面を模式的に示した図である。
【0014】
図7に示すように、垂直サイロ型燃焼器200は、一つの燃焼ライナ201の上流端に複数の燃料‐酸化剤供給機構202を備えている。各燃料‐酸化剤供給機構202は、燃料を供給する燃料供給部203と、酸化剤を供給する酸化剤供給部204とを備えている。
【0015】
この垂直サイロ型燃焼器200では、各燃料‐酸化剤供給機構202から噴出された燃料と酸化剤は、燃焼ライナ201内の一つの空間において燃焼する。図7に示すように、各燃料‐酸化剤供給機構202の下流には、それぞれ火炎205が形成される。
【0016】
このような従来の垂直サイロ型燃焼器200では、燃料‐酸化剤供給機構202から噴出された燃料と酸化剤の流れ場は、隣接する他の燃料‐酸化剤供給機構202から噴出された燃料と酸化剤の流れ場の影響を受ける。
【0017】
例えば、一つの燃料‐酸化剤供給機構202から噴出された燃料と酸化剤による流れ場は、隣接する燃料‐酸化剤供給機構202から噴出された燃料と酸化剤の流れ場によって乱される。これによって、一つの燃料‐酸化剤供給機構202によって形成される火炎205が不安定となり、吹き消えや不安定燃焼を引き起こす。
【0018】
例えば、酸化剤供給部204から噴出する酸化剤の流れに旋回成分を付与する場合、燃料‐酸化剤供給機構202の下流に再循環流を有する流れ場が形成される。
【0019】
一般的に、燃料‐酸化剤供給機構の下流に再循環流を形成することによって、安定した火炎が得られる。しかしながら、図7に示す従来の垂直サイロ型燃焼器200においては、隣接する燃料‐酸化剤供給機構202の下流に形成された再循環流どうしが干渉して再循環流が乱される。これによって、火炎205が不安定となり、吹き消えや不安定燃焼を引き起こす。
【0020】
例えば、不安定燃焼を引き起こした場合、燃焼ガス中の未燃焼成分の濃度が増加し、燃焼効率が低下する。そのため、必要な熱量が得られないとともに、燃焼器に循環させる二酸化炭素に酸素や未燃焼成分が含まれることとなる。
【0021】
本発明が解決しようとする課題は、超臨界COガスタービンの燃焼器において、他の燃料‐酸化剤供給機構から噴出された燃料と酸化剤の流れ場からの干渉を受けることなく、安定した燃焼を維持することができるガスタービン燃焼器構造体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0022】
実施形態のガスタービン燃焼器構造体は、超臨界COを作動流体に用いる超臨界COガスタービンのタービンロータの軸方向に垂直な方向から、前記超臨界COガスタービンのケーシングを貫通して配置される。このガスタービン燃焼器構造体は、複数の燃焼器を備え、各前記燃焼器は、燃料と酸化剤を燃焼させる筒状の燃焼器ライナと、前記燃焼器ライナの上流端に設けられ、燃料を前記燃焼器ライナ内に供給する燃料供給部と、前記燃焼器ライナの上流端に設けられ、酸化剤を前記燃焼器ライナ内に供給する酸化剤供給部とを具備し、前記燃焼器構造体は、鉛直上方または鉛直下方から前記ケーシングを貫通している



【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】実施の形態の燃焼器構造体を備えるガスタービン設備の系統図である。
図2】実施の形態の燃焼器構造体の縦断面を示す図である。
図3図2のA-A断面を示す図である。
図4図2のB-B断面を示す図である。
図5】本実施の形態の燃焼器および図7に示した従来の燃焼器における当量比と燃焼効率の関係を示す図である。
図6】実施の形態の燃焼器構造体を上半側および下半側に備えたときの、図2のB-B断面に相当する断面を示す図である。
図7】従来の拡散燃焼方式の垂直サイロ型燃焼器の縦断面を模式的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0025】
図1は、実施の形態の燃焼器構造体1を備えるガスタービン設備5の系統図である。図1に示すように、ガスタービン設備5は、燃焼器構造体1、燃料供給系統10、酸素供給系統20、二酸化炭素循環系統30、タービン40、発電機41、熱交換器42を備える。なお、燃焼器構造体1は、ガスタービン燃焼器構造体として機能する。
【0026】
燃料供給系統10は、燃焼器構造体1に燃料を供給する。燃料供給系統10は、配管11を備える。この配管11は、燃料供給源(図示しない)と燃焼器構造体1との間に設けられる。また、配管11は、燃料の流量を調整する流量調整弁12を備える。
【0027】
ここで、燃料として、例えば、メタン、天然ガスなどの炭化水素が使用される。また、燃料として、例えば、一酸化炭素および水素などを含む石炭ガス化ガス燃料を使用することもできる。
【0028】
酸素供給系統20は、燃焼器構造体1に酸素を供給する。酸素供給系統20は、配管21を備える。この配管21は、大気から酸素を分離する空気分離装置(図示しない)と燃焼器構造体1との間に設けられる。
【0029】
配管21は、酸素の流量を調整する流量調整弁22を備える。また、配管21は、酸素を昇圧する圧縮機23を備える。流量調整弁22は、圧縮機23と熱交換器42との間に設けられている。そして、配管21は、熱交換器42を通り燃焼器構造体1まで延設されている。なお、流量調整弁22は、熱交換器42よりも上流側に設けられているため、流量調整弁22には高温の酸素が流れない。
【0030】
配管21には、空気分離装置(図示しない)によって大気から分離された酸素が流れる。配管21を流れる酸素は、熱交換器42を通過することで加熱され、燃焼器構造体1に供給される。
【0031】
二酸化炭素循環系統30は、タービン40から排出された燃焼ガスの一部を燃焼器構造体1に循環する。二酸化炭素循環系統30は、配管31を備える。この配管31は、タービン40の出口と燃焼器構造体1との間に設けられる。
【0032】
配管31は、燃焼ガス中に含まれる水蒸気を除去する凝縮器32を備える。なお、燃焼ガス中の水蒸気は、凝縮器32を通過することで、凝縮して水となる。水は、例えば、配管36を通り外部に排出される。
【0033】
また、配管31は、凝縮器32において水蒸気が除去された燃焼ガスを臨界圧力以上に昇圧する圧縮機33を備える。凝縮器32および圧縮機33は、熱交換器42で冷却された燃焼ガスが流れる領域の配管31に備えられる。
【0034】
ここで、ガスタービン設備5においては、燃焼器構造体1(燃焼器50)から排出される燃焼ガスに、余剰の酸素や燃料が残存しないことが好ましい。そこで、燃料および酸素の流量は、量論混合比(当量比1)になるように調整されている。また、燃焼器構造体1に循環される媒体は二酸化炭素である。
【0035】
なお、ここでいう当量比は、燃料流量および酸素流量に基づいて算出した当量比である。換言すれば、燃料と酸素が均一に混合したと想定したときの当量比(オーバーオールでの当量比)である。
【0036】
このようなことから、凝縮器32において水蒸気が除去された燃焼ガス(ドライ燃焼ガス)の成分は、ほぼ二酸化炭素である。そこで、水蒸気が除去された燃焼ガスを単に二酸化炭素と称する。
【0037】
なお、水蒸気が除去された燃焼ガスには、例えば、0.2%以下の微量の一酸化炭素が混在する場合もあるが、この場合においても、水蒸気が除去された燃焼ガスを単に二酸化炭素と称する。また、臨界圧力以上に昇圧された二酸化炭素は、超臨界流体となる。
【0038】
配管31は、熱交換器42を2回通るように配管されている。すなわち、配管31は、タービン40と凝縮器32との間で一度熱交換器42を通る。そして、配管31は、圧縮機33と燃焼器構造体1との間で再度熱交換器42を通る。
【0039】
ここで、タービン40から排出された燃焼ガスは、熱交換器42を通過することによって冷却される。この際、燃焼ガスからの放熱によって、前述した配管21を流れる酸素や、配管31を通り燃焼器構造体1に循環する二酸化炭素を加熱する。
【0040】
また、配管31は、圧縮機33と熱交換器42との間で分岐している。配管31から分岐した配管34は、外部に排出する二酸化炭素の流量を調整する流量調整弁35を備える。なお、外部に排出された二酸化炭素は、例えば、石油採掘現場で採用されているEOR(Enhanced Oil Recovery)に利用することができる。
【0041】
図1に示すように、燃料を供給する配管11の一端側(燃焼器構造体1側)は、複数に分岐されている。そして、分岐された各配管11は、燃焼器構造体1の各燃焼器50に接続されている。
【0042】
また、二酸化炭素を燃焼器構造体1に循環する配管31の一端側(燃焼器構造体1側)は、例えば、複数に分岐されている。分岐された一部の配管31から供給される超臨界COは、超臨界COと酸素との混合気である酸化剤を形成するために利用される。分岐された残りの配管31は、冷却媒体として燃焼器構造体1の周囲に超臨界COを導入するために利用される。
【0043】
酸素を燃焼器構造体1に供給する配管21の一端側(燃焼器構造体1側)は、複数に分岐されている。
【0044】
そして、分岐された一つの配管31および分岐された一つの配管21は、各燃焼器50の酸化剤供給部53に接続される。そして、酸化剤供給部53に導入された酸素と超臨界COとが混合して混合気が形成される。この混合気は、酸化剤として燃焼器ライナ51内に噴出される。
【0045】
なお、混合気の形成方法は、この方法に限られない。例えば、内部に空間を有する筐体部材からなる混合室を備えてもよい。この場合、分岐された一部の配管31および配管21は、混合室に接続される。そして、混合室で形成された混合気を、配管を介して各燃焼器50の酸化剤供給部53に供給する。
【0046】
また、熱交換器42と燃焼器構造体1との間で配管31を分岐し、その分岐された配管を酸素が流れる配管21に連結させてもよい。この連結部は、例えば、熱交換器42と燃焼器構造体1との間の配管21に設けられる。
【0047】
また、圧縮機33と熱交換器42との間で配管31を分岐し、その分岐された配管を酸素が流れる配管21に連結させてもよい。この連結部は、例えば、流量調整弁22と熱交換器42との間の配管21に設けられる。
【0048】
いずれに連結部を設ける場合においても、配管31から分岐された配管は、酸素と混合する超臨界COの流量を調整する流量調整弁を備える。
【0049】
なお、圧縮機33と熱交換器42との間で分岐された配管31を流量調整弁22と熱交換器42との間で配管21に連結する場合、酸素と超臨界COとの混合気は、熱交換器42で加熱され、燃焼器構造体1に供給される。そのため、高温の純酸素が配管21を流れる場合に比べて、配管21の酸化などを抑制できる。
【0050】
タービン40は、燃焼器構造体1から排出された燃焼ガスによって回動される。このタービン40には、例えば、発電機41が連結されている。
【0051】
次に、燃焼器構造体1の構成について説明する。
【0052】
図2は、実施の形態の燃焼器構造体1の縦断面を示す図である。図3は、図2のA-A断面を示す図である。図4は、図2のB-B断面を示す図である。なお、図2図4に示された燃焼器構造体1は、ガスタービンに設置された状態における断面図である。そのため、図2図4には、例えば、ガスタービンのケーシングなどの構成も示されている。また、図2および図3には、上半側の構成が示されている。ここでは、燃焼器構造体1を上半側に備えた一例を示している。
【0053】
ここで、燃焼器構造体1は、超臨界COを作動流体に用いる超臨界COガスタービンに設置される。燃焼器構造体1やタービン40は、超高圧の条件下で作動されるため、図2および図3に示すように、ケーシング80は、内部ケーシング90および外部ケーシング85を備える二重ケーシング構造で構成される。外部ケーシング85は、内部ケーシング90の外周側に所定の間隙をおいて設けられている。
【0054】
内部ケーシング90内には、静翼95、動翼96がタービンロータ97の軸方向に交互に配置されている。静翼95は、内輪側壁95aと外輪側壁95bとの間に配置されている。動翼96は、タービンロータ97のロータホイール98に設けられている。なお、動翼96の外周は、動翼の先端と隙間を有して外側壁95cが設けられている。この外側壁95cは、例えば、外輪側壁95bをタービンロータ97の軸方向に延長して構成されてもよい。
【0055】
燃焼器構造体1は、燃焼器50、後部ライナ60、スクロール70を備える。また、燃焼器構造体1は、複数の燃焼器50を備える。
【0056】
燃焼器構造体1は、図2および図3に示すように、タービンロータ97の軸方向に垂直な方向から、外部ケーシング85および内部ケーシング90を貫通して配置される。燃焼器構造体1は、いわゆる垂直サイロ型の燃焼器構造体である。ここでは、鉛直上方から燃焼器構造体1を貫通させる一例を示している。
【0057】
外部ケーシング85の外側には、燃焼器構造体1の周囲を囲む燃焼器ケーシング110が設けられている。燃焼器ケーシング110は、両端が開口する筒状のケーシングで構成される。
【0058】
燃焼器ケーシング110の一端は、外部ケーシング85に固定されている。燃焼器ケーシング110の他端は、ヘッドプレート111で閉鎖されている。なお、例えば、ヘッドプレート111には、配管21、配管31、配管11を燃焼器ケーシング110内に引き込むための貫通孔(図示しない)が設けられている。
【0059】
外部ケーシング85および内部ケーシング90には、燃焼器構造体1を貫通させるための貫通口86、91が形成されている。燃焼器構造体1を貫通させる外部ケーシング85と内部ケーシング90との間には、スリーブ100が設けられている。
【0060】
スリーブ100は、燃焼器構造体1の周囲を流れる冷却媒体としての超臨界COが外部ケーシング85と内部ケーシング90との間の空間に流出することを防止する。スリーブ100は、例えば、円筒状部材で構成される。
【0061】
例えば、スリーブ100の上流端は、外周側に突出する環状のフランジ部101を備える。このフランジ部101は、外部ケーシング85の外周面85aに形成された環状の溝部87に支持される。また、スリーブ100の下流端は、内部ケーシング90の外周面90aに当接される。
【0062】
また、スリーブ100と当接する内部ケーシング90の外周面90aには、スリーブ100と間隙をあけてスリーブ100の周囲に亘って円環状の突条部92が形成されている。突条部92は、外部ケーシング85側に突出している。
【0063】
スリーブ100と突条部92との間には、円環状のシールリング93が勘合している。シールリング93を備えることで、燃焼器構造体1の周囲を流れる超臨界COがスリーブ100と内部ケーシング90の外周面90aとの間から外部ケーシング85と内部ケーシング90との間に流出することを防止する。
【0064】
なお、スリーブ100の構成は、上記した構成に限られない。スリーブ100は、燃焼器構造体1の周囲を流れる超臨界COが外部ケーシング85と内部ケーシング90との間の空間に流出することを防止できる構成であればよい。
【0065】
燃焼器50は、燃焼器ライナ51と、燃料供給部52と、酸化剤供給部53とを備える。
【0066】
燃焼器ライナ51は、燃料と酸化剤を燃焼させる筒状部材で構成される。燃焼器ライナ51の一端(上流端)は、上流端壁51aで封鎖され、他端(下流端)は、開口されている。燃焼器ライナ51は、例えば、直線状に伸びる筒体などで構成される。なお、燃焼器ライナ51は、例えば、一部が湾曲した筒体などで構成されてもよい。上流端壁51aには、燃料供給部52および酸化剤供給部53を備えるための開口51bを有する。
【0067】
なお、上流とは、燃焼ガスが流れる方向における上流を意味し、下流とは、燃焼ガスが流れる方向における下流を意味する。
【0068】
図2および図3に示すように、燃焼器ライナ51は、燃焼器ライナ51の中心軸が、例えば、タービンロータ97の軸方向に垂直となるように配置される。
【0069】
また、燃焼器ライナ51の側壁には、燃焼器ライナ51の外側を流れる超臨界COを内部に導くための複数の導入孔51cが設けられている。この燃焼器ライナ51の外側を流れる超臨界COは、燃焼器ライナ51を冷却する機能を有する。
【0070】
なお、導入孔51cは、例えば、スリットや孔などで構成される。燃焼器ライナ51は、例えば、フィルム冷却などによって冷却される。フィルム冷却を適用した場合、導入孔51cから導入された冷却媒体である超臨界COが燃焼器ライナ51の内壁面と燃焼ガスとの間に気体の断熱膜を形成する。これによって、燃焼器ライナ51の内壁面が直接燃焼ガスに接触することを抑制する。
【0071】
燃料供給部52は、燃料を燃焼器ライナ51内に供給する。燃料供給部52は、燃焼器ライナ51の上流端壁51aに設けられている。燃料供給部52は、例えば、図2に示すように、上流端壁51aの中央に設けられる。
【0072】
燃料供給部52は、例えば、円管などで構成される。燃料供給部52は、燃料を供給する配管11に連結されている。燃料供給部52の出口52aは、例えば、燃料ノズルとしての機能を備える。出口52aは、例えば、単孔の燃料噴射孔または多孔の燃料噴出孔などで構成される。燃料は、燃料供給部52の出口52aから燃焼器ライナ51内に噴出される。
【0073】
酸化剤供給部53は、酸化剤を燃焼器ライナ51内に供給する。酸化剤供給部53は、燃焼器ライナ51の上流端壁51aに設けられている。酸化剤供給部53は、例えば、図2に示すように、燃料供給部52の周囲に、燃料供給部52と同心円状で、かつ環状に設けられる。
【0074】
このように、例えば、燃料供給部52と酸化剤供給部53は、二重管構造で構成される。燃料は、中央の燃料噴出孔から噴出され、酸化剤は、中央の燃料噴出孔の周囲に形成される環状の流路から噴出される。すなわち、燃焼器50では、拡散燃焼方式を採用している。
【0075】
酸化剤供給部53の環状の出口53aには、例えば、酸化剤の流れに旋回成分を付与するスワーラ55などが設けられる。このスワーラ55を酸化剤が通過することで、旋回成分を有する流れが燃焼器ライナ51内に噴出される。このように、酸化剤の流れに旋回成分を与えることで、燃焼器ライナ51内において、燃料と酸化剤の混合が促進され、安定した火炎が形成される。
【0076】
上記した燃料供給部52および酸化剤供給部53は、一つの燃料‐酸化剤供給機構54を構成する。そして、図2に示すように、この一つの燃料‐酸化剤供給機構54の下流側に、一つの火炎Fが形成される。すなわち、燃焼器50は、一つの燃焼器ライナ51と、この一つの燃焼器ライナ51の上流端に設けられた一つの燃料‐酸化剤供給機構54とを備える。
【0077】
なお、ここでは、一つの燃料供給部52および一つの酸化剤供給部53で構成される燃料‐酸化剤供給機構54の一例を示しているが、この構成に限られない。
【0078】
燃料‐酸化剤供給機構54の構成は、一つの燃料‐酸化剤供給機構54の下流に、この燃料‐酸化剤供給機構54から噴出された燃料および酸化剤によって形成される一つの火炎F、換言すれば、一つの燃焼領域を形成するものであればよい。例えば、一つの燃料‐酸化剤供給機構54は、複数の燃料供給部52、複数の酸化剤供給部53を備えてもよい。
【0079】
燃焼器構造体1は、上記した構成を備える燃焼器50を複数備えている。図4に示すように、複数の燃焼器50は、燃焼器ケーシング110内に設けられている。複数の燃焼器50は、図4に示すように、例えば、燃焼器ケーシング110の中心軸を中心として周方向に等間隔に配置される。配置される燃焼器50の個数は、例えば、一つの燃焼器50から供給可能な熱量と、超臨界COガスタービンに要求される熱量とに基づいて決められる。
【0080】
各燃焼器50の燃焼器ライナ51の下流端は、後述する後部ライナ60の上流端に設けられた上流端壁61の貫通口63に連通している。そして、各燃焼器ライナ51は、貫通口63を介して後部ライナ60内に連通している。
【0081】
ここで、図1に示すように、各燃焼器50の燃料供給部52は、分岐された配管11にそれぞれ連結されている。各燃焼器50の酸化剤供給部53は、例えば、分岐された配管21、配管31にそれぞれ連結されている。例えば、酸化剤供給部53の上流部において導入された酸素および超臨界COは、酸化剤供給部53内を流れながら混合し、酸化剤供給部53の出口53aにおいては酸素および超臨界COからなる混合気となる。
【0082】
後部ライナ60は、複数の燃焼器50の下流側に設けられる。後部ライナ60は、複数の燃焼器50から排出された燃焼ガスを集合させて整流しながらスクロール70に導く流路である。
【0083】
後部ライナ60は、例えば、図2および図3に示すように、タービンロータ97の軸方向に垂直な方向に延設される筒状部材で構成される。また、後部ライナ60は、例えば、下流側へ行くに伴って流路断面積が徐々に減少する流路部を有して構成される。なお、後部ライナ60の形状は、これに限られるものではない。
【0084】
後部ライナ60の一端(上流端)は、上流端壁61で封鎖され、他端(下流端)は、開口されている。上流端壁61は、各燃焼器ライナ51の下流端と連通する複数の貫通口63を有する。この貫通口63は、各燃焼器ライナ51の下流端の位置に合わせて形成される。後部ライナ60の他端(下流端)は、スクロール70の上流端に接続されている。
【0085】
後部ライナ60の側壁には、後部ライナ60の外側を流れる超臨界COを内部に導くための複数の導入孔62が設けられている。この後部ライナ60の外側を流れる超臨界COは、後部ライナ60を冷却する機能を有する。
【0086】
なお、導入孔62の構成は、前述した導入孔51cの構成と同じである。また、導入孔62を備えることによる効果は、前述した導入孔51cを備えることによる効果と同じである。
【0087】
スクロール70は、後部ライナ60から排出された燃焼ガスをタービンロータ97の軸方向に導くとともに、タービンロータ97の周方向に導く流路である。
【0088】
スクロール70は、図2および図3に示すように、後部ライナ60から排出された燃焼ガスをタービンロータ97の軸方向に導く屈曲流路部71と、タービンロータ97の軸方向に導かれた燃焼ガスをタービンロータ97の周方向に導く環状流路部72とを備える。
【0089】
屈曲流路部71の上流端は、後部ライナ60の下流端に接続されている。屈曲流路部71は、タービンロータ97の軸方向にほぼ90度屈曲する曲がり管で構成される。なお、屈曲流路部71の出口側は、屈曲しながらタービンロータ97の周方向に広がる構成を有する。そして、屈曲流路部71は、後部ライナ60から排出された燃焼ガスの流れをほぼ90度偏流する。偏流された燃焼ガスの流れは、タービンロータ97の軸方向に流れる。
【0090】
環状流路部72は、タービンロータ97の周囲を覆うように設けられた環状管で構成される。なお、環状流路部72は、例えば、半環状の上半部および下半部からなる分割構造体を組み合わせることで構成される。
【0091】
環状流路部72は、屈曲流路部71から排出された燃焼ガスの流れをタービンロータ97の周方向に広げる。環状流路部72において、タービンロータ97の軸方向の速度成分を有する燃焼ガスは、タービンロータ97の周方向に均一に広がる。
【0092】
環状流路部72(スクロール70)の出口73は、初段の静翼95に対向する。そして、環状流路部72内を流れる燃焼ガスは、出口73から初段の静翼95に向けて噴出される。なお、環状流路部72の出口端は、内輪側壁95aおよび外輪側壁95bの上流端に接している。これによって、出口73から噴出された燃焼ガスは、初段の静翼95に導かれる。
【0093】
次に、ガスタービン設備5の作用および燃焼器構造体1の作用について説明する。
【0094】
まず、ガスタービン設備5の作用について、図1を参照して説明する。
【0095】
図1に示すように、燃料は、配管11を通り燃焼器構造体1の燃焼器50に供給される。大気から分離された酸素は、配管21を通り燃焼器50に供給される。この際、酸素は、圧縮機23で所定の圧力まで昇圧される。さらに昇圧された酸素は、熱交換器42を通ることで加熱される。
【0096】
また、循環する超臨界COは、配管31通り燃焼器構造体1および燃焼器50に供給される。この際、超臨界COは、熱交換器42を通ることで加熱される。
【0097】
なお、前述したように、燃焼器50に供給された酸素と超臨界COは、混合され、酸化剤として燃焼器ライナ51内の燃焼領域に噴出される。
【0098】
燃焼器構造体1の燃焼器50に導かれた燃料および酸化剤は、燃焼器ライナ51内で燃焼して燃焼ガスとなる。
【0099】
なお、燃焼器構造体1における作用は、後述するのでここでは詳しい説明を省略する。
【0100】
燃焼器構造体1から排出された燃焼ガスは、タービン40に導入される。タービン40は、燃焼ガスによって回動する。そして、発電機41は、タービン40の回動によって駆動され、発電する。
【0101】
ここでいう、燃焼器構造体1から排出される燃焼ガスは、燃料と酸素とによって生成された燃焼生成物と、燃焼器構造体1に循環する二酸化炭素とを含んだものである。
【0102】
タービン40から排出された燃焼ガスは、配管31に導かれ、熱交換器42を通過することによって冷却される。この際、燃焼ガスからの放熱によって、前述した配管21を流れる酸素や、配管31を流れ燃焼器構造体1に循環する二酸化炭素は加熱される。
【0103】
熱交換器42を通過した燃焼ガスは、凝縮器32を通過する。燃焼ガスがこの凝縮器32を通過することで、燃焼ガス中に含まれる水蒸気は、除去される。なお、燃焼ガス中の水蒸気は、凝縮器32を通過することによって凝縮して水となる。水は、例えば、配管36を介して外部に排出される。
【0104】
ここで、前述したように、燃料および酸素の流量を量論混合比(当量比1)になるように調整しているため、水蒸気が除去された燃焼ガス(ドライ燃焼ガス)の成分は、ほぼ二酸化炭素である。
【0105】
二酸化炭素は、配管31に介在する圧縮機33によって昇圧され、超臨界COとなる。圧縮機33によって昇圧された二酸化炭素の一部は、配管31を流れ、燃焼器構造体1に循環される。この際、超臨界COは、熱交換器42を通過することで、例えば、700℃程度に加熱される。
【0106】
一方、圧縮機33によって昇圧された二酸化炭素の残部は、配管31から分岐する配管34に導入される。配管34に導入された二酸化炭素は、流量調整弁35によって流量が調節され、外部に排出される。外部に排出された二酸化炭素は、例えば、石油採掘現場で採用されているEOR(Enhanced Oil Recovery)に利用される。
【0107】
次に、燃焼器構造体1の作用について、図2および図3を参照して説明する。
【0108】
図2に示すように、配管11から燃料供給部52に供給された燃料は、出口52aから燃焼器ライナ51内に噴出される。配管21から酸化剤供給部53に供給された酸素および配管31から酸化剤供給部53に供給された超臨界COは、酸化剤供給部53内で混合し、出口53aから燃焼器ライナ51内に噴出される。この際、出口53aに設けられたスワーラ55によって酸化剤の流れに旋回成分が与えられる。
【0109】
燃焼器ライナ51内に噴出された燃料および酸化剤に点火装置(図示しない)によって点火し燃焼を開始させる。なお、点火装置は、各燃焼器50に設けられている。
【0110】
図2に示すように、燃焼器ライナ51内において、火炎は、燃料‐酸化剤供給機構54の下流に形成される。燃焼反応は、燃焼器ライナ51内において完了する。そのため、燃焼器ライナ51の出口から排出される燃焼ガスは、酸素および燃料を含まず、ほぼ二酸化炭素と水蒸気で構成される。
【0111】
燃焼器50は、一つの燃焼器ライナ51と一つの燃料‐酸化剤供給機構54とを備えるため、他の火炎(他の流れ場)との干渉はない。そのため、酸素および燃料を安定して燃焼させることができる。
【0112】
配管31から燃焼器構造体1の周囲に供給された超臨界COは、冷却媒体として、燃焼器ライナ51の導入孔51cを通り、燃焼器ライナ51内に導入される。
【0113】
燃焼器ライナ51内に導入された超臨界COは、燃焼ガスとともに燃焼器ライナ51の出口から排出され、後部ライナ60内に流入する。
【0114】
なお、各燃焼器50において上記した作用が生じる。
【0115】
各燃焼器50の燃焼器ライナ51から排出された燃焼ガス(超臨界COを含む)は、後部ライナ60内において一つの流れになって、後部ライナ60内を整流されながら流れる。
【0116】
また、配管31から燃焼器構造体1の周囲に供給された超臨界COは、冷却媒体として、後部ライナ60の導入孔62を通り、後部ライナ60内に導入される。
【0117】
後部ライナ60内に導入された超臨界COは、燃焼ガスとともにスクロール70に流入する。
【0118】
スクロール70の屈曲流路部71に流入した燃焼ガス(超臨界COを含む)は、タービンロータ97の軸方向にほぼ90度偏流される。そして偏流された燃焼ガスは、環状流路部72に流入する。環状流路部72に流入した燃焼ガスは、タービンロータ97の周方向に広がる。燃焼ガスの流れは、タービンロータ97の周囲を囲む環状流路部72の環状の流路内においてほぼ均一な速度分布となる。
【0119】
そして、燃焼ガスは、スクロール70の出口73から初段の静翼95に向けて噴出される。この際、燃焼ガスは、環状の出口から周方向に亘ってほぼ均一な速度で噴出される。
【0120】
なお、上記したように、燃焼器構造体1内を流れた燃焼ガスは、タービン40に導かれ、タービン40を稼働する。
【0121】
(当量比と燃焼効率の評価)
ここで、図5は、本実施の形態の燃焼器50および図7に示した従来の燃焼器200(垂直サイロ型燃焼器200)における当量比と燃焼効率の関係を示す図である。
【0122】
図5に示す燃焼効率は、燃焼ガス組成に基づいて得られたものである。図5に示した結果は、燃焼器の入口における温度、圧力の条件をCOの超臨界条件としたときのデータである。なお、燃料は、天然ガスとし、酸化剤は、酸素と超臨界COの混合気とした。双方のデータは、燃焼器構造が異なる以外は同じ条件で得られたものである。
【0123】
本実施の形態の燃焼器50では、一つの燃焼器ライナ51内の一つの空間において、一つの燃料‐酸化剤供給機構54から噴出された燃料と酸化剤を燃焼させる。そして、本実施の形態の燃焼器50では、このような燃焼器50を複数備える。
【0124】
一方、従来の燃焼器200では、一つの燃焼ライナ201内の一つの空間において、複数の燃料‐酸化剤供給機構202から噴出された燃料と酸化剤を燃焼させる。
【0125】
図5に示すように、変化させた当量比の全範囲において、本実施の形態の燃焼器50における燃焼効率は、従来の燃焼器200における燃焼効率よりも高い。
【0126】
当量比が1よりも小さくなるとともに、燃焼効率の低下は、本実施の形態の燃焼器50よりも従来の燃焼器200の方が大きい。すなわち、本実施の形態の燃焼器50と従来の燃焼器200との燃焼効率の差は、当量比が1よりも小さくなるとともに大きくなる。
【0127】
図5の結果から、従来の燃焼器200では、燃焼器200から排出される燃焼ガス中のCOやTHCの未燃焼成分の濃度が増加し、燃焼効率が低下したものと考えられる。このことから、従来の燃焼器200において、一つの燃料‐酸化剤供給機構202の下流の流れ場は、隣接する燃料‐酸化剤供給機構202の下流の流れ場によって乱され、火炎205が不安定となっているものと考えられる。
【0128】
ここで、旋回成分を有する酸化剤の流れによって形成される再循環流は、安定した火炎を形成することに寄与する。しかしながら、従来の燃焼器200では、この再循環流による流れ場が乱され、火炎205が不安定となっているものと考えられる。
【0129】
一方、本実施の形態の燃焼器50では、燃焼器50から排出される燃焼ガス中の未燃焼成分の濃度が低く、高い燃焼効率が得られたものと考えられる。このことから、本実施の形態の燃焼器50において、安定した燃焼が維持されているものと考えられる。
【0130】
本実施の形態の燃焼器50では、当量比が変動して1よりも小さくなったときにおいても、燃焼効率の低下は抑制される。
【0131】
上記したように、本実施の形態の燃焼器構造体1における燃焼器50では、一つの燃焼器ライナ51内の一つの空間において、一つの燃料‐酸化剤供給機構54から噴出された燃料と酸化剤を燃焼させることで、燃料‐酸化剤供給機構54の下流に安定した火炎を形成できる。
【0132】
また、本実施の形態では酸化剤に燃焼に寄与しない超臨界COを酸化剤に含んでいる。そのため、酸化剤として純酸素を使用する場合に比べて、流れ場が乱されることによって火炎がより不安定になりやすい。しかしながら、上記したように、本実施の形態の燃焼器50では、流れ場が乱されることなく安定した火炎が得られるため、酸化剤に超臨界COを含んでいても、安定した燃焼を維持できる。
【0133】
本実施の形態の燃焼器50では、このような燃焼器50を複数備えることで、超臨界COガスタービンに要求される熱量を満たすことができる。また、超臨界COガスタービンが要求する熱量に応じて、設置する燃焼器50の個数を適宜調整することができる。
【0134】
また、燃焼器の開発段階において、実機搭載を想定して小型の試験燃焼器において基礎試験を行うのが一般的である。しかしながら、小型の試験燃焼器において得られた知見を実機レベルの大型燃焼器に適用する際、寸法などの効果が相似則によらないことが多い。このような場合、小型の試験燃焼器において得られた知見が有効に利用できない。
【0135】
本実施の形態の燃焼器構造体1は、小型の試験燃焼器レベルの燃焼器50を複数備えることで構成される。すなわち、小型の試験燃焼器において得られた知見をそのまま利用することができる。
【0136】
ここで、上記した本実施の形態では、上半側に燃焼器構造体1を備えた一例を示したが、この構成に限られない。
【0137】
図6は、実施の形態の燃焼器構造体1を上半側および下半側に備えたときの、図2のB-B断面に相当する断面を示す図である。
【0138】
図6に示すように、燃焼器構造体1は、上半側と下半側の双方に備えられてもよい。この場合、上半側では、燃焼器構造体1は、外部ケーシング85および内部ケーシング90を、例えば、鉛直上方から貫通して配置されている。下半側では、燃焼器構造体1は、外部ケーシング85および内部ケーシング90を、例えば、鉛直下方から貫通して配置されている。
【0139】
また、図示しないが、燃焼器構造体1を下半側のみ備える構成あってもよい。
【0140】
以上説明した実施形態によれば、超臨界COガスタービンの燃焼器において、他の燃料‐酸化剤供給機構から噴出された燃料と酸化剤の流れ場からの干渉を受けることなく、安定した燃焼を維持することが可能となる。
【0141】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0142】
1…燃焼器構造体、5…ガスタービン設備、10…燃料供給系統、11、21、31、34…配管、12、22、35、36…流量調整弁、20…酸素供給系統、23、33…圧縮機、30…二酸化炭素循環系統、32…凝縮器、40…タービン、41…発電機、42…熱交換器、50…燃焼器、51…燃焼器ライナ、51a…上流端壁、51b…開口、51c…導入孔、52…燃料供給部、52a、53a…出口、53…酸化剤供給部、54…燃料‐酸化剤供給機構、55…スワーラ、60…後部ライナ、63…貫通口、70…スクロール、71…屈曲流路部、72…環状流路部、80…ケーシング、85…外部ケーシング、85a、90a…外周面、86、91…貫通口、87…溝部、90…内部ケーシング、92…突条部、93…シールリング、95…静翼、95a…内輪側壁、95b…外輪側壁、95c…外側壁、96…動翼、97…タービンロータ、98…ロータホイール、100…スリーブ、101…フランジ部、110…燃焼器ケーシング、111…ヘッドプレート、F…火炎。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7