(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-21
(45)【発行日】2023-08-29
(54)【発明の名称】ポンプ型歯磨剤組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/73 20060101AFI20230822BHJP
A61Q 11/00 20060101ALI20230822BHJP
【FI】
A61K8/73
A61Q11/00
(21)【出願番号】P 2020524339
(86)(22)【出願日】2018-10-16
(86)【国際出願番号】 KR2018012198
(87)【国際公開番号】W WO2019088512
(87)【国際公開日】2019-05-09
【審査請求日】2021-10-06
(31)【優先権主張番号】10-2017-0142628
(32)【優先日】2017-10-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2017-0143952
(32)【優先日】2017-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】514112488
【氏名又は名称】エルジー ハウスホールド アンド ヘルスケア リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】キョ-テ・ムン
(72)【発明者】
【氏名】ジ-ヒェ・イ
(72)【発明者】
【氏名】アラム・ヨウ
(72)【発明者】
【氏名】ソン-ロク・ファン
(72)【発明者】
【氏名】ウォン-ホ・ハ
【審査官】山田 陸翠
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-515399(JP,A)
【文献】特表2016-521764(JP,A)
【文献】国際公開第2015/016057(WO,A1)
【文献】特開平04-210908(JP,A)
【文献】特表2013-509404(JP,A)
【文献】国際公開第2008/059881(WO,A1)
【文献】特開平05-194166(JP,A)
【文献】国際公開第2011/046179(WO,A1)
【文献】特表2006-509767(JP,A)
【文献】特開2001-213732(JP,A)
【文献】国際公開第2004/041229(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポンプ型容器に充填されるポンプ型歯磨剤組成物であって、
親水コロイド及び水を含み、
親水コロイドと水との重量比は0.5~10:1(親水コロイド:水)であり、
前記親水コロイドの含量は、組成物の総重量対比3~6重量%であり、
前記水の含量は、組成物の総重量対比5重量%未満であり、
前記親水コロイドは、セルロースガム、キサンタンガム、ローカストビーンガム、アラビアガム、ゲランガム及びグアーガムから選択される1種以上を含み、
前記ポンプ型歯磨剤組成物の粘度は、25℃で4,000cP~35,000cPである、ポンプ型歯磨剤組成物。
【請求項2】
前記ポンプ型歯磨剤組成物が、組成物の総重量対比0.1~50重量%の研磨剤及び1~20重量%の起泡剤をさらに含む、請求項1に記載のポンプ型歯磨剤組成物。
【請求項3】
前記親水コロイドが、アガロース、アガー、デキストリン、ゼラチン、寒天、ペクチン、澱粉、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボマー、カラギーナン、アクリル系ポリマー及びアルジネート類から選択される1種以上をさらに含む、請求項1に記載のポンプ型歯磨剤組成物。
【請求項4】
前記ポンプ型歯磨剤組成物10gに水1mlを添加して混合する場合、混合前の組成物の粘度に比べて1.1~2倍の粘度の上昇がある、請求項1に記載のポンプ型歯磨剤組成物。
【請求項5】
前記ポンプ型歯磨剤組成物がゲル状を呈する、請求項1に記載のポンプ型歯磨剤組成物。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載のポンプ型歯磨剤組成物、及び前記ポンプ型歯磨剤組成物が充填されるポンプ型容器を含むポンプ型歯磨剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯磨剤組成物に関し、ポンプ型容器に充填して提供するための歯磨剤組成物であって、唾液によって粘度が増加して使用感が改善された歯磨剤組成物に関する。
【0002】
また、本発明は、延糸性(tailing property)及び硬化性が改善されたポンプ歯磨剤組成物に関する。
【0003】
本出願は、2017年10月30日出願の韓国特許出願第10-2017-0142628号及び2017年10月31日出願の韓国特許出願第10-2017-0143952号に基づく優先権を主張し、当該出願の明細書及び図面に開示された内容は、すべて本出願に組み込まれる。
【背景技術】
【0004】
通常、口腔及び歯の洗浄のために使用する歯磨剤組成物は、ペースト状、粉末状、ゲル状/粘液状または液状の製品が市販されているが、使用及び取扱いの面では一定の長短所を有している。
【0005】
米国のコルゲート社で最初開発されたペースト状歯磨剤は、アルミニウムチューブに入れられて販売され、1970年代までもこのようなアルミニウムチューブが使用されていた。このようなペースト状歯磨剤の容器は、高分子及び高分子加工技術の発展により、現在のように、アルミニウムから積層フィルム材質に変わった。しかし、このようなチューブ型の歯磨剤は粘度が高く、研磨剤成分によって歯のエナメル層が損傷され易く、絞り出して使用することが不便であるだけでなく、容器内の製品を絞り切ることができず廃棄される容器内に歯磨剤が残ってしまい、環境汚染を引き起こすなどの様々な問題がある。このような歯磨剤の放出性などを改善するため、プラスチック容器に流れる特性を有する液状歯磨剤を入れた製品が発売されたが、流れが良すぎると歯ブラシ上から流れ落ちて、歯磨剤内の薬物を歯及び歯茎に対して効果的に伝達し難い問題がある。そこで、口腔菌の抑制及び口臭除去の機能を果たす口腔うがい剤として広く使用されているが、洗浄成分が足りず流れ落ちやすいため、口腔内のプラーク及び口腔菌の除去など、十分な歯磨きの効果が得られなかった。その後、ユーザ便利性を高めるため、真空ポンプ型のプラスチック容器を用いて高粘度のペーストを吐出可能にした製品が提案され、一部は市販中であるが、価格的な問題及び従来のペースト状歯磨剤の放出性が悪いなどの問題が常在している。また、粉末状は使用中に粒子が噴射又は飛散するため、使用が不便である。また、液状のディップポンプ(dip pump)歯磨剤が市販中であり、低い粘度によって放出性が改善されたが、ペースト状歯磨剤で提供した粘性のある使用感は提供できていない。
【0006】
一方、チューブ型歯磨剤の短所を解決するため、プラスチック容器に充填されたポンプ型歯磨剤が発売されたが、ポンプ型歯磨剤は延糸性(tailing property)という問題点を有しており、それによって容器が汚れる他、歯ブラシ上における歯磨剤の保形性が良くない問題があった。
【0007】
また、従来のチューブ型歯磨剤は、潤滑剤及び保湿剤として通常ソルビトール(sorbitol)を含む。ソルビトールは、約70%水溶液状態のものが使用されるが、水の乾燥とともに素早く固体に変化する性質があり、特に、研磨剤として固形分が含まれるため、空気と接触するとき固形化し易い。特に、ポンプ型歯磨剤は、ポンプ型容器を歯磨剤に適用したため、空気との接触が不可避であり、ポンプ型歯磨剤組成物自体の硬化性を改善することが求められる。
【0008】
本明細書は、全体にわたって多数の文献が参照され、その引用が示されている。引用された文献の開示内容は、その全体として本明細書に参照として援用され、本発明が属する技術分野の水準及び本発明の内容がより明確に説明される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、本発明が解決しようとする課題は、上述した問題を解決して、ポンプ型容器に充填して提供可能なポンプ型歯磨剤組成物を提供することである。
【0010】
また、本発明の課題は、ポンプ型歯磨剤組成物であって、歯磨きの際、唾液または水によって粘度が上昇し、歯磨剤の使用感が改善された歯磨剤組成物を提供することである。
【0011】
また、本発明の課題は、ポンプ型歯磨剤組成物であって、吐出時に内容物が固まる現象が改善された歯磨剤組成物を提供することである。
【0012】
また、本発明の課題は、ポンプ型歯磨剤組成物であって、延糸性及び硬化性が改善された歯磨剤組成物を提供することである。
【0013】
本発明の他の目的及び利点は、後述する発明の詳細な説明、特許請求の範囲及び図面によってより明確になる。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の一態様は、上記の課題を解決するため、ポンプ型容器に充填して提供可能なポンプ型歯磨剤組成物を提供することである。より具体的には、本発明は、ポンプ型歯磨剤組成物であって、歯磨きの際、唾液または水によって粘度が上昇して歯磨剤の使用感が改善された歯磨剤組成物を提供する。また、ポンプ型歯磨剤組成物であって、吐出時に内容物が固まる現象が改善された歯磨剤組成物を提供する。
【0015】
以下、より詳しく説明する。
【0016】
ポンプ型歯磨剤組成物においては、組成物内に含まれている水が蒸発して内容物中に固形分が発現し、吐出時に内容物が固まる問題を解消する必要がある。さらに、粘度が低いため放出性を改善する一方、歯磨き時に口内の唾液によって歯磨剤がさらに希釈されて従来のペースト歯磨剤で提供していた豊満感を提供できないという問題を解消する必要がある。
【0017】
そこで、本発明者らは、ポンプ型容器に充填されるポンプ型歯磨剤組成物において、水の含量を低め、水和していない親水コロイドを含ませることで、歯磨きの際、前記親水コロイドが水または唾液によって膨潤して、豊かな使用感を提供する効果があることを見出し、本発明の完成に至った。
【0018】
本明細書において、用語「ポンプ型」とは、容器の押し部を用いたポンプ作用によって容器内部に貯蔵された内容物を吐出口から外部に簡単に排出できる構造を言う。具体的に、容器内部の歯磨剤組成物をピストンのポンプ作用によって容器外部に排出させて使用する構造を意味し、すなわち、前記ポンプ作用で容器内部に備えられたピストンによって内容物が容器の内部下端から外部に排出される。
【0019】
本発明のポンプ型容器に使用されるポンプとしては、例えば、ディップポンプ(ディップチューブポンプ)、E-センサーポンプ、オイルポンプ、フォーミングポンプ、ミストポンプなどが挙げられ、望ましくはディップポンプが使用され得る。
【0020】
前記ディップポンプ(dip pump)は、外包装容器が固定型であるか又は容器の変形が可能なパウチ型容器の内部に深く位置して、容器の最下端から最上端まで内容物を引き上げて吐出させ、ポンピング時の柔らかな手触り、正確且つ多様な吐出量、及び内容物の粘性に応じた内部構造の作用による便利な使用感を有するため、通常シャンプーやボディウォッシュ製品に使用される。前記ディップポンプは、固定型外包装容器に設けられるか又は変形が可能な容器に設けられても良いが、前者の場合、内容物が外包装容器に直接充填され得、後者の場合、外容器の内部に追加的に変形可能なパウチが設けられ、前記パウチの内部に内容物が充填されて、内容物の減少による減圧によって内部パウチが縮まる形態であり得る。
【0021】
前記E-センサーポンプは、吐出量を少量化且つ細密化できるという長所がある。前記オイルポンプは、使用時に漏液が生じ得る内容物を充填する場合に効果的なポンプである。前記フォーミングポンプは、フレオンガスを使わず、ポンプの内部構造のみで豊かな泡を作ることができるポンプである。前記ミストポンプは、微細な粒子状に内容物を噴射する構造のポンプである。
【0022】
本明細書において、用語「実質的に水和していない親水コロイド」とは、親水コロイドが組成物に過飽和状態に溶解されて水によって水和していない状態である親水コロイドを含む概念で使われた。
【0023】
具体的には、本発明は、ポンプ型容器に充填されるポンプ型歯磨剤組成物であって、親水コロイド及び水を含み、前記親水コロイドと水との重量比は0.5~10:1(親水コロイド:水)であり、望ましくは0.8~5:1であるポンプ型歯磨剤組成物を提供する。前記重量比が0.5~10:1である場合、実質的に水和していない親水コロイドを含むポンプ型歯磨剤組成物を提供することができる。
【0024】
望ましくは、前記水の含量は、組成物の総重量対比5重量%未満であり、より望ましくは、組成物の総重量対比0.001以上5重量%未満であり、前記親水コロイドの含量は、組成物の総重量対比0.1~15重量%、より望ましくは3~6重量%である。前記水の含量が0.001重量%未満であれば、剤形の安定性に問題が生じ得、5重量%以上であれば、本発明が目的とする課題を解決できないおそれがある。また、前記親水コロイドの含量が組成物の総重量対比0.1~15重量%である場合、本発明が目的とする「実質的に水和していない親水コロイド」を含むことができる。
【0025】
本発明で含まれる前記水は、当業界で歯磨剤組成物に使用される水であれば良い。例えば、精製水;及びアロエベラ、ウィッチヘーゼル(Witch Hazel)、ハマメリス(hamamelis)、きゅうり、レモン、ラベンダー、ローズなどの植物抽出液を用いることができるが、これらに限定されることはない。
【0026】
本発明で含まれる前記研磨剤は、口腔内で歯垢(プラーク)を除去する機能をする物質であって、プラークの除去効率を高め、堅い異物などを除去するために必須に使用され、モース硬度が3~6程度の値を示す。本発明において、ポンプ容器のピストンは低密度ポリエチレンから製作されるが、前記ポリエチレンの硬度が使用される研磨剤の硬度よりも低く、ポンプが摩耗し得るため、研磨剤は少量で含まれることが望ましい。一例として、研磨剤は、組成物の総重量対比0.1~50重量%、望ましくは1~20重量%で含まれ得る。他の例として、研磨剤は、組成物の総重量対比30重量%以下、望ましくは0.5~20重量%で含まれ得る。
【0027】
前記研磨剤は、例えばリン酸一水素カルシウム、沈降シリカ、フュームドシリカ、水和二酸化ケイ素、コロイド性二酸化ケイ素、シリカゲル、ゼオライト、炭酸カルシウム、水和アルミナ、カオリン、セルロース及びこれらの混合物からなる群より選択されたいずれか1つを含むことができるが、これらに限定されることはない。
【0028】
本発明で含まれる起泡剤は、泡生成を容易にするために使用され、一例として、アルキル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、アルキルサルコシネート、ラウリルサルコシネート、ココイルグルタミン酸ナトリウム塩、ミリストイルグルタミン酸ナトリウム塩、コカミドプロピルベタイン、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンの共重合体(ポロキサマー)などの陰イオン、両性及び非イオン性界面活性剤を単独または2種以上混合して使用することができる。また他の例として、前記起泡剤は、ラウリン酸ナトリウム、パルミチン酸ナトリウム、アルキル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸カリウム、POE-ラウリル硫酸トリエタノールアミン、POE-ラウリル硫酸ナトリウム、ラウロイルサルコシンナトリウム、N-ミリストイル-N-メチルタウリンナトリウム、ヤシ油脂肪酸メチルタウリンナトリウム、ラウリルメチルタウリンナトリウム、POE-オレイルエーテルリン酸ナトリウム、POE-ステアリルエーテルリン酸、ジ-2-エチルヘキシルスルホコハク酸ナトリウム、モノラウロイルモノエタノールアミドポリオキシエチレンスルホコハク酸ナトリウム、ラウロイルポリプロピレングリコールスルホコハク酸ナトリウム、直鎖ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、直鎖ドデシルベンゼンスルホン酸トリエタノールアミン、直鎖ドデシルベンゼンスルホン酸、硬化ヤシ油脂肪酸グリセリン硫酸ナトリウム、N-ラウロイルグルタミン酸モノナトリウム、N-ステアロイルグルタミン酸ジナトリウム、N-ミリストイル-L-グルタミン酸モノナトリウムなどの陰イオン性界面活性剤;ソルビタンモノオレエート、ソルビタンモノイソステアレート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンセスキオレート、ソルビタントリオレエート、ペンタ-2-エチルヘキシル酸ジグリセロールソルビタン、テトラ-2-エチルヘキシル酸ジグリセロールソルビタン、モノ綿実油脂肪酸グリセリン、モノエルカ酸グリセリン、セスキオレイン酸グリセリン、モノステアリン酸グリセリン、α,α’-オレイン酸ピログルタミン酸グリセリン、モノステアリン酸グリセリンリンゴ酸、POE-ソルビタンモノオレエート、POE-ソルビタンモノステアレート、POE-ソルビタンテトラオレエート、POE-ソルビットモノラウレート、POE-ソルビットモノオレエート、POE-ソルビットペンタオレエート、POE-ソルビットモノステアレートなどの非イオン性界面活性剤;塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ラウリルトリメチルアンモニウム、塩化セチルピリジニウム、N,N’-ジメチル-3,5-メチレンピペリジニウム、アルキル4級アンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、アルキルイソキノリニウム塩、ジアルキルモルホニウム塩、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウムなどの陽イオン性界面活性剤;2-ウンデシル-N,N,N-(ヒドロキシエチルカルボキシメチル)-2-イミダゾリンナトリウム、2-ココイル-2-イミダゾリウムヒドロキシド-1-カルボキシエチルオキシジナトリウム、2-ヘプタデシル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ラウリルジメチルアミノアセテートベタイン、アルキルベタイン、アミドベタイン、スルホベタインなどの両方性界面活性剤;またはこれらの混合物を、組成物の総重量対比1~20重量%で使用することができるが、これらに限定されることはない。
【0029】
本発明の組成物は、「水和していない親水コロイド」を増粘剤として含み、前記親水コロイドは、望ましくは水膨潤性コロイドを含む。前記組成物は、組成物内で「水和していない」状態の親水コロイドを含み、前記親水コロイドは、水との接触時に膨潤して組成物の粘度を増加させる性質を有する。
【0030】
また、本発明の組成物は、常温(25℃)で粘度が4,000cP~35,000cP、望ましくは5,000~30,000cPのポンプ型歯磨剤組成物を提供することができる。前記粘度は、当業界で公知の多様な方法によって測定可能であり、例えば、ブルックフィールド粘度計スピンドル5または7番を用いて1分当り20回転の速度で回転しながら測定できるが、これに制限されない。前記組成物の粘度が4,000~35,000cPである場合、固まらず吐出性に優れながらも、歯磨き時に優れた粘度を与えることができる。
【0031】
また、本発明は、歯磨き時に粘度が増加するポンプ型歯磨剤組成物を提供することができる。本発明に含まれる水和していない親水コロイドは歯磨き時に加えられる水または唾液によって希釈される場合、歯磨剤組成物の粘度を増加させるため、豊かな使用感を提供することができる。
【0032】
一実施例において、本発明者らは、本発明による歯磨剤組成物10gを精製水1ml添加して混合する場合、希釈前の粘度と比べて1.1~2倍の粘度上昇があることを確認した。
【0033】
また、本発明で含まれる前記親水コロイドは、アガロース、アガー、セルロース、デキストリン、ゼラチン、寒天、ペクチン、澱粉、化学的に変形した澱粉、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、カルボマー、ガラクトマンナン、グルコマンナン、カラギーナン、ガム(gum)、ローカストビーンガム、ゲランガム、キサンタンガム、カラヤガム、アラビアガム、トラガカンスガム、グアーガム、アルジネート類、またはこれらの混合物を使用でき、望ましくはカルボキシメチルセルロースナトリウム、カラギーナン、キサンタンガム、またはこれらの混合物を使用することができる。
【0034】
本発明の歯磨剤組成物を製造する方法は、当業界の通常の製造方法によって製造することができ、例えば、ゲル状で提供することができる。
【0035】
本明細書において、用語「ゲル状」は、従来の水っぽい剤形の液状歯磨剤及び高粘度のペースト状歯磨剤と区別するための概念で使われた。前記ゲル状は、従来の液状剤形とは区別される剤形であって、液状歯磨剤に比べてべたつき、粘性のある剤形を意味する。本発明のゲル状歯磨剤は、弾性があり、液状歯磨剤に比べて剛性のある剤形を意味する。また、本発明のゲル状歯磨剤は、ペースト状歯磨剤に比べては粘度が低くて流動性があり、流れる特性を有するため、内容物を外部に容易に吐出することができ、吐出時の粘度が適切な泡を形成するのに適する。
【0036】
本明細書において、用語「弾性」とは、外力によって変形した物体が、力が除去されたとき本来の形態に戻ろうとする性質を意味し、本来の形態を維持しようとする物体の特性を意味する広い概念で使われた。すなわち、歯磨剤組成物を吐出口から吐出した後、最初の形態を維持しようとするあらゆる性質を含む広い意味で使われた。
【0037】
本発明によるポンプ型歯磨剤組成物は、本発明の目的から逸脱しない範囲内で、当業界で歯磨剤組成物に通常使用されるその他の添加剤を、その剤形及び使用目的に応じてさらに含むことができる。前記その他の添加剤は、例えば、潤滑剤、着香剤、甘味剤、薬効剤、顔料、pH調整剤、防腐剤及び増白剤などをさらに含むことができる。
【0038】
本発明による歯磨剤組成物は、ポンプ型歯磨剤組成物として提供されるために乾燥によって吐出口が詰まる現象を防止すべく、潤滑剤(ポリオール、グリセリンなど)を含むことが望ましい。
【0039】
前記潤滑剤は、互いに接触して滑る2つの面の間の摩擦を減らす作用をする物質を意味し、潤滑作用をして本発明の歯磨剤組成物中に含まれている摩耗特性を有する原料(研磨剤など固形分)によるピストンの摩耗を防止する役割をする。前記潤滑剤は、例えばポリエチレングリコール、グリセロール、プロピレングリコール、エチレングリコール、ポリプロピレングリコール及びこれらの混合物からなる群より選択されたいずれか1つを含むことができるが、これらに制限されない。望ましくは、ポリエチレングリコール200~600、グリセロール、プロピレングリコール、エチレングリコール、ポリプロピレングリコール及びこれらの混合物からなる群より選択されたいずれか1つを含むことができる。より望ましくは、液状潤滑剤として、石油系油、動植物油、合成潤滑油などが使用でき、最も望ましくは組成物の安定性及び優れた使用感の面から液状ポリオールを使用できる。または、潤滑剤は液状ポリオールに限定されず、高分子の形態を有するポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールのように、一定分子量以上で高分子の内部引力(intramolecular interaction)によって常温で固相に存在できるが、製造温度の調節を通じて液化が可能であり、製品化して安定した状態で維持可能な高分子量ポリオールも含む。
【0040】
前記潤滑剤は、全体組成物対比30~85重量%の含量で含むことができる。
【0041】
本発明の組成物には、消費者の嗜好に合わせて着香剤と甘味剤を添加することができる。
【0042】
前記着香剤は、口腔内に残留して持続的に香を発散することで爽快感を継続させる物質であり、消費者の嗜好に合わせて添加することができる。前記着香剤としては、ペパーミント、スペアミントなどのミント、ウィンターグリーン、サリチル酸メチル、オイゲノール、メロン、いちご、オレンジ、バニリンなどを使用できる。一般に着香剤は、組成物の総重量対比0.001~10重量%範囲で使用できる。
【0043】
前記甘味剤は、口腔内に残留しながら持続的に味を提供することで、唾液の発生を持続させる役割を果たし、組成物の剤形が有する基本的な味を克服するために添加することができる。前記甘味剤としては、サッカリン、スクラロース、砂糖、キシリトール、ソルビトール、ラクトース、マンニトール、マルチトール、エリトリトール、アスパルテーム、タウリン、サッカリン塩、D-トリプトファンなどのうち1種またはこれらの混合物を使用することができる。サッカリン塩の中ではサッカリンナトリウムが最も広く使用される。甘味剤の量は組成物総重量の0.001~20重量%範囲で使用することが一般的である。
【0044】
薬効剤は、口腔衛生のために使用され、虫歯予防、歯茎疾患の予防、歯石沈着の予防、美白などの効果がある成分を使用できる。虫歯予防を目的で使用する薬効剤には、フッ素イオンを含む米国食品医薬品局で安全な物質として認めた化合物が含まれる。フッ素イオンの供給源として使用できる化合物としては、フッ化ナトリウム、モノフルオロリン酸ナトリウム、フッ化スズ、フッ化アミンが挙げられる。フッ素の含量は国によって使用量が異なり得るが、望ましくは850~1500ppm範囲のフッ素イオン濃度を有するように、これら供給源の1種または2種以上の混合物を使用することが一般的である。再石灰化剤も虫歯予防剤として作用できる。再石灰化剤は歯の主要構成成分であるヒドロキシアパタイトを再生して復元する役割をするものである。ヒドロキシアパタイトの主成分は、2価のカルシウム陽イオンとリン酸陰イオンを含む。したがって、カルシウムイオンとリン酸イオンを同時に供給するか、又は、口腔内の化学平衡をヒドロキシアパタイトが生成される方に移動できるように、カルシウム2価イオンやリン酸陰イオンの1種以上が含有されたものであれば、再石灰化剤になり得る。カルシウムとリンを提供する物質には、原料状のヒドロキシアパタイト、第2リン酸カルシウム、塩化カルシウム、カゼインホスホペプチド、グリセロリン酸カルシウム、第1リン酸ナトリウム、第2リン酸ナトリウム、第3リン酸ナトリウム、第1リン酸カリウム、第2リン酸カリウム、第3リン酸カリウムなどが含まれる。一般に再石灰化剤は、組成物全体の0.001~20重量%範囲で使用することが望ましい。0.001重量%未満では再石灰化効果が低下し、20重量%より多くなると製剤が本来持っている性質を失うようになる。口腔衛生用品を使用する目的のうち1つは、口腔内に生存している口腔内有害微生物に対する殺菌または抗炎症作用によって進行中の歯茎疾患の緩和だけでなく、歯茎疾患を予め防止することである。このような目的のため抗菌剤として、イソプロピルメチルフェノール、シクロヘキシジン、塩化セチルピリジニウム、サントリゾールなどが使用でき、抗炎症作用のためにビタミン類と酵素、アミノカプロン酸、アラントイン及びその誘導体などを使用できる。薬効剤は0.005重量%~5重量%で含むことができる。薬効剤の含量が0.005未満の場合は薬効を示し難く、5重量%を超過して含む場合は基本ベースの味を変化させる恐れがある。歯茎疾患の外にも美白効果を奏する過酸化水素、過酸化尿素、過酸化カルシウムなどが使用でき、歯石沈着を抑制する効果を得るため、ピロリン酸ナトリウム、酸性ピロリン酸ナトリウム、ピロリン酸カリウム、メタリン酸ナトリウムなども使用される。一般にこれら薬効剤は、組成物全体重量の0.001~10重量%範囲で使用される。
【0045】
前記顔料は、歯磨剤に一般に使用される顔料であれば、粒子径、多孔質、無孔質などの粒子構造などによって特に限定されない。例えば、酸化チタン、酸化セリウム、硫酸バリウムなどの白色無機顔料;酸化鉄、カーボンブラック、チタン・酸化チタン焼結物、酸化クロム、水酸化クロム、紺青、濃紺などの有色無機顔料;赤色201号、赤色202号、赤色205号、赤色226号、赤色228号、橙色203号、橙色204号、青色404号、黄色401号などの有機顔料粉体、赤色3号、赤色104号、赤色106号、橙色205号、黄色4号、黄色5号、緑色3号、青色1号などのジルコニウム、バリウムまたはアルミニウムレーキなどの有機顔料;アルミニウムパウダー、金パウダー、銀パウダーなどの金属粉体;微粒子酸化チタン被覆雲母チタン、硫酸バリウム被覆雲母チタン、酸化チタン含有二酸化ケイ素の複合粉体などを使用することができる。
【0046】
前記pH調整剤としては、リン酸、リン酸ナトリウム、クエン酸、クエン酸ナトリウム、コハク酸、コハク酸ナトリウム、酒石酸、酒石酸ナトリウムなどを使用でき、口腔用組成物の酸性度は一般に5~8である。
【0047】
前記防腐剤としては、安息香酸、メチルパラベン、プロピルパラベン、安息香酸ナトリウムなどを使用することができる。
【0048】
前記増白剤としては、酸化チタンを使用し、一般に組成物の総重量対比0.1~2重量%で使用する。
【0049】
また、本発明は、研磨剤1~50重量%、起泡剤1~20重量%、親水コロイド0.1~30重量%、及び残量のその他の添加剤からなるポンプ型歯磨剤組成物を提供することができる。
【0050】
また、本発明の歯磨剤組成物は、組成物の総重量対比5重量%未満の水を含むことができ、前記水は、本発明に含まれる親水コロイド以外の成分と水和反応でき、前記親水コロイド以外の成分との水和反応に参加する水の含量は水100重量部に対して0.1~30重量部、望ましくは1~20重量部であり得る。前記親水コロイド以外の成分との水和反応に参加する水の含量が水100重量部対比0.1~30重量部であると、剤形の安定性を確保できるだけでなく、実質的に水和していない親水コロイドを含む歯磨剤組成物を提供することができる。
【0051】
本発明の歯磨剤組成物は、当業界で通常使用する方法で製造することができる。
【0052】
本発明による歯磨剤組成物は、うがい剤、入れ歯洗浄剤などに転用できる。
【0053】
本発明は、上述したポンプ型歯磨剤組成物、及び前記ポンプ型歯磨剤組成物が充填されるポンプ型容器を含むポンプ型歯磨剤を提供し、前記ポンプ型歯磨剤を使用すると優れた豊満感を発揮することができる。
【0054】
本明細書において、用語「豊満感」とは、歯磨き時に発生する唾液によって膨潤した親水コロイドによって粘度が上昇し、それによって口内に満ち溢れる感覚を称する。
【0055】
本発明の他の態様は、ポンプ型容器に充填されるポンプ型歯磨剤組成物であって、アクリル系高分子及び親水コロイド(hydrocolloid)を含むことを特徴とするポンプ型歯磨剤組成物を提供する。
【0056】
本発明者らは、ポンプ型歯磨剤の問題点である延糸及び空気との接触による硬化性問題を解決しようと鋭意研究を重ねた。その結果、アクリル系高分子及び親水コロイド成分を同時に含む場合、延糸性及び硬化性が改善されるだけでなく、ポンプ型容器に充填してポンプを通って吐出可能な物理的特性が確保されることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0057】
本発明のポンプ型歯磨剤組成物には、ポリアクリル系高分子、ポリメタクリル系高分子、ポリアルキルアクリル系高分子またはポリアルキルメタクリル系高分子を含むことができる。
【0058】
前記アクリル系高分子は、ビニル高分子の一形態であって、アクリル系単量体から製造でき、アクリル系単量体としてはビニル基を含むエステル、すなわち二つの炭素が二重結合を成しており、この炭素のうち1つ(α炭素)にカルボニル基が直接結合したものを使用することができる。
【0059】
より具体的には、本発明に使用されるアクリル系高分子は、アクリレート、メタクリレート、アルキルアクリレート、アルキルメタクリレート、ヒドロキシアルキルアクリレート、ヒドロキシアルキルメタクリレート、ジエチレングリコールアクリレート、ジエチレングリコールメタクリレート、アクリルアミド、メタクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、メチロールアクリルアミド及びメチロールメタクリルアミド、炭素数1~20のアルキル基を有する(メタ)アクリル系エステル単量体、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、及びイソボニル(メタ)アクリレートからなる群より選択された1種以上の単量体を重合して製造されたものであり得るが、これらに制限されることはない。
【0060】
本発明に使用されるアクリル系高分子は、望ましくはその内部に芳香剤などの他の成分を含まず、単独で存在するものであり、またアクリル系高分子には実質的に架橋結合(cross-linked)していないものであることが要求される。
【0061】
本発明のポンプ型歯磨剤組成物は、ポンプ容器に充填して使用するとき吐出可能でなければならないが、架橋結合したアクリル系高分子を使用すると、溶解性が低下して吐出されない問題が生じ得る。このように、弾性の高い親水コロイドを基本ベースにし、そこにアクリル系高分子を添加することで弾性と粘性との比率を合わせて歯磨剤組成物の延糸性を減少させることができる。
【0062】
前記親水コロイドの具体的な種類及び例示は上述したようである。
【0063】
本発明の組成物において、上記の成分はアクリル系高分子対比親水コロイドの重量比が0.05~20になるように含むことができる。
【0064】
一例として、本発明のポンプ型歯磨剤組成物は、前記アクリル系高分子を0.05~1.0重量%及び前記親水コロイドを0.05~1.0重量%で含むことができる。
【0065】
本発明による歯磨剤組成物は、結合剤の外に、当業界で歯磨剤組成物として通常使用される成分として、その剤形及び使用目的に応じて、研磨剤、潤滑剤、着香剤、甘味剤、薬効剤、pH調整剤、防腐剤、結合剤、起泡剤、増白剤などをさらに含むことができる。これら追加成分についての詳しい説明は、上述したとおりである。
【0066】
本発明のポンプ型歯磨剤組成物は、アクリル系高分子を含まない場合と比べて、ポンプ後の吐出口に残留する歯磨剤残量の長さが50%以上、望ましくは70%以上、より望ましくは90%以上減少することを特徴とする。
【0067】
また、本発明の歯磨剤組成物は、4Paの力を加えたときの変形率が1%以上、望ましくは3%以上、より望ましくは5%以上であり、回復率が40%以上、望ましくは60%以上、より望ましくは80%以上であり得る。
【0068】
また、本発明は、上述したポンプ型歯磨剤組成物、及び前記ポンプ型歯磨剤組成物が充填されるポンプ型容器を含むポンプ型歯磨剤を提供する。
【0069】
ポンプ型容器とは、容器の押し部を用いたポンプ作用によって容器内部に貯蔵された内容物を吐出口から外部に簡単に排出できる構造を有する容器を言う。具体的に、容器内部の歯磨剤組成物をピストンのポンプ作用によって容器外部に排出させて使用する構造を意味し、すなわち、前記ポンプ作用で容器内部に備えられたピストンによって内容物が容器の内部下端から外部に排出される。
【0070】
このような本発明のポンプ型歯磨剤は、うがい剤、入れ歯洗浄剤などにも転用できる。
【発明の効果】
【0071】
本発明によれば、ポンプ型容器に充填して提供可能なポンプ型歯磨剤組成物を提供し、特にポンプ型歯磨剤組成物として、吐出時に内容物が固まる現象を改善するだけでなく、歯磨き時に唾液によって歯磨剤に粘性が与えられて優れた使用感を奏する効果がある。
【0072】
また、本発明は、ポンプ型容器に充填して提供可能なポンプ型歯磨剤組成物及びそれを含むポンプ型歯磨剤を提供し、特に歯磨剤の延糸性及び硬化性が改善される効果がある。
【発明を実施するための形態】
【0073】
以下、本発明の理解を助けるために実施例などを挙げて詳しく説明する。しかし、本発明による実施例は多くの他の形態で変形でき、本発明の範囲が後述する実施例に限定されると解釈されてはならない。本発明の実施例は、本発明が属した分野で平均的な知識を持つ者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。
【0074】
I.ポンプ型歯磨剤組成物の製造例A
実施例A1~A6及び比較例A1~A3の製造
実施例及び比較例の歯磨剤組成物を下記表1に示した成分及び重量で製造した。精製水、グリセリン、香料、薬効剤、界面活性剤、親水コロイド、サッカリンナトリウムなどの粉末成分を完全に分散させて1次混合した後、沈降シリカなどの研磨剤及びその他の成分を投入し、真空状態下で混合して歯磨剤組成物を製造した。
【0075】
【0076】
実験1.歯磨剤の硬化程度の評価
製造した実施例及び比較例を24ウェルプレートに充填した後、ファン(fan)が取り付けられた60℃の乾燥オーブン炉で48時間乾燥した。その後、歯磨剤の硬化程度を、探針棒を用いて圧力を加えたときの固まった程度で評価し、その結果を表2に示した。内容物に跡がつかないほど固まった程度を「固まる」、内容物に跡がつくか又は内容物内に探針棒が突き入れられる場合を「固まらない」とした。
【0077】
【0078】
実験2.粘度の測定
ブルックフィールド粘度計5番スピンドルを用いて20rpmで製造した歯磨剤組成物の粘度を測定し、その結果を表3に示した。初期粘度は、製造した歯磨剤を2日間安定させた後測定し、希釈粘度は、2日間安定させた歯磨剤組成物に組成物重量対比10重量%の精製水を投入した後測定した。
【0079】
【0080】
結果
実施例A1~A6及び比較例A1~A3はいずれも固まらず、初期粘度は20,000~30,000cPであり、全てポンプ型歯磨剤組成物として吐出時の硬化現象が改善され、吐出の容易性の面で望ましい。しかし、希釈粘度において、実施例A1~A6では初期粘度に比べて増加し、比較例A1~A3では減少したことを確認した。このことから、本発明の歯磨剤組成物を適用する場合、歯磨き時に歯磨剤の粘度が増加することで、歯磨剤を希釈しても豊かな使用感を与えることができることを確認した。
【0081】
II.ポンプ型歯磨剤組成物の製造例B
実施例及び比較例の歯磨剤組成物を下記表4に示した成分及び組成比で製造した。精製水、液状ポリオール、香料、薬効剤、界面活性剤、アクリレートとの共同結合剤、サッカリン、防腐剤、界面活性剤などの粉末成分を完全に分散させて1次混合した後、シリカなどの研磨剤と薬効剤を投入し、真空状態下で混合して歯磨剤組成物を製造した。
【0082】
【0083】
実験1:製造歯磨剤の相安定性の評価
表4の実施例B1~B11と比較例B1~B2のように製造した歯磨剤に対し、相分離、液の分離現象、硬化現象、歯磨剤均一性の評価基準を用いて相安定性を評価し、その結果を表5に示した。
【0084】
【0085】
表5から確認できるとおり、アクリレート高分子のみを使用した場合は、内部固形分が固まって処方中の液状成分を押し出し、相分離が起きて安定性が不良であった。
【0086】
実験2:延糸性の測定(テーリング長さの測定)
テーリング長さは、ポンプ型歯磨剤を吐出した後、吐出口に残留する残量の長さを測定する方法で評価し、その結果を下記表6に示した。
【0087】
【0088】
実験の結果、アクリレート高分子のみを使用した場合、残量の長さは良好であったが、安定性が担保されず使用が不可能であり、アクリレートを使用しない場合は、長さが10mmであり、最小50%以上の歯磨剤の延糸性を減少させることを確認した。
【0089】
実験3:ポンプ型歯磨剤の復元力の評価
レオメーターを用いて4Paの力を加えたときの変形率と、復元率(recovery rate)を評価し、その結果を下記表7に示した。
【0090】
【0091】
比較例B1の場合は、安定性に問題があったため測定せず、比較例B2のように親水コロイドを単独で使用した場合は復元力が劣ることが確認された。
【0092】
実験4:ポンプ型歯磨剤の乾燥速度の測定
試験方法:24ウェルプレートに歯磨剤を充填した後、ファンが取り付けられたドライオーブンに60℃で6時間乾燥した後、歯磨剤の硬化程度を探針棒(丸型ペン)を用いて圧力を加えたときの固まった程度を評価し、その結果を下記表8に示した。
【0093】
評価尺度は、以下のようになる。
-固まる:内容物に跡がつかないほど固まる。
-固まらない:内容物に跡がつくか又は内容物内に突き入れられる
【0094】
【0095】
比較例B1の場合は、安定性に問題があったため、測定しなかった。比較例B2は固まった一方、実施例B1~B11の組成物は、硬化性が著しく改善されたことが確認された。